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ミカサ「この長い髪を切る頃には」2

1進撃の名無し:2014/09/16(火) 01:02:02 ID:lKgQbpZ20
*続編です。

ミカサ「この長い髪を切る頃には」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1388735631/l50

エレン「この長い髪を切る頃には」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1398969061/l50

エレン「この長い髪を切る頃には」2
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1406282036/l50

の続きになります。ミカサ視点で物語が進みます。


*現パロです。現在、エレンの髪がちょっとずつのびています。(ミカサよりちょい長め。小さいしっぽ有り)

*舞台は日本ですがキャラの名前は基本、カタカナのまま進めます。漢字の時もあるけど、細かいことは気にしない。

*実在の人物とかは名前やグループ名等をもじっています。時事ネタも有り。懐かしいネタもちらほら。

*原作のキャラ設定は結構、崩壊。パラレル物苦手な方はご注意。

*原作のキャラ性格も結構、崩壊。原作と比べて「誰だてめえ」と思った方はそっと閉じ推奨。

*このシリーズでは適宜、性的表現も挟みます。性的描写が苦手な方はご注意。

*レスに対するお返事レスは返せない事が多いかも。体力温存の為。無視している訳じゃないんで、OK?

*感想は毎回有難い。でも自分の妄想話を書くのはNG。読んでいる人が混乱するから。本編と混ぜるな危険。

*雑談は雑談スレでお願いします。雑談嫌いな読者の方もいらっしゃるからね。

*現在、ヒッチ→ジャン×サシャ←コニー、エルヴィン→(リヴァイ×ハンジ) オルオ×ペトラ ユミル×クリスタ←ライナー&アルミン←アニ(?)←ベルトルト イアン×リコ、マルコ×ミーナあたりもちらほら。というか、そのつもりで書いています。

*安価時以外のアイデア・オリジナルの設定等の提案は禁止させて頂きます。(エレン「この長い髪を切る頃には」の時にトラブルが発生した為です)

*その代わり、安価出した時は出来る限り(多少無茶振りでも)採用する方針でやっていますので、宜しくお願いします。


*モブキャラも多数出演。オリキャラ苦手な方もご注意。キャラ濃い目。

*そんな訳で、現在設定しているオリキャラをざっとご紹介。


マーガレット(2年生♀)→大道具リーダー。漫画描ける。腐ってる女子。皆のお姉さん的ポジ。

スカーレット(2年生♀)→大道具。立体造形専門。ロボットもいける。たまに腹黒。

ガーネット(2年生♀)→大道具兼衣装。コスプレ好き。ちょっと大人しめのオタク。

アーロン(2年生♂)→役者。元野球部。高校から演劇始める。

エーレン(2年生♂)→役者。元サッカー部。高校から演劇を始める。

カジカジ(1年生♂)→役者。外見はエレンに似ています。明るい男子。愛称は「カジ」。

キーヤン(1年生♂)→役者。ジャンよりイケメン。歌上手い。

マリーナ(1年生♀)→役者。少年の声が出せる。ナレーションうまい。ほんわか系女子。


マリア・レイス(旧姓)→リヴァイ先生の元彼女。セレブなオタク。現在、海外在住。4人の子持ち。

ヒロ→コニーの元彼女。小学館高校の女子生徒。同級生。


*原作のモブの名前が判明すれば……途中加入もあるかもです。

*外伝のキュクロとシャルルも出ています。二人は野球部投手とマネージャー。

*先生方の年齢設定が原作より(恐らく)若干高め設定になっています。

*リヴァイ先生(39歳)というおっさん設定に耐えられない方は御免なさい。

*加えてリヴァイ先生の潔癖症が病気レベル扱い(笑)になっているので、御免なさい。

*リヴァイ先生の性癖(?)も大分、斜めってる設定になっています。ご了承下さい。

*エルヴィン先生(43歳)も相当なオタク設定になっています。リヴァイより更に斜め方向に変態です。本当に御免なさい。

*ハンジ先生(36歳)が昔は美人だったよ設定です。ややモテキャラですが、リヴァイに比べれば蟻の触覚程度です。

*リヴァイ先生がモテ過ぎ設定です。気持ち悪いくらいモテキャラです。愛され過ぎて御免なさい。



*ラスト100レスは完成する迄、レス自重お願いします。レス足りないと書き手としてプレッシャー過ぎる。

*そんな訳で、現パロ(ミカサ視点編)を始めます。OK?

2進撃の名無し:2014/09/16(火) 01:04:31 ID:lKgQbpZ20
今更ですが

*このシリーズでは適宜、性的表現も挟みます。性的描写が苦手な方はご注意。

の一文を入れるのをすっかり忘れていました。申し訳ないorz
通常運転でエロ描写書いていたから。いや、本当に御免なさい。

前文が回を重ねるごとに増えていきますが、
前回とあまり変わってないです。
カップリングの矢印に変化が出て来たくらいかな。

では、続きはまたノシ

3進撃の名無し:2014/09/16(火) 20:44:32 ID:lKgQbpZ20




エレンに昔、「好きだ」と告げられた時、私は思わず、すぐこう答えてしまった。

ミカサ「え? ああ……そうね。私も好き」

でもそれに対してエレンは訂正して、

エレン「いや、じゃなくてな」

エレン「ミカサ、オレの言ってるのは、その……レナがタイ王子を好きになったような、いや、タイ王子がレナを好きになったような、好き、なんだが」

そう、改めて説明されてしまって、私は、

ミカサ「ああ……………ええ?!」

と、不覚にも時間差で驚いてしまったのを今でもはっきり覚えている。

ミカサ「それって、私の事を、女として、好き?」

エレン「ああ」

ミカサ「エッチ、したいの?」

エレン「あー今すぐじゃねえけど。出来るんだったら、してえかなって」

ミカサ「……………」

口が開いたまま閉じる事が出来なくなった。

エレンが、私とエッチな事をしたい意味で「好き」なのだと知って、その急転直下の展開に頭の中は酸欠状態になった。

ミカサ「………………気づいて、なかった」

あの頃の私は、鈍かったのだ。自分の気持ちの整理をするだけで精一杯だったから。

エレン「え……でも、あの時」

ミカサ「あの時?」

エレン「オレと一緒に旅館泊まった時、見てただろ? オレのここ」

エレンは自分の股間を指さした。ちょっと恥ずかしい。

ミカサ「いいえ」

エレン「え?」

ミカサ「というより、あの時の事は、かなり意識がフワフワしていて、細部が思い出せないの」

エレン「えっ………」

お酒の魔力を知った。あの時の事は、かなり「曖昧」な状態なのだった。

4進撃の名無し:2014/09/16(火) 20:45:14 ID:lKgQbpZ20
ミカサ「でも、ジャンと仲良くすると何故か、エレンがやきもち焼いてるのは気づいてた」

エレン「そっちは気づくのか! だったら分かっててもよさそうなもん……」

ミカサ「でもそれは、なんというか、お母さんが取られて寂しい……みたいな? そんな感情? に近いのかと思ってた」

家族愛の延長上の物だと思っていた。

もし兄弟が出来れば、そういう事もあるかもしれないと思っていたから。

エレン「…………」

ミカサ「……………」

エレン「あの……」

ミカサ「今日はもう疲れたので、明日考える」

エレン「そ、そうか……」

ミカサ「先に部屋に戻る。おやすみなさい」

エレン「お、おう………」

何だか微妙に気まずかった。あの時の、私達は。

部屋に戻ってからも考えた。考えすぎて頭が痛くなってきた。

だからついつい、キッチンに降りた。何だか無性に冷蔵庫が気になる。

賞味期限の切れた食材はないかどうかをチェックしたくなった。

そして材料を漁っているうちに、いつの間には調理を始めた自分がいた。

気が付いたら、冷蔵庫の中身を全部使い切っていた。

またやってしまった。

私はどうして、現実逃避をすると、こういう暴挙に出るんだろうか?

昔も似たような事をやらかして母に呆れられた事がある。

其の時は幸い、冷蔵庫の「中身」自体が大した量ではなかったので良かったけど。

今回は、酷い。4人暮らしなのだから冷蔵庫の中はそれなりに「ストック」があるからだ。

これだけの量の料理を一気に食べられる訳がない。四人家族なのに多すぎる。

5進撃の名無し:2014/09/16(火) 20:56:41 ID:lKgQbpZ20
エレンが下に降りて来て驚いていた。無理もない。

エレン「あのさ、ミカサ……」

ミカサ(ビクッ)

目線を合わせるのが気まずかった。

エレン「飯、ちょっと貰っていいか? 腹減ってるからさ」

ミカサ「どうぞ……」

エレンにも勧める。食べて貰えるのならそっちの方が助かる。

ミカサ「どうしよう。食べきれない量を作ってしまった」

これはもうクリスマスとかのホームパーティーより酷い状態だ。

そう思っていたら、エレンが意外な提案をしてくれた。

エレン「………今日、うちに皆を呼ぶか?」

ミカサ「え?」

エレン「人数呼んで食って貰うしかないだろ、これ」

と、言って「皿」を指さしている。

エレン「アルミンとかに後で連絡してみる。ミカサも少し腹に入れたらどうだ?」

ミカサ「う、うん……」

エレンの言う通りかもしれない。そう思いながら私はエレンの斜め前の席に座った。

この時の私はまだ、大分混乱していたように思う。

エレンの気持ちは嬉しいけれど。でも、私の「何が」そうさせたのか疑問だった。

ミカサ「え、エレンは……」

エレン「ん?」

ミカサ「エレンは、私の、何が、好き?」

エレン「え?」

ミカサ「私の、どこが、好き?」

まずはそこをはっきりさせたいと思った。それからでも遅くはないと思ったのだ。

エレンはすごく悩んでいた。目線がキョロキョロして、でも私の顔はじっと見つめたりする。

ミカサ「が、外見が好き? なの?」

もしかしてそうなのだろうか? そう思って聞いてみると、

エレン「そ、それは当然、それも含むけど…」

そうか。やはり今までの男性のアプローチと同じ事を言っている。

男の人は「顔」で選ぶ傾向にあるのは知っている。

私も「美人だから」という理由で過去に多々、告白された事はある。

それが本当なら、エレンの申し出は少し考える必要があるかもしれない。

ミカサ「それは本当?」

エレン「うぐ! 1番に決まってるだろ?!」

ミカサ「え?」

エレン「いや、何でもねえ。こっちの話だ。ええっと、何の話だっけ」

ミカサ「………もういい」

外見が1番のようだ。そうか。それだけなのか。

そう、思って少しだけ残念に思う自分が居たのに気づいた。

きっと当時の私はもっと「中身」を見て欲しかったのだと思う。

ご飯をもぐもぐかきこんで自分の部屋に戻った。

とりあえず、着替える。少々眠いけれど。皆が家にやってくるなら身支度が必要だ。

6進撃の名無し:2014/09/18(木) 21:57:57 ID:68QV4pXc0
私が階段を降りてリビングに向かうとエレン達が料理を運んでいた。

私も手伝おうとすると、

エレン「いいって。もうほとんど終わったし」

アルミン「うん、もう準備は終わったよ」

ミカサ「ごめんなさい…」

エレン「いいから、とにかく席につけ」

私はエレンの隣に座った。緊張する。でもエレンは普通の顔だった。

アルミン、エレンと私、ジャン、マルコ、コニー、サシャ、クリスタ、ユミル、ライナー、ベルトルト、アニ、でぐるっと料理を囲んで少し早い昼飯になった。

エレン「悪いな、皆。急に呼びつけて」

サシャ「全然いいですよーこういうのだったらいつでも駆けつけますからね!」

コニー「タダ飯食えるならどこでもいくぜ!」

確かにサシャとコニーが居ればこの料理も粗方片付けられるだろう。

皆ももぐもぐ食べてくれる。その様子をぼーっと眺めながら私も少しだけ手をつけた。

少し体が怠かった。何故だろう? 昨日の疲れが今頃出てきたのだろうか?

ジャン「なあ、エレン。ビデオ繋いでもいいか?」

エレン「ああ、昨日の試合か。いいぜ。ちょっと待て」

ビデオカメラをテレビに繋いで直接映像を流すようだ。

そう言えばコニーの野球の試合もあったんだった。コニーは真剣にテレビを観ている。

コニー「試合は早いうちに反省しねえとな!」

ライナーが渋い顔になって言った。

ライナー「最初はリードしていたんだがな……」

ミカサ「え? 先制点は講談が取ったの?」

私がそういうとコニーが説明してくれた。

7進撃の名無し:2014/09/18(木) 22:18:13 ID:68QV4pXc0
コニー「オレのヒットで2点取ったんだ。その後にキュクロのソロホームランもあった」

エレン「へーすげえなお前。甲子園で打ったのか」

コニー「おう! 甲子園で打つのが夢だったしな!」

コニー「1点差だったんだ。でも、その1点が取れなかったんだよなあ」

コニーが悔しそうにしていたけれど、私は甲子園に出ただけでも凄いと思う。

コニーはまだ1年生なのだから余計にそう思う。

ジャン「なあ、なんでキュクロを8回まで使わず、7回で降ろしたんだ?」

と、ジャンが問い詰める。

ジャン「前の試合の疲れが残っていたのか? それとも途中で怪我とか…」

コニー「ビンゴ。7回で爪が剥げちまって、続投出来なくなったんだ」

ジャン「げ! まじかよ、それ……爪のケアしてなかったのか?」

コニー「んにゃ。厳密にしていたけど、それでも耐え切れない程、爪に負荷がかかってさ。あのストレートだろ? 指先に結構力入れていたみたいだし、うっかりやっちまったんだって」

アルミン「うひい……それはきつかったね」

アルミンがまるで自分の事のように青ざめる。

ミカサ「爪が割れる事もあるのね」

それはとても痛そうだと思った。するとジャンが詳しい解説をしてくれた。

ジャン「あるぜ。女子がよくやってるだろ? あんな感じで投手は爪もちゃんと手入れするけど、それでも割れる時は割れる。特に速球派は気をつけないとやりやすいからな」

コニー「でも負けたのはキュクロのせいじゃねえよ」

コニーが白玉を片付けながら言った。

コニー「オレの……いや、オレ達の力が足りなかったから負けたんだ。特に打力がなかったせいだ」

ジャン「そうか? 結構、ヒットは打ってるだろ?」

コニー「ヒットは打っても、ホームラン性の当たりが少ないんだよ。見ろよ。カプコン高校の打線。ファールも多いけど、飛距離が全然違うだろ」

コニー「うちには所謂、ホームランバッターが少ないんだ。悔しいけど、一打で流れが変わる時もある。オレにはそれが出来ねえけど」

コニー「なあ、ジャン。何度もしつけえって思うかもしれんけどさ、野球部に入らねえか?」

ジャン「はあ?」

と、コニーがジャンを勧誘した。コニーにとってはジャンは欲しい「人材」のようだ。

コニー「オレが見た限り、お前、ホームランバッター向きの、いいセンス持ってる。オレには出来ない事をジャンなら出来ると思うんだよ!」

ジャン「……………」

ジャンが何故か私の方を見た後、コニーの方に視線を動かした。

コニー「途中加入でも全然いい! 次は秋の大会があるし、新チームが始まるし、そのタイミングなら、ジャンも………」

マルコ「コニー、ダメだよ。本人に無理強いしちゃ」

コニー「でもよお! ジャン、野球好きなんだろ?!」

確かに。ジャンは野球が好きなように思える。私から見ても。

コニー「オレ、嬉しかったんだぜ? 甲子園、来られないのにビデオ持たせて、ライナーに撮らせたって話を聞いてさ。マルコに頼まれたって聞いて、マルコはジャンに見せたいからって、今日だって、すげえビデオの試合真剣に見てるし、ジャン、絶対、野球大好きだろ?」

でもジャンはとても困っているように見えた。

ジャン「そ、そりゃ好きだけど、実際やるかは別だろ。オレ、頭を剃りたくねえし」

コニー「そこを何とか! 頼むよジャン!」

ジャンが美味しくない物を食べたような顔で断った。

ジャン「無理だ。大体、演劇部だって九州大会に行くんだ。そっちの方が大事なんだよ。今更辞めて、野球部に合流出来るかよ」

コニー「そ、そうなんか……」

コニーががっくり肩を落とす。可哀想にも思えたけど。

私には何も言えなかった。ジャンの人生だからだ。

8進撃の名無し:2014/09/18(木) 22:25:30 ID:MJklCjgk0
クリスタ「あのね、コニー。そのことで、私も相談したいと思ってたんだけど」

コニー「え?」

其の時、クリスタが唐突に話を切り出した。

どうしたんだろうか? クリスタの顔がちょっと赤い。

クリスタ「その…………………」

ユミルが「言っていい」と急かしている。なんだろう?

クリスタ「あのね。私、弓道部と野球部のマネージャー、掛け持ちしたいんだけど、出来るかな?」

コニー「へ?」

クリスタ「掛け持ち禁止なら、弓道部を辞める。急で悪いんだけど、野球部のマネージャーをやらせて欲しいの」

と急に言い出したものだからライナーがお茶をぶーっと吹き出してしまった。

コニー「え? 何で? 何で急に?」

ユミル「生で野球を観ちまった、からかな」

と、ユミルが一緒になって言った。

ユミル「あの熱気を味わってしまったせいで、野球観戦の虜になっちまったってところかな」

クリスタ「う、うん……まあ、ストレートに言ってしまえばそうね」

と、二人が苦笑して言い合う。

ユミル「私はクリスタと一緒に行動するから、私もついでにマネージャーやるぜ」

コニー「えー……」

何故かユミルの申し出を嫌そうな顔で対応するコニーだった。失礼だと思う。

ユミル「あ? 何か文句あるか?」

コニー「クリスタだけで十分だけどなー」

ユミル「他校の彼女にその言葉、ちくるぞ」

コニー「ちょ! 何でユミルがオレの彼女の事、知ってんだよ!」

サシャ「え? 言ったらダメでしたか?」

コニー「サシャのアホ!」

この場合は別にサシャは悪くないと思う。コニーが悪い。

コニー「そりゃマネージャー増えるのは大歓迎だけど、掛け持ちすんの?」

クリスタ「ダメなら辞めるよ。その辺は確認して貰えるかな?」

コニー「分かった。ピクシス監督に聞いてみる。まあ、監督は女子には甘いから大丈夫だとは思うけどな」

と、そっちの件は一件落着した様だ。

9進撃の名無し:2014/09/18(木) 22:26:16 ID:68QV4pXc0
ライナー「……………」

ライナーの顔色がとても悪いように思えた。

ライナー「あの……」

そしてライナーもコニーに質問したのだ。

ライナー「コニー、男子の方は掛け持ち出来るのか?」

コニー「ええ? 野球部員はさすがに掛け持ちは無理じゃねえ? え? もしかして、ライナー、野球部くんの?!」

ライナー「か、掛け持ち出来るのであれば……」

コニー「ええー……多分、無理じゃねえかな。マネージャーならともかく、部員はちょっとなあ」

ライナー「ではオレもマネージャーで……」

コニー「何、馬鹿な事言ってんだよ! さすがのオレでもキレるぞライナー!」

コニーが怒っていた。理不尽な怒りを込めているようだ。

コニー「野球部に来いよ! ライナーならすぐレギュラー取れるし!」

ライナー「ううう、しかし、いいのだろうか」

ベルトルト「しょうがないよ。ライナー」

ユミル「ライナー、野球好きなのか?」

クリスタ「野球やってるライナーも見てみたいかも」

ライナー「コニー、明日早速、入部届けを用意してくれ(キリッ)」

気が変わったようだ。変わり身の早さに少々驚いたが、本人がそれで良いなら良しとしよう。

マルコ「あ、あのさ……」

其の時、今度はマルコの方が挙手して発言した。

マルコ「僕も実は、部活に入ろうかなって、アルミンとも話してて」

エレン「え? アルミンと?」

アルミン「う、うん……実は、アニとマルコと僕は、演劇部の方に途中加入したいなあって、話していて」

え? そうなの? こっちも途中加入の部員が増えるの?

エレン「でもいいのか? アルミン。アルミンは特待生だし、マルコだって…」

アルミン「うん。成績の方は多分、問題ないよ。落とさずにやっていけると思う。ただ僕の場合はおじいちゃんの件もあるから、その件でイェーガー先生に相談したいんだ。近いうちに時間取れるようにお願いしてもいいかな?」

エレン「ああ、それはもちろん、大丈夫だけど……」

ジャンの方を見ると、物凄く嬉しそうにしていた。

マルコと一緒に活動できるのが余程嬉しいようだ。

場所は変わっても、また再びバッテリーを組めるのであればこれ程良い事はない。

10進撃の名無し:2014/09/18(木) 23:28:08 ID:68QV4pXc0
ジャン「マルコ、お前、本当にいいのか?」

マルコ「野球部はさすがに無理だけど、文化系なら、成績落とさずに何とかなるかなって思って」

ジャン「もしかして、裏方か?」

マルコ「ああ、バレた? うん。あの舞台のセットとか、道具とか。凄く格好良かったから、僕もああいうの、作れたらなって思ったんだ」

照れくさそうに答えるマルコにジャンは「そっか…」と微笑み返していた。

なるほど。そういう「繋がり」もまたいいのかもしれない。

表と裏で繋がれる。2人はきっとそういう「縁」があるのかもしれない。

ミカサ「アニは、何をしたいの? 役者?」

アニ「いや、私は衣装の方がやりたいかなって。あのドレス、凄く綺麗だったから……」

おおお……ドレスを作りたいのか。だとしたら、いいかも。

人が集まるのは素直に嬉しい。人が増えればそれだけやれる事も増えるからだ。

エレン「やった! アルミンは手先が器用だし、大道具のセット、作るのとか得意そうだしな!」

アルミン「図面作るのとか大好きだよ。今度、大道具さん達と話させてね」

エレン「ああ、勿論だぜ!」

と、わいわい皆で盛り上がっていたら………

サシャ「いいですねー皆青春してますねー」

と、一人だけサシャが寂しそうに麺類を食いながらぼそっと言った。

クリスタ「サシャは部活やらないの?」

サシャ「私ですか? 私はアルバイトをしているので、難しいですね」

と、一人だけ眉をひそめるサシャだった。

サシャ「コンビニ(早朝)とカフェ(土日)と本屋(深夜)とスーパー(深夜)4つ掛け持ちしているんで、さすがに部活をする余裕はないです」

エレン「ええええ? 何でそこまで働いているんだ?」

もしかしておうちが貧乏なのだろうか?

サシャ「えっと、食費代が足りないから、ですかね。タダで飯が食える部があれば、そこに入りますけど」

サシャの胃袋が訴えている。なるほど。

11進撃の名無し:2014/09/18(木) 23:29:04 ID:68QV4pXc0
サシャ「あ、勘違いしないで下さいね。うちは特別、貧乏って訳じゃないんで。ただ、お小遣いの範囲では食費が足りないだけなんです」

話しながらもかきこむ手は止めない。

サシャ「もっと短時間でてっとり早く稼げる方法があればいいんですが……」

と、食べ終えてから「げほーっ」とゲップをするサシャにユミルが「そうだなー」と頭を悩ませる。

ユミル「確かにサシャの食いっぷりだと毎月、金かかるだろうな」

ジャン「そんだけ食ってよく太らないな」

サシャ「私、食べても太らない体質なんで」

クリスタ(じとー)

ユミル「クリスタ、無い物ねだりするな」

クリスタ「な、なんのこと?」

惚けるクリスタがちょっとだけ汗を掻いていた。

アルミン「あれ? でも待って、サシャ」

サシャ「何ですか?」

アルミン「サシャってまだ、18歳未満だよね? それだけのバイトやってるってことは、深夜もやってる?」

サシャ「やってますよ」

アルミン「確か深夜は18歳未満だとバイトは出来ない筈じゃ……」

サシャ「ぎ、ぎくー! ええっと、オフレコでお願いします」

ジャン「は? 年齢を誤魔化してやってるのか?! 悪い奴だな」

サシャ「し、仕方ないじゃないですか! 18歳未満だと、雇ってくれるところ少ないんですから!」

でも危ない橋を渡っているのは良くないと思う。

アニ「ねえ、もっと堅実で金の稼げる仕事をした方がいいんじゃないの?」

と、アニもさすがに言い出した。

アニ「コンビニとかって、賃金が安いよね。そういうところより、もっといいところ探した方がいいと思うけど」

サシャ「いい職場があればすぐにでも鞍替えしますよー」

ジャン「んー…」

其の時、ジャンが微妙な顔になっていた。

心配しているのかもしれない。女の子が夜遅く出歩くのは危ないからだ。

12進撃の名無し:2014/09/21(日) 21:21:24 ID:oRXUsdFE0
アニ「誰か、いい職場知らない?」

エレン「うーん、求人情報か……」

ジャン「生憎、分からんな」

ライナー「すまん。オレも分からない」

ミカサ「私も分からない」

アルミン「パソコンで調べる事は出来るけど、やってみようか?」

サシャ「いえ、それは既にやってます。その上で選んだのがその四つなんです。他は賃金が多くても、融通がきかないところも多いので」

なるほど。そういう事なら仕方がない。

マルコ「家庭教師とかは賃金がいいってよく聞くけどね」

ジャン「ははは! サシャに家庭教師は絶対無理だろ!」

サシャ「ぐさああ! 失礼ですね! 確かにその通りですけど!」

サシャは確かに人に教えるのはあまり向いていないように思える。

クリスタ「読者モデルとかは? 採用されれば、結構いい金額貰えるけど」

サシャ「え? いくらくらいですか?」

クリスタ「私は昔、トータルで×××××円くらい貰ったかな。小学生の頃、一回だけ、雑誌の編集者にスカウトされて、やったことあるけど」

ライナー「なにいいい! そ、その雑誌は、今も残っているのか?!」

クリスタ「家にあるけど……やだ、ライナー。見せないよ?」

ライナー「そ、そこを何とか……」

其の時、ユミルがサシャに言った。

ユミル「確かにサシャは顔は悪くないし、モデルとして採用されれば、案外いけるんじゃないか?」

サシャ「どどどど、どうすれば採用されるんですかね?!」

サシャがやる気満々だ。本当に応募するつもりのようだ

13進撃の名無し:2014/09/21(日) 21:26:15 ID:oRXUsdFE0
クリスタ「自分で応募する場合と、スカウトされる場合の2通りあるらしいよ。サシャ、応募してみる?」

サシャ「はい! どこの雑誌に送ればいいですかね?!」

アニ「だったら少しメイクもした方がいいね。ちょっとおいで」

と、アニがサシャを捕獲して何やらごにょごにょ言っている。

アニ「ミカサ、洗面所借りてもいいかい?」

ミカサ「エレン……」

エレン「別にいいぞ」

アニ「じゃあちょっと借りるね」

アニがちょっとだけ嬉しそうだった。メイクをのせるのが楽しいようだ。

気持ちは分からなくもない。人の顔を弄れるのは私も好きだ。

そして数十分後…………

サシャがイメチェンして皆の前に顔を見せた瞬間………

ジャン(ガタッ)

コニー(ガタガタ)

ライナー「おおおお!」

ベルトルト「すごい、イメージ変わったね」

マルコ「可愛い……」

アルミン「可愛いよ! サシャ、すごく可愛い!」

エレン「ああ、可愛いな」

エレンも、頷いた。

その瞬間、私は何故か「もやっ」とする感情を覚えて顔が強張った。

確かに、サシャは可愛かった。普段と全然違った。けれど。

私の事を好きだと言ったのに、他の女に対してしれっと「可愛い」と言うのはどうなんだろうか?

………と、思う自分が何だか嫌で、俯いてしまったのだ。

サシャ「そ、そうですかね……自分では良く分かりませんが」

アニ「鏡見る?」

サシャ「お願いします」

サシャ「おおおお! 何だか違う人みたいですね!」

サシャが興奮してはしゃいでいた。私も初めて「化粧」をした時は似たような感じになったので気持ちは分かるけど。

でも、何故か「もやもや」が取れなくなっていた。唇が硬くなるのを時分でも感じる。

14進撃の名無し:2014/09/21(日) 21:29:58 ID:oRXUsdFE0
>>13
訂正
でも、何故か「もやもや」が取れなくなっていた。唇が硬くなるのを自分でも感じる。

時分→自分
変換ミスです。

15進撃の名無し:2014/09/21(日) 21:42:29 ID:oRXUsdFE0
エレンがサシャを注目している様子を見たくない自分がいる。

これって、もしかして、もしかして。

やっぱり、そういう事なのだろうか?

クリスタ「ついでだから撮影もしちゃう?」

ユミル「そうだな。スマホでもいいのかな?」

クリスタ「いいんじゃない? じゃあサシャ、写すよー」

パシャ☆ パシャ☆ パシャ☆

クリスタ「ちょっとサシャ! 変顔しないで!」

サシャ「は! す、すみません。つい!」

パシャ☆ パシャ☆ パシャ☆

ユミル「ダメだな。表情がダメだ。面白過ぎる。真面目な写真が苦手なのか?」

サシャ「ついつい、照れくさくて………」

ユミル「真面目な空気が苦手なのか。これじゃモデルは無理だな……」

サシャ「そこを何とか! 真面目に映る方法を教えてください!」

皆がわいわいやっている様子を遠目に見ている自分がいる。

サシャが元気なのはいつもの事なのに。元気なサシャを見てイライラする自分がいる。

こんな感情、最低だ。サシャはクラスメイトなのに。

アルミン「履歴書の証明写真の時はどうやって撮ったの?」

サシャ「ええっと、入学の時の集合写真を拡大して焼きまわしました」

アルミン「えええ? それって有りなの?!」

サシャ「幸い、背景に誰もいなかったですし、家に写真を加工するソフトがあるので、背景は一色にして消して、家でプリントアウトしました」

エレン「と言う事は、誰かと一緒に映る時は普通でいられるのか?」

サシャ「? 多分、そうですかね」

エレン「じゃあ誰かと一緒に映ればいいんじゃないか?」

クリスタ「ダメだよ。それだと書類審査で通っても、仕事の時に使えないよ」

エレン「ああ、そうか……」

エレンがサシャを気にかけている。そんな風に積極的に話しかけないで欲しい。

でも、言えなかった。私にはそんな事を言う「権利」なんてない。

それにそんな事を言ったら、折角の和やかな空気が濁ってしまう。

皆、私の料理を処分する為にわざわざ集まってくれたのに。そんな事は言えなかった。

16進撃の名無し:2014/09/21(日) 21:46:05 ID:oRXUsdFE0
サシャ「わ、分かりました。では真面目に一人でも写真に写れるように特訓します! 慣れれば何とかなるかもしれませんし」

ユミル「そうだな。習うより慣れろかもしれないな。じゃあ、今日はサシャの撮影会の練習だ。皆、一斉に撮ってみるぞ」

サシャ「えええ?! 全員で行くんですか? それはさすがに恥ずかしいですよ…」

ユミル「ダメだ。練習するんだろ? ほら、携帯スマホ持ってる奴は構えろ!」

と、何故か皆でサシャの写真映りの練習をする事になった。

でも私はこっそり拒否した。皆が夢中になって撮っている様子を眺めているだけにした。

サシャ「うー…ど、どうですかね?」

クリスタ「何だろ。実物より写真の方が可愛くない」

サシャ「うが!」

ユミル「そうだな。実物の方が倍は可愛い。写真映りが悪い方なのかな」

サシャ「ひええ」

アニ「確かに。実物はこんなに可愛いのに」

サシャ「ううう……」

ジャン「やっぱり、芋女にはモデルは無理だな」

コニー「ああ、諦めろ、サシャ」

サシャ「とほほほ……いい案だと思ったんですが」

ライナー「まあまあそう落ち込むな。今すぐ答えが出なくてもいいだろ」

ベルトルト「そうだよ。新しい職場なら、もしかしたら後で見つかるかもしれないし」

サシャ「いい情報があったら、すぐ教えて下さいね……」

そしてサシャの件はそこで落ち着いて残りの料理を食べ終えたら皆でエレンの部屋でテレビゲームをしたりして遊んだ。

夕方になってどっと疲れが出てきた。こんなに気疲れしたのは久々かもしれない。

17進撃の名無し:2014/09/21(日) 21:52:36 ID:oRXUsdFE0
家の中に戻るとエレンと目が合った。

つい、逸らしてしまった。気まずさが残ってしまったのだ。

自分の携帯電話が鳴った。母からだった。

パートの帰りにスーパーに寄って帰るそうだ。

ミカサ「………分かった。気を付けてね。お母さん」

電話を切ってからエレンに言った。

ミカサ「お母さん、パートの帰りに晩御飯の材料を買ってから帰るから少し遅くなるって」

エレン「そっか。じゃあ買い物はおばさんに任せていいんだな」

ミカサ「うん……皆のお皿、片付けよう」

エレン「オレもやるよ。量が多いし」

ミカサ「…………エレンは皿を拭くだけでいい」

エレン「分かった」

キッチンに食べ終わった皿を運んで二人で後片付けをする事にした。

ミカサ「…………」

エレン「…………」

先程のサシャの件もあって、少々自分でもイライラしていた。

そしてその原因に薄々気づいている自分にも気づいて余計に凹んだ。

でも、この感情をどうすればいいのか分からなかった。

初めての感情に振り回されて、自分で自分の行動を決めかねていたのだ。

カチャカチャ……

カチャカチャ……

カチャカチャ……

作業に集中した。今は、余り余計な事を考えたくなかった。

なのに………

視界が急に歪んで、眩暈がした。

つる………ガチャン!

しまった。皿を落としてしまった。集中力が欠けていたようだ。

エレン「おい、大丈夫か?」

エレンの声が頭に響いた。おかしい。

何かがおかしい。そう気づいた直後、私は全身の力が抜けていくのを感じた。

支えきれない。自分の体重を。それに気づいて必死に力を入れようとしたけれどダメだった。

18進撃の名無し:2014/09/21(日) 22:01:00 ID:oRXUsdFE0
エレン「おい、ミカサ?!」

エレンに触れられてちょっとびくっとしてしまった。

でも、エレンの顔色が変わった。

ミカサ「だ、大丈夫。ちょっと眩暈がしただけ……」

エレン「大丈夫じゃねえだろ!」

大丈夫。私は大丈夫…。

ミカサ「皿、片付けないと……」

エレン「!」

でも、一度しゃがんでしまうとそれ以上、立ち上がれなくなってしまった。

エレンは私の異変に気づいてすぐさまリビングのソファまで運んでくれた。

熱を測ったら、38.1度もあった。

熱が出ていたようだった。通りで体の感じが変だと思った。

でも皿を割ってしまったから、先に片付けないと危ない。

ミカサ「皿を片付け……」

エレン「オレがやっとくから! お前は寝てろ!」

ミカサ「………ごめんなさい」

エレン「謝るんじゃねえ! つか、部屋に戻れるか? 無理だよな。今日は下で寝るか? 仏間に布団敷くから、そこで寝るか?」

ミカサ「いい。部屋に戻るくらいなら出来る……」

戻らないと。そう思って立ち上がろうとしたのに。

ミカサ「あれ? 力が入らない……」

エレン「熱出りゃ皆、そうなる! つか、動くな!」

ミカサ「…………これが、熱?」

とにかく力が入らなかった。酒に酔った時とは全然違う。

気持ち悪さも出てきた。天井が揺らぐ。視界が定まらない。

エレン「そうだよ! 過労だな。寝れば少しは落ち着く筈だ。ソファで寝るなら、腹にかけるもん持ってくるから!」

エレンがお腹に一枚、かけてくれた。

ミカサ「お酒を飲んだ時と全然、違う……」

エレン「そりゃそうだろ。多分」

エレンの心配そうな顔が見えた。眉間の皺がはっきり見える。

御免なさい。エレン。手間を取らせてしまった。

ミカサ「……………」

謝りたかったけど、口を動かすのも億劫に感じたから一度、両目を閉じる。

少しの間、目を閉じると気持ち悪さが少しだけ抜けた。

目をもう一度開けて、私はエレンに問おうとした。

ミカサ「エレンは………」

エレン「ミカサ、今はしゃべるな」

でも先手を取られて言わせて貰えなかった。

19進撃の名無し:2014/09/21(日) 22:13:00 ID:oRXUsdFE0
ミカサ「……………」

エレンは今まで私を「好きだ」と言った男性と大差ないのかと思っていたけど。

こうやって、親身に心配してくれる様子を見ると、「外見」だけでそう思われた男とは違うような気がしてきた。

いや、それより何より今までとは違う点が一つだけ、ある。

それは、私自身の「気持ち」の方がエレンに向かっている点だ。

ニファという先輩の件、そして今回のサシャの件。

2回も似たような感情に悩まされたら、流石に認めざる負えないと思った。

今は、やめよう。今は口を動かすのもきついから、後で言おう。

そう思いなおして、私は口を閉ざしたのだった。

そしてゆっくりリラックスしている内に眠気が襲ってきて、仮眠を取った。

次に目を覚ましたら、おじさんがすぐ傍に居て、点滴の用意をして待っていたようだった。

針を刺されてしまった。う……ちょっと痛い。

でもすぐ痛みは無くなって、液が体に流れてくる感覚が来た。

ちょっと気持ち悪いけど。すぐに慣れた。じっとしておく。

手当てが済んでからおじさんが渋い顔で私に言った。

グリシャ「昨日と今日、暑い環境で労働をしたせいで、一時的に自律神経が狂ったんだろう。夏場は多いんだ。料理中に熱中症になる事も決して珍しくはないんだよ」

ミカサ「で、でも…キッチンはちゃんとエアコンもつけていたのに。暑いって感覚はなかったのに…」

グリシャ「それはいけない。夏場は「暑い」って感覚があるのが普通だ。それがないって事は、危険信号を出している証拠だよ」

ミカサ「エアコンをつけていても、そうなるの?」

グリシャ「ああ。調理中は感覚が鈍くなる事も多いからね。ミカサ、罰として、8月一杯迄は料理禁止だよ」

ミカサ「ガーン…」

そ、そんな……。

グリシャ「うん、そんな顔をしてもダメなものはダメ。エレン、8月中はミカサを見張っているように。いいね」

エレン「分かった」

エレンにまで見張られる事になってしまった。

グリシャ「ミカサ、熱中症を甘く見てはいけない。今回は軽度で済んだけど、酷い時は命を落とす場合もあるんだよ。夏場の体調管理はとても大切だ。ましてや部活で疲労しているところに、そんな過労をしては、倒れるのも当たり前だよ。どうしてそんな事をしたんだい?」

ミカサ「…………」

おじさんには言えなかった。こんな話をここでしても怒られるだけのような気がする。

ミカサの母「ごめんなさいあなた。ミカサは悩み事があると、料理に没頭してしまう悪い癖あるのよ」

グリシャ「そうなのかい? それは初耳だ」

ミカサの母「でも、人には言わない……言えない悩みなのよね。そうでしょ? ミカサ」

ミカサ「………うん」

本当に御免なさい。

グリシャ「ふむ…。悩みがあるせいで、そういう行動をとった訳だね。だとしたら、悩みが解決しない事には、また、同じことを繰り返すかもしれないね」

ミカサ「………」

グリシャ「自分でどうしても解決したいんだね。分かった。詳しい事は聞かないよ。でも、もう2度と、同じ過ちをしてはいけないよ。分かったかい? ミカサ」

ミカサ「分かった」

そして私はその日の夜、ゆっくりリビングのソファでそのまま休ませて貰える事になった。

20進撃の名無し:2014/09/23(火) 15:11:23 ID:dJbLYo3c0
次の日になると体調もすっかり戻り、いつもの調子が出て来た。

演劇の舞台の裏方の疲れと料理の疲れが重なったのもあるけれど。

一晩経ったら頭の中が綺麗になっている自分に気づいた。

でも午後からエレンと一緒に部活に行く最中、エレンは私の予想を裏切る言葉を言い放つ。

エレン「悪かった」

ミカサ「え?」

エレン「この間の事、悪かった。突然、あんな事、言っちまって…」

何を謝っているのか、よく理解出来なかった。

エレン「忘れてくれ。オレの言った事。ミカサの迷惑になるんなら……」

何故? 迷惑だなんてこれっぽちも思っていない。

ミカサ「迷惑なんて、言ってない……」

エレン「ん? でも、ミカサ……」

ミカサ「悩んだのはエレンの事ではない……ので、エレンが気にする事ではない」

エレン「え?」

エレンに告白された直後に思ったのは、嬉しい反面、本当に「いいのだろうか」という点。

それに加えて、連れ子同士の場合、そういう関係になっていいのかどうかという点。

いや、そもそもエレンは私の「顔」に惚れているだけなのでは? という懸念の点。

でもそれは、もしかしたら違うかもしれない。と思い直したのでそれは解決したけれど。

もしもそういう関係になった場合、私はエレンに対してちゃんと「出来る」んだろうか?

こう言ってはなんだけれど、私は力が「強すぎる」のだ。

普段は意識して力を抑えているけど。でも油断するとすぐ「物」を破壊してしまう時がある。

そんな風に、エレンをうっかり「破壊」しやしないかという思いもあった。

なのですぐに答えが出せなかった。

エレン「でも、ミカサが悩んだのって、オレがミカサに好きだって、告白したせいじゃ…」

ミカサ「………」

現に昔、男の人に無理やり押し倒された時は抵抗して相手の骨を折った。

エレンに対して「抵抗」する事はないだろうけど。でも、万が一もある。

何かの「弾み」でエレンに怪我を負わせる可能性はあるのでは?

そう思うと、すぐに返事が出来なかった。

ミカサ「エレンは私の家族……なので」

私はだから、まずは慎重に答えた。

まずは連れ子同士は法律的にOKなのか。そこから確認しないといけないと考えていたのに。

ミカサ「家族なので、大事にしたいと思っている……ので」

もしダメだった場合はまた方法を考えないといけない。そう思っていたのに。

エレン「ミカサ、もういいって」

エレンが寂しそうな表情で私に言ってきたのだ。

21進撃の名無し:2014/09/23(火) 15:20:35 ID:dJbLYo3c0
エレン「無理すんな。オレも悪かった。オレ達、家族になったんだし、そういうの、良くなかったよな。もう……そういう目では見ない様に、オレも気をつけるからさ」

無理やり笑顔を作っているのが見え見えだった。

エレンが何故、ここで「笑顔」を作るのかいまいち理解出来ていなかった。

エレン「忘れてくれ……な?」

エレンが本心を言っていない事はすぐに分かった。

でもエレン自身がそう言う以上、私もそれ以上は言えなかった。

ミカサ「エレンがそう言うなら……」

正直、肩透かしを食らったような気分だった。

折角その気になりかけていたのに。我慢させられたような。そんな心地になる。

しょぼん。多分、そんな擬音がつく感じの表情になってしまったかもしれない。

音楽室に到着すると、先にマルコとアニ、ジャンの姿があった。

先輩達は全員は揃っていない。準備運動中だったようだ。

マルコ「やあエレン! ミカサ! 今日から早速、仮入部させて貰える事になったよ。よろしくね」

エレン「おう! よろしくな! ………アルミンは」

アニ「アルミンは8月末まではまだバタバタしているみたいで、こっちに来られるのは来週からになるかもしれないって」

エレン「……そっか。了解」

アルミンはちょっと遅れて入部するようだ。今から楽しみ。

そして練習に入った。でも、そこでもエレンの様子がおかしかった。

ペトラ「ストーップ!」

ペトラ「エレン、いつもより表情が硬いわよ? うーん、疲れが残っているのかしら?」

エレン「いえ、大丈夫です」

ペトラ「いーや、大丈夫じゃないわね。ちょっと休憩を入れましょうか」

エレンの表情が暗い。どうしてそんなに「我慢」するんだろうか。

何だかもやもやした。こんな風にエレンに対して「もやもや」するのは初めてかもしれない。

嫉妬の感情とは別物の「もやもや」だった。多分「欲求不満」の方のもやもやな気がする。

そして其の時、エレンが早口言葉を言い始めた。

エレン「生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵…」

オルオ「遅いな。その倍は早く言わないと」

エレン「え?」

オルオ「生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生ごふっ!」

ペトラ「早くても、噛んじゃダメでしょうが」

オルオ部長のおかげで空気が和んだ。

皆、笑いを堪え切れずに口を手で隠して笑っている。

オルオ「う、うるさいな! とにかく早口言葉は早く言わないと、ダメだろ。エレン、もっと気合入れて練習しておけよ」

エレン「はい!」

早口言葉をしたらエレンの表情が少し元気になった。

やっぱりエレンには「元気」でいて欲しい。そう思う自分がいた。

22進撃の名無し:2014/09/23(火) 15:25:10 ID:PodBOj5I0
おおッキモイッ
どれも大変キモイでース

この>>1の書くSS……とてもキモイデース
オオッテリブル……

23進撃の名無し:2014/09/23(火) 19:56:12 ID:Lpxa946g0
いや、おもしろいだろ

24進撃の名無し:2014/09/23(火) 22:33:01 ID:PodBOj5I0
キモいと面白い(嘲笑)は両立するぞ?

25進撃の名無し:2014/09/24(水) 13:07:56 ID:Jmam7wzAO
>>24
お前面白いな

26進撃の名無し:2014/09/24(水) 20:47:34 ID:E7MoZSH60
ここの>>1に勝る面白い奴は未だお目にかかったことがない

27進撃の名無し:2014/09/24(水) 23:39:32 ID:VPqJ24o20
今までで1番読んでて面白いよ。

これをリアルタイムで追うことがてきてうれしい

28進撃の名無し:2014/09/24(水) 23:54:01 ID:o4xJPYPE0
同意。確かに面白いな

↓で暴れてるところとか本当に素敵。
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1399986900/195-224


実に面白い

29:2014/10/05(日) 10:52:38 ID:DxnaIu/o0


30進撃の名無し:2014/10/06(月) 17:00:56 ID:mlRpaviwO
>>1戻ってきて

31進撃の名無し:2014/10/10(金) 23:18:35 ID:0pr5.Oco0
キモい言うな。キモいって言うなら、自分は>>1より上手い文章書けるのか?

書けねぇだろ!そう言うことは>>1を超えてから言え。

それとも自分が上手いって思っているのか?

このナルシスト野郎。

>>1、戻って来て……

32進撃の名無し:2014/10/27(月) 15:47:43 ID:mTyIKYRIO
久しぶりに来てみたらなんか色々あったみたいだな
荒らしに負けず頑張ってほしいが>>1もう来ないのだろうか

33進撃の名無し:2014/11/03(月) 22:46:55 ID:sAVmNN8o0
>>1戻ってきてください!

楽しみにしてたし、続きが凄く気になります!こんな作品初めてなんです、お願いします!!

34進撃の名無し:2014/11/04(火) 21:20:32 ID:5//eqegc0
やっと追い付いたと思ったら…
しばらく投下無いのか…
凄く面白いから!続き待ってる!

35進撃の名無し:2014/11/22(土) 21:25:55 ID:IxKRQMNcO
待ってる

36進撃の名無し:2014/12/01(月) 15:50:33 ID:xoJRX8oI0
ずっと続きが気になってる…ので

戻ってきてほしい

37進撃の名無し:2014/12/01(月) 20:42:25 ID:JMICIkCQ0
最後に>>1が来たのは9月か

38進撃の名無し:2014/12/01(月) 22:39:16 ID:w688G84c0
1 戻ってきて。そして、他のスレも続きを書いてよ…最近面白いの無いんだよ…

39進撃の名無し:2014/12/03(水) 16:19:37 ID:72srcD7oO
なんだかんだここのssは最近じゃ>>1のが一番面白かった

40進撃の名無し:2014/12/04(木) 16:55:00 ID:MjHFtou60
通し稽古が無事に終わって先輩達の指示が飛ぶ。

ペトラ「九州大会は今年はO県で行われるから、前日の朝にはここを出発するので、そのつもりで皆、準備しておいてね」

一同「「「はい!」」」

ペトラ「今日から仮入部の2名が入ってきたけど、2人も九州大会についてきて、皆のサポートをお願いするわ。宜しくね」

アニ「はい」

マルコ「はい!」

ペトラ「今年は例年と違って、ちょっと特殊な日程になっているからきついと思うけど、皆、頑張ろうね」

エレン「え? 例年と違う?」

オルオ「ああ。今年は何故か例年と違う日程なんだ。いつもの年なら、6月に地区大会があって、10月頃に県大会があって、12月頃にブロック大会、つまり九州大会があって、翌年の8月頃に全国大会になるんだが……」

ペトラ「うん。ブロック大会、つまり今回、九州大会で勝ち上がった場合は、また来年の夏の全国大会に上演するから、私達は九州大会でどのみち引退になるのよね」

おお。そうだったのか。成程。

でも確かに例年のやり方の方がいい気がする。

あまり日程が詰まっていると体力も気力も消耗するので、来年は元のやり方に戻してほしいと思った。

エレン「え? じゃあ今年は地区大会を飛ばしていきなり県大会をやったんですか?」

ペトラ「そうね。出場校が年々、減ってきているのと、予算とかの都合かしらね?」

オルオ「オレは前のやり方の方がいいけどな。慌ただしいだろう。実際」

エルド「でも試験的に今回、こういう日程になったらしいぞ。不評だったら元に戻るんじゃないか?」

ペトラ「もしかしたら、来年はまた元に戻るかもしれないわね」

この件に関しては後で裏事情があったと言う話をリヴァイ先生から聞いて驚いた。

エレン「じゃあ今度の大会で、勝っても負けても、先輩達は引退になるんですね」

ペトラ「そうね。ま、悔いの残らないように精一杯、頑張るわよ」

と、3年の先輩達は全員、ぐっと拳を握っていた。

ペトラ「13、14、15日はお盆だから学校もさすがに開いてないわ。間違えて来ないように気をつけて。16日の朝9時、校門前に集まって、バスで移動するから遅れないようにしてね。以上、解散!」

という訳で、今日は軽めの練習をした後、家に帰ることになった。

私は待ってくれているエレンに一言断って別行動を取る事にした。

大事な用事があったからだ。

41進撃の名無し:2014/12/04(木) 16:55:46 ID:MjHFtou60
ミカサ「あの、エレン。ごめんなさい」

エレン「ん?」

ミカサ「今日はちょっと、アニと一緒に寄るところがあるので、先に帰って貰えないだろうか」

実はこの時点ではまだ、アニを誘ってはいなかった。

アニを誘うつもりではいたが、もしアニがダメだった場合は一人でも本屋に行くつもりだったのだ。

エレン「あ、ああ……」

エレンが悲しそうに表情を歪めたのは心苦しかったけれど。

エレン「き、気をつけて帰れよ」

ぎこちない挨拶を交わした後、私はアニに声をかけた。

アニ「良かったの? 本当に」

ミカサ「うん。アニと一緒に出来れば本屋に寄って欲しい」

アニ「本屋?」

ミカサ「どうしても調べたい事がある…ので」

アニ「ネットじゃダメなの?」

ミカサ「本で調べたい。ネット情報はたまに嘘もあるので」

アニ「成程。分かった。一緒に行こうか」

そして私はアニと共に本屋に向かった。向かうは法律関係の本だ。

特に婚姻について詳しく書かれている本を探した。

立ち読みをして内容を確認する。アニはその中身を見て目を見開いていた。

アニ「え……連れ子同士って、結婚してもOKなんだ」

ミカサ「血の繋がりがなければ法律上は問題ないと書いてある」

アニ「え? でも、その手のドラマとか漫画ってよく禁断物として描かれていたような気がするんだけど」

ミカサ「その場合は血の繋がりが半分あったのでは?」

アニ「あれ…そうだったのかな。ううーん。なんてことだ」

当時のアニは自分が勘違いしていた事を凄く気まずそうにしていた。

42進撃の名無し:2014/12/04(木) 16:56:57 ID:MjHFtou60
アニ「ごめん。なんか勘違いしていたみたいだね」

ミカサ「私も記憶があやふやだったので、確認出来て良かった」

アニ「だったら……エレンとミカサはくっついても何も問題なかったんだ」

ミカサ「法律上はそうなる」

アニ「なんだ。だったらあんな事、言うんじゃなかったな」

ミカサ「?」

私はこの時点では、アニが言った昔の事をすっかり忘れていたので、ちょっとだけ首を傾げてしまった。

参考にした法律の本を私が購入した後、アニは言った。

アニ「ミカサ、この後ちょっと時間あるかい?」

ミカサ「うん。大丈夫」

アニ「だったら、お茶しない?」

ミカサ「うん。どこか喫茶店でも入ろう」

アニ「じゃあ、そこの本屋の中の喫茶店でいいかな」

ミカサ「本屋の中に喫茶店が……いつの間にか出来たのね」

アニ「最近、出来たみたいだよ。FUTAYAのポイントを貯められるからそこにしよう」

アニはどうやら本屋には頻繁に通っているようだ。

アニは慣れた感じで店の中に入ると、私を先に座らせてがっくりした。

アニ「あーなんか、ショックだ」

ミカサ「え?」

アニ「今まで禁断物で結構、ドキドキしていたのに。法律的には問題ないなんて」

ミカサ「それは血が繋がっていたのでは?」

アニ「そうかもしれないけど。萌えに関してそこは大事な部分だったし」

ミカサ「萌え?」

アニ「あ、いや……何でもない。ミカサはこっち側の人間じゃないもんね」

ミカサ「?」

何の話をしているかイマイチ分からなかったので首を傾げるだけに留める。

43進撃の名無し:2014/12/04(木) 16:57:46 ID:MjHFtou60
アニ「あのさ」

ミカサ「うん」

アニ「法律の本、買ったって事はそれがミカサにとって重要な事だったって思っていいの?」

私は購入した本を取り出して頷いた。

ミカサ「うん。どうしても確かめないといけない事だった」

アニ「それって、もしかして、エレンとの事を……」

ミカサ「真剣に考えないといけないと思っていた」

アニ「……いた? 何で過去形?」

ミカサ「エレンに、告白されたので」

アニ「!」

私がそう言うとアニがちょっとだけ驚いて見せた。

アニ「エレンの方から告白したんだ。へえ……」

アニの顔は尊敬と驚きが入り混じっていた。

アニ「うん。嫌いじゃないよ。そういう男らしい奴は。でも何で過去形で話すの?」

ミカサ「告白してくれたのに、後で忘れて欲しいとも言われた」

アニ「………は?」

その事を言ったらさっきの表情とは180度回転して軽蔑が混じった。

アニ「何その掌返し。舐めているの?」

ミカサ「恐らく違うと思う」

アニ「じゃあ、駆け引き? 今度はミカサの方から言わせたいとか?」

ミカサ「それも違うような気がする」

アニ「じゃあ、なんだろう?」

ミカサ「恐らく、エレンは勘違いしている気がする」

私は自分の中の推測を出来るだけ筋道を立ててアニに説明する事にした。

アニに説明する事で自分の気持ちも整理したかったし、そうする事で自分の進むべき道が見える様な気がしたからだ。

44進撃の名無し:2014/12/04(木) 16:58:51 ID:MjHFtou60
ミカサ「エレンは私が、告白されて困っていると思っているような気がする」

アニ「ミカサは困ってないの?」

ミカサ「お付き合いする件は受けてもいいと思っている。ただ………」

アニ「ただ?」

ミカサ「これはアニなら理解出来るだろうか? 私は、力が強い」

アニ「うん?」

ミカサ「普段は力を抑えて生活しているけれど、ちょっと油断すると物を破壊する事もある」

アニ「あー……それは、私もあるかも」

ミカサ「なら、その……先の事を考えた場合、心配になるのは分かるだろうか?」

アニ「……………」

その直後、アニはきょとんとして、数秒後、ぶふっとふき出してしまった。

笑われてしまった。ちょっと酷い。

アニ「ううううーん。気持ちは分かる。分かるけど……」

アニが頭を抱えてしまった。言葉に困っているようだ。

アニ「それって、そういう時に、うっかり、その……攻撃したらどうしよう? みたいな事だよね」

ミカサ「そういう事になる」

アニ「過去に似たような事、やったとか?」

ミカサ「襲われそうになった時は全力で拒否してきた。相手の骨を折った経験もある」

アニ「ああ……私も似たような事はあるよ」

ミカサ「そうなの?」

アニ「男は馬鹿だから。馬鹿な男は分からせないとダメだよ」

アニはその件については罪悪感が全くないようだ。私とは少し違うようだ。

アニ「でも、エレンはそういう馬鹿な男とは違うんでしょ?」

ミカサ「少なくとも、受け入れたいとは思っているけれど」

アニ「けれど?」

ミカサ「もし万が一、途中でその、やっぱり無理だとか、もしくはひょんな動きで怪我をさせたら目も当てられない」

そう言いながら顔を隠すと、アニがまたぶふっとふいた。

45進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:00:00 ID:MjHFtou60
ミカサ「………酷い」

私が思わず拗ねるとアニが「ごめんごめん」と謝ってきた。

アニ「いや、本当にごめん。なんだ。そんな事で悩んでいたんだね」

ミカサ「……うん」

アニ「だったら、それをそのままエレンに伝えたらいいじゃない」

ミカサ「え……?」

アニの意外な提案に私は目を大きくしてしまった。

ミカサ「伝えていいのだろうか?」

アニ「いいと思うけど。それの何が問題?」

ミカサ「呆れやしないだろうか?」

アニ「呆れられてもいいと思うけど」

ミカサ「そうなのだろうか?」

アニ「うん。呆れたら、どうする?」

ミカサ「その時は、しょんぼりすると思う。あとちょっと恥ずかしい」

そう答えると、アニはちょっとだけ口元をニヤリとさせて言った。

アニ「その顔を見せたら、ミカサはきっと大丈夫」

ミカサ「え?」

アニ「あんた、自分が思っている以上に可愛い女だよ。自信持って」

ミカサ「…………」

アニ「あ、美人って言われる事が多くて、可愛いは初めてだった?」

ミカサ「あまり言われた記憶がないような」

アニ「そう? ミカサは美人より可愛いと思う」

そう言ってアニはクールに目を細めて私を見つめてきた。

46進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:01:07 ID:MjHFtou60
アニ「心配は要らないよ。そのまま気持ちを伝えたらきっとうまくいくって」

ミカサ「そうだろうか?」

アニ「賭けてもいい……って、あ、これは禁句だった」

ミカサ「ん?」

アニ「いや、何でもない。げふんげふん」

何故かわざとらしい咳だった。

ミカサ「…………」

アニ「とにかく、折を見てエレンに自分から自分の気持ちをそのまま伝えたら?」

ミカサ「でも……」

アニ「どうしても心配なら、そういう時はいっそ、自分を縛っちゃえば?」

ミカサ「!」

その姿を想像して赤くなってしまった。

ミカサ「成程。その手があった」

アニ「あと、段階を踏んでやってみるとか? いきなり全部するのはしんどいだろうし。様子見ながら一緒にやってみればいいかもしれないよ」

ミカサ「おお……その手もあった」

アニ「うん。大丈夫だと思うよ。そんなに心配しなくても」

そうだといいのだが。

アニ「もしさ」

ミカサ「ん?」

アニ「今、ここでミカサがいかないなら私がいくって言ったらミカサはどうする?」

ミカサ「えっ……駄目!」

咄嗟に出た言葉に私は自分でも驚いた。

ミカサ「…………」

アニ「だったらもう、答えは出ているよね?」

アニの芝居に呆気なく乗せられた自分が居た。

そうだ。私はもう、他の誰にもエレンを取られたくない。

独占したい気持ちがここにある。だったらもう、迷う事はない。

ミカサ「ありがとう」

アニ「ううん。いいよ。迷いがなくなったようだし。うまくいくといいね」

ミカサ「うん」

そして私達は喫茶店で紅茶とケーキなどを食べ終えて店を出た。

47進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:02:03 ID:MjHFtou60
自宅に帰宅すると、エレンは先に家に帰っていた。

エレン「ミカサ、本、買ってきたのか?」

ミカサ「う、うん……」

エレンに話しかけられて思わずびくびくした。する必要はないのに。

変に緊張してしまって調子が狂う。いつ、私の気持ちを伝えよう?

今はまだ、そのタイミングが測れなくて悩んでいると、

ミカサ「あ、カサブランカ……」

目に入った花に気づいた。綺麗なカサブランカだった。

エレン「ああ、お盆だし、母さんの墓参りに行くから、お供え用にと思って買ってきたんだ」

ミカサ「お花、好きだったの?」

エレン「まあな。昔はうちにもいろんな花、植えていたんだ」

そうだったのか。それは見てみたかった。

エレン「今は世話する人がいないから、ある程度処分しちまったけどな」

ミカサ「も、勿体ない。残っていたら、私が世話したのに」

エレン「ああ、庭を復活させたいなら、自由に使っていいぞ。ミカサの好きにしていい」

それは素晴らしい!

ミカサ「い、イタリアンパセリとか、植えようかしら」

エレン「え? パセリ?」

いろいろなハーブが植えられる! そう思ったけれど、ちょっと思い直して、

ミカサ「あ、でも、夏植えるものを優先した方がいいかもしれない。まずは畑を耕して、石灰を撒いて、土を作らないと…(ブツブツ)」

まずは土の状態の把握からだ。土の状態次第では肥料も必要だ。

いろいろ考え込んでいると、エレンがこっちを見ていた。

その柔らかい視線に気づいて慌てて私は俯いた。

やっぱりエレンは私の事を……。

そう思うと体が熱くなってしまい、ついつい頬が赤くなる。

でもあんまり考えると頭がぼーっとするので適当に切り上げると、おじさんが帰って来た。

お盆の予定を話し合って、13日にエレンのお母さんの方の墓参りを先にする事になった。

私はこの時点で決意していた。話すならきっと、ここしかないと。

そう思って、臨んでいた。移動の車の中でも、ついつい頬が緩んでしまった。

48進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:02:41 ID:MjHFtou60
車で30分程度の距離にあるお寺に到着して、お墓まで歩いて移動した。

皆で手を合わせて、一通りの事を済ませると、おじさんとお母さんが一度、お墓から離れてしまった。

エレンはまだ黙祷を捧げている。少々長いとも思ったけれど、きっと報告する事が多いのだろう。

そしてエレンが目を開けて、こっちを見た時に言った。

エレン「あれ? 親父は」

ミカサ「お布施を払いに行くって」

エレン「あ、ああ…そっか」

エレンが気まずそうだった。今のうちに話そう。

ミカサ「……エレン」

エレン「ん?」

ミカサ「報告、終わった?」

エレン「…ああ」

よし。今、言おう。私から。

ミカサ「あのね、エレン」

エレン「ん?」

ミカサ「やっぱり、私、無理かもしれない」

エレン「何が?」

緊張でつい、下を向いてしまった。

ミカサ「エレンの言った事、忘れられない……」

するとエレンは戸惑って、

エレン「あ、いや、でも…」

ミカサ「エレン、聞いて」

エレンに主導権を握らせてはいけないと咄嗟に判断した。

49進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:03:25 ID:MjHFtou60
ミカサ「あの日の夜、私が悩んでいたのは、2つある」

エレン「ふ、2つ?」

説明する為に頭の中を整理する。下を見ながら。

ミカサ「ひとつは、連れ子同士の場合は、日本の法律では結婚出来るのか、という点」

エレン「!」

エレンは驚いていたけれど、私は構わず続けた。

ミカサ「その点については、アニと一緒に本屋に寄って、法律の本を買って確認したので、間違いないと思う」

エレン「……そうか」

ミカサ「結論から言えば、私達は結婚出来る。法律上、問題ない」

エレン「そーかそーか、やっぱり……………って、え?」

変な間があった。どうやら、エレンも同じ勘違いをしていたようだ。

エレン「結婚……出来るのか?」

私は視線を上げて頷いた。

ミカサ「出来る。血の繋がりのない他人同士なので、大丈夫。問題ない」

エレン「え……じゃあ、何で……」

ミカサ「エレン、悩んだのは、2つあると言った」

むしろここからが本題だった。

ミカサ「あの…私が懸念するのは…その…もし、その……あの…」

恥ずかしい。もし呆れられたらどうしよう。

いや、でも信じるしかない。エレンが真面目に聞いてくれると。

50進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:04:10 ID:MjHFtou60
ミカサ「そ、そういう空気になって、え、エッチな事をする時に、もし、万が一、私が、弾みで、反撃して、しまったら、その……エレンに怪我を負わせやしないかと、心配で……」

エレン「………え?」

エレンが凄い顔になっていた。なんて言えばいいのか。

外人の方が「もう1回言って」と言う時のアレの顔だ。

私は努めて冷静になろうと思ったけれど、それは難しくて、多少どもりながら言った。

ミカサ「い、いや、勿論! 抵抗しない様に、極力気をつける…ので、それにどうしようもなければ、最悪、体を縄等で拘束するという手もある……ので! でも、それすらも馬鹿力で解いて、やっぱり私が途中で「嫌だ」と思ったら、エレンの骨を折りかねないと思うと、怖くて、その……」

エレン「…………」

エレンが考え込んでいた。伝わっただろうか?

ミカサ「な、なので! エレン、私から提案したいのは、その、段階を踏んで、徐々に慣らしていくようにしていけば、私も慣れるかもしれない……ので、その、そういう条件であれば、私は……」

最後まで説明する前にエレンがいきなり私を抱きしめてきた。

その温かい体温にびっくりした。お互いの心臓の音が伝わる。

私自身、どんどん心拍数が上がっていくのを感じていた。

ミカサ「え、エレン…?」

エレン「それって、イエスって事だよな?」

ミカサ「…………(こくり)」

もう言葉で説明するのは面倒だったので態度で示すと、

ミカサ「で、でも……その、エレン……うぐっ」

まるで噛みついて食べられるような乱暴なキスがきたけれど。

ミカサ「………!」

その瞬間の感触は今も忘れられない。

全身が、弾けるような、宙に浮くような。

感じると言うのはきっと、こういう事だと気づいた。

エレンの吐息がかかって熱くて、何も言えなくて。

幸せの絶頂に浸っていた其の時、

51進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:07:26 ID:MjHFtou60
グリシャ「あー……おほん」

そこから叩き落される声が聞こえて全身が冷えてしまった。

冷水を浴びせられたような心地で体を離すと、そこにはおじさんとお母さんの姿が…。

どどどどうしよう? エレンも私と同じ顔をしていた。

グリシャ「エレン、家に帰ったら、家族会議だ(☆☆キラーン)」

ひええええ! おじさんの怒った顔、怖い。ガクブル。

私とエレンはお互いにブルブル震えながら車に乗って帰る事になってしまった。

勿論、一言も話せないままだ。非常に気まずい空気だった。

家に帰ってリビングでお茶を飲んで、4人で一旦落ち着くと、おじさんに「墓の前で何を報告していたんだい?」と黒い笑みを浮かべて言われてしまった。

エレン「えっと、その……」

ミカサ「ご、ごめんなさい」

とりあえず二人そろって頭を下げる事にした。

きっとお説教を食らうのだろう。今から数時間。

グリシャ「やれやれ。ここ最近、ミカサの様子が変だったのも、そのせいだったのかな」

ミカサ「………はい」

私は正直にいう事にした。

グリシャ「ふむ、二人の事を、話せる範囲でいいから話しなさい。親として、知っておきたいからね」

そしてエレンは私を見て、頷いた後、エレンの口から説明する事になった。

エレンの説明を一通り聞いた後、おじさんは渋い顔で言った。

52進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:09:29 ID:MjHFtou60
グリシャ「………では、二人はこれから男女のお付き合いをしたいと考えているのかい?」

エレンは強く頷いていた。

エレン「両想いになったんだ。別にいいだろ。法律だって禁止してないんだし」

グリシャ「……ダメだ」

エレン「え?」

グリシャ「二人の交際は認めないよ。父さんは反対だ」

ミカサ「ど、どうしてですか?」

私は当然、声をあげた。何がいけないのか。

グリシャ「墓の前で手を出すような理性のない男は何を言っても信用がないよ、エレン」

エレン「うぐっ!」

いや、アレはその、エレンだけの責任ではないので。

グリシャ「はあ……やっぱりエレンは高校入学と同時に学校の寮に入れるべきだったかな」

エレン「え?」

グリシャ「迷ったんだよ。年頃の娘さんと年頃の息子を同居なんてさせて、もし万が一、間違いがあっては困るからね。でも母さんが、ミカサの為だけにエレンにそんな事はさせられないって……」

その話は初耳だった。お母さんは普段と変わらぬ顔でいる。

ミカサの母「家族は一緒に暮らすべきですよ。それにミカサなら、自分の意に沿わない事は絶対にやらないと、信じていましたから」

グリシャ「いやでも、しかしだね……」

ミカサの母「あなた、少し落ち着いて。お茶のおかわりは?」

グリシャ「ああ、頂くよ」

ズズズ……

お茶の音がうるさくリビングに響いた。

グリシャ「うちの愚息が本当にすみません……」

ミカサの母「いえいえ、頭を上げて下さい」

お母さんは平静だった。それがとても心強かった。

ミカサ「お母さんも、反対?」

伺うように聞いてみると、

ミカサの母「ん? そうねえ。お母さんは賛成も反対もしないわ」

というお母さんらしい答えが返って来た。

53進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:11:14 ID:MjHFtou60
ミカサの母「ただ、親としては心配はするのよ。特に女の方には、妊娠と言うリスクがあるから」

ミカサ「そ、そんな事はしない…」

一瞬、エレンとの子供を身籠る想像をしてしまった。

ミカサの母「今はしなくとも、付き合いが長くなれば、自然とそうなる場合もあるのよ。弾みでやってしまったり、お父さんも、その事を一番心配しているのよ。ねえ?」

グリシャ「ああ……エレン、前にお金の使い方についていろいろ言っていたのは、この為だったんだね?」

エレン「うぐっ…!」

グリシャ「全く……本当に参ったね。いやしかし、事前に露見して幸いだった。そういう事なら、以前言った事は撤回させて貰うよ」

エレン「え?」

グリシャ「エレン、隠れて外でミカサとラブホテルに休憩したりしたら、問答無用で家から追い出す。勿論、家の中でやった場合も同罪だ」

エレン「え、ええええ?!」

グリシャ「今後、エレンからのそういった接触は一切禁止だ。これは命令だ。いいね、エレン」

ミカサ「そ、そんな……」

今思うと、おじさんにはとても心配をかけてしまったのだと思う。

確かにそういう事態になってしまったら、負担を負うのは私の方だ。

でも私はそんな安易な事をしないと思っていた。この時点では。まだ。

エレン「お、横暴過ぎんだろ! 親父?!」

エレンも焦っている。でも少し考えて、表情が変わった。

何か大事な事を決意したような顔だった。

エレン「分かった……」

ミカサ「エレン…!?」

エレン「親父の言う通り、オレの方からは一切、そういう事はしない。でも……」

エレンの男らしい決断には驚かされる。いつも。

エレン「その代わり、ミカサと交際する事だけは認めてくれ! 絶対、手出さないから、オレ達の事、認めて欲しい!」

グリシャ「!」

ミカサの母「!」

ミカサ「……わ、私からもお願いします」

でも当時はこれしかないと、私も思ったので一緒に頭を下げたのだ。

54進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:11:47 ID:MjHFtou60
するとおじさんも少し表情が変わった。

グリシャ「エレンが18歳になる日の3月30日までだ」

エレン「!」

グリシャ「その日まで、エレンの方からはミカサに一切、性的な接触をしない。そう誓えるかい?」

エレン「ああ、誓う!」

グリシャ「……分かった。じゃあ誓約書を作ろうか」

ここで交わされた契約書には実は穴があった。

後で分かった事だけど。おじさんの手腕には本当に驚かされた。

でもそれだけおじさんは私を心配してくれたのだと思うと本当に有難い。

ミカサの母「………あなた、いいんですか?」

ミカサの母「この誓約書の内容だと……」

グリシャ「母さん、それはここでは(しっ)」

ミカサの母「……分かりました。そういう事なら」

ミカサ「お母さん?」

ミカサの母「ううん、何でもないのよ。うふふ」

お母さんはこの時点ですぐに気づいたそうだ。これも後で知った事だけど。

契約書の内容については既に説明しているのでここでは省略する。

ミカサ「あの、確認したい事が」

グリシャ「ん? 何だい?」

ミカサ「おはようやおやすみ、いってらっしゃい、いってきます等のキスは性的な意味ではないので、許可して下さい」

グリシャ(ズコーッ)

キスをする言い訳を作ってキスをする権利だけはどうにか確保したかった。

55進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:12:26 ID:MjHFtou60
グリシャ「だ、ダメだ! ここは日本なんだから、そんな挨拶は一般的ではないよ、ミカサ!」

エレン「でも、日本的ではないから、日本ではやっちゃいけないなんてルールはないだろ?」

ミカサの母「そうねえ。昔はミニスカートも日本的ではないから、非難されていたけれど、今はいつの間にか、ファッションとして浸透しているものね」

グリシャ「母さん!」

ミカサの母「いいじゃありませんか。親がしている事を、子供にしてはいけないとは言えませんよ」

エレン「え? そうだったのか? 親父」

グリシャ「…………(よそ向いている)」

おじさんとお母さんは実はラブラブなのでこの交渉方法ならいけると思ったのだ。

エレン「じゃあキスはいいよな? そう言う意味じゃないなら、欧米では普通だし?」

ミカサ「うんうん」

グリシャ「……分かった。だったら追記するよ」

という訳で、挨拶のキスは、それぞれ一回だけ許可するという旨も付け加えられた。ただし5秒以内。

ここで調子に乗ってもっとふっかけてみる。

ミカサ「は、ハグもダメ…?」

グリシャ「それはダメ。それも許したらずるずる線引きがあいまいになるからね」

エレン「でもハグしないで、どうやってキスするんだよ。鳥みたいに口をつつき合うのは不自然だろ?」

グリシャ「うっ……」

ミカサの母「あなた」

グリシャ「……分かったよ。ハグも5秒以内だ。それなら許可する」

よしよし。とりあえず、権利を確保出来た。

そんなこんなでいろいろあった一日だったけど。

その日の夜、早速、寝る前におやすみのキスを1回だけした。

優しいキスだった。ふわっとする。小さなキスだったけど。

そのキスのおかげで私はエレンと恋人同士になった実感を持てた。

布団の中でついつい。むふふふ。と笑いながら。

笑顔を堪え切れずにその日は眠りについたのだった。

56進撃の名無し:2014/12/04(木) 17:14:30 ID:MjHFtou60
大分、投下の間隔が空いてしまってすんませんでしたorz
恐らく今後はこんな感じで間が空いていくと思いますが、
マイペースに執筆していますので、気長にお待ち下さい。

ではではまた次回。ノシ

57進撃の名無し:2014/12/04(木) 19:27:13 ID:WPWHsvn60
>>1戻って来てくれた。お帰り。

ありがとう!あと、お疲れ。

58進撃の名無し:2014/12/04(木) 20:25:05 ID:kxUa8Ckg0
乙!!
待ってた。続き読めて嬉しいよ!!

59進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:06:39 ID:EqP1/TDw0





16日の朝。エレンに家を出る前にある事を忠告されてしまった。

エレン「ミカサ、オレ達の事は、学校の奴らには言うなよ」

ミカサ「え、でも…」

アニには既にバレている。どうしよう?

エレン「特にジャンには言わないでくれ。頼む!」

ミカサ「あ、アニにはもう、話してしまっているけど」

エレン「あ、アニだけならいい! アルミンとかには、オレから話すし、とにかくジャンにだけは、ミカサからは伝えないでくれ。頼む!」

ミカサ「わ、分かった」

まあ、プライベートな事ではあるし、そういうのはエレンに任せよう。

今回は残念ながらアルミンは同行出来ない。本当に残念だ。

全員が待ち合わせの場所に集まって、そしてリヴァイ先生は言った。

リヴァイ「忘れ物はないか?」

リヴァイ「向こうに着くまでにバスで2時間くらいかかるから、もし忘れ物があっても取りに戻る事は出来ない。最終確認だ。不安だったらもう一度、確認しておけ」

皆、ごそごそと、自分の荷物を確認してOKを出した。

リヴァイ「では出発する。バスに酔ったら遠慮なく吐けよ」

エチケット袋もちゃんと用意してあった。

そしてバスは出発した。目指すO県の某旅館だ。

研修旅行の時はK県だったけど、今度はO県だ。O県もK県と負けないくらい温泉地がある。

混浴は流石にないだろうが、エレンとなら混浴風呂でもいいかなと思っていたら、

オルオ「何、ニヤニヤしているんだ? エレン。やらしい顔をしているぞ」

エレン「え? し、してませんよぉ」

オルオ「いや、していたな。大方、入浴中の女子を妄想していたんだろ?」

エレン「うぐっ……」

オルオ「言っておくが、混浴はないからな。残念だが」

エレン「期待していませんよ! 何言っているんですか?!」

オルオ「はは!」

オルオ先輩がエレンをからかっていた。そうか。混浴はやはりないのか。

エレンの照れくさそうな顔が可愛いと思ってしまってついついクスッと笑ってしまった。

60進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:09:26 ID:EqP1/TDw0
エルド「バスの中でカラオケやってもいいですか? 先生」

リヴァイ「ああ、別に構わんが、マイクは確か1本しかなかったと思うぞ」

エルド「十分です。では折角何で、向こうに着くまでにゲームでもしようか」

ペトラ「ゲーム? カラオケでゲームするの?」

グンタ「ああ、折角備えてあるんだし、使わないと勿体ないだろ?」

カラオケか。バスの中ではよくある事だ。

オルオ「別にいいが、カラオケでやれるゲームなんてあったか?」

ペトラ「うろ覚えでどこまで歌えるか、とかやるの?」

エルド「いや、それも楽しいけど、今回は別のをやろう。題して『カラオケdeしりとりゲーム』だ」

ズコーッ

エレンが何故か大げさにリアクションをしていた。はて?

エルド「ルールは簡単だ。歌のタイトルでしりとりをしていく。一人目の歌が歌い終わるまでに次の人が曲を入力できなかったり、最後に「ん」のつくタイトルをうっかり間違えて選んだら負けだ」

ペトラ「曲名でしりとりねえ」

オルオ「勝敗がつきにくそうだな。歌詞を見ないで歌う目隠しも入れたらどうだ?」

ペトラ「そうね。そうなると歌える曲がかなり絞られるし、いいかもね」

エレン「え?! カラオケなのに、歌詞見ないで歌うんすか?!」

おお。それは難しそうだ。

ペトラ「その方が面白いじゃない。……で? 勝ったら何か貰えたりするの? エルド」

エルド「ああ、勝ち残った奴は……先生」

リヴァイ「ああ、オレの金で何か奢ってやる」

ペトラ「え?! 何かプレゼントを貰えるんですか?」

リヴァイ「ああ。何を奢るかは、勝ってからのお楽しみだ」

ペトラ「やった! 燃えてきたわ!」

オルオ「まじですか……こりゃ負けられんぞ」

ミカサ「…………」

別に要らないのに。

リヴァイ先生のこういうところはちょっとイラッとする。

61進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:10:16 ID:EqP1/TDw0
エルド先輩からスタートしたスタートしたカラオケdeしりとりは、『紅蓮の弓矢』(エルド)→『やさしさに包まれたなら』(グンタ)→『らいおんハート』(ペトラ)→『とんぼのめがね』(オルオ)ときて次はエレンの番だ。

エレン「ね?! ねのつく歌ってあったっけ?!」

エレン「う、歌えるか分からんけど、『狙い通りのDestiny』を歌います!」

軽快な音楽だった。どうやらアニメのキャラソンらしい。

後ろの方でマーガレット先輩が素早く反応したのが分かった。

マーガレット「まさかの黒バス?! エレン、やるわね?!」

エレン「え? ああ…うろ覚えかもしれないですけど」

エレン『言った筈だろ〜決して落ちる訳はないの〜だと〜♪』

アイマスク着用で歌っている様子がちょっとエロいと思うのは私だけだろうか?

いけない。邪な事を考えている場合ではなかった。

エレン『悪く思うな〜運命が決めた〜こと〜だ〜♪』

後ろでマーガレット先輩達がノリノリで合いの手を入れていた。

私もマーガレット先輩のリズムの真似をして手を叩く。

見た感じ、間違えずに歌えているようだ。凄くいい曲だと思った。

エレン「………歌詞、合ってました?」

するとすぐさま後ろの席から、

マーガレット「合格! ミス無しだったよ!」

エレン「ほっ……」

スカーレット「いやはや、アニソン有りなら私ら有利だね。入れちゃうよ? いろいろ」

ガーネット「ふふふ……」

この流れだとアニメソングに偏りそうな気配だ。

でも私は余りアニメソングは知らないので、お母さんの好きな曲を選ぶ事にした。

エレンからアイマスクとマイクを受け取って装着する。

ミカサ「……LOVE PSYCHEDELICOのIt's you を歌います」

ミカサ『情景はrain〜揺れるyour long hair〜♪』

62進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:11:22 ID:EqP1/TDw0
エレン「?!」

オルオ「お? いい曲を選んできたな」

ペトラ「しぶいわね〜♪」

ふぅ。無事に歌えただろうか?

エレン「ミカサ、うまかったぞ」

ジャン「ああ、ミカサは歌うまいな、本当に」

ミカサ「この曲は母がたまにきいているので」

お母さんは邦楽が好きなのでいろんな曲を聴いている。この曲もそのうちの一つだ。

アニ「この場合、『ゆ』で続けるの? それとも『う』で続けるべき?」

オルオ「この場合は『う』だろうな」

ペトラ「そうね。『う』で統一しましょ」

アニ「分かりました。じゃ…うそつきを歌います」

アニ『会いたい〜想いが〜相対な君の手に〜♪』

マーガレット「ボカロキタコレ!!!」

スカーレット「今年の一年、豊作ね」

この曲は知らない。エレンも同じ顔をしていた。

どうやらボカロというジャンルの曲らしい。

ペトラ「失恋ソングよね〜これ。いい曲よね」

エレン「ミカサはこの曲知ってるか?」

ミカサ「いえ、知らない……」

でもいい曲だと思った。今度、アニに話を振ってみようと思った。

マルコ「次は『き』かあ………どれにしよう」

時間ぎりぎりでマルコが曲を入れていた。

マルコ「ええっと、僕も歌詞は自信ないけど、キミノアトを歌います」

バラードっぽい曲だ。マルコらしい優しい曲のようだ。

ジャン「マルコ、おまっ……ここでモモクロいくか?!」

マルコ「これしか思いつかなかったんだよ…」

どうやらアイドルの曲のようだ。モモクロは聞いた事がある。

確か5人グループの歌って踊るアイドルグループだ。

メンバーの名前までは知らないけど、フリフリの衣装を着て歌って踊っているのを前にテレビでちょっとだけ見た事がある。

マルコ『旅立つ為に〜無理に隠した〜キミへの想いが胸を叩く〜♪』

63進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:12:19 ID:EqP1/TDw0
ジャンが頭悩ませている。次は『と』だ。

時間ギリギリで入力を済ませた。だけど……。

ジャン「オレは曇天を歌います」

あれ? これは……。

マルコ「ジャン……これじゃ負けだよ」

ジャン「え……あ、しまったあああ!!!」

曇天では「ん」がつくから負けである。

オルオ「ははは! 脱落決定だな」

ペトラ「この場合、次の人は何を歌えばいいの?」

エルド「次の人も『と』から始めればいい」

アーロン「了解ー」

ジャン「ううう………これしか思いつかなかったんだよ」

マルコ「はは。ジャン、最後までちゃんと歌いなよ」

ジャン「分かってるよ」

でもジャンはノリノリで最後まで歌った。おお。上手い。

ジャン『鉛の空〜重く垂れこみ〜真白に澱んだ〜太陽が砕けて〜♪』

前回のカラオケの打ち上げの時も思ったけれど、ジャンは歌が上手い。

ジャン『耳鳴りを〜尖らせる〜♪』

ジャン『ひゅるり〜ひゅるり〜低いツバメが〜♪』

ジャンのライブが続いている間、私は「しまった」と言った。

ジャンのように語尾に「ん」のつく曲を選べば私も脱落出来たのに。

ミカサ「わざと「ん」のつく曲を選んでドロップアウトすればよかった」

エレン「こらこら、それじゃゲームにならないだろ、ミカサ」

ミカサ「しかし私は先生のご褒美に興味ない……ので」

エレン「そんな事言うなよ。オレは楽しみだけどな」

ミカサ「む……エレンは欲しいの?」

エレン「そりゃな。何を貰えるか分からんけど」

ミカサ「むー……では仕方がない。頑張る」

渋々私も真面目に参加する事にした。

64進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:13:33 ID:EqP1/TDw0
『時の河を越えて』(アーロン)→『手のひらを太陽に』(エーレン)→『虹』(スカーレット)→『じゃじゃ馬にさせないで』(ガーネット)→『でたらめな歌』(マーガレット)→『戦え! 仮面ライダーV3』(カジカジ)→『いーあるふぁんくらぶ』(キーヤン)→『ぶっ生き返す!!』(マリーナ)という風に回って、またエルド先輩に戻った。

知らない曲も多かったけど、皆楽しそうに歌っていた。

たまにリヴァイ先生がぶふっと噴いていたのが気になったけど。

エルド「じゃあオレはストップ ザ タイムを歌うよ」

エルド『四次元空間こ〜えて〜戦う姿はボイジャー♪ ワープだ〜ワープだ〜クロノス〜チェ〜ンジ♪』

ん? 何だか曲調が昭和チックだった。

そしてリヴァイ先生がまた盛大に反応した。

リヴァイ「また古い曲を……お前ら、オレをどうしたいんだ」

エルド『いや〜先生も知ってそうな曲がいいかと思いまして』

リヴァイ「他の奴らが完全においてけぼりだぞ」

エルド『別にいいですよ。それはそれで』

マーガレット「あ、大丈夫。私この曲分かるんで」

リヴァイ「マニアックな奴め……おっさんホイホイソングだぞ。しかも一部の」

リヴァイ先生は相当なおっさんだそうだ。

見た目は若く見えるけど、恐らく歳は三十路以上なのだろう。

エルド『ゆがんだ時間(とき)の流れに〜一発逆転チャンス〜♪ スペース〜ファルコン〜決めれば〜I'll get you♪』

リヴァイ「やれやれ。筋肉マンのキャラソンがまさか入っているとは……」

筋肉マンというアニメの曲らしい。

グンタ「む? むって難しくないか?」

確かに『む』は難しい。私もパッとは思いつかなかった。

グンタ「ええっと……じゃあオレは無冠の帝王でいきます」

グンタ『い・か・さ・まファイトで〜♪ に〜んきを稼ぐ〜♪ ニセの仮面を〜はいで〜やる〜♪』

先程の曲と似たような曲調だった。

65進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:14:31 ID:EqP1/TDw0
リヴァイ「お前ら、筋肉マン世代じゃないだろう! 何で知ってるんだ」

グンタ『いや、親父が筋肉マン好きなんで、いろいろ持ってるんですよ』

エルド「そうなんですよ」

リヴァイ「ああ……そうか。お前らの親の世代がドンピシャか」

リヴァイ「ああ……オレも年くったな(遠い目)」

マーガレット「あ、うちも実はそうなんですよ。いまだに消しゴムありますよ?」

リヴァイ「今じゃプレミアムついているから、大事にとっておけよ」

そうなのか。へえ。

グンタ『正義も〜悪魔も〜みんなまとめて〜俺のマントの〜コレクション〜♪』

ペトラ「えっと…この流れだと、古い歌を歌った方がいいのかしら???」

リヴァイ「無理するな。無理におっさんホイホイソングにしなくてもいい」

ペトラ「ええ…でも……」

ペトラ先輩は空気を読んで古い曲を探しているようだ。

そこまでしなくてもいいとは思うが、恋する乙女は気を遣う生き物だから仕方がない。

ペトラ「ええっと、私は『無冠の帝王』だから、『う』よね。Wanterdを歌います!」

ペトラ『私の胸の鍵を〜こわして逃げて行った〜あいつはどこにいるのか〜盗んだ心を返せ〜♪』

リヴァイ先生がまた反応していた。笑いを必死に堪えているようだ。

ペトラ『う〜Wanterd!! Wanted!!』

リヴァイ「ペトラ、お前もよくやるな…」

ペトラ『ぴんく・レディーなら大丈夫ですよね?!』

リヴァイ「ああ。リアルタイム世代じゃないけど、歌は分かる」

ペトラ『え?! そうなんですか? もしかしてもうちょっと上世代?!』

リヴァイ「エルヴィン世代だろうな。いや、でも分かる。大丈夫だ」

この曲は流石に有名なので私にも分かった。

ペトラ『あん畜生にあったら〜今度はただでおかない〜私の腕にかかえて〜くちづけ責めにあ・わ・せ・る!』

凄くノリノリで歌っている。周りも手拍子を合わせていた。

リヴァイ『ある時謎の運転手〜ある時アラブの大富豪〜ある時ニヒルな渡り鳥〜あいつはあいつは大変装〜♪』

何故そこをリヴァイ先生がやるのか謎だったけど、一同は爆笑だった。

ペトラ先輩の声が乱れていた。まあ、仕方がない。

ペトラ『好きよ〜好きよ〜こんなに好きよ〜♪ もうあなたなしでは〜いられない〜ほどよ〜♪』

ペトラ『からっぽよ〜心はうつろよ〜何もないわ〜あの日あなたが〜盗んだのよ〜♪』

と、1番を大体歌い終わったけど、

ペトラ『しまった! 2番はさすがに分からない! ごめーん!』

オルオ「ふん…ペトラは脱落だな」

リヴァイ「貸せ。続きは代わりに歌ってやる」

何故かリヴァイ先生がマイクを引き継いで歌ってしまった。

リヴァイ『両手には鉄の手錠を〜足には重い鎖を〜♪』

オルオ「うーん、リヴァイ先生のおかげで繋いでいる間に次の曲を入れないと」

オルオ「『ど』か……どうするかな。よし、これにするか」

リヴァイ先生、実は歌を歌うのは好きなのかしら?

サービス精神の旺盛なリヴァイ先生が時間を稼いでいる間、オルオ先輩は選んだ。

66進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:15:31 ID:EqP1/TDw0
オルオ「オレはトラベラーズ・ハイを歌わせてもらう」

オルオ『道路は〜続く〜はるか遠い街まで〜♪』

オルオ『スピードは〜僕の気持ちを乗せて走る〜♪』

ペトラ「スキマノスイッチ! トラベラーズ・ハイね!」

ミカサ「あ、これは知ってる。母がよく聞いている曲のひとつ」

エレン「おばさん、割といろいろ聞いているんだな」

ミカサ「音楽が好きなので。いろんな曲を聞きながら家事仕事をしている」

エレン「そっか」

オルオ先輩も無事に歌い終わってエレンに戻ってきた頃、リヴァイ先生が、

リヴァイ「そろそろつくぞ。エレンでラストだな」

と言った。キリが良くて良かった。

エレン「ええ? まじっすか」

エレン「オレでラストか……何歌おう?」

エレン「そうだ。ラストだから、これにします」

流れて来た曲は有名な曲だった。

『いい日旅立ち』だ。中学生の時に音楽の授業で習った曲だ。

リヴァイ「お前ら、本当に10代なのか? 百枝ちゃん歌えるのか」

エレン『え? ももえちゃん? 誰ですか?』

ミカサ「この曲は学校の授業で習う定番のものですが」

ジャン「ああ、習ったな。確か」

マルコ「僕も習ったね」

リヴァイ「…………すまん。そうだったな。いちいち反応してしまった」

マーガレット「ああ、伝説のアイドル、山口百枝の代表曲ですもんね」

リヴァイ「マーガレット、お前の守備範囲もどうかしているぞ」

マーガレット「褒め言葉として受け取りますw」

そんな感じで皆でわいわい歌っていたら、あっという間に2時間近く経った。

皆、結構意外と歌えて、結局、脱落者はジャンとペトラ先輩の二名だけだった。

バスが旅館に到着して荷物を全部運び終わると、リヴァイ先生は言った。

リヴァイ「ご褒美は大会が終わってから渡す。今日は昼飯食ったら、会場の下見をした後は自由時間だ。好きにしていいぞ」

一同「「「あざーす!」」」

という訳で、下見が終わった後は、旅館の中で自由に過ごす事になった。

会場は県大会の時より大きかった。前回の倍以上ある。

67進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:16:14 ID:EqP1/TDw0
リヴァイ「………急ごしらえでよくこれだけのキャパの会場をおさえられたな」

オルオ「え? 急ごしらえ? 会場は前々から押さえているもんじゃないんですか?」

リヴァイ「あ、いや………何でもない。気にするな」

リヴァイ先生が気になる態度を取った。

エレン「何か、あったんですか?」

リヴァイ「……………」

エレン「リヴァイ先生?」

リヴァイ「あまり、大っぴらには言わないと誓えるか?」

エレン「………はい」

エレンの言葉に促されてリヴァイ先生は少しずつ話し始めた。

リヴァイ「………実はな、うちの県の去年の演劇大会で、大きな事故があったんだ」

オルオ「え? 何ですかそれ。初耳っすよ」

リヴァイ「あまり大っぴらには言えない事故だ。去年はお前らは九州大会に出てないから知らなかったかもしれんが………その年の九州大会で、考えられない事故が起きた。そのせいで、高校演劇の為に毎年会場を貸してくれていた責任者が、来年はもう貸し出せないって言い出してな」

エルド「え? じゃあまさか、今年、公演が変則的な日程になった理由って、本当は……」

リヴァイ「ああ。表向きには発表していないが、そういう事だ。例年、貸し出して貰っていた会場が押さえられなくて、地区大会をやる為の会場も押さえられなかったそうだ。だから前の年に県大会に出場した高校だけで予選大会をやる事になった」

ペトラ「そ、そうだったんですか……」

エレン「……………」

成程。裏事情があった訳だったのか。

リヴァイ「正直言って、今の高校演劇は、そのバックアップがなさ過ぎて生徒に無茶な日程を組ませ過ぎる。その弊害が表に現れてしまったせいでその事故が起きたようなもんだ」

リヴァイ「プロの世界ですら、仕込みには数日かけることもあるくらいなのに、平均して1時間もない時間でどうやって準備を完璧に仕上げられる。上の奴らにその無謀っぷりを何度も説き伏せたが、予算がないからと言って無理を強いる。これじゃ何の為の演劇なのかさっぱり分からん」

ミカサ「前回はでも、ギリギリセーフでしたけど、間に合いましたよね」

リヴァイ「そりゃ場見を最優先にしてそれ以外の事は殆ど省いているからだ。本来ならもっと、あらゆる事故が起きないように想定する作業が必要なんだ。それが起きなかったのは、ただ運が良かっただけとしか言えない」

ミカサ「……………」

リヴァイ先生は苦い物を食べた時のような顔をしていた。

リヴァイ「ま、こんな事を今言ってもしょうがねえけどな。改善出来ないのは俺達大人の力不足だ。無理を強いてすまないと思っている」

リヴァイ「脅すような事を言ってすまない。しかしこれが現実だ。マーガレット、スカーレット、ミカサ。お前たち裏方三人は特に注意してくれ。そして決して無理はするな。何か起きた場合は、俺が体を張ってでも止める」

マーガレット「分かりました。約束します」

スカーレット「了解です」

ミカサ「…………了解」

リヴァイ先生は本当に生徒思いの先生のようだ。

そういう部分は嫌いではないが、だからと言って前回のエレンの件を許した訳ではない。

旅館に戻ってからはそれぞれ部屋に戻った。

ペトラ先輩がエレンに何か話しかけて、そしてこっちに合流してきた。

68進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:17:10 ID:EqP1/TDw0
ペトラ「ごめん。お待たせ」

ミカサ「いえ……」

マーガレット「エレン、凹んでました?」

ペトラ「ちょっとだけね。でも大丈夫だと思うよ」

そして夕食後は男女別れてそれぞれ温泉を楽しむ事になった。

ちょっと熱めの温泉だったけど、皆楽しそうに湯船に入って談笑している。

マーガレット「しかし九州大会に来られるとは思いませんでしたね」

スカーレット「本当ね。ここまで来られたのはうちらの代では初めてだしね」

ミカサ「そうなんですか?」

ペトラ「うん。地区大会、県大会どまりだった。九州大会を経験するのは私達の世代は初めてだよ」

マーガレット「昔は九州大会までいく事も多かったみたいだけど。近年は県大会どまりでしたよね」

ペトラ「勝ち上がるには運の要素もあるけど、今年はエレンの力が大きいと思うよ」

ミカサ「え?」

ペトラ「あの子、演技力あるわ。役者に向いているんじゃないかしら?」

ガーネット「そうですね。それは思いました」

マリーナ「貫録がありますよね」

エレンが皆に褒められてちょっと嬉しい。

ミカサ「確かにエレンは凄い。努力家だと思う」

ペトラ「男の子なのに女の子の役作り、凄く研究しているもんね。手抜かないところが好感度高いわ」

ミカサ「確かに。エレンは手を抜かない」

ペトラ「最初はミカサを主役にする案も考えたけど、結果的にはこっちで正解だったわね」

ミカサ「そうだと思います」

マーガレット「でもいつかはミカサも主役をやったらいいよ」

ミカサ「え……」

マーガレット「美人だし、華があるから、そういうの出来ると思うよ」

ミカサ「いえいえ。私なんか、とても……(ぶるぶる)」

この時点ではとても表舞台に出る勇気なんてなかった。

秋の文化祭では舞台に出る事になったけど、当時はまだまだ裏方だけでいいと思っていたのだ。

69進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:18:29 ID:EqP1/TDw0
マリーナ「ミカサは裏方の方が好きなの?」

ミカサ「そうだと思う。裏方の方が向いている」

スカーレット「確かに荷物運んだり、作業するのは早いけど、運動神経がいい子は役者もやった方がいいと思うけどな」

ミカサ「え……」

スカーレット「例えば時代劇のアクションとかだと、そういうのが出来る子と出来ない子じゃ、差が出るから。演技力だけではカバーしきれない部分ってあるよ」

ペトラ「あーそれは言えてるかも。技術的な部分ってどうしても差が出るよね」

マーガレット「今回の劇はそういう殺陣をメインにした話ではないからいいですが、物によってはそう言うのもありますよね」

ペトラ「オルオが最初に書いた脚本がそうだね。時代劇物でアクション満載劇だったし」

マリーナ「ではもしも、オルオ先輩の脚本をベースにしていたら、ミカサが主役だったかも?」

ミカサ「うぐ……」

ペトラ「ミカサと同じくらい運動神経がいい子がいれば、その子が主役でもいけると思うけど」

アニ(ギクリ)

其の時、少し離れていたアニが露骨に肩を震わせた。

そう言えばアニも運動神経はいい方だったような。

アニの方を見ると、何故か「しっ!」というジェスチャーをされてしまった。

この時点ではまだ、アニは自分の事を余り大っぴらには話していなかったのだ。

ミカサ「わ、私はまだまだ裏方をしたい……ので」

ペトラ「ま、それもそうか。本人の希望を優先しないとね」

スカーレット「勿体ないような気もするけどね」

そんな風に言い合いながら、私達は適当な時間にお風呂を出た。

男子はまだ上がってないようだ。珍しい。男子の方が早いと思っていたのに。

男子の方の部屋が空っぽだった。ペトラ先輩が首を傾げている。

ペトラ「珍しいわね。男子の方が長風呂だなんて」

マーガレット「部屋で待っておきます?」

ペトラ「いや、男子の部屋で待っておこうか。遊びたいし」

そんな訳で少し待っていると、やっと男子の団体が帰って来た。

ペトラ「あれ? 男子の方が遅かったですね。珍しい」

リヴァイ「ああ、ちょっと長話をしていたせいで遅くなった」

ペトラ「そ、そうですか……(羨ましい!)」

ペトラ先輩がオルオ先輩に「後で教えなさい(笑顔)」と呟いているのを聞いてしまった。

ペトラ先輩はいつも全力投球で素晴らしい。

70進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:19:46 ID:EqP1/TDw0
ペトラ「ちょっと時間あるから遊ばない? いろいろ持ってきたわよ」

オルオ「お? やろうか。大富豪とか?」

ペトラ「まあ定番よね。参加する人〜」

勿論、皆で参加する。大富豪は面白いゲームだ。

ただ全員で大富豪をやるのは流石に多すぎるので、グループを分けてやった。

リヴァイ先生も混じって遊んだ。リヴァイ先生と同じグループになってしまった。ちっ。

ミカサ(リヴァイ先生を負かしてやりたい)

そう思ってゲームを進めていたら、その邪念が余計だったのか負けてしまった。

ミカサ「うぐっ……」

リヴァイ「ミカサはゲームに弱いのか?」

エレン「運が絡むと途端に弱くなりますね」

リヴァイ「ほぅ」

エレン「神経衰弱とか、実力が試されるゲームは強いんですけど」

リヴァイ「なら次は神経衰弱をやってみるか」

そんな感じで何故か気を遣われながらゲームをしてしまった。

神経衰弱は得意なゲームなので、今度は勝てた。

リヴァイ「ほぅ……なかなかやるな。ハンジ並みに強いな」

ミカサ「ハンジ先生?」

リヴァイ「あいつも神経衰弱は得意だ。やるといつも負かされる」

其の時、少しだけ口元をあげて笑っていたのが印象に残った。

今思うと、これはただの惚気である。

マルコ「リヴァイ先生が1番好きなゲームは何ですか?」

其の時、マルコが聞いてみた。

リヴァイ「トランプのゲームの中でか?」

マルコ「いえ、それは問いません」

リヴァイ「んー……」

リヴァイ先生は少し考えてから答えた。

71進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:21:01 ID:EqP1/TDw0
リヴァイ「将棋でやるすごろくが割と好きだな」

エレン「あーそれ知っています! 金4枚をサイコロにして進めるすごろくですよね」

リヴァイ「ああ。アレも運の要素が絡んでくるが、意外と面白い。2人でやっても楽しめる。ハンジが教えてくれたゲームだ」

ここも今、思うとただの惚気話だった。

ミカサ「どんなゲーム?」

エレン「将棋盤の4つの角からスタートして、歩から王まで1週ずつリレーしながら進めるすごろくゲームだ」

リヴァイ「将棋盤があれば実際して見せる方が早い。誰か持って来てねえか?」

ジャン「家にならありますけど」

エルド「流石に将棋は持って来てないですね」

リヴァイ「それは残念だ」

エレン「ミカサにはオレが家に帰ってからいつか教えてやるよ!」

ミカサ「ありがとう」

ゲームが好きなエレンはニコニコしている。

きっとアルミンともそのゲームをした事があるのだろう。

エレン「リヴァイ先生もいつかオレと将棋すごろくしましょう! 是非!」

リヴァイ「ああ。いいぞ」

ミカサ(イラッ)

其の時、エレンが自分からリヴァイ先生を誘っていたのでちょっとイラッとした。

そんな感じで夜も更けて、女子は自分の部屋に戻る事になったけど……

ミカサ「え、エレン……ちょっと」

私は先程の苛立ちもあり、ついついエレンに甘えてしまった。

エレン「ん? なんだ?」

ミカサ「お、おやすみの……」

エレン「ぶっ………や、やるのか?」

ミカサ「こ、こっそりお願いします」

キョロキョロ。エレンが周りを確認している。

72進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:22:23 ID:EqP1/TDw0
エレン「えっと、ちょっと外れようか。ここじゃまずい」

ミカサ「ん………」

エレンと私は手を繋いで廊下を歩いて、非常階段の方に向かった。

人気がない場所を選んだ。ここなら恐らく大丈夫だろう。

エレンと真正面から視線が絡ませて、ゆっくりと、キスをした。

ああ。エレンの体温を感じる。

ミカサ「ん………ん……」

其の時はいつもより調子に乗ったキスをした。

ミカサ「んー……」

秒数はとっくの昔にオーバーしている。

腕を背中に回して、せがむようにエレンを密着した。

ミカサ「あっ……」

エレンが中に入って来た。そういうキスがしたかった。

願っていたキスを味わう。ああ。エレンの動きが、激しい。

口の中でエレンに身を任せる。好き勝手に遊ぶエレンが愛おしい。

おやすみのキスが長すぎる?

今、そんな野暮な事は言わないで欲しい。

エレンが体を離そうとした。でもまだ足りないので。

エレン「み、ミカサ…?」

ミカサ「エレンと同じ事、する……」

お返ししてあげたいと思った。エレンの真似をして。

そう、考えていた、其の時……

マルコ「非常口を確認するって、真面目だねえ…ジャン」

ジャン「あ? 旅行先についたら確認するのは当然だろ? 何が起きるか分からん世の中だし……」

人が来る気配がした。まずい。ジャン達がこっちにく………

ジャン「…………………………え?」

ジャンに見られてしまった。がっつりと。

ジャンの顔が酷かった。青ざめて、泣きそうで。

エレン「…………………………」

エレンは何も言えなかった。

ジャン「…………………………」

エレン「…………………………」

エレンとジャンの間に緊張が走っていた。

いけない。とりあえず、空気を変えないと。

73進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:23:01 ID:EqP1/TDw0
ミカサ「ジャンも非常階段を確認しに来たの?」

ジャン「え? ああ……」

ミカサ「私達も、確認しに来た。大事な事なので」

ジャン「あ、ああ………そうだったのか」

ミカサ「うん。では、おやすみなさい」

私は仕方がないので一度、席を外した。

廊下の陰に隠れて2人の様子をこっそり探る。

詳しい会話は聞けない距離にいたけど、エレンとジャンが言い争っている気配は分かった。

話し合いが終わった空気を読んで私は顔を出した。

ミカサ「大丈夫?」

エレン「ああ。もう話はついた」

ミカサ「ジャン、やっぱり嫉妬していた?」

凄い剣幕だった。ジャンは相当怒っているようだった。

エレン「嫉妬大爆発だったな。でもしょうがねえだろ? こればっかりは」

ミカサ「そう………」

ジャンとは夏合宿の時のあの時から、少し思う懸念があった。

ジャンが前に言ったあの台詞を思い出す。

ジャン『オレはこっちの方がいいんだよ。ミカサがいるんだし』

あの時の事は気のせいではないような気がした。

もしかしたら、ジャンは私を好いているのかもしれない。はっきりと確かめていないけど。

ミカサ「ジャンはいい人なので、きっといい子が見つかる」

エレン「そうだな」

エレンもそう答えて、私達は一緒に部屋に戻って行ったのだった。

74進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:23:35 ID:EqP1/TDw0




翌日。遂に九州大会の日程が始まった。

県大会より10分多い仕込み時間、つまり50分で仕込みを終えて合同リハをやって、いよいよ本番になった。

私達の出番は午後の3番目だった。今回も当然、裏方は他校の手伝いもする。

その中で特に印象的だったのは白泉高校の演劇部だった。

白泉高校は伝統のある女子高校なのだが、そのチームワークの凄さに圧倒された。

挨拶は勿論、その行動の規律はまるで軍隊の様だ。

恐らく頭の中で段取りが完璧に出来ているのだろう。

迷いのない動きに引っ張られるように私達も裏を走り回った。

裏方も群を抜いて行動が早い。私達はついていくだけで精一杯だった。

そしてあっという間に自分達の出番がやって来た。再び舞台裏で円陣を組む。

オルオ「九州大会の壁は高いが、ここまできたからには全国目指すぞ! 全力で挑め! いくぞ!!」

一同「「「「おー!!!」」」

2回目の公演。1度目よりも2度目の方が上手く出来た。

全体的に声も良く出ているし、台詞の間違いもなかった。

何よりエレンが凄く楽しそうに演技をしていた。それが嬉しかった。

舞台が終わると急いではけた。次の高校の為に舞台裏を空ける。

控室に戻ってから、三年の先輩達が全員、「終わったな…」としんみりしていた。

75進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:24:48 ID:EqP1/TDw0
ペトラ「あっという間だったわね……」

オルオ「ああ。やってみれば、本当にその通りだったな」

エルド「本当にな。さて、急いで片付けるか」

グンタ「だな」

そして1日目の公演が無事に終わり、明日の公演を待つ。

県大会の時より裏方はハードだったのでちょっと疲れた。

ミカサ「ふぅ……」

お風呂にあがってからも念入りにストレッチをした。

すると、其の時マーガレット先輩達が私に近寄ってニヤニヤした。

マーガレット「ねえねえミカサ」

ミカサ「何でしょう?」

マーガレット「ミカサは同人誌、読んだ事ある?」

ミカサ「いいえ」

そもそも同人誌という物が良く分かっていない。

マーガレット「前にBLについてちょっと興味を持っていたでしょ? だからミカサでも読めそうかなって思う作品をちょっくら今回、持って来たんだけど」

ミカサ「ええ?」

マーガレット「ちらっとでいいから読まない? (ニヤニヤ)」

ミカサ「ちらっとでいいなら」

そして私はその薄い本をちらっと目に入れてぎょっとした。

ミカサ「のsvdhshfdklsfhs?!」

凄くエッチな絵だった。もう、そりゃあ、ええっと。エッチだ。

こんな絵を未成年が見ても大丈夫なのだろうか?

しかも男同士でそういう事をしている絵だった。

詳しく言えば、男の人が男の人のアレを口に含んでいた。

76進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:25:44 ID:EqP1/TDw0
ミカサ「あの………エッチですね」

マーガレット「まあね。でもお話は面白いよ?」

ミカサ「本当に?」

マーガレット「とりあえず、一通り読んで! 是非!」

ミカサ「分かりました」

とりあえず、本当にさらっと読んでみる。

ミカサ(ドキドキ)

何故だろう? 絵柄を目に入れるだけで緊張してしまう。

特にその、エレンに似た顔立ちの男の子が出てくる物もあり、目のやり場に困った。

マーガレット「どう?!」

ミカサ「いや、どう…と言われても」

マーガレット「萌えを感じないか。残念……(シュン)」

ミカサ「エッチだなとは思いますが、その、萌えを感じるかと言われたら違うような」

マーガレット「やっぱりミカサはそっち側の人間じゃないのか。いや、でも何が切っ掛けでそうなるかは分からないし、今度、他の作品も読ませるからね!」

ミカサ「はい……」

何だか面妖な事になってしまった。

スカーレット「マーガレットは根っから腐ってるね」

ガーネット「激しく同意」

ペトラ「本当に。私はそこまでないけど」

マーガレット「ペトラ先輩はどっちかというとドリーム派ですもんね」

ミカサ「ドリーム派?」

マーガレット「キャラ×自分というジャンルもあるんだよ。漫画のキャラと自分が恋愛するパターンかな」

ミカサ「成程」

ペトラ「まあ、少女漫画系が好きなのは自覚しているしね」

ガーネット「作風もその傾向にありますよね」

ペトラ「まあね。乙女チックなのは否めないわ」

マリーナ「いいじゃないですか。乙女でも」

ペトラ「そうかな?」

マリーナ「個性はあった方がいいですよ。私もドリーム系嫌いじゃないですよ」

ペトラ「良かった。仲間がいた(ほっ)」

77進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:26:55 ID:EqP1/TDw0
アニ「………(うずうず)」

ん? 何故かアニがうずうずしていた。どうしたのだろうか?

ミカサ「どうしたの? アニ」

アニ「ん?」

ミカサ「何か言いたそう……」

アニ「い、いや別に……(プイッ)」

マーガレット「そう言えばアニはどんなジャンルが好きなのかな?」

アニ「えっ……(ドキッ)」

スカーレット「ボカロ歌えるくらいだから、ヲタク文化に抵抗はないんだよね?」

アニ「まあ、私の場合は腐っている方の女子ではないんですが」

ペトラ「そうなの? なら私と同じね」

アニ「ま、漫画やアニメはそれなりに視聴済みですけど」

マーガレット「マジか! どの辺が好きなの?!」

アニ「割と雑食ですけど……」

マーガレット「ジャンプー派? マンデー派?」

アニ「マガジン派かもです。昔の作品だと、こーたろーまかりとおるとか……」

マーガレット「古いのきたあああ!! スゴイ子きたね! だったらラブコメ好き?」

アニ「うちは実家が格闘術の道場を開いているのもあって、そういう武術をテーマにした漫画はうちの親父が好きで家に全巻置いてあったんです。そこからですね。私が漫画の世界に入って行ったのは」

マーガレット「うちも似たようなもんだよ。うちは母親が漫画家やっているせいで、漫画が家に腐るほどあってね……」

と、アニとマーガレット先輩が何故か漫画談義に突入してしまったようだ。

何だか楽しそうだ。私は話を聞いているだけだけど。

78進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:28:06 ID:EqP1/TDw0
其の時、ペトラ先輩が苦笑して言った。

ペトラ「ごめんね。ミカサ。話、ついていけないでしょ?」

ミカサ「ええっと、まあ……それは仕方がないです」

ペトラ「演劇部はいろんな方面でヲタクが集まりやすい部なのよね。皆、ちょっと浮いているというか」

ミカサ「でも、楽しそう」

ペトラ「まあね。楽しい事が好きな人が集まる部なのよ。うちは」

そんな風に言っているペトラ先輩がふいに翳りを見せた。

ペトラ「でもそんな部活動ももうすぐお別れか……」

ミカサ「ああ、そうか。そうでしたね」

ペトラ先輩は3年生なのでそうなる。この大会が終わったら受験体制に入るのだ。

ペトラ「うん。寂しくなるけど。でもしょうがないよね」

ミカサ「…………ですね」

ペトラ「次の世代は、ミカサとマリーナが頑張って盛り上げてね」

マリーナ「はい。頑張ります」

ミカサ「頑張ります」

そんな風におしゃべりしていたら、女子の部屋にリヴァイ先生がやってきた。

リヴァイ「おい。まだしゃべっているのか? そろそろ寝ないと明日もきついぞ」

ペトラ「あ、はい。すみません!」

リヴァイ「特に裏方三人娘は早く寝ろ。体力温存しとかねえと最終日まで持たないぞ」

そう言ってリヴァイ先生が言った後、部屋を出て行った。

皆、その後布団に入って、それぞれ眠りにつこうとしたけれど。

その日はなかなか寝付けなかった。疲れているのに。何故だろう?

変に興奮してしまっている。そうだ。トイレに行こう。

消灯後にこっそりトイレに向かうと、廊下でばったり、リヴァイ先生に出会ってしまった。

リヴァイ「なんだ? 寝る前にクソでもするのか?」

ミカサ「………女子生徒にそういう事を言うのはどうかと思いますが」

リヴァイ「腹の調子が悪いと力が出ねえだろ」

ミカサ「デリカシーの話をしているんですが」

リヴァイ「俺にそんなもんを求める方が間違っている」

そんな風に言われても。

79進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:29:18 ID:EqP1/TDw0
リヴァイ「………疲れているのに眠れねえのか?」

ミカサ「何故バレた」

リヴァイ「そういう夜もある。俺もよくその状態になるから分かる」

ミカサ「…………」

黙り込んでいると、何故かリヴァイ先生の方から話を繋いできた。

リヴァイ「裏方は、どうだ? 少しは慣れたか?」

ミカサ「最初に比べれば」

リヴァイ「そうか。なら良かった」

ミカサ「でも、先輩達にいずれ役者もやってみたらどうだ? という感じの事を言われました」

リヴァイ「まあ、ミカサは華があるから勿体ないとは俺も思う」

ミカサ「………顔、ですか?」

リヴァイ「顔だけじゃねえ。姿勢や、所作も含めてだ」

ミカサ「……そうですか」

リヴァイ「お前、モテるだろ?」

ミカサ「まあ、そうですね」

リヴァイ「そういう華のある女は演劇では必要不可欠な存在だ。そいつを中心に舞台が打ちあがる」

ミカサ「…………」

リヴァイ「だからまあ、もしミカサが必要な脚本を舞台でやる時は、いずれやったらいいかもしれんな」

ミカサ「私は表舞台には立ちたくない……」

リヴァイ「例のトラウマが原因か?」

ミカサ「……はい」

リヴァイ「そうか。なら仕方がねえな」

80進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:30:35 ID:EqP1/TDw0
ミカサ「…………」

リヴァイ「すまん。余計な事を言ったな。世間話をする程度のつもりだったんだが」

ミカサ「リヴァイ先生も眠れないんですか?」

リヴァイ「ん? まあ、そうだな。だから廊下をフラフラ歩いていた」

ミカサ「徘徊老人……」

リヴァイ「お前、それは言い過ぎだろ」

リヴァイ先生をそう例えたら苦い顔をされてしまった。

ミカサ「さっさと寝ないと明日がきついと思います」

リヴァイ「まあそうだな。すまん。ミカサもさっさとクソして寝ろよ」

そう言い捨ててリヴァイ先生は部屋に戻って行った。

その後姿を見送って私はトイレに行き、用を足してから再び布団に入った。

リヴァイ『だからまあ、もしミカサが必要な脚本を舞台でやる時は、いずれやったらいいかもしれんな』

リヴァイ先生の言葉を思い出しながら考える。

ミカサ(そういう舞台をする時が、いつかくるのだろうか?)

そんな風に思いながら、ふと考える。

もし自分がトラウマを克服出来たら、いつか。

エレンと共演出来る日が来るのではないかと。

ミカサ(うう………)

複雑な心境のまま、その日は両目を閉じて眠る事にしたのだった。

81進撃の名無し:2014/12/06(土) 13:31:32 ID:EqP1/TDw0
今回はここまで。
追加エピソードと、エレンの知らない部分も追加しながら進みます。
では、また次回。ノシ

82進撃の名無し:2014/12/06(土) 19:48:25 ID:1.q8Lyzg0
いちおつ

83進撃の名無し:2014/12/07(日) 11:02:51 ID:hBz6RzlE0
本当に面白い
続き楽しみです
乙!

84進撃の名無し:2014/12/07(日) 12:09:56 ID:XJdVE68s0
追加エピソード期待!

85進撃の名無し:2014/12/08(月) 00:44:46 ID:.7RCaIkw0
追加エピソードがあるからまた新鮮な気持ちで読めるわ

86進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:26:37 ID:iOhS9Tjk0




2日目。この日も裏方はバタバタしていた。

何よりこの会場は荷物の量に対して通路が狭過ぎた為、相当気を遣って物を運ばないといけなかった。

リヴァイ「ちっ……」

リヴァイ先生も舌打ちしていた。心境的には私も同じだった。

リヴァイ「ミカサ! そのセットは縦にして持ち替えろ! 下から持て!」

ミカサ「分かりました!!」

4人で持って行きたいような大きなセットも通路の狭さのせいで2人でいくしかない場面もあった。

そういう時は力のある私とリヴァイ先生がコンビを組んで運ぶしかない。

勿論、補助でマーガレット先輩もスカーレット先輩も動いていたけど。

県大会の時より神経を遣った。倍以上、疲労している気がする。

汗を拭きながら水分を取った。マメにとらないと視界が霞む。

マーガレット「あ、しまった。ボトル切れたわ」

スカーレット「こっちもなくなった。補充してくる」

リヴァイ「俺のも頼む」

ミカサ「お願いします」

先輩達に頼んでボトルを追加して貰う。

2日目なのにかなりしんどい。まだ明日もあるのに。

リヴァイ「大丈夫か?」

ミカサ「大丈夫です」

リヴァイ「大丈夫っていう面じゃねえな。少し休め」

ミカサ「でも………」

リヴァイ「30秒でいい。一度座るぞ。筋肉疲労のせいで肉離れを起こしたらまずい」

リヴァイ先生にそう言われて仕方なく邪魔にならない場所に移動してしゃがむ事にした。

87進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:27:35 ID:iOhS9Tjk0
リヴァイ「……………」

ミカサ「…………」

何も話す事がなかった。でも、それがかえって有難かった。

リヴァイ「よし、いくぞ」

ミカサ「はい」

そして仕事を再開した。

通路の狭さは本当に神経を遣ったけど、何とかセットを壊さないようにして運んで、その日は無事に裏方を終えた。

旅館に戻ってから夕飯を食べたらだんだん眠くなってきた。

エレンとのお休みのチューをした後、私はその日、すぐさま眠りについた。

そしてその日の早朝。大会3日目の朝がやってきた。

今日でいよいよ最後だ。気合を入れて頑張ろう。

皆でもぐもぐ朝食を取っている最中、リヴァイ先生の携帯が鳴った。

リヴァイ「失礼」

リヴァイ先生はその場で携帯に出た。

リヴァイ「ハンジか。なんだ。朝っぱらから。………は? お前、そういう事は出発前に言えよ」

何やら親密に話している。会話がダダ漏れだけどいいのだろうか?

リヴァイ先生は渋い顔で携帯電話を切った。

リヴァイ「ったく、あのクソ眼鏡。土産に梅酒10本も買って来いとか」

と、ブチブチ言っている。

ペトラ「お土産ですか?」

リヴァイ「どこで調べたのか知らんが、O県に美味い梅酒があるそうだ。買って来いと言われた」

エレン「へえ。梅酒が美味いのか」

リヴァイ「俺も初めて知った。帰りもバスなのに10本も買えるか。せいぜい2本だな」

と、勝手に本数を減らしているけど、それでも土産はちゃんと買うようだ。

ミカサ「土産屋に寄る時間はあるんですか?」

リヴァイ「ん? ああ……それくらいの時間はある。お前らも買いたい物があるなら買っていいぞ」

オルオ「だったら俺も何か買って帰ろうかな」

ペトラ「そうね。私もお菓子を買って帰ろうかな」

3年生にとってはこれが部活での最後の遠出だから嬉しそうだった。

88進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:28:56 ID:iOhS9Tjk0
そして最終日の公演を終えてから搬出作業にとりかかったその日。私にとっては少々嫌な事件が起きた。

搬出作業中、どさくさに紛れて誰かに尻を撫でられるという事件が起きたのだ。

ミカサ「?!」

そのせいでびくっと反応してしまい、危うくバランスを崩しかけた。

反対側を持っていたのはリヴァイ先生だった為、一時的に負荷が向こうにのしかかったようだった。

リヴァイ「くっ……ミカサ、どうした?!」

ミカサ「すみません!!!」

何とか持ち直して運び出した。

セットを出した後、リヴァイ先生がすぐ駆けつけてくれた。

リヴァイ「大丈夫か? 足でも捻ったか?」

ミカサ「いえ……あの……」

どうしよう。こんな事、リヴァイ先生に報告したくない。

でもその様子を目撃していたスカーレット先輩の方が先に言った。

スカーレット「今、しれっと他校の男子生徒がミカサの尻を撫でました」

リヴァイ「なんだと?」

スカーレット「完全に触り逃げですね。一瞬だけ触って逃げていきましたけど」

リヴァイ「どんな奴だった?」

スカーレット「背丈はミカサと同じくらいの男でした。黒縁眼鏡の男です」

リヴァイ「顔は分かるか?」

スカーレット「はい」

リヴァイ「よし。分かった。後で締めてやる」

リヴァイ先生は搬出作業を終えた後、その男子をとっ捕まえて私の前に連れて来た。

男子「な、何するんですか?!」

リヴァイ「てめえの胸に聞け」

スカーレット「あ、こいつで間違いないです」

リヴァイ「てめえのきたねえ手でこの女の尻を触ったな?」

男子「触ってないですよ。何を言って……」

スカーレット「こっちは目撃したんだけど」

男子「それは触ったんじゃなくて、偶然当たっただけですよ! 通路が狭いから仕方がないじゃないですか!」

他校の先生「なんの騒ぎですか。一体」

他校の先生まで集まって騒ぎになりそうだった。

まずい。どうしよう。こんな事で騒いで欲しくないのに。

89進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:30:14 ID:iOhS9Tjk0
男子「先生! 助けて下さい! 濡れ衣です。この人達が僕に痴漢容疑をかけてくるんです」

他校の先生「どういう状況だったんですか」

スカーレット先輩の目撃証言のみの説明だったが、その説明に他校の先生は呆れ返っていた。

他校の先生「それは余りに酷い濡れ衣ですよ。これだけ通路が狭ければ偶然接触する事もあるでしょう。それを一方的に責め立てるのは筋違いという物です」

リヴァイ「しかし……うちの生徒が」

他校の先生「失礼ですが、そちらのお嬢さんは少々お尻の大きい女性の様だ。偶々当たったのかもしれないですよ?」

他校の先生は年のいった男性の教諭だった。

ベテランの先生の風格がある。恐らくリヴァイ先生より裏方の経験もあるのだろう。

リヴァイ「偶々当たった程度でバランスを崩しかける程、こいつは柔な女じゃねえよ」

リヴァイ先生が苛立ったように言い返した。不味い。

これ以上騒いだら、もっと波紋が広がってしまう。

ミカサ「リヴァイ先生。もういいです」

私はこれ以上、騒いで欲しくなくて間に立った。

ミカサ「こちらの勘違いかもしれません。すみません」

リヴァイ「おい、ミカサ……」

ミカサ「皆がこっちを見ている。……ので」

これ以上注目されるのが嫌だったので無理やり話を打ち切らせた。

他校の先生は「まあ、お互い気をつけましょう」といいつつ男子を連れて行った。

しかし帰り際、その男子はニヤリと笑っていた。

ああ、やっぱり。わざとだったようだ。そう確信したけど。

スカーレット「何で? ミカサは被害者なのに……」

正義感の強いスカーレット先輩が怒ってくれた。私はそれだけでも十分嬉しかった。

マーガレット「何の騒ぎ?」

別の担当を持っていたマーガレット先輩も駆けつけてくれた。

ミカサ「いえ、大した事ではないので」

スカーレット「ミカサの尻を撫でた馬鹿がいたんだけど、逃げられた」

マーガレット「ええ? またぁ? もー何で毎年そういう奴がいるのかな」

ミカサ「毎年?」

マーガレット「去年も県大会でそういう馬鹿がいたんだよね。私も何度か撫でられた」

ミカサ「ええ?」

それは酷い話だと思った。

90進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:32:01 ID:iOhS9Tjk0
リヴァイ「すまん。俺がバックで運んでいたせいだな。ミカサにバックを任せれば良かった」

リヴァイ先生が苦々しくそう言い捨てる。

リヴァイ「高校演劇の大道具の世界は男子の方が多いからな。女子がいるだけで浮かれる馬鹿が毎年、何人かいるんだよ」

ミカサ「成程。合点がいった」

リヴァイ「特に今年は通路が狭いせいで嫌な目に遭わせたな」

言い訳を作った意味では確かにそうかもしれない。

ミカサ「大道具はやはり男の世界なんでしょうか?」

リヴァイ「比率で言えばそうなるな。共学でうちみたいに女子だけの大道具組は珍しいかもしれん」

スカーレット「今度見かけたら、今度は逆セクハラしてやる」

マーガレット「駄目だよ! ミイラ取りがミイラになっちゃ!」

スカーレット「でも、腹立つでしょうが!」

ミカサ「あの、もう過ぎた事なので、大げさにしないで下さい」

先輩達の間に立って私は言った。

ミカサ「私が過敏に反応しただけかもしれないです」

リヴァイ「ケツを撫でられりゃ、反応して当然だろうが! 手を滑らせなかったのは幸いだったが、下手したらてめえが怪我するところだったんだぞ」

ミカサ「かもしれませんが、それでも好奇の視線に晒されるのはちょっと……」

恐らく言い争いをしていたらもっと人にひそひそ言われていただろう。

もしそうなった時、その話が人伝えにエレンの耳にでも入ったりしたら。

きっと嫌な思いをさせるに違いない。そう思って私は大事にしたくなかったのだ。

スカーレット「ミカサ。駄目だよ。そういうのは。痴漢を余計に調子に乗らせるよ」

リヴァイ「同感だ。やっぱりあそこの高校に今からでも抗議に……」

マーガレット「まま、2人ともカッカしないで下さいよ」

そこにマーガレット先輩が間に立ってくれた。

マーガレット「大会も終わった事ですし、疲れているせいで判断力が鈍る事もあります。ここはミカサの意志を尊重しましょう」

リヴァイ「…………本当にいいんだな? ミカサ」

ミカサ「はい。私は大丈夫です」

リヴァイ先生は首にかけたタオルで額の汗を拭いながら微妙に顔を歪めていたが……。

リヴァイ「分かった。ミカサがそう言うならこの事は他言無用にする」

と言って気持ちを切り替えてくれたようだ。

リヴァイ「しかし今日一日で疲れたな。特に頭が」

マーガレット「ですね。頭の中はすっかりテトリス状態です」

スカーレット「確かに。今回、通路狭過ぎでしたよね」

リヴァイ「全くだ。でも無事に事故もなく日程を終えたから良しとしよう」

そう労いながら、リヴァイ先生は先輩達の頭をポンポン撫でていたのだった。

91進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:33:03 ID:iOhS9Tjk0




結果発表の時が来た。

出場高校の生徒たちが一堂に客席について、神妙に結果を待った。

審査委員長の発表を順次待つ。結果は………

審査委員長『講談高校……優良賞』

ああ、残念。私達はここまでだったか。

審査委員長『白泉高校……最優秀賞』

その瞬間、白泉高校の生徒がざわめいた。

審査委員長『二連覇、おめでとうございます。どうぞ、壇上へ』

二連覇は凄い。やはり常連校の貫録があった。

審査委員長『また白泉高校には同時にキョーコ・モナカさんに主演特別賞を贈らせて頂きます』

主演の女子が照れくさそうにしていた。

見た目は普通の女の子なのに。演技力が大変素晴らしかったのだ。

私達は今回は優良賞以外の賞は特に取れず、残念だったけど。

精一杯、やり遂げたので皆、満足な顔で旅館に戻る事になった。

バスで旅館に戻る道の中で、ペトラ先輩が言った。

ペトラ「完敗だったわ。やっぱり白泉高校は毎年強いわね…」

オルオ「連覇をするだけはある。役者もそうだが、演出、照明、大道具、どれも一定レベル以上を持っている」

ペトラ「しかも既存の脚本でしょ? どんだけ金注ぎ込んでいるのよって話よね」

オルオ「うちも既存が使えればもっと役者の練習に力を入れられるんだがな……」

ペトラ「お金ないから無理よ。無い物ねだりしてもしょうがないわ」

と、小さな愚痴を言っていた。

エレン「既存を使えればっていうのは、所謂、著作権料を払えればって話ですか?」

其の時、エレンが質問をした。

92進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:33:35 ID:iOhS9Tjk0
オルオ「まあそういう事だ。脚本が先に出来ていれば、それに合わせて裏も表も準備の動き出しを早く出来るから、有利ではあるんだが」

マーガレット「でもそうなると、大道具の予算を削らざる負えなくなるんで、金持ちの学校以外はまずやりませんね」

エレン「金かあ…」

資金力の違いもあるならその時点でこちらが不利だと思った。

ペトラ「来年からは誰が脚本やる? 今までは私かオルオがやってたけど、2年に脚本書ける子いないし、1年に任せるしかないかしら?」

エレン「え? そうなんですか? 2年の誰かがやるのかと思ってたんですけど」

マーガレット「ごめん。私は脚本だけは無理。コントなら書けるけど、中編脚本とか絶対無理」

スカーレット「私も無理だわ」

ガーネット「同じく」

アーロン「読むの専門だ」

エーレン「難しいですね」

あらら。これは困った事態だと思った。

アニ「…………アルミンなら、出来るかもしれない」

と、その時、アニがぼそっと口を出した。

ペトラ「アルミン? あ、後で入るって言ってたあの金髪の子?」

アニ「はい。本を読むのが好きだし、読書量は毎年2000冊超えるとか言っていたんで、出来るとすればアルミンじゃないかと」

ペトラ「嘘!? 読書量負けた?! 私の倍読んでるの?!」

オルオ「平均して一日5〜6冊か。なかなかやるな」

アニ「まあラノベも含むと言ってたんで、休みの日とかは10冊くらい一気に読むとか言ってました」

エレン「ああ、確かにアルミンは本の虫だから、出来るとすればアルミンしかいねえかもな」

アルミンは文化祭の脚本は断ったけど、クリスマス公演の時は引き受けてくれた。

リヴァイ先生とハンジ先生の『愛ある選択』は再現劇とはいえ、その膨大な台詞量をいとも簡単に書き上げた腕は流石だ。

恐らく今後はアルミンが脚本家として演劇部を引っ張っていく事になるかもしれない。

リヴァイ「もしくはエルヴィンの奴に頼むかだな。あいつも脚本は書ける筈だ」

ペトラ「え? エルヴィン先生? ですか? でも……エルヴィン先生って演劇の事……」

オルオ「リヴァイ先生、いいですか?」

リヴァイ「構わん」

ペトラ「なになに? 二人だけ通じる話しないでよ」

オルオ「いや、実は……」

と、その時、オルオ先輩が今後について、エルヴィン先生が副顧問について貰うかもしれない旨を全員に説明した。

ミカサ「顧問が二人……ですか」

私は凄くいい案だと思った。

93進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:34:12 ID:iOhS9Tjk0
ミカサ「いいと思います。その案」

マーガレット「へーエルヴィン先生を通じてリヴァイ先生が演劇に関わる事になったなんて、いい話ですねー」

スカーレット「どう無理やり勧誘したのかもっと詳しく知りたいところだけど(ニヤニヤ)」

マーガレット「そこ気になるよね。確かに」

リヴァイ「そこは気にするな。まあ、反対する者がいなければ、の話だがな。1年、2年はどう思う?」

マーガレット「別にいいですよ。エルヴィン先生なら」

ガーネット「うん、エルヴィン先生は優しいし、いいよね」

スカーレット「確かに兼任じゃ限界があるかもですもんねー」

マリーナ「今までは良かったけど、もし今後、リヴァイ先生に急な事が起きた場合、副顧問はいた方がいいよね」

カジカジ「うん。そうだね。何か起きてからじゃ遅いし」

アニ「むしろ何故、経験者のエルヴィン先生が顧問にならなかったのが疑問ですね」

リヴァイ「そこは大人の事情だ。まあ顧問は無理でも「副顧問」ならあいつなら出来るだろう。というか、させる」

と言う事で話が大体まとまって、旅館についた。

今晩まではここに泊まって明日の朝、学校に帰る。

旅館に戻った直後、急に気合が抜けて眩暈がした。

エレン「ミカサ?! どうした?!」

ミカサ「ご、ごめんなさい。ちょっと疲れたみたい……」

エレン「バスに酔ったのか?」

ミカサ「いえ、そうじゃないけど……」

リヴァイ「今日の裏方はかなりハードだったからな。すぐに休め。裏方チームは全員、体がバキバキだろ」

マーガレット「イエース……」

スカーレット「夕飯の前に寝ていいですか?」

リヴァイ「許す。オレもちょっと仮眠をとる。他の奴らは自由に飯食ってていいぞ」

そして私達は先に休ませて貰える事になった。

布団に入ったらすぐ寝た。死んだように眠る。

次に目が覚めたのはもう真夜中だった。

夜の食事を食べ損ねてしまった。周りを見ると、ペトラ先輩達も眠っている。

時間を確認した。夜の1時を過ぎていた。

枕元に何故かコンビニのおにぎりがあった。エレンの字でメッセージがある。


『起きたら食べろよ。 エレンより』


簡潔なメッセージだったけど嬉しかった。

音をたてないようにちょっとだけ頂く。もぐもぐ。

するとその気配で起こしてしまったのか、マーガレット先輩とスカーレット先輩も起きてしまったようだ。

94進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:35:17 ID:iOhS9Tjk0
マーガレット「やば! 超爆睡してたわ!」

スカーレット「うう……だるい。お茶飲みたい」

ミカサ「どうぞ……(スッ)」

スカーレット「あら、気が利くね。ありがとう。ミカサも今起きたの?」

ミカサ「はい。さっきまで寝ていました」

マーガレット「やーよく寝たわ。お疲れ様」

ミカサ「お疲れ様です」

スカーレット「中途半端な時間に目が覚めちゃったね」

マーガレット「だったら今から夜中の腐女子会をしない?」

ミカサ「婦女子会?」

ガールズトークという事だろうか。

マーガレット「まずはミカサに裏方の感想を聞きたいな」

ミカサ「感想ですか」

マーガレット「そうそう。どうだった? 裏方は」

ミカサ「思っていた以上にハードでした。特に九州大会の方が」

スカーレット「確かに。今回、大物のセットも多かったし、通路は狭いしでやりにくかったよね」

マーガレット「急ごしらえの会場じゃ仕方ないよね」

スカーレット「にしてもあの痴漢野郎、マジ、腹立つ」

ミカサ「ああ、触り逃げしていった彼ですか」

スカーレット「絶対、やったんだけどな。私、ばっちり目撃したし」

ミカサ「よくある事なので、もう余り気にされないで下さい」

マーガレット「電車とかでもあるの?」

ミカサ「そうですね。あんまり酷い時は爪を食いこませて退治しますけど」

スカーレット「絶対、泣き寝入りしちゃダメだよ!」

ミカサ「でも、あまり騒ぎ立てるとジロジロ見られてしまうのが、ちょっと」

マーガレット「ああ。好奇の視線が嫌だったんだ」

ミカサ「(こくり)それにもし人伝えにエレンの耳に入ったらきっと、エレンも嫌な思いをするので」

マーガレット「ああ。そっか。彼氏に気遣った訳だね」

ミカサ「はい……」

スカーレット「え? ミカサとエレンって付き合っていたの? いつから?」

ミカサ「つい最近……お盆からです」

95進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:36:48 ID:iOhS9Tjk0
スカーレット「ああそうか。それでか。ごめん……」

スカーレット先輩が納得してくれたようだ。

スカーレット「彼氏の耳に入れたくなかった訳か。そうだよね。下手すりゃ喧嘩になりかねないか」

ミカサ「エレンは喧嘩早いところもあるので」

マーガレット「まあ、ちょっと短気なところもあるよね」

スカーレット「喧嘩で思い出したけど、ジャンとエレン、公演直前で喧嘩してなかった?」

ミカサ(ギクリ)

スカーレット「非常階段のところでなんか騒いでいたのは聞こえていたけど、何があったのかな」

ミカサ「ええっと……その、あの」

どうしよう? 何処まで話せばいいのか。

いや、話さない方がいいだろうか。こういうのはエレンの判断も必要だ。

マーガレット「大方、ジャンが今頃、エレンとミカサとの事を知って嫉妬を爆発させたってところかしら」

スカーレット「あージャンはミカサが好きみたいだしね」

ミカサ「やはりそうでしょうか」

マーガレット「え?」

ミカサ「いえ、ジャンの事ですけど。ジャンはやはり私を好いているのかと」

スカーレット「今頃気づいたの?!」

ミカサ「薄々気づいてはいたんですが……」

スカーレット「結構、露骨にアプローチしていたのに」

ミカサ「うう……」

マーガレット「でも、ジャンの方から告白された訳じゃないんだよね?」

ミカサ「そうですね」

マーガレット「だったら、ジャンの事はあんまり刺激しない方がいいかも」

ミカサ「スルーした方がいいですか?」

マーガレット「だってミカサはエレンと付き合い始めたんでしょ?」

ミカサ「はい」

マーガレット「だったらそこはもう、ジャンの方から動かない限りはミカサも相手をする事はないと思うよ」

ペトラ「なーに話込んでるの? (ぬっ)」

其の時、話声で目が覚めたのかペトラ先輩も起きて来た。

96進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:38:30 ID:iOhS9Tjk0
ミカサ「すみません」

マーガレット「腐女子会をしていました」

ペトラ「大会終わったから、気合抜けたって感じね。まあいいわ。私も混ぜて」

ペトラ先輩までニヤニヤして会話に混ざった。

ペトラ「で? 何の話をしていたの?」

ミカサ「裏方についての感想を聞かれました」

ペトラ「成程。楽しかった?」

ミカサ「はい。大変だったけど、楽しかったです」

ペトラ「裏方は大変だけどその分遣り甲斐があるよね。たまに変な奴もいるけど」

ミカサ「え?」

ペトラ「私が1年の頃、ケツを撫でてくる3年の男子がいたのよ。腹立ったから、どさくさに紛れて金蹴り仕返ししたけどww」

マーガレット「えええwwwそれは初耳です」

スカーレット「ナイスwww」

ペトラ「わざとじゃないのよwwwと言ってね。接触事故に見せかけて向こうがケツ撫でてきたからこっちもやり返した」

ミカサ「それは危ないのでは……」

ペトラ「まあそうだけど。こっちもタダで撫でられるのは癪だったし」

ミカサ「…………」

次から私もそうした方がいいのだろうか?

ペトラ「大道具の世界は女子が少ないからね。男子が多いから。調子に乗った奴もたまにいるのよ」

ミカサ「そうですか」

ペトラ「嫌な目に遭ったらやり返していいわよ。私が許す」

ミカサ「分かりました」

ペトラ「あ、それとミカサ、おめでとう」

ミカサ「え?」

ペトラ「エレンから聞いちゃった。お付き合い始めたんだって」

ミカサ「あ、はい」

ペトラ「前にエルドがバラしていた好きな人ってエレンの事だったのね」

ミカサ「………そうですね」

97進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:39:26 ID:iOhS9Tjk0
ペトラ「でもこれでジャンは振られるのが確定か」

ミカサ「…………」

マーガレット「まあ、そうですね」

スカーレット「部活辞めるとか言い出さないといいけど」

ミカサ「え……」

ペトラ「あーたまにあるけどね。痴情の縺れのせいで部活辞める子。でも、ジャンは大丈夫じゃないかな」

ミカサ「そうでしょうか」

ペトラ「うん。ジャンはそういうタイプじゃなさそうな気がする」

そうだといいけど。そう思いながら私は俯いた。

すると其の時、

アニ「ん? あれ? 皆、起きてたの?」

マリーナ「まだ夜中ですよ」

ガーネット「ん〜」

と、他の女子も起こしてしまったようだ。

ペトラ「御免御免。起こしちゃったね」

マーガレット「今日は最終日だし、この後はちょっと腐女子会しない?」

アニ「まあ、いいですけど」

という訳で最終日の夜は途中で皆、起きてしまったので、こっそり婦女子会を行った。

皆でいろんなおしゃべりをして楽しく夜を過ごせて嬉しかった。

でも途中でまた眠くなる人も出て来て、眠ってしまったり。

そんなのんびりとした一夜を過ごして私は思った。

エレンにくっついて演劇部に加入した私だけど、この選択は間違っていなかったと。

そうしんみり思いながら、最終日の夜を過ごしたのだった。

98進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:40:29 ID:iOhS9Tjk0





そして朝になって、皆が起きた。

後片付けをして、バスに乗って学校まで帰る。

途中でお土産屋さんにも寄った。

私は『かぼすのサブレ』のお菓子をお土産に買ってみた。

エレンは銘菓と呼ばれる『ざびえる』を買ったようだ。

リヴァイ先生は『きつき紅茶』という紅茶を購入していたようだった。

しかし土産屋の中でまた電話がきたようで、リヴァイ先生は顔を顰めていた。

リヴァイ「お前、測ったように電話してきたな。そうだ。今、土産屋にいる。は? 焼酎もついでに追加だと? ふざけんな。梅酒だけで十分だろうが!」

またハンジ先生の注文のようだ。余程お酒が好きらしい。

リヴァイ「クソ……分かった。焼酎はエルヴィンの分だからな。言っておくが、ハンジの分は買わねえぞ。は? 我儘を言うな! おい、待て! 分かった。そこまで言うなら仕方ねえな。追加で買ってきてやる。だからそれだけは勘弁してくれ」

何か強引に交渉されたようだ。リヴァイ先生が渋々携帯電話を切る。

リヴァイ「ちっ………ハンジの奴、追加の土産を買わないならショートヘアにするとか言いだしやがって」

何故その程度の事で言う事を聞いてしまうのか、この時点では理解出来なかった。

今思うと、リヴァイ先生はハンジ先生の髪ごと愛していたのだろうと思う。

リヴァイ「全く……あいつ、本当に酒好きだよな」

頭をぼりぼり掻きながら会計しているけれど、これもただの惚気である。

リヴァイ「あ? 何見てやがる。ミカサ」

ミカサ「いえ、別に」

リヴァイ「どうせパシリだとか思ったんだろ」

ミカサ「いえいえ。いい気味だと思っただけなので」

リヴァイ「ちっ………」

ハンジ先生が貢がれる様子を見るのは実に気分が良かった。

99進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:42:06 ID:iOhS9Tjk0
エレン「リヴァイ先生、沢山お土産を買いましたね」

リヴァイ「ハンジの奴がいろいろ注文してくるせいだ」

エレン「へー仲がいいんですね。ハンジ先生と。そう言えば夏の体操部の合宿の時も、世話していましたもんね」

リヴァイ「あいつ、油断するとすぐフラフラ何処かに行くからな。こっちは毎回頭がいてえよ」

ブツブツ文句を言っている。その様子にエレンも苦笑していた。

そしてバスに乗り込んで学校まで到着すると、校門の前で少し待たされて皆、ご褒美を受け取った。

しかしエレンは何故かオルオ先輩に図書カードをあげていた。

ミカサ「エレン、オルオ先輩に図書カードあげちゃったの?」

エレン「ああ。オレ、ひょんなことからCD貰っちゃったからさ。これでいいやって思って」

ミカサ「そう……私のを譲っても良かったけど」

エレン「いや、ミカサはミカサでそれで何か買え。おばさんにCD買ってやったらどうだ?」

ミカサ「それもそうね。分かった。そうする」

そんな風に話していたら、突然エレンの携帯が鳴った。

エレン「はい、もしもしーアルミンどうした?」

エレン「え…………………」

エレン「分かった。すぐに準備する。場所はどこだ。ああ、分かった」

エレンの表情が急に強張っていた。どうしたのだろう?

エレン「ミカサ、家に帰って荷物置いたらすぐにまた出かけるぞ」

ミカサ「え?」

エレン「アルミンのおじいちゃんが、今朝亡くなったそうだ」

ミカサ「!」

ミカサ「……分かった」

そして私達は一度自宅に戻ると、お母さんに事情を説明して車を出して貰った。

アルミンの家に到着すると、アルミンが自宅に一人、待っていてくれた。

100進撃の名無し:2014/12/08(月) 01:42:53 ID:iOhS9Tjk0
アルミン「ごめんね、急に呼びつけて」

エレン「気遣うんじゃねえよ。分かってる。喪主はアルミンがするんだろう?」

アルミン「僕しかやれる人間がいないから。段取り分かんないから、どうしようかと思って」

ミカサの母「大丈夫よ。お手伝いできることがあれば、言って頂戴」

アルミン「すみません……」

ミカサの母「親戚の方は?」

アルミン「遠縁の方が何名か……でも全然、連絡し合ってないし、付き合いがないので」

アルミン「両親は既に他界しています。実質、僕一人が身内みたいなものだったんで」

ミカサの母「そう…でも、連絡しない訳にはいかないわ。連絡先は分かる?」

アルミン「あ、はい、一応、連絡先は分かりますけど…」

ミカサの母「仲があまり良くなかったのね」

アルミン「すみません……」

ミカサの母「分かったわ。なら代わりに話してあげる。電話を貸して頂戴」

お母さんはてきぱきとやるべき事をやって段取りをつけた。

そしてその日は当然通夜になり、次の日に葬式を慌ただしく行う事になった。

葬式にはジャンもマルコも来てくれた。クリスタ、ユミル、ライナー、ベルトルト、コニーは遅れて来てくれた。

アニも最後に来てくれた。「遅れてごめん」と言いながら駆けこんでくれた。

サシャだけは仕事の都合上、どうしても抜けられなくて来られなかったそうだ。

アルミン「来てくれただけでも嬉しいよ。ごめんね。大会直後に」

アニ「関係ないよ。その……来ていいのか迷って」

アルミン「だよね。うん、でも来てくれて嬉しい」

そして皆、アルミンに気遣い、簡単に挨拶をして帰って行った。

葬式があっという間に終わって、一息つくと、アルミンは何やら遠縁の人達と話し合いをしていたようだった。

話が終わってアルミンがこっちに合流してきた。


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