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ブイズと御三家、恋愛模様

1名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:07:41 ID:APncxO660
注意 このSSではポケモン視点で話が進みます。ポケモンの性格は基本<<1のねつ造です。
また、ポケモン同士の恋愛が主題です。そういうのが苦手な方は申し訳ありませんが読まないことをオススメします。

基本オリジナル設定ですので、細かいところのツッコミは無でお願いします。

2名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:10:30 ID:APncxO660
快晴の空、静かな庭園、荘厳な噴水。ここは都心からやや外れた郊外にあるとある金持ち一家の邸宅である。

この邸宅にはそれはそれは広大な庭園が設けられており、先々代の当主が見つけてきた各地方のポケモンたちが自由気ままに住処を作り平和に暮らす一種のサファリパークのような場所となっている。

その庭園には現在の当主の9人の娘たちのパートナーであるポケモンも良く遊びに来ており、一族自慢のものとなっている。

 さぁ、ここからは語り手を変わってもらおう。その広い庭園の中心部、石タイルの貼ってある中央広場でゆっくりと寝そべっている赤色のふわふわした体の彼に・・・

3名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:11:49 ID:APncxO660
穏やかな午後、暖かい日差しと気持ちのいい風。その二つを感じながら昼寝をしていた俺の耳に「カランコロン」という音と、何人もの人間が騒がしくはしゃいでいる声が聞こえてきた。

 「ああ、あいつらが来たのか」俺はそう呟くと体を伸ばしこの庭園と屋敷をつなぐゲートへと歩き出す。

 あいつらとはこの屋敷からやや離れた田舎町に住むトレーナーたちのことだ。その数9人、うちのマスターたちの人数とぴったり同じだっていうのがマスターの親父さんの興味を引き、近くの町で開催される大会に参加しようとしていた彼らを招き入れてからちょくちょく遊びに来る間柄となっている。

 親父さんもお袋さんも大喜びであいつらを迎えている。その理由はマスターを始めとする娘さん全員がそれぞれそのトレーナー集団に恋しちまったっていうものだ。

だれ一人被らずに別々の相手に思いを寄せる娘たちの恋をささやかながら応援してるってのが親心ってやつらしい。俺には分からないけどな。

 でもな親父さん、恋をしているのはあんたの娘さんだけじゃないんだぜ?

 俺の妹たち、総勢8匹のポケモンたちはそのトレーナーの手持ちのポケモンにもう夢中ってわけだ。

4名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:13:18 ID:APncxO660
こういうのもなんだが、俺の妹たちは皆が皆、彼女もしくは嫁にしたい!ってほどの人気のポケモンたちだ。この屋敷に住むポケモンたちの♂ほとんどが、デートのお誘い、交際希望、すっ飛ばしてプロポーズする奴までいたが、全員もれなく玉砕している。

 そんな妹たちのハートをかっさらった奴らだ、恨まれて当然だと思うが・・・あいつらは皆いいやつだった。

遊びに来るやつらとふれあい、話し、ともにいるうちにほとんどの奴らが「あいつらになら俺たちのアイドルを渡してもいい!」と涙ながらに俺に言ってきやがった。かくいう俺もあいつらとは親友のような関係になりこうやって一番にあいさつするためにゲートにむかってるってわけさ。

 妹たちは全員おしゃれに気を使ってすぐには来られないだろう。まだ諦めていない奴らの妨害が心配だが・・・そこは俺の妹たち、かわいいだけじゃなく強さも兼ね備えてる、それによく言うだろ?「人の恋路を邪魔する奴は、ギャロップにけられて死んじまえ」って。周りの奴のサポートにも期待するさ。

 そんなことを語ってたら目的のゲートまで来ちまった。どうやらまだ誰も来てないらしいな。安心安心。

 おっと、一番大事な自己紹介を忘れてたな、こりゃ失敬。んじゃ、俺のことを簡単に説明しよう。

俺の名前はブースター、この屋敷にすむ9人娘の1人のパートナーであり、俺たち兄妹、通称ブイズの長男でもある。・・・おい、今俺のこと唯一王とか言った奴出てこい、フレアドライブかましてやる。

 まぁ、そんなこんなでこれから俺が語るのは俺たちブイズとトレーナーのパートナーポケモン、通称御三家の奴らとの甘酸っぱい恋の物語だ。たぶんな、一緒に妹たちをからかいたいなら来いよ、お前が人間だろうとなんであろうと拒まないからよ。楽しくいこうぜ!

5名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:15:14 ID:APncxO660
それからしばらく経って・・・

 ゲートが開き次々とあいつらのポケモンたちが庭へとやってくる。そいつらとあいさつを交わし、案内をし、時に憎まれ口をたたきあいながら、俺はゲートの前で座っていた。まだやって来ていないのはあと1匹、マスターへの忠誠心が厚く、そばを離れるのは一番最後と決まってるあいつだけだ。俺はそいつが来るのを待ちながら「今日はどういうルートで妹たちをからかってやろうかな・・・」とか考えていた、その時だった。

 「に、兄さん・・・」後ろから、いかにも自身がなさげの暗ーい声が聞こえてきた。この声の持ち主はすぐにわかる。

 「もうチョイ元気よく声をかけろよシャワーズ、お前ゴーストタイプじゃないだろ?」

 「ご、ごめんなさい・・・」後半消え入りそうな声でシャワーズは答えた。

 わが妹、次女のシャワーズはお分かりの通り、「ネガティブかつ気弱な女の子」だ。さらに泣き虫かつ怖がり、臆病かつビビりというこの世の弱いものすべてを持ち合わせたようなメンタル面の脆弱さを誇る。・・・決して嫌っているわけじゃあない、むしろもっと自信を持ってほしいくらいだ。

 イーブイのころからこの性格は形成されており、マスターになれるのも一苦労だった。今ではなんとか多くの奴らと話ができるが、恋なんて問題外!デートに誘われれば飛び上がり逃げ出し、告白なんてされようものなら気絶する。そんなやつなのだ。

 だが、この性格と美しい見た目、慎ましやかなスタイルながらもスラリとした長身。そのすべてがシャワーズに男どもを駆り立てているわけだ、あいつにとっては不幸なことにな。そんなシャワーズに転機が訪れたのはそう、あいつと出会ってだったかな・・・

6名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:17:03 ID:APncxO660
 「はぁ・・・・」と回想に入ろうとしたところでどんよりとした溜息が聞こえた。

 「きっともう中に入ってしまったんだろうなぁ・・・」シャワーズのネガティブモードが始まった。やばいぞこれ。

 「私のことだからきっと私が来る寸前に入って来たとかいう入れ違いパターンなんだろうな・・・一生懸命おしゃれしてきたけど会えなきゃ意味が無いしなあ・・・」

 「おい、シャワーズ?」

 「そもそも私おしゃれしても可愛さ上がんないしなぁ・・・何頑張ってんの?キモッ!とか思われて終わるのがオチだろうなぁ・・」

 「シャワーズ、かわいい妹よ、俺の話を聞いておくれー」

 「あはは、私は水の中で誰にも気が付かれないで溶けてるのがお似合いなんだ・・・そうだよこんな不細工でペチャパイな私が恋なんて・・・夢見すぎだよね、あはははは・・・はぁ」

 どうやらシャワーズは自己完結してしまったらしい。このままではシャワーズはどこかの水の中一生浮かび上がらない人生を送ることになりかねない、非常にまずい、どうにかしなければ!俺がそう思ったその時だった。

 「おや?お二人揃って私を迎えに来ていただけたのですか?これは丁寧にありがたいことですね」

7名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:18:24 ID:St/L3oTs0
やや気取ったような、それでいて紳士的な声が俺たち二人の耳に届いた。その声は俺たち2匹にとって今もっとも聞きたい声だった。

 俺にとってはこの状況を好転させてくれる人物であり、シャワーズにとっては待ち望んだ想い人の声、その声を発した奴の名前を、俺は親しみを込めながら呼んだ。

 「よう、ジュカイン。相変わらず来るのがおせえなぁ」

 「そう言いながらも待っていてくれるところにあなたからの友情を感じますよ、わが友ブースター」

 見上げるような長身をもつジュカインがひざまずき俺たちにあいさつをかわす。その姿は誇り高い騎士のようだった。

 「シャワーズさんも迎えに来てくれるなんて、とても嬉しいです。お美しいあなたの姿をここにきて一番に見れるなんて、私は幸せ者ですね。」

 「いや、私ノロマなんで今来たところで、皆さんのお出迎えできていないので、ジュカインさんが最初で最後のお迎えできた方なんです・・・」

 「という事は来客者のうち、最初にあなたの姿を見たのは私という事だ。いやはやこんな美しいあなたの姿をいの一番に見れるなんてさっきにも増して私が幸福だという事になりますね。」

 「あうう・・・///」

 ジュカインの褒め殺しに会いシャワーズの青いからだがだんだんと赤くなっていく。このまっすぐとした褒め言葉はややキザっぽいが本心から言ってる言葉である。

8名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:19:09 ID:APncxO660

 「騎士道精神に誓って私は自分を偽るようなことはしない!」というのがジュカインの信念だ。このまっすぐさに触れれば皆彼への評価を変えることになる

 キザっぽいクールぶった奴から、騎士のような誇り高さを持つ男へと。

 「私は美しくなんかないですよ・・・」

 「何を言います、あなたは美しい。もしあなたを乏しめるような心無い輩がいたなら私が黙ってはいません。もっともここにそんなポケモンがいるとは思えませんがね。」

 この2匹、はたから見ればシャワーズがジュカインに恋をしたように見えるだろう。だが実際はその逆、ジュカインの方が先にシャワーズに惚れていたのだ。

 2匹の出会いはある日、シャワーズが告白してきたカイリキーから逃げ回っていた時から始まる。

9名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:20:05 ID:APncxO660

 このカイリキーかなり暑苦しいやつで、気弱なシャワーズなら自分の男らしさに惚れるかもしれない!と筋肉をムキムキ見せつけながら告白し、逃げるシャワーズを追い回していたのだ。シャワーズはこういった奴が大の苦手で必死になって逃げまわるも足を怪我して走れなくなってしまった。
 
 ここぞとばかりにさらに筋肉を見せつけながらシャワーズに近寄るカイリキーの前に立ちはだかったのがジュカインだったというわけだ。

 ジュカインからしてみれば女性を追い回す卑劣なポケモンとして映っていたカイリキーをリーフブレードの一閃で切り伏せ、足を怪我したシャワーズを抱きかかえた時にシャワーズの美しさに気が付き恋に落ちた。というわけである。

 「電撃が走ったようであった」というのは本人の談であり、そこからのジュカインの行動は早かった。恋のライバルたちに宣戦布告しシャワーズに徐々に接近、妨害なんてなんのその、持てる技術をフルに使い、見事シャワーズのハートをゲットしたというわけだ。

 そんなジュカインだがシャワーズに告白はしていない、なぜかと本人に問いただしてみたところ。

 「まだ自分は未熟者だ、もっと強く誇り高くなり、彼女を脅かすものをすべて打ち負かせるようになって彼女に脅えないで笑っていてもらえるような男になった時、この思いを伝えるつもりだ。」とのことだった。

 そんなやつはとても男らしいが、周りからしてみれば相思相愛のバカップルがいつまでもくっつかないのは見ていて精神衛生上よくない、早くその時が来ることを祈る毎日である。

10名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:21:23 ID:APncxO660
「ここまで言って信じてもらえないとは、これは私がまだまだ騎士たる誇りを身に着けてはいないという事。更なる修練を課さなければなりませんね。」

 「え、いやそんな・・・」

 「かまいません、私が目指す高みに近づくのが早くなることは喜ばしいですからね。しかし・・・」

 そこまで言うとジュカインはシャワーズを抱き寄せ耳元で

 「今日くらいはあなたという愛しい人と過ごしても誰も咎めはしないでしょう、どうか今日一日私と共に過ごしてはいただけないでしょうか?」と囁いた。

 「は、はひぃ・・・///」シャワーズにこうかばつぐん、さすが草タイプ、相性ばっちりだな。

 この2匹の間に俺は入るわけにはいかないな。クールに去ることにしよう。

 「あ、あの・・・」「はい?」立ち去る前に珍しくシャワーズからジュカインに声をかけるのを聞いた俺は振り返り容姿を見てみた。そこには・・・

 「きょ、今日は楽しい一日にしましょうね。///」

 そう言いながら照れたように誰にも見せない笑顔で笑いかけるシャワーズの姿があった。

 「・・・やはり、あなたは美しい。」

 そう呟くジュカインの声を背に俺はゲートを後にした。楽しんで来いよシャワーズ、お前のナイト様にヨロシクな。

 俺は次に行く場所をさっきまで眠っていた中央広場に決めるとトコトコ走り出した。

11名無しのデデンネ:2015/04/15(水) 23:28:23 ID:APncxO660
 というわけでいかがだったでしょうか?サトシのSSを書いていたものです。おすすめされたSSに影響を受けてアニメを主体とした話から一転、オリジナル設定のポケモン視点での話を書くことにしました。

 あまりうまい文章ではなく、やや読みづらいところがあるかもしれませんが、どうかお付き合い下さると嬉しいです。この作品はとりあえずですが長期の作品として計画しています。季節やイベントごとに書いていけたらいいな。と思っておりますので長い作品になるやもしれませんが感想等言叩けると嬉しいです。

 今書いているのは序章、人物紹介といったところでしょうか、これはある程度書き溜めているので、すきを見て投下していきたいと思います。

 長々と失礼いたしました。次の更新も近いうちにする予定なので、よろしければまたご覧ください。では!

12名無しのデデンネ:2015/04/16(木) 06:41:42 ID:rJ9T.u1k0


13名無しのデデンネ:2015/04/16(木) 13:38:47 ID:f/22DMP.0
恋愛ものか

支援

14名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 05:43:24 ID:eAk0kcvs0
中央広場に戻ってきた俺はのんびりと歩きながら知り合いの姿を探すことにした。どーせこの辺に1匹か2匹くらいくつろいでいる奴がいるだろう、そんなことを考えながら周りを見渡していた俺は不思議な物体を見つけた。

 その物体はかなり大きく、青色をしており、まるで何かから隠れるように丸まって小さくなろうとしていた。もともとが巨大なのであまり意味はなかったが。

 その物体の正体に心当たりがある俺は近づき声をかけてみることにした。

 「なぁ、お前何やってんだ?」

 「・・・ブースターか、すまない、今は話しかけないでくれないか。」

 顔を出してこちらを見たそのポケモンは小さな声でそう言った。

 ぎょろりとした目、大きな体、何より巨大なその手で殴られたなら瀕死どころか三途の川の向こうまで飛ばされそうだ。ぶっちゃけ俺もこいつのことをよく知らない頃は絶対に怖いやつだと思っていた。つまり、今はそうは思っていないという事だ。俺は再びそいつに問いかけてみた。

15名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 05:44:52 ID:eAk0kcvs0
「いや、隠れてるのかもしれないが逆に目立ってるぞ、ラグラージ。」

 「わかっている、だがこれ以外に隠れ方が思いつかなかったのだ。」

 そういうと再び丸くなり始めたラグラージは、もぞもぞと動いて少しでも隠れようとしているようだ。いったい何から隠れているのだろうか?俺がラグラージにそれを問いかける前に答えが向こうからやってきた。

 「あ!お兄ちゃんみーつけた!」天真爛漫、元気一杯。そんな言葉を体現するような声が聞こえたかと思うと大きなラグラージの上に茶色い小さな何かが飛び掛かった。その正体が分かったときラグラージがなんでこんなことをしているのかもやっと理解することができた。

 「そうかイーブイ、ラグラージとかくれんぼしてたのか。」

 「あ、ブースターお兄ちゃん!うん!いっぱい遊んでもらってるんだ!」

 やっぱり元気いっぱいの声で答えたそのポケモンは、我らブイズの末っ子イーブイだ、甘えんぼで純粋な性格をしたイーブイは俺たち兄妹だけでなくこの庭園に住むポケモン全員の妹のような存在だ。

そのイーブイは今遊んでいるラグラージにとても懐いている。一見子供と遊ぶなんて考えられない容姿をしているラグラージだが、内面は不器用ながらも非常に優しい性格の持ち主だ。それに気が付くきっかけを作ったのは他ならぬイーブイなのだ。

16名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 05:45:55 ID:eAk0kcvs0
 かつてラグラージがめちゃくちゃ怖いポケモンと思われ、恐怖の対象とみられていたころの話。イーブイはいつも通りこの広大な庭園の探検に出かけた。いつもなら俺たちのうち誰かが付いていくのだが、その日は今日のようにラグラージたちが来ており、その応対や挨拶をしていたために誰もイーブイが居なくなった事に気が付かなかったのだ。

 さらに不幸は重なり、普段小さな川がある場所がビッパ達の巣作りのためにせき止められ、イーブイが向こう岸にわたることができる状況になっていた。

 普段いけない向こう岸に渡れたイーブイは喜んで今まで行ったことのない場所を探検し、さあ帰ろう!と思い来た道を戻ると・・・

 そこには、普段どうり、いやせき止められた分増水した川が、来た道を分断していた。

 イーブイはパニックになった、当然だ、来た道からは戻れなくなってしまったのだから。焦ったイーブイは最悪の判断をしてしまうことになる。そう、戻れる場所を探してむやみやたらと歩き回ってしまったのだ。おかげで方向も、いる場所もわからなくなったイーブイは、暗くなった頃に少しでも安全そうな場所として選んだ川のそばですすり泣いていた。

 俺たちがイーブイがいないことに気が付いたのは夕方ごろ、全員が広場に集まった時だった。皆が皆、ほかの兄弟と一緒にいるだろうと思い込んでおり、そうでないとわかったときは今思い出しても、本当にゾッとしたものだった。

 急ぎ広場にいたポケモンたちは捜索隊を組織し、イーブイを探し始めた。だが泳げないイーブイが川の向こう側にいるとはだれも思わずイーブイを見つけ出すことはできなかったのだ。ただ1匹のポケモンを除いて。

17名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 05:47:09 ID:eAk0kcvs0
 その頃イーブイはやっぱり川のそばで泣いていた。もしかしたら二度と俺たち兄妹に会えないかもしれない、そんな悪い想像ばかりが膨らみイーブイの精神は限界に近づいていた。そんな時だった。

 突如自分の目の前に巨大な、それでいて恐ろしい顔立ちのポケモンが現れたではないか。元々脅えていたイーブイはこの突然の事態にまるで対応できず、ただ目をつぶって震えることしかできなかった。

 「ああ、自分はこのまま食べられてしまうんだ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、帰れなくってごめんなさい・・・」

 そんなことを考えていたイーブイにむかって恐ろしげなポケモンがかけた言葉は意外なものだった。

 「脅えなくていい、俺は君を探しに来たんだ。おいで、君のお兄さんやお姉さんが心配している。」

 もうお分かりの通り、イーブイを見つけ出したのはラグラージだった。こいつはビッパ達がせき止めていた川が増水していることを見抜き、わずかな痕跡をたどり、そのあたりの川いったいを縄張りとしていたキバニアやサメハダー達を叩きのめし、(後日、本人が謝りに行った。)何とかイーブイを見つけ出したと言うわけだ。

 帰り道の間、ラグラージはイーブイが不安にならないように温かい言葉で励まし続けてくれたらしい。ボロボロになりながらも可愛い妹を見つけてくれたラグラージだったが、そんな彼に俺たちがかけたのは感謝の言葉ではなく、威嚇と嫌疑の眼差しだった。

18名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 05:48:16 ID:eAk0kcvs0

 ボロボロのイーブイを連れ帰ったラグラージを見たとき、俺たちが思ったことは、「こいつがイーブイを連れ去ったのではないか?」という勘違いもいいところの疑いだった。事実俺たち兄妹は1匹残らずラグラージを睨み付け、血気盛んな格闘タイプや炎タイプのポケモンたちは今にもラグラージに殴り掛からんとしていた。

 「彼はそんなことをするような奴じゃない!」というジュカイン達の説得を聞きながらも敵意をむき出しにする俺たちに対して、ラグラージは悲しそうにしながらも「いいんだ、誤解されるのは慣れてる。」と呟きイーブイを俺たちのもとに帰してくれた。

 さみしそうにその場から離れるラグラージの背中にむかって、小さな声で彼を侮辱するような言葉がいくつも投げかけられた。その言葉に怒ったジュカイン達トレーナーのポケモンたちと庭園のポケモンたちのバトルが今にも勃発しようという時に、その動きを止めたのはイーブイの大声だった。

 「ありがとう!お兄ちゃん、ありがとう!」何度も何度も、涙を流しながら叫ぶイーブイの姿を見て、俺たちは何か勘違いをしているのではないかと気が付き始めた時、ラグラージは振り返り、感謝の声を上げ続けるイーブイにむかって不器用ながらも、嬉しそうに笑いかけた。
 
 その笑顔を見たとき、俺たちはラグラージは思っているような恐ろしいやつでは無いのかもしれないという事にやっと気が付いたのだ。

19名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 05:49:10 ID:eAk0kcvs0
以来、ラグラージに懐いたイーブイは彼とよく遊ぶようになり、イーブイと遊ぶラグラージの不器用ながらも精一杯の優しさがあることに気が付いた俺たちは、かつての無礼を謝罪して、今のような良い関係を築き上げるに至ったというわけである。

 「お兄ちゃん、ラグラージお兄ちゃんに用があるの?」そんな昔の話を思い出していたら、不意にイーブイが質問してきた。

 「違うさ、そこにいたから声をかけただけ。まだまだたくさん遊んでもらいな!」

 「わーい、良かった!」嬉しそうな妹を見ているとこっちまで嬉しくなる。どうやらそれはラグラージも同じなようだ。

 「あ、そういえばね、私お兄ちゃん達に質問があるの。」と、イーブイが真面目な顔をして俺たちに言ってきた。

 「お、なんだよ。お兄ちゃんは物知りだからな、なんでも聞いてくれよ。」

 「俺が答えられる事なら、答えよう。質問とはなんだ?」

 俺たち2匹は二つ返事でそう答えた。かわいい妹のお願いだ。聞かない方がどうかしてる。イーブイはありがとうと言うと俺たちに質問を投げかけた。

20名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 05:50:08 ID:eAk0kcvs0

 「あのね、ブイズの皆にタマゴ産ませてーってどういう意味?」

 瞬間、俺たち2匹は絶対零度を食らったかのように氷ついた。誰だ、こんなこと教えた奴は?

 「ブイズって私たちのことでしょ?私たちにタマゴ産ませたいってどういう事?タマゴって何?」

 「イーブイ、その言葉いったい誰から聞いた?」ラグラージが鋭く突っ込む、いいぞ!

 「え〜とね、ヒヒダルマさんに、ケンタロスさんに、あとドテッコツさん!カイリキーさんはお兄ちゃんにタマゴ産ませたいって言ってたよ!」

 二度とカイリキーに背中は見せねぇ。

 「う、うん。意味、意味はねぇ・・・」言葉に詰まった俺の代わりにラグラージが口を開いた。

 「それはな、とっても大好きだという事だ。イーブイたちは皆から愛されているんだよ。」

21名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 05:50:47 ID:eAk0kcvs0
流石だラグラージ!パーフェクト!アンビリーバボー!アメイジング!模範解答に乗せようぜ!ほら見てみろ、イーブイもあんなに喜んで・・・

 「じゃあ、じゃあ、お兄ちゃんも私にタマゴ産ませたい?」

 訂正だ。緊急事態だ。これはまずい事態になった。頑張れ!乗り越えろ!ラグラージ!

 「い、いや。俺はそんな風には・・・」

 「お兄ちゃん私のこと嫌い?」

 「そんなことはないぞ!」「でもタマゴ産ませたくはないんでしょ?」「ぐっっ」

 ・・・純粋とはかくも恐ろしいものなのか、ラグラージがタジタージになっている・・・これ面白いな。今度披露しよう。

 「いや、そうだ!イーブイにはわからないかもしれないがな、タマゴグループというものがあってだな、これが合わないとタマゴは産めないんだ。うん。」

 「そうなの?」 「そうなんだ!だから残念ながら俺はイーブイにはタマゴを産んでもらえないんだよ。」

 限りなくギリギリの回答でこの緊急事態を乗り切りやがった。さすがラグラージ、できる男。

22名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 05:51:30 ID:eAk0kcvs0

 「じゃあ、私大人になってお兄ちゃんにタマゴグループ合わせる!」

 「いや、進化しても俺とはグループは合わないんだよ。」

 「あーわーせーるー!」

 そう駄々をこねるイーブイをほほえましく見ているラグラージだが、油断はできないぞ。

 お前は忘れているかもしれないが、イーブイは進化ポケモンだ。もしかしたらこの会話が原因で新しい進化ができるようになるかもしれないんだぜ?そうなったとき、お前は断る理由を無くすんだからな。覚悟しとけよ!と言ってもイーブイが大人になれば断る理由も無くなるとは思うけどな。

 ただ、ゆめゆめ油断するなよ。どうやら女ってのは愛や恋のためなら不可能も可能にしちまう生き物らしいからな。将来お前が大慌てしないことを祈ってるぜ、ラグラージ。

 「さ、俺は俺たちを大好きだ!って言ってくれた奴らにお礼を言いに行かなきゃな!」

 「ああ、俺も後で行こう、伝言として、覚悟しておけと伝えておいてくれ。」

 ラグラージから物騒な言付けを聞いた後、俺は2匹を背にして歩き始めた。この後やってくる修羅場を知らないのはイーブイただ1匹。純粋な目で「後でね〜」と前足を振る妹を尻目に、俺はイーブイに厄介な言葉を教えやがった奴らへの報復を開始するのであった。

23名無しのデデンネ:2015/04/17(金) 06:02:47 ID:eAk0kcvs0
支援ありがとうございます。第二回の今回は末っ子イーブイとラグラージが主役のお話をお送りしました。

イーブイは元気いっぱいの純粋幼女。ラグラージは、口数は少く、見た目も怖いけど心はとても温かい巨漢。というイメージがすぐに固まったのでこの2匹はすんなりと動き出してくれました。

ジュカインとシャワーズと違い、まだお兄ちゃんと妹のような思いしか抱いていないこの2匹ですが、これから先イーブイの思春期や、その心境の変化などをうまく表現できたらいいなと思っています。でもこのままの関係もいいなと思っているんですけどね(笑)

次の更新も、書き溜めてあるので近々投下します。次の主役は、真っ黒な体がかわいいあのブイズと、ホウエン御三家最後の1匹のあいつが主役です。どうか楽しんでいただけるように頑張りますので、また次回見て行って下さい。では、また。

24名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:38:55 ID:bCoGvqyo0
 報復を終えた俺は、うっそうと気が茂る、暗い森の中に入っていた。この場所は怖い。いや、正確にはこの森にすむポケモンたち、ゴーストタイプのポケモンたちが恐ろしいのだ。

 そのゴーストタイプのポケモンたちは今、一か所に集まり怪しげな動きをしている。何かまずい・・・そう思った俺はこっそりと話している内容を聞いてみたすると・・・

 「よー○ーかーいのせいなのね、そうなのね!」

 「ウォッチ!今何じ・・・」「やめろコラアアアアアアアア!!!!」これはやばい、やば過ぎる!

 「お前ら何やっとんのじゃボケェ!商売敵のパクリをやってんじゃねえぞコラァ!」

 「お、ブーちゃんじゃん、おひさー!」「話聞けこのスットコドッコイ共!」

 そう、ここに住みつくゴーストタイプ、異様にノリが軽い。結果こんなふざけた行動を簡単にとるのだ!これが公式のものだったらとんでもない事態に発展するだろう。いやぁ、危ないところだった。

25名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:39:42 ID:bCoGvqyo0
「あ、ブーちゃんもしかして、シスター探しに来た系?」

 「だったらいつも通りドデカい木の下にいるよ。」

 「サンキュ、もう今の曲は流すなよ。」「ほーい!」

 こいつらの相手はつかれる、さっさと妹と合流しよう、ていうかあいつ良くこんな所にほとんど毎日来るよなぁ。

 探していた妹はゴーストポケモンが言っていた通り、目印となる大きな木の下にいた。その黒い体を隠すことなく近くの切り株の上にちょこんと座り、考え方でもしているのだろうか?目を閉じている。

 「おーい、ブラッキー!何してんだ?」俺の声に気が付いたブラッキーはこちらを見て、その質問に答えた。

 「おお、わが兄よ。我はこの地から溢れる気の流れを感じながら、悠久の時のなかにこの身を任せていたところである!」

 「・・・満面の笑みで答えてくれてありがとう、できたら俺にわかるように答えてくれてたらもっと嬉しかったんだけどな。」

 一体いつからこいつはこんな喋り方になったのであろうか?いや、話し方というよりかは行動全般、なんだか気取ったような、それでいて不思議なような、へんてこりんなことをやり始めていた。この行動がかわいいとか、見守りたいとかで人気が出たのはいいことなんだろうか・・・?

26名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:40:43 ID:bCoGvqyo0
「何?黄昏てたってことでOK?」 「否!我にそのようなことをしている時間はない!」

 わけがわからないよ・・・、いったいこいつはここで何をしてるんだよ!誰か教えろよ!

 「あー、ブースター。そいつはこのわかりやすい目印がある場所で俺を待ってた。って解釈でいいと思うぜ。」

 突然俺の後ろからかけられた声に驚き、俺が振り返るとそこには細い体格ながらも鍛えられた体をした赤いポケモンが経っていた。

 「脅かすなよ、バシャーモ!こんな場所なんだからよ。」 「わりぃ、でもお前が困ってたみたいだからよ。」

 そういうと、バシャーモは悪戯っぽく笑った。こいつは炎ポケモンの熱さ、ノリの良さを持ちながら、冷静な思考も面倒見の良さも持ち、この庭園のポケモン全員から「兄貴にしたいポケモンNO1!」の称号を持つ、いわば少し悪っぽいお兄さん、というよな性格をしている。まぁ、見た目がやや怖いが、ラグラージと同じ話すと評価が変わるポケモンである。

 ついでに言うと俺が知る限りでは唯一、ブラッキーの話を完全に理解できるポケモンである。

27名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:41:21 ID:bCoGvqyo0
「遅いぞ、我が眷属。いかなる理由でも我を待たせようとは、罪は重いぞ!」

 ぷくっと可愛くほっぺを膨らませながら言うセリフか?妹よ。

 「わりぃな。ここ来るまでにいろんな奴に話しかけられててな。挨拶してたら遅くなっちまった。」

 バシャーモ、お前なんで毎回迷いなくブラッキーに返答できるんだ?

 「あと、ゴーストポケモンたちがここ来るまでにゲラゲラボーだか何だか言ってたから、それ止めるのに時間かかっちまった。」

 あいつらまだやってたのかよ!馬鹿かよ!怖いもの知らずか!

 ああもう、さっきから突込みしかしてないせいか頭が混乱してきた。過去を思い出して、なんでバシャーモがブラッキー語を理解できるのか考えてみよう。

28名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:42:42 ID:bCoGvqyo0
 こいつらが仲良くなったのは、そう、いつだったかブラッキーが慌てて俺たちのところに来ていつもどうりのブラッキー語で俺たちに何かを伝えようとしていた日のことだった。

 「高き場所を目指した、力なきものが今その罪を神に裁かれようとしている!我ではその者の所まで手が届かない!この危機を救いし者には我の眷属となる名誉を与えよう!誰か!我こそはという勇気か無謀さを持つ者はおらんや?」

 ・・・うん、今思い出しても訳が分からない。俺を含めその場にいたの全員そんな感じだった。そんな俺たちを見たブラッキーはさらに慌てながらも言葉を続けたが、やっぱり意味が解らない。みんな揃って頭を抱えたその時、

 「おい、そいつどこにいる?急いで案内しろ!」バシャーモがそう叫ぶと、ブラッキーを抱えて走り出した。

 俺たちは呆然とその後ろ姿を見送ることしかできなかったが、しばらくしたのち、追った方がいいのか?という事を議論し始めた。

 まぁ結果が出る前に2匹は・・・いや、3匹になって帰って来たのだが。

 バシャーモから聞いた話によると、どうやらまだ子供のエイパムが森の大きな木に登って遊んでいたらしい。だが上ったはいいが、いざ降りる段階であまりの高さに足がすくみ降りれなくなってしまったようだった。

 それに気が付いたブラッキーは何とかエイパムを助けようとしたが、ジャンプ力も身長も届かず、お手上げ状態だった。そこで俺たちに助けを呼びに来た、というのが事の真相らしい。

 「お前、よくブラッキーが言おうとしてたことがわかったな。」

 「なんてことねえよ、ちょっとしたコツだ。」

 「コツ?なんだよ、それ?」 バシャーモに質問をするが、その答えが返ってくる前にブラッキーの声が聞こえてきた。

 俺たちは話を中断し、ブラッキーに向き直った。

29名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:43:28 ID:bCoGvqyo0
 我が意をくみ、迷いしものを導く使いとなった赤き賢者よ、褒美として我が眷属の一員となる栄誉を与えよう!誇りに思うがいい!」

 だめだ、さっぱりわからん。これにはさすがのバシャーモもお手上げだろう。そう思い横のバシャーモを見ると・・・

 「構わねえが、それよりまずお前に言わなきゃなんねぇことがある。」 通じてんのかよ!

 「我に意見か?面白い、申してみよ。」

 「さっきのお前の行動、危機を迎えてる仲間を見つけて自分ができることをやったうえで、ほかの奴に助けを求めに行く。ここまでは完璧と言っていいだろう。最初から他人に頼ることもせず、自分の力が足りないと見たらすぐに助力を頼む。下手なプライドを持った奴はこれができねぇ、無論甘えた根性してるやつもな。それを普通にやったんだ、お前、胸張っていいぜ。」

 その言葉を聞いたブラッキーは、ふふんと上機嫌そうに鼻を鳴らした。褒められて嬉しかったんだろう、そんな誇らしげな顔のブラッキーにバシャーモは、ただし、と付け加えながら話を続けた。

 「その後の行動、ありゃてんでダメだ。話になんねぇ。事実俺が居なきゃ今でもお前は手足バタバタさせながら同じことを言い続けてたろうぜ。」

 仰る通りだ、バシャーモ。俺たち何が何だかわかりゃしなかった。バシャーモが居なければエイパムもどうなっていたか解らない。

 その言葉を受けたブラッキーは、てっきりいつもの通りのブラッキー語で「何を言うか!」位のことを言うと思ったのだが、意外にもシュンとした表情で落ち込んでいた。

 なにこの子、表情がすぐ変わる。わが妹ながらカワイイ。

30名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:44:12 ID:bCoGvqyo0

 「そうだぜブラッキー、いつも皆が分かるように普通の言葉で喋ろうな!」

 俺のこの意見に周りのポケモンたちも概ね同意したようで、しきりに頷き合っていた。

 「ブラッキーだけにわかっても意味ないしなぁ・・・」

 「大体なんであんなよくわかんない言葉使ってんだよ。」 

 「普通に喋ればいいじゃん。」 だがまずい、議論は盛り上がり、皆にその気はなくともブラッキーを責めるような口調になってきている。

 「バシャーモもさぁ、ビシッと言ってやれよ!そんな喋り方辞めろってさ!」

 誰かが何の気なしに言ったこの言葉で、ブラッキーの我慢は限界に来たようだ。それもマイナスの方向で。

 「皆・・・我の事を否定するのか・・・?認めぬというのか・・・?」

 静かに呟かれた声に反応して皆がブラッキーを見てみると、そこには今にも泣きそうになっているブラッキーが小さく震えながら俯いていた。

 ここにきて皆事態の不味さを悟ったのか、だんまりを決め込み辺りは気まずい雰囲気に支配されてしまった。

31名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:44:58 ID:bCoGvqyo0
 このままではいけないのはわかっている。だが不用意な一言でこの限界ギリギリの状況をぶち壊してはブラッキーが何をするか・・・

 そんな恐怖に誰もが動けないでいたとき、膠着を解いたのは、バシャーモの意外な一言だった。

 「いや、俺は別にそのままの喋り方でいいと思うぜ?」

 全員が驚き顔をあげバシャーモを見た。もちろんブラッキーもだ。皆が自分を見ていることを確認したバシャーモは、話を続けた。

 「今までずっとその喋り方なんだろ?理由はわかんねえがその根性は大したもんだ。そこまでやり続けるにはなんかしら譲れないもんがあるんだろうよ、だったらそれを貫けばいい。それに関しちゃ俺は何にもいわねぇぜ。

 「だが先ほどそなたは・・・」

 「ああ、ただしの一言が入るぜ」

 「何をいわんや?」 

 「ただし、自分が本当に伝えたいことがあんなら、心の奥底から伝えろ。言葉じゃなく、心で伝えるんだ。それで届かなかったらしょうがない、普通に喋るか、諦めるか、判断はお前に任せるさ。」

 そう言ったバシャーモはブラッキーの胸に握り拳を置くと

 「旅をしてりゃな、話す言葉がバラバラで、伝えたいことがうまく伝わらないことがよくある。そんなときはな、なんだっていいからわかってもらえるように全力でぶつかるんだ、俺と、俺の相棒はな。」

 「言葉が別れ、伝わらなくともか?」

 「ああ、だってそうだろ?言葉はバラバラでも、心は誰にだってある。俺にも、お前にも、ここにいる誰にだってな。本当の会話ってのは言葉なんかいらねぇ、どれだけ心をぶつけて、さらけ出して、ここにぶつけられるかだ!それができたら、お前がどんな言葉を使おうと、心で会話できるはずだぜ?」

32名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:46:36 ID:bCoGvqyo0
 「心で・・・伝える・・・」

 「あとてめーらにも言わなきゃなんねぇことがある!」

 そう言ってこっちを向いたバシャーモはやや怒気をはらんでいた。

 「言葉がわかんねぇ、伝えたいことが理解できねぇ。ってのはある意味仕方がねぇ。誰だって最初は混乱するだろうよ、俺が許せないのはその後だ。わかんない、理解できないからって、そのままで、理解しようとも努力もしないってのはどういう事だ?ああ?」

 完全に怒っている。ヤバい、怖い。

 「理解しようともしないでそのままにしてたらよぉ、こいつが伝えたい事一生わかんないままじゃねぇか!こいつの事どうだっていいって思ってるって事じゃねぇか!そんなのよ、可哀相すぎんじゃねぇか、なに喋ってもわかんないからって無視されたら、お前らどんな気分だ!答えてみやがれ!」

 「そんなの、普通に喋らないブラッキーが悪いんじゃないか。」そんな言葉が、集団の中からぼそりと聞こえた。誰が言ったかはわからない。だが、小さくともブラッキーを傷つけるには十分な言葉だった。

 「今言った奴、その言葉をこいつに直接伝えたか?」誰も答えなかった。

 「何もいわねぇ、誰かの馬尻にのらねぇと意見も言えない、挙句の果てに自分は一切悪くないってか?良い性格してやがるよ、本当に。当ててやろうか?お前、心から信頼できる友達いないだろ?」

 バシャーモはさっきよりかは冷静に、だが格段に怒りを込めた口調で言った。

 「上辺だけの何も言おうとしねぇ嘘つき野郎より、たとえ何言ってるかわからなくとも、自分の全部をさらけ出してこれが自分だ!って正直に生きてるこいつの方が俺は好きだね。」

 そう言って、この場を離れようとするバシャーモだったが、ブラッキーが自分の足をつかんで動きを止めたため屈みこみ、ブラッキーに視線を合わせた。

33名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:47:14 ID:bCoGvqyo0
 「なんだよ、ブラッキー。話なら後でも・・・」

 「今じゃなきゃダメ!」
 
 ブラッキーのあまりの剣幕に、バシャーモが少し押され気味になり、勢いに飲まれたところで、ブラッキーは話し始めた。

 「さっきはありがとう、色々お世話になりっぱなしだし、迷惑もかけちゃったけど、もし良ければ、その、私と、と、と、友達になってください!」

 顔を真っ赤にしてそう言い切ったブラッキーはしばし顔を俯かせバシャーモの反応を待ち、何も言わないので心配そうに顔を上げると・・・

 「良いに決まってんだろ!ヨロシクな!」打って変わって満面の笑みのバシャーモがいた。

 その時、ブラッキーの正面にいたバシャーモは、俺たちも見たことがない、普通の状態とでもいうべきブラッキーの笑顔を見たそうだ。その感想を本人に聞いてみると

 「悪くはない、ってか最高の部類に入るな、あれは。」という言葉が帰って来た。

 そういう若干うらやましい体験と修羅場を経て、友達同士となった2匹は、今日もこうして助けたエイパムが上っていたこの木の下で待ち合わせをして、楽しく過ごしてるというわけだ。

 なお、この出来事以降、ブラッキー語の研究は進められ、ある程度伝えたいことがわかるようにはなったと報告しておこう。

34名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:47:49 ID:bCoGvqyo0
 「目と目を合わせて話してみりゃ、言いたい事なんて大体わかると思うがな、おれは。」

 「本当かよ、お前らが特殊なだけだろ。」

 「ならやってやろうか?おいブラッキー、見せてやろうぜ!」

 そう言って向かい合った2匹だが、なぜか目が合わせられない。というより、ブラッキーが視線を逸らすせいだが。

 「おい、何やってんだよ。真面目にやれって。」

 「・・・・・る」その時ブラッキーが何かを呟いた。

 「あ、なんだよ?」 「か・・・・てど・・・る」「なんだって?」

 俺とバシャーモがその言葉を聞くために耳をすませてみれば・・・
 
 やや顔を赤らめ、恥じらいと、嬉しさが入り混じったような、そんな表情のブラッキーが

 「顔が近くって、どきどきする・・・///」と乙女度1000%の台詞を聞かせてくれました。

35名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 03:48:24 ID:bCoGvqyo0

 「なぁ、バシャーモ。お前こいつのこういうとこ見て、グッと来たりすんの?」

 「正直、5,6回くらい押し倒したくなった時がある。」

 「手だしてないだろうな?」 「ダチに手は出さねぇよ。」

 なんというか、友達以上、恋人未満を顕著に表した2匹だ。バシャーモがブラッキーを押し倒さないか不安だが、そろそろ行かなくては。

 「んじゃ、俺はいくわ。」

 「わが兄よ、もう行くのか。なんぞ譲れぬものの為に、修羅の道を行くか?」

 「もうちょいゆっくりしてきゃいいのに。だってよ」

 通訳ありがとう。だがそろそろ行かなくては、なにせからかいがいのある奴らはまだまだいるのだ。全員に会うためにもこれ以上はここに入れない。

 ブラッキー、お前の心をしっかりと受け止めてくれるそいつと仲良くな。心の中でそう呟くと俺は森の出口へと歩き出した。

36名無しのデデンネ:2015/04/18(土) 04:05:33 ID:bCoGvqyo0
第3回、中二なブラッキーと、まっすぐな燃える兄貴ことバシャーモを主役としてお送りしました。

お前ホウエン御三家優遇しぎじゃないか?と思われても仕方がないキャラ選、これは最近オメガルビーをやってたせいでこの御三家を見る機会が増えたためだと思われます。

すごくはっきりしていて動かしやすいキャラにしたので違和感があるかもしれませんが、ご容赦ください。

とりあえずこの二匹のイメージとしてはバシャーモは「まっすぐな不良」というイメージです。なんか「こぶしで語り合おうぜ!」って言葉が一番似合う御三家だと思います。

ブラッキーは当初、暗くてふひひひ言ってる、今とは違うキャラ設定だったのですが、それだとシャワーズと被ってしまう点が多々出たため、今のキャラに変更しました。結果、中二状態とテンパった時に出る通常状態の2パターンをかわいく書き切れれば、とてもキャラが立つと思いましたのでこれもよかったと思いたいです。これでもシャワーズとの被りややあるんですけどね。

3日間続けての投稿でキャラを早く出したいという気持ちがありますが、しっかり推敲し、書き溜めてある分とこれから作る分、より面白くなるように努力していこうと思います。

次回登場予定のポケモンは、ブイズはXYから登場した新入りのあのポケモン、御三家は、個人的には御三家一器用なんじゃないかと思っている、元バトレボの帝王です。

ご意見、ご感想、なにかありましたらどうぞ書き込んでください、皆さんからの1レスを参考、励みにして頑張っていこうと思います。それではまた、次回の更新でお会いしましょう!

37名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:16:14 ID:hvlsWflE0
「キャー!カワイイーー!!!」

 「こっちむいてー!」

 「うおー!俺と結婚してくれー!!!」

 森から出た俺はすぐそばでポケモンたちが大騒ぎしている声を聴きつけた。

 どうやら、俺は運がいい、この集団がいるという事は、中心にいるのはあいつのはずだ。

 ひょいひょいと人ごみをかき分け中心を見れるポイントにたどり着くと、俺は草原の真ん中、まるで何かのステージのようにややせりあがったその場所を覗き込み、予想どうりのポケモンがそこにいることを確認した。

 そこにいたのは桃色の肌、きらりと光る瞳、やや小さく子供のような体躯をしているが、ステージの上で様々な技をくりだし、鮮やかなテクニックで集まったポケモンを魅了する。我がブイズの七女「ニンフィア」の姿だった。

38名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:16:54 ID:hvlsWflE0
 「みんなー!今日もあたしのライブに来てくれてアリガトウ!たのしんでくれたかな?」

 「もちろんだぜ!」「サイコーだったよ!」「今日も可愛い、可愛すぎる!」

 「ふふ、そう言ってくれるのファンの皆があたしの1番の宝物だよ!」

 「うお〜!ニンフィアちゃーん!!!!!」

 ニンフィアについて説明すると、やつはパートナーであるトレーナーと共にポケモンコンテストに参加し、数々の賞を受賞している。

 そのための努力の一環としてこの庭園でライブを行い、その技術と可愛らしい見た目で数多くのファンを獲得。一躍我がブイズ一の人気者になったというわけだ。

 まぁニンフィアについはこれ以上語るのはよそう。このあと詳しくわかるだろうから。

 ライブが終わり、裏へ引っ込んだニンフィアを追って、俺は中心へと駆け出した。

 ステージ裏の小さな木陰、ちょうど控室のようになっているその場所へ俺は向かった。ガードマン代わりのローブシンに挨拶をすれば、基本顔パスの俺はすんなり通ることができた。

 「ようニンフィア!今日のライブも大成功だったな・・・」

 草をかき分けニンフィアがいる控室に入り、そう声をかけた俺にむかって、ごみ箱のような、なんだか臭くて硬いものが飛んできた。

 「へぶっっ!」直撃!臭いし、痛い・・・なんだこれは?

39名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:17:41 ID:hvlsWflE0
 「てめー!何よけてんだ!」
 
 「何でトップアイドルのあたしがわざわざダストシュートなんて喰らわなきゃならないのよ?普通よけるでしょ?」

 「避けんな!当たれ!」 「だが断る!」

 そんな会話の後、さらに飛んできたダストシュートの直撃を2,3回受けた後、さすがに怒った俺は大声で怒鳴った。

 「ニンフィア、ゴウカザル!いい加減にしろ!おれに当たりまくってんだよ!」

 「「あ、居たんだ、お兄ちゃん(ブースター)」」 存在すら気が付きませんでしたか!泣くぞおい!

「お前らなぁ!人にごみ箱ぶつけまくっといてそれはないだろ!いちゃこきやがって、周りの迷惑を考えろ!」

 「聞いてくれよブースター!こいつ俺にマトマの実のジュース飲ませたんだぜ!地獄見たわ!」

 「騙されるあんたが悪いのよ、良い反応だったわよ!」

 「てめぇ!ごみ箱喰らいやがれ、この性悪猫かぶり女!」

 「あははは、単純おバカ低火力猿がなんか言ってるー(笑)」

 「低火力かどうか、これ喰らってから判断しやがれ!」

 「お前ら俺の話を聞けえぇぇぇ!」

 俺の話を無視して、こいつらはまたケンカを始めた。というよりゴウカザルが遊ばれてるだけだが。

 この2匹はいつもこうだ。幼馴染という関係の2匹は、ニンフィアの悪戯にゴウカザルがひっかかりケンカになり、俺が被害を被る・・・うん、慣れた。

40名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:18:55 ID:hvlsWflE0
 だがニンフィアのこういった面を知っているのは俺たち兄妹以外はそうはいない、というよりかは俺たちとゴウカザル、それとゴウカザルが愚痴っているため知っているジュカインを始めとするトレーナーのポケモンたちだけである、

ステージの上で見せるニンフィアの姿が嘘だというわけではない。ファンを大事にし、感謝することはニンフィアがなにより重要視していることだ。

 だがその上で

 「大事にしながら、利用すればいいじゃない。ポケモンだもの。」

 と、どこかで聞いたような言い方で黒いことを言う奴。それがニンフィアだ。まぁ利用されていると言われるファンたちもそんなことは露にも思わず、嬉しそうであるためwin-winの状況なのだろう。多分

 一方のゴウカザルは単純な奴だ。馬鹿正直ともいえるだろう。

 この単純さがニンフィアの玩具にちょうどいいのだろう、思えば昔からそうだった。

41名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:20:33 ID:hvlsWflE0
 お互い進化前の時も・・・

 「ねぇ、ヒコザル。おいしい木の実をあげるわ。食べてみて。」つマトマの実

 「サンキュー!いっただっきまーす・・・!ゲホッ、ゴホッ、か、辛い!」クチカラホノオボー

 「まぁヒコザル。もうかえんほうしゃが使えるの!すごいじゃない!」

 「てめぇ!覚えてろ!」

 モウカザルに進化した時も・・・

 「はっはっは、進化して格闘技が使えるようになったぜ!これでお前の弱点を突けるぜ!」

 「ふええ、モウカザルがいじめるよぅ。グスン」

 「え?」

 「俺たちのアイドルをいじめるのはお前かー!!!」ファンシュウケツ!

 「え?え?ちょ、ちょっと待って!」

 「問答無用!」ボコスカガスガスゲシゲシオラオラムダムダアリアリドラァ!!!

 「ヤッターバァァ!!!」ごみ箱にがしゃーん!

 「2度とふざけた真似をするなよ!」ファンタイサン

 「あれれー?どうしたのモウカザル?痛そうだねぇ?」ニヤリ

 「お、覚えてろよ・・・」ガクッ

42名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:21:01 ID:hvlsWflE0
 そしてお互いが最終進化した後も・・・

 「何やってんだよ?ニンフィア」

 「発声練習よ、ちょうどいいわ、あたしの声がちゃんと出てるかチェックしてみて。」

 「OK!」

 「あー、あー、あー・・・喰らえーーーー!」ハイパーボイス!!!

 「ギャーーー!」こうかはばつぐんだ!

 「あっ、ごめーん、うっかりしちゃった」テヘペロ

 「テメエ・・・わざとだな・・・」

 「ソンナコトナイヨー」

 「覚え・・・てろよ・・・」

 「そればっかりだね、あんた(笑)」

 ・・・ゴウカザルが不憫に思えてきた。

 そんなこんなでこの関係のままやってきた2匹は、今日も変わらず楽しく過ごしているというわけだ。

43名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:21:55 ID:hvlsWflE0
・・・だが、本当はお互いが相手のことを大事に思っていることを知っているからこういった関係性でいられるのだろう。

 ニンフィアが本当の自分をさらけ出せる相手というのは、兄弟を除けばゴウカザルだけだ。それはゴウカザルに対して信頼を置いている証拠だろう。

 ゴウカザルもそれがわかっているからこそ毎回ニンフィアの所に顔を出すのであろう。ニンフィアの悪戯も強がっているあいつが自分に甘えたくてやっている事だと理解している。

 まぁ、こういったケンカもするが仲がいいコンビだ。そういえば前にこんなことがあった。

 ニンフィアがとある町のコンテストに出場することになったときの話だ。大きな大会であったためかその時は俺たち兄妹のマスターだけでなく、ゴウカザルのトレーナーたちも応援に駆け付けてくれた。

 審査の前のポケモンの顔見せの際、数々のポケモンがドレスアップ前の姿を観客や審査員に見せる中、ひときわ大きな歓声があげられたポケモンの1体にニンフィアがいた。

 可愛らしい容姿をしていて、この地方では珍しいブイズの1匹、何より全身から出るオーラというものがあるのだろう、ニンフィアが姿を現した時会場が大きく揺れたことを覚えている。

 一流は一流を知る、という言葉がある。この顔見せの際ニンフィアとそのマスターが挙げたコンテストのライバルとなりそうな相手は有名どころから無名な選手まで数名居たが、その全員がこの大会で何らかの賞を獲得することになる。

 その面々とは今でもライバルとして、または親友として交流を持っているものが多く、時々この屋敷にも遊びに来る。初めて顔を見せあった瞬間から相手の実力が、努力してきたことがわかる。それも一流の条件の一つなのだろう

 しかしながら、ニンフィア達を見たときにこんなことを思うトレーナーがいることも確かだ

 「金持ちだからこそこんなにいいポケモンがいるのだ」と・・・

44名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:22:52 ID:hvlsWflE0
 一応ニンフィアのトレーナーの為に反論しておくと、コンテストに関係することでは親から一切の援助を受け取らず、自分で働き、稼いだお金で必要な道具を集め、勉強しここまでのぼりつめたのだ。親父さんたちが協力していることといえば移動の為に車を出してあげている事ぐらいだろう。

 それでもそんなことは知らないトレーナーの中には「アクセサリーも、ポケモンもすべて金で集めたものだろう」と、考える輩がいる。それだけならまだしも今までの成績も金で買ったものだと考える最低な奴らだっている。

 まぁ、だいたいそう言った奴らは三流のパフォーマーで結果が対して残せてないいという事が共通している。つまりは妬み、嫉妬が原因のつまらないやっかみという事だ。

 だがこの大会のときの奴らには最低以下のクズがいた。「金持ちの甘ちゃんに世間の厳しさを教えてやる」という下らない言い訳と共にさまざまな妨害をしてきたのだ。

 奴はまずニンフィアのトレーナーの持ってきた衣装やアクセサリーなどを壊し、コンテストで使用できないようにした。

 元々用意していたものの中で予備があるものもあったが、それ以外のものはどうしようかと困っていたニンフィアのトレーナーだったが、俺たちのマスターたち、つまり彼女の姉妹たちと親父さんお袋さんが町を駆け回り、同じものを集めてくれた。それでも手に入らなかったものはライバルたちが貸してくれたりもした。

 おかげで同じものがすべて揃い、100%の状況でコンテストに挑むことができるようになったが、妨害を仕掛けてきたトレーナーには、「金持ちの力を使ってどうにかした」と映ったようだ、さらに怒りを煽る結果になってしまった。

45名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:23:49 ID:hvlsWflE0
なんとかして妨害を仕掛けようとするクズだったが、事件以降応援に来た皆が心配して周りの警護に当たることになった。ニンフィアのトレーナーも油断せずに行動するため隙がない。どういもいかなくなったクズだが、それならばと彼女ではなくニンフィアをどうにかすればいいとクズらしい発想に至ったらしい。

 数日あるコンテストの日程の中でポケモンとトレーナーが離れなければならない時が何回かある。その隙を狙って行動を起こすことにした奴は、金でトレーナーを雇いニンフィアを襲うように指示を出した。

 「一生残る傷ができても構わない」というようなことも言っていたらしい、さらには雇ったトレーナーのポケモンがニンフィアに発情していつと聞くと、「なら奴で発散させてやれば良いじゃない」とも言っていたようだ。

 もちろん警備もあったが、内部から手引きするクズの援護もあったためそのトレーナーたちの侵入を許してしまった。

 何も知らないニンフィアにクズトレーナー達のポケモンの手が迫ったとき、その前に立ちはだかったのは他でもないゴウカザルだった。

 たった1匹でそのポケモン達を倒し、恐れおののくそいつらにむかってゴウカザルは、

 「あいつに手出すってんならもう一度だけ相手するぜ。3回目はねぇ、お前たちの命がな」という脅しをいれ、逆に一生モノのトラウマをくれてやったようだ。その後、異変に気が付いた警備員によってトレーナーは捕まえられ、黒幕であるクズも逮捕された。

46名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:24:41 ID:hvlsWflE0
ニンフィアが全てを知ったのはコンテストの後、手に入れた大きなトロフィーを家に飾り満足げな表情をしていた時だった。

 警察からの事情聴取で事件の詳しい説明をしていた際、ゴウカザルがポケモンたちを倒していた、という警備員の証言に対して心当たりがないか?という質問があり、慌ててゴウカザルのトレーナーに確認してみるとその時ゴウカザルはモンスターボールの中に入れておらず、離していたという証言があり、そこで初めて事実が発覚したのだ。

 なんで言ってくれなかったのかという質問に対してゴウカザルは

 「別に言うほどの事じゃないと思ったから」という答えを聞かせてくれた

 「あいつのためじゃないぜ、悪いやつは倒すのが普通だろ?・・・おいなにニヤついてんだ。本当だからな!別にあいつは関係ないからな!」

 ちなみにこれは嘘だ。バシャーモが教えてくれたが、ニンフィアとトレーナーが離れる際にはゴウカザルがニンフィアをこっそり見守っていたようだ。つまり、ゴウカザルはニンフィアを守るために行動していたのだ。これはニヤついても仕方ないだろ?あのラグラージでさえこっそり笑っていたのだし仕方がない。俺は無罪だ。

47名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:25:31 ID:hvlsWflE0
 その後やってきたゴウカザルに対してニンフィアは・・・

 「一応お礼は言っとくわよ」

 「礼の言葉なんていいから、行動で表してくれよ」

 「何?抱き着いてじゃれついて欲しいの?仕方ないなぁ・・・」

 「はっ!お前みたいな貧乳残念体系に抱き着かれても嬉しくないな!」

 「ほーう(怒)」ピキッ

 「ミルタンクほどとはいわねぇが、せめてブラッキーくらいの普通チョイ上位になってから抱き着いて来いよな!」

 「へえぇ、ふーん、ほーお(激怒)」ピキピキ

 「まぁ、無いものねだりしても仕方ないけどな!はっはっはっはっは!あれ俺うまくね!貧乳と無いものって、ははははは!」

 「・・・まぁそう言わずに受け取りなさいよ。」

 「ははははは、ああ、いいって別に気にすんなよ。ははははははは!」

 「気持ちって事でね、受け取りなさい」

 「まぁ、お前がそこまで言うなら・・・あれお前顔が怖」

 「ありがとう、これがあたしの気持ちよ・・・死ね糞猿!!!」ニンフィアのじゃれつく!

 「ぎゃああああああああああああ!」効果は抜群だ!ゴウカザルはたおれた!
 
 「ふん!人が気にしてることを言うからこうなる!」

 これはゴウカザルが悪いな、うん。何が言いたかったかというといつもどうりだったという事だ。

48名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:26:21 ID:hvlsWflE0

 「はぁ、はぁ、避けんなって言ってんだろうが!この貧乳!」

 「死ね!あたしはロリ体系だ!」ハイパーボイス!

 「うぎゃああああああ!」効果は抜群だ!

 「俺もかよおおおおお!」ブースターの急所に当たった。

 今、目の前でも同じ光景が繰り返されている。この2匹の日常は一生変わらないのかもしれないな

 「お前、俺の弱点つけるのはずるいよなぁ・・・」

 むくっと起き上がったゴウカザルはそう言った。丈夫になったなお前。

 「何言ってんのよ、あんたもあたしの弱点持ってるじゃない。」

 「ダストシュートか?あれタイプ一致じゃねぇしなぁ」

 「そうじゃなくって・・・」

 そういうとニンフィアはゴウカザルに近づくと

 「惚れた弱みってやつよ」

 その頬にキスをした。

49名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:26:55 ID:hvlsWflE0
 「お、おまえ・・・」

 「やめてよ、これでも恥ずかしいんだから。」

 やべぇ、これってスキャンダルってやつじゃないのか?俺がここにいること忘れてるんだったら、これまずいんじゃないのか?兄とし

て妹の恋を応援したいが、ファンが黙っていないんじゃ・・・?

 俺が一人でテンパっているとゴウカザルが口を開いた。

 「ニンフィア、おまえ・・・」

 「何?ゴウカザル」 ホント、何を言うんだゴウカザル!

 「俺にドレインキッス打ちやがったな!」・・・へ?

 「あ、やっぱりばれた?」

 「ばれるに決まってんだろ!いてえんだよ、地味にな!」

 「だってライブ後で疲れてたんだもん、ゴメンね」テヘペロ!

 「ふざけんなあああああ!」ダストシュート!

 「いやん、危なーい!」

 「避けんな、当たれ!」

 「やーよ、当たると痛いし、臭いもの」

50名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:27:45 ID:hvlsWflE0
・・・・・なんかどっと疲れた。この2匹に関わるといつもこうだな。でも、ニンフィアの奴、楽しそうだな。まったく、こっちの苦労を知りやがれ!

 これ以上被害を受ける前に退散しよう、俺は控室から出ると別の場所に歩き出した。さぁ、次は誰に会いに行こうかな。

51名無しのデデンネ:2015/04/20(月) 08:41:39 ID:hvlsWflE0
第四回を投稿しました。いかがだったでしょうか?皆さんに楽しんでいただけたら幸いです。今までの中で一番恋愛っぽく書けたかなぁということと、やや会話多めの書き方にしてみました変じゃないといいのですが。

この2匹はイメージとして、可愛い彼女に振り回される彼氏という感じで書いてみました。やや黒いニンフィアはどうだったでしょうか?受け入れられない方もいらっしゃるとは思いますが、キャラとしてかわいくてあざとい部分を利用する本当にかわいい女の子として確立できたと思いたいです。

ゴウカザルはこのままだとニンフィアにいじられるだけのキャラになってしまうので、ここから先のイベント編でキャラを立てていけたらなと思います。

まだまだ未熟な自分ですが、皆さんに楽しんでもらえたら嬉しいです。これからもどうかお付き合いください。次回は自分の都合上やや間が空いてしまうと思われますが、気長にお待ちいただけるとありがたいです。

 さて、次に登場するブイズは、通称甘壁ポケモンのあの子!そして御三家はジョウト出身のその子に相性上不利なポケモンを出す予定です。誰の事だかわかりますかね?わかったらお答えください!

正解者に中から一名様に・・・何か考えておきます(笑)それではまたお会いしましょう。では!

52名無しのデデンネ:2015/04/21(火) 19:37:37 ID:DEPTfstE0
乙〜

微笑ましくていいな。

53名無しのデデンネ:2015/04/21(火) 23:54:41 ID:h5kVgb520
 ニンフィア達と別れ一人でぶらついた俺だったが、残念ながらほかの妹たちになかなか会えずいまだに一人でさまよい続けていた。

 「はぁ、あいつら今どこでいちゃついてやがんだ?」

 ついつい独り言を口に出してしまうほど俺はイラついていたようだ。最も、妹の恋路をからかいに行こうとするお前が悪いと言われればそれまでだが。

 「あ〜もう、畜生!お前ら!いちゃつくんだったらいちゃつくで、わかりやすい目印でも出しておけ〜!!!」

 歩き疲れた俺は妹たちに対して無茶振りともいえる理不尽な要求を大空に向かって叫んでいた。

 そんなこと誰が喜んでするものか、さすがに疲れて座り込んだ俺は、今日の妹の捜索を諦めようかと思い始めた、そのときだった。

 いきなり晴れていた空が怪しく光ったかと思うと、轟音を立てて大きな雷が地面を目指して何本も降ってきたのだ。

 それはほんの数秒の間の事であったがかなりの衝撃を伴っており、庭園のポケモンは皆無事であるかを確かめ合っていた。

 そして俺はというと・・・その雷の落ちた場所にむかって走り始めていた。

 ちなみに言っておくが、俺は雷の落ちた場所に傷ついたポケモンがいるかもしれない、助けに行こう!などという殊勝な考えを持っていたわけではない。
 むしろ逆だ、雷の落ちた場所にいるのはお目当ての、からかいがいのある奴なのだ。俺は偶然とも、必然とも何とも言えないこの幸運に感謝して歩を進めた。

54名無しのデデンネ:2015/04/21(火) 23:55:16 ID:h5kVgb520
 雷の落ちた辺りにつくと俺は辺りの捜索を始めた。見回ってみたが、雷が落ちたにしては被害が少なく、地面もきれいだ。

 「しっかり手加減してやがったか、あいつは。」

 再び独り言をつぶやくと俺は捜索を再開した。俺の予想じゃこのあたりにいるはずだ・・・

 そんな俺の必死さが神に認められたのか、お目当てのポケモンたちの会話が聞こえてきた。よーく耳を澄ませて聞いてみると・・・

 「だから嫌だと言っているだろうが!私の話を聞いていないのか!それとももう一発雷を食らいたいのか?」

 「話を聞いてはいたし、雷も喰らいたくない!けどこれつけて欲しい!」

 「却下だ!この話は終わりだ!」

 「その意見を却下する!話をつづけるぞ!」

 「ええい、まどろっこしい!喰らえ!電気ショック!」

 「あばばばばばばばばばば!」効果は抜群だ!

 そんな会話が聞こえてきたかと思うとこちらにむかって何やら水色の物体が飛んできた。俺はそいつをサッと避けると、元気にニヤつきながら挨拶をした。

55名無しのデデンネ:2015/04/21(火) 23:55:56 ID:h5kVgb520
 「ようオーダイル。相変わらずだなお前らは。」

 「オウ!ブースター。さっそく頼みがある。麻痺直し持ってきてくれ。」

 「嫌だ。」

 「げっっ!その声は兄貴か!」

 「お〜う我が可愛い妹よ。げっっ、とはなんだ?げっっ、とは?」

 俺とオーダイルが話していると、声が聞こえた方向から黄色い体をした、とげとげしいデザインのポケモンが現れた。

 そいつは俺を見つけると、いかにもメンドクサイやつが来た!と言わんばかりの表情を見せて固まった。俺はそんな妹に優しく話しながら、どんなふうにからかってやろうかと思案していた。

 「いや〜、今日はどんなことをお願いされたんだサンダース?」

 「なんでもない!兄貴には関係ないだろ!」

 「あるさ、可愛い妹が何をしていたのか気になってな。」

 慌てて俺を退散させようとするサンダースだがそうはいかない

 「いいから兄貴、早くどっかいけよ!私は忙しいんだ!」

 「オーダイルといちゃつくのにか?」

 「なっっ///ち、違う!そんなやつ関係ない!」

 「いやぁ、じゃあしょうがないなぁ、可愛い妹が彼氏といちゃつくのに邪魔だっていうのなら、兄貴はクールに去ることにしよう。」

 「違うって言ってるだろ!別に一緒にいられたって全然困らないんだからな!」

 そこまで言った後サンダースは「あっっ」という顔をしたがもう遅い、それを見逃す俺ではない。

 「そうか、なら俺は一緒にいることにしよう。なにせ問題は何もないと妹が言ってくれたんだからな。」

 ニコリと笑う俺はきっと今ニンフィアにも負けない黒い笑みを浮かべているだろう、でもこれで言質はとった。あとはチクチクいじってやるだけだ。さて手始めに・・・

56名無しのデデンネ:2015/04/21(火) 23:56:38 ID:h5kVgb520
 「で、さっきは何でオーダイルをブッ飛ばしたんだ?」

 「それがよ、聞いてくれよサンダース。」

 電気ショックと雷を続けざまに受けてもピンピンしているオーダイルが唐突に会話に参加してきた。ホントに丈夫だな、こいつ。

 「俺がよ、ちょっとサンダースにお願いしてこのリボンをつけてもらおうとしたんだけどよ、サンダースったら嫌だ!の一点張りでなぁ、困ってたんだよ。」

 「なんだよ、そんなことで雷までうったのか?おまえ。」

 「ふん!」

 不機嫌そうなサンダースだが何もそこまでする必要はないだろう。少しばかり言っておいてやらないと。

 「あのなサンダース、お前の気持ちはわかるが・・・」

 「いーや、兄貴は何にもわかってない!」

 俺の言葉をさえぎって大声でそう言ったサンダースはやや必死な表情で言葉をつづけた。

57名無しのデデンネ:2015/04/21(火) 23:57:12 ID:h5kVgb520
 「兄貴、私がここでこいつの頼みを聞いたらどうなると思う?」

 「さぁ、つけて終わりじゃないか?」

 「違うね!まずこいつはとりあえず私を誉める。で、とりあえず今日一日つけておいてくれとか言って私をこのままにしておくんだ。」

 「はぁ?で、どうなるんだ?」

 「一日つけるだろう、で皆が私がこのリボンをつけてる私を見て、普段おしゃれなんかしない私が珍しいと思ってみんな気を使って褒めてくれるだろ。」

 「ああ、なるほど。そうやって恥ずかしがるサンダースを見て楽しむってわけか。」

 「違う!厄介なのはその後だ!」

 「その後?」

 「翌日、できる限りポケモンが集まっている場所で私に会ってリボンの返却を求めに来るだろ、でこいつはこう言うんだ」

 「いやぁ、やっぱり似合ってるな。可愛い可愛い。」

 「こんなにかっわいいんだからよ、写真でも撮っておこうぜ!」

 「皆もよ、そう思うだろ?このままはいおしまい。じゃ勿体無いよな。」

 「じゃあ決まりだ、俺のトレーナーの所に行こう!どうせならもっといろんなおしゃれしてもっと可愛く撮ってもらおうぜ!」

 「であれよあれよという間に撮影会が始まり、私の黒歴史がふえていくんだ!」

 「・・・いやにリアリティがあるがもしかして」

 「ああ、サンダースをひっかけた時の一例だ。」

 そういってどうだ!と言わんばかりに胸を張るオーダイル、こいつ・・・策士だな!

58名無しのデデンネ:2015/04/21(火) 23:58:06 ID:h5kVgb520
 「だから毅然とした態度で断らないと、私は写真を撮られる羽目になる!さぁ話を続けるならもっと電気技を食らわせてやるぞ!」

 そう言ってバチバチと電気を身にまとうサンダース、これはまずい、が俺には気になることがあった。そしてそれはこんな風にサンダースをからかう俺が一番心配していることでもあった。

 「なぁ、サンダース。なんで写真が嫌なんだ?」

 「っっ!」

 「やっぱお前、あいつの言葉気にしてんじゃ・・・」

 「うるさい!」

 そう言うとサンダースは体にためていた電気を放電した。辺り一帯が電気でおおわれ、少しづつ焦げ付いていく。そして俺にも、オーダイルにも電気が襲い掛かり。多少のダメージを与えた。

 「なぁ、サンダース。お前は」

 「もう黙ってくれよ、兄貴、オーダイル。私がどんなに頑張っても、可愛くはなれないんだ!そんな私がおしゃれして、写真を撮るなんて、滑稽以外のなにものでもないんだから!」

 そういうとサンダースは鋭い瞳から大粒の涙を流して泣き始めた。気の強いサンダースがこんな風になる理由の心当たりは一つだけある。というか、その一つだけだ。それは少し前、サンダースがもっと男っぽかった頃にあった出来事だった。

59名無しのデデンネ:2015/04/21(火) 23:59:03 ID:h5kVgb520

 その頃のサンダースはさっき言った通りもっと男らしかった。と言っても決してガサツとかそういうわけではなく、単純にブイズの長女として、一緒に遊んでいた男の俺と、その友達の影響を受けて言動が男っぽかったという事だ。

 一人称は俺だったし、男言葉も使っていた、鋭い目と、ややワイルドともとれる行動から、ファンになるポケモンはもっぱら女のポケモンが多かった。そんなサンダースが、生まれて初めて恋をした。

 そのポケモンは、この庭園の奥、あまり俺たちが知らない場所にある森に住んでいた。見た目のカッコよさ、強さ、兄貴と慕う弟分の多さ。その噂は俺たちの耳にも届いていたが、姿を見たことはなかった。

 そんな奴の姿を見たとき、サンダースは恋に落ちた。即ち一目惚れ、という奴だ。

 それからサンダースは変わった、いや、変わろうと努力したっていうのが正しいか。口調を女っぽくし、一人称は私に、そして不慣れなおしゃれにも他のポケモンの助けを借りて挑戦し始めた。そんなサンダースを俺や妹たちは温かく見守り、時に手助けもした。

 と、同時に、あるポケモンの事を心配した。そいつはサンダースに惚れており、アピールを繰り返していた。だが、やや軽薄そうに見えるその様子は、サンダースの目にはよくは映らなかったようだ。なにより恋愛というものに興味を持っていなかったサンダースにとって、その行動は迷惑以外のなんでもなかった。

60名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:00:47 ID:a.89fuRs0
 サンダースが恋をして以降、庭園のポケモン達の噂でこんなものを聞いた。

 「オーダイルの奴はきっとサンダースの邪魔をする。好きだった女を横からかっさらわれて黙っている男なんてそうはいないだろう」

 「オーダイルが色んな場所に行って何かを集めているのを見た、トレーナーのバックから何かを取っているところも、きっとあいつは戦いに備えて道具をそろえているのだろう、恋敵をつぶすつもりだ」

 「もしかしたらオーダイルはサンダースにも危害を加えるかもしれない。」

 そんな噂が相次いで囁かれ、一種の緊張感が庭園に蔓延したころオーダイルがサンダースに会いに来た。

 最悪の事態を恐れ、周りが心配し、ガードに入ったりもした。そんななかオーダイルはいつも通りの口調と、笑顔で

 「これやるよ、お前おしゃれの勉強してんだろ?ご主人がもう使ってない撮影用の小道具もってきたからよ、使ってみな」

 そういって、持ってきたアクセサリーを渡すとさっさと戻っていった。あまりのあっけなさにみんながポカンとしていたのは今でも覚えている。

 だが本当はそうじゃない、ジュカイン達トレーナーのポケモンは黙っていたが、本当は悔しく悲しく、叫びだしたいくらいの思いを我慢して、サンダースの背中を押したのだ。

 「惚れた女のよ、恋を応援できねえんじゃよ、男として失格だし本当にそいつが好きならそんなことできるわけがないよな。」

 そういって、サンダースの応援をすることにしたオーダイルはどんな気持ちだったのだろう?そんな決断が俺にできるだろうか?

 本気で好きだからこそ、そいつが幸せになるためだったらなんでもする。

 たとえ、自分が傷つくことだろうとも。そういう決断をしたオーダイルを俺は心から尊敬する。本当にカッコいいやつだ。

 本当になんでサンダースはオーダイルに惚れなかったのだろう。そうすればあんなに苦しい思いはしなくて済んだのに・・・

61名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:01:44 ID:a.89fuRs0
恋の終わりは、突然やってきた。その日俺たち兄妹は、いつものステージとは違う場所でライブを行うことになったニンフィアの応援のためそろって出かけていた。そしてそこにサンダースが想いを寄せる相手がいたのだ。

 喜んだサンダースはそいつに声をかけようと思い近づいた、だがそこで、聞かなければよかった。と思うような話を聞くことになる。

 そいつは確かに強かった。そして、かっこよかった。慕う弟分もいた。けど、それをもって余りあるほどに




 クソ野郎だったのだ。

 強さとルックスを持ってして完璧と呼ばれ増長したそいつは、横暴で横柄な暴君のような性格をしていた。そんな奴を慕うのは、奴の強さに平伏し、その恩恵で甘い蜜をすすれる、いわば同じ穴のムジナという奴だった。

 最初にそいつの性格に気が付いていれば、あるいは一目惚れなんかしなければ・・・もう起こってしまったことに後悔しても仕方が無い、俺たちが気が付いた時には、サンダースはライブ会場から駆け出し、どこかに行ってしまっていた。

62名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:02:40 ID:a.89fuRs0
 何が起きたのかわからない俺たちは、サンダースと一緒に行動していたシャワーズに話を聞いてみた、そこで耳を疑うような事実を聞くことになる。

 子分と話していたそいつの話を聞いてサンダースは涙ながらに駆け出していったというのだ。その会話の内容を俺たちはその内容をシャワーズから聞き出した。

 最初は渋っていたシャワーズだったが、俺たちの必死の頼みと何よりサンダースが心配だったのだろう、最後にはおずおずと教えてくれた。

 その内容とはこういう内容だったらしい

 「兄貴、どうやら最近あのブイズのサンダースが恋をしたって話ですよ!」

 「ほーう、そうかあのブイズのな・・・」

 「で、ですね兄貴、どうやらその相手ってのが兄貴らしいんですよ!」

 「マジでかよ、さっすが兄貴!あんないい女をものにできるなんてやっぱすげぇ!」

 「・・・うーん」

 「あれ、どうしたんですか?兄貴」

 「いやあよ、寄りにもよってあのサンダースかと思ってよ。」

 「と、言いますと?」

 「だってよ、あいつ可愛げが無いじゃねぇか。目も鋭くって、女らしさがゼロって感じの言動だしな!」

 「ああ確かに、ブイズの中では一番のはずれですかね。」

 「あんなのが着飾ってもたかが知れてるだろ、あーあ、他の奴だったら素直に喜べたんだけどなぁ・・・」

 「でも兄貴、あいつ、良い体してますぜ。抱き心地はいいんじゃないですかい?」

 「そうだな、まぁその辺しかメリット無いわな!せいぜい楽しませてもらうか!わはははははは!」

 「兄貴悪ーい!あはははははは」

 その辺りまで聞いたところで、サンダースは逃げ出したらしい。話を聞いた俺たちは、サンダースを探して辺りを駆けずり回った。

63名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:03:47 ID:a.89fuRs0

 サンダースはもう屋敷に帰っており、部屋から出ず、引きこもって俺たちと話をしようともしなかった。無理もない話だ。最悪の形で恋が破れることになったのだから。

 翌日、俺たちは妹たちにサンダースを任せて、クソ野郎の所に向かった。争うつもりはなかった、平和的に話し合おうとしただけだ、相手の出方にもよるけどな。

 そいつの元にたどり着き、話したことが事実かどうか確かめる。以外にも奴は、すんなりとそのことを認めた。だが、反省は全くなく、それどころか俺にむかって

 「他の妹なら、俺の女にしてやってもいいぜ。1匹とはいわず全員おれに寄越してくれたっていい。なぁお兄様、あの男女はいらねぇからよ、他の可愛い妹たち俺に寄越せよ。」

 と、言ってきやがった。当然こっちの面子は怒り、戦闘準備を始めた。

 ジュカインはリーフブレードを構え、ラグラージは大きなこぶしを握り締めて、バシャーモは軽くステップを踏みながらいつでも動けるように構えを取り、ゴウカザルは膝を曲げいつでも相手に飛び掛かれるようにしていた。

 それ以外の奴らも思い思いに用意をし、今にも決戦が始まる!という時だった。

 「待てよ!」

 大きな声でその動きを止めたのはオーダイルだった。奴はつかつかとクソ野郎の元まで歩み寄るとその目の前で動きを止めた。

64名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:05:12 ID:a.89fuRs0
 2匹の動きをその場の全員が見守る中バシャーモが

 「もしあのクソ野郎を1番最初に殴るならオーダイルだ。何せ一番切れてんのはあいつだろうからな、その権利は十分ある。」

 と、耳うちしてきた。つまり開始の合図はあいつが握っていることになる。それを知ってか、クソ野郎は、

 「よかったなぁ、オーダイル。俺があいつを振ってやったおかげでお前にももう一度チャンスが来たじゃねえか。あんな男女どこがいいか俺にはわかんないが、お前も嬉しいだろ?」

 と、挑発をしてきた。その言葉を聞いたオーダイルは、その手を大きく上に振り上げ、思いっきり振り下ろしたかと思うと・・・

 「あっはははははは!お前意外とバカなんだな!」

 そう、笑いながらクソ野郎の肩をバシバシと叩いていた。

 「・・・どういうつもりだ?ふざけてんのか?」そんな質問に対してオーダイルは

 「いやよ、お前逃がした魚は大きいって言葉しってっか?お前はよ、ホエルオー並みの巨大魚逃がしたんだぜ?惜しいことしたなぁ」

 そんなことを話しながら俺たちを抑え、森から出るように指示すると、

 「いつか気が付く日が来るさ、ああ俺はなんて馬鹿な真似をしちまったんだ、ってな。あんないい女、他探してもそうはいないぜ?」

 そういって、踵を返し俺たちと一緒にその場を後にするオーダイルは、もう一つ思い出したように付け加えた。

 「あとよ、惚れた女が泣いてるのをよ、喜ぶ男がいるわけないだろ、馬鹿なおまえにゃわかんないかも知んないけどよ」

65名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:06:18 ID:a.89fuRs0
 その後、なぜあいつを殴らなかったか聞くと

 「あいつがよ、兄貴や友達が自分の為に怒って、ケンカして、怪我したって聞いたらよ、きっともっと落ち込むと思ってな。本当は俺だって殴りたかったんだぜ。」

 そう、答えた。

 そうして今、失恋のショックから少しだけ立ち直り普通に暮らしているサンダースだが、やはりこの出来事がトラウマとして残ってしまっているようだった。それ以来、おしゃれや恋愛についての話を避けるようになっていたのだった。

 多分、オーダイルはサンダースの心の傷を癒そうとしているのだろう。だから苦手な電気技を食らっても何度でもサンダースに会いに行く。いつか再び、サンダースが恋ができるようになる、その日まで。

 「なぁ、お前よ、自分が可愛くないって思ってんならそれは大きな勘違いだぜ。」

 オーダイルはサンダースにそう話しかけると、言葉をつづけた。

 「お前は俺が知る限り一番いい女だ。自信を持っていい。だからよ、そんなウジウジしてねぇでよ、もっと楽しく・・・」

 「うるさいな!黙れよ!」

 突然、オーダイルの言葉をさえぎってサンダースが叫んだ。

66名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:07:26 ID:a.89fuRs0
 「わかってるんだよ、私が兄妹の中で一番かわいくないって、男っぽくって可愛いよりもかっこいいって言葉の方が似合うって!」

 「サンダース・・・」

 「みんな、みんな、本当はそう思っている事知ってるんだからな!励ましとか同情とか、そういうもんで私の事可愛いって言ってるんだろ!」

 「サンダース、俺はよ」

 「黙れって!・・・本当はお前もそうなんだろ?かわいそうだから私にかまってるんだろ?それとも自分と同じ思いをした私を笑いたくてここにきてるのか?内心ざまぁみろ!って思ってるんだろ!今の私なら簡単にものにできるとか考えて寄り添ってるんだろ!」

 「サンダース、いい加減にしろ!」

 「兄貴は黙ってろよ!」

 「いい加減にしろ!今自分が何言ったかわかってんのか!」

 「え、あ、あ。あぁぁぁぁぁぁ・・・」

 今言った言葉はきっとサンダースの本心じゃないんだろう、現にいま、サンダースは青ざめて自分のやってしまったことを後悔している。

 だが、言葉というものはそう思っていないとしても人を傷つける。今の言葉でどれだけオーダイルを傷つけるか、それは計り知れなかった。

 「ご・・・ごめん、本当に・・・ごめん。」

 サンダースは慌てて謝る、が、もう遅いかもしれない。今の言葉でオーダイルの我慢が限界を迎えたかもしれない。心が折れてしまったかもしれない。もう二度と、オーダイルが自分に会いに来てはくれないかもしれない。

 自分を一番に考えてくれている人が、一人いなくなる、それも自分が最も傷ついたのと同じ行動で。その恐怖がサンダースを支配してるのがよくわかる。流石にこれは不味い、俺は妹のフォローに入ることにした。

67名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:08:41 ID:a.89fuRs0
 「オーダイル、今言ったのは勢いで言っちまっただけで本心じゃないんだ。どうかサンダースを許してやってくれ。頼む!」

 「兄貴・・・ごめん・・・私何やってんだろう」

 サンダースはそういうと俯いて、また泣き始めた。

 「心配してくれる人を傷つけて、疑って、また一人で傷ついての繰り返しだ。解ってるんだよ、兄貴が私の事からかうのも、オーダイルが私の所に毎回来てくれるのも、全部私の事心配してるからだって。でも、私はそんな皆を傷つけて心配させるばっかりだ。もう、もう、私・・・・死んじゃいたい・・・・」

 「何馬鹿言ってんだ!ふざけんなよ!」

 俺の叫びもサンダースには届いていないようだ。ふさぎ込み、涙を流し続けるサンダース。このまま本当に自分で命を絶ってしまうのではないか?そんな不安が、俺の頭によぎる。

 兄として、何もできないのか?俺は、無力なのか?泣き続けるサンダースを前にそんな言葉だけが延々響き続ける。

 「なぁ、サンダースよ、ちょっと俺の話を聞いてくれるか?」

 そんな中、オーダイルがサンダースにゆっくりと、優しく話しかけた。

68名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:09:32 ID:a.89fuRs0

 「さっきの言葉はよ、ほんのちょっぴり、傷ついたけれどもよ。けど大丈夫、お前の本心じゃないってのはわかってるからよ。」

 「ぐすっ、でも、でも!」

 「俺はよ、お前の事、一番かわいいって思ってるわけじゃねぇ」

 「「えっっ」」突然の言葉に俺とサンダースは驚く、今までオーダイルはサンダースに嘘をついていたのだろうか?

 「可愛さならきっとお前の妹の方が上だろうな、でもよ、俺はお前の良い所、いっぱい知ってるんだぜ。」

 「良い所?」

 「ああ、お前は一途だ。まっすぐで困っている人を放っておけない。弱いものいじめをする奴がいたらすぐにやっつける正義感だってある。そして・・・」

 一度言葉を切ってからオーダイルは話を続けた。

 「お前が恋をして、一生懸命努力しているのを見た。可愛くなろうと、女らしくなろうと、一生懸命な。」

 「でも私は、可愛くなんかなれなかった!」

 「そんなことねぇよ、お前は可愛い。」

 「嘘。」

 「ほんとだよ、皆知ってるさ、お前がよ、可愛くなろうと努力してたとこ見てた皆ならよ。」

 「ああ、そうだな。」
 
 思わず俺も同意していた。そうだった。そうだったよオーダイル、なんでもっと早く思い出せなかったんだろう。馬鹿だなぁ、俺

69名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:10:38 ID:a.89fuRs0
 「このアクセサリーは似合うだろうか?って悩んでたお前も、口調を直そうとして舌噛んでたお前も、動きを女の子らしくしようとして変な風になってずっこけてたお前も、全部全部、可愛くなろうとして頑張ってるお前は本当に可愛かった。たとえそれが他の誰に負けようと、お前は可愛い。一番じゃなくっても、それでもその事実はかわらねぇよ。」

 「オーダイル・・・」

 「お前の良い所、もっと言ってやろうか?一日じゃ足りない自信があるぜ。そんなとこ全部知ってんだ、ダメなところも、嫌なところも全部ひっくるめてお前なんだからな、お前をよく知ってる俺が出した結論がこれだ。お前は一番かわいい女じゃねぇ、でも、一番いい女なんだ。」

 そういうとオーダイルはサンダースの頭に手を置いて軽く撫でると、
 
 「だからよ、そんな悲しい事いわねぇでくれよ、お前が死んじまったら皆悲しむんだからよ。」

 そういった。

70名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:11:21 ID:a.89fuRs0
 気が付けば空は晴れ、俺たちを太陽の光が射していた。暖かな光、気分も少し晴れやかになってきたようだった。

 「本当にごめん、それとありがとう。こんな私を気遣ってくれて。」

 「いいってことよ、でもなぁ・・・」

 「でも?」

 「よくよく考えてみたらさっきの言葉胸に来るなぁ、ああ、思ったより傷ついてきたぞ。」

 「え、え?」

 「はぁ、そんな風に俺って見られてたのか、すごいショックだなぁ・・・」

 「ご、ゴメン!お詫びはするよ!どうすればいい?なんだったら何発か殴ってもらっても・・・」

 「それ本当?なんでもするか?」

 「!う、うん、痛いのも我慢する。」

 そう言ってギュッと目をつぶったサンダース、そんなサンダースを見たオーダイルは

 「いい覚悟だ。それじゃ!」

 そういうと、サンダースを抱え上げ歩き始めた。

71名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 00:12:29 ID:a.89fuRs0
 「え、あ、おい!どこ行くつもりだ?」

 「どこって、ご主人の所さ、写真撮影のモデルを連れてきたってな。」

 「な、なんだって!おい、聞いてないぞ!」

 「言ってないしな、さっきなんでもするって言ったろ?」

 「うぐ、で、でも・・・」

 「はーい、約束は守ってもらうからな!じゃ、しゅっぱーつ!」

 「ああ、待て!ずるいぞ!」

 「ああ、俺はずるいよ、だからよ、惚れた女が笑ってくれるなら何でもするぜ。」

 「なっ///・・・もう、好きにしろ!」

 「言われなくても!さぁ、とびきり可愛く撮ってもらおうぜ!なにせモデルが良いんだ、最高の一枚が撮れるはずさ!」

 そういってサンダースを抱えたまま歩いていくオーダイル。サンダースから降ろせと言われているが離さない。幸せそうな2匹が一番の良い絵になるなと思いながら俺も歩き出した。ただし、2匹とは逆方向にだ。

 邪魔者の兄貴はいなくならせてもらおう。サンダース、いつかお前がもう一度恋ができるようになったらその時は・・・いや、何も言うまい、きっとあいつには幸せな未来が待っているはずだ。そう信じながら俺は他の妹の姿を探し始めた。

72名無しのデデンネ:2015/04/22(水) 01:22:17 ID:a.89fuRs0
次回まで時間がかかるとか言っておきながら時間ができてしまったため第5回投下しました。前回までとは違うシリアスムードで書いてみました。

恋愛に臆病になっているサンダースと、そのサンダースを何とか元気にしようと頑張るオーダイル、本来もっと明るい話を予定していたのですが、少し暗くするとどんどん暗くなって行ってしまいました。この2匹が好きな方ごめんなさい。次ではもう少し明るい話に使ってあげたいです。

今回名前も出さなかったサンダースが惚れたポケモンですが、この後他のブイズの話に登場予定です。正体は少しお待ちください。

オーダイルとサンダース、この2匹は時間がたつにつれて、徐々に関係を明るく良好なものに変化させていく予定です。オーダイル先生のケアにご注目ください。

気が付けばもう5組のSSを書き終わっていました。残すのは3組!序章に時間がかかるのも登場人物が多いせいですね、これをまとめるための腕を頑張ってあげていきます。

次の投稿は、たぶん時間がかかります今日のように時間が空けば投稿しますが、難しいかもしれせん。どうかお待ちください

最後になりますがしえん、ご感想下さった方ありがとうございます。これからもどうかご覧になって行って下さい。面白いものをかけるように頑張ります。

さて次回登場ポケモンですが、ブイズはなんだか癒し系なイメージのあの娘、御三家は対戦でも大活躍でマリオやリンクとも戦い大乱闘を繰り広げている彼を予定しています。今回はわかりやすいですね(笑)ではまた次回お会いしましょう!

73名無しのデデンネ:2015/04/24(金) 10:05:07 ID:dWmG2oU60
面白くてつい一気読みしちゃったわ。
次の更新待ってるぞ

74名無しのデデンネ:2015/04/24(金) 22:14:21 ID:vOPk4lH20
乙〜

サンダースの話し好き

75名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:30:48 ID:y9WYADKE0
 俺はいい気分で歩いていた。今までで最高の気分だ。さっきの出来事は俺に幸せをくれたが、それだけでこんなにいい気分になるものだろうか?不思議に思いながらも歩いていた俺の鼻に、なにやらいい香りが届いた。

 「この香りは・・・そうか!あいつか!」

 本当にいい気分だ!またしても妹が見つかるなんて!そう思うと俺は、ルンルン気分で香りの元に駆け寄っていた。

 少し歩いたところに目的のポケモンはいた。そのポケモンは他の大量のポケモンの中心にいた。

 いい香りのするそいつはこの場にいるほかのポケモンと一緒にすやすやと寝息を立てて眠っていた。

 可愛らしい容姿、癒し系の性格、おっとりとした姉のような、母のような母性を併せ持ち、さらには我がブイズ1のボインちゃんでもある妹の横にそっと立つ俺。何か悪戯でもしてやろうか?そんなことを考えていたところ・・・

 「動くな、動いたら喉を掻っ切る。」

 そんな脅しと共に、俺の喉に水でできた短剣が伸びてきた。

 「わ、わわ!俺だよ俺!ブースターだ!やめてくれよ。」

 慌てて俺が弁明すると短剣は水に戻り、腕も俺の喉から離れた。振り返った俺は物騒なことをしてくれたポケモンに抗議の声を上げた。

76名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:31:26 ID:y9WYADKE0
 「何すんだよゲッコウガ!ほかの奴ならともかく、俺がリーフィアに何かするわけないだろ!」

 「ブースターさんなら、たとえ自分の妹相手であろうと手を出す気がしたので。」

 「お前、年下なのに生意気だぞ!」

 「年上なのに威厳の欠片もないブースターさんに言われたくないです。」

 「お前なぁ!」

 「う〜ん、どうかしたの?」

 俺とゲッコウガが話していた声を聞いたせいかリーフィアが起きてしまった。眠そうに眼をこすったリーフィアだったが、俺とゲッコウガを見ると。

 「あら、兄さん。それにケロ君じゃない、どうしたの揃って?お休みに来たの?」

 「俺はケロマツじゃありません、進化してゲッコウガです。何回言ったら覚えてくれるんですか?」

 「ごめんね〜ケロ君。昔っからの癖が出ちゃって。」

 「だから!俺はゲッコウガですって!」

 「まぁそう怒るなよケロ君!」

 そう言ってからかう俺にゲッコウガは抗議の視線を向ける、年上を敬わない罰だ。

77名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:32:42 ID:y9WYADKE0
「うふふ、兄さんったら。ダメよ、ケロ君をからかったら。それはそうとなんで揃って私の隣にいたの?」

「それはな、リーフィア、ゲッコウガがお前のその大きなお胸にじゃれつこうとしてたもんだから、俺が必死に止めてだなぁ・・・」

 そこまで言った俺の額に水手裏剣が飛んできた、直撃!どすっ、という音と共に俺は後ろにひっくり帰る。

「お見事!すごいわねぇ。」

「次ふざけたこと言ったら、遠慮なく最大までためたのぶち込みますからね。」

「はい・・・すいませんでした・・・・」

「ケロ君、お胸が気になるの?」

「違います。全部ブースターさんの作り話です。」

「そ〜お?じゃあ、はい!」

そういうとリーフィアは地面にころんと寝転がり、両手を開いて

「ケロ君、お〜いで」とニコッと笑いながら言った。我が妹ながらかなり暴力的な発育だ。良い眺めともいえる。

「・・・あのですね、俺の話聞いてました?全部ブースターさんの作り話なんですよ!」

「そんなに照れなくてもいいじゃない。昔はよくこうやってケロ君抱っこして寝てたんだから。」

「昔の話でしょう!何回も言ってますけど、俺はもうケロマツじゃなくてゲッコウガです!子供じゃないんだからそういうのやめてくださいよ!」

「大丈夫よ、ケロ君以外にはこんなことしないし」

「何が大丈夫なんですか!」赤くなったゲッコウガに追い打ち食らわせてやる。

「良いじゃないかゲッコウガ、お言葉に甘えて大好きなリーフィアの胸に飛び込んでしまえば!」

そこまで言ったところで、ゲッコウガは宣言通り俺に最大まで大きくした水手裏剣を飛ばしてきた。

再び直撃!吹っ飛ぶ俺は何故か昔のことを思い出していた。あれ?これって走馬燈ってやつじゃね?死ぬの?俺?

78名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:33:34 ID:y9WYADKE0

セピア色の思い出はかなり昔のことのようだ。過去のゲッコウガことケロマツの姿が見える。その周りには誰もおらず一人ですごしているようだ、今思っても空しい光景だな。

 昔のゲッコウガは他者との関わりを持たずに生きていた。何もかもを一人でやった方がいい、と単独で行動し、あまり他人と関わらない。それがあいつの生き方だった。

 誰かと関わっても碌なことなんてない、そう言う奴の目は輝きなんてなく、暗く濁った色だった。そんな性格だからバトルでは協調性がなく、連携がうまくとれずに足を引っ張り、トレーナーがかわいがろうにも餌だけ取ってどこかほかの場所で1匹だけで食べるなんて事をしていたためますます友達はできずにボッチになっていった。

 そんなケロマツとリーフィアが出会ったのはある日の午後、この場所でいつも通りたくさんのポケモンと昼寝をしていたリーフィアをケロマツがみつけたところから始まる。

リーフィアを初めて見たケロマツの感想は「理解しがたい行動をするひと」だったそうだ。なんでわざわざ多くのポケモンと揃って睡眠を取るのか、何のメリットもない行動。それを楽しげにやるリーフィアはケロマツにとって理解不能な存在でしかなかった。

 リーフィアはその頃のケロマツと違ってたくさんのポケモンから愛されていた。安らぎを与えてくれる存在として敬われ、容姿の美しさから告白するポケモンは後を絶たなかった。そのすべてを断ってこの森の中でゆったりとした時間を与える存在として活躍するリーフィアは、ある意味不思議だったと言われれば納得するしかない奴だ。

 ケロマツはリーフィアを「愚かで、考えなしで行動する、世の中には善人しかいないと思っている究極の馬鹿」という最悪の暴言レベルの評価を下し、極力関わらないようにした。

79名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:34:56 ID:y9WYADKE0
「あの人は何を考えて生きているのだろう?きっと何も考えないでいるのだろう、だから誰かに騙され、痛い目に合おうと次に活かすことなくまた騙される。もしかしたら100回だましたポケモンより100回だまされ続けたポケモンの方が信頼できる、とか考えちゃってる痛い方なのかも知れないが、そんなの自分からしてみればどっちも友達になりたくない、厄介ごとに巻き込まれるのは目に見えてるからだ。そもそも、友達だって欲しくないし。」

 そんな意見の元、一人での生き方、ボッチライフを謳歌していたが、ある日困ったことが起こった。

それはこの庭園にある1本の木の実のから全ての木の実が消えたという事件が起きた時だった。庭園のポケモンは複数で固まって行動していたため、他の誰かが自分の無罪を証明してくれるが、ボッチのケロマツは誰も疑いを晴らす証拠を持っていなかったのだ。

ケロマツはやっていないからやっていないという。だが証拠はない、それも唯一だ。疑いの目で見られたケロマツは面倒くさくなりいっそ自分が犯人だ!とでも言ってしまおうかと考えていた。

 だが、それを庇うようにリーフィアが立ち、ケロマツを弁護した。といっても

「やってないって言ってるんだから、信じてあげましょうよ。」

と、言っただけだが。

 その後の調査で原因が風で木の実が飛ばされただけだとわかって、この事件は収束したが、ケロマツはなぜ自分を信じたのか、そん理由を聞きに行ってまたしてもリーフィアが分からなくなったらしい。

リーフィアの回答は「特に理由は無かった。」だそうだ。理由がないのに信じて犯人だったらどうするのか?やっぱりバカなのか?そんな疑問を浮かべていたケロマツはリーフィアの性格について納得のいく答えを出した。

それは、「良い恰好したいだけの上から目線の人」だった。

80名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:36:08 ID:y9WYADKE0
要約すると、「私、皆を癒してあげて偉いでしょう?あなた達も嬉しいでしょう?何回も騙されても他人を信じ続ける私って聖母のようでしょう?皆私を敬いなさい、そうすれば私もみんなの為にいろいろやってあげるから。」という事だ。・・・歪んでるなぁ。

 納得のいく答えを見つけたケロマツは上機嫌でリーフィアに挨拶すると、その場を去ろうとしたが、逆にリーフィアに質問をされたらしい。その質問とは・・・

「あなた、生きていて楽しいって思える瞬間はある?」というものだった。

ケロマツは回答に困った。それは人生において、楽しいと思う事が何もなかったからだ。嘘をつこうにもリーフィアの瞳はまっすぐと自分を見ており、その嘘を看破するのは容易いように思えた。

 黙り込むケロマツにむかってリーフィアは、

「いつか、それが見つかるといいわね」と言ってどこかに行ってしまった。ケロマツはその言葉を受けてからさらにリーフィアに近づかなくなった。よくわからないが、自分の中の何かが会う事を拒否している、そんな感覚だった。

 それでもケロマツの日常は変わらない。一人で生き、一人で食べ、一人で眠る。その繰り返し、それで問題は無かったはずだった。

81名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:36:56 ID:y9WYADKE0
ある日、ケロマツは森の中でスピアーに絡まれているマリルを見つけた。スピアーは苛立っており、言っていることが完全にいちゃもんであることはすぐにわかった。震えるマリル、怒鳴り続け、今にも鋭い針で一突き入れようかというスピアー、そんな光景を見たケロマツは・・・

 何も見なかったことにして立ち去ることにした。

 ケロマツ流人生論その1、極力面倒くさいことは避けて生きる。これを実行したに過ぎない。心の冷たいやつとか思うかもしれないが、メリットの無い行動をする理由がない限り動かない奴と、そうでなくても誰かの為に動ける奴というのは大方前者が多いと決まっているものだ、ケロマツはその大多数の一人であった。ただそれだけの話であり・・・

 リーフィアが後者に含まれる奴だった。それだけだった。

 どこからかやってきたリーフィアはマリルを庇い、スピアーに注意し始めた。当然スピアーは収まることもなくヒートアップし、針を震わせて2匹を威嚇し始めた。ケロマツはやっぱりリーフィアは馬鹿で理解できない存在だとおもった。

 きっとこの件で痛い思いをすれば少しは懲りて控えるようになるかもしれない。うん、きっとそうだ。

 そう言って立ち去るケロマツの背中にリーフィアの言葉が聞こえてきた。

「私はね、誰かが震えて助けを求めていたりしたら、たとえどんなに困難でも見捨てたりすることはしたくないの。あとで後悔するかもしれないけど、それが私のしたいと思ったことだから」

82名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:38:11 ID:y9WYADKE0
 その声を聴きながらケロマツはやはり彼女は馬鹿なのだとおもった。さっき見たとき、足が震えていたではないか、相性が悪い技を食らったら命だって危ない、そのことだってわかっているではないか、毒だってある、そんな危険を冒してまでメリットの無い行動をするリーフィアは馬鹿だ、本当に理解できない。そのはずだ。じゃあなぜ・・・

 なぜ、自分は草むらから飛び出してしまったのだろう?

 なぜ、スピアーにむかってケロムースを投げて挑発なんてしてしまったんだろう?

 なぜ、必死になって、避けられるはずの面倒な戦闘をこなしているんだろう?

 なぜ自分は、こんな馬鹿げた行動を、無駄なことを・・・・?

 きっとさっきまでの自分はどうかしていたんだ。スピアーを撃退し、ボロボロになった体でケロマツは思った。じゃあなきゃ、自分があんなことをするはずがない、忘れよう、悪夢として。そう決めたケロマツが立ち去ろうとしたとき

「ありがとうね」そんな言葉と共に、突如後ろから抱きしめられ驚くケロマツ。今まで感じたことのなかった温もりが体を包むのを感じてどうすればいいのかわからなくなった。

「こんなことしかできないけど・・・」そう言ったリーフィアからいい香りがしてきた。心が落ち着き、安心する香り。傷ついた体が休息を求め次第に瞼が重くなる。意識を手放すケロマツが最後に聞いた声は

「お休みなさい。ケロ君」今までで一度もなかった、優しい微睡へと彼を導いた。

83名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:39:46 ID:y9WYADKE0
 きっと自分は羨ましかったんだろう、誰でも分け隔てなく接するリーフィアの優しさが、自分ができない他人を信じるという行動を難なくやってしまう彼女の強さが。

 だからこそ、その優しさと強さを守りたいと思った。こんな自分にも他の誰とも変わらない笑顔を見せてくれる素敵な女性を。

 それに・・・誰かに抱きしめられるのも悪い気分じゃない。少し素直になったケロマツはそれから少しずつ変わっていった。

 他者との関わりを積極的では無いが取り始め、バトルの時には味方のフォローをうまくこなしたり、食事の際にも喋りはしないが皆の近くで食事をし、新入りに少し言葉をかけてリラックスさせるなど細かな気配りを欠かさなかった。

 周りの評価が変わり始め、次第にケロマツの周りには彼を理解してちょうど良い位の関係性を築くポケモンもちらほら現れ始めた。

 リーフィアもそのことを喜び、あいさつに現れるケロマツを抱っこしては、そのまま眠って周りをやきもきさせたものだ。

 心身ともに成長しケロマツからゲッコウガに進化し、そのことを恥ずかしがるゲッコウガだが、自分に大切なことを気づかせてくれたリーフィアは1番大切な人として思い、守ろうと決めているのだ。

 ただ、お互いに恋愛には興味がない2匹だ、くっつくには時間がかかるだろう。そもそもお互いを恋愛対象として見ているのだろうか?気になる・・・・・

 そんなことを考えていたら周りの景色に色が付き始めた。どうやら俺は死ななくて済んだようだ。良かった。

84名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:41:13 ID:y9WYADKE0
「ちっ、永眠すりゃよかったのに・・・」

ゲッコウガめふざけやがって!俺は飛び起きゲッコウガに向かって蹴りを入れる。少しよろめいたがゲッコウガは体勢を立て直し、めんどくさそうにため息をついた。

「ああよかった。兄さん起きたのね。」

ぽやーっとしたリーフィアの声。聞いていたら戦う気分じゃなくなっちまった。どうやらそれはゲッコウガも同じなようで大きな欠伸をしている。

「ケロ君も一緒にお昼寝しましょ?抱っこしてあげるから。」

「結構です。」

速攻断りを入れるゲッコウガ、でもリーフィアの隣は死守するあたりそばにいたいとは思っているのだろう。俺はゲッコウガに質問をする。

「なぁ、お前楽しいって思う瞬間あるか?」

それに対してゲッコウガは、眠そうに眼をこすった後これまた眠そうに

「そうですねぇ・・・ブースターさんいじった後反応見るのは楽しいですかね」

そう言って眠り始めやがった。隣を見ればリーフィアもすやすや寝入っている。このままここにいても仕方があるまい、俺は別の妹の所に向かう事にした。

85名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 03:42:10 ID:y9WYADKE0
・・・・ちなみにブースターが去った後木陰の中では

「うふふ、やっぱりこっちの方がしっくりくるわね。」

そう呟いたリーフィアがゲッコウガを後ろから抱きしめ、自分も本格的に眠ろうとしていた。

「おやすみなさい、ケロ君、いい夢を見てね。」そう言って寝息を立てるリーフィア。その寝顔を見ながら片目を開けたゲッコウガが溜息の後

「まぁ、たまにはいいか・・・おやすみなさい、リーフィアさん」

と、呟き、二匹で幸せな睡眠時間を取っていたのであった。

86名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 04:05:49 ID:y9WYADKE0
第6回いかがだったでしょうか?少しばかりひねくれさせたケロマツことゲッコウガと、そんな彼を変えるきっかけを作った癒し系お姉さんリーフィア。この2匹のお互いを大切に思っている感を感じ取っていただければ嬉しいです。

サンダースの話が暗くなってしまったので今回はのほほんとしていただけるようにのんびりとしたムードで書いてみました。でも前回の話よかったよ!と言ってくれる方もいてほっとしています。願わくば今回も皆さんのお眼鏡に叶うことを祈っています(笑)

リーフィアには自分の考える癒し系ってこんな感じ!っていうイメージをつぎ込みまくりました。ゲッコウガは生意気な態度をとっているようですが、実は礼儀正しく、周りの状況をよく理解しているできる年下、という感じでした。ゲッコウガは今回の話であまりそういった面が見せられなかったのは残念ですが、この2匹の恋路も含めてそれは追々ということで

さて、残るは2組、序章の終わりに向けて頑張りたいと思います。実はもう残りも書きあがっているので隙を見て投稿するだけなのですがその時間がなかなか取れないのが申し訳ないです。どうか気長にお待ちください。

ちなみにこのブイズSSの続きというべきものも書き始めております。2話3話を同時に書いており、それぞれ毛並みの違う作品にしています。たぶん3話では安価ではないのですが皆さんに少しでも作品の世界に入っていただけるようにちょっとした工夫をしています。大したものではないかもしれませんし気の早い話ですが、そちらも楽しみにしていただけると嬉しいです。

またしても最後になりましたがコメント、支援の数々本当にありがとうございます。面白くて一気に見た。この話はよかった等のコメント、本当に励みになります。そんな皆さんの期待に応えられるようにおもしろいSSを頑張って作り上げていこうと思いますので、どうかまたご覧になってください。

次の登場するブイズは、金銀世代に登場したエスパーなあの子と、初代御三家、市販されたものの中ではパッケージを飾れていないあのポケモンになります。ご期待ください。

87名無しのデデンネ:2015/04/26(日) 19:17:09 ID:8dVCYP4U0
乙〜

今回も良かった。

88名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:05:26 ID:VyOY57M60
「あとあってないのは・・・え〜と誰だったかなぁ?」

妹が多いというのも考え物だ、今日一日を振り返りまだ会っていない妹が何人いるか考えながら歩いていた俺は、何か硬いものにぶつかり尻もちをついた。慌てて俺は謝る。

「悪い、考え事をしてて前を見ていなかった。怪我無いか?」

「大丈夫だよ、おっさんも考え事しててね・・・ってその声はブースター君じゃないか!良かった、探していたんだよ。」

そう言って俺を嬉しそうに見ているのはラグラージにも負けない大きな体をしている二足歩行する亀のポケモンだった。

「カメックスのおっさん!なんだよ、俺に用があるなら最初に会った時に言ってくれればいいのに。」

「いやぁ、ちょっとね、その後用事ができてさ。」

 そう言って頭を掻きながらにこにこ笑うおっさんはここに来るトレーナーの手持ちポケモンの中では最年長だ。イーブイとの年齢差は親子ほどまで離れている、俺やそのほかの兄妹たちとはそこまででもないが、それでも「世代の違う兄妹」位にはなってしまうのだろう。

だがカメックスのおっさんはそんなことを感じさせない人の好さと、おおらかな性格で何の違和感もなく俺たちに話しかけてくる。このおっさん呼びだってそうだ、最初は「カメックスさん」と呼んでいた俺たちだったが、おっさんの

「その呼び方止めてよ、なんかむず痒いし、普通におっさんとかでいいよ。」

という一言から始まり、今ではたった1匹のポケモンを除いて「カメックスのおっさん」という呼び方で呼

89名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:06:23 ID:VyOY57M60
そしておっさんが俺に用事という事はその1匹に用があるのだろう。俺はおっさんに尋ねる。

「俺への用って、あいつの事か?」

「あ、わかっちゃう?うん、皆に何とかしてあげてって言われちゃってさ、まぁ、悩める若人を導くのも年上の役目だからね。」

「なんだよそれ(笑)」

 ややおどけて言ってはいるものの、カメックスのおっさんはトレーナーのポケモンだけでなく、この庭園のポケモンたちからも相談役として頼りにされている。こうやってやって来たときには相談者で行列ができることもあるくらいだ、どうやら今回は皆から1匹のポケモンについて相談されたらしい、そいつの居場所に心当たりのある俺はおっさんをその場所へ案内することにした。

「多分だけど、このあたりにいると思うぜ。」

「ありがとね、わざわざ。」

「まぁ自分の妹の事だしな、こっちこそわざわざ悪いと思ってるよ。さぁ、さっさと探しにいこうぜ!」

そう言って俺は辺りを探索し始めた。ここは庭園の中心からやや外れた所にある運動場だ、体が鈍らない様にアスレチックのような運動施設が用意されているほか、自らが強くなるために庭園のポケモンたちがバトル用の訓練道具を自作し、ここに置いて行っている。

 探している奴はきっとここで訓練中のはずだ。俺とカメックスのおっさんはお目当てのポケモンを探して運動場を周り始める。しばらくして、小さな滝のようなものがある水辺でそいつの姿を見つけることができた。

90名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:07:02 ID:VyOY57M60
滝に打たれながら目をつぶって集中し、自身の念動力を高めているようだ。そして、突如額にある赤い宝石が光を放ったかと思うと、滝の水が四散し、辺りにぶちまけられた。

「ぎゃあああ!水は苦手なんだよぉぉぉ!」

「え、その声は、兄さん!?」

驚いてこっちを見た妹だが、生憎俺は地面を転げまわることで忙しい。代わりにカメックスのおっさんがにこやかに挨拶をする。

「やあ、エーフィちゃん。流石のサイコキネシスだねぇ。」

「カメックスさんまで!いたのなら声をかけてくれればよかったのに!」

「集中してるところ悪いと思ったんだよ、それにしてもそのさん付け何とかならない?もっと気軽におっさんで良いんだけど・・・」

「年上の方に敬意を払うのは当然の事です。むしろカメックスさんこそもっと威厳のある言動を心がけてください。」

「いやぁ、おっさんこの性格でやって来てるからさ・・・」

「ですからそれが問題なんです!もっとリザードンさんやフシギバナさんを見習ってですね・・・」

「はいはい、エーフィそこまで、これがおっさんの良い所なんだから別にいいだろ。」

「兄さん、しかしですね・・・」

「おっさんがここのポケモン達から尊敬されてんのはお前も知ってんだろ?堂々とした態度じゃなくても、風格ってもんがあるならそれでいいだろうよ。」

91名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:07:36 ID:VyOY57M60
「・・・まぁ、良いでしょう。それでお2人揃って何のようでしょうか?」

「いやぁね、皆からエーフィちゃんが根を詰め過ぎてるって聞いてね。少しリラックスさせようかと思って」

「私は大丈夫です。心配ないとお伝えください。」

「いやいや、休息は大事だよ。ちょっと休んでいくことも大事なんだって・・・」

 なにやら話し始めた2匹を横目に、俺からエーフィの紹介をさせてもらおう。

先ほどの会話で分かった奴もいるかもしれないが、エーフィは糞真面目なやつだ、堅苦しいともいえるだろう、人間たちはあいつみたいな性格の奴を「委員長タイプ」とか言うんだろ?
まぁ、そんな感じで、エーフィはよく言えば真面目、悪く言えば頭が固いやつというわけだ。

 なんでこんな性格になったかは大方予測が付く、ズバリ!俺たち上の兄妹のせいだろう。俺、サンダース、シャワーズという上の兄妹は、用も悪くもおおらかだったり、リーダシップを取るのには向いていなかったりする。そんな俺たちを見てエーフィは、「自分がしっかりしなければ!」と思いながら育ったのだろう。気が付けば俺たちのまとめ役となり、そのまま庭園のポケモンたちにもその役目を押し付けられた形になった。

それを苦にするような奴ではないため、エーフィは与えられた役目を全うするためにさらに真面目ぶりに磨きがかかり・・・今の性格へとなっていた。というわけである

92名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:08:59 ID:VyOY57M60
「・・・じゃ、やっぱりその事を気にしてるんだ。」

「・・・はい、もっと私がうまく立ち回れていればご主人様は優勝できていたはずです、自分の力を鍛えて今後こう言ったことが無いようにしなければなりません。」

 そんなエーフィにとって、おっさんは数少ない自分の悩みを相談できるポケモンだ。年上という事で自分の弱みを素直に見せられるのだろう、おっさんもその相談に親身になって乗ってくれるし、本気でアドバイスもしてくれるカメックスのおっさんはエーフィにとって頼りになる存在なのだろう。

・・・まぁ、それだけじゃないとも思うが。

 話を戻すと、どうやらエーフィは少し前のバトルの大会での成績を気にしているようだった。
準優勝という成績を収めたエーフィのマスター。エーフィの活躍もかなりのものだったと思う。だが、本人は納得がいっていないようだ、責任感の強いエーフィは勝利できなかった原因が自分にあると考え、今こうやって訓練している。というのがカメックスのおっさんが聞き出せた内容のようだ。流石おっさん、この短い時間でここまで聞き出せるとは、やっぱりすごいな。

「でも聞く限りはエーフィちゃんすごい活躍したみたいじゃない?それなのにそこまでする必要は無いと思うけどなぁ・・・」

「たとえ過程がよくとも結果が伴わなくては意味がありません。今回私は優勝という結果を示すことができませんでした。それは私の努力不足が原因です、次回までに強くなって次こそは・・・」

 そう言って決意を新たにするエーフィをおっさんは難しい顔で眺め、申し訳なさそうに「エーフィちゃん、少し失礼だけど・・・」と切り出すと、

「そんなんじゃ、次も優勝できないよ、それどころか、もっと結果は悪くなるよ」

93名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:09:45 ID:VyOY57M60
「え!」ズバッ、という音が聞こえてきそうな一言を告げる。エーフィは慌てておっさんに助言を求める。

「か、カメックスさん!それはどういう事ですか!?私に足りないものがあるのならはっきり仰って下さい!」

「う〜ん、足りないものか・・・結構あるなぁ。ちょっと長くなるけどいい?」

「構いません!どうか教えてください!」

「じゃあ、まずは遊び心が足りないかな。」

「ふざけないで下さい!私は真剣に・・・」

「おっさんも真剣だよ」

 急に真面目な表情に変わったカメックスのおっさんをみて黙るエーフィ、静かになったことを確認して、おっさんは続ける。

「なにもふざけろ、って言ってるわけじゃない。余裕を持つことが大事なんだよ。」

「余裕・・・ですか?」

「うん。張りつめた糸ほど切れやすいって言うだろ。いつも緊張感MAXで行動してたら予想外の事態でペースを崩して持ち直せず、実力を発揮できずにそのまま終了。なんてこと意外とあるもんだよ。現に今エーフィちゃんはおっさんの言葉に動揺して、いつもの冷静さが無くなっていたじゃないか。」

「あ・・・」

「だから、まずは余裕を持つこと。そうしないとエーフィちゃん、実力の関係ない所で負けてまた気が張り詰めて・・・の繰り返しだよ。」

「そう・・・ですね、確かに仰るとおりです。私、意地になっていましたね。」

94名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:11:01 ID:VyOY57M60
「少しは落ち着いたかな。それじゃ、次は一番足りないと思う事を説明するよ。」

「はい、お願いします。」

「うん、いい返事だ。」

 満足げに笑うおっさん。そのまま続ける。

「エーフィちゃんは勝つためにはどんな事が必要だと思う?」

「勝利に必要なことですか?・・・事前の入念な努力、緻密な戦略、思い切った選択をできる勇気、といった所でしょうか」

「うん、それも重要だね、でも1番必要なものが抜けてる。」

「何ですか、それは?」

「それはね、信頼さ。」

「信頼・・・ですか?」

「ああ。例えばだけどエーフィちゃん、もしゴーストや虫、悪タイプのポケモンが出てきたらエーフィちゃんはほかのポケモンに相手を任せるだろう?」

「ええ、まぁ。無理に突っ張って私を起点にされたら勝ち目は無くなりますし・・・」

「でしょ、それは他のポケモンにその場を任せたよ!って信頼して交代するわけだ。それと同じだよ、エーフィちゃんが相手を全部倒すのなんてほとんど難しいわけだ。」

「でもバシャーモさんやゲッコウガ君はやっているじゃありませんか!」

「うん、でも一人でそれをやっているわけじゃないよ。サポートのポケモンが相手にステルスロックをばらまいてダメージを与えられるようにしておいたり、壁を張って防御力をあげておいてくれたり、そんな風に皆で協力して戦っているわけさ。」

「・・・・・」

95名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:12:06 ID:VyOY57M60
皆。自分が何をすべきかわかってる。そしてそれを全力でこなしてほかの皆にバトンタッチするわけさ、サポートする側は、これさえすれば後の奴が何とかしてくれる、エースは他の奴が自分の暴れる場を整えてくれてる。そう信じて自分のやるべきことをやる、そんな風にね。」

「私1人じゃできないことも、みんなで協力すれば・・・」

「できるようになる。今エーフィちゃんがすべきことは、他の皆と話し合って自分が何ができて何ができないか把握することと、エーフィちゃんのマスターが考えた作戦を、みんなで完成させられるように頑張ることじゃないかな。」

「その通り・・・ですね。」

「うん、わかってくれて何よりだよ。」

そういって笑うおっさん。良い話なんだが、やばいぞ、俺が空気だ。

「・・・また、助けられてしまいましたね。」

「うん?良いじゃない!年上が年下を助けるのなんて当然の事でしょう?」

「・・・そうですね。でも感謝させてください。ありがとうございます。」

「いいっていいって!それよりもさ、うちの坊主がこないだ面白い技マシンを手に入れててね!きっと今頃エーフィちゃんのマスターにも見せているはずさ!」

「マスターにですか?」

「うん!サイコショックって言う技なんだけどね、ああ、説明は後にしてお屋敷に向かおうか!そこで合流した方が早いでしょ!」

96名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:12:42 ID:VyOY57M60
「そうですね、マスターと協力すればあるいは・・・」

 何やら考えてるエーフィ。うん、エスパータイプじゃない俺でも何考えてるかわかる。

「どうしたの?エーフィちゃん」

「いえ、強力な敵をマスターと共に倒す方法を模索していたところです。屋敷にむかいましょう。」

「あ、うん。ちなみにそれって誰?」

「秘密です。」

そう言って立ち去る2匹、あとには俺だけが残った。

さて皆さん、エーフィが言ってた敵って何のことだかわかったかな?

正解は年の差、でした。マスターもポケモンもその強力な敵の前に恋路を邪魔されているのだ、それをどう排除するか・・・日夜考え続ける1人と1匹。手を取り合えば活路が見える!・・・・のか?

さてと、俺も移動するとしますか。

に、しても・・・今回ほんと俺の出番無かったなぁ!おい作者!次はちゃんと用意しとけよ!

97名無しのデデンネ:2015/04/27(月) 04:29:09 ID:VyOY57M60
ブースターごめんなさい、次回は多めに動いてもらう予定ですからご勘弁を。

さて今回は優等生のエーフィと頼れるおっさんカメックスの2匹を登場させました。この2匹は年の差恋愛枠です。エーフィの行為をカメックスが「いやー娘ができたらこんなかんじかな!」って感じでスルーしまくるのを予定しています。エーフィはこの強敵を倒せるのか!こうご期待!・・・ちなみにですがカメックスのトレーナーはカメックスとは逆に一番の年下として設定しています。だからなんだって話なんですけどね

支援のコメントや感想、本当にありがとうございます!本当にうれしいです!これからもどうかご覧になって行って下さいね。最近は同じブイズのSSや新規でSSを作る方もいて少しづつこの掲示板が盛り上がっているように感じられます。私事ですが自分の友人も1作品ひっさげてここに投下すると言っていたのでその時は温かく迎えてやってください。先に読ませてもらいましたが、とても面白かったです。宣伝乙と言われたらそれまでなのですが(笑)

さて、とうとう残るカップルは1組となりました。ブイズは皆さんお分かりだと思いますが御三家はどうでしょうか?ちょっぴり変わったやつを選びました。ヒントはサツマイモです。なんのこっちゃ?わかった方はお答えください!実はこのポケモン自分の1番好きなやつなのでこいつをわかる方がいるのはとてもうれしいのです!

では、毎回長々と失礼いたしました。また次のお話でお会いしましょう!

98名無しのデデンネ:2015/04/30(木) 01:28:42 ID:lFFEKBZc0
サツマイモ…あっ…(察し)
次楽しみにしてるぞ

99名無しのデデンネ:2015/05/01(金) 04:57:32 ID:RrGI/qNM0
 時刻は夕方、太陽がオレンジ色に輝きながら沈んでいき、1日が間もなく終わるという事を告げながらその日の出番を終える。そんな時間だ。

庭園に住むポケモン達は各々住処へ戻って行ったり、逆にこれから活動を始めたり、はたまた友人と一夜を眠らずに過ごそうとしたり、なんだかんだで忙しい時間帯だ。

俺はというと・・・庭園の中心にある広場に戻り、沈んでいく夕日を眺めていた。意味はない、ただ、誰も構ってくれないので寂しいからこんなことをして暇をつぶしているのだ。

「はぁ・・・」溜息をついた俺にむかって後ろから声をかけるものが居た

「兄さん」

その声に反応し後ろを向くと、そこにいたのは水色の体をしているなんだか神秘的な雰囲気を持つポケモンだった。

100名無しのデデンネ:2015/05/01(金) 04:57:58 ID:RrGI/qNM0
「グレイシア、どうかしたのか?この時間にここにいるなんて珍しいじゃないか。」

いつもなら夕日を避けて夕方は屋内にいるグレイシアがここにいることを不思議に思った俺はそれを聞いてみる。しかし返答はそっけないものだった。

「別に。」

「いやいや、いつものお前らしくないじゃないか、何かあったのか?」

「特には、無い」

「・・・もしかして、お前不機嫌だったりする?」

「普通。」

だよな。さて、我が妹の最後の1匹、グレイシアについて説明しよう。容姿としては体は平均的な大きさで、スタイルも平均チョイ上位だろう。顔立ちは整っており、綺麗にも見えるし、可愛くも見える、しかし、グレイシアには問題点が1つある。

 それは感情表現をめったにしないという事だ。嬉しくっても、悲しくっても同じ表情。口数も少なく言葉はあまり口に出さない、話しかけても最低限の言葉しか口にしないグレイシアは本当に何を考えているのかわからない奴だ。ついたあだ名が「氷の仮面をかぶった女」俺たちですらグレイシアが最後に感情を見せたのはいつだったか忘れてしまうほどだ。

・・・だが、実際の所はグレイシアはいいやつであり、女の子らしい所も持っている。それをわかってあげられる男が少ないだけで、氷の仮面を外せる奴がいるときにはグレイシアは女の子らしいところや滅多に見せない笑顔なんかも見せてくれたり・・・って、あ!そういう事か!


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