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エレン「僕は誰なんだ?」

1名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/08/22(木) 09:50:25 ID:MV639.pc0
〜対人格闘(一時間前)〜

しちがつむいか、はれのちくもり!

アニ「フッ!」バシッ

エレン「どぉわ!」アタマガンッ

アニ「ほら、立ちな…って、え?」

エレン「」

アニ「医務室に…ったく、脆いんだから」クスッ

アルミン「エレン大丈夫かな?」

ミカサ「ちょっとあの女狐削いでくる」

アルミン「ストップ!ストップミカサ!」

105名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/27(水) 20:40:59 ID:8aVTusIE0
そしてその部屋にも当然、注意書きが書いてあった。


『いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。もうこれだけです。どうか体中に、壺の中の塩を沢山よく揉み込んで下さい』


エレン一同「「「「「「「「塩?!」」」」」」」」

一同は見事に合唱した。壺の中には塩が沢山入っている。

エレン「おおおおお……こんなに大量の塩、初めて見たぜ!」

サシャ「パクリましょう! これ、全部持って帰って、皆で分け合いましょう!」

コニー「だな! 体に揉み込むなんて、誰がやるかってんだ!!」

ミカサ「これだけ塩があれば、当分、困らない」

クリスタ「だね。すごい贅沢品だよ。こんなの、盗んで下さいって言ってるようなものだよ」

ユミル「だよなあ……ここの主人、馬鹿じゃねえの?」

ライナー「良心が痛むが……まあ仕方ないな。持って帰ろう」

ベルトルト「じゃあ待ってるアルミンとアニに、この壺渡してくるよ」

ライナー「頼む。ベルトルト」

ベルトルトが一人で壺を持って引き返していった。

さて、いよいよ、もうすぐ料理の完成だ。

と、期待して一同は次の扉を開けた。

106名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/27(水) 21:01:14 ID:8aVTusIE0
そこには、ナイフとフォークを持って構えていた青い眼玉の異形の者達が、待ち構えてた。

しかし中に入ってきたエレン達が全く、クリームも酢も塩もつけていない様を見て、『あれ?』という顔をしていた。

異形の者1『お客さん……ダメですよ〜ちゃんと下ごしらえをして来て貰わないと』

異形の者2『そうですよ〜私たち、腹ペコなんですから。待ってたんですよ? 生で食えっていうんですか?』

異形の者3『生だと美味しくないんですよね〜せめて火を通さないと〜』


ぐへぐへぐへ………


異形の者達は、エレン達を見つめて舌なめずりしている。

その様を見てようやく、エレン達は騙されていた事に気づいた。

エレン「ふざけんな!! こっちは山道歩いて、わざわざ来てやったんだぞ!! 何か料理を出せよ!!」

サシャ「そうですよ!! こっちは腹ペコなんです!! 何でもいいから出してください!!」

異形の者1『え? いやいやいや、ここはそういう店ではないよ? むしろ食べられるのは、あなた達で……」

エレン「はあ? 俺らを食べるって? 巨人より小さい癖に何言ってんだ? こいつら」

ミカサ「むしろ、私達の背丈の半分のサイズしかない。食べるとしたら、私達の方が有利」

ライナー「そうだな。こいつら気絶させて丸焼きにして食べてやってもいいな」


ざわっ………


異形の者1『ちょっと待ってくれ!! 君たち、私らの、この牙とか、しっぽとか、怖くないの?!』

サシャ「全然……むしろ鳥っぽくて美味しそうですね。じゅるり」

コニー「だなー……鳥がちょっと大きくなった程度だよな。人間と鳥の間みてえだな」

ユミル「こんな生物、初めて見るな。どうやってしゃべってんのか良く分からんが」

クリスタ「そうね。鳥みたいな顔してるのに、しゃべってるし、知能はあるのかしら」

サシャ「だとしても、この人数ですし、こっちが断然有利ですよね!」

じわり、とエレン達が空腹をこさえて近づいてくるのを見て、異形の者達は後ずさった。

異形の者2『え? ナニコレ……何で私らが食べられそうな展開になってるの?』

異形の者3『普通、ここは私らが、食べる展開じゃないの?』

異形の者1『ダメだ……こいつら、早く何とかしないと』

彼らは一斉にガタガタ震えだした。

テーブルから席を立ち、一斉に逃げようとするが……

エレン「待ちやがれ!!!」

エレンとサシャとコニーがほぼ同時にタックルをかまして、奴らの動きを封じた。

エレン「何か出せ。今すぐ出せ。こっちは腹ペコなんだ。もっと食わせろ。さっきのクリームでもいい。酢でもいい。塩でもいい。何かよこせえええ!!」

サシャ「最悪、材料だけでも構いません!! 料理出さないなら、自分達で作りますので!!」

コニー「出さねえなら………」

エレン一同「「「「「「「お前らを焼いて食ってやる!!」」」」」」」

異形の者達『『『ひいいいいいい!!!!』』』

107名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/27(水) 21:12:40 ID:8aVTusIE0





そんなこんなで、その異形の者達の蓄えを全部根こそぎ奪うかのように、エレン達は食事にありついた。

彼らは『一番恐ろしいのは、人間なのか』と思いながら、ガタガタ震えながら、必死に料理を作っている。

アルミンとアニはそんな一同のかぶりつき具合を見つめながら、自分達の用心深さって一体何だったんだろうと、ふと思ったが、出来上がったスープやパンや、サラダなどの料理を見ていたら、もうどうでも良くなった。

結果的には、確かに美味しい山の幸を沢山味わえたので、これはこれで良しとする。

エレン「はー食った食った! 山道歩いて来た甲斐があったぜ!」

ミカサ「そうね。どれも美味しかった……」

サシャ「また機会があればここに食べに来たいですね!」

異形の者達(((もう二度と来ないでくれええええ)))

彼らはビクビクしながらそう内心叫んでいた。

ライナー「まあな。これだけ美味しいものを食えるなら、歩いて来た甲斐があったな。会計は……そう言えば、金庫に財布を置いてきたな」

ベルトルト「鍵は持ってるよ。取ってくる」

異形の者達『『『お代は結構です!!!』』』

サシャ「え? タダでいいんですか? 悪いですよ〜ぐへへへ」

ちっとも悪い顔をしていないサシャだった。

異形の者1『その代わり、二度と来ないでください』

異形の者2『本日で、閉店させて頂きます!』

異形の者3『ですから、せめて塩だけは返してください!』

アルミン「ああ、いいよ。塩は死活問題だもんね。はい」

預かっていた塩の壺をアルミンは彼らに返してあげた。

サシャ「あー返しちゃうんですか?」

アルミン「そりゃ返すよ。元々、彼らのものなんだし」

サシャ「勿体無いですねー。まあでも、仕方ないですね」

サシャはちょっとだけ惜しい気持ちで頷いた。

108名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/27(水) 21:28:54 ID:8aVTusIE0
サシャ「塩がないと生活出来ないですもんね。にしても閉店するの勿体無いですね〜」

エレン「だよな! これだけ美味いもん、作れるなら、普通に料理店、続けていいと思うぞ」

ユミル「常連客はつきそうだよな。穴場の料理店として」

クリスタ「私もそう思う。これを機会に、本格的にお店を始めたらいいのに」

異形の者1『し、しかし私達は……その……人間を食べる、一族なので』

エレン「そんなに小さいくせに? 俺達より小さいんだから、無理だろ。諦めろよ」

異形の者2『しかしそう言われましても……』

ライナー「人間以外のものを食って生活は出来ないのか?」

異形の者3『はあ……出来なくはないですが、そうなると、草食動物のように弱くなってしまいますので』

ユミル「難しい問題だな。でも、私らも食われるのはごめんだし」

エレン「人間を食べなくても生きてはいけるが、弱くなっちまうのか。うーん……何かいい方法ねえかな」

ミカサ「人間を食べるということは、タンパク質を欲している証拠。大豆などの豆類で代用してはどうだろうか?」

サシャ「そうですね。私達も肉が食べられない時は、豆で我慢しますからね」

異形の者1『まめ? まめとは何ですか?』

ミカサ「こういう、小さな丸い実のような食べ物がある。今度、持ってきてあげる。それをお代の代わりとして提供しよう」

異形の者1『ほ、本当ですか?』

ミカサ「人間を食べるよりはよほどいい。勿論、豆もそれなりに値段はするのだけども」

サシャ「お代の代わりにするなら丁度いいと思いますよ」

というわけで、何故か最後はそこの異形の者達と仲良くなって、一同は帰路につく事にしたのだった。




アニ(はー……結局、なんだったんだろ、今回の食事会)




と、アニは一人、途方に暮れたが、エレンの様子を見ていると、何だか楽しそうにしていたので、まあいいや、と思い直した。

アニ(これで一応、義理は果たした。もう、あいつの事に対しては罪悪感を持つ必要はないよね)

そう自分に言い聞かせ、帰り道、皆と少し遅れて歩いて帰っている。

109名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/27(水) 21:34:34 ID:8aVTusIE0
>>97
すんません。多分、似たようなオチは他の漫画でもありそうな気がしたんですが、
サシャとかコニーとかいる時点で、料理店側が無理ゲー確定だったので、
あえて途中でレスしませんでした。

気づくどころか、どんどん奥に進んでます。
何故なら、部屋にはクリームを用意してあったから!!
……サシャなら絶対、気づく。絶対。

110名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/27(水) 21:53:00 ID:8aVTusIE0
そんなアニの様子に気づいて、エレンは声をかけた。

エレン「よう、アニ! 歩き疲れたのか? もうちょっとで着くから、頑張れよ」

アニ「別に歩き疲れた訳じゃない。ただ、これで良かったのかなって思っただけ」

エレン「ん? ………ああ! そう言えばアニが俺の分、奢る話だったっけ。すっかり忘れてたわ」

アニ「…………能天気ね」

エレン「っていうか、元々別に、奢って貰わなくても良かったしな。こうやって皆と一緒に出かけて飯食っただけで十分だよ。俺は」

アニ「あっそ」

アニは素っ気なく答えた。すると、エレンは「何だよ」と不機嫌になる。

エレン「アニは楽しくなかったのか? なんか、探検したみたいで、俺は今日、すげえ楽しかったぞ」

アニ「あんたはそうだろうけど……もしも最後、出てきたのがもっと凶悪な奴だったらどうしたの。危なかったかもしれないじゃないか」

エレン「え? もしそうだとしても、みんなも居たし、勝てただろ」

アニ「…………あんたはいろいろ過信しすぎ」

アニは呆れたように言い放った。

アニ「怪しいと思ったら、私やアルミンみたいに用心したり、考えたりするのが普通なの。疑問を持ちながら無謀に突き進むのは馬鹿のやることなんだよ」

エレン「そうかー? 別に無謀だとは思わなかったけどな」

エレンはアルミンとミカサの背中を見つめながら言った。

エレン「ミカサもアルミンもいるし、ライナーやベルトルト、サシャ、コニー、ユミルとクリスタまでいるんだぜ? このメンバーで協力しあえば、だいたいの事は怖くねえよ」

アニ「……………」

エレン「あ、でもそうか。あいつらがもし巨人クラスのでかさだったら、やばかったかもしれねえな。というか、あいつら強くなったら、巨人並みにでかくなったりして。もしそうだったらやばいか! どうしよう!」

今更ちょっとだけ青ざめるエレンを見ていると、アニは半眼になるしかなかった。

111名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/27(水) 23:07:36 ID:8aVTusIE0
エレン「あー……なんかあいつらの外見の可愛らしさに油断してついつい仲良くなっちまったけど、もしかしたら、あいつらはまだ子供で、大きくなったら、巨人みてえに人類の敵になるかもしれんよな。その時は、どうしよう……」

アニ「もしそうなったら、どうするの?」

エレン「くそー……あいつらには悪いけど、食うしかねえか。あのプリプリの足を、食うしかねえか」

でもな、なんか情が湧くと食べづらいな、とエレンはぶつくさ言っている。

アニはただただ、嘆息するしかなかった。

アニ「あんたは本当に馬鹿だね」

エレン「うっ………今回は反論出来ねえ」

エレンはアニに責められてすっかりしょげていた。

エレン「でも、巨人と違ってさ、会話も出来るし、そんなに凶暴そうでもなかったし、可愛かったし、うまそうだったし……」

アニ「はー………」

アニは複雑なその気持ちを、空に放った。

アニ「もしも巨人と会話できたら、あんたは巨人を駆逐しないのかい?」

エレン「え?」

アニ「もしもそういう巨人がいたら、あんたどうするつもりなのさ」

エレン「……………」

話題が少しずれている気もしたが、エレンは少し考えてから言った。

エレン「もしも巨人と意思の疎通が出来るなら、まずは何で人間を食うのかを問い詰めてやる」

アニ「……………」

エレン「俺達人間と同じ「食事」としての理由じゃねえのは分かってる。消化器官があってねえようなもんだからな。だから、まずはそこを問い詰める」

アニ「それで?」

エレン「その後は、駆逐する。どんな理由があろうとも、俺は巨人の存在は許さねえ」

アニ「…………」

そんな二人の会話をアルミンは傍で聞いていたが……

ひとつ気になる事があって、アルミンはエレンに問い詰めた。

アルミン「ねえ、エレン」

エレン「なんだよ」

アルミン「君は……巨人の存在を思い出したのかい?」

エレン「え?」

アルミン「いつの間にか、普通に巨人を話題に出しているけど、巨人については、最初は記憶がなかった筈だよね」

112名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/27(水) 23:24:46 ID:8aVTusIE0
アルミンの指摘にミカサもハッとなって振り返った。

ミカサ「そう言えば、アルミンの言う通り。最初はエレンは、巨人の存在を忘れていた。いつ、思い出したの?」

エレン「あれ? そう言えばいつだっけ? んー………思い出せねえな」

ミカサ「ということは、もうほとんど記憶が戻りかけているのでは?」

エレン「そうなのかな? んー……でも、思い出せねえ部分もまだあるぞ?」

アルミン「何が思い出せないんだい? エレン」

エレン「ええっとな。多分、肝心な部分だと思うんだが………」

そう前置きして、エレンは言った。

エレン「俺の両親って、今、何してるんだ?」

アルミン&ミカサ「「!」」

エレン「父さんと母さんの顔を思い出せないんだ。俺が存在する以上、両親はいる筈だろ? まさか、生き別れってわけじゃねえよな?」

アルミン「あっ………」

ミカサ「………」

二人はすごく言いづらそうに、口を閉ざしてしまった。

113名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/27(水) 23:36:49 ID:8aVTusIE0
エレン「あとな、何でか分からんが、巨人を許せねえ理由が思い出せねえ」

アルミン「………」

エレン「巨人の存在自体は思い出したんだよな。すげえ、大きな人間で、人を食うって事は、思い出した。でも、この憎悪感がどこから来てるのか、それが思い出せねえんだ。多分、なんか理由があるんだろうけど……」

目の前で母親を巨人に食われた事だけが、思い出せないようだった。

エレンの様子を見ていると、アルミンはそれがすぐに理解できた。

思い出させない方が、いいのかもしれない。

アルミン「エレン、焦らないほうがいいよ」

アルミンはエレンの肩を叩いた。

アルミン「立体機動や、巨人の事は思い出したんだ。他の事は、そう大した記憶じゃなかったのかもしれないし」

ミカサ「そうね。忘れるくらいなのだから、思い出さなくてもいいのかもしれない」

エレン「いや……それは多分、違う気がする」

エレンは首を左右に振ってアルミンに真正面に向き直って言った。

エレン「俺、なんか一番、大事な事を忘れている気がするんだ。本当は、思い出してえよ」

アルミン「…………」

エレン「もうちょっと時間がかかるかもしれんけどな。俺は、思い出したいんだ」

エレンはそう言ってアルミンに頭を下げた。

エレン「頼む。アルミン、協力してくれ。これからも頼むぞ」

アルミン「……僕に出来る事があるならね」

そう、曖昧に返事をするしかない、アルミンだった。

その様子を複雑な心境で見つめるアニだった。

114名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 00:04:21 ID:8aVTusIE0
今日はここまで〜またねノシ

115名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 15:54:36 ID:8aVTusIE0
女子寮に帰ってから一人、アニは深いため息をついていた。

エレンの記憶の欠落。その現象を引き起こしたのは自分だけども。

そもそもの、エレンという人格を作り出したのは、自分達に責任がある。

ここでは詳しくは言えないが、アニには抱え込んでいる秘密がある。

その秘密を共有しているのは、ライナーと、ベルトルトの二人だけ。

罪悪感は常につきまとっていた。アニの体と心を蝕むように。

アニ(あんまり深入りしちゃダメだって……)

このドロドロした思いを消すことは出来ないだろう。一生、かかっても。

自分達は、それだけのことをしてきたのだから。

いっそ、このままエレンの記憶が、戻らないならそれはそれでいい。

自分に都合の良い展開を望む自分がいて、それもまた、自己嫌悪の原因になった。

アニ(私は……結局、どうしたいんだろうか)

使命を忘れたわけではない。

でもここにいるうちに、だんだん、今日のような、満更でもない時間を過ごすうちに……

本当の目的を忘れそうになる自分がいる。

…いや、忘れたいのだろうか。本心は、ただの女の子に戻って。

皆と一緒に、笑ったり、遊んだり、普通に過ごしたいのだろうか。

アニ(はははっ……そんなの、偽善だよね)

ここにいる以上、今更戻れないのに。何を思っているのだろうか。

116名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 16:01:24 ID:8aVTusIE0
アニ(もう、やめよう。エレンにも、他の奴らにも。これ以上は、辛くなるだけ)

義理は果たしたのだから、これ以上はやめようと思った。

明日からはまた、いつもの自分に戻ろう。

氷の女と言われてもいい。鉄の女でも構わない。

今はただ、任務を遂行しなければ。

そう思い直し、アニは布団の奥深く、眠りについた。







それからの日々は、普通に時が過ぎた。

エレンの記憶は日常生活に支障の出る程の障害ではなかったので、この訓練生活にも慣れてきたようだった。

わからないことはアルミンが新しく教えていたし、技術的な面ではミカサがエレンをサポートしていた。

それ以外の雑務についても、ライナーやベルトルト、マルコなど、男子がサポートしていたし、ミーナやサシャ、クリスタやユミルも、輪に混ざってエレンを気にかけていたおかげで、自分の出番はほぼなかった。

そんな感じで時が過ぎて、もうほとんど、エレンの記憶喪失の件を皆が忘れ去っていたその頃、ふと、エレンの方から、何故かアニに話しかける機会があった。

117名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 16:10:59 ID:8aVTusIE0
エレン「なあなあ、アニ〜」

アニ「………なに?」

エレン「格闘術の時のさ、相手、最近、全然俺と組んでくれねえよな。なんでだ?」

アニ「……はあ? あんた馬鹿なの? 一度、私に頭から落とされて、そのせいで記憶障害が起きたのに、まだ私と組みたいわけ?」

アニはあきれ果てた。

何度も断ってるのに、まだやってくるエレンの頭は鳥頭なのかと思った。

エレン「そうだけどさ……なんか、あれ以来、まともにアニと話す機会が減って、なんかつまんねえっていうか」

アニ「はあ………私は逆にほっとしてるんだけど。あんたをもう一回、頭をパーにさせたら、さすがにミカサに殺されるからね」

アニはそっぽ向いてそう言い放った。

すると、エレンは頭を掻きながら言った。

エレン「じゃあせめて、普通に会話くらいはしてくれよ。なんていうか、最近のアニっていつも一人でいるだろ? 前はそんなんじゃなかったのに」

アニ「前って……私はいつもこんな調子だよ。いったいいつのことを話してるの」

エレン「えー? 大分前に皆で山道歩いて飯食ったときとか? あの頃のアニはもうちょっと、雰囲気が柔かった気がするんだけど」

アニ「…………そりゃ、あの時は、エレンに罪悪感があったからね」

アニはもうほとんど治ってるといってもいい、エレンには罪悪感を持たなかった。

アニ「もう訓練生活にも慣れたし、生活に支障はないだろ? だから元の私に戻っただけだよ」

エレン「んー……本当にそうか? 俺はあの時のアニの方が、素に近い気がしたんだけどな」

アニ「!」

118名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 16:24:35 ID:8aVTusIE0
アニはその瞬間、背筋が凍るような思いをした。

エレン「なんていうか、ほんの少し明るかったっていうか。今は、なんか思いつめているようにも見えるし……」

アニ「…………」

エレン「俺のせいでまだ悩んでるのか? とも思ったけど、もう罪悪感は持ってないなら、別のことで何か悩んでるのか?」

アニ「…………あんたには関係ない」

エレン「まあそりゃそうだけど。俺には関係ねえけど……アニは美人なのに、もったいねえなあと思うんだよ」

アニ「はあ……あんたは私に何を期待しているの」

アニは鋭い目つきで睨み返した。

これ以上は、もう、入ってこないで欲しいという意味も込めて。

アニ「美人だったら何? クリスタみたいにいつも愛想よくしておけって言いたいの? それにミカサも美人でしょ? あいつだって、愛想なんか良くない。人形みたいな顔じゃないか」

エレン「ミカサはよく笑うぞ? 何言ってんだ?」

エレンはその時、不思議そうな顔をした。

エレン「そりゃいつもかしこも笑ってるわけじゃねえけど、冗談が通じたり、面白い事があるときはちゃんと笑ってる。俺が言いたいのは、アニはそういう時ですら、笑いを堪えているように見えるって言いたいんだが」

アニ「!」

アニは激怒した。

もう、これ以上、エレンと関わり合いたくない。

アニ「それ以上、言うな!!」

エレン(びくっ……)

アニ「金輪際、あんたとはもうしゃべらない。話しかけないで!」

エレン「なっ………」

アニはそうエレンに言い捨てて、廊下を走り去っていった。

エレンは呆然として、その後ろ姿を見つめることしか出来なかった。

エレン「……俺、まずいこといったのか?」

何が悪かったのか、さっぱり理解出来ない。

エレン「どうしよう……」

ぽつりと呟いたその声は、雨音にかき消されていった。

119名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 16:33:09 ID:8aVTusIE0
腹減ったので休憩します。気になるところだけど、続く〜。

120名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 16:57:06 ID:8aVTusIE0
アニ(なんでなの?)

アニは腹が立っていた。

アニ(なんで、あいつは、変なところで鋭いの?)

他の奴らは、そんな風にズカズカ入り込んでこないのに。

アニ(あいつは、どうして…………)

アニはこの憤りを何処にぶつければいいのか分からず、雨の中、外を走った。

誰も外にはいない。当然だ。雨が降っているのだから。

もう時間も夜遅い。こんな時間に外を出歩くのは危険だろう。

グラウンドをつっきって、宿舎の敷地の端っこに逃げる。

誰もいないその場所で、アニは雨を見上げた。

アニ(こんな面倒臭い感情、要らないのに………)

ムカムカする感情を、誰かにぶつけたい気持ちで一杯だった。

アニの金髪は、濡れて髪も解けかけている。

そんな風に一人の時間を過ごしていたら、>>125が、偶然、アニの姿に気づいた。

121名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 16:58:07 ID:8aVTusIE0
エレアニパート書くのが結構面白くなってきた。すまぬ。
まだ充電し終わってないので、しばらくまた安価で休憩する。
またねノシ

122名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 16:59:00 ID:8aVTusIE0
あ、書き忘れたけど、安価はエレン以外でお願いします。

123名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 16:59:30 ID:iqa8ApwQO
>>109
そうか
まあ勝ち目のある化け物で逃げる程でもなかったから違和感はなかったよw
すまん気にせず続けてくれ

124名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 17:07:57 ID:iqa8ApwQO
連投すまん踏み台な
安価なら途中のやり取り気になるからアルミンで

125名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 18:18:37 ID:8aVTusIE0
アルミン「ひえー……通り雨かなあ……宿舎に戻れなくなっちゃったよ」

備品倉庫でいろいろ野暮用を済ませていたら、宿舎に戻るに戻れなくなって立ち往生していたアルミンだった。

アルミン「………あれ? あんなところにアニがいる。おーい! アニ! 雨宿りするならこっちにおいでよ!」

アニ「!」

アルミンに気づいて、さっと逃げ出すアニだった。

アルミン「え? なんで? 雨降ってるのに」

何故逃げ出したのか分からない。ちょっと気になって、アルミンはアニを追いかけた。

勿論、雨に濡れながら。

アルミン「アニ! どうしたの? 走って帰るより、雨を止むのを待とうよ」

アニ「うるさい! 今、話しかけないで!!」

アルミン「(どうやら機嫌が悪いらしい)………何かあったの?」

アニ「だから話しかけないでって言ってるでしょ!!」

アルミン「……………」

こういう時の女性のヒステリックな態度には慣れている。

たまにだが、ミカサも女の子なので、時々理不尽なヒステリーを起こす事があるのだ。

だからアルミンは努めて冷静に何も言わなかった。

仕方なく、一度備品倉庫に戻って、備品の大きめの木の板を一枚だけ持ってくる。

それをアニに手渡して使うように言った。

アニ「…………」

アルミン「これを持っていけば、雨を避けながら帰れるでしょ。宿舎に戻ったら?」

アニ「アルミンは」

アルミン「僕は雨が落ち着くまで待つよ。備品倉庫に自分の荷物もあるんだ。自分はいいけど、荷物を濡らして帰りたくない」

濡らして帰りたくないという言葉で、アルミンが何をしているかかだいたい想像できたアニだった。

アニ「なんか、勉強してたの?」

アルミン「いや………勉強というより研究。自分の仮説の検証とか。趣味みたいなものかな。あんまり人に知られたくなかったけど」

アニ「…………」

アルミン「アニこそ、なんでこんな遅くに外出歩いてるの? 女の子なんだから、一人歩きは危ないよ」

アニ「あんたの方がよほど危ないんじゃないの?」

アルミン「掘られるでも心配してくれるの? ははは……ありがとね」

アルミンは思わず苦笑いだった。

126名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 18:25:48 ID:8aVTusIE0
アルミン「心配してくれて嬉しいけど、実は倉庫にはマルコもジャンも一緒に来ているんだ。だから大丈夫」

アニ「………あっそ」

心配する必要はなかったようだ。アニはぷいっと顔を背けた。

アルミン「戻らないなら雨宿りしようよ。どうせすぐ止むよ。この雨ならさ」

アニ「……………」

アニは渋々、アルミンについていった。

倉庫の入口で座り込んで、ため息をつく。

マルコとジャンは倉庫の奥で何やら二人で話しているようだ。

アニ「アルミン……あんたいつの間にジャン達と仲良くなったの?」

アルミン「え? いや元々、僕が仲良くなったのはマルコの方で、マルコはジャンと仲が良かったからね。ジャンは立体機動には真面目に取り組んでいるし、整備にも結構マメに手入れにきているんだ。微調整入れたり、備品のメンテナンスも自主的にしているし。その関係で僕もジャンとは時々話すようになったんだ」

アニ「…………あんたはエレンとミカサとばっかり、べったりしてたと思ってたのに」

アルミン「そりゃ基本的には、エレンとミカサと一緒にいる事が多いけどね」

と、前置きしてからアルミンは言った。

127名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 18:38:55 ID:8aVTusIE0
アルミン「ここに来た頃に比べたら、僕だってそりゃ他の子達とも大分話すようにはなったさ。点数を取る為には、一人ではどうにもならない事もあるし」

アニ「……例えば?」

アルミン「チーム戦で挑む時だってあるだろう? そういう時は全く知らない人よりも、少しでも話した事のある人と組めたら、それだけで有利になるじゃないか」

アニ「その為に、あんたも人との付き合いをするようになったわけか」

アニの言い方が微妙に辛辣でそれが気になったアルミンだった。

アルミン「…………打算的な言い方になるけど、そうだよ」

アルミンはアニの方を見ないで、隣に座って答えた。

アルミン「人の情報は多ければ多いほどいい。それだけで、いざって時に、いろんな戦略を考えることができる。幅を広げる事が出来る」

アニ「……………」

アルミン「相手の特性を知ることで、将来役に立つ事もあると、僕は思ってる。僕は他の人より体力がない分、頭を使って戦うしかないからね」

アニ「…………そうか。あんたはそういう考え方なんだね」

アニはアルミンの考え方に触れて少しだけ気持ちが落ち着いた。

アルミン「うん。アニは………こういう打算的な考え、嫌いかい?」

アニ「別に。いいんじゃないの? 何も考えずにズカズカ人の中に踏み込む奴よりよっぽど清々しいよ」

アルミン「……………もしかして、エレンの事を言ってる?」

アルミンの名推理にアニは思わずぎくりと、大きく目を見開いた。

128名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 18:59:33 ID:8aVTusIE0
アルミン「はは〜ん、エレンとなんか喧嘩したね?」

アニ「喧嘩なんか……」

アルミン「当てて見せようか?」

アルミンは笑っていた。大方の予想は出来るから。

アルミン『アニって美人なのに、笑わないのって勿体ねえよなあ』

アニ「?!」

アルミン『ミカサと違って、一人でいるっていうより、一人を選んでいるって感じだよなあ』

アニ「?!」

アルミン『笑いたいなら、笑えばいいのに。遠目でこっちを見てないで、輪に入ればいいのになあ』

アニ「?!」

アルミン『アニって、なんか変な奴だよなあ。なんか、違和感があるよなあ』

アニ「もういい、アルミン」

アニはアルミンのエレンのモノマネを見ていると、これ以上は耐えられなかった。

アニ「あんたたち、そんな事を話してたの?」

アルミン「たまに、だけどね。ミカサがいない時だけ、だけど。エレンはアニを気にしてたよ。特に皆で山に食事に行ったあと、アニの様子が変わったからよけいにね」

アニ「……………」

アルミン「僕は正確には「戻ったんだよ」と伝えたんだけど、エレンは納得してなかったみたいだよ。その事で、喧嘩になったんじゃないの?」

129名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 19:13:04 ID:8aVTusIE0
その通り過ぎて何も言い返せないアニだった。

アルミン「エレンはどうも「アニが何か悩んでいるのかな?」って思ってたみたい。僕は「もしかしたらまだ、エレンの記憶障害の件を気にしてるんじゃないかな?」と答えたんだけど、アニのその様子だと、それは違うみたいだね」

アニ「…………」

アルミン「エレンは、思ったことをポンポン言っちゃうからね。後先考えず、突っ走っちゃうから。そのせいで、アニを怒らせちゃったんだったら、僕からも謝るよ。ごめんね」

アニ「別にアルミンが謝る必要はないよ」

アルミン「いやでもね、エレンの事を止めなかった僕も悪いしね。あんまり深入りするような事でもないのかもしれないし」

アニ「…………」

アルミン「そういう事って、あるよね。あんまり突っ込まれると、イライラしちゃうこと。アニにもあるんでしょ?」

アニ「アルミンにもあるの?」

アルミン「あるに決まってるじゃないか! むしろあり過ぎて困るくらいだよ。アニは特別じゃないよ。普通だって」



普通だって。



そう、言われた瞬間、何故か、心の琴線に触れられた気がして、アニは唇を噛み締めた。

130名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 19:21:55 ID:8aVTusIE0
そうだ。自分は特別じゃない。

選ばれた戦士なんて、柄ではない。

本当なら、こんな事、やりたくない。

ただの、普通の女の子になりたかった。

普通の女の子に戻りたい。

そう、ここで叫べたらどんなに楽になれるだろうか。

言ってしまおうか。何もかもをぶちまけて、晒しだして。

アニ(出来るわけないじゃない……)

それなのに、それなのに、それなのに。

中途半端に、皆、優しくしないで欲しい。

八つ当たりにも似た感情が爆発して、アニは目頭をおさえた。

そんなアニの様子を静かに見つめながら、アルミンはただ唇を結んだ。

抱えているものは皆、それぞれ何かあるのだろうと、推察する事しか出来ないけれど。

力にならない方がいい事もあることを、アルミンは知っている。

131名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 19:31:33 ID:8aVTusIE0
アルミン「エレンには僕から言っておくよ。あんまりよけいな事するなって。だから、エレンのことは許してやってよ」

アニ「………アルミンに免じて、なら」

アルミン「ありがとう。アニ」

雨が止んだ。やはりただの通り雨だったようだ。

アルミン「あ、丁度雨も止んだよ。時間も時間だし、そろそろ帰ろうか。女子寮に送っていくよ」

アニ「……あんたは女の子扱いがうまいね。エレンとは、全然違う」

アルミン「ええ? そうかな……まあ、そう言われると、悪い気はしないけど」

照れたように笑っているアルミンを見ていたら、自然とアニも唇を釣られて上げてしまった。

アニ「少し落ち着いたよ。あんたにも、借りが出来ちまったみたいだね」

アルミン「ええ? いいって。気にしない気にしない。そういう事くらい、誰だってあるよ」

アルミンはそう言って、ジャンとマルコを呼んで後片付けをし始めた。

アニはジャンとマルコに見つかって、意外な顔をされてしまったが、会釈だけして、先に帰る事にした。

アルミン「あ! 待ってよアニ! 送るってば」

アニ「いいよ。一人で帰れるから。後片付け、ちゃんとしていきな」

そう言って軽い足取りでアニは帰っていったのだった。

そんな彼女を見つめながら、ジャンは呟いた。

ジャン「なんか、今のアニ、ちょっとだけ綺麗だったよな」

と、不思議そうに。マルコも、頷いていた。

132名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 19:32:31 ID:8aVTusIE0
>>131
訂正
アニ「……あんたは女の子の扱いがうまいね。エレンとは、全然違う」

の、が抜けてた。

133名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 19:53:59 ID:8aVTusIE0
エレン「アニの奴、何処に行ったんだろう……」

エレンは宿舎の中をキョロキョロ探していた。

女子寮の中にも一度、探して回った。ミカサにも話して捜索を手伝って貰っている。

ミカサと一緒に、雨合羽を着て外に出て、いろんな場所を探しているが、まだ見つからない。

ミカサ「宿舎の外に出たと言っても、そう遠いところまでいったとは思えない。多分、屋根のある別の場所に移動したのでは」

エレン「だといいんだけど」

とりあえず思いつくところはだいたい足を運んだ。

残りは備品倉庫くらいか。遠目で見ると、ランプの明かりが漏れている。

誰かが倉庫を使用している証拠だ。

雨は止んでいたが、雨合羽を脱ぐのが面倒でそのままの格好で倉庫の中に入ると、アルミン、ジャン、マルコの3人が丁度後片付けをしていた。

エレン「アルミン! アニは見なかったか?!」

アルミン「あ、さっき女子寮に帰っていったよ。行き違いになっちゃったかな」

エレン「そっか……ありがと! 俺、アニに謝りに行ってくる!」

アルミン「あ、ちょっと待ってエレン!」

エレン「何?!」

アルミン「明日にした方がいいかも。今日はもう遅いから、寝かせてあげなよ」

エレン「でも……俺、アニを相当怒らせちゃったんだけど」

アルミン「大丈夫。さっき、僕がアニと話したから。少し落ち着いたみたいだよ」

エレン「そ、そうか……」

エレンはほっと胸を撫で下ろした。

エレン「アルミンが宥めてくれたのか。なら良かったぜ。俺、謝りたかったけど、どうしたら言ったらいいのかさっぱり分からなかった」

134名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 19:58:43 ID:8aVTusIE0
>>133
訂正
エレン「アルミンが宥めてくれたのか。なら良かったぜ。俺、謝りたかったけど、どう言ったらいいのかさっぱり分からなかった」

なんか混ざった。

135名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 21:09:28 ID:8aVTusIE0
すっかりしょげているエレンにアルミンはくすっと笑ってしまった。

アルミン「エレンはたまに突っ走るのが難点だよね。アニみたいな繊細な子に対しては逆効果だよ、エレン」

エレン「え? アニが繊細? どの辺が?」

ミカサ「アニは繊細じゃないと思うけど」

ジャン「アニが繊細? 何言ってるんだ? アルミン」

マルコ「うーん……エレンを吹き飛ばしたり、ライナーを回転させられる子が、繊細とは思えないけど」

皆にフルボッコされて「え?」という顔になるアルミンだった。

アルミン「だって……その……女の子らしいじゃないか。毎日髪をちゃんとくくったり、その……周りをよく見てるし」

エレン「それは……繊細とは言わないんじゃないか? なんか違う気がする」

アルミン「え?」

エレン「まあでも、アルミンから見たらアニは繊細に見えるって事なんだろうな。よし、俺もこれからは気をつけるよ。ありがとう、アルミン!」

アルミン「あ、ああ………」

その時、思った違和感は微かなものだったが……

アルミンの中に不思議な感覚をもたらした。

アルミン(そうか。人の印象って、見る人の角度によって全然変わってしまうのか)

全部、一律ではない。その事は頭では分かっていても、実感として味わう事は希である。

アルミンはその時の変な心地を、この後にも味わう事になる。

エレン「じゃあ俺、ミカサを送っていくわ。またな!」

エレンはミカサと一緒に先に倉庫を出て行った。

その足取りの軽さを見て、ミカサは言った。

ミカサ「エレン………」

エレン「ん? 何だよ」

ミカサ「どうしてそんなに、アニのことを気にかけたの?」

エレン「え? どうしてって言われても、なんとなく……だな」

エレンはその感覚的なものをうまく説明できなかった。

136名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 21:21:19 ID:8aVTusIE0
エレン「なんか、ミカサとは違う意味で放っておけなかったんだ。辛そうな表情にみえてな。でも、アルミンがああいうなら、もうそっとしておくことにするよ。返って逆効果になるって分かったし」

ミカサ「そう………」

エレン「おいおい、なんで今度はミカサが不安そうな顔をするんだよ」

ミカサ「だって……エレンが、アニを気にするから」

エレン「だから、もう気にしないって話をしたようなもんだろうが。ああもう、面倒くせえ奴だな」

エレンはぎゅっと、ミカサの手を握ってやった。

エレン「ミカサは本当にヤキモチ焼きだなあ」

ミカサ「や……ヤキモチ?」

エレン「違うのか? 俺が他のものや人に興味がいくと、すぐ不貞腐れるのはそのせいなんだろ?」

ミカサ「………そうなのかもしれない」

エレン「ったく、これじゃどっちが子供か分からんな」

ミカサ「ううう……」

何だか以前より大人びて見えるエレンにミカサは悔しそうに唸った。

ミカサ「前のエレンより、ちょっと格好いい」

エレン「え? なんだそれ」

ミカサ「だって、記憶のない頃のエレンはこんな風に、飄々としてなかった」

エレン「へーそうなんだ。ふっふふ……じゃあこっちの俺が、本当の俺って事じゃねえのー?」

上機嫌になって言い返すエレンだった。

エレン「まあもう、今となっては、記憶の事は、大した問題じゃねえけどな。とりあえず、生活は出来るし訓練も出来るし、ミカサもアルミンもいるし……面倒なのは、昔の事を思い出さないといけない場面に出くわした時だけだろ」

137名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 21:32:16 ID:8aVTusIE0
ミカサ「……………」

過去を思い出さないといけないとしたら、それはエレンにとって、とても辛いことだろう。

このままエレンが、母親の事を思い出さないのであれば、それはそれでいいと思うが……

ミカサは少しだけ、寂しさを感じていた。

エレン「どうした? ミカサ」

ミカサ「…………エレンは」

ミカサは思い切って聞いてみた。

ミカサ「エレンは、私に、このマフラーをくれた時の事を覚えてる?」

エレン「いや…………それ、俺が渡したのか?」

ミカサ「うん。私を命懸けで助けてくれたあと、寒がってた私を、このマフラーで温めてくれたの」

エレン「………そうなのか」

エレンは、困ったように言った。

エレン「悪い。その辺の詳しい記憶はねえな。小さい時の記憶は、かなりまっさらな感じだよ」

ミカサ「そう………」

エレン「………ごめんな」

エレンには、謝る事しか出来ない。

エレン「思い出してやりてえけど………ごめん」

ミカサ「ううん……いいの」

ミカサは俯いて誤魔化した。自分の本心を飲み込んで。

ミカサ「思い出せないなら仕方がない。帰ろう、エレン」

そして二人は一度女子寮に戻り、その後は一人で男子寮に帰ったエレンだった。

エレン(………………なんだろ、このもやもや)

まだ、大事なものを、忘れている気がする、エレンだった。

138名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 21:45:59 ID:8aVTusIE0





そして再び、アニの日常が帰ってきた。

アニの機嫌はもう治っていたようだ。胸を撫で下ろし、エレンはほっとする。

アニ「アルミンに免じて、だけどね。あと、格闘術の相手、再開してやってもいいよ」

エレン「!」

アニ「………何? その顔」

エレン「いや、どういう風の吹き回しかと思って……」

アニ「ふん……あんたが鳥頭だから、深く考える事はやめにしたのさ。ただし、もしまた頭から落ちても、私は責任取らないよ。どうする?」

エレン「ああ、是非手解きをお願いする」

ミカサ「!」

その様子を遠くで見守っていたミカサがショックを受けていた。

ミカサ「な、何故……何故エレンはまたアニと……」

ブルブル震えて悔しそうにミカサは嫉妬する。

ミカサ「しかし、嫉妬をしてはまた、エレンに……子供扱いされてしまう」

ジレンマに挟まれてどうにも出来ないミカサだった。

139名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 21:53:58 ID:8aVTusIE0
しかしそこにクリスタがにょきっと、雑草のように生えた。

クリスタ「むむむ……アニがまた、エレンを誘惑している」

ミカサ「クリスタ! もう諦めたのかと思っていたけれど、まだ諦めてないの?」

クリスタ「あ、諦めたわけではないけれど……でも、これはチャンスかもしれないわ」

ミカサ「え?」

クリスタ「もう一回、エレンがアニと組んで頭から落ちれば、今度こそ……逆に記憶が戻るかもしれない」

ミカサ「で、でも……もっと症状が酷くなる可能性も……ある」

クリスタ「だから、イチかバチか、丁か半か、黒か赤か。賭けに出るしかない」

何故か賭博用語の例えをするクリスタにミカサは一瞬「?」となったが、彼女はアニとエレンを尾行していた。

クリスタ「格闘術の、授業を見守りましょう」

ミカサ「ええ……」

どのみち、それ以外やれることはないミカサだった。

140名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 22:19:24 ID:8aVTusIE0
格闘術の訓練が始まり、ミカサはクリスタと組んでチラチラと様子を見ていた。

アニが久々にエレンと相手をしているせいで、ギャラリーは「もうエレンの頭は治ったのか?」と関係ないやつは勘違いをしていたが………

事情を知っているメンバーはハラハラして見守っている。

ライナー「大丈夫なのか? アニのやつ、またエレンを頭から落とさなければいいが」

ベルトルト「うーん……でもエレンの方から希望して組んだって聞いたし、大丈夫なんじゃないかな」

アルミン「出来れば、もう一回頭を打って、完全に戻る……とかいう展開になればいいけど」

マルコ「そう、都合よくいくかなあ」

ジャン「記憶があろうがなかろうが、大して変わんねえから別にいいんじゃねえの?」

ミリウス「そう言うなって、ジャン」

そんなこんなでチラチラ外野に見守られながら、エレンはアニと格闘術を行っていた。

相変わらず、エレンが吹っ飛ばされる展開が多いが、頭からは落ちないで、ちゃんと受身を取って相手をしている。

アニ「ふん……前よりかえって動きが良くなったんじゃないの?」

エレン「いや……前のことを言われても、俺、分かんねえし」

141名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 22:31:16 ID:8aVTusIE0
エレンはそう言いながら心を無にして対処する。

アニはそんなエレンの動きにだんだん本気になっていった。

アニ「はっ……!」

気合を入れてエレンを襲う。木で出来たナイフを突き立てて、突進する。

それを受け止め、捻って対処する。

アニ「大分うまくなったじゃないか」

エレン「俺だって、記憶なくなってからも努力は続けてたからな」

攻守交替。エレンがアニに突進する番だった。

エレン「はああ!」

気合を入れて、アニに襲いかかる。

アニは軽々と身を躱して、エレンの腕を取った。

そして、何度目かの、空中回転。

その様子をミカサ、アルミンも緊張してみている。



ドシーン…………



エレン「ててて……やっぱすげえ技だなあこれ」

アニ「…………」

エレンの表情は変わらない。どうやら、二度目のこれでは、元には戻らないようだ。



カンカンカン……



鐘が鳴って、今日の訓練が終わった。

午後は座学の授業の予定となっている。

エレン「アニ、ありがとうな!」

さっさと帰ろうとするアニの背中に叫ぶと、アニは後ろ向きで手を振って先に帰っていった。

そんないい感じの二人の雰囲気に、ため息をつくしかない、ミカサなのであった。

142名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 22:35:35 ID:8aVTusIE0




ミカサ(エレンは自覚がないだけなのかもしれない)

ここ数日のエレンの様子を振り返ってみると、どうもおかしいような気がしてならないミカサだった。

ミカサ(エレンはアニの事が好きなのかもしれない。その……異性として)

でないと、気にかけるなんて事があるだろうか。いや、ない。

ましてやまた、格闘術の指南を受けようと思うだろうか。

頭から、落とされた相手に対して。

ミカサ(やだな……こんなモヤモヤを抱えてエレンの隣にいるのは)

座学の授業が全く身に入らない。

エレンは真剣に聞いているが、ミカサは上の空でエレンの方をチラチラ見ていた。

143名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 22:39:08 ID:8aVTusIE0
そんなミカサの視線にふと気づいてエレンが小さな声で「なんだよ」と言う。

ミカサ「別に……」

エレン「授業中だぞ。集中しろよ」

ミカサ「……………(チラリ)」

エレン「なんだよ。さっきからこっちばっか見やがって。照れくさい事すんなよな」

エレンはほんの少し頬を赤らめていた。

ミカサ「え?」

その反応にちょっと驚くミカサだった。

ミカサ「エレン、照れてるの?」

エレン「…………あんまりジロジロ見られるのは、好きじゃない」

エレンはそう言って、じろりと見つめ返した。

144名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 22:46:53 ID:8aVTusIE0
エレン「なんか言いたいことでもあるのか?」

ミカサ「どうして、アニとまた、格闘術を組んだの?」

エレン「え? そりゃあ……アニの技術がすごいからだよ」

ミカサ「でも普通、頭から落とされた相手ともう一回、ペアを組みたいなんて思わない」

エレン「ああ……そう言われればそうかもしれんが、それは俺がちゃんと受身を取れなかったから、俺が悪い話だろ? もう大丈夫。あれから受身の特訓しまくったし、もう頭から落ちることはねえよ」

ミカサ「…………私とは、組んでくれないの?」


ピクッ………


エレンはその時、動きを止めた。

ミカサ「私とは何故組んでくれないの」

エレン「…………………」

ミカサ「黙秘しないで」

エレン「……なんでだろ?」

エレンは自分でも不思議だった。

145名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/28(木) 22:55:12 ID:8aVTusIE0
エレン「言われて初めて気づいたわ。俺、なんでミカサとペア組むの避けてたんだろ」

アルミン「体が覚えてたんだろうね」

横で話を聞いていたアルミンがこそっと言った。

アルミン「ミカサは同期では最強だもの。無意識に、ミカサに負けることを恐れてたんじゃない?」

エレン「え? なんでミカサに負けることを恐れる? 別に負けたっていいだろ? 訓練なんだし」

アルミン「…………それはそうだけど、エレンは格闘術だけじゃなく、立体機動でも座学でも技工でも、ミカサに負けると一番悔しそうにしていたよ。理由は、男としてのプライドってやつかもしれないけど」

エレン「え? 意味が分からねえ。ミカサが優秀なら、男の俺でも負けたって不思議じゃねえよな? アニにも負けてたんだよな? アニに負けた時の俺って、同じように悔しそうにしてたのか?」

アルミン「……………」

そう言われれば、そういう素振りを見た記憶がない気がする。

エレン「意味分からんな。アニには悔しがらず、ミカサには悔しがるって……理由がいまいち分かんねえけど」

ミカサ「じゃあエレンは別に私と組むのが嫌ではないのね?」

エレン「ああ……今度はミカサと組んでもいいぜ。ミカサがいいなら」

ミカサ「本当?」

ミカサはパアッと明るくなった。さながらお散歩に行く前の犬のように。

ミカサ「分かった。じゃあ次の格闘術は私とやろう、エレン」

エレン「あ、ああ……それでいいならな。だからもう、あんまチラチラこっち見るなよ」

そう言って、エレンはまた授業に集中したのだった。

146名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/29(金) 00:01:46 ID:8aVTusIE0
そして数日後、今度はミカサと組んで格闘術の訓練を行うエレンだった。

ライナー「おいおい、アニの次は今度はミカサか? 大丈夫なのか?」

アニ「さあ? でも、本人がいいって言ってるし、大丈夫なんじゃないの?」

ベルトルト「ううーん。何も起こらなければいいけどね」

アルミン「ミカサのことだから、本気でエレンの相手をするとは思えないけど」

アルミンの言う通り、ミカサは少しだけ手加減してエレンの相手をしているようだ。

エレンはそれでもミカサについていくだけで精一杯である。

エレン(なるほど……同期で最強というのは本当らしいな)

ミカサの実力を目の当たりにして、アニの時より動きを奪われて、寝技に持っていかれるエレンだった。

エレン「ぐっ………!」

ぐりぐりと、ミカサに体重をかけられて、動きを封じられる。

みかさの胸が、当たっている。

その感触が心地よくて、一瞬、違うところがビクンと反応する。

エレン(?!)

やましい事を考えている場合じゃない。というか、ダメだろ。

訓練中にそんな風になっちゃ。

エレン「た、たんま! ギブ! ギブ! ミカサ! 離せって」

ミカサ「え?」

エレンが急に態度を豹変したので、ミカサはさっと立ち上がった。

ミカサ「エレン、大丈夫?」

エレンの様子が変だ。顔を真っ赤にしている。

エレンは前かがみになって、自身の変化に混乱していた。

エレン(落ち着けって……俺、落ち着け…!)

アニの時と全く勝手が違って混乱する。というか、さっきから心臓がドクドクいっている。

苦しい。違う意味で、大変苦しい。

ミカサ「エレン、苦しそう。ごめんなさい。少しやりすぎた」

エレン「いや、大丈夫だからな! ……………」

ドクンドクンドクンドクン……

大丈夫と言いながら、エレンの心拍数はどんどん上がっていった。

エレン(あれ? あれ? 何でだ? 急に何か、ミカサをまともに見れない)

ちょっと胸が接触した程度で、こんなに赤くなる必要はない。

これじゃまるで…………

エレン(俺が、ミカサのことを好きみてえじゃねえか)

エレンは急にそう結論づけて、その瞬間、脳裏に焼き付いた映像がフラッシュバックして……

エレン「あああああああ!!!」

と、その場で絶叫した。

147名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/29(金) 00:20:37 ID:8aVTusIE0
エレン「思い出した………」

ミカサ「え?」

エレン「全部、思い出した」

ミカサ「!」

アルミン「え?」

アニ「!」

ライナー「ほう」

ベルトルト「じゃあ」

コニー「お? 思い出したのか?」

サシャ「ってことは」

クリスタ「元に戻ったのね!!」

おおおおおお………

その瞬間、ミカサはエレンに抱きついた。

ミカサはぎゅうぎゅうにエレンを独り占めする。

エレン「馬鹿……離せってミカサ!!!」

ミカサ「嫌! エレン、私のこと、マフラーのこと、思い出したのね?!」

エレン「あ、ああ………」

エレンは気まずそうに視線を逸している。

その様子が面白くない人物が一人いるが。

ジャン「けっ………まーたいつものイチャイチャに戻るだけだろ。大して今までと変わんねえよ」

エレン「ミカサ、とりあえず一旦離せ。とにかく離してくれ」

エレンはミカサの方を見ないでとりあえず、離れた。

アルミン「でも何で急に思い出したの? 何がきっかけだったの? ミカサの胸?」

ミカサ「そうなの? エレン」

エレン「違う!!! 断じて違う!!!」

148名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/29(金) 00:35:32 ID:8aVTusIE0
ブルブル震えているが、どうもそれに類する何かのような気がする。

そう感じてアニは、ずいっと詰め寄った。

アニ「私と寝技決めた時は、そんなに狼狽えてなかったようだし……ミカサの胸のおかげで思い出したんじゃないの?」

エレン「違う! 胸じゃない! 胸じゃないんだ!! 胸じゃなくて………」

アルミン「胸じゃなくて?」

ライナー「胸じゃないなら……分かった。尻だ!」

ベルトルト「はははは……そんなまさか」

その、まさかだった。

エレンは否定せずに真っ赤になって俯いている。

アルミン「え? ミカサの尻? どういう事? さっぱり分からないよ」

ミカサ「今の寝技の時に尻は密着させてないのだけども」

エレン「感触じゃねえよ。そうじゃなくて…………」

エレンはそれ以上言いたくなくて困っているようだ。

アニ「いいなよ。気になるじゃないか。ミカサの尻の、何が切欠だったんだい」

エレン「………アニと、さ」

エレンは皆の方を見ないようにして、ぼそぼそと言った。

エレン「アニと組んで格闘術をしていた時に、途中で、ミカサのズボンの尻の割れ目が破れてた事に気づいて……それをうっかり、注視しちまって……」

アニ「……………」

エレン「注視してたら、気がついたら、アニに頭から落とされてた。あの時、集中力が欠けてたせいで、頭から落ちたんだ。でなけりゃ、あんな落ち方しねえよ」

アルミン「た、確かに……普段のエレンならいくら何でもあんな変な落ち方しないよね」

ライナー「なるほど、その時にミカサの方が気になったせいで、受身がうまく取れなかったのか」

149名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/29(金) 00:49:43 ID:8aVTusIE0
ミカサは尻の割れ目を隠していた。自分では全く気づいていなかったらしい。

ミカサ「ごめんなさい。ちょっと席を外していいかしら。予備のスボンに着替えてくる」


ササササ………


お尻の割れ目を隠しながら退散するミカサがちょっとだけ可愛かった。

アルミン「ああ……もしかして、下着の色とズボンの色が同じだったから、遠目には分からなかったのかな」

アルミンはそう結論づけた。

すると、エレンは言った。

エレン「破れてるっても、1〜2センチくれえかな。多分、よく見ねえと分かんねえと思うけど」

アルミン「つまり、エレンは訓練中によく見ちゃった訳だ」

エレン「うっ……たまたまだ! 本当、たまたま目に付いただけだからな!」

コニー「嘘だー! よっぽど尻を見てねえと、気づかねえよそんなの」

ライナー「俺もそう思う。だって今、俺もミカサの尻を見てみたが、パッと見はわからなかったぞ?」

アニ「変態………」

アニはエレンを含めて男性陣を冷たい目で見つめていた。

150名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/29(金) 01:03:36 ID:8aVTusIE0
エレン「うっ……だからその、その時の事を思い出したら、その……」

アニ「記憶が戻ったと。はー………」

アニは天を仰いで肩を震わせた。

何だか変な笑いがこみ上げてきて、その場で必死に堪えている。

アルミン(あ、また笑いを噛み殺してる)

アルミンも何度か見覚えのあるそのアニの独特の笑い方に、ちょっとだけ共感した。

こんなオチを聞いたら誰だって笑い出したくもなる。

アルミン「ぷっ………あははは」

ライナー「くっ………」

コニー「はははは……!」

一同は笑いを堪えきれず、堪らず爆笑してしまった。

その空気を感じてキース教官が「こら!!」と注意をしにきたので、皆、「やべ」と思ってさっさと元の位置に逃げたのだった。

ズボンを着替えてすぐ戻ったミカサは座り込んで憮然とした表情で待っていたエレンのところに戻ってきた。

ミカサ「エレン、ごめんなさい」

エレン「ん?」

ミカサ「結果的に、エレンの記憶喪失は、私のせいだった。私がもっと、自分の尻に注意していれば……」

エレン「いやいや、お前のせいじゃねえからな。その……俺の方こそ悪かった」

ミカサ「? 何が悪いの?」

エレン「気づいたときにすぐに言えば良かったんだよ。それをしないで、つい眺めたのは……本当だから」

ミカサ「そう……でも、何でつい、眺めちゃったの?」

エレン「うっ……」

151名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/29(金) 01:12:26 ID:8aVTusIE0
それは言わせないでくれ。いや、本当に。

エレン「それは、男だからだ。女の尻を見ちゃう生き物だからだ」

ミカサ「そう………………(まあ、それはそうだろうけど)」

ちょっとだけ腑に落ちない返事にミカサは口を尖らせるが、エレンはそれ以上、説明しなかった。

エレン「じゃあ、続けるぞ、ミカサ。今度は手加減するなよ!」



ぐいっ………!



そして何度もエレンはミカサに投げ飛ばされた。

やはりまだまだミカサには敵わない。

しかし、その時、

ミカサ「あっ……」

今度は、ミカサの胸のシャツのボタンがふたつ一辺に取れた。

それを思いっきり注視して、また、エレンが頭から落ちる。



ドシーン………



むくりと、起き上がり、エレンは言った。




エレン「僕は誰なんだ?」




ミカサはまた、青ざめる羽目になった。






(エレン「僕は誰なんだ?」乗っ取りおしまい☆)

152名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/29(金) 01:16:28 ID:8aVTusIE0
エレンが頭から落ちるって、よほど集中力欠けてねえ?

エレンさん、きっとよそ見してたに違いない。

ミカサの尻でも見てたのかな?

でも、ただ尻を見るくらいで、頭から落ちるか?

ズボンがきっと破れてたに違いない。

と、思って、SSを乗っ取らせてもらったぜ☆
途中で脱線したり、エレアニだったりアルアニで忙しかったけど、
こんな感じで乗っ取らせてもらった。
>>1さんの理想とは違うかもしれんが、とりあえず、終わらせた。
読んでくれてありがとうさんくす!

153名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/29(金) 01:19:04 ID:iqa8ApwQO
ファミコン並に記憶飛びやすくなったエレンww
にしてもよく複数のSS同時に書けるな
乙!面白かった

154名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/11/29(金) 01:57:54 ID:8aVTusIE0
>>153
ファミコンなみにデータ飛びまくりんごwwww
確かに。エレンの記憶障害が酷いことになったww

複数のSSを書くようになったのは、途中で終わってるSSの多さに、
涙することが多かったからかな。
最後まで書かないなら、妄想を受け継ぐしかないと思って…。
>>1さんの想像とは違うかもしれんが、
終わらせないSSよりも、終わってるSSの方がいいと思って。
これからも、乗っ取りたいのが出てきたら、また乗っ取ろうと思ってます。


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