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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

417ドワーフ:2008/09/02(火) 23:32:21 ID:AepyIIHk0
マルチェドと血まみれ男

 ひと気のない街道を異様な出で立ちの二人の人物が並んで歩いている。一人は真っ赤な血に染まった服を着た、
荷物を何一つ持たない手ぶらの男。もう一人は暑い日差しにも関わらず全身を長いコートで覆い、顔までも鉄の兜
で隠している小柄な人物。この二人の人物の不気味さはその外見もさることながら、その和気藹々とした雰囲気だ
ろう。
「いやあ、助かったよ。君が通りがかっていなかったら今頃どうなっていたことか」
「いえ、何も大したことはしていませんから」
 小さいコートの何者かは謙遜したように首を振った。
「俺はジェスターっていうんだ」
「マルチェドです」
 ジェスターは手を差し出したが、苦い顔ですぐに引っ込めた。ジェスターの手は真っ赤な血でべっとりと汚れて
いて、とても握手に適した状態ではなかったからだ。マルチェドのコートにも既にジェスターのものと思われる血
が付着している。
「後で洗わなきゃな」
「どこか水のあるところを知ってるんですか?」
 ジェスターは街道の先の方を指差した。真っ赤な手はまるでペンキ塗りの標識のようだ。
「この先を脇に逸れてしばらく行ったところに村があるんだ。かなり小さいけどね。そこで水が手に入るし、君に
お礼も出来るだろう」
「お礼なんて、そんな」
 マルチェドは遠慮するようにそう言ったが、ジェスターはどうしても彼をそこに連れて行きたいらしい。
「君は俺の命の恩人だ。恩を返さずに『はい、さよなら』じゃあ俺の気が治まらない。それにその村は俺の生まれ
故郷なんだ。大したことは出来ないかもしれないが、実家で持て成させてくれ」
 両手を広げて熱心に説得しようとするジェスターに、マルチェドは少し俯き加減に答えた。
「分かりました。でも、僕はあなたの命の恩人なんかではないです」
 承諾したマルチェドに、ジェスターは笑みを浮かべた。
「そいつは良かった。それにしても、君はどこまでも謙虚な人なんだな」
「そういう訳では…」
 何か言いたそうなマルチェドに、ジェスターは苦笑した。


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