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サシャ「むっ!あっちから足音が」ミケ「スンスン…こっちだな」
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エルミハ区104期生隔離施設
【夜】
サシャ(…さて、夜も更けて)ササササッ
サシャ(お腹も空いた。狩りの時間の始まりですよっと)サササッ
ゲルガー「ん?」
サシャ(おっと!見張りが…!この施設は狭いから気を付けないと。よーく耳を澄ませて回避していこう…)ソロソロ…
ゲルガー(今、そこの陰で何かが動いた気がしたが。104期生たちは寝てるはずだし、部屋の前には見張りも立ってる。気のせいか?)
ナナバ「ゲルガー」
ゲルガー「ナナバ。どうした?まだ交代の時間じゃないぞ」
ナナバ「それが、ちょっと困ったことがあってね」
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ゲルガー「困ったこと?」
ナナバ「食料庫に何者かが侵入した形跡があるんだ。レーションの数が足りない」
ゲルガー「レーション?数ったって…数え間違えたんじゃねぇのか?」
ナナバ「いや、私とリーネでここに来てから数を確認して控えてたんだ。もし人数分なければ104期に優先して配らないといけないからね。少し多めにあったから安心してたんだが…」
ゲルガー「ねずみかなんかじゃねぇのか?」
ナナバ「ねずみ対策なんて最初からしてるよ。それにこれは私の記憶だけだから違ってるかもしれないけど…芋もたぶん減ってる」
ゲルガー「芋も?」
ナナバ「たぶん。芋の重なってる感じが…ちょっと変わったかなって思ったんだ。これは数を数えて無いから正確にはわからないけど。誰かがこっそり持ち出してるんじゃないかな」
ゲルガー「こんな狭い施設の中で、見張りも俺たちが交代でずっと周ってるのにか?その目を盗んで食料庫に侵入なんてできるか?それに誰が?」
ナナバ「酒に酔ったゲルガーか、そうでなければ他の誰かだね」
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ゲルガー「俺じゃねぇよ!大体ここで酒なんか飲んでねぇだろ!」
ナナバ「悪い。冗談だよ。私たちの誰かでなければ…後は」
ゲルガー「104期生か?」
ナナバ「疑いたくはないけれど。彼らはまだまだ未熟だし、育ちざかりだからね。こっそりおやつに芋を拝借したくなるかもしれないな。ゲルガーみたいにやんちゃな奴もいるだろうしね」
ゲルガー「あのな。俺のどこがやんちゃなんだよ!」
ナナバ「髪型がやんちゃだ。いかしてるよ」
ゲルガー「ほっとけ!それで?これから犯人探しってことか」
ナナバ「まあ。今日侵入するかはわからいけど。一応見回りだ」
ゲルガー「食料庫の中で見張ってたほうがいいんじゃないか?」
ナナバ「食料庫の周りはミケに見張ってもらってるよ」
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ゲルガー「ミケさんが?」
ナナバ「ああ。ミケなら誰か近づくだけでも感じ取るだろ?」
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【食料庫】
ミケ「……」
サシャ(うう。ミケ分隊長…)
ミケ「……」キョロキョロ
サシャ(さっき、一歩踏み出した途端、こちらを見た。これだけ離れてるのに勘が良すぎる!)
サシャ(さっきと場所を変えたここからなら…?)スッ
ミケ「……!」クルッ
スタスタ…
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サシャ(ぎゃっ!気づかれた!?また、また離れないと…!)シュタタタタッ
ミケ(こっちのほうから匂うな)スンスン
サシャ(うわわわっ!まずい!もっと離れないと…!)テテテテテッ
ガツン
サシャ「わっ…!!」
バシャーン
サシャ「しまった…!こんなとこに桶があるなんて!掃除終わったらちゃんと捨てて置いてくださいよっ!廊下が水浸しに…!」
ミケ「誰かいるのか?」スタスタ
サシャ(ままま、まずい!とりあえずこの雑巾で靴拭いて!に、逃げる!!)ダッ
ミケ「おい!」タッ
サシャ(うおおおおお!!)ダダダダッ
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ミケ「おっ」ビチャッ
ミケ(…廊下が水浸しだ。雑巾絞った水か?臭い…)
ミケ「…こっちの匂いが強すぎるな」スンスン
ミケ(まあいい。また食料庫の前で立っておくか)スタスタ
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サシャ(ふうふう。大分離れたし、とりあえず様子見して…。床に耳つけて、足音…聞き取りましょうか)ピトッ
サシャ「ミケ分隊長の足音は…食料庫に戻って行きましたね。…ひとつ、ふたつ…周辺を歩いてる足音と、経ってる状態で踏みかえてる音…。これはどちらも今のところ脅威ではなさそうです」
サシャ「ミケ分隊長が問題ですね。なぜかある程度の距離近づくと、こちらの姿は見えない位置にいるはずなのに場所を特定されます。どこか別のところを見てるのに、こちらが距離を詰めるとピクッとして振り向くあの姿は…覚えがあります」
サシャ(野生の動物!)
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サシャ「ミケ分隊長は目か、耳か、鼻か…野生の勘でしょうか?なにかを感じ取ってこちらに気付いているんだと思いますが…感じ取ってるものがわかりませんね。なんでしょう?」
サシャ(考えるより、試しながら探るしかないか…)
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ミケ(ナナバに俺ならすぐ見つけて捕まえられるだろうから、周辺を見張ってくれと言われたが。確かに、何か近づいて来るものはいる)
ミケ(いるにはいるが…。匂いがして、俺がそっちに踏み出した瞬間にはもう匂いが遠ざかっている。しかも匂いが、人間なのか、動物なのか判断が難しい。…どっちかというと動物臭い。野生の動物が食料を求めて忍び込んでいるのか?)
ミケ(だとしたらなかなか難しいかもしれん。俺と同じで鼻か…もしくは耳か、目か…野生の勘か?もしくは全部…。そういったものを持った相手だと一筋縄では行かないだろう。動物なら捕獲作戦を立てて追い立てたほうがいいかもな)
ミケ「…ナナバに相談してみるか。少し離れるが、鍵もかかってるし、さっき逃げて行ったばかりですぐには戻って来ないだろう」スタスタ…
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サシャ(はっ!ミケ分隊長の足音が!食料庫から離れていく!なんでかしらんがチャンス!)
サシャ(ただ、慎重に…慎重に行かないと!)ソロ…ソロ…
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サシャ「よ、よし。大分食料庫に戻ってきましたが…。この辺より先に出るとミケ分隊長が気づくんですよね。足音を確かめて…」
サシャ「反対側に歩いて行ってますね。こちら側は安全です。もう少し離れたらおそらくミケ分隊長の射程距離から食料庫が外れるはずです!」
カツカツカツ…
サシャ「うんうん。いいですよ。その調子で歩いて行ってくださいね…。そのぶん私は食料庫に近づけるんですから」トットット
サシャ「ふっふっふ。扉の前に到着です!やりました!鍵は前にちょちょいっと開けましたから今回も…」ガチャガチャ…
サシャ「ん?」
ガチャガチャ
サシャ(ああっ!!鍵が付け替えられてる!!壊しては無かったのに!)
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サシャ「こ、これは…!ちょっと時間がかかりますね。なんで急に付け替えを…」ガチャガチャ
サシャ(早くしないと!ミケ分隊長が帰ってくる!!)
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ミケ「ナナバ」
ナナバ「ん?えっ、ミケ?見張りは?どうしてここに」
ミケ「いや、犯人らしきものが居たにはいたんだが。捕まえるのは難しいぞ」
ナナバ「どうして?」
ミケ「もしかしたら野生の動物…かもしれない」
ナナバ「野生の?確かに森には囲まれてるけど。熊か?」
ミケ「いや、わからん」
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ナナバ「野生の動物なら匂いがきついだろ」
ミケ「それが、俺が感じ取れる位置からこちら側には入ってこない。確かに野生の動物だとすると匂いが薄いが…。警戒心というか、こちらの動向の感じ取り方が人間離れしている」
ナナバ「そうか…。だが野生動物が施設内をうろついてるとしたら、危険だな。104期生は丸腰なんだ。格闘の訓練は受けてても寝込みを襲われたら怪我だけで済まないかもしれない」
ミケ「外に追い立てても戻ってくるなら、捕まえたほうがいいだろうな」
ナナバ「そうだね。それに…」
ミケ「なんだ?」
ナナバ「いや。まさか巨人が…なんて思ったんだが。まさかね」
ミケ「アニ・レオンハートのように隔離してる104期生の誰かが…ってことか」
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ナナバ「でも巨人ともなると3m級はあるだろうし…。巨人がいるかもしれない状況で、つい考えてしまったんだが。この考えはちょっと過敏すぎるな」
ミケ「知性巨人の匂いが女型と同様なものなら、匂いでわかる。あれはどっちかというと無知性巨人に近い匂いだった…」
ナナバ「そうか。こんな土地の真ん中で無知性巨人が発生するなんてな…しかも夜だ。そんなことあるわけない…無いよね」
ミケ「ああ。条件的には考えられない」
ナナバ「…とりあえず、野生動物という前提で…。捕獲作戦を遂行するか。夜明けまでに捕まえよう」
ミケ「そうだな」
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耳vs鼻wwww
乙
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頑張れサシャ
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ナナバ「…ということで、皆にも協力してほしい」
ゲルガー「野生動物ねぇ…」
リーネ「この辺は熊が出るって話は耳にしたけど」
ヘニング「俺たちだけで捕まえるのか?」
ナナバ「できればね。我々もだが、104期生は説明もなくこんな場所に閉じ込められて不安で精神的にも参ってるだろうから、余計なストレスを与えるのは避けたいんだ。まず我々で敵を確認して、危険だと判断したら彼らにも協力をしてもらう」
ゲルガー「捕獲作戦に参加させるのか?」
ナナバ「場合によっては。ただ当初の目的は104期生に裏切り者がいないかどうかを確かめるものだから、彼らの疑いが晴れるまでは、なるべく武器を与えるのは避けたい」
リーネ「寝てる間に済ませたいってことか」
ゲルガー「寝てる間にったって…。俺たちがバタバタしてたら起きるだろ。起こして一部屋に待機させておいた方がよくないか?」
ヘニング「そうだな」
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ナナバ「うーん…。それもそうだね。ミケ、どう思う?」
ミケ「もしやつが104期生の部屋に侵入する可能性を考えると、こんな時間に起こすのはかわいそうだが事前に説明しておいたほうがいいだろう。リーネとヘニングでそれぞれ部屋に説明に回って貰って…その間に俺たちで追跡しよう」
ナナバ「わかった。リーネ、ヘニング頼んだよ」
リーネ・ヘニング「了解」
ミケ「ゲルガーとナナバは二手に分かれて、それぞれ2階へ続く階段前で見張っててくれ。獣が建物内をうろついていて階を移動する時に、必ずどちらかを通ると思う」
ゲルガー「そいつ、ブレードだけでなんとかなんのかなぁ…。銃があればいいんだが」
ナナバ「なぁに、熊でも巨人よりは小さいよ。きっと」
ミケ「狼の可能性もある。廊下に獣の毛やフンが落ちてないか、確認しながら配置についてくれ。俺は食料庫に戻ってみる。もしやつを見つけたらどちらかに追い立てて行くから頼んだぞ」
ナナバ・ゲルガー「了解」
ナナバ「一人で大丈夫?」
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ミケ「ああ。別に一人で巨人の群れに飛び込むわけじゃないからな。それに相手がこちらに攻撃的になったと判断したら距離を取る」
ゲルガー「ミケさんの鼻なら、見つかる前に見つけられるだろうしな。ナナバ、心配無用ってこった!」
ナナバ「ああ。そうだね。じゃあ、皆気を付けて」
ミケ「ああ」
ゲルガー「おお」
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【食料庫前】
サシャ「ううっー!なんっで開かないんですかねっ!こなくそっ!」ガチャガチャ
サシャ(もたもたしてたらミケ分隊長が戻ってくるっていうのに!)
カツカツカツ…
サシャ「はっ!!足音!!」
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サシャ(この重量感のある足音は…!ミケ分隊長!!一旦ここから退いてミケ分隊長の射程距離外で待機しよう!)ダッ
ミケ「……」
カツカツカツ…
サシャ「やっぱりミケ分隊長ですね」
ミケ「…スンスン」
ミケ(なんだろう?少し匂うな…)
ミケ「……」キョロキョロ
サシャ(探してる。でもここは射程範囲外なはずだから大丈夫…)
ミケ(残り香か?)スンスン
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ミケ「鍵に誰か触ったか?」スンスン
サシャ(あっ!鍵を嗅いでいるっ!わかった。ミケ分隊長の勘の鋭さは…嗅覚!!なるほど、匂いでこっちの居場所を特定していたんだ)
サシャ「そういえば、廊下に水をぶちまけたら急に追いかけてこなくなりましたもんね。水が汚れてて匂いがあったから混じってわからなくなったんですね」
サシャ(とりあえず、ミケ分隊長の風下に回って近づくのがいいか。でも建物の中で風下も上も無い…。窓を。窓を開けて…風を作ろう)タッタッタ
サシャ(この辺の窓鍵を開けて置いてっと…)ガチャ
サシャ(よし。次は反対側に回って、窓を開ける。私は開けた窓から外に出て、外から事前に鍵を開けて置いた窓を開ける…。風が流れるからミケ分隊長は匂いのする風上に動き始める…。そこで私はミケ分隊長が歩いて行った方向と逆の窓から中に戻るって寸法で!)
サシャ「さて!反対側の窓を開けに行きましょうかね」テッテッテ
サシャ「むっ!?」バッ
サシャ(足音が…。これは、ミケ分隊長ではない。階段辺りで誰かうろうろしている…。反対側に行くには食料庫の前を通るか、2階経由で行くしかないのに…。これじゃ反対側に行く時に鉢合わせるかも)
サシャ「うう、どうしましょう…」
-
サシャ(まあ、ここはミケ分隊長ではないので普通に物音で気を引いてその間に通ることにしよう)
>>>>>>>>>>>>>>>>
ゲルガー「ふう…。特に獣の毛とかは無いみたいだな」キョロキョロ
ゲルガー「はあ…。酒飲みてぇな…」
サシャ(あれは…ゲ…ゲルなんとかさんだったっけか?頭がコッペパンみたいな人…)ソーッ
サシャ(さて…物音だけど。どこかこの辺で開いてる部屋はあるかな?)ガチャ…
サシャ(うーん、開いてないなら開けようか…。髪留めのピンでっと…)ガチャガチャ…ガチャン
サシャ「よし…!」ギイイィ
サシャ「さて。まずは隠れるところを探しましょう。入口付近で…。この辺がいいですかね。えーと、棚に何かいいものありませんかね。…おっ。金属製のコップがありますね。これを入口付近から棚の奥に放り投げてっと…ほいっ」ポイッ
ガチャンッ
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ゲルガー「ん?」
ゲルガー(今…あっちのほうで物音がしたな?)
カツカツカツ…
サシャ(よし。足音がこっちに向かってきている。後は隠れてコッペパンさんがコップの落ちてる奥の辺りを調べに行った隙にここを出る!)
サシャ「はやく来てくれませんかね〜」ジッ
カツカツカツ…
ゲルガー(…ん?ドアに隙間が…。開いてるなんておかしいな。鍵は閉めて回ったと思ったが…。例の獣か?)
ギイイィ
ゲルガー「おい。誰かいるのか?」
サシャ「……」
-
ゲルガー「…ちっ。暗いな…」カツカツカツ…
サシャ(今だ!外に出るっ)バッ
サササッ
ゲルガー「ん?今何か気配が…?」クルッ
ゲルガー(気のせいか?)キョロキョロ
カツカツカツ…ガッ…ゴロン
ゲルガー「おっ。なんだ。さっきの音はこいつか。棚から落ちたのかよ…。驚かせやがって…」
ゲルガー「でも…なんで落ちたんだ…?ねずみでも通ったのか?」
ゲルガー(それより扉が開いてたのが妙だよな…。獣が扉を破壊した?)
ゲルガー「いや…。扉は破損しては無いな。…鍵を開けたか…。それ以外なら、まさか…いや。まさかな…」
ゲルガー(ミケに報告しておくか…)
>>>>>>>>>>>>>>>>
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×ゲルガー(ミケに報告しておくか…)
◎ゲルガー(ミケさんに報告しておくか…)
でした。
-
見てるよー
続きが楽しみ
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サシャ(やった!階段は通れました!後は反対の階段から下りて…)
リーネ「わかったね?休んでくれて構わないが、くれぐれも気を付けてくれ」
ギイイッ…バタン
サシャ(んっ!?あれは…リ…リなんとかさん!なんで…なんでこんな時間に部屋に!?まさか…抜き打ち点呼!?)
サシャ(と、とりあえずお便所に…)サッ
リーネ「後はここか。えーと、この部屋はユミル、クリスタ、サシャか…。年長者はユミルだな」
コンコン
リーネ「ちょっといいかい?」
シーン
リーネ(うーん、寝てるのか。悪いが入るよ)
-
ギイイィ
ユミル「スゥスゥ…」
クリスタ「スヤスヤ」
リーネ(おや?一人いないな。ええっと、確かこの子がユミルだな)
リーネ「ユミル、起きてくれ」ユサユサ
ユミル「ん…?は?」
リーネ「やあ。すまないね。今大事な話が合って皆の部屋を回ってるんだけど、クリスタも起こしてくれるかい?」
ユミル「ああ…あなたは…ええっと。リーネさん…でしたっけ?話ってなんですか?ふぁ…」
リーネ「クリスタが起きたら話すよ。あと…サシャは?」
ユミル「サシャ?さあ…便所じゃないですか?」
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リーネ「ああ。そうか。ちょっと見てこよう。クリスタを起こして待っててくれ」
ユミル「わかりました。おい、クリスタ、起きろって…」
クリスタ「ううーん。なにぃ?」
リーネ(ええと…便所…)
カツカツカツ…
サシャ(うっ!こっちに誰か向かって来たっ!こ、個室に入っておいて…)ギイッ
リーネ「サシャ」
サシャ(えっ!?なななな、なんで!?なんで私がいるってわかった!?)ビクッ
リーネ「…サシャ?」
カツカツカツ…
ガチャ
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リーネ「いない…。そしたら、こっちか…」
サシャ(わわわわわ!!!見つかる!!お、おしまいだああああ!)
ガチャガチャ
リーネ「おっ。サシャ?入ってるんだろ?ちょっと大事な話があるから来てくれないか?」
コンコン
サシャ「は、話って…」
リーネ「この建物に野生動物が迷い込んでるみたいでね。104期生には部屋で警戒しながら待機しててほしいんだ。詳しくは部屋でユミルたちと一緒に説明するから。サシャも来てくれる?」
サシャ「あ、は、はい…」
サシャ(野生動物?私のことがばれて探されたわけではないのか…。よ、良かったぁ)
サシャ(しかし熊でも入ってきたのかなぁ…。鉢合わせしたら嫌だな…)
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リーネ「…サシャ、もしかしてお腹の調子でも悪いの?」
サシャ「えっ!?いえ!?す、すぐ出ます!」
ガチャ…
リーネ「さ、部屋まで一緒に行こう。…お腹悪いなら何か薬でも飲んでおく?」
サシャ「あ、いえ。だ、大丈夫です」
リーネ「ならいいけど。無理しないで辛くなったら言うんだよ」
サシャ「はい」
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【サシャたちの部屋】
リーネ「…とういうわけで、まず部屋からは出ないように。用を足しに出る時は必ず二人以上で行くようにね」
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ユミル「野生動物って、熊ですか?」
リーネ「さあ。それはまだわからないんだ。ただかなり警戒心が強くてすばしこい奴だよ」
ユミル「へぇ…」チラッ
サシャ「な、なんでこっち見るんですか!?」
ユミル「いや、別に」
クリスタ「あの、もし仮に熊と鉢合わせしてしまった時…私たちは武器も何もありませんが…」
リーネ「うん。ま…鉢合わせしないよう、我々で見まわってるから心配しなくても大丈夫。いざとなったら逃げることだけ考えて」
クリスタ「はい…」
ユミル「クリスタ、心配なら火でも焚いとくか?」
リーネ「そうだね。明るくしておいたほうがいいかもね。じゃあ。皆気を付けるんだよ」
ギイイッ…バタン
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クリスタ「…野生動物かぁ。怖いね」
ユミル「巨人より怖くないだろ。寝ようぜ」
サシャ「そ、そうですよ。先輩たちがいるんですから、私たちが寝てる間になんとかしてくれますって。寝ましょう、寝ましょう」
クリスタ「う、うん。そうだね」
サシャ(うーん。まずい。見回りが強化されているってことか…。でも、熊に皆が気を取られているなら、その間に私が食料庫にお邪魔する隙はできるかも…。チャンスといえば、チャンス…!)
サシャ(皆が寝静まったら、反対側の窓を開けに行こう…!)
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【食料庫前】
ゲルガー「ミケさん!」タッタッタ
ミケ「どうした?」
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ゲルガー「ちょっと報告に。さっき俺が見張ってた階段近くの部屋で物音がしたんで見に行ってみたんですが」
ミケ「…物音?」
ゲルガー「ええ。物音はコップが棚から落ちた。それだけのことだったんですがね」
ミケ「……」
ゲルガー「妙なのが部屋のカギは全部閉めて回ったと思ったんですが、その部屋の鍵が開いていたことと。俺が中に入って奥に進んだ時に、入れ違いに何か出ていく気配がしたんです。いや、これは扉を開けたんでただ部屋の空気が動いたとか…そういうもんかもしれませんが」
ゲルガー「…扉は壊されていたわけじゃなかったんですよ。…獣が、鍵を開けますかね?」
ゲルガー「これは、犯人は獣じゃないんじゃねぇかなって思うんですよ」
ミケ「…それに関しては俺も…」
ゲルガー「幽霊ですよ…!ミケさん!」
ミケ「……」
-
ゲルガー「幽霊がいるんですよ!この建物には!ぜってぇそう!!!」
ミケ「いや…」
ゲルガー「幽霊って獣臭いって聞いたことありますし!ポルターガイストって知ってますか?物が勝手に動くってやつです」
ミケ「あ、ああ」
ゲルガー「コップが落ちたのも、食料庫の食料が無くなってるのも…ポルターガイストなら説明がつく!んんっ!?あれっ!?これ正解じゃないですか?幽霊で!説明がつきますよね!?お、俺天才かもしんねぇ」
ミケ「…違うと思う」
ゲルガー「ええっ!?」
ミケ「確かに、正体が獣ではないというのは俺も思う。やつは動きや匂いが野生染みているが、俺が食料庫を離れた時に錠前…ここの鍵をいじったらしく匂いが残っていた。扉をこじ開けたり引っ掻いたような跡は無かった。野生動物かと思ったが…おそらく人間…。野生の勘を持った人間の仕業だと思う」
ゲルガー(なんだ…幽霊じゃねぇのか…)
ゲルガー「でも、そんな…人間離れした人間なんて…」
ミケ「おそらくは俺と同類…」スンスン
-
ゲルガー「えっ」
ミケ「ゲルガー。階段じゃなくてもいい。後はいつもの見周りと同じように巡回してくれ」
ゲルガー「あっ、は、ハイ」タッタッタ
ゲルガー(ミケさんと同類?そんなビックリ人間がいるのかよ…)
ミケ(人間だとしたら…おそらく、104期生…。こんな辺境で熊も出るところにわざわざ一人で忍んで来るやつがいると考えるよりは、その方が納得がいく)
ゲルガー「あの、ミケさん」タッタッタ
ミケ「なんだ?」
ゲルガー「いや。もし人間だってのなら俺ら以外に104期生しかいませんし、部屋にいるか検めればいいんじゃねぇかなって思ったんですが」
ミケ「それは…」
ヘニング「ミケさん。男子は全部屋周り終わりました。俺はこれからどうしましょうか」
ゲルガー「おっ、ヘニング。丁度良かったぜ。男子は部屋に全員いたか?」
-
ヘニング「ん?ああ。いたけど?」
ゲルガー「…そしたら女子?まさか…そんな野性味あふれた子いたか?はっ!あのそばかすの子とかそれっぽい…!」
ミケ「…リーネは?」
ヘニング「さあ?俺が終わった時にはまだ部屋を回っていたようですが。今は…ナナバのとこですかね?」
ミケ「部屋に行った時に便所に立ってたものはいたか?」
ヘニング「いや。皆ぐっすり寝てましたね。起きてから便所行ったやつはいましたけど。念のため俺が一緒について行って、用を足した後はすぐに部屋に戻しました。廊下で部屋の出入りを見てましたが、リーネが移動している以外は誰も外には出ていません」
ミケ「そうか。ヘニングはナナバのところに行って、野生動物じゃなくおそらく人間相手だと伝えて、見張りも巡回に切り替えるよう伝えてくれ。それから、リーネをここに連れて一緒に戻って来てくれ」
ヘニング「え?人間?野生動物じゃなかったんですか?」
ミケ「階段近くの部屋と、ここの錠前をいじった形跡があった。扉をこじ開けたりせず、鍵を外そうとしているから動物じゃない。獣が鍵をいじるとして、狼が立って触るとしたら高さ的にも牙で噛むだろうが、唾液の付着は無い。熊だとしても錠前周辺に爪の跡や、やっぱり齧ったりした跡が無い。周辺に動物の毛や足跡も無いからな」
ヘニング「ほお。だけどまあ…野生動物よりは人間のほうがましですね。じゃあ、ナナバとリーネに伝えてきます」タッ
-
ミケ「ああ」
ゲルガー「ミケさん、やっぱり104期生なんですかね?」
ミケ「おそらくは」
ゲルガー「…いや、でも待ってくださいよ。…やっぱり外部の人間の可能性もありますよ…。例えばアニ・レオンハートの巨人仲間を、別の仲間が助けに来たとか…。始末しに来たとか…」
ミケ「…食料庫にか?」
ゲルガー「…腹が減ったんじゃねぇかな…」
ミケ「一応その線も頭に入れて見張っておこう。ここはいいから、ゲルガーは巡回をしてくれ」
ゲルガー「了解」タッ
>>>>>>>>>>>>>>>>
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ユミル「ぐうううう」
クリスタ「すぴすぴ…」
サシャ(…ユミルもクリスタも寝た。では出発!!)
ギイイッ…テッテッテ
サシャ(さて、窓…窓を開けに行かなくては!)テッテッテ
【階段付近】
ナナバ「…じゃあ、部屋には全員いたんだね」
リーネ「ああ。野生動物って言ったら怖がってる子もいたよ。武器が無いってのは不安だろうね…」
ナナバ「しょうがないよ。私らでさっさと捕獲して…」
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サシャ(うっ!さっきのリーネさんとえっと、あれは…バナナ…じゃなくてナナバさん!)
サシャ(さっきは一人だったから誘導できたけど、こ、これは…ううーん…どうしよう!とりあえず様子見…)サッ
リーネ「さて、私はミケさんに報告してくるよ」
ナナバ「ああ。わかった」
ヘニング「おーい。リーネ、ナナバ」テクテク
リーネ「ん?ヘニング。そっちは終わったの?」
ヘニング「ああ。ミケさんにも報告してきた。それと…」
サシャ(あああ…。3人になってしまった。何か話してるけど…盗み聞き盗み聞きっと…)
ナナバ「え?野生動物じゃない?」
ヘニング「ああ。ミケさんの話だと人間らしい」
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リーネ「なんでわかったんだ?」
ヘニング「なんでも鍵をいじって開けようとしてたらしい。獣の仕業じゃないって言ってたぞ」
ナナバ「じゃあ食料泥棒は動物じゃなくて人間なんだね」
サシャ(!!も、もしかして私の事!?な、なんだ…獣って私の事を勘違いしてのことだったのか…。って、なんで獣って思われたんだろう…)
サシャ(それより、やたら今日は見張ってると思ったら…。もしや早朝にレーションとお芋を拝借したのがばれたのかな)
サシャ(しかし。この狭い建物で全員相手じゃ…。食料調達は、む、無理かも…)
ヘニング「それで、リーネ。ミケさんが来てくれって言ってるから一緒に行くぞ。それとナナバは見張りを普段通りの巡回に切り替えてくれとのことだ」
ナナバ「巡回に?」
ヘニング「ああ。獣じゃないただの食料泥棒ってわかったから普段通りの見張りでいいってことらしい」
ナナバ「そうか。じゃあ104期生がむやみに襲われることもないね。少し安心したよ。了解」
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ヘニング「じゃあ、リーネ行くぞ」
リーネ「了解」
カツカツカツ…
サシャ(おおっ!!やった!一気に二人減った!これで後はナナバさんが居なくなってくれたら階段を通れる!)
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乙乙
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続き期待!
のんびり待ってます
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ナナバ(しかし…ただの食料泥棒とは限らないからね。いつもよりさらに警戒しておかないとな)カツカツカツ…
サシャ(よ、よし!ナナバさんが廊下を曲がったら…!階段下の窓を開けて外に出る!)
ナナバ「……」カツカツカツ…
サシャ(い、今だ!)バッ
サシャ「ここの窓から…」
ギギッ…
サシャ「よっと…」
サシャ(靴に土がついたら足跡がついちゃうのと、歩く音が鳴ってしまうから…。外は素足で歩くとして…)
サシャ(見回りでここの窓締められたら計画丸つぶれだから、隙間に小石と枝を挟んでかみあわせを悪くししといてっと…。簡単に閉まらないようにしておこう)ザリザリ…グイグイ
サシャ(これでよしっと。あとはさっと反対側に走って、窓を開けるだけっ)タタタタッ
>>>>>>>>>>>>>>>>
-
ヘニング「ミケさん。リーネを連れてきました」
ミケ「ああ」
リーネ「お疲れ様です」
ミケ「リーネ。104期生女子は皆部屋にいたか?」
リーネ「ええ。いましたよ」
ミケ「用を足しに出ていたものは?」
リーネ「ああ。それなら一人…いましたけど?」
ミケ「誰だ?」
リーネ「サシャ・ブラウスです。あの、ポニーテールの…わかりますかね」
ミケ「サシャ・ブラウスか」
リーネ「彼女が何か?」
ミケ「匂うな」
ヘニング「ミ、ミケさん…。そりゃ便所に入れば誰だって匂いますけど…。兵士ったって年頃の女の子なんですから…」
ミケ「そうじゃない。芋泥棒かもしれないということだ」
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ヘニング・リーネ「えっ!?」
リーネ「犯人は人間って…104期生?まさか。そんな手癖の悪い奴がいるっての?それが…サシャ・ブラウスかもってこと?」
ヘニング「いやいや、それより…。こんな状況で、俺たちの目を盗んで食料庫に盗みに入ろうなんてどういう神経してんだって話だよ。それに盗みに成功してるなんて…俺たちが交代で見回りしてる中でだぞ?」
リーネ「かなり頭が切れるやつなのかな。そんな風には見えなかったけど…」
ミケ「頭が切れるとかじゃない」
ヘニング「ミケさん?」
ミケ「もっと別の…」
ヘニング「別の?別の何かがあるんですか?」
ミケ「ああ。おそらく人間相手と思ってかかるとまず捕まえることはできないだろう」
ヘニング「人間じゃないってことは…きょ、巨人?」
ミケ「いや。そういうことじゃなく。ゲルガーには話したが、おそらく人間離れした勘の鋭さを有しているんじゃないかと思う」
ヘニング「っていうと…ミケさんの嗅覚と同じような能力があるってことですか?」
-
ミケ「そういうことだ。嗅覚かはわからんが、近しいものを持っていると思う」
リーネ「だったら。私もう一回部屋に行ってサシャを…」
ミケ「いや。放っておいていい。二人は休んで、いつも通りの時間でゲルガーたちと見回りを交代してくれ」
ヘニング「ええっ!?犯人の目星がついてるなら…さっさと捕まえてお説教でいいじゃないですか?」
リーネ「そうですよ。別に現行犯でなくとも、本人を問いただせばいいだけなのに…」
ミケ「俺が捕まえる。お説教はそれからでいい」
ヘニング「捕まえるって一人でですか?なんでそんな…」
ミケ「いや、必ず捕えるためにゲルガーとナナバには巡回してもらっている。俺は追いつめるだけだ」
リーネ「追いつめる…?」
ミケ「最終的に捕まえるのはゲルガーでもナナバでもいいが。一体どういう仕組みで俺の鼻をかいくぐっているのか…、探る必要がある」
ヘニング「本人に聞けばいいじゃないですか?」
-
ミケ「…どっちの勘が鋭いのか…」スンスン
リーネ(…試したいだけなのか…)
ミケ「心配するな。食料は盗ませないし捕まえる」
ヘニング「…ミケさんがそういうなら…休みますけど」
リーネ「無駄に疲れるようなことしないでくださいよ…」
ミケ「ああ」
ヘニング・リーネ(本当かな…)
>>>>>>>>>>>>>>>>>
-
サシャ(さてさて…この辺は食料庫辺りか。窓が開いてたらラッキーなんだけど…)ガチャッ
サシャ(ま、開いてないのはわかってたこと。ミケ分隊長はまだ部屋の前にいると思うけど…)ピトッ
サシャ(足音…足音っと)
カツカツ・・・
カツ…
サシャ(ふむ。今食料庫の前には3人くらいいるのかな。1人はミケ分隊長で間違いないけど。ちょっと様子を見てから窓を開けに行くとするか…)ジッ
>>>>>>>>>>>>>>>>
ヘニング「じゃあ、部屋に戻ります」
リーネ「私も」
カツカツカツ…
サシャ(おっ。足音が二つ。離れていく。ちょっと音を追いかけるとしよう…)
カツカツカツ…
サシャ(うん。大分食料庫から離れて行く)
カツカツカツ…ピタッ
サシャ(止まった!)
-
リーネ「じゃあ、おやすみ。ヘニング」
ヘニング「ああ。おやすみ」
ガチャッ…バタン
サシャ(おっ!部屋に入った。ん?見回り終了ってことかな?)
カツカツカツ…
サシャ(こっちは…)
ガチャッ…バタン
サシャ(こっちも!!ということは。今、1階の廊下にいるのはミケ分隊長のみ!チャンス!!)
サシャ(えーっと。鍵を開けて置いた窓はっと…。この辺だったかな…)ソッ
ゲルガー「うう…幽霊じゃないだろうな。本当に…」キョロキョロ
サシャ(うげっ!見回りがいたっ!ナナバさんと、コッペパンの人がまだ見まわってるってことか。あっち行ってくれないかなー)
ゲルガー「んっ?」
サシャ(しまった!見つかった!)バッ
ゲルガー「…今。窓の外に何かいたよな?」
ゲルガー「…ゴクッ」
-
ゲルガー「お。おい。いるのか?」カツカツカツ…
ゲルガー(窓開けて確認するか…)
ガチャ
ゲルガー「ん?あれっ…なんで、すでに鍵開いてんだ!?さ、さっき何か影があった窓が…開いてるぞ!?な、なんでだ!?鍵は内側からしか開けれねぇのに…」ドキドキ
ギイッ
ゲルガー(ううっ。気色悪いっ)
ゲルガー「おいっ!そ、そこにいるのはわかってるぞ」キョロキョロ
サシャ(おっ!窓開けてくれた!)
ゲルガー「おい…」キョロキョロ
ゲルガー(おかしいな?気のせいだったか…?窓締めておくか)
ギィッ
サシャ(あっ!窓締められる!まずい!あの人こっちに呼び寄せて…なんとかしないと!とりあえず石を投げて)
ヒュンッ
カンッ
ゲルガー「!?」
-
ゲルガー(小石が飛んできた…。今、窓に当たったよな?)
ヒュンッ…カンッ
ゲルガー「うおっ!?」
ゲルガー(誰かいる!!)
ゲルガー「くぉらっ!このクソガキッ!」バッ
ゲルガー(捕まえてやるっ!)ダダッ
サシャ(よしっ!窓からこっちに出てきた!後は誘導して!罠にかけて、巻いた後に窓から戻る!)ダダッ
ゲルガー「待てえええ!!」ダダダッ
サシャ「ひいいいいい!!」ダダダッ
サシャ(えーと。えーと!草の!いっぱい生えてるとこ!木の生えてるとこ!!)ザザザッ
ゲルガー「おっ!クソッ!草だらけで走りにくい!」ガサガサッ
サシャ(罠!罠っ!ほいほいっ!)ゴソゴソ
ゲルガー(しゃがんで何かしてるな!?捕まえてやるぞ!)
ゲルガー「おらぁっ!」バッ
サシャ「わっ!」バッ
-
ゲルガー「くそっ!すばしこいっ!」
ガッ
ゲルガー「うおっ!!」
ドザッ
ゲルガー「な、なんだ!?足になにか引っかかって…。あ!なんだこりゃ!草を結んで輪にしてやがる!」
サシャ(ほれほれ。罠。罠)ゴソゴソ
ゲルガー「こんなもんっ…」グイグイ
ゲルガー「よし、抜けた!待てこの野郎!」バッ
サシャ「ほわああああ!!!」ダダダッ
ゲルガー「待てって…うおっ!」ガッ
ズザッ
ゲルガー「ああっ!またっ!!!」
ゲルガー「くっそ…単純な罠にまた引っかかるとは…」グイグイ
サシャ「……」ダダダッ
ゲルガー「ちっ!奥まで逃げて行ったか!!待て!!」バッ
-
サシャ(うう。まだ付いてきてる!このまま奥まで逃げてても時間の無駄…。あの木の裏に回ったら、木に登って、枝つたいに元来た方に戻るとしよう!)ダダダッ
ゲルガー「待て―!!」ダダダッ
サシャ(よし!この木!!)バッ
サシャ(登って!!ほいほい!!)サッサッサッ
ゲルガー「隠れても無駄だぞ!!!」バッ
ゲルガー「…あれ?」
サシャ(間に合った…。後は木をつたって帰るけど。この人にはもう少し向うに行っててもらおう。石…なるべく遠くへ落ちるように投げてっと)ヒュンッ
ガサガサッ
ゲルガー「んっ!?向うの方で音がしたな…。すげぇ脚速いやつだな…」ザッザッザ
サシャ(うんうん。そのまましばらく探してて貰って。私は帰って窓から戻るとしよう)シュタシュタッ
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-
ミケ「ん?」
ミケ(風?さっきまで匂いが流れてなかったが。風が起きたな。匂いが流れ出した)キョロキョロ
ミケ(窓が開いてるのか?様子を見に…いや。しかし。罠かもしれないな)スンスン
ナナバ「ミケ」スタスタ
ミケ「ナナバか。どうだ」
ナナバ「別にこっちはどうもしないけど。なにか変化とか…あった?」
ミケ「風が流れだした」
ナナバ「風?」
ミケ「匂いが、あっちからこっちに向かって流れている。もしかしたらどこか窓が開いたのかもしれない」
ナナバ「窓?私のほうは別に開いてなかったけど。それに今日は大して吹き込むほど風吹いてないよ」
ミケ「あっち側と、こっち側で窓が両方向開いたんだと思う。匂いは空気の動きに乗って流れるからな」
-
ナナバ「でも、窓開くったって。私らに気付かれない間にどうやって…。全然人の気配なんてなかったよ」
ミケ「そういうことができるやつだから厄介なんだ。相手は人間より敏感な感覚を持っている。俺たちの気配を感知して、隠密に動くことができる」
ナナバ「そんな奴が食料泥棒だっての?」
ミケ「ああ。そういうやつだからできたんだ」
ナナバ「…それってかなり危ない奴なんじゃないの?」
ミケ「危ないと言えば危ないが」
ナナバ「やっぱり、104期生が心配だ。リーネとヘニングは?」
ミケ「いや。104期生は大丈夫だ。犯人の検討はついてる」
ナナバ「え?どういうこと?」
ミケ「犯人はおそらく104期生のサシャ・ブラウスだ。ちょうどヘニングとリーネに部屋を回らせたとき、他のものは皆寝ていたがそいつだけ便所に立っていた。ヘニングがリーネが女子の部屋を移動してるのは見ていたが、その間外に出るものはいなかったそうだから、ずいぶん前から便所に出ていたことになるが、腹を壊してたのかもしれんが、サシャ・ブラウスには便所にいたのか確かでない時間があるってわけだ」
ナナバ「サシャ?あの子が?」
ミケ「ああ」
-
ナナバ「ああって…。検討がついてるならさっさと捕まえて確認して、反省させないと。部屋に行ってくる」
ミケ「いや。泳がせておいていい」
ナナバ「なんで」
ミケ「俺が追いつめて…捕まえるのはナナバでもゲルガーでもいいが。サシャ・ブラウスがなんらかの人間離れした勘の良さを持っているならそれが何か知る必要がある」
ナナバ「そんなの本人に聞けばいいだろ」
ミケ「俺の鼻を潜り抜けるほどのものなのか…」スンスン
ナナバ「…もしかして試したいの?」
ミケ「…いや。勘の良さだけを頼りにしてると痛い目を見るってことを教えてやるだけだ」
ナナバ「試したいんだろ?」
ミケ「・・・スンスン」
ナナバ「…はあ。ミケがしたいならすればいいけど。それでまた食料盗られたら面目丸つぶれってこと、しっかり頭に入れて置くように。あと、私が見つけたらその場ですぐ捕まえるからね。いい?」
ミケ「それはそれでしょうがないな」
-
ナナバ「…なら、さっさと捕まえてくるよ」カツカツカツ…
ミケ「…ナナバ」
ナナバ「何?」
ミケ「行くなら逆。風下だ。サシャ・ブラウスが、俺の鼻をわかってて窓を開けたとしたら。風下から現れる」
ナナバ「…こっちだね?」カツカツカツ…
ミケ「そうだ」
ミケ(ナナバが行ったから、これで終わるかもな。それか…切り抜けて俺のとこまでやって来るか?)
>>>>>>>>>>>>>>>>
-
ミケが圧勝過ぎて困る…
サシャ頑張れ
-
待ってる
-
>>1がこのスレを思い出してくれますように
-
サシャ(えーっと、風下。風下はこっち。さっき開けて出て行ったほうの窓から戻れば風下だ)スタタタタッ
サシャ(この辺食料庫かな。ちょっと物音聴いてみよう。窓が開いたからミケ分隊長が風上の方に向かって動いてたらいいんだけど)
サシャ「……」
シーン…ザッ、ザッ
サシャ(むっ。靴の音がする。窓は開いて匂いが流れてるはずなのにミケ分隊長は動いていない。風が起こったのに気付くほどは敏感じゃない?もしくは逆に警戒して動かない…困ったな)
サシャ(どうしよう?)ジーッ
キュポッ
サシャ(ん?)
ポト…ポト…ザッ
サシャ(何の音?何か瓶の蓋を開けるような音がしたけど。あと、滴るような音。水?お酒?)
ザシュッザシュッ
サシャ(…床を擦ってるのかな?飲み物を飲もうとして、床にこぼして拭いてるって感じだけど。お酒なら、鼻がちょっとバカになるかもしれない…)
-
サシャ(いやいや。警備中にお酒なんて飲むわけないし、微かな音だから違うものかも。まあ、でも別に大して問題なさそうなので…)
サシャ「とりあえず、ミケ分隊長を動かさないと!」
サシャ(掴まるのはごめんだけど、コッペパンの人に風上の窓から戻ってもらって、おとりにしよう!)
タタタタッ
>>>>>>>>>>>>>>>>>>
ゲルガー「っくそ!どこ行きやがった!?」
ウロウロ
サシャ(いた!さて、十分逃げ切れる距離をとりながら窓の近くまで戻れば。ドアは施錠してあるから窓が開いてたら窓から中に戻るはず!)
サシャ(石を投げてこっちに誘導しよう)
ヒュンッ
ゲルガー「!」
ガサッ
ゲルガー「んにゃろ!そっちか!」ザッ
-
サシャ(よし!食いついてきた!このまま建物まで逃げる!)
ダダダダダダッ
ゲルガー「待て!くっそ!すばしっこい奴だな!」
サシャ(うー!思ったより速い!でもここらで身を隠してやり過ごす!)ザッ
ゲルガー「うおらああああああああ!!」
ダダダダッ
サシャ(…行った)
ゲルガー「待てコラー!!!」
ゲルガー「…ん?あれっ?あのやろー、どこ行きやがった?」キョロキョロ
ゲルガー(もしかして中に戻ったか?いや。どっちにしろミケさんに報告した方がよさそうだな。とりあえず窓から中に戻るか)
ヒョイッ
サシャ(おっ。よしよし。窓から中に戻った…んっ!?)
ゲルガー(閉めとくか)
ギッ…ガチャッ
-
ギッ…ガチャッ
サシャ(ああっ!閉められた!風が…。と、とにかく逆側から早く戻らないと)ダッ
>>>>>>>>>>>>>>>>
ナナバ(風下ねぇ。別に変わった様子はなさそうだけど)スタスタ
サシャ「はあはあ…急がないと…」タッタッタ
サシャ「んっ!」ピタッ
サシャ(人の足音が!風下側の廊下を誰かが歩いてる!この音は…ミケ分隊長じゃないみたいだけど)
サシャ(窓を閉められたらまずい!)
ナナバ「ん?あっ。ミケの言うように窓が開いてるじゃないか…。さっきは閉まってたのに。いつの間に」
ギイッ…ギギギ
ナナバ「おっ」
ナナバ「なんだ。石と、木くずか?詰めてあるな。閉まらないように小細工するなんてなんてやつだ。取り除いて閉めよう」
ザリザリ…
-
サシャ(あああ。窓を閉めようとした音と。詰め物を除いてるのかな!?まずい。まずい…)
サシャ(よ、よし。この部屋の窓を叩いて、窓を閉められる前に部屋に誘導しよう!)
バンバン!
ナナバ「ん?」
サシャ(お、音が止んだ。こっちの音に注意が向いたかな?ドアを開けるまで油断できないから、もう一回叩いてっと)
バンバン
ナナバ(こっち部屋の窓を誰か叩いてる?)
カツカツカツ
サシャ(よし!動いた!後は鍵を開ける音したら、その隙に中に戻る!)ジリッ
ナナバ「……」
ガチャガチャ…ギイッ
ナナバ「誰かいるのか?」
サシャ(い、今だ!)バッ
-
サシャ(よし!部屋のドアで隠れてあそこから私は見えない!中に!早く中に戻らないと!)シュタッ
ナナバ「おい。返事しないか」
カツカツカツ
サシャ(お。奥まで入って行った。今のうちに、二階から反対側に回って、あっち側の窓を開けて風を作らないと!)
シュタタタタッ
>>>>>>>>>>>>>>
ミケ「……(ん?匂いが止まったな。風が止んだか)」
ゲルガー「おおーい。ミケさん!」タッタッタ
ミケ「ゲルガーか。どうした?」
ゲルガー「どうしたもこうしたもないですよ。見てくださいよ。この!ズボン。あんにゃろ、そこの林に逃げ込みやがって。追いかけたんですけどね。どうにもすばしっこくて見失っちまったんだが、まだここいらにいますよ」
ミケ「外か?」
ゲルガー「たぶん。あっちの開いてた窓は閉めましたからね。入って来れなくしてやりましたよ」
ミケ「だとしたらナナバの方だな。もう捕まえてるかもしれん」
ゲルガー「おっ。なら俺も加勢に行くかな」
-
ミケ「いや。分散してた方がいい。行くにしても留まらず巡回はしててくれ」
ゲルガー「わかりました。ちょっと様子見てきます」タッタッタ
ミケ(追いつめるまでも無かったか。しかし、風を作って匂いの流れを作ろうとしたということは、俺の能力には気づいてるようだな。なかなか生意気な)
ミケ(しかしこれで、俺と同じ匂いを頼りにしている線は消えたな。自らの首を絞めるような手はつかうまい。ならばおそらくは目か、耳か…)
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
サシャ(あっちの窓を開けに…ん。待てよ)
サシャ(もしナナバさんが出てきて、こっちの窓を閉めてしまったらまた風が止まってしまう)
サシャ(よし、この辺の窓少しずつ全部開けておこう)ソーッ
ギッ…
ギッ…
ギッ…
サシャ(うん。パッと見開いてる感じはしないし、少しは風ができる…と思う)
サシャ(この辺だけちょっとわかりやすく開けてっと)
サシャ(よし。早く、向こうに行かないと!!)タタタッ
>>>>>>>>>>>>>>>
-
ナナバ「…誰もいないな?おかしいな。この部屋の窓が鳴ったと思ったんだが」
ダッダッダ
ナナバ(んっ!?廊下を誰か走ってくる?)
ナナバ「…誰だっ!?」
ギイッ!
ゲルガー「うわっ!!ナナバ!」
ナナバ「なんだ。ゲルガーか。どうした?」
ゲルガー「ミケさんにこっちにサシャが来てるはずだって聞いたから、様子見に来たんだよ。どうだ。捕まえたか?」
ナナバ「いや。さっきこの窓を外から叩いてたみたいだから調べてたんだけど。たぶんサシャだ」
ゲルガー「外から?そういやさっき外にいたにはいたが」
ナナバ「なんだって?じゃあ、まだ外にいるかもしれないな。外を探してみるか」
ゲルガー「おいおい。そんなの窓閉めて閉め出したらいいんだよ。あっち側の窓は俺が閉めたから、こっちも閉めて入れてくれって泣いてくるまで外で反省させようぜ」
ナナバ「それもいいかもしれないが、さっさと捕まえてしまいたいな」
-
ゲルガー「あいつすばしっこいから追いかけても逃げられるぜ」
ナナバ「…もしかして外で追いかけて逃げられたのか?」ジーッ
ゲルガー「は?な、なんでだよ!」
ナナバ「ズボンと靴が土と草まみれじゃないか」
ゲルガー「…ま、まあな」
ナナバ「よほどすばしっこいんだね。どうしようか」
ゲルガー「閉め出し閉め出し」
ナナバ「うーん。いや、ちょっと外を見てくる」
ゲルガー「おいおい、やめとけって」
ナナバ「ゲルガー、もしかしたら窓からもう中に戻ってるかもしれない。中を見まわってくれ。私も外を確認したらすぐ戻るから」
ゲルガー「はあ。わかったよ。無駄だと思うけどなあ。まあ。捕まえたら呼んでくれよ。加勢に行くぜ」
ナナバ「ああ。頼む」
ゲルガー「窓から出るのか?」
-
ナナバ「ああ。ここだけ、鍵は閉めないでくれよ」
ゲルガー「了解」
ナナバ「…窓のこっち側に土は入ってないな。窓から戻った可能性は低いとみるが。とりあえず外を見てくる」
ザッ
ゲルガー「しょうがない。俺は見回りっと…」
ギイッ
ゲルガー(ん?こっちも開いてるじゃねぇか。こっちは閉めとくか)
ギッ
ゲルガー(お?あれ?こっちも少し開いてる?)
ギッ
ゲルガー「開いてるな。なんだ?この辺全部開いてるのか?確認しとくか…」
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
-
サシャ(急げいそげ!)タタタタッ
サシャ(コッペパンさんはこっちの廊下に戻ってると思うけど、足音が聞こえない)
サシャ(もしかして、すぐにミケ分隊長の方に報告に行ったのかも?だとしたらミケ分隊長が匂いに誘導される前に、動くかもしれない…)
サシャ(そうなると、窓がまだ開いてるであろう風下…!!)
サシャ(風を作れば、私が風下から入りたいがために開けたと思って風下に行くかも!)
サシャ(もし、私が今開けたという点から、風上に向かってくるようなことがあれば足音を聞いてなんとか巻くしかないけど…。そうなると、もうミケ分隊長の鼻と私の耳との追いかけっこになる…)
サシャ(でも私はミケ分隊長との距離感は大体掴んでるし、ミケ分隊長とナナバさん、ゲルガーさんの歩き方の違いも大体わかったから、有利なはず。こちらを探しに来てる3人相手に巻くのはちょっと骨が折れるけど、なんとかするしかない)
サシャ(とりあえず風を作ろう!できるだけたくさん、少しずつ窓開けて!こっちも!こっちも!こっちも!)
ギッ…
ギッ…
ギッ…
サシャ(そして!ここを大き目に開いて!これで風が流れるはず!)
ギイッ…!!
-
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
ミケ「!!」ピクッ
ミケ(む?風がまた起きたな。窓が開いたか?)
ミケ(風上側の窓はゲルガーが閉めたと言ってたな。風が起きたということは風下側の窓は開いていて、風上側を今…誰かが開けたということか。風下にはナナバとゲルガーがいる。だとしたら、今風上にいるのは…サシャ・ブラウス!)
ミケ(おそらく開けた窓から、外へ出て、風下側に回るか。しかしそれも難しいな。風下側には二人いるんだ。サシャブラウスが、俺が匂いの誘導に気づいているということを把握した上で風を作ったと予想して、俺が風下に動くのを待って風上から距離をとって近づこうとしているか。どちらかだろうが)
ミケ(まあ、ここから微動だにしなければ俺の勝ちではあるが。よくもまあ、ナナバとゲルガーの巡回の合間をスルスルとすり抜けて…)
ミケ(ここは敢えて風上のサシャ・ブラウスを追跡して何をしてこうも暗躍できるのか…。その勘の良さ、調べさせてもらおうか)
ミケ(風上へ行こう)
カツカツカツ…
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
-
サシャ(…我慢。今は我慢の時)ジーッ
サシャ(この陰なら姿はミケ分隊長側からは見えない。さて、足音を聞くかな)ピトッ
カツカツカツ…
サシャ(む!!こ、この重量感ある足音は!ミケ分隊長!!こっちに向かって来ている!)
サシャ(…距離を取りながら二階へ移動しよう)テッテッテ
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
ミケ(さて、窓が開けられたのはこの廊下だな)スンスン
ミケ(姿は見えないが、匂いは微かにしているな。しかしどうも距離を取っているようだな。俺が近づくと移動しているのか?)
ミケ「…窓は閉めておくか」
ギッ
ミケ「こっちには向かってこないだろうから、二階へ逃げたか。まあ、反対側に降りたらゲルガーとナナバがいるだろうからそこで捕まるかもな」
カツカツカツ…
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
-
サシャ(うう、足音がずっとついてくる。止まると捕まる、でも反対側にはコッペパンの人が…)
ダンダンダン
サシャ(!?だ、誰か階段を上って来る!!ま、まずい!たぶんコッペパンの人!!)
サシャ(ど、どうしよう!?)
サシャ(とりあえずここの部屋に一旦入って…!)
ギッ
サシャ(コッペパンの人が行きすぎたら、一気に走り抜けよう!)
サシャ(……早く通り過ぎて!ミケ分隊長が来たら終わる!!)
ジッ
コニー「…ん?あ…小便」ムクッ
サシャ「!!!」
コニー「…は?サシ…」
サシャ「しっ!!!」
コニー「あ?な、なんだよ。お前何してんだ?」
-
サシャ「コニー。これは夢です」
コニー「はあ?」
サシャ「夢ですから、私がここにいても不思議はありません」
コニー「そうか?」
サシャ「そうです。夢です、これは。夢…夢ですよ…コニー」
コニー「夢か。夢ならしゃあねぇな。俺、小便行きたいんだけどよ」
サシャ「あ、ダメですよ。お便所は一人で行っては。獣が出てますからね。そうだ、そこの廊下に先輩がいますから一緒に行ってもらったらどうでしょう」
コニー「おお、そうだな」
サシャ「私のことは言わないように。言ったらもう背が伸びませんよ」
コニー「えっ!わかった。怖ぇ夢だなーこれ」
ギッ
ゲルガー「うおっ!なんだ!?」
コニー「あ…ちょっと小便に」
ゲルガー「そうか。行って来い」
-
コニー「あの、一緒に来てもらっていいですか?」
ゲルガー「いや、一人で行け」
コニー「え?でも獣が出てるんですよね?」
ゲルガー「え?あ、ああ…それがだな…ううん。もう大丈夫だから、行け行け」
コニー「そうなんですか、じゃあ…」
ゲルガー「おお。終わったらさっさと戻れよ」タッタッタ
コニー「はあ」
サシャ(お、コニーに誘導してもらおうかと思ったけど、さっさと行ってしまった。まあ、これはこれで。コニーの気配に隠れて階段を降りるにはチャンスだ)
サシャ「さささっ!」シュバッ
ゲルガー(ん?なんか今後ろで気配が)クルッ
コニー「?」
ゲルガー(…ああ、こいつか。便所こっちだもんな)
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
-
サシャ(よし!!後はナナバさんをまけば…!)
チラッ
サシャ(ん?いない?まだ部屋にいるのかな?でも、足音も物音もしないし、何だか知らないけどチャンス!)
タタタタタッ
サシャ(一気に食料庫へ!!)
ザッザッザッ
サシャ(!?土を踏みしめる音?誰か外にいる?)
ナナバ「…外にはいないようだな」
ザッザッザ
サシャ(あっ!ナナバさん!あの影はナナバさん!外に私を探しに出てたんだ!まずい!戻ってくる!急げ!)
タタタタタタッ
ナナバ「よっと」
ズタンッ
ナナバ「ふう。靴が汚れちゃったな。でも外にはいなかった…」
-
ナナバ(こっちの廊下にもいないし、一体どこにいるんだ?)
>>>>>>>>>>>>>>>>>
サシャ(うう!間一髪廊下の曲がり角まで走り抜けられました。ミケ分隊長は後ろから追いかけて来てるし、このまま食料庫のカギをちょちょいと開けて!ちょいっと拝借して、後は適当にすり抜けながら部屋に戻ろう)
タタタタタッ
【食料庫】
サシャ(やったー!やっとこれた!!さ!鍵鍵!さっきちょっといじったから、次はさっと開けれ…)
ベトッ
サシャ「ギャッ」
サシャ「あ、油!?鍵に、油が」
プ〜ン
サシャ「うっ!こ、これはなんとも言えぬ匂い!こ、こんな匂い付いてたら、すぐ見つかってしまう!ど、どうしよう」ワタワタ
カツカツカツ…
ナナバ「おーい、ミケ…」
サシャ(わわわ!!ナナバさんが!!ミケ分隊長のところ…ここに近づいてる!鍵開けてる暇ない!)
サシャ「うぐぐぐ!」
-
サシャ(くそおおおおおおおおおおおお!!)ダッ
>>>>>>>>>>>>>>>>>
ミケ(うーん、追いつかないな。完全に俺の鼻の距離をつかんでるとしか思えない)
ミケ(目で俺の姿を見ながら逃げるにしては距離が遠すぎるし、目視しながら3人相手に巻くとは考えにくいな。なら、音か?足音、物音…)
ミケ(耳がいいのか?)
ゲルガー「あっ!ミケさん!?」
ミケ「ゲルガーか」
ゲルガー「こっちにサシャは来ていませんか?」
ミケ「いや。俺がそっちに追い立てて行ってたんだが」
ゲルガー「えっ!?いや。こっちには来ませんでしたよ!?」
ミケ「ん?いや。誰か来るな」スン…
ゲルガー「ああ。それは男子訓練兵ですよ。小便だって言って、えーっと便所に」
ミケ「そうか。よし、そいつにも協力してもらおう。それとゲルガーお前も…」
ゲルガー「え?」
コニー「うー、漏れる漏れる…」
-
【便所】
コニー「ふうー」ジョボボボボ
ミケ「ふ…」
コニー「うわ!びっくりした!えーっと、ミケ分隊長?」
ミケ「…そこの廊下でサシャ・ブラウスを見なかったか?」
コニー「サシャですか?(あ、言ったら背が伸びなくなるんだっけ?)」
コニー「見てません(見たのは部屋の中だしな。嘘は言ってない)」
ミケ「そうか。君は…」
コニー「コニー・スプリンガーです」
ミケ「そうか。コニー。君に頼みたいことがあるんだが。10分くらいのことなんだが」
コニー「なんですか?」
ミケ「誰か便所に入ろうとしたら『中にミケがいる』と言ってくれ」
コニー「はあ、わかりました」
ミケ「そいつが他の便所に行こうとしたら『どこに行っても便所にはミケがいる』と言ってくれたらいい」
コニー「?はあ…」
-
ミケ「よろしく頼む。じゃあ」
コニー「え?便所にいなくていいんですか?」
ミケ「ああ。いなくてもいることになってるからな」
コニー「??」
>>>>>>>>>>>>>>>>>
【食料庫】
カツカツカツ…
ナナバ「ミケ、もう普通に明日の朝サシャに話を…」
ナナバ「あれ?いないな。どこ行ったんだろう。しょうがない。戻ってくるまで私がここにいるか…」
ズリッ
ナナバ「んっ!?なんだ?この辺の床…油か?染みてるな。靴裏に付いたかもしれないな…」
>>>>>>>>>>>>>>>>>>
-
サシャ(ううう。完全に取れないかもしれないけど。手を洗って匂いを取らないと!ええっと、食堂は…食料庫の傍だからダメ。あとはお便所!!)
サシャ(近いのは男子便所。階段上ってすぐだから…)
コニー「…お。サシャ」
サシャ「あっ。コニー!?なんですか。お便所の入口で突っ立って」
コニー「いや。ミケ分隊長に頼まれてよ」
サシャ「えっ!?」
コニー「便所にはミケ分隊長がいるって、ここ使いたいやつに言ってくれって」
サシャ「ひぇ!?」ビクッ
コニー「なんだよ?」
サシャ「こ、この中にいるんですか?」
コニー「いや、この中っつーか、全部の便所にいるんだってよ」
サシャ(全部!?うう、はったり!はったり…!でも、何か、何か罠をはってるのかも。鍵に油を付けておく人だし。何かあってコニーにそう言わせてるはず。もしかしたら中に先輩たちが隠れてるのかも。うかつに踏み込むと危ない…)
サシャ(あっ!そういえば部屋にクリスタが花瓶に花を生けてた!あの水で…)
ダンッダンッダンッ
-
サシャ「!?」
サシャ(廊下の真ん中で…誰かが足を踏み鳴らしている…!この重さはミケ分隊長じゃないけど)
コニー「どうしたんだ?お前」
サシャ「いや、なんでも…。コニー。これも夢ですから、私のことを他言したら髪の毛がもじゃもじゃ生えるのが止まらなくなりますから!」タッ
コニー「えっ?これも夢なのか!?」
サシャ「夢です!!」
タタタタタッ
サシャ(あのタップ音はおそらくコッペパンの人。ああもう、部屋には戻れないし、食料庫周辺にはナナバさんがいる。ミケ分隊長がこっちの廊下にまた私を追いかけて戻ってきたら、お便所に隠れることもできないし、部屋に隠れてもきっとこの油のにおいを追跡してくる!射程距離に入ったら終わる!はやく匂いをとらないと!)
サシャ(はっ!井戸!!)
サシャ(外に井戸があった!こっちの廊下の窓から出て、外の井戸で洗って…窓は反対側もいっぱい開けてるから、また音を聞きながらどちらかから戻れば…まだいける!!!)
サシャ(活路が見えてきた!よし、とりあえず外に…)
バッ
サシャ(井戸…井戸!!)
タタタタタッ
-
ガサッ
サシャ「!?」ピタッ
サシャ(んっ!?)キョロキョロ
サシャ(何かいる?)
ガサガサガサッ
サシャ(いや、でもこれは人の出してる音じゃない…カエルかな?)
ピョコン…!
カエル「ゲコッ」
サシャ「…やっぱり。もう、びっくりさせないでくださいよ」
サササッ
サシャ「井戸到着!!さて、水を…」
ミケ「どれ、手伝ってやる。レバーを引いてやろうか」
ギイッ
サシャ「え…」
ジャボボボボボボ
-
ミケ「さ、出たぞ。油がべとつくだろう。手を洗ったらどうだ?」
サシャ「え…」
ミケ「ん?」
サシャ「な、なんで」
ミケ「ここに来ると思っていた」
サシャ「……」
ミケ「カエルに気を取られて気づくのが遅れたな。音をたてずに待ってるのはなかなか大変だったぞ」
サシャ「ええと…その」
ミケ「耳がいいんだな」
サシャ「…は、はあ」
ミケ「カエルが微かに動いた音に、反応していたからな。大したものだ」
サシャ「はは…いえ」
ミケ「どうした?手を洗わないのか」
サシャ「あ。いや…その」
ミケ「洗え。匂いがきつくてたまらん」
-
サシャ「は、はい」
ジャバジャバ
サシャ「…私、ここに誘導されてきたんですね…」
ミケ「そうだ」
サシャ「ぐすっ」
ミケ「鍵に触った時点で、匂いがつくからな。その油は整備用のものと食用のものと混ぜて作ったから普段は自然に匂ってこない匂いになっているから微かでもすぐわかる」
サシャ「鼻、良すぎです…」
ミケ「まあな。だが俺が捕まえるために罠をかけていなければ…単純に鼻と耳だけに頼った勝負ならわからなかったかもな」
サシャ「勝負?」
ミケ「…手を洗ったら部屋に戻れ。今回に懲りたらもう食料庫を狙おうなんて馬鹿な真似はするなよ」
サシャ「…はい」
ミケ「よし。じゃあ、戻るぞ」
サシャ「はい」
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ナナバ「…ったく。サシャ。君はもう調査兵団の兵士なんだ。勝手なことは許されないよ。大体食料は限りがあるんだから、盗ろうだなんて根本的にダメだろ」
サシャ「はい。すいませんでした」
ゲルガー「おとなしそうな顔してとんでもないじゃじゃ馬だな。よし、一発げんこつしといてやろうか!ハーッ」
サシャ「ひえっ!!」
ミケ「よせ。余計バカになる」
サシャ「えっ!?」
ミケ「いいか。サシャ。お前のその耳はこれから調査兵団の役に立つ」
サシャ「はい」
ミケ「自分の盗みのため以外に能力を使え。いいな」
サシャ「…はい」
ナナバ「うん。そうだね」
ゲルガー「はああ。鬼ごっこで疲れたな。ヘニングと交代してもらうわ。ナナバ先に行くぜ」
ナナバ「ああ」
ミケ「サシャ、お前も部屋に戻れ」
サシャ「はい」スゴスゴ
-
ナナバ「あ、サシャ。君に全く罰則なしってわけにも行かないからね。明日からしばらく空いてる時間は建物の掃除してもらうよ」
サシャ「えっ!?えええええ!!」
ナナバ「えーっじゃない。本来ならもっと重大な罰を受けるようなことだよ。反省してるの?」
サシャ「う…は、はい。します、掃除」
ナナバ「うん。ちゃんとしてるかはミケが見てるからね。さ、部屋へ戻って」
サシャ「はい」
サシャ(うう。今回は捕まったけど…まだ。まだチャンスは…)
ミケ「サシャ」
サシャ「はい?」クルッ
ミケ「……ボソボソッ」
サシャ「へっ!?」
ミケ「わかったか?」
サシャ「は…はい」スゴスゴ
-
ナナバ「ふう。バタバタしたなあ」
ミケ「ああ」
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カツカツカツ…
ナナバ「そういえば、さっき帰りがけのサシャに何か言った?ミケ」
ミケ「聞こえなかったか?」
ナナバ「全然」
ミケ「お前の匂いは覚えたからすぐわかるぞと言ってやった」
ナナバ「あの子聞こえてたの?」
ミケ「ああ。聞こえたみたいだったな」
ナナバ「匂い、覚えたりするんだ」
ミケ「まあ」
ナナバ「私のにおいもわかる?」
ミケ「わかる」
-
ナナバ「へえ」
ミケ「だが、まあ。食料庫の鍵に油を塗った時に床にも塗っておいたから、サシャの靴の裏に匂いが染みついてて体臭を嗅ぎ分けなくてもそれだけで目印になってる」
ナナバ「ああ、床に油…あれわざとだったんだ。ん?ってことは私の靴にも染みついてるんじゃないか」
ミケ「そうだな。プンプン匂ってる」
ナナバ「もう…別にいいけど」
ミケ「……」
ナナバ「それにしたって、ミケみたいな人間が他に…調査兵団の新兵にいようとはね」
ミケ「ああ」
ナナバ「サシャがさ…」
ナナバ「ミケの分隊に入ったら…いや、入らなくても。陣形のあっち側とこっち側に君らを配置したら、もしかしたらすごいことになるかもな」
ミケ「そうか?」
ナナバ「どこから何が来てもすぐわかるよ。きっと」
ミケ「うーん」
ナナバ「ゲルガーが『ミケさんとサシャとどっちが早く巨人に気付くか賭けようぜ!』なんて言ったりしてね」
ミケ「ナナバはどっちに賭ける?」
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ナナバ「そうだなあ。ミケ…」
ミケ「……」
ナナバ「かもしれないし、サシャかもね。いや、本当にちょっと楽しみだよ。君らが共闘することになるのが」
ミケ「そうだな」
ナナバ「ああ」
ミケ(サシャ・ブラウス…俺の同類か…)スンスン
ミケ「……フッ」
>>>>>終わり
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乙!
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