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新ストーリーです♪

9あずみ:2004/11/04(木) 22:22
 宗隆達が出発する前に立花の屋敷を出た清光は、一行が通る予定の中央街道にある茶屋についた。宗隆達が来るまで一休みに茶と団子をほおばっている。
(日が高くなったからそろそろかな・・)
最後の団子を口に入れたとき、街道に隊列を組んだ集団がやってくるのが見えた。茶で流し込んで代金を置いた。
 中央街道の北には尭安国に続くが、宗隆が送られる先は街道の南の外れで、その先は獣や蛮族の住む未開の地である。清光が休んだ茶屋の近くに小さな砦があるほかには南には関所はない。そのため清光は人に見られることなく一行より先に国境を越えることができた。清光は宗隆が来るまで岩陰に伏せる。
 隊は国境の近くで止まった。
「さあ、わしらはここまでだ!あとは好きに行くがいい。こっちに戻ってくる以外はな!おっと!馬はここまでだ。ここからは徒歩でいくんだ」
頭が嫌なものを放り出せたことでうれしそうにいう。堀部源蔵が用意された旅道具の入った袋を渡す。
「ありがとう。いずれまた」
源蔵がうなずいて手を差し出した。宗隆も手を出して固く握手して別れを告げた。
「ふん!源蔵!とっとと行かせろ!」
頭の怒鳴り声が聞こえたので宗隆は足早に南の森へ向かった。
(宗隆様・・どうかご無事で)
源蔵は小さくなる背中に向かって静かに祈った。

 森に入った宗隆は木陰を見つけて腰をおろした。
「さて・・これからどこへ行くかな・・」
疲れた口調でつぶやいた。
 しばらく仰向けで木々の間からのぞく空を眺めていたが、ふと周囲が気になって見回した。岩陰の方で目が止まった。
(誰がいる!?)
すると、岩陰のほうから人影が走りよってきた。
「従兄上!ご無事でしたか?」
とても懐かしく、一番聞きたい声だったがなぜこんなところで聞こえたのか宗隆は驚いた。
「ヒカル!?なぜお前がここに?」
「従兄上のお供に参りました」
清光はあどけない顔でにっこり微笑んだ。宗隆はだめだと反論しようとしたが、その笑顔にすっかり丸められてしまった。
「ふぅ・・お前が決めたなら止めてもついてくるなぁ」
苦笑いを浮かべながら宗隆は言った。
「はい!従兄上の軍師としてお供いたし・・あっ!」
「ん?どうした?」
「ぼ、僕・・元服の儀を受け損ねたから軍師は名のれないや・・」
元服しそびれたことを思い出して清光は悲しそうな顔になった。
「そうか・・俺でよければここで冠を授けよう。一応俺も父の血を引いているぞ」
宗隆が落胆する清光の肩をたたいて励ます。
「ほんとに?」
清光の顔がぱっと明るくなった。大きくて綺麗な黒の瞳が輝く。
「ああ。では・・汝は元服の年を迎え、主家に奉公することを許す」
「ありがたく承ります」
膝をついて臣下の礼をとろうとした清光を宗隆は止めた。
「いや・・ヒカルを臣下には迎えない。臣下ではなくこれからも俺のよきおとうと従弟としてこの満たない従兄を支えてくれ」
 宗隆の思いがけない言葉で清光はうれしさで胸がいっぱいになった。
「はい!もちろんです従兄上」
うれしさでいっぱいのとびっきりの笑顔を浮かべた。
「よし!これからも頼りにしているぞ」
宗隆もうれしそうに笑う。木漏れ日の差す道を二人は国を背にして歩いていった。宗隆18歳・清光15歳の秋、二人は旅立った。


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