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すぱろぐ大戦BBS・SS投下スレ

179名無しのも私だ:2008/04/01(火) 21:43:06 ID:nLFWknEw


 
 もともとそれに、明確な自我はなかった。ただ、人間でいうところの、神の意志、とか、UWTBというものはあった。
 破滅への定向意志。それは確かに存在していた。
 だが、それはあるきっかけにより、この宇宙へ解き放たれた。フェリオ・ラドクリフの身体を依代として。
 というような話は、おおよそラキから語られている。だが、この話には語られていない部分があった。
 その存在は、まず依代を欲しがった。そして、この宇宙にある知的生命体を、依代とすることにした。
 そこで、すんなりとホモ・サピエンスに決めた、というわけでもなかった。
 それが現出した一帯に存在していた生命体は、人間だけではなかった。空気中、その人間の体表・体内に多く存在する虫や微生物、
菌やウイルスなど、生命体は多数存在していた。その存在にしてみれば、全て生命体は滅ぼすべきもの、等価値に過ぎない。
 そこで、それは選定を行った。ある程度の知能を持ち、ある程度の行動能力を有し、ある程度のコミュニケーションを持つ生命体。
 ここで、微生物や菌に類する生命体が、即座に除外された。次に小さな虫なども、他の生命と比較して、除外された。
 最終的にこの選定に残ったのは、この時遺跡にいた知的生命体である人間と、もう一種、偶然そこに居合わせたある生き物。
 審査の後、人間がその存在の依代に選ばれた(もっとも、ここまで、人間の時間ではほんの瞬きの間の話であるが)。
 だが、試験的な意味合いで、それは生み出された。それが相応しい生き物であるかどうか調べる為に。
 つまりそれが――。


 *

「こいつなのか」
 不思議そうに、ペンギンは首を傾げる。
「ああ、そうだ。人間のメリオルエッセとして生み出されたのが私達ならば、彼女らはペンギンのメリオルエッセとして生み出された存在だ。
不適格として廃棄されたそうだったが、こうして生き延びていたらしい」
「……」
 彼女、ということはメスなのだろうか。正直どちらでもよいのだが。
「私とこれは、対応する存在として生み出された。これもまた、グラキエースということなのだ。
だから私は、これの心に触れることができる。いくらか、考えていることもわかる」
 考えているのだろうか? この無垢を越えた不思議な瞳は。
「ジョシュア、難しいことはわかっている。これを連れて帰ることはできないか?」
 ふと、もしかしてラキはこのただのペンギンに情が移り、そんな嘘を? と思ったが、ラキはそんな回りくどいことは言わないし、
第一、ラキの考えていることは大体わかる。そうすると、本当にこのペンギンはメリオルエッセということになる。
 しばし口に手を当てて考えた後、ジョッシュは言った。
「……わかった。そうしよう。連れて帰ろう」
「そうか。すまない、ジョシュア」
 ラキは、そのままペンギンをコックピットに連れ込み、一人と一匹で乗り込んだ。
 ジョッシュは、ただその姿を、変な気持ちで眺め、それから自機に乗り込むのだった。


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