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音楽指定で即興するけどお題ある?

254保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:18:51 ID:T8QZhQM6
そして、出会った。
馬券の買い方も、競馬新聞の見方も解らず、それでいて見栄っ張りかつ自堕落な彼は、解りもしない新聞をさも分析するような目で眺め、それでいてその見方を『自分から解ろう』ともしなかった。
格好だけつけて、周りの人間を根拠も無く内心で見下す。

それでも、彼が自身の内でそう思っているだけなら、別に構わない。
実害が無いなら問題ない。彼から誰かに関わる様なことはしないし、関わろうとするものもいない。
だから、このときはまだ、彼はダメ人間だったがダメなダメ人間ではなかった。ダメじゃないダメ人間でもなかったが。

だいたいに、人をダメ人間と言う型に嵌めて考える事自体ナンセンスなのだが、ここでは便宜上使用している。それは彼の思考に準拠してお送りするからに他ならない。


べ、別に俺(著者)がダメ人間だもの、だからじゃないんだからねっ!本当にそれだけなんだからッ!


馬券の買い方も解らず、見たかった『馬』も見えず、いい加減飽きてきた彼に、ある女性が近づいてきた。

かつ、かつ、かつ、かつ。

異例の事態である。異例の事態である。彼は混乱しつつも、雑多なロビーの中で響くハイヒールの音が妙に耳に届いた。
内心バクバクながらも、気がつかないふりをして新聞を読むフリをする彼。中身の無い行動だと、彼は気がついていない。しかし、一般的な振る舞いだともいえた。

「あなた。もしかして初めて?」

それがその女の第一声だった。

女の口調は高飛車なものだった。自信に溢れたものだった。
そして、彼には、逆らいづらい威圧を伴って聞こえた。

「お姉さんが、教えてあげましょうか。」

お姉さん。
確かに年上だろうが、彼にしたって既に三十を超えている。
本人は気がついていないが、全身から発散される『オドオドキョドキョド』オーラは彼からあるべき年季……歳相応の備えるべき示威姿勢が無かった。
ヨレヨレの安いシャツに破けたズボンを穿いていてもジェームズボンドはジェームズボンドだし、堀江貴文は逮捕されてもホリエモンだったし、小泉純一郎はスーツを脱いだらただのセグウェイに乗ったおっさんだし、杉村太蔵は議員をやめてもムカつくと思う。
そういう、個人性から見られるようになる初見の印象、それが彼の場合、不審人物と言うのは言い過ぎだがしかし、キョドッた青年、の、それであったのだ。

ゆえに、紺のスーツを着込んだ彼女と、彼が対比されたとき、自然とお姉さん、といった属性が発生してしまう。
そしてお姉さんは品定めするような目で彼を見て、こういった。

「解らないなら教えてあげましょうか?今なら、か・く・や・す、で。」

金を取ると言う行為をさもサービスするような「か・く・や・す」と言う一文字づつ区切ったお馬鹿なセリフを堂々と吐く。実に、彼を舐めていた。しかし彼はそれにいらだつ事はなく、その女性に羨望を抱いてしまっていた。

傍目で見れば、どちらも。
馬鹿であった。


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