したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【ミ】『忘れじの瑕、コメットテイル』

47 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2019/03/22(金) 16:03:03
>>45
>>46

少年の方に向けていた姿勢を正し、天雨に倣う形で窓の外を見つめる。
けれど、自分は地理に詳しい方とは言えない。
彼女の言葉を聞いても、何かを思い当たることはなかった。

   ――出発した時の時間は……。

車内に時計があれば、出発してからどれくらい経ったかを確認する。
走った時間から、行き先までの遠さ程度は分かるかもしれない。
今はまだ、それ程の時間は経っていないようには思う。

   ――恋愛……傷心旅行……。

耳に届く言葉の一つ一つに心が反応してしまう。
『彼』のことを思い出す度に、気持ちが騒ぎ出す。
でも、ここで『鎮静剤』は使えない。

         スッ

バッグから香り袋を取り出して、自分の横の窓際に立てかけておく。
これで、バスに乗っている間は大きく心を乱してしまうことはないだろう。
別のことを考えて落ち着くことを意識する。

  「天雨さんは……よく旅行をなさるんですか?」

  「私は、あまり……」

  「……以前に旅行に出かけた時は『星見町新春宝くじ』の二等でした」

  「今日と同じようなバス旅行ですが……」

  「廃校になった学校が宿泊施設として利用されていました」

気を紛らわせるために、ぽつりぽつりと語る。
あの時、私は初めて自分の手で人を傷付けた。
それからも同じような経験をしている。
無意識の内に、膝の上にある自分の両手に視線を下ろす。
薬指にある二つの指輪が視界に入り、一瞬それを見つめた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら



掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板