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ホーリーランド2T目スレッド

38ホーリーランドGK:2014/08/01(金) 21:53:44
志筑綴子 行動提出2

鬼雄戯大会、初日。試合報告を受けて、パントマイムよしおの表情筋は動かなかった。もっとも、パントマイムの異才に全てを費やした彼の肉体は、既に自らの内情を表現する機能そのものを失っていたのかもしれぬ。
 ……希望崎学園渡り廊下の二階。蛍光灯に追いやられた夜闇の中、影はもう一つあった。

「一人全役。敗れましたな」

 生徒会長に比して、極端に小柄な少女である。紐でくくり、背に書物を負っていた。幼子めいた身長を遙か越える……巨怪に過ぎる一冊の本を。
 ――文学少女であった。

「……ええ、ええ。志筑綴子(しづき つづりこ)が敗れたこと、これも存じております」

 細く閉じられた、穏やかな目で言った。

「如何に浜星昇(はまぼし のぼる)が凡ならざる使い手といえど……殺戮の愉楽に浸り、自らが討たれるは愚か。そのまま死すれば、せめて恥を晒さず終えたものを――」

 金鏡水(こがね きょうすい)という。希望崎学園文芸部“四文鬼”の一角にして、生徒会戦闘顧問に名を連ねる、これも修羅である。
 さらに彼女の言葉は、独言空話の類ではない。二人の魔人は、無論意志を疎通している。

 ――文芸部が討たねば、貴様らの沽券に関わろう。

 パントマイムであった。生徒会長、パントマイムよしおの技量を以てすれば、指先や表情の些細な一動はこれすべて、音声よりも遥か正確に情報を伝達する会話手段と化す。

「沽券? ……ほ、ほ、ほ。それを慮っての采配と、申し上げられましたかな」

 眼光がさらに細く笑んだ。生徒会長が巡らせる深淵壮大の計略は、言語に出さぬ故に、文学少女の力量をしてすら読み切る事は不可能である。先の一戦、どこまでが生徒会の采配の下にあったものか――

「陰謀屋の垂水ならばいざ知らず……鬼雄戯大会は生徒会長御自らが定められた、公正なる死合の場。面目を持ち込む余地などございませぬ。文芸部の認めし代表者は、一人……」

 ――村田ソフィアか。

「いかにも。その者がいずれ志筑を討ち果たすと、確信しておりますれば」

 並み居る強者の戦闘の内に埋もれた戦闘者であった。しかし、初日を巧みに勝ち抜けた名である。そして……本領を発揮していない。それも、この場の二人が共に認識する事実であった。
 単なる食客の身にありながら、齢十二にしてあの空木啄木鳥(うつぎ きつつき)と並び、二つ目の出場枠を。膨大たる文芸部の人数規模を考慮に入れても、これは明らかに異常の事態である。

 ――しかし志筑は、この一戦では折れぬか。

「わかりませぬ。しかしあれは悪鬼。一度の敗北で止まるとは、とても」

 ――明日。志筑が村田を狙うと思うか。

「わかりませぬ」

 ――ならば、この廊下に志筑を誘い出すことは。

「わかりませぬ。しかし」

 金鏡水は体制の傍らに立つ文学少女であり、戦意を口に出さぬ礼儀と、奥ゆかしさを備えている。しかし表情の内に潜むものは、紛れも無く。

「会長殿が望まれるのであれば、明日にも」

 魔文惨殺。その結末への欲求は、この文学少女も同様である。


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