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避難所ロールスレ

1組替え式の名無し:2012/08/22(水) 00:26:22 ID:Cavuxfd2
建てました。本スレが使われてるときなどに

88斎獄:2014/03/06(木) 21:18:30 ID:Cavuxfd2
>>84

「大丈夫かっ」
『今度はかなり効きました』
「逃げるつもりだ、追いかけろ。相手の射線には立つなよ」

ローラーを今度は前に回転させ、追撃の体勢に入った
しかしそれと同時に、砂塵を切り裂き無数の弾丸がエフに襲い掛かった。
シールドを傾斜させ、威力を分散し弾丸を滑らそうとするも思った以上に威力が高くスパスパと貫通していく

「シールドを凝縮させろ。そのまま物陰に隠れつつ追いかけるんだ!」

敵のHMPの動きはこちらの攻撃の特性を感付いてのものだろう
だとするとこのまま追いかけるのは危険かもしれない。だが敵は見るからに特殊な武装を積んでいない
このまま障害物に隠れながら追撃し、音波ウイルスを聞かせ続ければきっと勝利は自分の方向へ寄ってくる。隆宗はそう見くびっていた

(それにこっちには隠し玉がある。仮に勝てなくても負ける事はないだろう)

89小日向 愛莉:2014/03/07(金) 04:13:16 ID:4yJzobAE
>>87

「……はい。ご注文、承りました」

舌足らずな声と澄ました無表情をあわせて、彼女は小さく礼を交わす。
お腹の前でぴったりと手を合わせて頭を下げる様子は、まさしく小さな給仕さんと言ったところか。

「派手……あ、ありがとうございますっ」
『うむ、しかし気をつけよ愛莉。力ある姿は、戦いで真に強きことを示して初めて意味を持つ」

芝居がかった相棒の言葉を受け止める。トーナメントプレイヤーではないとはいえ店の看板を背負った身。
おもてなしが本分の店だとは言えども、勝負に強い看板娘がいることは良い宣伝になる。
ビリヤード台やトランプゲームの卓の代わりにフィールグラムを置いた店では、なおさらだ。

「わかってます。オペレーション、任せてください」
『頼むよ。――さてお二方、始めるとしようか』

DVNOを導入した携帯端末をメニューボードのように持って、少女はその言葉に頷いた。

───────
────────

かくして二体のHMPはジオラマの街へと降り立った。
ここでは中央に聳える高層ビルの頂上でさえ、平均的なHMPを10体ちょっと縦に重ねたぐらいの高さしかない。
さながら巨大人型機動兵器。であるからしてこの町並みは、踏破され蹂躙されるために配置されている。

(格闘戦特化型のフライメック、ですか。それが見晴らしの良い所に陣取ると。
 ロードモナークは空中戦もこなせますが、専門家にまっすぐ向かっていくのは愚の骨頂ですね……)

考えることはお互いに同じ――少しでも有利な環境で戦いたい、ということだ。
そして普通フィールドの形は変えられない。だから、必然的にある程度の不利は飲み込んで戦うことになるのだが。

【……せっかくだ、〝こいつ〟をちらつかせてやる。
 『聖なる威光』を前におまえがどう出てくるか、試してくれようじゃないか】

「カラメリゼ、このまま反転。後方F地区へ」
『よかろう』

フィールドの中心へ打って出た対戦相手とは対照的に、ロードモナーク――個体名「カラメリゼ」は街路沿いに後退していく。
そして背丈より少し高いビルを見つけると、その背後に身を潜めて沈黙するだろう。
かなり高度が高ければ見えるかもしれないが、彼が取り始めるのは、腰だめの射撃体勢だった。

あまりにもわかりやすい。しかし無視することはできない誘導。
敵が「山をも崩す武器」を構えて遠方に陣取っている――その事実を、あなたはどう受け止めるだろうか。

90荒田シン:2014/03/07(金) 09:18:03 ID:qcjLMZE6
>>83
 着地に至る僅かな空隙
 そのタイミングでリロードは終了していたのである
 
 理想を言えば地に足をつけて撃つのがよいが、眼前にはロランのトドメが迫っている
 着地を待つ時間は、ないだろう
 ここで完璧に狙えるほど、反動を抑えられるほど、ヒヤシンス腕の性能は高くない
 だが、出せるすべてを出さずして敗れては真剣に相手をしてくれている真一/ロランに申し訳が立たない
 
 シンはそこまでしなくてもよかった、というかもしれない
 だが、エリ――エクリプスはそう思う
 
〔出せるすべてを出す。それが礼儀だと思うのです〕

 だから落ちてくる死を前に、右手を前へ伸ばし、左手を添える

 ―― 一閃が落ちてきた
 ヘルムが融ける。放熱剤たる髪が焼け散る
 ――けれど、まだ、死なない
 ダメージ値が爆発的に増加する。制御系を包み込む頭頂部が融解して、制御系に火が回る
 ――それでも、まだ、諦めない
 制御系が焼ききれるそのギリギリまで必死に狙いを定めて――

 ――撃った
 
 それが命中するにしろ外れるにしろ
 それが有効打であろうとなかろうと

 ――それを最期にエクリプスは、機能を停止した

91麻木ナオヒロ:2014/03/07(金) 18:52:39 ID:pjNpxk5o
>>89
【フィールド中心に至るが未だに敵の姿は見えず、ただ静寂が流れる。
 バッテリー節約のために一旦近場のビルへ脚を下ろす。
 障害物の背はそこまで高いわけではない、隠れるスペースも限られるはずだ。】

敵の動きは見えていないが、あのHMPの持つスペックを考えると望ましいのは接近戦の筈だ。
こちらが格闘型フライメックという点から接近戦を避けているのだとして、
純正《ロードモナーク》が所持する遠距離武装は肩のバインダーシールドに仕込まれた砲と、あのディバインライト。
ディバインライトのチャージタイムを考えれば、このエンゲージ前がもっとも撃つチャンスがあるだろう。
戦闘開始早々にバッテリーをかなり消費してしまうが、わざわざ砲を持っているなら狙ってくる筈だ。
敢えてチャージを完了させ、発射姿勢を取らせることで身動きを封じてしまうことも一応考える。
ひとまずは、

「一旦高く飛んで、敵を探そうか。
 そのまま相手にこちらを発見させられれば相手の攻撃も幾分読みやすくなると思う。
 敵を見つけたら一気に降下して、脚とスラスターの併用でジャンプ移動。
 的を絞らせないようにしながら、迅速に距離を詰めよう。
 ただ、接近できても相手の舞台だ。
 気を引き締めていこう」

指示を受けながらルリが飛ぶ。
相手の武器は驚異だが、去なせば大きなアドバンテージになる。
近付かなければ戦えないのだ、臆することに意味はない。

92青崎 修:2014/03/07(金) 23:05:27 ID:nS.T.Wc2
>>88
鋼鉄のデスレースを、車輪と鉄砲の二重奏が彩る。

「頭部の調子は?」
『ああ、大分マシになった』
《頭部:損傷率32%》

予想通り、あの旋律は近距離で効果を発揮するもののようで、ある程度離れた途端、損傷率の上昇が急激に遅くなった。だがまだ油断はできない。遅くなっただけで、止まったわけではないのだから。

『もう弾が切れる! サブマシンガンを使う!』

本来ハンドガンは取り回しと携行性が売りであり、弾幕を張ることは想定されていない。故に今回のような使い方をすれば、直ぐに弾切れを起こす。

「わかりました。くれぐれも接近されないように」

空になった弾倉を排出、バックパックの後部ハッチが開き、ハンドガンを格納する。そしてサブマシンガンに手を掛けたところで、

『!』

エフが突如方向転換、戦車の向こう側に回り込む。どうやら戦車の列を挟んで演奏を続けるつもりらしい。

『そうきたか…』

視界を戦車が断続的に横切る。これでは弾幕を張れない。

『ならこいつの出番だな』

左ハッチ外面にマウントされたスナイパーライフルを手に取る。そしてスコープは覗かず、腰だめに構える。

『よし、そのままそのまま…………………今だ!!』

エフと足並みを合わせ、“道が開いた”瞬間、引き金を引いた!

93滝沢真一:2014/03/07(金) 23:46:45 ID:i2QIiTCs
>>90
(勝った……ッ!)

ロランの剣がエクリプスの頭部を捕らえた瞬間、滝沢は心の中で勝利を確信する。
執拗にバルカンで攻撃し続けたことも効いて、既にヘルム部分にはかなりのダメージを与えられている筈だ。
この状況ならば、ドラゴンバスターの一撃で確実に頭部を叩き割れる――と思った、その直後だった。

――――滝沢はエクリプスの次なる行動に、自分の目を疑うことになる。

「なっ……――――――――――ムベンガッ!?」

エクリプスは自らの頭を割られながらも、滝沢が弾切れだと思い込んでいたムベンガの銃口を、ロランへと向けて来たのだ。
リロードに時間の掛かるムベンガに弾を込める隙など、ほとんど与えなかった筈だ。
いつリロードしたんだ? いや、あるいは最初から2発以上撃てるように改造していたのか?
様々な疑問が滝沢の脳裏を駆け巡るが、時は既に遅し――だ。

一瞬の油断――――。
僅かばかりの判断ミス――――。

だが、そんな刹那のタイミングで明暗が分かれてしまうのが、戦いというものなのだ。

『………………ッ!!』

「しまった……――――――――――ロランッ!!」

それがエクリプスの射撃テクニック故なのか、あるいは偶然の産物なのか。
恐らくは後者なのだろうが――ともあれ結果としては、ムベンガのバイトショットはロランの頭部へと直撃した。

レッドセイバーの頭部パーツ――ヒートヘルムは、決してそこまで装甲が弱いわけではないが、
ムベンガの直撃をこの距離から食らったとなれば、流石にただでは済まない。
滝沢のDVNOに《頭部:損傷率100%――機能停止》の文字が表示されるのは、エクリプスが機能停止したのとほぼ同時。

――――つまり、相打ちだ。

94斎獄:2014/03/10(月) 00:35:39 ID:Cavuxfd2
>>92
スナイパーライフルの弾丸は確実にエフのヘッドへ直撃した
……しかしエフは倒れない。左眼に埋め込んだセンサーパーツに弾丸がめり込み事なき事を得たのだ

(頭部ダメージ71%。畜生!言ったそばから奥の手を使う事になるとはな)

「スナイパーライフルなら一発打ったらリロードが必要な筈だ。ゲインを上げろ!音波ウイルスから振動攻撃に切り替えだっ」

『はッ』

フォルテスオーノは最大音量でギターを掻き鳴らす事により破壊力抜群の音波攻撃を行う事ができる
地鳴りのように響く轟音はまるで地震のように大地を揺らし、周囲のあらゆる物を粉々にしてしまう威力を持つ
しかしそれを使ったフォルテスオーノ本体にも多大なるダメージを与えてしまう諸刃の剣だ

「このためのスピーカーさ。フルパワーの爆音を直接喰らわないよう、わざわざスピーカーを背負うタイプに変えてね!」

『準備完了です』

「ウインドミルでぶちまけろッ」

エフの腕が風車のように回る。核兵器のスイッチが今、押されようとしていた

(しかし、いくら自傷ダメージが減るよう工夫していても、このダメージでは相当運が無い限り俺の勝ちは無いかもな……)

95青崎 修:2014/03/10(月) 03:20:47 ID:hG4l/CzQ
>>94
「…?」

あれほど必死になって撒き散らしてきた音波攻撃を突然止めた事に対し、怪しみ、いぶかしむ。

『…今度は何だ?』

損傷率の上昇が完全に止まり、一瞬で0に戻る。しかし、青崎の表情は険しくなった。

(何故……何故演奏を止めたんでしょう? ダメージの蓄積? バッテリーの浪費? それとも……)

その時、エフのスピーカーから駆動音が聞こえた。

(!! 違う!! 攻撃を止めたわけじゃない、これは…)
「ジェイク!!」
『わかってる!』

スナイパーライフルを投げ捨て、ロングソードを再び装備する。それと同時にバックパックをパージ。そしてローラーダッシュを起動、先程より高い摩擦音を発した後、凄まじい勢いで駆け出した。

『うおおおおおおおおおおおっ!!!』

バッテリーとモーターの負担を度外視した速度で駆け抜け、ほぼ一瞬にして距離が詰まる。
そしてクロスレンジに入り、ロングソードを突き出した瞬間ーーー











周りの戦車は吹き飛ばされ、地面は大きく陥没、屋根や壁も殆ど崩壊し、二機は半ば野晒しになっていた。

「………」

青崎は静かに目を閉じた。
装甲の大半が消し飛び、ケーブル類が露出。フレームはひしゃげ、辛うじて原形を保っている程度。バイザーも左半分辺りから割れている。
そんな状態でも、ジェイクは立っていた。

だがそれだけだった。

《頭部損傷率:100%》

96組替え式の名無し:2014/03/11(火) 00:09:40 ID:Cavuxfd2
>>95

自分の音波攻撃に耐えるため、フォルテスオーノのボディには特殊な加工が施されている
だが、攻撃があまりにも強過ぎる故にほぼ意味を成しておらず原型を保つので精一杯というのがエフのモデルの現状だ
当然この攻撃も例外ではなく、エフのパーツ全てが多大なる損害を受けていた
やけに凝った装飾は滅茶苦茶になり、一目見ただけでは戦車の残骸と見分けがつかない程に大きくパーツが破壊されている

《頭部ダメージ100% 戦闘不能》

引き分けではなく敗北だった
やはりあのダメージし量での音波攻撃はあまりにも無茶があったのだろう
ジェイクに音の攻撃が届いたその一瞬。既にエフは全壊していたのだ

「畜生ッ!」

隆宗がDVNOをコンクリートに
叩きつける
今までいた筈のギャラリーは、もう既にいなくなっていた
二人しかいない空間に、無機質な負け惜しみだけが響き渡る

97荒田シン:2014/03/11(火) 02:02:31 ID:qcjLMZE6
>>93
 フィールグラムの光が落ちて、あとには残骸が残った
 結果は相打ち。両者の連勝数はこれで振り出しに戻ったことになる

 しかし、結果を見届けたシンは微動だにしない
 あの状況下から相打ちにもっていったのだから喜んでもいいような気もするが、
 その顔はまったく別の何かに驚いているようだった

 やがてじんわりと熱が広がっていくように、その顔が喜色に歪んでいく
 アヘ顔一歩手前の顔を晒した彼は気でもやったかのように笑い出した

「そうか、そうかそうかそうか!」

 そこには爽やかにTシャツを着こなす好中年はいない
 ただの頭のおかしな男がいた

「ああ……いい。実にいい」

 ひとしきり笑ったシンは、喜色満面のまま真一に話しかける

「実にいいファイトだった。いい成果が得られたよ
 お礼と言ってはなんなんだけど、もし何か欲しいパーツがあれば調達してプレゼントするよ!」

 なんだか、ひどく不気味だった

98青崎 修:2014/03/11(火) 20:58:14 ID:hG4l/CzQ
>>96
「…………………」

これは、勝利と言えるのか。
確かに幾つもの銃弾を浴びせ、正体不明の攻撃を凌ぎ、いいところまで追い詰めたのは事実だ。しかし、それでも“戦いに勝った”という実感がわかず、腑に落ちないでいた。

(…でも、それを考える前に、やるべき事がありますね)
「…隆宗さん、でしたか? …………どうか、エフを労ってあげてください。彼女は本当によく戦いました」
『ああ、あの音波攻撃はとても厄介だったよ』

月並みだが、その言葉に一切虚偽はない。
青崎は足元に転がってきたDVNOを拾い、隆宗に近付く。

「それと、もしよろしければ、今度はフィールグラムの外で演奏を聴かせて下さい」

屈託のない笑顔でそう言い、DVNOを差し出した。

99滝沢真一:2014/03/11(火) 23:53:50 ID:YBvME0gk
>>97
「ロランッ……――――!!」

滝沢は機能停止したロランの元へ駆け寄ると、直ぐさま機体を回収し、メディカルポットに入れる。

「すまねえ、ロラン……。最後の一発は、完全に俺の油断だ」

『――――いや、油断していたのはこちらもだ。やはり、実戦とは侮れないものだな……私もまだまだ精進が必要なようだ』

滝沢はDVNO越しに詫びの言葉を入れると、ロランもそれに返答する。
流石にムベンガを撃ち返してくるのは計算外だったとしても、オリジナルの胴体部など、相手が他の武器を隠し持っている可能性ならば充分あった筈だ。
滝沢もその可能性は考慮していたのだが、攻撃の絶好機と見て、思わず勝負を急いでしまった。――――油断としか言えないだろう。

――――と、そこでこちらへ近付いて来る荒田の姿が視界に入り……、

「えっ? あ、ああ……いい勝負だったな」

先程までは爽やかな雰囲気だった彼が、突如として豹変した様子を見て、
普段は強気な滝沢も、珍しく引き気味になってしまう。
愛機のHMPも不気味だったが、ファイターはそれ以上なのか……。

「……いや、気持ちは有難いけど、見ず知らずのアンタからいきなりパーツなんて貰えないって……。
それに、まだまだ今日のイベントの時間も残ってるしな。俺はもう一度最初からやり直すけど、アンタもそうするんだろ?
お互いさっさとファイトに戻ろうぜ、じゃあな!」

滝沢はそう言ってメディカルポットからロランを回収すると、逃げるようにその場を去って行く。

荒田は一体何を見て、あんなに不気味な笑みを浮かべていたのだろうか――――。
その笑みを見て、滝沢は何やら得体の知れない嫌な予感を覚えていたが、
今はまだ、それには気付かないフリをして、今日のファイトへと戻ることにした。


//では、ここら辺で締めさせて貰いますね。
お付き合いありがとうございました。

100斎獄:2014/03/12(水) 01:35:07 ID:Cavuxfd2
>>98

「……ありがとう」

隆宗が俯きながら返事をし、力なく手渡されたDVNOを握る
ファイトで負ける最大の理由はマスターの力不足だ。だからこそマスターは最後まで一緒に戦った仲間を労わなければいけない
しかし今の隆宗はそんな事を出来る余裕はなかった
エフの残骸を鞄に入れるとすぐに逃げるようにして街のもっと深い場所へ消えてしまった

(俺は……ダメだ。きっと、いつまでもダメ……自分で作ったHMPの事を何も知らない……)

101小日向 愛莉:2014/03/12(水) 10:28:11 ID:4yJzobAE
>>91

ビル陰に肩を寄せて、カラメリゼはその高度な熱源探知センサーでルリの立ち回りを追いかける。
バッタのように飛び駆ける敵は、本来であればディバインライトと相性がよくない。
どうせ直撃を受ければ終わりであるのならば、相手の動きが遅いほうがプレッシャーをかけやすいからだ。

このまま接近を待ち続けて頭上にでも抜けられたら勝ちは遠のく。
決断は、一刻も早くなされなければならない。

『愛莉っ、敵の動きは見えているか?』
「はい。ちょこまかと……七面鳥撃ちとはいきません」
『それで当てられるのか』
「むずかしいオーダーですね」
『で、あろうな』
「だけど、だいじょうぶです。タイミングは私にまかせてください」

愛莉の控えめな表情を更に固くするように緊張が募る。それでも、拳を握ってパートナーに応える。
カラメリゼもまた主を信頼して、ディバインライトのコッキングレバーをぐっと引き込み、射角の調整を始めた。
電力が急速に汲み上げられて砲身内に満ちていく。≪マジェスティ≫の遮光バイザーが降りる。もう後戻りはできない。

【そうだ。ディバインライトを世の常のビーム・キャノンと同じに扱ってはならぬ。
 普通ならば避けられて終わりになる状況も、こいつなら……】

「……今です!」
『喰らえぇぇぇーーーーッッ!!』

その瞬間だった。激しい光が銃口で弾け、それが空を割るようにしてビルの間へと伸びていった。
衝撃波で吹き上がる煙が輪を描き、閃光は飛び跳ねるルリを飲み込まんと殺到する。

ルリがただ「射撃を」回避することは、実はそれほど難しくない。
いくらビームが巨大だとはいえ、あくまでも直線の射撃。思い切り身体を切れば範囲から逃れることも容易いだろう。
だが問題となるのは、衝撃――そしてそれによって巻き上げられる、砕けたガラスや瓦礫の破片だ。
きっと、四方八方から刃の雨が襲いかかるように感じることだろう。

102青崎 修:2014/03/12(水) 21:49:17 ID:RkaxnG9c
>>100
「ありゃ」

隆宗の背中を見送った後、後頭部を掻く。


「………………」



「………帰りましょうか」
『……そうだな』

踵を返し、その場を後にした。






「2年前のシュバリエハート社のトラックによる事故は、ブルーローズが起こしたものであるとの見解が強まりーーー」
「そうそう、あそこのコッペリアって喫茶店のコーヒーがまた美味しくてね……」
「対決! 白熱! どこまでも熱いよ〜♪」

帰り道の電気街、テレビなどが並べられた展示スペースの前を歩いていた。

「…はぁ、どうしてあの店は羊羮の入荷を取り止めたのでしょう……懐に忍ばせるにはあのサイズがベストだというのに」
『いつも持ち歩くなら、さっきのチョコレートも悪くないと思うけど』
「あー、チョコは駄目です。人肌に近いと溶けるので」

他愛のない話をしながら、喧騒を掻き分けていく。やたらと待ち時間の長い交差点を越え、夥しい数の広告を無視し、帰路に着く。
あの男と再びフィールグラムを挟むことを信じながら。

//それではこのあたりで終了とさせていただきます。本当にありがとうございました。

103麻木ナオヒロ:2014/03/13(木) 19:56:28 ID:MaJCSy76
>>101
撃ってくる……!
《フェーダ》の貧弱なセンサーでも捉えられる、巨大なエネルギーの膨張。
別のフィールグラムを観戦していたギャラリーも今だけはここへ視線を送っている。
注目を受けているのはあくまで自分ではないが、ちょっと気恥ずかしいというか緊張するというか。

「……ルリ、越えるよ」

【跳躍の頂点を過ぎ、落下に入る瞬間を狙われたが、即座にスラスターを切り返す。
 私が行くべき場所は一つ、上だ。
 回避の自由度は広い方がいい。
 こちらも攻めにくい場所へ行くことになるが、先を見すぎて今を落とすような無様な真似はするまい。
 高く、高く──────!?】

『……圧巻、だな』

【見下ろす光の大河に思わず口を突いて出る。
 想像以上の速度と範囲だった、というのは言い訳か。】

《脚部損傷:損傷率54%》
《左脚部喪失》
DVNO上の表示に、思わず眉間を寄せてしまう。
右足はつま先部分から、左脚は膝よりやや上からが殆ど蒸発したように無くなった。
これで地面に降りることは殆ど不可能になり、尚且つ武器を失ったことになる。
立ち上がりとしては到底いいとは言えない状態だ。

「ごめん、正確な情報を送れなかった俺のミスだ」

『いや、私の判断も甘かった。
 慣性に任せて全力で下に行くべきだった……かもしれないが、過ぎたことは後だ』

一定にまで高度を上げたルリは、間髪入れず一直線に《ロードモナーク》へ向かっていく。
射撃姿勢を取っている今は隙だらけには違いない。
相手が立て直すより早く、攻撃に転じることが出来るかは微妙なラインだ。
もし行けるのならワイヤー射出の射程込みでバンダースナッチをぶち込みたいが……。

104小日向 愛莉:2014/03/13(木) 21:29:45 ID:4yJzobAE
>>103

それはまるで逆向きの稲妻のように空を灼いた。
光が貫通したビルディングは真っ二つにされ、雲間には不自然なドーナツ穴が開いた。
圧力だけで触れても居ない窓ガラスが砕け散り、あまりの爆音に筐体の集音マイクの感度が二段は下がった。
そして二度言うまでもなく、脚部を半ば消し飛ばされたルリ。

しかし、これほどまでの破壊を振りまく者には相応の代償が伴う。

《EN残量:53%》
《ディバインライト、強制冷却モード。使用制限解除まで残り120秒(往復2レス)》

カラメリゼはこの一撃のためだけに、開幕からほとんど半分のENを削り落としたのだ。
未だ飛行能力を保有しているルリを相手取る上で、この差が大きく響く可能性は否めない。

「……すてきです。カラメリゼには申し訳ないけど……。
 これがラストオーダーだと……こちらも張り合いがありませんから」

《ディバインライト》の暴威が与える損傷を脚部の中破にとどめた相手の采配を、愛莉は乏しい表情ながらに賞賛する。
澄んだ瞳にまっすぐな闘志が宿る。もはや家に彼女に並ぶファイターは居ない。「外でやるなら、こうじゃなくちゃ」と。

事実対戦相手はやり手だ。脚部の損傷にも臆することなく、むしろ身体が軽くなったとばかりに切り込んでくる。
果たしてその読みは正しい――今のカラメリゼは、砲撃を終えてコードの抜き取りと銃身の折り畳みを行っている最中だった。
つまり、少なくとも「手」は完全に塞がっているのだが。

『毒手か。なら身体で受けるわけにはな!』

左肩から大きく張り出した武装バインダーが、動く。
貝殻のような形状。その裏側に整列した4門のエネルギーキャノンがそれぞれに光線を吐いて、これ以上の接近と篭手の射出を牽制しようとするだろう。
このまま単純な軌道で突き抜けるなら、何本かは受けることになるかもしれない。

105麻木ナオヒロ:2014/03/14(金) 21:40:11 ID:MaJCSy76
>>104
【迎撃がくる。4の砲門が私を見据える。
 《QBF》が無事なら《バンダースナッチ》で去なしてやれるが、今は無駄な損耗を抑えたい。
 奴の砲は左肩が接続部だ、右から回り込むというのが有効……でもないな。
 まだ距離がある以上、下手に防御的な思考は隙を生むだけだろう。】

相手《ロードモナーク》は一度《ディバインライト》を使用した以上、既に残りENはこちらをかなり下回っているはず。
積載物の多い重武装に、それを高速で動かすためのブースター。
高性能なセンサーを積んだヘッドパーツに独立して稼動するバインダーアーマー。
どれもがENに重く負担を掛けるだろう、相手としては攻め切りたいはずだ。
その旨をルリに伝えながら、作戦を送る。

【……私としてはこのままやり合いたかったが、ナオヒロの指摘ももっともだ。
 敢えてこちらから腹を見せ、食らいついてきたところを逆にガブリと。
 後の先を取るような駆け引きは得意ではないが、私達は勝つために戦っているのだ。
 勝つためならばやってやるさ。】

指示から数秒としないうちにルリはビームの一本を被弾。
バランスを失い急降下、地面と激突する。
いくらかのダメージを伝えるウィンドウがDVNOに表示される。
どうやら上手く墜ちたようだ、ダメージはどのパーツも10%台で抑えられている。

今回ルリに指示したのは、使い物にならなくなった脚部か、装甲の厚い方である篭手でビームを敢えて受けて墜落すること。
────どうやら上手く右脚部で受けることか出来たようだ。
墜落すると、このフィールドの構造物は脆いために派手に崩れる。
故に落下の衝撃は分散しやすく、逆に落下の見栄えは派手になる。
そうして落下すると同時に、左右どちらかの《バンダースナッチ》を錨のように地面に打ち込み、奇襲のための準備とする。
《バンダースナッチ》を打ち込んだのを誤魔化すためにも、派手な落下が必要だったのだ。
後は相手がこちらまで寄ってきてくれるかだが……。
現在のルリはカメラアイを消灯させ、エラーを起こした振りをしているが、相手が釣れなければ……。
また、あまり長時間狸寝入りを続けるわけにも行かない。
狸寝入りだとバレてしまえばそれこそ隙を晒してしまう。

106小日向 愛莉:2014/03/15(土) 04:30:18 ID:4yJzobAE
>>105

土煙を巻き上げ、立ち並ぶ家屋を下敷きにしながらルリは不時着したように見えた。
カメラを信じるなら脚部に着弾している。この分だと、スラスターを使わずに再び立ち上がるのは至難の業だろう。
つまり、頭側を抑えれば簡単にロックをかけられるということ。

しかし悠長に構えてはいられない。《ロードモナーク》の継戦能力の問題がのしかかって来るからだ。
砲撃時55cmに達する巨砲は、待機時でさえバッテリーを貪り食う。しかも今は強制冷却中。
……これがあるから《ディバインライト》は使いづらい。
既にしてEN残量は45%を割り込んだ。せめて、この黄金のボディが跳ね返す光のひとすじでも電力に変換できればよいのだけど。

【一時的な機能停止か? しかし、動力を寝かせている様子はない。それはこのセンサーが教えてくれる。
 それを理解した上で、追うか待つかは……宗教、か。ひとつには決めがたい。
 一撃加えられればほぼ勝ち。だが、相手の刃に塗られた毒は盾では受け流せぬのだ。】

破壊のあとの灰色の世界で、二騎が向き合う。先に静寂を破るのは――

「――いいでしょう、勝負ですっ」

純金の王者――《ロードモナーク》の、カラメリゼだった。
彼はルリの頭側に陣取ると、右肩に二分割状態でマウントしていたハルバードをそれぞれ両手に握った。

本来なら石突きになるはずの部分から光剣が伸び、斧頭がついた方は戦斧として機能する。
それに加えて、身を護るように前へ突き出したバウンダーにもエネルギーソードが内蔵されている。
標準仕様の《ロードモナーク》ではできない三段構えの刃がそこにはあった。

(足さばきができる分、打ち合いではこちらが上です。手数だって。
 死んだふりをして待ち伏せるつもりなのはわかってます。だからなおさら正面から、次の策も無いうちに……!!)

スラスターが唸り、王者のまっすぐな行進が始まった。万が一突撃されても当たり負けしないように全力で。
逆に言えば、うまいこと側面に逃れられたりすると大きな隙を曝すのだが……。
止めることも躱すこともできないなら、カラメリゼは3つの刃を次々とルリに振りかざそうとするだろう。

107麻木ナオヒロ:2014/03/17(月) 07:40:20 ID:MaJCSy76
>>106
……とりあえずは釣れて良かった。
警戒されているものの、射撃よりも格闘を選択してくれたのはありがたい。
しかし格闘戦は向こうの畑でもある。
まだここからだ、気は抜けない。
と、こちらが奇襲を行うのを見越してか、高速の突進が始まる。
速い。が、まだ、遠い。
間合いはこちらの方が大きく劣る、内に入らなければ弾かれるだけだろう。

【うつ伏せで、瓦礫に突っ伏して待つ。
 落下の際に打ち込んだ左の《バンダースナッチ》は今、8時方向の瓦礫に埋まっている。
 敵の金ピカの進行方向からはやや外れるような位置だ。
 布石はどうにかなった、後はナオヒロからの合図を待つばかりか。
 合図を受ければワイヤーを急速に巻き取り、ワイヤーに引きずられるようにしてその方向──左後方へと移動する。
 ……というのはフリだ。
 ワイヤーはかなり伸ばした状態で、多少巻き取った程度では体を運ぶことは到底出来ない。
 ただ音と、ウィングバインダーの吹かしなどによってそれっぽく、距離を離してタイミングをずらす意図を見せようというだけだ。
 実際は全く移動しないままに、右の《バンダースナッチ》を相手に突き立てる手筈だ。
 一瞬騙せれば御の字だが、騙されずとも仕掛ける。
 相手のパーツならばどこでも良い、触れさえすれば侵してやる。
 一撃放った後に、やっとワイヤーが体を牽引するように……回避運動をするつもりだが、どうなる】

「……今!」

ルリがハルバードの圏内に入る数瞬前。
ワイヤー射出込みでももう少し寄せたかったが、これ以上はリスクが大きすぎる。
突撃の速度もある、どうなるか。

108小日向 愛莉:2014/03/19(水) 03:28:26 ID:4yJzobAE
>>107

瓦礫の中に身を埋めたルリの姿が見える。脚を打ち砕かれ、地に縛りつけられたその様が。
愛莉は、相手の姿を世間並みの女の子と同じくらいには「痛ましい」と思ったが、気持ちと勝負は別だ。
EN消費から考えると、ガン逃げをされたら負けかねない。
罠を構えていようとペースを握っているのは依然としてこちら――なら、虎穴に入る時は今なのだ。

あと少しで刃先が触れる、というところで、右の《バンダースナッチ》が牙を剥く。これは予想の範囲内だ。
すかさずハルバードの槍頭を前に向け、金属の刃とフックを相手の爪にかち合わせる。
すると巨腕が一瞬押しとどめられ、触れ合った鋼から火花が散った。

『これが小兵の腕が出す力……ハハ、面白いではないか!』

その均衡が保たれるのはほんの一瞬。
ハルバードはすぐ突き出される腕の力に押し負け、飢えた爪の前にカラメリゼの胴が晒される。
《ロードモナーク》のBODY装甲に見かけほどの防御力はない。
きらめく鎧に穴が通され、繊細な機体にウイルスが流れこむことは避けようも無かった。

――ああ、でも、〝一瞬〟だけは稼いでいる。

瓦礫の中に隠したワイヤーがルリの身体を明確に引っ張る直前、カラメリゼの左肩が動いた。
光熱を束ねた剣は消え去り、代わりに晒されるのは裏面に並んだ4つの孔。

「お客さま、お待ちを。あつあつのがまだありますよ……」

この時を待っていたとばかりに、乾いた大気を裂いて閃光がとぶ。
近距離まで踏み込んだ上での四連装エネルギーキャノンによる追撃が――ルリを、襲う。

《EN残量:35%》
《強制冷却システムにエラー発生、思考プログラム稼働率低下……》

それさえ凌げば、ディバインライトによる消耗とウイルスという二重の重荷を背負った彼が更に攻めてくることはないだろう。
ジリ貧を嫌っての決死の一撃。吉と出るか凶と出るか。
コーヒー占いは、飲み干してみるまでわからない。

109麻木ナオヒロ:2014/03/20(木) 02:00:23 ID:MaJCSy76
>>108
【入った……!
 後は、ここを切り抜けることだ。
 ウィルス注入を行った、武器として左が無事ならばもう右の《バンダースナッチ》は捨てて良い。
 奴の砲を逸らしさえすればいい……────!?】

誤りに気付く。
左後方へ逃げたのでは、相手の射線上から殆ど動くことが出来ないことに。
もっと鈍い角度で撃ち込んでいたら……と思うが、そうなるとハルバードで左手を潰されるリスクが高い。
もし右手側の《バンダースナッチ》を撃ち込んでいれば、アーマーの形状もあって回避は確実なものになっていただろう、……少なくとも今よりは。 
ルリの体が下がる。
それより僅かに遅れて放たれた光弾は、瞬きの間にルリを捕らえた。

────────────

相手の勝利を告げるシステムメッセージが表示され、フィールグラムのホログラムがとけていく。
ルリは最後に回避運動を取ろうとしたが、流石にあの距離からの射撃には反応が間に合わず。
見事に頭を打ち抜かれて機能を停止させた。

「ありがとうございました。
 いやー、流石にお店のロゴ背負ってるだけあるというか。
 完敗です。」

『今回はお前の指示が駄目すぎただけだ、負けはしたが完敗ではない。
 こんなものが私の実力ではないからな!』

相変わらず負けたというのに威勢がいい……。
愛機をメディカルポッドへ放り込みながら、ライバルサイドへ苦笑いを向けてしまう。

110小日向 愛莉:2014/03/23(日) 15:23:46 ID:4yJzobAE
>>109

勝った。その事実が、少女の変化に乏しい表情をわずかに綻ばせる。
やわらかそうな頬がむんにゃりと緩んだけれど、それでもすぐに元の澄まし面に戻った。

「こちらこそありがとうございます。
 あそこで避けられたらもう手も足も肩も出ないので、ギリギリの勝負でした」

こちらも、胸に大穴を穿たれたカラメリゼを抱え上げる。35cmもある準大型機は、ちっちゃな手にはちょっと余る感じだ。
まだウイルスのせいで酔っているのか『塗装が剥げたぁ〜〜』とうるさいので、早々に修復装置の中へダンク。

「尖った組み方だけどちゃんと状況に合わせて動ける。ルリさん、いい子だと思います。
 またいつか、そうですね……次は、私の家(うち)で……」

少女は胸のあたりを指さしてちょっとだけ恥ずかしそうに眼を細める。
改めてポケットのロゴを見ると、そこには《HMP Cafe Coppélia》の文字。

「そんなに大きなお店じゃないけど、フィールグラムを置いてるんです。
 お暇な時にお越しください。コーヒー1杯ならサービスします。
 ……お兄さん、お名前は?」

111麻木ナオヒロ:2014/03/24(月) 17:30:04 ID:MaJCSy76
>>110
「ああいうときに決めきれないのはまだまだアセンとプランの練り込みの甘さがねー…」

罠を張るならもっとアクティブに釣っていくか、《新絡婦》くらいの待ち性能がいるのかな。
なんにせよ銃器ないし牽制できる武器が欲しくなる感じだ。
《バンダースナッチ》は潰されると辛いから軽く使っていけないし。
……と、こういうのは後でいいか。

『いや、まだまだ甘いさ。
 本当に動けるHMPを知っている以上、これではな』

「まだまだ経験値が足りてないね。
 ……ええと、コッペリアでいいのかな?」

流石に女児の胸をジロジロと見ることは出来ないのでさっと見て目はメディカルポッドへ。
あ、後で住所を調べておこう。
タブレットにコッペリアとメモを打つ。

「あ、名前だっけ?
 麻木ナオヒロといいます。
 君の名前も聞いて良いかな?」

112青崎 修:2014/04/09(水) 04:47:27 ID:MGhzKTGE
「ふ〜む…電子妨害キャンセラー、ハイグリップタイヤ、ナックルシールド……どれも欲しいですけどやっぱり値段が張りますね……」

バイトを終わらせ、帰り道にふと立ち寄ったHMPショップで、青崎は財布と相談していた。

「うーん…」

10秒程値札とにらめっこをする。

「………今日はやめときますか。ファイナルハンターGXも買わなきゃいけないですし」

商品を棚に戻し、踵を返す。

「給料日までには、まだ日にちがありますね…」

そして対戦コーナーを抜け、出入り口に差し掛かろうとしたところで、一人の客が入ってきた。

113滝沢真一:2014/04/09(水) 23:11:13 ID:ILGDV4KA
>>112
「ちわーっす」

店員と軽く挨拶を交わしながら、入り口の戸を開く少年が居た。
その様子から察するに、彼は恐らくこのショップの常連客なのであろうか。
服装は赤いTシャツの上から学ランを羽織ったラフなものであり、
黒いウルフカットの隙間に見える眼光からは、性格の強さも窺うことが出来る。

――――彼の名は、滝沢真一。
この辺りでは中々の実力者として名が知れた、HMPファイターだ。

「……ん? アンタ、あんまり見ねー顔だな。もう帰っちゃうのか?」

――――と、そこで店を出ようとする青崎の姿が目に入り、滝沢はそれを呼び止める。

こんな店でHMPのパーツを物色しているとなれば、青崎もまたファイターなのだろうということは簡単に推察出来る。
滝沢はそれを分かっていた上で、わざわざ青崎を呼び止めたのだ。

となれば、滝沢が声を掛けた理由だってそう難しいものではない。
つまるところ、滝沢は「せっかく来たなら帰る前に俺と一勝負しようぜ」と、そのようなことが言いたいのだろう。

114青崎 修:2014/04/10(木) 02:32:18 ID:tv4dTpXI
「え?……ああはい、もうこれ以上用もありま……」

振り向き、彼と目を合わせた時、青崎は全てを悟った。

「……すね。丁度、対戦相手を探していたんです」

思わず口許が緩んだ。




対戦コーナーに移動した二人は、フィールグラムを挟み対峙する。少年は名が知れたファイターなのか、既に小規模のギャラリーが出来ていた。

「では、ステージはランダムにしますね」

青崎がモニターを操作し、画面に街、砂漠、火山といった情景が高速で切り替わりを続ける。

「……さて」

DVNOを起動し、相棒の状態を確認する。

「ブレイズ、調子はどうですか?」
『万全です』

相変わらず短く淀みのない返事だ。
だがそれこそ期待していた反応である。

そしてステージが決定され、一瞬ギャラリーが湧く。

/投稿時間が
/偶数:森林
/奇数:城下町
/00:摩天楼

115青崎 修:2014/04/10(木) 02:42:19 ID:WHPEfAEM
森林

極めて背の高い木々が一定以上の間隔を空け、そこらじゅうに生い茂っている。空を覆う葉から覗く木漏れ日が神秘的だ。

116滝沢真一:2014/04/10(木) 19:41:42 ID:ILGDV4KA
>>114
「ハッ、そうこなくっちゃな! 話が早くて助かるぜ」

微かな笑みを浮かべる青崎に対し、滝沢も思わず口角を上げる。
季節は4月――。青崎の微笑を、春に溶け残った雪のようにと喩えるならば、
差し詰め滝沢のそれは、満開に咲き誇る桜のように、と言うべきか。

笑顔の質は違えど、その内に秘めたる闘志に差異はないだろう。
未知なる強敵との戦いに、心を弾ませずにはいられないのが、HMPファイターという生き物なのだ。

――――――――
――――――――――――

そして舞台は移り変わり、フィールグラムへ。
“ブレイズ”と呼ばれた青崎の愛機を見据え、滝沢はそれを分析する。

アームドボーイ――。継戦能力の高さ以外に特筆すべき性能はない、平凡な汎用機であるが、
特徴がないというのは、裏を返せば何をしてくるか読みにくいということでもあり、
射撃戦から格闘戦まで自在に立ち回られてしまえば、非常に厄介な相手になると言えるだろう。

「……そしてフィールドは森林、か」

滝沢はランダムで決定された舞台を眺めてポツリと呟きながら、
自らの愛機である、真紅の装甲を纏った騎士型HMP――“ロラン”をフィールグラムに置く。

脚部ローラーや大型ブースターを用いた高速戦を得意とするこちらにとっては、とても戦いやすいと言える場ではなく、
メインウェポンである大剣を振り回すにも、並び立つ木々が邪魔になるかもしれない。

滝沢からすれば、不安要素を多く抱えることになった試合だと言えるが――――上等だ。
不利な条件ならば、それに合わせて戦い方を考えるのも、HMPファイトの面白さというもの。

「まずは相手の出方を見るぞ。気を付けろよ、ロラン」

『――――了解、ならばこの場に留まり迎え撃とうか』

滝沢はDVNOを通してロランへと指示を飛ばし、それを受けたロランは迎撃の姿勢を取る。
手札の読めない相手に対して、滝沢が最初に選択したのは“待ち”の構えだ。

――――これで、こちらの準備は全て整った。
青崎の初手はどう動くか――。戦いの火蓋が切って落とされるのは、もう目前まで迫っている。

117青崎 修:2014/04/11(金) 02:56:07 ID:FpjlOVz6
>>116
木々がざわめき、小鳥が囀り、枯れ葉が眠る。そんな自然の楽園で、激闘が始まろうとしていた。

「……? あまり見かけない機種ですね…」

少年が繰り出してきたのは、見慣れぬ赤い騎士だった。マントと大剣を携えたその雄姿に、青崎は一瞬気圧されてしまうが、冷静に分析する。

(マント状のパーツはスラスター? とすると近接高機動型か…いや、それより左腕の武装が気になります…ただのクローではなさそうですね…あれには注意しておきますか)
「ブレイズ!」

呼び掛けに応じて、ヒロイックな頭部が特徴的な機体が現れる。

「あの左腕、どう思いますか?」
『近接戦闘用のクローと思われます。それ以上はデータ不足です』

(やはりブレイズもわかりませんか…)

相手から仕掛けてくる気配はないようだ。

『………』

姿勢を少しだけ低くし、構える。

天に向かい枝分かれした額部アンテナが鈍く輝く。

「ソード!」

意外や意外。青崎が初手に選んだのは、正面からの接近戦である。

ブレイズは右腕の装甲からアイアンソードを展開させると同時にロラン目掛けて飛び出した。

「ラッシュを!」

ソードを振りかぶり、まずは幹竹割りを浴びせようと迫る。

(自分が多数の剣を持ち、相手が銃と剣を一つずつ持っているなら……警戒するのは………銃)

118滝沢真一:2014/04/11(金) 20:47:44 ID:ILGDV4KA
>>117
「いきなり正面から突っ込んで来るかよ……望むところだッ!!」

敵の武装は右腕のアイアンソードと、左腕のジェネリックマシンガン――。
明らかに格闘戦型と言えるロランの装備を見て、当然相手は距離を離したまま攻撃を仕掛けてくるだろうと思っていたが、
真っ先に接近戦を挑んでくるというのは予想外だった。

――――しかし、わざわざこの土俵で戦ってくれるというのならば、こちらとしても逃げる理由は無い。

「カウンターだ、ロラン! 出小手で相手の右腕を叩き落とせ!!」

『――――ハァァァッ!!』

滝沢が指示した“出小手”――とは、剣道におけるカウンターの一つであり、
相手が剣を打ち込むために、腕を振り上げたその瞬間を狙い、小手を合わせる技だ。

自らが剣道家である滝沢は、自身の技をロランにも習得させ、HMPファイトの戦術の中に組み入れており、
それ故に指示を受けたロランの反応も早く、実行に移すまでの動作にも迷いが無い。

ロランは右手に握った大剣――“ドラゴンバスター”を振るって、
ブレイズが剣戟を繰りだすために振り上げた右腕を目掛け、強烈なカウンター攻撃を狙う。

119青崎 修:2014/04/12(土) 19:02:52 ID:bh8Rtf1c
>>118
(! 反応が早い!)
「打ち落として!」
『てぁぁっ!!』

ブレイズはソードを早めに降り下ろすことで、間一髪ロランの攻撃を“叩き落とす”

ガギン!!

金属音とともに土煙が舞い上がる。

(先手を取れると思いましたが……甘く見すぎましたね)

ドラゴンバスターを地面に押さえ付ける。一瞬でも指示が遅れていれば、右腕が使えなくなっていたかもしれない。

「一度後退して、マシンガンを!」

作戦変更。すぐにドラゴンバスターを放し、数回後方宙返りをして距離を離す。

(…よし、上手く逃げられましたね)

追撃が来ないことを確認し、一息つく。
ブレイズはソードの刀身を収納、膝をついて射撃体制に移る。

『…捉えた』

照準を合わせた瞬間、フルオート射撃を見舞う。
赤き鎧を穿たんと、無数の銃弾が飛来する!

120滝沢真一:2014/04/12(土) 21:09:22 ID:ILGDV4KA
>>119
「ジェネリックマシンガン……ッ! 回避だ!!」

『ちぃっ……!!』

素早くこちらから距離を離し、反撃の砲火を放つブレイズ――。
ロランは右方へ身を躱して、その弾丸を回避しようと試みるが、やはり全てを避けきることは困難であるため、
急所に直撃しそうな弾だけを、左腕のクローで防御する。――《左腕部:損傷率38%》

さて、この間合いに留まっていれば、こちらの状況が好転することはなく、
滝沢としては一気に相手の機体に詰め寄って、再度格闘戦に持ち込むよう指示を出したいところだが、生憎フィールドはこの森の中だ。

凹凸の激しい地面の上には、更に枯れ木や落ち葉なども敷き詰められており、
この足場では、レッドセイバーご自慢のローラーダッシュも、充分なパフォーマンスを発揮できるとは言い難い。
――――ならば、どう動くか。

「跳べ、ロラン! 空中戦だ!!」

そこで滝沢が出した指示は“空中へと跳び上がる”ことであった。

それを受けたロランは、自身の背部に備えられた2基の大型ブースターをフル稼働させて、
ブレイズの直上辺りへと向かう、大ジャンプを見せる。
レッドセイバーのブースターは、短時間ならば擬似飛行にも近い程の跳躍が可能となる出力を持っており、
本職のフライメックなどには及ばぬものの、これくらいの空中機動ならば、容易く熟すことが出来るのだ。

『今度は、こちらの剣を――――受けてみろッ!!』

そして上空から狙うのは当然、反攻の一閃である。

木々の隙間から覗く太陽を背にしているというのもあり、この位置ならばブレイズが射撃で撃ち落とすことも難しいであろう。
ロランは相手の脳天を目掛け、落下時の加速も乗せた、重厚な唐竹割りを振り下ろした。

121青崎 修:2014/04/13(日) 17:38:35 ID:wttOe4e.
>>120
『!!』
(しまった、逆光……!!)

隕石のごとき勢いで迫るロラン、しかし今からでは迎撃も回避も間に合わない。

「ブレイズ、受け止めて!」

故に選んだのは、防御。
ソードを再度展開し、右腕を掲げる。

ガォン!!!!

『…ぐっ…!!』

先程より重い金属音。地面が軽く陥没する。
刀身は極めて堅牢にできているため、破損こそしなかったものの衝撃まで防ぎきることはできなかった。 《右腕損傷率:34%》

しかし、それでも膝を崩すことなくその場に踏みとどまり、鍔迫り合いに近い状態になる。

『は、ああ…っ!!』

踏ん張りを利かせ、少しだけドラゴンバスターを押し上げる。近接適性では負けていても、単純なパワーで劣っているわけではないのだ。

『逃がさん』

腕をクロスさせるようにマシンガンを構える。狙うは、先程ダメージを与えた左腕。

(やはりあの左腕は不穏です。潰すなら、今しかない)

122滝沢真一:2014/04/14(月) 02:26:57 ID:ILGDV4KA
>>121
『ぐっ……あぁ……ッ!!』

密着状態から再度火を吹いたジェネリックマシンガンの銃撃を避けられる筈もなく、
ロランの左腕は肘から先が吹き飛び、武器としての機能を完全に失ってしまう。――《左腕部:損傷率85%》

レッドセイバーの左腕パーツであるアームドクローは、
掌の中央部に“プロミネンス”という名の大出力ビーム砲を搭載した、必殺の銃火器としての側面も持っており、
初見でただの格闘武器ではないと勘付き、そこに攻撃を集めた青崎の注意力は大したものだと言えるだろう。

――――だが、しかし。

レッドセイバーが隠し持っている武器は、何もプロミネンスだけではないのだ。
例えば、頭部に備えられた大きな角――。
飾りとしてはやや自己主張が激しすぎるサイズのこれも、伊達で付いているわけじゃない。

赤い騎士の角は、まさに今のような状況での使用を想定して作られた、灼熱の剣――。

「この間合い、貰ったぜ……ッ! ヒートヘルムでブッた斬れ!!」

『――――オオォォォッ……!!』

そして滝沢が命令を与えると同時に、ロランの額の角が紅蓮へと染まった。

これは角を模して作られたブレードであり、刀身に高熱を帯びさせることで、敵機を溶断する代物だ。
リーチには優れないものの、切れ味は通常の実体剣の比にならず、生半可な装甲なら紙のように切り裂いてしまうことも出来る。

ロランは頭突きの要領でその剣を振るい、ブレイズの頭部を狙う――。
こちらは左腕を落としてしまったが、たとえ肉を切られども、骨を断ち返せば戦いに勝る。
HMPの急所――頭部パーツを目掛けて繰り出されたこの一閃の直撃を許せば、ブレイズにとっては致命傷にもなりかねないだろう。

123青崎 修:2014/04/14(月) 20:27:45 ID:MGhzKTGE
>>122
『!!』
「なっ…!?」

完全に装飾かアンテナの類いだと思っていた部分が赤熱したことに驚く青崎。

(まさか…これも!?)
「ブレ…!!」
『くっ!』

青崎が指示を出すよりも早くブレイズは動いた。

ガッ!

腕を完全に交差させ、ロランの顔面にクロスチョップを当てることで食い止める。しかし既にブレード部分は頭部に触れており、装甲がじゅう、と音をたて溶けはじめていた。

『ぬっ……くぅ………!!』
(…まずい、ですね…)
《頭部損傷率:17%》

数値こそ低いが、とても看過できるものではないということは今更説明するまでもない。

(一体、どうすれば…)

考えている間にも、ブレードは少しずつ、少しずつ侵入してくる。ドラゴンバスターを押し上げるときに負荷をかけすぎたため、パワーが若干落ちてしまっていた。

《頭部損傷率:23%》

「……………………」
「一か八か、やってみますか」

しばしの躊躇の後、意を決する。

「ブレイズ、2時方向にある木に向かって射撃!」
『う、おおっ!!』

肘を微妙に動かすことで狙いをつけ、ロランの左斜め後ろあたりにある細身の木にマシンガンを撃ち込む。
ばりばりばり、と表面があっという間に削れていき、瞬く間に中心部近くまで抉りとっていく。そして、ミシミシ、という音のあと、ゆっくりと“こちら”に倒れ込んできた。

124滝沢真一:2014/04/14(月) 23:23:33 ID:ILGDV4KA
>>123
(木を撃った……? なるほど、そういう狙いか……)

眼前にあるロランをスルーし、後方の細木を撃ち始めたブレイズを見て、
滝沢は青崎の考えを概ね察したが、すぐにロランへの指示を出しはしない。
相手側としても、これが破れかぶれの策だというのは承知の上だろう。

――――ならば、その手を逆にこちらが利用してやろうではないか。

(まだだ、ギリギリまで引き付けて……――)

ブレイズの射撃によって、見る間に削り取られていく細木を眺めながら、尚も滝沢は沈黙を保つ。
そして、その木がこちらへと倒れて来た瞬間を見て――――。

「――――今だ、ロラン! 全力で右ブースト!!」

『応――ッ!!』

滝沢が声を張り上げると同時に、ロランは全身のブースターを噴かし、右方へと離脱する。
そしてロランが消えた影から迫るのは、言うまでもなく、ブレイズが自ら撃ち抜いた倒木だ――。

密着状態の両機へと向けて木を倒し、現在の難を逃れるという発想は妙案であったが、幾らなんでもリスキー過ぎた。
青崎も当然こうなる危険は承知の上での指示であっただろうが、皮肉にもそれは、愛機を更なる窮地へ追い込む結果となってしまう。
既に目先まで迫った倒木は、果たしてブレイズに対し、どのような災禍をもたらすことになるのであろうか――。

125青崎 修:2014/04/15(火) 18:42:42 ID:i8Lyvtb6
>>124
「………………」

遠ざかるロラン、迫り来る倒木。
青崎は既に諦めたのかただ黙するだけだ。ブレイズも後ろを向いて動こうとしない。
そして、十分に距離を離され、頭部に木が直撃する瞬間ーーーーーー








(かかった!)
『ハァッ!!』

その場でサマーソルトを繰り出す。空中で逆立ちになると同時に倒木を思いきり蹴りつけ、ロランへと向けて飛ばす。
そう、青崎がわざわざ細身の木を選んだのは素早く倒すためではなく、今のブレイズのパワーで確実に蹴り飛ばすためだったのだ。

(あーよかった。もしあのまま踏ん張られてたら、かなり悲惨なことになってましたね)


ほっと胸を撫で下ろす青崎をよそに、ブレイズはだめ押しとばかりに倒木越しにマシンガンを叩き込む。

126滝沢真一:2014/04/15(火) 20:03:07 ID:ILGDV4KA
>>125
「なっ、蹴り返した……!?」

完全に相手の自滅を誘ったと思っていたが、まさかあの状況から宙返りを打ち、
こちらへ細木を蹴り返してくるとは思わなかった。

ロランは飛来する木を少しでも削り落とさんと、頭部バルカンを乱射するが、
今からではそれも苦し紛れにしかならず、倒木は胴体部辺りに直撃して、機体を後方へと吹き飛ばし、
さらにその裏からこちらを狙うマシンガンの追撃によって、右足パーツも膝から先を破壊されてしまう。

――《胴体部:損傷率58%》
――《脚部:損傷率72%》

『くっ……!!』

体を飛ばされたロランは、そのままブースターを噴射して、
生い茂った草木の中へと着地し、ブレイズの射撃の標的にならないように身を隠す。

「すまねえ、ロラン……俺のミスだ。――まだ、戦えるか?」

『ああ……。厳しい状況だが、武装を全て失ったわけでもあるまい。
――――次の指示を与えてくれ。私はシンイチの判断を信じよう』

相手には未だ決定打と言えるようなダメージを与えられていないのに対し、
こちらは既に左腕と右足を失い、まともに歩くことさえままならないというザマだ。

戦況は、圧倒的な不利――。
しかし、愛機が勝負を捨てていないというのならば、マスターが先に諦めるわけにもいくまい。
滝沢とロラン――――。二人の闘志は、まだ欠片一つだって毀れちゃいないのだ。

「次が最後のチャンスだ。――決めるぜ、相棒ッ!!」

『――――了解、相棒』

そしてロランはその場に身を潜めたまま、恐らくトドメを刺しに来るであろう、敵機の襲来を待ち構える。

来い、白き衣を纏った戦士よ――。
――――紅蓮の騎士が誇りし剣戟の真髄を、貴様に見せてやろう。

127青崎 修:2014/04/16(水) 20:18:33 ID:odACnFLs
>>126
「よし!」

作戦は見事に成功。カウンターと追撃により形勢は一気に逆転した。
だがまだ油断はできない。あれほど追い込まれたにも関わらず、たじろいだ様子は一切見られない。

(…まだ安心はできませんね)

静かに気合いを入れ直す。

「ブレイズ、跳んで!」
『ふっ!』

近くにある比較的間隔の短い二本の木に向かい跳躍、その間で三角跳びを繰り返すことでみるみるうちに高度を上げていく。そして枝に当たりそうな高さまで上がったとき、

「ソードを!」

ロランへ向かって跳躍、アイアンソードを展開し、今一度幹竹割りを繰り出そうと右腕を振り上げる。

『…決める』

この高さからの落下スピードを利用すれば、先程ロランが行った時と同様、直撃すれば致命傷となりうるだろう。

(流石に片足がなければまともな剣舞はできないでしょう。奇策を用いられる前に、ここで決めます)

128滝沢真一:2014/04/16(水) 22:12:13 ID:e4uZDw7w
>>127
「…………」

滝沢は静かに指示の言を唱え、それを受けたロランも、黙したままただ首肯する。
半分の長さになってしまった右足を地に埋め、左膝を立てた姿勢で、最後の攻撃のチャンスを待ち続け、
そしてその視界の中に、こちらへと飛び込むブレイズの姿を捉えた時――――ロランは再び動き出した。

この戦いが始まる前、滝沢はこう思った――。
“フィールドに並び立つ木々が、大剣を振るための邪魔になるかもしれない”――と。

――――冗談を抜かせ。

森林に佇む木々如きが、ロランの剣にとって――“竜殺し”にとって、障害になろう筈もない。
それどころか、上手く転ずれば自らの攻撃力に変換することだって出来ようものだ。

「行くぜッ――――――――!!」

そして滝沢が号令を掛けるに従って、ロランの握る剣一本に莫大なエネルギーが集約されていく。
その規模は、刀身に収め切れなくなった電流が、バチバチとけたたましい音を上げながら大気を迸り、
ロランの周囲で、螺旋模様を描くほど――――だ。



『「ド ラ ゴ ン ッ ……――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――― バ ス タ ァ ァ ァ ァ ァ ー ッ !!!!」』



滝沢とロランの咆哮が共鳴すると同時に、そのエネルギーが、刃の形を成して解き放たれる――。
――――瞬間、剣を纏うビーム刃が肥大化し、フィールグラムの最奥まで届く程の、尋常では無いサイズまでへと変貌した。
ロランはその大剣を、斬り掛かって来るブレイズの居る空間へ向けて――。自分から見れば前方斜め上辺りを目掛けて、逆袈裟の形で振り上げる。

しかしながら、この攻撃はこれで終わりではない――。

弩級を超える大きさに姿を変えたドラゴンバスターの刃は、その剣閃を描く最中、ブレイズへと続く道筋に並び立つ木々を片っ端から薙ぎ倒していき、
倒されたそれらは、次から次へと虚空の中に落ちて行く。

つまり、ブレイズを襲うのはドラゴンバスターによる剣戟と、降り注ぐ無数の倒木――その二つだ。
自らの持つ性能と、フィールド特性の両方を最大限に活かして繰り出された、怒涛なる一撃――。
この領域を制圧するかのような、絶対の暴威が、今――――ブレイズの元へ向かい来る。

129青崎 修:2014/04/17(木) 20:27:21 ID:dLJf2hDE
>>128
「げ!?!?」

トドメを刺そうとした矢先、突然ロランが巨大な光の剣を出したことに驚愕する。

(こ…こんな武装が…)

光の剣がせりあがってくる。あれの直撃を喰らえば一発でアウトだ。だがどうする、スラスターの類いを持たないブレイズは空中で移動することが出来ない。このまま自由落下で光に飲み込まれるのを待つだけだ。

「………く…!」

さらに追い打ちをかけるように、数え切れないほどの倒木が迫ってきていた。特大規模の上下からの挟み撃ち。
もはや、これまでか。

「……」

青崎の中にある考えが浮かぶ。
もう勝負は決まったようなものだ。このまま続けても相棒を無駄に傷つけるだけだ。たまには負けてもいいじゃないか。仕方ない、そうこれは仕方ないんだーーー。



そして、行動に移そうとしたところでふとブレイズの背中が視界に入る。

いつだって自分の命令を忠実に実行してくれた。
全く臆さず、全く怯まず、全く疑わず。
それで失敗したときも、その度に自分の落ち度といわんばかりに謝る。
どこまでも生真面目で不器用な相棒ーーー。








彼の中で何かが、変わった。

「ブレイズ!! 木を!!」

今思い付く最良の手段を実行に移さんと、叫んだ。

『はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

目の前まで迫っていた木を渾身の力で両断、輪切りにする。そしてすかさず切断面に足をつき、跳躍。その場からの離脱を試みる。
しかし、光の奔流から逃れることは出来ず、視界がホワイトアウトする。

『くっ………!!』











「ブレイズ、起きてください、ブレイズ!」
『…………う……』

マスターの呼び掛けに応じて、体を起こす。どうやら十数秒ほど回路が飛んでいたようだ。

「…よかった…」

自分の状態を確認する。《頭部損傷率:71%》《胴体損傷率:48%》《左腕損傷率:100%》《右腕損傷率:34%》《脚部損傷率:50%》

左腕が丸ごと持っていかれた。否、左半身を焼かれた、というべきか。機体の右側にはあまり損傷は見られず、左側だけ焦げ付き、溶けかけていた。とはいえ、左腕以外は動く。まだ戦える。しかし……

『…奴は何処だ?』

ロランの姿が見当たらない。辺りは横たわった倒木ばかりで、何も見えない。レーダーも今の攻撃で壊れてしまったようだ。
あの攻撃は明らかにバッテリーの負担を度外視したものだったが、だからといってゼロになったという保証もない。

130滝沢真一:2014/04/17(木) 22:43:42 ID:ILGDV4KA
>>129
――《EN残量:21%》

ドラゴンバスターを振り抜いた後の、ロランのエネルギー残量がDVNOに表示される。
レッドセイバーは莫大なエネルギー消費を前提とした設計を成り立たせるため、一般的な中型ヒュームボットよりも大分容量が大きいバッテリーを積み込んでいるが、
それでも消費量に見合う電力を確保出来ないため、その継戦能力にはかなりの難を抱えたHMPである。

しかし、今回ばかりは皮肉にも――――と、言うべきか。
戦闘の序盤で相手に左腕を破壊されていたことによって、ドラゴンバスターに次いでエネルギー消費の多い武装――“プロミネンス”を撃てなかったが故に、
僅かながらではあるものの、こうして今でもバッテリーの残りに余裕を持てたのだ。

そして、ようやく起き上がったブレイズの視界の中に、ロランの影は映らない――。
――――ならば一体、どこに姿を隠したというのか?


『――――――――――……惜しかったな』


ロランがそう呟いた場所は――――ブレイズの真後ろ、デュアルアイの死角であった。

あの攻撃を浴びせられながらも、機体を全壊させるまでに至らしめなかった、敵の手腕は見事と言えよう。
だが、そうであっても、ブレイズが意識を失っていた時間は十数秒――――。
それだけの間があれば、片足を失った今のロランでも、ブースターによるジャンプで、ブレイズの背後まで回り込む程度ならば造作も無い。

――――ブレイズが上体を起こした時、ロランは左膝を立てて座しながら、その首筋へと大剣の切先を突き付けていることになるだろう。

131青崎 修:2014/04/18(金) 22:15:07 ID:bdxkOHVc
>>130
「ふぅー……」

ブレイズが機能停止していないのを確認し、安堵する。
マシンガンが無くなってしまったのは痛手だが、あの状況を切り抜けられたのなら、安いものだ。

(それにしても…あんな武装があるとは……)

巨大なビームで対象を焼き尽くす。似たようなコンセプトの武装を知っているが、そちらは消費エネルギーが多すぎて大型機でも運用が難しい上、射撃武器である。

「……ますます怪しいですね、ロランという機体」

……それよりも、今はそのロランがどこにいるかわからないのだが。

「…仕方ないですね、しらみ潰しに探して見ーーー



カチャリーーー



跳んでっ!!」

後ろから金属同士の噛み合う音がした。ブレイズは反射的に大きく後方宙返りする。空中で下を見ると、自分のいた場所にドラゴンバスターを突き出すロランの姿があった。

(うわ、危な〜)

着地するや否や、剣閃を浴びせんと駆け出す。

「頭部のブレードには気を付けて!」

腰だめに構えたあと、水平に斬りつける!

132小日向 愛莉:2014/04/20(日) 23:34:02 ID:4yJzobAE
>>111

「麻木ナオヒロさん、ですね。忘れないよう気をつけます。
 私は愛莉……小日向 愛莉です」

名乗ると共に彼女はポケットの中から名刺を一枚取り出して、ナオヒロに手渡す。
そこには彼が調べるまでもなく、店の住所と電話番号などの情報が記載されていた。

「こんな格好で出歩くのはさすがに春休みの間だけですが、このショップにはまた来ると思います。
 ……あっ、焼きあがりましたかね」

メディカルポッドから排出されるのは、文字通り「ぴかぴか」のカラメリゼ。
彼を大きめのテディ・ベアのように抱くと、愛莉はもう一度ナオヒロの方に向き直る。

『ふぅ〜〜ッ、すぐ治せるとはいえウイルスは堪えるな。しかし、えげつないからこそ面白いというものだ。
 次の勝ち星はどちらに降り注いだものか、楽しみに待っておるぞ』

「……それでは、また。よろしくお願いします」

ぺこりと一礼すると、引き止められなければ二人は筐体の前を去ろうとするだろう。

133 ◆gWjNPtabuU:2014/04/21(月) 20:15:13 ID:MaJCSy76
>>132
「おっとご丁寧にありがとう。愛莉ちゃんか、よろしくね。
 お店には今度お邪魔させて貰おうかな」

=貰った名刺を眺めながら言う。
 地図を見れば、その喫茶店はよく利用している店舗から電車一本の距離だった。
 あちらの方面に行く理由がまた一つ増えたなー、なんて思いながら鞄から財布を取り出し名刺を仕舞う。=

『星は掴みに行くものだ。降ってくるのを待つなどと言っているなら、次は私が勝つだろうな』

毎回のことだが、自分に勝った相手に対する言い方ではないなー。
第一今の言い方だとこっちが何故負けたんだということになるだろ。

「ええと、ま、まあまたよろしく。
 リベンジは果たしたいからね」

『そのときには貴様のメッキすべて剥がしてやろう、覚悟しておけよ』

……こいつはもー。

134 ◆gWjNPtabuU:2014/04/21(月) 20:16:57 ID:MaJCSy76
//一文入れ忘れてました、
=ルリの後頭部にでこぴんかましながら、小さなファイターを見送った。=

135組替え式の名無し:2014/05/19(月) 01:01:28 ID:12Q0UPqk
一応、機体の詳細スペックだけ……

【HMP NAME】ルゥ
【TYPE NAME】ライカンスロープ(初期生産型)カスタム
【EX.PARTS】
二連装バリアフィールドシューター「ハウリングムーン」
 バリアシステムの応用実験から生まれた、出力可変式衝撃波投射砲とでも言うべき代物。
 高いストッピングパワーと静粛性、廃熱の少なさが特徴。
 武装の性質上弾体の認識も困難なため、身を隠しながらの狙撃にはうってつけの武装になるはずだったが、
 実際は距離によるエネルギーの散逸が著しく、有効射程は中距離がやっとで、反動も強い。
 目下の課題は集束機構の性能強化であるとの噂。

 機体背部に増設された可動肢に二門装備。
 システム作動に必要な動力は専用のカートリッジから供給される為、
 当機においては専ら本体出力に干渉しない近接防御火器として用いられる、らしいが……

「WSー03『クレセント』」
 長柄レザブレの定番の一つに数えられる、ウォーサイス・シリーズの三作目。
 癖のない使用感から、初心者から熟練者まで、幅広い層に親しまれる。
 出力は可もなく不可もなく。ブレードの射程は標準より長く、燃費も良好。
 こちらはポールを取り外し、ブレード発振機構のみをテールスタビライザに接続。
 上から薄くパテで固めて偽装し、相手の不意を打つ暗器として利用している。

136組替え式の名無し:2014/05/19(月) 01:01:59 ID:12Q0UPqk
//誤爆です、申し訳ない……

137組替え式の名無し:2023/08/28(月) 07:08:20 ID:49NSZ5f2
自殺しろ


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