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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

899 ドワーフ :2010/09/28(火) 23:46:19 ID:HW/cTXWU0
「時にアルジネフ。お前は、私の娘を愛してしまったな?」
「馬鹿な…」
 アルジネフは目を逸らして言った。僅かに息が乱れたのをフェレネンドは見逃さなかった。
「ふっ、分かりやすい男だ。だが娘は隠しもしなかったぞ」
「…………」
「皮肉なものだな。復讐のために近づいた仇の娘を、愛してしまうとはな」
 フェレネンドはアルジネフに歩み寄ると、手を伸ばせば届きそうな距離で立ち止まった。
「正直お前を殺してやろうかとも思っていた。だが、お前と連れ添うことがあの子にとっての幸福だというのなら、過去の因縁をこの命で清
算できるのなら、ここでお前に殺されるのも悪くない」
 そう言って、フェレネンドはアルジネフに懐から取り出した短剣を差し出した。
「自前の物を用意しているだろうが、これを使え。あとの処理は私の執事に任せればいい。安心しろ、あいつは口が堅いからな。信じられな
いかもしれないが、信用して欲しい」
 アルジネフはじっと差し出された短剣を見下ろした。飾り気のない無骨な短剣だった。
(こいつは、何を言っているんだ…)
 アルジネフは、予想外の展開に困惑していた、訳ではない。ただ、目の前の男の態度が気に入らなかった。
 アルジネフが無言で短剣を受け取ると、フェレネンドはふふっと笑った。
「はぁ〜…。妙なものだな、あれほど恐れていたお前のことを、こんな気持ちで迎える日がくるとはな」
(こいつは、何故笑っている?)
「思えばお前の父親は憎たらしい男ではあったが、立場が違えばきっと良い友となっていただろうな…」
(勝手なことを…)
 アルジネフは短剣の鞘を捨てた。鋭く輝く刃に、自分の顔が写っている。フェレネンドからは俯く彼の表情は見えないが、彼には自分の表
情がよく見えていた。今の彼の心を表す表情が。
「さあ、やるがいい。娘の花嫁姿を見れないのは残念だが、こんな晴れ晴れとした気分で死ねるのだから、これ以上は贅沢というものだ」
(こいつは…こいつは……)
 アルジネフはわなわなと震える手で短剣の柄をぎゅっと握り締めた。
(父も、母も、妹や弟も……、死にたくはなかった。最後の瞬間まで死の恐怖に怯え、苦しみぬいて死んでいった)
「どうした?さあ」
(なのにこいつは、満足して死のうとしている)
「躊躇うな、早く」
(許せない…)
 アウジネフはフェレネンドの肩を空いている左手で掴んだ。そして、笑みを浮かべているフェレネンドに向かって言ってやった。
「お前の娘も後で送ってやる。だから安心して、死ね」
「なにっ?」
 フェレネンドの表情が強張った、その瞬間を逃さずアルジネフは奴の胸に向かって短剣を突き立てた。
「馬鹿な…。あの子は…、本気で、お前を!」
「黙れ!絶望して死ね!」
 すがり付いてくるフェレネンドに対して、アルジネフは短剣をさらに捻り上げた。そして引き剥がすように男を突き飛ばした。フェレネン
ドはうめき声を上げてのた打ち回ると、やがてぴくりとも動かなくなった。あっけない復讐劇の幕引きだった。
 アルジネフは先ほど自分が言った言葉が信じられなかった。短剣をぽとりと落とすと、つぶやくように言った。
「出来るわけが、ない…」
 辺りは相変わらず穏やかな日差しに包まれている。彼らの心など知らぬように。


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