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【ショートショート】SS・テキスト総合スレ【ショートストーリー】

1名無しの旅人:2013/06/09(日) 18:11:45 ID:tri0Xvq60
MoEのショートショート、ショートストーリー、小説、川柳、詩句など、文字ネタを投稿する総合スレです。
ジャンルも、ギャグ、シリアス、妄想、コント、一発ネタなどなんでも。
・実在のキャラを晒すのは禁止。モデルがいる場合でも、名前は架空の物で。(本人の許諾を確認する術は無いので)
・連作を投稿する場合は、成り済ましによる荒らし予防のため、トリップをつけることを推奨します。
・感想を書く人は、なるべく前向きな方向性で。欠点を指摘する場合も言葉を選び、作者の励みになるような文にしましょう。
・どうしようもなく気に入らない作品があった場合は、なにも言わずスルーしましょう。ここは総合スレ。いろんな人が居ます。
・投稿するときジャンルを書くと、読者に便利かもしれません。特にグロや猟奇など読者を選ぶジャンルの場合。
・荒らし・煽りは完全スルーで。煽り返したりしてスレが荒れたらそんな連中の思うつぼです。

609見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/07(火) 22:23:21 ID:XzedA5fM0

**********


 まあ、一緒に長いこと暮らしてると、もういまさらってかんじでもあったんだけど。
あいつも女だし、そういう記念ってやっぱり大事なんだろうなって思ったし。
それに俺も、普段から甘えっぱなしでカッコつかないからさ、こう、ひとつドーンと
男としてキメてやろうって思ってさ。
入ったことなんてない貴金属店にこっそり行って、婚約指輪ってどんなかんじなのかって
店員に聞くことから始まって。
あいつが寝てる隙に指のサイズを測らせてもらったり、こそこそと準備をしてさ。
そうして、俺はこの指輪を用意した。
でもまあ、今さらだしなんか普通に渡すのも照れくさかったのもあって。
それで俺は、二人とも休みで家にいた日、ちょっとしたサブライズを仕掛けたんだ。

「(……よし、さてと…)あ、あれ〜おっかしいな〜〜」
「――どうしたのレオン?」
「お、おう、どうした?」
「それはこっちのセリフ。なあにこれ、床の上鍋だらけにしちゃって」
「い、いや〜、ちょっと腹減ったんで、なんか軽く作ろうかなって思ったんだけど」
「あら。なにもう、もうすぐお昼なんだし、言ってくれればいいのに」
「は、はは、たまにはお前にも、ゆっくりしてもらいたかったっていうかさ」
「ふふ、ありがとう。だけどね、いいの。貴方が喜んでくれるなら、
 私はいくらでもキッチンに立つわ。だって、それが私の幸せなんですもの」
「(…エリーザ…ってまずいまずい)ま、まあそれは置いといてだな、ちょっと助けてくれよ」
「ん、なあに?」
「ちょうどいい鍋を探して棚ン中を漁って、いい鍋を見つけたのはいいんだけど、
 残りの鍋をしまおうとしても、どうしても全部収まってくれないんだよ」
「ええ? んもう、しょうがないわねぇ。どれどれ〜?」

 俺はその時、キッチンの棚の奥にこの箱を忍ばせておいたんだ。
もともと棚の中は隙間なく調理器具が敷きつめてあったから、しまう途中で
奥に挟まってるそれに気付いて、手にとってくれるはず。
そう俺は目論んでいたんだが……あいつの家事のうまさには驚かされてしまった。
なんとあいつは、その箱が奪っているスペースなんてものともせず、全部の鍋を
再び棚の中に収めてしまったんだ。

610見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/07(火) 22:24:19 ID:XzedA5fM0
 
「…ふぅ。はい、ぜんぶ入ったー」
「うぇ!?」
「な、何? 突然変な声だして……」
「あ、い、いや、なんでもない……はは、すごいな、お前…片付けほんと上手だな」
「ふふ、ありがと」
「(どうする……計画が台無しだ……そ、そうだ)」
「あ、やだ、全部鍋しまっちゃった。これから料理つくるんだったよね、ごめんなさい」
「な、なあ、たまには外で食事しないか?」
「ええ? 外で?」
「こ、こないだうまそうな店を見つけたんだ! ついでに服とか買い物にいこう!」
「あ、いいね。新しい服欲しかったんだ〜。買ってくれる?」
「おう、今日はお前も休日! 丸一日ゆっくり楽しもうぜ」

 とりあえず次の作戦を考える時間が欲しかったから、俺はとっさにそいつを外に連れ出す
ことにした。
とはいえ、昼飯を食べて服も買って、あっという間に夕方になって帰ろうという頃になっても、
俺はまったく考えがまとまらないでいた。

「――はー楽しかった。久しぶりだったね、こうして一緒に出かけるのも」
「(どうする……やっぱ素直に渡すか? いやそれは……)」
「…買ってもらった服、今度のデートに着ていこうと思うんだけど、どうかな?」
「(いやそもそも、まずあいつに見つからないように指輪を取り出さないと…)」
「ちょっと、聞いてる?」
「え!? あ、ああ、ごめん」
「もう! 今日ずっとそんな調子じゃないの。せっかくのデートだったのに」
「ああ、ごめんって。機嫌なおして」
「……半分本気だけど、半分冗談よ。貴方のそういう何かに夢中なときの顔、好き」
「お、おいやめろって。間抜け面を見て何が楽しいんだよ」
「ふふ。ねね、今夜は何か食べたいものある? 夜こそは私に作らせてね」
「(や、やばい! 今棚を漁られたら……)う、うーんそうだなぁ…」

 さすがに一度失敗した作戦で、なあなあで箱を見つけられたらカッコがつかない。
俺はなんとか格好つけるための方法で頭をいっぱいにしながらて、街灯が燈りはじめた通りを
歩いていたんだけど。
今思えばそんなこと、本当にくだらなくて、どうでもよかった。
あいつから目を放さないでいたらと、今でも悔やんでいる。

611見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/07(火) 22:26:24 ID:XzedA5fM0

「(うーん、あいつに先に風呂に入ってもらって……)」

ガシャーン!!
ヒヒィィィン! ガタッ! 

「あら? 何――」
「(いや、あいつが俺より先に風呂に入るなんて今までなかったしな…)」

ガタタッ! ガチャッ!
ガラガラガラ

「おい! 避けろ! あぶなーーーい!!!!」
「(いっそ夕飯も外で……いや、こいつのことだから夜は絶対)」
「きゃああああっ!!」
「えっ――」

ドン!!
ガタガタガタガララッ!
ドシャーーーン!!

「………え?」
「おい! 大丈夫か! だ、誰かはやく医者を!!」

 暴れ馬だった。
老朽化のせいか、街灯が支柱から突然外れて、たまたま通りかかっていた馬車の目の前に
落ちてきたらしい。
それに驚いた馬が制御を失い、俺達を目掛けて突っ込んできた。
そして、俺の隣に立っていたエリーザを轢いた後、壁に突っ込んでようやく止まったようだった。

「おい! エリーザ! しっかりしろ!!!」
「………う…」
「今、今助けてやるからな!」
「…あ……れ……レオ……? ゴボッ……レオン……?」
「ど、どうした? 俺だ!」
「ああ……何も見えないの……もう、突然夜になっちゃ…?」
「お、お前何を……」
「よか…っ……無事で……そば……に………」
「そばに、そばにいるぞ! おい!」
「……………………」
「……おい! エリーザ!! エリ……」
「……………………」
「…うわあああああああああああ!!!」

 結局、そのままあいつは俺の目の前で逝ってしまった。
その日買った服の入った袋を血で染めながらも、あいつは最期まで手を放さなかった。

612見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/07(火) 22:30:52 ID:XzedA5fM0

**********


「――あいつを弔っていたり、あいつを失った悲しみに暮れているうち、
 結局俺はその指輪を隠した場所すら忘れてしまった。
 それをマリンちゃんが今日見つけてくれた、というわけ」
「……そう、だったんですか」
話を聞き終えた私の口からは、相も変わらずありきたりな言葉しか出てきませんでした。
どんな反応を返せばいいのかわからない。
見つけてよかったのか、それともそのままにしておいたほうがよかったのか。
ひとしきり話し終わったレオンさんは、お茶をぐいっとあおるように飲むと、
ぷはー、と大きくため息をつきました。
さすがに話し続けて、少し疲れたのでしょう。
「それからのこいつはひどいものだった。
 自分のせいでエリーザさんが死んだんだと、いつも気に病んでいた」
クラークさんが、状況を説明するように話に加わりました。
「まともに仕事が出来るくらいに回復したのも、ごく最近のことだ。
 お嬢さんと一緒に行った行商に入ったのも、復帰してそう多く仕事をこなさないうちの事だ」
「まあ、おかげでいいかんじのリハビリになったけどな。
 やっぱ、俺みたいなのはアレコレ考える時間がないくらい動いてるのが一番」
「そうですか……あまり、無理しないでくださいね」
「いや、それなんだけどさ」
「はい?」
ふと、レオンさんが姿勢を正して、目の前の指輪を手にとりました。
「コレを見つけたとき、不思議とそんなに辛い気持ちにはならなかった。
 というのも、マリンちゃんのコーンポタージュのおかげなんだよ」
「え?」
「まあ、それ以来、コンポタはずっと避けてきてたんだよね。
 目に入れちゃうと、どうしてもあいつのことを思い出しちゃうから」
「あっ……」
あの時、レオンさんがじっと固まってしまったのは、その記憶と戦っていたという
ことなのでしょうか。
ただの好き嫌いなら、そこまで過剰に反応するということは考えられません。
無理やり辛い記憶を呼び起こしかねないことをしてしまったため、レオンさんだけでなく
事情を知るクラークさんもまた気が気でなかったのだと、ようやく分かりました。
「すみません。そんなこととは知らず、ひどいことを…」
「いや、むしろお嬢さんでなければ出来なかったことかもしれない」
「え…?」
クラークさんの言葉の意味がその時の私には分かりませんでしたが、レオンさんは
その言葉の意味が分かったように頷き、その言葉に続くように口を開きました。

613見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/07(火) 22:35:56 ID:XzedA5fM0

「あの甘いにおいを吸い込んだ時、一瞬あいつの顔が頭に浮かんだんだんだ。
 それまで浮かんでくる顔はあの最期の一瞬、血まみれで虚ろな笑顔だったんだけど、
 その時浮かんだあいつの顔は、違う顔だった。
 いつも俺に料理を作ってくれている時と同じ、優しい笑顔だった」
………。
「無意識に吸い寄せられるように、気付いたら俺は口にそれを含んでいた。
 その時、気のせいだろうけど、俺にはエリーザの声が聞こえたような気がしたんだ」
………。
「マリンちゃんのコーンポタージュ……とっても美味しかった。
 なぜか分からないけど、あれを食べた途端、もうすべてが吹っ切れたように
 頭ン中のもやもやが消えてしまったんだ」
「……はぁ…」
私の料理が、レオンさんを救った?
私のコーンポタージュなのに、エリーザさんの声が聞こえたって、どういうこと?
あまりにも現実味のない話に、私はにわかには話を理解できずにいました。

 テーブルの上に置いてある指輪箱を、レオンさんがそっと手にとりました。
「俺がこの指輪のことを忘れてしまっていたのも、なんてことはない。
 エリーザとの思い出と一緒に、最期ですら何もしてやれなかった俺自身の
 不甲斐なさからも目を逸らして、逃げていただけだったんだ」
「レオン……」
「クラーク、お前にもだいぶ迷惑をかけたな、悪かった。
 ありがとうマリンちゃん、おかげで俺もようやく、前に進めそうだよ」
そう言うとレオンさんは、私の前にあった写真を手元に引き寄せながら、箱の中の指輪を
再び手にとると、その指輪を写真の上にそっと乗せ、ひと際優しい声でつぶやきました。
「エリーザ、俺と結婚して欲しい」
レオンさん……。
ふと、銀環の内側に彫られている言葉が、再び目に入りました。
‘Stay with me.’――『傍にいてくれ』。
それは飾り気のない、だけども真っすぐな想いがこめられた言葉でした。
「はは、やっと言えたよ」
「…末長く、お幸せに」
ずっと背負っていた肩の荷が下りたような安堵の表情を浮かべるレオンさんに、
私もまた優しい笑顔になって、祝福の言葉をかけました。

614 ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/07(火) 22:37:44 ID:XzedA5fM0

――――

今回はここまでです。
どうにかアレな部分を避けられないかとまた色々考えてしまって、予定より遅くなりました。
次で第五話が終わる予定です。

615 ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/09(木) 22:13:09 ID:7FFv75H20
レランの人です 見てくれている人へ向けて進捗状況とか色々

5話の続きもそろそろ書き終わろうかというところですが
それより先の話のほうが自分の中でもりもり動いているおかげで
いろんな意味で落とし所に迷っているのでもう少し時間をください

616名無しの旅人:2014/01/10(金) 06:54:28 ID:8ojQuoe6O
wktkしながら待ってます

617見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/14(火) 22:27:31 ID:lY02TzrY0
>>613の続きです


―――――

 指輪と写真を引き出しにしまって、どっこらせーとわざとらしい声を出しながら椅子に座る
レオンさんの表情は、私が知っている普段のレオンさんの顔に戻っていました。
「いい顔になったな」
「え? そうかな」
………。
どうやら付き合いの深いクラークさんいわく、前よりもよくなったようです。
この二人を見ていると、親友ってこんなかんじなのかな、と少し憧れてしまいます。
「お嬢さんのおかげだ。私からも礼を言おう」
「いえ…むしろ今日は、少しでもあの時の恩返しになれば、と思ってましたから」
「いやー、返されすぎてこっちがまた借り作っちゃったよ」
「とんでもないです! 今こうして生きているから、料理も作っていられるんですし…」
私がそう言うと、レオンさんはきょとんとした表情を浮かべました。
「んまあ、ボスが出てきたときはさすがにやべぇと思ったけどさ」
頭をポリポリと掻きながら天井を見上げてしばらく何かを考えていたかと思うと、
すっと目線だけを下ろして私と目を合わせてきました。
「ま、ザコがいくら集まったところで、何も問題なかったろ?
 あいつらみんな酔っぱらったみたいになってて愉快だったろ、ハハハ」
カラカラとお気楽そうな様子で笑っていたレオンさんに、
「……いや、そうでもなかったがな」
クラークさんが割り込むように言葉を返しました。
「なんだよ?」
「そうか、お前は先頭を走っていたから知らないのか」
「え?」
「隊の最後尾について走ろうとした時のことなんだが……矢が一本飛んできた」
その言葉に、私の頭の中にもその時の光景が蘇りました。
リコさんのことに違いありません。
「ほー? でもたまたまだろ?」
「いや、もう少しで食らってしまうところだった。あいつらにも腕のいい奴はいるようだ」
「そうか、危なかったな。次からは気を」
「あ、あの!」
レオンさんの言葉を遮るように、私は声を張り上げて二人の間に割り込みました。
「…何?」
「その、その矢を打った人なんですが、その人は盗賊ではありません」
「…へ?」
「どういうことだ?」
テーブルに肘をついて身を乗り出しながら、クラークさんが私に問い詰めてきました。

618見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/14(火) 22:32:57 ID:lY02TzrY0

「あ、えっとですね……」
「おいどっちだよ。たまたまそこにいた無関係な狩人だったとか?」
「いや、あの辺りは奴らのおかげで動物なんか逃げていただろう? ただの狩人とは考えにくい。
 それにかなり遠くからではあったが、弓は私達の方に向けていたようだった」
「いえ、そのですね……私、その人から直接聞いたんです」
私がそう言った途端、二人の表情が固まりました。
一瞬で場の空気が張り詰めたのが、さすがの私にも分かりました。
「私、その人と知り合いで…その、だから」
「待った、お嬢さん」
しどろもどろに話を続けようとする私を、クラークさんが制止しました。
「その話、ちょっと詳しく聞かせてもらえないか」
………。
「その…信じてもらえるか分かりませんが――」
リコさんの名誉のため、と言えば聞こえはいいかもしれませんが、
何より私自身、この二人には誤解されたままでいて欲しくないという強い気持ちがありました。
家族を殺されたこと。
唯一残ったお姉さんを人質に、無理やり協力させられていたこと。
他人の事情を勝手に言いふらしてしまうようで、失礼なことをしている自覚はありましたが、
私はリコさんの事情を聞いた通りに二人にも伝えました。

――――

「……なるほどなぁ」
私の話を聞き終えると、レオンさんは表情を緩めて背もたれに寄りかかり、また天井を見上げて
何かを考えているような姿勢になりました。
クラークさんも乗り出した体を引っ込めてくれたものの、まだ少しひっかかっている様子で、
私に質問を投げかけてきました。
「その、お兄さんが気の毒なことは分かった。が、少し気になるんだが」
「はい?」
「奴らはならず者だ。隠れ家にまで侵入された人間を見逃すような生易しい連中ではない。
 それをどうして、たかが弓が上手いというだけで人質をとってまで仲間にひきいれたのか」
「それは……」
確かに、リコさんも見逃してもらえたことを不思議に思っているようでした。
そんな奴らがどうしてリコさんを気に入ったのか……たしか何か言っていたような…。

619見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/14(火) 22:37:21 ID:lY02TzrY0

「あっ」
私の頭の中の引き出しから、ピョコンとある言葉が飛び出しました。
「どうした?」
「そう、たしか…リコさんのことを、“ホークアイ”がどうのと言っていたそうで」
「「何だって?」」
「えっ…?」
突然、二人が再び身を乗り出しながら私に問い返してきました。
「あの…何か?」
「お嬢さん、今“ホークアイ”と言ったが」
「え、はい、たしかそんなような…」
「そうか、なるほど……」
「はは。その兄ちゃんもまた、運がいいのか悪いのか」
「……あの、どういうことですか?」
何かを納得した様子でお互い顔を合わせる二人に、私は事情を尋ねました。
「ああごめん、“ホークアイ”ってのはね、簡単に言うと、弓の才能のこと」
「才能…ですか?」
「戦う上でとても役に立つ、生まれつき備えた潜在能力とでもいうべきだろうか。
 戦士の間でもそれを持っているのはごく一部に限られるくらいの、かなり恵まれた力だ」
「“ホークアイ”てのは、弓を使う上でのそういう力のこと。類まれな集中力と精神力で、
 どんな遠くの的でも命中させることが出来るっていう、まさに弓使いとして生きるなら
 持って生まれただけで将来が約束されるようなもんだよ」
「お二人にも、そういう力があるんですか?」
「ハハハ。そんなんがあれば、俺もクラークもしがない雇われ戦士なんざやってないさ。
 王室の近衛兵でも、持ってる人なんて一握りじゃないか?」
「はえ〜…」
分かったような、いまいちピンとこないような。
とにかく、リコさんはそういうすごい力を持っている、珍しい人だということでしょうか。
「そんな力を味方に出来れば、かなりの戦力になる。
 ラトロのボスがその兄ちゃんにこだわってるのは、そういう理由だろうさ。
 まあ、人質をとって無理やり縛り付けるってところがあいつららしいけどな」
「…でも、リコさ…や、その人は自分では何の話なのか、分かっていないようでしたけど」 
「本人に自覚がないというのも無理はないだろう。戦いの中に身を置きでもしないと、
 そういう才能には気付けないものだ」
「ま、結果としてそういう流れに引き込まれちゃったようだけどな」
リコさんは、少なくとも戦いを好むような人ではない、それだけは分かります。
もし神様が目の前にいたら、どうしてリコさんにその力を持たせたのか問い詰めていたでしょう。
「その兄ちゃん、さっきリコっていってたか、今はどうしているんだ?」
「あ…えっと、情報を集めているようです。夜の、酒場とかで」
「情報?」
「お姉さんを助ける作戦に役立つ盗賊の情報を…ただ、今回はあまり話が入らないそうで」
「…奴らも隙を作らないようにしてるということか?」
「あいつらにそんな頭があるとは思えないけどな」
「……私には、そういう話はよくわかりませんけど…」

620見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/14(火) 22:38:26 ID:lY02TzrY0

 ふと、ボーン、ボーン、という音が部屋の中に響き渡りました。
見上げると、振り子時計がちょうど11時の合図を出しているところでした。
「っと、もうこんな時間か」
「あ…すみません、つい話しこんじゃって」
「そうだな、そろそろおいとましようか」
後日用にと作った煮魚を半分、器に盛ってクラークさんに渡しました。
ティーセットの洗い物もしてしまおうかと申し出たのですが、それくらい構わないと
レオンさんに玄関のほうへと押し出されてしまいました。
「じゃ、気を付けてな」
「お嬢さんは私が家まで送り届ける。一人よりはましだろう」
「おう、頼んだぞ。また来てくれよな」
「はい。今夜はありがとうございました」
お辞儀した頭を起こすと、ヒラヒラと笑顔で手を振りながら扉を閉めるレオンさんが目に入りました。
バタン、と玄関の扉が閉まると、その隣にかけられた表札が再び目に入りました。
下半分が塗りつぶされた表札。
レオンさんは、どんな思いでここにあった名前の上に絵具を塗り広げたんだろう。 
「…行こうか」
そんな私の様子を見ていたクラークさんから、声がかかりました。
クラークさんもかつて、今私が思っていることと同じことを考えたのでしょうか。
「はい。お願いします」
おやすみなさい、エリーザさん。

621見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/14(火) 22:40:57 ID:lY02TzrY0

 もう家の明かりもぽつりぽつりとなってしまった住宅地を歩いていると、思い出したように
クラークさんが話を切り出しました。
「そういえば、お嬢さんのコーンポタージュな。彼女の作るものに、よく似ていた」
「…エリーザさんの? 味がってことですか?」
「いや、味かどうかは分からないが…うーむ、何と言えばいいのか。
 そうだな、雰囲気……いや、食べた時の印象というべきか」
「印象?」
「レオンも言っていたが、彼女のコーンポタージュは食べると体中から元気が湧いてくるんだ。
 今日、お嬢さんのコーンポタージュを食べた時も、似たような感覚になった」
あ……。
「まるで凍ったように動かなかったあいつが、一口で調子を取り戻しただろう?
 きっとあいつもそう感じたから、元気だった頃の彼女の顔が頭に浮かんだのだろう」
「…そうですかね、えへへ」
私の腕も、それなりに上達しているということなのでしょうか。
食べる人の思い出に響くなんて、すごい料理を作れたのかもしれないと、少しだけ自惚れました。
「その他にも色々ご馳走してもらったが、彼女の料理は何でもうまかったな」
「どんな料理ですか?」
「なんというか、家庭的な料理が得意だったようだ」
「家庭的…肉じゃがとか?」
「そうだな。他にもシチュー、カレー、グラタンなど……色々食わせてもらった」
「ははぁ…」
誰かを招待して料理をご馳走するとなれば、普通はささっとつくれてちょっとおしゃれに飾れる
メニューを考えたりしちゃうものですけど、見事に普段の食卓というかんじ。
そして、手間のかかるものばかり。
しかも働いている身であるなら、そんなにしょっちゅう作れるような料理でもありません。
「きっと料理を作るのが大好きなんでしょうね」
「それが、料理を作るのが好きというより、食べてもらうのが好きだとか話していたな」
「えっ?」
「料理を食べている私達を見ては、いつもニコニコとしていたのを覚えている。
 もっとも、食べている所をまじまじ見られるのは少し居心地が悪かったが、はは」
「そうでしたか……」
料理に手間をかけるということは、それだけ想いをこめられるということでもあります。
たっぷりの気持ちを詰め込んだ料理を、美味しいおいしいと言って食べてもらえる。
それが好きな人を相手にしてのことなら、嬉しさもひとしおなことでしょう。
料理を作る上で大切な心構えですが、その人にとってはごく当たり前で自然なことだったなら、
出来た料理が美味しくないわけがありません。
あの家のキッチンから、どれほどあの二人の幸せが生まれていたのでしょうか。
ほんわり胸の奥が温かくなるような気がしました。

622見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/14(火) 22:42:46 ID:lY02TzrY0

「ただいまぁ」
 誰もいない真っ暗な部屋だとは分かっているけど、私はなんとなくひとり言を言いました。
賑やかな食卓を囲んだ後の自分の家は、とても寂しいものに感じてしまいます。
いつものように服を脱いで、しまうためにクローゼットを開けて。
「あ、傘…」
隅に立てかけてあるはずのお気に入りの薄水色の傘がないことに、私はそこで気がつきました。
そういえば今日持っていって、帰りも持ってて、レオンさんの家に行って…ああ。
近いうち、レオンさんの家に取りにいかなきゃね。
「…ふふっ」
お邪魔する理由が出来てしまったことに、私は少しおかしくて笑ってしまいました。
 湧かしたての湯船に肩まで沈んでぐぐーっと脚と腕を伸ばすと、その日の疲れが
じんわりお風呂のお湯に溶けだしていくような気がします。
今日はいろいろあったなぁ。
レオンさん、明るい人の印象だったけど、暗い事情も抱えてる深みのある人。
クラークさん、お堅くきつそうな印象だったけど、仲間のことをよく考えてる義理深い人。
また、いい人と知り合えてしまいました。
リコさんに関することも、二人の話を聞いて新しく理解出来たこともありました。
それなのに、私の心は『けれど』という方向に動いていました。
珍しい力がどうこうと言われても私にはよくわからなくて、私は蚊帳の外という気持ちが
改めて強くなってしまったのでした。
あんな盗賊達と戦う力なんて、私にはありません。
じゃあ盗賊達の情報を集める? ううん、夜の街や酒場なんて怖くて行けない。
「…はあ」
なんて無力なんだろう。
温かいお湯に包まれて緩んだ体からは、気の抜けたため息が出るだけでした。

623見習いレラン奮闘記(5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/14(火) 22:45:43 ID:lY02TzrY0

 ふと、レオンさんとエリーザさんのことを思い出しました。
エリーザさんの料理を食べて、レオンさんが幸せになって。
レオンさんが料理を食べることで、エリーザさんが幸せになって。
それじゃあ私が、リコさんに料理を作ってあげたら?
一緒に戦う力はないけれど、それまでの時間を支えることは出来るんじゃないのかな。
リコさんが私の料理を食べて元気になってくれたら、私だってとっても嬉しい。
………。
「何考えてんだろ、もう」
とぷん、と口まで湯に埋まり、ぶくぶくと息を吹き出しました。
まるでそれじゃ、恋人気どりです。
「…あがろっと」
のぼせそうになった頭を振り、ばしゃぁ、と、少し勢いをつけて湯船から飛び出しました。
 だけど、私に出来ることって、やっぱり料理を作ることしかなくって。
たまたま今日はレオンさんの心を動かすことが出来たようだけど、リコさんに対しても
それが出来るかどうかは自信がありませんでした。
リコさんが求めているもの、リコさんの心に響くものが分からない。
ううん、だけど、それしかやれることがないもの。
私が『やるべきこと』は、その自信と腕をその時までに少しでもつけること。
そう自分に言い聞かせながらベッドに横になると間もなく、私の意識はすぅっと落ちていきました。

624 ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/14(火) 22:48:53 ID:lY02TzrY0

 第5話 『私がやるべきこと』  終わり


――――

今回はここまでです。
次回は第6話になるか幕間になるかは分かりませんが、しばらくお待ちください。

625 ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 22:31:53 ID:C2SvHzf.0
レランの人です。
幕間を思いついたので、ささっと書いて投下します。

626見習いレラン奮闘記(5.5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 22:53:53 ID:C2SvHzf.0

 見習いレラン奮闘記 第5.5話  幕間『この日のマリン』


 レオンさん達に料理を振る舞った夜から、はや二週間。
私の中でどんな変化があったとしても、毎日のお仕事はいつもどおり。
その日もいつものような、そして大切な一日が始まる。
そう思っていたのですが、どうにもその日は朝から食糧庫の前に人だかりが出来ていました。
その人だかりの中から一人、こちらに向けて走ってくるエルモニーの男の子がいました。
私はその子に状況を尋ねようと、声をかけました。
「おはよう…あの、どうしたの?」
「あ、おはようございます。その…」
私の呼びかけに答えてくれた小さな男の子の胸には、星がひとつ。
ひと月ほど前に[シェル・レラン]に入会したばかりの新人さんで、
小さい体で頑張っている姿に、まるで弟を見るような目で見てしまいます。
実の弟なんていないけど。
「どうやら、今日届いた分のトマトが注文よりも全然少ないそうです」
「…どういうこと?」
「僕も詳しくは分からないんですけど…配送業者さんの話だと、なんでも
 最近の天気の悪さのせいでトマトの熟し方が悪くて、市場にもあまり出ていないそうで」
「そうだったの、ありがとう」
トマトは色々な料理に大活躍な食材だけあって、それが足りないとなれば
その日出せる料理の内容も少し制限されてしまいます。
 人だかりをすり抜けるように食糧庫のトマトが入った箱をのぞくと、
確かにいつも届くような鮮やかな赤色の玉ばかりではなく、割れていたり中には青みが
少し残っているものまでちらほら見受けられました。
「クリム! まだ出てなかったのか? 早く市場を見てきてくれ!」
「は、はいっ! あ、あの、僕行かなきゃなので…失礼します!」
「あ、いってらっしゃい〜」
どうやらあの子――クリム君は、市場でトマトをかき集めてくるように言われていたようです。
呼びとめちゃって悪いことしたなぁ。
思えば私も、ああいう使い走りをほんのちょっと前までやってきたものでした。
がんばってね、きっといい経験になるから。
クリム君は見た目の割に根はしっかりしてて、なかなか強い子です。
なんて、いっちょまえなお姉さんぶったことを考えていると、その日の始業時間になりました。

627見習いレラン奮闘記(5.5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 22:55:15 ID:C2SvHzf.0

 一時間半ほどして、トマトの残量も残り少ない中でどうにかやりくりしているところに、
カマロンさんが片手で抱えられるほどの大きさの紙袋を持って、キッチンに顔を出しました。
「皆様、ひとまずこれだけのトマトが追加で入りましたので、ご報告までに」
そう言って調理台の上に置いた紙袋には、トマトが入っていました。
だけど、やっぱり普段使っているトマトよりもぱっとしないようなものばかり。
「クリムはどうしましたか?」
近くにいた『調理師』の人が尋ねると、カマロンさんは眉を八の字にひそめて答えました。
「それがですな、クリム様いわく市場にはこれくらいしかなかった、とのことで。
 その後、私にこの袋を預けるなり『もう少し持ってきます』と言い残し、行ってしまわれまして」
「……まだ探してるということですか。分かりました」
どうやら、まだ市場を駆け回っているようです。
今日のキッチン事情はクリム君にかかってるので、頑張って欲しいところです。
 お昼を過ぎたあたりにもなると、どんどん入る注文の前には案の定、まともに使えるトマトは
もう底をついてしまいました。
「買い出しはまだ戻らないのか?」
「そうらしい。やっぱりもうほとんど売ってないんだろうが、それにしても遅い」
「うーん…不出来のトマトを使うのは気が引けるが……」
「一度トマトが絡む料理はストップをかけるしか」
そんな声がキッチンの喧騒の中でちらほらと聞こえはじめました。
クリム君、大丈夫かな。
もしかして、迷子になってたりとか……。

628見習いレラン奮闘記(5.5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 22:56:20 ID:C2SvHzf.0

 そんなお節介じみたことを考えながらキッチンの扉の前を通ろうとした時、
バタン、と目の前の扉が勢いよく開きました。
「お待たせしました!」
そこには、パンパンに膨れ上がったリュックを背負ったクリム君が、
はぁはぁと息を荒げながら立っていました。
「クリム君!」
「こ、これ、トマトです、はぁ、使えるようだったら、はぁ、よかったら」
見るからに重そうなリュックをドサリと床に置いて開けると、その中には見事に
真っ赤に熟したトマトが大量に入っていました。
「わ、すごい……これ、どうしたの?」
「その話はあとだあとだ、よくやった、シレーナ様に報告してきてくれ!」
「は、はい! すみません、またあとで」
「あ、うん…」
大量のトマトをキッチンの入り口に遺して、クリム君はまた走って行ってしまいました。
茫然としている私の横に『調理師』さんが来て、袋の中のトマトを二、三個とりました。
「おお、かなり上質じゃないか。……うん、味もいい。これでいこう」
「あっ…は、はい」
我に返った私は、そのリュックを担ごうとして――重くて断念しました。
こんな重たいものをあの小さい体で背負っていたことに、私は少しだけ驚きました。
小さいとはいえ、男の子の力はすごいなぁと改めて感動。
仕方ないので中からトマトを小分けに取り出して、洗い場で洗いはじめました。
ありがとうクリム君、偉いよ〜。

629見習いレラン奮闘記(5.5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 22:59:09 ID:C2SvHzf.0

 結局、クリム君が持ってきてくれたトマトのおかげで、注文を止めることなく終業時間を迎えました。
だけどあんなに大量の、しかもよく出来たトマトをいったいどこで仕入れてきたんだろう。
帰りの身支度を済ませた私は、まだ洗い物をしていたクリム君を訪ねました。
「クリム君」
「あ、マリンさん。お疲れ様です、お帰りですか?」
「うん。今日はトマトの件、本当にありがとう、とっても助かったよ」
「あ…い、いえそんな」
笑顔でお礼を言うと、クリム君の顔がぽっと赤くなって、私から目を逸らしてしまいました。
んもう、かわいいなぁ。
…って、いけない、そうじゃなくって。
「それで、ちょっと聞きたいんだけど」
「はい?」
「あのトマト、いったいどこで買ったの? 街の市場にも、いいトマトはほとんど
 並んでないっていう話だったじゃない、どんな穴場のお店があるのかなって」
「ああ…えっと、それなんですけど、買ったものじゃないんです」
「え?」
「実はあれ、自分で獲ってきたものなんです。あ、もちろん使わなかった分のお金は
 カマロンさんに全部返してあります」
「ええ? で、でも……どこの畑でも全然熟してないっていう話じゃあ…」
「えっと、それは」
「…おしゃべりの前に、手を動かしてくださらない?」
あっ、と声のするほうに顔を向けると、シレーナ様が渋そうな顔をして立っていました。
どうやら見回りにきたようです。
「あ、すみません! あの、話の続きはこれが終わってからでもいいですか?」
「あ、うん…ごめんね」
「はい」
シレーナ様に背中を押されるようにして、私はギルドの外に出て待つことにしました。
「お仕事以外の話は、お仕事が済んでからにしてくださいな」
「す、すみません」
いやはや、ダメなお姉さんでごめんなさい。

630見習いレラン奮闘記(5.5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 23:00:03 ID:C2SvHzf.0

「お待たせしました」
「あ、ううん、全然。早かったね」
 作業着から着替えて小さなリュックを背負ったクリム君が、ぱたぱたと小走りに出てきました。
そんな仕草ひとつもかわいらしくて、私の母性本能がくすぐられます。
一緒に港の通りを歩きながら、私は改めて尋ねました。
「それで、一体どこであんなにいっぱいのトマトを?」
「あ、実はですね。あまり人のこない穴場な畑があるんですよ」
「ええ? 人がこないって……?」
「ちゃんと畑になってるところですし、以前はよく人がきてました。
 ただ、少し遠くて危ないところにあるので、今ではほとんど人が来ないんです」
「へ〜……」
なんか、小さいのにすごくしっかりしてるなぁ。
「よかったら、案内しましょうか?」
「え? いいの? で、でも、危険っていう話だけど…大丈夫?」
「大丈夫ですよ、そんなに言うほど危険でもないですから」
「そ、それじゃ、お、おねがいします……」
なんだか、普段見ている姿とはうってかわって、すごく頼もしくて積極的。
どっちが先輩だか分からない状況で、私はお言葉に甘えることにしました。

631見習いレラン奮闘記(5.5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 23:01:26 ID:C2SvHzf.0

 クリム君の後をついていくと、どうやらレクスール・ヒルズに出る様子。
普段はミーリム海岸にあるトマト畑がよく利用されているし、私も必要になった際は
そこでよく収穫しています。
というのも、ミーリム海岸のトマト畑は大きく、場所も城門を出てすぐのところにあり、
特段危険な獣なども近くにはいないため安全にたくさん収穫出来るからです。
それに、レクスール・ヒルズで私が知っているトマトのポイントは、
狭い場所に数える程度の株しか生えていない上、街からの距離もけっこう遠くなってしまうため、
ほとんどそこを利用したことはありませんでした。
クリム君の自慢の場所って、あそこのことなのかな…?
そりゃあんなとこで狩る人なんてほとんどいないけど……。
 しばらく丘を進むと、ちょうどそのトマト畑があるほうへと分かれる三叉路に
差し掛かりました。
ここを左に進むと崖を跨ぐように橋がたくさんかかっていて、その一角にひっそり
トマトが生えている場所があるため、私はそのポイントのことだと思っていたのですが。
なんとクリム君は反対の方に向かって歩きはじめました。
「え? く、クリム君、こっちなの?」
「はい、ここを右に行って、しばらく奥に進みます」
「で、でも……こっちって………」
レクスール・ヒルズには、アマゾネスという種族が生息している場所があります。
女性だけで成り立つその種族は呪われた種族と言われていて、何か深い呪術によって
その運命が定められているという話もある、とても不気味な種族です。
クリム君は、そのアマゾネスの行動範囲のほうへとずんずん足を進めているのでした。
それに怖気づいてしまった私は、クリム君を引きとめようと声をかけました。
「ちょ、ちょっと、さすがに危ないよこれ以上は!」
「ああ、アマゾネスですよね?」
「う、うん……」
「大丈夫、うまいこと見つからないように行けるかもなので」
「そんなぁ!」
なんでそんなに平気な顔してられるの。
時間も時間でどんどん暗くなる空の下、すっかり怯えてしまった私は、
自分よりも背丈の小さな男の子の背中に隠れるようについていきました。
うう、かっこわるい。

632見習いレラン奮闘記(5.5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 23:03:44 ID:C2SvHzf.0

「はい、着きましたよ。ここが目当てのトマト畑です」
「ありがとう……わぁ」
なんとかアマゾネスに見つかることなくたどり着いた先は、みずみずしく真っ赤に熟した
トマトがたくさん成ったトマト畑でした。
敷地面積もそれなりの広さがあって、だけど人の姿はまったく見えなくて、まさに穴場。
でも、思ったよりも遠くて、距離にしても私の知ってる畑くらいは遠い。
「こんなところまで収穫しに来てたの?」
「はい、市場を走り回っているより自分で獲ってくるほうが速いと思って」
「ええ!? は、速いって……だって、来るだけでかなり時間かかったよ?」
「あはは。僕、こう見えて足が速いんですよ。見ててください」
そう言うと、クリム君は目をつぶって何かに集中しはじめたようでした。
すると、さっきまで不気味にざわざわと木々を揺らしていた風が、ぴたりと止みました。
次の瞬間、ぶわっと風がクリム君のほうから流れてきたかと思うと、クリム君が突然
すごい速さで走りはじめました。
「えっ…」
私が息をのんでいる間に何十メートルも離れた場所に移動してしまったかと思いきや、
今度は身を翻してこちらにものすごい速さで走ってきました。
私の目の前でぴたりと立ち止まると、クリム君のあとからすごい勢いで風が吹きつけてきました。
「わ、何!?」
「えへへ、驚かせちゃいました? こうやって、街と畑の間を往復したんです。
 これならあっという間ですから」
「そ、そう……」
走っているというより、風に乗っていると言う方が正しい。
私はそう直感しました。
「今通ってきた道なら、アマゾネスにも見つかりませんから。さあ、帰りましょう」
「…う、うん、わざわざありがとう」
「どういたしまして」
すごい走りを見せた人とは思えないくらいに幼さの残る、めいっぱい無邪気な
クリム君の表情に、私も気が抜けてしまいました。
人はみかけによらないって、こういうことなのかな。

633見習いレラン奮闘記(5.5) ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 23:07:05 ID:C2SvHzf.0

 東城門が見える辺りに戻ってきた頃にはすっかり真っ暗になっていて、月と星の明かりが
優しく夜のレクスール・ヒルズを照らしていました。
今日は満月じゃないから、あの時みたいな危険な目には合わないというのもあるけど、
クリム君と一緒にいるおかげでほとんど恐怖感はありませんでした。
「そういえば、さっきのすごい走り方だけど、あれってどうやったの?」
私はなんとなく、気になっていたことを尋ねました。
「ああ、えっと、自分の背中に追い風を作って、それに乗りました」
「……そ、そう、すごいね…」
本気で言っているの? と聞き返したかったけれど、やめました。
すごい能力だということは分かったので、それ以上知ろうという気にはなりませんでした。
「でも、そんなすごい事、いつから出来るようになったの?」
「うーん、そうですねぇ……以前働いてた仕事柄、必要だったので…自然と? 
 あの畑も、この仕事をする前にたまたま見つけて知っていたんです」
「そ、そうなんだ……って、え?」
以前、働いていた?
こんな小さな子が、今よりも前に働いていたことがあるということ?
「? なんですか?」
「クリム君、前に働いていたって……いったい何歳から働いてたの?」
私の問いかけに、くりくりっと丸い目を上に向けて、かわいい声でうーんと少し唸った後、
満面の笑顔でクリム君が答えました。
「たしか、15歳くらいからですかね? あ、ちゃんとヒューマンに換算してますよ」
「……………え?」
じゅ、じゅうごさい?
せいぜい今13歳くらいだとばかり思っていた私の頭は、どんどん混乱していきました。
「…あ、あの…それじゃ……いま、なんさいなの………?」
「んー、えっと、もうちょっとで20になります」
「へ」
「……あ、あの、どうかしました?」

「うそおおおおおおおおおおお!!!???」

 私の大声に、城門のガードさんが驚いた様子で駆け寄ってきました。
見かけによらないっていうレベルの話じゃないよぉ……。

 次の日。
「あ、マリンさん。おはようございます」
「は、はい、おはようございます…あはは」
「?」
クリム君、や、クリムさんと話すとき、私はすっかり敬語を使うようになってしまいました。
お姉さんぶってた頃の自分を、記憶から消し去りたい。
エルモニー、おそるべし。

634 ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/16(木) 23:10:47 ID:C2SvHzf.0

 第5.5話  幕間『この日のマリン』  おわり

――――――



 ということで幕間でした。
真面目な話を書いていると、こういうのほほんとした話が書きたくなります。
自分にとっても箸休めという意味で大事な日常回。
頭をすっきりさせたところで、次は第6話を書いてきます。

635名無しの旅人:2014/01/17(金) 23:34:59 ID:miyzxY.I0
誰か他にまだこのスレ見てる人いる?

636名無しの旅人:2014/01/18(土) 12:04:50 ID:szDcrHY.O
見てますヨ
まとめ書いてるし

637名無しの旅人:2014/01/18(土) 16:13:32 ID:1LAQpPDM0
なれ合いっぽいから感想はいちいち書かないけど全部見てるよ

638 ◆lxqr5Cnoxs:2014/01/19(日) 17:44:12 ID:ytG5x0Q60
レランの人です
6話はもう数日の間には投下出来そう

関係ない話だけれど自分以外に書いていた人が居ないのは少し寂しい
どこも過疎ってしまったから仕方ないのだけど
そろそろ自分の話も終わりが近づいているから他の人も書いたらどうぞ投下してください

639名無しの旅人:2014/01/20(月) 20:02:07 ID:YFd3qmTQ0
ここはエロはどの程度まで許されるの?

640名無しの旅人:2014/01/21(火) 22:12:27 ID:hw3Di6XsO
管理人に聞いたほうが良いんじゃなかろうか
まあR18表現で無ければ良いんじゃないかなーとか思うけど管理人じゃないので断言はできぬ

641名無しの旅人:2014/03/21(金) 12:31:39 ID:BU2sAeu6O
続編期待age

642名無しの旅人:2014/05/24(土) 19:05:18 ID:rg987ig20
支援

643名無しの旅人:2014/06/21(土) 11:15:15 ID:4vpkLegIO
新作期待age

644名無しの旅人:2014/09/12(金) 13:59:19 ID:LOIIpsBU0
 オークが3匹襲ってくる。
 ビスク城門付近のヘビなんて相手じゃなくなり慢心していた。
 これならもっと遠くにいける。まだまだ俺は先へ進める。
 それが今の危機を招いた。
「これはダメだな……」
 必死に魔法で応戦したがマイナーバーストでは歯が立たない。
 ついに魔法を詠唱する触媒であるノアダストもなくなった。
(死んだな……)
 自分が招いた結果の死、ここで俺の旅は終わる。
 座り込み眼を閉じ、最後の瞬間を待つ――だが、その時は一向にやってこない。
(おかしいな……)
 ゆっくりと眼を開けると、そこにはオーク3体の死体が転がっていた。
「何故生きるのを諦めている、青年よ!」
 声はオークの亡骸と同じ場所から聞こえる。
 そこにはフルプレートに身を包む屈強なパンデモスの男が立っていた。
「生きている限り諦めるな! 諦めない限り希望はある!」
 そう言うと近付いて来て、大きな笑い声をあげながら俺の肩を力強く何度も叩いてくる。
「た、助けてくれてありがとう」
「むっ……」
 肩を叩くのを止め、肩に手を置きながら顔を近づけてくる。
「お前、いい身体をしているな。やらないか?」
「ぎ、ぎゃあああああ!」
 俺はその場から逃げ出そうとしたが、彼に手を掴まれて逃げ出せない。
「こら、グレイったら、そんな話し方だと勘違いするわよ」
「だな、主語ははっきり入れれるべきだ」
「あははは、兄ちゃんの必死な逃げっぷりマジ笑える」
 声がする。
 少し離れた場所に人影が3つあった。
「ああ、スマン」
 逃げられないように掴まれていた手が離される。
「お前は魔法より、剣の方が向いている気がする。そっちを鍛えないかと言いたかったんだ」
「そ、そうですか」
 俺は安堵のため息とともに返事をする。
「どうだ、お前さえ良ければ俺がお前に剣の使い方を教えてやるぞ」
 差し伸べられた彼の手を、俺は自然に、ごく自然に握っていた。
 強くなりたかった……ダイアロスに流れ着き間もない俺はとにかく強くなりたいと思っていた。
 この人に付いていけば、この人から学べばきっと強くなれる。
 そう思った。
「俺はグレイだ」
「俺は……ロウエンテー」
 これが師匠達との、決して忘れられない冒険の始まりだった。

645名無しの旅人:2014/09/12(金) 21:30:29 ID:wDx0KiIY0
ほほう…

646レランヒストリー:2016/02/22(月) 16:19:00 ID:TG7FxBeI0
昔、動画にしようと台本的なやつを書いたけど
結局作れなかったのでそのまま投下
登場人物
語り部 もにこ
主人公 ぱんだ
    シレーナ様
タイトル「レランヒストリー」

647名無しの旅人:2016/02/22(月) 16:21:42 ID:TG7FxBeI0
〜??? Age のとある場所〜
もにこ:今から話すことは、私の先輩のお話です。
     ギルドの中では彼のことを知らない者はいなかった、
     優しく面倒見のいい人でみんなから尊敬されていたよ。
     けどそんな彼のことを知っている人はもうギルドの中で私一人だけ。
     話は勇敢な戦士だった彼がギルドに入会するところからはじまるんだ。
     その昔・・だいたい数年くらい前になるのかな、先輩がシレーナ様と出会い
     ギルドに入会することになるんだけど。。。

〜Present Age レクスールヒルズ〜
ぱんだ:セイ!ヤー!ふっ・・ちょろいもんだぜ、磨きに磨きをかけた
     この肉体に敵うものなどいない!
身長2m以上は有にはあろうかという大男パンデモス、鋭く磨かれた剣を手に
今日もいつものレクスールヒルズで狩りをしていた
ぱんだ:さーて重量もいっぱいになってきたしそろそろ帰るかな
     今日も大漁だったぜ!はははははははっ!はっはっはっ!はぁ!!!!??
目の前に居たのは巨大なギガースが3体。今にもこちらへ襲い掛かろうとして身構えていた
ぱんだ:(うそだろ・・おい!)(・・・・!!!!動けない!!!)
死を覚悟しうずくまり 目を閉じる
シレーナ:・・なさい!
ぱんだ:(え・・?!)
    (人の声?分からない)
目を閉じてうずくまることしかできなかった、しばらくして・・
目を開ける・・・、そこにはギガースの死体と一人の女性がいた
ぱんだ:あ・・あの、
シレーナ:怪我は・・大丈夫みたいですね、それではお気をつけて。
ぱんだ:あ・・あの!お名前は!?
シレーナ:私はシレーナ、シェル・レランギルドマスターのシレーナですわ。

648名無しの旅人:2016/02/22(月) 16:23:12 ID:TG7FxBeI0
もにこ:一目惚れだったって先輩は言ってたなぁ
     あんなに強い人は今までみたことないって。
     シレーナ様に一目ぼれした先輩はその次の日には
     ギルドに入会したんだって。
     けど、今までの生活が料理とは無縁で、始めのうちは苦労したって言ってたっけ。

シレーナ:また、失敗ですの?
ぱんだ:つ・・次こそは、成功させます!
 
ぱくっ(食べるモーション)首を横に振るシレーナ
   うなだれるぱんだ
ぱくっ(食べるモーション)首を縦に振り微笑むシレーナ
   喜ぶぱんだ
ぱんだ:やったぁああああああ!!

もにこ:そして時は流れ、そんな平和な日々がずっと続くと誰もが思っていたある日。

649名無しの旅人:2016/02/22(月) 16:24:09 ID:TG7FxBeI0
町人「な・・・!なんだあれは!!」
突如として現れた不気味な巨人、イーゴが操るイビル・タイタンと配下のモンスターによって
ダイアロス全土そしてビスクは襲撃された
ぱんだ:生存者を速やかに安全な場所へ!倉庫の食料をすべて配給に回すんだ!
もにこ(過去):先輩!
ぱんだ:どうした!
もにこ(過去):も・・・もうすぐそこまで巨人が。もう・・ダメです・・・。
ぱんだ:・・・。大丈夫だ、そんな悲しい顔をするな。
そう言って先輩は自分のコック帽を私に渡して
ぱんだ:生きろ!
あの時先輩はそう言った。
長年着ていなくて埃をかぶっていた鎧に身を包み
剣を手にして先輩は身を呈して街を守った。
ぱんだ:あの時、拾ってもらったこの命
    シレーナ様・・すいません・・・
    でも、今度は自分も誰かのために・・・。
    うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
  
もにこ:・・・これが私の尊敬する先輩のお話。シレーナ様、ギルドメンバーそして
    先輩のおかげで今でもギルドはひっそりとだけど存続することができたんだ。
    これにて私の話はおしまい。
    ありがとう聞いてくれて
    えっ?どうしてこんな話をしたのか、ですか?
    それは、今では私しか知らない先輩のことを
    私がいなくなったらもう誰も知らないのが
    嫌だったから・・かな。
    私たちはこれから時を超えてノア・ストーンを破壊しに行く
    もうこんな悲劇をこれ以上繰り返させないために・・・
    そのときに私たちがどうなるのか、
    勝っても負けてもどうなるのかなんて分からない。
    ああ・・ごめんね暗い話になっちゃったね、でもねほら大丈夫だよっ!
    あの時の先輩も泣いている私を笑顔で、元気付けてくれたんだ。
    ありがとう、長話に付き合ってくれて。
    じゃあそろそろ行くね!
彼女はそう言って旅立った
コック帽と力強く握られた剣を手にして。

650名無しの旅人:2016/02/23(火) 00:18:02 ID:wujUyxoA0
おっつおっつ

651名無しの旅人:2016/06/09(木) 06:56:41 ID:7JAADDxE0
「あー、面倒くせー」
俺は泣く子も黙る鉄壁のナイト様だ、今日はFSのマスターに呼ばれて彼の家にやってきていた。
マスターの家の扉に手をかけて開く――その先にマスターが迎えている…はずであった……。
「なん…だと…」
俺の目に飛び込んできたのは血まみれで倒れているマスターの姿であった。
警戒しながら部屋に入ると足元にコツッと何かがぶつかり、そちらに視線を落とす。
「これは……」
そこには刃が血まみれのロングソードが落ちていた。
「こいつで誰かがマスターを殺し――」
「きゃあああああ!!」
不意に背後からの叫びに、俺は咄嗟に血まみれのロングソードを構えて振り返ってしまった。
「あ…あ…」
そこに居たのは同じFSメンバーの女ダンサーさんであった。
「な、ナイトさん…そ、その剣でマスターを…」
「ち、ちが……」
否定しようとしたが俺が逆の立場だったらと思うと、到底信じてもらえないと判断して言葉に詰まる。
沈黙は肯定――そう判断されたのであろう、女ダンサーさんは叫びながらその場から逃げていった。
すぐに人が集まってくると判断した俺はとにかくその場から離れることにした。
血まみれの剣を持つ男、血まみれで倒れるマスター、この状況では誰からも俺が犯人だと思われてしまう。
真相を突き止めないとダメだ、このまま公衆の面前立ては間違いなく俺が犯人になってしまう。
とにかくどこかへ身を隠そう――
そう考えた俺はアルター飛び乗り――

1.最も人の往来の激しいビスクなら情報もあつまるだろう
2.人気の少ないネオクならとりあえず見つからないはず
3.いやいや、それなら地下墓地が一番安全のはず
4.やはりここはヌブール村だ、あそこの猿は物知りだから活路を見出せるかもしれない

652名無しの旅人:2016/06/09(木) 08:20:41 ID:1B85aBNc0
お、ルート選択式SSかぁ

653名無しの旅人:2016/06/11(土) 00:11:03 ID:Ayf.0kwUO
3番に一票

654名無しの旅人:2016/06/11(土) 01:21:33 ID:z09asFbQ0
では私も3に。

655名無しの旅人:2016/06/16(木) 18:58:44 ID:xva6A2Fk0
アルターへ飛び込んだ先にはムトゥーム地下墓地の薄暗い景色が広がっていた。
「まあ、まずは安全確保だよな」
真犯人をみつけるにしても、その前に捕まれば俺が犯人になっちまう。
そういう意味ではこの地下墓地は最高の隠れ家だ。
俺はトレードマークのナイト装備を外してローブを着込む。
「とりあえずどっか人気のない場所を見つけるか」

  ――1週間後――
「もしもビスク行ってたらやばかったな」
地下墓地銀行での立ち話で、どうやらビスクでは俺が指名手配になってることが判明した。
試しにさっき顔出したら見事にガードに追われた。
おいおい、どんな状況だよ。
だが直感で地下墓地を選んだ俺の判断は正しかった。
もしもビスク行ってたらどんなことになっていたことか。
この1週間でこの地下墓地での生活にもなれ、ねぐらにしてる空き部屋もかなり生活感が染み付いてきていた。
しかもここの人達はビスクの人達を嫌ってるので指名手配の影響も届いてない。
なので基本は安全であるが、冒険者は例外なのでその辺は注意が必要だ。
「しかし情報を集めるにも、ここから身動きするのは危険だしどうする……」
若干このままマブ教にでも入信して一生を送るのも悪くないとまで思えてきていたりもする。
思案に暮れながら事件後に俺に届いたメッセージを確認してみる。

サブマスター
『何があったんだ、お前はそんなことをする奴じゃないことは知ってる。
真実が知りたい…連絡してくれ』

FSで仲が良いメンバー
『何があったの?
君がマスターを殺したってことでFS内は大騒ぎになってるよ』

昔から一緒に冒険してる友人
『おいおい、面白いことになってんな。
ビスクではお前の張り紙が張られまくってて大騒ぎだぜ』

いつも受注してる生産者
『注文の剣が出来ました』

1.ここはサブマスターに協力を頼むのが一番だ
2.FS内でも一番信頼できる友人に助けを求めるべきだ
3.FSとは関係ない冒険者仲間なら危険は少ないだろう
4.やべ、剣頼んでるのすっかり忘れてたから取りに行かないと!
5.誰も信用出来るか!俺は自分の力でこの危機を乗り切ってやる!

656名無しの旅人:2016/06/16(木) 19:01:36 ID:xva6A2Fk0
何ヶ月も書き込みないので冗談のつもりで書いたのが、まさかここ見てる人がいるとは驚き
暇つぶしに書いてる程度なので不定期ですが、まあ反応があるうちは細々と続けていってみます

657名無しの旅人:2016/06/17(金) 05:42:46 ID:u4YsB2eYO
2に一票。

658名無しの旅人:2016/06/25(土) 01:58:56 ID:twJp2qvw0
1


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