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【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』

1 『星見町案内板』 :2016/01/24(日) 23:57:56
『H城』の周囲に広がる『城址公園』の敷地を共有する『学び舎』の群れ。
『小中高大一貫』の『清月学園』には4000人を超える生徒が所属し、
『城郭』と共に青春を過ごす彼らにとって、『城址公園』は広大な『校庭』の一つ。

『出世城』とも名高い『H城』は『H湖』と共に『町』の象徴である。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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464 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/02/21(木) 01:35:55
>>463

「大丈夫です」

「――――まだ生きてますから」

冗談のような口ぶりですが、表情は真顔です。
こちらは制服ではなくジャージ姿でした。
ポケットから土の付いた軍手がはみ出ています。

「ありがとうございます」

    ペコリ

頭を下げて絆創膏を受け取りました。
血は出ていません。
大した傷ではないでしょう。
でも、つい考えてしまうのです。
もし放っておいて化膿して病気になって――――『死んでしまったら』と思うと。

「一つだけいただきます」

箱から一つ取り出して、それを小石の当たった額に貼りました。
箱の方は、二人の間に置いておきます。
それから制服に目を留めました。

「高等部――――二年生の方ですか」

「剣道部の鉄先輩を知っていますか?」

神社の前で会った鉄先輩を思い出しました。
同じ学年なら、もしかすると名前を聞いたことがあるかもしれません。
とても生徒の多い学校なので、定かではないですけど。

465 日沼 流月『サグ・パッション』【高2】 :2019/02/21(木) 02:02:42
>>464

「いやいや、死なれたりしたらさ、
 『逆』に流月が大丈夫じゃなくなるわ。
 流月の石のせいだからお礼はいーよ」

           ゴソゴソ

「礼儀正しいのね」

絆創膏の蓋を指で押さえつつ、
かばんの小さなポケットに入れなおした。

「剣道部〜? ま〜流月は2年だけどね。
 鉄、鉄……のどまで出て来てるんだけど。
 クロガネ……あ、思い出した。ほんとに。
 えーーーーっと、ユウダチ……だっけ」

「知ってるっちゃ〜知ってる、かなァ……」

(女子と喋る時めっちゃキョドるやつだ、った気がする)
 
印象的な姿が頭の中にあったので、
幸か不幸かはともかく、思い出せた。

「なに、落とし物拾ったとか? 土触った後っぽいじゃん?
 それか『果たし状』とかならしっかり届けてやるけど。ぷぷっ」

そう言いながら、土に汚れた軍手に視線が向いていた。
このフシギ系な少女?に特別興味があるとかじゃないが、
3つは離れてそうな後輩があの同級生に何の用かは気になる。

466 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/02/21(木) 02:37:37
>>465

「『花壇の手入れ』です――――担当なので」

そう言って、校庭の一角を指差します。
そこには花壇がありました。
目立たない場所にあるせいか、少し地味な雰囲気でしょうか。

「用事らしい用事はないです」

「少し前、道に迷っていた時に助けていただきました」

「同じ学年の先輩なら、ご存知かと思ったので」

さっき流月先輩は、自分のことを『不良』だと言っていました。
『不良』という言葉には、怖い人というイメージがあります。
ですが、流月先輩は話しやすい感じがします。

「あっ――――」

「まだ挨拶をしてませんでした。中等部一年の三枝千草です」

「『三つの枝に千の草』と書きます」

「あの、流月先輩と呼んでもいいですか?」

「それとも苗字でお呼びした方がいいでしょうか?」

467 日沼 流月『サグ・パッション』【高2】 :2019/02/21(木) 03:01:02
>>466

「ああ、流月も昔やってたなァ〜〜〜ッ。
 なんだっけ、園芸委員? 緑化委員?
 ボランティア活動みたいなヤツでしょ?
 今なら絶ッ対『反抗』してたと思うわ〜ッ」

「水かけるくらいはしてもいいけどさ」

花壇に視線を向けて、すぐに戻した。

「あそ、んじゃいいや! ご存知ではあるけど、
 まじで知ってるだけだし……駄弁る仲でもないし。
 もし話すことあったら感謝してたって伝えとこっか?」

向こうから話しかけに来ることはないだろうし、
こちらからも探してまで声を掛ける気はしない。

「流月の事は『日沼さん』って呼んでいいよ。
 『流月センパイ』でもいいけど。好きに呼べばいい。
 ちなみに漢字は、『お日様の沼』に『流れる月』ね」

逆巻いた数カ所の髪が、風に揺れる。

「んで、もう言ったけどさ、高等部の二年で部活とかしてない。
 それでさ――――ただの帰宅部じゃなくって、『不良』なわけよ」

表情が明るい悪意に彩られるが、
それがそのまま害意に代わる様子はない。

「まっいわゆる『アウトロー』ってやつよ。どう、憧れちゃう?」
 
           「ぷぷ、ちゃわなさそうなカオしてるけどさぁ」

468 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/02/21(木) 07:12:01
>>467

「はい、美化活動です。『生徒会活動』の一つですけど」

「中等部の生徒会で書記をしているので……」

面倒な仕事を押し付けられただけ、と言う人もいるかもしれません。
でも、与えられた仕事は精一杯やり遂げないといけません。
千草は『立派な人』になりたいのです。
この仕事も、その目標に近付くための小さな一歩です。
少しずつ積み重ねることが、夢を叶えるために必要なことだと思っています。

「ありがとうございます。鉄先輩に会うことがあったら、その時はお願いします」

「――――『日沼先輩』」

           ペコリ

「はい――――」

       ニコ

「千草は、たくさんの人に尊敬されるような『立派な人』になりたいと思っています」

「『アウトロー』になったら、それが難しくなってしまいそうなので……」

「――ごめんなさい」

  ペコリ

不良になりたいという気持ちはないです。
でも、日沼先輩のことは嫌いになれません。
何となく、『親しみ』のようなものが感じられるからだと思います。

「日沼先輩も、昔は花壇の世話をされていたんですね」

「どうして先輩は『不良』になったんですか?」

昔の日沼先輩は、千草と似ている部分があったのかもしれません。
でも、今の先輩は『不良』だそうです。
共通点を感じるせいか、先輩が今の先輩になった理由が少し気になりました。

469 日沼 流月『サグ・パッション』 :2019/02/21(木) 15:41:00
>>468

「へぇ〜〜ッ、生徒会? 流月と『反対』ね。
 いや、不良の『反対』なら風紀委員か……
 ともかく、マジメ君だ! えらいと思うよ」

         イヒヒ

「流月は『反抗』するのが好きだからさァ〜ッ!
 こうして不良としてやっていってるわけだけど、
 べつにみんな不良になるべきとか思わないしさ。
 それだと、不良なのが普通になっちゃうじゃん?」

      「だから謝んなくていいよォ」

謝られると悪い事した気分になる。
悪い事したくて不良になったんじゃあない。
なにもかもお決まりだらけの世界への『反骨』だ。
お決まりに従ってりゃうまくいくなんて、幻への。

「それで、なんだっけ……えー、あ、花壇ね!。
 なんかそういうさ、水やり当番とかない?
 流月のそんときの担任の自己ルールだったかな。
 もうあんま覚えてないけどさ〜っ、やってたよ」

流月は花壇に気だるげに視線を向けた。
三枝のおかげか、花は生命を謳歌しているようだった。

「流月もさ、やっぱり生まれた時から不良だったわけじゃないしね。
 生まれた時から不良だったら、今頃は……医者でも目指してるかな」

    「こう見えて流月、地頭いいからさ! ぷぷっ」

目を細めて、吹き出すように笑う。
不良ではあるが無軌道ではない。軌道があってこそ逆の道を行けるのだ。

470 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/02/21(木) 22:57:13
>>469

「えらい――ですか……」

「……えへ」

褒められたので、嬉しそうに口元を緩ませました。
だけど、まだまだ自分は未熟者です。
これに慢心せず、もっとえらくなれるように頑張りたいです。

「『反抗』するのが好き……難しいです」

「でも、みんなが不良だったら不良が普通になるというのは何となく分かります」

『反骨精神』というのでしょうか。
そういう感情は、千草の中には見当たりません。
もう少し大人に近付いたら、その時に分かるのかもしれないです。

「――――凄いです、日沼先輩」

先輩とは反対に、目を大きく見開いて感心した声を上げました。
お医者さんという仕事は、相当に立派な人でないとなれないと思います。
それを目指せた日沼先輩は、本当に賢い人なんでしょう。

「千草も、いつか先輩みたいになれるように頑張ります」

「あの……『今の先輩』じゃなくて『今の先輩になる前の先輩』ですけど」

「でも――『今の先輩』も千草は好きです」

471 日沼 流月『サグ・パッション』【高2】 :2019/02/22(金) 00:05:43
>>470

「好きとか、はずいから! 素直すぎでしょ!
 べつに宣言しなくても好きに目指したらいいよ。
 流月の人生ってやつに、著作権とかはないからさ」

「いつか自伝書くとしたら別だけどね! ぷぷ。
 千草も自伝書くなら流月のことリスペクトしといてね!
 ヘレン・ケラーの自伝の『サリバン先生』くらいにさァ」

などといって、ベンチから立ち上がった。
見れば時間は区切りのいいものでもなくて、
立ち上がる前に時計を見た意味はなさそうだった。

「千草はえらいし、すごくマジメっぽいから、
 きっと流月より立派な人になれると思うわけよ。
 わかんないけどさァ、そんな気がするから」

「それじゃ、そろそろ行くね。
 剣道部の鉄君の事はちゃんと覚えてるから、
 もしあったら伝えとくよ……んじゃ、バイバイ!」

そうして、そのまま何処かへ歩いて行った。
学園にいれば、また会う時もあるかもしれない……

472 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/02/22(金) 00:34:25
>>471

「ヘレン・ケラーの自伝ですか?まだ読んだことがないです」

「明日、図書室へ行って探してみますね」

その話について、千草は詳しく知りませんでした。
千草の知らないことを知っている日沼先輩はえらいと思います。
自分にはない部分を、積極的に見習っていきたいです。

「はい、ありがとうございました。日沼先輩」

「よかったら、先輩ともまたお会いできれば嬉しいです」

「その時には、他のお話も聞かせてください」

        ペコリ

姿勢を正して、歩いていく先輩を見送ります。
少ししてから、千草も中等部の校舎へ向かって歩き出しました。
家に帰る前に着替えないといけません。

473 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/02/24(日) 04:40:26

今の時間帯は放課後です。
校庭の片隅にしゃがんでいる生徒がいました。
学校指定のジャージを着て、手には軍手をしています。

     ザック ザック

片手に持ったスコップで地面を軽く掘っていきます。
除草作業の最中なのです。
この草はどうやら根っこが深そうです。

474 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/03/01(金) 01:39:44
>>473

     ザック ザック
               ポイッ

根っこを掘り出した草を軽く放り投げます。
その先には手押し車が置いてありました。
そこには山程の草が積もっています。

「――こんなところでしょうか」



【撤退します】

475 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/03/25(月) 03:11:29

「・・・・・・」

      ドシャ

           アアーーーッ


              「・・・いたた」

階段から転げ落ちたんだよね。
それも、けっこうな勢いで。しかもあんまり人がいない校舎で。

「先生〜〜〜」

        シュル

              『今泉サン』
              『足元ニハ 気ヲ付ケテト アレホド』

           シュル

「いやあ、床が濡れてたみたいで」「あいたっ」
「歩きスマホとかはしてないですよっ」
「ほら、スマホ、ポケットの中。今のでぶつけちゃったんで」
「これの修理もおねがいします、一応」

                シュル

                    コール・イット・ラヴ
              『〝世界はそれを愛と呼ぶ〟』
              『スグニ 補修ヲ 開始シマス』

   シュル  シュル

まあ、フツーに、直せばいいだけなんだけど。痛いのは痛いし。それに……
廊下にへんなポーズで倒れて、テープでぐるぐる巻きにされてるのは、フツーじゃないし。
だから誰もここを通らないといいな、って思いながら、先生の補修が終わるのを待っている。

476 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/03/25(月) 20:53:38
>>475

    ヒョコッ

階段の手前の廊下の陰から、ジャージ姿の小柄な生徒が顔を覗かせました。
クルリとカールした睫毛と巻き毛が特徴的です。
何か音が聞こえたような気がして、様子を見に来たのでした。

        「あっ」

             「大丈夫で――――」

言いかけて、途中で言葉が止まってしまいました。
マスキングテープを体に巻いたスタンドが見えたからです。
もしかすると、このスタンドが原因で転んだのでは?
一瞬そんなことを考えましたが、すぐに間違いだと思い直しました。
どうやら治しているらしいと気付いたからです。

「えっと」

「大丈夫――みたいですね」

ちょっと考えてから、そう続けました。
少しずつ近づいていきます。
でも、その歩みは遅いです。
『怪我』という状況を見ると、無意識に『死ぬこと』を連想してしまうからです。
千草は、そういうものが怖いのです。

477 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/03/26(火) 00:06:14
>>476

首だけで振り向いて、そっちの方を見た。
中等部の子、かな。ジャージだからはっきりはわかんないけど。

「大丈夫に見える? まあ、フツーに大丈夫なんだけど」
「見えるってことは……先生が見えるんだ?」

             『今泉サン、動カナイデ』

じゃあ、敬語じゃなくっていいよね。

「いててっ」

             『動イタラ痛イデスヨ』

「あはは、階段から落ちちゃってえ」
「もしそこ、昇るなら気を付けた方がいーよっ」
「床、濡れてたみたいだから」

「……どしたの? なんか固まってる?」

何だか歩くの、遅いよね。
まあ私も、知らない先輩がいきなり倒れてたらそうなるのがフツーかも。

478 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/03/26(火) 00:36:37
>>477

「階段――から」

歩み寄ろうとしていた途中で、足を止めました。
廊下の壁に手をついて、軽く俯きます。
少し顔色が悪いように見えるかもしれません。

「すごく――」

「すごく痛そうです」

打ち所が悪ければ死んでしまうかもしれないです。
それを想像して、ちょっとだけ『クラッと』来てしまいました。
こういう事故の現場に出くわすと、よくこうなります。

「ふぅ……」

「――はい、見えます」

「その……先輩の『先生』が」

深呼吸して少し落ち着いたので、改めて先輩のスタンドを見てみます。
自分で喋っているところを見ると、自分の意思があるのでしょうか。
こんなのは、今まで見たことがありません。

479 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/03/26(火) 00:59:16
>>478

「すごく、痛いよ。フツーにねっ。あはは」
「治るけど、痛いんだよねえ」「フツーに。みんなと一緒」

         ニコ 

「『先生』っ、見えるんですってっ」

    シュルルルルル

         『エエ、ソノヨウデスネ』
         『ハジメマシテ。今泉サンノ 先生デ』

              シュルル

         『〝コール・イット・ラヴ〟』
         『ト、モウシマス』
         『補修中デスノデ、言葉ダケデ御容赦ヲ』

┌───────────────────────────┐
│ 『先生』と呼ばれるスタンドは・・・                    │
│ まるで『ミイラ』のように『マスキングテープ』に覆われていた。   │
│ 色とりどりの模様に全身を覆い隠されていた。.             │
│ シルエットは女性的で、物腰も併せ『女教師』を思わせる。    │
│ その辺りが・・・『先生』と呼ばれる理由なのは、想像しやすい。  │
└───────────────────────────┘

「まあ、見えるからどうってわけでもないんだけど」
「説明とか、しなくて済むのはラッキーだったかも」

         『今泉サン、少シ姿勢ヲ横ニ』

「いたた、こうですかっ」

         『エエ、アリガトウゴザイマス』
          
                 シュルシュル

先生にテープを巻いて貰いながら、中等部の子を見て、私は笑う。

          ニコ…

「『先生』は、傷を治してくれるスタンドなんだ!」
「だから怖くないよ。絵面は、フツーに怖いかもだけどっ」

         『コワクナイデスヨ。補修ニ 必要ナ事デス』

なんだかそわそわしてるの、スタンドを見るの、慣れてないのかな。
慣れてなくってもフツーだけど。私は、なんだか慣れて来ちゃったよね。

480 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2019/03/26(火) 01:28:43
>>479

「――はい」

        トスッ

先輩が笑いかけてくれたので、いくらか気が楽になりました。
誰かが来ても邪魔にならないように、壁際に背中を預けて腰を下ろします。
そこで『補修』の様子を見守ることにしました。
先輩の怪我が無事に治るかどうかを、ちゃんと見届けておきたかったのです。
このまま立ち去ってしまうと、気になって仕方がなくなってしまうからです。

「あの……」

「ご挨拶が遅れました」

「中等部一年生の三枝千草といいます」

「『三つの枝』に『千の草』と書きます」

「今泉先輩、『先生』――よろしくお願いします」

           ペコリ

膝を抱えて座った状態のまま、お辞儀をします。
少し行儀が悪いかもしれません。
でも、先輩が倒れているのに自分が立っているのは何だか申し訳なかったのです。

「千草は『妖甘』さんに絵を描いてもらいました」

「今泉先輩は『道具屋』さんですか?」

「それとも『音泉』さんですか?」

481 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/03/26(火) 01:58:54
>>480

                       イマイズミミライ
「はじめましてっ。私、高等部一年の『今泉 未来』」
「字は、多分三枝くんの考えてるまんま! フツーな字だよ」

                 『ヨロシク オネガイシマス』

「よろしくねっ」
「今泉先輩って。あは、良い響き〜」
「私部活とかやってないから、あんまりそう呼ばれないんだよね」

後輩の知り合いも、中等部3年とか2年ならいるんだけどね。
1年になると、あんまりいない。三枝くんくらい話すのは初めてかも? どうだっけ。

        シュルルル

          『補修 完了デス』
          『完治マデ シバラクオマチヲ』

「ありがとうございます、先生。5分、かかりますっ?」

          『一カ所 ダケデスガ』
          『他ニ 重傷ハ感知デキマセン』

「多分、左ひざですよね。そこは動かさないようにしなきゃ」

先生に答えて、少しだけ姿勢を動かして三枝くんを見る。

「いたた……三枝くん、スタンドくれる人詳しいんだね」
「私は『妖甘』さんだけど」
「オンセン?って人は名前だけ知ってる」
「けど、『道具屋さん』は初めて聞いたなあ」

「『スタンドくれる人』……そういえば、なんでくれるんだろうね?」
          
なんとなく、そんなことが頭に浮かんだ。フツーに、趣味とかなのかな。

482 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/03/26(火) 02:25:18
>>481

「今泉先輩も『妖甘』さんなんですね」

「同じ『出身』の人には初めて会いました」

「――何だか嬉しいです」

    ニコリ

「最初に出会った人は『道具屋』さんの出身でした」

「その次が『音泉』さんの出身で――」

「『なんで』――ですか……」

改めて考えてみると、不思議な気がします。
きっと何か理由があるんだと思いますが、それはなんでしょうか。
人差し指を唇に当てて、少し考えてみました。

「『見てみたいから』……でしょうか?」

「スタンドは、その人の内面の象徴だと聞きました」

「『それを見てみたいから』というのはどうでしょうか?」

もしかすると間違っているかもしれません。
でも、千草にはこれくらいしか考え付きませんでした。
本当のところは、本人に聴いてみるしかないのかもしれません。

「そういえば、今泉先輩も絵を描いてもらったんですよね」

「千草の絵は『根で棺桶を包む花畑』でした」

「先輩は、どんな絵だったか教えてくれませんか?」

483 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/03/26(火) 02:59:36
>>482

「『同じ中学出身だから嬉しい』みたいな感じだよねっ」
「まあ、うちは中高一貫だからそういうのあんまりないけど」

高校から入ってくる子もフツーにいるけどね。

「私の内面が、先生?」

           『先生ハ、先生』
           『今泉サンハ、今泉サンデスヨ』

「ですよね〜っ。私、先生みたいにマジメじゃないし」
「不真面目ってつもりもないですけど。フツーって感じで」
「まあ、よくわかんないですけどね。自分の中身が、なにかなんて」

「わかんないから、見たいって言うのはあるのかも?」

スタンドをくれる人には他人のこころがわかるのかな。
私のこころは、一体どういう仕組みになってるのかな。

「絵? うん、貰った貰った」

「三枝くん、『棺桶』だなんてイメージとちょっと違うかも」
「でも、『花畑』はなんかそれっぽいかなっ」

           ニコ

「えーっと、私は」
「『手をつなぎ輪になった学生』……だったかな?」
「どうかな、それって私っぽい?」

それは私の理想なのかもしれない。
フツーの事なのかもしれないけど。

「あは、初対面でイメージ聞いても、わかんないよねっ」

             『今泉サン、モウスグ 補修完了シマス』

484 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/03/26(火) 03:25:03
>>483

「今泉先輩とは会ったばかりなので、まだ先輩のことはよく知りません」

「でも、その絵は今泉先輩に似合ってると思います」

「何となく――ですけど」

「そこから『先生』が生まれたのかもしれませんね」

「その……そんな気がします」

スタンドは『理想』や『願望』からも生まれるものなのでしょうか。
それは、自然と納得のいく解釈でした。
もしかすると、千草にとっての『墓堀人』も、そうなのかもしれないからです。
決して苦しむことのない穏やかで安らかな最期。
それこそが、千草にとっての『人生の目標』だからです。

「『先生』、先輩の怪我が治りそうなんですね」

「――よかったです」

          ニコリ

まるで自分のことのように安心して、落ち着いた笑みを浮かべました。
怪我が治るというのは、言い換えれば『死が遠ざかる』ということです。
だから、それを見ると安心できるのです。

485 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/03/26(火) 04:06:25
>>484

「似合ってるかな。あは、ありがとうね」
「友だちがたくさんいると良いと思うし」
「手を繋いで、輪になる。それはきっといいことだろうからっ」

「先生がどうして生まれたのかは、わかんないけど」

         『私モ、ワカリマセン』『デスガ――――』

         『コウシテ今泉サンニ 指導ヲスル』
         『ソコニハ、カケガエノナイ価値ガアリマス』
         『私ハ、ソレデ構イマセン――――』

「先生、やさしいですねえ。流石先生だなあ」

         『先生デスカラ』
         『デハ、補修ノ時間ヲ終ワリマス』
         『今泉サン、足元ニハ重々キヲツケテ!』
         『三枝サン、マタオアイシマショウ。オ元気デ』

               シュルルルルッ

マスキングテープが全部外れて、私はちゃんと立った。

「よし、もう痛くないっ」
「私そろそろ行くね。三枝くんと話せて楽しかったよ」
「それと……ありがとうね、治るまで見ててくれてっ」

         ニコ

「それじゃ、またね〜っ」

そういうわけで、私は下の階に降りていくんだ。

ケガが治ったのを見て笑ってくれた三枝くんは、多分凄くフツーにいい子だ。 
ケガしたのは痛かったけど、また新しく仲良くなれそうな人に会えてよかったのかも。

486 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』【中一】 :2019/03/26(火) 21:22:29
>>485

「こちらこそ、ありがとうございました」

「今泉先輩、どうぞお大事に」

「――というのは、もう必要ないんですよね……」

「またお会いすることがあれば、その時はよろしくお願いします」

「それでは失礼します」

           ペコリ

立ち上がって頭を下げてから、くるりと背を向けて歩いていきます。
職員室に行って、雑巾をもらってきましょう。
床が濡れたままだと、また誰かが足を滑らせるかもしれません。

「――――これも立派な人になるための一歩です」

今泉先輩は、とても話しやすくて親しみの持てる先輩でした。
また一人、尊敬できる人と知り合えて嬉しいです。
これは、きっと千草が『人生の目標』を叶えるための一歩になると思います。

「そうですよね――――『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』」

487 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/12(金) 02:42:13

「…………」

     サラサラサラ

部屋を、考えてるんだよね。
図書室でインテリアの本とか借りて。
ノートに書いてみたりとかして。

すぐ引っ越すなんて話じゃないんだけどね。
こういうの、考えるのがフツーに楽しいから。

           サラサラ …コンッ

「っと」

そうこうしてたら消しゴムに手が当たって、ちょっと遠くに落としちゃった。

488 ??『????・???』 :2019/04/12(金) 22:55:18
>>487

 貴方が落とした消しゴムは、一人の女子生徒の靴のそばに落ちた。

「……あ」

小柄な女性だ。少し厚めの眼鏡と、黒い髪で目立たない容姿をしている。

「……どうぞ」

屈みこんで拾い上げ、開いてた本を閉じて貴方に近づき消しゴムを手元へ置く。

「……インテリア 好きなんですか?」

目立たない女性は、控えめに尋ねた。

489 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/13(土) 00:01:42
>>488

「あ、どうもどうも」「ありがとうございます!」

      スッ

消しゴムを受け取って頭を下げる。
わざわざ持ってきてくれるなんて親切だ。

「あっ、見ちゃいましたっ?」
「あ、じゃなくて本か」「そうですねえ」

ノート見られたかと思った。
見られてるかもしれないけど。
いや、見られて困りもしないけどね。

「えーと、インテリアが好きっていうか」
「まあ、フツーに興味があるっていうかっ」

手元の本は『家具選びのいろは』とか、
そういうのを本棚から持ってきて、揃えてる。

「そういう……えーと、何さんでしたっけ」
「まあいっか」「そういう貴女は、好きなんですかっ?」

「もしかして、詳しかったりします? インテリアの選び方とか!」

490 ??『????・???』 :2019/04/13(土) 00:19:45
>>489

>詳しかったりします? インテリアの選び方とか!

「インテリアの選び方 ですか」

少女は、厚めの眼鏡を軽く弄り。少し考える仕草を終えて呟く。

「例えば風水や占いが好きなら、それに従ったものを選びますよね」

「けど 大半は自分の好むもの。気に入ったものを選ぶのが一番
好きな色 好きな食べ物 好きな映画 それ等に因んで連想する
ものを繕っていけば後悔のないもの……だけ ど」

「…………私は、逆に『自分が一番好きでないもの』
それを一つだけ決めますね」

「どうしてだと思います?」

491 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/13(土) 01:37:27
>>490

「好きなもの、ですか〜」

「あは、占いはフツーに好きなんですけど」
「風水っていうのは、よくわかんないんですよね」
「この機会に勉強してみようかなっ」

って、そういう話じゃないんだよね。
この人にはなにかフツーとは違う理論があるみたい。

「そうですね、あとは」「マスキングテープとか」
「うーん、でもそれだと家っぽくはないですよねえ」
「『ドールハウス』とか好きになってみようかな」
「家だけに」

興味はちょっと、あると思うんだよね。
アーケード街?だっけ、あそこにお店あるよね。

「え、好きじゃないもの?」

「うーん、なんででしょっ? なんでしたっけ」
「あの、ことわざの」「あっ、『臥薪嘗胆』?」

「あえて嫌いなものを部屋に置いて、モチベ上げていくみたいな……ですかっ?」

492 ??『????・???』 :2019/04/13(土) 18:40:02
>>491(お気になさらず)

>あえて嫌いなものを部屋に置いて、モチベ上げていくみたいな

表情の伺うのが難しい眼鏡の下の口元が綻びの形を作る。

「臥薪嘗胆、なんて大仰なものでも無いですけどね。
生活し続けていく内に、大体長い歳月の中で気に入ったものや
好みも移り変わっていくんですよ」

「真っ白な壁も、いずれ染みで淀んでしまうから。
そう言う時はフローリングでもすれば壁は良いですけど
住み慣れた空間の全部を取り換えるのは難しいですから…」

「だから、最初から一つだけ明確に『黒』を入れておけば
あぁ、他の色も少々最近は好みから少し離れて来たけど
あの『黒』よりは良いと……少々廃退的な思考ですけどね」

493 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/13(土) 22:10:56
>>492

「へ〜。なんだかすごい話ですねっ」

なんだかむずかしい話だ。
この人、ものすごく賢い人なんじゃないかな。
私、そこまではっきり嫌いなものってあるかな。
好きなものが変わっても変わらないくらい・・・

・・・

・・・・・・考えても、仕方ないかな。

「ちなみに、えーと」「・・・」
「ごめんなさい、お名前なんでしたっけ」

「あなたも、部屋にそういう『嫌いなもの』とか置いてるんですか?」

この人は何が嫌いなのかな。
フツーに虫とか? そんなのは、いくらなんでも置きたくないよね。

494 ??『????・???』 :2019/04/13(土) 22:42:49
>>493

>お名前なんでしたっけ

「……名前 ねぇ」

その問いかけは、極ありふれた 初対面な人間と会話するにあたって
特筆して何も可笑しくない質問だ。
 だが、少女はそれに本棚を背もたれにするようにして姿勢を変えて
腕を組み、ほんの少しだけ雰囲気を変えて告げる。

「正直 名乗るのは気が進まないんです。
いえ、そちらに自己紹介するのが嫌だって話では無いですし
犯罪歴がある訳でもないです。貴方に対し好印象はありますし
現在進行形でlike(好き)でありlike(同様)な方だなとも思ってます。
何故名乗りたくないのかって?
 私自身が半端者でしてね。自分自身の名と言うのが曖昧模糊で
その名前自身が 私と言う存在を表す呼称だ! としっかり
胸を張って言える気がしないんですよ」

ですので、お好きなように呼んでくださればと 少々蠱惑的な
微笑を少女は模った。

>『嫌いなもの』とか置いてるんですか?

「えぇ、ありますよ。ちょっとした画家に頼んでね。
何時もベソっかきなマンモーニな少女の自画像を部屋に飾ってます。
見る度に胸がムカムカしますが……臥薪嘗胆、それですね。
随分と自戒の役に立ってくれてます」

私は、貴方の事を何と呼べば宜しいでしょう? 

そう、少女は図書を愛する友好の士である貴方に問いかけ返した……。

495 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/13(土) 22:57:06
>>494

「へ」

「へぇ〜〜〜」

何言ってるんだろこの人。
ちょっと困っちゃった。

えーっと、つまり『名前に自信がない』のかな。
自分が何なのか、よくわかんないってコトなのかな。
そんなの、私だって同じなんだけど。

           イマイズミ ミライ
「私、高等部1年の今泉未来ですっ」
「呼び方は、なんでもいいですよ」
「あ、もちろんフツーなあだ名の範囲でですけど!」

でも、そう考えたらわからなくもないかな。

「名前がわからないとあだ名も考えにくいですねえ」
「う〜ん」「メガネ……」「は、そのまますぎか。あはは」

それでもいいって言いそうだけど。

「ベソっかき……」「は、嫌いなものだし」
「どうしましょうね」

「あ。じゃあ、逆に好きなものってなんですかっ?」

496 ??『????・???』 :2019/04/13(土) 23:10:54
>>495

クッ クッ クッ

貴方の困った表情を読み取ったのか、少し低い笑い声を
隠そうとせず鳴らす。少々意地の悪い性格なのだろうか?
だが敵意は然程無さそうにも思える。

「今泉 未来……周りからは愛称でいずみんとか
呼ばれた事が一度はありそうですね」

>逆に好きなものってなんですかっ?

パチ…

その言葉に、少しだけ瞬きと真顔に顔つきが変化した。
少し黙考と唇に指を這わせたあと、口開く。

「んー……私は猫が好きですかね。ミー ミーと
可愛らしく泣く三毛の子猫が」

「それじゃあ、これから私はミーと名乗りましょう。
そして貴方をミライと呼びましょう」

ミーとミライ。口ずさむのにも語呂が良いじゃないですか

少女は軽やかに笑った。

497 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/14(日) 01:31:27
>>496

「あ、わかります?」「呼ばれますよ、イズミンって」
「やっぱり頭いいんですねっ」

もしかしたら、どこかで聞いてたのかな。
苗字はあだ名にしやすいし、偶然かもだけど。

「へ〜、猫」
「かわいいですよね」
「私も猫、フツーに好きですよ」

犬派猫派なんていうけど、比べられないよね。

「ミーさんですね、じゃあそう呼ばせてもらいますっ」
「よろしくお願いしますね、ミーさん」

って言ってたら、職員の人がこっち見てる。
ちょっと長いことしゃべりすぎたかな。

「ミーさん、ラインとかしてます?」
「図書館だし、おしゃべりし続けるのには向いてないかなって」

「連絡先交換して、あとでゆっくり話しません?」

498 遊部『フラジール・デイズ』 :2019/04/14(日) 21:08:26
>>497(切りが良いので、ここら辺で〆させて頂きます)


「lineは……しませんね」

(少なくとも、何時『私』が『誰』になるか不明な現段階では な)

この女学生と会話して解る。彼女は特に隔たりない白か黒で言えば
白(安全圏)に間違いなく与す存在だ。

(それでも、いずれ何処かで。この若干無益とも思える所作や邂逅が
思わぬ価値となって発掘されるのかも知れない)

「ですけど連絡先は勿論交換しますよ。未来とは友達でいたいですから」

敬称抜きで、そのまま名を告げたのは。出来うる限りの親愛を示そうと
思ったからだった。

黒も白も、様々な混濁色な我等であるものの。今は束の間の安らぎ(日常)
を受け入れるのも……やがて到達すべき道の為には必要だ。

499 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/14(日) 23:29:49
>>498

「あれっ、そうなんですか」
「それじゃあメールアドレスですねっ」

珍しいけど、いなくはないよね。
連絡先を交換して……

「よし」

「それじゃ、また後でお話ししましょうね」

    ヒソヒソ

今ごろ声を潜めたりして。
とりあえず、ここではこれで、お話は終わりだ。

500 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/19(金) 00:05:51


┌────────────────┐
│  中庭に置き忘れられたスマホだ。 │
└────────────────┘

         〜〜〜♪


              〜〜〜♪

┌───────────────────────────┐
│      白いケースが、マスキングテープで飾られている。      │
└───────────────────────────┘

                ┌────────────┐
                │ ・・・着信音が鳴っている。  │
                └────────────┘

501 ?????『?????』 :2019/04/22(月) 20:45:34
>>500

通りがかった一人の女子生徒が、偶然スマホを見つけた。
着信音が鳴るソレを一瞥し、どうしようかと考える。
やがて、おもむろにスマホに手を伸ばした。

          ピッ

「――もしもし」

「えっと、私は持ち主の人じゃないんですけど――」

「たまたま鳴ってるのを見かけたので……」

電話口に向かって、遠慮がちに呼びかける。
話しながら、中庭のベンチに腰を下ろした。
電話の向こうにいるのは持ち主の知人か、それとも持ち主本人だろうか。

502 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/22(月) 23:42:52
>>501

「もしもし、未来―――――――――――――」

           「・・・」

              「未来の、知り合いですか?」

┌───────────────────────────┐
│電話口の向こうから聞こえるのは、落ち着いた男の声だ。     │
│話しぶりからして、このスマートフォンの持ち主ではないのだろう。│
└───────────────────────────┘

                ┌────────────────┐
                │   ・・・知り合いなのだろうか?    │
                └────────────────┘

503 ?????『?????』 :2019/04/23(火) 00:32:23
>>502

雰囲気からすると、持ち主の知人なのだろう。
言い方からして、相応に近い間柄なのも分かる。

「はい、同じ学校の友達です」

「未来さんは……近くにはいないみたいですね」

「たぶん置き忘れ――だと思いますけど……」

       チラリ

「あの……未来さんのご家族の方でしょうか?」

会話を続けながら、液晶画面を確かめる。
登録されていれば、相手を確認できるはずだ。

504 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/23(火) 01:26:32
>>503

「そうか――――――友達。未来の…………私、は」

┌────────────────────────┐
│     知らない人間の名前を呼ぶ声ではない。       │
│  なにか、電話越しには、あるいは空気の振動でも・・・.  │
│    伝わりきらない『こころ』のようなものがあった。     │
└────────────────────────┘

「未来の…………」

        ┌──────┐
        │   ・・・・・・。  │
        └──────┘

           「……『父』です。はじめまして」

┌───────────────────┐
│ 画面には、『番号』しか表示されていない。   │
└───────────────────┘

  「…………すみません、切ります」

          「…………ああ」

      「未来と、これからも、仲良くして……あげてください」

505 ?????『?????』 :2019/04/23(火) 01:54:22
>>504

「あ、お父さん――なんですね」

何も気にしていないような、何気ない口調で答える。
しかし、どこか『躊躇い』を感じる言い方が気になった。

「はい、分かりました」

表示されているのは『番号』だけ。
あるいは、そこに何かしらの事情があるのかもしれない。

「未来さんは、大事な友達ですから」

だけど、それは自分が踏み込むべきことではないだろう。
多分そう思う。

「これからも一緒に楽しく過ごせたらなって」

だから、それについて尋ねることはしなかった。
気にならないと言えば嘘になるけど。

「――そう思ってます」

足元に視線を向け、それから空を眺める。
ふと、持ち主の顔が思い浮かんだ。

「あの……未来さんに何か伝えることが?」

「もし良ければ、私が――」

そこまで言って、口を閉じる。
――やめよう。

「……いえ、何でもありません」

「この電話は、きちんと未来さんに返しておきますから」

「――それじゃあ、失礼します」

506 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/23(火) 02:23:14
>>505

「――――――ありがとう。未来をどうか、よろしく」

      ┌──────────────┐
      │   そうして、電話は切れた。  │
      └──────────────┘

        ┌──────┐
        │   ・・・・・・。  │
        └──────┘

    ┌──┐
    │ ・・・.│
    └──┘

・・・。

「…………」

            スタ スタ スタ

携帯落としちゃった。落としたのかなくしたのか、わかんないけど。
でも中庭にいたときはフツーに触ってた記憶あるし、このあたりにあると思うんだよね。

507 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2019/04/23(火) 02:55:16
>>506

     ピッ

「――……」

通話を切って、手の中のスマホをボンヤリと眺める。
最初は何てことない思い付きだった。
少しだけ『ネコ』被って、ちょっとした『サプライズ』でもやろうかなと。
ホラ、前回(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1456056964/8)は、
すぐバレたし。
そしたら、何だか思いもしない方向に行ってしまった。

「――――おん??」

       サッ

向こうからイズミンが近づいてくるのが見えた。
素早くスマホをポケットに入れる。
ベツにパクろうってワケじゃあない。

  「イッズミ〜〜〜ン」
          
      「イッズミ〜〜〜ン」

          「イズミンは『ナニか』をさがしているようだ」

              「では、ナニをさがしているか??」

                  「『めいたんていユメミン』がスイリしてみせよう」

                      「それは――――『おとしたケータイ』だ!!」

                  ババッ

ポケットからスマホを取り出してイズミンに見せる。
しそこなった『サプライズ』の代わりだ。
悪戯っぽい笑みを浮かべた表情には、先程までの深刻な様子など微塵も残っていない。

508 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/23(火) 22:24:09
>>507

「・・・・・・あっ、ユメミ〜ン! 偶然ですねえ!」

      ニコ

中庭で一人で何してるんだろう?
なにか面白いものでもあったのかな。犬いたとか?

「どうしたんです、なにか面白いものでも」

って、思ったことを言いかけたところで。

「えっ」「なになに」
「なんでわかっちゃうんですかっ?」

「そう、そうなんです、探しものを――――あっ」

それ、スマホ、ユメミンが拾ってくれてたんだ!

「ユメミンさっすがーっ」
「それですそれ、それを探してたんですっ」
「いやーっ、ありがとうございます!」

「ちなみに……なんで私のってわかったんですっ?」
「種明かし、お願いしていいですかっ? 『名探偵ユメミン』」

多分、見た目覚えてたのかな。
ユメミンの前でスマホ使うこと、けっこう多いもんね。
私以外でケースにマステ貼ってる人もあんまり見ないし。

509 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2019/04/24(水) 00:31:06
>>508

「なんでわかったかって??
 ホントは『キギョーヒミツ』なんだけどな〜〜〜。
 まぁ、いいか!!トクベツにおしえちゃおう!!」

「じつをいうと『ノーリョク』でわかった。
 これはイズミンのオトシモノだろうって。
 ホラ、いわゆる『レイのヤツ』で」

もちろん違う。
『ドクター』にはそんな能力はない。
『できなくはない』けど。

「――――なんてコトができたらベンリだよね〜〜〜。
 そりゃわかるよ。だって、みたコトあるし。
 もしケースかえてたとしても、デコレーションでわかるジシンあるね」

「イズミンの『シュミ』は、だいたいハアクしてるから。
 この『テープ』とか。
 そんなカンジ??」

さっきの通話のことは黙っとこう。
少なくとも聞かれるまでは。
なんとなく、いいにくいし。

「そういやさ、いまヒマ??
 かわったスイーツがたべられるトコみつけたんだ〜〜〜。
 なんでも『タコヤキみたいなシュークリーム』とか、
 『オコノミヤキみたいなパンケーキ』なんかがあるらしいって!!
 キョーミない??そんなのみたコトないし!!ゼッタイみてみたいな〜〜〜」

それに、あんまり湿っぽいのイヤなんだよね。
そのコトについて、私になんかできるワケでもないし。
だから、ユメミンにできるのは、コレくらいだ。

「――――これからイッショにいかない??」

今まで通り、一緒に楽しく過ごすことくらい。

510 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/24(水) 02:06:45
>>509

「あれ、『ドクター』にそんな能力――――って。冗談ですかっ」

          アハ ハ

「あは、趣味ばれちゃってましたか」
「こういうの好きなんですよね〜」
「白も好きだし?」

理由はわからないけど、好きなんだと思うんだよね。
好きだって思うものが好きってコトだとも思うんだよね。

「暇ですよ〜、スマホ見つけてくれたおかげで」
「見つからなかったら夜まで忙しいとこでした」
「ほんと、ありがとうございます」

「ちょうどフツーのスイーツ、食べに誘おうかなって」
「思ってたんですけど〜」

      ニコッ

「いいですよっ。行きましょう!」
「ユメミンとそういう変わったの、最近食べてませんでしたしね」

「場所は……星見街道のほうです? それとも横丁のほう?」

そういう理屈でいうと、ユメミンと遊ぶの、やっぱり好きなんだよね。
スマホ落としたのはどうしようかなって思ったけど、拾ったのがユメミンでよかった。

511 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2019/04/24(水) 02:47:07
>>510

「よし!!いくぞイズミンたいいん!!
 いまこそ、かくされた『おおいなるナゾ』をときあかすトキだ!!
 そこにはデンセツのヒホウがねむっているという!!」

「ユメミンがゴクヒにニュウシュした『こだいちず』によると――
 『ホシミカイドーほうめん』だな!!
 メインストリートからは、チョットはずれたバショか……。
 しるヒトぞしる『かくれがてきショップ』ってカンジだ!!」

        ピッ
             ピッ

『古代地図』――もといスマホに地図を表示して、イズミンに見せる。
使ってるスマホケースはデコレーションが賑やかだ。
様々な色のパーツが、あちこちにゴチャゴチャくっついている。

「そんじゃ、さっそくいこうぜ!!
 テイクアウトもできるみたいだから、おみやげもかってかえろっかな〜〜〜。
 ナニもいわずにだして、みんなをビックリさせてやろう」

        ザッ

そんなこんなで店に向かおう。
チョットわかんないコトはあったけど、そのコトはいいや。
イズミンと遊んでるのは楽しいし、ソレでいいと思う。
だって、ユメミンはイズミンの友達だから。
だから、きっとソレで十分なんだ。

512 今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】 :2019/04/24(水) 23:15:06
>>511

「『隠れ家的』! 良い響きですねえ」

     ずい

スマホを覗き込んで地図を見せてもらう。
知らないお店だ。友達といろんなお店行くけど、
ユメミンはやっぱりフツー知らない事を知ってる。

「へえーっ、こんなところにあったんですねえ、お店」
「ほんとに宝探しみたい」「味もお宝レベルならいいな」

「それじゃ、『秘宝』目指して張り切って行きましょっ」

              スッ

真っ白にマスキングテープを巻いた私のスマホ。
ほんと、見つけてもらえてよかった。
・・・メールとか来てないかな。
まあ、見るのはまた後でいいや。

「テイクアウトですか、それもいいですねえ」
「食べすぎちゃわないように気を付けないとっ」

今は、フツーに、スマホ見なくても楽しい時間だもんね。

513 夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』 :2019/04/25(木) 00:17:49
>>512

    ザッ
        ザッ

少しずつ中庭から遠ざかっていく二つの人影。
それは『普通の日常』だ。
ちょっとだけ変わってるかもしれないけど、それでも『いつも通り』の光景。

          ザッ
              ザッ

あの電話は、もしかすると『いつも通り』じゃないのかもしれない。
いつか何かがあるのかもしれない。
もしかすると、それは大きなことなのかもしれない。

                ザッ
                    ザッ

だけど、もしそうだったとしても、それは今じゃない。
今ここにあるのは、いつもと変わらない『普通の日常』だけ。
少しの余韻を残しながら、この小さな一幕は終わりを迎える――――。

                      ザッ
                          ザッ


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