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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

908 名無しさん :2011/02/03(木) 05:42:10 ID:m7KgF2xA0

焦がしてはいけない。お湯が混ざってもいけない。
溶かしたキャラメルを混ぜ、あの人が好きな甘すぎないチョコレートを。
チョコレート作りに集中することで意識を逸らそうとしているのに、
目線はどうしてもつられてしまう。――こんなもの、買わなければよかった。
リトルウィッチは恨みがましい目で小瓶を眺める。


そもそも、「惚れ薬」などという単語に釣られたのが気の迷いだった。
アリアンの片隅で売られていたこの小瓶の前で、しかしリトルウィッチは暫くの間立ち尽くしていた。
とりつかれた様に小瓶を見つめるリトルウィッチに、露店を開いていた老女は「半額で譲ろう」と言い、
彼女は震える手でそれを受け取ってしまったのだ。

無論、本物だなどとは信じていない。信じていないが、彼女には根拠が必要だった。
相手を確実に落とせる、という根拠ではない。諦めるための根拠だった。

 リトルウィッチが恋をしたのはギルドのエースだった。
加入当初こそ一緒に狩りに行く機会は多かったものの、時間がたつにつれてそれも目減りし、
今となっては直接会えるのはギルド戦ぐらいだ。
そのギルド戦も彼は前線で戦う一軍パーティーだが、ギルドの平均レベルにも満たないリトルウィッチは
いつも二軍で、顔を合わせている時間など微々たるものである。
 レベルは遥か遠く引き離され、会う事もなく、いつしか声をかけることにすら気兼ねし始め。
強いアーチャーと楽しげに議論する彼を眺めては、溜息を吐く。

 みじめだった。
どれだけ修行に励んでも追いつけない実力も、
膨大すぎて身に付かない知識も、
事あるごとに思い知らされる力量差も、
分不相応の恋をして、まだ諦められずにいる自分も。

それでも好きだった。
彼がギルドホールに現われる度体が軽くなってこのまま飛んで行けそうな気さえしたし、
声をかけられれば胸がときめいた。
彼がいるだけで、心があたたかいもので満たされる。
春の木漏れ日のように。


だけど、もうだめだ。
もう耐えられなかった。苦しさで胸が押しつぶされそうだ。
彼のふとした優しさが、気遣いが、かつて愛した彼の魅力全てがリトルウィッチを苛む。
どんなに好きでも、どれだけ幸せを感じても、彼に届くことはないのだ。
彼が自分を振り向くことはない。悲しいぐらい知っている。だから、もう、諦めるのだ。

心が躍るような歓喜とみじめな落胆を繰り返し、リトルウィッチは疲れ果てていた。


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