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すぱろぐ大戦BBS・SS投下スレ

128Your Body:2008/01/28(月) 13:49:00 ID:8d0pWAYw
「どちらにせよ、闘うに相応しい相手に命懸けの戦いを挑み、燃え尽きるのが私の望み。勝ち負け、生死の結果は私にはどうでも良い事ですのよ」
 酒をタンブラーに注ぎながら、フー=ルーは自分の心根を語った。それは自分の生き様、望みと渇望が入り混じる濁り切った誇りだった。
「俺がそうだった、と?」
「そう思いましたわ。でも、それは間違いだった。私では手に負えない。アル=ヴァン殿が警戒するのも納得ですわ」
 そして、その相手に選ばれた……フー=ルーの眼鏡に適った先生は只管に運が悪かった。命懸けの戦いを渇望するなら、せめて自分の見えない所でやってくれと先生は切に思った。
「ああ、前はそうだったな。今はそんなに警戒されてはいないが」
「あら、お知り合いだったんですの?」
「飲み友達だ。カルヴィナも含めて。昔、ちょっとあってな」
「意外ですわね」
 それもまた古い話だが、確かにこの酒場でアル=ヴァンとカルヴィナに出会った時、彼にはそう思われていた事を先生は覚えていた。
 だが、今はもうアル=ヴァンは先生の友人として敵意やら何やらは手放して久しい。フー=ルーはそれが信じられない様だった。

「しかし、勿体無い事だな」
「何が、ですの?」
「お前の事だよ、フー。その美しさを持ちながら、闘う事以外に悦を見出せないとは」
 そして、先生は何時もの洗脳トークに持っていく。別にフー=ルーがそれを望んだ訳では無いが、今回はのそれは先生の独断だった。
 確かに、フー=ルーは男前だ。だが、それ以上に美しい。生き様やら在り方やらそう言うモノを含めた先生の評価だが、先生は彼女のその在り方が間違っている様に感じた。
「憐れだ……そう仰りたいの?」
「ああ、是非そう言いたいね。お前の生き方を否定するつもりは無い……と、言いたいが、俺はその結末を知っているからな。言わざるを得ん」
「それは、何ですの?」
「何も無いぞ?無明……否、ヴォーダの闇と言った方が解かり易いか。若し、何かそれ以外にあるとするなら、それは痛みと苦しみだけだ」
「・・・」
 まるで、実際に見てきたかの様に先生は語った。その一言一句にはリアリティがあり、フールーはそれに聞き入る。
「修羅道の行き着く果てはそんなモノだ。自分の骸を抱いて価値の無い人生を振り返る。俺には、お前のそんな終焉が見える」
「何故、そう言い切れますの?」
「俺もまた、修羅の巷に居た。別の世界でな」
「え?……それでどう、なりましたの?」
「今言った通りだ。死体になってお仕舞。気が付いたら、その記憶を継いで別の場所で目を覚ましたんだがな」
「少佐、貴方は……」
 ほんの少しだけ、タイムダイバーとしてのこれまでの自分の生き方とその末路を先生は語った。
 フー=ルーは親近感とともに底知れない何かを先生に感じ取った。
「その生き方に誇りを持ってはいた。殺し屋の名誉。死すべきは我らなり、と。……手元に残ったのは、研ぎ澄まされた人殺しの術だけだったが」
 実際にこの身に起こり、そして降りかかった人殺しの連鎖。そう自分がならなくては続けていく事など叶わなかった長く終わりの無い、旅路。
 そして、今も先生は因果律の番人として平行世界と言う名の裏街道を流離っているのだ。終わりが無い事が終焉と言うならば、先生にとっては生そのものが牢獄と言っても過言ではない。
「闘うのは楽しかった。誰かを殺めるのも楽しかった。……そうならなくては、その生き方を続けては居られなかった。だが、今の俺はそれに何も感じない。飽きちまったのさ」
「・・・」
 だからこそ、先生は闘う事に快楽を求めた。そして、その時は確かに楽しかったのだ。だが、それも何度と無く繰り返す裡に飽きてしまったのだ。
 嘗ては、その生き方に身を染めつつも、今となっては勝ちも意味も見出せない生き方。そして、フー=ルーはそんな不毛の道の入り口に立っているに過ぎないのだ。 

「お前も、そうなんじゃないのか?」


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