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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

887 ドワーフ :2010/06/21(月) 21:18:59 ID:HW/cTXWU0
 キリウスが屋敷に戻ると、執事がすっかり変わってしまった彼の様子を心配して医者を呼ぼうとした。しかし、彼はそれを断わり執事を部屋から締め

出した。
「こんな物など!」
 そう言ってベルトを外そうとしたが、彼の行動を察知したようにベルトは外れなくなっていた。引き出しからナイフを出して切ろうとしたがびくとも

しない。
「無駄なことはよせ」
 そう言ったのはキリウス自身だった。口を動かした感触はない。しかし彼自身の声で自分の耳に響いてきた。
 キリウスはベルトを見下ろしてぞっとした。あの悪魔が言ったとおり、このベルトもまた姿を変えた悪魔なのだ。逃れることは出来ない。
 キリウスは部屋の中央にぽつんと立ちすくんだ。見回せば、それまで自身の虚栄心を満たしてきた煌びやかな家具の数々が、ひどく色あせて見えた。
「私は…なんだ?」
 ぽつりと自問の台詞を吐いた。ここにあるのは本来の運命であれば自分のではないものばかり。自分は本当はここに居ていい人間じゃない。自分が欲

望に任せて運命を歪ませたために、ここにある財産を得るはずだった者達は皆、かつての自分のような文無しに身をやつしていったはずだ。中には死ん

だ者も居るだろう。
 そしてなにより、妻のことが気にかかった。彼女は本来ならば自分と全くかかわりの無い世界で生きていたはずだった。他の貴族の男と結婚して、子

供をもうけていたはずだ。そしてきっと、幸せに暮らしていたに違いない。
「ああ…、ルメーユ。すまない。私は…、お前の運命の人なんかではなかったんだ」
 娘を失ってしまった。妻を悲しませてしまった。そのことが彼の身に重く圧し掛かってきた。
「ああ…あぁ…ああ…あああ!!」
 頭を抱えてキリウスはうずくまった。悲しみに押しつぶされそうだった。止め処なく押し寄せてくる感情の波が彼の正気を奪っていく。
 冷静でない思考のなかで彼が抱いたのは「償いたい」という気持ちだった。自分に財を奪われた者達に、神に、娘に、妻に…。
 それと同時に、自分たちを弄ぶ悪魔どもに対して激しい怒りがこみ上げてきた。

 しばらくして部屋を出ると、そこには妻がキリウスを待つように立っていた。じっと目があったが、彼はすぐに目を逸らして廊下を歩き出した。
「あなた…」
 妻の一言に反応してキリウスは立ち止まった。
「…すまない」
 それでけ言って彼はまた歩き出した。
 ルメーユ。本当にすまなかった。私は本当にお前に愛されるべき人間じゃない。しかし、私のお前に捧げる心からの愛にかけて、この命と引き換えに

してもお前を守ってみせる。
 彼は一人用のベッドしかない寝室で、着替えもせずに布団に倒れこむように横たわるとあっという間に深い眠りに落ちてしまった。


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魔王:「だから、もう一度云う。
   『この我のものとなれ、勇者よ』
    私が望む未だ見ぬ物を探すために
    私の瞳、私の明かり、私の剣となって欲しい」

勇者:「断る」

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