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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

1ルイーダ★:2008/05/03(土) 01:08:47 ID:???0
【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562


【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)


【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。


【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

六冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1200393277/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

807◇68hJrjtY:2009/07/08(水) 06:26:17 ID:4iRAnLHg0
>803さん
初投稿、ありがとうございます!
5歳と6歳という年齢の子を主役と扱ったのは初めて読んだような気がします。
コボルト相手に初々しいながらも本人たちには必死そのものの戦闘シーンが
なんだかホントにLv1そこらの若葉だった頃の自分と重ね合わせてしまいました(笑)
後日談、といいますか、成長した二人の姿で締めくくられているのも嬉しいラスト。
またの投稿お待ちしております♪

808蟻人形:2009/07/11(土) 21:38:01 ID:MpOwosug0
今晩は、蟻人形です。

続きの前に、68hさんに感想を頂いて初めて気付いたことですが、前回(と今回)の話は回想のつもりで書いていました。
半年前に起こった一度目の決闘が冬で、それが終わった直後――という設定を考えていましたが、読み返してみると確かに自分でも前後の繋がりがよく分かりませんでした。
ⅠからⅣまでで季節に触れてなかったのに、いきなり雪とか降らせてしまったり。分かり辛くて申し訳ありませんorz

今回、新たに一話で四人の名前を出しました。
名前を三人称から一人称に変えるとき、『どれがどの人物の名前なのか』ということには注意を払ったつもりですが、正直なところ上手く書けていないような気がしています。
なので、その部分を特にご指摘頂けるとありがたいです。

809蟻人形:2009/07/11(土) 21:39:35 ID:MpOwosug0
  赤に満ちた夜

 0:秉燭夜遊

 Ⅰ >>577-579 (七冊目)   Ⅱ >>589-590 (  〃  )   Ⅲ >>604-607 (  〃  )   Ⅳ >>635-636 (  〃  )   Ⅴ >>689-690 (  〃  )


 Ⅵ … Lit Light Lives Ⅱ


 元々談話室に置かれていた十六の椅子。
 異国から仕入れた生地を使った高価なモノ、背もたれの後ろから新たな枝が伸びているような木製の生きたモノ、軽金属が器用に加工されたメタリックなモノ……。
 メンバーはそれぞれ自分専用の椅子を自由に持ち込み、いつでも好きなときに和気藹々と団欒を繰り返していた。

 上階で一本の蝋燭に明かりが灯ったとき、談話室には二人のメンバーがいた。
 入って最初に気付かされることは、椅子の在り様と数の変化だろう。
 室内には約半数の椅子が残っていたが、その中で無事でいるものはほとんどなかった。
 原型を留めず潰された椅子が少なくとも二つ以上はあり、他の五つの椅子のうち二つは部屋の隅に倒されたままで、一つは腰を下ろす部分が痛々しく歪んでいる。
 部屋には長方形の大きなテーブルと円形の少人数用テーブルがあるが、相方である椅子を失い広々とした空洞が部屋の空気をより一層重いものに作り変えていた。

 辛うじてではあるが、たった一箇所だけ生きている場所があった。
 小意地を張って地べたに胡坐を組む男と、肘掛が壊れた椅子に腰掛けた女。まるで何かに押し退けられたように、二人は広い部屋の隅にいた。
 会話は先程から途切れ途切れで、今も男が静けさを振り払おうと重い口を開いたところだった。
 短くまとめられた提案に対し、女はほとんど間を置かずに気のない返答する。
「ムリムリ。使えないだろうし、やるだけ無駄よ。余計なの入れたって、あいつは的にもしてくれないと思うけど」
 新しく頬に大きな腫れを拵えた男は内容を曖昧に小さく唸った。
「だけどよ、五人だぜ? 残ったのがたったの五人だ。しかも揃って攻撃メインで、支援タイプの奴は全滅と来てる。どっかから引き抜くしかねぇだろ?」
「それはあってるけどさ、新米なんか引っ張ってきたってどうにもならないじゃん。大体、訓練と実践が違うコトくらい分かってるでしょ?」
 女は包帯を厚く巻いた右手をひらひらと動かしながら言った。
「ああ、それは知ってる。俺が言いたいのは、水属性が使える奴を鍛えること前提で連れてくるのはどうだってことだ」
 真面目に説明する男だったが、女はしっかり取り合おうとはしなかった。体を前後に一度揺らし、元に戻ってから肩を落とした。
「魔力がどの色でも大差ないよ。あの強さだったら……」
 もう反論の言葉は出てこなかった。魔力の色、つまり属性の相性でどうにかなる相手でないことは男も十分理解していた。
 次第に視線が落ちていく女につられてか、男も意識せずにうなだれていく。会話の種が底を突き、微かな温もりさえ急速に失われていった。
「あーあ。どーしようもねぇのかぁ……」
 最後の男の呻きは、二人の耳に長く残った。

810蟻人形:2009/07/11(土) 21:40:22 ID:MpOwosug0

 談話室の戸が開いた。
 二人はある女性を連想して入り口を見上げたが、立っていたのはその人ではなかった。厚いコートを着た男が長髪に乗った雪を払い落としながら部屋に入ってきた。
「よっ。なんだい、こんなに暗くして」
 扉の向こう側から漏れる明かりが、外の寒さで赤みがさした顔を照らし出していた。男は何も言わずに頭を垂れたが、女は再び上体を起こした。
「オウバ、おかえり」
 そう挨拶はしたものの、女も立ち上がりはしなかった。
「レナン一人? マッチが擦れないなら他の誰かに頼めばいいのに」
 オウバと呼ばれた男はポケットの中のマッチ箱を探った。対して女は今度は手の甲のみに包帯を巻いた左手を振った。
「大丈夫、左は使えそうだから。それに一人じゃないよ」
 そう、と適当な相槌を打ち、オウバはテーブルの上の燭台へと歩みを進めた。その途中で、オウバはあることに気付いた。

 不意に唯一の足音が止まった。しかしオウバはまだ蝋燭の傍にはいない。立ち止まった彼の視線が部屋の逆側に倒れている一つの椅子に注がれていた。
「俺の椅子も……壊していったのか?」
 信じられないと言わんばかりの声が響いた。そのときのレナンの表情が暗がりに隠されていたことは幸運だった。
「ン……。巻き添えになったっていうか、その……」
 レナンは続きを話すことを躊躇っている様子を見せた。だが、事態は彼女が新しい言葉を組み立てるのを待たなかった。
 ずっと俯いていた男がようやく顔を上げた。彼の目はまずオウバを捉える。そこには紛れもない敵意が強く込められていた。
「俺が蹴り飛ばしたぜ。オウバ」
 素早くレナンの影が男からオウバへと向き直ったが、当人たちは気付きもしない。何故かオウバは何も言わなかった。
 事態を飲み込んだレナンは、オウバではなく男に魔力を送ることを選んだ。少しでも力を持つ者なら誰でも使える会話技術、『耳打ち』による伝達だ。
『ちょっとエニサ、今のはまずいよ。仕方なかったことだけど、壊しちゃったんだし……』
 耳打ちの内容は第三者に漏れることはない。
 彼女はオウバへの謝罪を勧める意を含めて耳打ちをし、男はそれを読み取った。
「で、謝れってか? 冗談じゃねェ」
 なんと返答は普通の肉声で突き返され、しかも男の口はまだ閉じなかった。彼はオウバを一層強く睨みつけ、続けた。
「お前さぁ、マジでズレてんだよ」

 レナンが男の名を叫び終える前に、オウバがレナンを呼んでいた。そのときの声はいつになく荒々しかった。
 あまりにもハッキリとした挑発を吹っかけられ、オウバも持ち合わせの少ない慎重さをかなぐり捨てていたのだ。
「黙っててくれ」
 特にその一言のあと、彼は絞るように喉から音を出した。
「エニサ、続けろよ。どういう意味だ?」
 頬を腫らした顔が更に歪み、そこからは憎悪の情さえ窺えた。
 互いにこれまでに溜め込んできた相手への不満が魔力に変わり、薄闇の上に二つの輪郭を黒く濃く刻み込んでいた。

811蟻人形:2009/07/11(土) 21:41:08 ID:MpOwosug0
 最初にエニサの魔力が一度小さく揺れた。
「まず火がからきしダメってのが論外。使えねぇ。土はいいとして、風が使えるくせにヘイストできないなんてありえねぇって話よ」
 段々と声が低く大きくなり、黒をバックにうねる魔力の動きも激しくなっていく。エニサは体を前に乗り出し、握りこぶしで床を打った。
「そうだ! ウィザードのくせに支援できないでどうすんだ? なんで土に拘ってるのか知らねぇが、ちったぁ自分以外のことも考えろ――」
「で!? 自分はどうなんだ! 色のある魔法を一度でも使ったことがあったか!?」
 オウバも負けじと声を張り上げた。エニサは僅かに、しかし確かにたじろいだ。鋭く切り込んだ反撃はエニサの弱点を見事に突き当てていた。
 相手の怯みを見逃さず、オウバは切り口をより深く攻めた。
「魔力を元素に換える方法すら知りもしないくせに、偉そうにしてりゃ世話がないな!」
 まるで電気が走ったようにエニサが立ち上がる。
 やや遅れてオウバも杖を構えたが、そのとき既にエニサは彼の視線の先から消えていた。

「っヅぅ!」
 硬い床が奇妙な声を発する。正確には、そこに体を重ねたエニサの声だが。地面に立っていたのは彼が倒れる前後で変わらず二人だった。
「まっったく!! どうして顔合わせるたび喧嘩吹っかけるの!?」
 起立はエニサ一人の行動ではなかった。新調した履き慣れない靴ではあったが、レナンの脚は万全の状態であった。
「……てっ、てめ……っ」
「オウバもよ! ガキじゃないんだから、いい加減場所と状況考えなさいよ!」
 レナンは地べたから聞こえる呻きを無視し、呆気にとられた面持ちのオウバに左手の人差し指を突きつけた。
 面食らったオウバだったが、一つ一つの動作に不満を散りばめつつも大人しく杖を置いた。
 談話室が完全に静まったとき、入り口の戸が再び開いた。

「あれ、どしたの? 三人とも、こんなに暗くして……」
 今度こそ二人が待っていた女性だった。その女性は扉を大きく開け、廊下の光が部屋の中に入るように角度を調節していた。
「誰かマッチ持ってない?」
 女性が暗がりの中の三人に尋ねた。
「あぁ、ダイジョブ。私、左手使えるから」
 レナンが人差し指を立てると、宙に浮く形で小さな火が生まれた。オウバは完全に機嫌を損ね、その光景が出来るだけ視界に入らないよう努めていた。
 光が三人を照らし出した途端、戸口に立つ女性が目を見開いた。
「うわっ、エニサ鼻血っ! 鼻血ヤバいよ!」
 他の二人が見ると、エニサは這いつくばったまま鼻を押さえていた。実際彼はオウバと違い、レナンの火を気にしている余裕などなかった。
「鼻っ……レナンッ! 鼻! 鼻折れたぞっ!」
 指の隙間から漏れた血の雫が、床の赤い水溜りに飛び込んだ。その量を見る限り相当の重傷だと判断できる。
「そんなはずないって。多分強く打っただけでしょ」
 燭台から燭台へと指を動かしながら、レナンは冷静に反論する。次に彼女はその場に突っ立ったままの女性に向き直った。
「シベル、エニサの鼻診てくれない? 火ィ点け終わったら代わるから」
 言い放たれた一言によって、頼まれた女性の顔に動揺と不安が浮かぶ。
「でもあたし、手当てとか全然できないよ……」
「いいのいいの、ただ死なないように目の前で見てるだけで。そもそも明かりがないと見えないからさ」
 恨みがましい表情を包み隠す余裕もないほど出血に慌てふためくエニサの様子を、レナンはえもいわれぬ顔で眺めていた。
 しかも踵をめぐらす一瞬、彼女の口元が小刻みに震えていた。
 それらは新たに部屋に入った女性――つまりシベルに対し、レナンの思考を悟らせるのに充分な役割を果たしていた。
 とはいえ、不機嫌そうに押し黙っているオウバや己との戦いに臨んでいるエニサまでが気付いたかどうかは言うまでもない。
 シベルは呆れるというよりは困惑した表情で、テーブルの上に置いてある燭台とちり紙を掴み、エニサの元に駆け寄った。

812蟻人形:2009/07/11(土) 21:42:07 ID:MpOwosug0
 蹲るエニサの前に屈み込んだとき、シベルは思わず息を呑んだ。火が映し出したエニサの顔は青白く、血糊が彼の両手と鼻の周りをべっとりと汚していた。
「レナン! レナン!!」
「わかってる、わかってる。終わってからね」
 ほとんど叫ぶようなシベルの声にも、呼ばれた本人は気楽そうに対応した。
 苛立っていたオウバまでが、差し迫った声色が気になったのか、はたまた好奇心からか、少し距離をおいてエニサを盗み見ていた。
 遂にシベルは唇を強く結んだ。燭台を床に置くと、震える手をエニサの顔に近づける。
 当然の権利として、エニサは大きく身を引いた。
「エニサ」
 名を呼んだ直後、シベルは一番若い火を振り返る。
 足音が不自然に長く途絶えたことが原因であり、一瞬の間を置いて、床と靴の擦れ合う音が戻った。
 彼女が視線を戻すと、エニサは一段と後ろへ下がろうとした。
「診るだけだから。血、止めないと本当に危ないかもしれないよ」
 シベルは再び手を伸ばしたが、壁に映ったエニサの影はもう逃げる素振りをしなかった。
 真っ赤に染まった諸手を顔から外し、大量のちり紙で血を拭き取ると、出血の大もとである鼻が全貌を露にした。
 いよいよそれにシベルの指が触れようかというところで、突然高い声が上がった。
 その後数秒間にわたって耳を劈くような悲鳴が続き、嵐が過ぎ去ったときには、謝罪をするシベルと転げまわるエニサ、笑みを漏らすオウバと笑い転げるレナンがあった。

「ウ……ウぅぅぅ……」
「ごめん! ごめんなさい!」
 エニサが唸りながら体を起こす間もレナンの馬鹿笑いが部屋一杯に響いていた。シベルは彼の両肩を抱え、動作を助けていた。
 立ち上がったとき、彼の顔が訴えるものはシベルへの怒りでもレナンへの憤りでもなかった。目はシベルの右手に釘付けとなっている。
 顔つきを変えたのはシベル一人だった。
 結局、彼は気持ち視線を落としながら口を開いた。鼻が腫れているせいで、はっきりとした発音にはならなかった。
「ヤケド、まだ治ってなかったのか?」
 笑い声のボリュームが一瞬で下がり、咳き込む音が場を引き継いだ。
 それと同じくらい唐突にシベルの謝罪が止まった。ややあってシベルが首を縦に振った。
「……ごめん」
 彼女は同じ言葉を呟いた。しかし、全てが――まったく異なったものになっていた。
 エニサが一番近くにあった椅子を引き、彼女を座らせた。
「あの、ゴメン。俺も悪かった……」
 いつの間にか、レナンも二人の傍に立っていた。非常に似つかわしくない、まるで自分が罵詈雑言を浴びせられたかのような面持ちだった。
「イ゙ッッ?!!」
 声を噛み殺したのはエニサ。その向こう脛を思い切り蹴飛ばしたのはレナン。
 まさに泣きっ面に蜂、最後にエニサはレナンからの耳打ちを受け取ることになった。
『この、マヌケっ!』

813蟻人形:2009/07/11(土) 21:43:07 ID:MpOwosug0
 部屋中が事の行く末を見守る中、レナンがシベルの傍にそっと寄り添ったときだった。三人の耳にしっかりとした声が届いた。
「大丈夫」
 全員の視線がシベルに注がれた。
 直後シベルは決起し、仲間たちに向き直る。彼女の表情には強い覚悟が表れていた。
 それを見たレナンの顔がパッと明るくなった。
「そうよ! あたしのせいでこうなったんだから、あたしが一番頑張らないと!」
「ちがう、ちがう」
 レナンがシベルの肩に腕を回しながら楽しげに訂正する。
「これはみんなのせい、だからみんなでガンバらないとねっ♪」
「そうだぜ、おい」
 鼻の下を腕で擦りながら、エニサが同意を示した。
 そうなると、自然と皆の視線は一人に集まる。オウバもテーブルから腰を下ろした。
「あぁ、正論だ」
 オウバの一言を聞いて、遂にシベルも笑顔になった。
「よっしゃ! オウバァ! 表出ろよ!」
 突然エニサはそう叫ぶと、テーブルの上に放置されていた弓と矢筒を引っ掴む。
 オウバもニヤッと口元を持ち上げ、エニサの行動に応じて杖を手に持った。
「……オッケェ!」
「ちょ、ちょっと!」
 予測していなかった二人の行動に、シベルが慌てて間に割って入ろうとした。
 一方、まだ暗かった部屋で何度もそうしたように、レナンはニッコリ微笑んだ。
 その後――言葉は切れ、悲鳴が残る。
 残った一つのテーブルと二つの椅子、そして幾つかの蝋燭が巻き添えとなり、それは決着することとなった。


 怪我人に対して無力であるシベルは、先の結果も相まって、レナンが働く様子を横で黙って見ている他なかった。
 じめっとした雰囲気を醸し出す男二人。彼らの傷を看るレナンは不自然なほど生き生きとしている。
 原因に心当たりのあるシベルは、それを聞かずにはいられなかった。
『レナン』
 エニサの鼻を治療するレナンに耳打ちで呼びかけると、彼女は目線だけをシベルに向けた。
『なに?』
『もしかして、なんだけど。あたしが二階から下りてくる前に、またやった?』
 そう尋ねた途端、レナンの指がはたと止まった。
レナンは首を斜めに傾げて髪を顔の前に流し、エニサの視線を経ったことを確認してから、さっきと同じようにニッコリと微笑んだ。
 訝しむエニサとレナンを交互に見ながら、シベルは短い髪の上から頭を掻いた。
『あのさ、いい加減二人の喧嘩を煽るのはやめにしたら? 性格悪く見えるよ』
『うぅん……分かってるけど、一度味を占めたら止められなくって。シベルもやってみない?』
 レナンが更に首を傾け、シベルに向けて軽くウィンクした。シベルは柔らかく微笑み返した。
『んー、考えとく』
 つれない返事に少し残念そうな面持ちで姿勢を正すレナンを確認してから、シベルは小さく溜息を吐いた。
 彼女の横顔に映った不安に気付いた者は一人もいない。
 空は灰色から黒色の雲に支配を譲り渡し、雪は風と共に夜の街を駆け抜けていった。

814◇68hJrjtY:2009/07/12(日) 08:12:38 ID:4iRAnLHg0
>蟻人形さん
続きありがとうございます♪
なるほど、戦いが終わってその回想…"少女"に惨敗した彼らが心と身体を休める時期。
でも、こんな時期の風景のほうが各登場人物に迫れる描写が見られて嬉しいです。
今回は蟻人形さんも仰るようにメインと思われる(?)登場人物の名前が判明してきましたね。
指摘要望の件ですが、私が読んだ限りでは人物の混同などはまったくありませんよ。
ぶっきらぼうなエニサ、しっかり者のレナン、エニサの好敵手オウバ、優しいシベル。
彼らがどんな物語の舞台に立って行くのか、続きお待ちしています!

815DIWALI:2009/07/19(日) 11:18:05 ID:JDly1N7M0
お久しぶりです!まずはこないだのコメ返しから・・・

>みやびさん and 68hさん
正論掲げれば即ち正義・・・たしかに行き過ぎればそれは間違っているかもしれませんが、例の件では
正しいことを戒めの意を込めて言ってくれたんだと信じています。仮にそれを見てなかったら調子に乗って
話をとんでもない方向に曲げてしまってたかもしれませんし・・・自分としては陽気でファンキーなエロの
つもりでしたが、読み手さんのセンスなども考慮してさじ加減を調整していきたいですね。
励ましの言葉、ありがとうございます!!

816DIWALI:2009/07/19(日) 11:51:18 ID:JDly1N7M0
>>738からの続きとなります。


「・・・・え?」

 すやすやと眠る幼女化したミリアを抱いていたラティナは唖然としていた・・・彼女の前に立っていたのは、一人の女性。
 上半身が裸で傷だらけの青年の肩を担ぎながら、そして彼と同じくらいの数の傷をこさえた、和服の美女がそこにいた。
 艶やかで美しい黒髪、雪のような白い肌に滴る紅の血・・・それがラティナ、いや、あやねの母だと気付くのに3秒も要らなかった。
 そしてその母、雪乃が肩を担いでいた青年がトレスヴァントだということを悟るのも同様・・・

「お、お母さん・・・それにトレスヴァントも?何があったの!?」
「実は・・・この子があやねちゃんの彼氏言うもんやから、ちょっと腕試しさせてもろたんえ?なかなかの上玉やわァ。
 "肉を切らせて骨を断つ"の真髄、しかと見せてもらいましたよって・・・あやねちゃん、ええ男見つけはりましたなァ」
「っ!!トレスヴァントに何てことしてくれてんのよっ、お母さん!?そうやって力づくで人を試すのやめてっていつも言ってるでしょ!?」
「あ・・・あぁ〜、ごめんね。私、強い人には目が無うて・・・ややわぁ〜、お母さん反省しとるさかいに」
「んもうっ、相変わらずなんだから・・・ねぇお母さん、この子をお願い。トレスヴァントと話がしたいの。」

 親指を咥えて眠るミリアを雪乃に預けると、地に伏しているトレスヴァントの元へとラティナは歩み寄る。
 大好きな人の元へと早足で歩み寄る彼女の瞳には、既に雫の塊が溜まっていた・・・それだけ、彼への愛が深かった。

「トレスヴァント・・・ねぇっ、わたしだよ?目を覚ましてっ!!」
「うっ・・・うぅ、その声・・・あや・・ね?あやね、か??」

 バチィンっ!!

 ラティナの故郷での名前を口にしたとき、彼の頬に衝撃が走った・・・!!
 既に振られていたラティナの平手、そして我慢できずに彼女の瞳から涙は静かに流れている。

817DIWALI:2009/07/19(日) 12:17:45 ID:JDly1N7M0
「・・・・ぁっ・・・!!バカあぁっ!!」
「え・・・ど、どうしたんだよ・・あや・・・」

 何度も何度も、馬乗りするラティナの往復ビンタはトレスヴァントの頬を叩き続ける。そしてそれに比例して流れる彼女の涙。
 もはや零れる嗚咽を抑えることもできないほどに、ラティナは泣いていた・・・しかしその涙も訳あってこそ、その平手の意味も。
 それを理解できる程の脳みそを持っているわけでもなし、しかし本能でそれをトレスヴァントは理解し、肌で感じ取る・・・

「バカバカバカバカバカぁっ!!!わひゃっ・・・わひゃしはっ、えぅっ・・・もう故郷には、かえら・・ないもんっ!!ずっとずっと、ずっと
 トレスヴァントと一緒にっ・・・ふぁ、らひ・・・ラティナとして生きたいんだもんっ!!らから・・・もう"あやね"なんて呼ばないでぇっ!!バカあぁっ!!!」
「・・・!!・・・・ラティナ。」

 我が侭な子供が泣きじゃくるように、涙に濡れた彼女の泣き顔は彼の心を抉った。
 ここが自分の居場所だと、自分が彼女に必要とされていると、そう言いたいかのような言葉の雨・・・
 それはあの時の状況と似ていた。行為と裏腹な態度を責めて、そして泣きながら告白されたあの夜に・・・
 そしてその次に行うべきことは・・・アレしかなかった。

「ほぇ・・・?」
「あの夜と一緒だな。感極まって泣きじゃくるお前を、こうやって優しく抱きしめていた・・・そうだろ?」
「・・・っ、ねぇトレスヴァント・・・抱きしめて、わたしのこと、ぎゅって・・・して。」
「ああ・・・何度でも、何度でも抱きしめてやる、唇を重ねてやる、愛してやる。ラティナ、大好きだっ!!」
「わたしもっ・・・わたしも大好きよっ、死ぬまでずっと一緒だよっ、大好きだよっ!!!」

 地面に仰向けに倒れるトレスヴァントに跨るラティナは、間髪入れずに彼の唇へ自らのそれを重ねる・・・!
 口の中で柔らかい物が絡み合い、恍惚の海へと二人は沈んでいく・・・そんな二人を雪乃は微笑ましく眺めていた。

「ふふっ、若いってええもんやわぁ。そういえば私と旦那はんも、決闘の末に抱き合った思い出がありましたなァ、うふふ」
「んみゅ〜・・・ふぁあ〜、うにゅ?あれぇ、トレチュバントとラティナがチューしてうの〜!おばちゃん、あれなぁに?」
「(お、おば・・・!?)う、うふふふ、子供は知らなくてええこと・・・どすえ?(おばちゃん・・・年は取りたくないもんどすなぁ)」

「ん、ふぅっ・・・トレフヴァントぉっ・・・」
「ラフィナ・・・んっ」

 陽炎に燃える森の中、二人はその愛を深めあった・・・

to be continued.

818◇68hJrjtY:2009/07/20(月) 20:45:54 ID:4iRAnLHg0
>DIWALIさん
お久しぶりです♪続きありがとうございます。
本名の「あやね」ではなく、ラティナという名前を愛する人に呼んでもらいたい…
ラティナが健気でホントに可愛い。トレスヴァントの今後の恋路も安心できそうですね。
胸キュン(死語)で青春真っ只中な二人にまずは萌えさせていただきました(笑)
さてはて、他方面での戦闘のその後も気になりながら続きお待ちしていますね。

819803:2009/07/30(木) 15:49:08 ID:jbYrN6dg0
「ふぅー。今日はここら辺にしようか。」

あかね色に染まる空。気の抜ける声を出す烏たち。僕は美しい女性とのペアハンを終えた。
前髪にメッシュをかけた元気な女性の名前はアヤ。僕の幼馴染みだ。

「ふふ、アヤ。昔と違って強くなったな。コボルトと闘った日は大けがをしたのに」

昔初めてアヤと共に闘った日のことを僕はアヤに話す。
目の前の女性は顔を少し赤くし、口をとがらせて抗議をしてくる。

「あのときは私もあんたも戦闘のこと何も分かってなかったじゃない。速く忘れてよ」

確かにその通り、あのときは僕もアヤも戦闘のことを知らずに突っ込んだだけだった。
だがやはりあのときの出来事を忘れることは出来ない。何せあの日は僕の想い人と初めて………
いや、これを言うのはやめておこう。僕自身も恥ずかしいからね。あの時はただの友達だったからなぁ

そういえば。僕とアヤの大冒険はいくつかあったな。どんなことがあったっけ
そう想った僕はアヤに聞いてみた。するとアヤは少し考えた後に
頭の上に豆電球が浮かんだかのように手のひらをポンとたたき僕に話す。

「そう言えば、10才頃に初級戦闘指導があったときに凄いことがあったじゃない。
あのときは確かジュンとリアーナも一緒だったよね。」

そう言えばそうだな。確かあれは指導を受けるようになって1ヶ月位したときのことだったな───

これは小さな小さな冒険をした二人と、その友達が体験したほんのちょっとだけ大きな物語

820803:2009/07/30(木) 15:51:00 ID:jbYrN6dg0
「コボルトの隠された隠れ家での闘い」


「今日はこれで終了。皆、武器の使い方は分かったか?しっかりと素振りなどをするように」

とても暑い夏の日。10才になった僕と、9才になったアヤは他の皆と一緒に戦闘指導を受けていた。
今日はやっと授業が終わり家に帰ることになったばかりだ。

「んー。やっと終わったね。前に闘ったことあるからか、結構できるものだねー。」

アヤは背伸びをしながらそう話す。僕とアヤはコボルト騒動で武器の扱い方を覚えており
他の奴らよりも遥かにうまく闘うことが出来ていた。
実際、今日のコボルトを相手にした戦闘では、あのときのようなへまはせず、
先生の助言も有ってか無傷で勝利することが出来た。
アヤに、あのときのトラウマがあるかと思ったが、逆にそのときのやり返しなのか
いつもと違いかなりいきり立って槍を突き刺していた。ううん、恐ろしい。

それから数日たったある日、遥か北西にある、アリアンという町の生徒と
合同訓練をすると言う話があり、そしてついにその合同訓練の日になったのである

朝、いつもと違う今日は、早くから集合をかけられていた。
僕はかなり速く起きて集合場所についていた。
どんな生徒がいるか気になるなんてことは全くない。僕の実力を見せつけて優越感に浸りたかっただけだ。
他に集合している生徒は2,3人。暇でしょうがない。アヤがいると楽しいんだけどな。

そういえば僕のファーストキスはアヤにあげてしまったんだっけ。でも不思議と嫌じゃなかった。何でだろう。
でも言ってしまえばアヤはかなり顔も整ってるし、将来綺麗になるんだろうな。そしたら
好きな男の人でも出来て、僕との関わりは全くなくなってしまうのだろうか──

と、考えていると肩を叩かれた。驚く。なんてことは全くなく、ただ後ろを振り向く。
噂をすれば影。全く、考えるだけで影が来るなんて。

「お早う。まさか、ずっと早くからいたの?張り切りすぎでしょ。」

肩に手を置いたままもう片方の手を口元に持っていき笑うアヤ。
胸がドキドキするのは緊張している性だろうな。アヤ相手にこんな感情持つわけがない。妹みたいなものだ。
僕は笑うアヤにあきれた顔で返した。

「アヤこそ、いつもと違ってかなり速いね。張り切っていたんじゃない?」

まぁね〜と少しだけ苦笑いするアヤ。
その後しばらく他愛のない話をしているといつの間にか集合時間になり、他の生徒も皆集まっていた。
そして先生が前に出てきて話す。

「今日は、アリアンの子供達と交流会を行う。いつかアリアンに行くこともあるだろう。
そのときに一緒に闘ってくれる仲間がいるのは心強いことだ。しっかりと友達を作るように。」

そして、今日の予定などの話をして集会は終わり、ついにアリアンの奴らと顔合わせの時間がきた。

821803:2009/07/30(木) 15:52:49 ID:jbYrN6dg0
こんにちは「アリアンから来ました。今日は僕たちとの交流会を開いていただいてとても嬉しいでしゅっ。」

絶対に先生に台本を書かれたであろう堅苦しい挨拶を一番前にいる男子が喋る。あぁ、噛んじゃった。
さて、確か今日は、それぞれの方で二人組を組んで、二人組同士で4人PTを創るんだったかな。
僕はいつも通りアヤと組むとして、相手は一体どんな二人組になるんだろうか。
僕はやはり、アヤの誘いで二人組を組んだ。これで問題は相手の二人組になった。
全員が二人組をくみ終わると先生が真ん中に出てきて話す。

「さて、二人組は組んだか?そしたら今度は4人PTを組む。PT編成は自分たちで考え
自分たちでPTを創るんだ。これは色々な場所ですぐさま野良PTを創る訓練にもなるからな。」

その後、PTを組む時間が始まった。
攻撃職だけで固める奴、間違えて回復職だけの奴、色々といるみたいだ。
いつも二人でいた僕とアヤはPTを組むことに少し抵抗を感じており、PTを作れないでいた。
武器が他の皆より強い、つまりレベルの高い僕らに色々な奴らが話し掛けてきたが
全て断ってしまっていたのだ。全く、これでは将来ソロかペアハンしかできそうにない。
まぁアヤとはPT組めるようになってもペアハンをたくさんするんだろうが。アヤに好きな人が出来なければ……だが。
そんな中、一人の男子に話し掛けられた。
杖を持っているからきっとウィザードなんだろう。少し長めの髪をした気の強そうなつり目の少年だ。

「おい、お前。レベルが高いからって偉そうにするなよ。レベルよりも装備に付いたオプションなんだからな。」

腕を組んで、偉そうに話し掛けてきやがる。なんだこいつは。ちきしょう。
と、その少年の後ろからもう一人、今度は女の子が出てきた。

「先生に言われたことそのまま言ってるなんて、お子ちゃまねぇ。」

また偉そうなのが出てきた。持っている物は………ゴムが付いてるからスリングなんだろう。どう考えても二股の木の枝だが。
これまた少しだけつり目の、どこかのお嬢さんなんだろうか、上品な服をきている。
笑いながら冷やかすその少女の方を少年は振り向いてにらみ怒鳴る。

「うるせぇリアーナ!先生が言ったなんて証拠はあるのかよ!俺の知識を見せてやったんだぞ!」

少女の名前はリアーナというのか。いかにも上品そうな名前だ。名字とかはきっと長ったらしいんだろうな。
エレクセント・シュヴィナールとかそんな感じに決まっている。エレクセントはミドルネームなんだろ。Eとかで略しちゃうんだきっと。
少女は怒鳴る少年に全く動じることなく更に冷やかす。

「ふふ、本を逆さまにして、いかにも分かってる風にうなずいてるやつがよく言うわよ。自称天才のジュン君。」

少年はジュンか。アヤと同じで少しボルティッシュ側の血を引いた人間がいるのだろうか、そっちでよく使われる名前の付け方だ。
少年は少女の言葉に反論できずにうなっていた。だがやがて此方を向き

「お前ら、さっきから断ってばかりだな。PT組んだことがないって落ちだろう。しょうがないから組んでやるぜ。」

と又上から目線でいってきた。すぐさま反論してやろうと思ったが、運の悪いことに先生がやってきて

「おぉ、最後のPTが組めたか。よし、それじゃぁ今日は皆が創ったPTで狩りだ。あまり遠くに行くんじゃないぞ!」

といって、PTを組むことになってしまった。タイミングが悪いんだよ、カス先公が。
そのまま解散となり、たくさんの4人PTは思い思いの場所で狩りを始めたようだった。

822803:2009/07/30(木) 15:54:51 ID:jbYrN6dg0
「ふん、お前ら、こんなぬるいところで闘おうだなんて想ってないだろうな?」

ジュンが腕を組みながら言ってくる。なんてムカつくやつだ。

「そんなわけないでしょ。私達は最初からコボルト達のアジトの洞窟に行こうと思ってたんだよ」

っと、アヤがいきなり横から顔を出して喋る。そう言えばさっきはずっと反応がなかったな。
肩がふるえている。よっぽど怒っているんだろうな。
それに対しジュンの横にいるリアーナが返答する。

「確かもう少し西の方にある洞窟だったわね。確かにここよりも強いコボルト達がいるわ。いいわ、行きましょう。」

リアーナはジュンと比べてまともな感じだ。いや、こいつもかなり偉そうにしてる。ジュンが異常なんだきっと
そう思っているとジュンが僕らの方を向く。何事かと想っているとこう尋ねてきた。

「そう言えばお前らの名前を聞いていないな。俺らの名前はもう知ってると想うが、俺がジュン、こいつがリアーナだ」

僕とアヤは簡単に自己紹介をして、4人で洞窟の中に入っていった。

洞窟の中、普通のコボルトよりも強いというのは本当だった。しかし、腕に自信のある僕は
だから簡単に敵を蹴散らすことが出来た。
しかし一つ問題があった、4人PTと言うのは形だけ、殆ど二人PTが二つという状況だった。
連携もしないし、何か指示をしあうわけでもないし、一緒の敵を倒すわけでもなかった。
それどころか、倒す目標の敵を同じになってしまい、喧嘩してしまったりもした。

「これは俺が先に目をつけたんだ!他の奴を攻撃しろよ!」

「何を行ってるんだよ。アヤが先に目をつけたんだ。だから僕らが攻撃する権利がある。」

今想えば、間に立たされたグレムリンはたまったもんじゃなかっただろう。
両方に攻撃され、そして無惨な姿になり、それでも身体を両方から引っ張られていたのだから。

アヤとリアーナは気があったようだった。いっちゃ悪いけどアヤもかなり偉そうだからな。何か通じる物があったのだろうか。

「子供よねぇ。ジュンなんて、昔からああなの。いっつも格好ばかりつけて、本当は格好悪い。」

とジュンを見つめてあきれ顔で話すリアーナ。

「そうなんだ。でもね、あいつは格好悪くないんだ。本当に格好いいんだよ。頼りになる。
あいつがいなきゃ私は死んでたもの。昔ちょっとあった出来事でね。かなり恩義感じてるんだ。
私はね、あいつのことが──」

後は聞こえなかった。横の野郎がうるさいからだ。

「ちきしょう!死にやがった!お前の性だぞ!!」

なんで僕の性になるんだ。理由を教えてくれたまえよ。意味が分からない。
もう狩りなんて出来る状況じゃない。そろそろ集合の時間が迫ってきていた。

823803:2009/07/30(木) 15:56:31 ID:jbYrN6dg0
「ちきしょう。お前の性で全然狩れなかった。」

壁を殴りながら怒鳴ってくるジュン。何で僕の性なんだろうか。突っかかってきたのはそっちなのに
と、壁を殴りながら歩くジュンがいきなり転んだ。何かに脚を引っかけたようだ。

「いってぇ!ちきしょう!なんなんだよ一体!」

頭を上げ、自分の足元を見るジュン。アヤとリアーナも駆けつけてきた。
ジュンは足下の物体を見て、目を丸くしていた。

「なんだこれ?光ってる石だ。原石や天球の一種か?にしては形が変だな。」

原石や天球というのは、確か石に不思議な力が込められており、撫でることでその能力を解放する石のはず。
だが原石や天球は形がある程度決まっている。だがこの石はそれらと違い、ひし形の形をしていた。
妖しい光を放つそれはなんだか引き寄せられそうになる魅力を感じる。

「一体なんだろうか。ちょっと調べてみる。」

僕はそう言って、石を拾った。熱いわけでもなくかといって冷たいわけでもなく。
光っているから熱いと想っていたのだけど。でもかなりスベスベしている。
そうして4人で石を眺めていた。

すると、突然石がビカーッと光る。
洞窟の暗闇になれていた僕らはまぶしさに絶えられず、目を腕で覆った。

「うわっ!眩しい!!」

僕は想わずそう叫んだ。アヤやリアーナも悲鳴を上げている。ジュンはどうでもいい。
何とか落ち着いたところで、何が起こったのか、腕をずらし、石のことを見てみる。
すると、石は、一つの光の筋を放っていた。
その筋は洞窟の壁に向かってのびている。いったい何なんだ?

と、石の光が弱まっていく。細めていた目を徐々に大きく開けていく。もう大丈夫だ。






「いったい何だった……ん…だ…?」

言葉を最後までしっかりと放つことが出来なかった。なぜなら今の言葉を喋っている途中に
光の当たっていた壁の場所が「ゴゴゴゴゴ〜ッ」と音を立てずれて雪、大きな道が開けたのだから。

「何これ…………隠し扉なの?」

全員が沈黙する中、最初に言葉を発したのはリアーナだった。
唖然とした表情で言葉を発している。

「隠し扉みたいだね。でも一体どんな技術が………さっきの石は一体…………」

と、アヤが僕の持っている石を見る。すると、なんとさっきの光を発した石は
僕の手の中で勝手に崩れていった。粉々に。

「く、くずれた。勝手に。一体どうなっているんだろ?石といいこの道といい。」

そういっていると、なんとジュンが開いた道に入ろうとしている。
それを見た僕はあわてて制止する。

「やめろって!何があるか分からないんだよ!ダメだって!危ないって!」

ジュンは足を止めて僕の方を見る。そしてニヤリと笑いこう話した。

「何言ってるんだ。この道を見つけたのは俺らが初めてかも知れないんだぜ?中を見て他の奴らに自慢するんだ。」

そういって中に入って行ってしまう。確かに中で何か見つければ自慢できるかも知れないけど…………あぁもう!

「アヤ、リアーナ!ここにいたってしょうがない。ジュンは先に行ってしまったんだ。行こうじゃないか」

二人の方を見て蒼叫び、ジュンの後を追いかける。これでジュンが死んでたりしたら後味が悪いからね。
アヤはため息をついてやれやれと両手を上げ、ゆっくりとついてくる。
リアーナは呼び捨てにされたことに怒っているのか腕を振り回している。ジュンは呼び捨てだけど、僕はダメなのか?
こうして、僕らは非軽石によって開いたその道を、先に進んでいった。
コボルトにだけ分かる文字で「ゲリブの安息所」と書かれていたのが分かるはずもなく……………。

824803:2009/07/30(木) 15:59:03 ID:jbYrN6dg0
僕らは先に進んだ。ジュンに追いつき、僕、ジュン、リアーナ、アヤの順番で先に進む。
道を進んでいくとなんだか開けた場所に出た。ここまで敵に出会ってはいない。
注意深く辺りを見回すと真ん中に一つの石像が置いてある。なんだこれは?コボルトのようだが。
全員で石像を調べるとアヤが何かを発見する。

「みてみて!何か文字が書いてある。え〜っと………読めないな………」

僕もあわててその文字を見てみたがなんて書かれているのか全く読めなかった。コボルトの文字なのか?
と、ジュンが顔を出し得意げな顔でその文字を読み出した。

「へへ、俺は本を読んでしっかりと文字を学んでんだぜ。読んでやる。
え〜っと、「コボルト、グレムリン、ゴブリン、ファミリアの皆の英雄"ゲリブ"ここに
彼ならではの安息所を作る。」ってかいてあるぜ。」

ほぅ、少し見直したぞジュン。僕らじゃ読めない文字を読むとは。そこは尊敬しよう。
リアーナは、順が読めると想っていなかったのか、ものすごくびっくりしている。

「何よ、そんな文字が読めるなんて何も言わなかったじゃないの!何でずっと一緒にいるのに
そう言うこと話してくれなかったのよ!私は、ジュンのこと何でも知ってるのが自慢だったのに……」

びっくりしながら話していた彼女は言葉の最後の方が小さくなり、俯いてしまった。
そうか、さっきの呼び捨てで怒ったことといい、この反応といい、彼女はジュンを……
ふふ、ならばこれからはリアーナさんと呼んでやるべきみたいだ。
さて、ジュンはと言うとそんな彼女の様子を見て非常にあわてているようだ。
腕を意味もなく振って弁解している。まるで子供だな。あぁ、僕らは子供か。

「ち、違うってリアーナ!黙ってた訳じゃねぇよ!教えるのを忘れてただけ!リアーナに
秘密にしようなんて全然想ってねぇってば!なぁ、本当だって!!信じろよ!」

そんな言葉に彼女は「どうかしら?」と一言行ってそっぽを向く。
この少女、本当のことを言ってるって気づいてるな。間違いなく。結構お似合いなんじゃないかな?なんて想ったりして
さて、僕は話を本題に戻すことにした。真面目な顔になり、皆に話す。

「さて、ここはコボルト達の英雄の安息所だ。ということは、普段よりも強いコボルト達がいるだろう。
ここを戻って、探索を大人達に任せてしまうか、僕らがここを探索して、他の皆に自慢するか。どっちがいい?」

先ほどの石像は僕の冒険心に火をつけてしまったようだ。僕は敢えて、さも自分たちが探索した方がいいように
言葉を選んで話す。ジュンはきっと乗るだろう。アヤもおそらく乗るはずだ。問題はリアーナだ。
そして思った通り、ジュンやアヤはこの話に乗ってきた。だが驚いたのはリアーナだった。

「別に良いわ。なんだか楽しそうだし。まぁ、ジュンが頼りになってくれれば、だけど。」

といとも簡単に承諾してしまった。こんな時までジュンの名前を出すのか。本当にこの少女は……
こうして僕らは歩を進める。途中コボルトの上位種、ゴブリンが2体出てきた。
普段よりも強いやつらだったが、たった2体、どうということは無い。蹴散らした。

そのまま先に進んでいくと、一匹のコボルトが暇そうに槍を回して遊んでいた。
攻撃に突っ込もうとするジュンを制止し、身長に近づく。するとコボルトは僕らに気づいた。
コボルトはボクらの前に来ると一礼し、なんと人間の言葉をはっきりと喋ったのだ。

「おや?人間が何故こんな所に。待て待て、その武器はしまえ。」

どうやら攻撃してくる様子はない。僕らは武器をしまう。コボルトは続ける。

「さて、俺は部族の安寧のために、君たちに平和的に、そう、平和的に提案を持ちかけよう。」

平和的 を強調するコボルト。聞くだけ聞いてみようじゃないか。僕は頷いた。

825803:2009/07/30(木) 16:00:43 ID:jbYrN6dg0
「俺の名前はシャーモンテル。まぁ見張りみたいなものだ。さて、本題に入ろう。
実は、北西に倉庫があるんだ、我々のな。槍とか、食料とか、まぁ色々だ。
でな、その倉庫に、洞窟狼が食料に釣られて住み着いてしまってな。そしたらなんと我々コボルト一族に
病気が蔓延してしまったのだよ。きっとあの狼が原因だ。君たちに余裕があるなら、そいつを倒して欲しい。」

そう提案され、僕らは一瞬考えた。魔物の頼みを聞いても良いのだろうか。
だが、此方を攻撃する様子は全くない。聞いてみる価値はあるだろう。僕らは承諾した。
その後僕らは、少し前にあった分岐点を右に進み、倉庫に到達する。
途中アヤが目つぶしの罠にかかってしまったが、少ししたら見えるようになったようだ。

倉庫にたどり着くと、鍵がかかっていた。鍵など持っていないので破壊する。
そうして中にはいると確かに狼がいた。舌を伸ばし、緑色の体液がたれ、まるでゾンビのような……
これ以上描写するのはきつい。勘弁して欲しい。
さて、敵はというと、動きも速いし、攻撃力も高そうだ。あのよだれは地面を溶かしているしな。
狼は此方に気づくと威嚇してきた。こちらも身構える。一瞬の沈黙。そしてすぐに

「おりゃー!!」

とアヤが叫び突っ込んでいった。あのときの二の舞だけは起こすなよ。今日はポーションがないからな。
アヤが槍を突き出す。深々と突き刺さる。だが狼はひるまない。何という強靱な肉体。
狼はアヤが槍を引き抜くと同時にアヤに飛びかかる。だが、やらせはしない。
僕は脚に力を込めると、そのまま狼にジャンプしながら斬りかかる。
ザンッと気持ちのいい音がなる。手応えありだ。これなら奴も………
と思ったのだが、全く違った。あれだけのダメージを受けても奴はひるまない。

「し、しまった!!」

あのときはアヤ、今回は僕かい?この攻撃は避けられないな。もう間に合わない。
だが、生存本能で僕は逃げようとしてしまう。案の定身体が付いていかず
体のバランスが崩れ、倒れる。間違いなく終わりだ。そう思った………が
視界の外から飛んでくる炎の弾。それは狼にぶつかると燃え上がり、狼を火だるまにする。

「グウォオオオォオオ!!」

これは効いたのだろう。狼は転げ回る。

「全く、油断しすぎだぜ。やっぱりレベルが高いだけなのか?」

その言葉に、振り向くとジュンが立っている。ジュンの杖の先端は炎がともっている。
今の炎の弾はジュンが放った物だったのか。命拾いした。僕は素直に感謝の言葉を述べる。

「ごめん。危なかった。お前がいなきゃやられてたよ。ありがとう。」

ジュンは狐につままれたような顔をしたがすぐに

「俺がいないと何も出来ないんだな。全く、あきれるぜ」

と悪口を言ってきた。だが顔は穏やかに笑っている。僕も笑う。
何だ、案外いいやつなんじゃないか。お前なら背中を任してもいいかも知れない。
と、そのとき、狼は雄叫びを上げる

「ガオオオオオオオオ!!!」

雄叫びと共に酸の混じったよだれが飛び散る。

「きゃあああ!あつ、あつい!!痛いよ!!」

アヤの悲鳴だ。ちきしょう。身体が焼けるように熱くて動けない。
目がやられないよう、腕でかばいながら周囲を見渡す。と

「ジュン、何してるのよ、私をかばうなんて。格好つけてんじゃないわよ!!」

ジュンがリアーナに覆い被さっていた。ジュンはあの短い間にリアーナをかばったのか………
情けない。僕はアヤをかばうことなんて出来なかった……………。
そのとき、アヤの雄叫びが聞こえる。

「うりゃあーーー!」

酸を浴びて、それでも立ち向かうのか。冒険者の鏡だな。
狼はあっけにとられたのか微動だにしない。
そのままアヤは突き出す………突きなんてものじゃないな、これは。
脚に力を入れ、腰を捻り、弾力を加え、その勢いを利用して槍を敵に突き刺す。
なんていったっけ?ラピ…………ラピ何とかってやつだ。
その疑問は攻撃を繰り出した本人が解決してくれた。

「食らえ!ラピッドスティンガー!!!!」

技の名前を叫ぶなんてどんな必殺技だよ。だが威力はバカに出来ない。

槍は狼をいとも簡単に突き抜ける。血を吐き出す狼。アヤにかからなくて良かった。酸が混じってるもんな。

「ギャアアアアアアウウウオオオ!!!!」

狼は最後の断末魔を叫ぶとそのまま動かなくなった。

826803:2009/07/30(木) 16:04:50 ID:jbYrN6dg0
沈黙。どれくらい時間がたったのだろうか。しばらくしてアヤが力が抜けたのだろう。ばったりと座り込んだ。
アヤ!と叫んで僕はアヤの側へ行く。アヤは苦笑いしながら此方を向いてつぶやいた。

「アハハハハ、ちょーっとがんばり過ぎちゃった。あぁ、脚に力がはいらないや……」

僕はそう言うアヤをすぐさま背負う。アヤはあわてて抗議してくるが聞かない。

「私重いんだって!最近太っちゃって!だからおんぶなんてしなくても良いってば!」

アヤ、君がこれで太っているというので有れば、僕はきっと1トンくらいあるのだろうね。
アヤに気を取られて二人に方を見てなかっただ。大丈夫だろうか。

「全く、私なんてほっといて自分を守ればよかったのよ。そんな怪我しちゃって。」

「しょうがねぇだろ?身体が勝手に動いちまったんだよ!」

仲睦まじく痴話喧嘩かい。全く、本当に仲がいいんだなぁ。
僕らはシャーモンテルへの元へと戻る。
奴は僕に気づくと一礼しお礼を言ってきた。

「ありがとう。これで我々一族は疫病に悩まされずにすむ!本当にありがとう!!これはお礼だ!」

そういってシャーモンテルは僕らに謎の液体を渡す。

「それは肉体を強化してくれる薬だ。ドーピングみたいな薬物とは違う。まぁレベルが上がると考えればいい。」

飲むかどうか迷った。だが他の3人は説明を受ける前に飲んでしまったようだ。僕が飲むわけにも行かないだろう。
身体がみなぎる感じがする。確かに効力はあるようだ。コボルト達にもこんな技術があるのか。
僕らはシャーモンテルに一礼し、帰ろうとした。だがシャーモンテルに呼び止められる。

「君らがきた道は隠し扉だ。だからもう開かない。この先に外に通じる道がある。そこにいくといい。」

シャーモンテルは地図を出し、簡単な道説明をしてくれた。
そして、改めてシャーモンテルにお礼を言ってその道を進むことにしたのだった。
道中、特に異常はなく、敵に出会うこともなく、目的の場所に着いた。
太陽の光がのぞき込んでいる。僕らは意気揚々と外に出ようとした。が

「我々の隠れ家に人間が入り込むとは、愚かなものだな。」

後ろから低い声が聞こえた。振り向く。
そこには黄色の服装をした一回り大きいコボルトがいた。インプとかいう最高上位種だったかな。

「貴様らを生きて返すわけには行かない。コボルト一族に逆らうとこうなると言うことを教えてやるために
見せしめとして殺してやろう。」

アヤが心配そうに僕に耳打ちする

「どうしよう・・・・出口はもうすぐそこなのに。」

残りの二人は外にでる準備をしているようだ。さて、どうしたものか。
色々と考える。アヤと一緒に闘うにしてもアヤが怪我したらどうする。あの二人も?今日知り合ったばかりで
さっきみたいな危険な目に又遭わせるわけにも行かない。ならば、方法は一つしかない。

827803:2009/07/30(木) 16:06:25 ID:jbYrN6dg0
僕はアヤのことを勢いよく、ジュンの方へ突き飛ばす。
アヤはびっくりして僕に問いかける。

「な、何してるのよあんた!まさか………!!」

アヤ、そうだ、その通りだよ。君の思っているとおりだ。僕はバカだからこれくらいしか思いつかなくてね。
アヤが此方に来ようとする。だが、腕を掴まれ来ることが出来ない。ジュン、良く理解してくれた。

「おい、お前、アヤって言ったっけ?あいつはお前や俺らのためにしようとしてるんだ!
あいつなら大丈夫だ!必ず戻ってくる!だからいまは外に出るんだ!
お前が怪我したらあいつの気持ちを無碍にすることになるぞ!それでもいいのかよ!!」

アヤはまだ騒いでいる。だがジュンは無視して外に連れ出していき、やがて3人の姿は見えなくなった。
僕は、インプの方を振り向き、仁王立ちの如く大の字に手を開き立ちはだかる。

「ほぅ、勇気ある少年だ。私は族長のゲリド!誇り高きインプである!貴様の名はなんだ!!」

そう言うゲリドに対し僕は答える。

「僕は剣士だ。敵に名乗るような名前はないよ。君には悪いと想うけど。」

そう言う僕にゲリドは笑い声を上げる。

「面白い少年だ。良いだろう。一騎打ちだ。ゆくぞ!!」

ゲリドは他のコボルトなんかとは比べ物にならないほど軽い身のこなしで飛びかかってきた。
僕は槍の攻撃をすかさずブロックする。これは皮じゃない、鉄製の盾だ。何度でも攻撃はブロックできるのさ。
そのままゲリドを振り払うと僕は剣を振り上げ斬りかかる。垂直切りだ。


バキンッ!というけたたましい音が響く。ゲリドの槍も鉄製だった。ゲリドは槍の柄の部分で攻撃を防いだのだ。
奴は防いだ後指で槍を数回回転させ身体を捻り槍を突きだしてくる。これはさっきアヤが使っていたラピッドスティンガーだ。
僕は体を反らせ攻撃を避ける。目の前を槍が通過する。危ない危ない。
僕は身体を回転させ元の体勢に戻すと剣をゲリドに突きだした。
頭を狙ったのが悪かったのか、ゲリドに気づかれ、頭を横に傾けられて空を切る。
ゲリドはそのまま槍を振り回す。しゃがんでそれを避け、腹を斬りつける。今度は当たる。
しかし勢いをつけなかったせいか傷は浅く与えるダメージは少なくなってしまった。
ゲリドはほんの少しうなるだけで攻撃の手を止めない。
今度は下側から脚を狙って鉄製の槍をたたきつけようとしてくる。ジャンプしてその攻撃を避け
隙だらけのゲリドをおもいきり剣で斬りつける。今度は手応えがある。
ゲリドはよろけ、後ろに下がり、切られた肩を押さえつぶやく。

「やるな少年。なかなかの指導を受けているようだ。4年前に、見回りのコボルトが
少年少女の二人にやられたというが、そのときの少年は貴様ではないのか?」

そんな昔のことをまさか族長様が覚えててくださるとは、光栄なことだ。
僕はその問いに正直に答える。

「その通りさ。僕が突き飛ばしたあの子、アヤと一緒にコボルトを倒したのはこの僕さ。」

ゲリドは笑う。そしてこう話した。

「ならば仲間の敵討ちの大義名分が私にもできたわけだ。」

ゲリドはそう言って再び飛びかかってくる。
避けるのが一瞬おくれた。僕の肩に槍が突き刺さる。
痛みに耐えきれず、僕はうなり声を上げる。

「うぐぅうううう…………」

だが僕はひるまない。刺さった槍を手でつかみ敵の動きを封じ、盾で吹っ飛ばす。盾で敵を突き飛ばす技、なんて言ったかな?
ゲリドは槍をつかんだままだったせいか、突き飛ばすと同時に槍も肩から抜けた。
ゲリドは受け身を取ると体制を整えすぐさま突進してくる。
そして槍を振り上げたたきつけてきた。僕は腕を交差させ、身構える。
槍は僕の肩に嫌な音を立てて当たった。ゲリドはやったとおもったのか後ろに下がる。
だが、僕は動じずに腕の交差をとき、にやりと笑う。
ゲリドは驚きたじろぐ。そりゃそうだ。渾身の一撃が効いてなかったのだから。

828803:2009/07/30(木) 16:09:15 ID:jbYrN6dg0
「剣士の心得。強靱な肉体で仲間の盾となれ…………。」

僕はその後、大きく息を吸いこむ。

「グレートガッツだ!お前の攻撃なんかきかねーぞ!ウオオオオオオオオオオ!!!!」

と叫んだ。するとゲリドはその声を聞き硬直する

「ウオ!!何だこの声は、か、身体が痺れて…………」

その僅かなスタンを僕は見逃さなかった。
しっかりと腰に力を入れひねる。腕にも力を入れ全ての意識を腕に集中させる。
しっくりくる。そうだ。これならもっと強い技が放てる。アヤ、僕は君のことを悪く言えないよ。

「くらいやがれ!サザァッァァンクロオオォォォォッス!!!」

ヒュヒュッと風を切る音。そしてその後、キンッという独特な音が鳴る。
何処の必殺技だよ、技の名前を叫ぶなんて。でもまぁ、他に人がいないからいいか。

「ギェック……………」

その小さな声を最後に、族長ゲリドは弾け飛んだ。
大量の血が僕に降りかかる。体中が血だらけだ。
そして目を開くと、説明するのも嫌な光景が広がっていた。だから説明はしない。



沈黙。全てが終わった。だが、前みたいに身体の力が抜けるなんてへまはしないぞ。

僕は外に出ようとする。そして、もう一度だけ壮絶な戦いを行った洞窟を見渡し、その場を後にした。
集合場所に戻ると、他の生徒は全員集まっていた。
他の皆は血だらけの僕を見て非常に驚いたようだ。先生があわてて僕に近寄る。

「ど、どうした。お前、何があったんだ!!」

その問いに対し、僕はアヤ達3人を読んで説明した。光る石や、あの隠し扉の向こうでおこったこと。
洞窟狼や族長ゲリドとの戦いなど、隅から隅まで全てを。
そしたら先生が唖然とした表情を取る。が、その後突然大笑いし

「よくやったぞ!お前らは凄い!今日のMVPはお前らだ!!」

と何故か褒めてきた。その後、何故か突然やってきた古都の国会議員の人などから表彰状を配られた。意味が分からん。

その後、3日間こちらにアリアンの生徒はとどまることになり、交流を深めることになった。
僕ら4人はすっかり意気投合していた。そして4人で連携を取りPT狩りを行ったりした。
途中で何やら国会の人たちが色々と聞きに来て五月蠅かった。
そして、アリアンの生徒たちが帰る日となった。

「タクシー乗り場は此方です。皆さん、準備は良いですかー?」

タクシーの人が合図をかけ、次々とアリアンへと帰っていく生徒達。
そんな中、僕とアヤはジュンとリアーナの二人との別れを惜しんでいた。

「おい、お前ら、俺らのこと忘れるんじゃねぇぞ。」

そっぽを向いて話すジュン。表情は分からない。
そんなジュンをリアーナは大泣きをしながらはたく

「バカじゃないの!?これからしばらく会えなくなるのよ?あんな大冒険を一緒にしたのに!!なのにそれだけなの!?」

僕も目尻が熱いな。アヤも今日ばかりは大泣きしている。
そんな僕らにジュンがつぶやく。

「…………どは……………。」

良く聞こえなかった。もう一度頼むと聞き返す。

「今度は…………お前らがこっちに来い。……………仕方がねぇから楽しみにしててやるよ。」

ジュン・・・素っ気なく言ったってわかる。お前、今泣きそうだろ?僕も泣きそうだもの。

そのまま沈黙する。やがてタクシーの人が

「そろそろ出発します。それでは行きますよー。」

と発言し、二人は出発してしまった。

829803:2009/07/30(木) 16:10:45 ID:jbYrN6dg0
その夜、数日ぶりに親父が家に帰ってきた。冒険に行っていたらしい。
そして町の人から僕らの冒険の話を聞くと、僕のことを褒めまくり、豪華な食事を用意してパーティーを開いた。何故だ。
アヤももちろん呼ばれてきたので、二人で他愛のない話やジュン達の話をして、お開きとなった。


───まぁ、あの後あの二人とはしばらく会わなかったけど、僕らがアリアン側に行く話が出てきて再開できた。
今でもたまにPT狩りするけど、お互いペアハンが好きみたいで、本当にたまにだ。
あの二人は今結婚したんだっけ。ジュンが婚約指輪を買ってリアーナにプレゼントしたらしいな。

「あの二人、今でも仲がいいみたいだね。あーぁ…………いいなぁ、結婚。」

アヤがため息をつく。君ならすぐにいい人が見つかるよ。僕が保証する。いつまでも僕とペアハンなんてしてるのはやめた方がいい。
そう言えば、洞窟に入ったばかりの時、アヤとリアーナで話してたよな。あのときなんて言ってたんだろうか。

「気づいてくれないんだもんな、私の気持ちに。本当に鈍感。」

アヤが憂鬱そうに更にため息をつく。そうか、アヤには好きな人がいるんだ。アヤも女の子だからな、好きな人が出来ても
おかしくはないもんな。僕なんかが釣り合う相手じゃないのさ。わかってる。
平然を装い、笑って答える。

「好きな人がいるんだな、アヤにも。がんばれ、応援するからさ。好きな人にはすぐに好きだと言ったほうがいい。」

なんて、僕が言える立場じゃないよな。アヤに好きだなんて言えるわけがないから。
と、アヤの歩みが止まる。あわてて止まる。が、少し前のめりになってしまったり。

「んー…………じゃぁ、言っちゃうけど…………」

何だ改まって?今日はユニークアイテムをドロップしたか?もし知らないうちに拾ったのならすぐに言ってほしいものだ。

「えっと………私さ、ずっと前からあんたのこと───








あの日、こんな会話が大人達の間であったことを僕らは知らない。


「コボルトの病気の原因を暴くのに加え、危険な手配モンスターのゲリドまで倒すとは。凄い子供達ですね。」

一人の議員がつぶやく。それに対して返答するもう一人の議員

「その通りだ。だが、光る石か。それはおそらくポータルのことだろうな。」

その議員はもう一言つぶやく。

「ポータル・・・秘密ダンジョンを開く鍵。あの洞窟にも秘密ダンジョンがあったとはな。」




830803:2009/07/30(木) 16:14:14 ID:jbYrN6dg0
まず謝罪を。
えっと、前回、僕とアヤの話をかいて、どんどん頭の中に話が浮かび上がってきまして、耐えきれず書いちゃいましたorz

さて、恒例の説明です。
一番最後、ゲリドの身体が硬直したのは、「僕」がウォークライを放ったからです。
あと、秘密に入るときの「ゲリブの安息所」が読めなかったのは、ジュンが先に進んでしまっていたからです。
そして「僕」が純也綾の名前をボルティッシュ側の付け方と言ったのは
大陸を韓国や中国とすると、ボルティッシュがどう考えても日本に見えるからです。



先に断っておきます。

またこのシリーズで書くかも。ということです。それでは読んでくださりありがとうございました。

831ヒカル★:削除
削除

832◇68hJrjtY:2009/07/31(金) 05:34:41 ID:4iRAnLHg0
>803さん
続編ありがとうございます♪
まさかまさか、この二人の成長した姿を拝めるとは……でも10歳でコボ秘密ですか(笑)
今回はジュンとリアーナという仲間も登場しましたが、話の箇所箇所に見られる
淡い恋愛模様なんかも伝わってきて、さらに戦闘シーンも二連戦というボリューム満点で
うまいバランスでコボ秘密に挑戦する冒険者四人組の物語が描かれていると思います。
アヤと「僕」は果たしてどうなったんだろうという妄想が止まりません(笑)
続き、あるのかな?もしも構想予定でしたらお待ちしていますね♪

833名無しさん:2009/08/14(金) 19:38:02 ID:ok6GBVsc0
僕達「コボルト」は古都ブルンネンシュティングから
近くに住んでいた。
古都から生まれる新しい冒険者によって何人もの
仲間達が消えていった。
―そんなある日―
僕は古都の近くの花畑で果物を取って食べていた。
そんな時一人の女の子が目に映った、槍をもっていて洋服を着ている可愛らしい女の子。
花畑から花を採っていた。僕はそれを遠くでじっと見ていた。
僕らモンスターが人に恋をするなどありあえないかもしれないけど
僕は彼女に一目惚れをしてしまった。そして彼女と話してみたくなった。
だけど彼女は花を採り終わると何処かへ消えてしまった。
―次の日―
僕は今日も花畑にいた。
少し時間が経つと彼女の姿が見えた。
彼女は花畑の近くを通り過ぎようとしていた、昨日と変わらない感じだった。
相変わらず綺麗だ。
僕は話したい気持ちでいっぱいになりそして彼女に話しかけようと近づこうとしていたその時だった・・・

彼女の目線の少し先にいた「僕の仲間」に向かって槍を構え突進し
僕の仲間を・・・
僕は言葉が出なかった、目の前で倒れこむ僕の仲間。
周りにいた仲間達はすぐさま「僕らの洞窟」へ走って逃げた

僕は言葉もでない、恐怖で動けなかった
そして・・・

―彼女は僕の方を向いた―
   ―そして僕を睨みつけ―
      ―僕に槍を構えた―

僕=コボルト
彼女(女の子)=ランサ、冒険者
僕らの洞窟=コボルトの洞窟

いろいろ変かもしれません、すいません・・・

834◇68hJrjtY:2009/08/15(土) 00:53:45 ID:4iRAnLHg0
>833さん
投稿ありがとうございます♪
ランサはコボルトの視点で見たら「仲間」と思っても仕方ないかもしれませんね。
そんなコボルト君の憧れは一瞬で打ち砕かれてしまうのですが(悲)
詩のように短い文章ながらもコボルトの嬉しさや悲しさが詰まっている短編ですね。
またの投稿お待ちしています!

835FAT:2009/08/30(日) 19:35:17 ID:tYbCX6N20
第一部 『双子の天才姉妹』 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156、2>>193-194、3>>243-245
>>281-283、5>>385-387、6>>442-443、7>>494-495、8>>703-704、9>>705-706、10>>757-758
11>>759 七冊目12>>536-537、13>>538、14>>561-562
―光選― 七冊目1>>599-600、2>>601、3>>609-610、4>>611-612、5>>655-656、6>>657
>>658-660、8>>671-672、9>>673-674、10>>675-676、11>>711-712、12>>713-714
13>>715-716、14>>717

―水晶の記憶―

―1―

 幼く、よたよたと拙い足取りで歩き回る小さな男の子。机の脚やスカートの裾に掴まっ
ては上を見上げ、その先に何があるのかを必死に知りたがり、ぐいぐいと引っ張っている。
 これはエイミーの記憶。彼女の見てきたもの。
 幼い男の子はラス。ラスは執拗にエイミーのスカートを引っ張り、見た目に似合わぬ力
でスカートを引きずりおろす。スカートをおろされたエイミーは顔を赤らめながらラスを
抱き上げ、母乳を与える。まだラスは生まれて半年余り。下半身を覆う濃い体毛とズボン
の中に隠した尾ばかりが人々の話題の種となり、まだこの時は誰もラスの成長の早さに疑
問を抱くものはいなかった。
 ラスが生まれてちょうど一年、初めての誕生日を迎えたラスは一歳児と呼ぶにはあまり
に大きく、あまりに重かった。このころ、ラスはようやく「マーマ、マーマ」と発言でき
るようになっていた。しかし、体つきはもうすでに三歳児並にまで成長していた。そして
このころから、ラスは魔法を使うようになった。
 エイミーは常にラスを弱い魔法の膜で覆っていた。そうしなければ、いつどこでどんな
魔法を勝手に使うか分からなかったし、魔法の暴発でラス自身が傷付いてしまわぬように
との配慮もあった。
 異常な成長の早さに、ラスの存在を危惧するものもいた。しかし、いつだって優しくし
てくれた人たちもいた。

836FAT:2009/08/30(日) 19:36:27 ID:tYbCX6N20
「ラスちゃ〜ん! デルタお姉さんとままごとして遊びましょー! はい、じゃあラスち
ゃんが旦那さま、私がお嫁さんねっ。はぁい、ラスちゃん、いいえ、あなた、ふ〜ふ〜し
てあげるからあ〜んしてぇ〜」
「やい、よせデルタ。ラスに変な菌が移るだろ」
「ひどい〜! レンダルお姉さま、私のどこに変な菌なんてついていらっしゃるっていう
の!」
「そこ。そこにも、これ、それ、あっ、ここにも。いっぱい生えてるぜ」
「ひっ、ひどい、ひどすぎますわ! 人をなめたけ菌みたいに言って! うわぁぁぁぁぁ
ぁ〜ん! エイミーお姉さまぁぁぁ! 悪鬼レンダルお姉さまが私をいぢめるのぉぉぉお
ぉ〜!!」
 若かりしときのレンダルとまだ幼さが残るデルタがそこにはいた。二人の日常はエイミ
ーとラスを喜ばせ、四人はいつも一緒に遊んだ。ラスはいつも笑顔だった。

 二歳のラスにある日、事件が起きた。ラスが他所の子供たちに怪我を負わせたのである。
事の発端は相手の子供たちがラスに石を投げつけたことだった。
「おまえ、けむくじゃらのばけものなんだってな! きもちわるいんだよ、どっかいけ!」
 ラスは決して暴力で返そうとはしなかった。ただ、「いたい、いたい」と泣きじゃくるだ
けだった。ラスは「いたい」以外に言葉を発しなかった。
「ばけものをうんだおまえのかあちゃんもでていけ! ばけものおんなのばけもの!」
 痛みにじっと耐えていたラスだったが、母エイミーのことをけなされると急に怒りが込
み上げてくるのを感じた。そして考える間もなく、ラスは怒りの魔法、闇を練りこんだ黒
い炎で相手に火傷を負わせたのである。エイミーのかけた魔法の膜はもろくも破れた。

837FAT:2009/08/30(日) 19:37:34 ID:tYbCX6N20
 町の住人はこの事件をきっかけに、ラスを悪魔の子と恐れ、子供たちを近づけさせなか
った。事態の深刻さにベルツリー家では親戚を集め、ラスの対処についての話し合いが連
夜行われた。
「エイミー、残念だが、ラスを里子に出そう。この子はもうこの町では暮らして行けない」
 誰が言ったかは思い出せない。エイミーは激昂した。
「いやです! ラスは私の子よ! 私が育てるわ! ラスはいい子じゃないのよ! いけ
ないのは相手の子でしょう!? そんなひどいことをされたら、誰だって怒るにきまって
るじゃない! ラスは正しいのよ!」
 興奮するエイミーを母がなだめる。また誰かが言った。
「でもな、今のラスの状態を見て、お前も気付いているだろう。ラスの異常さに。ラスを
ここに置いておきたいのなら、なにか手を打たねば誰も納得してはくれないだろう」
 何か手を打たねばならない。しかし、具体的には何をすればいいのか、エイミーは思い
つかなかった。絶望が、ひしひしと近づいてきているのを感じた。
「たしか、ネイムばあさんの残した巻物にこんなのがあったな。体内に魔力を込めた水晶
を埋め込む秘術。それならばラスの体の成長を遅らせる、或いは知能の発達を促進できる
かもしれん」
「あるにはある。だが、宿した魔力と埋め込む人間との魔力が調和せねば内部より崩壊が
起きる。相手に合わせた魔力を練るような高度な技術、我々では不可能だ」
 諦めの色を浮かべる親戚一同。しかし、エイミーはその術に希望を見出していた。
「魔力を……ラスに合わせればいいんですね」
 エイミーはすっと手のひらを机の上に差し出し、「ラス」の魔力を再現してみせた。
「あの子の魔力は純粋な四大元素、火、水、風、大地と微弱な光、それと、強大な闇。あ
の子は父親がいないことで心に大きな闇を抱えています。それが多感なラスの感情に最も
強く作用し、先のような黒い炎、つまり、火を飲み込むほどの闇となっています。あの子
にはもっと愛が必要なんです。私や、レンダルや、デルタだけじゃなく、お父様、お母様
だけじゃなく、もっと、皆さんの愛が必要なんです!」
 エイミーが声を荒らげる。必死な彼女の説得に、真剣な眼差しが集まる。
「だから、私にやらせて下さい。ラスを救えるのなら、なんだってしてみせます」
「しかしな、エイミー」
 彼女の父親であるデリックが苦言を呈する。
「それはお前にとっても、ラスにとっても辛い結果となるかも知れないんだぞ。お前は、
ラスがどうなってしまってもそれに耐えれるのか?」
 このとき、エイミーは父親の言葉の意味がわからなかった。だから、
「大丈夫です。私は失敗なんてしません。愛する我が子ですもの。必ず成功させます」と
半ば睨むような真剣な眼でデリックを見た。
「そういう意味じゃない」
「お願いします、やらせて下さい、お父様! だって、他に手はないんでしょう!? だ
ったら、やるしかないじゃない!」
 エイミーの決意は強固で、もはや誰の意見も聞かなかった。そして後日、親戚に紹介さ
れた医師と共に手術を決行することとなった。

838FAT:2009/08/30(日) 19:38:02 ID:tYbCX6N20
 エイミーは直径数ミリのひし形にカットされた、指輪にはめるような微細な水晶にラス
に合わせた魔力をエンチャットした。その作業は小さな指輪に魔力を注入するよりずっと
神経を削り、時計の針が何度も回った。エイミーは両手を水晶にかざしたまま、汗一つ流
さず、微動だにしなかった。開いていた手を閉じたのが、終了の合図だった。全神経を使
ってエンチャットされたその水晶は虹のように七色に輝いた。
「エイミー、少し休もう」
「そうよ。あなたはよくやったわ。がんばりすぎよ」
 デリックと妻、サメリーは疲れきったエイミーを心配し、横になるよう促した。しかし
エイミーは頑固に、
「だめよ、ラスはきっと今、不安だわ。私がそばにいてあげなきゃ」とふらふらになりな
がらも両親の気遣いを拒んだ。
 ラスは今、ベッドに縛り付けられ、頭を刈られている。これから何が行われるのか、ラ
スの未熟な脳では想像もつかなかった。
 ラスはきっと、叱られるんだと思った。悪いことをした、火傷をさせてしまったのだ。
一体、どんな罰を受けるのだろう。お尻を叩かれるのだろうか、ご飯をもらえなくなるの
だろうか。ラスは子供の範囲で子供の受ける罰を色々と考え、恐くなって泣き出した。
「感情が不安定になってきました。みなさん、この子の魔力が暴走しないよう、しっかり
と抑えていて下さい」
 医師の言う通りにベルツリー家の人々がラスの魔力が外に漏れ出さないようにその体に
手を添える。
「もうじき薬が効いて眠りにつくでしょう。そうしたらエイミーさんを呼んで下さい」
 ラスはものの数分もしない内に眠りについた。何も知らない、無邪気な寝顔だ。
 誰かがエイミーを呼びに行き、青ざめた顔のエイミーが姿を現した。
「エイミーさん、あなたの一手がこの子を殺してしまうかも知れないのですよ。あなたで
大丈夫ですか?」
 エイミーの体調を危惧し、医師が厳しくも優しく問う。
「そのために来たんです。私がやります」
 エイミーは七色に輝く水晶をしっかりと拳の中に握っていた。その輝きは指の合間から
こぼれ、エイミーの希望を表していた。
「そうですか……それでは、始めます。いいですか? 決して目を背けてはなりません。
血しぶきがあがろうとも、何が見えようとも、決して目を離さないで下さい。エイミーさ
ん、あなたは私の指示があったら正確にそこにその水晶を納めて下さい。チャンスは一度
きりです。失敗すればこの子は命を失います。良いですね?」
 エイミーは色の悪い顔でコクリと頷くと、七色の水晶をピンセットで挟んだ。

839FAT:2009/08/30(日) 19:39:24 ID:tYbCX6N20
―2―

 手術は無事に成功し、エイミーは極度の疲労から数日間寝込んだ。そして数日振りに目
覚めると、エイミーのベッドの縁にかつらを被ったラスが腕を枕にし、寝ていた。
「ああ、ラス、よかった、よかった! ラス!!」
 湧き上がる喜びを抑えられず、眠っているラスに抱きつく。苦しいほど強い抱擁に眼を
覚ましたラスの言葉に、エイミーは耳を疑った。
「放せ、くそばばあ」
 驚き、ラスの顔を覗き込むエイミー。その眼は、まるで憎いものでも睨んでいるかのよ
うな黒く、怒りの宿った色をしていた。
「えっ!? うそ? あなたラスでしょ? ねえ、ラスっ!」
 ラスはエイミーの手を振り払うと逃げるように部屋を出て行った。デリックの言葉はこ
のことを示していた。一人、ぽつりと部屋の中心に残されたエイミーを襲う哀しみは人並
みのものではなかった。

 ラスは突如、何でも理解できるようになっていた。
「いきなり抱きつきやがって、あのくそばばあ。いつかぶっとばしてやる」
 ほんの数日前までは「いたい」や「マーマ」など、単語しかしゃべれなかったラス。遅
すぎた言語の発達は、七色の水晶によって見た目の六歳児と同じ、もしくはそれ以上に発
達していた。もちろん、本人にその自覚はなかった。
 突然、流れ込んできた多くの情報。一段一段上らなければいけない階段を十段も二十段
も飛び越えてしまったラス。純粋だったラスの心は強制的に押し付けられた知能に反抗す
るかのようにぐれてしまった。早い反抗期だった。
 ラスはデリックのウェスタンハットを被り、家を出るとデルタのところに遊びにいった。
デルタは家の窓からラスが近づいてくるのを見つけると、たまらず窓から飛び出した。
「ラスちゃ〜〜ん! 私に会いに来てくれたのね〜〜!! デルタお姉さんうれしいわ
ぁ!!」
 ラスはぎょっとした。見慣れたはずのデルタのテンションが恐ろしかった。
「ラスちゃん、今日はなにして遊びましょうかっ!? ままごとにします? それともま
まごとにします? やっぱりままごとにしましょう!!」
 ドン引きするラス。ませた脳がデルタを拒もうとしていた。
「やめろ! ラスが怯えてるじゃねーか、この新婚妄想ピンク!!」
 救世主が現れた。レンダルのぶっきら棒さがませたラスにはちょうど良かった。

840FAT:2009/08/30(日) 19:39:53 ID:tYbCX6N20
「助かったぜ、レンダル」
 ラスをギョギョッと驚いた二人の眼が見る。ラスは何がそうさせたのかわからなかった。
「おい、ラス。お前いつの間にそんなにうまくしゃべれるようになったんだ?」
「きっと、私のままごとに付き合うために練習したんですわ! あぁっ、ラスちゃん、愛
を感じるわぁぁぁぁっ!」
「しゃべれる? ふん、そうか。あいつが何かしたんだろ。くそっ」
 ラスはエイミーのことを思い出し、苛立った。
「おい、あいつって誰のことだ、ラス」
 レンダルに見下ろされたラスは身震いした。見たことも無いレンダルの怒りの眼。本気
でレンダルは怒っていた。
「だ、誰って……ほら、あいつだよ、その、あの……」
 まごついたラスの頬をレンダルの平手が打つ。まるで矢が的に当たったときのような激
しい音が町に響き、ウェスタンハットが空を舞った。
「馬鹿野郎っ! 親のことを「あいつ」だなんて言うやつがあるかっ! エイミーがなぁ、
エイミーが、どれだけお前のことを愛してるか、わからないのか! ふざけるなよ、この
親不孝者がっ!!」
 青草の上に尻餅をつき、ラスは泣きじゃくった。愛を持ってここまで激しく叱ってくれ
た人は後にも先にもレンダルしかいなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「俺に謝ってどうする。エイミーに謝ってこい!」
 レンダルに叱咤され、ラスは泣きながら家に帰ると真っ直ぐにエイミーの部屋に入った。
「ラスっ!? どうしたの、そんなに泣いて。まただれかに意地悪されたの?」
 ラスは涙目でエイミーの顔を見た。エイミーの目はラスを泣かせた誰かに向けた怒りで
燃えていた。
「ち……がう゛う゛ぅ゛ぅ゛」
 エイミーはラスの言葉を待った。
「か……さん……。ばっ、ばばあ……なんて……って……ごめんな……さい」
「ラス……」
「レンダルたちの前で、あ……あいつ……だなんていって、ご……ごめんなさい! うわ
ぁぁぁぁぁぁん!!」
 エイミーは泣きじゃくるラスを優しく抱き寄せると耳元で囁いた。
「いいのよ。私はあなたの母親だもの。私のことをどんな風に言ったって、どんな風にし
たって怒りはしないわ。でもね、ラス。そういうことに心を痛められるっていうのは、あ
なたが優しい証拠よ」
 ラスは涙を流しながらも、エイミーの話に耳をそばだてた。
「私はあなたにひどいことをしたの。あなたの頭の中にね、水晶を埋め込んだのよ」
 エイミーはそっとラスのかつらを取ると、まだ包帯の巻かれている頭に指を沿わせた。
「この辺にね、私の愛情のこもった水晶が入っているの。あのときのあなたでは理解でき
ないと思って何も話さなかったわ。でも、今のあなたならきっと、わかってくれると思う。
だから話すわ」
 エイミーはラスに水晶の必要性と役割を説明した。ラスは恐ろしくも、その必然性を理
解した。そして、エイミーの肩を掴み、顔を近づけた。
「母さん、わかったよ。俺、いっぱい勉強する。そしていつか、母さんのこの水晶なしで
も立派になれるよう、努力するよ」
 ラスは力強くそう言うとエイミーの優しい微笑みに引き込まれ、母の胸に抱きついた。
「ごめんね、謝らなきゃいけないのは私のほうだったのに、ごめんね、ラス」
 まだラスは二歳。特異な体質だからとはいえ、ラスにとって、普通の子供にとっては過
酷すぎる話だった。それでも、ラスは心に誓った。ベルツリー家を担うエンチャット士に
なると。
 ラスの短い反抗期は終わった。

841FAT:2009/08/30(日) 19:41:03 ID:tYbCX6N20
―3―

 ジョーイは部屋のカーテンを開け、眩しいほど輝く朝日を招き入れた。カーテンを窓の
端に結びつけると深く眠っているエイミーを揺すった。
「エイミー、朝だよー、エイミー」
 昨日は魔法を使ったわけでもないのに、エイミーの眠りは深かった。夜遅くまでジョー
イにラスの昔話を聞かせていたからかもしれない。ジョーイはエイミーの話を聴き、あの
ラスの強さの秘密を知った気がした。それは大いなる母の愛。ジョーイには決して叶わな
い力。ジョーイはたった一度だけ対峙したあのラスの姿を思い浮かべ、少しうらやましく
なった。
 ジョーイはもう一度エイミーを目覚めさせようとベッドに近づいた。すると、ふとんを
鼻先まで被せたまま、エイミーの宝石のような黒く透き通った瞳がジョーイを見上げてい
た。
「あきれた。起きてたのかい」
「ふふ、あなたが寝ているすきに変なことしてないか、確かめたかったの」
 ジョーイの事情を知って尚、そのような失礼なことを言うのか。ジョーイはエイミーを
冷たく見た。
「うそ、冗談よ。う〜ん、いい朝だわ」
 朝日を浴び、輝く黒艶の髪。エイミーはまるで海辺の人魚のように美しかった。脚がふ
とんで隠れていたせいもあるだろう。ジョーイは神秘的な美を感じた。
「もうすっかり良さそうだな」
「ええ、おかげさまでね」
 ニッコリと笑顔を見せる。白い肌と朝日がよく合う。
「これからどうするんだい?」
「ちょっと待って、話は着替えてからしましょう」
「俺はもういつでも出れるんだけど。着替え、手伝おっか?」
 ジョーイが悪戯っぽく蒼い眼を向ける。エイミーは「出てって」と手でジェスチャーし、
ジョーイを追い出した。

「あ、おじさん」
 階段をおりたジョーイはデリックと鉢合わせた。
「やあ、ジョーイ君。今日もいい朝だね」
「おじさん、俺、今日でここから出て行くよ。随分と世話になりました」
 ジョーイは手ぶらだったが元々そんな生活をしていたのだから違和感はなかった。ベル
ツリー家の人々はこの風来坊の人懐っこさと眼孔に秘められた龍の悲しみを認め、なんに
だって口出ししなかったし、ジョーイもまた、この家族に多くを求めはしなかった。
「それは急だね。でも、気にすることはないさ。君の龍が導くように、君は生きたらいい。
それに逆らうのも良し、君が決めたことなら何も反対はしないさ。ただ、これだけは覚え
ておいてくれ。私も、妻も、もちろんエイミーも、君を本当の家族のように思っている。
またいつでも立ち寄ってくれよ」
 さすがエイミーの父だとジョーイは思った。この懐の温かさ、愛情の塊のような存在。
「はい、ありがとうございます。いや、ありがとう」
 思いがけない感動にジョーイはそそくさと家を出、木陰で涙をこぼした。レニィと出会
ってからというもの、彼は長く辛かった孤独の時間分を取り戻すかのように温かな人々に
恵まれた。その幸せに、慣れない優しさにどうしても涙が出てしまう。

842FAT:2009/08/30(日) 19:41:28 ID:tYbCX6N20
「ちょっと、勝手に出て行かないでよ。まだどうするか決めてないでしょう」
 着替え終えたエイミーが窓を開け、二階から呼びかける。
「エイミーの好きにしなよ、君の子供と友達だろ」
 エイミーは窓を強く閉めると、ばたばたと階段を下り、玄関を突き開けた。そして木陰
のジョーイまで一直線に走り寄った。
「あなたはどうするの?」
 ジョーイは慌てて涙を隠した。
「君についていくさ。ただ、事が解決したらまたどこかへ行こうかと思ってる」
「そう……」
 エイミーの表情が少し沈んだ。自分でも無駄な感情だとは分かっている。龍の見せた記
憶が何よりも決定的だった。
「あなたは罪な人。でも、責めない」
「悪いな。デルタにも、悪いと思ってる」
「あら、デルタはいいのよ。あの子は……」
 言葉半ばで、急にエイミーは思い出した。夢、いや、強大な魔力が見せたレンダルとデ
ルタの危機。何故忘れていたのだろう。
「どうした?」
 ジョーイは心配そうに顔を覗き込む。
「ジョーイ、ハノブだわ、ジム=モリ兄さんのところへ急ぎましょう」
「お、おい、何だよ? 俺にもちゃんと説明してくれよ」
「言ったわよ! 行こうと思ったのに、あなたがその龍で無理矢理抑え込んだじゃない!」
 ジョーイは思い出した。狂ったように喚き、魔力が暴走する寸前まで不安定になったエ
イミーの姿を。あれは、単なる発狂ではなく、意味があったのかと今更気付く。
「もう何日前の話? 急がなくちゃ、早く、一刻も早く!」
 エイミーは天使の翼の魔法を自分にかけるとジョーイを抱え、飛び上がった。
「ひえぇぇぇえぇえっ! そ、空も飛べるのかよっ!?」
 エイミーは背中の翼を羽ばたかせ重力に逆らい、空を翔けた。スマグを越え、山を越え、
半日も掛からずにハノブへと到着した。

843FAT:2009/08/30(日) 19:49:08 ID:tYbCX6N20
こんばんは、お久しぶりです。
こんな亀ペースで申し訳ないです。
もう秋の虫の音が聞こえてきます。今年は夏が短かったですね。
また投稿できるようにがんばりたいと思います!

844◇68hJrjtY:2009/08/31(月) 20:23:54 ID:4iRAnLHg0
>FATさん
お久しぶりです!続きありがとうございます。
かつての書き手さんが時間を置いてでも戻ってきてくれるのが嬉しい限りです♪
ラスの過去から始まった新章に突入ですね。想像はしていましたがやはり辛い過去…。
しかしレンダルとデルタも当時から同じだったと思うと平和でのんびりした生活も伺えます。
この時のエイミーの決意が今もなおラスの中のひとつになっていると思うと愛って偉大ですよね。
エイミーとジョーイの二人でのハノブへの旅、新たな展開を楽しみにしています。

845名無しさん:2009/09/17(木) 02:12:45 ID:swHfe6G20
もう一回初心者クエがやりたくなる小説

ttp://legendofthered.web.fc2.com/part1/chapter3.html
ttp://legendofthered.web.fc2.com/part1/chapter4.html

846sage:2009/10/16(金) 13:41:33 ID:xzUY4rGY0
>>845
おもしろい!
とゆうより、話がよく考えられてますねー。
まだ全部よんでないけど。
偽者の指輪を受け取ったボラックの対応が、渋すぎる。
でもこの紹介の仕方・・・・・・初めウィルスかと思ったーよ

847rball:2009/10/21(水) 18:08:39 ID:mfCIgwRo0
とっても良い小説ばかりが並んでいてとっても不安ですが
勇気を出して書いてみようかと思います。

話としてはレッドストーンの各キャラたちが互いに戦いあう闘技場
です。

前にこういう話がなかったかどうか心配ですが・・・。
(一応検索はしましたが)
また、でてくる職に対して作者の思いこみや片腹痛いような箇所が
多数見受けられるかと思いますが、みなさまの寛大なお心で
「しょうがねぇな」
と見逃してやってください。
では次レスから本編です。

848rball:2009/10/22(木) 17:37:02 ID:.ERteB6g0
「さぁて始まりました、究極の技と技を競い合うRED STONE コロシアァァム!ワタクシ司会のガストンでェす!
さぁて、今日はーーーイタッなにするんですか解説者のフェインさん?紹介するのを忘れたからってーーーあっごめんなさいごめんなさいお願いですから笑顔のまま首を閉めようとするのはーーー
ゥホン、こちら解説者のーーー」
「フェインです。さて、今日はウィザード対ランサーの試合ですねガストンさん。」
「ええ、そうですねぇ、にしてもこの場合遠距離攻撃が得意なウィザードさんには接近攻撃が豊富なランサーさんが相手だと不利な気がしますねぇ。」
「はい。しかしそこは知識豊富なウィザードさん、何か対策を打ってくるかもしれませんね。」
「さて、選手の紹介でェす。アリアンのの元傭兵、百戦錬磨女流槍使い、セレス!
そぉしてぇ対するは魔法都市スマグ出身の魔法使いギルドの副マスターでもある、魔術師、ヴィング!
さてこの戦い、どちらが勝つのでしょうか?さぁあ、選手も入場しました。でェは始めましょう。フェインさん。」
「はい。」
「「Fight!!」」

849rball:2009/10/22(木) 17:38:03 ID:.ERteB6g0
    “Wizard” Ving
     VS
     “Lancer” Ceres

開始の合図を受けてからはじめに動いたのはウィザード、ヴィングだった。
杖をバトンのごとく振り回しながら呪文を唱える。
「『風よ我を包み込み身を護る盾と成れ!トルネードシールド!』」
「おぉっ?トルネードシールドときましたねぇ〜フェインさん?」
「ええ、やはり接近戦に持ち込まれるとウィザードには不利ですからね。
しかしさすがは百戦錬磨の元槍騎兵のセレスさん、この事態は予想していたとみますね。」
と、解説者の言う通りのようで、セレスはさして驚いた風でもなく、どころかまるで予想していたかのように呪文が唱え終わったとたんに槍を地面突き刺し、
「それでどうにかなったつもりかしら?ランサーにだって魔法は使えるのよ!『雷よ地面を走れ!ラジアルアーク!』」
目映い光線が闘技場の煉瓦の地面を、ヴィング目掛けて走って行く。
しかしヴィングもそれを予想していたかのようにそれを一瞥すると素早い動作で

850rball:2009/10/22(木) 17:40:50 ID:.ERteB6g0
地面を撫でるように杖を振り、「『レビテイト』」と唱えた。
するとヴィングの体が宙に浮き、そしてジャンプしたような形で地面を走る雷をかわした。
そしてそのまま杖をセレスに向け、『ファイヤーボルト』を打ち出し、牽制した。
セレスは次の攻撃をしようとしていたがやむなくそれを『ブレイキングポイント』した。
「解説の暇も与えてくれないくらい流れるような展開ですね。」
「えぇそうですネェ。まあ誰もフェインさんの解説なんて聞いてませんし
文章のむdムグッじょっ・・・冗談デスって!」
「さて、今度はまた別の攻撃をセレスさんが仕掛けるようですね。」
「『右に炎よ左に氷よ、炎は破壊を、氷は殺戮をもたらさん!ファイアアンドアイス!』
そういいながら穂の部分に炎が、柄の先の部分が凍り付いている槍の中心部分を持ち、そして頭上で回した。
しかしーーーーーーその攻撃の範囲にヴィングはいなかった。
「!?」
とっさに反応できない。
そしてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「『チリングタッチ』」

背後から聞こえたその攻撃を『ブレイキングポイント』も『サイドステップ』もできなかったセレスはもろに攻撃を受けた。

851rball:2009/10/22(木) 17:46:54 ID:.ERteB6g0
>>850
訂正です。
×背後から聞こえたその攻撃を
○背後から声と同時に放たれたその攻撃を

852名無しさん:2009/10/22(木) 19:28:10 ID:OnMpHZjE0
訂正しなくても誰も見てませんよ^^;
後、FAT駄文sage

853名無しさん:2009/10/22(木) 19:44:35 ID:aZLhn4460
一応読みはしたけど厨二全快小説下手過ぎで萎えたわ
どっちにしろ駄文乙

854名無しさん:2009/10/23(金) 22:37:33 ID:3noXcOMk0
>>852 >>853
あんたら>>1を100回(ry

rballさん
 最近過疎なこの板に新しい書き手職人さんがいらしてくれて嬉しいです。
小説の批評等難しい事は出来かねますが、個人的には続きを期待しています。

ゆっくりで構いませんのでまた気が向いたら投稿なさってくださいな。

855rball:2009/10/24(土) 17:12:55 ID:Kv0ctwdE0
「・・・・・・」
セレスは無表情のまま無言で痛みに耐えている。
そしてヴィングは『コールド』していて動きが鈍っているセレスに向かって魔法を唱え始めた。
ちなみにもう『トルネードシールド』は解けている。
「さぁてフェインさん。」
「はい。」
「『アレ』は一体どういうことなんでしょうかねェ。」
「『アレ』はですね・・・・・・」

「そろそろとどめにしましょうかね。ランサーさん」
そうヴィングは言った。
「・・・・・・」
無反応のセレス。
「『隕石よ飛来せよ、そして完膚無きまでに全てを葬り去れ!メテオシャワー!』」
ヒューッと何か風切るような音がして
数瞬後
隕石の着地と共に爆音と光にセレスは包まれた。

「ま、物理系の攻撃だったお陰で助かったってところかしらね。」

四方八方から発せられたその言葉。
ヴィングはそれを理解できない。
そして徐に自分の体をーーー四方八方から槍で貫かれたその体を見て
「あぁ・・・見事だ・・・」
納得したようにそう呟いて
分身が消え、本物のセレスが槍を抜いたと同時に前に倒れた。

「ゲェェエムセットォッ! 勝者ぁ、ランサー セレス!」

歓声。
ヴィングの元へはビショップが駆け寄る。

856rball:2009/10/24(土) 17:13:30 ID:Kv0ctwdE0
「さぁてフェインさん、セレス選手の『ファイアアンドアイス』のあとから解説が無くって読者の方の中には
困惑しておられる方もいると思うので解説をお願いしまぁす。」
「はい。ではまず『ファイアアンドアイス』をどうやってヴィング選手が避けたかと言いますと
これは『テレポーテーション』でいったん『ファイアアンドアイス』の攻撃範囲から外れたのですね。
でまたすぐ『テレポーテーション』でセレスさんの背後に回ったのです。」
「そして直ぐ様『チリングタッチ』というわけですねェ。でぇ、その後は?」
「『チリングタッチ』はかわされたのです。いいえ

『ダミーステップ』によってかわされた時にできたダミー身代わりに受けた

といった方が正確ですね」
「ほうほう、私たちが見たセレス選手が二人に見えた『アレ』はダミーステップによるものだったのですなァ。」
「そうです。私たちは高いところから見ていたから気づきましたが、
ヴィングさんは相手に集中していたので気づかなかったのでしょうね。」
「なるほど。それならセレス選手が途中から無口になったのも頷けますなぁ。
ダミーは喋れませんからねェ。」

857rball:2009/10/24(土) 17:13:54 ID:Kv0ctwdE0
「あと彼女が言った物理系の攻撃だったお陰で・・・っていうのは物理系の攻撃じゃないとよけれないからですね。
そして後は、ダミーを強力な魔法で倒してセレスさんを倒したと思い込んで
油断している隙をねらってトルネードシールドが解けて無包備なヴィングさんに
『エントラップメントピアシング』したのでしょう。
まさに彼女はヴィングさんを『entrapment』した、つまり陥れたのでしょう。」
「さして巧くもありませんが
ーーーあっいえいえ言い間違いです巧かったですとてもとても!いえ違います嘘じゃありませんってばーーー
ゥヘン。でぇはフェインさん解説ありがとうございました。
この辺で皆様ともお別れでェす。では、また次の戦いの時に!ではそれまで、アデューーー!」

     “Wizard”Ving
      VS
    “Ranser” Ceres
                                 《Winner Ceres》

続く・・・かな?
お目汚し失礼しました><

858rball:2009/10/24(土) 18:04:38 ID:mfCIgwRo0
訂正です
×ダミー身代わりに
○ダミー が 身代わりに

>>853さん
すいません。
何分几帳面な正確なもので。
お気に障られたのならお詫びします。
>>853さん
こんなつまらない小説を読んでいただけただけでもうれしいです。
ありがとうごいます。
この板に書き込むに恥ずかしくないような小説作りを心掛けていきたいと思います。
それまでどうかお待ちいただければと思います。
>>854さん
フォローどうもすいません。
正直批評に関してはごもっともなので別に良いのです。
というか悪い点が見つかるのでむしろ助かります。

「戦闘シーンが書きたい!」
と、突発的に書いたのが良くなかったかもしれません。
また、携帯からなので制限文字数が少なく、面倒で幾らか削ったりしたのも悪かったと思います。
もし次に書き込むことがあれば物語性のあるきちんとした小説にしたいと思います。
上の小説は続けないことにします。
以下何事もなかったかのように良い小説の並ぶ
RED STONE小説upスレを続けてください。
お目+スレ汚しどうもすいませんでした。

859◇68hJrjtY:2009/10/26(月) 01:11:40 ID:mn.ayaXs0
しばらくご無沙汰してたら小説が!v(。・ω・。)ィェィ♪
保守ついでに何か短編を書こうとして結局サッパリな68hです、こんばんはorz

>rballさん
初めまして、投稿ありがとうございます♪
決闘ネタ、大好きですよ!ヾ(*・∀・)/
ホントに途中から解説の暇がないのが読んでて良く分かりました(笑)
もともと速いランサーとヘイストで速いWIZの対決はまさに神速対決と言うべきか…。
RSの職同士がタイマンする小説、私は構想した事もほとんどないのでホントに楽しみです。
続きお待ちしてます!

そして感想レスが遅れた事&やっぱり私も批評できない事、ご容赦を<(_ _)>

860◇68hJrjtY:2009/10/26(月) 01:14:22 ID:mn.ayaXs0
ハッ、今ちゃんと読んだらrballさんの最後のカキコに続けない宣言が……!

でも続き待ってます!(こら
気が向いたらいつでもどうぞです、はい(。・ω・)ノ゙

861rball:2009/10/26(月) 17:57:58 ID:Kv0ctwdE0
>>◇68hJrjtYさん
レスありがとうございます。
この支離滅裂で理解不能な小説を
読んでいただけて&内容を解読していただけてうれしいです。
やっぱり厨二ワールド全開になること(自分の頭の中が)が予想されるので続けないつもりです。

個人的には◇68hJrjtYさんがどの様な小説を書くのかきになります。
大変そうですががんばってください。

862◇68hJrjtY:2009/10/27(火) 17:41:29 ID:mn.ayaXs0
私信失礼します(・ω・*)

>rballさん
ご期待のレス感謝します(;´▽`A``
なんか書く書くとか言いつつずっとUPしないので逆に期待されてそうですが
ホントにヘタレなんでそのへんは安心してください♪
というかHDD吹っ飛び事件以来これといった小説も完成させておらず・゚・(ノω;`)・゚・
それにまあ、RS半引退の身ですし、ネタというネタも思いついてません。。
とりあえずは感想屋としてゆったりと生暖かくスレを見守ってます(笑)

863白猫:2009/11/03(火) 00:09:29 ID:qlUN4Kp20
前作 Puppet―歌姫と絡繰人形―
関係あるかもしれないもの >>649




私が初めて槍を手に取ったのが、10歳の頃。
傭兵業で生計を立てていた私の家は、可も無く不可も無く。どこにでもある中流家庭だった。
時に金持ちの護衛として雇われ、時に政府の軍務に就き、時に魔物を屠って金を得る。
そんな両親の姿を見て育った私が、同じように傭兵の道を進むことに何の不満も疑問も抱かなかった。
レールの敷かれた道路を歩く。「英雄」になれるとは思わないし、なろうとも思わない。
ただ父と母、育ててくれた両親に恩返しが出来ればそれでいい。
幼いながらも、周りで戦などに巻き込まれて死んでいく者たちの子を見てきた自分が出した目標だった。


武器を用いた訓練は、傭兵術においては基礎訓練の次に基本的となる訓練だ。
私は無我夢中で槍を振り回した。朝から晩まで、その次の朝が来ても。
父に止められても続け、過労で倒れることもあった。それでも私は槍を振り続けた。
私はほとほと負けず嫌いだ。このときを思い出すたびに、私はそれを実感する。


雪のように美しい少女と出逢ったのは、白と黒以外の色をすべて神様が抜き取ってしまったかのような、淡い雪の朝だった。
剣を持って、雪の絨毯を舞う。剣が弧を描く度に、空気が、空が声を上げる。共鳴する。
隣町の子だということは一目で分かった。小さな町である自分の故郷に住む子供など、空で全員、ミドルネームまで含めて呼ぶことができる。
私は思わず声を上げていた。綺麗、と。何を考える暇もなく、口から出た言葉がそれだった。
私の言葉に気付いた少女は、雪のような相貌をあっという間に向日葵のような笑顔に変え、駆け寄ってきた。
レティア、という名の隣町の少女は、私の初めての親友となった。


それ以来、私とレティアは朝と夜の二度、雪のちらつく平原で必ず一緒にいた。
別に当時の私に友人がいなかったわけではない。「そういう時代」だったのだ。
いつ町が襲われてもおかしくない。昨日友だった酒飲み仲間に、明日は刺されるかもしれない。
他国へ亡命する者も多くいた。が、私は知っていた。絶対に逃げ切ることはできないと。
確かにゴドムへ逃げ延びれば、世に名高き[最終貴族]カナリア=ヴァリオルドの庇護を受けることが出来るだろう。
だが、「常雪の山」である山脈を越えゴドムへ逃げることなどできるわけがない。あの山は死の山なのだ。
年間の平均気温は氷点下六十度を下回る。世界で最も過酷な山だ。
麓にある私の故郷がある高原ですら過酷な環境だというのに、よりによって山を越えるなどと。
……閑話休題。
毎日のように顔を合わせて、一緒に武器を振るっていた私たちは、いつしか思うようになっていた。
「一体どちらの方が強いのか」と。


連敗が込んでいた。
現在十一勝十七敗、四連敗中。
レティアは彼女得意の氷結魔法に何かコツを見出したのだろう。それまで互角程度だった私たちの力関係が急激に崩れた。
私の放つ雷撃は全て彼女の周囲を舞う結晶に阻まれ、彼女の繰り出す冷風は否応も無く私の体力を奪うのだ。
反則だと思った。周辺には彼女の武器である雪が五万とあり、レティアは私よりもずっと暖房の魔法が上手かった。
だが、すぐに私はその考えを打ち捨てた。有利だとか、不利だとか、そんなものは関係ない。
結果として勝ってしまえばいいのだ。彼女の雪も、寒さも、何もかも吹き飛ばして勝ってしまえばいい。
私の密かな決意は、六度目にして怒声に変わった父の食事の声で最後まで成されることはなかった。

864白猫:2009/11/03(火) 00:10:02 ID:qlUN4Kp20

私の力は弱い。
レティアの力は雪ではあるが、正確には「温度」だ。ただ彼女の力が、温度を上げるよりも下げる方が上手かっただけ。
もっと彼女が温度を上げる方に才能を持っていれば、今頃私は丸焼きになっていたかもしれない。雪達磨にされた回数は覚えてはいないが。
私の雷がすべて無効化されるのは単純な理屈だ。空気には電気を通しにくくする「抵抗」がある。
それを無くし、空気もなにもない「真空」にしてしまえば電気はそこを流れていってしまうというわけだ。
レティアは周辺の空気の温度を極端に下げることで空気の圧力を下げ、擬似的な「真空」を作り出す。
もちろん、そんなもの真空には程遠い。だが、電気はより流れやすい方へと流れてしまうのだ。
例えできそこないでも、圧力が下がり抵抗が低くなった方へ、電気は自然と誘導されてしまう。
なら、どうすればいい? 簡単な話だ。
抵抗など一切合財無視した、超電圧の電撃を叩き込んでしまえばいい。
出来るはずだ。電気の力を操るのは、町で私が一番上手なのだから。
だが、私はまだ12歳の子供。高電圧の電撃を生み出すほどの魔力は持ち合わせていないし、そもそも自分は魔法に向いていないことを知っている。
なら、どうすればいい? ――今度も簡単な話だった。


雷と同じ理屈だ。
雷は、大ざっぱに言えば雲の中に生じた氷の塊がぶつかり合うことによって生まれる「静電気」。
静電気なんてものは、冷えた冬の日に鉄製のものに触るだけで生じる些細なものだ。なんら難しいことではない。
だが、何を摩擦させる? 単純な話だ。寒い冬の日に、外に大量にあるもの――雪の結晶だ。
ほんの少しでも電力が生まれれば、後はそれを基にさらに多量の電力を生み出す。それを幾度となく、幾度となく繰り返す。
私は、これを「チャージング」と名付けた。魔術師たちが、高等な魔法を使用するための準備魔法だという。私も随分大それた名を付けたものだ。
生み出した雷は、全て槍へと集中させる「付加魔法」とした。雷の槍、ライトニングジャベリン。格好良いじゃないか。
この術が完成した日、私は確信した。これで、連敗生活ともおさらばだ、と。


が、私の野望は結局、二度と果たされることはなかった。
レティアは私が術を完成させるしばらく前に、彼女は両親とともに故郷へと帰って行ってしまったのだ。
十一勝十七敗、四連敗のち勝ち逃げされる。
この不名誉な戦績を、私は死ぬまで忘れることがはないだろう。




それからあとのことは、断片的にしか覚えていない。

両親に連れられ、砂漠を越えるルートからゴドムへと入った。

古都ブルンネンシュティングでカナリアの庇護を受け、警備隊の試験を受けた。精神鑑定で落ちた。前代未聞だったらしい。

カナリアに無理を言って裏口入隊させてもらった。前代未聞だったらしい。

若干十五歳で警備隊の隊長となり、「ブルンの守護神」と呼ばれるようになった。前代未聞だったらしい。

両親が戦死した。大規模な攻撃作戦が裏目に出たと聞いた。父の遺言通り、私は涙一滴流すこともなかった。

クソ生意気な魔法使いが入隊してきたのでイジめ抜いたらいつの間にか副隊長になっていた。生意気な奴め。

戦時中だったこともあってか、カナリアが死んだ。妻と妹も一緒に死んだらしい。長男だけが無事だった。

数年後、その長男が入隊してきた。あっという間に部隊長になち「ブルンの影狼」と呼ばれるようになった。前代未聞の早さだったらしい。

影狼がたった一人のゴロツキから一晩で盗賊団のアジトを割り出して潰してしまった。私がいなければ前代未聞だった。

大戦が終結してからしばらくして妙な小娘が影狼の傍にくっ付くようになった。あいつもまんざらでも無さそうだった。

古都に来てから初めて外に出た。さして感動もなかったが魔法使いが生意気だったので殴った。

大戦の首謀者「ルヴィライ=レゼリアス」と遭遇した。大陸全土の戦の引き金と言ってもいい大罪人を目にしたが、さした感動も無かった。

私の雷の槍が、初めて負けた。まだまだ修行不足だということを痛感した。小娘がとんでもない化け物じみた力を持っていた。

「常雪の山」でとことん鍛え直した。魔法使いがひょこひょこついてきたのでケツを蹴りあげた後ついでに絞り上げた。

影狼がルヴィラィ=レゼリアスを倒した。私もリベンジを果たせてすっきりした。

妙なテイマーと愉快な仲間たちと知り合った。影狼はホントに知人多いわね。

865白猫:2009/11/03(火) 00:10:26 ID:qlUN4Kp20


そして、今。


「青い空、白い雲」
「どこまでも続く海原やなぁ〜」

私は大陸の東、スバイン海にいた。
海賊退治、とは名ばかりの観光旅行、と見せかけての幽霊船調査、という名目の観光旅行だ。
もちろん海賊は退治したし幽霊船はあらかた沈めたので問題ない。前者も後者も仲良く海の藻くずだざまぁみろ。

「……で、バカリアス。いつになったら陸地が見えんの」
「えーと、陸地ってどっちやろうな? あっちかなっ?」
「死ね」

ねえ、レティア。
私、あの日から一度だってあなたのことを忘れたことはない。
だから、ね。
今度会ったときは、不名誉な連敗記録を塗り潰させてもらうから。


---

どうも、お久しぶりです。11か月ぶりです。いや匿名で一度書いてるから何か月ぶりだろう、まあいいや。
まだまだ生きております、白猫です。
最近は専ら、某有名同人ゲームの二次創作小説の方ばかりに手がいっています、そっちも進みは芳しくないですが。
いや〜、11月です。我が悪友くろっちもとい黒頭巾さんとのコラボからもう一年が経過したわけです。早いですね〜
実のところこうやって作品を書いたのも数か月ぶりだと思います。腕のなまりが怖くてとってもバトルものなんて書けやしないぜはっはー。
◇68hJrjtYさんを始め、未だに現役で、新規で書いている方もちらほらといるようで安心しました。このスレはまったりが一番いいなあ。
でもきっと8冊目には手が届かないんだろうなあ、と少し物悲しくなっている白猫です。ハック問題とかちょうこわい。

久々すぎてあとがきの書き方を忘れました。
えー、今回は前作、パペットの外伝その二です。たぶん。主人公勢のアーティさん過去話。誰得って俺得に決まってるでしょ。
回収してない伏線はこれでだいたい終了したと思います。たぶん。古代民の伏線はもういいやパペットとマペットの過去話なんかマジ誰得なんだよ\(^o^)/
68hさんといつぞやに約束した性格入れ変わっちゃった話はのんびり作成中だったりします。実はそっちが行き詰ってこっちを書き始めました。
書き始めたのが10時半を回った辺りですので、まだまだ速筆だけは衰えていないのかなあ、と思う白猫です。
私信返信にまた訪れることもあるかもしれません。それではまたそのときに。
これを書くのも久々です。白猫の提供でお送りしました。

866◇68hJrjtY:2009/11/06(金) 02:05:03 ID:mn.ayaXs0
>白猫さん
ホントお久しぶりですー!
前回登場したレティアの旧友がなんとアーティさんだとは…ここで繋がってたんですね。
レティアに勝つためにより大きな力で挑もうとする姿勢、12歳の頃から性格変わってないなぁ(笑)
さらにアーティさんの過去と現在の姿が見れて嬉しい限り(*´д`*)
久しぶりのカリアス尻轢きも見ものでしたw 幸せなカップルだ。。
これでパペット、そして外伝がすべて終了してしまったのでしょうか…
なんとも寂しいですが、パペット関係以外でも気が向いたらまた書きに来てください。
私のリク話もまだ執筆しておられたと聞いて驚喜してます(T-T)
白猫さんも別の活動などで忙しいでしょうが、いつでもお待ちしています♪

ところで、名無しで書き込んでおられたんですか(((( ;゚д゚))))アワワ
今から必死に探さないと……!(笑)

867名無しさん:2009/11/13(金) 19:15:38 ID:TKqs3Wvo0
-──- 、   _________
    /_____ \〟 >            |
    |/⌒ヽ ⌒ヽヽ | ヽ > _______  |
    |  / | ヽ  |─|  l   ̄ |/⌒ヽ ⌒ヽ\|  |
   / ー ヘ ー ′ ´^V  _ |  ^| ^   V⌒i
    l \    /  _丿  \ ̄ー ○ ー ′ _丿
.   \ ` ー ´  /     \        /
      >ー── く      / ____ く
    / |/\/ \       ̄/ |/\/ \    同じスレではこのままだけど
    l  l        |  l      l  l        |  l    違うスレにコピペするとスネ夫がドラえもん
    ヽ、|        | ノ      ヽ、|        | ノ     に変わる不思議なコピペ

868名無しさん:2009/11/22(日) 09:59:03 ID:TvCR6Kbc0
Gvスレも速やかに建ててます。
グッグってください。ヤフーも可。

新レッドストーンBBS

869ワイト:2010/01/15(金) 03:44:37 ID:cq0SkP4k0
前々五冊目>>754>>857>>906>>933>>934>>940>>969>>970>>998
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
→前六冊目>>27>>83>>84>>134>>154>>162>>163>>191>>216
>>267>>285>>306>>308>>309>>895>>901>>975
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
→現七冊目>>426>>452>>794→現続編
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

>「てめぇ、稀に出没する希少種の「サキュバス」かよ……!」

「それで? サキュバスになったから、どうしたってんだ?
(――第二形態と言うべきか?まずは、様子見だ……!)」

「あははっ! 見せて上げるわ? 実力の差ってやつをねっ!」
 傷口を庇いながら、身構えるラータを相手に、取るべき行動は勿論――

――その傷口を狙った攻撃。

――ビュッッ!
刹那にサキュバスの鉤爪が、ラータの傷を目掛け、突く形で襲い掛かる!

「クッソ、野郎っ!」
――ガシィイイッッ! グッグググッッ……!
鋭利に尖る鉤爪の尖端の刃先を掴み、それ以上の進出を防ぐ!

「時間の問題、ねっ! このまま、押し込んであげるっ! 
 ……いえ、すぐにでも!」
押し込もうとする、逆手の鉤爪でラータを切り裂かんと振り上げ!

「ぐっ! こ、の、っぁああっ!」
無理矢理、傷口を庇う手を振り解き、鉤爪を掴み続けたまま
 振り解いた手を固く握り締め、力を入れる!

「(ま、さか! 相打ち狙いなの!? ふふ、返り討ちよ!)」

 グッオッ! ――ブァアッ!
――拳と鉤爪が、交錯する!

「ギッ、ィイァァアアアッッ!」

――ドッ、ゴォ!
垂直から振り下ろす鉤爪より、平行線で放つ拳が、僅かに上回った!
 拳の放たれた先は、振り下ろす鉤爪を持つ腕を狙った反撃!

「あ、くっ……! や、やってくれるじゃない……」
押し込もうとする鉤爪も、反射的に後退せざるを得なくなる。
 同時に距離を置くために、サキュバスは上空に飛行した。

「ハハハッ! どうだァ……? 腕ぇ折れたろ? 
 ――それで、片腕は使えねぇな!」
「ど、どうかしら……? それよりも貴方、血を流しすぎているわねぇ……」

「それが、どうした? 俺は追撃の手を緩めない……! これで何回目、だっ!」
――ギュ、ッッオッ! サキュバス目掛け、ラータが飛ぶ!

 だらしなく垂れ下がる片腕の鉤爪が、機能不能になったためか
サキュバスは、自身に追い打ちを掛ける為、跳躍したラータに対して

――自然と守りに徹する。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
久し振りの投稿で、すでに私のことを忘れている方々が、九割を占めると思います。
皆さん、明けましておめでとうございます。今年も、よろしくお願いします。

新年を迎え、いかがお過ごしでしょうか?私は相変わらず、多忙の身ですが……
この小説、何を書いていたのか……私自身忘れてしまって、今回はぐだぐだになりました。
次はいつになるか分りませんが、いつか投稿していく予定。それでは、失礼します。

870◇68hJrjtY:2010/01/27(水) 04:46:27 ID:mn.ayaXs0
>ワイトさん
お久しぶりですヾ(*゚ω゚*)ノ゙
私もしばらくネットから身を離していたのでレスのほうも遅れました。ごめんなさい<(_ _;)>
クールに戦場を駆け抜けるラータに久しぶりに会えて嬉しいです。
サキュバスとの戦いも佳境といったところですね。簡単に勝利できそうもないですが、さて。
投稿はいつでもお待ちしてます♪

871名無しさん:2010/02/18(木) 20:24:40 ID:Bac28GKI0
Gvスレも速やかに建ててます。
グッグってください。ヤフーも可。

新レッドストーンBBS

872名無しさん:2010/02/19(金) 21:35:08 ID:TvCR6Kbc0
Gvスレも速やかに建ててます。
グッグってください。ヤフーも可。

新レッドストーンBBS

873名無しさん:2010/03/07(日) 07:26:57 ID:6.EwuJ/w0
君に会いたくて。



漫画のように淡くも切なくもない
ただ普通の誰かのお話

私は 何の取り柄もない
嘘もよくいうし、性格が良いワケでもない。
泣き虫で、寂しがりやで
守るよりは守られたい。

そんな私は インターネットの中の世界で
恋をした。

874名無しさん:2010/03/07(日) 07:28:06 ID:6.EwuJ/w0
彼は
頭が良くて、冗談が言えて、運動もできる
らしい。
でも私の最初のイメージは
苦しそうな彼

そこで気づいた。
どんな完璧に見える人でも
傷つくことがあるんだ


彼は優しかった。
でもたまによくわからなかった。
それでも好きだった。

でも
所詮ネットの恋愛には
終わりがあって
ずっとそんなままごとは
付き合ってもらえない

私は
裏切った。
彼を。

サヨナラ はどうしても言えなかったから
あの頃の私にはその方法しか
思い浮かばなかった。

今はもう
話せない。
会えない

ごめんなさいも
さよならも
ありがとうも

大好きだよ っていう言葉も

全部、今はもう



今は少しずつ彼の足跡を紡いでる
いつかまた会えるように。

だからお願い
どうか、幸せでいてください……

875◇68hJrjtY:2010/03/09(火) 17:53:58 ID:l5kFS6pk0
>>873さん
悲しい詩、投稿ありがとうございます。
ネット恋愛は経験は無いながらも知人の姿など傍目で見ている事が多く、共感できました。
ネットという不思議な世界での恋愛、それは本心なのかそれとも嘘偽り(ままごと)なのか…。
本人たちにもきっと分からないまま突き進んでしまうんでしょうね。
「どうか、幸せでいてください」という最後の一文が涙を誘いました。

876名無しさん:2010/03/13(土) 22:52:21 ID:kBbBSo4E0
なんかいいね・・・

877名無しさん:2010/03/15(月) 18:27:15 ID:d4Iox1lc0
テスト

878名無しさん:2010/04/09(金) 06:07:49 ID:6.EwuJ/w0
理解できないコト



今日"クラスメイト"と話した。
陰口を言っていた
なのに楽しそう
何もいえない私も全部
理解できない。


宇宙は壮大だ
それに比べて人間はちっぽけだ。
人間と比べたらモルモットはちっぽけだ
命の重さが理解できない。


自分だけでは寂しさは凌げない
鏡に映った自分でも。
けど鏡に映ったのが想い人であれば凌げる
理解できない。


風の音が響く静寂のときでも
ネットにはたくさん人がいる。
それはヒトなのに
寂しさは募るばかり。


もしも神様がいるなら
なぜいまひとりにされてるのか
問いたい。
理解は できないけど。

879ヒカル★:削除
削除

880ヒカル★:削除
削除

881之神:2010/06/08(火) 18:15:37 ID:8GUNopgw0

みなさんこんにちは。

ずーっと前にここにSSを…途中までUPしていた者です。
もし途中まで読んでいた人がいたらと思い来ました。

簡単に言いますとPCアボーン&多忙のダブルパンチで、データや設定まで消えてしまい…。
書き続けようにも同時に忙しくなり、今に至ります。

簡単な絵を載せたり、スレも何個かまたいだのに…申し訳ないですorz
これからは書くとすれば読み切りですが、よろしくお願いします。

◇68hJrjtYや書き手の皆さん、また逢う日まで…!

882ドワーフ:2010/06/21(月) 21:10:45 ID:HW/cTXWU0
『フォーチュンフィール』

 キリウスはベルトを腰に巻いてみたが、別にどうということはなかった。身に付ければ望む運命を与えると聞いていたが、何も変わった様子は無い。
「ちっ、からかいやがったのか」
 キリウスは舌打ちすると、路肩の壁に背を持たれかけた。
「まあいいや、タダでくれるんなら何だって貰ってやるぜ」
 そう言って、彼はその壁から遠くのお屋敷の窓から覗く女性の小さな美しい後姿を眺めた。
「だがあの人は、タダって訳にはいかないだろうなぁ…」
「何が欲しい?」
 足元からした声にキリウスはビクリとした。見下ろすと、彼の隣で小さな老人がへたり込んでいた。
「何が欲しい?」
「何だよ、爺さん。金でもくれるってのか」
「望むなら、得られるようにしよう」
「…………」
 普段の彼なら笑い飛ばしてしまう老人の一言。しかし、今のキリウスは違った。彼は不気味に感じながらも、望みを口にした。




「契約は結ばれた…」
 老人はそう言って、何事も無かったかのようにいびきをかき始めた。

 まったく笑いが止まらなかった。あれから8年、彼の生活は驚くほど見違えた。
 キリウスはニヤニヤと笑いながら自室で悦に浸っていた。部屋の中はかつての王宮のそれに匹敵するほど豪奢な家具で満たされていた。この部屋の中

だけで、窓の外から見える街の一区画が丸ごと買えるほどだ。
 執事が読み上げる収支の額は毎日増え続けている。それをわざわざ日課として聞きながら、彼はベルトのバックルを磨いていた。
「素晴らしい。実に素晴らしい!」
「はい、旦那様」
 これも毎日同じ台詞、しかし執事は辟易とした様子も見せずに淡々と答えた。
 しかし、彼は決してこんな財産が全てだとは思っていなかった。本当に彼にとって何よりも大切なものがまもなく帰ってくる。
「おかえりなさいませ、奥様。お嬢様」
「ただいま、ジェストル」
「おとーさまー!」
「おかえりジネット!」
 キリウスは愛する娘を抱き上げて、彼女の頬にキスした。そして、愛妻ともキスを交わしてこう言った。
「今日は遅かったじゃないか。心配したんだぞ」
「いつもと変わりませんわ。あなた」
「そうだったか?お前たちのことを考えてると一分が一時間にも一日にも感じられてしまう」
「もう、あなたったら…」
「はははは!」
 
 この惚気ている男の名はキリウス。貧民の身から一代で古都一番の大富豪となった男。野を行くが如くライバルを蹴散らして現在に至る。そして、通

常なら許されない貴族の女との婚姻を認められた唯一の男である。
 妻のルメーユとの間にもうけた一人娘のジネットは今年で5歳になる。
 彼は今が自分の人生の絶頂であると感じていた。しかし、ある日を境にそれは一変する。

883ドワーフ:2010/06/21(月) 21:12:04 ID:HW/cTXWU0
「旦那様!」
 ノックもせずに入ってきた執事を咎めるようにキリウスは睨んだ。
「何だ騒々しい」
「お嬢様が、お嬢様が!」
 キリウスの身体が強張った。ぞくりとしたように目を見開いて、執事に詰め寄った。
「ジネットがどうかしたのか!?」
「先ほど、亡くなられました」
 頭の中に暗く深い何かが広がっていくのを彼は感じた。
「旦那様。お気を確かに!」

 ジネットは不幸な事故で死んだ。突然暴走した馬車が曲がり角を曲がりきれずに横転し、横滑りした車体がそこにいた妻と娘に突っ込んだのだ。妻は

軽傷で済んだが、娘は車体と建物の間にその小さな身体を挟まれて事切れていた。
 キリウスは娘の残酷な死を激しく嘆いていた。「何故だ!何故だ!」と叫びながら。周囲の者はその言葉をあまりの理不尽さゆえに、と思っていたが

、彼にとっては違っていた。彼が漏らした「話が違うじゃないか…」という一言には、誰もが首をかしげた。
 キリウスはその日から、寝室を妻とは別にした。そして毎日彼女を避けるように違う時間に起きて食事し、どこかへ出かけていった。

884ドワーフ:2010/06/21(月) 21:13:28 ID:HW/cTXWU0
「ようやく見つけたぞ。ペテン師め!」
 人気のない裏通り、その人物はいた。
「あら、久しぶりの挨拶にしてはあんまりね」
 それは占い師のような姿をした女。口元をベールで覆っているため顔ははっきりとは分からないが、声からするとかなり若いようだ。
「娘が死んだ」
「あらまぁ、それはご愁傷さま」
「何をぬけぬけと、貴様が殺したんだろう!」
「人聞きの悪いことをおっしゃらないでくださる?あなたのお子さんが亡くなるのは、とっくに決まってたことですのよ」
「何だと?」
「さっき、私のことをペテン師と仰りましたけど、私は何一つ騙した覚えはなくってよ」
「馬鹿な。望む運命を与えてくれると言っただろう!なのになんだこれは、私はこんなことを望んだ覚えはない!」
「そう。でも、無期限とは言わなかったわ」
「貴様……何故教えてくれなかった!?」
「聞かれなかったからですわ」
 そう言って女はにこりと目元で笑みを浮かべた。
「このっ…!」
「あら、馬鹿な気は起こさないほうがいいわよ。それより、これからもっと重要なことを教えてあげるわ」
「今更何を…」
「補足説明ってところかしら。あなたがどうして今のような運命を得られたのかを説明してあげるのよ」
「そんな事を知って何になる」
「あら、奥さんがどうなってもいいのかしら」
「まさか妻にまで…!」
「だから私は何もしないわ。でも、しっかり聞いておかないと彼女も…」
「ぐ、早く…」
「ん?」
「早く言え!」
 女はくすくすと笑いながら、説明を始めた。
「私があげたそのベルト、それは持ち主の望むままに運命を変えることが出来るベルト…」
「そんなことはもう知ってる」
「でも、正確には変えるんじゃないの、歪めるのよ。あなた自身の運命を、あなたの周囲の運命も」
「どういうことだ?」
「修正が始まったのよ」
「修正?」
「そう、この世のあらゆる物事は予め神が定めた運命によって支配されている。生まれてから死ぬまで、現れてから消えるまで、誰と出会うのか、どん

なことが起きるのか、何を選択するのか。全て決まっているの。それが運命」
 女は話を続けた。
「そのベルトはあなたの運命を歪ませた。そしてあなたの奥さんの運命も歪ませた。その結果どうなったのか、あなたと奥さんの間で本来であれば生ま

れるはずの無い子供が生まれた」
「…………」
「さっき言ったわよね。無期限じゃないって。つまり、ベルトの力が弱まって歪んだ運命を維持できなくなってきたのよ。そして、神の力によって運命

は本来あるべき形に向かって修正され始めたのよ」
「それは、つまり…」
「あなたの娘さんは最初から死ぬ運命にあったってことね。あら、運命から外れてたのにこんな言い方はおかしいかしら」
「よくも、よくも!」
 突然キリウスは女の襟首に掴みかかると力いっぱいに捻りあげた。しかし女は彼の腕を掴むと、その細腕からは信じられない力で彼の腕を握り締めて

その手をほどいた。
「ああっ……ぐああああ」
 締められた腕を押さえてキリウスは堪らずうずくまった。
「もう、何なのよ急に。あなたのお子さんは神に殺されたのよ。私たちを恨むのは筋違いよ」
「あの子は、ジネットは…何のために生まれてきた。死ぬためにか。違う…あんな、むごい…」
 嗚咽を漏らし始めたキリウスを見下ろして、女はやれやれという風にため息をついた。
「そんなに痛かったの?ごめんなさいね。私たちあなたのこと気に入ってるからあまり乱暴なことはしたくなかったんだけど」
 キリウスは身を起こすと、涙で腫れた目で女の顔を見上げた。
「わたし、たち?他に誰か居るのか?」
「ずっと居るじゃない。そこに」
 女はキリウスの腹を指差した。いや、彼の腰に巻かれているベルトを指差していた。
「馬鹿な…いや、しかし神の運命を歪める……」
 女はにやにやと笑みを浮かべていた。手の内に気づかない愚か者に、ようやく全てを伝えるときが来た。
「お前は…何者だ?」
 女はフードをめくり、ベールを外すと、その美しくも恐ろしい本性を現した。紅く長い髪が溢れるようにフードの中からこぼれ、頭には一対の黒光り

する角。たったそれだけの特徴で、子供でも何者なのか分かる。

885ドワーフ:2010/06/21(月) 21:15:45 ID:HW/cTXWU0
「悪、魔…」
「そう、名前はアスティマ。そして今はそんな姿になってるけど彼に代わって自己紹介させてもらうわ。フォルセスが彼の元の名よ」
「どうして…、どうして俺なんだ。お前たちと遭うのも運命だったというのか」
 キリウスは腰が砕けたのか、尻を地につけたまま後ずさりした。
「運命から外された私たちにそんなものは関係ないわ。ただ、あなたの欲望の声が大きかったから選んだの」
「欲望の、声?」
「凄かったわよ。自分で気づかなかった?金が欲しい、地位が欲しい、権力が欲しい、ルメーユが欲しい…」
 悪魔はキリウスに詰め寄ると、腰を落として彼の顔を覗き込んだ。
「どうしようもなく貧乏で、甲斐性もなく、不潔で汚らわしいネズミのようだったあなた。毎日のように窓際に立つルメーユを眺めてたわ。不相応なの

に、絶対に手の届かない高嶺の花なのに、どこまでも無駄で虚しいだけのに激しく彼女を求めてた」
 悪魔はしゃがむとキリウスの手を取ってぎゅっと両手で握った。
「とても素敵だったわ。あなたならきっと出来ると思ったの。そう、予想以上よ!あなたはその欲望で神の運命を大きく塗り替えた!」
 キリウスは震えていた。わなわなと震える唇で何とか言葉を吐いた。
「何の、ために?」
 悪魔はにんまりと笑った。口の端を大きくつり上がらせて、言った。
「別に何も」
 キリウスは呆けたような顔で悪魔を見ていた。その反応が面白いのか悪魔はくくっと笑った。
「馬鹿な、目的がないわけがないだろう」
「うーん、そうねぇ。強いて言うなら神を冒涜できればそれだけで良かったのよ。私たち悪魔は神の力に影響を及ぼせない。だけどあなた達人間の力を

借りれば話は別ってことね。何せ、人間は神が創ったんだから。自分で作った粘土人形に指を噛み切られる気持ちってどんなのかしらね。ふふふ」
「そんなことの為に…ジネットを…」
 全てを知って絶望したのか、キリウスは力なくうな垂れた。
「もう!だから娘さんを殺したのは私たちじゃないってば。あなたさえ余計な欲をかかなければ、娘さんは死なずに済んだんだから!あ、それじゃ生ま

れてもこないわね。あはは」
「何が可笑しい!」
 座り込んだまま、握りこぶしをぎゅっと握り、キリウスは俯いたまま吠えた。
「さっきから笑っているが、人が苦しんでいる姿がそんなに面白いのか!」
「ええ、面白いわ。とっても。本当は自分のせいなんだって気づいてるのに、人のせいにしたがってる所とか本当に滑稽ね」
「何だと」
 顔をあげたキリウスの前にあの悪魔は居なかった。奴はいつの間にか彼の背後に回っていて、彼を背中から抱いて耳元でささやく様に言った。
「最近奥さんと愛し合ってないんでしょ。そんなに彼女の顔を見るのがつらいの?何でつらいのかしら。自分のせいじゃないのに、おかしいんじゃなく

って?」
 ぞくぞくとする感覚にキリウスは身を強張らせた。息がくすぐったいのではない。背後から抱かれた身体に、無数のミミズが這い回っているかのよう

なおぞましさのを感じていた。今振り向いても、奴は女の姿をしているのか。
「薄々感じてたんじゃないの?娘さんを殺したのは自分かもしれないって。その通りよ。娘さんを殺したのはあなたよ。彼女という存在を生んだのはあ

なた。死なせたのもあなた。あなたは何も知らなかった、でも知らなかったからと許されることじゃないわ。今までにこう思ったことは無い?『こんな

にも苦しむくらいなら、いっそ生まれてこなければよかった』って、娘さんも死に際にそう思ったはずよ。あんなにぐちゃぐちゃになっちゃったんです

もの、さぞかし苦しかったでしょうね」
「このっ…」
 そう言いながら、キリウスは僅かな身じろぎも出来なかった。
「もっと早く自分の今の立場がおかしいことに気づいていれば、私に会いに来てさえいれば、娘さんを死なせずに済んだのに。そして奥さんも」
「まさか妻も…」
「修正に例外はないわ。当然影響を受けるでしょうね。救う方法はただ一つ。別の欲望の持ち主に彼を譲ること。そうすれば、新しい宿主の欲望の力で

今の運命はしばらくは維持される」
「なら、こんなベルトは今すぐお前にくれてやる」
「あらあら、それは駄目よ。彼は自分の意思で次の主を選ぶの、幸いもう気に入った人は居るみたいね。だけど、その前にあなたにやって貰わなくちゃ

いけない事があるの」
「何だ」

886ドワーフ:2010/06/21(月) 21:17:40 ID:HW/cTXWU0
「死んで頂戴」
 ぞっとする一言にキリウスは堪らず悪魔を振り払った。振り向けば奴は女の姿のままだった。だが明らかに人間と思えない異様な気配を放ちながらそ

こに立っていた。
「俺を、殺すのか」
「私たちは何もしないわ。ただ、契約をキャンセルしたければ死ぬしかないと言ってるの。要するに、奥さんを助けたければ自殺なさい」
「…………」
 キリウスの顔は冷や汗で濡れていて、その息を荒くなっていた。
「明日の正午、王宮跡に来なさい。彼が残った最後の力で運命を操作して次の主を連れてきてくれる。そこで貴方は死んで、彼は次の主の元で新たに契

約を結ぶわ。分かったら、今日は帰ってお休みなさい」

 ふらふらと魂の抜けたように歩き去っていくキリウスの背中を眺めながら、悪魔は言った。
「さあて、いよいよクライマックスね。私の愛しいお人形さんは最後の舞台でどんな表情を見せてくれるのかしら」

887ドワーフ:2010/06/21(月) 21:18:59 ID:HW/cTXWU0
 キリウスが屋敷に戻ると、執事がすっかり変わってしまった彼の様子を心配して医者を呼ぼうとした。しかし、彼はそれを断わり執事を部屋から締め

出した。
「こんな物など!」
 そう言ってベルトを外そうとしたが、彼の行動を察知したようにベルトは外れなくなっていた。引き出しからナイフを出して切ろうとしたがびくとも

しない。
「無駄なことはよせ」
 そう言ったのはキリウス自身だった。口を動かした感触はない。しかし彼自身の声で自分の耳に響いてきた。
 キリウスはベルトを見下ろしてぞっとした。あの悪魔が言ったとおり、このベルトもまた姿を変えた悪魔なのだ。逃れることは出来ない。
 キリウスは部屋の中央にぽつんと立ちすくんだ。見回せば、それまで自身の虚栄心を満たしてきた煌びやかな家具の数々が、ひどく色あせて見えた。
「私は…なんだ?」
 ぽつりと自問の台詞を吐いた。ここにあるのは本来の運命であれば自分のではないものばかり。自分は本当はここに居ていい人間じゃない。自分が欲

望に任せて運命を歪ませたために、ここにある財産を得るはずだった者達は皆、かつての自分のような文無しに身をやつしていったはずだ。中には死ん

だ者も居るだろう。
 そしてなにより、妻のことが気にかかった。彼女は本来ならば自分と全くかかわりの無い世界で生きていたはずだった。他の貴族の男と結婚して、子

供をもうけていたはずだ。そしてきっと、幸せに暮らしていたに違いない。
「ああ…、ルメーユ。すまない。私は…、お前の運命の人なんかではなかったんだ」
 娘を失ってしまった。妻を悲しませてしまった。そのことが彼の身に重く圧し掛かってきた。
「ああ…あぁ…ああ…あああ!!」
 頭を抱えてキリウスはうずくまった。悲しみに押しつぶされそうだった。止め処なく押し寄せてくる感情の波が彼の正気を奪っていく。
 冷静でない思考のなかで彼が抱いたのは「償いたい」という気持ちだった。自分に財を奪われた者達に、神に、娘に、妻に…。
 それと同時に、自分たちを弄ぶ悪魔どもに対して激しい怒りがこみ上げてきた。

 しばらくして部屋を出ると、そこには妻がキリウスを待つように立っていた。じっと目があったが、彼はすぐに目を逸らして廊下を歩き出した。
「あなた…」
 妻の一言に反応してキリウスは立ち止まった。
「…すまない」
 それでけ言って彼はまた歩き出した。
 ルメーユ。本当にすまなかった。私は本当にお前に愛されるべき人間じゃない。しかし、私のお前に捧げる心からの愛にかけて、この命と引き換えに

してもお前を守ってみせる。
 彼は一人用のベッドしかない寝室で、着替えもせずに布団に倒れこむように横たわるとあっという間に深い眠りに落ちてしまった。

888ドワーフ:2010/06/21(月) 21:20:33 ID:HW/cTXWU0
 正午にはまだ早いくらいに王宮跡に着いた。かつて隆盛を極めた姿は見る影もない瓦礫の山。キリウスはその姿を今の自分と重ね合わせた。
「早かったわね」
 あの悪魔、アスティマが倒れた柱に腰かけて彼を待っていた。
「次の契約者とやらを、ここで待てばいいのか」
「いいえ、あなたがこの時間にここに来ることはすでに決まってたもの。待つ必要はないわ。でも、ここから少し移動するわよ」
 そう言って悪魔は広大な王宮跡の奥のほうへと歩き出した。
 キリウスはベルトを見下ろした。すでに彼の意思とは関係なく、彼の運命すらも操作されている。
 だが彼は怖気づいたりはしなかった。前を行く悪魔の後姿を睨み付けると、後について歩き出した。
 中庭を抜け階段を上り、今なお崩れずに残っている外郭の上に案内された。そこで外郭の淵に立つ人物とキリウスは対面した。
「どういうことだ?」
 目の前にいる人物に信じられないという様子でキリウスは言った。しかし、気づくとつい先ほどまでそこに居た悪魔の姿はなくなっていた。
「あなた…どうしてここに…」
「それは私の台詞だ。どうしてお前が…」
「近寄らないで!」
 歩み寄ろうとしたキリウスは制止された。目の前に居たのは彼の妻だった。ベルトは次の契約者に事もあろうにルメーユを選んだのだ。
「何をしているんだ。そこは危ないぞ。すぐに下がるんだ」
 下から見上げるとそびえる様な王宮の外郭は、かなりの高さがあった。転落すれば失命の危険があった。
「あなたは…、私を責めてらっしゃるですわ」
「何だって?」
「あの日…、あの子を失ったあの日から、あなたは私を見てはくれなくなった…。私さえしっかりしていればあの子は死なずに済んだかもしれない…」
「違う…」
 違うんだ。何ということだ。あのとき誰よりも娘のそばに居たのは妻だったというのに。娘の死の瞬間を目撃していたというのに。誰よりも悲しんで

辛い思いをしていたのは彼女だったというのに。私は自分の負い目のことばかり考えていた。支えてやらなければならなかったのに…歪んだ運命のせい

ばかりではなく、私は本当に夫として失格だ。
「あの子に、謝りに行かなくては…」
「待て。待ってくれ。ジネットを殺したのは君じゃない。私なんだ」
 妻が振り返ってキリウスのほうを見た。妻は泣いていたのか、涙で頬を濡らしていた。そしてそれを隠しもしない。
 なぜ、なぜ君なんだ。君にどんな欲望があるというのだ。今このままここで私が死ねば、今度は君がこの呪われた悪夢のような運命を背負うことにな

る。
「君は悪くない。私のせいなのだ。欲望にまかせて悪魔どもに躍らせされた私が…」
「一体何をおっしゃっているのですか!?私を気遣ってそんなことを仰るのですか。やめて下さい。あなたは悪くない。私が、私があの子を…」
「落ち着くんだ!早まってはいけない」
 妻はひどく興奮しているようだった。ひょっとすると、このまま飛び降りてしまうかもしれない。
「落ち着くんだ。君は何も悪くない。本当に娘に謝りに行くべきなのは、裁かれるべきは、私なのだ」
 そう言ってキリウスは外郭の、妻とは反対側の淵に立った。妻の立つ外側同様、こちらも落ちれば命はないだろう。
「あなた…?」
 妻が目を見開いて、キリウスを見ていた。
 キリウスは目を閉じた。もとより死ぬ覚悟でここに来ていたが、このままここで死ぬわけにもいかない。妻が神の修正の対象となっても、妻を悪魔ど

もの玩具にさせるわけにはいかない。自身が地獄に落ちてもかまわない、神の慈悲が彼女の命まで奪わないことを信じたい。
 妻が自分に気を取られているこの短い時間の中でキリウスは考えた。妻を悪魔たちの手から守る方法を。
 奴らの契約のルールには弱点がある。それは選ばれた人間が望みを口にしなければ契約が成立しないことだ。しかし、もしここで妻に全てを話そうと

すれば、ベルトは彼女をあそこから飛び降りさせて殺すに違いない。もはやキリウスに残された手段は一つだった。それは、賭けだった。

889ドワーフ:2010/06/21(月) 21:21:49 ID:HW/cTXWU0
「やめて、あなた…やめてぇ!」
 ルメーユは夫のもとに駆け寄った。
「本当に、すまなかった」
 キリウスはそう言って前のめに倒れこんだ。ふわっと身体が浮く感覚があったかと思うと、ぞくっとする重力の感覚が全身を走りぬけ、次の瞬間には

全身を硬い感触が打ち付けた。
 下方に山積みになっていた瓦礫に身体を打ち付けて、キリウスは糸の切れた人形のように地面に転げ落ちた。手足はあらぬ方に曲がり、頭髪には血が

滲んだ。しかし、そんな状態で彼は目を薄っすらと開けて空を見た。
「はや…く……、はやく、きて…」
 彼は辛うじて賭けに勝った。この状態ならば死は免れない、しかしすぐに死ぬわけではない。妻に伝える時間がある。
 目がかすんできた。視界の端から黒い靄が広がって視界を真っ暗に塗りこめた。目が見えなくなってきたのだ。しかし意識はまだあった。身体の自由

はもうなく、四肢の感覚は失われていた。
 酷く長く感じられた孤独の後、暖かく柔らかな感触が彼に触れた。きっと妻だ。
「あ……しっかり…………」
 妻の声が遠い。触れられているのは確かなのに、なんと遠い。
 キリウスは口を動かした。自分の声も聞こえず、声が出ているのかすらもハッキリしなかった。胸の奥から熱した鉄のような何かがこみ上げてくるが

、それを押し殺して彼は妻に伝えようとした。

 誘いにのるな…誘いにのるな……さそいに………。

 とうとう耐え切れずに、喉の奥から赤黒い血を吐き出してキリウスの意識は途絶えた。

890ドワーフ:2010/06/21(月) 21:23:09 ID:HW/cTXWU0
「あなた!しっかりして」
 夫のもとに駆けつけたルメーユは、彼のあまりに酷い状態に悲鳴のような声で言った。
 娘を失い、今また夫を失おうとしている。冷静で居られようはずがない。
「さ……」
「え?」
 夫が口をもぞもぞと動かして、何かを言おうとしている。
「お願い喋らないでください。すぐに誰か人を呼んできますから」
「何が欲しい?」
「え?」
 様子とは打って変わって、はっきりとした口調で夫はそう言った。そしてルメーユの手をぎゅっと握り返すと、再び口を開いた。
「何が欲しい?望む運命を与えよう」
「何もいりません!」
 ルメーユははっきりとそう言った。しかし、夫の顔に涙の雫をぼたぼたと落としながら続けた。
「あなたさえ無事なら、他に何も…」
「契約は結ばれた…」
 そう言うと、夫の手から力がふっと抜けた。そして赤黒い血を口から吐き出した。
「あなた、しっかり!」
 ルメーユは叫んだが、すぐに気づいた。夫が寝息のように呼吸していることに。まだ息がある、すぐに治療すれば助かるかもしれない。
「あなた、すぐに戻ります」
 そう言ってルメーユは立ち上がると、スカートの裾を持ち上げて走り出した。

891ドワーフ:2010/06/21(月) 21:24:16 ID:HW/cTXWU0
 "最後の舞台"から少し離れた宮殿の屋根から、アスティマは彼らの様子を眺めていた。走り出したルメーユを見送って、彼女はハンカチの端を噛み締

めて涙を流していた。
「ああ、あんなに必死になって。なんていじらしいの」
 さめざめと流れる涙と拭って、拍手した。
「運命の人でない人と、あそこまで愛し合えるなんて!これこそ運命を超えた真実の愛ってやつね」
 止まらない彼女のスタンディングオベーション。まるで演劇でも鑑賞していたかのようである。
「ああなんて素晴らしいの。なんて美しいの…」
 そう言ってアスティマは屋根から高く跳躍すると、ぼろぼろになって横たわるキリウスのそばにふわりと着地した。そして、意識のない彼に向かって

再び拍手した。
「本当に素晴らしい舞台だったわ。もうキスしてあげたいくらい。でも、奥さんに悪いからやめておきましょうか」
 返事などあるはずもないのに、アスティマは一人で話しかけ続けた。
「そんな残念そうな顔をしないで。代わりに取って置きのプレゼントを用意したわ。第二幕は感動の再会から始まるから楽しみにしてて!」
 そう言うと、アスティマはキリウスに背を向けた。
「それじゃあ、元気になったらまたお会いしましょう」
 アスティマの姿が黒い霞となって空に消えた。
 キリウスは知らない。運命から外れた人間が、その死後どうなるのか。運命から外された存在がどんなものなのか。

 かつて、貧民の身から一代で古都一番の大富豪となった男がいた。彼は通常なら許されない貴族の女との婚姻を認められた唯一の男だった。しかし娘

の死をきっかけに心を病み、やがてすべての財産を処分すると妻と共にいずこかへと姿を消したという。その後、彼らの姿を見たものは居ない。

892ドワーフ:2010/06/21(月) 21:39:49 ID:HW/cTXWU0
お久しぶりです。
最後の書き込みからかなり間が空いてしまいました。
しばらく書かずにいたのですが、ふっと創作意欲が沸いてきたというか何と言うか…
また、稚拙な文章ではありますが投稿せさせていただきます。

以前と同様にユニークアイテムをネタに書いてみたのですが、久々なくせに「運命」などという
ややこしいものをテーマにしてしまったために、今回は話を破綻させかねない矛盾が随所に出てきてしまいました。
なんとか、読める形にはなったと思います。
しかし、最初は幸運を呼ぶベルトの明かるい話でいくつもりだったんですが、
どこでどう間違ったか…。一人の人間の都合で運命をいじったらどんな事になるのだろう
と、考え出した途端に一気に暗い話に方向が変わってしまいました。
しかも救いもないという…。
こんな話ではありますが、読んでやってくださるとうれしいです。

893名無しさん:2010/08/14(土) 22:18:57 ID:VKtGLx5k0
◇68hJrjtYさんがまだいらっしゃらないようなので不足ながらも感想を書かせていただきます。

フォーチューンフィールという、幸運のアイテムのお話なので、
さぞや愉快なお話なのかと思いきや、幸運の裏にある他人の不幸だったり、
予定調和に翻弄される人間の苦しみだったりと、非常に感慨深い作品でした。

愉快な話ではないにせよ、ただ暗いだけの話にしないところにドワーフさんのお話のつくりの上手さを感じました。
この話の鍵となる、妙に人間臭くて感情豊かな悪魔が、ともすれば少し悲しい気分になりそうなこの小説に
明るい灯をともしているような気がしています。

運命といったような非っ常に難しい主題をここまできちんと形に出来るドワーフさんの手腕に憧れます。
最近はこの掲示板もかなり下火になって職人さんもあまりいらっしゃいませんが、また何かふっと創作意欲が湧いたらぜひいらしてくださいね。

駄文失礼しました。

894名無しさん:2010/08/29(日) 17:22:06 ID:JIr.8KPA0
やっぱいいなぁ、このスレ・・・

895復讐の女神:2010/09/05(日) 15:55:50 ID:Xt88cq/60
ゲーム世界の感覚を取り戻そうとINしようとしたら、ログイン出来なかったでござる。
垢盗まれちゃったみたいだ。
未使用スフィア3つが・・・

896名無しさん:2010/09/13(月) 16:20:32 ID:HQXR5Yuk0
aaa

897ドワーフ:2010/09/28(火) 23:43:46 ID:HW/cTXWU0
マルチェドと復讐の傷跡

 そこは郊外の霊園。墓石が規則正しく、どこか寂しげに立ち並ぶ場所。穏やかな日差しの下で、男は苦しみ悶えていた。
 頭の禿げ上がった初老の男。貴族のような美麗な装いで、地に膝をついて喉の奥から振り絞るような声で何か喚いていた。
「ううぅぅぅぅ……。うぅぅぅ。アルジネフぅぅ。よくも……、よくも」
 胸からおびただしい量の血を垂れ流し、彼はひたすらに憎悪を訴えていた。止め処なく溢れ出る赤い血は、不思議なことに地面に滲むこと
もなく、ただただ地の底へ滴り落ちるように地面に消えていた。
「よくもぉ!よくもぉぉ……、娘を…裏切ってくれたな……」
 強烈な痛みに悶えるようにその身に爪を立て、掻き毟る。魂の叫びは響きこそすれ、誰にも届くことはない。
 いや、一人だけ例外がいた。
 小さな、ぶかぶかのコートでその身を覆う人物。灯台のような兜の奥から哀れむ様な声がした。
「それは違います」
「ぐぅぅぅぅあ゛あ゛ぁぁぁぁ……」
 コートの人物の名はマルチェド。彼は何の益があってか、嗚咽を漏らす男に話かけ続けていた。
「フェレネンドさん。フェレネンドさん。僕の話を聞いて下さい」
 しかし、いくら話しかけても男はマルチェドを無視し続けた。まるで見えていないかのように。
 マルチェドはそっと男に近づくと、その透き通った身体に触れた。

898ドワーフ:2010/09/28(火) 23:45:36 ID:HW/cTXWU0
 そこは郊外の霊園、しかしそこに居るのはフェレネンドとアルジネフという二人の男だった。
 フェレネンドは霊園の寂しげな景色と雰囲気をどこか楽しんでいるようだった。そして、やって来たアルジネフを微笑を浮かべて迎えた。
「きたか。アルジネフ」
「何の、御用でしょうか」
 フェレネンドとは親子ほど歳の離れた青年。笑みを浮かべるフェレネンドとは対照的に、アルジネフは決意を固めたかのような、まるで決
闘の合図を待つ騎士のような、どこともなく悲壮とも感じ取れる硬い表情をしていた。
「そう緊張するな。ここなら誰も来ないから、ゆっくりと話でもしようじゃないか」
「そうですか…」
 そう言ったっきり、二人は黙ってしまった。アルジネフはフェレネンドが再び口を開くのを待ち、フェレネンドはというと間を計るように
ゆっくりと、アルジネフの周囲をうろついていた。緊張しているのは、ひょっとするとフェレネンドの方なのかもしれない。
 小さくため息をついて、フェレネンドはようやく口を開いた。
「アルジネフ。お前の正体は割れた」
「そうですか」
 まるで最初から分かっていたかのように、アルジネフは即答した。それを分かった上で、覚悟してこの場に来たのだろう。
「お前の家族を殺したあのとき、お前の死体がないということを知ったあのときから、一度たりとも心の休まることはなかった。まだ年端も
行かぬ小僧だったとはいえ、あの執念深い男の息子だ。きっと復讐しにくるに違いないと思っていた」
「…………」
「そして思った通り、お前はこうして私の前に来た。娘に近づいて、私に接近する機会をずっと伺っていたわけだ。二十年間も復讐のために
費やすとはな、もっと別な人生を送ろうとは思わなかったのか」
「……別の人生。今とは別の人生、という意味か?それならあの日、お前に壊されたよ」
 アルジネフは怒気をはらんだ声で言った。口調は変わり、刺すような目つきをしていた。
「やはり、あの男に似ているな。割り切ったり妥協したりすることを嫌う頑固者だ」
 穏やかな日差しが当たりを照らしている。木漏れ日が揺れるレースのカーテンのように射す様は、霊園とはいえ幻想的だった。
 そんな雰囲気とは対照的に、陰険な眼差しでフェレネンドを睨み付けるアルジネフに、フェレネンドはやれやれといった風に肩をすくめた

「やれやれ、ゆっくりと話したいと言ったのにな。何か勘違いされているようでは、そうもいかないな」
「勘違いだと?」
「ああ、私はお前を殺す気などない。逆にお前に復讐を遂げさせてやろうと思っているのだ」
 アルジネフの眉がぴくりと動いた。動揺を隠そうと、油断を見せまいと、彼はさらに態度を硬化させた。
「ふざけるな」
「ふざけてなどいない。実を言うと、娘が生まれてから心変わりしてね…。いくら邪魔な商売敵だったとはいえ、何も殺すことはなかったん
じゃあないかと。いや、それは避けられなかったにしても子供たちの命まで奪うことはなかったとね」
 フェレネンドはアルジネフの目をじっと見据えた。フェレネンドは実に安らぎに満ちた、穏やかな表情をしていた。

899ドワーフ:2010/09/28(火) 23:46:19 ID:HW/cTXWU0
「時にアルジネフ。お前は、私の娘を愛してしまったな?」
「馬鹿な…」
 アルジネフは目を逸らして言った。僅かに息が乱れたのをフェレネンドは見逃さなかった。
「ふっ、分かりやすい男だ。だが娘は隠しもしなかったぞ」
「…………」
「皮肉なものだな。復讐のために近づいた仇の娘を、愛してしまうとはな」
 フェレネンドはアルジネフに歩み寄ると、手を伸ばせば届きそうな距離で立ち止まった。
「正直お前を殺してやろうかとも思っていた。だが、お前と連れ添うことがあの子にとっての幸福だというのなら、過去の因縁をこの命で清
算できるのなら、ここでお前に殺されるのも悪くない」
 そう言って、フェレネンドはアルジネフに懐から取り出した短剣を差し出した。
「自前の物を用意しているだろうが、これを使え。あとの処理は私の執事に任せればいい。安心しろ、あいつは口が堅いからな。信じられな
いかもしれないが、信用して欲しい」
 アルジネフはじっと差し出された短剣を見下ろした。飾り気のない無骨な短剣だった。
(こいつは、何を言っているんだ…)
 アルジネフは、予想外の展開に困惑していた、訳ではない。ただ、目の前の男の態度が気に入らなかった。
 アルジネフが無言で短剣を受け取ると、フェレネンドはふふっと笑った。
「はぁ〜…。妙なものだな、あれほど恐れていたお前のことを、こんな気持ちで迎える日がくるとはな」
(こいつは、何故笑っている?)
「思えばお前の父親は憎たらしい男ではあったが、立場が違えばきっと良い友となっていただろうな…」
(勝手なことを…)
 アルジネフは短剣の鞘を捨てた。鋭く輝く刃に、自分の顔が写っている。フェレネンドからは俯く彼の表情は見えないが、彼には自分の表
情がよく見えていた。今の彼の心を表す表情が。
「さあ、やるがいい。娘の花嫁姿を見れないのは残念だが、こんな晴れ晴れとした気分で死ねるのだから、これ以上は贅沢というものだ」
(こいつは…こいつは……)
 アルジネフはわなわなと震える手で短剣の柄をぎゅっと握り締めた。
(父も、母も、妹や弟も……、死にたくはなかった。最後の瞬間まで死の恐怖に怯え、苦しみぬいて死んでいった)
「どうした?さあ」
(なのにこいつは、満足して死のうとしている)
「躊躇うな、早く」
(許せない…)
 アウジネフはフェレネンドの肩を空いている左手で掴んだ。そして、笑みを浮かべているフェレネンドに向かって言ってやった。
「お前の娘も後で送ってやる。だから安心して、死ね」
「なにっ?」
 フェレネンドの表情が強張った、その瞬間を逃さずアルジネフは奴の胸に向かって短剣を突き立てた。
「馬鹿な…。あの子は…、本気で、お前を!」
「黙れ!絶望して死ね!」
 すがり付いてくるフェレネンドに対して、アルジネフは短剣をさらに捻り上げた。そして引き剥がすように男を突き飛ばした。フェレネン
ドはうめき声を上げてのた打ち回ると、やがてぴくりとも動かなくなった。あっけない復讐劇の幕引きだった。
 アルジネフは先ほど自分が言った言葉が信じられなかった。短剣をぽとりと落とすと、つぶやくように言った。
「出来るわけが、ない…」
 辺りは相変わらず穏やかな日差しに包まれている。彼らの心など知らぬように。

900ドワーフ:2010/09/28(火) 23:46:53 ID:HW/cTXWU0
「そうか、娘は生きているのか」
「はい、二人のお子さんに囲まれて、本当に幸せそうでした」
「そうか…、そうか、よかった」
 フェレネンドはうっすらと目に涙を浮かべていた。
「長い間、ずっと酷い悪夢を見ていた気がする。私がアルジネフにしたことを思うと、これも当然の報いなのかも知れない。あれだけのこと
をしておいて、自分に都合よく全てを清算しようとした私は、傲慢だったのかもな」
 フェレネンドはすくっと立ち上がると、マルチェドに深々と頭を下げた。
「ありがとう。君には本当に感謝している。これ以上の謝礼ができないのが残念だ」
「とんでもない、僕はただ…苦しみ続けているあなたを救いたかっただけです」
 フェレネンドはマルチェドの、目をじっと見た。妙な姿をしているし、顔も分からないが、その兜の奥の輝きは何よりも優しく暖かに感じ
られた。
「ああ、何て清々しい良い気分なのだろう。最後に娘を一目でも見たいが、これ以上は贅沢か」
 そう言って。フェレネンドの魂は天へと昇っていった。
 マルチェドはそれを見送ると、悲しげに俯いた。
 死んだ人の心を救うことは出来たが、生きている人間の心を救うことは出来ないでいた。
 マルチェドに全てを告白したアルジネフは、心に自分自身に対してのわだかまりを抱いたまま奥さんと向き合っている。復讐の刃は彼自身
の心をも傷つけていたのだ。
 その霊園は相変わらず穏やかな雰囲気を保っていた。

901ドワーフ:2010/09/29(水) 00:20:00 ID:HW/cTXWU0
あとがき

連投になってしまいましたが、書き込ませて頂きます。
かなり前に書いたマルチェドというネクロマンサーを主人公とした話をネタに、
また一つ書いてみました。
6冊目の403-419とこのスレの>>417-420に過去に書いた話がありました。
続きというわけではないのですが、どこだか分からなくて、見つけたときは
押入れから懐かしい玩具などを見つけたような気分になりました。
マルチェドと…なんてタイトルにしてますが、今回はマルチェドは端役です。

ここを読んでくださっている方がいてくれて、正直うれしいです。
もう誰も見てないのかな…なんて少し不安に思ってました。
本当にありがとうございます。

902名無しさん:2010/10/02(土) 11:18:03 ID:ICvGNH4Y0
>>ドワーフさん
なんとも物悲しくて、余韻の残る作品でした。
もし登場人物がどこかでこの作品とは違った選択をしたとしても、決してハッピーエンドでは終わらないような、
どこかで誰かが必ず心の傷を負ってしまうといったジレンマを感じました。

おそらくは、フェレネンドが満足して成仏したことはアルジネフに伝わるのでしょうが、
そこからアルジネフがどう自分の罪と向き合っていくのか…。
続きは私たちの心の中に、ということなのでしょうが私としてはアルジネフの幸せを願わずにいられません。

人の罪も、自分の罪も許すことができない弱くて優しい人間のあり方がとても丁寧に表現されていて、思わず感情移入してしまう作品でした。
自分もこんな話を載せられたらいいなあ…と思いながら実際に書くのはとても難しいですね。
相変わらずの手腕に頭が下がるばかりです。 もうここも住人が少ないようですが、またなにか創作意欲が湧いたらぜひいらっしゃってください。



>>復讐の女神さん
その御名を以前拝見したのはずいぶん昔のことだったように思います。
未だに古参の方もいらっしゃっていることが個人的に少し嬉しかったので返信させて頂きました。
運営側が不正アクセス防止のために正規のIDとパスワードにブロックを掛けていて、それでIN出来ないこともあるそうです。
というか、自分がそれありました。
なので、公式サイトにある『パスワードを忘れた』というところに適切なメールを送ればIN出来る可能性はあると思うのですが試してみてはどうでしょうか…。

903名無しさん:2010/10/02(土) 11:20:54 ID:ICvGNH4Y0
連投すみません。一番下まで下がっていたので上げさせていただきます。

904みやびのようなもの:2010/10/02(土) 18:50:53 ID:KYKd7IEk0
◇――――――――――――――――――――――――Red stone novel−Responce

 隠居しすぎてとうとう“バールのようなもの”みたいになりました……。


>復讐の女神さん
 >>902さんのおっしゃる通り、まだ諦めるのは早いかも……!
 あと単純な入力ミスといった点も、もういちどチェックしてみてはどうでしょう。
 とにかくまだやれることはあると思うので、なんとか頑張ってくみてださい(ノ>Д<ノ)

>ほか、作家さんたち
 感想できなくてすみません(汗)

 実は今回は読書ではなく「ネット活動再開」のご報告に来たのです……。
 ――が、なんだかKYな気がしてきました(汗)
 というのもサイトを復活させて自作のサルベージを行っているのですが、それを終えた
あと、おそらく新作のほうはサイトでのみ公開……というスタンスになりますので|ω;)

 疎遠だったうえに無責任なことになってしまい、申し訳ありません(汗)
 そんなわけでURLは自重しておきます。

 要は投稿しなくなってもネット活動は再開したので、たまにはレスしに来ます(*´・ω・)ノ
 ということで。

 もっと活力と時間が欲しい……。
Red stone novel−Responce――――――――――――――――――――――――◇

905名無しさん:2010/10/03(日) 12:14:36 ID:xxrYT74M0
お万個ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最古ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
べろべろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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906名無しさん:2010/10/31(日) 15:44:24 ID:uT.Z0vmk0
このスレ見て思ったのは

自分のブログでやれよ ってことだけですね


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