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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

1 ルイーダ★ :2008/05/03(土) 01:08:47 ID:???0
【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562


【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)


【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。


【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

六冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1200393277/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
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746 名無しさん :2009/05/05(火) 13:43:47 ID:STuB303I0
1-1

私のお気に入りの時間は暖炉の傍の椅子に座ってゆっくりする時だ。
パチパチ…ときの焼ける音を聞きながら全身を椅子に沈めていく。
暖炉の温かさ、音、周りの静けさ、全てが好きだ。
だが、最近はもっと気に入っている時間がある。

「先生!先生!」
自分を呼ぶ声でふと目が覚めた。どうやらいつのまにか寝てしまっていたようだ。
ふと声のしたほうを見ると自分のことを先生、と呼ぶ少年が近付いてくる。
「あら、どうしたの?もう遅くてよ?」
暖炉の傍の椅子に腰かけながら少年に尋ねる。まあ要件は分ってはいるが。
「先生!お話の続きをしてよ!」
いつものをせがまれる。この子は本当にこの話が好きなようだ。
「ええ。してあげるからこっちにいらっしゃい。」
私は暖炉のそばのもう一つの椅子を指して招いた。彼が腰掛ける。
どこから切り出そうかと悩んでいるとき、ふと窓の外を見た。雪が降っていた。
そうか、また冬が来たか・・・。
「先生?どうしたの?」
少年がこちらを見ていた。悪意が微塵もない純真な瞳。
この瞳を見ていると黒く染まった自分が嫌になる。
「なんでもなくてよ。さあ始めましょう。どこからかしらね…」
「先生の好きなところからでいいよ。」
彼がそう言う。
好きなところから、じゃあここからにしよう。
「ある青年がいました。その青年は…」

お話を聞かせる。これが私の一番好きな時間…

747 名無しさん :2009/05/05(火) 13:44:54 ID:STuB303I0
1-2
墓地。
死者が眠る場所。
俺はそこにいた。花を持って。
「…あなたはこの花が大好きでしたね。香りがいいとか。私は未だに慣れませんが。」
その花をある墓の前に置く。
先客がいたようで既にその花が置いてあった。3束も。
苦笑いをしつつ4束目を置き深く黙祷を捧げた。
「…さようなら。もうここには来られません。俺は村を出ます。」
そのまま踵を返す。つい先ほどの光景を脳裏に焼きつけながら。

俺は家には帰らず、そのまま村の出口まで歩いて行った。
もう夕暮れ時。良い子は家に帰る時間だ。
空は暗く、冬の寒い空気を肌で感じる。
「もう冬になったのか…」思わず口に出す。

村の入り口には一人の男が立っていた。
「君も、破るの?」
俺を睨んで言う。そんなに睨むなよ。
「も、ってことは俺以外にも?」
「ショウとアメリアはもう行ってしまった。」
2人ともか。
「そうか。早いな。俺はさんざん悩んだのに。即決か・・・
おっと睨むな。分かっている。先生の気持も。お前の気持も。
でもな?このままじゃ駄目なことぐらいお前も分かっているだろ?いや、お前だけじゃない、今生きているすべての人がこのままじゃ駄目なことぐらい分かっている。でも世界は変わらない。なんでだ?それは…」
「能力を持っている人間がいないから。」
よく分かっているじゃねぇか。さすがだ。
「どうしてみんな行ってしまうの…?どうして先生の言いつけを破るの?どうして…?
いや、僕はこうなってしまうんじゃないかって思っていた。」
おいおい、泣くなよ…
「俺は全員残ると思ってたぜ…特にお前は残ると思っていた。
先生にはとてもお世話になった。俺が先生の言いつけを破るのはたぶんこれが最初で最後だと思っている。だから…行く。ごめんな、アル。」
黙って泣いているアルの脇を通り抜ける。
あいつは何もしてこなかった。本気を出せば俺ぐらい軽くのせるはずなのに。

「『今まで覚えたことを実戦で使ってはいけません。この村で静かに暮しなさい』…か。」
じゃあなんで先生はこんなことを教えてくれたんだろう。
疑問に思いつつ、俺は村を離れた。

748 名無しさん :2009/05/05(火) 13:45:57 ID:STuB303I0
0-1
世界は混迷していた。
王国の内紛、共和国の議会の形骸化などにより、各街、村が独立の道を歩み、さながら旧ヨーロッパの都市国家が各地に出現した。
各都市は時に手を取り合い、時に睨み合いそれぞれ勢いを伸ばしていった。
30年が過ぎた。
勢力を安定化させたある都市が大陸平定の名のもとに他の都市に侵略戦争を仕掛けた
都市同士の小競り合いも最近は頻繁に起こるようになった。そのうち全面戦争も起こり得ると言われていたが、唐突だった。
他の都市は自分も遅れまいと侵略を仕掛けるところもあれば、我関せずな都市もある。都市同士互いに手を取り合って侵略したり防衛したりするところも出てきた。

町の外に出ると会うのは野党かモンスターかどこかの兵隊…
世界は混乱している。安定を望む者は沢山いるのになぜかそれが叶わない。むしろ混迷を辿っていった。

そんな中、一人の人間が現れた。
名前をアリシアという。ある日どこからともなくとある村に現れた。
彼女は優秀な人間だった。世界を平和に導くためのあらゆる「手段」を知っていて、またそれを体現できるような人だった。
彼女には4人の教え子がいた。名前をそれぞれリチャード、アル、アメリア、ショウである。…

                            ヴァン著「大陸英雄伝」より

749 名無しさん :2009/05/05(火) 13:49:36 ID:STuB303I0
この世界はばかげている。
戦争は絶えないし、私の所持金も少ない。
さらに言えば今私の周りに大量のウルフがいることとか特に。


おかしいなぁ。ちょっと休憩していただけなのになんでこんなことになっているんだろう。
そもそもウルフって夜行性だったっけ?夜の荒野に大量の犬と戯れる一人の女。
うん、この危機感は文にしただけじゃ伝わらないね。

さて、真面目に逃げる方法を考えなきゃ…
とりあえず一角を崩してそこのがけから飛び降りるか?いや、あの高さは死ねるな。
走って逃げるか?足の速さには自信があるがこの数の犬と競争して勝てる自信はないな…
魔術の心得があればよかったんだが残念だが私には縁のないものだし…
ってしまった!手元に槍がなかった。料理の準備をして他の荷物と一緒だ…
これは万事休すか?死ぬときは暖かい場所がよかったんだけどなぁ…
あ、もういちどケーキを食べたかったなぁ。
「…夫?」
そういえば最近町に寄ってないからシャワーも浴びてないし…まてまて、やり残したことがいっぱいあるぞ?これは死ぬに死に切れない。
「大丈夫?」
もし死んだら地縛霊に…ん?人の声?
「あの、大丈夫ですか?」
目の前に男の子が立ってこちらを見ていた。
「おおぅ、あんたどっから出てきた!?てかウルフの群れは?」
周りを見渡すとあれだけいたウルフが一匹もいなくなっていた。
「あ、僕が片付けました。危なそうだったので。」


…こ、こんな見た目人畜無害そうな男の子が!?
「あ、ありがとう…」
「危ないですよ?たとえ料理中でも獲物はちゃんと近くに置いておかないと。」



「改めてありがとう。助かったわ。本気で死ぬかと思ったし。」
「いえいえ、周りには気を付けてくださいね。」
「ところで貴方の名前は?」
「アルと言います。」
「アル君ね。私はユリア。あなたはどこかの兵士になりに行くつもりなの?」
そう聞くとアル君は微妙に不機嫌?になった。
「ユリアさんはそうなんですか?」
そんな目で見られるとちょっと傷つきそう…
「いいえ。そんな馬鹿げたことするつもりはないわ。そんなことしなくてもね、生きていけるもの。
 まあちょっと寂しい生活だけど…」
そういうとアル君が目を輝かせ?た
「そうですよね!争わなくても生きていけますよね!やっぱりそうだ、間違ってなんかない!」
おおぅ?なんか喜びだしたぞ?本当はやばい人なのか?アル君は。
お、なんかガッツポーズが飛び出した。
ちょっと経ってからアル君が言った。
「ユリアさんありがとうございます。その考えを貫き通してください。
僕は行くところが出来たので失礼します。」
いやいや!展開が急ですよ!?ここは主導権を握らねば
「待った待った!よくわからない部分はとりあえず置いておいて、どこに向かうの?
てかこの道を来たってことはたぶんアリアンだよね?だったら一緒に行かない?」
とりあえずいきなり誘ってみる。この子強いから近くは安全だし旅は人数多いほうがいいしね。
アル君は少し悩んだ後、
「はい、僕もアリアンに向かうのでよろしければご一緒しましょう!」

(あ…別に私はアリアンに行く気なかったんだけどな…まあいいか。)
「うん、アリアンまでよろしくね。アル君!」

750 名無しさん :2009/05/05(火) 13:57:59 ID:STuB303I0
「ところでアル君っていくつ?」
「19歳です。」
「え…?私と同い年?その身長で?」
「触れないでください…」




|壁|ω・`)…
初めまして。初投稿、ではないですが初投稿です。
一応昔に一時期駄文をここに載させていただいた記憶がありますが…
たぶん気のせいですね、はい。

暇があればやっていこうかな、と思ったり…
まあ駄文乱文ですが少しでも読んでいただけたら…この馬鹿が嬉しがると思います
それでは
|壁|ミ

751 ◇68hJrjtY :2009/05/05(火) 17:30:28 ID:2jCZ.Q9M0
>750さん
一時期でも投稿されてたんですか!これは気がつきませんで…<(_ _;)>
新章という事で改めてスタートされたのでしょうか、ともあれ復活おめでとうございます♪
男っぽいとも言い切れないようなランサーのユリアが個人的にツボです(*´д`*)
ウルフの群れを駆逐したアル君のほかにアリシアに教わったのは3人…いずれもアルに匹敵する"能力"の持ち主なのでしょうか。
彼らがどうやって世界を変えていくのか。続き楽しみにしてます。

752 ヒカル★ :2009/05/06(水) 19:01:15 ID:???0
このスレを見て懐かしく思い、FF小説というところで、私の処女作を探してきました。


「花売り」

ギィという静かな音を立て、ゆっくりとドアが開くと、一人の少女が店に入ってきた。
左手にはボストンバッグほどの大きさのカゴを持っており、カゴの中には、
可愛らしい数本の花が見える。彼女は花売り。そう……彼女の仕事は花売り。
ギィという静かな音、それは彼女の夢がもうすぐ叶うことを示している音でもあった。

毎日毎日、花を育てている。それが彼女。
荒廃した教会の中にある、ちっぽけな花畑。そこで育った花、花、花。
いちりんの花も、時に魔法のような力を示す。
花を見るだけで穏やかな気持ちに満たされる、そんなことがよくあるから。
夕方になると、彼女は出かけて行く。色んな場所で、道行く人に花を売る。
いや、花の持つ不思議な力を売っているのだろうか。
カバンにストレスを詰め込んで、眉間にシワをよせているサラリーマン。
背中に寂しいと書いてある、ボール遊びの子供達。お金と引き換えに、花を受け取る。
眉間のシワも背中の文字も、しばらく消える。それを見て、彼女も至福を感じる。

いつしか彼女はささやかな夢を持つようになった。花を売りに行ったその街で。
それはアンティークで、落ちついた雰囲気の喫茶店……とでも言おうか、
通りすがりに外から見ているだけでも、その店が繁盛していることは彼女にもわかった。
そして窓からもれる明かりまでもが、その店の暖かさを語っているように見えた。
(いつかあそこでお茶を飲もう、たくさんの人が訪れるあの店で。)

窓際の小さなテーブルを選んで、彼女は一人でイスに座る。
そしてゆっくりとメニューを眺める。彼女は一つ一つの動作を味わう。
注文は、店に入る前から決まっていた。一杯の紅茶。
注文を伝えると、今度は店内の様子をうかがう。
色んな人がいた。彼女と同じく一人でお茶をたしなんでいる人、
笑顔で会話する二人連れの若い男。色んな飲み方、色んな思い。
その店の様子は、ある意味この大都市を象徴しているかのようでもあった。

しばらくすると店の奥からピアノの音が聞こえてきた。彼女は目を向ける。
あれは店の人だろうか? 白のタンクトップに黒のショートパンツ、両手にはグローブ。
グローブといっても、野球選手のではなく、ゴルフ選手が着用しているようなグローブ。
どちらにせよ、ピアノの演奏には不似合いで、一見するとピアニストには見えない。
しかしながら、その女性の奏でる旋律は……。

花売りの娘にとって、それはあまりにも思いがけないことだった。
彼女は確信した。彼女にとって今日という日は、お茶を飲む夢が叶った日などではなく、
この場所で、この曲に出会うために神様が与えてくれた一日だったのだ、と。
(もう一度あの曲を聴きたい、そしてできるのなら、あの人と話がしたい。)

今日も少女は花を育てる。夕方になると出かけて行って、道行く人に花を売る。
小さな胸に淡い想いを携えて……。


ヒカル
2004年02月18日(水) 19時17分00秒 公開
■この作品の著作権はヒカルさんにあります。
■作者からのメッセージ
原作の設定に逆らっている感もありますけど(汗)
一つ説明。この店はアバランチのアジトではなくて、ミッドガルのプレート世界(上流社会)の店です。
どうやって花を売りに行っているのかは不明(爆)
セリフ無しで書きたかったのですが、2箇所だけ主人公の心情を書きました。



あれから、5年なのですね。私って(汗)とか(爆)とか使っていたんですね。

753 ◇68hJrjtY :2009/05/07(木) 16:11:11 ID:2jCZ.Q9M0
>ヒカルさん
おぉ、赤コテという事はスレ立てとかされてる管理人さんの一人ですか!?
処女作だというFF小説、ありがとうございます♪RS以外の小説も個人的には歓迎です。
FF7ですか…ゲーム自体がだいぶ古くなっても、こうして小説として何度でも蘇るものですよね!
FF7を知らない人には恐縮ですがエアリスとティファの二人かな?
ミッドガルみたいな都会で花売り娘というだけでも絵になるのに…やっぱりエアリスはイイ(*´д`*)

754 しー :2009/05/22(金) 21:15:37 ID:WNynU.oA0

「きゃ・・・」
ミルティはポータルから吐き出され、尻もちをついた。続いて隣にベリーが落ちる。ミルティは少しベリーを撫でてやり、
辺りを見回した。海の上を、船が進んでいる。空には、数匹のカモメが飛んでいて、のどかな雰囲気である。
ミルティは立ち上がり、ある方向へ歩き出した。しばらく歩くと、小さい墓場が見えてきた。
「懐かしい・・・」
思わず口に出してしまう。小走りで近づくと、墓の前にひざまずいて祈りを捧げている人がいた。金髪で、鎧を
着けた女の人・・・ランサーのようだ。ランサーは祈りをやめて振り向いた。
「あなたも、お参り・・・?」
「いえ、その、あっ、ここでシーフが死んだことってありませんか?」
ミルティが尋ねると、ランサーの顔が青ざめた。
「そ、そんな・・・ダインのことを聞いてはダメ・・・!」
「ダイン?」
「えぇ・・・数年前死んでしまったシーフよ」
もしダインがシャドーの生前の名であるとすれば、ここで間違いない。ミルティはふとシャドーが天使ニフに見せた、あの不可解な
能力を思い出した。
「そのダインって、スキルを使わなくてもCPを吸収できたとか・・・ありませんか?」
ランサーは驚いたようにミルティを見、やや警戒した目になって身構えた。
「あなた・・・ダインの何なの?」
「私は・・・」
言いかけて、少し言葉が詰まった。シャドーは自分に憑いていた霊だ。しかし今はいない。シャドーの何だ、と聞かれても、
うまく答えを探すことができない。
それでもミルティは、つたない言葉で説明した。
「えっと・・・私は、ずっと、その幽霊と一緒にいたの。でも、今はいなくて、ここに探しにきたの」
ランサーの目に光が宿った。その直後、ミルティはランサーに肩をつかまれていた。
「本当なの?ダインはいるの・・・?」
「いえ、今は、私から離れてしまったから、いるかどうかは・・・」
ランサーは手を離し、ため息をついた。そして、ぽつりと言った。
「あなたになら話してあげる。ダインのこと」

                        -*-

755 しー :2009/05/22(金) 21:48:48 ID:WNynU.oA0

ダインは、不思議な力を持っていた。CPを敵から吸収できるという・・・たとえ自分のCPが0以下でも、使うことができた。
でも、彼はもう一つ、大きな欠点があったの。それは、ポーションの効果を受けることができないっていう、冒険者失格と
言ってもいいくらいの短所だった。ヒールでもチャージでも、使うことはできなかった。
ダインは前者の能力を買われてうちのギルドに入った。あんまり喋らなくて、時々ボロボロの姿でギルドホールで
座ってるときもあった。敬遠したい感じの雰囲気だったけど、たまに優しい一面もあった・・・。
そんなとき、ギルド戦の予定が組まれた。そしてマスターは、ダインにギルド戦に出ることを勧めたの。私と他数人は反対だったわ。
ポーションが使えなかったら、危ないし、辛いだろうって。でも、ダインは受け入れたの。そして、ギルド戦が始まった・・・
相手のレベルとこちらのレベルはほぼ同等、人数はあっちがちょっと少ない感じで、でも十分フェアな対戦になる、はずだった。それなのに、
開始して間もなく、私のパーティのプリンセスがやられた。そう・・・1人、すごく強い剣士がいたの。メンバーは次々と倒されて、
ついにその狙いが私に向けられた。怖くて悔しくて、絶望の淵に立たされたとき、背後で彼が囁いたの。
『諦めるな』
彼、ダインは私の前に出て剣士の前に立ち、CP吸収の能力を使った。続けて、ダブルスローイング・・・。
私も、はっとして、ダインに加勢してエントラップメントピアシングを使った。でもそのときのダインの表情、キツそう
だったの。剣士がフルチャージポーションを使うたびCPを吸収してたんだけど、吸うたび眉をしかめてて・・・。きっと、
その能力は少なからずダインに負担をかけていたに違いない。
その後私達は、後から来た応援もあって、剣士を倒した。でも、それと同時にダインも倒れ伏した。CPがマイナスになっても、
必要CPに制限がないスキルは使えるって、知ってるわよね。そして、ダインは私を剣士から守るため、ずっと私の前で攻撃を
受け続けてて・・・それで・・・その夜、ダインは・・・ダインは・・・・・・・・・」

「私達はダインを丁寧に埋めてあげた。それから毎月、私はここでおまいりしてるの・・・」
ランサーは、話すのもつらそうだった。ミルティは何ともいたたまれない気持ちになり、気がつくと泣いていた。
ギルド戦なんて、虚しいだけだ。得るものは何ひとつなく、失うものは大きい、そういうものだとミルティは考えていた。そんな
無意味な戦いで、シャドーは命を落としたのだ。
「っ、泣かないで。ダインはもう、きつい思いしなくて済むんだから・・・」
ランサーの言葉が、さらにシャドーの死を強調したような気がして、ミルティはしゃがみこんで泣いた。シャドーは、
つらい経験をしてきていたのに、あんなことを言って、シャドーを・・・!
その時だった、ふっとミルティやランサーの付近に第三の気配が現れたのは。
(…気にしすぎるな。過去のことなど、今は取るに足らない)
ミルティは顔をあげた。ランサーは手が震えていたが、ゆっくりと振り向いた。
(オパール、ミルティ…)
そう、この耳の奥で響く低音は・・・
「・・・ダイン」
ランサーはその名を口にした。シャドーは、自分の墓の上に座っていた。全体的に黒いオーラを纏っていてわかりづらいが、
確かにシャドーだった。
「ダイン・・・そこにいたの」
ランサーが問うと、シャドーは墓の上から舞い降りて、そっとランサーの頬にキスをした。幽霊だから接触はできなかったと
思うが、それでもランサーは小さく、
「うれしい・・・ありがとう」
そう言った。シャドーは何も言わず消えていったが、消える直前、少し微笑を浮かべたように見えた。

                              -*-

756 しー :2009/05/23(土) 13:50:45 ID:WNynU.oA0
こんにちは。
小説を考えるにあたって、『今回は誰にでも読めてつまらなくないものを!』と最初は思っていたのですが、
いつの間にか普通に女性向けっぽくなってしまいました。男性には物足りないかもです。
しかも厨(って言ったらアレですが)っぽい設定も追加してしまいました。自分の小説だからやりたい放題です。

また書きに来ます。みなさんインフルエンザに気をつけてください。

757 ◇68hJrjtY :2009/05/23(土) 17:25:41 ID:kJztxVtc0
>しーさん
続きありがとうございます♪
なるほど、徐々に明らかになりつつあるシャドーことダインの実態。
もともと普通のシーフでは無かったという彼ですが、予想外の能力に驚きました。
オパールとミルティの出会いが彼を紐解く全ての始まりのように感じてなりません。
「女性向けではないか」という心配の点ですが、まったく構わないと思いますよ。
しーさんも仰るとおりご自分の小説なんですから自由にやっちゃってください(笑)

758 ヒカル★ :削除
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759 bard★ :削除
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760 ヒカル★ :削除
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761 名無しさん :2009/06/04(木) 21:00:27 ID:cW4DW7Is0
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762 名無しさん :2009/06/04(木) 21:00:51 ID:cW4DW7Is0
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763 名無しさん :2009/06/04(木) 21:01:25 ID:cW4DW7Is0
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770 ◇68hJrjtY :2009/06/07(日) 19:26:56 ID:4iRAnLHg0
ヒカルさん、度重なる広告&マルチ削除ありがとうございます〜<(_ _)>
保守ついでにお礼っ。

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777 契約者 :2009/06/28(日) 02:18:33 ID:7ZAauq.60
>>752
お茶を飲む夢が叶った日などではなく、
この場所で、この曲に出会うために神様が与えてくれた一日だったのだ、と。

ここが印象に残りました
良い小説ですね。

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789 ◇68hJrjtY :2009/06/29(月) 16:22:47 ID:4iRAnLHg0
広告凄いですね(´・ω・`)
毎度の削除ありがとうございます。

必要ないかもですが保守と、書き手さん鼓舞で書き込み。
皆さん投稿いつでもお待ちしてますよ〜♪

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794 ワイト :2009/07/05(日) 00:15:08 ID:u21hJAvY0
前回 RS小説7冊目>>426⇒続編

ガシィイッ!主人は、ラータの振上げ打下す、その動作を見上げると
ほぼ無意識に自らの首元に掌を向、得物を受止める――

一瞬、唖然の表情を浮べたラータは、その掌を払除け、間合を取る。
一方、主人は無意識に行動に実行した掌に、動揺の顔色を窺る。


――勿論、ラータはその一瞬を見逃すはずはない。即座に獲物を投擲する。

キィインッ!カンッ!カラララッ……!
弾いた……?主人は腕をタイミング良く振上げ、獲物を地に叩落した。


――グッ……!アッッ!!
疾走感に酔痴れる程のスピードを活用する、ラータは既に間合を詰め、主人の目前に駆ける。

ヒュアッ!――ブシュッ!
得物は身体を切裂いた先に鮮血は迸った。


――ラータの身体から……!

「がはっ!……ッ!アッ!く、くそ!てめぇ……まだそんな手段を……ッ!」

主人の手先に鋭利に輝く刃物?……それは、鈎爪の形状を形取る。その鈎爪は
戦闘以前、いや主人の変身後、掌に獲物を振下した直後……?いや、無確認だ。
更にその鈎爪は、主人の手先に真直ぐ、生殖する様に伸出する。


「チッ!仕方ねぇ……!それ相応の代償は、てめぇに返還してやるよ!!」

ラータは得物を自身周辺の空中に、相当数量を投擲する。
――投擲した得物は、守護する様にラータ自身の周辺を旋回する。


「……?」
主人は当然、認識不足にある。ラータの不可解行動に眉を顰めた。

「……気付いた瞬間にゃ、即座に命乞いする羽目になるぜ……?」
――発言後、ラータは両手に指の合間を縫って、得物を携帯する。


「カルテット……ッ!スローイングッッ!!」

――ブァッ!ババババッ!バババッ!バババババッッ!!


ラータは、両手に携帯する得物を投擲した!!同時に先程
ラータ自身の周辺に旋回する、得物は投擲した合図に主人を襲撃する!!


――ッツガガガガガガッガッッ!!キイィッッィン――!

主人の見下した地面に、無数の得物はカラカラ……と虚しく音を立、落下した。
主人を守護したのは、主人の鈎爪……相次いで、両翼……!?
両翼は、主人を覆い尽くす様にラータの得物を遮ったのだ。


ラータは、鈎爪以上に驚愕の顔色を示した。それは、何れの状況にも、無確認のこと。
更に手先の鈎爪同様に、その両翼は主人の背中に生殖する様に伸出する。


「ぁぁぁっ!ああああああっ!!」
――主人は突然、大音量の咆哮を上げた。同時に前原型の形状
変身後の形状を変化……第三段階の形態に主人は豹変?進化を遂げた。


ラータは、流血する傷口に応急手当を施し態勢を整え
進化の余韻に浸る主人を前に、冷静に状況改善に専念する。

シュウウウゥゥッ……!
――出現する……!主人の姿――!?


「あああぁぁ……!ううぅん……」

「ハハハッ!手先両手の鈎爪、背中にある両翼……その姿……!
驚いたぜ……!てめぇ、稀に出没する「サキュバス」かよ……!」

795 ワイト :2009/07/05(日) 00:23:25 ID:u21hJAvY0
約1年振りの続編書込みになりますか…?ようやく投稿しました。
最近、久し振りに……このRS小説スレッド確認しに参りました。
以前投稿と比較すると、更に小説下手になってます。なってると思います。
次回続編はいつになるか、見当見込みないです。ご了承お願いします……

796 ◇68hJrjtY :2009/07/06(月) 16:48:34 ID:4iRAnLHg0
>ワイトさん
お久しぶりです♪
ワイトさんに限らず、皆さんの小説を心待ちにしている68hですw
主人の実態がついに露見といったところですね。まさかサキュバスとは(((´・ω・`))
ほとんど一騎打ちですが僅かに押されているラータ、なんとか勝機をつかみたいところです。
剣戟の木霊する戦闘シーン、続きお待ちしていますよ〜!

797 名無しさん :2009/07/07(火) 00:39:43 ID:jbYrN6dg0
これは僕が子供の頃の話だったかな
僕はマダ6才。アヤも確か5才だった気がする
そのころはまだコボルトに病気が蔓延してなくて
危険だと噂され、ブルンネンシュティグからはでちゃいけなかった
西の方の共和国の領地もコボルトが歩き回っていて
僕たち子供はいってはいけなかった。
それでも、僕たちは子供だから、悪いことをしてみたかったのもあるんじゃないかな。
「あの日」の数日前、僕とアヤはある計画を練っていたんだよ。

−これはある少女と少年の、小さな小さな物語−

「コボルト」


−ブルンネンシュティグの保護施設−

「おい、アヤ。最近ヒーローってのが流行ってるじゃないか。」

僕は前髪にメッシュを子供ながらにかけている女の子、アヤに話し掛けた。
アヤは周囲の様子を見渡し、ため息混じりに言葉を返す。
「そうだね。みんな井戸前でよくショーをしてる戦隊の真似事ばかり
私はあまり興味ないな。格好良くないんだもん」

アヤは5才の割には大人のような思考などを持っていた。
何でも、テストをしてみたら、14才くらいの精神年齢らしい
親が何かの偉い人だっていうからその影響なのかも知れない。
僕もアヤと同じくらいの精神年齢らしいけどよくわからない。
だって、精神年齢とか、高いからってなんのデメリットもメリットもないし

まぁ確かに、その戦隊はあまりかっこいいものではなかった。
格好も陳腐な物だったし、良く親に連れて行かれて、本格的な
ショーを見に行ってた僕は目が肥えてしまっていて
全く興味は持っていなかったのだ。
しかし、他の皆は、悪い奴をやっつける。というヒーロー的行為に
あこがれを抱いていたらしく、その戦隊に夢中になっていた。

この話はそのときはここで終わった。しかし、その翌日のことだ。

昨日のように、休みの時間にアヤと二人で話していた時のこと
周りは昨日と同じように戦隊物の真似事で
やれ「ガキーン」だとか「ちゅいーん」だとか
言葉で効果音を発して遊んでいる奴らばかりだった。

(全く、あれはただのショーだろう。本物のモンスターを倒した方が
よっぽどヒーローってもんだぜ)

ふと、そんなことを想ったのだ。想ったことをすぐに口にしてしまう性分だった。
僕はそれを口にした。しかし、アヤがそれに非常に強い反応を見せたのだ。
目を輝かせ、素晴らしいことを思いついたのだろう。
そしてすぐにその内容を身を乗り出しながらしゃべってきた。

「てことはさ、私たちがモンスターを倒したら、ヒーローになれるんじゃない?」




全く思いつかなかった。そうか、それならば自分の自慢話も出来る。
他の奴らの上に立てて、優越感にも浸れる。
すぐに、その話は決まった。モンスターを倒そうということになったのだ。

しかし、問題は倒すモンスターだった。
最近じゃ墓地にバインダーなんてモンスターが出ていて
何人もの強い人が犠牲になっているとか。
あまり強いやつを相手にしても返り討ちにあって死ぬだけだ。
まだ6年しか生きていない。死ぬのは嫌だ。
僕はその旨をアヤに話した。

「う〜ん。私たちでも倒せそうなモンスターか〜・・・・」

アヤは10秒ほどだろうか。腕を組み考えた後に
「あっ」といって此方を向き又しゃべる。

「じゃぁ、コボルトはどう?先生達が「危険だから」っていってるやつ。
私聞いちゃったんだけどさ、そこまで危険じゃないらしいんだ。
モンスターの中でも一番弱い方らしいよ。」

コボルト    確か悪魔系のモンスターだと聞いたことがある。
あまり頭は良くなく、槍を使って小さな獣を捕って食べているとか
たまに人間も襲うらしいが、確かに危険な目にあったなんて話は聞いたことがない。

話は決まった。僕らは「コボルト」を倒そうと計画を練ることになった

798 名無しさん :2009/07/07(火) 00:44:02 ID:jbYrN6dg0
次の日、色々と情報を集めた僕は、休み時間を利用して作戦会議を開く。

「町の西口に警備員はいなかった。やっぱりそんなに危険なモンスターじゃないみたいだ。
でも、やっぱり用心して、人の少ない夕方に西に行こう。
コボルト達は群れで行動することが多くて、いつも一匹や二匹
外を出歩いているらしい。だから、そいつを相手にしようとおもう。」

このコボルトの習性は、一日で僕が集めた唯一のコボルトの情報だった。
それは本当は、コボルト達の見回りのことだったのだが、そんなことはよく分からなかった。

その日はそれで解散。家に帰ることになった。

僕は家にかえってやることは既に決めていた。
敵を倒すのには絶対に必要なものがある。そう、武器だ。
武器がなければ相手にダメージを与えることが出来ない。
武道家というのは殴って敵を倒すそうだが
子供の力では素手で敵を倒すことは不可能だ。

(親父の部屋に剣が置いてあったはずだ。タウンソードとか言ったかな)

親父は家にいなかった。だから剣も簡単に持ち出せる

はずだった。


「あれ?もてない。」

そう、タウンソードがもてなかったのだ。
普段家事に利用する際は普通に持てたはずなのに
いざ戦闘のためにと持ち上げようとすると持ち上げることが出来ないのだ。

何かがおかしい

でも、持てない物はしょうがない。僕は早々に諦め
他に何か無いか探すことにした。すると
部屋の片隅に落ちている小さな剣を見つけた。
ゴミのようにそこに落ちている剣を僕は手に取った。

今度は持てる。よし、武器はこれに決定だ。
武器屋で見たことがある。確か凄い安い剣だ。
ショートソードっていったっけかな。

どうせゴミのように置かれていた剣だ。親父も僕が取ったとは気づかないだろう。
無くなったことに気がついても自分が無くしたと思うはずだ。
腰につけていたオモチャの剣と交換する。これでもうばれることはないはず。

その後僕は、なけなしの小遣いで、ラージポーションを一つだけ買った。
というかそれしか買えなかったのであるが。


あれ?キャンディーでも傷の回復は出来たんだっけ?
まぁいいか。もう遅いし。同じ年のドロシーちゃんとも話せたしね。


さて、全ての準備は整った。あとはコボルトを倒すだけだ。
その日はあまり眠れなかったのか、それともすぐ眠ってしまったのかは覚えていない。





あ、あと、物置で小さな盾も見つけたのでそれも持ってくことにした







そして「あの日」が来た。

学校では特になんにもなかった。ただ、アヤが次のような話をしてた。

「なんかさ、剣とか持てないの。で、何か持てないかって想ったら
槍?っていうのかな。それなんだよね。おかしいよね。
家事とかでは普通に持てたはずなのにさぁ。」

僕はきっと槍が向いているんだろうなとかすかに想っただけで、その話は終わった。


夕方になった。

「誰もいないね。本当にいない。コボルトもいない!!」

アヤはコボルトが見あたらないことに怒っていた。
僕たちはそばの木の陰に隠れている状態だ。

「まぁまぁ。コボルトだってずっと外にいるわけないさ。
いつかやってくるよ。」


そしてそのときはやってきた。コボルトが一匹、ヒョコヒョコと
出てきたのだ。

アヤはコボルトを見つけるや否や

「見つけた!おりゃー!」

と叫んでコボルトに突っ込んだ

799 名無しさん :2009/07/07(火) 01:04:52 ID:jbYrN6dg0
コボルトはアヤにすぐに気づき、戦闘態勢を取った。
そして槍を突き出す。

「ッ危ない!」

アヤは殆ど反射的な動きで横っ飛びでその槍をさけた。

そしてそのままコボルトに槍を突き出す。

ズシュッという音と共にコボルトの方に槍が刺さる

「キェェ」

コボルトは小さくうなった。だがあまり大きなダメージは受けていないようだ。
そのままコボルトはアヤに槍を再び突き出す。今度は当たった。
アヤの腕を槍が斬りつける。

「いったぁーい!」

アヤはそう言うと腕を押さえてうずくまってしまった。

危ないな。そろそろ僕も攻撃しよう。二人でヒーローになろうじゃないか。
アヤの場合はヒロインだったっけかな?

「うらああ!!」

気合入れのために叫びながら敵に向かって剣を振り下ろす

だがコボルトには当たらなかった。意外とすばしっこいやつだ。
コボルトはそのまま回転して僕に槍を突き出す。
槍は横っ腹に刺さった。

痛いな。アヤはこれを喰らったのか。うずくまるのも無理はない。だが僕はヒーローだ。
これくらいじゃひるまないさ。

刺されたまま、僕はコボルトの腹に剣を突き刺す。これは深く入ったな。
僕はうずくまってるアヤに向かってしゃべる。

「アヤ、ヒーローになるんだろう?ずっとうずくまってるのかい?」

腕を押さえてふるえていたアヤの動きが止まる。そしてアヤは顔を上げた。
その口元は笑っていたな。絶対に。

「そうだね。ヒーローはこんなんじゃ諦めないよね。よし、くらえー!」

刺さった。コボルトの背中に。コボルトは先ほどよりも大きな悲鳴を上げた

「ギェェック」

だが、そのまま槍を振り回しアヤと吹き飛ばす。でも大丈夫みたいだ。
コボルトはそのまま僕に槍を突き出す。盾は皮で出来ているから何度も防げない。剣で防ぐしかない。

金属同士が当たり合う嫌な音が響き渡る。だが僕は笑っていた。振りが大きすぎるのだ。

見えた。僕はそう確信した。そしてコボルトのみせた隙を狙い、コボルトの腹をおもいきり斬りつけた。

ザジャッという景気のいい、でもどこか気持ちの悪い音がした。

「グェッェッェ」

コボルトの声はかすれだしている。きっと、もう少しだ。

800 名無しさん :2009/07/07(火) 01:07:01 ID:jbYrN6dg0
「うりゃああ!!!」

気合を入れ直すため、大きく叫んでアヤが突っ込む。

同時に、僕もコボルトに向かってかけだした。
アヤにリーチは敵わないので、アヤの攻撃した後、僕がとどめを刺すためだ。

アヤがコボルトに槍を突き出す。


よし!これで倒した!
勝利を確信した僕は走りを止める。



ズブシャッ
槍が深々と腹に突き刺さり、そのまま身体を貫通する。


飛び散る血。倒れる身体。地面に落ちるドサッという音。









なぜだ。









 な ぜ コ ボ ル ト は 立 っ て い る ?



「グッ…………グブ………グフッ…………」

やられたのはアヤだった。大きな血を吐いて、倒れている。
お腹のあたりからはどくどくと血があふれ出し血だまりを作り始めていた。
やられそうになっていたコボルトは
非常に怒っていたんだ。だから起きてすぐに攻撃態勢を取った。
そして僅かに勝っているその槍のリーチを利用して
アヤよりも先に槍を刺すことに成功したんだ・・・・・・・
怒っていたコボルトは渾身の一撃をアヤの腹部に・・・



僕の性だ。あのとき、コボルトが倒れたときにとどめを刺していれば
アヤはやられなくてすんだんだ。僕の性だ。

僕の性だ。僕が責任を取らなければ。

コボルトめ・・・・許さない。絶対に許さない。ゆるさない、ゆるさない、ユルサナイ。
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ



僕の中の何かがはじけた。いや、切れたのか。

「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!!」

自分でもわかる。今までにないほど大きく叫んだはずだ。

後先も考えないで僕は、コボルトに向けて大きく剣を振り上げて、突撃した。

「死ね!死ねよおおおおおおおお!!」

なんだろう。力が溢れてくる。何が起きた?何があった?

その後の戦闘が終わるまでのことは覚えていない。

我に返ったら、一度しか攻撃してないはずのコボルトが傷だらけになって死んでいて
横に血だらけのアヤが倒れていた。でも、目を開いて、此方を向いていた。

801 名無しさん :2009/07/07(火) 01:10:05 ID:jbYrN6dg0
「アヤ、大丈夫かよ!」

大丈夫なわけがないのに、僕はそう叫んでアヤの側に駆け寄った。

アヤは目だけを僕の顔に向けて、かすれて殆ど聞こえない声で言葉を紡ぐ。

「凄いね……あん…たは。たくさ…………んに分身して
攻撃する技なんて…………どうして隠し持ってたの……?」


何を言ってるんだ、分身技なんて僕は使えない。
やはり傷だらけの性で視界がぶれていたのだろうか。

「私……………死んじゃうのかな…………
バカなこと言わなければ良かった。ヒーローになりたいから
モンスターを倒してみせたいなぁ……………なんて。」

アヤは諦めたように話し続ける。
だが僕は諦めていない。何か、何か無いのか………
何か………

そう思って、僕は急いで袋の中をかき回す。

こつん、と指に当たる何か。
なんでもいい、なんでもいいんだ。頼むから何かアヤを助けられる
アイテムが………
わらにもすがる思いでそのアイテムを見る。




昨日、たった一つだけ買ったラージポーションだった。

キャンディーなんて比べ物にならないくらい回復してくれる。

これなら…………これならアヤが助かる!!


「アヤ、これだ、これを飲むんだ!苦いけど我慢しろ!!」

アヤにポーションをもたせる。 
だが、手に力が入らないのか、そのポーションを口に持っていくことはない。

僕はすぐにポーションをとると、口に持っていき飲ませようとする


ちくしょうっ、手がふるえて全く入らない………
ちくしょう、ちくしょう!!

何度やってもうまく行かない。手のふるえは止まってくれなかった。
このままじゃポーションが全部、口に入る前にこぼれてなくなってしまう。
どうすればいい、どうすればいい。





仕方がない。

僕は決心した。アヤのためだ。
僕はポーションを自分の口に持っていく。
そして全て、口の中に含んだ。







全く、ファーストキスを奪った罪は重いぞ、アヤ


僕はポーションを口に含んだまま、アヤの顔に自分の顔を近づけ、
唇を合わせる。感触なんて堂でも言い。今はアヤの命が最優先事項だ。


ポーションをアヤの口の中に流し込む。大丈夫、ちゃんと入っている。

口を離すと、ポーションを口からコボしてしまうかも知れないので
唇と唇は離さない。


アヤの喉仏が動く。しっかりと飲んでいる証拠だ。


そして、全部飲んだことを確認した僕はやっと顔を離した。

802 名無しさん :2009/07/07(火) 01:14:20 ID:jbYrN6dg0
息は整ってきた。ポーションは凄いな。
まだ動かないアヤに様子を聞いてみる

「どうだい?大丈夫?まだ痛いか?」

アヤはゆっくりと顔を此方に向けると
ほほえみ、そして先ほどのかすれた声ではない、いつもの声でしゃべる

「もう大丈夫。凄いよ、お腹の傷も塞がったみたい。
でも、まだちょっとじんじんとした痛みが残っているかな。」

しゃべっている後半には苦笑いに代わっていたアヤの表情が
今度は真顔に代わる。

「ありがとね。やるじゃん。いつもあんな感じなのに、やるときゃやるんだ。
見直しちゃった。」


やばいな。面と向かって褒められると恥ずかしい
僕は顔を背けて話す。

「さ、さて。コボルトは倒した。僕らはヒーローだ。
さぁ、報告しにかえ………ろ……う……?」

ドサッ


「あ………あれ…………やべ、腰から下が動かない」

気が抜けてしまったか。僕の腰から下は完全に力が抜けて
動かなくなってしまった。

「アヤ…………ごめんね。ちょっと、僕は動けそうにないや」

素直に謝罪の言葉を述べると綾は首を振って返してきた。

「いいよ、私もまだここにいる。つかれちゃったみたい。」



その数十分後、偶然やってきた大人に発見され、
使節に連絡が行った。そして危ないと言われてたのにコボルトと
闘ったこと、そして親の物を勝手に盗んだことでこっぴどく叱られた。
だが、他の奴らには「モンスターを倒した」として、
凄い凄いといわれて、僕たちの目的は達することが出来た。
僕らはヒーローになったのだ。モンスターを倒したヒーローに。

そしてその夜、親父の説教を受けて、なんとか解放された。
でも、親父は、コボルトを倒せたことを褒めてくれていたようにも見えた。

親父は部屋を出たみたいだ。。でも僕はまだ立っている。

ふと、目の前の剣を見た。タウンソードだ。
特に理由もなく、持ち上げようと試みる。





簡単に持ち上げることが出来た。そう、本当に簡単に。
一度置いて、そして戦闘を思い浮かべながら持ち上げようとする。

それでも、持ち上げることが出来た。
なんだか、自分が強くなったように感じて、とても嬉しかった。

次の日、アヤからも同じ事を言われた。アヤも持ち上げられなかった槍が持ち上げられたらしい。



ちなみにその後、アヤの言っていた分身技というのは
どんなに頑張っても出すことが出来なかった。
この技がなんなのか分かったのは、冒険者になって鍛練を積んでからだ。
なぜあのとき、僕が使えたのかは分からない。でも、きっとアヤが
攻撃を受けたのが原因だと想う。僕は間違いなくそう思ってる。

803 名無しさん :2009/07/07(火) 01:17:10 ID:jbYrN6dg0

「あの日」   

そう、僕が初めてモンスターと闘った「あの日」
きっと、その日が、僕の人生を決めたんだ。

「ちょっと、なにやってるの?速く時の森にいこうよ!!」

僕の後ろから話し掛ける女性の声。
振り向くと美しい女性。
全く、前髪のメッシュは相変わらずだな、アヤ。
昔のことを思い出していたのに、無粋な真似をするやつだよ。
あのとき、大けがをした女の子はこんなに美しくなったのか。
改めてそれを実感した。

「はいはい、分かってるよ。今日もペアハン頑張りますか!!」

僕はあきれた声を出して立ち上がり、アヤと並んで狩りにでかけた。










と言うわけで初めてのRS小説は終わりです

一応説明すると、最初に持ち上げられなかったタウンソードを
最後に持ち上げることが出来たのは、コボルトを倒してレベルアップしたからです。
コボルト一匹でそんなにレベル上がらない!とかは
小説だからってことで納得していただけると嬉しいです。
あと、アヤの言っていた「分身技」っていうのは
パラレルスティングのことですね。
文章は、「僕」がずっとしゃべっているので
大人っぽいでも子供っぽい ってのを意識しました。

804 ヒカル★ :削除
削除

805 名無しさん :2009/07/07(火) 14:40:44 ID:OOUTumhw0
w

806 名無しさん :2009/07/07(火) 14:47:19 ID:4rvjIaQc0
w

807 ◇68hJrjtY :2009/07/08(水) 06:26:17 ID:4iRAnLHg0
>803さん
初投稿、ありがとうございます!
5歳と6歳という年齢の子を主役と扱ったのは初めて読んだような気がします。
コボルト相手に初々しいながらも本人たちには必死そのものの戦闘シーンが
なんだかホントにLv1そこらの若葉だった頃の自分と重ね合わせてしまいました(笑)
後日談、といいますか、成長した二人の姿で締めくくられているのも嬉しいラスト。
またの投稿お待ちしております♪

808 蟻人形 :2009/07/11(土) 21:38:01 ID:MpOwosug0
今晩は、蟻人形です。

続きの前に、68hさんに感想を頂いて初めて気付いたことですが、前回(と今回)の話は回想のつもりで書いていました。
半年前に起こった一度目の決闘が冬で、それが終わった直後――という設定を考えていましたが、読み返してみると確かに自分でも前後の繋がりがよく分かりませんでした。
ⅠからⅣまでで季節に触れてなかったのに、いきなり雪とか降らせてしまったり。分かり辛くて申し訳ありませんorz

今回、新たに一話で四人の名前を出しました。
名前を三人称から一人称に変えるとき、『どれがどの人物の名前なのか』ということには注意を払ったつもりですが、正直なところ上手く書けていないような気がしています。
なので、その部分を特にご指摘頂けるとありがたいです。

809 蟻人形 :2009/07/11(土) 21:39:35 ID:MpOwosug0
  赤に満ちた夜

 0:秉燭夜遊

 Ⅰ >>577-579 (七冊目)   Ⅱ >>589-590 (  〃  )   Ⅲ >>604-607 (  〃  )   Ⅳ >>635-636 (  〃  )   Ⅴ >>689-690 (  〃  )


 Ⅵ … Lit Light Lives Ⅱ


 元々談話室に置かれていた十六の椅子。
 異国から仕入れた生地を使った高価なモノ、背もたれの後ろから新たな枝が伸びているような木製の生きたモノ、軽金属が器用に加工されたメタリックなモノ……。
 メンバーはそれぞれ自分専用の椅子を自由に持ち込み、いつでも好きなときに和気藹々と団欒を繰り返していた。

 上階で一本の蝋燭に明かりが灯ったとき、談話室には二人のメンバーがいた。
 入って最初に気付かされることは、椅子の在り様と数の変化だろう。
 室内には約半数の椅子が残っていたが、その中で無事でいるものはほとんどなかった。
 原型を留めず潰された椅子が少なくとも二つ以上はあり、他の五つの椅子のうち二つは部屋の隅に倒されたままで、一つは腰を下ろす部分が痛々しく歪んでいる。
 部屋には長方形の大きなテーブルと円形の少人数用テーブルがあるが、相方である椅子を失い広々とした空洞が部屋の空気をより一層重いものに作り変えていた。

 辛うじてではあるが、たった一箇所だけ生きている場所があった。
 小意地を張って地べたに胡坐を組む男と、肘掛が壊れた椅子に腰掛けた女。まるで何かに押し退けられたように、二人は広い部屋の隅にいた。
 会話は先程から途切れ途切れで、今も男が静けさを振り払おうと重い口を開いたところだった。
 短くまとめられた提案に対し、女はほとんど間を置かずに気のない返答する。
「ムリムリ。使えないだろうし、やるだけ無駄よ。余計なの入れたって、あいつは的にもしてくれないと思うけど」
 新しく頬に大きな腫れを拵えた男は内容を曖昧に小さく唸った。
「だけどよ、五人だぜ? 残ったのがたったの五人だ。しかも揃って攻撃メインで、支援タイプの奴は全滅と来てる。どっかから引き抜くしかねぇだろ?」
「それはあってるけどさ、新米なんか引っ張ってきたってどうにもならないじゃん。大体、訓練と実践が違うコトくらい分かってるでしょ?」
 女は包帯を厚く巻いた右手をひらひらと動かしながら言った。
「ああ、それは知ってる。俺が言いたいのは、水属性が使える奴を鍛えること前提で連れてくるのはどうだってことだ」
 真面目に説明する男だったが、女はしっかり取り合おうとはしなかった。体を前後に一度揺らし、元に戻ってから肩を落とした。
「魔力がどの色でも大差ないよ。あの強さだったら……」
 もう反論の言葉は出てこなかった。魔力の色、つまり属性の相性でどうにかなる相手でないことは男も十分理解していた。
 次第に視線が落ちていく女につられてか、男も意識せずにうなだれていく。会話の種が底を突き、微かな温もりさえ急速に失われていった。
「あーあ。どーしようもねぇのかぁ……」
 最後の男の呻きは、二人の耳に長く残った。

810 蟻人形 :2009/07/11(土) 21:40:22 ID:MpOwosug0

 談話室の戸が開いた。
 二人はある女性を連想して入り口を見上げたが、立っていたのはその人ではなかった。厚いコートを着た男が長髪に乗った雪を払い落としながら部屋に入ってきた。
「よっ。なんだい、こんなに暗くして」
 扉の向こう側から漏れる明かりが、外の寒さで赤みがさした顔を照らし出していた。男は何も言わずに頭を垂れたが、女は再び上体を起こした。
「オウバ、おかえり」
 そう挨拶はしたものの、女も立ち上がりはしなかった。
「レナン一人? マッチが擦れないなら他の誰かに頼めばいいのに」
 オウバと呼ばれた男はポケットの中のマッチ箱を探った。対して女は今度は手の甲のみに包帯を巻いた左手を振った。
「大丈夫、左は使えそうだから。それに一人じゃないよ」
 そう、と適当な相槌を打ち、オウバはテーブルの上の燭台へと歩みを進めた。その途中で、オウバはあることに気付いた。

 不意に唯一の足音が止まった。しかしオウバはまだ蝋燭の傍にはいない。立ち止まった彼の視線が部屋の逆側に倒れている一つの椅子に注がれていた。
「俺の椅子も……壊していったのか?」
 信じられないと言わんばかりの声が響いた。そのときのレナンの表情が暗がりに隠されていたことは幸運だった。
「ン……。巻き添えになったっていうか、その……」
 レナンは続きを話すことを躊躇っている様子を見せた。だが、事態は彼女が新しい言葉を組み立てるのを待たなかった。
 ずっと俯いていた男がようやく顔を上げた。彼の目はまずオウバを捉える。そこには紛れもない敵意が強く込められていた。
「俺が蹴り飛ばしたぜ。オウバ」
 素早くレナンの影が男からオウバへと向き直ったが、当人たちは気付きもしない。何故かオウバは何も言わなかった。
 事態を飲み込んだレナンは、オウバではなく男に魔力を送ることを選んだ。少しでも力を持つ者なら誰でも使える会話技術、『耳打ち』による伝達だ。
『ちょっとエニサ、今のはまずいよ。仕方なかったことだけど、壊しちゃったんだし……』
 耳打ちの内容は第三者に漏れることはない。
 彼女はオウバへの謝罪を勧める意を含めて耳打ちをし、男はそれを読み取った。
「で、謝れってか? 冗談じゃねェ」
 なんと返答は普通の肉声で突き返され、しかも男の口はまだ閉じなかった。彼はオウバを一層強く睨みつけ、続けた。
「お前さぁ、マジでズレてんだよ」

 レナンが男の名を叫び終える前に、オウバがレナンを呼んでいた。そのときの声はいつになく荒々しかった。
 あまりにもハッキリとした挑発を吹っかけられ、オウバも持ち合わせの少ない慎重さをかなぐり捨てていたのだ。
「黙っててくれ」
 特にその一言のあと、彼は絞るように喉から音を出した。
「エニサ、続けろよ。どういう意味だ?」
 頬を腫らした顔が更に歪み、そこからは憎悪の情さえ窺えた。
 互いにこれまでに溜め込んできた相手への不満が魔力に変わり、薄闇の上に二つの輪郭を黒く濃く刻み込んでいた。

811 蟻人形 :2009/07/11(土) 21:41:08 ID:MpOwosug0
 最初にエニサの魔力が一度小さく揺れた。
「まず火がからきしダメってのが論外。使えねぇ。土はいいとして、風が使えるくせにヘイストできないなんてありえねぇって話よ」
 段々と声が低く大きくなり、黒をバックにうねる魔力の動きも激しくなっていく。エニサは体を前に乗り出し、握りこぶしで床を打った。
「そうだ! ウィザードのくせに支援できないでどうすんだ? なんで土に拘ってるのか知らねぇが、ちったぁ自分以外のことも考えろ――」
「で!? 自分はどうなんだ! 色のある魔法を一度でも使ったことがあったか!?」
 オウバも負けじと声を張り上げた。エニサは僅かに、しかし確かにたじろいだ。鋭く切り込んだ反撃はエニサの弱点を見事に突き当てていた。
 相手の怯みを見逃さず、オウバは切り口をより深く攻めた。
「魔力を元素に換える方法すら知りもしないくせに、偉そうにしてりゃ世話がないな!」
 まるで電気が走ったようにエニサが立ち上がる。
 やや遅れてオウバも杖を構えたが、そのとき既にエニサは彼の視線の先から消えていた。

「っヅぅ!」
 硬い床が奇妙な声を発する。正確には、そこに体を重ねたエニサの声だが。地面に立っていたのは彼が倒れる前後で変わらず二人だった。
「まっったく!! どうして顔合わせるたび喧嘩吹っかけるの!?」
 起立はエニサ一人の行動ではなかった。新調した履き慣れない靴ではあったが、レナンの脚は万全の状態であった。
「……てっ、てめ……っ」
「オウバもよ! ガキじゃないんだから、いい加減場所と状況考えなさいよ!」
 レナンは地べたから聞こえる呻きを無視し、呆気にとられた面持ちのオウバに左手の人差し指を突きつけた。
 面食らったオウバだったが、一つ一つの動作に不満を散りばめつつも大人しく杖を置いた。
 談話室が完全に静まったとき、入り口の戸が再び開いた。

「あれ、どしたの? 三人とも、こんなに暗くして……」
 今度こそ二人が待っていた女性だった。その女性は扉を大きく開け、廊下の光が部屋の中に入るように角度を調節していた。
「誰かマッチ持ってない?」
 女性が暗がりの中の三人に尋ねた。
「あぁ、ダイジョブ。私、左手使えるから」
 レナンが人差し指を立てると、宙に浮く形で小さな火が生まれた。オウバは完全に機嫌を損ね、その光景が出来るだけ視界に入らないよう努めていた。
 光が三人を照らし出した途端、戸口に立つ女性が目を見開いた。
「うわっ、エニサ鼻血っ! 鼻血ヤバいよ!」
 他の二人が見ると、エニサは這いつくばったまま鼻を押さえていた。実際彼はオウバと違い、レナンの火を気にしている余裕などなかった。
「鼻っ……レナンッ! 鼻! 鼻折れたぞっ!」
 指の隙間から漏れた血の雫が、床の赤い水溜りに飛び込んだ。その量を見る限り相当の重傷だと判断できる。
「そんなはずないって。多分強く打っただけでしょ」
 燭台から燭台へと指を動かしながら、レナンは冷静に反論する。次に彼女はその場に突っ立ったままの女性に向き直った。
「シベル、エニサの鼻診てくれない? 火ィ点け終わったら代わるから」
 言い放たれた一言によって、頼まれた女性の顔に動揺と不安が浮かぶ。
「でもあたし、手当てとか全然できないよ……」
「いいのいいの、ただ死なないように目の前で見てるだけで。そもそも明かりがないと見えないからさ」
 恨みがましい表情を包み隠す余裕もないほど出血に慌てふためくエニサの様子を、レナンはえもいわれぬ顔で眺めていた。
 しかも踵をめぐらす一瞬、彼女の口元が小刻みに震えていた。
 それらは新たに部屋に入った女性――つまりシベルに対し、レナンの思考を悟らせるのに充分な役割を果たしていた。
 とはいえ、不機嫌そうに押し黙っているオウバや己との戦いに臨んでいるエニサまでが気付いたかどうかは言うまでもない。
 シベルは呆れるというよりは困惑した表情で、テーブルの上に置いてある燭台とちり紙を掴み、エニサの元に駆け寄った。

812 蟻人形 :2009/07/11(土) 21:42:07 ID:MpOwosug0
 蹲るエニサの前に屈み込んだとき、シベルは思わず息を呑んだ。火が映し出したエニサの顔は青白く、血糊が彼の両手と鼻の周りをべっとりと汚していた。
「レナン! レナン!!」
「わかってる、わかってる。終わってからね」
 ほとんど叫ぶようなシベルの声にも、呼ばれた本人は気楽そうに対応した。
 苛立っていたオウバまでが、差し迫った声色が気になったのか、はたまた好奇心からか、少し距離をおいてエニサを盗み見ていた。
 遂にシベルは唇を強く結んだ。燭台を床に置くと、震える手をエニサの顔に近づける。
 当然の権利として、エニサは大きく身を引いた。
「エニサ」
 名を呼んだ直後、シベルは一番若い火を振り返る。
 足音が不自然に長く途絶えたことが原因であり、一瞬の間を置いて、床と靴の擦れ合う音が戻った。
 彼女が視線を戻すと、エニサは一段と後ろへ下がろうとした。
「診るだけだから。血、止めないと本当に危ないかもしれないよ」
 シベルは再び手を伸ばしたが、壁に映ったエニサの影はもう逃げる素振りをしなかった。
 真っ赤に染まった諸手を顔から外し、大量のちり紙で血を拭き取ると、出血の大もとである鼻が全貌を露にした。
 いよいよそれにシベルの指が触れようかというところで、突然高い声が上がった。
 その後数秒間にわたって耳を劈くような悲鳴が続き、嵐が過ぎ去ったときには、謝罪をするシベルと転げまわるエニサ、笑みを漏らすオウバと笑い転げるレナンがあった。

「ウ……ウぅぅぅ……」
「ごめん! ごめんなさい!」
 エニサが唸りながら体を起こす間もレナンの馬鹿笑いが部屋一杯に響いていた。シベルは彼の両肩を抱え、動作を助けていた。
 立ち上がったとき、彼の顔が訴えるものはシベルへの怒りでもレナンへの憤りでもなかった。目はシベルの右手に釘付けとなっている。
 顔つきを変えたのはシベル一人だった。
 結局、彼は気持ち視線を落としながら口を開いた。鼻が腫れているせいで、はっきりとした発音にはならなかった。
「ヤケド、まだ治ってなかったのか?」
 笑い声のボリュームが一瞬で下がり、咳き込む音が場を引き継いだ。
 それと同じくらい唐突にシベルの謝罪が止まった。ややあってシベルが首を縦に振った。
「……ごめん」
 彼女は同じ言葉を呟いた。しかし、全てが――まったく異なったものになっていた。
 エニサが一番近くにあった椅子を引き、彼女を座らせた。
「あの、ゴメン。俺も悪かった……」
 いつの間にか、レナンも二人の傍に立っていた。非常に似つかわしくない、まるで自分が罵詈雑言を浴びせられたかのような面持ちだった。
「イ゙ッッ?!!」
 声を噛み殺したのはエニサ。その向こう脛を思い切り蹴飛ばしたのはレナン。
 まさに泣きっ面に蜂、最後にエニサはレナンからの耳打ちを受け取ることになった。
『この、マヌケっ!』

813 蟻人形 :2009/07/11(土) 21:43:07 ID:MpOwosug0
 部屋中が事の行く末を見守る中、レナンがシベルの傍にそっと寄り添ったときだった。三人の耳にしっかりとした声が届いた。
「大丈夫」
 全員の視線がシベルに注がれた。
 直後シベルは決起し、仲間たちに向き直る。彼女の表情には強い覚悟が表れていた。
 それを見たレナンの顔がパッと明るくなった。
「そうよ! あたしのせいでこうなったんだから、あたしが一番頑張らないと!」
「ちがう、ちがう」
 レナンがシベルの肩に腕を回しながら楽しげに訂正する。
「これはみんなのせい、だからみんなでガンバらないとねっ♪」
「そうだぜ、おい」
 鼻の下を腕で擦りながら、エニサが同意を示した。
 そうなると、自然と皆の視線は一人に集まる。オウバもテーブルから腰を下ろした。
「あぁ、正論だ」
 オウバの一言を聞いて、遂にシベルも笑顔になった。
「よっしゃ! オウバァ! 表出ろよ!」
 突然エニサはそう叫ぶと、テーブルの上に放置されていた弓と矢筒を引っ掴む。
 オウバもニヤッと口元を持ち上げ、エニサの行動に応じて杖を手に持った。
「……オッケェ!」
「ちょ、ちょっと!」
 予測していなかった二人の行動に、シベルが慌てて間に割って入ろうとした。
 一方、まだ暗かった部屋で何度もそうしたように、レナンはニッコリ微笑んだ。
 その後――言葉は切れ、悲鳴が残る。
 残った一つのテーブルと二つの椅子、そして幾つかの蝋燭が巻き添えとなり、それは決着することとなった。


 怪我人に対して無力であるシベルは、先の結果も相まって、レナンが働く様子を横で黙って見ている他なかった。
 じめっとした雰囲気を醸し出す男二人。彼らの傷を看るレナンは不自然なほど生き生きとしている。
 原因に心当たりのあるシベルは、それを聞かずにはいられなかった。
『レナン』
 エニサの鼻を治療するレナンに耳打ちで呼びかけると、彼女は目線だけをシベルに向けた。
『なに?』
『もしかして、なんだけど。あたしが二階から下りてくる前に、またやった?』
 そう尋ねた途端、レナンの指がはたと止まった。
レナンは首を斜めに傾げて髪を顔の前に流し、エニサの視線を経ったことを確認してから、さっきと同じようにニッコリと微笑んだ。
 訝しむエニサとレナンを交互に見ながら、シベルは短い髪の上から頭を掻いた。
『あのさ、いい加減二人の喧嘩を煽るのはやめにしたら? 性格悪く見えるよ』
『うぅん……分かってるけど、一度味を占めたら止められなくって。シベルもやってみない?』
 レナンが更に首を傾け、シベルに向けて軽くウィンクした。シベルは柔らかく微笑み返した。
『んー、考えとく』
 つれない返事に少し残念そうな面持ちで姿勢を正すレナンを確認してから、シベルは小さく溜息を吐いた。
 彼女の横顔に映った不安に気付いた者は一人もいない。
 空は灰色から黒色の雲に支配を譲り渡し、雪は風と共に夜の街を駆け抜けていった。

814 ◇68hJrjtY :2009/07/12(日) 08:12:38 ID:4iRAnLHg0
>蟻人形さん
続きありがとうございます♪
なるほど、戦いが終わってその回想…"少女"に惨敗した彼らが心と身体を休める時期。
でも、こんな時期の風景のほうが各登場人物に迫れる描写が見られて嬉しいです。
今回は蟻人形さんも仰るようにメインと思われる(?)登場人物の名前が判明してきましたね。
指摘要望の件ですが、私が読んだ限りでは人物の混同などはまったくありませんよ。
ぶっきらぼうなエニサ、しっかり者のレナン、エニサの好敵手オウバ、優しいシベル。
彼らがどんな物語の舞台に立って行くのか、続きお待ちしています!

815 DIWALI :2009/07/19(日) 11:18:05 ID:JDly1N7M0
お久しぶりです!まずはこないだのコメ返しから・・・

>みやびさん and 68hさん
正論掲げれば即ち正義・・・たしかに行き過ぎればそれは間違っているかもしれませんが、例の件では
正しいことを戒めの意を込めて言ってくれたんだと信じています。仮にそれを見てなかったら調子に乗って
話をとんでもない方向に曲げてしまってたかもしれませんし・・・自分としては陽気でファンキーなエロの
つもりでしたが、読み手さんのセンスなども考慮してさじ加減を調整していきたいですね。
励ましの言葉、ありがとうございます!!

816 DIWALI :2009/07/19(日) 11:51:18 ID:JDly1N7M0
>>738からの続きとなります。


「・・・・え?」

 すやすやと眠る幼女化したミリアを抱いていたラティナは唖然としていた・・・彼女の前に立っていたのは、一人の女性。
 上半身が裸で傷だらけの青年の肩を担ぎながら、そして彼と同じくらいの数の傷をこさえた、和服の美女がそこにいた。
 艶やかで美しい黒髪、雪のような白い肌に滴る紅の血・・・それがラティナ、いや、あやねの母だと気付くのに3秒も要らなかった。
 そしてその母、雪乃が肩を担いでいた青年がトレスヴァントだということを悟るのも同様・・・

「お、お母さん・・・それにトレスヴァントも?何があったの!?」
「実は・・・この子があやねちゃんの彼氏言うもんやから、ちょっと腕試しさせてもろたんえ?なかなかの上玉やわァ。
 "肉を切らせて骨を断つ"の真髄、しかと見せてもらいましたよって・・・あやねちゃん、ええ男見つけはりましたなァ」
「っ!!トレスヴァントに何てことしてくれてんのよっ、お母さん!?そうやって力づくで人を試すのやめてっていつも言ってるでしょ!?」
「あ・・・あぁ〜、ごめんね。私、強い人には目が無うて・・・ややわぁ〜、お母さん反省しとるさかいに」
「んもうっ、相変わらずなんだから・・・ねぇお母さん、この子をお願い。トレスヴァントと話がしたいの。」

 親指を咥えて眠るミリアを雪乃に預けると、地に伏しているトレスヴァントの元へとラティナは歩み寄る。
 大好きな人の元へと早足で歩み寄る彼女の瞳には、既に雫の塊が溜まっていた・・・それだけ、彼への愛が深かった。

「トレスヴァント・・・ねぇっ、わたしだよ?目を覚ましてっ!!」
「うっ・・・うぅ、その声・・・あや・・ね?あやね、か??」

 バチィンっ!!

 ラティナの故郷での名前を口にしたとき、彼の頬に衝撃が走った・・・!!
 既に振られていたラティナの平手、そして我慢できずに彼女の瞳から涙は静かに流れている。

817 DIWALI :2009/07/19(日) 12:17:45 ID:JDly1N7M0
「・・・・ぁっ・・・!!バカあぁっ!!」
「え・・・ど、どうしたんだよ・・あや・・・」

 何度も何度も、馬乗りするラティナの往復ビンタはトレスヴァントの頬を叩き続ける。そしてそれに比例して流れる彼女の涙。
 もはや零れる嗚咽を抑えることもできないほどに、ラティナは泣いていた・・・しかしその涙も訳あってこそ、その平手の意味も。
 それを理解できる程の脳みそを持っているわけでもなし、しかし本能でそれをトレスヴァントは理解し、肌で感じ取る・・・

「バカバカバカバカバカぁっ!!!わひゃっ・・・わひゃしはっ、えぅっ・・・もう故郷には、かえら・・ないもんっ!!ずっとずっと、ずっと
 トレスヴァントと一緒にっ・・・ふぁ、らひ・・・ラティナとして生きたいんだもんっ!!らから・・・もう"あやね"なんて呼ばないでぇっ!!バカあぁっ!!!」
「・・・!!・・・・ラティナ。」

 我が侭な子供が泣きじゃくるように、涙に濡れた彼女の泣き顔は彼の心を抉った。
 ここが自分の居場所だと、自分が彼女に必要とされていると、そう言いたいかのような言葉の雨・・・
 それはあの時の状況と似ていた。行為と裏腹な態度を責めて、そして泣きながら告白されたあの夜に・・・
 そしてその次に行うべきことは・・・アレしかなかった。

「ほぇ・・・?」
「あの夜と一緒だな。感極まって泣きじゃくるお前を、こうやって優しく抱きしめていた・・・そうだろ?」
「・・・っ、ねぇトレスヴァント・・・抱きしめて、わたしのこと、ぎゅって・・・して。」
「ああ・・・何度でも、何度でも抱きしめてやる、唇を重ねてやる、愛してやる。ラティナ、大好きだっ!!」
「わたしもっ・・・わたしも大好きよっ、死ぬまでずっと一緒だよっ、大好きだよっ!!!」

 地面に仰向けに倒れるトレスヴァントに跨るラティナは、間髪入れずに彼の唇へ自らのそれを重ねる・・・!
 口の中で柔らかい物が絡み合い、恍惚の海へと二人は沈んでいく・・・そんな二人を雪乃は微笑ましく眺めていた。

「ふふっ、若いってええもんやわぁ。そういえば私と旦那はんも、決闘の末に抱き合った思い出がありましたなァ、うふふ」
「んみゅ〜・・・ふぁあ〜、うにゅ?あれぇ、トレチュバントとラティナがチューしてうの〜!おばちゃん、あれなぁに?」
「(お、おば・・・!?)う、うふふふ、子供は知らなくてええこと・・・どすえ?(おばちゃん・・・年は取りたくないもんどすなぁ)」

「ん、ふぅっ・・・トレフヴァントぉっ・・・」
「ラフィナ・・・んっ」

 陽炎に燃える森の中、二人はその愛を深めあった・・・

to be continued.

818 ◇68hJrjtY :2009/07/20(月) 20:45:54 ID:4iRAnLHg0
>DIWALIさん
お久しぶりです♪続きありがとうございます。
本名の「あやね」ではなく、ラティナという名前を愛する人に呼んでもらいたい…
ラティナが健気でホントに可愛い。トレスヴァントの今後の恋路も安心できそうですね。
胸キュン(死語)で青春真っ只中な二人にまずは萌えさせていただきました(笑)
さてはて、他方面での戦闘のその後も気になりながら続きお待ちしていますね。

819 803 :2009/07/30(木) 15:49:08 ID:jbYrN6dg0
「ふぅー。今日はここら辺にしようか。」

あかね色に染まる空。気の抜ける声を出す烏たち。僕は美しい女性とのペアハンを終えた。
前髪にメッシュをかけた元気な女性の名前はアヤ。僕の幼馴染みだ。

「ふふ、アヤ。昔と違って強くなったな。コボルトと闘った日は大けがをしたのに」

昔初めてアヤと共に闘った日のことを僕はアヤに話す。
目の前の女性は顔を少し赤くし、口をとがらせて抗議をしてくる。

「あのときは私もあんたも戦闘のこと何も分かってなかったじゃない。速く忘れてよ」

確かにその通り、あのときは僕もアヤも戦闘のことを知らずに突っ込んだだけだった。
だがやはりあのときの出来事を忘れることは出来ない。何せあの日は僕の想い人と初めて………
いや、これを言うのはやめておこう。僕自身も恥ずかしいからね。あの時はただの友達だったからなぁ

そういえば。僕とアヤの大冒険はいくつかあったな。どんなことがあったっけ
そう想った僕はアヤに聞いてみた。するとアヤは少し考えた後に
頭の上に豆電球が浮かんだかのように手のひらをポンとたたき僕に話す。

「そう言えば、10才頃に初級戦闘指導があったときに凄いことがあったじゃない。
あのときは確かジュンとリアーナも一緒だったよね。」

そう言えばそうだな。確かあれは指導を受けるようになって1ヶ月位したときのことだったな───

これは小さな小さな冒険をした二人と、その友達が体験したほんのちょっとだけ大きな物語

820 803 :2009/07/30(木) 15:51:00 ID:jbYrN6dg0
「コボルトの隠された隠れ家での闘い」


「今日はこれで終了。皆、武器の使い方は分かったか?しっかりと素振りなどをするように」

とても暑い夏の日。10才になった僕と、9才になったアヤは他の皆と一緒に戦闘指導を受けていた。
今日はやっと授業が終わり家に帰ることになったばかりだ。

「んー。やっと終わったね。前に闘ったことあるからか、結構できるものだねー。」

アヤは背伸びをしながらそう話す。僕とアヤはコボルト騒動で武器の扱い方を覚えており
他の奴らよりも遥かにうまく闘うことが出来ていた。
実際、今日のコボルトを相手にした戦闘では、あのときのようなへまはせず、
先生の助言も有ってか無傷で勝利することが出来た。
アヤに、あのときのトラウマがあるかと思ったが、逆にそのときのやり返しなのか
いつもと違いかなりいきり立って槍を突き刺していた。ううん、恐ろしい。

それから数日たったある日、遥か北西にある、アリアンという町の生徒と
合同訓練をすると言う話があり、そしてついにその合同訓練の日になったのである

朝、いつもと違う今日は、早くから集合をかけられていた。
僕はかなり速く起きて集合場所についていた。
どんな生徒がいるか気になるなんてことは全くない。僕の実力を見せつけて優越感に浸りたかっただけだ。
他に集合している生徒は2,3人。暇でしょうがない。アヤがいると楽しいんだけどな。

そういえば僕のファーストキスはアヤにあげてしまったんだっけ。でも不思議と嫌じゃなかった。何でだろう。
でも言ってしまえばアヤはかなり顔も整ってるし、将来綺麗になるんだろうな。そしたら
好きな男の人でも出来て、僕との関わりは全くなくなってしまうのだろうか──

と、考えていると肩を叩かれた。驚く。なんてことは全くなく、ただ後ろを振り向く。
噂をすれば影。全く、考えるだけで影が来るなんて。

「お早う。まさか、ずっと早くからいたの?張り切りすぎでしょ。」

肩に手を置いたままもう片方の手を口元に持っていき笑うアヤ。
胸がドキドキするのは緊張している性だろうな。アヤ相手にこんな感情持つわけがない。妹みたいなものだ。
僕は笑うアヤにあきれた顔で返した。

「アヤこそ、いつもと違ってかなり速いね。張り切っていたんじゃない?」

まぁね〜と少しだけ苦笑いするアヤ。
その後しばらく他愛のない話をしているといつの間にか集合時間になり、他の生徒も皆集まっていた。
そして先生が前に出てきて話す。

「今日は、アリアンの子供達と交流会を行う。いつかアリアンに行くこともあるだろう。
そのときに一緒に闘ってくれる仲間がいるのは心強いことだ。しっかりと友達を作るように。」

そして、今日の予定などの話をして集会は終わり、ついにアリアンの奴らと顔合わせの時間がきた。

821 803 :2009/07/30(木) 15:52:49 ID:jbYrN6dg0
こんにちは「アリアンから来ました。今日は僕たちとの交流会を開いていただいてとても嬉しいでしゅっ。」

絶対に先生に台本を書かれたであろう堅苦しい挨拶を一番前にいる男子が喋る。あぁ、噛んじゃった。
さて、確か今日は、それぞれの方で二人組を組んで、二人組同士で4人PTを創るんだったかな。
僕はいつも通りアヤと組むとして、相手は一体どんな二人組になるんだろうか。
僕はやはり、アヤの誘いで二人組を組んだ。これで問題は相手の二人組になった。
全員が二人組をくみ終わると先生が真ん中に出てきて話す。

「さて、二人組は組んだか?そしたら今度は4人PTを組む。PT編成は自分たちで考え
自分たちでPTを創るんだ。これは色々な場所ですぐさま野良PTを創る訓練にもなるからな。」

その後、PTを組む時間が始まった。
攻撃職だけで固める奴、間違えて回復職だけの奴、色々といるみたいだ。
いつも二人でいた僕とアヤはPTを組むことに少し抵抗を感じており、PTを作れないでいた。
武器が他の皆より強い、つまりレベルの高い僕らに色々な奴らが話し掛けてきたが
全て断ってしまっていたのだ。全く、これでは将来ソロかペアハンしかできそうにない。
まぁアヤとはPT組めるようになってもペアハンをたくさんするんだろうが。アヤに好きな人が出来なければ……だが。
そんな中、一人の男子に話し掛けられた。
杖を持っているからきっとウィザードなんだろう。少し長めの髪をした気の強そうなつり目の少年だ。

「おい、お前。レベルが高いからって偉そうにするなよ。レベルよりも装備に付いたオプションなんだからな。」

腕を組んで、偉そうに話し掛けてきやがる。なんだこいつは。ちきしょう。
と、その少年の後ろからもう一人、今度は女の子が出てきた。

「先生に言われたことそのまま言ってるなんて、お子ちゃまねぇ。」

また偉そうなのが出てきた。持っている物は………ゴムが付いてるからスリングなんだろう。どう考えても二股の木の枝だが。
これまた少しだけつり目の、どこかのお嬢さんなんだろうか、上品な服をきている。
笑いながら冷やかすその少女の方を少年は振り向いてにらみ怒鳴る。

「うるせぇリアーナ!先生が言ったなんて証拠はあるのかよ!俺の知識を見せてやったんだぞ!」

少女の名前はリアーナというのか。いかにも上品そうな名前だ。名字とかはきっと長ったらしいんだろうな。
エレクセント・シュヴィナールとかそんな感じに決まっている。エレクセントはミドルネームなんだろ。Eとかで略しちゃうんだきっと。
少女は怒鳴る少年に全く動じることなく更に冷やかす。

「ふふ、本を逆さまにして、いかにも分かってる風にうなずいてるやつがよく言うわよ。自称天才のジュン君。」

少年はジュンか。アヤと同じで少しボルティッシュ側の血を引いた人間がいるのだろうか、そっちでよく使われる名前の付け方だ。
少年は少女の言葉に反論できずにうなっていた。だがやがて此方を向き

「お前ら、さっきから断ってばかりだな。PT組んだことがないって落ちだろう。しょうがないから組んでやるぜ。」

と又上から目線でいってきた。すぐさま反論してやろうと思ったが、運の悪いことに先生がやってきて

「おぉ、最後のPTが組めたか。よし、それじゃぁ今日は皆が創ったPTで狩りだ。あまり遠くに行くんじゃないぞ!」

といって、PTを組むことになってしまった。タイミングが悪いんだよ、カス先公が。
そのまま解散となり、たくさんの4人PTは思い思いの場所で狩りを始めたようだった。

822 803 :2009/07/30(木) 15:54:51 ID:jbYrN6dg0
「ふん、お前ら、こんなぬるいところで闘おうだなんて想ってないだろうな?」

ジュンが腕を組みながら言ってくる。なんてムカつくやつだ。

「そんなわけないでしょ。私達は最初からコボルト達のアジトの洞窟に行こうと思ってたんだよ」

っと、アヤがいきなり横から顔を出して喋る。そう言えばさっきはずっと反応がなかったな。
肩がふるえている。よっぽど怒っているんだろうな。
それに対しジュンの横にいるリアーナが返答する。

「確かもう少し西の方にある洞窟だったわね。確かにここよりも強いコボルト達がいるわ。いいわ、行きましょう。」

リアーナはジュンと比べてまともな感じだ。いや、こいつもかなり偉そうにしてる。ジュンが異常なんだきっと
そう思っているとジュンが僕らの方を向く。何事かと想っているとこう尋ねてきた。

「そう言えばお前らの名前を聞いていないな。俺らの名前はもう知ってると想うが、俺がジュン、こいつがリアーナだ」

僕とアヤは簡単に自己紹介をして、4人で洞窟の中に入っていった。

洞窟の中、普通のコボルトよりも強いというのは本当だった。しかし、腕に自信のある僕は
だから簡単に敵を蹴散らすことが出来た。
しかし一つ問題があった、4人PTと言うのは形だけ、殆ど二人PTが二つという状況だった。
連携もしないし、何か指示をしあうわけでもないし、一緒の敵を倒すわけでもなかった。
それどころか、倒す目標の敵を同じになってしまい、喧嘩してしまったりもした。

「これは俺が先に目をつけたんだ!他の奴を攻撃しろよ!」

「何を行ってるんだよ。アヤが先に目をつけたんだ。だから僕らが攻撃する権利がある。」

今想えば、間に立たされたグレムリンはたまったもんじゃなかっただろう。
両方に攻撃され、そして無惨な姿になり、それでも身体を両方から引っ張られていたのだから。

アヤとリアーナは気があったようだった。いっちゃ悪いけどアヤもかなり偉そうだからな。何か通じる物があったのだろうか。

「子供よねぇ。ジュンなんて、昔からああなの。いっつも格好ばかりつけて、本当は格好悪い。」

とジュンを見つめてあきれ顔で話すリアーナ。

「そうなんだ。でもね、あいつは格好悪くないんだ。本当に格好いいんだよ。頼りになる。
あいつがいなきゃ私は死んでたもの。昔ちょっとあった出来事でね。かなり恩義感じてるんだ。
私はね、あいつのことが──」

後は聞こえなかった。横の野郎がうるさいからだ。

「ちきしょう!死にやがった!お前の性だぞ!!」

なんで僕の性になるんだ。理由を教えてくれたまえよ。意味が分からない。
もう狩りなんて出来る状況じゃない。そろそろ集合の時間が迫ってきていた。

823 803 :2009/07/30(木) 15:56:31 ID:jbYrN6dg0
「ちきしょう。お前の性で全然狩れなかった。」

壁を殴りながら怒鳴ってくるジュン。何で僕の性なんだろうか。突っかかってきたのはそっちなのに
と、壁を殴りながら歩くジュンがいきなり転んだ。何かに脚を引っかけたようだ。

「いってぇ!ちきしょう!なんなんだよ一体!」

頭を上げ、自分の足元を見るジュン。アヤとリアーナも駆けつけてきた。
ジュンは足下の物体を見て、目を丸くしていた。

「なんだこれ?光ってる石だ。原石や天球の一種か?にしては形が変だな。」

原石や天球というのは、確か石に不思議な力が込められており、撫でることでその能力を解放する石のはず。
だが原石や天球は形がある程度決まっている。だがこの石はそれらと違い、ひし形の形をしていた。
妖しい光を放つそれはなんだか引き寄せられそうになる魅力を感じる。

「一体なんだろうか。ちょっと調べてみる。」

僕はそう言って、石を拾った。熱いわけでもなくかといって冷たいわけでもなく。
光っているから熱いと想っていたのだけど。でもかなりスベスベしている。
そうして4人で石を眺めていた。

すると、突然石がビカーッと光る。
洞窟の暗闇になれていた僕らはまぶしさに絶えられず、目を腕で覆った。

「うわっ!眩しい!!」

僕は想わずそう叫んだ。アヤやリアーナも悲鳴を上げている。ジュンはどうでもいい。
何とか落ち着いたところで、何が起こったのか、腕をずらし、石のことを見てみる。
すると、石は、一つの光の筋を放っていた。
その筋は洞窟の壁に向かってのびている。いったい何なんだ?

と、石の光が弱まっていく。細めていた目を徐々に大きく開けていく。もう大丈夫だ。






「いったい何だった……ん…だ…?」

言葉を最後までしっかりと放つことが出来なかった。なぜなら今の言葉を喋っている途中に
光の当たっていた壁の場所が「ゴゴゴゴゴ〜ッ」と音を立てずれて雪、大きな道が開けたのだから。

「何これ…………隠し扉なの?」

全員が沈黙する中、最初に言葉を発したのはリアーナだった。
唖然とした表情で言葉を発している。

「隠し扉みたいだね。でも一体どんな技術が………さっきの石は一体…………」

と、アヤが僕の持っている石を見る。すると、なんとさっきの光を発した石は
僕の手の中で勝手に崩れていった。粉々に。

「く、くずれた。勝手に。一体どうなっているんだろ?石といいこの道といい。」

そういっていると、なんとジュンが開いた道に入ろうとしている。
それを見た僕はあわてて制止する。

「やめろって!何があるか分からないんだよ!ダメだって!危ないって!」

ジュンは足を止めて僕の方を見る。そしてニヤリと笑いこう話した。

「何言ってるんだ。この道を見つけたのは俺らが初めてかも知れないんだぜ?中を見て他の奴らに自慢するんだ。」

そういって中に入って行ってしまう。確かに中で何か見つければ自慢できるかも知れないけど…………あぁもう!

「アヤ、リアーナ!ここにいたってしょうがない。ジュンは先に行ってしまったんだ。行こうじゃないか」

二人の方を見て蒼叫び、ジュンの後を追いかける。これでジュンが死んでたりしたら後味が悪いからね。
アヤはため息をついてやれやれと両手を上げ、ゆっくりとついてくる。
リアーナは呼び捨てにされたことに怒っているのか腕を振り回している。ジュンは呼び捨てだけど、僕はダメなのか?
こうして、僕らは非軽石によって開いたその道を、先に進んでいった。
コボルトにだけ分かる文字で「ゲリブの安息所」と書かれていたのが分かるはずもなく……………。

824 803 :2009/07/30(木) 15:59:03 ID:jbYrN6dg0
僕らは先に進んだ。ジュンに追いつき、僕、ジュン、リアーナ、アヤの順番で先に進む。
道を進んでいくとなんだか開けた場所に出た。ここまで敵に出会ってはいない。
注意深く辺りを見回すと真ん中に一つの石像が置いてある。なんだこれは?コボルトのようだが。
全員で石像を調べるとアヤが何かを発見する。

「みてみて!何か文字が書いてある。え〜っと………読めないな………」

僕もあわててその文字を見てみたがなんて書かれているのか全く読めなかった。コボルトの文字なのか?
と、ジュンが顔を出し得意げな顔でその文字を読み出した。

「へへ、俺は本を読んでしっかりと文字を学んでんだぜ。読んでやる。
え〜っと、「コボルト、グレムリン、ゴブリン、ファミリアの皆の英雄"ゲリブ"ここに
彼ならではの安息所を作る。」ってかいてあるぜ。」

ほぅ、少し見直したぞジュン。僕らじゃ読めない文字を読むとは。そこは尊敬しよう。
リアーナは、順が読めると想っていなかったのか、ものすごくびっくりしている。

「何よ、そんな文字が読めるなんて何も言わなかったじゃないの!何でずっと一緒にいるのに
そう言うこと話してくれなかったのよ!私は、ジュンのこと何でも知ってるのが自慢だったのに……」

びっくりしながら話していた彼女は言葉の最後の方が小さくなり、俯いてしまった。
そうか、さっきの呼び捨てで怒ったことといい、この反応といい、彼女はジュンを……
ふふ、ならばこれからはリアーナさんと呼んでやるべきみたいだ。
さて、ジュンはと言うとそんな彼女の様子を見て非常にあわてているようだ。
腕を意味もなく振って弁解している。まるで子供だな。あぁ、僕らは子供か。

「ち、違うってリアーナ!黙ってた訳じゃねぇよ!教えるのを忘れてただけ!リアーナに
秘密にしようなんて全然想ってねぇってば!なぁ、本当だって!!信じろよ!」

そんな言葉に彼女は「どうかしら?」と一言行ってそっぽを向く。
この少女、本当のことを言ってるって気づいてるな。間違いなく。結構お似合いなんじゃないかな?なんて想ったりして
さて、僕は話を本題に戻すことにした。真面目な顔になり、皆に話す。

「さて、ここはコボルト達の英雄の安息所だ。ということは、普段よりも強いコボルト達がいるだろう。
ここを戻って、探索を大人達に任せてしまうか、僕らがここを探索して、他の皆に自慢するか。どっちがいい?」

先ほどの石像は僕の冒険心に火をつけてしまったようだ。僕は敢えて、さも自分たちが探索した方がいいように
言葉を選んで話す。ジュンはきっと乗るだろう。アヤもおそらく乗るはずだ。問題はリアーナだ。
そして思った通り、ジュンやアヤはこの話に乗ってきた。だが驚いたのはリアーナだった。

「別に良いわ。なんだか楽しそうだし。まぁ、ジュンが頼りになってくれれば、だけど。」

といとも簡単に承諾してしまった。こんな時までジュンの名前を出すのか。本当にこの少女は……
こうして僕らは歩を進める。途中コボルトの上位種、ゴブリンが2体出てきた。
普段よりも強いやつらだったが、たった2体、どうということは無い。蹴散らした。

そのまま先に進んでいくと、一匹のコボルトが暇そうに槍を回して遊んでいた。
攻撃に突っ込もうとするジュンを制止し、身長に近づく。するとコボルトは僕らに気づいた。
コボルトはボクらの前に来ると一礼し、なんと人間の言葉をはっきりと喋ったのだ。

「おや?人間が何故こんな所に。待て待て、その武器はしまえ。」

どうやら攻撃してくる様子はない。僕らは武器をしまう。コボルトは続ける。

「さて、俺は部族の安寧のために、君たちに平和的に、そう、平和的に提案を持ちかけよう。」

平和的 を強調するコボルト。聞くだけ聞いてみようじゃないか。僕は頷いた。

825 803 :2009/07/30(木) 16:00:43 ID:jbYrN6dg0
「俺の名前はシャーモンテル。まぁ見張りみたいなものだ。さて、本題に入ろう。
実は、北西に倉庫があるんだ、我々のな。槍とか、食料とか、まぁ色々だ。
でな、その倉庫に、洞窟狼が食料に釣られて住み着いてしまってな。そしたらなんと我々コボルト一族に
病気が蔓延してしまったのだよ。きっとあの狼が原因だ。君たちに余裕があるなら、そいつを倒して欲しい。」

そう提案され、僕らは一瞬考えた。魔物の頼みを聞いても良いのだろうか。
だが、此方を攻撃する様子は全くない。聞いてみる価値はあるだろう。僕らは承諾した。
その後僕らは、少し前にあった分岐点を右に進み、倉庫に到達する。
途中アヤが目つぶしの罠にかかってしまったが、少ししたら見えるようになったようだ。

倉庫にたどり着くと、鍵がかかっていた。鍵など持っていないので破壊する。
そうして中にはいると確かに狼がいた。舌を伸ばし、緑色の体液がたれ、まるでゾンビのような……
これ以上描写するのはきつい。勘弁して欲しい。
さて、敵はというと、動きも速いし、攻撃力も高そうだ。あのよだれは地面を溶かしているしな。
狼は此方に気づくと威嚇してきた。こちらも身構える。一瞬の沈黙。そしてすぐに

「おりゃー!!」

とアヤが叫び突っ込んでいった。あのときの二の舞だけは起こすなよ。今日はポーションがないからな。
アヤが槍を突き出す。深々と突き刺さる。だが狼はひるまない。何という強靱な肉体。
狼はアヤが槍を引き抜くと同時にアヤに飛びかかる。だが、やらせはしない。
僕は脚に力を込めると、そのまま狼にジャンプしながら斬りかかる。
ザンッと気持ちのいい音がなる。手応えありだ。これなら奴も………
と思ったのだが、全く違った。あれだけのダメージを受けても奴はひるまない。

「し、しまった!!」

あのときはアヤ、今回は僕かい?この攻撃は避けられないな。もう間に合わない。
だが、生存本能で僕は逃げようとしてしまう。案の定身体が付いていかず
体のバランスが崩れ、倒れる。間違いなく終わりだ。そう思った………が
視界の外から飛んでくる炎の弾。それは狼にぶつかると燃え上がり、狼を火だるまにする。

「グウォオオオォオオ!!」

これは効いたのだろう。狼は転げ回る。

「全く、油断しすぎだぜ。やっぱりレベルが高いだけなのか?」

その言葉に、振り向くとジュンが立っている。ジュンの杖の先端は炎がともっている。
今の炎の弾はジュンが放った物だったのか。命拾いした。僕は素直に感謝の言葉を述べる。

「ごめん。危なかった。お前がいなきゃやられてたよ。ありがとう。」

ジュンは狐につままれたような顔をしたがすぐに

「俺がいないと何も出来ないんだな。全く、あきれるぜ」

と悪口を言ってきた。だが顔は穏やかに笑っている。僕も笑う。
何だ、案外いいやつなんじゃないか。お前なら背中を任してもいいかも知れない。
と、そのとき、狼は雄叫びを上げる

「ガオオオオオオオオ!!!」

雄叫びと共に酸の混じったよだれが飛び散る。

「きゃあああ!あつ、あつい!!痛いよ!!」

アヤの悲鳴だ。ちきしょう。身体が焼けるように熱くて動けない。
目がやられないよう、腕でかばいながら周囲を見渡す。と

「ジュン、何してるのよ、私をかばうなんて。格好つけてんじゃないわよ!!」

ジュンがリアーナに覆い被さっていた。ジュンはあの短い間にリアーナをかばったのか………
情けない。僕はアヤをかばうことなんて出来なかった……………。
そのとき、アヤの雄叫びが聞こえる。

「うりゃあーーー!」

酸を浴びて、それでも立ち向かうのか。冒険者の鏡だな。
狼はあっけにとられたのか微動だにしない。
そのままアヤは突き出す………突きなんてものじゃないな、これは。
脚に力を入れ、腰を捻り、弾力を加え、その勢いを利用して槍を敵に突き刺す。
なんていったっけ?ラピ…………ラピ何とかってやつだ。
その疑問は攻撃を繰り出した本人が解決してくれた。

「食らえ!ラピッドスティンガー!!!!」

技の名前を叫ぶなんてどんな必殺技だよ。だが威力はバカに出来ない。

槍は狼をいとも簡単に突き抜ける。血を吐き出す狼。アヤにかからなくて良かった。酸が混じってるもんな。

「ギャアアアアアアウウウオオオ!!!!」

狼は最後の断末魔を叫ぶとそのまま動かなくなった。

826 803 :2009/07/30(木) 16:04:50 ID:jbYrN6dg0
沈黙。どれくらい時間がたったのだろうか。しばらくしてアヤが力が抜けたのだろう。ばったりと座り込んだ。
アヤ!と叫んで僕はアヤの側へ行く。アヤは苦笑いしながら此方を向いてつぶやいた。

「アハハハハ、ちょーっとがんばり過ぎちゃった。あぁ、脚に力がはいらないや……」

僕はそう言うアヤをすぐさま背負う。アヤはあわてて抗議してくるが聞かない。

「私重いんだって!最近太っちゃって!だからおんぶなんてしなくても良いってば!」

アヤ、君がこれで太っているというので有れば、僕はきっと1トンくらいあるのだろうね。
アヤに気を取られて二人に方を見てなかっただ。大丈夫だろうか。

「全く、私なんてほっといて自分を守ればよかったのよ。そんな怪我しちゃって。」

「しょうがねぇだろ?身体が勝手に動いちまったんだよ!」

仲睦まじく痴話喧嘩かい。全く、本当に仲がいいんだなぁ。
僕らはシャーモンテルへの元へと戻る。
奴は僕に気づくと一礼しお礼を言ってきた。

「ありがとう。これで我々一族は疫病に悩まされずにすむ!本当にありがとう!!これはお礼だ!」

そういってシャーモンテルは僕らに謎の液体を渡す。

「それは肉体を強化してくれる薬だ。ドーピングみたいな薬物とは違う。まぁレベルが上がると考えればいい。」

飲むかどうか迷った。だが他の3人は説明を受ける前に飲んでしまったようだ。僕が飲むわけにも行かないだろう。
身体がみなぎる感じがする。確かに効力はあるようだ。コボルト達にもこんな技術があるのか。
僕らはシャーモンテルに一礼し、帰ろうとした。だがシャーモンテルに呼び止められる。

「君らがきた道は隠し扉だ。だからもう開かない。この先に外に通じる道がある。そこにいくといい。」

シャーモンテルは地図を出し、簡単な道説明をしてくれた。
そして、改めてシャーモンテルにお礼を言ってその道を進むことにしたのだった。
道中、特に異常はなく、敵に出会うこともなく、目的の場所に着いた。
太陽の光がのぞき込んでいる。僕らは意気揚々と外に出ようとした。が

「我々の隠れ家に人間が入り込むとは、愚かなものだな。」

後ろから低い声が聞こえた。振り向く。
そこには黄色の服装をした一回り大きいコボルトがいた。インプとかいう最高上位種だったかな。

「貴様らを生きて返すわけには行かない。コボルト一族に逆らうとこうなると言うことを教えてやるために
見せしめとして殺してやろう。」

アヤが心配そうに僕に耳打ちする

「どうしよう・・・・出口はもうすぐそこなのに。」

残りの二人は外にでる準備をしているようだ。さて、どうしたものか。
色々と考える。アヤと一緒に闘うにしてもアヤが怪我したらどうする。あの二人も?今日知り合ったばかりで
さっきみたいな危険な目に又遭わせるわけにも行かない。ならば、方法は一つしかない。

827 803 :2009/07/30(木) 16:06:25 ID:jbYrN6dg0
僕はアヤのことを勢いよく、ジュンの方へ突き飛ばす。
アヤはびっくりして僕に問いかける。

「な、何してるのよあんた!まさか………!!」

アヤ、そうだ、その通りだよ。君の思っているとおりだ。僕はバカだからこれくらいしか思いつかなくてね。
アヤが此方に来ようとする。だが、腕を掴まれ来ることが出来ない。ジュン、良く理解してくれた。

「おい、お前、アヤって言ったっけ?あいつはお前や俺らのためにしようとしてるんだ!
あいつなら大丈夫だ!必ず戻ってくる!だからいまは外に出るんだ!
お前が怪我したらあいつの気持ちを無碍にすることになるぞ!それでもいいのかよ!!」

アヤはまだ騒いでいる。だがジュンは無視して外に連れ出していき、やがて3人の姿は見えなくなった。
僕は、インプの方を振り向き、仁王立ちの如く大の字に手を開き立ちはだかる。

「ほぅ、勇気ある少年だ。私は族長のゲリド!誇り高きインプである!貴様の名はなんだ!!」

そう言うゲリドに対し僕は答える。

「僕は剣士だ。敵に名乗るような名前はないよ。君には悪いと想うけど。」

そう言う僕にゲリドは笑い声を上げる。

「面白い少年だ。良いだろう。一騎打ちだ。ゆくぞ!!」

ゲリドは他のコボルトなんかとは比べ物にならないほど軽い身のこなしで飛びかかってきた。
僕は槍の攻撃をすかさずブロックする。これは皮じゃない、鉄製の盾だ。何度でも攻撃はブロックできるのさ。
そのままゲリドを振り払うと僕は剣を振り上げ斬りかかる。垂直切りだ。


バキンッ!というけたたましい音が響く。ゲリドの槍も鉄製だった。ゲリドは槍の柄の部分で攻撃を防いだのだ。
奴は防いだ後指で槍を数回回転させ身体を捻り槍を突きだしてくる。これはさっきアヤが使っていたラピッドスティンガーだ。
僕は体を反らせ攻撃を避ける。目の前を槍が通過する。危ない危ない。
僕は身体を回転させ元の体勢に戻すと剣をゲリドに突きだした。
頭を狙ったのが悪かったのか、ゲリドに気づかれ、頭を横に傾けられて空を切る。
ゲリドはそのまま槍を振り回す。しゃがんでそれを避け、腹を斬りつける。今度は当たる。
しかし勢いをつけなかったせいか傷は浅く与えるダメージは少なくなってしまった。
ゲリドはほんの少しうなるだけで攻撃の手を止めない。
今度は下側から脚を狙って鉄製の槍をたたきつけようとしてくる。ジャンプしてその攻撃を避け
隙だらけのゲリドをおもいきり剣で斬りつける。今度は手応えがある。
ゲリドはよろけ、後ろに下がり、切られた肩を押さえつぶやく。

「やるな少年。なかなかの指導を受けているようだ。4年前に、見回りのコボルトが
少年少女の二人にやられたというが、そのときの少年は貴様ではないのか?」

そんな昔のことをまさか族長様が覚えててくださるとは、光栄なことだ。
僕はその問いに正直に答える。

「その通りさ。僕が突き飛ばしたあの子、アヤと一緒にコボルトを倒したのはこの僕さ。」

ゲリドは笑う。そしてこう話した。

「ならば仲間の敵討ちの大義名分が私にもできたわけだ。」

ゲリドはそう言って再び飛びかかってくる。
避けるのが一瞬おくれた。僕の肩に槍が突き刺さる。
痛みに耐えきれず、僕はうなり声を上げる。

「うぐぅうううう…………」

だが僕はひるまない。刺さった槍を手でつかみ敵の動きを封じ、盾で吹っ飛ばす。盾で敵を突き飛ばす技、なんて言ったかな?
ゲリドは槍をつかんだままだったせいか、突き飛ばすと同時に槍も肩から抜けた。
ゲリドは受け身を取ると体制を整えすぐさま突進してくる。
そして槍を振り上げたたきつけてきた。僕は腕を交差させ、身構える。
槍は僕の肩に嫌な音を立てて当たった。ゲリドはやったとおもったのか後ろに下がる。
だが、僕は動じずに腕の交差をとき、にやりと笑う。
ゲリドは驚きたじろぐ。そりゃそうだ。渾身の一撃が効いてなかったのだから。

828 803 :2009/07/30(木) 16:09:15 ID:jbYrN6dg0
「剣士の心得。強靱な肉体で仲間の盾となれ…………。」

僕はその後、大きく息を吸いこむ。

「グレートガッツだ!お前の攻撃なんかきかねーぞ!ウオオオオオオオオオオ!!!!」

と叫んだ。するとゲリドはその声を聞き硬直する

「ウオ!!何だこの声は、か、身体が痺れて…………」

その僅かなスタンを僕は見逃さなかった。
しっかりと腰に力を入れひねる。腕にも力を入れ全ての意識を腕に集中させる。
しっくりくる。そうだ。これならもっと強い技が放てる。アヤ、僕は君のことを悪く言えないよ。

「くらいやがれ!サザァッァァンクロオオォォォォッス!!!」

ヒュヒュッと風を切る音。そしてその後、キンッという独特な音が鳴る。
何処の必殺技だよ、技の名前を叫ぶなんて。でもまぁ、他に人がいないからいいか。

「ギェック……………」

その小さな声を最後に、族長ゲリドは弾け飛んだ。
大量の血が僕に降りかかる。体中が血だらけだ。
そして目を開くと、説明するのも嫌な光景が広がっていた。だから説明はしない。



沈黙。全てが終わった。だが、前みたいに身体の力が抜けるなんてへまはしないぞ。

僕は外に出ようとする。そして、もう一度だけ壮絶な戦いを行った洞窟を見渡し、その場を後にした。
集合場所に戻ると、他の生徒は全員集まっていた。
他の皆は血だらけの僕を見て非常に驚いたようだ。先生があわてて僕に近寄る。

「ど、どうした。お前、何があったんだ!!」

その問いに対し、僕はアヤ達3人を読んで説明した。光る石や、あの隠し扉の向こうでおこったこと。
洞窟狼や族長ゲリドとの戦いなど、隅から隅まで全てを。
そしたら先生が唖然とした表情を取る。が、その後突然大笑いし

「よくやったぞ!お前らは凄い!今日のMVPはお前らだ!!」

と何故か褒めてきた。その後、何故か突然やってきた古都の国会議員の人などから表彰状を配られた。意味が分からん。

その後、3日間こちらにアリアンの生徒はとどまることになり、交流を深めることになった。
僕ら4人はすっかり意気投合していた。そして4人で連携を取りPT狩りを行ったりした。
途中で何やら国会の人たちが色々と聞きに来て五月蠅かった。
そして、アリアンの生徒たちが帰る日となった。

「タクシー乗り場は此方です。皆さん、準備は良いですかー?」

タクシーの人が合図をかけ、次々とアリアンへと帰っていく生徒達。
そんな中、僕とアヤはジュンとリアーナの二人との別れを惜しんでいた。

「おい、お前ら、俺らのこと忘れるんじゃねぇぞ。」

そっぽを向いて話すジュン。表情は分からない。
そんなジュンをリアーナは大泣きをしながらはたく

「バカじゃないの!?これからしばらく会えなくなるのよ?あんな大冒険を一緒にしたのに!!なのにそれだけなの!?」

僕も目尻が熱いな。アヤも今日ばかりは大泣きしている。
そんな僕らにジュンがつぶやく。

「…………どは……………。」

良く聞こえなかった。もう一度頼むと聞き返す。

「今度は…………お前らがこっちに来い。……………仕方がねぇから楽しみにしててやるよ。」

ジュン・・・素っ気なく言ったってわかる。お前、今泣きそうだろ?僕も泣きそうだもの。

そのまま沈黙する。やがてタクシーの人が

「そろそろ出発します。それでは行きますよー。」

と発言し、二人は出発してしまった。

829 803 :2009/07/30(木) 16:10:45 ID:jbYrN6dg0
その夜、数日ぶりに親父が家に帰ってきた。冒険に行っていたらしい。
そして町の人から僕らの冒険の話を聞くと、僕のことを褒めまくり、豪華な食事を用意してパーティーを開いた。何故だ。
アヤももちろん呼ばれてきたので、二人で他愛のない話やジュン達の話をして、お開きとなった。


───まぁ、あの後あの二人とはしばらく会わなかったけど、僕らがアリアン側に行く話が出てきて再開できた。
今でもたまにPT狩りするけど、お互いペアハンが好きみたいで、本当にたまにだ。
あの二人は今結婚したんだっけ。ジュンが婚約指輪を買ってリアーナにプレゼントしたらしいな。

「あの二人、今でも仲がいいみたいだね。あーぁ…………いいなぁ、結婚。」

アヤがため息をつく。君ならすぐにいい人が見つかるよ。僕が保証する。いつまでも僕とペアハンなんてしてるのはやめた方がいい。
そう言えば、洞窟に入ったばかりの時、アヤとリアーナで話してたよな。あのときなんて言ってたんだろうか。

「気づいてくれないんだもんな、私の気持ちに。本当に鈍感。」

アヤが憂鬱そうに更にため息をつく。そうか、アヤには好きな人がいるんだ。アヤも女の子だからな、好きな人が出来ても
おかしくはないもんな。僕なんかが釣り合う相手じゃないのさ。わかってる。
平然を装い、笑って答える。

「好きな人がいるんだな、アヤにも。がんばれ、応援するからさ。好きな人にはすぐに好きだと言ったほうがいい。」

なんて、僕が言える立場じゃないよな。アヤに好きだなんて言えるわけがないから。
と、アヤの歩みが止まる。あわてて止まる。が、少し前のめりになってしまったり。

「んー…………じゃぁ、言っちゃうけど…………」

何だ改まって?今日はユニークアイテムをドロップしたか?もし知らないうちに拾ったのならすぐに言ってほしいものだ。

「えっと………私さ、ずっと前からあんたのこと───








あの日、こんな会話が大人達の間であったことを僕らは知らない。


「コボルトの病気の原因を暴くのに加え、危険な手配モンスターのゲリドまで倒すとは。凄い子供達ですね。」

一人の議員がつぶやく。それに対して返答するもう一人の議員

「その通りだ。だが、光る石か。それはおそらくポータルのことだろうな。」

その議員はもう一言つぶやく。

「ポータル・・・秘密ダンジョンを開く鍵。あの洞窟にも秘密ダンジョンがあったとはな。」




830 803 :2009/07/30(木) 16:14:14 ID:jbYrN6dg0
まず謝罪を。
えっと、前回、僕とアヤの話をかいて、どんどん頭の中に話が浮かび上がってきまして、耐えきれず書いちゃいましたorz

さて、恒例の説明です。
一番最後、ゲリドの身体が硬直したのは、「僕」がウォークライを放ったからです。
あと、秘密に入るときの「ゲリブの安息所」が読めなかったのは、ジュンが先に進んでしまっていたからです。
そして「僕」が純也綾の名前をボルティッシュ側の付け方と言ったのは
大陸を韓国や中国とすると、ボルティッシュがどう考えても日本に見えるからです。



先に断っておきます。

またこのシリーズで書くかも。ということです。それでは読んでくださりありがとうございました。

831 ヒカル★ :削除
削除

832 ◇68hJrjtY :2009/07/31(金) 05:34:41 ID:4iRAnLHg0
>803さん
続編ありがとうございます♪
まさかまさか、この二人の成長した姿を拝めるとは……でも10歳でコボ秘密ですか(笑)
今回はジュンとリアーナという仲間も登場しましたが、話の箇所箇所に見られる
淡い恋愛模様なんかも伝わってきて、さらに戦闘シーンも二連戦というボリューム満点で
うまいバランスでコボ秘密に挑戦する冒険者四人組の物語が描かれていると思います。
アヤと「僕」は果たしてどうなったんだろうという妄想が止まりません(笑)
続き、あるのかな?もしも構想予定でしたらお待ちしていますね♪

833 名無しさん :2009/08/14(金) 19:38:02 ID:ok6GBVsc0
僕達「コボルト」は古都ブルンネンシュティングから
近くに住んでいた。
古都から生まれる新しい冒険者によって何人もの
仲間達が消えていった。
―そんなある日―
僕は古都の近くの花畑で果物を取って食べていた。
そんな時一人の女の子が目に映った、槍をもっていて洋服を着ている可愛らしい女の子。
花畑から花を採っていた。僕はそれを遠くでじっと見ていた。
僕らモンスターが人に恋をするなどありあえないかもしれないけど
僕は彼女に一目惚れをしてしまった。そして彼女と話してみたくなった。
だけど彼女は花を採り終わると何処かへ消えてしまった。
―次の日―
僕は今日も花畑にいた。
少し時間が経つと彼女の姿が見えた。
彼女は花畑の近くを通り過ぎようとしていた、昨日と変わらない感じだった。
相変わらず綺麗だ。
僕は話したい気持ちでいっぱいになりそして彼女に話しかけようと近づこうとしていたその時だった・・・

彼女の目線の少し先にいた「僕の仲間」に向かって槍を構え突進し
僕の仲間を・・・
僕は言葉が出なかった、目の前で倒れこむ僕の仲間。
周りにいた仲間達はすぐさま「僕らの洞窟」へ走って逃げた

僕は言葉もでない、恐怖で動けなかった
そして・・・

―彼女は僕の方を向いた―
   ―そして僕を睨みつけ―
      ―僕に槍を構えた―

僕=コボルト
彼女(女の子)=ランサ、冒険者
僕らの洞窟=コボルトの洞窟

いろいろ変かもしれません、すいません・・・

834 ◇68hJrjtY :2009/08/15(土) 00:53:45 ID:4iRAnLHg0
>833さん
投稿ありがとうございます♪
ランサはコボルトの視点で見たら「仲間」と思っても仕方ないかもしれませんね。
そんなコボルト君の憧れは一瞬で打ち砕かれてしまうのですが(悲)
詩のように短い文章ながらもコボルトの嬉しさや悲しさが詰まっている短編ですね。
またの投稿お待ちしています!

835 FAT :2009/08/30(日) 19:35:17 ID:tYbCX6N20
第一部 『双子の天才姉妹』 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156、2>>193-194、3>>243-245
>>281-283、5>>385-387、6>>442-443、7>>494-495、8>>703-704、9>>705-706、10>>757-758
11>>759 七冊目12>>536-537、13>>538、14>>561-562
―光選― 七冊目1>>599-600、2>>601、3>>609-610、4>>611-612、5>>655-656、6>>657
>>658-660、8>>671-672、9>>673-674、10>>675-676、11>>711-712、12>>713-714
13>>715-716、14>>717

―水晶の記憶―

―1―

 幼く、よたよたと拙い足取りで歩き回る小さな男の子。机の脚やスカートの裾に掴まっ
ては上を見上げ、その先に何があるのかを必死に知りたがり、ぐいぐいと引っ張っている。
 これはエイミーの記憶。彼女の見てきたもの。
 幼い男の子はラス。ラスは執拗にエイミーのスカートを引っ張り、見た目に似合わぬ力
でスカートを引きずりおろす。スカートをおろされたエイミーは顔を赤らめながらラスを
抱き上げ、母乳を与える。まだラスは生まれて半年余り。下半身を覆う濃い体毛とズボン
の中に隠した尾ばかりが人々の話題の種となり、まだこの時は誰もラスの成長の早さに疑
問を抱くものはいなかった。
 ラスが生まれてちょうど一年、初めての誕生日を迎えたラスは一歳児と呼ぶにはあまり
に大きく、あまりに重かった。このころ、ラスはようやく「マーマ、マーマ」と発言でき
るようになっていた。しかし、体つきはもうすでに三歳児並にまで成長していた。そして
このころから、ラスは魔法を使うようになった。
 エイミーは常にラスを弱い魔法の膜で覆っていた。そうしなければ、いつどこでどんな
魔法を勝手に使うか分からなかったし、魔法の暴発でラス自身が傷付いてしまわぬように
との配慮もあった。
 異常な成長の早さに、ラスの存在を危惧するものもいた。しかし、いつだって優しくし
てくれた人たちもいた。

836 FAT :2009/08/30(日) 19:36:27 ID:tYbCX6N20
「ラスちゃ〜ん! デルタお姉さんとままごとして遊びましょー! はい、じゃあラスち
ゃんが旦那さま、私がお嫁さんねっ。はぁい、ラスちゃん、いいえ、あなた、ふ〜ふ〜し
てあげるからあ〜んしてぇ〜」
「やい、よせデルタ。ラスに変な菌が移るだろ」
「ひどい〜! レンダルお姉さま、私のどこに変な菌なんてついていらっしゃるっていう
の!」
「そこ。そこにも、これ、それ、あっ、ここにも。いっぱい生えてるぜ」
「ひっ、ひどい、ひどすぎますわ! 人をなめたけ菌みたいに言って! うわぁぁぁぁぁ
ぁ〜ん! エイミーお姉さまぁぁぁ! 悪鬼レンダルお姉さまが私をいぢめるのぉぉぉお
ぉ〜!!」
 若かりしときのレンダルとまだ幼さが残るデルタがそこにはいた。二人の日常はエイミ
ーとラスを喜ばせ、四人はいつも一緒に遊んだ。ラスはいつも笑顔だった。

 二歳のラスにある日、事件が起きた。ラスが他所の子供たちに怪我を負わせたのである。
事の発端は相手の子供たちがラスに石を投げつけたことだった。
「おまえ、けむくじゃらのばけものなんだってな! きもちわるいんだよ、どっかいけ!」
 ラスは決して暴力で返そうとはしなかった。ただ、「いたい、いたい」と泣きじゃくるだ
けだった。ラスは「いたい」以外に言葉を発しなかった。
「ばけものをうんだおまえのかあちゃんもでていけ! ばけものおんなのばけもの!」
 痛みにじっと耐えていたラスだったが、母エイミーのことをけなされると急に怒りが込
み上げてくるのを感じた。そして考える間もなく、ラスは怒りの魔法、闇を練りこんだ黒
い炎で相手に火傷を負わせたのである。エイミーのかけた魔法の膜はもろくも破れた。

837 FAT :2009/08/30(日) 19:37:34 ID:tYbCX6N20
 町の住人はこの事件をきっかけに、ラスを悪魔の子と恐れ、子供たちを近づけさせなか
った。事態の深刻さにベルツリー家では親戚を集め、ラスの対処についての話し合いが連
夜行われた。
「エイミー、残念だが、ラスを里子に出そう。この子はもうこの町では暮らして行けない」
 誰が言ったかは思い出せない。エイミーは激昂した。
「いやです! ラスは私の子よ! 私が育てるわ! ラスはいい子じゃないのよ! いけ
ないのは相手の子でしょう!? そんなひどいことをされたら、誰だって怒るにきまって
るじゃない! ラスは正しいのよ!」
 興奮するエイミーを母がなだめる。また誰かが言った。
「でもな、今のラスの状態を見て、お前も気付いているだろう。ラスの異常さに。ラスを
ここに置いておきたいのなら、なにか手を打たねば誰も納得してはくれないだろう」
 何か手を打たねばならない。しかし、具体的には何をすればいいのか、エイミーは思い
つかなかった。絶望が、ひしひしと近づいてきているのを感じた。
「たしか、ネイムばあさんの残した巻物にこんなのがあったな。体内に魔力を込めた水晶
を埋め込む秘術。それならばラスの体の成長を遅らせる、或いは知能の発達を促進できる
かもしれん」
「あるにはある。だが、宿した魔力と埋め込む人間との魔力が調和せねば内部より崩壊が
起きる。相手に合わせた魔力を練るような高度な技術、我々では不可能だ」
 諦めの色を浮かべる親戚一同。しかし、エイミーはその術に希望を見出していた。
「魔力を……ラスに合わせればいいんですね」
 エイミーはすっと手のひらを机の上に差し出し、「ラス」の魔力を再現してみせた。
「あの子の魔力は純粋な四大元素、火、水、風、大地と微弱な光、それと、強大な闇。あ
の子は父親がいないことで心に大きな闇を抱えています。それが多感なラスの感情に最も
強く作用し、先のような黒い炎、つまり、火を飲み込むほどの闇となっています。あの子
にはもっと愛が必要なんです。私や、レンダルや、デルタだけじゃなく、お父様、お母様
だけじゃなく、もっと、皆さんの愛が必要なんです!」
 エイミーが声を荒らげる。必死な彼女の説得に、真剣な眼差しが集まる。
「だから、私にやらせて下さい。ラスを救えるのなら、なんだってしてみせます」
「しかしな、エイミー」
 彼女の父親であるデリックが苦言を呈する。
「それはお前にとっても、ラスにとっても辛い結果となるかも知れないんだぞ。お前は、
ラスがどうなってしまってもそれに耐えれるのか?」
 このとき、エイミーは父親の言葉の意味がわからなかった。だから、
「大丈夫です。私は失敗なんてしません。愛する我が子ですもの。必ず成功させます」と
半ば睨むような真剣な眼でデリックを見た。
「そういう意味じゃない」
「お願いします、やらせて下さい、お父様! だって、他に手はないんでしょう!? だ
ったら、やるしかないじゃない!」
 エイミーの決意は強固で、もはや誰の意見も聞かなかった。そして後日、親戚に紹介さ
れた医師と共に手術を決行することとなった。

838 FAT :2009/08/30(日) 19:38:02 ID:tYbCX6N20
 エイミーは直径数ミリのひし形にカットされた、指輪にはめるような微細な水晶にラス
に合わせた魔力をエンチャットした。その作業は小さな指輪に魔力を注入するよりずっと
神経を削り、時計の針が何度も回った。エイミーは両手を水晶にかざしたまま、汗一つ流
さず、微動だにしなかった。開いていた手を閉じたのが、終了の合図だった。全神経を使
ってエンチャットされたその水晶は虹のように七色に輝いた。
「エイミー、少し休もう」
「そうよ。あなたはよくやったわ。がんばりすぎよ」
 デリックと妻、サメリーは疲れきったエイミーを心配し、横になるよう促した。しかし
エイミーは頑固に、
「だめよ、ラスはきっと今、不安だわ。私がそばにいてあげなきゃ」とふらふらになりな
がらも両親の気遣いを拒んだ。
 ラスは今、ベッドに縛り付けられ、頭を刈られている。これから何が行われるのか、ラ
スの未熟な脳では想像もつかなかった。
 ラスはきっと、叱られるんだと思った。悪いことをした、火傷をさせてしまったのだ。
一体、どんな罰を受けるのだろう。お尻を叩かれるのだろうか、ご飯をもらえなくなるの
だろうか。ラスは子供の範囲で子供の受ける罰を色々と考え、恐くなって泣き出した。
「感情が不安定になってきました。みなさん、この子の魔力が暴走しないよう、しっかり
と抑えていて下さい」
 医師の言う通りにベルツリー家の人々がラスの魔力が外に漏れ出さないようにその体に
手を添える。
「もうじき薬が効いて眠りにつくでしょう。そうしたらエイミーさんを呼んで下さい」
 ラスはものの数分もしない内に眠りについた。何も知らない、無邪気な寝顔だ。
 誰かがエイミーを呼びに行き、青ざめた顔のエイミーが姿を現した。
「エイミーさん、あなたの一手がこの子を殺してしまうかも知れないのですよ。あなたで
大丈夫ですか?」
 エイミーの体調を危惧し、医師が厳しくも優しく問う。
「そのために来たんです。私がやります」
 エイミーは七色に輝く水晶をしっかりと拳の中に握っていた。その輝きは指の合間から
こぼれ、エイミーの希望を表していた。
「そうですか……それでは、始めます。いいですか? 決して目を背けてはなりません。
血しぶきがあがろうとも、何が見えようとも、決して目を離さないで下さい。エイミーさ
ん、あなたは私の指示があったら正確にそこにその水晶を納めて下さい。チャンスは一度
きりです。失敗すればこの子は命を失います。良いですね?」
 エイミーは色の悪い顔でコクリと頷くと、七色の水晶をピンセットで挟んだ。

839 FAT :2009/08/30(日) 19:39:24 ID:tYbCX6N20
―2―

 手術は無事に成功し、エイミーは極度の疲労から数日間寝込んだ。そして数日振りに目
覚めると、エイミーのベッドの縁にかつらを被ったラスが腕を枕にし、寝ていた。
「ああ、ラス、よかった、よかった! ラス!!」
 湧き上がる喜びを抑えられず、眠っているラスに抱きつく。苦しいほど強い抱擁に眼を
覚ましたラスの言葉に、エイミーは耳を疑った。
「放せ、くそばばあ」
 驚き、ラスの顔を覗き込むエイミー。その眼は、まるで憎いものでも睨んでいるかのよ
うな黒く、怒りの宿った色をしていた。
「えっ!? うそ? あなたラスでしょ? ねえ、ラスっ!」
 ラスはエイミーの手を振り払うと逃げるように部屋を出て行った。デリックの言葉はこ
のことを示していた。一人、ぽつりと部屋の中心に残されたエイミーを襲う哀しみは人並
みのものではなかった。

 ラスは突如、何でも理解できるようになっていた。
「いきなり抱きつきやがって、あのくそばばあ。いつかぶっとばしてやる」
 ほんの数日前までは「いたい」や「マーマ」など、単語しかしゃべれなかったラス。遅
すぎた言語の発達は、七色の水晶によって見た目の六歳児と同じ、もしくはそれ以上に発
達していた。もちろん、本人にその自覚はなかった。
 突然、流れ込んできた多くの情報。一段一段上らなければいけない階段を十段も二十段
も飛び越えてしまったラス。純粋だったラスの心は強制的に押し付けられた知能に反抗す
るかのようにぐれてしまった。早い反抗期だった。
 ラスはデリックのウェスタンハットを被り、家を出るとデルタのところに遊びにいった。
デルタは家の窓からラスが近づいてくるのを見つけると、たまらず窓から飛び出した。
「ラスちゃ〜〜ん! 私に会いに来てくれたのね〜〜!! デルタお姉さんうれしいわ
ぁ!!」
 ラスはぎょっとした。見慣れたはずのデルタのテンションが恐ろしかった。
「ラスちゃん、今日はなにして遊びましょうかっ!? ままごとにします? それともま
まごとにします? やっぱりままごとにしましょう!!」
 ドン引きするラス。ませた脳がデルタを拒もうとしていた。
「やめろ! ラスが怯えてるじゃねーか、この新婚妄想ピンク!!」
 救世主が現れた。レンダルのぶっきら棒さがませたラスにはちょうど良かった。

840 FAT :2009/08/30(日) 19:39:53 ID:tYbCX6N20
「助かったぜ、レンダル」
 ラスをギョギョッと驚いた二人の眼が見る。ラスは何がそうさせたのかわからなかった。
「おい、ラス。お前いつの間にそんなにうまくしゃべれるようになったんだ?」
「きっと、私のままごとに付き合うために練習したんですわ! あぁっ、ラスちゃん、愛
を感じるわぁぁぁぁっ!」
「しゃべれる? ふん、そうか。あいつが何かしたんだろ。くそっ」
 ラスはエイミーのことを思い出し、苛立った。
「おい、あいつって誰のことだ、ラス」
 レンダルに見下ろされたラスは身震いした。見たことも無いレンダルの怒りの眼。本気
でレンダルは怒っていた。
「だ、誰って……ほら、あいつだよ、その、あの……」
 まごついたラスの頬をレンダルの平手が打つ。まるで矢が的に当たったときのような激
しい音が町に響き、ウェスタンハットが空を舞った。
「馬鹿野郎っ! 親のことを「あいつ」だなんて言うやつがあるかっ! エイミーがなぁ、
エイミーが、どれだけお前のことを愛してるか、わからないのか! ふざけるなよ、この
親不孝者がっ!!」
 青草の上に尻餅をつき、ラスは泣きじゃくった。愛を持ってここまで激しく叱ってくれ
た人は後にも先にもレンダルしかいなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「俺に謝ってどうする。エイミーに謝ってこい!」
 レンダルに叱咤され、ラスは泣きながら家に帰ると真っ直ぐにエイミーの部屋に入った。
「ラスっ!? どうしたの、そんなに泣いて。まただれかに意地悪されたの?」
 ラスは涙目でエイミーの顔を見た。エイミーの目はラスを泣かせた誰かに向けた怒りで
燃えていた。
「ち……がう゛う゛ぅ゛ぅ゛」
 エイミーはラスの言葉を待った。
「か……さん……。ばっ、ばばあ……なんて……って……ごめんな……さい」
「ラス……」
「レンダルたちの前で、あ……あいつ……だなんていって、ご……ごめんなさい! うわ
ぁぁぁぁぁぁん!!」
 エイミーは泣きじゃくるラスを優しく抱き寄せると耳元で囁いた。
「いいのよ。私はあなたの母親だもの。私のことをどんな風に言ったって、どんな風にし
たって怒りはしないわ。でもね、ラス。そういうことに心を痛められるっていうのは、あ
なたが優しい証拠よ」
 ラスは涙を流しながらも、エイミーの話に耳をそばだてた。
「私はあなたにひどいことをしたの。あなたの頭の中にね、水晶を埋め込んだのよ」
 エイミーはそっとラスのかつらを取ると、まだ包帯の巻かれている頭に指を沿わせた。
「この辺にね、私の愛情のこもった水晶が入っているの。あのときのあなたでは理解でき
ないと思って何も話さなかったわ。でも、今のあなたならきっと、わかってくれると思う。
だから話すわ」
 エイミーはラスに水晶の必要性と役割を説明した。ラスは恐ろしくも、その必然性を理
解した。そして、エイミーの肩を掴み、顔を近づけた。
「母さん、わかったよ。俺、いっぱい勉強する。そしていつか、母さんのこの水晶なしで
も立派になれるよう、努力するよ」
 ラスは力強くそう言うとエイミーの優しい微笑みに引き込まれ、母の胸に抱きついた。
「ごめんね、謝らなきゃいけないのは私のほうだったのに、ごめんね、ラス」
 まだラスは二歳。特異な体質だからとはいえ、ラスにとって、普通の子供にとっては過
酷すぎる話だった。それでも、ラスは心に誓った。ベルツリー家を担うエンチャット士に
なると。
 ラスの短い反抗期は終わった。

841 FAT :2009/08/30(日) 19:41:03 ID:tYbCX6N20
―3―

 ジョーイは部屋のカーテンを開け、眩しいほど輝く朝日を招き入れた。カーテンを窓の
端に結びつけると深く眠っているエイミーを揺すった。
「エイミー、朝だよー、エイミー」
 昨日は魔法を使ったわけでもないのに、エイミーの眠りは深かった。夜遅くまでジョー
イにラスの昔話を聞かせていたからかもしれない。ジョーイはエイミーの話を聴き、あの
ラスの強さの秘密を知った気がした。それは大いなる母の愛。ジョーイには決して叶わな
い力。ジョーイはたった一度だけ対峙したあのラスの姿を思い浮かべ、少しうらやましく
なった。
 ジョーイはもう一度エイミーを目覚めさせようとベッドに近づいた。すると、ふとんを
鼻先まで被せたまま、エイミーの宝石のような黒く透き通った瞳がジョーイを見上げてい
た。
「あきれた。起きてたのかい」
「ふふ、あなたが寝ているすきに変なことしてないか、確かめたかったの」
 ジョーイの事情を知って尚、そのような失礼なことを言うのか。ジョーイはエイミーを
冷たく見た。
「うそ、冗談よ。う〜ん、いい朝だわ」
 朝日を浴び、輝く黒艶の髪。エイミーはまるで海辺の人魚のように美しかった。脚がふ
とんで隠れていたせいもあるだろう。ジョーイは神秘的な美を感じた。
「もうすっかり良さそうだな」
「ええ、おかげさまでね」
 ニッコリと笑顔を見せる。白い肌と朝日がよく合う。
「これからどうするんだい?」
「ちょっと待って、話は着替えてからしましょう」
「俺はもういつでも出れるんだけど。着替え、手伝おっか?」
 ジョーイが悪戯っぽく蒼い眼を向ける。エイミーは「出てって」と手でジェスチャーし、
ジョーイを追い出した。

「あ、おじさん」
 階段をおりたジョーイはデリックと鉢合わせた。
「やあ、ジョーイ君。今日もいい朝だね」
「おじさん、俺、今日でここから出て行くよ。随分と世話になりました」
 ジョーイは手ぶらだったが元々そんな生活をしていたのだから違和感はなかった。ベル
ツリー家の人々はこの風来坊の人懐っこさと眼孔に秘められた龍の悲しみを認め、なんに
だって口出ししなかったし、ジョーイもまた、この家族に多くを求めはしなかった。
「それは急だね。でも、気にすることはないさ。君の龍が導くように、君は生きたらいい。
それに逆らうのも良し、君が決めたことなら何も反対はしないさ。ただ、これだけは覚え
ておいてくれ。私も、妻も、もちろんエイミーも、君を本当の家族のように思っている。
またいつでも立ち寄ってくれよ」
 さすがエイミーの父だとジョーイは思った。この懐の温かさ、愛情の塊のような存在。
「はい、ありがとうございます。いや、ありがとう」
 思いがけない感動にジョーイはそそくさと家を出、木陰で涙をこぼした。レニィと出会
ってからというもの、彼は長く辛かった孤独の時間分を取り戻すかのように温かな人々に
恵まれた。その幸せに、慣れない優しさにどうしても涙が出てしまう。

842 FAT :2009/08/30(日) 19:41:28 ID:tYbCX6N20
「ちょっと、勝手に出て行かないでよ。まだどうするか決めてないでしょう」
 着替え終えたエイミーが窓を開け、二階から呼びかける。
「エイミーの好きにしなよ、君の子供と友達だろ」
 エイミーは窓を強く閉めると、ばたばたと階段を下り、玄関を突き開けた。そして木陰
のジョーイまで一直線に走り寄った。
「あなたはどうするの?」
 ジョーイは慌てて涙を隠した。
「君についていくさ。ただ、事が解決したらまたどこかへ行こうかと思ってる」
「そう……」
 エイミーの表情が少し沈んだ。自分でも無駄な感情だとは分かっている。龍の見せた記
憶が何よりも決定的だった。
「あなたは罪な人。でも、責めない」
「悪いな。デルタにも、悪いと思ってる」
「あら、デルタはいいのよ。あの子は……」
 言葉半ばで、急にエイミーは思い出した。夢、いや、強大な魔力が見せたレンダルとデ
ルタの危機。何故忘れていたのだろう。
「どうした?」
 ジョーイは心配そうに顔を覗き込む。
「ジョーイ、ハノブだわ、ジム=モリ兄さんのところへ急ぎましょう」
「お、おい、何だよ? 俺にもちゃんと説明してくれよ」
「言ったわよ! 行こうと思ったのに、あなたがその龍で無理矢理抑え込んだじゃない!」
 ジョーイは思い出した。狂ったように喚き、魔力が暴走する寸前まで不安定になったエ
イミーの姿を。あれは、単なる発狂ではなく、意味があったのかと今更気付く。
「もう何日前の話? 急がなくちゃ、早く、一刻も早く!」
 エイミーは天使の翼の魔法を自分にかけるとジョーイを抱え、飛び上がった。
「ひえぇぇぇえぇえっ! そ、空も飛べるのかよっ!?」
 エイミーは背中の翼を羽ばたかせ重力に逆らい、空を翔けた。スマグを越え、山を越え、
半日も掛からずにハノブへと到着した。

843 FAT :2009/08/30(日) 19:49:08 ID:tYbCX6N20
こんばんは、お久しぶりです。
こんな亀ペースで申し訳ないです。
もう秋の虫の音が聞こえてきます。今年は夏が短かったですね。
また投稿できるようにがんばりたいと思います!


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