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すぱろぐ大戦BBS・SS投下スレ

86ラドクリフ教授の日記帳 ◆2OPVuXHphE:2008/01/09(水) 23:02:05 ID:mlH87fEY
 2月21日。
 自らの付けていた日記帳を読み返しながら、フェリオ・ラドクリフは嘆息した。
 今でも覚えている。13年前の5月の事故。
 あの後、クリアーナを改名したのは、今から思えば浅ましい欺瞞だったのやも知れぬ。
 幼かったジョッシュもリムも、クリスとリアナが元々二人だった時のことなどすっかり忘れているようだ。
 ジョッシュが二人として接していたのは僅かな時間で、無理もない。
 リムにしても、幼い頃からずっと一緒にいたために、かえって一人になってからの記憶と混同しているフシがある。
 だが、だからこそ、改めて謝罪しなければならないのではないか。
 自問自答し、日記帳を閉じる。
「クリフ」
『はい?ああ、教授。やはりレース・アルカーナの動力部と規格が合一です。出力次第ですが、ファブラ・フォレースを開けることも出来るでしょう』
 通信機越しに、報告をするクリフォード・ガイギャクス。
「それは、場合によってはジョッシュの手も借りねばならんかな」
『レース・アルカーナ、シュンパティア共々相当数が揃えられましたから、研究チーム内のC級適合者でも数さえ揃えれば問題ないでしょう』
 これは、都合が良いかも知れない。
「そうか……出来れば、ジョッシュも立ち会って欲しいな。我々リ・テクノロジストの一応の到達点だ」
『教授の言葉では動かんでしょう』
 平然と痛いところを突いてくれる。まぁ、だからこそ信頼も出来るのだが。
「そうだろうな。君は何か、良い案が有るのかな?クリフ」
『私の方でもリムに用事がありますから、それを名目に呼びましょう』
「用事?」
『ええ、レース・アルカーナ搭載機の二号機が完成したので』
「…………」
『教授が気に入らないのは知っていますが、リムとの約束でしてね』
「リム、か……」
 レポートとしては残していないから、クリフもあの事件の詳細までは知っていないだろうが……
『実験当時居なかった若造に、好き勝手やられて腹に据えかねるのも判りますが、第三者だからこそ見えてくる物もあります。教授、別にリムは貴方のことを怨んでやいませんよ』
「君に慰められるとはな」
『……別段、慰めたつもりはないのですがね。客観的な認識を口にしただけですよ』
 これで照れているのだから、始末に負えない。
 への字に曲げたその口元を、少しでも笑わせれば良い物を。
『ともかく了解しました。ジョッシュ達が帰るまで、ファブラ・フォレースは現状維持ですか』
「待つ必要がないのなら進めて構わん。ジョッシュが先に帰ってくればそれで良し、先に門が開いても結果さえ教えられればいい」
 通信を切って、素直ではないのは自分もかと自嘲する。
 自分はただ、会って、謝罪したいのだろう。ジョッシュとリム、クリスとリアナに。
(それでどうなるとも思えんが)
 リムを元に戻す方法などない。
 有ったとしても自分の知らぬこと。無責任ここに極まれり、だが……
(私は謝ることしか出来ない)
 まだ幼かった少女を、その危険性も理解せず実験の材料とした事と、その出来事をすら、幼い頃のあやふやな記憶を利用して隠蔽しようとした事を。


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