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羽娘がいるからちょっと来て見たら?

649二郎剤 ◆h4drqLskp.:2007/03/06(火) 02:53:41 ID:0.ocYtk2
「だーかーらぁ……エルヤ様は私だけを見ていれば……うぅっ」
 酒の勢いに任せ、ナンナがシヴィルにしなだれかかった。酒気を帯びぬシヴィルは戸惑いつつも苦笑いの反応のみを見せ。
「はいはい、だからって真理の刑とはね……」
「いいえ。それはいけないことよ中尉! 愛という物は淀みなく一人に対して……」
「酔ってるし……」
 白い肌を薄桃に染め、シヴィルに食ってかかるスヴァンは明かな酩酊の様相を見せていた。
「あー……あたしも飲むかな……」
 左右から酒気に挟まれ、中央のシヴィルからはため息が漏れる。
「うー……はずかし……」
 小鶴の刑を受けたエルヤがおずおずと部屋へ入り込み。
「ぶふっ! 何それ!」
「な……ナンナからの指示……」
 バニースタイルのエルヤが申し訳なさそうな様子を表情に乗せ、すでに疲労困憊と言った様子をシヴィルと分かち合うべく彼女の眼前に座る。
「ぶらっくばにー……ぶらっくばにー!」
「黒なの! 白にしなさいよー!」
「二人とも落ち着け……はぁー……」
「はぁぁ……」
 騒ぎ立てる者二人、うなだれる者二人。それが一室の喧噪を埋めている。くたびれる側の二人は額をつき合わせ、騒ぐ二人が左右を彩り。
「聞いて下さいよースヴァンさん! エルヤ様って小さい頃から可愛らしくて……ほらー!」
 何故か涙で顔を溢れさせつつ懐をまさぐり、ナンナの手が写真を突き出す。
「こ……これあったんだ……」
「……可愛いじゃん」
「これはいいですね……教育したくなります。うふふふ……」
「白いの怖……」
 十歳くらいだろうか、小さな少女が自信満々に仁王立ちをする姿、それが写真の内容だ。加えるならば、アザラシの頭らしき物を被り、広がった皮はマントのように長い髪と背中を包みつつ、あぶれた丈が地を這いずっている。
「エルヤ様が初めて飛んだ日の写真なんですよ! 可愛いですよね中尉! ね!」
「う……うん。とりあえず落ち着こうよ?」
「飲んでらっしゃらないから……」
「ちょ……ちょっとま……むぐぐぐぐ!」
 しばらくの抵抗があった。
 現在では酒瓶が口に刺さったまま停止している。
「エルヤ様もー!」
「飲みましょうヤール!」
「ちょ、ちょっとスヴァンさんまでー! むぐぐぐぐ!」
 酒宴はまだまだ続く。

 数時間後、他の物は就寝し、ただ一つ騒がしい部屋がある。
「ナンナがねー……もーベッドで離さないんだよー。けらけら」
 酒気にまみれるエルヤが楽しげに笑い。
「ほほー? じゃー……」
 同じく、アルコールに流されたシヴィルがナンナを見やり、そのすわった瞳は楽しげな目尻を持っている。
「あーまーえーさーせーろー!」
「……エルヤ様って最近浮気っぽくてもー!」
 包容を返した。
「な、なんだとー! こりゃー! なーんーなー!」
 反対側からエルヤが張り付き。
「これも愛よねぇ……」
 酒瓶を煽り、スヴァンがうなずく。
 朝焼けを目にしたのは誰でもなく。見つめられぬ朝焼けは無情にも昇っていく。


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