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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

9白猫:2008/05/03(土) 12:01:24 ID:5qAuGV/w0


 「――先日ぶりね」
南口から飛び出した紅と黄金の光に、ルヴィラィは目を細める。
頭に被ったリトルサンシャインを放り捨て、夜風に紅の髪を晒す。
その前に、グングニルを持ったネルがゆっくりと舞い上がった。
 「ええ。そうですね」
その隣、ネルの背を護るように立つルフィエはルヴィラィを見、少しだけ表情を曇らせる。
間違いなく、自分の母の顔。
――"いや。"
姿形が似ていようとも。
仮に本当にそうだとしても。
自分の中の母は、揺るがない。
自分の中の母はあの日、亡くしたのだから。
 「……ルヴィラィ。私はあなたを――許さない」
父を亡くし、友を傷つけられ、いとしい人の目覚めない暗い悪夢を彷徨っていたリレッタ。
彼女を思って、腸が煮えくりかえりそうになる。
槍を両手で構え直し、ルフィエの言葉を継ぐ。
 「目的は何です。まさか300日間このように何度も何度も襲撃を繰り返すつもりですか」
 「フフ――まさか。襲撃は今日が最初で最後――だってこれ以上襲撃を繰り返しても無意味だもの」
その言葉に目を細めたネルは、首を傾げる。
 「どういう意味です」
 「言葉通りの意味よ――それより知りたいんじゃないかしら。エリクシルに何が起こったか――」
 「自分なら答えられる、とでも言いたいんですか?」
ネルの言葉にますます笑みを深めたルヴィラィは、小さく口を開く。
 「私が答えられるのはエリクシルについてじゃない――その、槍についてよ」
ルヴィラィの指した槍――グングニルを見やり、ネルは目を細める。
 「グングニル――それを造り出したのは遥か古代の民。その槍は古代のありとあらゆる秘術が組み込まれ、それを手にした者は世界を治めることも滅ぼすことも容易い……。
[開闢神話]の"名も無き最高神"がこの槍を繰り、億万の敵を薙ぎ払ったとされている――」
 「……僕が訊きたいのはそういうことじゃない。何故これが"エリクシルから出てきた"のですか」
 「完成したエリクシルは今も昔もそれ一つきり――私に聞かれても困るわ」
と、その言葉の合間、
ルヴィラィの両の手に、紅と黒の混ざった炎が燃え上がった。
攻撃か、と半歩下がった二人に微笑みかけ、ルヴィラィは呟いた。
 「起動なさい、アトム」





古都、学問の家前。
その屋根に巨体を陣取らせていたデュレンゼルは、

   《起動なさい》

その言葉に、突如ぬっと立ち上がり両の手を空へと翳す。
 【 ―――――――― 】
デュレンゼルの口から紡がれる、奇妙な呪文。
その言葉が紡がれる度に、何処からともなく黒い靄がその上空に集まってゆく。
それらの靄はデュレンゼルの手の間に集まり、その体積を見る間に膨らませ――やがて、数メートルもの大きさになる。
その光景を、眺める者はいない。
いたところで、どうしようもなかった。
 【アトム――起動】
その言葉と同時、
数メートルもの靄が突如凝縮し、

球状に――まるで風船が膨らむように、

   凄まじい速度で、浸食を開始した。





 「!?」
古都の西方で発生した物凄い量の魔力に、ネルは目を見開く。
慌ててその方向を見ると、球状に"夜の色ではない黒"が膨張している。とてつもないスピードで。
まさか、とルヴィラィに向き直る、が。
 「っいない!?」
ルフィエの言葉に、ネルは唇を引き絞る。

ルヴィラィの目的は、これだ。
奴は自分たちと戦いに来たわけではない。
ダラダラと時間をつぶさせ、この攻撃を行うためだったのだ。
 「ッルフィエ!! 退きますよ!!」
 「え――でも、あれは」
 「感じれば分るでしょう!? "あれ"は止められない!!」
 「……ッ」
ネルの言葉に、ルフィエは顔を伏せる。
市場の人々や、近所に住んでいた子供たち、
そして何より、ヴァリオルド邸で親しくしてくれたたくさんの人たち、子供たち、レイゼルを思い出し、
そこまで思ったところで、ネルに抱き締められた。
 
 「……ッ嫌……」
 「……堪えなければならないんです、ルフィエ」
泣きじゃくるルフィエを抱き抱えたまま、ネルはひたすら南へと飛んだ。


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