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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

132みやび:2008/05/29(木) 15:01:42 ID:3CgPRCb.0
◇―― リレー企画 ――――――――――――――――――Red stone novel[6/9P]

 プリナス・プリミティブ・ライト――別名“天使の卵”と云われた人物が生まれたのはおよそ
二千年ほど昔のこと。
 当時、人類の月面基地がようやく実用的なレベルで稼動を始めた頃、基地内の研究施
設で氏は創造された――そう。氏は人工的に造られた遺伝子工学の落とし子だ。もちろん
技術的な意味では人工物だが、単に両親の快楽から生まれてこなかったというだけで、ちゃ
んとした人間から精子と卵子を提供された、まぎれもない人間だ。その技術が元になり、の
ちの“宇宙世代”を生み出す基盤となった訳だが、多くの失敗例のなかで唯一の成功とされ
た氏の成長にも、問題があることがわかった。
 彼が五歳のとき、実は“彼女でもある”ことが発覚したのだ。
 俗に言われる“半陰陽”などという表層的なものではなく、根本から両性が共存していた
のだ。要するに彼の染色体は男であり女であって、その身体的な特徴は本人の意思ひと
つで自在に入れ換えることが可能で、しかも生理だけでなく人格さえも“ふたり分”の心
を内包していた。彼――そして彼女が“天使”と称されたのはそういった理由からだ。
 プリナスは早熟で好奇心が強く、また完璧な自我を持っていた。
 あらゆる状況に瞬時に適応し、どんな人間をも許容し理解し、また誰からも好かれた。
 プリナスの遺伝子系譜は人類の“始まり”とされる遺伝子を含んでおり、その意味ではす
でに人類の遺産としての価値を持っていたが、そのほかのあらゆる方面でも恩恵を振りま
き、彼――彼女の遺伝子情報がもたらした特効薬、血清、新医療技術は枚挙にいとまが
無い。
 彼――彼女はまさに天使の形容に相応しい扱いを受け、本人にその意思がなくとも必然
的に巨万の財と権限を持つにいたったが、当の彼らはそんなことには興味も示さず、絶え
ず新しいものを――面白いことを求めた。

 そうして今から四半世紀ほど前――彼――彼女――プリナス・プリミティブ・ライト――ま
たは天使の卵――は、人々の前から忽然と行方をくらました。

 そのとき人類の版図は複数の銀河に及び、探検隊の先端は常に宇宙の中心と外部の両
方へ向けて延びていた。
 だが“宇宙を震撼”させた天使の失踪事件は、宇宙中の見識と科学をもってしても解決す
ることなく、ときだけが無慈悲に過ぎていった。

 一方、増殖した人類の箱庭となった宇宙の法を司る最初の権威――中央銀河評議会の
末席を担うホサナ・クリストファー議員は、プリナスの技術から生まれた量産型“第一世代”
の先駆けで、またプリナスとは別に、人類に“一般延齢技術”――もちろんその基礎を作っ
てくれたのはプリナスだったが――をもたらした最初の被験者として、その価値が見出され
た人物だった。
 彼はのちに、記憶や人格をコンピューターに移植する技術を生み出し、自らを実験体に
して安全性を立証した。
 もっとも当時から数えて四百年ほどは――彼に続く宇宙世代しかり――人類の感情は機
械との融合を拒み、全人類のなかでもホサナだけが、プリナスに近い年齢と記憶を持って
いる希少種ということになった。
 彼らの生い立ちと社会的な位置付けからすれば、ホサナとプリナスの出会いは必然的で、
彼らが恋に落ちたとしてもなんら不思議ではないし、実際に彼らは出会い、結ばれた。


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