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羽娘がいるからちょっと来て見たら?

630二郎剤 ◆h4drqLskp.:2007/03/03(土) 20:03:24 ID:2jGvrMh6
――大事な物を掴むため。『手を伸ばすの』
 歌が、二人の歌が重なり。
 合唱の中、刃は重ねられ、そして離れ。影は一つになったかと思えば二つに、時折一つの影は伸び、あるいは三つの影となっては二つへ戻り、そして一つの影へと再び融和する。
『私の心を支えてくれる友達が居て欲しくて。憧れてた。みんなで進みたい』
 歌声に過たず、二つの影が何度目かも解らぬ交差を行う。今までとは異なり、交差の音色は金属の軽妙な調べではなく、互いの拳がこすれる、硬質ではあったが肉の重みを持った響きだった。肉薄とリズムの符号が、各々の得物を振り回す動作すら重なり、生まれたたそれに、奏者らは顔をしかめ、交差を諦める動きに入る。
――信じた光は消えると思う。だからそうなる前にあがくの、動くの。
「ウートガルザ・ライラぁっ!」
 叫び、斧を扱っていた手、その握り拳がライラの頬を掠め。
「ヤール・エルヤッ!」
 振り抜いた拳、体を前傾したエルヤの頭目がけ、己の額を打ち付ける。
 遅れ、ライラが振るう炎の拳と、エルヤの振るう手斧が踊り。
――少なくとも永遠なんか、無い。
「誰が永遠なんか望んだんだよぉっ!」
 炎の猛獣がエルヤに食いつかんとする動きを避け、手斧を振り回し、互いの牙が肩口をねらい澄ます。
「ストラマによる停滞が永遠ではないと思っているのか……ヤールよぉッ!」
「歩みを停滞と思うのは……逃げた君の視点だろうがぁ……っ!」
 ライラの開いた体、頬を掠めたエルヤの腕がそれを払い、衣服は炎をかすかに纏う。右袖を炎に失った腕は、熱さに顔をしかめた主と異なり、全力の振り回しを敢行する。ライラの体が背中側へ乱れ、炎の拳は空を咬む。
『だけど、世界を、みんなを信じている』
 離れていくライラの体、最後に残る右腕に残された短刀を、己を突き飛ばした腕を目指し、振り下ろす。
 金属音が一つ。ダンスの相手が違うとばかりに振り回されたエルヤの右手が斧を示し、ライラは翼で上下逆さの姿勢を護りながら、十分な距離を取る。
 突き放された二人の距離は少しずつ、慣性によって離れていき、その合間にも互いの視線は重なり、動きは次を求めて留まることを知らない。
『私はみんなを幸せにしたいだけ』
 エルヤの両手がポールアクスを握りしめ、胴払いを狙うべく、水平に左から左後ろにまで溜を持ち。
 ライラの右手、握り込まれた短刀の柄尻を、炎の獣が食いつけば、彼女にかすかな傷を与えながらも、短刀を炎の剣へと変えていく。
――そのために。『私達は空を求める』
「混信の一撃――」
「とくと知れッ!」
 メヒと、ストラマと。そしてエルヤとライラと。
 四人の声が重なり、集約した一点へ目がけ、思い思いの力が奔る。


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