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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』

1 『星見町案内板』 :2016/01/25(月) 00:04:30
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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2 流星 越『バングルス』 :2016/01/26(火) 23:12:41

夜である。
夜の、自然公園である。

備え付けのベンチに、少女が一人座っている。
尾のような栗毛のお下げ、赤ブチ眼鏡にダッフルコート。ショートパンツに黒タイツ。
白い息を吐きながら、足をブラブラ振りながら、空を見上げていた。

   「……エッちゃんはね」

   「エーツってゆーんだほんとはね」

……無表情で歌とか歌いながら、空を見上げていた。
見上げる空は晴れていて、月も星も綺麗に輝いていた。

3 タタラ『インスタント・カルマ』 :2016/01/27(水) 00:52:32
>>2

     ガコッ

          カラン

籠を手に空き缶を拾う女――いや、メイド。

クラシックな、露出の少ないメイド衣装の女。
黒い髪に、渦巻くような、水色の瞳・・・・

「……」

      ガッ   カラン

『流星の歌』に、足を止めて、そちらに視線を。

(酔っぱらいかしら?
 ……見た感じ、若そうだけど。)

       (未成年飲酒? まさかね。)

  トコ

「そこの貴女――」

「何かありまして?
 こんなところで、こんな時間に、歌だなんて。」

          ・・・・この女の姿こそ、何かあったのか?
              そう思われそうだが、タタラはマジだ。

4 流星 越『バングルス』 :2016/01/27(水) 01:08:53
>>3

   「だけどおっちゃめだーから自分のこーとエッちゃんって……」

         「…………はて」

歌を止め、足の動きを止め、タタラの方を向く。
張りつけたかのような鉄面皮。
眉をピクリとも動かさず、ニコリともしない。
顔は少し赤いが、これは寒さによるものだろう。あるいは、それこそ酒でも飲んでいるのか。
ともあれ、ただただ何の感情も浮かべぬ無表情で、声の方を向いた。

   「……声をかけられてしまいました。
    これが異性でしたらすわナンパかと舞い上がってしまうところですが、これは残念お姉さんです。
    いえお姉さんではなく『お姉さま』的なアレである可能性もあるわけですが、ともあれこんばんはメイドさん。素敵な夜ですね」

……そして、無表情のまま長セリフをまくしたてる。
やはり、表情はピクリとも動かない。

   「タイはお互い曲がっていませんが、閑話休題」

   「何かあったかと聞かれますと中々に返答に困るのですが。
    バイト帰りに空を見上げたら素敵な夜空だったので、ちょっと星でも見てから帰ろうかしら、とでも言いますか。
    するとなんとなく幸せな気持ちになってきまして。
    幸せなら手を叩こうと昔の人……っていうと世代の人に怒られてしまうので、少し前の人は言いましたが、ともあれそんなわけで歌を歌っていたのです」

   「つまり簡潔に言うのであれば、素敵な夜ですね?」

こてん、と首を傾げる。
無論、表情は無表情。

5 タタラ『インスタント・カルマ』 :2016/01/27(水) 01:18:46
>>4

「ええ、素敵な夜――」

     クィ

空を見て。
顔を下ろして。

「――ですワね。
 星も、月も、よく出ていて。」

        フ

微笑する。

(月は人を狂わせる、と言うし――
 歌っていたのは、そういうことかしらん。)

やや赤らんだ頬に、目を細める。
未成年飲酒は、罪だ――裁くほどではなくとも。

          ・・・・そうではなさそうだが。

「生憎、ナンパではございませんワ。」

「ただ、歌声が気になっただけ。
 失礼しましたワ、どうぞ続けてくれても。」

    ガ

足元の小さなゴミを、火ばさみで掴んで、籠へと入れる。
籠の中には、雑多なゴミがたまりつつあった。

         (それにしても……表情の変わらない女ね。)

6 流星 越『バングルス』 :2016/01/27(水) 01:33:19
>>5

   「ええ、本当に。
    今日は星を見るにはいい日です」

   「まぁ星座はあまり詳しくないのですが。
    空に浮かぶ星が全部オリオン座だったら星座全部知ってるぜフフーンと言えるんですけどね」

空に浮かぶ星が全部オリオン座だったらちょっと不気味だ。
ジョークのつもり、なのだろうか。
笑いかけられても、やはり表情はピクリとも動かない。

   「そうですか。それは残念ですわお姉さま。
    とはいえ私の超常的歌唱力を前にすれば思わず声をかけてしまうのも当然と言えるでしょう。
    スカウトでしたらいつでもお待ちしております」

胸に手を当て、微妙に流し目。
……表情は無いが、もしも表情が豊かであれば『ドヤ顔』していたのであろうことは想像に難くない。

    「とまぁ、そんな今日び中学生でも恥ずかしくて言い出さないような話はさておくとして」

    「……メイドさんは、なにをしていらっしゃるので?
     というかそもそも、メイドさんはメイドさんなので?
     現代日本でメイドさんなんて、メイド喫茶か何らかのイベント以外でお目にかかれるとは夢にも思いませんでしたが」

そんな不思議な少女でも、『夜の湖畔公園でゴミ拾いをするメイド』という光景は気になるらしい。
再びこてんと首を傾げ、無表情のまま問いかける。

7 タタラ『インスタント・カルマ』 :2016/01/27(水) 01:44:10
>>6

「私も星にはあまり詳しくありませんワ。
 星の話が出来たら、少しはロマンチックだったかしら。」

        カチャ

火ばさみを下ろして、地面を見る。
星が綺麗でも、地面は汚れている。

そして、眼の前の少女。

(変な奴ね……関わって失敗かしら?)

酒気も、罪の色も、今のところ感じない。
奇人変人の類か、と、大きな瞳を少し絞る。

「スカウトマンには見えないでしょう?
 見ての通り、『ゴミ拾い』ですワ。
 星の町なのに、こんなにゴミがたくさん――」

「さしずめ『スペース・デブリ』かしらん。」

           カチャ

火ばさみを、目の高さまで掲げて。

「そしてこの格好も、伊達や酔狂ではございません。
 現代日本でも――『メイド』は絶滅していませんワ。」

     「尤も、中世のソレそのままじゃあないですけれど。」

               ・・・・どうも本当に、メイドらしかった。

8 流星 越『バングルス』 :2016/01/27(水) 02:00:52
>>7

   「まぁ」

ぽん、と顔の横で手を叩いた。
本物のメイドと聞いて、感嘆した……のか。

   「驚きました。メイドさん、まだいるんですね。
    やはりお屋敷とかに勤めてらっしゃるのでしょうか。
    思えば雇われの家政婦なんかは普通にいるのですから、メイドぐらいいてもおかしくなさそうなものですね」

驚いたと口では言っているが、鉄面皮が揺るぐことは無く。

   「しかしなおさら疑問なのですが、なぜメイドさんがゴミ拾いを?
    ご主人の意向とか、そういうアレなのでしょうか?」

まぁ、これももっともな疑問だろう。
メイドが、一人で、公園で、ゴミ拾い。
どう考えても、よくわからない状況だ。

   「あ、それとも私はこの町そのものに仕えているのだとかそういう展開?」

9 タタラ『インスタント・カルマ』 :2016/01/27(水) 02:09:00
>>8

「お屋敷ですワ。
 それ以上のことは、企業秘密。」

        ピ

指を立てて、秘密めかした笑み。
タタラの笑みは、どうにも、つくりものが多い。

         ・・・・そして。

「さっきも言ってしまったけれど……
 私が仕えているのは、あるお屋敷。そしてゴミ拾いは――」

        「『一日一善』」

毅然とした態度で、そう言い張る。
一日、一善。それこそがタタラをタタラたらしめる。

「善行を重ねれば――
 きっといつかは良い事がある。」

     「ゆえに、今日はゴミ拾いですワ。」

そういうことだった。
……ちなみに、昨日は赤い羽募金に500円入れた。

「貴女もいかがかしら? ゴミ拾い。あるいは別の一善。」

             ・・・・勧誘までする始末。

10 流星 越『バングルス』 :2016/01/27(水) 02:26:33
>>9

   「企業秘密ですか。
    ……テンション上がってくる響きですね」

映画の中から飛び出してきたみたいな、非現実的な人。
だけどそんな人が目の前にいるわけで、気分が高揚した。らしい。
らしいというのは、当然表情が変わらないからだが。

ともあれ。

   「善行」

オウム返しに呟く。
『一日一善』。子供のころ、習字の授業で書かされたような四字熟語。
その理屈は、むしろ『情けは人の為ならず』のようなものだったが……

   「……なるほど。
    では、お邪魔でないのでしたらお手伝いします」

ぴょんとベンチから飛び降り、両手をヤジロベエのように立てて着地。
ぱんぱんと服の埃を払ってから、肩を回す。

   「一人は星を見た」

   「もう一人は泥を見た」

   「……なんて詩もありますが、なにも二人で別のことをしなきゃいけないわけでもありませんし。
    星は存分に見ましたから、今度は二人で泥でも見ましょうか」

無表情のままそう言って、ゴミを拾い始める。
道具は無いから手で拾い、てててとタタラに近づいて籠に入れて行く。

   「デブリの駆除なんて、SFチックですしね。
    あんまりロマンチックではありませんけれど。このデススターにかかれば全て粉みじんよー」

          カコッ

11 タタラ『インスタント・カルマ』 :2016/01/27(水) 02:41:28
>>10

「上がったからって、
 歌うのはおよしなさいな。」

(私まで歌の仲間と思われたらいやだもの。)

根底は、エゴ。
やんわりした口調で、くぎを刺して。

      カチャ

「ええ、善行。」

「邪魔だなんて、とんでもない。
 空き缶拾いで財を為してる方には、
 ひょっとすると邪魔かもしれませんけれど。」

      カコン  

火ばさみでゴミを拾いながら、ゆっくり歩く。
手で拾うのはごめんだ。得体が知れないゴミもある。

「星を見たがる人はいくらでもいますワ。
 けれど……泥を見たがる人はあまり、いない。」

       「だからコレは、善行になる。」

だから――
いずれタタラは、救われる。

             そう、信じている。

   ・・・

       ・・・

   ピタ

     しばらくして、タタラが立ち止まった。

12 流星 越『バングルス』 :2016/01/27(水) 02:51:05
>>11

   「ご安心下さい。
    私は恥ずかしがり屋さんなので、改まってエッちゃんリサイタルするほどの情熱は持ち合わせておりません。
    顔から火が出てしまいます。……顔から火が出るって完全になにかのモンスターですね」

……これで恥ずかしがりやなど、どの口が言うのか、と言う感じではあるが。
少なくとも、とりあえず、再び歌いだす気は無いらしい。

   「〜♪」

……鼻歌はちょっと歌っていたが。

ともあれ。
拾う、捨てる。  カコッ
拾う、捨てる。  カコッ
拾う、捨てる。  カコッ
その繰り返し。何度も、何度も、繰り返し。
これってどうやったら終わりなのかな、と流星が考え始めたころ。
タタラの動きがピタリと止まり、つられて流星もピタリと止まる。

   「…………メイドさん、どうしました?」

   「もしや私が時を止める超能力に覚醒してしまいましたか? ヒュー」

ピタリと止まった姿勢のまま、小首を傾げた。

13 タタラ『インスタント・カルマ』 :2016/01/27(水) 03:03:10
>>12

「そう、それは――安心ですワ。
 いえね、歌が嫌いなわけじゃあないのだけれど――」

   ・・・   カコッ

   カコッ

        ・・・  カコッ

               ――そして。

立ち止まったタタラは振り返る。
水鏡のような目を瞬かせ。

「超能力だなんて。
 まさかね、そうじゃあありませんワ。」

「――そろそろ、帰る時間というだけ。
 何分、メイドですので。家事もありますし。」

それは全然、大した理由ではなかった。
もっともメイドとしては、最大級に大した理由かもしれない。
 
            ・・・・そして。

   ス

「貴女はどうします?
 続けるなら、貸しておきますワ。」

       「手で拾うなんて、きたないでしょう?」

火ばさみを差し出すようなポーズを取る。
それはどこにでも売ってそうな火ばさみで、だから貸すのだろう。

14 流星 越『バングルス』 :2016/01/27(水) 03:18:17
>>13

   「ああ、なるほど」

   「超能力でなかったのは残念ですが、納得しました。
    確かにお忙しそうですものね、メイドさん。超能力でなかったのは残念ですが」

   「超能力でなかったのは残念ですが」

三回言った。
まぁ――――実のところ、時を止めるなんて代物ではないにせよ、『持っている』のだが。
だからこれは本当にジョークもいいところなのだが、それはともかく。
スッと姿勢を正し、曲げた人差し指の第一関節で眼鏡を押し上げる。

   「私ですか」

   「私は、というか私も、そろそろおうちに帰りましょうかね。
    エッちゃん寂しがり屋さんなので、一人でやってたら不安で爆死とかしそうです」

そういうことらしい。
パンパンと手に着いた汚れを軽く払い、ぺこりとタタラにお辞儀。

   「今日はありがとうございました」

   「……おや?
    よく考えてみるとお礼を言うのも妙な気がしますね。
    しかしなんと言えばよいのやら。上官殿と共に戦えて光栄でした、みたいな?」

   「…………まぁそんな感じで。お仕事頑張ってくださいね、メイドさん」

首を傾げながらも手を振り、タタラを見送る構え。
タタラが去って行けば……すぐに、流星も帰るだろう。空は、相変わらず星々が美しく輝いていた。

15 タタラ『インスタント・カルマ』 :2016/01/27(水) 04:28:00
>>14

(超能力が欲しいのかしら?)

「メイドですもの。忙しいのが普通ですワ。
 それでも、労働環境はきちんと近代的だけれど。」

        コク

頷きながら、火ばさみを引くタタラ。
そして籠を肩に掛けなおして。

「爆死は困りますワ、
 拾うものが増えてしまうもの……ふふ。」

冗談、らしい。

「ええ、礼を言われることもないですワ。
 こちらこそ、人と一緒に善行を積むのは新鮮でした。」

            フ

微笑を浮かべて、振り返る。
急ぐ必要はないが、帰らなくてはいけない。

「では、夜道にはお気をつけて。」

「この町は平和だけれど――何があるかは、分かりませんもの。」

            カチャ
                  カチャ

空の星もまた、変わらず光り輝いている。
空き缶とごみの擦れる音を残し、歩き去る。

               ・・・・積んだ善行を確かめるように。

16 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/05(金) 01:03:27

――海浜公園内、木陰に位置するベンチ。

    piko

piko

せっかくの晴天。
アウトドア日和。

外でゲームをするのは……正解なのか?

      「……えひっ。」

携帯型ゲームを巧みに操る人形の様な少女。
帽子を被り、黒髪に青い眼鏡、レンズの向こうの瞳は桜色。

    カチャ      カチャ

     ・・・・イヤホンを着けており、周囲はあまり、見えていない。

17 人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』 :2016/02/07(日) 22:13:02
>>16
せっかくの晴天。
アウトドア日和。

『昼寝』をするのも、いかがなものか。

「……………………むにゃ……」

木陰に横たわり、『枕のような羊』の『スタンド』を
枕代わりにして、女がぐっすりと眠りこけている。

……よくよく見れば、以前『駅前』で会ったことを思い出すかも知れない。

18 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/07(日) 22:34:23
>>17

「…………」

      カチャ

          「あ」

    ピタ

手が止まり、少し眉間にしわを作る。
何かの失敗があったか――

        ハァ ァ 

息を吐いて、何となしに視線を上げると――

「……うおっ……」

      (こんなところで寝落ち……
        寝落ち? ……あれ? あいつ……)

見覚えのある女だ。
前には、駅前でいきなり眠りこけていた。

(……まあ……ここでスヤァすんのは自由か。
  オフトン代わりの……芝生もあるしな……捗りそう。えひ。)

          トコ    トコ

            ・・・・なんとなく近づく。
               ゲームを休みたいのも、ある。

19 人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』 :2016/02/07(日) 22:56:08
>>18
「…………すぅ……」

近づいてみると、『人吉』は穏やかな寝息を漏らした。
何と言うべきか……実に『平穏』な風景だ。

「……えへへ」

何の『夢』を見ているのか、時折ニヤけたり、

「…………あら、あらっ……」

焦ったような顔を浮かべたりしていたが、

「うぅ〜……ん……」

パチッ
木陰に揺れる草の音か、はたまた『恋姫』の足音か、
何かに反応したらしく、うっすらと目を開ける。

「……おはようございます……?」

20 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/07(日) 23:05:02
>>19

      ジ

しゃがみこんで、寝顔を眺める。

「…………」

     (えひ……眠り名人かよ……
      気持ちよさそうにしやがって……)

   「ふあ……」

     パチ
            パチ

恋姫もつられて小さくあくびし、瞬きを二度ほど。
不眠ではないが――

         ・・・と。


「あ……えひ、おはよう……」

         「あー……ごめん、
           起こしちゃったか……?」

寝言というわけでもなさそうだし――返事する。

21 人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』 :2016/02/08(月) 00:04:28
>>20
「あっ…………違いますよぉ、先生……
眠ってたわけじゃなくて………………あら?」

どうも『寝ぼけ』ていたようで、
しばらくよく分からないことをのたまったあと、
『恋姫』に目の焦点を合わせて不思議そうに声をあげた。

「……うっかり、眠っちゃってたのかしら。
そんな、ごめんなんて……良いのよぉ、別に……あら」
「あなた…………どこかで、会ったことがあるような……」

22 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/08(月) 00:14:29
>>21

「……廊下に立ってる? えひ。」

冗談で返して。
イヤホンを外す。

     フィ

やや視線をずらし、ゆっくり立ち上がる。

「まあ……今日はあったかいし……
  この辺でなら……薄い本も、厚くはならないだろ……」

人影はまばらだが――
町中よりは、リラックスが許される場所。

「ほら……駅前で会ったじゃん……
  あのキャンドル……えひ、まだ使ってないよ。」

       「もったいないお化け……出ちゃいそうで……」

              ・・・・以前もらった蝋の欠片。
                  未だに机の上に置いてある。

23 人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』 :2016/02/08(月) 00:22:17
>>22
「あら…………わたし、そんなこと言ってたのかしら?」

クスクスと笑う。

「昔の夢を……見てたわ。厳しい先生がいてね…………
まあ、『居眠り』は、どんな先生だって怒るものかしら」

それに『課長』もね、と付け加えた。
いまだに、怒られてばかりだ。

「あらぁ……良いのよぉ、使いたいときに使うのが『一番』だわ。
まだ使っていないなら、『そのとき』じゃないってこと…………ふわぁ」

心地よい日差しに当てられたのか、あくびが飛び出した。

「それにしても…………いい天気ねぇ」

24 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/08(月) 00:31:15
>>23

「えひ、言ってたよ…………
 お前も……なんかいろいろ大変なのな……」

      (社会人、か……
        僕もいずれなるのかな……)

『先生』には、それ以上触れない。
こんなにいい天気だから。

「たまに……匂い、嗅ぐんだ。」

          「そしたら……
           えひ、安心する……」

   ニマ -

やや緩んだ笑みを浮かべる。
それから。

「…………ちょっとだけ、寒いけどな。
 でもまあ……いい天気だ……えひ。」

「……日向ぼっこでもしてたの?」

            ポカポカ

              (こいつといると……いらいらしない……)

25 人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』 :2016/02/08(月) 00:55:48
>>24
「生きるって、きっとそれだけで『大変』よぉ……
でも、だからこそ…………生きてるって、思えるのかしら」

「うふふ。役に立ってるようで、嬉しいわ〜……
わたしはもう、使い切っちゃったから……また、お店、探さなくちゃ」

釣られるように、笑った。

「そうなのよぉ……ほんとは、『散歩』しに来たんだけどねぇ」
「うふふ……お正月から、『お餅』食べ過ぎちゃって」

26 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/08(月) 01:09:30
>>25

「えひ……なんか、深いこと言うじゃん……」

生きる。
恋姫は今、生きている・・・・

      運命が少し違えば。
      あの時。

(……死にたくは、ない。
  えひ……そう思えるだけ、幸せなんだよな。)

あの時、死んでもいいと、思っていた。
そこに戻りたくはない。

      ポカ
              ポカ

・・・・今日はいい天気だ。

「……すげー捗るよ、あれ。」

キャンドルの一かけら。
それだけで、あの効力。

「あ……品切れちゃったか……
 えひ、ざんねん。余計大事に使わなきゃだ……」

      「けど、僕も……あれ売ってる店なら、
        ……探したいな……散歩ついでにでも……」  

ダイエットは必要ないが・・・・
目的があるなら、恋姫も歩く。

            あのキャンドル。
             恋姫は……ファンだ。

27 人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』 :2016/02/08(月) 01:18:47
>>26
「深い……かしら? わたしには、よく分からないけど…………
確かなのは、今、わたしはここで生きてるってこと。
『眠れる』…………それに、『目覚められる』って、そういうことよね」

「うふふ…………それじゃあ、探しに行かない?
お散歩ついでに…………あなたとなら、楽しそうだもの」

すくっと立ち上がり、そう提案する。

強烈な効き目の『キャンドル』……『Flourished Rose』。
一体なぜ、あんな『効能』があるかは判然としないが、
『人吉』と『恋姫』にとっては、それを好むという点において『共通項』だ。

28 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/08(月) 01:27:33
>>27

「えひ……僕もよくわかんないよ。
  なんとなく……そう思っただけで……」

       「……」

誘いを受け、少しだけ、止まって。

「……えひ……お誘い、されちゃった……リア充みたいに……」

         「あー……まあ……
          せっかくの日和だし……な」

   ゴソ

ゲーム機を腰につけたポーチにしまって。
立ち上がった人吉を見上げる。

「……たまには散策でもしてみるか。」

        「すれ違い通信も捗るし……」

などと言いつつ。
歩き出すなら、着いて行くだろう。

                 ・・・・そうだ。  
                   キャンドルを探しに、だ。

29 人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』 :2016/02/08(月) 01:45:15
>>28
「そうねぇ。うふふ、行きましょうか…………」

ゆっくり、一歩ずつ踏みしめるように歩き出す。
心地よい人と過ごす時は、静かに、のんびり味わうものだと、
『人吉』は思っている。

「まず『大通り』から当たってみようかしら……」

話しながら、湖畔を後にした。

30 荊木レイ『スティル・ライフ』 :2016/02/09(火) 23:46:09


             スオォォ…


「あるぇ?
 あれれ?」          

ベンチに腰掛けた眼鏡を掛けた女子高生が
誰に話しかける訳でもなくしきりに首を傾げてる。

「なぁんか、
 変わってねーっすか?
 フォルムがシャープになったてゆーか?
 ……あ、あれぇ?」

31 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/11(木) 00:16:50
>>30

「…………??」

そんな様子を眺める少女。
年は……小学校高学年か、中学生か。

同じく眼鏡を掛け、また帽子を被り、髪は黒く、瞳は桜色。
 
     カチャ
       
             カチャ

     (なんだあいつ……
        フォルム?シャープ……?)

             (ベンチマニアか……?
               えひ、何それこわい……)

小さな手で『携帯ゲーム』を弄ぶ。
視線を外している辺り、アクションではあるまい。

                ・・・・しかしフォルムとはなんだろう?

32 荊木レイ『スティル・ライフ』 :2016/02/11(木) 00:31:57
>>31
こちらはまだ恋姫さんに気付いておらず、
ベンチに腰かけ首をかしげています。


             「う        ズ
              |        ォ
              ん」       ォ

ラップを剥がす様に、
身体から筋骨隆々のスタンドの『腕』を発現。
ズレた眼鏡を直し、
発現した『腕』を観察します。

    「あれェ〜ッ。
     やっぱりぃ…?」

    「なんて言うんすかねェ?
     根本的にはそこまで変わってないんだけどォ、
     長期連載で『絵柄』が変わったっていうか、
     アニメで作画が、
     なんかおかしくない?て言うか?」

「うーん、
 ウーン」

33 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/11(木) 00:51:14
>>32

            ズ      
             ォ      
            ォ        

「うぉっ…………」

     突然のスタンド!

(常識みたいに出しやがって…… 
  ……フォルム……? あのスタンドのか?)

       (シャープどころか……
         筋肉モリモリじゃねえか……)

まあスタンド自体は見慣れたものだが、どういう状況だろう。

(作画崩壊っておま……
 キャベツじゃないんだし……)

        (常識的に…………)

              「えひっ……」

             ・・・思わず小さな笑いが漏れた。
                視線は思いっきり、スタンドだ。

34 荊木レイ『スティル・ライフ』 :2016/02/11(木) 01:01:52
>>33

    「どぉしたんだろ…。
     もしかして私が
     ダイエットしたせいで…」

             
            「あ」

目が合います。
「しまった」って表情をして、
咄嗟にスタンドを解除します。

「こ、こんにちはぁ〜ッ!
 良い天気っすね!
 …あッ!ゲーム!ゲームやってるんすか!
 そうだゲームッ!!」

アセアセ 

 「いいですよね!
  私も好きですよ!」  露骨に話題をそらそうとします。

35 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/11(木) 01:28:22
>>34

     (ダイエットでスタンド痩せるとか……
       つーか、もともとどんだけデカかったんだ……?)

     「……」

「…………!」

――と、ここでバレたと気づく恋姫。

         フイ

         (ヤバいか……?)

視線を逸らす。
まあバレていいこともない。

  (ヤバくは……なさそうか……?)

             ・・・目を少し細める。

「あー……うん。いい天気だわな。
  ゲーム……まあ、やってるけど……」

     カチャ

携帯ゲーム機の画面には……
某有名RPGの新作がプレイされている。

「えひ……ゲーマーなの、お前も……?」

            ニヤ

(そういや……さっきの……えひ、例えが、
   漫画と……アニメだったしな。同類か?)

       「あー……どんなゲームするの……?
         あれか? モンスター狩るやつか……?」

    話題逸らしなのは明白だが、恋姫の好きな話題だ。
     ゲームの話は……したい。まずはジャブとして『狩りゲー』で行く。

36 荊木レイ『スティル・ライフ』 :2016/02/11(木) 23:54:07
>>35
「は、はひッ!
 ゲーマーっす!
 ゲーム大好きです!
 三度の飯よりゲーム好き!」

                   ビ
                   ク
                   ッ

話題を反らす為に
咄嗟に口から出てきた言葉に
思わぬ食いつきをされてビクッとなります。

「あれ好きっすよ!
 『ロクヨン』の『スマブラ』ッ!
 ピーケーサンダーッ!ってやつで自分のお尻に、
 雷当てるやつできますッ!」

             「それにッ」

「RPGのレベル上げとかも得意ですよッ!
 ちっちゃい頃、
 お姉ちゃんにお小遣い貰う代わりに、
 延々とレベル上げをしたりしてッ!
 ニハハ…」

37 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/12(金) 00:08:43
>>36

「えひ……僕もいっしょだよ。
 面白いよな、『スマブラ』…………」
 
     「最近はネット対戦できるし……
        まあ、えひ……民度はお察しだが……」

ゲームの話なら饒舌になる。
しかし『64』とは・・・・

   (原理主義者か……?
      ライトゲーマーなのかな……)

「…………えひ。
 レベル上げかあ……」

そしてレベル上げとは・・・・

(こいつ……言うほどゲーム好きじゃないな……)

       (僕に合わせてんのか……
         えひ、コミュ力ってやつか……)

少し目を細める。
まあ別に舐められてるとかじゃないのは分かる。

「……あー……」

     ガリ

頭を少し掻いて。

「今なら……あれかな……
 リセマラとか……代わりにやらされたり……」

          「……すんのかな。
            現代的に考えて……」

38 荊木レイ『スティル・ライフ』 :2016/02/12(金) 00:20:12
>>37
「ニハハ…」

目を細める恋姫さんに
若干たじろぐ素振りを見せますが、
笑ってごまかします。

「へッ?
 リセマラ…ってなんすか?
 マラって事はマラソンっすか?」

        「なぁーんか」

「ハードそうっすねェ」 カパカパッ

手持ち無沙汰なので、
ポケットから塗装が剥がれる程使い古した
ピンクの折り畳みのガラケーを取り出し、
カパカパします。

39 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/12(金) 00:41:47
>>38

「リセットマラソン……
 まあ、ハードだし、作業ゲーの極致……」

          「……」

  (ガラケーとか……こいつ……
     まじでゲームしないやつだな……)

カパカパされるガラケー。
これはマジだ。

「……まじでベリーハード。」

     ・・・

         ・・・

その後沈黙する恋姫・・・どうすればいい?

(普通に放置プレイ……
   そもそも……スル―推奨だよな……)

          (帰ってスマブラでもするか……)

どうもしなくていいのでは……           
   そもそも向こうは『ごまかしたい』訳だし……

                 (自然な感じで……立ち上がるか……)

40 荊木レイ『スティル・ライフ』 :2016/02/12(金) 00:51:15
>>39

    「うッ」

    「あッ!でも、
     『マリモ』育てるのは得意っすよ!」

シドロモドロに、
一昔前に流行ったゲームの話をします。

          「あのーッ」  ソロォ――

 「すいません。
  実はですねェ〜…
  スタンド見られて、
  「しまった!」と思いましてぇ…
  それでそのぉ〜ッつい」

41 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/12(金) 01:08:33
>>40

「…………まりも?
 えひ……北海道旅行でも行ったの……?」

唐突なまりも。
恋姫は『学生のはやり』には弱い……

    「あ……
      ゲームのか……」

           (……タイミング逃した感。)

何となく立ち上がる隙を潰された感じだ……そして。

          「……あー」

「あー……いや……
 僕もなんか…………ごめん、だよな……」

(そもそも僕が笑い耐えてたらこの時間なかったしな……)

歴史的和解の瞬間だ。

   「なんつーか……あれだ。
     ゲーム話だから、乗っちゃったわ……」

                  「…………えひ。
                   お互いハードだったな……」

42 荊木レイ『スティル・ライフ』 :2016/02/12(金) 01:27:05
>>41

 「ニハハ…」
 「そォーっすねェ」

       ズギュンッ

『スティル・ライフ』の全身を発現し、
その姿を恋姫さんに見せてから解除します。

「変なトラブルを避けるために
 変に気を遣ったら
 逆にこんがらがっちゃったてゆーか」
          
             「ニハハ」
「どうにも難しいっすね。
 よいしょっと」    ベンチから立ち上がります。

43 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/02/12(金) 01:38:23
>>42

「えひ…………コミュ力って難しいな……」

      オォォオオ ・ ・ ・

         ボ  ボボ

『ブルー・サンシャイン』を発現して――

        シュゥ ゥ

すぐに解除。
そして、椅子に腰かけ直して。

   「……おあいこ、ってやつだ。情報アド的に。
     えひ……コミュ的に合ってるかは分からんが。」

              「んじゃ……
                 またな……」

特に呼び留めたりはせず、ゲームに視線を戻す。

         カチャ   カチャ

                   (……なんか……
                     変な奴だったな……)

                          ・・・少なくとも、イライラはしなかった。

44 荊木レイ『スティル・ライフ』 :2016/02/12(金) 01:43:10
>>43
「あッ、
 ありがとうございましたっ!」

恋姫さんを見送り、
帰路へとつきます。

45 葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』 :2016/02/25(木) 00:21:59

「…………」

     シャーーー


ペダルをこぎ、タイヤは回る。
ロードバイクに跨り、風になる時間。

      ヒラ   ヒラ

黒いリボンが揺れる。
赤い髪がたなびく。

(最近は、お勉強ばっかりだったし……
  たまには、運動しなきゃね。うん……気持ちいい。)

赤い髪に黒い外套の少女が、
これも真っ赤なロードバイクを乗り回す姿は――

   (……もうちょっと、走ろう。)

                     ――目立つ。

46 イザベル『アーキペラゴ』 :2016/02/26(金) 00:34:30
>>45

小さな背丈に、豊かな胸で押し上げられた白い水兵服、同じく白いショートパンツ。
夏場であれば惜しげもなく晒されていたであろうへそや手足を包む、黒いインナータイツ。
そんな『いつもの格好』で、イザベル・ドレーク・ノルダーノは湖畔公園を歩いていた。
……その肩には、釣り具。

     「…………ん」

そして、視界の端に赤い色。
顔を向ければ、見知った顔。……そこそこ距離はあるが。

   「おっ、ホフリじゃねェの」


       「おォーーーーーーいッ!!」

              ブン
               ブン

大きく手を振り、大声で遠くの穂風に声をかける。

47 葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』 :2016/02/26(金) 23:01:31
>>46

「……………」

     「……あっ!」

穂風もまた、その姿を認めた。
ハンドルを切って。

            シャァァーーz__ッ

「……イザベルさんっ!」

声を返しながら、そちらへと、自転車を走らせる。

        キキーッ

   「っと……」

          トトトト……

そして、止める。
危ないので、途中からは押して近づく。

「……イザベルさんっ。」

「あの、こんにちは。お天気、ですね。
 ええと……お魚釣り、ですか、その道具って。」

      (そっか、ここって釣りの名所……だっけ。)

今日の空は、快晴も快晴。
穂風は笑みを浮かべて、視線をイザベルに、それから『釣り具』へと動かす。

48 イザベル『アーキペラゴ』 :2016/02/26(金) 23:21:09
>>47

    「おー!」

      ブン
       ブン

大きく手を振って、穂風が近寄ってくるのを迎え受ける。

   「Hola! いい天気だな!」

         ニッ

    「まー『魚釣り』だぜ。つってもどっちかっつーと主目的は湖の『水質チョーサ』なんだが」

  「大学は今春休みだからよ。休みの間の研究にな」

そういうことらしかった。
当然だが、この街の湖、川、海はそれぞれ繋がっているので、それぞれ調査することに意味はある。
実際のところは、趣味と実益を兼ねて……というところだが。

      「そういうホフリはサイクリングか? イカした自転車じゃねェの」

49 葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』 :2016/02/27(土) 00:01:07
>>48

「はいっ。」

    ニコ

笑み返す。
太陽のよう――とは言わずとも、明るい笑み。

「水質、調査――ですか。
 ええと、海のお勉強……研究、ですよね。」

     「……偉い、です。
      お休みまで、その、お勉強、なんて。」

穂風は関心したように、大きく頷く。
自分も『勉強』に追われる立場になったからこそ――か。

それから、自転車に視線を向けて。

「あ……はい、サイクリングです。
 これ……えへ、少し前に、福引で当たって。」

     スリ・・・

「お気に入り……です。
 えと、イザベルさんの釣り竿は、お気に入り……なんですか?」

ロードバイクのサドルを撫でつつ、穂風は聞いてみる。
やはり『愛用の一品』という趣、なのだろうか? 穂風は釣りは詳しくないが。

50 イザベル『アーキペラゴ』 :2016/02/27(土) 00:17:13
>>49

    「つっても休みの『手慰み』って奴よ。好きでやってることだしな」

  「まっ、アタシが偉いのはもはや言うまでもねェけどっ!」

鼻高々に豊かな胸を張った。

ともあれ、視線を『自転車』の方に向ける。

      「ほー、『福引』でか。
       大したもんじゃねェの!」

穂風の『幸運』に対してでもあるし、自転車の『質』に対しての言葉でもある。

   「アタシか? アタシの方は……『お気に入り』ってほどでもねェかなァ」

     「そこそこ愛着はあるけどな!」

そんなことを言いながら、『釣り具』の準備を始める。
……ここで『釣り』をするつもりらしい。

       「どうせ季節的に大したもん釣れねーけど、見てくか?」

51 葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』 :2016/02/27(土) 00:19:31
>>50

52 葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』 :2016/02/27(土) 00:29:22
>>50

「え、えへへ、そうですよねっ!」

      ニコ

胸を張るイザベルに、微笑む穂風。
これは『冗談』だって笑えるくらいの仲だと、思う。

            ・・・そして。

「はい、それに、ええと。
 同じ時に……旅行券も、当たって。
 えへ、それは家にしまってあって、それで……」

          「……」

あの時は――幸運だった。
一日にして手に入れた家、自転車、旅行。

       けれどそれより――

「……」

    「…………」

          「……あっ、えっ、は、はい!
              あの、お邪魔じゃないなら。」

ぼうっとしていた穂風だったが、イザベルの誘いに乗ることとした。
自転車にロックをかけ、イザベルの隣へ。

      (……どんなのが釣れるんだろう。)

                         ・・・見てみよう。

53 イザベル『アーキペラゴ』 :2016/02/27(土) 00:36:39
>>52

    「旅行券! そりゃまたスゲェな!」

   「まー急に『旅行』とか言われてもピンとこねーだろーけどなァ。
    期限切れる前に使っとけよ?」

『福引』の景品となると、恐らく国内ではあろうが。
それでも『旅行券』となると中々の物だ。
それも、『自転車』と同時になどともなれば!

      「ン」

    「まァマジでなんも釣れねーかもしれねェけど」

ともあれ、『釣り具』の準備を整えて(エサはミミズだ)……

           ヒュンッ

               ポチャンッ

湖に『釣り針』を投げ入れる。
…………そのまま、待機。

      「ほんとは『海』の方が好きなんだけどなー」

   「今日は研究兼ねてこっちだ。『ボウズ』なら『ボウズ』で研究結果にはならァな」

54 葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』 :2016/02/27(土) 00:56:02
>>53

「ぁう……どこに行こうか、迷ってて……
 この町でだって、まだ、たくさん……
 たくさん……行っていないところがある、から。」

          コク

          「でも……決めなきゃ、ですね。」

町の外のことは、家の中以外、ほとんど知らない。
だから遠くに行こうって思っても、そのイメージは靄のまま。

                   ・・・ともかく。           

           ヒュンッ

               ポチャンッ

(みみずだ……)

湖に沈むみみずと、針。
神妙な面持ちで見守る穂風。

    「海は……お魚、えと、いっぱいですもんね。
      漁師さん、も、海でお魚いっぱい、獲ってますし……」

                   「……ぼうずですか?」
   
お坊さんですか? とでも聞きたげな目で、イザベルを見る穂風。

55 イザベル『アーキペラゴ』 :2016/02/27(土) 01:08:00
>>54

    「ま、どっか行くってなったらアタシも誘えよ。
     適当に時間空けてついてくからよ」

ニシシと笑いかける。
どうせ暇の多い大学生の身分だ。
ちょっとした旅行程度ならいつでもついていけるだろう。

   「海はなー。波の音聞こえるしなー。
    あと湖に魚がいないわけじゃねーんだが、冬はどーしてもなー……」

『ワカサギ釣り』とかならまた話は違ってくるのだが。
年を越した辺りから釣りは難しくなってくる。
雪が溶ける時期になれば、また釣れるようになるのだろうが……

     「ん? ああ」

  「『ボウズ』っつーのはアレだ。
   魚が一匹も釣れなかった時のことを『ボウズ』っつーんだと」

    「ほれ、『坊さん』ってハゲてんだろ?
     毛が無いのと収穫が無いのをかけてんじゃねェかな」

これについては、語源に詳しいわけでもない。
とはいえ推測は簡単だ。どう考えてもその特徴的な頭部にかけた言葉だ。

……『浮き』が反応する気配は、ひとまず無い。

56 葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』 :2016/02/27(土) 01:27:27
>>55

「……! は、はいっ!
 あの、あの、ペア旅行券なんです、だからっ……!
 決まったらその、イザベルさんにきっと、お声、かけますのでっ!」

            ニコーーー

さっきよりも大きく、まぶしく笑う穂風。
知らない場所は楽しいけれど、不安もある。

・・・・一緒なら、不安はないし、楽しいのも、もっと楽しい。

         「……え、へへ。」

そして穂風は視線を湖面に戻す。
冷たい水。魚は果たして。

「……波の音、良い音、ですよね。
 それに、砂浜は……その、色んなもの、落ちてますし……」

ビーチ・コーミングは穂風のささやかな趣味の一つと言える。
赤い綺麗な貝殻を見つけたことだってある……

         ・・・

           ・・・

「お坊さん、あ、そうだった……気がします。
 あんまり、見たこと……ない、ですけど……頭は、禿げてたような。」

             「……」

                    じィーーッ

浮きを見つめて、時々イザベルに視線を戻して、また浮きを……そんな穂風。

57 イザベル『アーキペラゴ』 :2016/02/27(土) 01:44:22
>>56

     「おっ、そりゃ丁度いいやな。
      絶対呼べよ? 約束だかんな?」

少しだけ悪戯っぽい笑みを向ける。
まずもって、この少女がどこに行きたがるのか。
もちろん、どこに行くにしたって喜んでついていく気満々だが。
それにしたって今から楽しみだ。外を知ることは、決して悪い事にはならないはずだ。

   「おう、波の音なら一日中だって聞いてられるぜ、アタシは」

       「まーゴミも落ちてっからその回収もしなきゃだけどな!」

海の清掃ボランティアは、イザベルの習慣のひとつである。
このシーズンは利用客が少ないとはいえ、流れついてくるゴミなどは絶えない。

     「綺麗な物があるし、汚い物もある。海のいいとこだよなァ」

清濁併せ呑む広大さ。そういう考え方だ。
もちろん、海が綺麗であることに越したことはないが。

   「ま、坊主なんざあんま見ねェわな。アタシもあんま見たことねェし」

        「………………」

           「………………」

……『浮き』は、依然動かない。

     「……な? 暇だろ?」

苦笑気味に笑い、そう言った。
忍耐力を要求される釣りは、実のところイザベルとの相性はさほど良くない。
待っている時間を楽しめる『海釣り』が基本なのだ、そもそも。

      「飽きたら言えよー。
       アタシも多分すぐに飽きて帰るからな。
       さっきも言ったが、多分今日も『ボウズ』だからよ」

58 葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』 :2016/02/27(土) 01:54:15
>>57

「はいっ! ……約束、です。」

     (……学校でも、友達は出来たけど。
      旅行なら……イザベルさんと、行きたい。)

             (海がきれいなところが、良いかな……)

他の友達とイザベルは、何となく違う気がする。
穂風は――『親友』というのは、そういうものかもしれないと思う。

「ここも……ちょっとだけ、
 水の……波の音は、しますよね……
 ゴミは……海と違って、汚いゴミばっかり、だけど。」

大きな大きな湖。

「……これはこれで、いいのかも。
  だけど、けど……私も……海の方が好き、かな……」

           「……」

               「……」

浮きは動かない。
風に揺れたり、することはあっても。

    「……ちょっと、だけ。
     でも、その。まだ……大丈夫です。」

         「もうちょっとだけ……うん、見てますね。」

                   ・・・暇でも、見ていても、動かない。

59 イザベル『アーキペラゴ』 :2016/02/27(土) 02:04:15
>>58

    「ここは海と繋がってるからなァ」

      「『流れ』のある湖だ。生きてんだよ、ここは」

川があって。
湖があって。
そして、海がある。
そういう『流れ』があるのだ、この場所には。

   「だからっつーわけじゃねェけど……この湖も悪くねェ」

       「良くも悪くも、静かだからな。
        生きてるけど、静かな奴だ。そういうのも悪くねェよ」

ゆらゆらと、『浮き』が風に煽られて少しだけ揺れる。

     「…………」

   「……おう、そっか」

静かに、湖に浮かぶ『浮き』を眺める。
一人だったら、あるいはさっさと飽きて帰ってしまっただろうが……


――――結局この日、『浮き』が沈むことは無かった。

60 葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』 :2016/02/27(土) 02:16:48
>>59

「…………はい。」

        「……」


       サ  ァ ァアン ・ ・ ・


静かに、波が打ち寄せた。
こんな水辺も悪くない――穂風も、そう思った。

      ・・・

         ・・・

            ・・・

     浮きが沈むことより。
         ――この時間を、穂風は楽しむ。

                 二人でいるから、何もなくたって。

61 流星 越『バングルス』 :2016/03/16(水) 00:06:41

   「〜♪」

栗毛の三つ編みを尾のように垂らした、赤ブチ眼鏡にブレザーの少女。
そんな少女が、鼻歌交じりに湖畔を歩き――――

        コケッ

   「あうっ」

          カシャンッ

――――躓いて転んだ。

   「……まいがっ。痛……くはありませんが」

   「む、眼鏡が……眼鏡眼鏡……」

転んだ拍子に眼鏡が外れてしまったようだ。
手探りで眼鏡を探している……眼鏡は少し離れたところまで滑っていた。

62 ココロ『RLP』 :2016/03/17(木) 05:17:32
>>61

『水溜ココロ』は『湖畔』を愛している。
どんな場所より愛している。
自然が素敵で、人が少なくて。
それに、ここではたくさん素敵なことがあったから。

だから今日も――湖畔にいる。

「ひゃっ…………!?」

      ビクッ

眼の前に眼鏡が飛んできた。


「えっ……!?」

(な、何で眼鏡が? ……あ、あの子がこけたんだわ!)

拾う。

(い、いきなり……素敵でもなんでもないわね。
 ……そ、そういう考え方って酷いんじゃないかしら。
 私がどうだとかじゃあなくて……あの子を心配すべきよ。そうよ。)

茶髪はセミロング、瞳の色は緑色。
スレンダーな体型に――美人、と言って差支えの無い顔つき。
 
              ・・・もっとも、表情は妙にネガティブだが。

    コツ コツ

歩み寄る。
そして、しゃがみ込む。

「あっ……貴女……大丈夫かしら?
 いえごめんなさい、大丈夫ではないのでしょうけれど、ええ……」

              「こ、これ。眼鏡……よ。
               た、立てるかしら……?」

                            ・・・眼鏡を、差し出す。

63 流星 越『バングルス』 :2016/03/17(木) 22:48:15
>>62

   「むむむ……」

       ジッ…

眉根を寄せ、睨むように声の方を見る。
ガンを飛ばしている――――というわけではもちろんなく。
単純に、眼鏡を落としたことで視界がぼやけ、自然と目つきが鋭くなってしまっているだけである。
ともあれどうにか差し出された眼鏡を視認したのか、手を伸ばして眼鏡を受け取る。

   「……これはこれは、失礼しました」

          スチャッ

そしてゆっくりと眼鏡をかければ、打って変わって能面のように無表情。
にこりともせず、居住まいを正して三つ指を着いた。
…………三つ指をついて、深々と頭を下げた。正座で。

        ぺこぉーっ

   「ご親切にどうもありがとうございます。
    この御恩は決して忘れません」

大げさに礼を言って、頭を上げて。

   「というわけで早速恩返しをいたしますが――――」

      スッ
           スッ

   「――――決して中を覗きませぬよう……ぴしゃっ」

そのままパントマイムで戸を閉めた。戸を閉める擬音付きだ。口頭だが。
あまりにも雑だが日本の有名な童話の有名なワンシーンである。

64 ココロ『RLP』 :2016/03/17(木) 22:57:42
>>63

「…………」

      タジ

(に、睨まれているわ……な、なんで?
 あっ、眼鏡をかけていないからかしら?)

           (目を細めているだけね、そ、そりゃあそうでしょう。)

睨まれるいわれもない。
安堵しかけたその時――

「えっ……!?」

まさか三つ指を着かれるとは――そこまでされることか?
しかし、厚意とは無碍にしないもの。

(ど、ど……どうしましょう……?
 恩返し……な、何をするつもりなのかしら……)

       「そ、そんな、ねえ私恩なんて……
        いえ、貴女がそういうのだし、受け――」

  「えっ」

突然目の前で繰り広げられた手の動き――パントマイムなのか?
ココロは判断に困り、周囲を少しだけ見回して。

(あっ……! つ、つるの……恩返しなのね!?)

         フイ

「わ、分かったわ。ええ、見ないわ、私。」

(こ、ここは乗っておいた方がいいわよねきっと……)

そういうわけで、『戸の向こう』を見ないように、目を逸らすココロだ。

              「……」

                   「……な、何をするのかしら?」

65 流星 越『バングルス』 :2016/03/17(木) 23:27:43
>>64

エア戸の裏で後ろを向き、持っていたカバンの中をまさぐり始めた。

         ゴソゴソ

   「ひとつ積んでは父のため……ひとつ積んでは母のため……」

機織り歌的なニュアンスで歌っているがこれは死者が賽の河原で石を積む奴だ。

   「……はて、何をするのかと申されれば……」

   「げへへ、悪いようにはしねぇからちょっと待ってなねえちゃん」

   「……って感じなので少々お待ちくださいまし」

            ゴソゴソ

平たいトーンで悪い人っぽいセリフを吐きつつ。
手元で何やらゴソゴソやっている。

   「ところでお姉さん、甘いのとしょっぱいのでしたらどちらがお好きですか?」

66 ココロ『RLP』 :2016/03/17(木) 23:41:33
>>65

「……………」

     ゴクリ

     (ど、どうしましょう……
       な、何かおかしい気がするわ……
         で、でも、せっかく恩返しと、言っているのだし……)

何か怪しげな雰囲気だが多分問題はない……
ないのだろうか? ないと思いたい。

「えっ、あ……え、ええ。
 悪いようには……ねえ、しないのね……?」

         「……」

(ほ、本当に大丈夫なの? こ、この子……いえ!
 よくないわよ、そんな風に疑うのは……きっと、少し……)

           (ど、独特な世界観の持ち主なのよ……
            な、なんて。私、失礼なことを考えているかしら……)

独特な流星のペースに呑まれつつ――

「……えっ? あっ、ご、ごめんなさい。 
 あ……甘いのと、しょっぱいの……? た、食べ物?」

    「どちらかというと……甘いのが、好きだけれど……?」

                   オドオド

あまりよくない考えをしていたところに声をかけられおどおどするココロ。
指輪をはめた十指を絡めて、様子をうかがうように答えるのだ。

67 流星 越『バングルス』 :2016/03/17(木) 23:54:37
>>66

   「なるほど、甘いものがお好きと」

   「では……」

      クルッ

        スッ

   「お礼の品です。お納めください」

エア戸を少しだけ開ける仕草をして、隙間から差し出す感じの動作で物を差し出す。
差し出したのは……いわゆる『ぽち袋』だ。
折り紙製の……今折ったのだろうか。折り鶴が組み込まれた、そこそこ本格的な奴である。
…………なんか不自然に盛り上がっているので、中に何かが入っていることが予想された。

   「しかしお姉さん。決してこの袋を開けませんよう……」

   「――――とかは言いませんのでお納めくださいお代官様。金の菓子でございますげへへ」

世界観が激しくブレブレだ。
なおこの間常に無表情である。

68 ココロ『RLP』 :2016/03/18(金) 00:10:02
>>67

(芸が細かいわね……演劇部か何かなのかしら……?)

      スッ

「……あっ!」

差し出された折り紙――いや、ポチ袋。
ココロは吊り気味の目を、少しだけ丸くする。

「折り鶴――これ、貴女が折ったのかしら?
 器用なのね……な、中を……ええ、み、見てもいいのね……?」

          (お、お代官様……?
           いえ、ユーモアなんだわ、彼女の。)

   スッ

やや困惑しつつも、それを受け取る。

「ありがとう……
 う、うふふ、開けてみるわね。」

       スッ

袋を、そっと開封する。
中には……何が入っているのだろうか?

         (あ、甘い物って言っていたけれど。
           この大きさだし……飴玉とかかしら……?)

69 流星 越『バングルス』 :2016/03/18(金) 00:37:00
>>68

   「一人遊びにおいては並々ならぬ自信があります。ふふーん」

……そういうことらしかった。

ともあれ『ぽち袋』を開けると……中に入っていたのは、やはりというか包装された『飴玉』だ。
駄菓子屋で売ってる感じの物である。
色は黄色い。……はちみつ飴か何かだろうか。

   「さて、よっこいしょういちっと」

        パンパン

その間に流星は立ち上がり、膝や裾の汚れを払っていた。

   「あ、今のは戦後に終戦を知らずにグアムに潜伏していた残留日本兵、横井庄一氏にかけた爆笑ギャグです」

   「……ともあれ、改めましてありがとうございました。
    眼鏡が無いとおうちに帰るのも危ないぐらいなので、助かりました」

               ペコッ

そのまま、(間にいらん解説を挟みつつ)改めて一礼した。

70 ココロ『RLP』 :2016/03/18(金) 00:49:12
>>69

「そっ、そうなのね……」

(それって素直に褒めていいのかしら……
 自虐で言っているんじゃあ……い、良いわよね?)

        「でも、本当に……
          綺麗に折れているわ、これ……」

ココロも指先の器用さには、自信はあるけれど。
折り紙はここまでは出来ない。

     カサ

          コロリ

掌に飴玉を転がす。

(あ……やっぱり飴玉だわ。これ……べっこう飴?
  いえ、それにしては色が薄目だし……あっ、はちみつかしら?)

「ありがとう、い、いただくわね。」

              スル   パク

包装を解いて、口に運ぶ。

(……知らない子にもらったお菓子……いえ。
 そんな、怪しい物を食べさせたりすること、ないわ……ないのよ。)

           「あっ、そ、そうなの……」

ギャグの解説には、少し反応に困ったが。

「あっ、いいえ、気にしなくていいのよ。
 いえ、気にしてはいないのかもしれないけれど……
 わ、私、そんな……特別なことをしたわけでは、ないもの。」

           「貴女が助かったなら、よ、よかったわ。」

もちろん、良い事はしたかな、という自覚はある。
けれど、あまり深く感謝されるのは、なんだか少し、くすぐったい。

71 流星 越『バングルス』 :2016/03/18(金) 01:00:41
>>70

色は黄色いので、金の菓子と言えば金の菓子と言えなくもない飴玉であった。甘い。

   「いえいえ、その些細な気遣いが特別でないからこそ、私はこんなにも嬉しいのです」

胸に手を当ててそう語る顔は、そう嬉しそうではなかったが。
常に能面を張り付けたような無表情なので、単純に表情の変化に乏しいのだろう。

   「あ、申し遅れました。
    私は流星越(ながれぼし・えつ)と申します」

   「ちょっとした親切に対するこの喜び、さてどう表現したものでしょう。
    余りある喜びエネルギーがオーバーヒートを起こしてしまいそうなぐらいでして」

   「なにかこう……都合よくなにかに困ってらっしゃったりしませんでしょうか」

かくん、と小首を傾げ、尋ねた。

72 ココロ『RLP』 :2016/03/18(金) 01:18:24
>>71

(甘いわね……やっぱり、蜂蜜なのかしら?)

          コロ

口内で飴を転がしつつ。

「そ、そう……? 
 いえ、貴女がそう言うのだし……
 う、嬉しいなら、良かったと思うわ。私も。」

    コク

頷くココロ。
人に喜ばれるのは――いいことだ。とても。

「流星、さん……素敵な名前ね。
 私はココロ、水溜 意(みずたまり こころ)って言うわ。」

          「……よろしくお願いね。
           いえ、別に何をするわけでもないけれど……」

温和な笑みを浮かべて、自己紹介を返して――

「こ、困っていること……?
 そ、そんな、私、そこまで……いろいろしてもらうなんて悪いわ。
 それにご、ごめんなさい、ちょっと、すぐには……思いつかないもの。」

        「ど、どうしましょうかしら。
         何かあれば、いいのだけれど……」

困っていることがあるのが本当に良い事かはさておき。
今のココロは、珍しく――あまり悩みとかはないタイミングなのだ。

              (どうしましょう、な、何か思いつかなくちゃあ……)

73 流星 越『バングルス』 :2016/03/18(金) 01:30:49
>>72

   「水溜、意……」

口の中でその言葉を確かめるように反芻し、こくりと頷く。

   「そちらも素敵なお名前ですね。
    以後お見知りおきますので、水溜さんもよろしければ以後お見知りおきを」

スカートの裾をつまんで右足を下げ、軽く腰を落とした。
よくお嬢様とかがマンガでやる挨拶だ。

   「むむむ、悩みが無いのは素晴らしい事ですが……
    こう……なにか……欲しいものとかないのでしょうか」

   「力とか」

   「世界の半分とか」

   「新車とか」

どちらかと言えば悪魔のささやき系のラインナップであった。

   「まぁその辺は欲しいと言われても流石に出せませんし、もはや腹を切って詫びるしかない案件ですが」

   「ともあれ特に困ったことが無いのであれば仕方ありません……感謝の波動を伝えましょう。ぬぅん」

そう言って、無表情のまま顔の前で手をうねうねし始めた。
思念波を飛ばしているジェスチャーだろうか。
傍から見てあんまり感謝の気持ちを飛ばしてるっぽい感じではない。

74 ココロ『RLP』 :2016/03/18(金) 01:50:52
>>73

「あっ、ありがとう……
 ええ、ぜひお見知りおきさせていただくわ。」

          ペコ・・

小さくお辞儀する。

(な、何だかお上品な挨拶をしているわ……
 これも……冗談なのかしら? それともお嬢様なのかしら?)

その辺りは謎だが、まあいい。
挨拶は大事だ・・・・

「力は……私は大丈夫、必要ないわ。
 せ、世界の半分なんて、もらったって、こ、困るし……」

        「車も別に……免許もまだだもの。
         はっ、腹切りなんてもっと困るわ……!」

  アセ
          アセ

『流星』の悪魔のささやきにあせるココロ。
くれると言われても困るラインナップではないか・・・

          そして。

「えっ…………?」

「か、感謝……そ、そう、感謝の波動。」

                ジリ

「こ、心なしか……ええ、心なしか感じるわ、何か……か、感謝みたいな……
 ご、ごめんなさい本当、感謝、ええ、今こっちに送られてきているのよね、波動が……」

                      (ど、どうすればいいの……!?)

75 流星 越『バングルス』 :2016/03/18(金) 02:08:50
>>74

   「……………………………」

                    ピタッ

しばらく謎の波動を飛ばしていたのだが、ふとその動きをピタリと止める。
顔の前でうねうねさせていた手は下げられ、心なしか、しゅんとしたように俯いた。

   「……すみません。水溜さんを困らせていますね」

   「ついつい舞い上がってしまいました。
    悪い癖だとは、思っているのですが……」

冗談めかした物言いでないのは、真実申し訳なく思っているからだろう。
人に優しくされるというのは……優しくしてくれる人がいるというのは、とても素晴らしく喜ばしい事だが。
喜びのあまり暴走してしまった、という自覚はあるらしい。

   「ご迷惑、おかけしました」

            ペコッ

深々と、頭を下げる。

76 ココロ『RLP』 :2016/03/18(金) 02:24:44
>>75

「あっ……い、いえ、そんな……
 私、いいえ、困ってなんか……いえ。」

          「……」

(こ、困ってないなんて……
 いくら何でも都合のよすぎる嘘よね。
 フォローのために言ったって、言ってるような物よ……)

ココロは少し俯く。困ったのは事実だ。
だけれど。

「大丈夫……大丈夫よ。
 私、何も……気にしてはいないもの。」

    「ちょ、ちょっと……その、分からなかったけれど。
      でも、貴女が……頭を下げるようなことじゃあ、ないわ。」

              コク


それほど、本気で心の底から困ったわけじゃあない。
ちょっと対応に、悩んだだけの事。

「あまり、そう、貴女も……気にしないでちょうだいね、ええ。」

顔を上げて欲しいと、そう思った。

(悩むのも……よく考えたら失礼な話だわ……
 う、動きは良くわからないけれど、感謝と言っているんだもの……)

            (……で、でも、よく分からなかったのは事実よね。)

77 流星 越『バングルス』 :2016/03/18(金) 02:46:49
>>76

   「………………」

噛み締めるように、深く俯いて。

   「……わかりました」

相変わらずの無表情で、顔を上げた。

   「では、この辺りは次回への課題として持ち帰り検討させていただきましょう」

   「次に会った時、完膚なきまでに水溜さんを喜ばせてご覧に入れます」

   「ですので……」

少し、口ごもる。
視線を脇に逸らし、しかし意を決したようにココロを見据えて。

   「……また今度、お会いしましょう」

……なんてことのないセリフ。
しかし、流星にとっては勇気のいる言葉。縁を繋いでおく言葉。

78 ココロ『RLP』 :2016/03/18(金) 02:58:45
>>77

「次回……ええ、また今度会ったら……
 え、偉そうな……本当に、偉そうな言い方になるけれど……」

          「……私、楽しみにしているわ。」

   コク

ココロは頷いて、微笑む。
この場所は――湖畔は素晴らしい場所だ。

ここで会う人も。
ここで紡ぐ絆も。

「私は……この湖畔に、よくいるの。
 だから、またここで……ええ、会いましょう、流星さん。」

真っ直ぐ流星を見て。
それから――時計を見て。

(あっ……ちょ、ちょっと話し込んでしまったかしら……)

        「そ……それじゃあ。
         私……そろそろ行くわね。」

                「じゃあ……『また』」

                    ニコ・・・

小さく笑んでから――ココロは、その場を去る。

79 流星 越『バングルス』 :2016/03/18(金) 04:22:07
>>78

   「……!」

   「ええ、首を洗って待っていてくださいね」

心なしか、本当に心なしか、明るい表情を見せて。

   「また来ます。
    またいつか。
    また会える日を、お楽しみに」

              ペコッ

謝罪でも感謝でもなく、恭しくパフォーマーのように一礼する。
そして顔を上げて、去り行くココロを手を振って見送り。
しばらくそうして……ココロの姿が見えなくなってから、栗毛の少女は鼻歌交じりに去って行った。

80 ジェイク『一般人』 :2016/03/20(日) 23:56:20
男がいた。
寒空の下、男がいた。
日も暮れ始めた時間、男が一人だけいた。

81 ココロ『RLP』 :2016/03/21(月) 00:55:18
>>80

「あ――」

    (あ、あの人……そうよね。
      前にも、ここで……ええ、ジェイクさんだわ!)

ココロはその男を知っている。
その男の『炎』を知っている。

「……」

(ど、どう、しましょう――話しかけるべきかしら?
 お、お邪魔かしらね……? 別に、仲良しというわけでも、無いし――)

          (でも……よ、良かった。
            生きて……また会えたのだもの。)


   ジ ィ ・ ・ ・ ・

けれど、声を掛けるかは迷っていて、少し離れて見ている。
ジェイクにはその視線が伝わるかもしれない――伝わらないかもしれない。

                     ・・・・どうだろう?

82 ジェイク『一般人』 :2016/03/21(月) 01:05:16
>>81

「何を見ている。」

男は空を見上げた。
美しい空には星が浮かんでいる。

「俺は見世物ではない。」

「お前は見世物か?」

83 ココロ『RLP』 :2016/03/21(月) 01:09:33
>>82

「あっ……ご、ごめんなさい。
 話しかけて良いのか……わ、分からなくて。」

            「お……お久しぶり。」

   トコ

少しだけ近づく。
距離感は、大事な物だから。

「いいえ、見世物では……ないわ。
 貴方も……それに、ええ、私もよ。」

           コク

頷いて返す。
見られることには慣れたけれど、見られるための人生じゃない。

                ・・・空を見る。

「……」

「ほ……星を、見ていたのかしら?
 ごめんなさい、どうでもいいことかも、しれないけれど……」

きれいな星だ。
視線は、空に向いたまま、ジェイクに問う。

84 ジェイク『一般人』 :2016/03/21(月) 01:28:58
>>83

「……お前か。」

さして驚いた様子もない。
男の瞳がココロを見つめる。

寒い夜だというのに男は袖のないシャツを着ているだけだ。

「星?」

「そうだな。見ていた。」

「星を空を」

85 ココロ『RLP』 :2016/03/21(月) 01:38:25
>>84

「え、ええ……私よ、ジェイクさん。こんばんは。」

        コクリ

頷くココロ。
覚えられては、いたらしい。

          ・・・それは良い事だ。

(その格好、寒くないのかしら……なんて。
 き、聞いちゃあ、よくないわよね。服を買えないのかもしれないし……)

         (そっ、それも失礼な妄想よね……
          それにしてもいくら何でも寒そうだわ……)

ジェイクは見るからに『普通の暮らし』とは思えない。
袖の無いシャツは、あの時と同じものだろうか――?

「星……空。
 ええ、そうよね、空も……きれいだもの。」

          「……」

    ヒュオ
         オオ ・ ・ ・

春になりつつある、風が吹いた。
まだまだ肌寒い風。ジェイクのあまりに涼し気な服装。
 
  「……さ、寒いわね。」
 
       「かっ、懐炉を持っているの、私。
        ジェイクさん……つ、使うかしら……?」  

                       ・・・そんな、余計なお世話の気分になった。

86 ジェイク『一般人』 :2016/03/21(月) 02:00:04
>>85

こきりと首を鳴らす。
長いヒゲが顔の動きと連動して揺れる。

「お前、星は好きか?」

「俺にはよくわからない。」

そういってランタンに火をともした。
橙の光が夜の湖畔を照らす。

「懐炉。」

「なんだそれは。」

87 ココロ『RLP』 :2016/03/21(月) 02:14:59
>>86

「星……ええ、好きだわ。
 特に――この湖畔から見る星は、好き。」

               「……とても、綺麗だから。」

目を細める。
ランタンの放つ光は――幻想的だ。湖に、よく調和する。

                   ・・・そして。


「えっ」

(あっ、そ、そうよね。
 懐炉は外国には……ないのかしら?
 ジェイクさんが個人的に知らないだけかしら……)

           (どちらでもいいわよね、ええ。)

「あ、ええ、ごめんなさい。
 懐炉は……温かくなる、袋……そう、袋よ。」

                  「こ、これなのだけれど……」

     ゴソ

かばんの中から、未開封の携帯懐炉を一つ取り出し、恐る恐る見せる。
貼るタイプではなく、開ければすぐ使えるやつだ。

          (よ、余計なお世話……だったかしら?)

88 ジェイク『一般人』 :2016/03/21(月) 02:42:48
>>87

「そうか。」

「お前はそうなんだな。」

ココロから視線を外す。
興味が失せたような、感情のない表情。
また、首を鳴らす。
ランタンを持ち上げた。

「俺には分からない。」

「なにもな。」

そういってココロへと近づいてくる。
一歩ずつゆっくり。
確かに地面を踏みしめながら。

「なんだこれは。」

興味を示しているのだろうか。

89 ココロ『RLP』 :2016/03/21(月) 02:50:28
>>88

「 ・ ・ ・ ・ え、ええ。」

       タジ

           「私は……そうなの。」


(な、何か……気に障るような、答えだったのかしら。
 この人は……普通の人とは、違う世界にいる。良い悪いとかじゃあなく……)

思わず、少したじろぐココロ。
とはいえ――初対面でもない。

              ザリ

「…………」

ランタンに視線を誘導されつつ、一歩だけ、下がって。
彼の独白への、気の利いた答えは浮かばない。

ココロは強くない。

「これが……か、懐炉よ。携帯懐炉。
 開けるから、さ、触ってみてくれてもいいわ。懐炉を……」

               ピリリ

妙なふくろう?のキャラクターの絵が描かれた懐炉を開ける。
(※星見町マイナーゆるキャラ『あたたかくしろう』。)

          「す、少しは……寒さがマシになると思うの。」

                          ・・・中身を、手渡す。

90 ジェイク『一般人』 :2016/03/21(月) 03:13:40
>>89

「妹もそうだった……」

「だが、俺には分からない。」

「なにもかも。」

ランタンが男を照らす。
明るい光の中にあって、この男は暗い。
いや、光というものの中にあるからこそ、不気味だ。

「懐炉……」

復唱し懐炉を受け取る。
傷だらけの手のひらの上に懐炉が乗る。
懐炉が酷く小さく感じる。

「ほう……」

「まるで羊だな……」

懐炉を握る。
手に擦り付ける様に片手で懐炉を弄ぶ。
温かみを感じているのだろうか。

91 ココロ『RLP』 :2016/03/21(月) 03:39:20
>>90

「……………」

懐炉を渡した手を、ゆっくりと引き戻す。

「……私には。ごめんなさい。
 貴方の思いは……分からない事、だけれど――」

           「……」

ジェイクの過去は――きっとココロには知り切れない。
掘りだせないほど大きく、持ち上げられないほど、重厚なのだろう。

             ・・・ココロの腕はまだまだ、細い。


「その懐炉は……
 貴方に、あげるわ。」

「邪魔だったら……ご、ごめんなさい。」

けれど。
懐炉くらいの温かみは、渡せる。

        「これも……わ、私の、自己満足……だから。」

                        ニコ ・ ・ ・

                   ココロは、ゆっくりと笑みを作る。

92 ジェイク『一般人』 :2016/03/22(火) 00:17:31
>>91

男が片手で持ったランタン。
炎が揺れる。
男がランタンを揺らしているわけではないのに。
いや、揺れているのかもしれない。
目に見えないところで、揺れているのかもしれない。

「はは。」

男が笑う。
ヒゲまみれの顔がいささか不気味だ。

「これは、尽きるだろう。」

「これは、滅びるだろう。」

「これは、生まれた小鹿より脆弱だ。」

そういって、ランタンを地面に置く。

「なぁ?」

「そうだろう?」

ビリっと嫌な音が懐炉からする。
男は両の手で懐炉を掴んでいる。

「人の手で、こうも簡単に。」

嫌な音は続く。
男はなおも懐炉を破こうとしている。

93 ココロ『RLP』 :2016/03/22(火) 00:36:27
>>92

揺れるランタン――いや、炎?
手は動いていないように、見えるのに。

何が揺れているのだろう。
ココロは視線を揺らしながら。

         ビクッ

「……ど、どうしたの……」

笑い、というよりその不気味さに少しだけ、震える。
彼は悪人ではない。きっとそうだが――

「そ、それは……そうよ。
 数時間もしたら、あ、温かくもなくなるし……」

           「い、いえ」

   「そ、そうじゃない……
    のかしら……ね、ねえ。貴方何を――」

             ビリッ

懐炉から聞こえた音に、思わず目をむく。
破るのか……なぜ?

「そっ、それはっ……破れるかも、し、しれないわ、で、で、でも……」

                    オロ

            「な、何で……!?
             き、気に入らなかったのなら謝るわ、でも」

     オロ    オロ

                   「な、何も、破ることは……
                    あ、危ないわ、中身は凄く熱いのよ……!」

怒りとか、そういうのじゃあなくて――――この心の色は、困惑だ。

94 ジェイク『一般人』 :2016/03/22(火) 00:59:14
>>93

「俺は自分の行いを自己満足と言い切れるお前を評価しよう。」

男の目の中に何かが揺れる。
存在しないはずの物。
それはなんなんのか。
深い闇のようであり、あのランタンの炎のように瞳の中で
男の中で蠢いているものは。

「気に食わないことはない。お前に対してはな。」

「お前は昔を思い出させる。」

「だが同時に俺は思う。」

「俺もいずれ滅ぶ。なら、俺はどう歩けばいい?」

ギュッゥゥゥゥゥゥゥゥ
男は両の手で懐炉を包んだ。
懐炉は破れたのか破れていないのか。
それは男が知っていることだ。
懐炉の姿が見えない以上、男の体と懐炉だけが知っている。

「ここの水は飲んではいけない。」

「この世にはスタンドというものがある。」

「これの中身は熱い。」

「スタンドは後天的に得ることができることがある。」

暗唱する。
顔を地面に向けながら。男の帽子が頭から滑り落ち、地面に落ちる。

「俺もいずれ滅びる。獣よりは長く、人よりは短く。」

「俺は掴んだはずだったが、それは零れた。いともたやすく。」

「光が消えた。」

95 ココロ『RLP』 :2016/03/22(火) 01:13:06
>>94

「……む、昔……?」

      「わ、私は。私は……」

              ギュッゥゥゥゥゥゥゥゥ


     「……!」

          ビク

男の行いは、ココロに目を細めさせる。
懐炉はそう簡単には、破れないだろうけど――それでも。

              ・・・一歩下がる。

「ほ、滅ぶだなんて……」

「わ……私だって……いつかは滅ぶわ……
 け、けれど。けれど……貴方のことは、分からないけれど……」

彼の知ること。
そこから考えること。
それはココロには、完全には――分からないけれど。

           ソロ ・・・

               しゃがみ込む。


「……分からないけれど。
 き、消えた光というのは……私には。」

        「けれど……」

ココロは喋るのは、得意ではない。帽子を拾う、拒まれないなら。

「新しい光は……きっと、見つかると、思うわ。私……
 だって。だって私は……見つけられたもの、この町で。いくつも……」
 
ココロの生命の音は、たった17年しか続いてはいない。
それでも、これだけたくさん、きらきらしたものをつかめたんだから。

                        ・・・だから。

96 ジェイク『一般人』 :2016/03/22(火) 01:31:23
>>95

「昔には獣と泥の中で輝くガラス玉がいた。」

硬い声であった。冷たくもあった。
しかし、突き放しているわけでもない。

「……」

男は、静かにココロの言葉を聞いていた。
ズドンと男が座る。
ランタンの光が男を照らす。
その顔に表情らしいものはない。
しかし背を丸め懐炉を圧縮するように包む男の姿はひどく小さい。
巨体であるはずなのに。

「……俺は光を追ってここへと来た。」

「お前は、いつか見た光を覚えているか?」

「お前は、光の光景を掴んだか?」

「俺は新たな光を掴めるか?」

また、男は口を閉ざす。
それから両手を開いた。
右手の上に被さった左手がのけられる。
懐炉は破られていなかった。今にも中身が出てきそうなほどの状態であるが。

「見ろ。俺はこれを破る気でいた。」

「しかし事実は違う。なら、俺もそうなると信じても構わんだろう。」

「光を追う。もう一度。」

「……なぁ?お前はあの日の光に近づけたか。」

97 ココロ『RLP』 :2016/03/22(火) 01:44:20
>>96

「……………」

ココロは沈黙する。
ジェイクの心を透かせるほど、言葉が上手く紡げないから。

            ・・・顔を見る。

(やっぱりこの人は…………
 悪い人なんかじゃあ、無い。それは分かっているし――)

          (獣――いいえ、きっと。そうよ。
           『獣』みたいに、純粋な……人なんだわ。)

獣とは粗暴なだけじゃない。
獣とは悪い物じゃない。

むしろ――『気高い』『純粋な』面も、獣にはある。


「私は……あの時の光とは、違うものかも……しれないけれど。
 けれど掴んだわ。絶対に……ええ。間違いなく、大きな光を。
 それを手放さなかったら……きっと、私、明るい未来になれる――」

              「……あのお星さまより、綺麗で、大きな光!」

        クイ

視線を空に向ける。
春が近づいても、まだ夜は早い。星が既に見え始めていて。

「貴方も……きっと、掴めると……思うの。
 だって……だって、私が近付いて掴めたのだもの。だから……!」

           「……」

                   「……ご、ごめんなさい。
                     少し、あ、熱くなってしまったわね……」

98 ジェイク『一般人』 :2016/03/22(火) 01:59:13
>>97

「そうか。」

男はただ一言、そう告げた。
懐炉をズボンのポケットに入れ、ランタンを愛おしそうに撫でた。
傾けられたり揺すられたり、ランタンが動けば炎も動く。

「一羽のツバメが来ても夏にはならないし、一日で夏になることもない。
         このように、一日もしくは短い時間で人は幸福にも幸運にもなりはしない。」

「そういった者がいた。」

立ち上がる。
手にはランタン。もう片方の手をココロへと伸ばす。
その先には拾われた帽子。

「待て、しかして希望せよ。」

「そういった者もいる。」

ランタンを顔の横に持ってくる男。
空を見上げ、星を見つめている。
その顔は柔らかな笑みを浮かべていた。
不気味な浮浪者の男ではなく、そこにジェイコブ・ケイディ・ワイアットの名を持つ青年がいる。

「なら俺は言おう。」

「深い闇の中でこそ、炎はより色濃く輝く。」

「礼を言うぞ。水溜 意。」

99 ココロ『RLP』 :2016/03/22(火) 02:11:54
>>98

「……ええ。きっと。」

      コク

頷いて、返した。

       「……」

               ス

帽子を、返す。

ジェイクの言葉は難解に聞こえるけれど。
        ・・・意味があると分かるから、耳を傾ける。


「…………私は。」

「希望はきっと、あると思っているわ。
 自分では、分からないけれど……色んな、ところに。」

      ス

立ち上がる。
そして、少しだけ、笑みを浮かべて。

       「き、気にしないでちょうだいね。
         ……お礼を言われるようなこと、していないけれど。」

                   「でも……お役に立てたなら、良かったわ。」

ココロはそう言うと、空を少し見て、時計を見て。

「あ……わ、私、そろそろ行かなくちゃあ。
 …………また、会いましょう。ジェイクさん。」

              コク

もう一度頷いて。
獣のような男でも――彼は、ココロにとって、悪い人じゃあないから。

                         ・・・立ち去る。

100 ジェイク『一般人』 :2016/03/22(火) 02:19:35
>>99

「あぁ、また会おう。」

「俺に明日が来るのなら。」

帽子を胸に当てる男。
にぃっと笑った顔は不気味な浮浪者のそれであった。

「エレアノーラ。」

「俺を許せとは言わない。」

「しかし、待て。」

沈黙。
まるで祈るかのように。

そうしていつの間にか、男はどこかへと消えていった。

101 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/04/02(土) 01:26:09

月日は巡って、4月。
自然公園の――名前通りに、自然にあふれた散歩道。

       ハラ


          リ


「…………えひ。」

      (春ですよー…………
        僕にはあんま、関係ないけど……)


ポケットの中にゲーム機の重み。
黒髪に青い眼鏡――掌に落ちた花びらと、同じ色の瞳。

            ・・・立ち止まって、空を覆う桜色を見上げる。

102 朝山『ザ・ハイヤー』【中二】 :2016/04/07(木) 22:10:53
>>101

自然公園、その春の香りが満ち溢れ桜の花弁が道沿いを桃色に染める。

 小鳥の囀りが時に響き、麗らかな陽気さと時折吹く穏やかな風が春を祝うかのようだ。

――だが。


 「うおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!
 パワフルっス! パワフルっス!! パワフルに走るっスよぉぉぉ!!
権三郎!! 3・2・1 せ〜のっ! パワフルっスぅううううううう!!!」

 『パウゥッ!!』

 パワフルっス! 春一番が吹いたりしたりしてもパワフルなんっス!!
愛犬であり我が相棒である権三郎と共にジョギングっス! ランニングっス!!
 悪の組織の活動にも健康面でもスタンド訓練の為にも、まずは体力錬成!
権三郎と共に息が切れるまで走るっスーーーーーー!!!

 
 「はぁあああああああ!! ぅお! とぉーーーーっス!!」

 キキ――ィ!  クルクルクル シュッ タン!!

 危うく一人の女性(稗田)とぶつかりかけたっス!

何とか手前でブレーキしつつ華麗なポーズと共に横で立ち止まるっス!!

 「おはようございますっス!!」

 『パウッゥン!!』

 シャキーン!!

 道行く人々に、ジョギング中は挨拶が大事っス!
元気に挨拶すると自然とみんな笑顔が浮かぶっス!
 悪の組織の活動と共にご近所の皆さんとの交流を深めるっス!!

104 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/04/07(木) 23:49:59
>>102

         ビクゥゥッ・・・!

「なっ…………うわっ!」

響き渡るパワフルボイス――からの衝突未遂、華麗なポーズ。
このあまりの『衝撃』に目を見開いた恋姫だったが・・・

         「……」

イラッ

        イライライラ

(なんだよこいつマジキチかよ……スポ根読みすぎか……?
 ぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ……犬までうるせえし……最悪のBGMだな……)

      (クソゲーでもBGMだけは良いってのによぉ……)

            イライラ

少しずつ、じめじめと、目を細めていく。
犬ニは絶対に目を合わせない。

「……よう。横に立つなよ…………僕まで仲間だと思われるから。えひ。」

              「こんな早朝から……
               深夜テンションとか……
               変則的寝てないアピか……?」

        ジリ

                言葉通りに、少しばかり離れる。
                 その表情は……かなり陰気な笑みだ。

105 朝山『ザ・ハイヤー』 :2016/04/08(金) 00:01:40
>>104

>……よう。横に立つなよ…………僕まで仲間だと思われるから。えひ。

「むっ! それは失礼したっス! はぁぁぁぁぁ〜〜〜おっス!」

 シュタッと真正面に立つっス! これでちゃんと顔を見て挨拶出来るっス!

「改めて! おはようっス!! 朝山と言いますっス! 14っス!
こちらは我が愛犬にして相棒である権三郎っス! 三歳っス!」 シュッタ!

 『パウゥ!』 シュタ!

右手を掲げ挨拶! 権三郎も右前足を上げて挨拶!!
 パワフルっス! 元気の源が一番っス!!

>こんな早朝から……深夜テンションとか……変則的寝てないアピか

「深夜テンションじゃないっス! いっつも私はパワフルっス!
ちなみに夜の9時には寝て6時に起きているっス! けどたまに
一時間は起きて、親にばれないようこっそり深夜番組見てるんで
合計八時間睡眠っス! 悪い事はひっそりパワフルに行うっス!」

 シャキーン!

 「自己紹介したっス! そっちも自己紹介お願いしたいっス!
挨拶したら元気に挨拶を返す! そうすると心も体もパワフルっス!」

 パワフルは元気の活力っス! なんかじめっとした空気が目の前の
年齢おなじぐらいの人から感じるけど、よくわからないんでパワフルにいくっス!!

106 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/04/08(金) 00:16:00
>>105(朝山)

「…………」

        ジリ

(なんなんだ、こいつまじで……やっぱ春は変なの湧くな……
 現実でも……湧き潰しが出来たら……えひ、楽なんだろうけど……)

奇声を耳に、真正面に立った姿を目に。

「別に名前なんか聞いてないし……
 お前の犬の年とか……早寝早起きとか……
 サブ垢でフォローしてるBotよりどうでもいい……」

    ブツブツ
              イライラ

次々飛び込んでくる無駄な情報に、人形のような顔を顰める。
もうさくらとか春とか吹っ飛んだ気分。

「……『ひっそり』の意味知ってんのかよ……」

          イラ

「お前に教える名前とかねーから……常識的に考えて。
 つーかお前のそれがパワフルなら……ほとんど『状態異常』じゃん……」

           「……えひ。」

                      ・・・悪態をさらに上乗せだ。

107 朝山『ザ・ハイヤー』 :2016/04/08(金) 00:28:37
>>106

>別に名前なんか聞いてないし……お前の犬の年とか……早寝早起きとか……
 >サブ垢でフォローしてるBotよりどうでもいい……

「サブ垢?? Bot??? うーん、よく言ってる事わからないっス!」

 >『ひっそり』の意味知ってんのかよ

「『ひっそり』っスか? ふふんっ! 甘く見ないで欲しいっス!
これでも国語の成績は中々のもんと言われているっス!」

 人差し指を掲げるっス! 鼻を鳴らしつつ説明するっス!

「『ひっそり』は! 物音がせず静々ーとしてる様の事を言うんっス!
わからない言葉があればじゃんじゃん聞いてくれっス! 教えてあげるっス!」

 悪の組織の首領は勉強も出来なくちゃいけないっス! 
勉強は好きか嫌いか聞かれると嫌いっスけど、それでもパワフルっス!!

 >お前に教える名前とかねーから……常識的に考えて

「うっス! 『かねーから・じょうしきてきにかんがえて』さんっスね!
何人さんか知らないけど、万国共通のそれじゃあ挨拶するっス!
 権三郎、一緒に行くっスよ!! はあ〜〜〜〜!!」

 クルクルクル シュッ タン!!

 「グッドモーニングハロー!!!! っス!!!」

 『パゥ〜〜〜ワゥン!! フッ!』

 シャキーン!!

 き、決まったっス…! 桜の花弁を背景に、今日は権三郎と共に
今日の朝一番のパワフルな決めポーズが出来たっス…!!

 流れが私に来てるっス―――!!!

108 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/04/08(金) 00:52:01
>>107

決めポーズを前に、なにか『珍獣』でも見るような目をする恋姫。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ひっそり。うん。」

          「・・・・・・」

     「・・・・・」

  「・・・・」

次々に繰り出される『パワフル』は――戦慄に値する。
口元に手を当て、やや上目遣い気味に。

    スゥ ゥ ・・・

息を吸いこみ。

「お前……本気で……え、えひ。
 本気で……ばかなの……?
 僕の事……ばかにしてるんじゃなくて……?」

        「……」

     「ひょっとして……あれじゃないの……
       お前の『悪い事』って……『バナナの皮』……とか?」

恋姫は……混乱しつつあった。
こういう『やばいやつ』は色々いたが……こいつは無害だ。

                ・・・何が目的なのだろう?

109 朝山『ザ・ハイヤー』 :2016/04/08(金) 01:02:12
>>108

――どうやら、我が悪のポーズの脅威に、この少女も戦慄を隠せないようっス。
たぶん、いま心の中はガタガタのガクブルのプルコギなんっス!

 上目遣いに手をおさえてこちらを見る少女に、うんうんと
満足気に頷くっス! やっぱりパワフルは最強なんっス!!

 >本気で……ばかなの……? 僕の事……ばかにしてるんじゃなくて……?

「フッフッフッ…安心して欲しいっス! 自分、お察しの通り
馬鹿じゃなく悪の首領っス! 馬鹿にする気もされる気も
これっぽっちもポッキー一本もないっス!」

 >お前の『悪い事』って……『バナナの皮』……とか?

「?? バナナは中身を食ったほうが絶対に美味いっスよ?
バナナは丸かじりすると余り中の甘味までちゃんと味わえないっス…
美味しく食べれない事って悲しいっス…どうせなら最後まで
笑顔で美味しくバナナは食べるべきっス! イッツ ザ パーフェクトイートっス!」

 シャキーン!!!

 なんかちょいっと会話が成立してないような…?
いや、そんな事はない筈っス! パワフルっス! パワフルは
外国人でも宇宙人でも異世界の住人にも通じるっス! パワフルっス!!

110 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/04/08(金) 01:30:57
>>109

「え、えひっ……えひひ……本気みたいだなこりゃ……」

     エヒ
 
       ヒヒ

半ば戦慄しつつも――
恋姫はダウナーな笑いをおさえられない。

         ・・・『害意』を感じないから。


傷付けようとか。
自分のための踏み台にしようとか。
恋姫のことを裏切ってやろうとか……じゃないから。

                  ・・・たぶん。

(……なんて考えんのは……深夜テンションか? それこそ。
 でも……こいつは……頭以外は……そんな、悪いやつに見えない……)

          (…………)

だから焔は膨れ上がっても――
その首をこの、悪を名乗る少女に向くことが無い。

      ニマァ

「えひ……悪の首領さんに聞きたいんだけど……
 その言い分だとあれか、バナナ、皮ごと……食べた経験あるの……?」

         「謎経験値積んじゃった感じ……?」

    クル

伸びた前髪を指でくるり、と巻きつつ。
その――『パワフルさ』に期待し、つい、余計な質問までしてしまうわけだ。

111 朝山『ザ・ハイヤー』 :2016/04/08(金) 01:46:10
>>110


>バナナ、皮ごと……食べた経験あるの……?

(あの、したり顔……そして期待してるような顔

 ――!? まさか……!)

 「―止めておくっス」

 そう、パワフルさが一旦消失し……


 「――すっげぇーーーー不味いっス!
 あれっス! なんかヨーグルド食べてたらヨーグルドの蓋まで
口の中に入ってた、見たいな。そんな感じで噛んでると
だんだんと違和感が覚えてバナナをちゃんと味わえなくなるっス!
 忠告しておくっス! 私の他にも犠牲者を増やしたくはないっス!
真似しちゃダメっスよ!? 振りじゃないっス!
 バナナは剥いて食べるべきなんっスーー!!」

 消失はしてないっス! グルグル回転 ポォーン! とジャンプしつつ
パワフルさを全力で表現しつつバナナの不味さを再現するっス!

 目の前の、ねーから何とかさんはバナナを丸ごと食べようと
思ってるに違いないっス! それは止めるべきっス!
 やっても誰も幸せになれないのは火を見るより明らかなんっス!!
パワフルに説得をしつつ、彼女をバナナの魔の手から救うっス!

 「すっかりバナナ談義になったっス……お腹空いたっス。
おやつと言うと権三郎のビスケットぐらいっス」

ポリポリ……。


 ポケットから犬用ビスケットを出すっス。
権三郎と一緒に食べるっス! なんかジュースか水か欲しいっス……。
因みに原材料は小麦粉 サラダ油 ココナッツファイン 水で
犬も人も食べれるパワフルフードっス! もうちょい甘くても良いけど
権三郎の体の為にも、これが一番良いビスケットなんっス!

 「あ! 一緒に食べるっスか?」

 ねーからさん(稗田)にもビスケット上げるっス!
美味しいものはみんなで食べるともっと美味しくなるはずっス!!

112 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/04/08(金) 02:28:33
>>111

「えひ……食べたのか…………まじで…………
 常識的に考えて……これマズいだろって思わないか…………?」

嘲笑――というよりは、『信じられないものを見る目』で恋姫は見る。
もちろん、口元には笑みがある。

        「……」

   「僕はしないよ……芸人じゃないし……
    そこは……うん、安心しておk……えひ。」

        ポォーン

と、ジャンプした『朝山』を目で追い、着地を見守り。
そして、取り出したビスケットに、視線を。

――犬用。

「あ…………いや、僕はいいぜ。
 甘いの……そんな好きじゃないから……えひ……」

     ニタ…

      (犬用だろそれ……何でもありかこいつ……
       いや、まあ……べつに、食えるんだろうが……)

            (何でもありか、こいつ……
             ……二回思うくらい、大事なことだよな……)

ビスケットは――受け取らないことにした。
ポーチから、ついさっき買った炭酸飲料を出して、キャップを回す。

                ・・・べつに、普通のお菓子なのだろうけど。

113 朝山『ザ・ハイヤー』 :2016/04/08(金) 09:36:44
>>112

>これマズいだろって思わないか?

 「天才は何でも試してみるもんなっス! ダヴィンチとか
ニュートンとかエジソンとかも、昔はみんながしたがらない事を
試してみたって見たっス! 私も他の天才の皆さんに倣って
色々チャレンジするっス! パワフルっス!」

>甘いの……そんな好きじゃないから……えひ

「そうっスか。それじゃあ今度は煎餅とか、おかきとか
用意しておくっス。辛党も甘党も人類には必要不可欠なんっス!」

 ビスケットをもぐもぐと食べつつ宣言するっス!
たけのこ派も、きのこ派も。戦争はよくないっス!!

 ……ジー。

 炭酸飲料をもぐもぐビスケットを頬張りつつ見つめる。

114 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/04/08(金) 19:29:35
>>113

「…………えひ……確かにお前、天才っぽいわ。
 そういうの……僕にはとて……もできないしな……」

         (……紙一重って言うし。)

言われてみれば『天才的』な物を感じる。
少なくとも恋姫とは違う。

「悪いことも……するんだっけ? えひ。
 パワフルに……偉人とかも大概クソみたいな事してたらしいし……」

         「お前も……偉人ルートかも……えひ。」

小さく笑う。
よもや――『悪の首領』が本気だなんて思わない。

            ・・・そして。

「……今度があるのは確定なの……まあ、いいけど……」

        「……」

   「七味せんべいが……
    僕にはよく効くぜ、好感度的にさぁ……」

           キュポ

やや視線を下に向けながら、冗談っぽく語る。
キャップは外れた。

「……」

       ス

「……欲しいのか?
 えひ、分かりやすい顔しやがって……」

     「……」

  「悪の首領的には……
    ありなの……そういうの?
     人の物貰うのは勇者の特権じゃない……?」

ボトルを『朝山』の視線から逃がすようにして、体の後ろに隠す。
意地が悪い気もするが、別に……物をあげなきゃいけない理由もない。

115 朝山『ザ・ハイヤー』 :2016/04/09(土) 12:26:50
>>114

>欲しいのか? えひ、分かりやすい顔しやがって

「そうっスねー」

 空を見上げる。爽快感が満点の青空だ。こう言う日は何時もより
もっともっとパワフルになれるっス! 桜のスカッとする空気が美味いっス!!

 「こう言う良い天気の日に、パワフルで素敵な出会いをした人と
一緒に同じものを食べたり同じものを飲みあえたら
 それはとってもパワフルな事だと思うっス」

 しみじみと呟くっス。けれど残念ながら私は飲み物を持ってきてないっス。
残念っス。なにかしらスポーツ飲料持ってくれば良かったっス。
 残念っス。 残念無念っス。

>人の物貰うのは勇者の特権じゃない……?

「??? 悪の首領でなくても、人から何か物を貰うときは
ちょーだいって自分はお願いするっス。それに関しては悪の首領は関係ないっス。
 欲しいことは欲しいけど、ねーからさんは体調悪そうな顔してるから
水分が必要不可欠っス。自分 具合がちょっとでも悪そうな人に無理強いする事しないっス。
悪の首領として、それもとーぜんの配慮ってやつっス」

 『パウッ!』

 「『そうだ!』って権三郎も同意してるっス!
七味せんべいは美味しいっス! 桜は素敵っス! 走るとお腹が空くっス!
お腹が空くって、お腹一杯になれるって事なんっス!
 つまり、全部ぜーんぶパワフルなんっス! 桜みたいにすっごい素敵なんっス!」

 ピョーン! と上下に跳ねつつ喋るっス!

そして、〆の決めポーズっス!!

クルクルクル シュッ タン!! シャキーンッ!!

      「改めて! 自分、朝山 佐生っス!   ねーからさんと友達になりたいっス!!」

 ポーズと共に友達宣言っス! 桜の下で友情を誓い合うっス!!
これ即ちパワフルなんっス!!

116 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/04/09(土) 23:23:40
>>115

「…………えひ……」

      イジ

長く伸びた髪の毛先を指で少しだけいじる。

  「悪の首領……のくせに。
  
   バカ
   素直すぎるんじゃないの…………」

          「……」

自分がパワフルだなんてのは――
そうなりたいなんてのは思わないけれど。

                 ス

ボトルを差し出して。

「……僕は…………昔からこういう顔だから。
 水分は別の買うよ……これ、あー、そんなに美味くないし……」

やや俯き、人形のような顔の、口元を緩く歪ませる。
受け取っても取らなくてもどっちでもいい。

「…………稗田。僕は……稗田恋姫(ひえだれんひめ)。
 『ねーから』なんて名前のわけ……ないだろ、常識的に考えて。」

      ポリ

頬を掻く。

「友、達……まあ……え、えひ、
 僕はパワフルじゃないし……悪でもないが……」   

        「それでも、いいなら……
          ………………なってやんよ。」
 
               ・・・桜と同じ色の瞳を、少しだけ逸らす。

117 朝山『ザ・ハイヤー』 :2016/04/10(日) 16:07:03
>>116


>僕はパワフルじゃないし 悪でもないが  
>それでも、いいなら なってやんよ

 「  ――や」


      ピョィーーーーーーーーーーン!!!


 
 「やったすぅぅぅぅぅぅううううううううう!!!!
 友達っス! 友達のOKが出たっス!! 感激っス!! パワフルっス!!
ペプシにコーラ! サイダーソーダで乾杯っスぅぅうううう!!!」

 もしもジャンプ可能なら成層圏までジャンプしてたであろう勢いを秘めた
大音声とダイナミック且つパワフルに体全体を使って喜びを爆裂させる。
 つまり 全てパワフルっス!!

 クルクルクルクルシュッ!! タンッッ!! シャ キ――ン!!

 「嬉しいっス! 全てにおいて嬉しいっス!!
抱きつくっス! 胴上げするっス!! パワフルっス!!!」

 ガシッと稗田(ひえだ)をパワフルに抱きしめて
胴上げ…は厳しいんで手を取って回るっス! この世の春が来るっス!!

 朝山は、その後も稗田と共に桜の下でパワフルに
朝食を摂ってない事を思い出すまで踊りあかす。

貰った飲み物を口に含み。そして、それでも足りないぐらいに
自分の事を一日では語りつくせないぐらいに喋るだろう。

 今日は朝山にとってパワフルな毎日の中でも一番のパワフルな日だった。

118 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/04/11(月) 01:33:33
>>117

「えひ……大げさすぎるだ…………」

     ガシッ

        「ろっ……!?」

    「や……」

          「やめろ、抱き着くなって……!
            あ、暑苦しい……んだよ……!!」

恋姫の身体は驚くほど軽い。
抱いてくる朝山を振り払い――あまり大きく動く事はしない。

されるがまま、にはならないだけ。

「………………」

    
       ニマ…

この世の春――ってほど、素直にはなれない。
けれど、この世の『開花』くらいには。

       朝山みたいなパワフルさは恋姫にはない。
       けれど、パワフルじゃなくても。


     「……えひ、ひひ。」

                   ・・・『友達』でいたいから。

119 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/05/20(金) 22:41:47

  カタ
          カタ

      カタ

ゲーム機を手に、イヤホンを耳に。

「…………」

湖畔公園の木々が茂るスペースは、恋姫が良く訪れる。
この辺りは人が少ないし――暑くもないし。

多少の散歩と、休憩にぴったりだ。
今日は休憩の時間の方が長くなったけど。

      「……」

顔を上げる。
たまに周囲を見渡したくなる。

     キョロ   キョロ

別に何があるってこともないだろうが……

120 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/05/26(木) 23:24:07
>>119(つづき)

まあ、世の中珍しいこともそうそう起こる物ではない。
特に何があるでもなく、少したってその場を去った。

          ・・・・『横丁』のゲーム屋でも行ってみるか。

121 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/05/26(木) 23:57:49
湖畔、公園の木の陰。
木にもたれかかって一人の女性が眠っている。

「すー……すー……」

「ん……」

どうやら目覚めたらしく手の甲で目をこする。
そして、あたりを見回す。
その顔は心配そうで、どこかおびえているようであった。

122 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/05/29(日) 02:50:31
>>121

「や、おはよーございます」

藤心が辺りを見回すと、痩躯の男が90°ほど異なる面の木陰に座っているのが見えるだろう。僕だ。
90°ほど異なる面って分かりづらい表現かな。西に対する北か南、北に対する西か東って感じなんだけど。
まぁともかく、僕はニヤニヤ笑いながら軽く手を振ってみよう。

「ダメだよ、お嬢ちゃん」
「公共の場所って言っても、こんなところで寝てたら危ないって。
 それに木陰なんてちょっと時間がズレると形変わっちゃうから、日焼けしちゃうぜ?」

そのまま馴れ馴れしく話しかける。初対面だけどね。
なお、僕の手にはブックカバーに包まれた文庫本がある。
これはさっきまで本を読んでたからだ。

123 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/05/29(日) 10:00:10
>>122

「あ……」

溝呂木を視界に入れた藤心。
びくりと大きく体を震わせた。
そしてゆっくりと下を向いた。
髪が藤心を隔離するかのようにその顔を覆う。

「あ……あう……」

「かっ……は……ん…………」

出てくるのは小さく、かすれた声。
どんどんと呼吸が乱れていく。
ぐじぐじとその手で黒く艶やかな髪をいじる。

「ご……ごめん…………ごめんなさい……」

しばらくして、そう呟くようなやはり消え入りそうな声で言うと
藤心は黙ってしまった。

124 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/05/29(日) 22:33:59
>>123

「あ、相当マジで怖がらせてるねこれ」

うわーショックー。
そりゃ不審者の自覚はあったけどここまでマジな反応されるとかなり堪えるよこれ。
そしてここまで怖がらせた状態で帰るのも気分悪いね。

「いや、ごめんごめん……ってすぐに謝罪合戦するのは日本人の悪い癖だけどさ」
「そりゃ公園で気持ちよくうたた寝してたのに、起きたらこんなオジサンが隣にいて急に話しかけてきたら怖いよねぇ」
「というか自分で言っててなんだけど相当気持ち悪いね僕。ハハハ」

ってわけでどうにかなだめようと頑張ってみる僕だ。
笑顔がへらっとしてるのは素だし、営業スマイルはそれはそれで胡散臭いのでこのままで。

「別にナンパしたいとかイジワルしたいとかじゃないから、そこは安心してくれ」
「じゃあなんのために話しかけたかって言うとそんなに深い意味があるわけじゃないんだけど!」

125 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/05/29(日) 23:38:44
>>124

「あっ……うぅ……」

溝呂木の謝罪を聞いているとそんなうめきにも似た声を発する。
小さくふるふると横に髪が揺れる。
いや、首を振っているのだろうか。
ちらりと上目遣いで見上げ、またすぐに視線を外す。

「い、意味がないのに……」

「話しかけるの……?」

視線を外したまま藤心はそう問うた。

126 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/05/29(日) 23:51:55
>>125

(うーん案の定自己評価が極端に低いタイプというか、卑屈なタイプッ!
 『僕に謝罪させていること』を申し訳なく思ってしまうタイプの子だね、きっと)

適当に推測しつつ、言葉で反応が返ってきたことに内心ガッツポーズ。
おっと表向きはなんでもない風を装うぜ。
あんまりオーバーに反応すると余計に怖がらせちゃうだろうからね。

「あはは、鋭いとこ突いてくるねぇ」
「でもまぁ、うん。そうだよ。
 意味があるかないかで言えば、無いって言っていいんじゃないかな。
 なんていうか、興味本位というかなんとなくというか」

「見ての通りテキトーな性格でね。
 『風の向くまま気の向くまま』……なんてスカすつもりもないけど、ついその場の気分で行動しちゃうのさ。
 こういうの、『刹那主義』って言うのかな。はは、またスカしてるねこれ」

かんらかんらと、表情は覇気のないスマイルだ。

127 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/05/30(月) 00:16:40
>>126

「……」

視線を合わせない藤心。
伏し目がちでなんとも頼りのない雰囲気だ。
じっと話を聞いている。

「……刹那主義?」

その言葉を呟くとまた、黙る。
それから、もごもごと口の中で言葉を遊ばせる。
あ、とかそ、とか単語単語だけがたまに漏れ出てくる。
ついに決心したのかちらりと溝呂木に目線をやり、目を合わせる。

「あなた……自由……なのね……」

「……すごい…………わ……」

128 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/05/30(月) 00:36:36
>>127

へらへら笑って、お嬢ちゃんが言葉を発するまで待つよ。
幸いにして気は長い部類だからね。

「自由、自由かぁ……」

「確かにそうだね。子供のまま大人になったとも言うけどさ」
「大人になって独り立ちして、自分の責任を自分で取らなきゃいけなくなったし」
「そうなるともう、責任取れるなら何しても自由なわけだから」
「おかげさまで好きにテキトーに生きさせてもらってるよ」

別に、褒められるようなことでもないけどね。
……こう、家庭か友人関係に複雑な事情抱えてるタイプの子かなー。

「でも、お嬢ちゃんも中々に自由だと思うよ?」
「天気のいい日に、木陰でうたた寝をしてもいい……っていうのは、すごく『自由』なことじゃないか」

129 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/05/30(月) 01:08:51
>>128

「好きとか……テキトーとか……私には……」

言いかけて俯いて黙り込んでしまった。
風に髪が揺れる。

「じ……ゆう……?」

「私が……? ほんとう……?」

照れているのかほんのりと、顔が赤くなっている。
といっても大部分が髪で隠れてしまっているが。

「嬉しい……」

「……でも…………」

「いいえ……なんでも……ないわ……」

130 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/05/30(月) 13:40:13
>>129

(うん、やっぱ人間関係で問題を抱えてるみたいだね。
 抑圧か、迫害か……まぁ別に僕はカウンセラーでもなんでもないんだけど)

つまり、的確な対処法が分からないってことだ。
下手に刺激しすぎてもマズい気がするし……いやぁ、人との会話って難しいね!
とはいえそこまで悪い気分でもない。
厄介ごとってのはそこまで嫌いじゃないんだ。好きとは言わないけど。

「ま、誰しも自由であるべきさ。
 もちろん、だらしなくあれってことじゃないよ?
 キッチリしたい奴はキッチリすればいい。それもまた自由だ」

一番悪いのは、自らで選択ができなくなることだ。
……見たとこ、このお嬢ちゃんはその部類な気がするけど。

「そういうわけで、お嬢ちゃんも言いたいことがあると言ってみるといい。
 あんたなんかに言いたくねーよオッサン! ……ってことならそれでも構わないけど。
 外に出したいものを中に溜め込むのはストレスになるぜ。
 聞いてどうにかなることじゃないかもしれないけど、話して気が楽になることもあるさ」

ともあれ僕はすっかり興が乗ってしまったので、カウンセラー気分で攻めてみよう。

131 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/05/30(月) 22:41:04
>>130

濡烏、それは女性の髪にあてられる言葉である。
理想美ともいわれるこの髪を藤心は持っている。
それはまるでベールのように藤心を隠す。
なにかから守るように。

「言いたいことなんて……ないわ……」

「ないの。なにも……私には……持ってないわ……」

隠す。守る。
そして、中のものを外に出さないように。
覆う。

「でも……あなた……優しいのね……」

「優しく……されると、困ってしまうわ……」

132 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/05/30(月) 23:21:53
>>131

「そうかい?
 ……ま、それならそれでもいいけどね」

深追いはすまい。
言いたくないなら言いたくないでもいいのさ。
それもまた自由……というか僕が地雷踏みたくないだけなんだけど。
厄介ごとはそこまで嫌いじゃないけど、それはそれとして地雷は避けたいからね!

「ははは、僕が優しいって?」
「ないないそれはない。
 ちょっとコミュニケーションが好きなだけだよ、僕は。
 あるいは暇を持て余してるだけって言ってもいいけど」

僕が優しいなんて言ったら、世の中の『優しい人』がかわいそうだ。
単純に、女の子にビビられたまま帰るとダメージが大きそうってだけだし。

「でも、変なこと言うね。
 優しくされると困るのかい? 優しさアレルギー?」

133 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/05/31(火) 00:14:43
>>132

「……うん」

深追いはしない。
触らぬ神に祟りなし。興味本位で藪をつついて蛇を出すことはない。

「そう……あなた……そういう人なのね……」

意味ありげに呟くと、また髪をぐじぐじといじる。

「! ……困るわ……とても……とても……」

びくりと声を掛けられた時のように体を震わせる。

「私は弱い……とてもとても……弱いの…………」

「だから……優しくされたら……あなたに……甘えてしまうわ……」

「それに……あなたが……」

ぎゅっと髪を握りしめる。
震えている。今度は目に見えて分かる。
しかし同時にその顔は赤くなっている。
肌も赤くなりそうなほどに。
赤い。不健康過ぎるほどの白い肌が赤く染まっている。

134 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/05/31(火) 00:44:37
>>133

(あー……こういう子にありがちなことだけど……)

いわゆる『重い女』って奴だ。
物凄く端的に言ってしまえば、だけども。

「そ、僕はこーいう人。
 だからお嬢ちゃんも深刻にとらえなくていいよ。
 野良猫が寄ってきたぐらいの感覚で」

そんな内心は心の奥にしまい込みつつ、会話続行。
ここまで来て引くわけにはいかないよね。色んな意味で。

「まー初対面のオジサンに甘えちゃうのは社会的に見てヤバそうだね。
 ……とか下世話なジョーク飛ばしてる場合じゃないかもだけど」

「なんか震えてるけど平気かい?
 それに、僕がどうしたって?」

内心はもうおっかなびっくり地雷原を進むマインスイーパーだ。
既に致命的なとこに踏み込んでる気がしないでもない。頑張れ僕。

135 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/05/31(火) 01:10:56
>>134

「野良猫……?」

「そう……」

理解しているのかしていないのかいまいち掴みかねる返答。

「なにもないわ……なにもなにも……」

震えている。
しかし、それを否定する。
マインスイーパーと化した溝呂木は人間爆弾と化した藤心の心の中を行く。

「それとも……」

「あなた……私の……」

「こころに入り込むの?」

136 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/05/31(火) 01:38:56
>>135

「んー」

ちょっと考えるそぶりを見せる。
そりゃかわいい子っぽいけど、初対面でそこまで行くのは重い。
というか初対面じゃなくても重い。
僕はそういう重いのはちょっと苦手なんだ。身軽な方が好きでね。
とはいえここでNOを突き付けるのもなんだし……

「じゃ、逆に聞くけどキミはどうして欲しい?」

「って言うと『なんでもない・なにもない』って帰ってきそうだけど。
 そもそも話しかけたのは僕の方だしね。
 でも残念ながら、僕は『白馬の王子さま』ってキャラでもない。
 僕は散々言ったように無責任な人間だ。負える責任は自分の範囲だけさ」

「つまり、『それはキミが選ぶべきだ』。
 そうしないと多分後悔するよ」

というわけで――――ここは、『あえて攻める』。
試すような、でも相変わらずのへらっとした顔でね。

137 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/05/31(火) 23:27:53
>>136

「私は……なにも……! ……なにも……」

ないもいらない。そう言いたかったのだろう。
先手を打たれ、藤心は言葉に詰まった。

「私は……私は……」

呼吸が乱れる。
かぶりを振る。
追い詰められているかのように。
うめきにも似た声を上げながら藤心は困る。

「困るわ……とってもとって……困る困る困る困る……!」

「……助けて……誰かが私を……」

「……い……」

言葉に詰まった。
呼吸が止まったかのように、言葉が出ない。

「……私は、弱い。とてもとても……」

「でも……強くなりたいの……だから……答えるわ……」

溝呂木の目を見て、藤心は言う。
不安な色のある瞳だ。
その表情もまた不安げでおびえている。

「今は……私の心に入らないで……」

「あなたを……傷つけてしまうわ……」

138 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/05/31(火) 23:53:05
>>137

(おーおー苦しんでる苦しんでる)

苦しむお嬢ちゃんとは対照的に、僕は自然体だ。
よく言うだろ? パニックになってる人が目の前にいるとかえってクールになる、って奴。
どんどん自分がクールになって行ってる自覚があるね。

(ま、それでも……そんなに『悪い刺激』じゃなかったっぽいかな)
「おーらい、大した自信だ」

パッと両手を上げて、降参のポーズ。
そのままひょいと立ち上がるよ。

「じゃあやめとこう」
「僕も傷つきたくはないし、お嬢ちゃんも傷つけたくない。
 お互いの利益が一致してるわけだ」
「それにまぁ、僕としてもその言葉が聞けたら満足かな」

うん、これなら、このまま帰っても気分が悪くはならない。
なんでかってそりゃ、やっと『お嬢ちゃんの言葉』が聞けた気がするしね。

「でもホントにお昼寝は気をつけた方がいいぜ。
 お嬢ちゃん肌白いし、日焼けがキツイタイプに見えるからね」

139 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/01(水) 00:27:29
>>138

「そう……私もよ……傷つけたくないわ……」

また、視線を逸らす。
根本は変わらない。
覆されない。彼女の言葉は出ても、彼女自身は変わらない。

「満足なのね……」

ふっと、寂しそうな色が浮かんで消える。

「日焼け……?」

一瞬の疑問符。
やがて意味を理解したのかより日陰へ日陰へと行こうとする。

「!」

突然、着信音が鳴り響く。
藤心は傍にあったカバンからスマホを引っ張り出した。
電話だ。

「はい……はい……お父様……」

「……今すぐに……? ……はい…………」

「すぐ……行くから…………」

通話が終わったらしく、スマホを耳から話す。
その表情はより一層暗い。

「あ……私……その……帰るわ…………」

「あなたのお名前……聞いても……いい?」

140 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/06/01(水) 01:06:24
>>139

(悪いね。僕はやっぱり『白馬の王子様』じゃないのさ)

もちろん、たまに『そんな気分』になる時もあるが……今日はそうじゃない。
それに、それはあくまで『そんな気分』だ。
ほんとに王子様になれるわけじゃない。
だからやっぱり、僕は『ここまで』なのさ。

「お帰りかい?
 まぁ僕も帰るとこだけど」

……お父さん、やっぱり厳しそうだね。

「僕は……『名乗るほどのもんじゃない』、なんてスカしてもいいけど」
「『溝呂木鉄鶏(コオロギ テッケイ)』だよ」
「溝、風呂の呂に木。鉄の鶏で……コオロギテッケイ」
「お嬢ちゃんは?」

ともあれ、僕は最後までヘラヘラ笑って尋ねるわけだ。
次に会う機会があるかどうかは知らないけどさ。

141 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/01(水) 01:33:04
>>140

「溝呂木鉄鶏……」

「溝呂木さん…………ね……」

確かめる様に発音する。
そして、問いに答える。

「藤心……舞……フジのココロがマウ……」

「…………」

それだけ告げてぺこりと頭を下げると、藤心は足取り重そうに去っていった。

142 溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』 :2016/06/01(水) 01:41:54
>>141

「ん、舞ちゃんね」
「バイバイ、舞ちゃん」

手をひらひらして、お嬢ちゃん……舞ちゃんを見送る。
後に残るのは僕だけだ。

「…………まっ」
「面白い子ではあったかな。
 踏み込み過ぎにはご用心……ひょっとすると手遅れかもで、それなら御愁傷様だ。
 ガラじゃないけど、そういうのも悪く無い」

次に会う機会があるかどうかは知らないけど――――もしもあるなら、悪く無い。
彼女がどうなるのか、気にならないと言ったら間違いなく嘘さ。

「――――また会えるといいね、舞ちゃん」

またひとつ楽しみが増えたかな、なんて思いながら……僕も帰路につくのであった。
なんてね。

143 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/06/02(木) 23:30:11
                    ある日の午後、小石川文子は公園内を歩きながら、物思いに耽っていた。

――改めて振り返ってみても、前に住んでいた町には、あまりにも多くの思い出がありすぎたと思う。
それらは昼も夜も私の心を苛み続け、私自身が心の中で望んでいる結末へ、私を駆り立てようとした。
死に別れた『彼』の分まで生きなければならないと思いながらも、その時の私は、いつ自分を殺してしまうか分からない状態だった。

                    犬の散歩をする老人とすれ違い、一時的に思考が中断された。
                            軽く頭を下げて、歩き続ける。

――だから、慣れ親しんだ場所を離れ、この町に移り住んだのだ。
自分自身の内なる願望に負けないようにという願いを込めて。
今は、過去の記憶が残る場所から遠ざかったことで、以前と比べると気持ちを強く持つことができるようになったと実感できる。

                     前方を一組の男女が手を繋いで横切っていく。
                再び思考が止まり、その光景に一瞬目を細め、歩き続ける。

――しかし、それは決して完全ではない。
不規則に湧き起こる『死の衝動』――自ら命を絶てば、愛する者に再び会うことができるという背徳的かつ甘美な誘惑は、慢性的な病がもたらす発作のように、繰り返し私の心を苦しめている。
いつもバッグの中に忍ばせている一本の果物ナイフ――それは、いつどこで発作が起きても鎮められるように常備している『精神安定剤』だ。

                   ジョギング中の若者が、後ろから追い越して、あっという間に見えなくなった。
                 迷いのない生き方とは、ああいうものかもしれないと思いながら、また歩き続ける。

――けれど、もしかしたら、それさえも通用しなくなる時が来るかもしれない。
何かのきっかけで自分の意志が弱くなってしまったら、あるいは耳元で囁く誘惑が今よりも強くなったらと考えると、とても怖い。
そして、もしそうなったら――自分自身の意志だけで、自らを抑えることが難しくなった時は、この町に『死の衝動』を食い止める助けになって欲しいと思う。

                  ふと気付くと、私は森の中の一角に佇んでいた。
                 見上げると、眼前には一本の大樹が聳え立っている。
              溢れんばかりの生命力の発露に、どこか心を打たれるものを感じ、自然と目が挽きつけられた。

無意識の内に、神前に立つ敬虔な修道女のように胸の前で両手を組み、静かに目を閉じる。
どうか――どうか、この命を全うさせて下さい。
小石川文子は、この樹を通して、自分の住む町――『星見町』に、心からの祈りを捧げた。

144 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/06/02(木) 23:48:58
>>143

    ザッ ・ ・ ・

「…………?」

恋姫が彼女を目にしたのは、偶然で。
木陰の涼しい所を、ついでに、
画面が見えやすいところを求めてただけで。

そうしたら祈ってる所を見てしまったわけだ。

(なんだあいつ……新手の新興宗教か?
 えひ……頭痛が痛いみたいな言い回し……)

     (まあ……脳内セーフってことで……)

  
  ヒュ
      オ
        ォ

風が吹く。長い髪が揺れる。
桜色の目にかかった黒い絹糸を手で払い除ける。

「……」

恋姫の髪に染みついた、ミントの香料が風に乗る。
青春モノの一幕みたいな話だけど、それで恋姫に気づくかもしれない。

・・・・あるいはもっと単純に、不躾な視線に気づくかもしれない。

145 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/06/03(金) 00:14:33
>>144
鼻腔をくすぐる香りを察して、閉じていた目をゆっくりと開く。
すぐ近くに自分以外の人間がいることに、今更ながらに気付かされた。
しかし、この場所や時間を考えれば、何も不思議なことではないだろう。
清涼感のある香りが流れてきた方向に――すなわち恋姫のいる方に顔を向ける。
当然ながら視線が合うことになるだろう。


「――こんにちは」

若干の間を置いたのち、喪服に身を包んだ女は、目線の先に立つ恋姫に挨拶した。
黒い帽子の下にある顔に、穏やかではあるが、やや陰のある微笑みをたたえている。
彼女が立っている場所は、大樹の生い茂る枝葉に遮られて、ちょうど大きな日陰になっている。
そこに入れば、やや強くなり始めた日差しを避けて、十分に涼むことができるように見えた。

146 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/06/03(金) 00:33:32
>>145

   ザッ…


恋姫は少しだけ、足を進めた。
最近は蒸し暑くなってきた。
日向には、いたくない。けど。

「…………どーも。」

(うわ……何だ、こいつ……?
 何で喪服なんだ……この暑いのに。
 ゴスみたいな……ファッションでやってんのか……?)

      (……祈ってたな。
       花束でも置いてる……?)

 チラ


木の根元に視線を走らせたが、そういうわけでもない。
いよいよもって、何の喪服なのか。

「…………あー。」

     ジリ

「なんか……お取込み中か……?
 闇の儀式とか…………してないよな?」

    ジリ

      「生贄が良いとこに来たァ……!
       とか、そういうの……ないわな。えひ。」

少しだけ。近付くのを躊躇って。
人形のような、そしてダウナーな印象の顔を、暗い笑みに歪ませて。

「…………そこの日陰、入るぜ。」

結局、暑いし、日陰に入ろうと近づく。

――初対面だからこそ怖い。初見殺し、という言葉があるように。
この町にはおかしい奴もごまんといて、限って危険な『力』を持つ。

147 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/06/03(金) 01:04:01
>>146

恋姫から自分に向けられている疑いの眼差し。
それに気付いていないのか、あるいは気付いていないフリをしているのか。
表情から、そのどちらかを読み取ることは難しいようだった。
文子の表情は、相変わらずそのままだったからだ。
憂いと慈しみの入り混じったような複雑な優しさ――抽象的な言い回しになるが、もしたとえるとするなら、そんな顔だった。

「――ええ……。どうぞ……」

今日は日差しが強い。
木陰に入れば、体感温度はだいぶ下がって感じられるだろう。
その中に立つ文子は、今いる位置から少し横に移動して、恋姫のために場所を空ける。
それが済むと、両手を体の前で重ねて佇み、桜色の瞳を持つ少女がやってくるのを待つ。

近付いてきたなら、その手が見えるだろう。
『両手の薬指』に『同じデザインの指輪』がはめられていることに気がつくかもしれない。
それが、ある程度の背景を知る手がかりになるかもしれない――。

148 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/06/03(金) 01:35:59
>>147

「…………どーも。」

     ザリ…

空けてくれた場所に入る。
表情、所作。警戒しなくても良いらしいと気づく。

「……」

  チラ


     (うわ……っ。)

だから少し安心して。
それとほぼ同時に指輪が目に入った。それも二つ。

「…………」

意味することは――察せられた。
リア充爆発しろ、なんていうけど、ああいうのは冗談で。

すぐ、下に目を逸らす。

     「……」

         「……あー。」

「…………ゲーム、して良い?
 BGMは……出さないし、実況もしない。」

           ゴソ

そして、落とした声色で尋ねてみる。

「『いいえ』って言う選択肢も
 まあ……ふつうにあるから……」

サイズの大きいパーカーのポケットから、ゲーム機を出す。
最新型の携帯ゲーム機。イヤホンが差してある。

     「だって、えひ……」

重い雰囲気を嫌って、口が軽く動いているかもしれない。

「……常識的に考えて、
 質問、ループしたりはしないし……」

「僕、レトロゲーのNPCじゃないぜ……えひ。」

    クス…

そして、陰気な笑みを浮かべた。
もしこの冗談は通じなくとも、恋姫には面白かったから。

149 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/06/03(金) 02:17:16
>>148

少なくとも近年のゲームにはあまり縁がない。
昔――幼少の頃に、いくらかやったことがある程度だ。
もっとも、それはいわゆる『据え置き機』のゲームだったのだが。
しかし、取り出されたものが何であるかくらいは、すぐに察しがついた。

「ここは――『皆が気持ちよく過ごすための場所』だから……。それに……私はあなたがすることで気分を悪くしたりはしないわ……。だから――あなたもそれを気にする必要はないのよ……」

恋姫の傍らに立つ文子は、先程までと変わらない穏やかな語調で、少々暗示めいた答えを返した。
『BGM』を出してもいいし、仮に『実況』が付いたとしても、自分は気にしない。
彼女の言っていることは、そういう意味らしかった。

文子はゲームには疎い。
だから、恋姫が不意に放った冗談の意味が、すんなり理解できたわけではなかった。
しかし、今は自分の側にいる少女が笑った。
だから、文子も笑ったのだ。
優しくも憂いを帯びた、陰のある微笑み。

もし、この場に第三者がいたとして、二人が笑い合う光景を目にしたとすれば、何かしらの共通点のようなものを感じたかもしれない。
『似て非なるものの邂逅』とでも呼ぶべき雰囲気を感じ取ったかもしれない。
そして、当事者の一人である文子自身も、直感的に、この少女から『シンパシー』のようなものを感じ取っていたのだった。

150 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/06/03(金) 02:39:25
>>149

「えひ……ほんとに気にしない?
 じゃあ、まあ。遠慮なく、日陰ライフを……」

     カチ!

         シュル

電源スイッチをオン。イヤホンを耳に入れた。
さらに座り込む。

行儀が悪い?
知った事ではない。エンジョイしたい。

「エンジョイさせてもらうぜ……えひ。
 まあ……お前も……エンジョイ、続けてくれ……どーぞ。」

    チラ

恋姫が抱えるパラドクス。の、間。
そこに入ってくれる人は、ときどきいる。

        「……」

     ポチ    ポチ

今回もそうなのだろうか。
それが『シンパシー』なんだろうか?

恋姫は、同期した笑みにイライラしない。悪意を感じないから。

「……僕も、気にしないからさ。
 お前が今から呪文唱えだしても……あー、どんな顔してても……」

         「…………画面しか見てないから。」 
  
   カチ

だから、何となく、上手じゃないけど気を使ってみようなんて思うのだ。

151 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/06/03(金) 03:15:20
>>150

「――ありがとう」

そう言うと、樹の根元を背もたれにして、自分も腰を下ろす。
元々、特に目的があったからこの場所に来たわけではない。
ただ足の向くままに歩いていたら、偶然たどり着いた。
ただ、それだけの話だ。
だから、この場所でしばらく落ち着いた時間を過ごすというのが、自分にとっての『エンジョイ』ということになるのだろう。

そう――自分には、落ち着く場所が必要だ。
もしも『精神安定剤』だけでは抑えられなくなった時は、『この町』に頼ることになるだろう。
心を落ち着けられる場所、人、あるいは物。
そういった繋がりを、一つでも多く見つけておく必要がある。
今日ここへ来たのも、心の中で、そう思っていたせいかもしれない。

傍らでゲームに興じる少女――そうしながらも、彼女が自分に気を配ってくれていることは、すぐに分かった。
その気持ちが、ただ素直に嬉しかった。
自分が必要としている『生きる支え』の欠片が、そこにあるような気がしたからだ。

「そう――優しいのね……。ありがとう……」

その言葉の最後には、どこか含みがあった。
それは、あたかも何かを言いかけたようにも聞こえた。
名前を呼ぼうとしたが、相手の名前が分からなかった――そんな風な響きだった。

「私の名前は――小石川文子。できるなら……あなたの名前――聞かせてもらってもいいかしら……?」

隣にいる少女――恋姫の桜色の瞳を見つめて、静かに問いかけた。

152 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/06/03(金) 03:31:20
>>151

「…………礼が欲しくて。
 言ったわけじゃないし……」

「優しいとか……そういうのでも……ないし。
 フラグ管理……あー、それはちょっと違うか……」

         「こういうの……ツンデレ乙?
           ……自分で言うのは、へんだな。えひ。」

   カチ
        カチ

恋姫は俯いたまま、いっそう陰気に笑った。
楽しいって笑いよりは、快いって笑いだった。

画面から顔を上げる事はしない。
しそうになったけど、今の今で嘘になるし。

    ヒエダ
「……稗田。」

       レンヒメ
「稗田……恋姫。
 呼ぶなら……稗田でも恋姫でもいい……」

         「……僕も合わせるから。」

    カチ
           カチ

それ以上恋姫から、何かいうわけではない。
『小石川文子』というステージにいくつ地雷があるかもわからない。

         ピコ

   ピコ

わざわざ踏みに行く、意味もない気がするから。
今はこうして、エンジョイする時間を、共有すればいいと思うのだ・・・・

153 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/06/03(金) 04:04:36
>>152

『フラグ管理』、『ツンデレ乙』――いずれも文子にとっては馴染みのない言葉だった。
しかし、それは大した問題ではない。
なぜなら小石川文子は、言葉の表面よりも、その裏にある気持ちや込められている感情の方を重視する性格だからだ。
だから、言葉の意味は分からなくとも、どこか癒されるようなものを感じたのだろう。
彼女の――稗田恋姫の気遣いは、十分に伝わっていたのだから――。

「そう……。あなたは稗田恋姫さんっていうのね……。よく似合っていると思うわ――その綺麗な瞳に……」

画面を見下したままの恋姫――その隣に座っている文子も、それに合わせるかのように、自分の正面にある林を見つめたまま、ぽつりと呟くように言った。
気を使ってくれている少女に対して、言葉でのお礼ではなく、彼女に倣って感謝の気持ちを行動で示したかったからだ。

「じゃあ、『稗田さん』――私からは、そう呼ばせてもらうわ……」

それが、この邂逅における、文子から恋姫への最後の言葉だった。
それきり二人の間に何か特別な会話があったわけではない。
しばらく時間が経てば、日が傾いてくるだろう。
そうすれば、お互いに帰るべき場所へ帰るのだ。
しかし、少なくとも文子にとっては、それで十分だった。
『稗田恋姫との繋がり』つまり『この町の人との繋がり』を――ひいては『この町との繋がり』を得られたという実感があったからだ――。

154 ココロ『RLP』 :2016/06/08(水) 05:31:53

湖のすぐそばに、腰を下ろす。

「…………ふう。」

    チャプ

やっぱり、この場所が好きだ。
水面を、長く、細い指で撫でる。

そして、思い立ったように湖面に視線を向ける。

(……少し、演奏でもしようかしら?
 さ、最近は、危ない人ともあまり会わないし……)

      (いい人と会えることも、多いもの……)

  
  ♪

         ♪
              ♪

空気を叩く指先が、空中に透明な鍵盤を構成する。
ココロのスタンド――名は、『RLP』。

その音色はスタンド使いにしか聴こえない、幻想の音。

155 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/08(水) 23:02:03
>>154

    ――――――――ザッ


……灯りに誘われる虫のように。


           「水溜――――」


その演奏に誘われて。


                「ココロォ…………ッ!」


――――なんかえらい形相で現れる男がひとり。
獰猛な歓喜のスマイル。まるで百年の宿敵を前にしたかのような形相だ。

156 ココロ『RLP』 :2016/06/08(水) 23:37:31
>>155

     ビクッ

「…………!?」

         クルッ

慌てて振り向いたココロ。
土を踏みしめる音にただならぬものを感じた。

「な、なな何……だ、誰……」

        「あっ!」

目に入った顔は――見覚えがあった。
たった一度切り、遠くから見た顔ではあるのだけれど。

(そ、そうだわ……あの顔! そ、それにこの状況!
 いえ、早とちりかもしれないけれど……間違いないわ……)

――ある一件から、ココロにとっては『強い印象』のある人。


「い……板踏、さん。
 板踏、甲賀さん……よ、よね……?」

   (こ、この顔……私取って食われる……!?
    そ、そしてその残骸をここに沈められる……?)

          (……というわけでは、ないのよね? た、多分……)

157 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/09(木) 00:02:18
>>156

そう――――板踏甲賀。
ココロにとって直接話したことは無い人物だが、互いにその顔は知っていた。
板踏はココロの様子にも構わず、ズンズンと大股で近づいてくる。

      「ああ、板踏だ!」

    「 だ が そ ん な こ と は ど う で も い い ! 」

やたらデカい声(日頃鍛えた肺活量によるものだ)で叫びながら、近づいてくる。
怒っているわけではない。
笑っているし。
まぁその笑顔が怖いのだが。
肉食動物めいたスマイルである。
取って食われるかも、というココロの想像はあながち突飛でもないかもしれない。

        「――――なんだ今の音は!」

            ズン

          「なんだ今の音色は! 演奏は!」

               ズン

      「どこからどうやって出した! こんな『湖畔の真ん中』で!」

                  ズン

            「『小型のキーボード』の音色じゃなかったぞ!」

                     ズン

                  「それともまさか――――」

                       ズギュン

                      「――――『こういうこと』かッ!」

……板踏の右手に、『朝顔の絡みついたトランペット』が現れた。

158 ココロ『RLP』 :2016/06/09(木) 00:16:09
>>157

「ひ、ひぃぃ……」

    ヒィ ィ

情けない声が喉から出てきた。
どういう感情なのだ、その顔は?

(お、怒っては……いないわよね?
 お、音楽だし、きっと、よ……喜んでいるのよね?)

      (じ、自信過剰すぎるかしら……)

かつて『ミスコン』での『審査』を目にしていた。
それから、もう一つ。

(こ、声が大きいわ……
 吹奏楽部って、みんな大きな声なのかしら……
 それとも、わ、私の声が……小さすぎるだけかしら?)

だから何となく、どういう人物なのかは、知っている。
それでも怖いものは怖いけれど。

「まっ」

     「待って……」

              「お、落ち着いてちょうだ――」

     「あっ……!」

思わず頭を抱え、ハリネズミのように防御姿勢に入るココロ。
あまりに迫力に、明確な返答は出来ていないが……視線は『朝顔』に向いている。

(す、スタンド……そうよね、炎を操る……!)

             ・・・・ココロは『それ』を、一方的に知っている。

159 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/09(木) 00:23:30
>>158

         ニィ ィ ィ

その視線をみて、ますます板踏の笑みは深くなった。

       スゥゥゥゥゥゥ…

そしてゆっくりと天を仰ぎ、大きく息を吸って……

            フゥゥゥゥゥゥゥ……

吐いて……

       「……『ウィズイン・サイレンス』だ」

幾分落ち着いた様子で――まぁ相変わらず口元は大きく弧を描いていたが――『トランペット』を撫でる。
次いで、視線をココロに。

           「…………おまえのは?」

言葉は短く……どうもそれは、激情を抑え込んでいるようにも見える。

160 ココロ『RLP』 :2016/06/09(木) 00:30:59
>>159

「……」

(そう、『ウィズイン・サイレンス』……
 じ、実物を見たのは……初めてだけれど。)

    スゥゥゥ

          ハァァァ


深呼吸する。
それはある人に教わった『安心法』だ。

余計な不安は、要らない。

「――――『RLP』。」

   ♪

        ♪

「私のピアノの名前は……あ、『RLP』よ。」

エアピアノと共に、空間に浮かび上がる透明の鍵盤。
指先がその上で踊る。透明は少しだけ、色づく。七色に。

「……」

     「……ミスコン。」

「ミスコン以来、という事に……なるわよね。」

ココロにとっては違うけれど。そこを、再確認するようにつぶやく。

161 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/09(木) 00:41:43
>>160

     「『RLP』――――」

その音の響きを、音色と共にゆっくりと味わうように。
しばし瞠目して……静かに目を開く。

       「ああ……そうか」

   「『RLP』……」

             「そいつは素敵だ」

声色も、表情も穏やかに……なっている、はずだが。
その胸の奥の『炉』では、情熱の炎が燃え盛っていることに誰が気付けようか。

    「そうだな」

      「そうなる」

     「『星見小町おめでとう』ともう一度言うべきか?」

『ミスコン』……何の因果か吹奏楽部の仲間に審査員枠に押し込まれ。
思うままにやればいいと言われたので思うままに審査した、そんな記憶。

        「いいイベントだったよ」

      「おまえの『演奏』もな。最高だった」

――――なお、審査の基準は『恋人にしたい度』だったはずなのだが。
完全に思うままに、『音楽性』がどうのとか言って気にせず点数をつけていたのはある種の伝説として吹奏楽部の間で語り草である。

162 ココロ『RLP』 :2016/06/09(木) 00:51:43
>>161

「あ、ありがとう……
 貴方の能力も、素敵だと思う……わ。」

(よ、よかった……
 少し、落ち着いてくれたみたいだわ。
 ……そ、そんな考え方って、失礼よね。)

猛獣相手じゃああるまいし。
決して悪人などでは無い、それは知っている。

「……ありがとう。
 貴方達が良い点数をくれたおかげだもの。」

(こ、この人の点数は……どう考えても、
 こ……恋人とか……関係なかったわよね。)

礼を繰り返す。
あのイベントはココロにたくさんの賞賛をもたらした。

「あの時は、本当に……良い演奏が出来たって。
 自分でも思うわ。あんなにたくさんの人が、見ている前で……」

          「……」

あの経験があったから、あの『祭り』でも勝利を勝ち取れた。
もっとも、その事を『板踏』に説明するのは、難しいけれど。

「……ありがとう、板踏さん。」

          ・・・・もう一度、お礼をする。

163 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/09(木) 01:03:56
>>162

     「高い点数を出したのは俺だけじゃない」

当たり前だが、審査員は一人じゃない。
全員が高得点を出して……だからこその『優勝』だ。

       「だから……よせ」

         「礼を言われることじゃない」

      「おまえの実力だ。おまえが勝ち取った勝利だ」

                「だろう?」

板踏はそれを評価しただけ。
『良いもの』に『良い』と言っただけのことであって、礼を言われることではない。

        「……だが」

             「そうだな」

     「それなら……ひとつ頼みを聞いちゃくれないか?」

164 ココロ『RLP』 :2016/06/09(木) 01:17:40
>>163

「そ、それは…………」

       「……」

             「……『ええ』。」

ココロは少しだけ、遠慮がちに頷く。

自分のピアノ。
自分で弾き取った勝利。

(それは事実だもの……そうよ。
 皆のおかげもあるけれど…………)

       (私の演奏で、勝ったんだもの。
         ……自信は持っていいわよね。)

自信は、調律しなくては鈍りがちだ。
ピアノ。ココロが自認する、一番得意で、出来る事。

       ・・・・そして。

「た……頼み事?」

ココロは首を小さく傾げる。
演奏の手を、口元に当てて。

(な、何かしら……そんな、おかしなことではないわよね。
 ええ、それは間違いないわ。だけれど……で、出来ることかしら?)

           「わ……私に、出来ることなら。
             出来れば……協力、したいけれど……?」

165 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/09(木) 01:33:07
>>164

頷くココロに、満足げな表情を見せる。
それでいい、と言わんばかりに。
そうでなくては、評価したほうが報われない。

     「なに、難しいことじゃない」

   「おまえにできないはずもない」

ともあれ。
ともあれ、だ。
板踏は上機嫌に、肩や指をほぐす。
コキコキと関節が音を立てた。

                ヤ
       「――――『演奏』ろう」

――――『ウィズイン・サイレンス』を構える。

                        ヤ
     「おまえとはずっと――――『演奏』ってみたいと思ってた」

          「会ってみたいと思ってたし」

    「話してみたいとも思ってた」

             「それに、『楽器のスタンド』を持ってる奴にも会ってみたかった」

        「スタンドは『精神の形』だって話を聞いたからな」

      「なら、『楽器』のスタンドを持ってる奴は根っからの『音楽屋』ってことだろ?」

少なくとも、自分はそうだ。
板踏甲賀の『精神の形』は、この形でしか有り得なかったのだろう。
再び、表情が獰猛なスマイルを形作った。

     「『即興』で行こうぜ」

            「『リード』は俺がやる」

                 「それともおまえが『引っ張る』か?」

166 ココロ『RLP』 :2016/06/09(木) 01:45:35
>>165

「ヤ ッ――――」

   「あ」
         「え」

              「ええ!」

  ス
     ス

「私も……演奏、してみたいわ。」

やや焦りつつも、両手を、胸の前で構える。
鍵盤のヴィジョンは、姿勢を崩せばすぐに消える。

    ♪   ♪
      ♪   ♪

だが望めば、いつでも。どこででも。

「スタンドは……『精神のあらわれ』。
 私も、ええ……そう思っているわ。だから。」

        「私は音楽が大好きだし……
          それは、貴方も……同じことよね。」

ココロは湖畔を愛する。
そして、音楽を愛する。

   ♪   ♪

笑みを浮かべて、穏やかな演奏が鍵盤を保つ。

「リードは貴方に任せるわ……
 私が、合わせるから。よろしく、お願いするわね。」

          「それじゃあ……!」

                 ――準備はいつでも出来ている。

167 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/09(木) 02:03:10
>>166

       「光栄だ」

私も演奏してみたい、なんて言われてしまえば、こんなにも嬉しいことは無い。
思わず高笑いしたくなる衝動を、グッと堪えて胸の『炉』にくべる。


     「OK――――」


あとは言葉はいらない。
音楽好きが楽器を持って集まれば、やることはひとつだ。


             「――――行くぞ」


          スゥッ――


『ウィズイン・サイレンス』に口を当て、息を吸い込む。
板踏甲賀にとって音楽は―――‐『全て』だ。
その世界には『音楽』しかない。
そう信じているが故に、コミュニケーションも……やはり、また。


        /二二二二7
        //___.//                               f二)
        / ―――‐ /                                 || l
        //     //                                ||ノ〉
   , -‐-v./  , -‐-v./                Vk、                レ
  《   .ノ  《   .ノ                  Vト、` ー 、
    ̄      ̄                    Vk `ー、 i
                                Vk   l/
                                Vk
                               〆 .〉
                              /   ノ
            《 ヽ___          ゝ- ´
             _ ̄ ̄ ̄| |
            《 ヽ__| |
              ̄ ̄ ̄ ̄

   〃`:
                                    丶_ノ ー、
                                      \.  ト.
                                       \.! !
                                         ヾ|


――――音は鋭く、情熱的に。
最初から手加減も遠慮もなしのフルスロットルだ。

168 ココロ『RLP』 :2016/06/09(木) 02:14:50
>>167

「――――ええ!」

ココロにとって音楽は全てではない。
けれど――何より。

   ス

        スス

何より、自信を持って出来ることだから。
何より、誰かに好きになってもらえることだから。

       
:♯゚♪。           
  +.:♭*
     ♪.♪*
       .♪*     +.:♭*♪.♪*
         ♭*♪.♪*     *:.♪.:。.  
                         *:.♪.:。.*:.♪.:。.*:.♪.:。.
     
音を紡いでいく。

『板踏』の演奏に合わせるように。
幻の音が、炎のように情熱的な音を、補う。        


        +.:♭*♪.♪*             *:.♪.:。.*:.♪.:。.
       .♪*     +.:♭*♪.♪*   +.:♭*♪.♪*  
   :♯゚♪。            ♭*♪.♪*
*:.♪.:。.                    
゚                         


(…………楽しい! 楽しいわ!
 『RLP』――誰かと一緒に、演奏するのは!)

ココロは笑みを浮かべて――ただ音に向かい、音を躍らせる。

169 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/09(木) 02:28:54
>>168

    (いい――――いいぞ!)

        (ハッハァ! 楽しい! 楽しいな水溜ココロ!)

湧き上がる歓喜。
それすらも炉にくべて燃料にして。

板踏の音楽の原動力は、その情熱。
燃え盛る炎のように、薪と風を送り込むほど熱量を上げる音楽。
鉄をも溶かす『蹈鞴製鉄』のように、際限なくその火力は上がっていく。

      (なら、こいつはどうだ――――!)

                          ∧
                        <♪>
                          ∨
       ∧
     γ   `ヽ
    <  ♪  >        ∧
      ゝ   _ノ  ∧     <♪>
       ∨  <♪>     ∨
            ∨

                      ∧
                    γ   `ヽ
                   <  ♪  >
    ∧                ゝ   _ノ
   <♪>               ∨
    ∨

挑むように、転調。
音はさらに激しく。
炉の熱量が上がっていく。どこまでも、どこまでも。

170 ココロ『RLP』 :2016/06/09(木) 02:35:26
>>169

心の水底から――音が沸き上がる。
迷いがちな言葉より雄弁に、指は、ピアノは語る。

湖畔の水面を撫でた指先。
そのまま――音に流し込む。

(板踏さん――なんて『熱い』音色!
 でも私は……張り合ったりは、しないわ。)

もっと目立とうとか――抜き去ってやろうとか。
そういうのじゃあ、ない。

これは、『セッション』。
音と音の調和。水が炎を消すことはない。


          _,.、.-―-.、., ♪
       、-''´       `'-.、,_
―--:‐''^ ´   ♪
                             ♪                 _,.、.-―-.、.,
                                            、-''´       `'-.、,_
                                       ―--:‐''^ ´



      (……合わせるって、言ったもの。)

むしろ、水に反射して、炎の揺らめきは妖しく灯る。
熱暴走なんて、起こさせない。

              (どこまでだって……!)

音と音の調和――どこまでも、どこまでも、保って行く。

171 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/09(木) 02:48:59
>>170

ついてこれるか―――――音に乗せたメッセージ。
帰って来たのは、やはり音に乗ったメッセージ。

炎は湖面を照らし、湖面は炎を映して輝く。
相互に互いを引き立てる、音と音のコミュニケーション。

    (ああ、楽しいな! 本当に!)

               (これならいつまでもやれそうだ!)

       (ああ、いつまでだって続けてたいさ!)

玉のように噴き出す汗。
僅かな時間のはずなのに、もう何時間も演奏を続けているような気すらしてくる。
つまり――――

         (だが――――ああ! クソッ!)

――――その体力は、有限で。
音は徐々に熱量を抑え、ゆっくりと……『デクレッシェンド』で消えていく。
炎は小さく、しかし最後までその輝きを誇示しながら……


                           . . : :♪
.                         . : ∮ :
           . . . .          . : : : :
         . . : : : : :|ヽ: . .     . : : :#: :
       . : : r‐┐ : C|: : : : . . . :c/⌒: : :
     . : : : d d : : :   : :♭: : : :
   . :c/⌒: : : :        : : :
. : :♪: : : :
 : : :


――――演奏を、終えた。

             「―――――ぷはっ!」

                      ドサッ

たまらず、板踏は大の字になって地面に寝転がる。

172 ココロ『RLP』 :2016/06/09(木) 03:07:02
>>171

スタンドは精神(ココロ)の表現だ。
この音楽も――精神(ココロ)の表現だ。

全身全霊の演奏は――そう、だからこそ。

「…………!」

                           . . : :♪
.                         . : ∮ :
           . . . .          . : : : :
         . . : : : : :|ヽ: . .     . : : :#: :
       . : : r‐┐ : C|: : : : . . . :c/⌒: : :
     . : : : d d : : :   : :♭: : : :
   . :c/⌒: : : :        : : :
. : :♪: : : :
 : : :

(そろそろ……終わるのね!
 分かっているわ、最後まで合わせる――)


       ジャァ――z____ン


                 ・・・・永くは続かない。


「…………」

「………………はぁぁぁ。」

         シュ― ン

『RLP』が解除され――じきに、余韻も溶けていく。
寝転がったりはしないけれど、心地よい達成感に満たされる。

173 板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』 :2016/06/09(木) 03:21:14
>>172

呼気は荒く、汗は止まらず。
しかしそれが、たまらなく気持ちいい。
湖畔の涼しい風が頬を撫でていく。

……しばらくそうして休んでから、むくりと上体を起こした。

     「――――――『板踏甲賀』だ」

ニィと微笑んで、手を差し出す。
もう、そこに身を焦がすほどの熱は無い。
既に互いの名は知っている。
それでも――――改めて名乗らずにはいられなかった。
そういう衝動だけが胸の内にあった。

言いたいことは、既に。
音に乗せて交わした。ありったけの全てを。
余計な言葉を吐こうという気には、まったくなれなかった。

174 ココロ『RLP』 :2016/06/09(木) 03:31:03
>>173

    ス

差し出された手を、軽く握る。
そして。

「……」

「私は……『水溜 意(みずたまり こころ)』よ。」

       ニコ…

『板踏甲賀』個人に名乗るのは――初めてだ。
それはきっと、大きな意味があること。

    ヒュ
       オ
         オ

いつも通りの湖畔の水面。
涼しい風が吹く。

今日もまた、ココロの『絆』が――ここで、紡がれた。

175 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/26(日) 23:59:26
音が聞こえる。
音色が聞こえる。
旋律が聞こえる。
湖畔の傍から聞こえる。

バイオリンの音が聞こえる。

「……」

演奏を終える。
浮かない表情だ。

176 ココロ『RLP』 :2016/06/27(月) 00:03:53
>>175

「…………」

    〜♪

          「……?」

音色が聞こえた――気がした。
既に止んでいた。

自然公園には散歩をしに来た。
気のせいだとしても、帰るわけではない。

     スタ
           スタ

そして――歩く先にいる『藤心』の姿が、ココロの視界に入った。

(……あ……き、気のせいじゃなかったわ。
 バイオリン……かしら、あの人が演奏していたのね。)

        ジ…

        (あ、あまりじろじろ見ては失礼かしら……?)

と、思い直すものの、もう十分じろじろ見ていた。
視線に気づくかもしれないし――そうでなくても、距離的に近い。

177 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/27(月) 00:11:00
>>176

散歩をしに来たココロ。
音色に足を止める。
長く黒い髪。尻にかかりそうなほどだ。
その女性がまたバイオリンをひこうと構える。
が、そこでココロと目が合った。

「あ……」

びくりと大きく体を震わせる。
視線を外し、きょろきょろと辺りを見回している。
すると、近くにあったバイオリンのケースに手を伸ばした。

178 ココロ『RLP』 :2016/06/27(月) 00:23:33
>>177

(あんなに長いと、
 手入れが大変そうね……)

(……いえ、だから何ってことはないのだけれど。)

湖畔の緩やかな風。
長い髪に視線を取られ――目が合った。

  「あっ」
 
     ビクッ

(こ、怖がられているわ……
 ど、どうしましょう、不審者だと思われた……?)

      (嫌な思いをさせてしまったかしら……?)

目を逸らす。
ココロはあまり強い気質ではない。  

「こ、こんにちは……
 ごめんなさい、じろじろ見て。」

「その、バイオリンが聞こえたから、気になって……」

とはいえ、話すことは出来る。
ここで逃げれば、本格的に不審者だ。
もし自分がそういうことをやられたら怖い。

      「……れ、レッスンをしているんですか?」

それに――楽器を、音楽をしている相手に興味があるのは本当だ。

179 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/27(月) 00:44:58
>>178

「ヴァイオリン……」

女の動きがぴたりと止まる。
が、ほんのちょっぴり震えているのだろうか。
髪の毛が揺れ、ケースを掴めないでいる。

「レ……レッスンでは……ないわ……」

「ひいていた……だけ…………それだけ……ほんとうよ?」

ぽつり、ぽつりと語る。
やはり視線は合わせない。

「私は……なにも……」

180 ココロ『RLP』 :2016/06/27(月) 00:58:54
>>179

「あ……そ、そうなんですか。
 ご……ごめんなさい、早とちりでした……」

ココロは深追いしない。
そういうのはお互いよくない。

(ど、どうしたのかしら……
 そんなに、こ、怖がられているの?)

     (私そんなに怪しい……?
      そ、それとも体調が悪いのかしら?)

  ソロ…

ほんの少しだけ、脚を前に動かす。
懸念はあるが、話しやすいようにも歩み寄る。

「あ……え、ええと……
 私も、ピアノをしているから……」

     「気になっただけで……
      それだけ……興味本位で。」

あくまで、恐る恐るだ。
ココロは傷つけたくないし、その逆も恐れる。

「別に何をしようとかじゃあないんです……
 ごめんなさい、向こうに行った方がいいかしら……?」

「そ、それとも……何か他に出来ることとか……
 いえ、私がそれを出来るかは、分からないけれど……」
  
一応、尋ねてみる。拒まれたなら、実際にそうするだろう。

181 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/27(月) 01:12:21
>>180

俯いたまま動かない女。
外界から身を守るように黒い髪が顔に影を作る。

「いいの……あなた、悪くないわ……」

「! ……そう……ピアノ……いいわねぇ……」

やっと目を合わせてくれたらしい。
しかしその眼は前髪に隠れている。
口元が少し緩んでいるらしいことは分かる程度だ。

「いいわ……ここは……私のものじゃ……ない……し」

「私……なにも、いらない……なにもなにも……」

「……あなた、お名前は?」

182 ココロ『RLP』 :2016/06/27(月) 01:25:04
>>181

「え、ええ! 良いですよね。
 私も……弦楽器は詳しくないけれど……
 でも、ヴァイオリンの音って、なんだか落ち着いて。」

吊気味の目を、ぱちぱちと開閉する。

(よ、よかった……音楽が好きなんだわ。
 それに、私が怖がられてるわけじゃないのね。)

内心胸をなでおろす。
それに、話が合うかもしれない。嬉しい。

しかし。

(……じゃあ、何があったのかしら。
 私が踏み込んで良い事じゃ……ないわよね。)

眼の前の奏者の様子は、いかにもおかしい。
それはココロにも分かるし、心配でもある。

なにも、いらない。
その心の内は分からないが――

「あ……ありがとう。
 わ、私、ココロ……『水溜 意』です。」

               「貴女は……?」

名前を教え、聞く。
いきなり踏み込みすぎていくのは、不作法に違いない。

183 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/27(月) 01:35:25
>>182

「……そう……そうよ……そうよね……」

肯定。
不安そうな様子もない。
正解の話題、なのかも。

「ココロ……? みずたまり……ここ……ろ……」

名前の復唱。
噛みしめる様に心の名前を呼ぶ。
何度も何度も。それから黙って少し髪を揺らし、口をまた開く。

「あなたも……ココロ、なの……ね……」

「私も……ココロ」

「藤心……舞……ふじ……ごころ……」

184 ココロ『RLP』 :2016/06/27(月) 01:44:56
>>183

「あっ……そ、そうなんですか。
 ココロ繋がり……なんだか、奇遇ですね。」

     「だって、楽器も……
       音楽も好きですし……」

          「いえその、勝手な、
            シンパシーなのだけれど……」

恐る恐るではあるが――ココロは言葉を紡ぐ。
シンパシー。それがココロの感情なのかもしれない。

(この人も……私と同じ……
 いえ、同じというのは決めつけだけれど……)

(気が……弱い人なのかもしれないわ。
 もしかしたらというだけの……
 私の、勝手な考えに過ぎないけれど……)

それはつまり、おかしい人じゃあないってことだ。
まだ何も、分からない程度の繋がりだけれど。

「あ、あの……」

「ヴァイオリン……よかったら。
 もう一度、聞かせてもらっていいかしら……?」

――音楽。

そこに糸を見いだせたのは、光明だ。
音楽という『絆』は、言葉を超える事が出来る。

185 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/27(月) 23:34:51
>>184

「……シンパシー……?」

「そう……」

ぎゅっと胸の前でバイオリンを抱きしめる。
少しうつむきがちな視線。
それが何を意味するかは藤心だけが知っている。

「聞きたいの……? ヴァイオリン……」

「あなたが望むなら……いいわ……」

ゆっくりと、藤心はバイオリンを引く準備を始める。
長い黒髪を片側に寄せ、細い方にバイオリンを乗せる。
古めかしくも手入れされたバイオリン。
すぐにでも引ける状態になっている。

「……すぅ」

一度大きく吸い、吐いた。
演奏が始まる。

ttps://www.youtube.com/watch?v=GKn6-Wp3XJM

186 ココロ『RLP』 :2016/06/27(月) 23:40:07
>>185

(少し変なことを言ってしまったかしら……
 でも、確かにこの気持ちはシンパシーだわ……)

       (責任を持たなきゃ、自分の言葉よ。)


藤心のリアクションの意味は――察せない。
悪い反応ではないと、ココロは祈りたい。

「ええ……お願いします。
 お礼が出来るわけでも、ないけれど……」

      ス

小さく、しかし確かに頷くココロ。
耳に少しかかった髪をどかす。

そして――

「……」

      スー

           ハー

落ち着いて、演奏を――聴く。

    (カノン――)

          (……綺麗な音色。)

終わるまで、余計な口は叩かない。
目を薄く閉じ、聞き入る。そして終わったなら、小さく拍手をするだろう。

187 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/28(火) 00:03:35
>>186

藤心は非情におどおどしている。
それは人に会ったときにそうだし、普段から周りを伺っていた。
その割に外界からの刺激に弱い。人に合えば驚いてしまう。
しかし、バイオリンを引く彼女はひどく穏やかだった。
病的なまでに白い指が音を紡ぎだす。
ほんの少しの刺激で壊れてしまいそうなほど儚い雰囲気を纏ってはいるが
落ち着き、集中し、無心にバイオリンを引く姿はそんな印象を消し去ってしまうかもしれない。

「ありがとう」

拍手に対し、ぺこりと頭を下げた。

「優しいのね……」

「あなた……音楽……好き……?」

188 ココロ『RLP』 :2016/06/28(火) 00:14:16
>>187

ココロは演奏時の藤心に共感を抱く。
演奏は心を落ち着けてくれる。
演奏している自分は誇る事が出来る。

何もかも同じでは、ないだろう。
あくまで――親しめる物を感じる。

「こちらこそ……
 ありがとうございました。」

   ペコ

小さく返礼する。
シンパシーを抜きにして、良い演奏だった。

「い、いいえ。私はそんな……
 あっ、いえ、音楽は好きです。」

そして、頷く。
ココロの魂には『鍵盤』がある。音色がある。

「ずっと……ピアノは、私、してきましたから。
 ごめんなさい、ここでは弾けないけれど……」

(『RLP』は……聴こえない、わよね。
 決めつけてかかるのは良くないけれど……)

              (…………でも。)

しかし、それは幻の音色をのみ奏でる。
今、ここで出したところで、意味はない――はずだ。

189 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/28(火) 00:35:37
>>188

「……私も……好きよ」

ぼそぼそと小さな声で呟く。
聞き洩らしてしまいそうな声で話す。

「あなたの……弾く……ピアノ……」

「聞いて……みたい……けれど」

方法がない。
気軽に持ち運びできるようなものではない。
それは藤心も分かっていた。
しかし、相手の演奏を聴きたいという心は変わらない。

「……残念、ね……とてもとても……でも……それでも……いいわ」

「しょうがないもの……ね」

190 ココロ『RLP』 :2016/06/28(火) 00:45:27
>>189

「あ……ご……
 ごめんなさい……」

「ここにピアノがあれば……あれば……」

しょうがない。
しょうがないことだ。

(だけれど……『試す』のは……
 わ、私が、不審だと思われるくらいだわ。)

      (……良くないことは。)

   ピク

指輪に飾られた白い指が、僅かに動く。
ピアノの運指――

「……ふ、藤心さん。」

    ♪

       「…………『聴こえますか』?」

  ♪

      ♪


僅かな動作でも、ココロが望めば『それ』は奏でる。
指先に浮かび上がる、透明な鍵盤――『RLP』。

     (もし? き、聴こえなかったら、その時は……
       いいえ、悪い方ばかりに考えてもしょうがないわ。)

                  ――幻想の音が湖面に踊る。

191 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/28(火) 01:01:49
>>190

「いいわ……誰が……ううん……」

「……私の……わがまま……」

自戒するように呟く。
視線をそらし、一人また殻にこもる。
拒絶というよりは相手を自分に触れさせないための。

「……?」

ぱっと藤心の顔が上がる。
虚空を見つめる瞳。
音の鳴る方向を探し、見つけ出す。
視線の先に美しき鍵盤。

「……きれい……とてもとても……きれい……ね」

仕組みも何もわからない。
しかしそこに音があることが素晴らしい。

「素敵……」

192 ココロ『RLP』 :2016/06/28(火) 01:10:31
>>191

「わ、私のこれも、私のわがまま……」

        「だけれど」

   ポロ
        ン ♪


「――よ、良かった。
 演奏……聴かせ、られます。」

    「……ありがとうございます。
     私の『RLP』を、褒めてくれて。」

  ス―

      ハ―


「弾きます。」

深呼吸は余計な心を洗うための合図。
演奏に、心から指先を通じ鍵盤に音を――感覚に、没入する。


弾く曲は決めている。
技術勝負とか、そういうつもりはない。



          _,.、.-―-.、., ♪
       、-''´       `'-.、,_
―--:‐''^ ´   ♪
                             ♪                 _,.、.-―-.、.,
                                            、-''´       `'-.、,_
                                       ―--:‐''^ ´


一番得意な曲を――『絆』を紡ぐための、曲を。
ttps://www.youtube.com/watch?v=0siIoIWd62c

193 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/28(火) 01:19:26
>>192

「不思議……」

藤心の知識にこのようなピアノの形はない。
そしてこういうピアノを演奏するということも、ない。
未知。全くの未知足り得る。しかし満ち足りている。

「すごいわ……あなた……」

「昔……教えて……もらった……」

「演奏は……心も……癖も……人も……出るって……」

演奏が終われば小さな弱弱しい拍手と共にそんな言葉を贈る。

「あなた……やっぱり、優しい……の……かも」

194 ココロ『RLP』 :2016/06/28(火) 01:53:14
>>193

ココロは『RLP』について多くは語らない。
スタンドは――知っていると思っている。

それに、これは演奏が出来るのだ。
今はそれだけで良い。
演奏が止まれば、鍵盤も消える。

「あ……ありがとうございました。聴いてくれて。」

   「ごめんなさい、その……
    驚かせてしまいました……?」

拍手の音は、耳に心地いい。
ヴァイオリンの音ほどではないけれど。

「……」

昔、大切な友達に教えられた。

     キュ

スタンドは心の鏡――
美しいスタンドの持ち主には、美しい心が少しはある、と。

その言葉はココロを何度も励ました。

「……わ、私……嬉しい、藤心さん。
 そんな風に、言って貰えて……本当に。」

「『RLP』を……演奏を、褒められるのは……嬉しくて。」

              ニコ…

         「ありがとうございます。」

面と向かってこれほど褒められるのは、誇らしく、照れる。
決して初めての経験ではないけれど、藤心の言葉は初めてだ。

195 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/28(火) 23:23:02
>>194

「少し……だけ……」

驚いていたらしい。
その割にはこれといった反応を示していたわけでもなさそうだが。

「いいの……私は……別に……」

感謝の言葉を述べるココロに藤心はそう返す。
黒い長髪で自らを覆い、その視線を地面に注いでいる。

「……少し……困ってしまうわ……」

「そんなに……いいえ……いいの……」

196 ココロ『RLP』 :2016/06/29(水) 01:08:53
>>195

「あ……ご、ごめんなさい。
 私ったら、少し大げさでした……?」

         ビク

少しだけ申し訳ない気がした。
けれど、感謝の気持ちは本心だし――

「でも……」

「本当に、嬉しかったから……」

あんまり謝り過ぎても、余計困らせてしまうだろう。
自分なら、きっと困る……気がする。

        チラ

「……あ……」

      「私、そろそろ……
        行こうかと思います。」

時計が目に入って、時間が気になった。

「も、もしよかったら……また、会えたら嬉しいです。」

それも素直な気持ちだった。
この湖畔に来れば、会えるような気もした。

197 藤心 舞『ラヴィンチェインズ』 :2016/06/29(水) 23:35:56
>>196

「いえ……いいの……私も……嬉しい……」

ケースにバイオリンをしまう藤心。
パチンパチンとケースを閉じる。
それからほうと一息ついた。

「そう……行くのね」

「会えるわ……きっときっと……」

ココロに視線を合わせてそう返す。
その顔はほんの少しだけ、笑んでいたのかもしれない。

「さようなら……」

198 ココロ『RLP』 :2016/06/29(水) 23:39:48
>>197

「ええ……さようなら、藤心さん。」

      ペコ…

小さく頭を下げて、自然公園を去る。

     「……また。」

その表情は、笑みだった。
ヴァイオリンの音色が、絆の糸を出会わせた。

そして――ピアノの音色が、それを紡いだ。  

     (素敵な演奏だったわ。
       ……きっと、会える。
        私もそう思っているわ……)

奇妙な、確信めいた思いと共に、ココロは帰路を歩いていく。

199 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/09(土) 01:18:51

恋姫はインドア派だ。
アイドルとしてもそういうことになっている。
異論は認める――と恋姫は思わない。
そこになんら異論をはさむ余地はない。

……だが、たまには散歩もする。

   ザッ

「あっつ……」

まだ朝。
それでも、暑い。
主に、髪を納めた帽子の中。
それから、汗で滑る眼鏡も嫌だ。

      くしゃ


「うわ……」

セミの抜け殻を踏んでしまった。
たまには散歩もするが……帰りたくなってきた。

200 遊部『フラジール・デイズ』 :2016/07/15(金) 21:24:48
>>199


   ザァァァァ    ピチピチ   ピチピチ…

木々は風に揺れ、自然のみの囁きを織りなす。
 木漏れ日の隙間から、微かに小鳥が謡うのが聞こえた。

空に一羽、小さな影が太陽の下を通過する。アレは……ひばりだろうか

 『思いはひばりの如く軽やかに夜明けの空を飛び回るものは幸いなり』

 その鳥を見ながら、黄色を基調としたレースのワンピースを身に着けている
ピンク色の長髪の女性が、鳥の横切った空を仰ぎつつ呟く。

 『人生を超越しつつ飛び回り物言わぬ花々の言葉を解するものは幸いなり』
 
 クルッ

 その女性は、貴方のほうへ振り向く。

……穏やかな顔つきをした、少し妖美な雰囲気が彼女を取り巻いている。

 「あら こんにちは。そちらも森林浴ですか?」

 話しかけてきた……悪意はなさそうだ。

201 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/15(金) 23:30:25
>>200

   スッ

足を上げて、足元の抜け殻を見る。
見事につぶれていた。
生きてるのじゃなくてよかった。

    ビクッ

……突如話しかけられ、
小さい背がやや跳ねる。

     「えひっ……」

「まあ……そんなとこかな……
 『モンスター探し』では、ない……」

      クル

冗談とともに振り返った。

(うおっ……ピンク髪……
 コスプレかなんかか……?)

「あー、僕森林浴は初心者なんだけど、
 この暑いのに……ガチ勢は癒されるの……?」
 
          ジリ

    ジリ

空には素敵な光景が広がっている。
だが、舗装された地面は地獄の暑さだ。

恋姫は元から八の字気味な眉をさらに曲げつつ、うだる。

202 遊部『フラジール・デイズ』 :2016/07/15(金) 23:49:06
>>201

クスッ
 
 「『モンスター探し』なんて、洒落た言い方ね。
『追う怪物に 追われる怪物  学ばない人々に 繰り返す歴史
過去の被害者さえ 未来は加害者 』ってね。
……あぁ、あなたの中のモンスター、と言う詩の引用よ」

 「癒される……そうね」

うーん、と伸びをして。その女性は木々を見つめ。少ししてから
口の弧を上げるだけの微笑を向け、言葉を向けた。

 「そうね、私は癒されると思うわよ。
周りが苦しくて、気に食わない所も目に付くでしょうけど。それでも
空を見れば、一点の染みのない青空でしょう? あぁ、雲が掛かっていたら
そうじゃないじゃないって言う、揚げ足は抜きにしてね」

 軽くルージュを引いた唇に、指を添え。クスリとその女性は
貴方に対し茶目っ気を含め、告げた。

 稗田の視点が、髪のほうに向いてるのに気づいたのか。その
ピンク色の長髪をサラッと掻き揚げながら、気負う事なく答えた。

「あぁ、この髪の色が気になる? まぁ派手だと思うわ、けどちょっとした事情があってね。
元々、『私』の地毛は落ち着いた金色なのよ。でも、ピンクも良いと思うわよ。
花でもカーネーションは落ち着く色合いじゃない」

 貴方と多少のお喋りを楽しむ猶予は、目の前の彼女にはあるようだ。

203 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/16(土) 00:04:18
>>202

「……何それ怖いな。
 別に……洒落てるとかじゃあないし。」

      「……ゲームの話だから。」

    スッ

・・・・視線を少し上げる。

地面を見ていると余計暑いから。
帽子のおかげで、上からの暑さは、少しマシ。

「流石ガチ勢だ……
 僕にはとてもできない……えひ。」

     ミーン  ミーン

      ジジジジ

「空見てもめっちゃあつい……
 まあでも……セミの抜け殻よりは癒されるな。」

それから――

「えひ、カーネーションか……
 落ち着くってか、ひらひらなイメージ……」

無意識に、髪を見ていた事に気づく。

「……バンドマンか何か……?
 コスプレ……ってわけじゃなさそうだが……」

恋姫自身の目も、桜色をしている。
暑さのあまり細まり、満開の夏桜とはいかないが。

204 遊部『フラジール・デイズ』 :2016/07/16(土) 00:34:46
>>203

「『バンドマン』……あぁ、そうね。そう言う見方もあるのよね。
次から、この髪の色を誰かが気にしたら、そう言う風な肩書だって言おうかしら。
 もっとも、私は楽器は弾くより聞くほうが好みなんですけどね。
ショパンとか、モーツアルトとか」

 長髪のピンクの髪の先を弄り、少しだけ思案した顔つきで
稗田の質問に対し、その女性は回答を探す様子を見せる。

 「そうねぇ 謂わば……こんな言い方も奇妙だけど。『擬態』と
言うべきなのかしらねぇ」

 フッ

 女性は、僅かに馬鹿にするわけでもない。だが何処となく
何かに対し一笑するかのような微笑みを作り上げ、そう告げた。

 「保護色、って言う言葉があるでしょう? 
外敵から身を守る為、または狩猟の為に身を隠す為、とか。
 まぁ、私の場合。前者の意味を兼ねた意味合いでのピンク色が、その
保護色に鳴り得る訳よ。この髪の色だと、そんなにお近づきになりたいと
思える物好きな方って少ないでしょう? そう言う理由かしらね」

 私、余り人付き合いを好まないのよ。と、余り人好きとは言えない台詞を
人好きのする笑い方を交えて女性は言い切った。
 何と言うか、気持ちの良い女性だ……気弱、とか。ネガティブと言うものに
縁が少ないようだと。少し話を交えただけでも、そう言う性格なのが見て取れた。

「貴方は、その『バンドマン』なのかしらね? 御免なさいね
私、芸能界とかそう言った風聞に余り価値を見出さなくてね。
 貴方が高名な人だとしたら気を悪くさせてしまったかしら」

 そう大人びた様子で、稗田の職を聞く。

205 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/16(土) 00:48:33
>>204

「クラシックってやつなのかな……?
 えひ、BGMでしか聞いたことないかも……」

ゲームの、という意味だ。
実際にはCMとかで耳にする機会もある?
……どちらにせよ、意識してはない。

それから。

「擬態ぃ……?」

(なんだこいつ……
 厨二入ってんのか……?)

「まあ……うん。一理あるかな……
 絶対エンカしに行かない見た目だ……」

        「……えひ。」

言葉選びが引っかかったけれど、
まあ、恋姫も人の事は言えない立場。

「いや……僕は……
 もっと俗っぽいやつだよ……」

「そんなスーパーレアキャラでもない……」

えひ、と笑った。
レアくらいかな……と内心思う。

「にしても……あー。
 揚げ足取っちゃうけど……」

少しだけ、躊躇ってから。

「……人付き合い苦手なら、何で僕に声かけたの?」

       「コミュ力の経験値稼ぎ……とか?
         えひ、僕も大した経験値持ってないよ……」

206 遊部『フラジール・デイズ』 :2016/07/16(土) 18:37:51
>>205

>コミュ力の経験値稼ぎ……とか?

 パンッ 「冴えてるわねー。ご名答っ
こんな成りでも、話が弾むのなら、お茶の一杯を楽しむ
相手には十分でしょう? 誰かと気さくに、見知らぬ相手でも
引かせず、お茶の御相手…そう出来るのも才能の一種だと思うわ」

 軽い手拍子を一度打ち、女性は笑みを見せて喋る。

「自分の悪いと思える部分は、他人から見るとそんなに悪く思えないけど。
それでも直したほうがいい部分は直すべきよね。
 『私』が『わたし』で悪い部分は、私は誰かとお喋りするのが好きだけど
だけどわたしは人と付き合うのが臆病なのよ。ねぇ、滑稽でしょう?」

 そう、女性は唇に指を添え小さく弾けるように笑う。
不思議な内容だ……だが、冗談なのか本気なのかは判別がつかない。

 一頻り笑うと、女性は気分良さそうに伸びを一度して呟く。

「あー、お喋りって本当楽しい。けど、ずっとは無理ね 悲しい事に」

 それは独り言めいていて、少し寂しそうである。
だが、すぐに笑顔を見せ稗田へ尋ねた。

「それで。Ex(経験値)の少ないそちらは、Ex(急行列車)に乗る程
お忙しくなければ、少し名前をお伺いしてもよろしいかしら」

 軽いジョークを交え、女性は貴方に名前を聞く…。

207 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/16(土) 23:31:47
>>206

手拍子に視線を動かしつつ。

「えひ、正解しちゃったぁ……
 豪華景品は期待して良い……?」

     「才能ね……
       まあ……でも……」

実際、話が出来ている。
初対面でも、だ――イージーな行為ではない。

「……」

「滑稽ってことも……
 ないんじゃないの……
 別に、常識的に考えても……」

短く返した。

「……」

笑みは浮かべづらかった。
その理由は自分自身意識してはいない。

「後ろから、炎の壁が迫ってくる……?
 じゃないだろうけど、えひ……制限時間はあるよな。」

腕時計を見た。
それから。

「……稗田。稗田……恋姫。
 わるいメタルスライムじゃないよ……」

                 「……お前、は?」

208 遊部『フラジール・デイズ』 :2016/07/17(日) 00:01:32
>>207

 >稗田……恋姫

稗田の返事に、大きくゆっくりと頷きを示し女性は朗らかな笑み浮かべた。

「良い名前ねぇ。私、日本人の、ワビサビのある名前って好きよ。
私?
 私は……  ――『レミ』 そう、呼んでくれれば良いわ。稗田さん」

 互いに名乗りを示す。通りすがりに咲かしたお喋りとしては
他人から知人にランクは上がる。中々のベターな関係の築き方、と思って良い。

 そして、腕時計を見た彼女を見て。空気を読んだのだろう、抑揚をつけて告げる。

「あらまぁ、こんな時間ね。お喋りは楽しいけど、時間があっと言う間に過ぎてしまう。
まるで白昼夢のように……
『不思議の国にまどろみて 日々のまにまに夢を見る 逝く夏のように夢を見る』
……ってね。それじゃあ、また何処かで会いましょう稗田さん。
願わくば、次に会う時はお茶でも一杯互いに振る舞いながら、お話ししたいわね」

 そう、一つの木陰に腰を下ろしつつ。彼女……『レミ』は貴方へと
手をゆっくりと降り、別れを告げる。

 その顔つきは晴れやかであり、貴方との次の来訪を幾分かは
本当に期待してるように思えた……。

209 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/17(日) 00:14:00
>>208

「…………?
 レミ……ね、んじゃそう呼ぶ。」

外国人なのか?
と、思ったがそれはまあ、今は良い。

「……次あった時には、な。」

暑さも忘れて話し込んでいた。
不思議な時間だった――ように思う。

「えひ……時間制限がバグってたみたい。
 まだ何分かしか、喋ってないつもりだったが……」

小さく、陰気な笑みを浮かべた。
快い種類の笑みだった。

「経験値貯めて待ってるよ……
 今度は絶対暑くないステージで会おうな……」

     「んじゃ……
      恋姫は にげだした!」

    クルッ

          「……なんてな、えひ……」

     トコ   トコ

ほんの小さく手を振り、その場を去っていく。
次に会う時は――今日の事を忘れてはいないだろう。

210 遊部『フラジール・デイズ』 :2016/07/17(日) 22:23:39
>>209

 「えぇ! それじゃあね稗田さん。貴方と『私』が
もう一度お喋り出来るの、楽しみにしてるわっ」

 ゆっくりと、伸ばされた手は振られ……貴方の姿が消えるまで
『レミ』は手を振り続け、見送る。

 「……」

 そして、稗田が消えると共に彼女は笑みを保ち再度木々を見上げる。

   ……ザッ

だが、そんな彼女に十秒足らずで、近づく足音が一つ。

 
            ゴ     ゴ       ゴ
              ゴ       ゴ     ゴ……。

     『……試運転としては、どんな調子だい?』

 その人影は、青年ような声色で『レミ』に語り掛ける。驚く事なく
微笑みを張り付けたまま彼女は振り向く事もせず告げる。

 「そうねっ。中々好調ではないのかしら? けれど、残念ね。
あの娘、とっても気立てが良さそうな娘だったのに。私がこんな
継ぎ接ぎの存在だって知ったら、がっかりするじゃないの?」

 『それも、必要な事だ。僕等にとって、そして彼女にとって……
道のりは険しく長くも、手順を踏んでいかなければならない。
 レミ……それは、君も分かっている筈だ。
        ――全ては 玲美の為なんだから』

      ゴ     ゴ   ゴ
        ゴ     ゴ     ゴ
                   ゴ   ゴ……

 「フフッ。貴方も中々屈折してるわねぇ? もう少し柔軟に
ストイックに気持ちのままに生きてみたら? ねぇ ――」


                 『……解除』

 
 『……レミの役柄は、上々だ。けど、まだ場数を慣れさせないと。
待っててくれ……玲美。僕が   きっと……』

 ピンク髪をした、華奢なワンピースを纏った女性がいる。

 その女性は、何処か思いつめた横顔と共に、低い男性のような
声を発しつつ森を後にした……。

211 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/26(火) 23:13:28

    ウロ

         ウロ


帽子を被って日よけして。
スポーツドリンクも持参した。

「……」

   スッ   スッ

スマートフォンをしきりに動かす。
自然風景の撮影? 否。

   ミーン
       ミンミン

            ミーーーーーーーン!

「……」

(夏特有のBGMいらない……
 音量調整も出来ないクソゲーだ……)

イヤホンでもつけて歩けばいいか――
しかし今は、音楽で充電を減らす暇などないのだ。

恋姫はスマホの画面越しに、電子の世界のモンスターを探しているから……

212 雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』 :2016/07/29(金) 00:40:25
>>211

「ふん、ふん、ふふん」

電子の世界のモンスターではなく
現実の世界の人間が現れた。
ただし野性の存在ではない。

「ふん、ふふん」

コインを投げ上げる。
数枚のコインがきらきらと陽の光を反射する。

「はい」

ぱっと、宙にある数枚のコインを一度にキャッチした。

「ん?」

気づいたようだ。

213 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/29(金) 01:13:44
>>212

(……なんだあいつ……
 『ジャグリングジャグラー』か? えひ。)

       チラ…

少しだけ視線を遣った。
が、モンスターではない。

画面は向けないまま――――

「……」

      ビクッ

・・・どうやら目が合ってしまったらしい。
だからと言って、勝負が始まるわけではないが。

「……なんだよ。」

「おひねりとかは……
 コインいっこもないからな……」

      ジリ

恋姫はやや眉の八の字をより深める。
これはすわ、大道芸人か――という警戒である。

214 雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』 :2016/07/29(金) 01:34:58
>>213

「いえ。コインもおひねりも必要はありませんよ?」

「私、暇を持て余しただけなので」

黒い髪、黒い瞳。
だが、その瞳は黒すぎる。おそらくカラーコンタクトだろう。
薄手のカーディガンを羽織り、ズボンをはいている。
服はゆったりとしたサイズのものを着ている。
髪には前髪を分けるために四つ葉の装飾のヘアピン。

「あぁ、警戒なさらず。私、雑賀華(さいか はな)と申します」

「サイカでも、ハナでもお好きなように」

手のコインをカーディガンのポケットに突っ込む。
握り込んだ拳をポケットから出して、開いて見せた。
その手には一輪の花。

「いります?」

215 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/29(金) 22:56:50
>>214

「あっそ……じゃあいいか……」

   フン

鼻を小さく鳴らして、スマホを持つ手を下ろす。

恋姫は桜色の瞳を細めた。
そこに、突然一輪の花が映りこんだ。

       ビク…

「花とか。えひ。キザすぎるぜ……乙女ゲーかよ。
 そういうのはさ……ほら、事務所通してくれなきゃ……」

       「このご時世だし……
         警戒しちゃうかな……」

ダウナーな語調で、恋姫は拒否した。
もちろん手品には少しだけ、目を丸くしたが――

「……」

それを口に出しはしない。

「なあ、その花……いつでも仕込んでるの……?」

              「常備アイテムなの……?」

・・・何となく気になって、そんなことを聞いてみるのだった。

216 雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』 :2016/07/29(金) 23:32:45
>>215

「事務所、ですか……」

「弱りました。どこに電話をすべきなのか、見当が付きませんので」

「それに、警戒もごもっとも」

また、ポケットに手を突っ込んで花を戻す。
俯きながら上目づかいでその眼を見る。
そして、顔に微笑みが浮かぶ。

「常備? 常備、ですか?」

「どうでしょう? 確かに、持ち歩くことは多いですが毎日ではないですし」

「準☆常備、ですかね」

217 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/29(金) 23:42:06
>>216

「……冗談で、言ったんだぜ。
 こういうの、言わせんなよな恥ずかしい……」

「まあ……冗談でも、
 受け取りはしないけど……」

それについては気持ちの問題だ。
黄色い声を上げるような、がらでもない。

「……えひ。なんだよ、そのテンション……?」

『☆』。

「この暑いのに……」

何だかわからないが、
……☆が見えた気がする。気のせいか?

「スター性に全振りしてるのか…………
 じゃあ……他にも何か……仕込んでるの?」

        「マジシャンなの……?
          それとも怪盗か……えひ。」

それほど長話をするつもりもなかったし……
別に、マジックが好きというわけでもないけれど。

・・・・話の掴み、という意味では、花は実を結んだのか。

218 雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』 :2016/07/30(土) 00:11:52
>>217

「そうですか。それはますます残念」

「? テンション、ですか? いたって平常、ですが」

うそぶく。
大げさに両手を挙げて見せて。
ちょっと姿勢が☆っぽい。

「スター性なんて、仕込んでおりませんよ」

けらけらと雑賀が笑う。
そして、ズボンの裾をめくり、偽物らしいナイフを取り出す。
ズボンの後ろポケットからはカード。

「色々仕込んでますけど」

「色々な場所に。でも、マジシャンではありませんよ?」

「手品が趣味なだけです。えぇ、それだけですよ」

219 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/30(土) 00:20:18
>>218

「えひ……ハイテンションに見えるけど……」

「まあ……そう思うなら……
 お前の中ではそうなんだろうぜ……」

      『☆』。

ワザとではないのか……?
そうは思えないので、陰気な笑みを浮かべた。

「……」

  ビク

そしてナイフに多少驚く――

「……えひ。」

「装備が趣味全開すぎる……」

が、次々出てくる手品っぽいアイテム。
趣味とは言うが、これは驚く。

「さっきの……あの、コイン。
 あれもなんか、手品の奴なの……?」

「別にそこまで興味あるとかじゃ……ないんだけど。」

ややわざとらしい口調で否定を付け加えつつ、聞いてみるのだった。

220 雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』 :2016/07/30(土) 00:44:57
>>219

「どうでしょう。私自身、私を理解しているわけではないので」

「そういうものかと」

似たように笑って見せる。
といっても、物まねのセンスはない様だ。

「偽物ですよ」

刃を押すとかしゅっと持ち手の中に刃が沈む。
やはり偽物。
いや、本物を持ち歩いていた方が不味いのだが。

「コイン、ですか?」

「あれは種も仕掛けもないものですよ」

「手品でも使いますがね」

くるくるとナイフをまわす。

221 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/30(土) 00:57:07
>>220

ものまねとは分からなかった。
本物ほど陰気ではないなら、いいことだ。

「えひ……まあ……
 現実にステータス画面は無いし……」

「自分を理解とか、難しすぎ……えひ。
 自分探しの旅は超大作RPGだよ……」

恋姫はもっと陰気に笑って、言った。
それから。

「まあ……そりゃそうだ……」

と、ナイフを見て呟いた。
本物のナイフのはずがない。

「ふうん……」

    ジ…

「えひ……TECのステータス高そう。
 それこそステータス見なきゃ、解らないけど……」

      「サブクラスは大道芸人……?」

それはさりげないが、見事な気がした。
ナイフを回す動きを、猫のように、なんとなく目で追う。

222 雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』 :2016/07/30(土) 01:19:09
>>221

「スマホゲームの次はRPGですか」

「ゲーム、お好きなんです?」

あまり陰気な気配のない人間だった。
しかし陽気という訳でもなさそうではある。
相手の方を見ているが、どこか別の所を見ているような気もする。

「テクニックは重要ですよ。手品に置いて。いえ、人生において」

「芸を支えるものは人生を支えるものです」

「大道芸人よりは吟遊詩人や遊び人でありたいですね」

手の甲も使ってナイフが回転する。
くるくるくるくる。
ふわりとナイフが宙を舞う。
ナイフが雑賀の胸の辺りまで落ちてくる。
雑賀は両腕を胸の前で交差するように振る。
そして、手のひらを向けて両手を上げる。
ナイフはなかった。

「あなたのサブクラスはトレーナーでしょうか?」

「電子の海にモンスターを探す、一流トレーナー」

223 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/30(土) 01:40:48
>>222

「ゲームは大好きだよ……
 嫌いならこんな事言わないぜ……えひ。」

視線に違和感を多少感じた――
が、それを形には出来なかった。

恋姫はナイフを見る。
見ていると、消えた。

「おぉ〜〜……」

   パチ  パチ…

やや湿った、うるさくない拍手。

「えひ、吟遊詩人か…… 
 確かに詩的な言い方する……」

芸は人生を支える。
何となく、恋姫はそれを実感できている。

「僕は……メインクラスがゲーマーかな……?」

       「別にトレーナーだけじゃないし。
         サブクラスは……隠し職業。えひ。」

別にどうしても隠す物、でもないけれど、自分から言うほどでもない。
恋姫は暗く、悪戯っぽい表情を見せて。

「…………詳しいのか? ゲームとか。」

今の物言いに、若干の『理解』を感じた気がするから、だ。

224 雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』 :2016/07/30(土) 23:37:16
>>223

「なるほど。いかにも現代人的……いえ、そうでもないですかね」

腕を組み、うんうんとうなずく。

「隠し職業? それはそれは、少し気になりますね」

「かなり気になります」

小首をかしげる。
それから腕を下す。
だらりとカーディガンの袖が手のほとんどを隠す。

「ゲームです? いえいえ、詳しいというほどでは」

「人並み、でしょうか。なにをもって人並みとするかは不明ですが」

「しかし、ゲームの知識はあります」

ポケットからスマホを取り出し、指し示す。
カバーのつけられていない白いスマホだ。

「先ほどやられていたものがどういう類のものかは分かりますよ」

225 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/30(土) 23:59:01
>>224

「……お前だって現代っ子だろ。
 常識的に考えて……違うのかよ。」

      エヒ

「なんか違うなら面白いけど……
 それこそ、ゲームみたいに……
 いや……どっちかと言うと、ラノベ感か。」

などと、1人で何か納得したように言う恋姫。
その表情は笑みだが、暗い。

「隠しは隠し……えひ。
 フラグが立ってないから、教えない……」

そして、一応のヒミツってものも、暗く隠す。
それはたぶんきっと、単なる雑談の延長のようなものだった。

「……分かるのか。
 えひ、まあ……あれは、な。
 リア充でもわかるくらい、人気だし……」

           チラ

下げていた画面を、上げた。
伏せがちだった目が、少し大きく広がる。

        「……レアなのキタコレ。」

   ソワ

何か、良い物があった――というのは、いらない説明かもしれない。

226 雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』 :2016/07/31(日) 00:22:49
>>225

「確かに、私もそうでした」

はっとしてみせる。
しかし、どこか嘘っぽい顔だ。

「しかし私がもしもなにか特殊な事情を持っているなら、現代人ではないでしょうね」

「自分のことを理解できていないので可能性はあります」

今度は真面目に頷いて見せる。
ころころと表情の変わる奴だった。

「おっとそれは残念、でもないですかね」

「隠し事を暴かれるのは手品の天敵」

「私が暴く側に回るのはまずいでしょう」

手品師を気取る雑賀。
しかし、たしかに手品をしている側からすれば死活問題。
その恐怖を雑賀は知っている。

「おぉ、レア。それは素晴らしい。じつにじつに」

「私の手品でも、電子データは取り出せませんから。えぇえぇ」

「おめでとうございます」

227 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/07/31(日) 00:37:41
>>226

「……えひ、なんだそりゃ。
 自分探しRPG、レベル1って感じ……」

      エヒ

くすくすと笑う。
真面目な顔、ウソっぽい顔。

悪意のある嘘は大嫌いだが、それは感じなかった。
あるいは巧妙に隠されていたのかもしれないけれど。

「僕のは手品じゃないけど……
 まあいいや、詮索されるのもだし……」

         「それに……」

   ソワ

      ソワ

画面に視線を向ける恋姫。
このゲームでは……レアは出て終わりじゃない。

『捕まえなくては』――!

「えひ、タネ明かしする時間もないし……
 ありがとな……んじゃ、早速捕まえに行くから……
 こればっかりは……消えたら、ポケットから出たりしないし。」

       「……あ、僕……『稗田』。
        えひ、苗字くらい教えてやんよ。んじゃ、おつ〜」

   トコ

        トコ

そうして、恋姫は雑賀の前から歩き去った。
電子の世界を追い求めたから、だが――現実の繋がりも、出来たかもしれない。

228 雑賀 華『イッツ・ショウ・タイム』 :2016/07/31(日) 00:45:37
>>227

「さようなら、稗田さん」

ぺこりと頭を下げた。
そして、ぱっと袖からナイフが飛び出る。
しっかりとそれを手で握った雑賀。
ナイフをまたズボンの裾の方へと戻す。

「綺麗な方でした……そしてとても不思議な……」

「おっと、悪い癖」

「……少々、どうしたものでしょうか……はぁ……」

コインを取り出し、コイントス。

「どちらでも。たまにはおしとやかでありたいものですが……」

雑賀はコインを掴んだ。
その結果と、それからどうなったのかは雑賀だけがしっている。

229 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/09/15(木) 23:08:56

ある晴れた日の昼下がり、湖の手前にある木陰に、一つの人影が腰を下ろした。
洋装の喪服姿と、それに合わせたような黒のキャペリンハットを身に着けた、黒衣の女だ。
涼しい風が吹いているせいか、まだ残暑が残るこの時期にしては、今日は比較的過ごしやすい一日と言える。

     パカッ

おもむろに、ハンドバックの中から小振りのランチボックスを取り出し、その蓋を開ける。
中に詰められているのは、手作りのサンドイッチだった。
表面を軽くトーストしたパンにマーマレードを塗り、たっぷりのパセリと、薄く切ったハムを挟んである。
やや奇妙な取り合わせだが、これが好物なのだ。
一口齧ると、ハムの塩気とマーマレードの甘みとパセリのほろ苦さが一つとなり、口の中に広がった。
目を閉じて、それを静かに味わう。

――そう……。彼も、この味が好きだった……。

ふと、そんな思いが胸の奥を掠め、誰ともなしに薄っすらと微笑んだ。

230 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/09/18(日) 00:16:16
>>229

「…………あ」

       ザ

やや俯きがちに歩いていた。
やや遠くから、その女性を見た。

その黒い装いには、見覚えがあったからだ――場所含め。

「……」

(何笑ってんだ……?
 思い出し笑いかな……)

     (女子力高そうな物持ってんな)

ランチボックスと、手に持ったサンドイッチが目に入る。
女子力に、基準値の低い目を細めつつ。

(まあ……別に、邪魔するわけじゃ、ないし……)

        (背景の村人Aみたく……
         通り過ぎさせてもらおうかな……)

木陰の前を、通り過ぎる。
別に、気づかれなくても、良いし。

気づかれたとしても、それはそれで、別に良いから。

231 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/09/18(日) 00:48:31
>>230

目の前を通り過ぎていく見覚えのある少女。
それに気付いていないのか、やや俯いた状態で、沈黙を守っている。

       スッ

やがて、おもむろに顔を上げる。
そして、立ち去りかけている少女の背中に声をかけた。

   「――こんにちは」

少女に呼びかける声は柔らかい響きを持っていた。
その口元には、穏やかな微笑をたたえている。

   「お久しぶりね。稗田さん」


少女の特徴のある桜色の瞳は、強く印象に残っていた。
そういえば、以前に彼女と出会った場所も、ここだった。
思いがけず、また会えたことは、嬉しいことだった。

232 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/09/18(日) 01:02:52
>>231

「ん…………」

    ピタ

  クル

        「……よう」
  
恋姫は、掛けられた声に、振り向いた。
同じような――しかしもっと陰気な微笑を浮かべて。

「えひ、久しぶり……
 ここでよくエンカするな……」

        ニタ

「あー、小石川……さん。」

あまり、人に敬称はつけないのだが、
何となく釣られて――さん、と付け足した。

       ヒョイ

やや離れた位置の、木陰に腰掛ける。

「何してんの……
 女子力のトレーニング……?」

「えひ、飲み物がココナツウォーターとかなら完璧だぜ」

女子力という言葉は何となく湧いただけだが、言ってみた。

233 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/09/18(日) 01:34:44
>>232

   「覚えていてくれてありがとう……」

傍らに腰を下ろした少女に、まず感謝の言葉を述べる。

   「――そうかも、しれないわね」

そう言って、くすりと笑う。
やや悪戯っぽさを感じさせる、ほんの少し明るい笑い。
真夏の太陽とまではいかなくても、雪が降り止んだ晴れた冬の日のような笑いだった。

   「もし良かったら、食べてみてもらえないかしら。
    味を見て欲しいの。口に合えばいいんだけど……」

おもむろに、手の中にあるランチボックスを差し出した。
そこには手頃なサイズに切られたサンドイッチが幾つか入っている。
少なくとも、見た目は綺麗に整っているようだ。

   「――ラベンダーティーならあるわ。
    これを飲むと、気持ちが落ち着くから……」

バッグの中から小型の水筒を取り出して、そう付け加えた。

234 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/09/18(日) 01:45:58
>>233

「えひ。昔のゲームじゃないし……
 セーブデータは簡単には消えない……」

           「……」

    ス

座る位置を少しずらした。
小石川のランチボックスに、手が届く、ように。

「味見ぃ……?」

    ニタ

提案に少し笑みを深めて。

「まあ……んじゃ、貰おうかな。
 砂糖と塩、間違えるようには見えないし」

(今日はオフだし……貢物、とかじゃないしな……)

多分、おいしいだろう。
見た目もそんな感じがする――ひと切れ、取った。

「ラベンダーティー……
 えひ、なんか……しゃれおつぅ」 

           「……いただきます」

     モッ

小さな口を開いて、静かに、手のひと切れにかじりついた。

235 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/09/18(日) 02:08:27
>>234

   「――どうかしら……?」

恋姫がサンドイッチを口にしたのを確認して、静かに尋ねる。
どちらかというと、あまり一般的ではない取り合わせなだけに、口に合うか少々不安もあった。
ハムとパセリとマーマレードのサンドイッチ――少し変わった味がするかもしれない。
一口食べれば、塩気と甘みとほろ苦さが一つになり、口の中に広がるだろう。

   「私は、この味が好きなの……。
   色んな味が一度に感じられるから。それに――」

一度言葉を切り、そして再び口を開く。

   「私が愛していた人も、この味が好きだったから……」

それは、まるで遠い過去を振り返るような口調だった。
しかし、実際には、それほど昔のことでもないのだ。
未だ心の中に強く残る傷が、そのことを裏付けている。

   「――お茶をどうぞ」

恋姫が食べ終わるのを見届けてから、水筒のカップにラベンダーティーを注いで差し出す。
季節に合わせているらしく、よく冷えているようだ。

236 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/09/18(日) 02:19:03
>>235

          モッ

    モッ…


        ゴクン

「……食べた事無い味だぜ」

飲み込んでから、恋姫は短く、そういった。

(ハム……と、マーマレードと。
 この苦いのなんだ……パセリか?)

口の中に残る味。
不思議な――重なり合う味だ。

「けっこう美味しい……かな」

          ・・・悪くはない。

「……」

「…………ん、ありがと」

重なるのは味だけでなく、思い出も――なのかもしれない。
恋姫はやや重い物を感じつつ、カップを受け取り、口をつけた。

            クィ

                「えひ、つめた……」

237 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/09/18(日) 02:47:29
>>236

   「――そう……。良かった」

胸をなで下ろし、微笑みを浮かべる。

   「少し冷やしすぎたかしら。ごめんなさいね」

そう言って、軽く頭を下げる。
やがて、緩やかな風が、二人の間を通り過ぎていく。
少しの沈黙が流れ、ややあって、静かに声をかける。

   「――今、私はこの町で叶えたいと思っている目標があるの……。
   稗田さんにも、あるのかしら?」

何か含みのある口調だ。
もしかすると、『Veraison』のことを言っているのかもしれない。
この町に住んでいる住人なら、その存在を聞くこともあるだろう。
実際、その通りなのだ。
つい最近、星見街道を歩いている最中に、ふと小耳に挟んでいた。

   「お互いに、叶えられるといいわね……」

そう言って、恋姫の方に向き直り、ふわりと笑った。

238 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/09/18(日) 03:03:23
>>237

「今日は……まだ、暑いし……」

          「美味しいよ」
 
   ク

喉を小さく鳴らして、カップ一杯飲み干した。
緩やかな風も、快さを後押しする。

「目標か……
 ……えひ。唐突だな」

      「…………あるよ」

知られていても。
・・・いなくても、同じこと。

「叶っても、エンディングじゃないから……」

         「早く、叶えたいな……えひ」

陰気に笑った。

それ以上何かをつけたすことはない。
穏やかな沈黙か――あるいは、小石川が何かを返すか。

少し、この、快い時間に……身を任せてみたいのかもしれない。

239 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/09/18(日) 03:25:16
>>238

   「挫けそうになった時、稗田さんのことを思い出したかったから、かしら」

自分の心に問いかけるように胸に手を当て、ぽつりぽつりと話し出す。

   「もし――私が挫けそうになった時に、
   自分と同じように頑張っている人がいることを思い出せたら、
   それが支えになってくれると思えたから……」

自分にとっては、それが文字通りの意味で命綱となってくれるかもしれない。

   「だから、稗田さんには、これからも進んでいって欲しいと思うわ。
    勝手な考えかもしれないけど……」

   「私も、頑張るわ……。
    自分にできる限り……。精一杯……」

   「だから稗田さんも、何かあったら、
   私のことを思い出して少しでも励みにしてもらえれば嬉しいわ……」

その後は、何も言わなかった。
後に残るのは、似て非なる二人の人間と、静かに流れ行く時間だけだ――。

240 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2016/09/18(日) 04:52:03
>>239


「…………ん」

         コク

恋姫は――小さく頷いた。

思い出したい――という言葉に?
励みにして欲しい――という言葉に?

あるいは両方かもしれない。
恋姫は、人に希望を与える存在――アイドルだから。
支えとなる人の存在というのは、誰にとっても嬉しいから。

「………………」

            「えひ」


それから、最後に、こらえきれないように少し笑って。

                ・・・時間は、静かに流れていく。

241 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/10/15(土) 22:47:42
――AM9:00――

いつ来ても、この場所は居心地が良い。
湖の周りを散策しながら、改めてそう思う。

この町で暮らし始めてから、できる限り多くの場所に足を運ぶようにしているが、
ここには特に惹かれるものを感じていた。
樹木の香りや枝葉の揺れる音に囲まれていると、
自然と心が落ち着き、穏やかな気分になれるからだ。
ここにいれば、胸の奥にあり、時折表に出てきては心を悩ます『誘惑の囁き』を、
一時だけ忘れることができる。

この自然公園は、いわば心の安息所のような場所だった。
しかし、この町のいい所は、ここだけではない。
今日は、一日かけて、町を回ってみるつもりなのだ。
深呼吸して森の空気を味わい、しばしの森林浴を楽しんだ後で、次の場所へ向かって歩き出した。

242 神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』 :2016/12/18(日) 00:40:43
ある日の夕暮れ。
人もほとんどいないような時間。
シーズンならバーベキューを楽しむ人たちでいっぱいになっているはずの場所にそいつはいた。

『よき体を作るものは』

「いいトレーニング」

『そして?』

「食事」

燃える火。
そしてその火に焼かれる多くの肉。
たった一人でバーベキュー、ではない。
その傍らには赤褐色の人型ヴィジョン。スタンドが一体。

しかしこの二人、肉の焼き加減を見守っているわけではない。

『そこ、またズレたぞ!』

「……」

ダンスを踊っていた。

243 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/12/20(火) 00:09:34
>>242

人気もほとんどなくなり、穏やかな時間が流れているその場所に、もう一つの人影があった。
洋装の喪服を身に纏い、その上からやや色味の違う黒いコートを羽織り、黒い帽子を被っている。
ふと、夕方の自然公園を少し歩いてみたくなり、散歩に出てきた途中なのだ。
不意に、その足が止まり、ある一点に視線が集中した。

  ――……?

男性の傍らに、見慣れない『誰か』がいる。
その姿に興味をそそられ、そこに立ち尽くしたまま、目の前の光景を見つめる。
無意識の内に、静かに見守るような形になっていた。

244 神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』 :2016/12/20(火) 00:24:27
>>243

『ここの振り付けは、こうだ! こう!』

「大将?」

『どうした?』

「確かに、僕普段使わない動きをトレーニングに入れたいなーって言ったよ?」

『あぁ』

「でも恋ダンスは違うくない?」

切れのいい動きで踊る人型。
本体らしい男は困った様子で頭を掻いている。

「肉焦げちゃうよ」

『よし、いったん休憩だな』

焼けた肉を紙皿の上に乗せる男。
そこで、あなたと目が合った。

「わ、人がいる」

245 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/12/20(火) 00:46:36
>>244

  「こんにちは」

挨拶と共に深く頭を下げた。
肌の色は新雪のように白い。
身に着けている衣服の色のせいで、それが余計に際立っている。

  「ごめんなさい。失礼とは思ったのですけど――」

  「その――少し気になってしまったものですから……」

そう言って、申し訳なさそうに顔を伏せる。
見つめていたことに気付かれたという気恥ずかしさのせいか、頬には若干の赤みが差していた。
まもなく気を取り直して、再び顔を上げた時には、頬の色は元に戻っていた。

  「何かスポーツをなさってるんですか?」

穏やかな、しかしどこか陰のある微笑みを浮かべて、そう尋ねた。

246 神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』 :2016/12/20(火) 00:55:38
>>245

「あぁ、どうも。こんにちは」

頭を下げる男。
黒と金がまじりあった長髪を一つ結びにしている。
服もまた黒と金がまじりあうジャージだ。
その上にジャンバーを羽織っていた。

「気にすることじゃないよ」

『うむ。その通りだ』

にこりと笑って言う言葉を隣の人型が後押しする。

「スポーツっていうか、ダンス?」

『いや、これもプロレスだ。プロレスである。プロレスだろう』

「うん。ちょっと黙ってくれないかなぁ」

『なっ……』

247 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/12/20(火) 01:21:40
>>246

  「お気遣いありがとうございます」

まず男性を見て、それから人型の方へ視線を移す。
線の細い自分とは対称的に、筋骨隆々とした姿からは、生命力に溢れている印象を受ける。
おそらくは本体であろう男性を反映しているのだろうと思えた。
『彼』が何者なのかは、最初に見た時から。おおよそ理解はしていた。
それでも、珍しいことには変わりがない。
今までに、自分のもの以外のスタンドを見たことは少なかった。

  「プロレス……ですか?そう――プロレスをされてるんですね……」

人型の言葉を受けて、小さく頷き、何気なく呟いた。
スタンドはスタンドを使う者にしか感じ取れない。
目の前にいる男性――神原が、そのことを知っていたとしたら、
この喪服の女もスタンド使いだということが分かるだろう。

248 神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』 :2016/12/20(火) 01:28:27
>>247

「そう。僕はレスラーなんだ」

『そして俺がトレーナーだ』

「ん?」

肉を噛みしめながら小首をかしげる。
しばしの思案。

「大将が見えるの?」

『師匠と呼べ』

「師匠、ああもういいや。君もそういう人?」

そういう人。
つまりはスタンド使いであるのだろうか。
男は念のために確認した。

249 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/12/20(火) 01:50:59
>>248

  「はい」

投げかけられた質問に対し、特に隠すこともなく、呆気ない程に素直に肯定した。
敵対的なスタンド使いに出会ったことがないため、警戒心が薄いというのもある。
元々の性格として、嘘をつくことを好まないからというのも理由の一つだ。
何よりも、この男性が悪い人には見えなかったからというのが、一番の理由だった。

  「私も同じものを持っています」
  
  「そちらのトレーナーさんのようにお話はできませんが……」

  「見せていただいたお返しに――私も少しお見せします」

利き手である左手を持ち上げ、軽く握る。
すると、その手の中に一振りの『ナイフ』が出現した。
その後ゆっくりと手を開くと、『ナイフ』の像は徐々に薄れ、最後には霧のように掻き消えた。

250 神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』 :2016/12/20(火) 02:00:17
>>249

「わぁ、ナイフか」

『俺とは違うタイプのスタンド』

男自身もあまり自分のもの以外を見たことがないのだろう。
素直に驚いた声をだす。

「ナイフかぁ。使いどころありそうだなぁ」

「料理するときとか……あ」

「食べる?」

バーベキューの網を指さし問うた。

251 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/12/20(火) 23:09:20
>>250

  「誘って下さってありがとうございます――」

  「では……お言葉に甘えて、少しだけお邪魔させていただきます」

少し考えてから、そう答えた。
見知らぬ男性とバーベキューをするというのは、傍から見ると奇妙な光景だろう。
しかし、自分と同じような人間と出会えたことは嬉しいことであり、もう少し話をしてみたかった。
こうして町の中でスタンド使いに出会うことはあまりない。

もしかすると、自分でも気付かない間に出会っているのかもしれないが……。

  「こちらには、よく来られるんですか?」

252 神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』 :2016/12/20(火) 23:39:25
>>251

「好きなだけ食べてね。お酒が好きならそれもあるよ」

こんと足で蹴った先には箱型のカバン。
その中に酒もあるのだろう。

「はい。紙皿と割りばし」

『しっかり食ってトレーニングッ。それすなわち肉体増強の道なり』

肉を焼き、野菜も焼く。
次々と肉をひっくり返し、紙皿の上にのせていく。

「こっち、か。トレーニングできるならどこにでも。面白いもの、刺激のあるものがあるならどこにでもいる」

「巡業中はいろんなところ行くけど、コッチでの試合も結構あるから」

253 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/12/21(水) 00:03:39
>>252

  「どうもありがとうございます」

左手で割り箸を、右手で紙皿を受け取る。
両方の薬指にある結婚指輪が、夕日を受けて小さく光っていた。

  「お酒は嫌いではありません」

  「ですけど――今日の所は、お気持ちだけいただいておきます」

そう言いながら、先程からの陰を帯びた表情で、穏やかに口元を綻ばせた。
アルコールは必要な時だけ摂ることにしている。
幸いなことに、今はその時ではなかった。

  「色々な場所へ行かれてるんですね」

  「私は存じ上げない世界ですけど……」

  「もし、この町で試合をされるのなら、私も一度拝見させていただきたいです」

254 神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』 :2016/12/21(水) 00:41:54
>>253

「そう。残念だなぁおいしいのに」

おかまいなしに男はカバンから酒瓶を取り出す。
ブランデーであった。コップに注ぐとそれを一気にあおる。

「うん。ぜひ来てね」

「マスメディアが盛り上げてくれる分僕らも頑張るからね」

「今は休みの期間だからチケット持ってないけど」

「あ、神原幸輔(かんばる こうすけ)の名前があるポスターがあったらその団体のチケットを買うといい」

「僕が出てるからね」

255 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/12/21(水) 01:13:13
>>254

  「神原さん――ですね。分かりました。その際は是非……」

ちょうどいい焼き具合になった肉と野菜を網から拾い上げ、口の中に入れる。

  「おいしいです」

素直に感じたままを口にし、柔らかい笑みを浮かべた
野外でバーベキューというのはあまり馴染みがないため、自分にとっては新鮮な経験だった。
なによりも、自分と同じような人間――スタンド使いと会話していることで、
心の触れ合いを感じていることが大きいのかもしれない。

  「私は何も差し上げるものがないのですけど……」

  「今日ここで出会った記念に、せめて名前をお教えしておきます」

  「私は小石川――小石川文子といいます」

そう言って、再び微笑んでみせた。

256 神原 幸輔『ストロンガー・ザン・アイアム』 :2016/12/21(水) 22:17:48
>>255

「それはよかったよ。いいお肉かったからね」

「おかげで素寒貧だけど」

『レスラーは男を売るのだ。即ち見栄の商売なりッ!』

「うん。師匠はお金払わないもんねぇ」

また酒をのむ。
今度は瓶から直接ラッパ飲みだ。

「小石川さんかぁ。よろしくね」

『さぁ、幸輔踊るぞッ』

「え? ほんと?」

二人はまた踊り始める。
それは先ほどよりちょっぴりうまい踊りだった。

257 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2016/12/21(水) 23:42:05
>>256

息の合った二人のやりとりを見て、自然と口元が緩む。
同時に、ほんの少しの寂しさが胸の内をよぎった。
いつでも誰かが傍らにいてくれる。
かつては自分のそばにも、そんな人がいた。
幸せだった時のことを思い出して、その顔に浮かんだ陰の濃さが、不意に増す。

  「――ふふッ」

しかし、再び目の前で踊り始めた二人の姿で、その暗さも打ち消されてしまった。
つられたように、自身も小さく笑う。
先程よりも、少し明るい微笑み。
それが彼らによってもたらされたものであることは言うまでもない。
しばらくの間、自分に明るさをくれた二人を、優しい視線で見守り続けていた。

258 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/02(木) 01:22:45
相変わらず主人は見つからず。
近辺にいるとされる『大柄で声の大きい変態女装不審者』の足取りも掴めず。
仕方がないので社会奉仕をするのだ。

  カラン  ガサガサ

「ポイ捨て厳禁の看板のそばなのに汚すぎます!!!!!!!」

     バサリ 

「うわあああああああエロ本ですよ!!!!!破廉恥!!!!」

259 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/03(金) 22:27:22
>>258
(……)
そんな時、たまたま通りかかった一人の少女

(な、なんか変なの見つけちゃったぁあああ!?)
思わず声が出そうになるくらい異様な出で立ちの…?
とにかくよくわからないがうるさい人の姿を見かけた

(まさかアレが、いま噂の…『大柄で声の大きい変態女装不審者』!?)
もし違ったら失礼だなーと思いつつも
改めてその姿をじっくり見てみるのであった

260 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/03(金) 23:00:04
>>259
君が公園で偶然発見してしまったその不審者疑惑の珍獣は、
『メイド服』を着用している20代くらいの体格のいい男であった。

『執事服』ではないのだ。『メイド服』だ。
男が膝ほどの丈のワンピースとフリルの装飾のエプロンを着ている。
なるほど異様な出で立ちである。

  「しかも!!!!5冊も!!!!」
   「虫が!!!!!!湧いてます!!!!!きったないですよ!!!!!!」

トングと町指定のゴミ袋を手に、どうやら『ゴミ』拾いなんかをしている様子だ。

    ギ ョロ

   顔を向けてきた。左目に眼帯をしている。かなり不機嫌そうな表情。
   …という訳で、君と男の視線が合ったぞ。

261 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/03(金) 23:12:21
>>260
(うわー、でっかい声でゴミ拾いしてるよー…
 一見すれば……ボランティア活動だけど)
そして、その体格のいい男の格好を見れば
まさにメイド服である

(…なんだか、噂のそれとかなり合致するんだけど…)
どうしようかどうしようかと思っていると

「むぅっ!?」
顔をこっちに向けてきて、ゾワッとした表情になる

「あ、えーっと…
 何をして…らっしゃるのでしょう…?」
思わず敬語で震えた声で話しかける

(だだだ、大丈夫…
 いざという時にはスタンドを使えばなんとかなる…
 変質者とかそういうのなんて怖くない…!多分……)

262 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/03(金) 23:21:49
>>261
「『奉仕活動』です」
即答された。

 バサバサ
    ガサガサ

男は小汚い18禁雑誌をゴミ袋に放り込むと…

 「……」
 「………何か捨てるなら…」

ゴミ袋を前に突き付けながら烏丸にノシノシと接近!

263 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/03(金) 23:25:43
>>262
「えーっと…つまりボランティア?」
と、彼の様子を見ながら答える。

(別に悪いことはしてなさそうだけど…)
若干警戒心を薄めようとしたが、そんな時、

「え、え!?」
のっしのっしと接近してくるメイド服の男!
ゴミ袋を持ってくるが

「い、いえまだ何も捨ててはいませんが!」
と、ふと思い出した

「あ、そう言えば…
 ゴミは持ってましたが…」
コンポタの空き缶を持っていたことを思い出し、
軽くその手を上げた

「えっと、もちろん…
 ゴミ箱に捨てますとも……」

264 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/03(金) 23:39:26
>>263
「でしたらこの袋にどうぞ」
「この辺りはゴミ箱が少ないので、探すのも一苦労ですから」

「…どうぞ!」

 男は表情を緩めると、ゴミ袋の口を開けて見せた。


「……そいうえば、俺の顔に『何か』ついてますか?」
「…身だしなみが崩れていましたか?」

君の不審げな態度に不思議そうにしている。

265 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/03(金) 23:45:37
>>264
「えーっと、はいどうも…」
割りと普通そうな人だなーとか思いながら
ゴミ袋の中にコンポタの空き缶を

(…投げ込んだら怒りそうかも…)
と考えて投げずに
そーっと入れた。表情はまだ固い

相変わらず不審者かもみたいな目線は消えないでいるが…
「え、えーっと…?なにか…ですか?」
と言われて少し悩む

「うーん…いや、身だしなみは崩れていないというか…
 その…その格好はなんでしてるんです?」
思い切って、そのメイド服に目線を向けた。
気になってしょうがなくなってきたのである。

266 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/03(金) 23:57:34
>>265
「はいはい、ありがとうございます」
「清掃のご協力に感謝します!」

そ〜〜〜っと投げ入れられた空き缶は何事もなくゴミ袋に落ちた。



「えッ『なんで』って」
「それは俺が…」

「………『メイド』だからです!!!!!」

満面の笑み。
これに納得するか答えになっていないと感じるかは君次第。

267 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/04(土) 00:03:58
>>266
「あー、そのどうもです…
 私もゴミまみれなのはやっぱり苦手ですから…」
と言って頭を下げる、
さて、どうしてメイドを着ているのか、と聞いてみれば…


「は、はぁ…メイドだからですか…
 しかし…」
ちょっと冷や汗を垂らしながら聞いてみる

「男性で奉仕活動と言えば…
 なんだか執事っぽい服を連想するんですが…
 メイド服…なんですか?」
なおも疑問は続く
果たしてどんな返答が来るのだろうか

268 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/04(土) 00:26:18
>>267
「ですね!!!!汚いより綺麗な方が良いです!!!」


君が追って質問をすると
「うえ〜〜〜っ 初対面の人に言うのは恥ずかしいですよォ」

    モジ 
        モジ

「エエト……恩人というか、『憧れたひと』が、その…『メイド』だったんです」
「だから、俺も…その、メイドに……」

  「うははははははッ やだあ やっぱり恥ずかしいですよォ〜〜〜!!!!!」

はにかみながらそう答えた。
なんだかんだ羞恥という感情は持ち合わせている事が判明した。

269 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/04(土) 00:32:03
>>268
「ええそれはもう!
 いろんなことは綺麗が一番です」
なんとなく意気投合したような気がした

「ん、ふんふん……


 まぁ…恥ずかしかったんで…


 あ、いやその……」
一瞬すごく意外そうに
失礼なセリフを言ってしまいそうになった

「あこがれの人…ですかー。
 ということはあなたにとってのヒーローみたいな人ってことですねー…
 ん、どんな人なんです?
 その……色々と教えてもらったとか?」
またメイド服を見る。
コレもそうなんだろうかとか思ってたり

270 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/04(土) 01:13:16
>>269
「色々とスゴイ方でしたが…
 …そうですね、『愛』をもって仕事の出来る方でした。」

「おれはその『愛』に救われて」
「あのひとを『師匠』として多くを学ばせて頂きました。
 ……師匠の元で学んだおかげで、今の俺があります!!!!」


だそうだ。
学ばない方が良かったんじゃないか、とは言わないでくれ(懇願)。

 「服ですか?」
 「合うサイズがなかったので、自分で型をとって縫製したんですよ!!」
 「優れた弟子ではありませんでしたが、『裁縫』については師匠もよく誉めておられました!」
 「イイ感じでしょう!」


フリルふりふり、リボンがピラピラしたそのファンシーなメイド服は男の手によるものらしい。
師匠の話と裁縫の話、どちらも男は誇らしげに話した。

271 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/04(土) 01:24:19
>>270
「むー……いろんなことを学んだんですねー…
 …良いことを色々と…」
どんなことを学んだんだろうか…
と思いつつ改めて衣装を見る

「はぁー、それは自作なんですかー。
 すごくいい出来じゃないですか…
 うむむ……ここまで上手くは出来ない…」
改めて見てみてば
まるで店売りのようなとても良い出来の一品だ。

「…確かに、そういう系のスキルはかなり高いみたいですねー。
 その師匠って人は今どこにいるんでしょうねー?」
ちょっと気になって聞いてみることにした。

272 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/04(土) 01:41:31
確かにメイド服としては出来も良くカワイイ。
ただどんなに贔屓目に見てもサイズと着用者は『異常』であるのが玉に瑕か。


「所在、ですか……」
「師匠は『流浪のメイド』で…あっ俺もなんですけどね」

 「ひとりの主人を持たず、いろんな場所を転々としながら、
  いろんな場所でメイドのスキルを活かして働くんです」
 「なおかつ師匠は『極秘任務』とかにも携わっていると聞くので……場所は、ちょっと」


 「でも俺の連絡先なら明かせますよ!!!!」

 ┌――――――――――――――――┐
  ☆・゚:*:゚ヽ                *:・'゚☆  
          常原 ヤマト 

        家政婦やります
 
    電話番号 XXX-XXXX-XXXX
   E-mail *******************.com
 
 └――――――――――――――――┘

名刺を渡してきた。どうやら『常原』というらしい。

273 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/04(土) 12:41:05
>>272
「流浪のメイド……?
 それってアルバイト…
 とかじゃなくて……?」
流れ者と聞くとなんだかかっこいい響きを感じるが、
レイはまさか現実に居るとは…と考える。
表情もキョトン顔である。

「極秘任務…
 もしかして裏で変身ヒーローだとか…?
 なーんてコトは流石にないかな…」
と軽く笑ってから、その名刺を見る

「あ、これはどうも…
 常原ヤマト…さんですね。
 わざわざすいません…」
名刺をじっと見つめてみる。

「そういう仕事なんですか…
 ん、あー、名刺もらったので私も…」
名刺は持たないが、ひとまず挨拶しようと考えた

「えー、私は烏丸レイです。
 まぁ、単なる学生をやってますー。」
と言って頭を下げた

274 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/04(土) 23:02:28
>>273
「アルバイト…とも言えなくもないです
 俺はいま勤め先がないので『無職』ですから」
「溢れ出る『奉仕』の気持ちを抑えきれずに、社会奉仕をしているワケです」

「変身ヒロインとかは俺も嫌いじゃないですよ!妹がよく見ていました!」

頭を搔きながら答える。なんだか後ろめたそうである。


「学生さんでしたか!!この辺なら…『清月学園』の生徒さんですかね。
 面倒でも勉強は頑張ってくださいね!」


君が自己紹介をすれば、笑いながら素直に励ましてくれた。

275 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/05(日) 00:14:24
>>274
「ふむー…
 やっぱり自分を売り込んだりするんでしょうかねー、奉仕活動をするときは…」
と、不思議そうな顔をする

「へー!私も変身ヒロイン大好きです!
 ○リキュアとかそういうのですよねー!
 私、特撮とはまた違うかっこよさがあると思うんですよねーあれ!」
彼女は特撮関連であれば色々大好きである
そういうこともあってか、変身ヒロインものの作品は同じく大好きなのだった

そんなわけで随分と興奮して答えている。
「…と、どうしたんですか?」
ふと、落ち着いて彼の後ろめたそうな顔を見た

「あ、はい。
 勉強はまぁ、人並みにはできるように頑張ってます。
 安定が重要ですからねー」

276 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/05(日) 19:18:42
>>275
「口ぶりからするにヒーローものがお好きなのですね」
「弟が、変身グッズとか、そういうので遊んでいました気がします」


「ああいえ、俺自身が不甲斐なくて」
「メイドのくせして特定の誰かにご奉仕できず…
 地域の安全のため不審者を探せど、尻尾も掴めず…」

 「いえ、掃除とて大事な仕事なんですけどね」

彼自身、ロックなナリに反して、悩みなども抱えているようだ。
見た目ではわからない、心情は普通な所もあるのである。


   「…いけない、仕事を放棄して歓談にふけってしまいました」
   「そろそろ職務に戻らせていただきます」

277 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/05(日) 20:08:04
>>276
「ん、あーそれはもちろん!
 私も変身グッズ的なものはよく買ってもらったりしてましたねー」
そう言って嬉しそうに何度も頭を縦に振る。
心底楽しそうな感じがする。

「…そんなことはないと思いますけどねー。
 見ている限り、結構真剣に
 作業をしていたようですし…」
と、励ますように答えるが
(…不審者って言うと…
 やっぱり…)
改めて彼の姿を軽く見回した。

「あ、忙しかったですか…
 私も結構話続けちゃいましたねー……」
と、頭を軽く下げた

278 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/05(日) 22:38:06
>>277
「こちらこそ、引き留めてしまって」
「俺、気が休まりました。こういう何気ない会話って、いいですね!!」


「では俺はこれで!!」
「掃除洗濯料理にお困りの時、また『不審者』を見かけたときは、先ほどの連絡先にどうぞ!!!」
「……いえ、不審者を見つけたらまずは警察に通報、ですからね!!!」

たぶん君の『不審者』に関する予想は正しいだろう……通報する?

279 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/05(日) 23:09:57
>>278
「ああ、そうですねー…
 なんだかこっちも…話してるだけで楽しいですよ」
と言って頷く


「あー、その…検討しておきますね…あーその…
 不審者って言うと…」
そう言って彼の姿をじっと見る

「…もうちょっと声が小さいほうが
 不審者が現れにくくなる…かもしれないです。
 何故かそう思います」
と、彼の姿を見て答える。

(むむう…結構いい人そうだから
 なんだか言い出しづらい…すごく……)

280 常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』 :2017/02/05(日) 23:35:46
>>279
「?」
「えっと、そうですか………!声を…小さく……!!ですね……!」

声量が落ちた。『!』の数もなんだか減る。
君が話して分かった通り常原は、内面は比較的善良な男。
この人の良さゆえに、未だポリ公のお世話になっていないのかもしれない。

「…では…行きますね……!
 公園が…汚いと…!!困る方も……いますから!!!」

ゴミ袋を揺らしながら、常原は公園の奥へと歩き出した。


  「ではまた!!烏丸様!!!!!」

けっきょく大きな声で別れの挨拶をしている。

281 烏丸 レイ『グレゴール・ザムザ』 :2017/02/06(月) 01:05:24
>>280
「んー、そのくらいがいいですね。はい」
そう言ってうなずき

「あ、でっかい声……
 っと、またどこかであいましょうねー!」
若干大きな声にビビりつつも
彼を見送っていった

「変質者かー…
 悪いことはしてないんだけど…
 なんと言えばいいのかなー…」
ヤマトの様子をちょっと困ったように見送ってから
彼女も公園をあとにした

282 ジェイク『一般人』 :2017/02/22(水) 23:39:50
夜の湖畔。
その傍で座っているものがいる。
赤い長髪、赤く長いヒゲ。
まだ少し肌寒い夜にも関わらず半袖のシャツ。
オレンジの光が輝くランタンが足元に置かれ、ずた袋も傍に置いてある。
目深に被った帽子がランタンの上に落ちた。

「……」

男は、下を向いたままランタンを取らなかった。
目を閉じている。

283 小林『リヴィング・イン・モーメント』 :2017/02/25(土) 23:57:40
>>282

 ザッ……

 シャリ シャリカリカリ クリ シャッ カリカリシャリ シャリカリカリ クリ シャッ カリカリカリカリガリ…………

「月光は何も語らずとも、あの森にひっそりと佇む水の冷たさは変わる事ない
よって 闇夜の語る名もなき音もまた 月夜と同じ美しさを秘めてるのだろう」

 シャリ シャリカリカリ クリ シャッ カリカリカリカリ シャ シャ シャリシャリ

「だが、月は其の輝きの中に隠すように。触れる事の出来ない窪みをもって
僕らの軌跡の中に作り上げたような傷痕がある。それは…… おや?」

 中肉中背の、清月の学生服のブレザーを軽く着崩した若者が
ペンを走らせながら、執筆と朗読を交えて歩いていた。貴方へと気づく

 「……大丈夫ですか? 何処か具合でも悪ければ人を呼びましょうか」

 暫し様子を見るようにしてから。
貴方の姿勢から、そう身を案じるようにして声をかけた。

284 ジェイク『一般人』 :2017/02/26(日) 00:05:07
>>283

声に反応して男が目を開く。
静かに帽子を手に取って頭の上に持っていく。

「必要はない」

「……何をいている」

男は静かに言った。

285 <削除> :<削除>
<削除>

286 小林『リヴィング・イン・モーメント』 :2017/02/26(日) 19:00:02
>>284

 >何をしている

青年と思える年若い顔に、歳月を幾分経たかのような古びた光を黒い瞳へと
宿した私は、貴方の言葉に少しだけ目を閉じて言葉を吟味して、そして手を動かす。

 カリシャリ クリ シャ カリカリカリ

「天光は鈍く二人の間を交差する中、問われた枠組みはそっと静けさの中を通り過ぎた」

 「……私が何をしてるかと言えば、文を 冊子の中を飾るに相応しい言葉を
捜しに夜更けの中を探索しに参った次第で……謂わば。
 小説を作るにあたっての気紛れな散歩ですよ」

 シュゥ ゥ……

 夜が髪を梳かす それはやや乱暴であって また優しい

 「此処の辺りの風は、冷たく それでいて木々を吹きすさぶ中に
想像と創造をつかさどっている。
 私はこの湖畔が好きです。このような常闇も、夜明けも 
燦と明るい日中もね。……貴方は此処で何を?」

 自身を一介の名もない小説家と称する若者は、柔らかな闇夜と同じほどの
温度を伴った目線で、帽子を被る彼へと言葉を投げかけた。

287 ジェイク『一般人』 :2017/02/26(日) 23:35:25
>>286

「そうか」

そういうとまた目を閉じる。
ただ静かに座っている。

「黙とうだ」

「魂が震えている」

何をと問い返され男は答えた。
目は閉じたまま、その体は石のように動かない。

288 <削除> :<削除>
<削除>

289 小林『リヴィング・イン・モーメント』 :2017/02/27(月) 00:02:46
>>287

 更に若者は、筆を滑らせる。

 カリカリカリ シャッ カリカリカリ キュ

 「木枯らしの中で、余多の安らぎの喧騒が耳打ちながら……」

 そこで、筆を止め。男に再度視線を向ける。

 「何へ、と訊くのは無粋ですかね?」

「ですが、私は貴方が只たんに狂人のように野晒しに此処で佇んでるようには見えません」

 「宜しければ、貴方の胸の内に秘める。その心情を教えてくれませんか?」

 小林には、ジェイクの石のような無機質さの中に確かなるものを
肌に脈動のようにして感じ得た。

 それを『文章』にしたい。そう願望を抱き、彼へと尋ねる

290 ジェイク『一般人』 :2017/02/27(月) 00:29:46
>>289

「聞いてなんとする」

「俺の空間を踏み荒らすか?」

目を開き、相手を見る。
特に興味もなさそうな目線だ。

291 小林『リヴィング・イン・モーメント』 :2017/02/27(月) 19:41:17
>>290

>俺の空間を踏み荒らすか?

 「お気を悪くされたのなら、謝罪します。
物書き故の、性分のようなものでして。
 誰かの明確な意思や情熱を秘めた科白は、生きてる言葉です。
私は、生きてる言葉を包み込んだ墨として、まっさらな無地へ埋め
息衝いた本へ変えたい……まぁ、そう言う俗な欲から来る行為です」

 ペンを若者は仕舞い込む。そして、踝を返すのを見ると来た道を引き返すのだろう。

「貴方の様子を見るに、反響するのは鉛色で余り澄ますような時でないんでしょう。
また、日を改めて私の望む答えを頂けたら、と所望します。
 ……名前は小林と言います。宜しければそちらの名前をお伺いしていいですか?」

 これ以上暇はしないと暗に告げ、小林は名乗って彼へと尋ねた。

292 ジェイク『一般人』 :2017/02/28(火) 00:04:26
>>291

「謝罪は必要ない」

「作家はみな勝手な人間だ。物語を書き、その結末がどれだけ悲惨であってもけろりとした顔でいる」

「人魚姫の結末に涙した少女に救いの手は差し伸べない」

ランタンを持ち上げる。
そしてしばらくいじった後、中の火を息で消してしまった。

「お前の望む答えをか……」

「……」

「ケイディだ」

男はただそうとだけ答えた。

293 小林『リヴィング・イン・モーメント』 :2017/02/28(火) 22:06:42
>>292

 「では、また何時か月夜でなくとも。
お会い出来る事を望みます ケイディ」



 ……

 
 シャリカリカリ クリ シャッ カリカリ カリカリカリカリ シャ キュリキュリ シュッ…

 「硝子の涙を透かす中に映える現世に 天の架け橋を渡すかのような
山谷を駆け抜けた一番風の音を感じ起こすように あの胸に秘める熱を私は欲するのだ」

 「……うん、良い文字が書き起こせそうだ。
しかしケイディ ケイディ……こう言う事を呟くのは如何だと思うが
名と姿に少し一致しないような気がしたな」

 別離を果たす後に、青年は嘯く。僅かに見える月光を少し仰ぎ見たあと
闇夜を伴として、あるべき場所へ あるべき場所へとと追い風にせかされるまま。

294 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/20(木) 23:29:40
「はぁ……」
湖畔のほとりで、やや憂鬱そうな様子で
一人の少女が湖を覗き込んでいる。

光が反射して鮮明にその顔が映る。

「第二の人生…
 なーんて、どうすりゃいいんスかね……」
自分の頬をぱちぱち叩く。

まるで漂白剤を頭からかぶったかのように
自分の姿は全身蒼白だ。

自分の体に「黒」という色は殆ど全く見られない。
過去の自分の姿を思い起こして

「とりあえず……
 学校に行って大丈夫なのかなぁー……」
自分の制服も色落ちしたかのような雰囲気である。

命を落としたショックよりも
これからどうすりゃいいのか、そんな思いで彼女は悩んでいるのであった。

295 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/21(金) 23:57:36
>>294

人影もまばらな、静かな湖畔のほとり。
そして、湖の傍で思い悩む全身に白みを帯びた少女。
そこから少し離れた所に、一人の女が座っていた。

年の頃は二十台後半。
すらりとした細身の体型で、女性にしては背が高い。
楚々とした喪服に身を包み、つばの広い黒い帽子を被っている。

少女とは対照的に、その姿には『黒』が際立っていた。
ただ、左腕にはギプスが付けられ、三角巾で腕が吊られている。
そのため、そこだけは『白』が目立っていた。

  ――……『第二の人生』?

少女の発した言葉が耳に入り、不思議に思った。
年若い少女が口にする言葉にしては不釣合いだ。
まるで、既に『第一の人生』が終わっているかのような……。
そんなことを考えながら、つい少女の方を見つめてしまっていた。
もしかすると、こちらの視線に気付かれるしれない。

296 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/22(土) 10:23:31
>>295
「とりあえず染めてみるかなぁー…」
などと悩みながら、湖に映る自分の姿をずっと見ていたが、

「おや…
 誰かに見られている気配がスるっス…」
ハッとして、顔を上げる。
蘇ったから感覚が鋭敏になっているのかは定かではないが
とにかく、じっと見られているような感覚を覚えたのである。

(いやー、この格好は目立ってしょうがないスからねー…
 興味津々なヒトもいるのかも……)
と、周囲を見渡していると

「…おんなじ白いのが…!」
と、文子の腕を保護しているギプスを指差して驚いている。
この時同時に二人の目があった。

彼女、梨央奈の姿は
『真っ白』という言葉がふさわしいくらい
全身白ずくめであった。
かなり特異なのは、文字通り
肌から髪の毛、僅かな濃淡で判別できるものの
眼球まで、まさしく『全身が』白ずくめなことであった。

297 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/22(土) 21:40:51
>>296

  「――あ……ごめんなさい……。つい、見つめてしまって……。   
   気に障ったのなら謝ります」

少女に近寄っていき、頭を深く下げて謝罪する。
自分の骨折した左腕に対して、少女は驚いているようだ。
どちらかというと、ギプスよりも『色』に反応しているのが気にかかったが……。

実際の所は、こちらの方が内心よほど驚いていた。
ただし、表情には出さないようにしている。
あからさまに驚いた顔をしてしまっては相手に失礼だ。

けれども――確かに不思議な姿だとは思う。
肌が色白だというなら分かる。
自分も肌の色は白い方だ。

しかし、ここまで全身が真っ白というのは見たことがない。
そういえば『アルビノ』という言葉を聞いたことがある。
遺伝子や色素の問題で身体全体が白くなるらしい。
もしかすると、彼女もそうなのだろうか?

  「……隣に座っても構いませんか?」

了承が得られたなら、彼女の隣に静かに腰を下ろす。

298 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/22(土) 22:14:36
>>297
「えーあ、気にしないデも大丈夫スからー…
 白いのが見えてちょっとびっくりしただけっスー」
と、随分と元気そうに答える。
そういう自分なんて真っ白なのにだ。

「あ、隣デスか?
 私は別に構わないスけど……」
不思議そうにしながらも返す。

「あー、えっと…
 怪我大丈夫スかね…?」
ギプスとかが気になってしょうがないようだ。

299 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/22(土) 22:53:10
>>298

  「ありがとうございます」

お礼を言って梨央奈の隣に座る。
その顔に浮かぶのは柔らかい微笑み。
しかし、どこか陰のある微笑だった。

  「これは――道で転んで、手をついた拍子に腕を折ってしまったんです」

これは嘘だ。
実際は、ある事件に巻き込まれて負った怪我だった。
とはいえ、初めて会った人にする話でもないと判断した。

  「全治一ヶ月だそうですけど……。
   でも、もうすぐ治りますから大丈夫です」

これは本当だった。
あれから、もうすぐ一月が経過する。
もうじきギプスも外れるだろう。

ギプスが付いているのは左腕。
それを目で追っていたなら、左手の薬指に指輪がはまっているのが見えたかもしれない。
位置を考えれば、それが何か分かるだろう。

  ――『白』が気になるのかしら……。

この少女の真っ白な姿と関係しているのだろうか?
確かに、気にかかることではあった。
しかし、それを直接尋ねてもいいものかどうか……。
そんな時、二人の間を一匹の蝶が横切った。
その色は――『白』だ。

300 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/22(土) 23:24:41
>>299
「まぁー、誰かがいると
 なぜだかちょっとだけ安心してたりスるんス…」
何か不安だったのかもしれない。
自分の姿を見てもあんまり動揺してなさそうなのが
安心したのだろうか

「へー、それは大変スね…
 でも大変なことにはならなくて何よりデスよー」
骨折で済むならまだいいなーなどと考えながら、
そのギプスをじっと見る。

と、そこに横切るのは一匹の『白』い蝶
「んぁ!?何時の間に……ん?」
ひどく驚いた様子で蝶の姿をじっと見る。
なんだか妙なことを口走っているようにみえる

「…何だただの蝶だった……
 はぁびっくりした…」
(…無意識に能力を使ったのかと思ってしまった…)
白い蝶、白い生物に妙に反応するようになった
そんな自分を思い返しているようだ。

文子から見るとそれはどう映るのだろうか……

301 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/22(土) 23:54:27
>>300

梨央奈から見ると動揺していないように見えたかもしれない。
しかし、実際には少なからず動揺はしていた。
それを表に出していなかったというだけのことだ。

けれども、今は既に落ち着きを取り戻していた。
それなりに人生経験を積んでいるがゆえだった。
それでも、目の前の少女のような姿をした人間には出会ったことがない。

  「――『何時の間に』……?」

梨央奈の反応を見て、小さく呟く。
ただの蝶に対する反応にしては大げさだった。
蝶が苦手という感じでもない。

今までのことから考えると、やはり『白』に反応しているのだろう。
なぜ彼女は『白』に過剰な反応を示すのだろうか?
それが気にかかる。

  「あの――失礼ですけれど、高校生の方ですか?
   それとも中学生でしょうか……?」

気にはなるが――いきなり訊くのは躊躇われた。
まずは答えやすい所を尋ねた方がいいだろう。
そう思い、とりあえず無難な質問をしてみることにした。

302 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/23(日) 00:12:00
>>301
「ん…ん?」
ちょっと何かつぶやいたらしい文子のことを軽く見つめる。
(もしかして、変に思われてる…?)
なんだか心配そうである。

「あ、在学はってことっスね?」
と、話題が変わったのに安堵している。

「あー、一応中学生デス…
 確か中学3年位スかねー
 14、うん、14歳スからねー」
そう言ってウンウン頷く。

「と、そういうあんた…じゃなくて、
 あなたはどのくらいの学年なんスかね?」

303 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/23(日) 00:47:46
>>302

  「ふふッ――」

梨央奈の質問を聞いて、帽子の陰で思わずクスリと笑う。
まさか今になって、そんな質問をされるとは思わなかった。
なぜなら、自分が学生だったのは昔の話なのだから。

  「ごめんなさい、笑ってしまって。
   あんまりにも意外だったものだから」

  「もう学校は卒業しているの。
   今は28歳。ちょうど、あなたの『倍』ね」

やや砕けた言い方で訂正するが、特に気を悪くした様子はない。
若く見てもらえたと解釈すれば悪い気はしなかった。

  ――それにしても……。

『一応』、『確か』という言い方が妙に引っかかる気がした。
自分のことを話している割には、妙に客観的な印象だ。
まるで、『本当にそうだったか』確認しながら話しているような……。

  「私は、よくここへ散歩に来ているの。今日も、ね……」

  「――あなたは?」

そういえば、彼女は何かしら思い悩んでいた様子だった。
『第二の人生』という言葉のこともある。
この真っ白な少女が抱えているのは、何かとても大きな悩みであることが察せられた。

304 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/23(日) 01:00:51
>>303
「あ、そうだったんデスか?
 じゃあチョー後輩じゃないスか!
 びっくりしたなー!みえないっス!」
取り繕うように慌てた様子で答える。
ちょっと失礼だったかなと思っているんだろうか


「へー、じゃ先輩はココの常連なんスねー!
 私?あー私は……」
と言って少し湖を覗き込んでいた。

「まーその、色々と
 今後の進路についてかんがえて…おりましてスねー…」
ちょっと悩んだ表情をしている。

305 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/23(日) 01:24:52
>>304

  「進路……。学校のこと?」

中学三年生で進路といえば、まず思いつくのは進学のことだ。
それは自分にも経験がある。
しかし、彼女の様子を見ていると、単に進学で悩んでいるとも思えなかった。

もっと何か別のことのような気がする。
それが何かまでは分からないが……。
彼女の真っ白な姿のことも含めると、少なくとも普通の悩みではなさそうに思えた。

  「もし――嫌じゃなければだけど……。
   良かったら、聞かせてもらえないかしら……」

  「ほんの少しだけでも、あなたの手助けができるかもしれないから」

  「もちろん、無理にとは言わないけれど……」

そう言って、慎重に話を切り出す。
梨央奈の素性が気にならないと言えば嘘になる。
だけど今はそれよりも、目の前で悩んでいる少女の苦しみを、
少しでも軽くしてあげたいという気持ちの方が強かった。

306 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/23(日) 01:36:47
>>305
「あー、まぁそっちでもありまスがねー…
 もっとこう……大きな…」
と探るように答えるが…
暫く考える。

「ん…そうスか?
 言ってもいいスけど…
 信じられない話だと思うっスよ?」
と言ってからしばらく考え…
口を開いた。

「まぁその…
 あれはちょうど一昨日くらい…」
と言って彼女は語りだした。

いつもの学校の帰り
普段通りの帰り道だったのだが

その日、一台の車が信号を無視して高速で
横断歩道を渡る自分に接近して……

「…ココで記憶が途切れたんスよねー…
 それで…気がついたらこんな感じに…」
と言って自分を指差した。

(えーっと…
 此処から先は…)
「なんて言ったかなー…
 そうそう『音仙』!
 悩みを聞いてくれるっていう噂があった
 あの人のところに行ったんス!」

307 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/23(日) 08:36:41
>>306

  「……」

真剣な表情で、黙って梨央奈の話に耳を傾ける。
その内容は、確かに信じられないくらい不思議で奇妙なものだった。
普通なら、とても信じられなかったかもしれない。

しかし、自分は信じる気になれた。
奇妙な現象を現実に起こし得る可能性に心当たりがあったからだ。
そうした類の能力は自分の中にも存在している。

  「――『音仙』。そう、あなたも……」

思い出すように、ぽつりと静かに言った。
自分も、そこへ行ったことがある。
梨央奈と同じように、胸の内にある悩みを聞いてもらうためだった。

その結果、自分の中に眠っていた異能の存在を知らされることになった。
おそらくは梨央奈も同じなのだろうと思った。
そう思うと、なんとなく彼女に対して親近感を覚えた。

  「それで――その後はどうしたの?」

穏やかな口調で先を促す。
今この時――湖の水面に映っているのは、
漂白されたかのように真っ白な少女と、喪服と黒い帽子を身に纏った黒尽くめの女。
対照的な白と黒のコントラストが、そこにあった。

308 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/23(日) 11:16:15
>>307
「はぁーえっと…
 その後はどうしたんだっけな…」
と、少し考えるが…
文子の『音仙』を知るらしき発言に耳を傾ける。

「知ってるんスか?
 それじゃぁー…
 先輩も何か相談を…?」
と興味津々に彼女の言葉を聞いている。
そういえば自分はそれで自分の能力を自覚したのだった、と思い出し、

「あー、あの人の言うことにゃーね…
 私は一度死んで生き返った…とか言う話らしいんス…
 そして何か…『能力』?そういうものを持っていると
 教えてもらったんスよね…」
ふう、とため息を付いて顔を上げる。

「試しに出してみたらまさしくその通りの『モノ』が
 現れたんで信じるしかなかったっスねー…
 それで今後どうしようかな〜とお悩み中なんスね……」
と、湖に映るのは黒と白の2つの姿。
対極の色であった。

309 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/23(日) 18:47:50
>>308

  「……ええ。
   私も相談に行ったことがあるわ。
   今のあなたと同じように『進路』についての相談を……」

やや曖昧な返事を返しながら、視線を手元に落とす。
右手の薬指には、左手の薬指と同じ指輪がはまっている。
左手の指輪は自分のもの、右手の指輪は夫の形見だった。

生きるべきか死ぬべきか。
それが自分の抱えている悩みだ。
今も消えてはいないし、おそらく生涯に渡って消えることはないだろう。

夫が死んだ時、後を追って命を絶つつもりでいた。
しかし、彼は『自分の分まで生きてくれ』と言い残した。
だから、死にたいという衝動を抑えて生きてきた。

しかし、いつまで抑えていられるか不安を感じていた。
自分の中にある死を望む気持ちが高まっていくことが怖かった。
『音仙』に行ったのは、ちょうどそんな時だったと思う。

  「――『死んだ』……?」

梨央奈の言葉に、今までとは少し違う反応を見せる。
哀れみの中に、ほんの少しの羨みが混じっているような、複雑なニュアンスがあった。
そんなことを思ってはいけないと思いながらも、それを止めることができなかった。

ともかく――梨央奈が言った『第二の人生』という言葉の意味が、これで分かった。
事故で命を落としながらも、彼女は新たな姿で蘇った。
それはつまり、梨央奈自身が生きることを強く望んでいたということだろう。

なんという偶然だろうか――。
生きることを願いながら死んでしまった彼女と、死ぬことを望みながら生きている自分が、
こうして同じ場所にいる。
そのことに対して、奇妙な縁を感じていた。

  「私は、あなたのように死んで生き返るという経験をしたことがないから……。
   だから、そういう時にどうすればいいか――
   その助言をしてあげることは、とても難しいことかもしれないわ……」

     スッ・・・・・・

そう言いながら、おもむろに左手を開く。
その中には何もない。
ただ空っぽの手があるだけだ。

  「でも……私もあなたと『同じもの』を持っているの」

唐突に、左手の中に一本の『ナイフ』が現れ、次の瞬間には幻のように消えてしまった。
多くの人間には見えないが、梨央奈には見えたはずだ。
形は違えど、彼女が持つ『能力』と同質のものなのだから。

  「だから――もし良かったら、お友達になってもらえないかしら……?
   私にできることは、それくらいだから……」

梨央奈の悩みは特異かつ深刻であり、簡単に解決できるものではないだろう。
けれど、同じ『能力』を持つ者が近くにいれば、少しは心強いかもしれない。
そう考えた上での提案だった。

310 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/23(日) 21:01:03
>>309
「へー…
 やっぱあそこは人生相談…みたいなところなんスねー・・・」
と感心するように答える。

「あはは、そのー…
 びっくりしちゃったっスかねー?
 自分もわけわかんなかったんスけどね…はぁ」
そう言ってまたため息を付いた。
見れば彼女も、文子も
互いに悩みを持つかのような表情に見えた。

「まぁ、そんな体験できる人なんて
 めったにいないスからねー…
 助言は無理かも…デス」
と、空っぽの手があるのみの
文子の手を見る。

「ん…なにか…」
と思ってじっと手のひらを見ていると
突然ナイフが現れ、消える。
「うおっ!
 これってあれっスか?!
不思議な力ってやつ!」
やけに興奮した様子で答えている。

「あーえっと…いいっス!
 おんなじ能力なんて私にとって
 とても嬉しいことスよ!!」
とても嬉しそうに彼女のお友達になってほしいという
提案に笑顔で答えた。

311 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/23(日) 22:06:27
>>310

  「――ありがとう」

そう言って微笑を浮かべる。
少しでも梨央奈の悩みを軽くすることができたなら幸いだ。
自分にとっても、同じような能力を持つ友人が増えるのは嬉しい。

自分自身の悩みが何なのかは――今は黙っておくことにした。
相手のことを聞いておいて自分のことは話さないのは失礼かもしれない。
ただ、今はやめておこうと思った。

別に秘密にしているわけではない。
ただ、梨央奈は彼女自身のことについて悩んでいる最中だ。
今話したとしても、余計に混乱させてしまうだろう。

  「私の名前は小石川……。小石川文子よ」

  「あなたは?」

自分の名前を名乗り、同時に少女の名前を尋ねる。
友達になった記念といったところだ。

312 伊須河 梨央奈『ウィッシュフル・シンフル』 :2017/04/23(日) 23:54:18
>>311
「はぁー、こちらこそっスねー。
 能力を持ってる人が一人じゃない…
 って思うとなんだかやってけそうだなーと
 思えてきましたス!」
と、ニカニカと笑ってみせる。
友人というのは素晴らしいもんだなーと考えていた。
今の友人のことをきにしながらもそう思った。

「あー、文子先輩どうもよろしくっス!
あーえっとうちの名前は伊須河…伊須河梨央奈(いすかわれおな)ともうしまスっス!
 こ、これからよろしくっす!」
そう言って深々と頭を下げた。
まるで舎弟みたいである。

313 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2017/04/24(月) 00:46:36
>>312

  「そう――良かったわ。少しでも力になれたなら、私も嬉しいから……」

屈託なく笑う梨央奈を見て、こちらも微笑んでみせる。
誰かが救われるのを見るのは好きだ。
自分も希望を失わずに生きていこうと思えるから。

  「こちらこそ。どうぞ、よろしく」

大げさな梨央奈の様子を見て、思わずクスリと笑う。
そして、こちらも頭を下げる。
年の離れた友人が、これで一人増えた。

それからしばらくの間、梨央奈と二人で色々なことを話し合った。
大体は客観的に見れば他愛のない内容だった。
けれど、少なくとも自分にとっては、とても有意義な時間を過ごすことが出来た。

その後、梨央奈と別れ、帰っていく彼女を見送った。
やがて、自分も湖畔から立ち去っていく。
湖面から白と黒の人影は消え去り、透明な水をたたえた湖だけが後に残された――。

314 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/26(土) 01:31:03
――星見町 自然公園 森林区域 川のほとり

ジッ ザザ……
『星見町レイディオ、11時になりました
 ……今日も素晴らしい  ……日差しが……』
ザッ…

木々の木漏れ日を顔に受けながら
川のせせらぎと木の葉の風に揺れる音を子守歌に
15メートル以上の樹上でマフラーを首に巻いた少年が
ラジオをから流れる音楽を聞きながら寝そべっている

枝葉の隙間にはバスケット、小型ラジオ、そして長い鎖が巻き付いていた。

鎖は約15メートル程で、そのまま幹に垂れ下がり
それを使って登ったのだろうと推測はできる。

「こんなにいい天気何だから表に出なさい、かあ…ふぁー…。」

寝ぼけ眼に一つ欠伸をして目を擦る。

「『お弁当』は嬉しいけど、そうそう見つからない物なあー
『秘密基地』でグッスリするのは悪い事でしょぉーかっ」

バスケットは中身のおかげで生き物のように温かい

ただ、中に何が入っているかは少年にもわからないので
12時を待って食べるのを楽しみにしているのだ

「ニョホホホ …この笑い方も面白いなあ。」

そんなのんびりとした笑顔に陽光がちらついていた。

315 ??『?????・???』 :2017/08/26(土) 20:26:56
>>314


   ……!  ……ッ  ガサッ   ザッ

 斑鳩が、穏やかな風に頬をくすぐられて正午を待ちわびていた時。
唐突に、その大樹の下から声が聞こえて来た。

 ……女性の、か細い哀願するような声と。
そして、それを罵る中世的な声だ。

 『ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……』

 「……ッ       ……!」

何度も、泣いて謝罪する女性の声が下から聞こえてくる。
 それに対して、相手は何度も強く命令口調で何か告げている……が
この高度だと、風向きもあいまって余り良く聞こえない。

 このまま、無視しても複数の人物達は貴方に意識を向ける事なく
通り過ぎていくかも知れないが……。

316 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/26(土) 21:48:23
>>315
「んん、何か煩いな…?」

――ラジオから流れている曲から意識を逸らして体を起こし
樹下を覗くと罵りと泣く女性が目に入る

(え、ええーっ…人が寝てる下で …そうか僕は気づかれてないのか!
人間注意しないと上なんて見ない物なあーっ)

眼は寝ぼけから覚醒し、表情が苦笑いに変わる
だが口角はこの奇妙な出会いに引きつっていた

(……理由は解らないけど叱られているのかな?
泣くほど謝らせるってのもやり過ぎだよなあ…ど、どうしよう)

(ここで『無視』するのは簡単だ、気づかれてないんだから寝てればいいんだし
……でもそんな事したら安眠できないんだよなあ、僕の心に良くない物を残すじゃないか!)

無意識に右手首の腕時計に触る、『迷った時』の彼の癖だ
――数秒の思考の後に軽く首を振った

(――取り合えず声を掛けてみるかな、『事情』は知らないけど
『同じ立場』だったら僕だって少しは『助け』が欲しいものな。)

――樹上から乗り出した体に『大量の鎖』が巻き付き始める
半透明の鎖……『スタンド』だ
そして右手首から延ばした鎖を右手に巻き付けて切り離す。

(『ロスト・アイデンティティ』切り離した鎖は実体化してるから音もなる
これを手に巻き付けて木の幹を叩いて音を出せば気づかれるかな、ついでに少し声大きくしとこ)

「あのー…(樹木を)ノックしてもしもーし、其処の人 そう、そこで怒ってる人!」

「事情は知りませんし、個人の主義や主張は勝手」

  「でもそれを僕の下で出して
  公然と『女の子』を泣かせるほど謝らせるのもどうかと思うんですけどね、僕は」

「――具体的に言うと、やめていただけませんか?彼女、謝ってるじゃあないですか。」

そう言いながら斑鳩は僅かに微笑んだ
(…アトツイデニアンミンボウガイ!)

317 ??『?????・???』 :2017/08/26(土) 22:15:13
>>316

 貴方は、鎖……『ロスト・アイデンティ』を出して
大樹の腹へと軽く叩きつけて音を鳴らす。

 安眠妨害への文句、そして普通の人として兼ね備えている親切心で。

 
見下ろした先にいるのは……大体、同じ背丈で中肉中背の男女? らしき二人だ。
一人は、泣いて膝を抱えて頭を下げている。病院服らしいものを身に着けている。

対して……もう一人はレインコートらしきものを身に着け、片手には……破片だ。

廃材などの、鋭いガラスの破片らしきものを薄い布で巻いた簡易な刃物を。何かしら
謝罪してる少女らしき人物に向けている。それは、傍から見て危うい光景だ。

レインコートの、向かいの少女を傷つけてる人物は。貴方の声のするほうに顔を向ける
深くフードを被ってるために表情は伺い知れない。

 ……二ィ

 しかし、何処か貴方を見て哂ったようにも見えなくもなかった。


 「……そっちには」

 ガンッ  アッ ィ……

 「関係ない」
 
 ガンッ  ヤメ……

 「ことさ」

 ガンッッ  イタイ

 少女らしき人物の髪を掴んで、貴方の丁度真下の木へと。その頭を複数回
返答と共に叩きつける。乱暴にされてる少女は、か細く制止をあげてる。

 「……これは お仕置きなんだよ。無関係の子猿には……どうでも良い事だろ?
家庭の事情って奴さぁ   」

 ヒヒヒヒ

 
 ……コートの人物は、愉快そうに貴方へ告げる。

318 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/26(土) 23:05:35
>>317
「あ、あ……」

(ぼ、僕は何でこの木を秘密基地にしちゃったんだ?
何でここに出かけようなんて思ったんだ? 何故気づいて起きてしまったんだ?
どうしてこの人達はこんな所でこんな事しているんだ…?)

――後悔に指先と喉が震える

(どうして『首を突っ込んじゃった』んだ僕はァーッ!!?)

汗が頬を伝う、夏の暑さのせいでは無かった、『恐怖』のせいだった

(どう見ても危ない人じゃあないか、覗かなきゃよかったあじゃないか!
こんな事だから僕はいつも『期末テスト』で赤点ギリギリなんだよなぁーッ!
『後悔』と『恐怖』がムンムンと湧いてきたじゃあないか!)

左手をまた無意識に右手首の『時計』に持っていく

チャリ…

左手に巻き付けた鎖のミサンガが動揺に揺れる

(や……やめよう、人の『家庭の問題』なんだ 謝って寝なおそう、『ラジオ』を全開にすればいい
30分耐えればいいだけさ、僕がこんな怖い人と関わる必要ないじゃないか)

(第一、これが『家庭の問題』なら僕が関わったところで
見えないところでまたやらされるだけじゃあないか『無駄』じゃあないか
無駄にカッコつける奴の方が『馬鹿』なんだ……)

掌が汗ににじむ

(こんなの警察がやる事じゃあない……か……)

「……ご、ごめ」

手には鋭利な刃物、家庭の事情、女の子の悲鳴 
確かに逃げるには十分だ それを誰が責めると言うんだ?
これを責めるなら『クラスでいじめを知らない、知っていても無視する人』まで悪になるじゃあないか。
誰も責めない、それをすれば自分も『悪』になるから。

――ところで、『私達』の時は誰か助けたのか?

「……や……」



 「やめろって言っただろうがあーッ!
 その『女の子』を傷つけるのは今すぐやめろぉーッ!」

  「アンタが気づく前に『写真』を取ったし『録音』もしてるんだからな!
  さもないと……さもないと『警察』に突き出すぞ!」

「アンタ、それでもいいのかッ!」

震える声を張り上げながら、斑鳩は同じように震える指先で『フードの男』を指さした。

(――全部嘘でたらめの上に何を何で言ってるんだ僕の口はぁーっ!!?
謝るんじゃあなかったのかぁー!?
でも頼むからこれで止まって下さぃぃーっフードの人ぉぉぉ!)

319 ??『?????・???』 :2017/08/26(土) 23:50:53
>>318

>さもないと……さもないと『警察』に突き出すぞ!

>アンタ、それでもいいのかッ

 「……はは、ははは」

「俺を? 俺を警察に突き出すってか? 水面に浮かぶ月を切るって言うのか?
ははっ、出来ない 出来やしない。
 こいつが泣いてるのを止める事も、俺を警察に突き出す事も。
何一つ 解決なんてしやしないさ。
 だが、それでも俺には出来る事がある。なぁ? 
俺はこの子に罰を与える事が出来る。それが、俺の宿命さ
 肌を切り裂いて、爪を剥いて、髪の毛を引き抜いて泣き喚いてでも
止めて と言っても、ちゃーんと罰を遂行させる。それが俺だよ」

 フードの人物に、動揺した様子は見受けられない。
だが、しかしながら返答は返される。まるで、何かのお芝居のように
饒舌に貴方に喋りかける。

 「……さぁ、次は……爪切りだ」

   「いやぁ。。爪切りはいや  いやぁ…」

 少女へと、そのコートの人物は手首を掴み爪の付け根にガラスの先端を当てる。

震え声で、少女はいやいやと首を振り、制止の声をあげる。
 だが、そんな言葉が聞こえないように。じょじょに、ガラスの刃は
少女の爪と指の肉の間に入り込もうとしている……。

320 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/27(日) 00:18:58
>>319

――駄目だ

(と、止まる様子がない!それどころか爪切りィ〜!?
『硝子』で『爪』を『えぐる』って事なのかぁ!?
想像だけでも震えるほど怖いッ!)

現在地は樹上15メートル!
人間が無事に降りられるのは5メートルが限度!
でも……でも減速していたら『間に合わないかもしれない』!
この『事実』を前にもはや斑鳩に『違和感』を感じる脳の隙間は無かったッ!

(ガラスのナイフだ!…ナイフを動かされる前に蹴り飛ばせばいい!
でもそこまでの時間稼ぎが……僕に……でき……)

「やめろぉーッ!『ロスト・アイデンティティ』!」

(畜生ーッ、これで怪我したら誰を怨めばいいんだーッ!)

枝に巻き付いた鎖を右腕で掴みながら落下していく
その最中に左腕を『振りながら手首から伸びている鎖を切り離してナイフの持ち手めがけて投擲する』

そして両足の鎖を解除し、『自分の足で地上から3メートル地点で両足と右腕で減速し』
『影の両足でナイフを蹴り飛ばす』

そして4本の足で着地後に2人の間に割り込んでフードの男の手首を抑えにかかるだろう。

321 遊部『フラジール・デイズ』 :2017/08/27(日) 22:19:47
>>320(昨日は寝落ち失礼しました)

 
>やめろぉーッ!『ロスト・アイデンティティ』

 シュォォオ!!    バシッッ!!

 「おぅ……?」

 さながらスパイダーマンのように、斑鳩は颯爽と鎖を操り
鞭の如く振った銀色の線流は、そのフードの人物のガラスの刃の先を持つ手へ
見事に命中し 弾き飛ばした!!

 その硬直の隙をつき、スタンドの四肢を扱い十五メートルの高度からの
落下に対する衝撃も、鎖を利用していた事も相まって足が少し痺れるものの
見事に、その手首をキリキリと強く拘束出来る。そして……

   ――バサッ


 「――へぇ 子猿と思いきや、何処ぞの蜘蛛男の真似事かよ?
随分とユニークな力を使うじゃねぇか」

 お    『女だ』!!

 中性的な声であったが、そのフードの取り払われた顔は正しく女性の顔立ち。
だが、その眼光や歪んだ口元は。女性らしくない残忍な男性の表情の面影もちらついてる。

 「だが、お前……俺の間合いに入るって事は
それだけ  ――俺の牙が手に届くって事だぜぇ?」

   ビュンッ

 『女』は、斑鳩へと。掴まれてる方とは別の手をポケットに入れたかと思うと
弾き飛ばすように、小瓶を顔目がけて投げた!

322 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/27(日) 23:59:24
>>321(おきになさらず)

「――あれっ、えっ 女のひ」

ガシャアン!

鎖の音と同時に小瓶が落ちる
斑鳩の全身に巻き付かれた『ロスト・アイデンティティ』の鎖は頭部にも健在であった
ダメージはほぼ無いが、無論本人が驚かないかどうかとは別である
おまけに彼は相手が(中身は兎も角)女性だとは思ってなかったのだ

「いたぁぁぁあああ……くないっ!」

驚愕と同時に手首への拘束は緩む
――そして数秒すれば彼の思考にも『余白』が生まれる

「ッ違う!貴女 僕の『鎖』はともかく『手足』が見えてるな!『新手のスタンド使い』か!」

(――でも、この感覚は何だ?『懐かしい』? いや、僕は初めて会う筈だ……)

(でも不味いぞ…もしこの人が『スタンド』で僕を攻撃してきたら…!
じょ、女性相手に手を挙げるのかぁ〜ッ? いやもう既に挙げてるのか…
『バスケット』と『ラジオ』は悲しいけど諦めて逃げるしかないッ!)

323 遊部『フラジール・デイズ』 :2017/08/28(月) 00:12:29
>>322

 「女?  あぁ、そうだな。この体の、この姿なりは
間違う事なき 女さっ」

 「だが、それだからどうだって言うんだ?
いまさらフェミニストを気取るかっ? ――不愉快なんだよ
 見てくれだけで、侮られるのも 逆に畏まれるのも
俺は、俺なんだぜ。……なぁ」

  ブンッ!

 フードの女は、斑鳩の『ロスト・アイデンティティ』に向かって蹴りを放つ。

 普通なら、スタンドに対し生身の人間が蹴りを加えても。透過するだけだが……

「俺が 『スタンド使い』だってぇ〜〜〜?

違うね

 俺は『悪霊』さ。複数の一人 ただし 俺の名を覚えていいのは 一人だけさ」

324 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/28(月) 00:56:48
>>323

(ま、不味い…足の方の鎖はさっき『解除して』『影の足』にしちゃったんだった!)
(『影』で防御しても『ダメージ』は僕に来るんだよなぁーッ!
蹴りだと倒れこんでも避けられない……)

「……なら上だッ!」

――斑鳩の両腕の鎖が崩れ落ちる、それと同時に重なるような影の腕がフードの女性の肩を掴み
それを起点として『4本の足』で『跳躍』する…『二倍の脚力』で飛んだ身体が、
丁度フードの女性の上で逆立ちをしようとしていた。

――うまくいけば という前提だが、無論手首を緩くとはいえ掴んだままなので 
このまま背後から『腕関節を決められる』…が

(……駄目だ拘束としては荒すぎるし、かけていい技じゃない!)

  「よく聞きますけどねそういう理屈!」

「でも『見た目』っていうのは『中身』の上澄みの部分って考え方も…有るッ!」

チッ チッ チッ……

325 遊部『フラジール・デイズ』 :2017/08/28(月) 19:01:48
>>324(申し訳ありません。本日この1レスのみになります)

 >でも『見た目』っていうのは『中身』の上澄みの部分って考え方も…有るッ!

「ほほぅ! 『メラビアンの法則』かいぃ!! おたく、面白い事を唱えるねぇ!」

『ロスト・アイデンティ』は優秀なスタンドだ。影の足は、普通の脚力の倍以上の
跳躍力を生み出し フードを着る危険な女の蹴りを回避して、頭上を取る。

 「おおぅ! 本当身軽だねーっ。俺にも頂戴よ、その鎖
もっと上手く操ってやるのになー はははははッ!!」

  ……シクシク

 女は楽し気だ。崩れ落ちるように座り込んでる、家族 と言われた少女の
ほうは俯いて泣いている。いまだに顔をあげたりはしない。
 そして、フードの女と違い。少女のほうは病院服を身に纏っている。

 「こいつは病院帰りでねぇ。そんで、俺も同じく病院帰り。
さぁて、なぞなぞなーに。病院から帰って来た俺達ふたり、なーにを
ポケットに入れてますかー? ――これだぁ!」

 ビュッッ!   ピシャァ!!

 フードの女は、懐に手を伸ばすと。頭上をとる貴方目がけて……『輸血パック』だ!
予め、切れ込みを入れてたのか。投げた拍子と勢いで、それは貴方の目と鼻の先で
真っ赤な波紋が飛んでくる! 

 「さぁさぁ次は、どう防いでみるんだよー 似非蜘蛛男さんよー!! 
あはははははははは!!!」

326 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/28(月) 23:46:42
>>325
「ぶっ……!」

物を投げられた事により反射的に目をつぶる
しかし、視界がふさがれたことには変わりが無い

(ゆ、輸血パック…『血液』ッ!?『鎖』で『液体』は防げない…)

――チッ チッ チッ

(こ、ここまでされるともう手段を選べない……のかぁー!)

――影の両腕は未だ『フードの少女』の肩を掴んでいる
その状態で背後に着地し、『背負い投げ』をしたら?

「悪いけど、ちゃんと『受け身』取ってくださいよぉー!」

4本の足が地面を捉え、影の両腕が力任せに遠くへ投げ飛ばそうとする
パワーは人間並程度だが……

「『ロスト・アイデンティティ』!、頭部の『鎖』も解除する!」

投げ飛ばそうとした瞬間に頭部の『鎖』も解除され
『影の頭』がズレるように現れる、斑鳩の目が見えていなくても
影の頭部の眼は泣いている少女を捉え、其方に斑鳩は駆け出し

「失礼お嬢さん!アーンド……逃げるんだよおぉーっ!」

――4本の腕で抱え上げて走り出そうとした!

(この人も戦うと元気になるタイプとみた、じゃあ相手にしていられるかー!
今はここを離れるのが先決だ!)

327 遊部『フラジール・デイズ』 :2017/08/29(火) 21:18:37
>>326

>悪いけど、ちゃんと『受け身』取ってくださいよぉー!

パワーは人並みと言えど……影の手を使えば、飛距離は上がる!

 「ふわっ!?」

 女は投げ飛ばされる。茂みの奥へと消える。その間に、泣きじゃくり
顔を伏せる少女を、見事に貴方は抱きかかえてフードの女と逆方向に進めた!
 少女は、少し驚いた声を上げ硬直するが。貴方の行動に拒絶する事は無く
大人しく抱えられている。

「おい 待てよ似非蜘蛛男よー! 逃げずに遊べよぉ!!」

そう、貴方を呼び止める声が背中に張り付いてくるのを聞こえながら
100m程走り……唐突に、体に付着した血液が『消失』した。
 どうやら、その血はスタンドで出来たものだったようだ。

泣いている少女は、髪の毛の先端がピンクっぽい栗毛の子だ。
 
 「ぅ ぅ えぅ ひぐっ いぅ……あ あり  がとう。
た  たすけ……て くれて」

 双子なのだろうか? フードの女に随分顔つきが似ていた。
もっとも、涙を流し嗚咽とひゃっくりを上げる様子は。フードの残忍な
女とは全く真逆の雰囲気を醸し出している……。病院服のタグには『遊部』とある。

328 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/29(火) 23:13:14
>>327

>おい 待てよ似非蜘蛛男よー! 逃げずに遊べよぉ!!

「誰が蜘蛛じゃーッ!精々手足が8つなのと鎖を伸ばせるだけだろうが!
あと女性だろうと男性だろうと人を殴るのとか御免です、さよならグッバイ!」

ズダダダダダダッ

(……あれっ?もしかして僕かなり蜘蛛なのでは?)

――血濡れの顔を振りながら影の頭部で視界を確保しつつ森林の中を『走りながら跳躍して』逃げ回る

(いやいや今考えるのはそこじゃないそこじゃない『今の僕の恰好』だ。)

傍目今の斑鳩は『顔面にべっとりと血が付いていて』
『拘束具の少女を抱きかかえて運んでいる』
『軽業等の運動で汗をかいた男』である。

(――役満!不審者の数え役満だよこれ!
お巡りさんに助けを求めたらそのまま僕がお巡りさんに連行間違いないよこれ!)

3択―ひとつだけ選びなさい
答え①ハンサムの翔は突如完璧なアイデアがひらめく
答え②メイドさんがきて助けてくれる
答え③かわせない。現実は非情である。

選びたいのは2……いやなんだこの選択肢メイドって何?
洋館なら兎も角森林に居たら不審者その3だよコレ、前門の不審者後門の不審者だよ。
却下で!

3…絶対選びたくない、もし捕まったらお爺ちゃんとお祖母ちゃんにまであらぬ噂がかかってひぇぇぇぇ
却下で!!

1…やっぱこれしかないな、これが血なら水で何とか洗い落とせば…幸い自然公園なんだし
水場とかは困らない筈!よし、そうと決まればこの僕の目が……

「あれっ、血が落ちてる……?」

顔をぺたぺたと触るとどこも濡れていない
「これで不審者扱いは逃れる…かもだけど、如何いう事なんだ? 夢じゃあないもんな……」

影の頭で後方を確認しつつ、追ってこないと解れば歩みを止めて息を整える
(これ以上追ってこなくてよかったな…下手したら『ターザン』しないといけない所だった)

チッ チッ チッ……

>ぅ ぅ えぅ ひぐっ いぅ……あ あり  がとう。
た  たすけ……て くれて

「…あっ、起きたぁー? ごめんね急に抱きかかえちゃって……ハンカチいる?」

懐から影の腕でシルクのハンカチを取り出して差し出す
何とか顔を笑顔にするように努めながら、ゆっくりと彼女を降ろそうとした。

「僕 斑鳩、斑鳩 翔 空は飛べないけどね……
君の名前、教えてくれると嬉しいな。」

(『遊部』……この子…そっくりだなさっきの子と…『姉妹』?
『スタンド』は見えてたけど…参ったなあ『家庭の問題』か
見えてる割には出さなかったのも気になるし……。)

――右手首の腕時計を弄りながら

329 遊部『フラジール・デイズ』 :2017/08/30(水) 19:29:45
>>328


>僕 斑鳩、斑鳩 翔 空は飛べないけどね……
君の名前、教えてくれると嬉しいな

 「……えぅ ひぐっ、い い 斑鳩 さん……
わ 私の いぐっ うっ  な 名前……」

      ポロポロポロ

少女は丸い透明な大小ばらばらな球を地面へと落としながら
不規則にしゃっくりを繰り返し、呟く。

 「な  なまぇ   わ  『わからない』
わたし  だ  だれ?   
 ぅぅぅ゛ な なんにも  『わからない』
わからない よぉぉ゛  うっ  えぅ゛」

 少女は泣きじゃくる。

   ……パサッ

 激しく泣く、少女の検査衣に。元々入れていたらしい
何やら『メモ用紙』らしいものが零れ落ちた。

 この子の苗字は恐らく『遊部』である。検査衣からも
恐らく『城址学区』の『総合病院』の患者である事も理解出来る。

 だが、それより更に。この娘の『真実』を知りたければ
メモ用紙を開く事で、僅かなりでも情報を知れるはずだ。

330 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/30(水) 22:40:38
>>329

「そっか、解らないかあ……
まあまあそんなに泣かないでさ……僕もショックだけど」
――取り出したハンカチでそっと目元を拭こうとしつつ思索にふける

(名前が「わからない」?…目に見えてるし衣服にも書いてあるけど
本当に知らないみたいに言うんだな ……拘束服なんて見覚え……有るけど。)

少年は目線を合わせるためにしゃがみ込み
笑顔で話しかけ続ける

「ほら、女の子に泣き顔なんて似合わないんだから……って僕の家のじいちゃん言ってたし。
落ち着いてゆっくりお話ししよう。」

(不味いなあ…僕『転校生』なんだからここの地理に明るくないのが裏目に出たか?
……あっ『スマートフォン』!……家に忘れてたんだった。ここらの地図入ってるのアレだよなぁーッ!
こういう時に僕の『スタンド』って役に立たねえ!)

「どうしよっかな、安全な場所まで君を連れていきたいけど……?何だろうコレ、紙切れ?」

(――この子には悪い気がするけど見せてもらおうかな、もしかしたら
『安全な場所』か……あるといいなぁー。)


足元に落ちた紙切れを拾い上げて開こうとする
赤いマフラーが八月の風に揺れていた

(そういやあの子も『スタンド使い』の筈なのに…ビジョンの無いスタンド?
それとも、『もう見えてた』のかな?……うーん)

331 遊部『フラジール・デイズ』 :2017/08/31(木) 19:15:24
>>330(次レスで〆させて頂きたいと思います)


 「ぅう えぐっ は、はい。斑鳩おにーさん」

 貴方の、献身的で朗らかな態度は。彼女の焦燥を幾らか減らしたらしい。
まだ嗚咽は残るものの、幾らか受け答えは出来ている。
   
 そして、貴方は紙片を開く……。

 カサッ


 『 これを読んでる―――(文字が潰れている)へ

きっと 何が起きてるのか分からず途方にくれているでしょう。
ひとまずは、清月館に向かってください。寝床はこちらで用意出来ています

 ――(黒く塗りつぶされてる)は閉じ込めています   

  ですが支配権は未だあちらにあります  そう長くは保ちません

貴方の事を愛しています

どうか 安らかな永久の眠りが 貴方に訪れん事を      』


   ……

       ……

    ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


 「…………」

 何時の間にか、少女の嗚咽としゃっくりは止まっていた。

紙片を覗く、貴方に強い視線が突き刺さる感覚が起きる。
泣きじゃくっていた『遊部』の方向からだ。

332 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/08/31(木) 21:29:38
(おにーさん、か 僕に妹がいればこんな感じなの…?)

(……所々読めないけど、これ 妙だな)

思考の癖として顎を触る だんだん泣き声が遠くに聞こえるように

(これは多分この子に宛てた手紙何だろうけど…)
(清月館に向かえ?病院の拘束服を着てるのに?)
(『閉じ込めてある』……ふつう使わない言葉だよな)
(支配権…?何の支配権だ?)
(愛しています…保護者からの手紙なのか?)
(一番奇妙なのは…『安らかな永久の眠りが 貴方に訪れん事を』
娘に使う表現じゃないよな?まるで……死人とか……もっと別の)

閉じ込める 支配権 悪霊 家庭の問題 拘束服 病院

        「――まさか」

 頬を伝って汗が流れる……暑さが原因ではない

    「まさか、あのフードの少女!まさか!」

 (見えないスタンドではなく!自身を『悪霊』と言った!)

         (……僕の『スタンド』が纏う形だったのでピンと来なかったが)

  (もし僕に発現していたのが『人型のスタンド』だったらどう表現した!?)

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

  ――視線を感じる 突き刺さるような視線を少女の方から

 「ま、まさか……『この女の子』! いや…『この女の子達』なのか!?」

   嗚咽としゃっくりが聞こえていない……?

バッ!

――メモ用紙から顔をあげて視線の方を見る。
腕時計の秒針が斑鳩の焦燥と共に未だに音を立てている

333 遊部『フラジール・デイズ』 :2017/08/31(木) 21:47:06
>>332(長らくのお付き合い 有難うございました)





''' ゙  ,,,,,,,,,,,   :::::    .:::''         ゙''-
  三,, - 'i': : : : :゙:'ヽ. ::   :::'' ,, -'':゙:゙:゙゙:':'ヽ-,, 彡
   'ヽ, |': :(●): :| 'ヽ:::  .::'.'/ |: :(●): :| ゙''-,,,,
 -=-,,,丶|,,: :'''': :,,リ,-,,,|::::  ://.,,,,,,,|: : :''''' : リ/゙-ヾ
゙・ ''゙゙, -・-゙'''''''''゙-=≡_丶 '''',ヾミミ゙゙''''__-'''_彡ヾ''''
'' ,  ゙                   ̄   ゙゙



  
 ……こいつは         『消す』べきか?

 ……いや      『感じる』

   ―――これは  『異なる道へと旅する自分』だ。

…………ならば       辿るべき   下すべき事は分かりきっている


  
――――――――――――――・・・


『斑鳩』は、一瞬だが 確かに見た。

 少女とは思えぬ、眼光。それがエックス線のように貴方の内側まで
通り抜けるように 見透かすように貴方へと向けられていたのを。


 「……うぅ」

   ドサッ

 少女は倒れる。貴方は、この『遊部』が気絶したのを視認する。
打って変わって、倒れ込んだ少女の顔は年相応の 泣き疲れた顔だ。

 紙に書かれた場所に送り届ける事が必要かどうかは分からない。

ただ、この少女は……何処か人と異なる事だけは。はっきりと貴方には理解出来る。

334 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2017/09/01(金) 01:52:22
>>333
(――何だ今の眼、僕の中を見たような
この胸の中をかきむしるような感覚……)

 「――もしかしたら、君が僕に運んできてくれるかもしれないな……人の出会いか
   偶々偶然の積み重ねかもしれないけど、人間はそれを『運命』って言うんだろ。」

寝顔の涙跡をそっとハンカチで拭いて仕舞い込み
そのまま斑鳩は聞こえる筈もない独り言を言い続ける。

「『心を治せる』もしくは『時間を巻き戻す』……いない筈はない
そう子供のように無邪気に信じているんだ、僕は 僕だけは」 

拘束服に書かれている名前を一瞥する
…その瞳は笑ってはいない。

  「遊部ちゃんか、『君達』とは今度ちゃんと…『友達』になりたいな ゆっくりと…お話して。
   お互いを『尊重』しなくっちゃあな……君は『異常』ではない、きっと『私』と同じだろう?」

――解離性同一性障害
(おそらくは、それに関連するスタンド 自動操縦型か……)

   (精神の形状は似ている筈だが『役の分離』と『鎖の枷』……私とは真逆だな。)

そこまで言って深呼吸すると顔に間抜けな印象を与える笑顔を戻す
……頬を指でかきながら

「実際かなり怖いんだけど僕も人の事言えないし……まあ、それはそれとして」



 「寝顔は可愛い女の子なんだから放置は男の子としてできるわけないよなぁ〜ッ!
  幸い場所は解るし、抱えて清月館に行ってみるかぁ……。」オマワリサンニアイマセンヨウニ!

少女を起こさないように抱え上げて清月館に歩みを進める。
――ところで何か忘れていないだろうか?

  (……はっ、僕の晩御飯のバスケット&ラジオ! 何処だぁぁぁッ〜!!?)



                             ……to be continued?

335 神『フライト800』 :2017/09/15(金) 00:47:12
「……」

「ふむ」

和服の男が一人。
ベンチに座っている。
膝の上には金魚鉢があるが中に金魚はいない。
いくつかビー玉が入っている。

「この色味、美しさをなんという」

「難しい問題だなぁ」

336 神『フライト800』 :2017/09/23(土) 00:22:18
>>335
答えは出ず。

「帰ろ」

337 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/10/29(日) 22:31:51

   「ぎぃや“あぁぁ〜〜〜〜!!!!!!!!」

ベンチに腰掛ける眼鏡の女。
横持ちしたスマホ、この世のものとは思えない絶叫。

「い、一万円でき、来てしまったッ。
 今回の『ガチャ』の目玉の『英霊』……
 フヒッ、フヒヒヒヒッ!!
 こりゃあ笑いが止まりませんなッ!ヒヒ。
 …さ、さっそくスクショを取って(カシャ)画像をツイッターに」

即座にスマホを縦に持ち替え、
バックグラウンドで起動していたSNSアプリを起動、
投稿画面を開きスクショ画像を張り付ける。

「――待って。
 たかだが1万で引いたって面白くないし、
 そうだッ!せっかくだし1万じゃなく10万『課金』したって『嘘松』して、
 うんうんッ!!そっちの方が絶対面白い!!」

 『10万円ぶち込んだ結果、無事お迎え。
  これで給料日までもやし生活。助けてクレメンス』
 
「…っとよぉ〜しッ!投稿!!!!
 こぉ〜りゃあ、いっぱい『いいね』が来るぞ。
 フヒッ、フヒヒヒッ、ウヒヒヒヒヒヒッ!!!」

338 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/10/30(月) 00:04:45
>>337

「ふぅぅぅぅぅ〜ん……」

いつのまにか隣に誰かが座っていたことに気付くかもしれない。
サングラスをかけた少女だ。
一体いつから隣にいたのだろうか。
それは分からない。
確かなことは、眼前で繰り広げられる奇行に対し、
まるで子供が珍しい生き物でも見つけた時のような視線を向けているということだ。

「――たのしそーだね」

339 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/10/30(月) 20:38:13
>>338

ブッ ブッ

持っているスマホがバイブする。
SNSアプリの新着通知だ。

      「お!!!」

「『足利ルシファー』さん、『気象予報士』さんから
 早速おめでとうのリプライが来ましたなぁ〜〜!デュヒッ!
 すぐに返信したら暇人って思われてしまうし……、
 
 事前に描いていた『ノーメディシン・ノーポイズン』な、
 ソシャゲの『4コマ』漫画を、お迎え記念と称してうpしてぇ、
 その際にリプライ返せば、更に『いいね』と『リツイート』がドンッ!!
 フヒヒヒッ!!こりゃあ、今夜は『いいね』の通知に震えて眠れ――


            >「ふぅぅぅぅぅ〜ん……」


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッ!!!!!!!!」

刃牙に金的を食らった時のシコルスキーのような絶句の表情。
声にならない叫びを上げ、咄嗟にスマホの画面を伏せる。
そして酸欠の金魚のように口をパクパクさせながら、
恐る恐る隣に腰掛ける夢見ヶ崎の方へ顔を向ける。


「こ、こ、こ、こんにちはっ!!!
 いやァ!別に楽しそう、じゃあないよッ!
 こんばんはッ!あ、あれ?お、おはようございますっ?
 ええッと!今何時だっけ?てか!!あんた誰!!!」

340 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/10/30(月) 23:10:35
>>339

「そう?なんか超たのしそーに見えたんだけどなあ」

「あ、こんにちは」

「んー?今は午後四時すぎ」

水瀬とは対照的に、至って平静な様子で挨拶し、時間を確認する。
この辺で何か面白いものはないかと思い、近くを歩いていたのが数分前。
響き渡る奇声を聞きつけ、好奇心をくすぐられた私は危険を顧みず現場に急行した!
そして、そこで調査員は衝撃の光景を目撃する!!
次週を見逃すな!!!
そんな感じで水瀬の姿を発見し、隣に座って今に至るのだ。

「私?私は通りすがりのアリス」

もちろん本名じゃない。
自分で自分につけたニックネームだ。
私は生まれつき目が見えなかった。
でも、最近になって見えるようになった。
そんな私にとって、この世界はまるで不思議の国みたいに映る。
だから、私はアリス。

「別に何ってわけでもないんだけど、ちょっと散歩してたんだ」

「何か変わったことでもないかなぁと思って――」

「そんな感じかなぁ」

そう言いながら、視線は水瀬に向けられている。
なぜかって?
そりゃあ珍しいヒトを見つけたからに決まってる。

341 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/10/30(月) 23:25:03
>>340
「ブフォッ!」

予想の斜め上の返答に思わず吹き出す。
此方の容貌はむっちりめのアラサーメガネだ。
それ以上に特筆すべき点はない。

「こいつ何言ってんだ……。
 え、ちょ、こいつ何言ってんだ!!!
 通りすがりのアリスって、何なん…?
 もしかして『オフ会』の待ち合わせでもしてらっしゃるんですか!?
 こんな人気もクソもない自然公園で!? フヒヘッ…」

アリスと名乗る女に、怪訝な目を向けながら。

「えっと、その、だな、
 休みの日に散歩してて、休憩ついでに『ソシャゲ』をやっていただけですって。
 ホラ、今流行ってるじゃん。
 別に怪しい事はやってねってッ!と、通りすがりのアリスさん…?」

342 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/10/30(月) 23:59:13
>>341

「『アリス』でよし」

「それか『明日美』でもいいよ」

「『夢見ヶ崎明日美』っていうのがフルネームね」

喋りながら、それとなく水瀬を観察する。
なるほど、とりあえず見た目は奇妙なところはない。
ゲームしてたっていうのも本当だろうし、別に突っ込むところじゃない。
でも、ゲームしてる人間みんなが、家の外で大声で叫んでるわけはない。
しかも、あんな聞いたこともないような妙ちくりんな叫び声で。
このヒトに対して、好奇心が刺激されるのを感じる。

「そーだよね。やってることはぜんぜん怪しくないよ。これっぽっちもね」

「ところで、お姉さん――」

「ゲームする時、いつもあんなデカい声で叫んでんの?」

こちらの年齢は十台半ば。
高校生のようだ。
頭にはリボンのようにスカーフを巻いている。
爪には、カラフルなネイルアートの付け爪が見えた。
掛けているサングラスの色はそんなに濃くない。
よって、レンズの奥の黒目がちの瞳が透けて見えている。

343 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/10/31(火) 00:20:35
>>342

「『明日美』で行きましょうッ!
 あんたを『アリス』って『HN』で呼ぶと、
 必然的に私も『鬼龍院”ベルフェゴール”颯樹』ッて
 名乗らなきゃいけないからなァ!うんッ!ウヒヒヒッ!」

上擦った、下卑た印象を与える笑い声を漏らす。


             「いやッ!」

「だってッ!『シモ・ヘイヘ』よッ!!
 周りの『フォロワー』が、5万、10万とか課金しても
 出ない『シモ・ヘイヘ』を1万でお迎えできたんだって!
 そりゃあ、一目も憚らず半狂乱でござろうよッ!!
 周りの雑魚どもに自慢して、『イキリ』たいっすわァ〜〜」

どうにも要領を得ない説明だが、
どうやら『当たり』を引けたらしい。


「ッて!!!『高校生』ッ!?
 わ、若ッ!うわ!まぶしいッ!!
 随分と『キラキラ』な恰好してるけどぉ…、
 うわあ、頭に『リボン』、うらやましい」

344 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/10/31(火) 00:49:17
>>343

「ながっ」

告げられたHNに対して、極めてシンプルな感想を漏らす。

「長いから『ベル姉』って呼んでいい?」

「それか、教えてくれるんなら、HNじゃない方でもいいんだけど」

そして、ある意味で専門的な説明に耳を傾ける。

「ふむふむ」

「なるほどね、なっとくなっとく」

「分かる分かる、うんうん」

うなづきながら同意の意思を示す。
『ソシャゲ』はちょっとやっただけなので、本当はあんまり分かってない。
だって、それ以外に興味の対象になるものが多すぎるから。
まあ、当たりが出たら嬉しいってのは理解できるし。
懸賞とか福引とか宝くじとかと似たようなもんでしょ、たぶん。

「ありがと」

その表情に、邪気の感じられない屈託のない笑いが浮かぶ。

「なんていうか、色んな色が好きだから」

「色がたくさんあるといいなって思ってさ」

345 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/11/01(水) 19:29:47
>>344

「ベ、『ベル姉』……。
 ふふふッ、懐かしいなぁぁ。
 『獅子損損ポジャパン』ちゃんにも、
 昔そんな風に呼ばれてたなぁ…。

 『mixi』時代にファンですってメールくれて…、
 そこから『オフ会』で意気投合して、
 絵や同人のイロハを教えてあげて一緒に『イベント』行って…」

             「楽しかったなぁ」

――ダンッ!

顔をくしゃりと歪め、
腰掛けているベンチの背もたれを拳で叩く。

「なのに、あのクソオタク女!
 絵を覚えてチヤホヤされ初めた途端に、
 私の『ツイッター』と『pixiv』のフォロー外しやがってッ!
 今期の流行りものをいっちょかみするわっ!
 大手には尻尾をきゃんきゃん振るわっ!
 私の絵をまんまトレスして、私より『いいね』を貰うわっ!
 ふざけんじゃねェーッつの!!!私は踏台かっ!?なァ!!!!」

「毎日、毎日スパム報告して、
 この間、とうとう『凍結』に追い込んでやったわッ!
 ざまあみろだよッ!…フヒ、フヒッ オエッフヒヒィ」

ドンッ  ドンッ  ドンッ

横に座る夢見ヶ崎の事などお構いなしに、
ベンチを小刻みに叩き、気味の悪い笑みを浮かべる。
だが、直に表情を戻し――

     ミナセ  ルミコ
「本名は『水瀬 留美子』って言います。
 水曜日の『水』に浅瀬の『瀬』、『留』まる『美』しい『子』。
 『ベル姉』でも『水瀬』でも『留美子さん』でも好きに呼んでよ。
 あんたと同じで『色々』な『色』があるのよ私にも」

346 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/11/01(水) 21:47:24
>>345

再び暴れ始める水瀬に文句を言うわけでもなだめるでもなく、ただじっと見つめる。
その様子をよく観察するためだ。
目が見えなかった自分にとって、見たことのないものというのは人よりも多い。
どんなものであれ、それが見たことがないものであれば興味を引かれる対象になる。
今、隣にいる水瀬留美子も例外ではない。

「イイ名前じゃん」

「じゃ、ミナセさん」

ホントはもっとひねった名前で呼んでみたかったけど仕方なく妥協した。
またボーソーされたら困るし。
ベツに私はいいけど、周囲への配慮というヤツだ。

「なんつーかさ――」

「ウチらって、わりと似てるとこある気がするかも」

「たまたま隣に座っただけのヒトに、こんなこと言うのもヘンな話だけど」

「ま、気にしないで」

「なんとなくそう思っただけだから」

その言葉には二つの意味が含まれていた。
一つは人間としてという意味。
ほんの少し会話しただけの知人ですらない相手だが、
心の奥底に横たわる闇とその中で輝きを放つ一筋の光が感じられた。
もう一つはスタンド使いなのではないかという感覚だ。
この水瀬留美子という女性から漂う『奇妙な雰囲気』に、
どことなく『非日常の力』の匂いを感じ取った。
もちろん、これはただの勘でしかないし、確かめるつもりもない。
なんの根拠もなく何となくそう思ったことを口にしただけのことだ。

347 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/11/01(水) 22:23:48
>>346

  「似てる?」

  「アタイとあんたが?」

  「フヒッ」

目を細め、意味深な事を口にする『星見ヶ崎』に
「何言ってんだこいつ」って視線を向ける。
その傍らに――

               『パミィーッ』
     ズギュン

子供程の背丈の人型スタンドを発現する。
スタンドは濁水で人を象ったような容貌をしており、
その臀部にはドラゴンボールで『セル』が生やしていたものに
酷似した全長1m程の『尻尾』が生えており、所在なさげに宙で畝っている。

「アタイって言っちゃったけど、
 今時アタイはねーよな。ヒヒヒ。

 アタシがあんたみたいな二次元美少女とそっくりだってなら
 めっちゃ張り切ってコスプレして『インスタ』しまくるっての」

348 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/11/01(水) 23:26:52
>>347

            チチチチチ……

木立の向こうで鳥が鳴く。
なんてことのない穏やかな日常の風景。
そんな中に出現した非日常の異形。

「いいや、そうでもないね」

「今、思ったわ――」

「私のカンも捨てたもんじゃないってさ」

水瀬留美子に向けていた視線が、その傍らに発現した『ブラックボトム・ストンプ』に移る。
サングラスの奥の瞳を細めて、その特徴的な姿を観察する。
そして――。

  『 L(エル) 』 『 I(アイ) 』 『 G(ジー) 』 『 H(エイチ) 』 『 T(ティー) 』

水瀬の隣に座る夢見ヶ崎の更に隣に、人型のスタンドが姿を現した。
男とも女ともつかない無機質な声で、傷のついたレコードのように、
途切れ途切れに『一つの単語』を呟いている。
その両目は閉じられており、両手には『医療用メス』を思わせる形状の鋭利な爪が伸びていた。

「――どうよ」

「『似てる』でしょ」

片手を軽く上げると同時に、人型スタンドも同じ動作で片手を上げる。
付け爪のある指とメス状の鋭い爪のある指が重なる。

「顔をウリにできるほどイケてるとは思ったことなかったなぁ」

「自分の顔、見たことなかったから」

349 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/11/01(水) 23:38:33
>>348


「…」


   「ああ〜ッ」  

夢見ヶ崎の傍らに現れた『医療従事者』を思わせる人型と、
そして自らの分身を見比べ、
少しの間を置き、思わず口をあんぐりと開く。


            「”?!”」
「ぎィえッ!
 私だけに目覚めたものだと思ってたのにッ!
 朝起きて、とうとう『中二病』拗らせて幻覚見始めたと思って、
 30年生きてきて、すげー勢いでやべー焦ったのにッ!」

          「て、てか!!」

「あ、あんた、それッ!ペル、
 フヒッ!ゴホンッ!あんたも、ペペペペ!
           ――『ペルソナ』ぁぁ!?」

350 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/11/02(木) 00:07:16
>>349

「え?寝言は寝てから言うもんでしょ?」

水瀬に対して辛辣な突っ込みを入れる。
そう言いながらも、彼女の反応には新鮮さを感じた。
今まで会ったことがあるスタンド使いなんて、まだちょっとしかいないけど。

「ベツに誰がどう呼ぼうがジユーだと思うけど――」

「持ってるヒトの間じゃ、『スタンド』っていうらしいよ」

「『これ』とか『それ』とか」

『ブラックボトム・ストンプ』と『ドクター・ブラインド』を交互に指差す。

「名前を教えたんだし、ついでだから『そっち』の名前も教えてよ」

「私のは『ドクター・ブラインド』」

「サイコーにクールでマジ超イケてる私のバディ」

351 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/11/02(木) 00:21:31
>>350

「ンゴ」


辛辣な突っ込みを受け、
思わず変な声を漏らした。


「『ス』『タ』『ン』『ド』――。
         へ、へぇ〜…」

「そういう『ルール』が既にあるって事は、
 もしかしてクソみたいに人気のない『地下アイドル』のライブに
 足繁く通うオタクの常連客連中程度には、
 その、『スタンド使い』っていうのがいるのかな…」


            『パミッ!パミッ!』

死にかけのセミの様な呻き声を漏らす、
自身の醜悪な一面を顕在化した自分自身と、
夢見ヶ原の『スタンド』を見比べると、ため息を漏らす。

「これは、なんだっけ。
 ああ、そうだ。『ブラックボトム・スタンプ』って名前。
 まだ、どうにも名前がパッと出てこないんだけど」

「やっぱ明日美氏の『スタンド』の方が、格好いいわね。
 『トレード』機能とか実装されてないのかしら」

352 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/11/02(木) 00:43:00
>>351

「まあ、私とミナセさんだけじゃないことは確かねー」

「私も何人か会ったことあるし」

「もうすぐメジャーデビューするインディーズバンドの取り巻きくらいの数はいるんじゃない、たぶん」

なんとなくだが、この町だけでも探せば結構いるだろうと思う。
私が持ってるんだから、他のヒトだって持ってるでしょ。
夢見ヶ崎はそんな風に考えている。

「そお?」

「私は結構かわいいと思う」

「この尻尾とかチャーミングだし」

興味深そうに、『ブラックボトム・ストンプ』の尻尾を眺める。
純粋な人型である自分のスタンドにはないものだ。
どのような機能を果たしているのだろうかと好奇心が湧く。

353 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/11/02(木) 23:00:37
>>352

「メジャーデビュー間近のインディーズって
 億が一、売れた場合にも『方向性』が違うって、
 その世界にどっぷり浸かってる、
 バカで無駄に歳食った古参のバンギャが発狂する奴じゃねーのぉ!

 『みかたん@3日目C-21』さんも、
 カラオケで『嘘』と『モノクロのキス』を歌われると、
 そのオタク女をブチ殺したくなるって言ってたわ」


   ウネッ ウネッ

           スッ

夢見ヶ崎の視線が『ブラックボトム・ストンプ』の『尻尾』に、
注がれている事に気付き、その動きをすっと止めさせる。

「「『切り札』は先に見せるな」
 って私の『初恋の人』がドヤ顔で語ってた フヒッ。
 ん、ん〜ッ、と言っても何が出来るか、って私が知らないんだけど」

354 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/11/02(木) 23:35:06
>>353

「どーでもいいんだけどさ、『数』の話をしてるんじゃなかったの?」

「ま、とにかく分かりにくいけど結構たくさんいるってことだよ」

「たまたま隣に座ったウチらが持ってるみたいにね」

ふと『ブラックボトム・ストンプ』の尻尾が止まる。
それを見て、クスッと笑った。
ほんの少し、いたずらっぽい笑み。

「それってさ――」

「『そこ』に秘密があるって考えていいんだよねえ?」

「ただのカンだけど」

     スッ

『ドクター・ブラインド』が、手術前の執刀医のように両手を掲げる。
両手にあるのはメスではなく爪だ。
これは逆に『ブラックボトム・ストンプ』にはない部分だろう。

「まあ、私のも似たようなもんかもね」

「別に、『ここ』に秘密があるとは言ってないけどさ」

そう言って軽く笑う。

「何ができるか知っとくと普段の生活で役に立つかもよ」

「私もちょくちょく使ってるし」

355 水瀬 留美子『ブラックボトム・ストンプ』 :2017/11/03(金) 11:14:15
>>354

 「フヒヒッ」


「そうね、造形は必然性。
 ゲームのボスってやたら触手を生やしたり、
 別に飛びもしないのに背中に何枚も翼を生やしたり、
 そういう機能美と造形美を両立できていないものが、大嫌いッ!

 『ブラックボトム・ストンプ』が私の頭の中の友達だっていうなら、
 この『尻尾』にも何かしら意味がある筈。明日美氏の『爪』と同様にね
 ――まッ!いいでしょう!!」

腕時計で時刻を確認すると、
ベンチから立ち上がる。

「帰ろうッ。
 これから無数の『いいね』と『リツイート』が、
 私の『承認欲求』を満たそうと油田の様に噴流するのフヒヒッ」

356 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2017/11/03(金) 21:23:24
>>355

「んじゃ、ばいばい」

「またどっかでばったり会うこともあるかもね」

「スタンドを持ってるヒト同士は会いやすいんだってさ」

ひらひらと手を振って水瀬を見送る。
もし会ったら、その時は『ミッちゃん』ってよぼっかな。
それとも『ルーミン』の方がいい?
またなんかのスイッチ入っちゃうかもしれないけど。
ま、その時はその時ってことで。

「――私って、好奇心が強いから」

一人になり、ぽつりと呟く。

「次は、その『秘密』も見せてもらおっかな」

「『アリス』の名にかけて――ってね」

森の近くに出かけたアリスは、一人の変わった女の人と出会いました。
その人とお喋りしたアリスは、自分とその人が似ていることを知りました。
なぜなら、その女の人は、長い尻尾を持つ『友達』を連れていたからです。

今日のお話はここまで。
次のお話は、また今度――。

357 石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』 :2017/11/04(土) 23:27:16
スィ〜
   スィ〜
      スィ〜

秋深い10月の湖水を、男子が背泳ぎで泳いでいる。

『寒中水泳』だ!

「フィ〜やっぱり、水はいい……俺の頭をクールにしてくれる。」

358 石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』 :2017/11/04(土) 23:27:34
age

359 硯 研一郎『RXオーバードライブ』 :2017/11/05(日) 20:33:10
>>357
「やはり、『ポッポー』は良いな。
まさか『ドクターイエロー』を見えるとは、僥倖だ」

伸びっぱなしの金髪に耳にピアスをびっしりとつけた男子高校生が、
樹木に腰を預け、手にしたデジカメの画面を覗き込んで、
撮影した写真を吟味してる。

「見れば幸せに」
「…」「!!」

そこでこの11月の寒空の下、
寒中水泳をしている男子中学生の存在に気付いた。

360 石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』 :2017/11/05(日) 20:55:23
>>359
「むっ、盗撮の気配……!」
盗撮の気配を感じた。

「ならばやることは一つ……!」



シンクロッ!

 ヾ/       ズッ
~~~|~~~
 ●┘


ナイズドッ!

 ヾ●/       ザッ
~~~~/~~~
 ┘|


スイミングッ!

  V
●■\    ザパァッ!
    ヾ
~~~~~~~~~

とりあえず技術美を見せつけた。

361 硯 研一郎『RXオーバードライブ』 :2017/11/05(日) 21:10:29
>>360
だが金髪の男子高校生は、既にデジカメを降ろし、
無表情のまま石動のシンクロを眺めていた。


「今は『11月』だ。
 学校側が危険だからという理由で運動会で組み体操を行わないこのご時勢に、
 自主的に寒中水泳を行っているとは。
 ひょっとして、君は気が狂っているのかい」

「それともこの近くにスパルタな『フリースクール』でもあるのかい」

362 石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』 :2017/11/05(日) 21:17:37
>>361
ザパッザパッ……声をかけると泳いで近づいてきた。

「ハハッ、気が狂ってるはひでぇなぁ……」

「俺は水が好き。それだけさ。季節なんて関係ないね。」

「まぁ、ちょっとした『能力』で、寒さとか通じねーってのはある、が。」

363 硯 研一郎『RXオーバードライブ』 :2017/11/05(日) 21:30:53
>>362
「それはやせ我慢じゃあないのかい。
 もしくは、『気』ではなく『交感神経』が狂ってるか、だ。
 一度お医者さんに行って、診察してもらうといい」

「なあに」「恥かしいかもしれないが、
      行っておいて損はない筈だ」


バリッ 「…」 ボリッ 「…」 ボリッ 「…」 ボリィッ!


学生カバンにデジカメを仕舞い、
代わりに真空パックに包装された沢庵の1本漬けを取り出し、
包装を剥がすと、水上がりの石動を眺めながら無言で、
スナック菓子感覚で漬物を食べ始める。

「君はひょっとして水泳部か何かなのかい。
 練習したいのなら、あっちの方に冬季も開放している温水プールがあったが。
 そこじゃあ駄目なのかい」「あ」

「もしかして、『温水』は温いから『水』じゃあなく『湯』って、
 自分ルールだったりするのかな」

364 石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』 :2017/11/05(日) 21:50:45
>>363
「『お医者さん』ねぇ……」

「まぁ、医者というか、『ある所』で心の声を聴いてもらってからなんだが、深くは突っ込んでくれるなよ。
 ポケモンの『海パンやろう』みてーなもんだ。」

「お、いいね、その沢庵。自家製?」

「泳いだら腹が減ったな……ちょっと荷物取ってくるか。」

ブゥン……海パン少年の傍らに人魚型のスタンドが浮かび上がる。

    人魚型のスタンド『オオオッ……』

365 硯 研一郎『RXオーバードライブ』 :2017/11/05(日) 21:59:32
>>364
「近所のスーパーで買ってきた
 『ボリッ』もの『バリッ』だ『ボリッ』が『バリ』」

         >『オオオッ……』

石動の傍らに発露した人魚型のスタンドを一瞥、
特に表情を変える事はない。

「君は荷物を取る為だけに、
 その、ス……なんだっけ。まあ、いいか。
 その『アレ』を使うのかい。随分と物臭なんだな。
 朝、お母さんに起こして貰っておいて、
 「ババア!なんでもっと早く起こさなかったんだよ!」っと逆ギレするタイプと見た」

366 石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』 :2017/11/05(日) 22:17:44
>>365
「キレねー、って。
 うちの母ちゃん、いつもニコニコしてるけど怒るとコエーからな」

「ったく、君の中で俺はどんだけ『狂犬』なんだよ……。」

「荷物は盗まれねーよーに、『上』に置いてあるのさ。」

    人魚型のスタンド『オオオッ……』

    人魚型のスタンドが一泣きすると『涙の泡』が飛び、樹上に向かい……

    バキン! …… ドサッ!

    カバンが落ちてきた。

「な?」

367 硯 研一郎『RXオーバードライブ』 :2017/11/05(日) 22:30:26
>>366
「な?」

スタンドを使い、木の上の荷物を取る石動。
そんな彼の挙動を眺め、鼻の頭に指を添え、考え込む仕草をする。
(既に漬物は食べ終えた)


               「!!」

               「わかった。
                成る程、理解できた」

「君はもしかして――『中二病』ってやつかい?
普段から、例えば学校の教室でもこれ見よがしに『それ』をそんな風に使ってるのかい。
俺は、『それ』が見えるし使えるから『そんな風』に『アレ』したい気持ちはわかるが、
『それ』が見えない同級生からしたら、
君はかなりの『奇行種』に思われてしまうんじゃあないかな」

368 石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』 :2017/11/05(日) 22:38:24
>>367
「中二病の奇行種って……
 面と向かって言うことか、それ……
 せめてマイペースとかそういう、さぁ……」

「はぁ……」

「ミニ羊羹食べる?」

モキュモキュ……カバンからミニ羊羹を取り出して、食べている。

369 硯 研一郎『RXオーバードライブ』 :2017/11/05(日) 23:02:03
>>368
「俺の町内では寝転びながらスマホで『youtube』を観る感覚で、
『それ』を使う人をマイペースと形容した実例はないんだ。
俺はスマホも持ってないし、パソコンも人差し指で打つレベルだから、
人に頼まなければyoutubeを観れないがね」

カバンを漁り和菓子をたべる石動を眺める。
差し出されたのならば丁重にお断りする。

「しょっぱい物を食べたし、甘い物も欲しい。
甘いものを食べたし、しょっぱい物も欲しい。
ってなるから、遠慮しておくよ」
「しかし」「アレだな」

「『マイメン』の『斑鳩』の『翔』ちゃんに初めて遭った時も、
彼の持っていたアメリカンドッグを勧められたよ。
純粋な『好意』からくれたってのはわかってるんだが、
ひょっとして俺は『物乞い』か何かに見えるのかい」

370 石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』 :2017/11/06(月) 18:30:39
>>369
「よくわからんが考えすぎじゃないかな。そんなに深い意味はないと思うぜ。」

「それじゃ俺は着替えてくるんで、チョイとおさらばな。」
スササと茂みに隠れていった。

「覗くなよ。」

371 硯 研一郎『RXオーバードライブ』 :2017/11/06(月) 23:14:32
>>970
「覗かないさ。
 覗きはバレた時に最高に恰好が悪いじゃあないか」

  カパッ

手首に巻いた時計で時刻を確認する。
そろそろ帰らなければいけない時間だ。

「それじゃあ、俺は行くさ。
 しかし、君といい翔ちゃんと良い、
 『それ』を持っている人達は随分と『個性的』だ。
 俺なんかより、ずっと。ずっと」

茂みで着替える石動に言葉をかけ、
帰路へとついた。

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373 有栖川 絢子『ワールド・ウィズアウト・ヒーローズ』 :2017/11/27(月) 21:58:26
ある日の夕方。
自然公園の木製のベンチに、紺色のセーラー服を来た一人の少女が座っていた。

「……」

髪は前下がりのボブカットで、良く見れば微かに茶色がかかっている。
首からは黒いヘッドホンをかけ手には参考書を持ち、
それを無感情な瞳で読み解き続けていた。


「……そう簡単には、変わらないか」

参考書を読みながら突く溜息。

『力』を得てから数日がった。
それからという物、彼女は下校時刻から塾へ行くまでの間
こうして外を徘徊している。

『何か』が変わる事、或いは起こる事を望んで。

それでもいつも手放す事の無かった『参考書』と『ヘッドホン』は持ち歩いている。
彼女自身も、結局何も変わらずに生活しているのだ。


彼女が望む『ラスボス』への道はまだまだ遠いらしい。

374 有栖川 絢子『ワールド・ウィズアウト・ヒーローズ』 :2017/11/27(月) 23:04:25
「今日はこれぐらいかな」

参考書を学生鞄に仕舞い、木製のベンチから立つ。

「やっぱり、『力』をもっと積極的に使う必要があるのかしらね」

『レプラコーン』を使えばちょっとした騒ぎくらいは起こせるだろう。

そうすれば、『何か』は起こるか。

「……ま、もう少し気長に待ってみましょうか!」

少しだけ楽しげに笑うと、去っていく。

375 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2017/12/08(金) 23:16:52

これといった目的もなく、ただ何の気なしに自然公園へやって来た。
湖の側まで歩き、どさりと胡坐をかく。
やや気だるげな視線が、静かな湖面に注がれる。

「――湖の近くで『水死』を味わう」

誰に言うでもなく、ポツリと呟いた。
周囲に人気はない。
いつの間にか、その手の中にリボルバー拳銃が握られている。
自身のスタンドである『スウィート・ダーウィン』だ。
腕を上げ、銃口を自分のこめかみに突きつける。

「それもオツなもんかもしれねえな」

躊躇することなく引き金を引き絞り、発砲する。
銃声と共に、一発の弾丸が発射された。
当然の帰結として、それは自分の頭に撃ち込まれる。

「う、ぐ――」

「ぐ、がが……!」

「が……あッ……!!」

水没による窒息死を再現した『偽死弾』。
その効果により、まるで本当に溺れているかのように、酸素を求めてもがき苦しむ。
もちろん本当に溺れているわけではないが、本人にとっては実際に溺れているのと同じことだ。
深く暗い水底に引きずり込まれ、確実に死が間近に迫る。
そして、死ぬ直前で能力は解除され、死の幻は跡形もなく消え失せた。

「……かぁ――ッ」

強い酒を一気に呷った時のような声を上げ、草の上に寝転がる。
俺は酒よりも、こいつの方が好きだ。
酒は止められても、『スリル』を味わうのは止められそうにない。

「――たまんねえぜ」

未だ手の中にある『スウィート・ダーウィン』を眺める。
こいつが与えてくれる刺激は、どんな女よりも『スウィート(素敵)』だ。
やがて、一呼吸と共に、『スウィート・ダーウィン』を解除する。

376 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2017/12/14(木) 23:19:04
>>375

白い肌、青い眼鏡、桜色の目。
それ以外は長い髪含め、黒ばかりの――
西洋人形のような顔つきの少女、稗田恋姫。

「うわっ…………」

が、離れたところでそれを見ていた――――
といっても、『水死』から、『蘇るまで』であり、
銃のスタンドの『能力』にまでは気づけない。

(あれ……スタンド使いか?
 何してんだ…………『酔っ払い』か?)

          ジト

(ゲームオーバー感あるな……ちかよらんとこ)

             ザッ
                  ザッ

こういう場合よくある事だが、
相手は見られている事に気付いているものだ。

・・・恋姫は『ヒく』あまりそういう可能性に行きついていないが。

377 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2017/12/15(金) 00:26:36
>>376

「いや、違うな――」

「俺は酔っ払いじゃあねえぜ」

ゆっくりとした動きで、草の上から体を起こす。
まるで少女の心を読んだかのような言葉と共に。
実際は単なる当てずっぽうだが。

「半分は正解だな」

「だが、酔ってるってのは酒に――じゃあねえ」

「もっと別のもんさ」

見てた、か。
まあ、だからどうってこともないんだが。
こんな場所で『死んでる』俺が悪いんだからな。

「――分かるか?」

だが、少しばかり興味が湧いた。
『あれ』を見て驚きはしても、さほど動揺はしていない少女に対してだ。
単なるカンだが、ひょっとすると――ひょっとするかもな。

378 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2017/12/15(金) 01:22:03
>>377

           ビクッ

「っ…………!?
 えひ……なに、電波でも受信してた?」

思わず背が跳ねた。
流石にこうなれば知らんぷりもしづらい。

恋姫は足を止めて、言葉を返す。

「……それともぉ、『3D酔い』とか……?」

(……やばい、スルー安定だったかも。
 でも、急に話しかけられたら……
 反応するだろ、常識的に考えて……)

               タジ

不気味だと思った――少し退き気味に話す。
もしかすると本当にアブないかもしれないから。

「僕……あー、『PSY』とか『霊感』とかないから、
 全然わかんないんだけど……答えはくれるの?」

      「……『拳で教えてやるぜ』とかはNGで」

   ズ
      ズ

傍らには――――『青い焔』に包まれた、
ペスト医師のようなのヴィジョンが浮かぶ。

異様な状況に、警戒している……冬の風が汗を冷やす。

379 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2017/12/15(金) 01:59:51
>>378

「なるほどな」

特に警戒している様子もなく、少女の傍らに出現したスタンドを見やる。
やはり俺と同じように、持ってる奴だったらしいな。
そして、人型――この前に見たのと似たタイプか。

「――拳で教えるか。ハハハ、そいつは面白いな」

「それなら――『銃で教える』ってのはどうだい?」

上体だけを起こした姿勢のまま、手の中に『リボルバー拳銃』のスタンドが発現する。
ただ出しただけであり、銃口は向けていない。
しかし、それでも緊迫した空気が流れているのを肌で感じる。

同時に、今にも争いが起こりそうな強い緊張感を感じる。
『スリル』――俺にとっては心地良い感覚だ。
しかし、このまま続けていたら、マジのやり合いが始まっちまいそうだ。

「いや、すまん」

「冗談だ。危害を加えるつもりはねえよ」

「勘弁してくれ」

争いになる前に『スウィート・ダーウィン』を消して謝罪の言葉を口にする。
両手を上に上げるジェスチャーをして見せながら。
敵意がないことを示すためだが、どう受け取るかは相手次第だ。

「いきなり呼び止めて悪かったな」

そう言って、再び草原に寝転がる。
先程の『答え』を言わないまま――。
勿論、わざとだ。

380 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2017/12/15(金) 22:26:52
>>379

「…………やっぱスタンド使いかよぉ」

「くそ、ヤル気満々じゃん……
 でも……銃じゃ僕には勝てないぜ……
 僕は『シューティングゲーマー』だからな」

               キュイィィィィ

(最悪だ……とりあえず逃げるべきだ、
 だけど……『銃』背中向けるのは――――)

     ィィィン ・ ・ ・

一度はスタンドの両手に『青白い光球』が浮かんだ。
それが萎むように消えていったのは、銃が消えたから。

             「…………えひ」

「悪い冗談だぜ……『暴れてた』のも冗談?
 心が読めるのも……? どこまでマジなの……」

陰気だが、緩んだ笑みを浮かべた。
スタンドは解除しないが、両手を下げる。

そして本体も、小さな歩幅で数歩歩み寄る。
警戒は解けないけど、今すぐ逃げ去るような気分でもない。

381 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2017/12/15(金) 23:40:13
>>380

「ハハハ――」

「両手を頭の上に乗せて地面に膝をついた方が良かったか?」

「『フリーズ』って言われた時には、そうするのがお決まりだからな」

寝転んだまま、軽い調子で言葉を返す。
しかし、今の言葉――ヴィジョンは違えど、俺と同じように飛び道具が使えるのか?
察するに、あの『光球』が『銃弾』代わりなんだろう。
同じ飛び道具を使うスタンド使いとしては、どんな物か見てみたい気はするな。
だがまあ、今は止めておくか。

「何も心が読めるわけじゃねえさ。
 ただ、俺がアンタの立場だったら、『酔っ払いか?』って考えるだろうなって思っただけだ」

「それから、別に暴れてたわけでもねえな。正確に言うと、もがいてたんだ」

「あとちょっとで『死ぬ一歩手前』でな」
 
「デッドラインギリギリの『スリル』を味わってたのさ」

「――それが、さっきの答えだ」

少女の動きに大きな反応を示すことなく、淡々とした口調で語る。
相手はスタンドを出していて、自分は出していないという状況だが、特に警戒はしていない。
こちらから手出ししない限り、向こうから仕掛けてくることもないだろう。
この少女は、攻撃される前から攻撃してくるタイプには見えない。
そうでなければ、とっくに攻撃されている筈だ。

382 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2017/12/16(土) 00:17:13
>>381

「…………えひ。
 戦争ゲームじゃないんだから」

そこまで大袈裟なポーズはいらないし、
スタンド使いならポーズじゃ判断出来ない。
なんにせよ、戦わずに済んでよかった。
戦争ゲームじゃないんだから。

「……頭脳派っぽいこと言ってる。
 というか……『ギャンブラー』系?」

分析力はすごい。
しかし言ってる事はもっと、すごい。

「スリル……『VRの高所体験』とか好きそう。
 一回やったけど、ほんとに落ちるかと思ったぜ。
 足元が床だってわかってても……まじで怖い」

        チラ

           「……そういう『能力』?」

向けられていた銃に視線を遣る。
『死にかけるスリル』を体験するにはお誂え向きの形。

「それとも……えひ、銃だから……
 『1人ロシアンルーレット』でもしてたか?」

    「もしそうなら超ハード超えてルナティックぅ……」

383 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2017/12/16(土) 00:49:18
>>382

「ああ、ギャンブルは嫌いじゃねえな」

「『スリル』が味わえるものは大歓迎だ」

「ついでに言うと――『これ』も好きだ」

ゴソゴソとポケットを漁り、小箱を取り出す。
遠目からだとタバコの箱にも見えるが、実際はキャラメルの箱だ。

「こう見えても甘党なんでね」

そう言って一粒のキャラメルを取り出して、口の中に放り込む。

「そういう能力かどうか――そいつは想像に任せるぜ」

「ただ、俺にとっちゃあ『うってつけ』の能力だってことは間違いないな」

これじゃあ答えを言ってるようなもんか。
まあ、ここまで話せば薄々は気付かれてるだろう。
どっちにしても似たようなもんだ。

「ハハハ、『一人ロシアンルーレット』か。
 『何発目で死ぬか』予想してみるってのも面白いかもな」

「だが、マジで死んじまったら意味がねえ。
 死んだら二度と『スリル』を味わえなくなる」

「俺は『自殺志願者』じゃねえからな」

自分でもイカれてるという自覚はある。
だからといって、『自覚があるから自分はマトモだ』とも思わないが。

384 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2017/12/16(土) 01:26:43
>>383

「…………まあ、僕も能力ネタバレする気はないから。
 そこんとこは『おあいこ』ってことでひとつ…………」

想像はつかないでもないし。
当たってても外れてても、それこそ命に別状はない。

「頭使うと甘い物欲しくなるって言うし、
 マンガの頭脳派って甘党な印象あるよ……」

「あと、サイコキャラとかも……?」

小さく首をかしげて、陰気な笑みを深めた。

自分は甘い物はそんなに好きでもない。
もちろん、嫌いじゃない甘い物もいくらかはあるけど。

「まあ……お前はサイコとかじゃないみたいだけど。
 スタンド使いってやべーやつも結構いるから……安心したぜ」

「これ、『デレ』とかじゃないから、勘違いしないでよね……えひ」

                 トコ  トコ

話しやすいように、もう数歩だけ近付いた。
話せる相手だと思ったし、『話して面白くない』相手でもないと思ったから。

                 ・・・『仲良くなれそう』、とかではない。

385 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2017/12/16(土) 01:52:04
>>384

「ハハハ」

「そりゃあ、こんなスタンドが現れるくらいだからな。
 どっかイカれてるのは確かだろうよ」
 
「だが、自分が見境なしのサイコ野郎だとは思わねえさ」

「――アンタもヤバい奴じゃあないようだな」

少女の方を見て口元を歪めて笑う。
まあ、俺みたいなのと一緒にされちゃあ不愉快かもしれないが。

「能力は明かさないが、名前くらいは教えられるぜ」

「俺は花菱蓮華だ。仲間内からは蓮華って呼ばれてるが、好きに呼んでくれ」

「――アンタは?言いたくなけりゃ言わなくても構わないがな」

少し前に出会ったスタンド使いは『アンジェ』と言った。
その前は『フラン』とかいう奴にも会ったな。
まさか今度は『エリザベス』なんてことはねえだろうが。

386 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2017/12/16(土) 02:22:56
>>385

「僕も……中二病なのかもしれんけど、
 自分が『サイコ』だとは思った事ないかな……」

             ボウ…

傍らのスタンドが揺らいで消えた。
ペスト医師の仮面。青い焔。

スタンドが『人格』にかかわるなら、
年相応に『患ってる』面はあるに違いない。

「僕も……まあ、名前くらいならいいか。
 稗田(ひえだ)。 ……恋姫(れんひめ)。
 呼び捨てでいいぜ……敬語とかめんどいし」

だが――――自分のスタンドは好きだ。
それは見た目も、能力も。己の半身。

「……慣れてるっぽけど、上級者な感じなの?
 スタンド……なんか、えひ、『こういうやり取り』も」

          「漫画っぽいよね。今更だけど……」

さすがに恋姫にとってスタンドはもう非日常じゃないが、
目の前の男――蓮華も慣れた様子に見えて、気になった。

この町はスタンド使いが多い。いつ頃からでも不思議はないけど。

387 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2017/12/16(土) 02:48:46
>>386

「いや、そうでもねえさ」

「俺がスタンドを持つようになったのは最近になってからだ」

「恋姫がそうじゃないなら、俺の方が『この手の経験』は少ないだろうな」

風が吹き、燃えるような赤い髪が左右に揺れる。
その様は、炎が揺らめいているようにも見える。
内に存在する強い意志――危険なスリルを求める心を象徴するような色だ。

「自分の能力を自覚した時、不思議と納得がいった」

「道理で俺はおかしい訳だ――ってな」

「そして、俺が持ってるんなら他にも持ってる奴がいるだろうと思った」

「実際、こうして目の前にもいる訳だしな」

「慣れてるわけじゃあない。ただ、ある物を受け入れてるってだけの事さ」

あるものをあるがまま受け入れる。
それが自分のスタンスであり、スタンドに対してもそれは同様だ。
もっとも、スタンドが奇妙なものだと思わないわけではないが。

388 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2017/12/16(土) 03:10:12
>>387

「僕は……まあ、一応それなりに。
 最近ってわけじゃないかな……」

     「……『中級者』ってとこ」

風は恋姫の髪も揺らした。
黒い、人形のような髪だが、
黒は象徴するものが多すぎた。

そのどれだけが恋姫なのかは分からず、
瞳の桜色も今は、ただその色で灯っている。

「えひ……でも、人生はお前のが、
 プレイ時間長そうだし……そこの差かな」

自分は――――落ち着けなかった。

有体に言えば酔っていたのだろう。
自分に眠っていた力に。あるいは『肯定感』に。
それを醒ましたのは大きな経験ではなく、小さな積み重ね。

「ある物を受け入れるって、結構むずいし……」
 
いろんなものが目の前にはあるとして。
どこまでが自分の物かは、なかなか分からないものだ。

・・・呟いた恋姫は、少し下がった。話が止んだ、気がしたから。

389 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2017/12/16(土) 03:28:37
>>388

「まあ、大方そんな所だろうな」

「俺も、そう長く生きてるわけじゃねえから、あんまり偉そうな事は言えないが」

「スタンド使いとしては恋姫の方がキャリアが長いんなら、ここは引き分けって事にしとくか?」

冗談めかしてニヤリと笑う。
そして、不意に少女から視線を外し、湖の方を見やった。
少女が来る前と同じように、そのまま湖面を見つめる。

「――そういえば、ここを通り過ぎる所だったよな」

ふと思い出したように、ぽつりと呟く。

「調子に乗って、つい長く引き止めちまった」

「無駄話に付き合ってくれてありがとよ」

挨拶らしき言葉を口にし、軽く片手を振ってみせる。
このまま通り過ぎて問題なさそうだ。

390 稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』 :2017/12/16(土) 14:16:49
>>389

      「……ああ、うん」

「引き分けだな。えひ。再戦もいいけど」

    ニタ

「そろそろ行こうと思ってたとこだった……
 『リベンジマッチ』は、また今度にしよう」

暗い喜びの笑みが浮かんだ。
明るい笑みじゃないが、嫌な気分ではない。

「えひ…………止まったのは僕だし。
 無駄話にしてはけっこうおもしろかったぜ」

              トコ
                トコ

               「んじゃ、また……」

 ヒラ

小さく手を振り、あらためて――――その場を通り過ぎた。

391 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/06(火) 19:48:11

湖の畔に立つ大きな樹の根元に、誰かが座り込んでいる。
ブラウスとジャンパースカートの『アリス風ファッション』に身を包んだ少女だ。
頭に巻いたリボン代わりのスカーフと、カラフルなネイル、ブルーのサングラスがパンキッシュな雰囲気を漂わせる。

「数日前から、この近辺で目撃されたらしい未知の生物――『星見UMA』。
 その姿は目撃者によって様々であり、突然変異とも宇宙から来た生命体とも言われている」

「それを探し始めて、既に一週間……。
 また今日も収穫なしか……」
 
「くそ!!諦めないぞ!!
 見つけるまで粘ってやる!!!」

持参した双眼鏡を構えて、公園内の隅々にまで視線を走らせる。
何か変わったものはないだろうか。
内心、それを期待しているのだ。
今は、とにかく手がかりが欲しい。
それが謎に包まれた『星見UMA』発見への第一歩だ。

実際は単なるガセネタなのだが、本人は当然それを知る由もない。

392 七海 フランチェスカ『アクトレス』 :2018/02/11(日) 02:24:55
>>391

湖畔公園が特別好きだってこともないのだが、
ヒマな日に散歩に来るならここは都合がいい。

         ザッ
              ザッ

「?」

「お〜〜〜い・・・」

何してるのかな、と聞こうとしたけど、
そんなの必要ないくらいその少女は雄弁だった。

だから余計に興味がわいた。

         「にゃは」

「『待ちぼうけ』の歌って聴いたことある?
 まあ、ここに切り株はないわけだけど……
 止まってていい方向になるとは思えないよね。
 『探す』なら『脚』! ってのはもう終わった後〜?」

雪国のような服装の、金髪の女はそう捲し立てた。
猫のような顔は笑み一色で、寒さに僅かに朱が差していた。

「まだなら一緒にどう? アタシもUMAに興味あるよ」

             「キミと遊ぶのにもね。にゃは」

393 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/11(日) 19:39:44
>>392

「おっ」

「おっ、おっ?」

「――見つけた!!」

双眼鏡を構えたまま立ち上がり、声が聞こえた方向へ歩き出す。
進行方向には、たった今この場に現れた金髪の女の姿がある。
そのまま歩みを止めずに、前進を続けていく。

「長年に渡る調査の結果、ついに我々は謎に包まれた『星見UMA』と遭遇を果たしました!!
 ふむふむ、腕が二本で足が二本、頭があって胴体があって、まるでニンゲンみたいな……。
  
        ――ん?」

ぴたりと動きを止めると、ゆっくりと双眼鏡を下ろし、肉眼で相手の姿を確認する。
そして先程までとは一転して沈黙し、双眼鏡から手を離す。
紐で首からぶら下がっている双眼鏡が、胸元で音もなく揺れている。

「――って、おい!それ、人間じゃん!
 つまり、巷で噂の『UMA』の正体は、実は人間だった……!?
 いや、そんな夢のない話じゃ視聴者は納得させられないぞ!!」

今の気持ちを一通り喋ると、この謎の女に改めて向き直る。
謎の生物ではないが、謎の人物ではある。
心の奥にある好奇心がツンツン刺激されるのを感じる。

「そうだ!捜査の基本は脚にある!まだ私が駆け出しのデカだった頃、先輩刑事に教わった!!
 えーと、それでなんだっけ?ちょっと待って、のど渇いた」

肩に掛けている小さな鞄から小型のペットボトルを取り出してキャップを開ける。
中身はホットのレモンティーだ。
温かい液体が喉を通り、冷えた身体と渇いた身体を潤す。

「くっはー、ゴゾーロップに染み渡るぜ。
 で――今、ちょっと疲れたから休憩してたの!
 この一週間、ここら辺を歩き回ってるんだから」

「ところで誰だっけ?どっかで会ったことがあるような、ないような……。
 いや、やっぱりない?」

394 七海 フランチェスカ『アクトレス』 :2018/02/12(月) 00:43:28
>>393

「…………ウケる!」

女は破顔した。

          ニィ

「デジャヴってやつじゃあないかな?
 それとも、前世からの縁があるのかも。
 きっとキミは魔法の国のお姫様だったんだ。
 アタシはしがない吟遊詩人。身分違いの恋に苦しむ!」

            「キャー」

大袈裟な身振りで、羊のような手袋で顔を隠す。
すぐに手を下すと、ふざけた笑みを浮かべていた。

言葉にはからかうような響きがあったが、
どこまでが真剣で、どこまでが冗談なのか。

初対面ではあった。
だが、特に遠慮する気はなかった。

「あっそうだそうだ!アタシが『星見UMA』で〜
 人間の姿に擬態してるってのはどう?
 前に会った時は、ネコかイヌだったかな……」

両手を顔の横で、爪を構えるようなポーズ。
動物の真似なのだろう。手袋でよく分からないが。

            「なんちゃってね!」

「キミと会うのは初めてだよォ。多分だけどね。
 未知との遭遇って意味では、お互いUMAだよね〜」

そう言うと、木の下まで足を進めて、木肌に背を預けた。

395 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/12(月) 13:43:04
>>394

「ほうほう――」

「そうか!私は『ジュリエット』だったのか!
 ん?『ジュリエッタ』だっけ?いや、やっぱり『ジュリエット』?
 違うね!私は『アリス』だ!!」

「なるほど!ヘンシンするから見る人によって姿が変わる!
 道理で、あなたによく似た『猫』を見たことがあるわけだ!
 よし、謎は解けた!!ここで一旦CM入ります!」

矢継ぎ早に喋り続け、ようやく言葉を止める。
ノリのいい相手だと、こっちのお喋りにもハリが出る。
ついでに、私が年を取った後のお肌にもハリが出ると更に良し。

「あなたが『UMA』なら私も『UMA』。
 そう!実は私も『UMA』だった!
 何を隠そう、前に会った時は『白ウサギ』だったのだよ!」

さっき見せられたのと同じように、動物か何かのポーズを取る。
両手の爪には、色とりどりのネイルアートが施された長い付け爪が目立つ。
見た感じは、あまりウサギの爪らしくはない。

「はぁ――」

やがて、小さくため息をついて再び木の根元に座り込み、幹にもたれる。
青いレンズ越しの視線は、穏やかな湖面に向けられた。
水上をぷかぷかと漂う一本の小枝を、静かに見つめる。

「本当はいないのかなぁ、『星見UMA』」

「探しても、それっぽいの見当たらないし」

「ガセネタ掴まされちゃったかな」

今までの勢いとは打って変わって、ぽつりぽつりと呟くように語る。
その口調には、どこかセンチメンタルな響きがあった。
視線の先で、湖に舞い降りた一羽の小鳥が、小枝に止まる。

「でもさ、もしまだ私の見たことのない変わったものが近くにいるんだったら、すごく見たいって思うんだよね」

「だって、私は『アリス』だから」

396 七海 フランチェスカ『アクトレス』 :2018/02/12(月) 16:06:15
>>395

「んん〜、そういうことかもね〜」

笑顔だが、淡白な調子だった。

「ね、ね、手、寒くない?
 アタシは超寒いんだけど」

「冬ってフンイキは好きなんだけど、
 この寒さはいつになっても慣れないよね」

それから、彩られた爪に視線を走らせ、
座り込んだそれを追うように、自分もしゃがんだ。

「だからUMAも冬眠してるんじゃない?
 にゃは。チュパカブラとか、ネッシーとか、
 UMAってさァ、『変温動物』感半端ないじゃん」

それから白い息を吐いて、なんとなく小鳥を見た。

「それに、UMAである事がアイデンティティだろうし〜」

         「人前に出てくる事ってないのかもネ」

  クス

悪戯な笑みを浮かべて、
それから夢見ヶ崎に向き直る。

「でも、UMAは『不思議の国』のオバケとは違う。
 ネ。『未確認生物』だから。モンスターじゃないでしょ?
 今も毎年1万くらい、新しい生き物が見つかってるんだし」

「星見UMAってあだ名だったやつも、いつか見つかるカモね。
 それを見つけるのは〜、目の前のキミだ! ……なんちゃってね!」

なんちゃって。ともう一度付け加えたが、その声色に茶化す風はあまりなかった。
冗談の色は有ったので、まるきり真剣に『新発見』にこだわってもいないのだろうけど。

397 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/12(月) 20:13:59
>>396

「寒くないわけがない!でも私は手袋をしない!なぜなら爪が隠れるから!
 それが私にとっては寒さよりも重要!だから、私は寒さを我慢する代わりにポリシーを選ぶ!」

「でも風邪は引きたくないから、寒さ対策はしてるけど。
 ホラ、コレ。ポケットにカイロ入れてるから、時々手を入れておけばあったまれる」

そう言いながら、両方のポケットからカイロを取り出して見せる。
すぐにそれをポケットに戻し、同時に両手をポケットに突っ込んだ。
やはり寒かったらしい。

「わかるわかる。私も冬が似合う女って、よく言われるし。頭の中で」

小鳥は、ごく普通の姿をしていた。
変わった色をしているとか、変わった形をしているということはない。
よくある光景だ。

「そっかそっか、そうカモ。あ、あれってカモ?
 なわけねーか」

調子を取り戻した様子で、うんうんと頷きながら、小鳥を指差して適当なことを言う。
その時、木の上で小さな音がしたのが聞こえたかもしれない。
何か小さな動物が枝を揺らしたような音。

398 七海 フランチェスカ『アクトレス』 :2018/02/12(月) 22:57:58
>>397

「う〜ん、確かに凝ってるネイルだもんね。
 冬だからって隠すのはもったいないかァ、
 毛皮が無くて寒がる権利があるのが人間だもの」

       「にゃは」

              ガサ
                   ガサ

「どれどれ、アタシ鳥博士だから。
 あれは……『サンダーバード』の雛!
 北米のUMAで〜、雷を起こすんだって」

「って、UMAの話はもういいや。
 スズメも過大評価されちゃ困っちゃうよね〜」

           「いやオジロだったかな」

腕を伸ばし、カメラのよう手窓を除き込む。
品評もどこ吹く風、小鳥は小枝の上を歩く。

「鳥は良いよねェ、羽毛あるし。
 それに、空も飛べちゃうでしょ?
 アタシも羽毛布団着て出かけた〜い」

     ズギュン

「ムダな毛が全部羽毛になったらいいのにね〜」

            「冬限定!」

背中から浮き上がるように、『天使』の像が発現する。
それ――『アクトレス』はそのまま木の上へと視線と、腕を伸ばす。

399 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/13(火) 00:27:41
>>398

    コツッ

「――あたっ」

不意に、頭上から何かが落下し、軽い音を立てて頭に当たった。
地面に落ちたのは、何の変哲もない松ぼっくりだった。
何の気なしにそれに視線を向け、手を伸ばして拾い上げる。
ゆえに、『アクトレス』の発現には気付かなかった。
『天使』の像が、木上に腕を伸ばす。

    ガサリ

枝の揺れる音と共に、何かが飛んだ。
哺乳類だ。
毛むくじゃらの小さな生き物。
接近する『アクトレス』の腕から逃れて、少し離れた地面に着地する。
『アクトレス』が見えていたわけではなく、たまたまジャンプするタイミングが合っていたということらしい。

    キョロ キョロ

それは一言で言えば小型の『猿』だった。
世界で二番目に小さい猿である『ピグミーマーモセット』だ。
最近ではペットとして飼育もされている。
とはいえ、あまり一般的ではないし、自然公園で見かける生き物でもないだろう。
『UMA』ではないが、UMAと誤認された可能性はあるかもしれない。

「――へえ……」

顔を上げると、ようやく『アクトレス』に気付き、そちらを見る。
サングラスの奥の瞳が、好奇心の光できらりと輝く。
初めて目にするスタンド――これは、ある意味UMAと同じくらい珍しいものではなかろうか?

「……ジャングルの奥地に潜入した我々は……危険と隣り合わせの冒険の末に……
 人類史上初めて……幻の『星見UMA』と対面を果たすことに成功しました……!!」

続いてピグミーマーモセットに視線を移し、相手を刺激しないように小声で感想を述べる。
だったら最初から喋らなければいいんじゃないかという考えは念頭になかった。
地面に降りたピグミーマーモセットは、その場から動かず、フランの方に注意を向けている。

400 七海 フランチェスカ『アクトレス』 :2018/02/13(火) 01:32:29
>>399

「この……『小さいサル』!
 図鑑かテレビで見たような気がする。
 なるほどね、これが『星見UMA』の正体」

囁くような声で笑っていた。

逃げ出したペットか、
捨てられてしまったのか。

「んん〜、見てみてこの顔。
 この爪で引っ掻かれれば、
 われわれの喉笛は紙切れ同然!」

「あわや放送事故! 我々に明日はあるのか!?」

そしてこの場で真に『未確認』なのは誰なのか。

             ガサ  ガサ

少しずつ動く『ピグミーマーモセット』を視線で追う。

「なんちゃってね〜」

「この手のお話のオチはやっぱり、鉄板ってことで〜
 『逃げられてしまったがこれからも追跡を続けます』?」

      「それとも今回で最終回にしちゃう〜?」

――『アクトレス』はフランの背後に立っている。
その白磁は『彫像』や『マネキン』にも似ていて、
この止まらない女の様子とは離れたものだった。

401 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/13(火) 17:14:12
>>400

「こういうのって何て言うんだっけ?えーと、あれだあれ。
 そうそう――『天使』ってやつ。
 今、あなたの後ろに立っているのを見た、私の感想」

『天使のような彫像』と気まぐれな猫のような雰囲気の女。
一見するとメージが近いようには思えない。
スタンドというのは精神の才能だと、自分は聞いている。
彼女からこれが出てきたということに興味を引かれる。
彼女とスタンドの繋がりはどこにあるのだろうかと思えるから。

「それと、これ何だっけなぁ?サル?
 あぁ、それそれ。サルってこんな見た目してるんだった」

納得したように、ポンと手を叩く。
これまで目の見えない生活を送ってきた身。
見たものの名前と外見が頭の中で一致しにくいということが、未だによくある。

「へっへっへ、こりゃあツイてるな。
 こいつの毛皮は、いい値で売れるんだぜ。
 今夜は久しぶりに上等の酒にありつけそうだ」

密猟者か何かになりきって、冗談交じりに低い声を作りながら、自身の背後にスタンドを発現させる。
『医療従事者』のような雰囲気を持つ盲目の人型スタンド――『ドクター・ブラインド』。
本体との外見上の共通点は、あまり見られない。
共通している部分と言えば、爪くらいだ。
しかし、装飾用である本体の爪とは違い、スタンドの爪はメスのような形状であり、『実用向き』だ。

『 L 』 『 I 』 『 G 』 『 H 』 『 T 』

……何か喋っている。
だが、その口調は機械的で、言葉を発しているからといって独自の自我があるわけではない。
しいていうなら、本体自身の心の代弁なのだろう。

「ふっふー、せっかく珍しい動物と出会えたんだし、ここでお別れするのは惜しいなぁ。
 それに、飼われてたのがいきなり自然で生きていけるとも思えないし」

毛皮に埋もれていて見えにくかったが、小猿は首輪をしているようだ。
フランの考え通りだということだろう。
そして、明日美は自分の手の中にある松ぼっくりを、『ドクター・ブラインド』に渡した。

「ニンゲンの都合で連れて来られたんなら、最後までニンゲンが責任もつってことで。
 とりあえず保護しよっかなぁって私は思ってる」

「注意を引くから、その間にカクホしてもらえないかなぁ。
 私が捕まえたいのはヤマヤマなんだけど、私のは爪が『コレ』だし。
 うっかりして傷つけちゃうかもしれないから」

402 七海 フランチェスカ『アクトレス』 :2018/02/13(火) 18:33:43
>>401

           アクトレス
「わぁお! キミも天使様が見えるんだね〜。
 そういう人がそこそこいるってことは知ってる」

「でも、このサルよりは珍しくないでしょ!」

             ヒュン

「確かにサルって感じの野性味はない。
 けど、一番近い動物はな〜〜〜にって、
 街頭アンケートしたらきっと『サル』だよォ」

『アクトレス』に明確な『顔立ち』は無いが、
その視線は『ドクター・ブラインド』を一瞥し、
すぐにピグミーマーモセットの方へと向いた。

天使は語らない――――フランチェスカとは『対照』だ。

     キキッ

冗談に反応でもしたのか、野性的なカンなのか。
小さく鳴いた小さすぎる猿を、相貌が捉えている。

「そだね〜、やれやれ! 結局一番恐ろしいのは、
 UMAなんかじゃなくて人間のエゴなのだ! ってね」

       「にゃは」

「そういうオチはイマドキ陳腐だけど、
 エゴは悪い事ばかりじゃないからね〜
 保護しちゃおう。アタシはそれが良いと思うんだ」

                  パチッ

ウィンクを飛ばし、スタンドをしゃがみ込ませた。
草や土を動かし、勘づかれるようなことが無いように。静かに。

403 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/13(火) 21:41:08
>>402

「よし、それじゃ――」

そう言いかけて、ふと湖の方を見やる。
相変わらず、水面には小枝が浮かんでいて、その上に小鳥もとまり続けている。
何も変化はない。

(?今、なんか『音』がしたような……?ま、いっか)

「――じゃ、マンジョウイッチってことで」

松ぼっくりを持たせた『ドクター・ブラインド』を移動させる。
移動先は、ピグミーマーモセットの後方。
そこからピグミーちゃんの足元に向かって、恋人にフェザータッチするみたいに優しい手つきで、松ぼっくりを軽く転がす。

                コロロロロ……

          「 ? 」

結論から言うと、ピグミーマーモセットは、それに興味を持ったらしい。
小さく首を傾けて、一瞬そちらに注意を向けた。
必然的に、松ぼっくり以外のものに対する注意は削がれることになるだろう。
その間に、向こうの『天使』がアクションを起こしてくれたらいいなという考えだ。
もちろん、任せきりにするつもりはなく、もし逃げられそうになった場合は『ドクター・ブラインド』も突っ込む気でいるが。

404 七海 フランチェスカ『アクトレス』 :2018/02/13(火) 23:15:07
>>403

             ス

『ピグミーマーモセット』・・・体重は成体で『100g』。

      『トン』

『アクトレス』の指先が、繊細にその背に触れる。
能力は重量の減少。その結果は――『浮遊』。
1秒間に『1000g』を奪い去る天使の指先は、
問答無用で、逃げる隙もなくその身を空へ誘う。

「小さくてすばしっこいとさ〜、力加減が難しーよね。
 だからこうする。『天使様』の能力……」

           「詳しくは企業秘密だけど、ネ」

浮き上がったその身体であれば、
逃げようと走り回るそれよりも、
ずっと簡単に手の平で覆える。

『アクトレス』から受け取ったりとか、
そういううかつな真似はしない。離さない。

軽量化は――――あくまで一旦だが、解除しておく。

「このコ、どうする〜?
 網とかカゴとかあればいいけど、
 キミが持ってる『ハコ』って水筒くらい」

浮ついた笑みを浮かべて、
不安げに身じろぎする子猿を見た。

「それじゃ、家に帰るまでに紅茶味になっちゃうよね」

                     「にゃは」

405 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/14(水) 15:03:47
>>404

「ほうほう――」

眼前で行われる『天使』の技を興味深そうに観察する。
浮かばせる能力――そう考えれば『天使』というのも納得できる。
いつかは、その全貌も見てみたい。

「お見事!さすがはアスミくんだ。ん?アスミって誰だよ!
 そう、それが私の名前だ!覚えておいてくれたまえ」

捕まったピグミーマーモセットは、最初の内はもがいていた。
しかし、単純な方法では抜け出せそうにないと分かると、動きを止めて大人しくなった。
ひょっとすると、隙を窺うつもりなのかもしれない。

「――お?」

地面に手を伸ばし、小さな小猿よりももっと小さな首輪を拾い上げる。
ピグミーマーモセットが暴れた時に外れて落ちたらしい。
裏側を見ると、電話番号が書いてあった。

「ふっふっふっ、『小猿の紅茶煮ハニーマスタードソース・シャンピニオン添え』。
 よし、今夜のメニューはこれで決まりだ」

アクトレスに捕まったピグミーマーモセットを見て、あまり笑えない冗談を飛ばす。
言葉が分かるはずはないが、不穏な気配を悟ったのか、小猿は身を竦ませて震えている。
ちょっと脅かしすぎたみたい。
『ジチョー』しよう。
ところで、『ジチョー』ってなんだっけ?

「とりあえず、この中に入れとこう。
 あと、首輪の裏に電話番号が書いてあったから、ちょっと掛けてみる。
 あとは頼んだ!」

そう言って肩に掛けていた鞄を外し、口を開けて『アクトレス』の足元に置いた。
自分はスマホで電話を掛け始める。
そして、通話はすぐに繋がった。

「あ、もしもし???」

406 七海 フランチェスカ『アクトレス』 :2018/02/14(水) 19:39:54
>>405

「アタシはフランだよ〜。
 フランダースの犬のフラン。
 フランスパンのフランでもいいけど」

               ボフッ

天使の手がカバンの中に小猿を運ぶ。
隙を見ているのかもしれないが――
本体の手ですぐにチャックを閉めてしまう。

とはいえ、密封するのもどうかと思うし、
スタンドの手はカバンの中に入れたまま。

「にゃは、それじゃお願いしようかな〜
 捨てたんならこっちのものだし、
 涙ながらに生き別れってことなら、
 感動の再会を演出出来ちゃうかもね」

      グイ

「サルくんはもうちょっと大人しくしてて。
 動けば動くほどおいしそうに見えちゃうからさ・・・」

               ニヤ

しっかり捕まえて――――逃がさない。

電話にも耳を傾ける。
べつに、ある程度『どうなってもいい』けど、
いい方向に変わるならそれが一番良いことだ。

      プルルルルル
 
             『―――――もしもし?』

(※通話先の設定など決まってるようでしたら、
   そちらのロールもお任せしたいと思っています)

407 <削除> :<削除>
<削除>

408 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/14(水) 20:29:48
>>406

「ふむふむ、覚えたぞ。
 フラミンゴのフランでもいい?って、それだと『フラン』にならないじゃん!
 フランケンシュタインのフラン。よし、これなら『フラン』になるぞ!
 よろしく、フランちゃん!」

通話が繋がるまでの間に、相変わらずの冗談を口走る。
視界の端でピグミーマーモセットの確保を確認し、話し始めた。

「あのー、公園で『サル』拾ったんですけどー。お宅の?」

    ピッ

スピーカーのスイッチを入れる。
これで会話の内容はフランにも聞こえることになる。

『――えっ!!それってピンクの首輪付けてるピグミーマーモセットですか!?』

声は若い女だった。
どうやら飼い主のようだ。

「ピグ……?まぁ、たぶん。じゃなきゃ電話掛けられないでしょ」

『あああああ!!今どこですか?自然公園?すぐ行きます!!!』

そこで電話は切れた。
あの様子だと、捨てられたわけではないらしい。

    ピッ

通話終了ボタンを押して、フランに向き直る。

「……ってことで、すぐ来るんだってさ、フランちゃん。
 チッ、これで今夜も、いつもの安酒をチビチビやることになっちまったぜー」

ふざけた感じの口調だった。
でも、顔は笑っていて、どこか嬉しそうだった。

409 七海 フランチェスカ『アクトレス』 :2018/02/15(木) 00:24:46
>>408

「――べつにフランさんでも、
 フラン様でも、フランでも、
 呼び方は何でもいいけどね〜」

「これにて『一件落着』! かな?
 お礼をたんまり貰えるかも!
 今夜はそれでパーティナイト!
 にゃは、それってまさに『皮算用』だし……
 『笑顔が報酬』なんてセリフも悪くないよね」

嬉し気なのは同じだった。
あるいは楽し気か、どちらでもいい。

明るさに違いがあっても、共有できるのは同じだ。

             クル

「そろそろ行こうと思ってたけど、
 すぐ来るなら待っておくのが人情ってやつだね」

             「どんなヒトが来るかな」

    「いない人のうわさ話なんて悪趣味か!」

その場でくるりとターンして、
待ち人に想像を巡らせる。

答え合わせがされるまでは――――ここにいよう。
この時間は楽しいものだし、もう少しは止まっていてもいい。

410 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/15(木) 17:49:17
>>409

「ウワサ話ってのは人がいないところでするもんだぜ!」

「だから、問題ナシ!」

       ――数分後――

「――おおおおおおおお!!!」

彼方から、一人の若い女がやって来た。
物凄い勢いで、こっちに向かって走ってくる。
特徴を一言で言うと、『ピンク』だった。
頭の先からつま先まで全身が『ピンク』という乙女チックを突き詰めたようなファッション。
まじりっけなし『ピンク率100%』のいでたちは、ある意味『UMA的』だった。

「『キウイ』ちゃぁぁぁぁぁん!!!」

         モゾ

その声に反応して、ピグミーマーモセットが鞄の隙間から這い出てきた。
怯えているという感じではなかった。
そのままトコトコとピンクの女に近寄っていき、肩に飛び乗った。

「はッ!あなた達が『キウイちゃん』を見つけてくれた人達ねッ!
 突然いなくなっちゃって、ずっと探してたの!
 どうもありがとうありがとうありがとう!」

ピンク女は片手にケージを下げていた。
ピグミーマーモセットの『キウイ』は、自分からその中へ入っていく。
これで事件は解決だろう。

「はッ!お礼をしなくてはッ!そうだッ!
 これを差し上げるわッ!」

ピンク女は、目にも留まらぬ速さでチケットを二枚差出し、手渡してきた。
最近話題になっている高級スイーツショップのケーキバイキング無料招待券だ。
パーティーナイトとまではいかなくとも、ティーパーティーはできるかもしれない。

「んじゃ、遠慮なく。さて、帰るかぁ。
 ん?そういえば、私なにしにここに来てたんだっけ?
 食材の調達ゲホゲホいや何でもないなんでもない」

「――フランちゃんさぁ、今度これ一緒に行かない?
 店の商品全部食べつくそうぜ!」

帰りながら、チケットを見せつつフランに声を掛ける。
ついでに、今まで出しっぱなしだった『ドクター・ブラインド』を解除する。
その時、何か忘れているような気がしたが、そのまま忘れた。

     ――ある日の自然公園で起こった、特に大きくもない些細な小事件は、こうして終幕を迎える……。

411 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/02/17(土) 16:41:46
>>410

                ゴポッ

三人が立ち去ってから少しして、湖の表面が俄かに波打った。
小枝が揺れ、その上で羽を休めていたオジロが、慌てたように空へ飛び立つ。
やがて、何か大きな影のようなものが、水面近くまで浮かび上がってくる。

      ザ バ ァ ッ

そして――水を掻き分けるようにして、水中から何かが現れた。
それが生物なのか、それとも単なる漂着物なのか。
確かなことは、その正体は誰にも分からないということだけだ。

ある日の静かな湖畔で起きた、ささやかな小事件。
その最後を、この言葉で締めくくろう。

『今回は逃げられてしまったが、我々は今後も追跡を続行する』――と!!!


          『 星見UMAを探そう 』 → 完

412 霞森 水晶『Q-TIP』 :2018/03/07(水) 23:59:01

昔古い知り合いに『自然が好きなんでしょ』と言われたが、
それは肯定でもあり、否定でもある。まあ自然は好きだけど、
この時間の自然公園は――なんというか、食傷を感じるから。

            カァーーー

                 カァーーー

「帰るのはカラスが鳴いたらだっけ。
 カエルだっけか。そっちのが語呂いいし
 まー、カエルじゃこの時期帰れねーわね」

   チチチ

「鳴かなきゃ帰れねーってわけじゃねえけどさ。
 冗談みたいなもんよ。いや、ユーモアって感じ?」

      「どっちも大して変わんねーわね、それも」

湖沿いの散歩道を歩いていると、そんなことを想う。
実際、そろそろ帰ってもいいころだ。夜は冷え込むし。

ただまあ別に数分数十分じゃあ大して変わらないし、
例えばこの『燐光を纏う独り言の多い少女』に興味を示した、
特異な奴がいるなら――そいつと話して帰るくらいの時間はある。

413 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/03/13(火) 21:25:29
>>412

やがて、向こう側から一つの人影が近付いて来た。
キャップにスタジャン、ジーンズにスニーカーというアメリカンカジュアルファッションの女だ。
不意に少女の前で立ち止まり、その傍らの燐光を見つめる。

「蛍じゃなさそうね。今の時期じゃないわ」

「それに、蛍じゃ話し相手にはなれないでしょうし」

今この時間、自然公園を散歩しようと思った理由は特になかった。
でも、それも悪いものじゃなさそうだ。
『妖精とお喋りする少女』なんて珍しい場面にお目にかかれるんだから。

414 霞森 水晶『Q-TIP』 :2018/03/13(火) 21:43:16
>>413

向こう側からくる人影と、三つ四つとすれ違った後の事だった。
自然に立ち止まって、燐光は肩に止まる。止まり木のように。

「蛍相手に独り言してるいてー女かもしれねーわよ。
 ま、妖精と喋ってんのも大概『ファンシー』すぎるか」

               チチチチ

「んで、そういうあんたは話し相手になってくれんの?」

「べつに催促するわけじゃーねえけど」

       チチチ

通行人などそもそも疎らだが、その声を聞いて振り向く者は女以外にはいなかった。
スタンド使いにのみ聞こえる声。直感的にそれが分かる――同じ『使い手』ならば。

415 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/03/13(火) 22:46:48
>>414

「それはそれで珍しいわね。関わりたいかどうかは別として」

「もし相手が幻聴とお話してるような人間なら、黙って通り過ぎるのが普通だと思うわ」

「でも――あなたはそうじゃないみたいね」

妖精を肩に乗せた少女と相対する女の肩には、機械仕掛けの小鳥が止まっていた。
全体的に丸みを帯びた特徴的なフォルム。
『コマドリ』だ。

「たまたま出会った相手だからこそ話せることってあるものね」

「旅の恥は掻き捨てっていうやつよ。お互いに旅って程じゃないでしょうけど」

「それに、あなたの妖精は何だか私のと似てる気がするし」

   ザッ

軽やかに笑いながら、名も知らない少女に歩み寄る。
帽子の下で、ショートボブの茶髪が小さく揺れる。
全体的にボーイッシュな服装の中で、唇に塗られた艶やかなルージュが女らしさを際立たせている。

416 霞森 水晶『Q-TIP』 :2018/03/13(火) 23:08:57
>>415

「すすんでオカシな奴だと思われたかねーからね。
 声が聴こえんのは、『分かる奴』だけにしてんですのよ」

「そーいうやつと喋んのは、結構悪くねー」

統計とかを取ってるわけでもないし、そんな趣味もないが、
スタンド使いと呼ばれる人間には面白い者が多い気がする。

「あ? 鳥? まー、似てなくもないけど。
 スズメ……じゃなくて、コマドリか。
 別に鳥に詳しいってわけでもねーけどさ」

            チチチ

アオスジアゲハのようなリボンと、カラスアゲハ風のポンチョが風に揺れる。
それに挟まれ微動だにしない、切り揃えた黒い前髪、鋭い目つき、化粧っけの薄い顔。

「それで、何の話をするってーのよ。
 夕食の献立? シゴトの愚痴? それとも、
 昨日見た夢の話? なんでもいいんだけど」

歩み寄る女に対し、自然に少しだけ退がるが、距離は元より近い。

「あんたには『話したい事』がある、そーいう言い方よね」

たまたま出会った相手、旅の恥。
話し相手を求めているのはまあ自分もなのだが、
相手もそうなのかもしれない――そう思ったのだ。

417 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/03/13(火) 23:59:16
>>416

「まあ、あなたのと違ってお話してくれるわけじゃないけどね」

「お喋りするのは私の方だから」

年の頃は24、5歳程度だろうか。
年齢もあるだろうが、少女とは対照的にメイクは入念だ。
目元にはアイシャドウが引かれ、頬にはチークも塗られている。
ただ、水商売という雰囲気でもない。
そのことは、極めてラフな印象のファッションが証明している。

「いいわね、そういうの。
 献立っていうのも地味だし、いきなり愚痴なんて聞かされても困るでしょ。
 今日のトークテーマは『最近見た夢』なんてどうかしら」

「私が見た最近見た夢は――『アイドル』になってる夢かな。
 ステージの上で歌って踊って人気者って感じ」

なんでもないような口調で、そんなことを話す。
実際、これは単なる夢の話だ。

             リアル
しかし、十年近く前は現実だった。
本当にアイドルとして活動していたし、結構な人気もあった。
しかし、それにサヨナラした今となっては夢でしかない。

世間からは完全に忘れ去られ、その筋のマニアでもなければ知る者はいない。
それに対しては色々と想いはあったが、今は今の自分に納得している。

「まあ、夢の中なんだし、なんでもアリよね」

そう言うと、足元の小石を拾って水面に向けて投じる。
小石は五回ほど水面を跳ねた後で、水中に沈んでいった。
その光景に、なんとなく過去の自分自身が重なって見えた気がした。

418 霞森 水晶『Q-TIP』 :2018/03/14(水) 00:47:31
>>417

   チチチ

「静かでいいじゃねーの。
 うるさいのが嫌、って訳じゃないけど」

      チチチチ

霞森の顔は年齢を読ませない。
10代には思えるが、若い輝きには無縁で、
枯れた印象があった。老けてるわけではないが。         

「夢? ま、初対面だものね。
 身の上話なんかよりは、
 ずっと親しみやすい話題だわ」

       チチチ

なんでもいいとは言ったが、
面白い話題であればより良い。
他人の夢の話はつまらないなんて言うが、
そういう捉えどころのない話は嫌いじゃない。

「ふーん、あたしにはわからねー世界だけど、
 なりたがるヤツが多いってのは理解出来るわ。
 文字通り『夢見る舞台』ってェーところかしらね」

水面を跳ねる石を目で追ったが、
沈むのを見届けて顔を上げた。

「ああ、あたしも夢で歌手になってた事があるわね」
 
     チチチ

      「あたしは、夢見てるってわけじゃねーけど。 
       まー、その辺はまさに何でもアリってとこか」

軽い口調だった。霞森は確かにそこにあった現実を知らない。

419 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/03/14(水) 01:13:07
>>418

「そんなところね。まあ、どこかしらに繋がりみたいなものはあるのかもしれないけど」

「夢っていうのは本人の無意識が関わっているって言うじゃない」

少女と同じように何気ない調子で言葉を返す。
自分の場合は、過去の栄光を忘れきれないからだろう。
だから、時々そういう夢を見ているのだ。
今までも、そしてこれからも。
その辺りは自分でも受け入れている。

「ところで――その子が何て言ってるのか聞きたいわ」

ちらりと燐光に視線を向ける。
少女が何か言うたびに話しているように見えた。
それが気にならないと言えばウソになるだろう。

「妖精は一体どんな話をしてくれるのかしらね?」

自分がやってるラジオ番組のトークのネタになるかもしれない。
もっとも、妖精とお話したなんて話は使えないけど。
ただ、全く使えないってわけでもない。
ちょっとだけ置き換えればいいんだから。
たとえば、従兄弟の子供と話したとか。

420 霞森 水晶『Q-TIP』 :2018/03/14(水) 01:48:17
>>419

「こいつが? 最近よくそれを頼まれるわ。
 別に大しておもしれ―ことは言ってねえけど、
 ま、妖精みたいなのが喋ってんのは面白いか」

            チチチ

「ちなみにこいつは『Q-TIP』。
 そう呼んでやると良いわ。
 こいつは私にそう名乗ってるし、
 今名前を教えろって頼まれたから」

「本当はあんたにも聞こえるように喋れるけど、
 なんつーか人見知り? ってやつらしいのよね」

羽音を鳴らす燐光を見ていると、
その中にいる『妖精』と目が合った。

       チチチ

なにか『思考が波立つ』ような感覚がある。
それが、具体性を帯びる事はないのだが。

「あんたの鳥は――って、
 名乗ったりはしないのか。
 でも名前はあるんでしょ?
 何にだって名前はあるんだから」

  チチチ

「ああ、『Q-TIP』もそいつの事を知りたがってるわ。
 好奇心がつえーのよ。『名前が知りたい』って言ってる」

421 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/03/14(水) 02:08:02
>>420

「『Q-TIP』――洒落た名前じゃない。よろしくね」

ふと奇妙な感覚を覚え、頭の中に疑問が浮かぶ。
しかし、それが何なのかは分からない。
目の前の妖精――『Q-TIP』に原因があることは間違いないのだが。
けれど、敵意がありそうな様子でもない。
だから今は気にしないことにした。

「この子の名前は『プラン9・チャンネル7』。
 まあ、好きなように呼んでもらっていいわ。 
 『プラン9』でも『チャンネル7』でもね」

『小鳥』は微動だにしない。
囀ることもなく、ただ肩に止まり続けている。
『Q-TIP』とは対照的だ。

「――そして、私の名前は美作くるみ。
 『ラジオDJ』やってるの」

「せっかくだから、これを渡しておくわ。
 番組の宣伝も兼ねてね」

差し出されたのは一枚の名刺だ。
所属する放送局や担当する番組について記されている。
番組名の下に、今さっき告げた名前が併記してあった。

422 霞森 水晶『Q-TIP』 :2018/03/14(水) 02:31:34
>>421
       チチチ

「『こちらこそよろしく』ってさ」

「ま、あんま似合わねーんだけどね。
 そんなロマンチックなもんでもねーし」

     チチチ

「って言うと、あたしの名前をこいつは茶化すの。
 ちょうど良いから自己紹介を返しとくけど、
 あたしの名前は『霞森 水晶(かすみもり すいしょう)』」

茶化し合える仲、だなんて美化する気はないけど。
まあ悪い仲じゃあない。打算が無い関係じゃないが、
なんだかんだ行動を共にしている――『悪友』なのだ。

「ラジオ? へえ、夢とそう離れちゃいねーのね。
 あんたが言った通り『繋がり』はあるってことか」
 
   ス

「これで『ミマサカ』って読むのね。
 覚えやすくていいわ、良い名前」

「電波がわりーとこに住んでるんで、
 聴けるかどうかはわかんねーけどさ。
 なんかの縁だしこれは無くさないようにしとくわ」

名刺を懐に入れ、薄い表情で笑った。
ポンチョが捲れた時、その中に燐光が3、4、と見えた。
黒い布地に輝くそれらは星空のようでもあったけれど、
日が沈み、覗きつつある夜空に比べれば歪な輝きだった。

423 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/03/14(水) 03:05:46
>>422

「へえ、水晶なんて洒落てるじゃない。イケてる名前だと思うわ」

そのまま芸名としても使えそう。
なんてことを、ふと思った。
まあ、彼女はアイドルなんて興味はなさそうだけど。

「毎回テーマを決めてリスナーからのメッセージを募集してるの。
 この町のニュースとかイベント情報なんかも取り上げてるわ。
 それから、私のフリートークとかゲストと喋ったりね」

「新旧洋邦問わず曲のリクエストも受け付けてるから、もし聴けたらヨロシク頼むわ」

少女の薄い笑いに対し、こちらは軽やかに笑い返す。
その時、夜空の星のように輝く燐光が目に入った。
おもむろに空を見上げ、やや目を細める。

「暗くなってきたわね」

「名残惜しいけど、そろそろお暇することにするわ。夜道での女の一人歩きは物騒だっていうし」

「それじゃあね、水晶さん。それから『Q-TIP』も」

肩に止まっていた『小鳥』のヴィジョンが消える。
そして、ゆっくりと歩き始め、その場を離れていく。

(そう離れちゃいない、か)

(今の私だって、そう捨てたもんでもないわよね)

少女の発した言葉を思い出し、立ち去りながら人知れず小さく笑った。

424 霞森 水晶『Q-TIP』 :2018/03/14(水) 03:47:08
>>423

    チチチチ

「そう? そりゃ嬉しいわね。
 つけた親に感謝ってやつだわ。
 ま、そ―いう柄でもないんだけどさ」

「たまには柄じゃない事をするのもアリか。
 ラジオ聴いてみるってのもね。
 気が向いて、電波が通りゃだけど」

          チチチ
  
         「ああ、もう夜か。
           あたしも帰らねーと」

空を見上げるでもなく、そう呟いて、踵を返した。

「今時夜でも明るいけどさ、
 この辺は電灯も少ねーものね」

         「――――んじゃ」

燐光は消えないまま、自然公園の奥へと遠ざかっていく。

425 霞森 水晶『Q-TIP』 :2018/03/14(水) 03:47:40
>>424(目欄忘れ)

426 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/02(土) 22:00:46

ふとした瞬間、胸の奥がざわめき出すことがある。
そんな時は、庭で育てているラベンダーの香りが気持ちを落ち着けてくれる。
それでも治まらない時は、こうして森を散歩することにしている。

自然の中を歩いている内に、少しずつ心に穏やかさが戻ってきてくれる。
でも、時にはそれでも足りないこともある。
心に芽生えた思いは次第に強くなり、いずれは私の心を完全に埋め尽くす程に大きくなってしまう。

  「――……」

そんな時、私は自分の身体に傷をつける。
そうすれば、この気持ちを抑えられるから。
喪服の袖を捲り上げて露になった腕に、いつも持ち歩いている果物ナイフの刃を押し当てる。

  「……ッ……!」

おもむろに刃を引くと、裂けた肌から一筋の血が流れる。
肌を伝って滴り落ちる赤い雫が、この乱れた心を静めてくれる。
ゆっくりと深呼吸すると、徐々に気持ちが落ち着いてくる。

  「――あっ……」

ぼんやりしていたせいで指先が滑り、思わずナイフを取り落としてしまった。
血は、まだ流れ続けている。
いつもより、少し深く切りすぎてしまったのかもしれない。

   ――止血……しないと……。

半ば夢見るような曖昧な意識の中で、どうにかそのことを思い出す。
木の根元には、バッグが置いてあった。
その中に入れてある包帯を取り出そうと、緩慢な動作で身体の向きを変え、ゆるゆると腕を伸ばす。

427 杉夜 京氏『DED』 :2018/06/03(日) 19:28:16
>>426

 ――だりぃ

日勤 日勤 日勤 日勤 夜勤 夜勤 

……そのローテーションの繰り返しだ。好きでもねぇ仕事を
繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して、んでもって
気のきかねぇ年下の上司が鬼の首をとったように、人のミスを
延々と言い続ける毎日。

 ガリガリガリ……。

頭を掻きむしりつつ歩く。休む暇なく動いてる所為か、熱っぽい脳と
痛む目頭、万力をゆっくり押し付けられたかのような米神。

 (……苛々するなぁ、全部ぶっ壊せれば良いんだがなぁ)

目に付く木々をぶっ倒す事が出来る力は手に入れた。だが、へし折った
ところで俺の中に何か残るのだろう?
 気に食わないバイトの上を殴り殺す事はできる。だが、それをした
所で俺の人生の先がクソである事実は変わらないし、変えれない。

 「……んぁ?」

ふと、緩慢に地面を見つめながら歩き。何気なく顔を上げる。
 目に見えるのは……果物ナイフを持つ女、肌から流れた血……。

「何やってんだ、あんた……」

 思わず声をかけたが、直ぐに後悔も湧いてきた。
どうみたって、正気の行動とは思えねぇ。見た瞬間に背を向けて別の
道へと何事もなく向かったほうが良かったとも思えて来た。

428 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/03(日) 20:46:30
>>427

――木々の中に立っていたのは、黒い女だった。
洋装の喪服を身につけ、つばの広い黒の帽子を被っている。
声を掛けられたことに気付いていないのか、自傷を行った直後の状態のまま佇んでいる。


不意に、遠くの方で誰かの声が聞こえたような気がした。
しかし、少しの間、声を掛けられたことには気付かなかった。
やがて、意識が少しずつ明確になる。
緩やかに、視線が声の方を向いた。
先程の声が自分に対して向けられたものであることを理解し、軽く目を伏せる。

  「――いえ……」

投げ掛けられた言葉が、自分の行為に対するものであることは分かった
ただ、突然のことで、何を言えばいいのかが分からなかった。
その結果、口をついて出たのは、これといった意味のない言葉だった。

  「何でも……ありません……」

何かを言うべきなのだろうか。
そう思っていても、相応しい言葉が見つからず、か細い声で呟くように言う。
そして、地面に腕を伸ばして、今しがた落とした果物ナイフを拾い上げた。

自傷の止血をするよりも、まず刃物をしまってしまわなくてはいけない。
自分にとって必要なものでも、人前で見せておくようなものではない。
片手に握っていた鞘の中に、果物ナイフの刃を収める。

まだ止血はしていない。
血は流れ続けている。
細く赤い筋が、色の白い腕を伝って滴り落ちている。

429 杉夜 京氏『DED』 :2018/06/03(日) 22:52:00
>>428

「何でもねぇって、いや……」

あるだろう、と言いかけるが。表立って、そう告げて余計に
話をややこしくするのもどうかと思えた。
 何より、この様子を第三者が見たら。最悪、自分が女性に
何か襲い掛かるような、そんな場面に見えない事もない。
 華奢な女性と、徹夜明けで目の下に隈のある大柄な男なら
どう考えても後者の犯罪者度合いに軍配があがる。

「あぁ……うん、何でもないんならな」

 「…………」

それ以上、どう言葉を紡ぐべきか皆目見当もつかなかった。

「……あんた、何しに此処に来てんの?」

 重苦しい空気に耐えかねて、また結局いらぬ言葉が口から飛び出て来た。

430 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/04(月) 19:58:47
>>429

森の中で向かい合う見ず知らずの男女。
お互いの間に、長いようで短い沈黙が流れる。
木々の間を風が通り抜け、枝葉が微かに揺れる音がする。

  「すみません……少し失礼します」

一言言ってからバッグの中に果物ナイフをしまい、代わりに包帯を取り出す。
ついさっき自分で裂いた腕の傷に、慣れた手つきで包帯を巻いていく。
手早く止血を終えて捲っていた袖を下ろし、目の前の男性に向き直る。

  「――私は……『散歩』です……」

  「この場所を歩いていると、気持ちが落ち着くので……」

それは本当だった。
事実、ここに来たのは乱れた心を落ち着かせるためだった。
しかし、今日はそれだけでは足りなかった。
普段と比べて、胸の奥に感じるざわめきが大きかった。
だから、この果物ナイフに――『鎮静剤』に頼らなくてはいけなかった。

  「……あなたは?」

ややあって、自分がされたのと同じ質問を返した。
同時に、男性の纏う雰囲気に意識が向けられる。
何かとても疲れているように見え、自然と表情が心配を含んだものに変わる。

431 杉夜 京氏『DED』 :2018/06/04(月) 20:19:46
>>430

 「散歩 ……ねぇ。まぁ、この時節は散歩日和、だよな……」

女性が、いやに包帯を巻くのが上手な事など特に気に掛けない事にした。
 所詮、他人だ。俺にとっても、彼女にとって余計な深入りは何も有益にならない。

そして、返された言葉に数秒程、頭に空白が出来た。
 ゆっくりと、何を尋ねられたのか脳に染みこむ。何をしに此処に来たか。

「……あぁ、家に、変える所だな。早く帰らないと」

「お袋が、待ってるんだ。ヘルパーも、俺が帰らないと別の場所に
行けないだろうし、早く帰らないと延滞料金が発生するし
……そうだ、早く帰らないと」

そうだ、俺は家に帰るために歩いているんだ。
 俺の事なんて、もう分からない人のために。
そして、明日も早く仕事に出ないと。稼がないと。
 多分、朝も お袋の奇声染みた声に起こされて、飯を作って。
オムツを、取り換えて。そうだ、その為に……。

「…………」

 俯いた顔をあげる時。目は無意識に果物ナイフに注がれた。

真っ赤な血  それを見ると、狂ったように喚きながら爪を突き立てて
肌が裂かれ、それを抑え込みつつ着替えをする自分の姿が思い起こされる。

 「…………何でだろうなぁ」

「…………はぁ」

 理不尽だと思い続けて来た。最初は怒りだって湧きあがってた筈だ。
下火はあり、何時だって遣る瀬無い苛立ちはある。
 けど、それを誰かや何かにぶつけるのは筋違いであるのも知ってる。

 「…………なぁ」

「腕って切り裂くと、あんたにとって幸せなのか?」

432 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/04(月) 21:52:28
>>431

淡々と紡がれる言葉に黙って耳を傾ける。
その内容から、おぼろげに彼の辛さが察せられた。
しかし、何も言わなかった。
安易に慰めを掛けることは失礼に当たると考えたからだ。
その代わり、瞳に映る気遣いの色が、やや濃くなった。

  「――……」

それは、自分にとって非常に難しい質問だった。
すぐに答えることはできず、顔を俯かせて深く考える。
やがて面を上げ、静かに口を開く。

  「いいえ……」

幸せかと言われると、そうではないと思う。
なぜなら、自分が本当にしたいのは、自分の身体を傷つけることではないのだから。
私が心から望んでいるのは、この命を断ち切ってしまうこと。

だけど、私には、それが許されていない。
だから、私は自分の身体に傷をつけている。
甘美な死の誘惑に負けてしまいそうな心を抑えるために。

  「あの……」

  「この近くに……お住まいですか?」

433 杉夜 京氏『DED』 :2018/06/04(月) 22:26:06
>>432

 「…………あぁ?」

「近く? ん…………あぁ、こっから森を抜けて十五分ほど
歩いて行けば、な。……けど、なんで そんな事聞くんだ?」

「それを聞いて、あんた俺になにかしてくれんのか?
それとも、これ以上 俺になにかしようって事か?」

 ガリガリガリガリ

 苛つきが収まらない。痒む後頭部の辺りを鬱血しそうに
なるほどに爪をたてつつ掻きながら、声色は刺々しくなっていく。

「疲れてんだよ……本当に、疲れてんだ。寝る暇もないぐらい
倉庫の整理やら、書類の抜けの訂正とかしたり。運搬やったりとさ。
 頑張ってんだよ、頑張ってんのに何かミスして。それに延々と無能だの
根性が足りないだの、お前何年この仕事つとめてるんだの……人が下手に
出てりゃ言いたい放題に言いやがって。
 なのに、何だって見ず知らずの奴に俺の事詮索されなくちゃいけないんだ?
俺、そんなに不審人物か? 俺は責められるような奴か?? なぁ???」

 ガリガリガリガリ……ッ  スゥ― ハァ……ッ

 「いや……うん、あんたの事を責めてるわけじゃないんだ。
お、俺は……落ち着いてるんだ、うん」

 瞼が痙攣する。目の裏が赤く点滅する。

434 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/04(月) 23:05:08
>>433

叩きつけるような勢いで矢継ぎ早に発せられる言葉の数々。
それを聞いて、ひどく胸が痛んだ。
非難されたことに対してではなく、彼にそんな言葉を言わせてしまったことに対して、
後悔の念が込み上げてくる。

  「……お気を悪くさせてしまったことを謝ります」

  「あなたを不愉快な気持ちにさせてしまい、申し訳ありませんでした……」

  「どうか――お許し下さい」

謝罪の言葉と共に、その場で深々と頭を下げる。

  「――私も……あまり遠くないところに住んでいるのです」

  「先程、帰るところだとおっしゃられていたので……」

  「近くまで……ご一緒できればと……」

  「……ご迷惑でしたでしょうか?」

自分が助けになってあげられるなどと大きなことは言えない。
でも、ほんの少しでも彼の痛みを和らげたいと思っていた。
自分が彼の言葉を聞くことで、僅かでも彼の気が楽になればと考えていた。

それに、彼の体調も気掛かりだった。
彼の疲れようを見ていると、途中で倒れてしまうということも絶対にないとは言えない。
かといって、あまり踏み込みすぎるのは却って気を遣わせてしまう。
だから、家まででなくてもいい。
その近くまででいいから、彼が無事に帰り着くのを見届けたかった。

435 杉夜 京氏『DED』 :2018/06/04(月) 23:19:22
>>434(切りが良いので、ここら辺で〆たいと思います。
お付き合い有難う御座いました)

 俺は膿みたいだと、喋りながら思う。
圧し潰しても、薄汚れた汚らしいものばかりしか出ない。残るのは
鼻水みたいな色合いと、血が混ざりあった残骸だけだ。

 「いや、いや……気持ちは、有難いけど 結構だ。
あんた、見ず知らずの奴にさ。女だろ? お節介をやくと
絶対に痛い目にあうって。関わらないべきなんだからな」

 軽く手を上げて、どの口が吐くんだと思える言葉を告げる。

 善意だけの発言だとわかるからこそ、自分の存在がいやに
薄汚く、それでいて惨めである事が再三と自覚出来ていた。

 そんな相手を見続けると、否応なしに自分自身が愚図だと言う事が
わかってしまうが為に、遮二無二この場から去りたいと言う感情のみが襲う。

 「あんた……あんたも、自分を傷つけるような真似は止めたほうがいい」

 「じゃ じゃあ……」

 そこまでが限界だった。背を向けて一気に走る
早く帰るんだ。あの、もはや自分自身も、俺もわからない母親の元へ。
 そう言えば、もう二日は便が出てない。浣腸液は買い置きしてただろうか?
支払いも滞っている。暴れた所為で壊れた窓も早く修理しないと

 それから、後は 後は 後は 後は。

……俺は、これから何度 やり残した事と処理を考え続けるんだろう。

振り返って、あの女性が見えなくなった事に安堵しつつ。果物ナイフと
 腕に走る赤い雫が脳裏にこびり付いた。

 「……楽になりたいなぁ」

「何時になったら……楽になれるんだろうなぁ」

436 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2018/06/19(火) 23:18:08
――夏の陽気、じっとりとした湿気が汗ばんだ肌にシャツを貼りつかせ
温い風が通るのを頬に感じられる、雨の匂いは土から乾燥して別れを告げ
蝉の鳴き声はいよいよ持って唸る自販機とタッグを組んで静寂にジャブをかましている。

そして木々の木漏れ日がちらちらと、緑の塗装が剥げかけたベンチに座る首に赤いスカーフを巻いた少年と
隣で丸くなっている赤い首輪を付けた黒猫一匹の顔に降り注いでいた。

「解ってるよクロ『善意』なのはさ、だからこうして散歩にも付き合ってるじゃないか。」

少年の方が渋い顔をしながら何処か尖った口調で喋りながら、公園内を見回している
手首に付けた古めかしい腕時計のゼンマイを巻きながら
――猫の方は……何故か得意げに目を細めているように見える、気がする。

「でも仕方ないだろ?朝起きて顔の傍に『鯉』が有ったら誰だって驚くよ
……魚の『鯉』だぜ?君の頑張りはまさしく『スタ……跡』みたいだけど
むしろマーライオンにならなかったのを褒められたい所だぜ、僕。」

必至に喉から上がる酸っぱさは塞いだが、その後僕が騒いだので勿論お世話になっている叔母に見つかる
結果は僕の不機嫌な様で察してほしいが、この『同居人』は理由なくこういう事はしない奴だ。

「そりゃあ……落ち込んでたさ、父の日に白い薔薇を
母の日にカーネーションを渡すのに、何故か『病室』に行かなくちゃ行けないんだからな。」

病院は嫌いだ、むしろ好きな奴がいるのか疑わしい所だ
健康な筈の自分まで病気の気分になってしまうのが本当に僕は嫌だ
叶うなら僕も全部投げ出してすぐさまお世話になりたい所だ、病名:ファザマザコン。

「――でもさ。」

すっかり温くなった瓶コーラを飲み、一息つく
残念ながら、現実問題困っていても『誰か』はやってくれない
一緒に怒られた猫の散歩一つも、僕がやらなくてはいけない、だから。

「『再確認』だよクロ、解る?『目標の再確認』どんなに辛くても、『人生の目標』があるならそれに進む為に。」

(その為なら過去をほじくり返して、悪戯に傷つくのにも意味が有る。 ……と僕は思ってる
じゃなきゃやってるのはただのマゾヒスト君だ、ゲップを一つ。)

「『きっと明日は、今日よりいい日』さ、だからこうして君の散歩ついでに……探しているんだ
『父と母を治せるスタンド使い』をね。」

僕は元気をプラスチックボトルの切れかけマヨネーズみたいに振り絞り、顔をくしゃくしゃに歪めて笑い猫を撫でる
猫は解っているのかいないのか、目を細めて欠伸を一つ――信じられなくても、信じなくてはいけない。

(……でも 人がいる箇所を探すべきだった気がするな、彼の散歩ついでだから仕方ないけれど。)

ゼンマイを巻きなおした腕に巻き付く『膨大かつ半透明の鎖』が、常人に聞こえない音を立てて揺れた。

437 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/19(火) 23:52:35
>>436

空から降り注ぐ日の光は、すっかり初夏の色味を帯びている。
それが、不意に生じた影によって遮られた。
ベンチに座る少年の頭上から、何かが降ってきたのだ。
つばの広い黒い帽子が、綺麗に少年の頭に覆い被さっている。
その直後、足音と共に、少年の背後から穏やかな声が聞こえた。

  「――そこの方……すみません」

  「急に帽子が飛ばされてしまったもので……」

振り返れば、そこに喪服を着た女が立っていた。
ややあって、申し訳なさそうな表情で、丁寧に頭を下げる。
被っていた帽子が飛ばされ、それが少年の頭上に降りてきたらしかった。

  「――……」

腕に巻き付いた鎖――無意識の内に、そこに目がいってしまう。
しかし、それについて言い及ぶことはしなかった。
ただ、その様子を見れば、同じ力を持つ者であることが少年には分かるだろう。

438 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2018/06/20(水) 01:15:34
>>437

「――?あっ……と」

背後からかけられた優しげな声に、僕は驚きを隠せない
急いで立ち上がって一礼する、だいぶ間抜けな姿。

しかたない、頭が二つあっても目が後ろを向いているわけじゃないんだから。
それよりは笑顔で対応する事と、帽子を返す事だ。

「いえ、風のせいですから仕方ありませんよ な、クロ。」

――猫はそっぽを向いて欠伸を一つ、そうだな君はあの家で僕の先輩かつ空気を読まずに吸う奴だ。
彼女に視線を戻し、肩を竦めて苦笑いをしてみせる、そして頭から取って相手の眼を見ながら彼女の黒い帽子を両手で差し出す
……同時に『鎖』が揺れて音を鳴らす。

「はいどうぞ、お返しします。葬式帰りでこの時期の日差しは辛いでしょうから。」

完璧だ、2つの疑問以外は
探偵でもあるまいし放置すればいいのに。

(そうだ、喪服なんだから葬式の帰り……で、あれ?公園に寄り道をするんだろうか?
お祖母ちゃんは葬式時にしてはいけないと言う人だけど……それに。)

帽子の影が無い穏やかで憂いを帯びた顔、僅かにそよぐ風で揺れる、長い髪をうなじの部分でまとめたアップヘア
初夏の木漏れ日の下で見える……『眼の動き』

(視線が帽子から腕に来て一瞬止まった、この人は『鎖』が『見えている』
 ――『新手のスタンド使い』だ!やった!)

心の中で手を叩いて喜ぶ、目的に近づけるのだから表情にも隠しようがない
クロの奴が招いたと言われても今なら僕は信じ込むだろう。

「あの、聞いていいのならお尋ねしたいのです…が…」

笑顔のままに
すぐに聞こうとして僕は言葉に詰まって目線を泳がせた、『罪悪感』で

――もっと言うと、自分の事しか考えてなかった僕は
口に出した後にようやく『喪服を着た相手の事』に脳が回った。

(……いや、でも遠慮しないと、だって相手は親しい人が無くなって辛い時かもしれないのに。
それに何を聞くって言うんだ?スタンド?経緯?聞きたい事は山ほどある
でも、そんなに人にずけずけと聞くのはいい事か?違う、悪い事だ、やめよう。)

「――貴方は、貴方の『力』を知っていますか?僕と『同じ人』。」

……『同じ人』がスタンド使いだと解るだろうか?
それともしらばっくれるだろうか、何方でも構わな……くはない、必要がある
でも『僕』はどっちつかずだ、迷っている。

(けれど声を優しく感じた理由は解った、顔の憂いと影がまるで西洋人形のようで、この人まるで死んでるみたいなんだ。)

439 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/20(水) 18:27:53
>>438

思わず腕の鎖に向いてしまった視線を、再び帽子に戻す。
それから、改めて少年の顔と向き合った。
少年を見つめる表情には、陰を帯びたような微笑みがある。

  「……ありがとうございます」

そっと両手を伸ばして帽子を受け取り、元通りに被り直した。
左手の薬指には、飾り気のないシンプルな銀の指輪が光っている。
それと全く同じデザインの指輪が、右手の薬指にも嵌っていた。

  「はい……なんでしょうか?」

投げかけられた質問が途中で途切れるのを聞いて、
生じた間を埋めるように言葉を発する。
それは、質問をされることに対する肯定の意思表示。
そうすることで少年の背中を押し、彼が質問しやすくするために。

  「――私は……特別に優れた人間ではありません」

  「私にできることは、決して多くありませんから……」

静かに言葉を紡ぎながら、穏やかに微笑する。
柔らかく、人当たりの良い微笑み。
しかし、それは太陽のような笑顔とは違っていた。
どこか月の光にも似た憂いを含んだ微笑。
日差しを遮る黒い帽子の下に、それが存在している。

  「ですが――私は、私の力を知っています」

その声と同時に、左手の中に一振りのナイフが現れる。
質問の答えとしては、こうすることが一番だと考えたからだった。
ただ、これを見せることには抵抗もあった。

自身のスタンドを見られることに対してではなく、この凶器を思わせるヴィジョンが、
少年に不快感を与えてしまうのではないかという不安だった。
少し前、ここで自傷の最中に出会った見ず知らずの男性の姿が頭に浮かぶ。
あの時も、自分の不用意な発言のせいで、
彼に不愉快な思いをさせてしまっていた。

自分の行動が原因で、人の心を傷付けてしまうかもしれない。
内心では、そのような結果になってしまうことが怖いとも思っていた。
しかし、何か理由がありそうな少年の助けになりたいという気持ちの方が、
今は強かった。

440 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2018/06/20(水) 23:21:43
女性の左手に一振りのナイフ、本来なら警察物だろう……ただしそれが『器物型スタンド』なら話は別だ
『スタンド』は僕が纏う『鎖』のように周囲の一般人には見えない。

それに、自慢ではないけど僕にとっては驚く光景じゃない、奇妙だが少し見慣れた光景だ。

「――まずは質問に答えてくださって、有難う御座います。」

彼女の『スタンド』を見て『何でも無いよ』と言う風に受け流し、微笑む
返答へのお礼を言う、左手を首元に、安心するために無意識に『短くなった母のマフラー』を触る。

(嫌いだ、つまらない、押し殺す、もどかしい、でも必要だ。)

――左手を戻す、楽な姿勢に。
今すぐにでも質問攻めにしたい、でもそれはいけない事だ
頭の中が蝉の鳴き声と思考で酷く騒がしい、汗が頬を伝っている気もする。

「自己紹介が遅れました
 僕の名前は斑鳩、『斑鳩 翔』貴方は『短剣』なんですね……えっと。」

言外に後押しはしてくれているのかもしれない
それでもやっぱり言葉に詰まるのは『鎖』のせいだろうか。
――スタンドは使う人間の『精神』だと言う、その姿形も似るだろう。

「……あ、座りませんか?僕とお話を続けてくれるなら、ですけど。」

名前を聞きながらベンチに座る事を促してその間に考えよう
夏の暑さと歓喜に茹だったこの時の僕の考えだ。

隣の猫(クロ)は退く気が無いので、僕は立ったままだが仕方ない
それに、あまり良くない質問をこれからしなきゃいけない。

(落ち着いて……する事は1.僕の両親を治せる能力かを聞く。2.他のスタンド使いを聞く。
 ――ぼかして聞かないといけないかな、何て言おうか。)

……夏の日差しが差し込む中、木漏れ日が差すベンチの上で猫が貴方の事を見つめる
目の前の少年は一つ深呼吸をした。

441 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/21(木) 00:31:17
>>440

この少年には、どこか思いつめたところがあるような気がした。
もちろん、それは単に自分がそう思っているだけかもしれない。
ただ、少年の真剣な態度からは、思い過ごすだと言い切れない何かを感じていた。

  「私は……小石川文子です」

  「――はじめまして……」

少年の内面にある葛藤を察して、自身の名前を告げた。
そして、また軽く頭を下げる。
その間も、表情は穏やかなままだった。

  「ご一緒にお話ができるなら……私は嬉しく思います」

  「一人で歩いていて、少し寂しさを感じていたところだったので……」

そう言って、口元に柔和な微笑を浮かべる。
それは、偽りのない本心からの言葉だった。
普段、自分は静かな場所を好んでいる。
でも、時々どうしようもなく物寂しくなることがあり、
そんな時は無性に誰かと話をしたくなる。
今も、ちょうどそんな気持ちだったのだ。

  「――お気遣い、ありがとうございます」

  「よろしければ……私は、こちらに座らせていただけませんか?」

お礼を言ってから、ベンチが設置された歩道から少し外れた芝生に立つ。
新緑の上に白いハンカチを敷いて、そこに腰を下ろした。
今の少年の様子を見ていると、立ったまま話し続けるのは辛そうに思えた。
自分は、どちらかというと暑さには強い方なので、熱気をそれほど厳しく感じない。
だから、一人しかベンチに座れないのなら、彼が座る方がいいと考えたのだ。

  「どうぞ、ご遠慮なく――」

  「私にできることは多くありませんが……できる範囲で、お答えします」

木漏れ日の下で、少年に向けて微笑む。
左手には、まだ『ナイフ』が握られている。
それを消さないのは、そうした方が少年の希望に沿えると思ったからだ。

442 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2018/06/21(木) 02:41:10
>>441

「有難う、小石川さん。」

笑顔のままに感謝を言う斑鳩の眼には、小石川の両指の結婚指輪が嫌でも視界にちらついた
力を持てばそれを狙う人間は少なからずいるのだ、平穏を望むならば持たないほうが良い
――故に斑鳩には『ナプキンを取った理由』が何処か想像がついた気までしてきた。

(喪服、結婚指輪、前に会ったスタンド使いは両目のせいなのか感覚に関するスタンドだった。
彼女がスタンドのナイフを持っていて、僕に親身に話を聞く理由……)

「――スタンドには固有の『能力』が有ります、貴方もご存知の通り
僕が知りたいのは、貴方の『能力』が誰かを治せる類かという事なのです。」

真っすぐと相手の眼を見て答える、小石川文子の憂いを湛える瞳を見て
その奥に死を垣間見ている気すらしてくる、彼女が共感したのは僕と同じような目に合っているからだ
――『呪われている』過去か、人か、頭の片隅にそんな言葉がよぎる。

(何を馬鹿な……僕の想像のし過ぎだ、それとも僕の『スタンド』のせいなのか。
 こんな事を表情にだけは出したくない、笑顔のままでいないと。)

指を折り、拳を作り、また開く

合間に夏の喧騒と、遠くで子供の元気な声が聞こえる数人で遊んでいるのだろう
それらが耳に入らず、彼女が芝生に座っても気に出来ない程には焦っている

数度繰り返して続けて、やっと口を開く。

「代わりに僕の『スタンド』を知りたいと言うなら教えます
 ……それでも聞きたいのです。」

(……そして可能なら、僕の両親を治して貰いたい
我ながら砂漠で砂金粒を探すような賭けだが、これ以上に確率の高いギャンブルが無いから仕方ない。)

443 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/21(木) 20:17:33
>>442

人知れず悩む少年の姿を見つめる瞳に、気遣いの色が浮かぶ。
しかし、今は気軽に声を掛けるべきではないと判断した。
黙って少年の言葉に耳を傾け、やがて小さく頷いた。

  「……よく分かりました」

短く答えてから、おもむろに左手を軽く持ち上げる。
そして、何気ない動作で右手の親指を切り落とした。
普通なら指は地面に落下し、切り口から滴る鮮血が芝生を赤く染めているだろう。

  「『スーサイド・ライフ』――」

しかし、実際には、そのどちらも起きてはいなかった。
血は一滴も流れておらず、切断された指は重力に逆らうように宙に浮かんでいる。
自身の表情にも、痛みを感じている様子は全く見られない。

  「私は、そう呼んでいます」

不意に、手中からナイフが消える。
それと同時に、浮遊していた指が灰のように崩れ去った。
欠けていた親指が、徐々に元通り再生していく。

  「……私にできることは、これだけです」

  「――ごめんなさい……」

謝罪の言葉と共に、静かに目を伏せる。
『スーサイド・ライフ』に、誰かを癒す力はない。
考えてみれば、それは当然のことかもしれない。

自らの命を絶つことを望む衝動と、それに抗い生きようとする意思。
その相反する葛藤の狭間から、『スーサイド・ライフ』は生まれた。
人を治すことのできる力など、持てるはずがない。

少年のスタンドのことを聞き出そうという意思はなかった。
質問されたとはいえ、こちらの能力を教えたのは、あくまで自分の意思だ。
だから、引き換えに少年の能力を教えて欲しいという気持ちは持っていなかった。

444 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2018/06/21(木) 23:28:46
僕は正直な所、自分で頼んでおいて予想外に動揺していた
何せ目の前の優しそうな女性がいきなり自傷行為をするのだ。

……素直に見せて貰えるとも思っていなかったし
何よりギャップのせいで悲惨かつショッキング&ヘビーだ。

「……ええっ!?」

それでも目は釘付けになる、なにせ斬られた指が『宙に浮いている』のだ
そして一滴の血も流れず、『スーサイド・ライフ』を消すと共に灰の如く崩れ消え去る

「『スーサイド・ライフ』……。」

(器物型のスタンド、能力は切断部位の空中浮遊と操作かな、分離して動かしたりできそうだ
でも、残念ながら治す能力では無かった……。)

一瞬眼前に眩暈を覚え、視界が暗転しかけるが、すぐに失望を振り払うかのように顔を振る

(……大丈夫、僕は大丈夫 勝手に期待して勝手に失望してるだけさ
もう10回は繰り返しているんだ、人間慣れる生き物だからね!)

「――あ、いえ 謝らないでください
もう何回も繰り返した事ですし、貴方に非が有る事では有りませんから。」

事実、この人に非があるわけでは無いのだ
もし有る等と言えば、僕は生まれつきの肌色等で差別する連中と同じになってしまう
両親にも顔向け出来ない、どれも嫌だ、故に頭を下げさせてはいけない。

「そんなに深く頭を下げられたら、なんだか僕は申し訳なくなってしまいます。
僕は大丈夫ですよ、教えて頂いて有難う御座いました。」

そう言いながら朗らかに笑顔で返す
この人に暗い顔を向けてはいけない気さえするのだ。

「自分の都合なのに親切に答えて頂いて、それで暗い顔をさせては
 僕の両親にも、祖父母にも顔向けできませんから。」

445 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/22(金) 00:21:44
>>444

謝らないで欲しいという言葉を聞いて、また頭を下げそうになるが、
途中で思い止まった。
これは自分の悪い癖なのかもしれない。
良かれと思ったことでも、相手を不快にしてしまう時もあるのだから。

  「――はい……」

頭を下げる代わりに微笑を送る。
自分が笑うことで、この少年が笑ってくれるのなら、
それが一番いいと思った。
思いつめた様子の彼に、気を遣わせては申し訳ない。

  「お差し支えなければ……連絡先を教えていただけませんか?」

自分には人を治せる力はない。
それでも、できることがある。
ほんのわずかな助けかもしれないけれど。

  「もし……治せる方を見つけたら――」

彼が治せるスタンド使いを捜し求める理由は知らない。
だけど、きっと大切な誰かを治したいのだろう。
その気持ちには、大きな共感を覚えた。

  「その時は、お知らせします」

もし自分と少年の立場が同じだとしたら、私も同じ行動を選ぶだろう。
私にも、大切な人がいた。
『生きて欲しい』という彼の最後の言葉を守るために、
私は今を生きている。

  「私にできるのは、それくらいですから……」

だからこそ、この少年の助けになりたいと思った。
自分と少年に似ている部分があると感じられるから。
心の中で思いを重ねながら、穏やかな微笑みと共に言葉を告げた。

446 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2018/06/22(金) 03:17:14
小石川文子は笑顔を見せた
そして協力を言い出している。

(……いいのだろうか。)

やめておくべきではないだろうか
『溺れる者は藁をもつかむ』という言葉が有る。

僕は今溺れている、掴んでいる『スタンド』すら不確かな物だ。
……それに巻き込む?

この人を傷つけてでも手を払うべきだ
既に傷ついている筈なのに、あまりに『献身的』過ぎる。

僕はあまりに必死に見えたかもしれない
それでも理由すら聞かずに小石川文子は言うのだ。
「助けてあげたい」と。

僕の求めは、この人を潰す事になる可能性が無いと言えるのか
そして潰した時に僕がその責任を取れるかと言われれば、否だ。

(僕は責任を取れない、受けるべきではない。)


頭を下げて、申し訳なさそうに断りを……

「――有難う御座います小石川さん、何から何まで。」

「『これが僕の連絡先です』……何故だかやっと笑顔が見れた気がしますね。」

そう言いながらにこやかにスマートフォンを取り出して、番号を相手に見せる。

――いいや、もう決めた事だ、もう一度息がしたいだけだ
弱い僕はその為なら何でもする、でなければ僕は死んでいる
携帯を差し出す時に斑鳩の『鎖』が、消えた瞬間にまた少し音を鳴らす。

「…でもこれでは助けて貰うばかりで、…そう、何か僕に手伝えることは有りませんか?
『帽子を拾う以外』で。」

それを後から付け足すように口から絞り出すのが
僕の『りょうしん』の精一杯だった。

447 小石川文子『スーサイド・ライフ』 :2018/06/22(金) 18:53:26
>>446

何事もないように言葉を返す少年の瞳を、ただ静かに見つめる。
鎖の少年――斑鳩翔が、何を考えているかは分からない。
人の考えていることが分からないのは当然だ。

  「――……」

しかし、その様子から心の機微を感じ取ることはできる。
おそらくは彼も、こちらの機微を感じ取れるのと同じように。
それは、どこか共通点のようなものがあるせいかもしれない。

  「……ありがとうございました」

見せてもらった番号を自分の携帯電話に打ち込み、謝辞を述べる。
それ以外、少年の心に踏み込むような言葉は口にしない。
その後で、今度は自分の番号を少年に見せた。

  「――私の連絡先です」

  「何かお聞きになりたいことがあれば……」

判断する権利は、この少年にある。
もし拒否されたとしたら、素直に引っ込めるつもりでいた。
やり取りを済ませてから少年の申し出を聞き、俯いて少し考える。

  「……では、何かお話をしていただけないでしょうか?」

  「斑鳩さんのことや、この町のこと……何でも構いません」

  「今は、一人でいることが寂しい気分なので……」

顔を上げて、少年の問い掛けに応じる。
嘘ではなかった。
最初に彼の話を聞こうと決めたのも、それが理由だったのだから。

空の上には、抜けるような初夏の晴天が広がる。
その下に生じた木陰の中に、二人の輪郭が浮かび上がっている。
子供達が遊ぶ声と虫の音が、遠くに聞こえた――。

448 斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』 :2018/06/23(土) 05:17:52
蝉が騒ぎ、遠間で子供が屈託なく笑う
ある夏の一日に出会った人は影のある女性だった

「――はい。」

その表情は何処か寂しそうに憂いを湛えていたけれど
同時に優しさに溢れていたのだと

「喜んで、それなら最近のこの町で出会った――……」

この奇妙な出会いと関係に
僕は感謝し、何時かの希望を手放さないように祈るのだ。

この冒険の無事を。

449 今泉『コール・イット・ラヴ』 :2018/06/28(木) 17:41:49

夕暮れの湖畔にいた。ピクニックの帰りだった。
友達は塾で先に帰って、レジャーシートや食べ残しを片付けていた。
人気の動画配信者がゴミ拾いをしていて、それに少し影響されて、
自分が出したごみ以外でも触って平気そうなものは拾ったりしていた。

        『イイ心ガケ デス。先生ハ感心シテイマスヨ』

「先生も片付け手伝ってくれればよかったのに」

        『先生ハ 食ベタリ 飲ンダリ シテマセンノデ』
        『自分ノゴミハ 自分デ 処理シマショウ』

「まあ、わかってますけど。試しに言ってみただけです」
「猫の手も借りたいというやつでして」「先生は猫じゃないけど」

「それじゃ、帰りましょうか。でも、まだ明るいですね。もう夏ですねえ」

           『明ルクテモ 夜ハ 夜デスカラ』『不審者ガ出マスヨ』

最後にシートを包んでカバンに詰めて、水筒の残りを飲み干した。
その時ふと顔を上げて、本当に不審者がいたら嫌だなと思って周りを見渡した。

450 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/06/28(木) 19:26:36
>>449

向けた視線の先に、一つの人影があった。
キャップにスタジャン、ジーンズにスニーカーでコーディネートした、
メンズライクな『アメカジファッション』の女だ。
何かを探しているらしく、森の方に双眼鏡を向けている。

「――しまった。見失っちゃったなぁ……」

やがて双眼鏡を下ろし、辺りを見渡す。
移動する目線が、少女の傍らに佇む人型スタンドに向けられた。
その様子から、『コール・イット・ラヴ』が見えていることが分かるだろう。

「……ん」

バードウォッチングの途中、先程まで見ていたメジロを探していた。
メジロを見失った代わりに、思いがけずスタンドを見つけてしまった。
一応、自分以外のスタンドを見たことはある。
ただ、いきなりスタンドに出会うという経験をしたことはない。
さて、どうするべきだろうか。

(とりあえず――挨拶するのが良さそうね)

「こんにちは。それとも、この時間だと『こんばんは』かしら?」

「この辺は『ちょっとしたアウトドア』をやるには良い場所よね」

明るい口調で気さくに声を掛ける。
そして、少女のいる方向へ歩いていこう。
警戒されるってことも考えられなくはないから、少しずつ近付いていく。

451 今泉『コール・イット・ラヴ』 :2018/06/28(木) 20:23:55
>>450

「え? あ、私ですか」「えーと」
「こんにちは、で良いと思います。夜って気がしませんし」

いきなり話しかけてきたのは驚いたけど、なんだかカッコいい人だ。
こういうの『アメカジ』って言うんだよね。私じゃ似合わないかも。

              『…………』

「そうですね、湖もありますし」「場所も広いですし」
「ちょっと虫が多いのが困りますけど」「アウトドアならフツーかも」

先生は私の少し前に出ている。警戒してるのかな。
見えてないと思うから良いけど、不審者扱いしてると思われるかも。 

「お姉さんもアウトドアですか? 双眼鏡持ってますし」
「当ててみます」「……フツーに考えたら、『バードウォッチング』とか?」   

なんで話しかけて来たのかは分からないけど、ちょっと会話を広げてみる。
無視して帰るほど疲れてないし、もう少しこの湖畔にいたい気持ちもあった。

452 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/06/28(木) 21:15:49
>>451

少女とスタンドの少し手前で立ち止まる。
スタンドが前に出ているということは警戒されているのかもしれない。
声を掛けてはいるが、こちらとしても不安を与えたくはなかった。

「当たり。『メジロ』を見てたんだけど、見失っちゃってね」

「目の周りに白い輪がある小鳥よ。綺麗な声で囀るの」

『チャンネル7』に自我はない。
そして、自分が見たスタンドも自我は持っていなかった。
だから、少女のスタンドに自我があるという考えは頭になかった。

「『あなた達』は――『ピクニック』ってところかしら?」

ちらりと横目で『コール・イット・ラヴ』に視線を向ける。
それから『プラン9・チャンネル7』を発現した。
マイクとスピーカーを備えた『機械仕掛けの駒鳥』が、肩に止まっている。

「――あら?こんな所にも『小鳥』がいたわ。なぁんてね」

少女にクスリと笑いかける。
これで警戒が緩んでくれたらいいんだけど。
さて、どうかしらね。

453 今泉『コール・イット・ラヴ』 :2018/06/28(木) 22:22:20
>>452

「へえ、私鳥って詳しくないですけど、メジロは聞いた事あります」
「『ピチュチュチュチュ』みたいに鳴くんですよね」「違ったかな」

本物を見たとか、そういう記憶はないけどテレビで聞いた気がする。
それにしても、バードウォッチングなんて文化的な趣味だと思う。

「達? まあさっきまでは4人いましたけど」
「そうでしたよ。良い天気で、ピクニック日和でした」
「サンドイッチとか交換したりして……」

          『今泉サン コノ人ニハ 見エテマスヨ』

「……ああっ。そういう『貴方達』だったんですか」
「ほんとだ、『鳥』――――そういう『スタンド』もあるんですね!」
  
          『〝人型〟ダケデハナイ トハ 思ッテマシタガ』
          『〝動物〟モ イルンデスネ』『新発見デス』

先生から指摘されて、気づいた。肩の上の鳥を見てもっとはっきりわかった。
スタンド使い。フツーじゃないけど、フツーに町中にいる。ちょっと変わった存在。

「それにしても、かなり好きなんですか? 鳥」

見た目がどういう意味なのかは分からないけど、趣味が鳥でスタンドも鳥だとそんな気はする。

454 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/06/28(木) 23:20:55
>>453

「アハハハ。驚かせちゃったみたいで、なんだかごめんね。
 その――『あなたの』が出てるから、それが気になって」

そこまで言ったところで、
少女とスタンドが別々に喋っていることに気付いた。
まるで、そこに二人の人物がいるかのようだ。
その様子から、『コール・イット・ラヴ』が自我を持っているらしいと察した。

「そう聞くと、『人型』が多いのかしら?
 私は、こういう人の形をしているスタンドは初めて見たわね」

「最初に見たのは『妖精』で、その次に見たのは『ピストル』だったわ」

喋っている途中で思い出したことがある。
そういえば、この場所で最初に見かけた妖精のスタンドも、
自我を持っているようだった。
多分、この少女のスタンドも同じようなタイプなんだろう。

「一緒にお話ができるっていうのは、私が見た『妖精』と似てるわね。
 私の『小鳥』は囀ってくれないから、ちょっと羨ましいな」

「鳥は好きなんだけど、バードウォッチングを始めたのは割と最近なの。
 この子は、こんな形してるけどね」

肩に乗る小鳥に目をやる。
『機械仕掛けの駒鳥』は動くことも鳴くこともない。
まるで小さなオブジェのように佇んでいる。

「『趣味』でもあるし『仕事』でもあるって感じかな。
 なにせ私自身が鳥みたいなものだから。
 鳥は囀る。そして、私も囀ってる。『電波の止まり木の上』でね」

『プラン9・チャンネル7』のマイクとスピーカー。
それらが、私の仕事場であるラジオ局を思い起こさせる。
私にとっては、とても馴染み深いものだ。

455 今泉『コール・イット・ラヴ』 :2018/06/28(木) 23:55:25
>>454

「いえいえ、私の方こそ驚かせちゃったみたいで」
「私の方というか」「先生が勝手に出たんですけども」

        『モウソロソロ 帰ル時間デスノデ』

「なんだか、目覚ましのアラームみたいですねえ」

        『アラームトハ 違イマスヨ』
        『鳴ルマデニ 帰ルノガ一番デスカラ』

            『……トモカク 驚カセタヨウデ』
               『ドウモ スミマセン デシタ』

               ペコリ

先生が頭を下げる。やっぱり、礼儀正しいと思う。
それがフツーなのかな? そうでもないような気もする。

「それにしても、妖精にピストルですか……」
「そうなると、私やユメミンみたいに人型が珍しいのかな」
「私以外で、勝手にしゃべるって人も見たことないですし」

        『…………』

「フツーじゃないのかもしれませんねえ」

        『コレダケ 不思議ナ 存在ナンデスカラ』
        『コレ トイウ 〝基準〟ハ 無イト思イマスヨ』
        『〝先生〟ガ言ウノモ ナンデスガ』

「そうかな、それならいいんですけど」

肩の鳥を見る。機械みたいで、生きている鳥とは全然印象が違う。
部屋に飾ってたらお洒落な感じだ。こういうのどこかに売ってないかな。

「貴女自身が? えーと、声がキレイって話でしょうか?」
「電波の止まり木……ってことは、実は『ユーチューバー』だったり?」
「あっ。それとも、どこかの地方局のアナウンサーさんとか?」

よくわからないけど良い声だと思うし、そういうお仕事をしてる人なのかな。
フツーの人とはちょっと違う感じがする。そう思ってるからそう感じるだけかも。

456 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/06/29(金) 00:48:17
>>455

「あら、これはご丁寧に。
 私の方こそ、いきなり話しかけちゃってごめんなさい。
 警戒させちゃったでしょ?」

『先生』と呼ばれるスタンドにつられて、お辞儀を返す。
実際に警戒していたかは分からないが、そんな雰囲気も感じた。
もしかしたら、私の勘違いかもしれないけど。

「あ、ひょっとして私のこと怪しい人だと思ったんじゃないの〜?
 なぁんてね。アハハハ」

「突然知らない相手に声を掛けられたら何かと思うわよねぇ。
 相手が男の人だったら『ナンパかな?』って思っちゃうわ。
 内心ちょっとされてみたいなぁ――っていうのは冗談だけど」

サバサバした調子の明るい声で話し、そして笑う。
よく通る澄んだ声だった。
『ボイストレーニング』とか、
そういった専門的な訓練を積んでいることを思わせる声色だ。

「そうね、『人の数だけ個性がある』って言うし。
 『スタンド使いの数だけスタンドがある』っていうのも、
 あながち間違いじゃないかもね」

自分のスタンドと少女のスタンドを見比べてみて思う。
外見も中身も全く違う。
それは、私と彼女との違いでもあるのだろう。

「惜しいんだけど、ちょっと違うわね。
 かなりイイ線いってるんだけど」

ポケットから名刺入れを取り出す。
そこから一枚の名刺を取り出して、少女に差し出す。

「これが私の『正体』よ。大したもんじゃないけどね」

『放送局名』や『放送時間』、『連絡先』といった情報と一緒に、
以下のように記されている。

『――あなたの傍に電気カナリアの囀りを――

    【 Electric Canary Garden 】

          パーソナリティー:美作くるみ』

番組名の下には、
『電源コードの付いた丸みのある小鳥』のイラストが添えられていた。
『電気カナリア』という名前も小さく書かれている。
それが番組のイメージキャラクターだった。

「よければ、あなたのお名前も教えてくれる?
 『先生』を連れたお嬢さん。
 それと、『先生』の名前もね」

457 今泉『コール・イット・ラヴ』 :2018/06/29(金) 01:45:58
>>456

「先生は心配性なんですよ」

           『〝先生〟デスノデ』
           『少シ 警戒シマシマイマシタ』
           『杞憂ダッタヨウデ スミマセン』

「私からもごめんなさい、こういう先生でして」

        ヘヘ

「私は怪しいとか思ってなかったですから」
「フツーに、オシャレな人だな〜ってくらいで」

なんて調子のいいことを言ったりもする。
実際、知らない人がみんな怪しいなんてことない。
いきなり話しかけてくる知らない人は……
驚きはするけど、怪しいとはちょっと違うかも。

「うーん、そういうものかもしれませんねえ」
「っと、名刺ですか」「私持ってなくて」「名刺入れも」
「あとで財布にでも入れときますね、どれどれ……」

名刺を眺める。放送局、ってことはアナウンサー?
でも聞いたことのないチャンネル。もしかしてこれって。

「えーと、ラジオのパーソナリティーさん!」
「って呼び方でいいんでしたっけ」「『DJさん』?」
「わーっ、有名人に会っちゃった……」

           イマイズミ ミライ
「あっ、私ですか。『今泉 未来』です!」
「一応、清月学園に通ってまして」「高1です」
 
                コール・イット・ラヴ
           『〝世界はそれを愛と呼ぶ〟』
           『呼ビ方ハ オ任セシマスガ』
           『〝先生〟デモ 名前デモ アダ名デモ』

自己紹介を返す。ラジオの人って、フツーじゃない。
私は、フツーでいいんだけど、ちょっとだけ憧れる気もする。

458 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/06/29(金) 20:36:49
>>457

「アハハ、そこまで有名って程でもないわ。
 まぁ、なんというか、そこそこね」

番組の公式サイトに顔は載っている。
だから、それを見た人は知ってるし、見ていない人は知らない。
大体そんな程度だ。

「私はパーソナリティーって名乗ってるけど、どっちでもいいわよ。
 ただし、私はターンテーブルは扱わないけどね」

「『クラブのDJ』じゃないから」

冗談交じりに言って、軽く笑う。
そして、考えるように顎に手を添える。
思考の糸に触れたのは清月学園という部分だ。

「清月――この前、ラジオで話した子も清月生だったわ。
 その子は高二だったかしら。
 やっぱり、この辺は清月生が多いのね」

「未来さんね。
 それから、そちらが『コール・イット・ラヴ』――素敵な名前ね」

「私の名前は――そこに書いてある通りね。
 代わりに、この子の名前を教えてあげるわ」

「『プラン9・チャンネル7』――それが、この『小鳥』の名前よ」

相変わらず小鳥は鳴き声を上げず、身動ぎ一つしていない。
流暢に言葉を話す『コール・イット・ラヴ』とは対照的だ。

459 今泉『コール・イット・ラヴ』 :2018/06/29(金) 23:10:07
>>458

「そうなんですか? じゃあパーソナリティさんで」
「DJってもうちょっとワルそうなイメージですし」
「ちょっと偏見かな……」

           『偏見デスヨ』

「偏見ですか、それはごめんなさいですね」
「悪いというか、パリピって感じ?」

悪口とかじゃなくてイメージの話だ。
悪いのがダメだとは思わないし。私は悪くなる気はないけど。

「このあたりはまあ、清月小中の校区ですから」
「公立に行ってる子もいますけど」「ま〜少ないです」
「高2って事はセンパイですね、もしかしたら知り合いかも」

ラジオ好きな知り合いもいたような気はする。誰だったかな。
今までそんなに興味のあるジャンルじゃなかったから聞き流してたかも。

           『オ褒メノ 言葉 感謝シマス』
           『貴女モ 綺麗ナ名前ヲ シテイラッシャル』

「へえ、『プラン9・チャンネル7』さんですか!」
「なんだか賢そうな名前ですねえ」「宇宙っぽいというか」
「それにしても静かですね。って、喋らせてないならフツーなのか」

動かず、喋る事もない鳥のヴィジョンを少し眺める。
人のスタンドをゆっくり見るのはドクター以外だと初めてかも。

「ちなみに、くるみさんは『和国』さんのところで貰ったんですか?」
「あ、スタンドの話です」「私はそうなんですけど」「他にもあるみたいで」

460 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/06/30(土) 00:23:23
>>459

「宇宙、ねえ。そんな風に思ったことはなかったけど、
 言われてみると、そんな気がしてきたわ」

「新しい発見ね。ありがとう」

そして、聞き覚えのない単語が耳に飛び込んだ。

「――『和国』?いえ、違うわ。
 そんな場所もあるのね。私は『音仙』という所だったわ」

「他にも同じような場所があるなんて考えたこともなかったわ。
 『コール・イット・ラヴ』は、そこで生まれたというわけね」

「私としては、この手の話がラジオで使えないのが惜しいわねぇ。
 内容は、すっごく面白い話なんだけど。
 残念ながらトークのネタにはできないわね、アッハハハ」

「実を言うとね、今は静かだけど、この子もお喋りできるのよ。
 見せましょうか?」

そう言って、不意にスマホを取り出す。

「あ、ごめんね。ちょっといいかしら?」

「もしもし?ちょっと聞きたいことがあるんだけど、教えてくれる?」

少女に断ってから、スマホを口元に持っていき、
まるで電話の向こうの誰かと通話しているかのように声を発する。
だけど、実際は違う。
『小鳥』の背中にあるマイクが、私の声をキャッチして、スマホに送る。

「ええとね――今、『何が見える』?」

ごく何気ない口調で、簡単な質問を投げ掛ける。
それに対応して、『小鳥』の口にあるスピーカーから、
『読み上げソフト』のような機械的な音声で、質問の答えが返ってくる。

『シゼンコウエン ガ ミエマス。
 チカク ニハ ショウジョ ガ ヒトリ タッテイマス。
 ショウジョ ノ トナリ ニハ スタンド ガ イルヨウデス』

その姿は、まるで『小鳥』が喋っているように見えた。
しかし、本当に喋っているのは、手に持っているスマホだった。
擬似的な『自立意思』と『視聴覚』を与えられたスマホの声が、
『小鳥』のスピーカーから出力されているという仕組みだ。

461 今泉『コール・イット・ラヴ』 :2018/06/30(土) 01:32:36
>>460

「いえいえ、どういたしまして」
「うーん、くるみさんも『音仙』ですか」
「私も『和国』しかないと思ってたんですけどね」
「前に友達に聞いて、『音仙』って人もいるって聞きました」

一度探してみたが、それらしい店は見つからなかった。
二人も同じ名前を挙げるって事はこの町にあるんだろうけど。

「確かに、フツーの人に話しても『作り話』だと思われそうですもんねえ」
「え、喋れるんですか」「あーでも、友達のスタンドも少し喋ってましたね」

などと言いつつ様子を見守っていると、小鳥がしゃべりだした。
スマホを使って自分のスタンドと話す、そういうのもあるんだ。

「へーっ」

               『先生ト今泉サンノ コトデスネ』

「なんだか『音声案内』みたいですね」
「見た目が機械ですし、意外とかではないですけど」
「スマホで連絡できるスタンドって、ちょっと新しいですね」

遠くにあるものを見て来てもらったりも出来るのかな。
見た目が鳥だし、もしかしたら飛んだりもできるのかな。

スタンドはフツーじゃないから、いくらでも想像出来る。
フツーなことのほうが想像するのって難しいのかも。

「そうだ、私も『プラン9』さんと話したりとかって出来ます?」

462 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/06/30(土) 21:38:38
>>461

「『音声案内』ねえ。それは的確な表現ね」

「ほら、口の中にスピーカーが見えるでしょ?
 ここから声が出てるってわけなの」

「背中にあるのはマイクよ。
 これが私の声を拾ってるの」

「実を言うと、このスマホを通して喋ってるわけじゃないのよ。
 『今、何が聞こえる?』」

スマホを下ろして、再び質問する。
それに対して、また答えが返ってきた。

『カゼ デ クサバナ ガ ユレル オト ガ キコエマス。
 トオク デハ トリ ガ ナイテイマス』

その場にしゃがんで、揺れる草葉を軽く撫でる。
そして、すぐに立ち上がった。

「――こんな風に、ね。
 でも、このスマホが全然関係ないわけじゃないのよ。
 これがあるから、今『プラン9』はお喋りできてるの」

                        フ ァ ン
『プラン・チャンネル7』は音響機器を『支持者』に変える能力。
音響機器がなければ、それこそオブジェと変わらない。

「お話できれば楽しかったんだけど、
 『プラン9』は私の声にしか反応しないのよ」

「未来さんの『コール・イット・ラヴ』みたいに自分から喋ることもないしね。
 質問に答えるのが専門だから」

「『コール・イット・ラヴ』は何か……あら?」

言葉を途中で止めて、指先に視線を向ける。
さっき葉に触れた時に切れたらしく、指の腹に小さな傷ができていた。

463 今泉『コール・イット・ラヴ』 :2018/06/30(土) 22:51:08
>>462

「へー、流石ラジオのパーソナリティさんですねえ」
「質問に答える専門っていうのも、なんとなくラジオ番組みたいです」

ラジオ番組に詳しいわけじゃないけど、イメージとして。
聞いてる人……リスナーがハガキを送ってそれに答えるイメージがある。

「その点、先生はそんなに――」

      シュルルルル

         『"補修"ヲ 開始シマス』

「あっ、始まっちゃった」「指、切ってたんです? 大丈夫ですか?」
「えーっと、先生はですね、『傷』とか『壊れたもの』を直して回るんです」
「直そうとする基準はよく分からないところもあったりするんですけど」

先生の手で、有無を言わせずマスキングテープが巻かれていく。
剥がせば元どおり。フツーじゃない。けれど、もう驚きはしない力。

「そういうちょっとした傷なら、すぐに直してくれちゃいます」

            『……治スカラトイッテ、怪我ヲシテイイワケデハ ナイデスガ』
            『モシ 怪我ヲセザルヲ 得ナイナラ 先生ガ治シマス』

「頼もしいです、先生」「私も怪我する気は無いですよ」
「……っと、そろそろ流石に行かなきゃですかね」

            『ツイ 話シ込ンデ シマイマシタネ』

「楽しかったので、仕方ないですよ」
「くるみさん、今日はありがとうございました!」
「偶然だったけど……話せて楽しかったです」

荷物をまとめて、そろそろここを離れる準備をしておく。
話すのは楽しいけど、そろそろ暗くなり始めてる気もするし。

464 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/06/30(土) 23:45:06
>>463

「へえ!すごい!」

一瞬で元通りになった指を見つめて、感嘆の声を上げた。
やはりというか、自分とは全く違ったタイプのスタンドのようだ。

「うっかり怪我をしたり物が壊れることって、
 普段の生活でも結構あるものね。
 随分と実用的で羨ましいな」

「それについて、もう少しお話を伺いたいところだけど――
 今日はそろそろお開きの時間みたいね」

キャップのつばを持ち上げて、沈む夕日に視線を向ける。
暗くなってきたし、私も帰ることにしよう。

「こちらこそ、ありがとう。未来さんと話せて楽しかったわ」

「『音仙』で聞いたんだけど、スタンドを持っている人同士は、
 引き合う性質があるそうよ。
 もしかすると、またどこかで会うこともあるかもね」

「それじゃ、未来さん――」 「それから『コール・イット・ラヴ』にも――」

      「――『See You Again!!』」

笑顔で片手を軽く振り、別れの言葉を送る。
そして『プラン9・チャンネル7』を肩に乗せて駐車場の方に歩いていこう。
そこに愛車のスクーターを停めてあるのだ。

他のスタンド使いと出会うことは、自分のプラスにしていきたい。
ただ、トークのネタに使えないのが残念だけど――。
だけど、自分と同じような人と出会えたことで、
明日も頑張ろうって思えるのは良いことよね、きっと。

465 今泉『コール・イット・ラヴ』 :2018/07/01(日) 01:10:55
>>464

「便利遣いするなって、先生は言うんですけどね」

          『必要ノナイ時ニ 乱用スベキデハ ナイデス』

「減るものじゃないんだし、とは思うんだけど」
「先生がそう言うなら、まあ」
「確かに、自由に使えたら物を壊しやすくなっちゃいそうですし」

先生の直す力はどこまでできるのか分からない。
だから、自由に使えたらどこまででもやってしまう気がする。

・・・そんなに欲が深いってつもりじゃないけど。フツーだけど。

「引き合う、ですか? 磁石みたいに」
「何だかロマンチックな話ですねえ」
「でも、信じてみたいです。また会いたいですし」

            『エエ ゼヒ マタ』

「くるみさん、さようなら〜」
「今度はラジオのお話とか聞かせてくださいね!」

             ブン  ブン

「………………」

大きめに手を振って、学校から帰る道のりに戻る。

ここから歩き出す前にスマホを取り出して、『美作』って調べて、
ようやくそれが『ミマサカ』と読むと知って、少し安心したのは内緒。

466 ココロ『RLP』 :2018/07/21(土) 05:14:31

湖畔公園――――この季節に長居するのは流石に堪えるけど、
冷房がガンガンに掛かった家でピアノを教えている時間と同じくらい、
ここで過ごす時間は良いものだ。水は冷たいし……冷たいし……

          ……水はまあ、冷たいけども。

(あ、暑いわ……! 水は冷たくっても頭が暑いわ…………
 夏ってそういう季節だもの、し、仕方ないけど……
 日よけの帽子をかぶってるのに、まだ暑いなんて…………
 こ、木陰に入っても、暑いものは暑いし……って、
 な、なんだか、木陰が悪いみたいな言い方だけど……
 違うわよ、木陰は私の避暑の為にあるんじゃないし…………)

             (…………)

      (い、いくらなんでも……猛暑すぎるわ…‥……!
        ゆ、油断していた私が悪いとはいえ…………!
         も……もう少し、手心とか……な、無いわよね)

  キュルキュル

         キュポン

「ふぅ…………」

(それでも……す……スポーツドリンクをたくさん入れてきてよかったわね……
 いつもの調子で、少し濃く淹れたミルクティーなんかにしてたら、今頃…………
 や、やめましょう。ふ、不謹慎だわ……こんな妄想。でも私が今その暑さに直面しているし)

(も、妄想というより……私、暑さでやられているんじゃ……!?)

足を水に着け、水筒を傾ける。
もちろん水に入っていいエリアでやっている。
そういうので怒られるのは嫌だし、迷惑だからだ。

(は……早く帰りましょう、こんな日は早く帰って長めにお稽古をする方が良いわ。
 そうよ、そうしましょう。仮に倒れたりしたらどれだけの人に迷惑が……
 め、迷惑どころか…………た、助けられる前提で考えてるけど…………だ、だめよ無駄に重く考えちゃ)

それにしても暑すぎる季節。ココロとしても茹だる頭でネガティブが加速する。
早く帰ろう、その一心で湖から足を上げて、靴を履きなおした。さあ早く帰ろう。

・・・そこでふと気付くが、そういえばずっと周りを見ていなかった。近くに誰かいたりするだろうか?

467 『ニュー・エクリプス』 :2018/07/21(土) 22:38:39
>>466

 「あ」

    「つ」

       「いっ」

           「スッーーーー!!!」


 『あついー(スッーー)!!!』

 「なんて暑さだ! シャツから下まで、もうびっしょびしょ!
何だろうねっ、地球温暖化って言うのを今まさに味わってるよ
ムーさん、のんちゃん! 暑い暑い暑いー あーーっ(´Д⊂ヽ」

 「し ん と う め っ き ゃ く……」

「うわぁ!? む ムーさんが白目向いて棒立ちになってる!?
ムーさんっ、しっかりして頂戴! サッちゃん水 水っ!!」

 「ぬうおおおおおおぉぉぉ!!!! 了解っスーーー
権三郎!! レスキューエクリプス、出動っスーーーーー!!」

 『パァァァウゥゥンンッ〜〜!!!』


 何だか、貴方の温度をさらに上昇しそうな騒がしい
学生服四人+犬一匹が通りかかって来た。ドドドドド!!! と言う
激しい足音と共に、ココロの直ぐ傍をテンション高い少女と犬が
水に突撃してくる。

「んっ(`・ω・´) あぁ、こんにちわっス!!
ちょっと水を分けてもらうっス!!!」

「(;^ω^) パウッ!!!」

 挨拶もそこそこに、鞄に入っていたらしいプラスチックのタライから
水をすくって、またドドドドド!!! と三人のほうへ戻る!!

 「そぉぉぉおおおおおいいいいっっ!!!」

               パシャ―ンっっ!!!


 「……はっ!? 私は一体今まで何を……」

 「棒立ちになってたよ……(´・ω・`)」

 「……とても綺麗は花畑が見えていた」

 「こわっ!?Σ」

 四人は、騒ぎつつ貴方へと近づいてくる。清月の制服だとわかった。

468 ココロ『RLP』 :2018/07/21(土) 23:52:43
>>467

「ひ、ひぃっ……!?」

          ドサッ

思わず立ちかけていた足を崩し、軽いしりもちを着く。

(なっ、なにっ……人!? み、水がこっちにも……!
 つ、冷たいわ……暑いから、あ、ありがたいのかも……?
 な、なんて。遊園地の水を撒くショーじゃないのよ……!?
 ……い、いくら暑いとはいえ……いいえ、)

       (……で、でも、涼もうとしたんでしょうし、
         暑さで大変な事になってたみたいだし……
          せ、責められるはずないわ。少し濡れたぐらいで)

突然横に4人も飛び込んでいくと、
当然水は撥ねるわけで、結構濡れた。

「えっ、こ、こんにちは……!?
 お、お水は私のじゃないし、
 別に、す、好きにしてちょうだい……」

とはいえ涼しさを感じない事もないし、
暑さの限界での奇行だ、悪いとは言えない。

(あっ、戻って来たわ……って、この制服……清月だわ。
 私と同じ学年じゃなさそうだけれど……1年生かしら?)

「……だっ……だ、大丈夫かしら?
 相当……暑さに、ま、参っていたようだけれど……」

(なんだか失礼な言い方になってしまった気がするわね……)

「わ、私も、相当参ってるから……湖は、冷たくていいわよね」

内心気を遣いつつ、近付いて来る四人組に先んじて声を掛ける。
この状況で、黙って待っていると『怒ってる』と思われそうな気もするから。

469 『ニュー・エクリプス』 :2018/07/22(日) 19:30:59
>>468

城生「こんにちはー。暑いねぇ、本当に……今年は猛暑で倒れてる人も
続出してますもんねー」

ムーさん「私もほぼ 倒れかけました」

エッ子「ムーさんが、未だやばそうΣ さぁ、早くアレを引き揚げるのだ佐生隊長!」

朝山「了解っス! 権三郎!! 一緒にアレを引き揚げるっスーーー!!」

権三郎「パァーゥッ!」

 動きが忙しい四人と一匹だ。貴方に挨拶もそこそこに、湖畔公園の水の張る
片隅に手を伸ばして、何やら長い紐らしきものをずるずる引っ張り……っ。

 『出たー(っス)!!!』

 出たのは、瑞々しく実がとても詰まってそうなスイカだっ!!

城生「今日は凄く暑くなるって言うから、此処で冷やしておいて正解だったねー」

朝山「ふっふっ、我が悪の名案は常に天気の先読みをするんっスよ! と言うわけで
さっそくスイカを食べるっス!! スイカ割りっス!!」

エッ子「うおおおぉぉぉ〜! スイカ割り〜っ!」

 やんややんやとスイカ割りが目の前で始まろうとしている。
そんな騒がしい集団から、長身の女の子は長めの棒を出して貴方に近寄る。

ムーさん「……んっ」

 棒を差し出してきた……スイカ割りを一緒にしようと誘ってるのか……?

470 ココロ『RLP』 :2018/07/23(月) 00:22:27
>>469

「た、倒れなくって本当に良かったわ……
 あ、お水……じゃなくてスポーツドリンクだけど、
 水分補給も大切らしいから、わ……私の飲みさしでよかったら」

           「って」

「す…………スイカ………………!?」

(わ、私が座っていた横で……スイカが冷やされていたの!?
 ど、どうしましょう、蹴っちゃったりしてなかったかしら……)

水筒を差し出そうとしていたところ、
いきなり出てきたスイカに困惑した。
しかし、差し出されたそれで意味を悟った。

「えっ……………!?」

そして、さらに困惑した。

(ま、まさか……私も混ぜてくれようとしているのかしら……!?
 なっ……なんてコミュニケーション能力が高いのかしら……
 正直、も……もう帰りたいというか……暑いし、あまり外に長居したくないのだけれど……)

スイカ割りといえば涼しそうだが、
猛暑具合にはなんの変わりもない。
熱中症には『涼しげ』では勝てないのだ。

(で、でも……断って帰っても、ピアノの練習を少し長くするだけだし……
 いえ、それも大事なことだけれど……そのために、折角誘ってくれたのを……)

「こ……これ、私が持っていいの? 貴女達の役目じゃあなくて……いいのかしら」

それにしてもスイカ割りは割るのが楽しいと思っていた。
まさか見ず知らずの自分に割らせるとは……これもコミュ力なのか?

(ど、どうしましょう……もし私が割るんだとしたら、責任重大よ……!?
 間違えて湖に転落したりしたら……そ、されはある意味ウケそうだけど……
 でも私、そんな若手の芸人さんみたいな体の張り方をするべきなのかしら……?
 ……と、というか、割るのは目隠しをしてだから……
 いえ、まさかそんな事しないはず、信じるのよ、疑うのは失礼すぎるわ……)

棒を受け取ってしまったものの、ここからどうするべきなのか逡巡する。

(ま、待たせてたりするのかしら、私……この暑い中……でもこれは、い、いきなり過ぎるわ……!)

471 『ニュー・エクリプス』 :2018/07/23(月) 08:41:20
>>470

 これ、私が持っていいの?

エッ子「細かいことは きにしなーっい!!ヽ(^。^)ノ」

城生「楽しい事はみんなでしたほうが良いですから。
あ、何か急用があってご迷惑とかなら やめますけど」

 スイカの下に、いそいそとシートを設置しつつココロに返答する
学生ら二人。残る二人は近くにまわり。

 ムーさん「さぁ、少女よ……めぐるめぐスイカ割りの世界へと
いざなわれるのだぁ……ぬんっ」 ペトッ

 貴方の背後に回り、目隠しを自分の両手で行った。密着してる所為か
暑苦しく目元に湿り気が増し、それでいて微妙な双丘が背中にあたる。


朝山「ソーレっ 前、前 前に行くっスー! 構えて構えてっ!」

権三郎「パウッ パウッ パーウッッ!」

振れー 触れーっと、もう一人の少女も団扇を振りつつ周囲の熱気を
拡散させながら応援モードに入ってる。犬も応援してくれているようだ

472 ココロ『RLP』 :2018/07/23(月) 17:25:09
>>471

「い、いえ……急用とかは無いわ。
 迷惑なんかでもないし……むしろありがとうよ。
 や、やりましょう。上手くできるかは自信がないけれど……」

(こ、こうまで言われて参加しないなんて失礼すぎるわ)

             シュル

「あっ、ご、ごめんなさいね、着けさせちゃって」

(め、目隠しが暑いわね……)

密着はそんなに気にならないが、暑苦しい。
早急にスイカを叩き割り、清涼感に包まれたい。

(こ……心なしか犬も応援してくれている気がするわ。
 別に、特に犬が好きというわけではないけど……
 それにしても、この中の誰かの飼い犬なのかしら……)

      (こんなに暑いのに散歩なんて大変よね……)

わりと利口な犬だし、しつけがいいのだろうか。
ともかく棒を両手でしっかり持って、言葉通り動く。

       フラ
             フラ

「……ま、まだ? もうちょっと前かしら……?」

(湖に落ちるような方向じゃないし、大丈夫……よね?
 いえ、落ちそうならさすがに声を掛けたりしてくれるはず)

                (し……信じているわよ……!)

473 『ニュー・エクリプス』 :2018/07/23(月) 23:47:25
>>472

 あぁ……ココロ ココロよ。君はムーさんが
何か黒っぽい布とかで目隠しをしたと思い込んでいる。

 だが、違う。……ムーさんんは『ただの両手』で君の
目元を覆っているのだ。凄く この暑さでべとっとした手だ。
余計に君の暑苦しさを引き立てている。

城生「あっ 棒が右に寄りすぎ― もうちょっと左ー!」

エッ子「そのまま前だー! そんでもって左に左、もうちょっと左
んでもって斜め四十五度に棒を構えて〜!」

朝山「思いっきりズドンっと振り下ろすっスー!」
権三郎「パゥー!」

 約一名、わかり難い指令があったものの。スイカの位置を
教えてくれてはいる。さぁ フィニッシュだ!!

474 ココロ『RLP』 :2018/07/24(火) 00:43:18
>>473

「……………??」

(あ、あら……なんで目隠しされたのに、
 まだ背中にくっついてるのかしら……って、
 も、もしかして、目隠しが布じゃなくて……手!?)

     (そ、そうだわ! 妙に暑いと思ったら……
       ど、どうすればいいの……あ、歩きづらいし……)

            (でも、ぬ、布が無くてもスイカを割りたいという、
              この人たちの気持ちに私は答えてあげるべきよ)

     フラ
              フラ

(…………こ、答えてあげるべきよね。
 そうよ、きっとそう……別に悪い事とか、
 嫌な事をされているというわけではないわ……)

(嫌と言えば……う、後ろの子、熱中症になりかけてた子よね?
 大丈夫なのかしら、こんな暑いことして……い、嫌じゃないかしら?)

あまりの急な事態にやや混乱はしているものの、
言われるがまま歩いていく……分かりやすい指示だ。

(犬も何か指示をしてくれてるのかしら……
 い、いえ、犬に気を取られ過ぎては駄目よ、
 彼女たちの大事な仲間なんでしょうけれど、
 スイカ割りをする上では……犬は関係ないわ)

        「こっ……」

                  「ここっ……ね!」

     ブン!

ココロは気が小さいが体は大きいので、威力は問題ないはずだ!

475 『ニュー・エクリプス』 :2018/07/24(火) 18:18:31
>>474

 ムーさんが何故、適当に鞄を漁れば目隠しになる布はきっと
見つかるだろうに、ソレをしない事。
それは真夏の太陽が醸し出した悪戯心なのかも知れない。
 もしくは、単に暑すぎてダル過ぎて面倒だったからも知れない。

まぁ、十中八九後者で。殆ど意味のなさない行動だから気にしなくていい。

 犬の言ってる意味についても考えつつ、貴方は三人と一匹の声援と
指示に従い、憑依した幽霊のように、べったりくっ付くムーさんと
共に歩きつつ、棒を振りかぶる!!

       ――パコンッッ!!

     『割れたーーーー(っス/パーァ ウン)っ!!!!』


 暑い日差しの下、湖畔公園に女の子達の歓声が轟いた。


     ・ ・ ・ ・


 シャリシャリ

 「美味しいねぇー」

 「冷えてるっスねぇ〜」

 「極楽だ」

 「あーまーいーぞ!」

 スイカを割ったら、当然割れたスイカを食べ始めるタイムだ!
ベンチに座って仲良くスイカを食べ始める。飼い犬も、スイカの切れ端を
美味しそうにモグモグしている。

 あと、ココロの分も当然用意している。何か振る雑談がなければ
きっと、このまま仲良くスイカを食べ終わった後に別れるだろう……。

476 ココロ『RLP』 :2018/07/24(火) 21:47:26
>>475

        パ

               コン!


棒を振り抜いた感覚が、空を切らなくて本当によかった。
そして――――このスイカを叩き割った感覚の、なんと爽快な事。

「やっ、やった…………やったわ!」

         (夏にみんなスイカ割をしたがる理由……
           こ……こういうことだったのね!
            今日知るとは思ってなかったけど)

     ・ ・ ・ ・

       ・ ・ ・ ・

「こんな季節でも、水だけでここまで冷えるのね」

              「なんだか不思議だわ」

        シャリシャリ

「あっ、きょ、今日はありがとう、私のことも混ぜてくれて……」

       「スイカまで貰ってしまって……本当に、嬉しいわ」

お礼を言うばかりではつまらないだろうし、
雑談をする事もあったかもしれないが、
なにせこの暑さ、そして倒れかけた者もいる。

(あまり長く引き止めるのも良くないわね……
 スイカで体が冷えている内に、涼しい所に帰りましょう)

            (この子達も暑いのは同じでしょうし……)

ココロ的にもやっぱり暑いものは暑いので、食べ終えたら家に帰ろう。
ひと夏の思い出と言うには小規模だが、なんだか忘れられない日にはなりそうだ。

477 『ニュー・エクリプス』 :2018/07/25(水) 15:39:03
>>476

 「そんじゃー バイバーイ!」

「あっ 名前を聞くの忘れちゃったねぇ」

 「なーにっ! また今度会えるっスよ!」 『パーウッ!』

「まぁ、適当にぶらついていればな」

 夏は始まったばかりだ!
ニュー・エクリプスの悪の進撃もまだまだ開始したばかりなのだ!!

 「うおおおぉぉぉ!! 真夏に出来る事を全部やりきるっスぅぅうう!」

燦燦と輝く太陽に負けず劣らず! 悪の首領は暴れ(遊び)まくるのだ!!!

478 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/05(水) 20:34:12

「ない――」

      ササッ
          ササッ

           「ない――」

                ササッ
                    ササッ

                      「ない――」

『パンキッシュなアリス風ファッション』の少女が、地面に屈み込んで、
手探りで『何か』を探していた。
少し離れた所には『ブルーのサングラス』が落ちている。
手を伸ばしても届かない距離だが、その位置は『視界の外』ではない。

今から約一分前――大型犬と、それを散歩させている子供が、
不意に背後から駆けてきた。
咄嗟に避けることはできたのだが、問題は『その後』だ。
バランスを崩してスッ転び、同時にサングラスが外れてしまった。
強い光を遮るサングラスなしでは、自分の視力は皆無に近い。
だから、今こうして手探りでサングラスを探しているというワケだ。

479 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/05(水) 23:07:26
>>478

「探し物はこれかな?」

そういって、サングラスを拾って目の前まで持ってくる。
耳に黒いリングのピアス。
右手の人差し指と左手の中指に銀のリング。

「明日美、だよね?」

「どうしたの。大丈夫? 元気?」

480 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/05(水) 23:46:39
>>479

「ほほう――」

「そのこえはレーゼーくんじゃないかね??」

反射的に、声の聞こえた方向を振り返る。
その視線が、声の主の方へ向けられている。
しかし、実際には彼の姿は見えていない。

「あー、そうそう。コレコレ。コレをさがしてたんだ」

「サンキュー!!」

手を伸ばしてサングラスに触れる。
指先の感覚で、それが探していたものだと分かった。
感謝の言葉を述べて、それを受け取ろうとする。

「ん??ゲンキだよ。ゲンキゲンキ。いつもとおんなじ」

「ちがいがあるとしたら、ソレがあるかないかってコトくらい」

サングラスを指差しながら、黒目がちの瞳で、そう告げる。
その瞳には、どことなく光が欠けているように見える。
サングラスがない状態だと、それがはっきりと分かる。

481 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/06(木) 00:01:44
>>480

「そ。冷泉君だよ。冷泉咲ちゃんだ」

にっこり笑ってみせる。
多分相手は見えてないんだろうなと思いつつも。

「じゃあこれで元通りだ」

相手が触れたのを確認して手を離す。
目を丸くして彼女の顔の前で手を振ってみる。
ちょっとした確認作業だ。

「これかけたら見えんだよね?」

「割れたりしてない?」

482 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/06(木) 00:21:54
>>481

「そういうコト――」

「コレさえあれば、コーディネートはパーフェクト」

受け取ったサングラスを元通りかけ直す。
すぐには視力は戻らない。
徐々に、目の前に世界が戻ってくる。

「やっぱコレがないとね」

「なんといっても、このファッションのポイントだから」

「そのピアスとリングみたいにね」

冗談を言いつつ、同じように笑う。
目の前で振られる手に反応して視線が動いた。
確かに、それが見えている。

「レンズにキズは――ついてないね。
 このサングラス、けっこうイイやつだからさ」

「だから、ひざしがつよいひでも、バッチリみえるってワケ」

483 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/06(木) 00:46:22
>>482

「パーフェクト、素晴らしい」

「んー……確かにこれはポイント、というか僕の好み」

ピアスを指でつまむ。
黒と銀のリングが並びあう。
幼い十六歳の少年が多少大人びて見えた。

「へぇ……僕はサングラス使わないからわかんないけど、色々あるんだねぇ」

未知との遭遇だ。
未知、というと少し大げさかもしれないが意味合い的にはそんな感じだ。
冷泉咲の視力は悪くない。
メガネにも縁はなかった。

「今日は散歩? それともサングラスを探しに?」

484 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/06(木) 01:14:25
>>483

「きょうはね――ちょっとした『ぼうけん』だよ」

「まだみたことのないモノをさがしに、ともいうかな??」

パンパンと軽く手の汚れを払う。
そして、少年の顔を見つめる。
今は、しっかりと彼の顔が見えている。

「それで、いまはレーゼーくんをみつけたトコ」

「レーゼーくんは??さんぽ??」

「せっかくあったんだし、ちょっといっしょにあるかない??
 ほら、このヘンはさんぽコースだし。
 さっきはイヌとコドモが、バババッとココをはしってった」

そう言いながら、片方の手を横にサッと素早く動かして見せる。
そんな感じだったというジェスチャーだ。
それから、頭の中で一つ思い出した。

「あ――」

「そういえばさ、『おねえさん』はゲンキにしてる??」

一度、電話を通して話したことがある。
独特な雰囲気のある特徴的な人だった。
だから、そのことはよく覚えていた。

485 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/06(木) 01:40:27
>>484

「冒険……?」

「明日美ってアグレッシブだね。結構」

手の汚れを払っているのを見て、他に汚れている場所がないか探してみる。
見つけたとして気安く触れないとは思うが。
勿論、相手に気を遣うという意味で。
相手は年頃の乙女であった。

「冷泉君は散歩ー。一人ぼっちで家にいるのも寂しいから出てきたの」

「だから一緒に歩くよ」

「……犬ね。なるほどね」

彼女の言葉一つ一つに反応を返す。
合いの手という奴か。
相槌という奴だろう。

「お姉さんは元気。ただ最近会ってない。部屋こもりっぱ」

「だから、遊んでくれる人いない」

486 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/06(木) 02:04:09
>>485

青いジャンパースカートに土が付いているのが見えた。
少年の視線を見て、その汚れに気付いて払い落とす。
リボンのように頭に巻いているスカーフが風を受けて揺れた。

「ありがと――」

「わたしはさ、いつかセカイのゼンブをみてみたいとおもってるんだ」

「――だって、わたしは『アリス』だから」

「いまは、このマチのゼンブをみるのが、とりあえずのもくひょう」

肩を並べて歩きながら、自分の夢を語る。
突拍子もない目標だが、簡単に叶ってしまっては面白くない。
自分にとっては、それは一生かけても叶えたい夢だった。
ライフワークと呼んでもいいかもしれない。
要は、そういう生き方をしたいということだ。

「こもりっきりかぁ〜〜〜。なんかのジッケンとかケンキュウとか??」

「じゃ、わたしとあそぼうよ」

「んー」

「『かくれんぼ』しない??わたしがオニやるから。
 じつは、わたしとくいなんだ〜〜〜」

487 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/06(木) 02:37:37
>>486

「世界の全部か……いいじゃん」

「この街だけでもかなりかかりそうだけど」

一生の内、自分は本当にこの街のすべてを知れるのだろうか。
それくらいなら出来てしまいそうな気がするが、本当に可能なんだろうか。
それよりも広い世界のすべてを知るというのは、壮大だ。

「……多分ね」

少し間があって、冷泉は答えた。
正直、彼女と会えていない理由は本人にも分からない。
ただ、何の返答もなくなったのが唯一の事実だ。

「かくれんぼ? いいよ」

488 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/06(木) 17:54:22
>>487

「……ふ〜〜〜ん」

彼のお姉さんと前に話した時は、色々と言われた。
難しいことは分からなかったが、
彼女の心中には複雑なものがある様子だった。
ひょっとすると、その辺りに原因があるのかもしれないとも思った。
しかし、今は黙っておくことにした。
あまり気軽に踏み込むようなことでもない気がしたからだ。

「よし!!じゃ、かくれてよ。
 はんいは、だいたいこのまわりにしよう。フィーリングでいいから」

「いまから10――いや、やっぱ15かぞえるから、そのあいだにね」

自然公園という場所だけに、隠れられる場所は幾らでもあるだろう。
自分は、少年に背中を向けて目を閉じる。
そして、数を数え始めた。

「いーち、にーい、さーん……」

口で言いながら、同時に両手の指も折っている。
その調子で15秒ほど数え続ける。
それが終わったら、目を開けて振り向こう。

489 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/06(木) 22:14:41
>>488

「はーい、隠れまーす」

冷泉咲はそれ以上彼の隣人の話はしなかった。
特に聞かれもしなかったし、特にしたい話でもなかったからだ。

「んー……」

(時間かかっちゃうな)

背の低めの木に近づいた。
登れるかと思ったが、時間的に厳しそうだ。
陰に隠れよう。

490 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/06(木) 23:45:13
>>489

「……じゅうさーん、じゅうよーん、じゅうごぉ〜〜〜」

15秒を数え終えてから、ゆっくりと振り返る。
少年の姿は見当たらない。
かくれんぼなのだから当然だ。

「――よし!!じゃ、さがすよー!!」

しかし、立っている場所からは動かない。
その代わりに、自身の傍らに『ドクター・ブラインド』を発現する。
メスのような爪を持つ盲目のスタンドが、夢見ヶ崎の隣に立つ。

「むむむ……むむむむむむ……むむむむむむむむむ……」

両手の人差し指を左右のこめかみに当て、目を閉じて意識を集中する。
といっても、この仕草はほとんど見せかけだけのものだ。
ポーズを取りつつ、『超人的聴覚』を使って、冷泉少年の音を探る。
呼吸する音や、微かな衣擦れの音などを掴む。
街中と違って雑音が少ないので、聴き取りやすいだろう。

491 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/07(金) 00:35:10
>>490

発現したスタンド。
その力は超常的なそれに相応しい。
冷泉咲はその存在に気付けていない。
自分から見えるということは相手から見えるという事である。
木に背中を預けてじっとしている。

「ふぅ……」

規則正しい呼吸。
木と服がすれる音。
後ろに上げた木に靴が当たる音。
普通なら気付けないほどの音だが、それを捉えることが出来るのがスタンドだ。

492 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/07(金) 00:56:59
>>491

「ほうほう――」

微かな音を『超聴覚』が捉えた。
少年の発する、ほんの僅かな音。
それが、彼の居場所を教えてくれる。

「なるほどなるほど――」

『ドクター・ブラインド』を解除する。
そして、木陰に向かって歩いていく。
その歩みに迷いはなく、一直線だ。

「――みーつけた!!」

淀みなく木の裏側に回り、冷泉少年の姿を視認する。
人を探すのなら得意分野だ。
音を立てず匂いもしないので、落としたサングラスを探すのは苦労するが。

493 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/07(金) 01:17:26
>>492

「えー!」

見つけられて少年は目を丸くした。
丸い目がさらに真ん丸だ。

「おかしいよ。だって、見えないところにいたのに……」

不満気な様子だ。
納得はしていない。

「……むぅ」

494 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/07(金) 01:44:49
>>493

「ふふ〜〜〜ん」

驚かせたことに気を良くし、自慢げに笑う。
どうやら、少し調子に乗ったらしい。
その勢いで、もう一つ披露することにした。

「とくいだからさー、こういうの」

「たとえば――」

冷泉少年が自分と同じ力の持ち主であることも知らず、
再び『ドクター・ブラインド』を発現させる。
そして、周囲の音に耳を澄ます。
小さな音が聴こえた。
それは鳥の羽音だ。
木立の中から、こちらに向かって飛んでくる鳥の羽音が微かに聴き取れた。

「トリが、にわ。おおきいのとちいさいの。もうすぐ、あのヘンからでてくる」

宣言通り、大きさの異なる二羽の鳥達が、二人の頭上を通過していった。
それを指差し、堂々と胸を張る。
当然、スタンドを見られることなど考えていない。

「ほら――ね??」

495 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/07(金) 02:05:40
>>494

「!」

突然のスタンドに少年が表情をこわばらせる。
直感的に理解できた。
そして、それが正解であることを少女が自分自身で証明する。

「確かに……二羽……」

少年の眉間にしわが寄った。
同時に背後に『ザ・ケミカル・ブラザーズ』が現れる。
球体についたアームと手。
五本指が少女の頬をつねろうと動く。

「インチキだ。明日美そういうのはよくない……!」

少年が指を差す。
まるで自身のスタンドにターゲットを教えるように。

496 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/07(金) 02:24:19
>>495

「でしょ??ちゃんと、にわ――え??」

二本のアームを備えた球体を目の当たりにして、両目を見開く。
それは予想外の光景だった。
調子に乗ったツケと呼んでもいいかもしれない。

「あ……」

「あ、あっはっはっ〜〜〜」

「はは、は……」

少年の迫力に押されて、思わず苦笑いする。
そして、無意識に後ずさろうとした。
しかし、『ザ・ケミカル・ブラザーズ』が動く方が速かった。

「――むぎゅッ」

よって、そのまま頬をつねられてしまった。
ズルをしたバチが当たったというところだろう。
両手を動かしてジタバタしているが、実質ほぼ無抵抗だ。

497 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/07(金) 22:58:49
>>496

「騙されたっていうより、騙したうえで詰めが甘いのはかなり減点だよ明日美」

「むっとした。怒ってはないけどむっとした」

より眉間のしわが深くなっている。
本人曰く怒ってはいないらしいが、不機嫌ではあった。

「なので、赤面の刑だ」

ぐにぐにと『ザ・ケミカル・ブラザーズ』が頬を動かす。
つねるというよりは強く押して揉んでいるような感覚だ。

「血行を良くしてやる。覚悟したまえ」

498 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/08(土) 00:11:38
>>497

「いやいや〜〜〜ベツにだますつもりはなくって……」

「むぐッ」

「カンペキじゃないのは、まぁ『アイキョウ』があるってコトで……」

「むぐぐッ」

「なんていうか……ちょっとしたオチャメだから、ね??」

「むぐぐぐッ」

言い訳している口を、『ザ・ケミカル・ブラザーズ』に封じられる。
そして、なすがままにされる。
口では弁解しているが、ズルをしたという負い目は一応あった。
なので、本格的な抵抗はしていない。
『ドクター・ブラインド』も、ただ後ろに突っ立っているだけだ。

「だからさぁ――」

「むぐぐぐぐッ」

「そろそろ――」

「むぐぐぐぐぐッ」

「ゆるしてくれない??」

「むぐぐぐぐぐぐ〜〜〜ッ」

やがて、両方の頬が赤みを帯びてきた。
といっても、別に照れているワケではない。
手荒なマッサージを受けて、血の巡りが十分に良くなったせいだろう。

499 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/08(土) 00:38:22
>>498

「うんうん。そういう気持ちになるよね、分かるー」

スマホを立ち上げる。
画面をスライドしてアプリを選択する。

「許すよ。もう顔真っ赤で見てらんないし」

「じゃあ、はいチーズ」

スマホの内カメラを起動して自撮りをする。
『ザ・ケミカル・ブラザーズ』の手がそれっぽい笑顔を浮かべさせようと動いた。

「解放」

手が離れた。

500 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/08(土) 00:39:15
>>499

自分と彼女がフレームに収まるように自撮りする。

501 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/08(土) 01:06:44
>>499

「あっはっはっはっ〜〜〜。そうなんだよね〜〜〜。
 なにせ、そういうトシゴロだからさぁ〜〜〜」

「――むぐぅッ」

二本のアームによって、明るい笑顔が形作られる。
そして、撮影が行われた。
スタンドである『ザ・ケミカル・ブラザーズ』が写ることはない。
だから、夢見ヶ崎が自分で笑っているように見えるだろう。
その隣には、仕掛け人の少年が一緒に写っている。

「あ〜〜〜あぁ〜〜〜」

「ねぇねぇ、ちょっとカオがちっちゃくなったんじゃない??」

「なんとなくスリムになったようなカンジするんだけど、どう??」

両手で頬を包み込むようにしながら、そんなことを言っている。
実際には、ちょっと膨れているかもしれない。
そうであったとしても、少しすれば元に戻るだろう。

「あ――」

「わたしのはさ、『ドクター・ブラインド』っていうんだ」

「――レーゼーくんのは??」

物珍しそうな視線を向けながら、アームを持つ球体を指差す。
今まで見たことのない形だ。
それだけが理由ではないが、大いに興味があった。

502 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/08(土) 02:37:18
>>501

「ちっちゃくはなってない」

「なってないよ」

ずばっと言ってのけた。
言い切ってしまった。

「これは『ザ・ケミカル・ブラザーズ』」

「たった一人で兄弟なんだ」

くるくるとその場で回転する。
ロボットアニメのキャラクターのような動きだ。

「そういうもの」

503 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/08(土) 02:57:39
>>502

「そうかなぁ〜〜〜??」

「いやいや、これはきっと『かくど』のモンダイだ」

「たとえば、ななめのアングルからみると、ほそくみえるとか……??」

適当な理屈を並べて、顔を左右に動かしてみる。
もちろん変化はないが、今はそれよりも気になることがあった。
言うまでもなく、『ザ・ケミカル・ブラザーズ』の存在だ。

「ふんふん――」

「ところで、なにか『とくぎ』があるんじゃない??
 『ザ・ケミカル・ブラザーズ』だけのさ」

「アリスのブンセキリョクで、いまからソレをあててあげるよ」

興味深げな様子で、回転の動作をじっと見つめる。
機械的なヴィジョンのスタンドだ。
一体どんな能力を持っているのだろうか。

「ふぅ〜〜〜む……」

「――わかった!!」

「いまはガッタイしてるジョウタイで、ブンリして『フタツ』になるんだ!!
 だから、『ブラザーズ』!!」

504 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/08(土) 23:40:09
>>503

「『ザ・ケミカル・ブラザーズ』」

「まぁ、特技はあるよ」

少年の体の上をすべるようにスタンドが動く。

「分離はしない。くっつくのさ」

「化学でつながった兄弟なんだ」

505 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/09(日) 00:03:34
>>504

「ふぅん??」

瞳を輝かせ、『ザ・ケミカル・ブラザーズ』の動きに目を凝らす。
何かを期待しているような視線だ。
その視線が、球体から少年に移っていく。

「とくぎがあるんなら、ソレみたいな〜〜〜。
 みてみたいな〜〜〜。
 みせてもらえたらウレシーなぁ〜〜〜」

「わたしのも、さっきちょこっとみせたしさぁ〜〜〜」

「――ダメ??」

冷泉少年は、この街に住んでいる。
つまり、彼のスタンドも街の一部と言える。
だから、『ザ・ケミカル・ブラザース』の特技も見てみたいのだ。

506 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/09(日) 01:01:14
>>505

「しょうがないなぁ……」

「ちょっと人のいないところに行こうか。これは目立つから」

そういって木の枝を折って人気のない方に歩いていく。

「僕の『ザ・ケミカル・ブラザーズ』は二つを一つにする」

「まずはこれだ」

右のアームで木の枝を掴ませる。

「1、2、3……完了」

次に取り出したのはライター。
火をつける。

「今度は左」

左の手が火に触れる。

507 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/09(日) 01:23:33
>>506

「いいねいいね〜〜〜。そうそう、そうこなくっちゃ。
 レーゼーくんなら、そういってくれるとおもってたよ〜〜〜」

調子のいいセリフを言いながら少年についていく。
目立つということは、きっと派手なのだろう。
心の中で、ひそかに期待を強める。

「ふたつをひとつに……??」

「『えだ』と『ひ』でしょ??それで『カガク』……。
 えーと……えだがもえる??」

「――っていうのは、いくらなんでもアタリマエすぎるか……。
 もしコレをあてたら、いっとうのハワイりょこういけるなー」

それくらい難しいという意味だ。
頭をひねって考えてみるが、どうにも想像がつかない。
何が起きるのかを見届けるため、
しっかりと『ザ・ケミカル・ブラザーズ』を見据える。

508 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/09(日) 01:38:14
>>507

「3秒」

指で作られた三。
同時に手が火から離れた。

「あぁ君はハワイに行けるよ。ただし、今すぐではないけど」

認識は完了した。
『ザ・ケミカル・ブラザーズ』の姿が変化する。
体、足と部位が生まれてくる。
それが完成したらしい時には、アームがついていた球体の部分は胸に格納されてしまった。
2mほどのあまりにも大きなモノ。
どうやら実体化しているらしい。
右腕は木で出来ており、左腕は火で出来ている。

「『ザ・ケミカル・ブラザーズ』これが化学の子だよ」

509 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/09(日) 02:02:07
>>508

「えっ??ホントに??」

そう言っている間に、目の前で変化が始まる。
まるっきり予想外の光景だった。
出現した巨体を目の当たりにして、思わず両目を大きく見開く。

「す……」

「――スゲェ〜〜〜ッ!!デケェ〜〜〜ッ!!」

その両腕に木と火を宿した化学の子を見上げる。
サングラスの奥の瞳が、星のようにキラキラと輝いている。
下ろされた視線は、右腕と左腕を交互に見比べる。

「スゴいスゴい!!
 これだけでもじゅうぶんスゴいんだけど……。
 ほかにも、なんかヒミツがありそうだよねぇ〜〜〜。
 とくに、そのウデにさぁ〜〜〜」

510 冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』 :2018/09/09(日) 02:37:39
>>509

「そりゃこんだけ大きければ目立つさ」

「そして、いかにもって感じの腕だろ?」

能力の発動過程からして腕にキーがあるのは確かだ。

「本来二つの腕は反応しあわない」

ガンガンと腕をぶつけ合うが燃え移ることは無い。
体も木と火が混じったようだが燃えはしない。

「だけど、このゴーレムの終わり3秒は違う」

解除するとゴーレムが解けていく。
その瞬間、片腕の火が木の腕に燃え移った。

「たった3秒の化学実験だ」

規定通り、3秒間のうちにゴーレムは消えていった。

511 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2018/09/09(日) 17:28:34
>>510

「ふんふん――」

「ほーうほーう――」

「おぉぉ〜〜〜ッ!!」

いちいち頷きながら、少年が行う実験の経過を見守る。
最後に大きな歓声を上げ、両手をパチパチ叩く。
とりあえず満足したようだ。

「ソレ、『ゴーレム』っていうんだ。
 いやぁ〜〜〜きょうはイイものがみられたなぁ〜〜〜うんうん」

「オマケにハワイにもいけるし、いうことなし!!
 レーゼーくん、いっしょにいく??」

いや、それはダメか。
彼の隣人と話す時、また何か言われそうだ。
まだ一度も見たことがない未知の存在。
しばらく部屋に篭りきりらしいが、いつか会ってみたい。
ひとまず、それは頭の隅っこに置いといて――。

「まぁ、ハワイには、ちかいうちにいくとして……。
 なんか、ほかのアソビしない??
 レーゼーくんがとくいなヤツでいいよ」

今は、今の出会いを楽しむことに専念する。
――森の中で『アリス』は『ゴーレム』を見た。
その新たな一ページを、『光の国のアリス』の物語に書き加えよう。

512 一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』 :2018/09/16(日) 19:54:33
――秋の風が吹いている。

「……夏も終わってしまった。僕の中学最後の夏……
これから僕はどうする……?どうしたいんだろう」

 自然公園の片隅、湖のほとりに少年が腰掛けている。掌サイズのメモ帳を片手に、
自分に問いかけるように、あるいはここにはいない誰かに語りかけるように、
中空に目をやり、やや芝居がかった台詞回しで言葉をぽつぽつと紡いでいる。

「未来の全てが輝かしいものだなんて幻想はいわない。でも、
自分の進む先はきっと素晴らしいと思っている……都合のいい話だけど、
そうしないと不安で仕方がないんだ。それに」

            ズ ギ ャ ン ッ

「君と一緒なら、きっと大丈夫だって、不思議とそう思えるんだ。
そうでしょ、僕の『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』」

 見える者は見えるだろう。
少年の目線の先に、半透明のビジョン――『スタンド』が現れている。

 ちなみに見えない者には「なんかブツブツ独り言呟いてるやべーやつ」
に見えるだろうが、まあ、しょうがないね。

513 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2018/09/16(日) 21:38:26
>>512

(――あン?なんだァ、ありゃあ?)

その光景を遠くから見かけた時、最初はそう思った。
ぼちぼち涼しくなってきたってのに、頭が残暑でやられちまってんのかってな。
だが、興味が湧いて近寄ってみると『人型スタンド』の姿が目に入った。

(ははァ、なるほどなァ……)

    ザッ

「青春してんなァ。ちっとばかし羨ましいぜ」

「――隣、いいかい?」

気安い調子で声を掛けると、返事を待たずに隣に腰を下ろす。
レザーファッションで固めた二十台半ばの男だ。
ウルフカットにした髪を真っ赤に染めている。

「さっき『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』ってフレーズが聞こえてよ。
 そいつは、あんたの好きなバンドの名前か何かか?」

ここに来る途中で、『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』は遠目から見えていた。
しかし、そちらには視線を向けず、正面の湖を見つめたまま問い掛ける。
いきなり明かしちまうってのも面白味が足りねえ。
相手が、どんな奴かも分からねえしな。
まずは軽く探りを入れさせてもらうぜ。

514 一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』 :2018/09/16(日) 22:22:02
>>513

「……はっ」
「隣ですか? えっと、どうぞ……」

『花菱』に声を掛けられて、我に返ったように返事をする少年。
さっきの発言からしても『中学生』なのだろうが、
歳相応の幼さを残した顔立ちで、体格はやや小柄だ。

「……ええと、『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』は……
バンドの名前、とかじゃあ無いんです」
「ううん……なんて言うか、上手く言えないんですけど、
僕の中にある『特別な存在』の……その名前なんです」

探りを入れる『花菱』の思惑を知ってか知らずか、
慎重に考えながら、しかし誤魔化しはせずに答えを返していく。

「…………」
チラッ

喋りつつ、ちらっと『花菱』の派手なヘアスタイルに目を留め、
思い付いたように言葉を継ぎ足す。

「あの、ところで……ちょっと聞いても良いですか?」
「『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』って聞いて、
そこで『バンドの名前』か、って思うのは
もしかして、貴方がバンド活動してたりするから……だったりしますか?」

515 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2018/09/16(日) 22:58:29
>>514

「いやァ、オレはマトモに楽器を扱ったこともねェな。
 バンド活動とは、生まれてこの方ご縁がない身さ。
 こんな外見だがよ」

否定の言葉と共に、笑いながら片手を軽く振った。
言われてみれば、そう思われても不思議ではないかもしれない。
今言ったように、もちろん実際は違うが。

「まァ、しがない『スタントマン』だ。
 こんな頭で良いのかって思うかもしれねえが、
 仕事中はヘルメットやらカツラやら被るからな。
 だから、それほど問題にはならねえのさ」

(……『素直』だなァ。どうやら悪い奴じゃあねえらしい)

少年の受け答えを見て、そう感じた。
万が一『マジにヤバイ奴』だったら、
見えてることを明かした時に厄介なことになりかねないからよォ。
しかし、この様子なら大丈夫そうだな。

「――で、『特別な存在の名前』ねェ……。
 なるほどなァ。それなら、オレにも分かるぜ」

そう言って、視線を『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』に向ける。

「『スウィート・ダーウィン』ってのが、『オレの中にある奴』の名前さ」

516 一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』 :2018/09/16(日) 23:18:08
>>515

「えっ、『スタントマン』……そうだったんですか!」
「いや、その、ごめんなさい。正直なところ、その髪型を見て『バンドマン』の方かな、
と思ったんです」

誤解したことを申し訳なさそうに、ぺこっと頭を下げる。

「『スウィート・ダーウィン』? あッ、もしかして……!」

『花菱』の言葉にちょっと戸惑った後、自分の『スタンド』を見る彼の視線に
気付いたように声をあげ、立ち上がる。

   パサッ

その弾みに、手に持った大学ノートを取り落とす少年。開いたページには、
何やら細々とした文章が書き込まれている。

「貴方には『見える』んですね、僕の『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』が!
驚きました……家族にも友達にも、彼は『見え』なかったのに」
「初めてです。えっと、『見えて』いるんですよね……?」

念を押すように確認する少年。傍らの『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』が、
ひらひらと『花菱』に手を振る。

517 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2018/09/16(日) 23:47:09
>>516

「ハハハ、なァに構わねえさ。
 『バンドマン』と『スタントマン』か。響きはちっとばかり似てるな」

反射的に、地面に落ちたノートに目を向けた。
他人のものを見て喜ぶ趣味はねえが、これはまぁちょっとした事故って奴だ。
全然興味がないかっていうと、まぁ多少はあるけどな。

「あぁ、しっかり『見えてる』ぜ。『鍵』と『鍵穴』か。
 なかなかイカしたデザインじゃねェか」

『ステイル・トゥ・ヘブン』の腕を見て、感想を漏らした。
スタンドが手を振るのに合わせて、それを追うように視線も動く。
間違いなく『見えている』ことが分かるだろう。

「もっとも、『オレの』とは大分『形』が違ってるがよ。
 オレとあんたが違うように、『人それぞれ』ってことなんだろうな。
 だからこそ面白いと、オレは思うぜ」

    スゥゥゥ……

そう言って、おもむろに片手を持ち上げる。
意識を集中すると、そこに『精神の象徴』が姿を現していく。
それは、一丁の『リボルバー拳銃』だった。

    ドギュンッ!

「これが『スウィート・ダーウィン』――『オレの中にある特別な奴』さ」

518 一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』 :2018/09/17(月) 00:14:34
>>517

地面に落ちたノートに目を向けると、細々と書かれた文章が、『脚本』の体裁を
とっていることが分かる。何かの『演劇』だろうか?

「あっ、ありがとうございますッ!
この『鍵穴』と『鍵』の意匠、僕、大好きなんです……なんと言うか、
『未来』への象徴、みたいな感じがして。だから、いいデザインだ、って
言ってくれたこと、嬉しいんです」

笑顔を浮かべて、そう『花菱』の言葉に応える。心底『嬉しそう』だ。
そして『スタンド』――『スウィート・ダーウィン』を発現する『花菱』の様子を、
落としたノートを拾うこともせずにじっと見守る。

「うわッ!?」

    ドテッ!

「……失礼しました。えっと、それ、『拳銃』ですよね?
それが――貴方の『スウィート・ダーウィン』、特別な力なんですね」

パッ パッ

 『花菱』の掌中に現れた『リボルバー』のビジョンに、びっくりした様子で
尻餅をついた。暫くして立ち上がり、気恥ずかしそうに、服についた草葉を払うと、
二人の『スタンド』のビジョンをしげしげと見比べながら口を開く。

「本当に……僕のとは形も、何もかも違うみたい……一人一人違う形と
性質を持っているもの、なんでしょうか」
「……だとしたら、ひょっとして……貴方の『スウィート・ダーウィン』、
特別な『特徴』みたいなものを持っていたりしませんか?」

519 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2018/09/17(月) 00:39:45
>>518

(……『演劇部』か何かか?いや、そうとは限らねえか。
 ついさっき、オレも『外見』で間違われたばっかりだしなァ)

とりあえずノートからは視線を外した。
あんまりジロジロ見てんのも悪いしな。
それよりも、今は『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』が気になった。

「あぁ、『拳銃』でも『ピストル』でも『リボルバー』でもいいぜ。
 ここの『トリガー』を引くと、銃口から『タマ』が出る。
 オレは触ったことはねえが、『本物』と同じようにな」

物騒なヴィジョンだが、『本物の弾』は一発だけだ。
残りの五発は『偽りの死』をもたらす『偽死弾』。
それが、『スウィート・ダーウィン』の『能力』だ。

「『特徴』か――あるぜ。
 折角だし、ご披露したいところだが……
 この場で『ブッ放す』のは、それこそ物騒だからなァ。
 『あんたの』を見せてくれたら考えるが……」

思案顔で『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』に目をやる。
物騒だというのは本当だが、実際はそれだけではなかった。
少年の『スタンド』が持つであろう『能力』に興味を引かれたからだ。

520 一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』 :2018/09/17(月) 01:14:58
>>519

「やっぱり!一人に一つの『外見』、そして『特徴』……『これ』には
そういう性質――いや、現象としてのルールがあるんですね……」
「あれ、ノート……あっ」

感心しながら、何か書き込もうとして……思い出したようにノートを拾い上げる。
立ち上がった拍子に取り落としたことを忘れるほど、『スタンド』に『興味』があったようだ。

「ううん、確かに……『拳銃』ですからね。何となく、特徴も『物騒』な予感があります」
「僕の『特徴』ですか?ええっと、お見せするのは構わないです。
『力』を使うのに、周りに配慮できる貴方は(見た目は怖いけど)……
『悪い人』とは思えないです。ただ、ちょっと準備がいるので――」

ビッ

そう言いながら、さっき尻餅をついた『地面』に、『スタンド』が指を突き立てる。
『鍵』のかたちをした指先が地面に触れ――

 ズ ォ オ ォ オ ォ オ

そこに、『A4サイズ』の『扉』が現れる。もっとも、本物の『扉』というわけではなく、
明らかに『イメージの扉』であることが、スタンド使いである『花菱』には分かるはずだ。

「ええと、ご覧の通り、『扉』です。これを設置することが『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の
『特徴』……でも、『扉』だけじゃあ、どこにも繋がらないですから、これはまだ
『途中』なんです」

521 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2018/09/17(月) 01:42:54
>>520

「そうみてェだな。もっとも、オレもそれほど詳しい訳じゃねェが……。
 今までオレが見かけたことがあるのは、
 あんたの『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』みたいな奴だったぜ」

(えらく『スタンド』に関心があるらしいなァ……。
 この感じだとスタンド使いになったのは『最近』ってとこか……)

「ハハハ、そいつはどうも。
 さァてと――それじゃあ『特等席』で鑑賞させてもらうとするか」

『スウィート・ダーウィン』を手の中で弄びながら、
『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の動きに注目する。
『鍵』と『鍵穴』の意匠を備えたスタンドだ。
『扉を』生み出すというのは理に適っているように感じられた。

「ははァ、なァるほどな。
 『扉』が出てきたってことは……
 それが『どこかに繋がる』って考えるのが自然だよなァ。
 ここから、更に何かが起きるって訳かい?」

『扉』を眺めて、顎に手を当てながら自身の考えを呟く。
それが当たっているかは分からない。
何しろ『スタンド』というのは、常識では計れない存在だからだ。

522 一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』 :2018/09/17(月) 02:03:23
>>521
          、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「そう――扉はどこかに繋がらなければならないんです」

ビッ

ノートのページを一枚破り、それを『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の
素早く精密な動きで『紙飛行機』のかたちに折り、それを右手で持って
左手で翼に触れる。すると――

 ポ ゥ

翼の表面に『鍵穴』の意匠が浮かびあがり、それと同時に左手の
『鍵穴』の意匠が消える。そしてその紙飛行機を、『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』が
ふわり、と投げる。

「そして、その『行き先』はッ」

紙飛行機はふわふわと漂い、やがて地面に、翼を上にしてぱさりと落ちる。
それを待ち、『扉』に手を押し当て、押し開けるように『進む』と――

『ガチャ』

ふ、と少年の姿が掻き消え、

         グニャア…ッ

地に落ちた『紙飛行機』の翼の『鍵穴』から、彼の姿が現れる。

「……と、こんな風に、『扉』は『鍵穴』に通じているんです。
一度通り抜けると、扉は消えて、鍵穴も『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の
手に戻って来てしまうんですけどね」

523 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2018/09/17(月) 02:49:06
>>522

「――うおッ!?」

眼前で発揮された『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』の『能力』に、
思わず目を見張る。
目の前で繰り広げられた一連の流れは、まるで『イリュージョン』だ。
『どこかに繋がる』と予想はしていたものの、
実際に自分の目で見ると驚きを隠せない。

「『扉は繋がらなければならない』……か。
 『納得』したぜ。良いものを拝ませてくれて、ありがとよ」

口元を緩ませてニヤッと笑い、それから少し考え込む。
『能力』を見せてもらったからには、
こっちも披露するのが『フェア』ってもんだろう。
今オレが悩んでいるのは『どう見せるか』についてだ。

「さて――と……。
 『今度はオレの番』ってことになるんだが、どうしたもんかな……。
 『見せること自体』は、別に何も難しくはねェんだが……」

『スウィート・ダーウィン』の『能力』は、
『能力を受けた人間』にしか感じ取れない。
一番『分かりやすい』のは『目の前にいる少年を撃つ』ことだ。
しかし、いくら『偽り』とはいえ、
出会ったばかりの相手に『死』を体感させるというのはどうか――。

「突然だが、お前さん――『スリル』は好きかい?オレは大好きでよ。
 『病み付き』と言ってもいいくらいになァ」

      ――スゥッ……

『スウィート・ダーウィン』を握っている腕を、静かに持ち上げる。
そして、その銃口を自身の『こめかみ』に突き付けた。

「特に『死ぬ一歩手前』くらいの『スリル』が『大好物』だな。
 『デッドラインギリギリのスリル』って奴に目がねェのさ。
 『スタントマン』なんてやってんのも、それが大きな理由って訳さ」

          ガァァァァァ――ンッ!!

次の瞬間、空気を引き裂くような『銃声』が轟いた。
といっても、『スタンド使い』以外には聞こえない音だ。
『スタンドを持つ者』には、『本物の銃声』と同じように聞こえただろう。

「――が……ぎッ……!!」

着弾の直後、その場に膝をつき、前のめりに地面に倒れ込む。
顔面は蒼白の様相を呈しており、
苦悶の声を上げながらもがき苦しむ姿は演技にしてはリアル過ぎる。
あたかも、本当に『瀕死状態』のようだ。

524 一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』 :2018/09/17(月) 03:07:10
>>523

「あはは……まあ、ちょっと『演技過剰』だった気もしますけど、
楽しんでいただけたなら幸いです」
「それじゃ、今度は僕が『特等席』で拝見する番ですね」

ぺこり、と一礼して、その場に腰掛ける。
何が起こるんだろう、とワクワクしていたのはいいのだが……

「って、えっ……!?」

突然『拳銃』を自分自身のこめかみに突きつけた『花菱』の行動に、
思わず立ち上がってしまった。またもや、ノートが地面に転がる。

          ガァァァァァ――ンッ!!

「うっ……ま、まるで本当に『火薬』が炸裂するような音……銃撃なんて
経験したことはないけど……昔『花火』の暴発に遭ったときのような……」
「って、わあァ――――ッ! なッ、何をしてるんですかッ!?」

耳をつんざく『銃声』!思わず耳を抑えて呟くが、直後に倒れ伏す
『花菱』を目にして、「それどころじゃない」とばかりに駆け寄り、
抱え起こそうとしながら呼びかける。

「し、しっかりして下さい! 『自分』を撃つなんて……!」

525 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2018/09/17(月) 03:39:53
>>524

「うぐッ……ぐッ……がッ……!!」

地面の上に仰向けに転がり、空いている方の手を天に向けて伸ばす。
その手から徐々に力が失われていく。
やがて、力なく腕が地面に落ちる。
苦悶の声も聞こえなくなっている。
瞳から光が消え失せていき、そのまま動かなくなった……。

     ――ガバッ!

「――ハハハハハッ!!これだぜ、これ!!
 心の奥にガツンとくる『死と隣り合わせ』の『スリル』!!
 全く、いつやっても『こいつ』は『最高』に『スウィート』だ!!
 ハハハハハッ!!」

きっかり『四秒間』が経過し、不意に勢いよく上半身を起こして高笑いする。
先程までの姿が嘘のようだ。
もっとも、『偽りの死』ではあっても『演技』ではないのだが。

「――っと、つい一人で盛り上がっちまった。
 驚かせてすまねェな。いや、別に騙した訳じゃねェんだ。
 傍目から見たら分からねェと思うが、これが『能力』だ。
 『死因』を『再現』する――それが『スウィート・ダーウィン』の力ってことさ」

「さっきは『窒息死』を再現したんだ。
 ちょうど目の前に『湖』があるしよ。
 『湖の前』で『溺れ死んでみる』のも一興だと思ってな」

平静を取り戻し、自身の『能力』について説明する。
これで納得してもらえるかどうかは分からないが、
『出会ったばかりの少年を撃つ』よりはマシだろうと判断した。
目の前で『死んでみせる』というのも、心臓には良くないとは思うが。

526 一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』 :2018/09/17(月) 05:52:46
>>525

「ちょ、ちょっとしっかり……ああ、そんなッ!」

明らかに『絶息』せんとする『花菱』の様子に、
がくりと膝を地面につけて衝撃を受けた……のも束の間。

「え、ええ? 今度は『生き返った』……ッ!?」

平然と起き上がる彼の姿に、二度目のびっくりである。
二度目だというのに出力の落ちない驚愕を見せつつ、
彼の説明を真剣な様子で聞く。

「……なるほど……『死因』を再現する、死を演じる
『銃弾』……それが『スウィート・ダーウィン』なんですね。
先ほどの貴方の様子、『演技』にしてはあまりにも
『真に迫り』過ぎていたと思います。本当に
『死に』かけたようにしか見えなかった……」
「僕とは全く違う『力』の性質……とても面白いです」

『花菱』の説明を、少し考えて噛み砕きつつ、
それを彼に確認するように喋る。

「……今日は、とてもいい経験が出来た、そう思っています。
貴方に会えて良かったです」

そう言うと、すっくと立ち上がって声色を正し、続ける。

「僕は『一色』……『一色直(いっしき すなお)』」
「この町の学校に通っています。
色々と教えてくれたこと、ありがとうございましたッ」

びしっと頭を下げて、感謝の意を示す。

527 花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』 :2018/09/17(月) 22:53:26
>>526

「ま、そういうこったな。分かってくれたようで何よりだ。
 一人でバカみてェに転げ回ってるだけだと思われたら、
 どうしようかと思ったぜ」

「『死を演じる銃弾』とは、なかなかシャレた言い回しじゃあねェか。
 ハハハハ、気に入ったぜ。
 『瀕死の演技』だけなら、アカデミー賞も取れるかもなァ」

『スウィート・ダーウィン』を解除し、両手で服の汚れを適当に払う。
そして、少年と同じように立ち上がった。
感謝の意を示す少年に、軽く笑った後で言葉を返す。

「ハハハ――なァに、いいってことよ。
 同じ『スタンド使い』のよしみってことでな。
 オレの方こそ、滅多に見られねェようなもんを見せてくれてありがとよ」

「しかし――お前さんを見てると『名は体を表す』って言葉を思い出すなァ。
 道理で『素直』な訳だ。
 その名前を付けた親御さんは、かなり良いセンスしてると思うぜ」

「オレは『花菱蓮華』って名さ。
 またどっかで会ったら、その時はよろしくな。
 聞いた話じゃあ『スタンド使い』ってのは『惹かれ合う』もんらしいから、
 偶然出くわすこともあるかもしれねェな」

「そんじゃあ、オレはちっとそこらをブラブラしてくるとするぜ。
 またな、『一色』ィ」

ヒラヒラと片手を振って少年に別れを告げ、歩き出した。
こういうことがあるんなら、たまの散歩も悪くねェ。
『スタンド使い』と出会うのは『刺激』になる。
そういう意味じゃあ、オレにとっても『プラス』って訳だ。
『死ぬ一歩手前のスリル』程じゃあなくってもなァ。

528 一色 直『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』 :2018/09/17(月) 23:54:15
>>527

「『花菱』……『花菱蓮華』さん」

その名前を、しっかりと記憶に刻むように繰り返した。

「本当にありがとうございました……貴方の言うように
『惹かれあう』のであれば、いつかまた会えるでしょう」
「その時を、楽しみにしています……それでは!」

そう言って『花菱』をその姿が見えなくなるまで見送り、
その場に腰掛けて落としたノートを拾い、開く。

「……スゴい体験が出来たぞ……それに『スタンド使い』
って最後に『花菱』さんが言ってたけど、それが
きっとこの『力』の呼び名なんだ……!」
「忘れないうちに今日のことをしっかり書き残さなくちゃ」

   カリカリカリカリ…  パタン

そう言いながら手早くメモを取り、すっくと立ち上がる。

「やっぱり、君と行く道は『良いところ』に続きそうだ。
そうだよね、『ステイルウェイ・トゥ・ヘブン』」

傍らの『スタンド』に一言かけて、足早に公園から出て行く少年。
その行く先に何があるのかは、まだ誰も知らない。

529 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/10/06(土) 20:05:28

「まったく――ウッカリ『なくす』なんて私のドジにも困ったもんよねえ」

双眼鏡を持った一人の若い女が歩いている。
ラフなアメカジスタイルでコーディネートした服装が特徴だ。
その肩には『機械仕掛けの小鳥』が乗っていた。

「ねぇ、今どこにいるの?」

『シゼンコウエン ノ ナカ デス。
 ソラ ト キギ ト トリ ガ ミエマス』

「いや、それは分かってるんだけど……。参ったなぁ。
 私も探すから、もし誰かに取られるとかしたら教えて」

女は肩の上の『小鳥』と喋っている。
それから双眼鏡を構える。
その状態のまま、グルッと体を一回りさせる。

「こうやって見渡してみると見つかったり――
 なぁんて都合のいい話がある訳ないわよねぇ」

530 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2018/10/13(土) 17:29:37
>>529

「そうだ――『音』は?何か聞こえない?」

「『アシオト』 ガ キコエマス。
 ソシテ クルミサン ノ 『コエ』 ガ キコエマス」

「……なるほどね。
 思ったよりも近い位置にあった訳だ。方向は?」

「ゲンザイチ カラ 『ホクセイ』デス」

「そこから北西方向に私がいるって事は、私から見ると南東って事よね。
 待ってて。今から迎えに行くわ」

肩の上の『小鳥』と会話しながら、森の中へ歩き出す。
程なくして、なくした『スマホ』を見つける事ができた。
それからしばらくバードウォッチングを続けた後、自然公園を立ち去っていく。



【撤退】

531 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2018/10/28(日) 22:15:14

秋――それは紅葉の季節。
鮮やかに色づいた木立の中に、一つの人影が見える。

        ザッ

「――……」

背は高くない。
小学生か中学生というところだが、どちらかは見分けにくい。
顔立ちは中性的だ。
見ようによって、少年にも見えるし少女にも見える。
これも判別しづらい。
ブレザーとスラックスといういでたちだが、制服ではないようだ。

        スッ

その場に屈んで、足元から一枚の落ち葉を拾い上げる。
赤く色づいた紅葉を手に取って、近くで眺める。
その綺麗な色合いに思わず見惚れていた。

(――キレイだなぁ……)

(僕が死ぬ時も、こんなにキレイに死ねたらいいなぁ……)

(でも――死にたくないなぁ……)

手にした紅葉を見つめて、ぼんやりと物思いに耽る。

532 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2018/11/01(木) 18:06:45
>>531

しばし紅葉狩りを楽しんだ後、その人影は姿を消した。

533 スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』 :2018/12/19(水) 03:12:34

    ズギュン!

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』ッ」

          (違う)

   パッ

            ズギュン!

「『ティーンエイジ』ッ!」

          「『ワイルドライフ』ッ!」

               (これも違う)

    パッ

そいつが何をしているかと言えば、
スタンドを出したり消したりしていた。

        ズギュン!

「――――『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

(これもなんか違う。
 ワイルドライフだもん。
 しかもティーンエイジ。
 しっとりした感じではない。
 ……疲れてきた。
 スタンドって疲れるんだな)

            パッ

「……」

           ガサゴソ

かと思えば座り込んで、カバンから弁当箱を出す。
こういう奇行はけっこう目立つので、誰か見ているかもしれない。

534 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2018/12/21(金) 01:25:41
>>533

   《………………》

もしかすると、木立の中から視線を感じるかもしれません。
フードを目深に被り、肩にシャベルを担いだスタンドが幽鬼のように佇んでいます。
一言で表現するなら、『墓堀人』というところでしょうか。

         スッ――

スタンドが、担いでいたシャベルを地面に下ろしました。
剣先型になっているシャベルの頭部が、鈍く光っています。
『恐竜の牙』程ではないですが、使い方によっては武器にもなるでしょうか。

               ペコリ……

ふと、スタンドは頭を下げました。
どうやら挨拶のようです。
敵意とか、そういうものはなさそうに見えますが。

535 スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』 :2018/12/21(金) 22:30:29
>>534

「ん、誰か見てるでしょ?
 人の飯をじろじろ見るのは、
 混ぜて欲しいやつか、
 盗ろうとしてるやつかって、
 相場が決まってるらしいぜ」

「――――って、何こいつ」

         スッ

「もしやオバケかな?」

スズは立ち上がった。
ダボついた服を着た、
細長い体つきで、
目の細い少女だった。

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

「……の、知り合い?
 なんていないよな。
 生き物じゃないもん」

        ザッ

    「ん」

         ザッ

「アタマ下げるとかけっこう礼儀あるじゃん。
 じゃあ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』!」

          「も、頭下げさせるよ」

   ガグッ

幽鬼とは真逆の荒々しさで、
噛みつくように恐竜人が首を垂れる。

「なんか用? いっとくけどおにぎり一つすらあげないぜ」

スズ自身はというと、弁当を片手にそれを眺めていた。

536 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2018/12/21(金) 23:17:58
>>535

《…………こんにちは》

スタンドが喋りました。
頭巾の陰に隠れているので、表情はよく見えません。
そもそも、表情があるのかは微妙なところですが。

《たまたま歩いてきたら、同じような人がおられたので、つい見てしまいました》

《ごめんなさい》

《人様のお弁当に手をつける気はないです》

        トスッ

林から出た幽鬼は、適当な樹の根元に腰を下ろしました。
その傍らにシャベルを立てかけています。

《『ティーンエイジ・ワイルドライフ』とおっしゃるんですか》

《はじめまして》

《『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』と申します》

恐竜人を眺めて、墓堀人は名前を名乗りました。
本体らしき人間は、近くにはいないようです。

537 スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』 :2018/12/21(金) 23:53:57
>>536

「へぇ、常識外れな存在なのに、
 常識度は素晴らしいみたいだ。
 たくあんくらいならあげてもいいね。
 それに『同じような人』だって?
 『ティーンエイジ・ワイルドライフ』とは、
 まるっきり似てないが……存在の話」

「つまりこいつは、『スタンド』だ」

        スッ

饒舌な独り言のようにスズは語り、

「……」

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

         「は口を利かない」

「だから、こいつに『自己紹介』は無い」

それからぽつぽつと返答を返した。

「だけど」

「人間の自分は『斑尾スズ』で、
 こいつは『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

「それは、ちゃんと口にすべき事だな」

得心したように頷く。
変わり者、なのかもしれない。

        キョロ

              キョロ

「…………『人間』はいないのかい?」

そして、少し考えてからシンプルに聴いた。
合わせて腰を下ろすわけでなく、見下ろす形で。

538 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2018/12/22(土) 00:24:28
>>537

《『たくあん』》

《嬉しいですけど、この口では食べられないので》

《『斑尾スズ』さん》

《はじめまして》

幽鬼は小さく礼をします。
見下ろされていても、それを気にした様子はなさそうです。

《『人間』は――ちょっと遠いところにいます》

《今、歩いてきてます》

そう言って、頭巾の下の目を林の方へ向けます。
徐々に、軽い足音が聞こえてきました。

     ザッ……

「……はじめまして」

「『三枝千草』と申します」

      ペコッ

木立から現れた人間が、先程の幽鬼のようにお辞儀をしました。
小柄で、キッチリしたブレザーとスラックスを着ています。
中性的な容姿と高い声のせいで、少年か少女かは分かりません。
子供なのは確かですが、年齢もハッキリはしていません。
一番可能性が高いのは中学生くらいでしょうか。

「『同じような人』を見かけたのは初めてです」

「あの…………」

「たくあん、僕は食べられます」

539 スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』 :2018/12/22(土) 01:39:23
>>538

「今のはいわゆる、独り言だね。
 たくあんを本当にあげるとは、
 こいつには一言も言っていない。
 もっとも、これも独り言だけど」

「……」

     ザッ

       ザッ

年の頃は、互いにそう離れてはいない。
少女は冷涼な雰囲気を纏っており、
長身と相まって年齢を掴みづらくしている。

「スズも、初めてだ」

「いるとは思ってたけど」 

「…………・『三枝千草』」

「やる」

          スッ

そして、はしで摘まんだたくあんを差し出した。

「『食べられる』ということは、
 欲しいという事だと理解するぜ。
 そして欲しがった以上は、
 こいつは食べなければならない。
 このたくあんは中々うまいもんだが、
 たくあんだけで食べるのはどうなんだろうね」

    スゥーッ・・・

           「食べるといい。その口で」

540 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2018/12/22(土) 02:07:36
>>539

「――――いただきます」

       パクッ

言われるがままに口を開けて、差し出されたたくあんを食べました。
口の中で咀嚼します。
味が染みてます。

          ゴクン

「おいしかったです」

「ご馳走様でした」

       ペコリ

スズさんにお礼を言います。
でも、お返しできるものが何もないです。
その時、ふと思いつきました。

   「『イッツ・ナウ』」
              「『オア・ネヴァー』」

スタンドの名前を呟くと、墓堀人が動き出しました。
手前の地面を、シャベルで掘っていきます。

     ザック ザック
              ザック ザック

「まず穴を掘ります」

          ポイッ

     「埋めます」

胸ポケットから抜いた万年筆を穴の中に落とします。
その上から土をかけて、埋め直していきます。
やがて、完全に穴は埋まりました。

         「掘り起こします」

     ザック ザック
              ザック ザック

そして、穴を埋めた場所から離れたところを掘り返します。
すると、さっき埋めた万年筆が出てきました。
それを穴から取り出して、手で軽く土を払います。

「たくあんのお礼です」

「楽しんでもらえたら嬉しいです」

541 スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』 :2018/12/22(土) 02:23:23
>>540

「うさぎに餌をやってる気分だよ。
 ザリガニ釣りの気分でもいいな。
 人間にこういうことをするのは、
 スズとしては初めてなわけだ」

「……」

       スッ

「おいしかったなら良かった。
 なにせあと3切れ、残ってるから」

はしを引っ込めて、ケースにしまう。
そして穴を掘って埋めるのを見ていた。

「……ちょっと手品みたいだ。
 それが『能力』というやつかな?
 けっこう楽しいよ。なにせ初めてだもの」

「ああ」

「初めての事は楽しい物だ」

不思議な現象だと、声に実感があった。
スズもまた『スタンド使い』ではあるが、
能力というのはあまりに一つ一つ違う。

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』」

            ズズ

「こいつは『キバ』が武器だよ」

開かせた口には、ナイフのような牙が並んでいた。

「……」
 
「それ位は口にすべきだと思ったわけだ。
 たくわんのお返しが能力だなんて、
 いくらなんでもお釣りが必要だから。
 特に『平等』を重んじてはいないけど、
 『義』ってやつに、反する気がするからさ」
 
          「このキバを見るのは楽しい?」

542 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2018/12/22(土) 02:46:40
>>541

「大丈夫です。僕も『全部』は披露してないです」

残っていた穴を埋めておきます。
それから、『仮死状態』になっていた万年筆を胸のポケットに戻します。
物が物なので、ほとんど変わっていないですが。

「キバ――――ですか」

「とても強そうです」

『ティーンエイジ・ワイルドライフ』の牙を、まじまじと見つめます。
『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』は遠くまで行ける代わりに力は弱いです。
だから、余計に注意を引かれてしまいます。

「楽しいです」

「固い肉も食べやすそうです」

そして、視線を動かしてスズさんの方を向きます。

「『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』は『妖甘さん』に出してもらいました」

「スズさんも『妖甘さん』に会ったんですか?」

『同じような人』なら、出所も同じかもしれません。
そんなことを思ったので、スズさんに尋ねてみました。

543 スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』 :2018/12/22(土) 03:23:19
>>542

「なら、たくあんでよかったか」

       ク ク ク

「だけど」

「もう見せてしまったもの、な。
 見せた物をなかった事にはしない」

           ガチンッ

「というか出来ないけど」

音を立てて牙が閉じる。
空気が噛み潰される。
味はしないのだろうが、
まるで捕食するかのように。

「『妖甘』? ……ちがうね、それは。
 スズが会ったのは『道具屋』と言った」

「……」

「『ティーンエイジ・ワイルドライフ』は、
 そこで肉を食べたら目覚めた『力』だ。
 固い肉だった。味付けは良かったけど。
 ただ、多分肉を食べたからじゃあなくッて、
 肉って『品』を選んだのが原因だろうな。
 そういう風な事を聴いたような気がする」

         スゥーッ

息を吸い込む。
独り言ではなく語り掛けるとき、
スズはそのような姿勢をする。

「与える側が『複数人』いるなら、
 受け取る側は、もっといると思う」

「……そうなると、あまり見せびらかすのは不味いな、これは」

544 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2018/12/22(土) 03:51:07
>>543

「『道具屋さん』ですか。『妖甘さん』みたいな人が他にもいるんですね」

「初めて知りました」

自分のことを思い出します。
『妖甘さん』に会った時のことです。
そのことは、よく覚えています。

「僕は『絵』を描いてもらいました」

「『根で棺桶を包む花畑』――それが僕の絵だと」

「そしたら目覚めたみたいです」

幽鬼のような墓堀人が僕の隣に立ちます。
二つの視線が、息を吸い込むスズさんを少し不思議そうに見ています。

「そうですね…………」

もしかすると、中には危険な人もいるかもしれません。
運が悪いと、それが原因で死んでしまうかもしれません。
それは怖いし、とても嫌です。
もし惨い死に方をしたらと思うと、恐ろしいです。
まだ『一番素晴らしい死に方』を見つけられてないのに、そんな目には遭いたくないです。

「じゃあ、このことは僕とスズさんの秘密にしましょう」

「僕は誰にも言いませんから」

言うと同時に、『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』を解除します。

「僕はこれで」

「スズさん、楽しかったです。ありがとうございます」

「またどこかで会えたら嬉しいです」

「失礼します」

         ペコリ

別れの挨拶をして、また歩いていきます。
たくあんのお礼のお釣りに力を少しだけ教えてくれたスズさんは良い人です。
こういう人に出会っていけば、『素晴らしい死に方』が見つかるかもしれません。

545 スズ『ティーンエイジ・ワイルドライフ』 :2018/12/22(土) 04:02:30
>>544

「『絵』……あまりにも違うな。
 『与える手段』も能力と同じで千差万別、か」

         バシュン

『ティーンエイジ・ワイルドライフ』は、
閉じた牙から広がるように消えていく。

「ああ、秘密にするのが良いだろう。
 能力の事も――――持ってること自体も、
 スズがここで掛け声の練習をしていたのも、
 今から、こいつしか知らない事になった」

         フリ
             フリ

袖で隠れた手を振る。

「お礼はいらない。
 もう『等価』だからな」

「だけど」

「口にした方がいいか……楽しかった。じゃあな」

   ザ ッ

         「……」

そうしてそいつは元の位置に戻って、
また弁当の残りを食べ始めたのだった。

546 草摺十三『ブレーキング・ポイント』 :2018/12/22(土) 22:54:48
バチ
バチ

パチッ

「ンン…すっげー煙い」「生木は煙いな」「生木だもんな」

寒い時期で人もあまり来ない、湖畔の『キャンプ場』。
夏はバーベキューだとかで盛り上がるわけだが、寒いのでみんなワザワザ外で遊んだりとかはしない。
なので、一人で焚き火をしたりとかして遊ぶにはモノスゴくうってつけの時期ってわけだ。

547 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2018/12/23(日) 00:53:19
>>546

「あら、先客がいた」

         スタ

    スタ

「お邪魔じゃなければ話しかけるけど、
 それって何かを焼いてたりするの?
 私、キャンプって詳しくなくってさあ」

確かに草摺に話しかけているようだった。
白い髪と赤い目が異様な少女だった。

「それとも、それはそーいう遊び?」

「春になったら家族で来ようと思っててね。
 もしよかったら、教えてくれないかしら」

言葉通り、アウトドア大好きって風ではない。
あまり動きやすくも無さそうな黒いダッフルコートが揺れる。

548 草摺十三『ブレーキング・ポイント』 :2018/12/23(日) 08:39:43
>>547
「ゲッホっ」「うん?」

話しかけられているのに気付いてそちらを見る。
白い髪と赤い目に少し驚くが、自身も金髪でピアスだ。そーいうオシャレもあるよな。

「これからテント張って、何か食べるもん作って、寝るだけっていう遊びッスよぉ」

アウトドア派だ。
焚き火はいま、火が大きくなり始めたところ。
傍らには大量の薪と、煤けた飯盒と、重そうな鉄の鍋が置いてある。

「春、あったかいし良いッスねェ」「人も多くなるし」「でも虫も出てくるからねェ」

薪を折っては火にくべながら応えを返す。柄のわるそーな見た目だが人当たりは良さそうだ。

549 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2018/12/23(日) 23:02:19
>>548

「ふぅん、そういう感じなのね。
 それってけっこう楽しそうじゃん。
 やる事に『ゆとり』があるっていうかさ」

「『スローライフ』って感じなのかな。
 『やらなきゃいけない』遊びじゃなくて、
 『やりたいことをやる』遊びっていうのかな」

飯盒や鍋などキャンプ道具に、
それなりの好奇の視線を向ける。

「ああ、虫は嫌ねぇ。
 地面が冷たいのと、
 どっちが嫌かって話だけど」

               スッ

「あったかいのと混んでないの、
 どっちが『良いか』って方が前向きか。
 冬に来るってのもありかもしれないわね」

屈んで、地面に手を付ける。
すぐに離して白い息を吹きかけた。

「その口ぶりだと、結構ベテラン?」

「もしよかったら、だけどさあ。
 もうちょっと色々教えて欲しいな。
 お勧めのキャンプ料理とか。どう?」

その姿勢のまま、見上げる形で問いかける。
兎のような見た目に反し、弾むというより落ち着いた声色で。

550 草摺十三『ブレーキング・ポイント』 :2018/12/24(月) 15:55:43
>>549
「『ベテラン』ってこともねーッスけどぉ」

初心者のようなぎこちなさは無いが、ベテランのような無駄の無い動きでもない。
厚手のシートを焚き火の前に敷いては道具を並べ、火加減から料理までそこに座って行えるように整え、
「あっ」と気付いて小さな折りたたみの椅子を開いて『薬師丸』に寄越す。
支柱を一本立ててテントを広げ、六ヶ所ペグダウンすれば完成だ・・・あとは火の前に座ってぼけーっとしているだけだ・・・

「料理スか」「米たくだけでも楽しいッスけどねェ。でも最近ハマってんのは鍋ッスねェ」
「安物だけどこーいう『ダッチオーブン』ってんですけどこの鉄の鍋がね。煮炊きがスッゲーウマく出来るんよね」

微妙にオタクっぽい早口になってきた。

551 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2018/12/24(月) 22:35:03
>>550

「あら、どうも。気が利くのねぇ〜え」

              カチャ
                   ストン

椅子に座って、膝に肘をつく。
頬杖をつくような姿勢で見守る。

「へえ、そうなの? じゃあ、奥が深い遊びなのね。
 素人目には、けっこう手際が良さそうに見えたからさ」

(見てても上手いのか下手なのかわかんないけど、
 まあ、本人がそういうのならそういう事にしとくべきね)

素人目にはぎこちなさが無いだけで十分。
しかし恐らくもっと上手い人間もいるのなら、
そこを下手におだてるつもりもないのだった。

「鍋、良いわね。え、なに、『ダッチオーブン』?
 ……あ、料理名じゃなくて鍋の名前なの。
 へ〜、じゃあ、今日もその鍋で何か作るんだ?」

鉄鍋に視線を向ける。。
普通の鉄鍋と違うのだろうか?
そもそも普通の鉄鍋も、そう詳しくない。

「当てて良い? ……カレーライス!」

「当てずっぽうだけどね。
 私、結構運が良い方だからさ、
 もしかしたら当たってたりしない?」

知っている鍋を使う料理を挙げただけだと思われる。

552 草摺十三『ブレーキング・ポイント』 :2018/12/24(月) 23:53:23
>>551
蓋まで鉄で出来ている、重そうな鍋だ。
それを焚き火にかけ、蓋の上にも炭を置いていく。『ダッチオーブン』ならではの調理法だ・・・

「オーブンってだけあって下からも上からも加熱可能っつーワケでね、蓋も重いしけっこー密閉性あって『圧力鍋』みてーに」
「でも今日はライスは無いけど、カレーは良い線いってるッスね。や、カレールー使ってないけど、中身はスパイス効かせた鳥の蒸し焼きでね」
「かなりウマいはず」「で、ビールもあるしね」

出来上がりまで時間はかかるようだ。
口調は早口だが動きはのんびりと、ヤカンだとか小さな鉄板だとかを焚き火にかけていく。

553 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2018/12/25(火) 01:01:48
>>552

(すっごい熱弁……よっぽど好きなのね。
 にしてもビール? ハタチ超えてるのかな。
 まあ、超えてなくても別にいいんだけど)

車に乗るわけでもないのだろうし、
まるきり子供にも見えない。自己責任でいい。

「ああ、それでオーブンっていうんだ。
 なるほどね、ちょっと合点がいった。
 鍋なのにオーブン? って思ってたのよ」

感心したような顔で、焚き火を見つめる。
炎を見るのが趣味という訳でなくても、
なんとなく見ていたい惹きつける物がある。

「あら、外しちゃったか。ざ〜んねん。
 でも、鍋で鳥の蒸し焼きってのは良いね。
 キャンプっぽいっていうかさ……
 家庭料理とは違う感じが良いと思うわけ」

「こういう遊びってさあ、多分だけど、
 そういう『それっぽさ』が大事なのよね」

凝った調理法ではなく、豪快な蒸し焼き。
あるいは最新の器具ではなく鉄の鍋と飯盒。
家があるのに外で寝るという遊びには、
そーいうのが大事なのだろうと、なんとなく思う。

554 草摺十三『ブレーキング・ポイント』 :2018/12/25(火) 22:03:47
>>553
「そーそー」「そーなんスよねェ〜」
「違う感じとかそれっぽさとか、何かそーいう『感じ』がねー」「いいんよ」

いくらでも便利で簡単にできるのだ。
別に蒸し焼きしたいなら良い圧力鍋と良いガスコンロなりIHヒーターなりでよほどウマいのができるだろう。
失敗もないし。清潔だし。楽だ。

「『あえて』!『あえて』焦げるかもしれねーってちょっと気にしながらやるのが『良い』んスよなぁ〜ッ」

「・・・」
「・・・」
「・・・ゴホン」

「まーこういう遊びッスよ」「ウン」

熱く語っているうちにもう出来上がりだ。蓋を持ち上げれば肉と香辛料の混ざったにおいが流れてくる。

「今日のもウマくいった」「へっへ」「もし良かったら一口たべます?」「これフォーク。今水で洗ったからキレーッスよ」

気さくに勧める。
もはや友達気分だ。親友だったのかもしれないな・・・

555 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2018/12/25(火) 22:46:51
>>554

「『既製品』のステキな洋服と、
 『手縫い』のセーターだと、
 違う魅力があるっていうかさ」

「なんとゆーかそんな感じだよね。
 『洗練』されてないからこそ、っていうか」

裁縫好きから妙な例えになったが、
要は草摺と同じ考え、『そういうこと』だ。

薬師丸はてまひまってものを礼賛しないが、
てまひまが生む『雑味』は確かに楽しめる。

「なんとなくわかって来た。
 キャンプって遊びの入り口が」

「ん、貰っていいの?」

食べ物はありがたい。

「それじゃ、遠慮なくもらっちゃおうかな。
 実はそれ見ててけっこーお腹空いて来てたの」

               「ありがとね」

フォークを受け取り、小さめの一口をむしろう。

「あのさ、貰うばかりじゃ私の『良心』がうずく。
 今はあんまりいいもの持ってないけどね、
 何かきっとお返しするから……ぜひ覚えといて」

食事を共にすればそれはもう、知った仲。そうだ、親友でもいい。
だが、そのためには『お返し』の約束が必要だ。薬師丸はそういう『線』を愛する。

556 草摺十三『ブレーキング・ポイント』 :2018/12/25(火) 23:06:56
>>555
「へっへっへ」

同意の笑みだ。口一杯に肉をほおばっているのでマトモに喋れないということもある。

「へっへ」「むぐ」

ビールで流し込んだ。おいしい!

「草摺十三(くさずり じゅうざ)」「ッス」「同じ鍋のメシ食った仲ってことで」

町中にある小さいが老舗の『造園屋』の屋号と苗字が同じである。
薬師丸は気付かなくても良いしこの先まったく知らなくても構わない。

「でもお礼ーとかお返しーとか気にしねーッスよ」「俺は」
「あんたさんの気が済むならいーし覚えとくけど、あ、水コレ。はい」「辛いっしょ」

557 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2018/12/25(火) 23:18:14
>>556

「『薬師丸 幸(やくしまる さち)』」

「好きに呼んでくれていーよ。
 薬師丸でも、幸でも。
 なにせ『同じ鍋のメシ』だからね」

薬師丸はまっとうな『市民生活』と縁が薄く、
造園という立派な仕事の屋号にもまた縁薄い。

     モグ

「! ……ありがと、やっぱあんた気が利く。
 辛いねこれ。でも、それが『良い』。今日は寒いし」

        ゴクゴク

受け取った水を飲み、笑みを浮かべる。
それでも、確かな縁がここにある。

「お返しは、ま、私の自己満足だからさ。
 こう見えて『人を幸せにする』のが生業でね。
 あ、変な宗教とか、悪徳商法じゃないけど」

                ス

「『幸せ』が欲しくなったらこの番号に電話してちょーだい」

それに自分の満足を上乗せするのは、
幸運を売る少女としての『サガ』のようなもの。

兎の絵が描かれたポップな『名刺』を、そっと差し出した。

558 草摺十三『ブレーキング・ポイント』 :2018/12/27(木) 00:31:02
>>557
(さっちゃんだな)

造園屋の息子は名刺を受け取る。
自分のは無いので渡せない。軽く詫びる。

「『幸せ』ッスか〜」

怪しむとかではなく単純に『よくわからない』って声だ。

「まーこうやって」「遊んでたら友達が増えていくのが今は『幸せ』ッスからねェ」「へっへ」

その意味では充分『生業』とやらは果たせているというわけだ。
日も落ちかけ、薪を放り込んで火を大きくした。

559 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2018/12/27(木) 01:10:58
>>558

名刺を返されないのは普通だ。
ビジネスではないのだから。
詫びには気にしないで、と一言返した。

「そ? 嬉しい事言ってくれちゃって」

    ニコ

「じゃ、改めて言うけどさ。
 今日から私たちは友達。
 よろしくね、ジューザくん」

「私も、友達が増えて嬉しい」

満面の笑みを浮かべて、そう宣言する。
言葉にするなんて無粋かもしれないけど、
言葉にするから確かなものになる気もする。

「っと、ちょっと暗くなって来た。
 私、家族を待たせてるから……そろそろ帰るね」

「チキンとお水、ご馳走様」

          ザッ

「ね、なんとなく、また会う気がする。それじゃあね」

完全に暗くなる前に、帰路につくことにした。
もし何か言葉があれば、それを聞いて、答えて帰ることにしたのだ。

560 草摺十三『ブレーキング・ポイント』 :2018/12/28(金) 22:00:05
>>559
「『なんとなく』、俺もそんな気がするッスねェ」
「へっへ。じゃあ。気ィつけて」

友達が増えることは良いことだ。
一人で遊ぶのも友達と遊ぶのもとても楽しい。
遊び始めたときに仲良くなって、その余韻のまま遊べるのは最高に良い。

「♪」

    パチ ッ

鼻歌混じりに薪をくべ、寒くて長くて、楽しい夜を待つとする。

561 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2018/12/28(金) 22:15:48
>>560

「寒くなるから、あんたも気を付けて。
 寒いのも楽しいのかもしれないけど、ね」

         スタ
            スタ

それだけ返して、去っていった。

『スタンド使い』として『惹かれ合う』時も、
いずれ来るかもしれないが――――

少なくともはじまりは異能など関係のないただの友達だ。

562 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2018/12/30(日) 20:20:54
「・・・・・・・・・・」

『ブン』『ブン』

日も沈みかけた夕暮れ。公園の片隅で、一人の学生服の少年が素振りをしていた。
その手は竹刀を握り、頭上に掲げ。そして正面、次は手元まで振り下ろす。
同時にすり足で前へと進み、そして下がる。それをひたすら繰り返している。

563 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2018/12/31(月) 22:32:47
>>562

『ブゥン』『ピタリ』

「・・・千五百」

間に休憩を挟み、300×5セットを振り終える。
ゆっくり呼吸を整えると、竹刀から鍔を外し、まとめて竹刀袋に入れた。
そして身体が冷えない内にマフラーと上着を羽織って、スマホの画面を見る。

「年越しそばを食べたら・・・初詣か」

家族への連絡を入れると、鉄は帰途に着いた。

564 <削除> :<削除>
<削除>

565 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/25(金) 22:46:25
既に夜の帳が下りた公園、その端にある雑木林。
学生服姿の少年が、大きな黒い革製の袋を背負って入り口に立っていた。

「・・・・・・・・」『キョロキョロ』

辺りを見回した後、こっそりと目の前の林の中に入っていく。
いかにも怪しげな姿だった。

566 ??? :2019/01/25(金) 23:12:58
>>565

……シュピッ !!

背後の暗闇から『何か』が『鉄』の足元目がけて、投げつけられた!

「青少年がこんな夜中に、怪しい荷物……怪しいですね。」

少女の声が響いた。

567 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/25(金) 23:23:23
>>566

『ビクッ』

「・・・・・なッ!?」

実際に後ろめたいことでもあったのだろう。
少年はたじろぎながら、飛んできた何かの正体を確かめる。

「何者だッ!」

どこにいるかも分からない声の主に、そう訊ねながら。

568 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/25(金) 23:36:14
>>567
地面に刺さった飛んできたモノを確かめる……

  これは……!
    これは……!!
      これは……!!!
        『メガネ』 だ。MEGANEだ。英語で言うとGlasses。

「私の『メガネ』は非行行為を見逃さない。」
メガネをクイッと整えながら、14歳ぐらいの黒髪メガネ制服少女が闇の中から現れた。

「何者かと問われれば……」

「清月学園中等部2年 風紀委員 松尾 八葉(まつお やつば)!」

「夜の風紀の乱れに即参上!」
少女が参上した。

569 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/25(金) 23:52:38
>>568

「─────」

(メガネ?)
(いや、何故メガネを?そもそも投げつけるものではないはずだろう?)

『ゴシゴシ』

目をこすってみたが、やはり飛来物はメガネにしか見えなかった。
これは自分にこそメガネが必要なのではないか?暗闇でよく見えていないのかもしれない。
だが、近づいてみてもそれはメガネだった。鉄は困惑した。

「…こんばんは」
「オレは清月学園高等部二年生、鉄夕立(くろがね ゆうだち)だ」
「ええと…松尾さん、よろしく」

「その…何故、メガネを投げたんだ?」

色々と気になるところはあったが、まず先にツッコミたいところを訊ねてみた。
ひょっとしたら、お互いに何か勘違いをしてるのかもしれない。

570 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/26(土) 00:08:03
>>569
「なぜ、メガネを投げたか?」

「いい質問です。
 夜中に風紀パトロールをしていたら、
 怪しい人影が見えたので、手近にあったメガネを投擲したまでです。」

「鉄さんは高等部2年生ですか、先輩にあたるわけですね。」

「風紀委員としてお尋ねしますが、鉄さんこそ、この夜中にそのような出で立ちでどこへ向かわれるのでしょうか?」

「特にその『黒い袋』!怪しすぎます!」
ビシッと袋を指さす。

571 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/26(土) 00:26:55
>>570

「・・・・・・・・・・」

ダメだ、説明を聞いても全く分からなかった。
いや、ほとんど成り行きは分かったのだが、怪しい人影を見つけたのでメガネを投げた、この部分が全く分からなかった。
ひょっとして、どこかの家系にはメガネを暗器として扱う技術もあるのだろうか?
いや、とりあえずそうしておこう。この部分に突っ込んでも理解できる気がしない。

「あぁ、これか」「今日は自主練に来たんだよ」
「オレは『剣道部』だから」

確かに鉄が背負っていたのは、普段防具を入れておく『防具袋』だ。
しかし、疑問が残る。剣道の練習に来たならば、何故『竹刀袋』はないのか?

「夜間に出歩いたのは申し訳ないな…今度からはもう少し早めにしておくよ」

(中学生でよかった…緊張せずに済むからな)(流石に苦手なタイプだったら、隠し切れなかったかもしれない)

572 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/26(土) 00:35:59
>>571
「むむむ、防具袋。
 確かに一見おかしくなく見えますが……ズバリ言いましょう。」

「『防具』だけで練習をするのですか?
 素振りなどの練習ならむしろ、『竹刀』だけでよいのでは?」

「と、このように、私の『メガネ』は不正を見逃さないのです。」
メガネの奥から不審な視線を向けている。

573 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/26(土) 00:55:06
>>572
>「『防具』だけで練習をするのですか?
> 素振りなどの練習ならむしろ、『竹刀』だけでよいのでは?」

『ギクリ』

(い…意外と鋭いぞ、この子ッ!)
(参った…一般人に話しても分かり辛いだろうし…頭のおかしい人間だと思われてしまうな)

「そ…そうだな、うっかり忘れてしまったみたいだ」「ははは」
「それではオレは帰るとするよ」「練習しようにも『竹刀』を忘れてしまったからな」

『クルリ』

そういって鉄は松尾に対して背中を向ける。隙だらけだ、『防具袋』に手を伸ばせば簡単に届きそうである。

574 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/26(土) 01:04:06
>>573
「むむむ……怪しいです。」

「風紀の乱れは、心の乱れ!」

「風紀クロスチョップ!」

松尾の背中の防具袋目掛けて、軽いクロスチョップでとびつき、引っ張ってみる。

「持ち物検査の型!」

575 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/26(土) 01:12:17
>>574

『グラァッ』

「なっ?!」「意外と破天荒なタイプだなキミはッ!」

松尾に飛びつかれ、バランスを崩した鉄は、思わず『防具袋』を手放した。
すぐにそれは地面に落ちて音を立てつつ中身の一部を散らばらせる。

『ガシャアン』

「・・・・・・・・・・」

それは、『刃物』だった。防具袋からこぼれたのは、『錐』と『ペティナイフ』。
その他にも、『包丁』などの雑多な刃物が防具袋の中にゴチャゴチャ詰められている。

『┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨』

「見て…しまったか…」

鉄の刃先のように斜めになったシャープな前髪の下で、鋭い目が松尾を見下ろしている。

576 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/26(土) 01:30:49
>>575
「は、刃物!? 大量の……!?」

「これは……強盗ですか!?殺人ですか!?それとも両方……!?」

「ああ、これはまさか『好奇心は風紀委員を殺す』のことわざにのっとり、私をも……!?」

   『┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨』 

バッと後ろに下がり、顔の『メガネ』を外す。

   『┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨』 

「粛清の時です………!」
『メガネ』で覆われていた表情が消え、鋭い視線が鉄へと向けられ……

「『ターゲット・プラクティス』!」
真黒な忍装束のスタンドがその傍らに立った!

577 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/26(土) 01:44:43
>>576

>「ああ、これはまさか『好奇心は風紀委員を殺す』のことわざにのっとり、私をも……!?」

「いや、そんなピンポイントな諺ないだろ」

ツッコミつつも、溜め息をつく。時間がかかるが、なんとか説明して理解してもらうしかない。
下がりながらメガネを外す松尾に対して、鉄は地面に落ちた『ペティナイフ』を拾った。

(伊達メガネだったのか…)
「驚かせてすまないな…だが、これにはちゃんとした理由が─────」

そして、鉄は目を見開いた。
松尾の傍らに立つ、忍び装束の『スタンド』を見て。

「まさか、キミも…『スタンド使い』ッ!」「…だがこれは手間が省けたかな」

逆手に握った『ペティナイフ』。それを松尾に見せると、鉄はおもむろに自らの喉へ突き刺すッ!

『ヒュンッ』

『トスッ』

───だが、鮮血は出なかった。勢いは十分、そして今もその刃先は首に触れているというのに。

578 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/26(土) 09:01:21
>>577
「あっ……自殺はいけません!自殺は!」
『ペティナイフ』を喉に突き立てようとした鉄に言葉を投げかける。

「……あれ?」
……が、刺さらないのを見て疑問と困惑の表情を浮かべる。

「まさか、この刃物たちは……」
足元に転がっている『錐』を手にして、その切っ先を指先でツンツンしてみる。

「偽物?作り物?なまくら?」

579 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/26(土) 19:53:18
>>578

「いや、それらは『本物』だよ」「たった今『なまくら』にしたんだ」
「オレの『シヴァルリー』で」

ペティナイフを握る鉄の手に重なって見えるのは、金属製の籠手を身につけたような人型の腕。
『ターゲット・プラクティス』と同じ─────『スタンド』だ。
錐を拾い上げる松尾に対し、今度は左手を向けた鉄。右手と同じくヴィジョンが発現し。

『ズキュウンッ!』

その錐から、同じ形だが幽体のようなものが鉄の『スタンド』へと飛んでいき、吸い込まれる。
その後ならば松尾が切っ先に指を当てても、傷どころか痛みすら感じないだろう。
あたかも皮膚が頑丈になったようだが、金属による冷たい感触は変わらない。

「『斬撃を統制する能力』」
「オレが殺傷力を奪った刃は、誰であれ何であれ傷付けることはできない」
「そういう能力なんだ…キミも別の能力を持ってるように、オレはこういうことができる」

580 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/26(土) 20:22:13
>>579
  ツンツン……

「キレテナーイ……」
『錐』をツンツンしながらそんなことを呟く。

「なるほど。もしかして『その能力』を訓練しに出歩いていたわけですか?」

581 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/26(土) 20:43:20
>>580

「その通り」「自主練は自主練でも、『スタンド』のってことさ」
「…まぁ、人間みたいに筋力や技術が鍛えられるわけじゃあないだろうが」
「扱いに慣れておくという点では、間違いではない…と思いたいな」

歯切れの悪い言葉を使う。
そもそも目覚めてから日が浅い自分には、どうすれば『スタンド使い』として強くなれるか分からない。
『剣道』と練習方法はまるで違うのだろう。
それでもじっとなにかを待つよりは、動いた方がマシだと思っている。

「この前会った人も『スタンド使い』でね」
「その人がふと、『スタンド』の危険性を示唆したんだ」
「平石さん…その人は恐らく危ない人でないけれど、他に危険な『スタンド使い』がいないとも限らない」
「人を守れるくらいには、強くなっておきたいからな」

他にも散らばった刃物を、『防具袋』の中にしまい込んでいく。

「松尾さんは?目覚めてから結構経つ…所謂ベテランなのか?」

582 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/26(土) 21:24:51
>>581
「なるほど、それは……お邪魔をしてしまいましたね。」
『メガネ』をかけ直す。

「片付けるのを手伝わせてください。」
散らばった刃物を『防具袋』に片付けていく。

「私も……まだ目覚めたばかりですよ。
 スタンドと言う『コレ』も『風紀を守る役に立つ』くらいにしか考えてなくて……。」

「しっかりしているんですね、鉄さんは。」

「もし、また何か『修行』をしたかったりしたら、声をかけてくださいよ。
 なにしろ、この『ターゲット・プラクティス』は『身代わりの術』の使い手でして……
 訓練などにピッタリなスタンドなんですよ。」

自らの傍らのスタンド、『ターゲット・プラクティス』を見ながら鉄に話しかける。

583 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/26(土) 21:43:39
>>582

「いや、そもそも怪しい行動をしていたのはオレだからな」
「松尾さんは間違っちゃいないよ…『風紀委員』として正しい行動をした」
「洞察力と行動力は特にスゴいと思う」

こちらの行動の矛盾点を突いた点や、本当に危険物の入った袋を叩き落とした点は見事だ。
中学生といえど流石は風紀委員といったところか。学園の中の治安については安心してもいいかもしれない。
もっともメガネの投擲は未だに謎のままだが。

「ありがとう、怪我をしないように気をつけて」「それじゃあお互い『ルーキー』だな」

共に拾い集めてくれる松尾に対して、礼を述べる鉄。

「いやいや、まだまだオレは未熟者だよ」
「人と争うのが苦手なんだ…他校ならまだしも、同じ部活の仲間と試合をするのとか、…特にね」
「いざという時には、この能力で人を斬らなければならないのか」「そういう事を考えると…手が震えるよ」

わずかに、自嘲するような笑みを浮かべる。
そして刃物を全て『防具袋』にしまい終えると、それを改めて担いだ。
改めて、黒髪の少女へと向き直る。

「だから、松尾さんのありがたい提案はオレに『覚悟』ができてからかな」
「それにしても『変わり身』か…」「カッコいいな」「まるで『忍者』みたいだ」

584 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/26(土) 21:53:21
>>583
「忍者みたい……ふふふ、それは秘密です。にんっ。」
不思議な印を組みながら答える。

「もし、よかったら、連絡先を交換しませんか?
 これ、私のLINEです。」
スマホのQRコード画面を見せる。

「『覚悟』をお待ちしてます。にんっ。」

585 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2019/01/26(土) 22:19:22
>>584

「え」「いや、まさか」「本当に…?!」

言われてみれば、あのメガネ投擲はあたかも『苦無』のようだった。
もし本当なら、これは『スタンド』よりもちょっと感動するかもしれない。
思わず目をキラキラさせていると、少女から連絡先の交換の申し出があった。

「こちらこそ、喜んで」「何か困った時は力になる、遠慮なく呼んでくれ」

こちらもスマホを取り出し、コードを読み取った。
やがて彼女のスマホに『信玄餅』のLineアイコンと、『鉄 夕立』という名前が表示されるだろう。

「それじゃあオレは少し『特訓』していくから」「『スタンド』があるとはいえ、松尾さんも帰り道には気をつけて」「おやすみ」

そういって、雑木林へと歩みを進める鉄─────その姿が消える前に、足を止めて振り返った。

「そうだ」「オレもある意味そういう能力だから、説得力がないかもしれないが…」
「『切断系』のスタンド能力がいたら、警戒した方がいいかもしれない」
「それじゃあ」

そう言い残すと、鉄は再び闇の中へと歩みを進めていった。

586 松尾 八葉『ターゲット・プラクティス』 :2019/01/26(土) 22:30:40
>>585
「はいっ、鉄さんもお気をつけて!」

「おやすみなさい!」
足早に立ち去って行った。

587 成田 静也『モノディ』 :2019/01/30(水) 18:20:11
「この時間ならだれもいないだろう」

あの不思議な人からもらった『モノディ』という能力…『スタンド』とか言ってたかな
とにかくオレの隣にコイツが現れるようになって数日が経った。
1度だけコイツが本当に人に見えないか試すために宅配の人から物を受け取るとき
この『モノディ』を出したまま受け取ってみたが本当に見えないらしく特に反応はなかった。

だが目覚めさせてくれたあの人の言葉からまだ出会っていないが
きっと同じ『スタンド使い』が身近にいるという確信からそれ以降は
極力人前に出さず、今のように公園の人気のない場所で能力を確認するようにしていた。

「そもそも人気の多い場所は苦手だしな。」「落ち着きたい時には今度からここに来るのもいいかもな」

一通りできることを確認し終えてベンチに寝そべりながら呑気にもそう考えていた

588 名無しは星を見ていたい :2019/01/30(水) 22:06:58
>>587

 
 ザァァァ――   カツ コツ カツ コツ

?「……」

風が吹く 何者かの足音が横たわる君の耳元へ到来が近い事を報せる。

カツ コツ カツ 『シュン』  ……ドサッ

だが、唐突にその足音が途絶え そして、『直ぐ隣』に何者かが座るのを聞いた。


   ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ・・・

?「……簡潔に聞こう」

?「君はどちらだろう。運命が見えるとして、ソレが全て崩壊と
理解しても立ち向かう事を選ぶ勇者か。
或いは無情を知り、膝をつき立ち止まる凡夫か?」

何者かが君に問いかけている……。

589 成田 静也『モノディ』 :2019/01/30(水) 23:46:00
>>588

ドドドドドド…

自分の心音が太鼓のように大きく聞こえ、全身に冷や汗が出るのが分かる。
前までであればただのよくいる変人奇人としてやり過ごしたであろうが
先日の不可思議な出来事からかこの何者が只者ではないと察し
何者かとも聞くことが出来ず、逃げようにも足が動かない。
そして何よりも問いに答えなければならない本能が告げている。

ふとさっきのスタンドの試運転を思い出す。
能力によって一時的にとはいえ声を失った鳥、殴ったことで砕けた石、
そしてその力に感じた少しの不安。

答えれば何か変わるかもしれない…

「オレは…何者にもオレの平穏を侵されたくない…」

「一度前に進んだ以上、勝手に止まることはできない」

「オレが勇者かは知らないが前に立ちふさがるならばそれに立ち向かわなければならない」

震える唇で絞り出したような声で答えた

590 遊部『フラジール・デイズ』 :2019/01/31(木) 00:05:17
>>589

>前に立ちふさがるならばそれに立ち向かわなければならない

「ならば、君は『立ち向かう』者だな。
そして、私の力に怯えながらも確固とした意志を持ち合わせてるのならば
『力』を宿してるのだろう ―受け取ってくれ」 ピッ

成田へと、フードとコートで全身を覆う怪しい人物は一つの
名刺を投げるように受け渡す……『アリーナ』と言う
どうやらスタンドの闘技者を応募する事柄が記されたものだ。

「運命は生きとし生けるものに呪縛のように纏わりついている」

「君の力はそれを振り払う刃か? または鎖の音を癒す楽器となるか」

「答えずとも良い……所詮わたしは奏者と共に手を叩けども
直接鍵盤を弾く資格を持ち合わせてないのだから」

「幽鬼には所詮眺める事しか出来ない……霞の中で風を感ずるのみだ」

意味を掴むのが難しい呟きを淡々と続けている。
どうやら、君がスタンド使いであるならアリーナの闘技者へ
勧誘してるようではある。

591 成田 静也『モノディ』 :2019/01/31(木) 00:23:36
>>590

目の前の相手はおそらくオレが初めて会う、しかも熟練のスタンド使いなのだろう。

オレは震える指で名刺を拾い、響くように聞こえる言葉をなんとか理解し、
相手の発するスゴ味という奴だろうか
それに負けないため遊部に質問を投げかけた。

「オレの名は成田…成田 静也だ…最後にアンタの名前を良ければ教えてくれないか?」

2日、3日前に力を手に入れたオレには情けないことにこれが精一杯だった。

592 遊部『フラジール・デイズ』 :2019/01/31(木) 22:00:58
>>591(お付き合い有難う御座いました。ここら辺で〆ます)

>名前を良ければ教えてくれないか?

「『フラジール』 それが水面に映る名であり
喜劇的なマリオネットの呼称だ」

「全ての巡り会わせに意味はある 決して無為にはならない
例え傍目には価値の無いよう見えて因果は纏わりついている」

「いずれ君も理解するだろう 先に待ち受ける溪谷と言う名の
試練を登り詰めた時に 私が唱えた意味合いをな」

「また会おう 成田 静也」

   ――スゥ

フートを纏った怪しげなスタンド使いは貴方の視界から消えた。
瞬間移動でもするかのように、瞬く間に。

彼? 彼女?が何者であり、何を目指すのか……それは再びの
邂逅がいずれあった時に判明するのかも知れない。

593 成田 静也『モノディ』 :2019/01/31(木) 22:46:12
>>592(こちらこそここまでお付き合いありがとうございました。
またの機会を楽しみにしています。)

>『フラジール』

「『フラジール』…ありがとう覚えたよその名前…」

彼(?)彼女(?)が去ってからもしばらく冷や汗が止まらなかった
そして頭の中で「なぜ自分がスタンド使いだと分かった?」
「もしかして『あの人』と会ってスタンドに目覚めた所を見らえていたのか?」と様々なことが駆け巡った。

ただ…

「助かった…多分…」

「アレはヤバかった…スタンド使いはみんなあんな風なのか?」

やっと安堵の言葉を吐き出すことができ落ち着くことができた。

そして改めてもらった名刺を見る。
そこには何かのマークと住所、時間が書かれていた。

「アリーナか…スタンド使いの闘技場って言っていたな」

きっと『モノディ』よりも強力なスタンドもいるのだろう
そして顔もわからないソイツらともいつかは…
昔のようにただ怒りに任せて力を振るってはいけない
今のように力に怯えていてもいけない…
身を守るためにも『今を変えるためにも』もっと強くならねば

とりあえず今日は家に帰ることにしよう。
今日は色々とありすぎた。

594 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/15(金) 21:13:54

(この辺りで、ちょっと練習しましょう)

人気のない森の中をスタンドが歩いています。
フードを目深に被り、肩にシャベルを担いだ墓堀人のヴィジョンです。
見える人なら見えたかもしれません。

(でも、スタンドの練習って何をすればいいんでしょうか?)

595 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/15(金) 23:45:46
>>594

「(うーむ、この辺トイレあったかな……)」

 ガササ


草叢を抜けて足を踏み出したところで、
『それ』と真正面から出くわした。


   バッタリ


「あっ、これは失礼……」
「…………」
「…………」 チラ

「…………」 チラ(二度見)


「ぎ、ぎゃぁああアアアア──────ッ!?」

いい歳こいた眼鏡のおじさんが腰を抜かして
草叢にデーンとハデに尻もちをつく。
スタンド使いらしいがあんまりこの手の遭遇に
慣れてないらしかった。

「で、ででてでででで……」
「何者!?」

596 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/16(土) 00:30:51
>>595

(あっ――)

と思った時には、もう遭遇していました。
驚かせてしまったみたいです。
どうしましょうか。

《大丈夫ですか?》

墓堀人のような人型スタンドが喋っています。
どうしようかと考えて、とりあえず空いている片手を差し出しました。
本体らしき人影は近くにはいません。

《『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』――》

             《と申します》

       ペコリ

やっぱり最初は挨拶でしょうか。
そう思ったので、お辞儀をしておきました。
『見える人』に出会ったのは、これで二度目です。

597 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/16(土) 00:53:32
>>596

「うぉっ!」

ドキビク──っ

差し出された手にいっしゅん後ずさりしかけるが、
労わりに満ちた声を聞き、目の前の掌と顔貌を交互に見つめる。

「あ、……これはどうも……」

(優しい声がこの場合
逆にギャップ効果で怖い気もするが)
手をとって立ち上がった。
オソルオソル……

尻についた葉や草きれを手で払い、
体裁を取り戻す息継ぎのような咳をする。


「コホン。あー、その、なんだ……。
失礼な姿を見せてしまったな……」

「しかし……その……君は一体なんなんだ?
『ナウ・オア・ネヴァー』……
わたしのような『取り憑いた者』はいないのか?」

598 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/16(土) 00:57:57
>>597(訂正)

「(なんか混乱しているのか
よく意味がわからん質問をしてしまったな……)」

「君が『取り憑いた者』はそばにいないのか?
を聞きたかったんだ……」

599 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/16(土) 01:18:06
>>597

おじさんの手を取ったスタンドが、その手を引っ張り上げました。
ですが、『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』のパワーは人並み以下です。
そのことを忘れていたので、軽くよろめいてしまいました。

《いえ、こちらこそごめんなさい》

《驚かせてしまって、すみませんでした》

      ペコリ

《『取り憑いた』――ですか……》

きっと本体のことだと思いました。
『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』は力が弱い代わりに遠くまで行けます。
今、千草は少し離れたところで操作しているのです。

《今、向こうの方にいますが――》

《……ご案内しましょうか?》

幽鬼のようなスタンドが、木立の奥を指差します。
それから、おじさんを振り返りました。
フードの奥の両目が、おじさんを見つめています。

600 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/16(土) 01:36:47
>>599

「だ、大丈夫か君……?」

 ワタワタ

慌てて手を引いてバランスをとる。

自分から手を差しだしておきながら
よろける姿はコミカルというか
もりもり親近感湧いてくるが……。

「(あんまり動き慣れてないのか?)」

『彼』(『彼女』?)が指差した
木立に目を向ける。

「向こうの方って……」
目を細めてみる。
「……どこまで遠くにいるんだ?
そこまで案内してくれるなら」

幽鬼のような瞳と目が合う。
かそけき揺らめきの渦に
全身が吸い込まれていってしまいそうで
思わずササっと目を逸らしてしまった。

「つ、ついていってみるが……頼めるか?」

601 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/16(土) 05:47:20
>>600

《――そんなに遠くじゃありません》

     ザッ

《この先を、ちょっと行ったところです》

おじさんの前に立って、木立の中を歩き出します。
千草までの距離は大体15メートルです。
森の中なので足元は舗装されていませんが、そんなに時間はかかりません。

《ここで少し動かす練習をしていました》

《まだ慣れていないので》

《でも、何を練習したらいいのか、よく分かりません》

《だから、今は『練習の練習』をしています》

歩いている最中に、スタンドが話しかけてきます。
幽鬼のような外見に反して、本体は結構人懐っこい性格のようです。
また、その口ぶりに、どことなく幼い雰囲気が感じられるかもしれません。

《――スタンドのことは、お詳しいですか?》

602 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/16(土) 08:45:11
>>601

  ザスザスザス


草叢を踏み払いながら奇妙な背中についていく。
『不気味さ』と『あどけなさ』の二世帯同居だ……。
わたしの方は『警戒』と『好奇心』がまだ相半ば。


梢の彼方に、この森林行を俯瞰して見ている
もう一人の自分の姿を浮かべた。
そいつに『大丈夫か?』と呟かせる。

 『このまま黄泉の国に連れて行かれたりしない?』
 『急に振り向いてこれはお前の墓穴だァ────ッ 
  とか言われない?』
 『でも相手は子ども?』
 『ならもし万が一襲われても……』などなど。

わたしはしばしばこうやって心の安定を図る
(精神の息継ぎだ)。


「…………」
「『スタンド』というのか、この『亡霊』どもは」
「…………」
「わたしにはその程度の知識しかない。
 『亡霊』に『名前』と独自の『ルール』があることを
 知ったのもつい最近だ」

言葉を吟味するような短い沈黙を挟みつつ、
あどけない質問者に返答する。

「しかしどうやら君も似たようなものらしいな。
 初心者ふたりが出会っちまったというわけだ」
「…………と、ずいぶん歩いた気がするが」

周囲の木立をキョロキョロ見回して人影を探す。

603 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/16(土) 18:47:46
>>602

      ザッ ザッ

《じゃあ『同じクラス』ですね》

《よろしくお願いします》

《あ――》

       ピタリ

突然スタンドが立ち止まり、グルッと振り向きました。
ここは森の中心近くです。
一番深いところと呼んでもいいかもしれません。

《言いにくいんですが、いいですか》

《お話に夢中になりすぎて――》

「――少し通り過ぎてしまいました」

おじさんの背後に立つ木の裏手から、高い声と一緒に小柄な人影が出てきました。
12歳くらいでしょうか。
緩やかな巻き毛と、クルリとカールした長い睫毛が特徴です。
格好はブレザーですが、制服ではないようです。
『これから発表会にでも行くような格好』と言うのが分かりやすいかもしれません。

604 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/16(土) 20:22:47
>>603

>       ピタリ

>突然スタンドが立ち止まり、グルッと振り向きました。

「ピャッ」

ストローでも咥えてました?
ってぐらい細く弱々しい息が唇の隙間から漏れた。
高価そうなジャケットの両肩が緊張で跳ねあがる。

       うめ
「(──やはり埋殺る気かッ!?)」

両手を顔の前にシャっと構え、
カマキリのごとき闘法(ファイティングポーズ)を見せる。
精一杯の抵抗というか威嚇のつもりか?
プルプル震えて明らかに付け焼き刃なのはバレバレだ。
しかし──


>「――少し通り過ぎてしまいました」


背後からの幼気な声に振り返り、愛らしい子どもの姿を認めた。
フゥーッと安堵のため息をつき、
一瞬おくれて気恥ずかしそうに両手を下ろす。
このおじさん、見てくれだけは立派な仕立てのスーツ姿なのだが……


「…………」「コホン」
「君がその『亡霊』……いや、
 『スタンド』の本体か?」

改めて目の前の子どもの姿を見据える。

「幼そう、とは思っていたが……」
「まさか……小学生……か?」

驚きのためか数回、吐息を飲むように言葉がつっかえる。
そこには驚き以外の感情もいくらか混じっているようだった。

605 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/16(土) 21:09:44
>>604

「――いいえ、違います」

「小学生じゃありませんよ」

      スタ スタ

おじさんに近付きながら、そんな風に返します。
少しムキになっているように見えるかもしれません。
自分でも、ちょっと気にしていることなのです。

「『中学一年生』です」

「早生まれなので、平均より成長が遅れてますけど……」

「小学生じゃありません」

客観的に見ると、ほとんど差はないと思います。
でも、千草にとっては大事なことなのです。
だから、しっかりと主張しておきます。

「――こんにちは」

      ペコリ

「『三つの枝に千の草』と書いて、『三枝千草(さえぐさちぐさ)』といいます」

まずは挨拶しましょう。
『立派な人』になるための基本です。
まだまだ未熟者なので、おじさんの内心には気付けていません。

      ザスッ

『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』がシャベルを下ろしました。
地面に突き立てたシャベルの握りに両手を添えて、亡霊のように佇んでいます。
本体の子供は、今その隣に立っています。

「――おじさんのお名前は、何とおっしゃるんですか?」

606 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/16(土) 22:06:35
>>605

「あっ、ああ……それは失礼した」

  ペッコォー

こちらは相手がどうも気にしてるらしい
繊細な部分の泡立ちに気づけた(大人の面目躍如だ)。
我に返ったように口を閉じ、あわてて軽く頭をさげる。

ふたまわり近く歳の離れた相手に
チト情けない振る舞いに映るだろうか?
しかし男なら、たとえ相手が子どもだろうと
レディに『敬意』は必要だ……。

「(あ、いや待て……
  果たしてこの子は『レディ』……でいいのか?)」

  チラミ

判別の難しい年頃だし、何より『そこ』も
この子が気にしてる繊細な部分かもしれない。
視線を走らせ、その佇まいや服装をもっと深く精査する。


「わたしは
 空織 清次(くおり きよつぐ)」

「君は『仕立て屋』……って知ってるか?
 まあカンタンに言えば『洋服屋のおじさん』だ」

『元』だが、と口の中でこっそり付けたす。

「ところで、君はさっき『練習』と言っていたが……
 その亡霊──『スタンド』を操って、
 何かするつもりなのか?」

小峰のごとく直立する『墓掘り人』を
指差しながら訊ねる。

607 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/16(土) 23:14:10
>>606

「空織さんというお名前なんですね」

「はじめまして、空織さん」

      ペコリ

体格は華奢で、顔立ちは繊細な作りです。
女の子と言われれば女の子に見えるし、男の子と言われれば男の子に見えます。
つまり、服を着ている限りは分かりそうにありません。

「――似合いますか?」

視線に気付いて、その場で軽く姿勢を正しました。
金釦のブレザーとボタンダウンシャツに、ネクタイも締めています。
下はシンプルなスラックスでした。

「『従兄弟のお下がり』ですけど、気に入ってます」

この服装は、元々は従兄弟のために用意されたものだったようです。
仕立て屋さんの空織さんなら、それが男の子用らしいことは分かると思います。
ですが『お下がり』なので、やっぱり性別の決め手にはなりません。

「えっと……」

「スタンドを使って具体的に何かしたいとか、そういうのはまだ分かりません」

「でも――いつか叶えたい『夢』はあります」

「その実現のために、『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』が役立てばいいなと思います」

「だから、この力でできることを色々と試してみたいのです」

608 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/16(土) 23:57:31
>>607

「あ、ああ……とても似合っているよ」

「君みたいな年頃で、フックのないフォーマルを
 『着せられる』感なく着こなすのは
 実に難しいことだ」

「だがその服は、君にとてもフィットしている。
 それはたんに君の見た目のことを言ってるんじゃあない。
 その服が似合うのは、
 君の『精神性』に正しく寄り添っているからだ」

などと小難しいことをペラペラまくしたてるが、
その心中では荒波が立っていた。

「(いや分からんッ! どっちだ!?
  男か女か!?)」

   ゴゴゴゴゴ

「(この空織、『仕立物師』として
  それなりに『着振る舞い』の眼は
  磨いてきたつもりだったが……
  今回はマジで分からんッ。
  空織、お手上げ!)」


 ゴソゴソ
(懐を漁る)

「…………君、良かったら『飴』いるか?」

ふたごの天使が描かれた『いちごミルク味』と
恐竜の描かれた『コーラ味』を差し出す。
どっちを取るかを見るのだ……(意味あるのか?)

「『夢』……?」
「……その『スタンド』を活かせる、か?」
「気になるが……それって、わたしが聴いて
 いいものか?」

ふつうに年相応の子どもに対する気遣いとして訊ねる。

609 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/17(日) 00:38:51
>>608

「そう言っていただけると嬉しいです」

     ペコリ

たぶん褒められたのだろうと思ったので、軽く頭を下げます。
内容は半分くらいしか分かっていませんでしたが。
そして、それとなく探りを入れられていることにも気付きません。

「――くれるんですか?いただきます」

      スッ

二つを見比べて、特に迷うこともなく『いちごミルク味』を手に取りました。
『炭酸』の味は苦手なのです。
単純に、それだけの理由でした。

「この力が活かせるかどうかは……分かりません」

「でも、『妖甘さん』が――
 『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』を目覚めさせてくれた人ですけど、
 『恐怖を乗り越えて成長することを祈っておく』と言ってくれたので」

「だから、この力が『夢』を叶える助けになってくれたらって……」

「――そう思ってます」

      ニコリ

そう言って、無邪気な笑顔を向けます。
屈託のない子供らしい笑いです。
それから、もらった飴を包装から取り出して、口の中に放り込みました。

「空織さんにも『夢』がありますか?」

「もしあったなら――それを聞かせてくださったなら、話してもいいですよ」

「いわゆる『秘密の共有』です」

610 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/17(日) 01:29:12
>>609

「(ノータイムでいちごミルク!
  だが実は『飴』の二択は『フェイント』だ……)」

  見るのは飴を受け取るときの千草の『指先』!
 実は『指』というのは『性差』が出やすい部分なのだ。
 (たとえば男性ホルモンの『テストステロン』は、
  『薬指』の長さに影響を与える)──

 そうして手の表象に現れる
 微小な『男女のちがい』をッ!
 飴を選んだこの一瞬!
 この仕立物師としての『熟練の眼』で
 逃さず見極めてやるッ!

 ※ なお精密動作性:C(人間並)


……冗談はさておき。

「たいした子だな……」

千草の独白に腕を組んで唸る。
12才に感服させられる34才のおじさんの図。

「わたしが君ぐらいの歳のころって、たぶん
『ニガテな野菜を克服できるか』とかで
 悩んでるレベルだったと思うが……
『恐怖を乗り越えて成長』という言葉に
 真正面から向き合っているとはな」

「(だが一方で気になる言葉も聞いたぞ……『妖甘』?
『目覚めさせる奴』がまだいるのか? こんな子どもを?)」


「『夢』──わたしの?」
「あ、あるにはあるが……」

『秘密の共有』というあどけない約束、
だが心の荒んだアル中の男にはあまりにも眩しい……!

「そ、それは……」「…………」
「わかった、教えよう」
「君が聞いてもつまらんことだと思うが……」

「『もう一度この町で、自分の店を持ちたい』……」
「…………」
「な、なにをマジになってるんだわたしは……」
「コホン。き、君のを聞かせてくれるか?」

611 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/17(日) 03:59:16
>>610

空織さんの視線の先にあったのは、細長い指でした。
それが決め手になるのかどうかは分かりません。
本人は何も気付くことなく、口の中で飴を転がしています。

「お店……『洋服屋さん』ですか?」

「目指す形がしっかりしていて、とても立派な『夢』だと思います」

「その『夢』が叶ったら――空織さんのお店に行ってみたいです」

『千草の夢』は、まだ形が曖昧です。
だから、余計にしっかりしていると感じるんだと思います。
早く目標のヴィジョンを確かなものにしたいですが、難しいです。

「笑わないで下さいね」

「――『立派な人になること』です」

「『たくさんの人から尊敬されるような立派な人になる』――それが『夢』です」

『千草の夢』は、『素晴らしい死に方をすること』です。
そして、そのためには『立派な人になること』が必要だと思っています。
だから、『立派な人になること』は『夢』というよりは『夢の夢』です。
それを言わなかったのは、空織さんとまた会いたいと思うからです。
いつかまた出会った時に、それを話せれば嬉しいです。

「空織さん、良かったら連絡先を交換してくれませんか?」

「『スタンドの仲間』で『初心者の仲間』で『叶えたい夢を持っている仲間』で――」

「その……『友達』になって欲しいです」

ブレザーのポケットから、
手帳型のレザーケースに入ったスマートフォンを取り出します。
それから、空織さんを見上げました。
シャベルを携えた『墓堀人』は、本体の隣で頭を垂れています。

612 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/17(日) 06:39:56
>>611

「……笑わんよ」
「『立派な人になる』というのは十二分に立派な夢だ」

「だが生涯持ちつづけるには
 すこしばかり危うい夢ではあるな……」

その夢は価値判断を他者に依存している。
自我を確立すればいずれ脱皮する、『さなぎの夢』だと
空織は思った。


気になったのは彼女の精神性の方だ。
彼女の心は妙に『達観』しすぎている……
一体なにを見て育てば、ちっぽけな子どもが
こんな精神性に(『スタンド』に)たどり着く?

この子は心身に皺ひとつない高潔な両親から
たっぷりとした愛を受けて育ったのだろうか?
何一つ黒点のない『白』に囲まれた世界にいるのだろうか?
それとも……

かつて出来損ないながら親だった身として、
わたしは妙な心配をしてしまっている。
梢の向こうでわたしを俯瞰するもう1人の自分が
『身勝手な想像だ』とささやいた。


「……わたしの名刺を渡しておこう。
 『困ったこと』や『相談したいこと』があったら
 連絡してくれ。
 『スタンド』に限らずな」

「ほんとうは、
 大人が子どもと個人的に連絡先を交換するのは
 あんまり良くないことなんだが……」

「…………………
 まあ、『友達』ということならいいだろう。
 (いやホントはよくない)」

携帯番号と名前が書かれた名刺を渡し、
すこしためらったが千草の番号を受けとる。

「君が望むなら、
 その名刺は君の両親に見せてもいい。
 理由はどうとでもなるし、わたしもその方が安心できる」

と、妙にそわそわしだす空織。

「………………
 ところで、少しばかり友人の君に訊ねたいんだが」

「…………………………
 この辺にトイレってあるかな?」

613 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/17(日) 06:56:01
>>612(訂正)

>気になったのは彼女の精神性の方だ。
>彼女の心は妙に『達観』しすぎている……

× 彼女 → ◯ この子

614 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/02/17(日) 22:53:32
>>612

未熟者の千草には、空織さんが心配してくれていることは気付きませんでした。
もし気付いていたなら、きっとお礼を言ったでしょう。
それができなかったのは、とても残念なことだと思います。

「……そうですね」

「難しいと思います」

空織さんに向かって、ニコリと笑ってみせます。
でも、上手くできたかどうかは分かりません。
口の中で、『でも』と小さく付け加えました。

「――ありがとうございます」

       ペコリ

名刺をもらう機会なんてないので、なんだか緊張します。
でも、少しだけ大人になれたような気分も感じました。
だから、なんとなく誇らしげな表情になっていたのだと思います。

「『トイレ』――ですか」

      ザック ザック

「少し待っていてもらえますか?」

「――今、『用意』します」

至って真面目な顔で、空織さんに呟きます。
同時に、『墓堀人』がシャベルで地面に穴を掘り始めました。
ほんの少しして、その動きが唐突に止まります。

      クスクス

「『冗談』です」

「ビックリしましたか?」

        ズズゥゥゥ……

表情を子供っぽい笑い顔に変えて、空織さんに言いました。
『墓堀人』がシャベルを肩に担ぎ直すと、穴が消えて地面が元通りになりました。
『墓堀人』は千草に重なり、その姿が溶けるように消えていきます。

「あっちです」

「この辺りで練習しているので、どこに何があるか知ってるんです」

一角を指差して、空織さんを案内して歩き出します。
これも立派な人になるための――『素晴らしい死に方』をするための一歩です。
まだまだ道のりは長くて遠いですが、一つずつの行いを積み重ねていけば、
いつか叶えられると信じています。

615 空織 清次『エラッタ・スティグマ』 :2019/02/18(月) 00:58:03
>>614

「えっ、いやそれは待…………」


「…………………………………
 …………………………………」


「……………………生まれて初めての経験だ、
 『ハカホリニンジョーク』を食らったのは」

「もしわたしが自分の店を手に入れたら、
 君にはトイレ工事をさせてやるからな」


年相応のいたずらっぽい笑みを浮かべる千草に向け、
座り目で抗議の視線を送る。
たっぷり数秒ジトーっと睨んだあと、
こらえきれず吹き出すみたいに笑った。
目を糸みたいに細めて微笑む。


「おっと、今度はちゃんと案内してくれるのか?

 それは『落とし穴に』とかじゃないだろうな?
 なんてな、冗談だ。
 フフ。ありがとう……」

千草を追って足を踏み出しながら、
肩越しに地面を振り返る。

   チラ

「(穴が一瞬で消えている。
  これがこの子のスタンド……か)」

「(この無言の墓掘り人は、いったい
  この子のどんな心を表象しているのだろう?

  ………だがそれを知るには、今はまだ……)」


首を振り、前方に向き直ろうと顔を上げたとき、
わたしはわたしの肩に誰かの手が
乗せられていることに気づいてハッと息を呑む。

それはさっきまで
梢の向こうでわたしを俯瞰して見ていた
もう1人のわたしの手だった。

わたしの耳元に顔を寄せて彼はささやく。

  『おまえの娘が生きていれば
   この子ぐらいになっていたかもな』

 『この子に娘の姿を重ねているのか?』

     『なんてみじめな贖罪だ──』


わたしは彼を睨みつける。
我を忘れて彼と目を合わせる。
だがそこにいたのはもう1人のわたしではなかった。

空転する糸車を腹腑に埋めたわたしの『スタンド』。
娘を失ったわたしの前にあらわれた『亡霊』。
物言わぬ虚ろな瞳でわたしを見つめている。

「『エラッタ・スティグマ』………」

消えろと強く念じると、
糸車のカラカラという空っぽな残響だけを残して、
虚ろな亡霊は宙空に解けて消える。


わたしは何事もなかったかのように前を向き、
小さな案内人の背を追いかけた。

616 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/01(金) 00:29:32
夜の自然公園に人影が一つ。
動きやすそうな格好をした女性。
癖のある髪を一本に結び、どこか暗い印象のある人だった。
ペットボトルを片手に彼女は公園にいた。

「……」

わずかな明かりの下、女性は踊っていた。
ペットボトルをマイクに見立て、音は出さずに口を動かしながら踊っている。

「……!」

ステップを誤り、重心が崩れる。
踏ん張らずにそのまま彼女は地面に体を預けた。

617 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2019/03/01(金) 01:20:52
>>616

「…………」

    ピ ピ

       ガコン

自販機でジュースを買いながら、それを見ていた。
今は仕事帰りで、入れたコインと押したボタンは妹の分だ。
自分のジュースは――――

  チリン

         『ピピピピピピピピ』

今から『ルーレット』が当たるのでそれで買う。

(ダンスか何かやってるのかな。
 駅前で踊ってるヤンキーみたいな?
 こけたのかそういう振り付けなのか、
 よくわかんないけど……真剣そうだし)

    『アタリ! モウイッポン エランデネ!』

(邪魔はしないでおこうかな)

              ピ

                    ガコン

邪魔はしないが、普段静かな自販機がうるさい夜だ。
それに、白い髪と赤い目――――薬師丸の姿は目立つ。

618 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/01(金) 02:28:09
>>617

「ふぅ……ふぅ……」

呼吸を整えながら、ゆっくりと立ち上がる。
右足を上げて、何度か地面を踏みしめる。
地団駄というよりもそれは、足に力を入れるためにやっているような動きだった。
靴から覗くものは靴下と黒いサポーターである。

「……ふぅ……ふぅ……はぁ……はぁ……」

少しふらつきながら地面を踏みしめ、顔を動かす。
その目線は薬師丸に向けられた。

(……見られたかな)

(不味いかな。一応、新曲だしなぁ……)

俯き気味で陰気な顔のまま、薬師丸を見ている。

619 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2019/03/01(金) 03:38:04
>>618

「あ〜」

(ジロジロ見てるって思われたかな。
 まあ、実際ジロジロ見てたようなもんよね)

視線があった。

「ごめんごめん。つい見入っちゃった。
 ふだん、ダンスってあんまり見ないからさ」

      ガコッ  ガコン

ジュースを二本取り出して――
それを小脇に抱えて、少しだけ近づく。

「それにしても……こんな時間に練習?
 秘密トレーニングってやつなのかしら。
 私はスポーツとかしないほうだから、
 あんまり詳しくはないし……
 追求とか、そういうのするつもりもないけど」

「この水いる? 『偶然』当たっちゃったんだけどさ」

無視して立ち去ることも出来たけれど、
追いかけてきて絡まれたりしても良くない。
穏便に立ち去るためにはむしろ会話がいると思う。

だから、自分用の水だったが、小さく掲げてみせた。

620 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/01(金) 04:11:06
>>619

「あぅ……やっぱり見てたんですか……」

(あ、ちが、もっと……)

思わず一歩下がってしまう。
不意に下げた右足。
ビクリと背中が跳ねて、少しを食いしばる。
深呼吸。
顔を上げる。
逆ハの字だった眉が横になり、目が少し大きく開かれた。

「ダンスは苦手でね。こうせねばならない身の上なんだ」

しゃんとした雰囲気を出そうとしているらしいがまだ少し目が震えている。

「貰えるのなら、頂きたいが」

「ありがたい」

すでに手に持ったペットボトルは空。
握りしめたからかベコベコにへこんでいる。

621 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2019/03/01(金) 21:17:15
>>620

「あげるよ、減るもんじゃないしさ。
 あ、一応言っとくけど、なんの味もない水だよ」

「最近は透明な紅茶とか流行ってるから一応ね」

軽く放り投げようとしたが……

「…………はい、あげる」

目の動きに何かを感じてやめた。
もう少しだけ歩み寄って、ゆっくり手渡す。

「苦手なのにやらなきゃいけないのね。
 大変ねぇ〜え。お仕事か何かでやってるの?」

「踊る仕事ってあんまり思い付かないけどさ」

近づいて見える薬師丸の顔は、高宮より一回り幼い。
不相応な毛皮の黒コートや真っ白な髪も、どこか現実味を欠いていた。

622 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/01(金) 21:50:13
>>621

「お気遣いどうも」

受け取り、水を飲む。
乾いた体に潤いが流れ込んでいくのがわかる。

「……仕事だから、これは時間外労働」

「アイドルだよ。頭に地下とつくアンダーグラウンドなやつだ」

ゆっくりと息を吐いて、また言葉を出す。

「そういう君はどうかな?」

623 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2019/03/01(金) 22:38:29
>>622

「ああ……えーと、地下アイドルってやつ。
 星見横丁とかでビラ配ったりしてるよね。
 私の知り合いにそういうの好きなヒトいるわ」

それが高宮の事務所かは知らない。
もらったビラをしっかり読んだこともないし。

「ともかく、スターの卵ってわけね」

笑みを浮かべる。

「私は――『幸せ』を売ってるの。
 それが私の仕事よ。あ、勘違いされそうだけど、
 ハッピーじゃなくてラッキーの方が本業だから」

「怪しいクスリとかは警戒しなくていいよ」

それはそれで得体が知れないわけだが、
少なくとも妙な売人というわけではないらしい。

「何も法に触れるような事は、してないからね」

水から妙な味がしたとか、そういう事もなかった。

624 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/01(金) 22:49:10
>>623

「もしかしたらその人と会ってるかもね」

(分からないけど)

また水を飲もうと口をつける。
が、勢いを間違えたのか口の端から飲みきれなかった水がこぼれ落ちた。

(またか)

手の甲で水を拭った。

「スターの卵か。そうだね、早くオーバーグラウンドに打ち上げて衛星みたいになりたいものだ」

暗い笑みを返した。

「幸せか……」

眉がハの字に曲がる。
伏し目がちに視線が動く。
迷い。
先程までの雰囲気が収まり、憂い雰囲気が増していく。

「いくらで売ってくれますか……?」

625 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2019/03/02(土) 04:32:10
>>624

「どうだろ。まっ、とにかく詳しくないからさ。
 詳しくないなりに、あんたに幸がある事を祈るわ」

「私はそれの専門家だからさ」

薬師丸はアイドルというものはよく知らないが、
こんな夜にまで一人で練習に励んでいるあたり、
恐らくは『本気』で・・・理想はまだ先なのだろう。
言葉ではあまり深くは突っ込まずにおくことにした。

「――――あら、興味ある?」

        リィーーー ・・・ ン

《『害』も『戦意』ないよ。見えてるなら、ね》

      「『幸運』ってさ。形の無い物だし、
       『実演販売』ってことにしてるの」

それは『こころ』 に直接響くような鈴の音。
空気を揺らす、振動としての音ではない。

「で、初回はその実演込みで千円って感じね。
 ほら、期待はずれって事もあるだろうしさ。
 千円くらいなら『募金』した気持ちになるでしょ」

少女の背後に浮かび上がる、人型のヴィジョン。
白い毛皮を纏い、兎の耳を生やした『スタンド』。

――特に何か構えたりするでもなく、背後にいるだけだ。

626 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/02(土) 12:28:04
>>625

「専門家……」

馴染みがない。

「……分かりました」

ポケットに入れられた財布から千円札を一枚取り出す。
祈るように少し震える手が突き出される。

「見えてますけど……」

627 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2019/03/02(土) 22:01:44
>>626

         ピラッ

「はい、まいどあり。千円確かに受け取ったよ。」

スタンドの手がお札を受け取り、
軽く弾いて枚数を確認してから懐へ。

「見えてるんだ、お仲間なのね。
 それだったら話が早くて助かるわ」

         リン

その手が今度は、高宮の手に触れようとする。
触れれば小さな金色の『鈴』が生まれるだろう。

「お代の分はしっかり説明させてもらうね」

薬師丸はと言うと、それを見ながら微笑を浮かべた。

「ハッピーじゃなくてラッキーって言ったけど、
 要するに・・・私の『レディ・リン』は、
 運勢ってやつを前借り出来るのよね。
 今コイントスを絶対に当てられる代わり、
 あとで絶対に外しちゃうようになるわけ」

「そういうとプラマイゼロに聞こえるけど、
 外すって分かってるコイントスだからね。
 そこに大金を賭けたりはしないでしょ?
 借りた分返さなきゃいけないって分かってれば、
 備える事は出来る…………だから商売になるの」

長口上を終えると、スタンドが一歩引く。
鈴を付け終えたにせよ、そうでないにせよ、だ。

「それで、どう? 何か『運を天に任せたい』ものってある?
 今日じゃなくってまた明日、ってことでも私はいいよ。
 来週のくじ引きで、とか言われるとちょっと困っちゃうけど」

「もし決められないなら、商売だからね。私の方では実演しやすい店は当たり付けてるの。
 それで良ければ案内するけど……一応、あんたの運を使うわけだからね。好きに決めていーよ」

628 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/02(土) 22:36:26
>>627

手に着いた鈴をじっと見つめる。
これがラッキー。

「明後日の……」

「明後日のライブの……成功を……」

小さく、そう呟いた。

629 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2019/03/02(土) 23:16:41
>>628

「分かった、明後日ね。明後日の……何時?
 良いタイミングで幸運を入れるために、
 私もその場にいないといけないからさ。
 あと……反動の不幸に、対処するためにもね」

        『リ″ン』

薬師丸の耳に付いた『錆びた鈴』が、風に揺れる。

「あ、入場料とかあるならそこは自腹きるよ。
 初回だし、ライブっていうのも興味あるしね」

明らかに危険な響きだったが、
薬師丸自身に焦りなどは感じられない。

この現象には『慣れている』――という風に。

「それとも……幸運、今ここで使う?
 ライブに効くかは保証出来ないけど、
 ライブの事しか考えてないなら大丈夫かも。
 それに、『不幸』はこの場で処理できる」

「私はどっちでもいーけど……どうする?」

悪戯っぽい笑みを浮かべた。
薬師丸にとっては、本当にどちらでもいいのだろう。

630 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/03(日) 00:18:22
>>629

「不幸は慣れてますから……」

どうしようもないほどに彼女の目は暗かった。
おそらくこの場にある闇よりも深く、暗い。

「十五時……です。チェキ会もあるけど、ライブだけで……」

「これ……インビ……」

インビテーションチケット。
招待券とも言われるものだ。
無料で入れるだろう。

「ぼくはちゃんとライブが終われればそれでいいんです」

631 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2019/03/03(日) 00:52:31
>>630

「そ、私とおんなじね」

        ニコ…

赤い瞳を作るガラスレンズの奥――――
薬師丸の本当の目を知る者は、多くはない。

ただ、そのレンズに写る高宮の目が、
どうしようもなく暗いのは薬師丸の目にも確かだ。

「それじゃ、しっかりやらせてもらうよ。
 少なくとも、そのライブが終わるまではね」

    ズギュン

「15時から空けとくから。
 『レディ・リン』はちゃんと運命を変えるからね」

        スゥッ

          「あと、連絡先交換しとこう。
            もしものこともあるだろうし」

招待券を受け取り、代わりにスマートフォンを取り出す。
『仕事』に手ぬかりはしない。そうでないと生きていけないから。

632 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/03(日) 01:12:20
>>631

「分かりました」

スマートフォンをズボンのポケットから取り出す。
カバーをしているが、傷だらけだ。

「………仕事用とかじゃないので」

(ぼくにとって最も大きな幸運が訪れるのなら)

(それはあの人たちと同じ事務所に入って、同じステージに立つこと)

633 薬師丸 幸『レディ・リン』 :2019/03/03(日) 01:36:54
>>632

薬師丸のスマホカバーは白いが、
目立った汚れなどはないようだった。

「私のは、仕事用だけど……
 プライベートで掛けてくれてもいいよ。
 同じ『スタンド使い』同士でもあるし」

         スッ

「少なくとも今だけは『仲間』だからね」

友達とか、同志とか、そういうのじゃあない。
客と商売人であり……夢を追う彼女の『仲間』だ。
 
「それじゃ、私は今夜は帰るから……
 今つけた鈴は勝手に消えるから安心して。
 本番の明後日に、また付け直したげるからさ」

         「じゃ、またね」

明後日に向けて、今夜から早めに寝る事にしよう。
特別に止められないなら、そのままこの場を立ち去る。

運命を味方に付けたライブが成功したかどうかは――また、別の話だろう。

634 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/03(日) 02:28:43
>>633

「仲間、ですか……?」

それを彼女がどういう意味で言ったのか分からない。
自分がどれぐらいの重み言葉を返したのかは分からない。

「さようなら」

別れを告げて、またダンスを続ける。
まだ理想の未来には遠い。

635 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/12(火) 23:55:17
「ら、ら、ら」

夜の自然公園に人の影。
何かを歌いながら躍るように動く。
しかしそれはダンスではない。
頼りのない灯の下で、時に遅く、時に早く。
見える者には見える物がある。
彼女が持っているもの、それは鎖鎌だ。
左手に鎌を持ち、右手に鎖と分銅。
鎖を回すと手から離れた分銅が回る。
まるでカウボーイのようにそれを飛ばして、また手元に引いて戻す。

「ら、ら、ら」

636 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/13(水) 23:16:57
>>635

時を同じくして、公園内を一人の女が通りがかった。
ラフなスタジャンのポケットに両手を突っ込んで歩いている。
人影に気付いてキャップのツバを持ち上げ、闇夜に目を凝らした。

(あれは――ダンスの練習かしら)

最初に見た時は、そう思った。
だから、少し離れた場所で立ち止まって様子を眺めていた。
でも、どうやら違っていたようだ。

「ステージで使う小道具――」

「――じゃなさそうね」

その視線は、鎖鎌に注がれている。
自身のスタンド――『プラン9』には身を守れるような力はない。
このまま何事もなかったかのように立ち去るべきか、内心で迷っていた。

637 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/14(木) 01:54:38
>>636

鎖鎌の女はジャージを着ている。
所々擦れたような傷がある。

「ら、ら、あれ……ん、ら、ら……」

何かが気に食わなかったのか歌いながら小首を傾げる。
ぐらりと、途中で彼女の体がブレる。
靴紐を踏んでしまったらしい。
歌に気を取られた彼女は体勢を崩しーーー

「ひぅ……!」

コントロールをしくじった分銅が顔面に迫る。
何とかかわした頃には、体はバランスを失い完全に転んでしまった。

「あ……」

背後の街頭に鎖が絡まり、分銅が倒れた彼女の足に命中した。

(ついてない……)

自分の顔の傍の地面に突き刺さった鎌を見て一人溜息をつく。

638 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/14(木) 14:10:12
>>637

歌と踊り。
それは、私の中にある過去の記憶を思い起こさせた。
忘れる事の出来ない輝かしい栄光。

(『まだまだこれから』って感じなのかしらね、彼女)

その姿に、かつての自分自身が重なる。
大きなステージを控えて、厳しいレッスンに明け暮れていた日々を思い出す。
だから、迷いながらも立ち去らずに見続けていたのかもしれない。

(あららら……――)

その物騒なヴィジョンが見えたことで、ほんの少し警戒していた。
しかし、どうやら危険と呼べるものはなさそうだ。
むしろ、今の彼女は助けが必要なのかもしれない。

      スタ スタ スタ

「――立てる?」

近くまで歩み寄り、片手を伸ばす。
その身体を引っ張り上げて、元通りに立ち上がらせようという意図だ。
彼女が、この手を掴んでくれたらの話だけど。

639 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/14(木) 19:53:18
>>638

「……はぁ」

落ち込んだ気分のままため息をつくと鎖鎌がぱっと消えてしまった。
この世に存在するものでありながら、通常の物質とは違うもの。
スタンドの鎖鎌。

「え……?」

声の方に振り返って、息を呑む。
わたわたと一人で慌てだし、ズボンで手を拭いてから両手でしっかりと手を掴んだ。
が、立ち上がろうとはしなかった。

「み、美作くるみさん、ですよね……!?」

「なん、な、なんで、なんでこんな所に……!」

「あわ、あぅ、あ」

なにか言おうとしているらしいが上手く言葉が出ないらしい。

640 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/15(金) 17:37:59
>>639

「えっと――」

「ええ、確かに私は『美作くるみ』ね」

「ちょっと考え事をしながら歩いていたら、地面に倒れ込んだのが見えたものだから」

返ってきたのは、思いもよらない反応だった。
どうやら、彼女を立ち上がらせようという試みは成功しなかったみたい。
それなら、私の方が目線を下げる事にするわ。

「あの、もしかしてだけど――」

「前に、どこかでお会いした事があったかしら?」

「もし忘れてしまっていたなら、ごめんなさい」

こちらからも両手を出して、彼女の手を握り返す。
精一杯の誠意の印だ。
同時に、その場に屈み込んで視線の高さを均等にした。

(まさか、ねえ)

(『昔の私』を覚えてくれているのかもしれない――)

(そんな風に思っちゃうのは、きっと私の自意識過剰よね)

641 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/15(金) 23:29:05
>>640

「あ、ありますけど……お話したのは今日が初めてで……!」

精一杯に話す。

「綺麗な歌声にずっと、ずっと憧れててぇ……」

ぽろぽろと目から滴が零れた。

「うれしい……」

まっすぐだった背中が丸まって、そのまま俯いてしまった。

642 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/16(土) 13:57:49
>>641

「……あの」

一瞬、どう言葉をかければいいのか分からなかった。
彼女の真摯な様子に胸を打たれたからだ。
それは自分にとって驚きでもあり、喜びでもあった。

「――ありがとう……」

「私の事を覚えていてくれて」

「本当にありがとう」

もしかすると、もっと気の利いた台詞を言うべきだったかもしれない。
でも今の私には、これしか言えなかった。
他の言葉が思い浮かばなかった。

「あなたも『同じ分野』だと思っていいのよね?」

「違ってたら恥ずかしいけど」

穏やかに笑いかけながら、彼女の背中を軽くさする。
それから、街灯の傍にあるベンチに視線を向けた。
ずっと地面に座ったままという訳にもいかないだろう。

「とりあえず、立ちましょうか?」

「座るなら、そこのベンチの方が良いと思うから」

「その前に、まず立ち上がらなきゃね」

彼女が立ち上がろうとするなら、その手を引いて手伝う事にしよう。
自分も、かつては彼女と同じ志を抱いていた。
それが消えてしまった後も、こうして誰かの記憶に残れるというのは有り難い事だ。

643 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/16(土) 18:26:36
>>642

「はい……そうです……」

「私は地下アイドルですけど……」

美作の声にこくこくと頷いて立ち上がる。
泣いているうちに落ち着いてきたようだ。

「すいません……ありがとうございます」

644 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/16(土) 19:55:19
>>643

「良いのよ。気にしないで」

「そういえば、まだ名前を聞いていなかったわね」

「教えてもらっても平気かしら?アイドルさん」

彼女が立ち上がったのを見届けてから、握っていた手を離す。
話しながらベンチの方へ歩いていく。
そのまま、そこに腰を下ろした。

「あなたと話していると、何だかノスタルジーに浸りたくなっちゃうわ」

「私は、今はラジオパーソナリティーをやってるの」

「良かったら、そっちの方も覚えておいてくれると嬉しいな」

645 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/16(土) 23:35:17
>>644

「ぼくは高宮と言います……」

ベンチに座り、小さな声でそう言った。
膝の上に置いた手を見つめている。

「聞いてます、ラジオも毎週……」

「お電話はしたことないですけど」

646 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/17(日) 00:00:18
>>645

「高宮さん、ね――良く覚えておくわ」

「ありがとう。そう言ってもらえると、とっても嬉しい」

「気が向いたら掛けてきて。いつでも待ってるから」

      フフ

話を続けながら、膝の上に置かれた手を見やる。
それから、辺りを照らす街灯を見上げた。
柔らかい光が、その横顔を浮かび上がらせている。

「ちょっと見えたんだけど、さっきは練習の最中だったのかしら?」

「こういう公共の場で練習するのって、私も結構やっていたわ」

「程良い緊張感があって、それが適度に気を引き締めてくれるのよね」

647 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/17(日) 00:24:36
>>646

「……はい、その時が来たら」

何か言いにくそうに手をもぞもぞと動かしていた。
明かりの下で高宮は暗い顔をしている。

「練習と、実験を兼ねて……」

648 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/17(日) 00:57:30
>>647

「『実験』」

「それって――」

   フッ

その言葉に何かを感じ取った。
一つの考えが脳裏を過ぎる。
自分の肩の上を指差すと、そこに『機械仕掛けの小鳥』が現れた。

「『これ』の事かしら」

「私達の共通点は一つじゃないみたいね」

あまり見せるものじゃないが、似通った部分を持つ彼女なら、それも悪くない気がする。
何となく不思議な縁だと思った。
やがて、ある思い付きが頭に浮かぶ。

「そうだ――」

「もし良かったら、ここで少し『練習の成果』を見せてもらえない?」

「せっかくのライブの観客が、引退した私だけなのは申し訳ないんだけど」

「少しでも高宮さんの力になれたら嬉しいから」

「そう考えるのは、私の我侭かしら?」

649 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/17(日) 01:10:25
>>648

横目で美作に発現するそれを認識する。
ぎょっとした雰囲気で目が開かれた。
驚きと同時にその力の形に感心する。

「成果をですか……」

「大丈夫ですけど……いいんですか?」

酷く申し訳なさそうで憂い顔をしていた。

「ぼくので、本当に」

「美作さんからすれば素人同然だと思いますけど」

650 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/17(日) 01:29:41
>>649

「――もちろんよ」

軽く頷き、口元を綻ばせて座り直す。
機械の小鳥は微動だにしない。
肩の上で、小さなオブジェのように佇んでいる。

「今、あなたは『アイドル』で私は『観客』なんだから」

「是非、見せて欲しいわ」

その目は、真っ直ぐに高宮の瞳を見つめている。
憂いを含んだ顔とは対照的に、その表情は明るい。
ただ明るいのではなく、どこか真剣さを帯びたものでもあった。

「――ダメかしら?」

651 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/17(日) 02:36:45
>>650

「……やる以上は全力ですよ」

上目遣い気味に見るその目に迷いはない。
目の奥に宿るものは炎ではなく覚悟だ。
ハの字の眉が平行になり、彼女の持つ空気感が変化していく。
ベンチから立ち上がったころには、気弱そうな女性の姿はなかった。

「鎖鎌は危ないから使わないよ。あくまで今のぼくはアイドル、だからね」

伸びた背筋。
はっきりとした言葉。
髪をいったん解いて結び直す。

「『どこにも行けやしないさ 分かっているだろう?』」

「『逃げ場所も行き場所もとうに見えないだろう?』」

「『罵倒など所詮、心の波動 なのに揺れる心の湖面よ』」

「『生き抜くモメント 生むのは君だけなのに また弱気になる』」

気弱な線の細い声から一転、低く力強い声だった。
ステップの一つ一つが流れるように繋がっていき、公園の地面に模様のような足跡を残す。

「『全て投げ捨てて 壁を 越えて』」

652 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/17(日) 03:13:17
>>651

雰囲気の変化を受けて、ほんの僅かに両目を見開く。
眼前で繰り広げられる本気のパフォーマンス。
今の自分は観客として、それに対して全力で向かい合う。

(何かしら……)

(こうしていると胸の奥がチリチリして来るわ)

(あなたみたいに熱く燃えていた頃を思い出して、ね……)

歌を口ずさみ、舞い踊る姿。
その凛とした姿に、記憶の中の自分が重なる。
見ている内に、心の深い部分が強く刺激されるのが分かった。

(高宮さん――)

(あなたなら、きっと大丈夫よ)

(私は、そう思うわ)

彼女の発声や身のこなしからは、アイドルを名乗るだけの実力を感じる。
それに見合うだけのプライドも持っている。
だから、彼女は彼女自身が思っている以上に強い人なのだろうと思えた。

653 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/17(日) 03:59:01
>>652

「『誇れ胸を張ろう またここで会おう 諦めないのなら』」

「『夢が己に変わるから』」

歌と踊りが終わり、最後のポーズで止まる。
指先まで力のこもった姿勢。
しばらく、そのままで動かない。

(久しぶりだな、ミスも何もない、完璧なパフォーマンス)

ベンチに座る彼女に向き合って、頭を下げる。
これで終わりだ。

「あ、ありがとうございます」

少し気の弱い自分に戻りそうになる。
ハの字になりそうな眉をなんとか持ち直して、憧れと向き合った。

654 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/17(日) 04:26:51
>>653

     パチパチパチパチパチ

演技の終わりまで見届けてから、惜しみない拍手を送る。
アイドル――それは彼女にとっての今であり、自分にとっての過去だ。
方向は真逆だが、それでも根幹には通じ合う部分も存在する。

「アイドルって、見る人に元気を与える職業だと思うの」

「今のパフォーマンスを見て、私もパワーを分けて貰えたわ」

「高宮さん――だから、あなたはアイドルよ」

おもむろにベンチから立ち上がる。
数歩ほど歩み寄り、彼女の両肩に手を置いた。
その表情には、ここまでで一番の笑顔が浮かんでいた。

「私も負けてられないって気分にさせられるわ」

「同じエンターテイナーとして、っていう意味だけどね」

「これからも、お互いに切磋琢磨していきましょう」

        フフッ

今の自分はアイドルではなくパーソナリティー。
新しい生き方を、これからも貫く。
その後押しとなる力を分け与えて貰えたような気がした。

655 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/17(日) 14:27:56
>>654

「ぼくが……アイドル……」

自分の理想と現実の中にあって、どうにもならぬ気持ちというのがある。
高宮にとって気の重くなる毎日の事がこの一瞬で努力の日々に昇華される。

「はい、お互いに」

「今度はここじゃなくて、現場で会えるように」

客と演者ではなく、演者同士として。
そして、舞台を降りれば人間同士として。

「頑張ります」

656 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/17(日) 22:18:48
>>655

「自信に裏打ちされている貴女は輝いてる」

「貴女には、これからも輝いていて欲しいわ」

「――私の分までね」

私は輝きを失った過去の星。
かつての栄光を夢見る事も、時にはある。
だけど、少しでも誰かの支えになれるのなら――今の私も、そんなに悪いものじゃないわよね。

「そうね」

「いつかゲストに来て貰えたら嬉しいな」

「――なんてね」

クスッ

「ええ、私も頑張るわ」

明るい微笑を浮かべながら、彼女の前に片手を差し出す。
この出会いの締め括りとして、最後に握手を交わしたかった。
これは、いつの日か共通の場所で再会したいという気持ちの表れでもあった。

「――いつか何処かで、またお会いしましょう」

657 高宮『リプレイサブル・パーツ』 :2019/03/18(月) 01:13:07
>>656

「……私の分までなんて、言わないで下さい……」

「今でも美作さんは輝いてますから……」

場所こそ変われど、輝く星に変わりわない。
嘘偽りのない言葉で返す。

「ゲストになった時はよろしくお願いします。ぼくはもっといいアイドルになりますから」

「またどこかで」

優しく、しかし確かに手を握った。

658 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2019/03/18(月) 19:33:21
>>657

真摯な言葉を受け取って、静かに息を呑んだ。
私は輝きを失ったんじゃなく、以前とは異なる種類の輝きを纏っている。
その意味を噛み締めて、緩やかに口元を綻ばせた。

「アハハ、そうね」

「――ありがとう」

言われてみれば、その通りだった。
忘れていた訳じゃない。
ただ、改めて再認識させて貰えたのは確かだ。

「私も、その時までに腕を上げておくわ」

「『See You Again』」

似通った点を持つ二人の間で、穏やかに握手が交わされる。
それぞれの場所で輝く二つの星の交わり。
夜空に瞬く星々が、その光景を優しく見守っていた。

659 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/03/22(金) 21:36:21

   ザック ザック
             ザック ザック

そろそろ辺りが暗くなり始めた時間のことでした。
林の奥から規則的な音が聞こえます。
地面を掘っている音のようです。

   ザック ザック
             ザック ザック

近付いたら、地面に穴が開いているのが見えると思います。
かなり大きな穴です。
人一人は十分に入れるくらいでしょうか。

   ザック ザック
             ザック ザック

穴を掘っているのは、『シャベル』を持った『墓堀人』です。
目深に被ったフードの奥で二つの目が光っています。
近くには人の姿はありません。

    ピタリ

         《――――…………》

ふと、『墓堀人』が動きを止めました。
何かの気配を感じたような気がしたからです。
でも、もしかすると気のせいかもしれません。

660 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/03/25(月) 20:45:44

        ザクッ
              ――――フッ

穴から出てきた『墓堀人』が、穴の手前の地面にシャベルを突き立てました。
次の瞬間には、穴は消えてなくなっていました。
それを確かめた『墓堀人』は、シャベルを肩に担いで歩き去っていきました。

661 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2019/04/07(日) 00:25:48

「――――『パーティーかいじょう』はココだな…………」

          ザッ

ピクニックの用意をして、自然公園にやって来た。
『春の一大イベント』である『花見』に興じるためだ!!
しかし――――。

「ヒトがおおい!!おおすぎるぞ!!」

桜は『満開』で、天気は『快晴』だ。
おまけに今日は『週末』と来ている。
桜の花が咲き誇るこの場所に、人が集まらないワケがなかった。

「サクラくらいであつまってくるなんて、みんなケッコーヒマなんだな〜〜〜」

      キョロ
           キョロ

自分のことを棚に上げて、周囲を見渡す。
空いている場所を探しているのだが、大抵の場所は埋まっていた。
特に、『桜の真下』は人が多い。

「マズいな……。『ベストスポット』は、スデにヤツらのテに……!!
 ムッ!?アレは……!!むこうのほうにスペースがあいているぞ!!
 いそがねば!!ヤツらにおさえられるマエに、『あのポイント』をカクホする!!」

        ダダダダダッ

巧みな動きで人々の合間を縫って、全力ダッシュで駆け抜けていく。
速やかに目的地に到着し、背中に背負っていたリュックを下ろす。
『ウサギ』の形のアニマルリュックだ。

         バサァッ

「――――『カクホ』!!」

リュックからレジャーシートを出して広げ、素早く地面に敷く。
その上に腰を下ろして、ランチとして準備してきたサンドイッチを取り出した。
なお他の場所は大体埋まっているが、この辺りはまだ多少の空きがあるようだ。

662 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2019/04/14(日) 16:33:45
>>661

「ソレにしても――――」

リュックを枕代わりに、レジャーシートに寝転がる。
頭の上には、溢れそうな程に咲き乱れる桜の花。
サングラス越に、その光景に見入る。
その時、やや強めの風が吹き抜けていった。
枝が揺れて花びらが散り、薄桃色の花吹雪となって舞い落ちる。

「――――キレイだな」

こんなキレイなモノを見られなかったなんて、ジンセー損してたな。
だからこそ、これから今までの分を取り戻さなきゃ。
ジンセーは短いんだ。
その間に、たくさんのモノを見ないといけない。
セカイには、もっとスゴいモノやキレイなモノやフシギなモノがいっぱいあるハズ。
それをゼンブ見てみたい。
『セカイのゼンブ』を見るのが、わたしのユメだから。

「おん??」

気付けば、ケッコー時間が経っていたようだ。
ぼちぼち日が傾きだして、ヒトも徐々に少なくなっている。
起き上がり、片付けを済ませてから、近くに立つ桜の樹を見上げる。

「――――んじゃッ!!」

桜の樹に向かい合い、片手を上げて別れの挨拶を送る。
そして、軽快な足取りで歩き出す。
こうして『アリス』は、次の冒険に向かうのだ。


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