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すぱろぐ大戦BBS・SS投下スレ

126Your Body:2008/01/28(月) 13:46:26 ID:8d0pWAYw
「・・・」
 完全に取った。フー=ルーはそう確信していた。だが、彼女を以ってしても目の前の男は相手が悪かったと言わざるを得ない。
「……くっ」
 それは間違いだったとフー=ルーは思い知らされた。
――ゴリッ
 硬く冷たい鉄の感触が額から伝わってくる。それもその筈だ。咽喉下に刃を突付けるより一瞬早く、イングラムはフー=ルーの頭に銃を突付けていたのだ。
「フッ……だと思ったぜ。狂犬が」
 マッドなマックスが使っていそうな銃身を切り詰めた水平二連ショットガンがイングラムの手には握られていた。……これもまた、どこから出したのかは不明だった。
「噂は……事実の様ね。その噎せ返る様な血の匂い……年甲斐も無く、身体が熱くなりますわ」
 先に動いた自分より早く、銃を構えたイングラム。それはつまり、反応速度の上をいかれたと言う事だ。先の後を取られたフー=ルーに勝ち目は無いのは明白だった。
「危ない真似は止めておけ。こちらに安全装置は付いていない。この距離ならば、俺が引き金を引く方が早いぞ?」
 この至近距離では近代火器には勝てないとイングラムは言いたい。こんな零距離で散弾を浴びれば、フー=ルーの頭は柘榴の様に吹っ飛ぶのだ。
「……その様ですわね」
 そうしてフー=ルーは格の違いを見せ付けられ、敗北を認めるかの様に静かに剣を下ろす。
「フッ」
 その一連の動作の最中、イングラムは感情が全く見当たらない笑みを張り付かせる。 
「なっ!?」
 そして、それと同時に引鉄に掛けられた指に力を込めた。
 フー=ルーはそれに気付き叫んだが、全ては遅かった。
――カチリ
 引鉄が引かれ、ハンマーが落ちる。……だが、その衝撃が雷管を撃発させる事は無かった。マズルファイアも、銃声だって無かった。
「!!…………?」
 フー=ルーは身を縮め、ギュッと目を瞑っていた。だが、何時になっても真の死が訪れない事を不審に思った彼女はそっと目を開ける。
「BANG!これで一度死んだぞ?フー=ルー=ムールー」
 目の前に銃なんてとっくの昔に無かった。片手を銃の形にしたイングラムがからかう様な声を飛ばしていた。
 ……そう。最初から弾など込められて居なかったのだ。それにやっと思い至ったフー=ルーは自分が呼吸する事すら忘れていた事を思い出した。
「はっ、はぁ……は……はあ」
 急いで酸素を取り込むと、味わった恐怖を体現するかの様に大量の汗が全身から噴出す。全身に回っていたフー=ルーの酒が一気に飛んだ。
――カラン
 フー=ルーは戦意を喪失し、その得物を床に取り落とす。だが、今はもうそんな事はどうでも良かった。


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