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届かぬ光

1 ◆JWPaeN65Rw:2010/10/13(水) 21:20:11 ID:OQA48WNg

――光も届かぬ、あの場所で 僕は君と約束しました。


約あのキャラ視点の詩,小説置き場。
詩,小説の投稿は凛のみです。


感想,アドバイス,リクエストは励みになります(`・ω・´)
気が向いたらしてやってください!
ただ完成するまでに時間がかかることは承知の上でいてください。

2transparent:2010/11/01(月) 22:43:52 ID:OQA48WNg




机に頬杖をついて指先でペンを一回転させながら、横目で授業中の教室を見渡す。
真面目にノートを取る奴、机の下に本を隠して読んでる奴、退屈そうに黒板を見てる奴、寝てる奴、と様々だ。





そんな俺も授業には興味が湧かなかった。

目線を自分の通学鞄へと変えて、片手を伸ばして鞄の中に適当に放ってある携帯を取り出す。
そして携帯を机の下へと持っていき、新規メールを作成する。







―『授業、暇なんだけど(笑)』






あまり音をたてないようにメールの内容を打ち、自分の友人達へと一斉送信した。



授業中なので携帯をいじっている奴しかメールに気づかないだろうから、返信は少ないだろうなという俺の予想は外れた。
メールを送った奴全員からちゃんと返信が返ってきた。
驚きながらも受信されたメールを開く。
返信が少ないだろうと言う予想から、後先のことは考えていなかった。
あまり返信に夢中になって携帯を使いすぎていると、教師もそのうち気づくだろう。







『俺も俺も!』


『俺も社会とか眠くなるし、暇なんだけど〜。そっち何の授業?』


『俺を見習って教科書でも読んどけ(笑)』





受信されたメールに笑みを零す。
どうせお前ら全員暇なんじゃん、と思いつつも授業中なので声には出さなかった。
そして、返信をしようとメールを作成しようとした瞬間、











「何やってんだ!」














教師の怒声と筋肉質の腕が頭上に降ってきた。















「失礼しました」




軽い溜息混じりの挨拶を済ませて職員室から退室した。
教室でバレた後、取り上げられた携帯も今は返ってきてポケットに入っている。
授業中にも怒られたと言うのにその後呼び出しをくらい、放課後が丸々潰れてしまった。
確かに授業中、しかも義務教育の学校に携帯を持ってきた俺が悪いがあそこまでの制裁と説教をする必要があるんだろうか。
不満が募る。
それでも懲りずに職員室前で携帯を開いて携帯の時計で時間を確認した後、窓の外に目を向けた。


…もう薄暗くなっていた。





溜息をひとつついてから、下駄箱へと続く階段を降りていく。


職員室で殴られた頬が痛い。
血の味もする。…多分歯を食いしばる前に殴られたから口の中が切れているんだろう。
そう思いながら自分の靴箱から靴を取り出して、靴のかかとを踏みながら校門を出て行った。

















冬真っ盛りだ。
さっきまで薄暗かった空がもう藍色の星が散らばる空へと変わっていた。
歩けば歩くほど手の感覚が失われていく。
朝、急いで家を出て来たので寒さを凌ぐものを持ってくるのを忘れたのだ。



つくづくツイてない日である。
きっと星座占いだって12位だ。





いつもは占いなんて見ないのにそんなことを思った。

3transparent:2010/11/01(月) 22:51:34 ID:OQA48WNg





▼牡牛座の運勢▼


12星座中 12位

今日はあなたの体調も運勢もあんまり優れない日。
安易な行動を取るとあなたに危険が降りかかります。
誰かと争ってしまった場合には言い返さないよう心がけて!

でも今日を乗り越えれば、明日には運命の出会いがあるかも…!?











昨日、帰宅した後に姉に牡牛座の運勢を聞いたところ、案の定。
予想した通りの最悪な運勢だった。
しかも手も足も霜焼けで風呂に入るのさえ大変だったのだ。
…占いもあまり馬鹿にはできないと身を持って体験した。





「んじゃ学校行ってくるから」




昨日の出来事を振り返りながら家をでた。
今日は晴れているけど、風が肌寒い。
これで太陽がなかったらどれだけ寒いかと想像するだけで身震いする。













教室。色んな男子に挨拶しながら自分の席につく。
すると、耳にピアスをつけた友達が話しかけてきた。







「晃一、大丈夫かよ?」





何が、と問うと驚かれた。いや、驚きたいのはこっちなんだけど。
「何が、じゃなくてこの頬」と言って頬をつねってきた。




途端、痛みが襲ってくる。



もちろんつねられた痛みもあるが一応は手加減をされている。
つまりは、つねられてる場所だ。
昨日暴力教師に殴られた場所。






「痛、いただだだっ、痛いから!」






まじ本気で痛いから。
その言葉を聞くと友達は手を離してくれた。






「まさか、殴られてたの忘れたとか言うんじゃねーよな」






苦笑。
…忘れてた。
昨日の今日で痛みはひいていたし、教師に対してもあまり怒りがなかったから完全に忘れていた。







「言っとくけど、結構腫れてるし青短になってるぜ?」






…見た目は重傷らしい。
「まあ、痛み感じないから放っておいても平気だって」と笑うが笑うと口元使うから超刺激されて痛む。笑顔が引きつる。







「…俺、帰ろっかな」







涙目。もう喋るだけで痛い。


何で殴ったのが腹とかじゃなくて口元の頬だったんだ、と思うと少しだけ暴力教師に怒りが込み上げる。
まあ、腹をあの筋肉質な腕に殴られた時点で絶対吐血する。断言できる。




何とも言えない気持ちになり、教室の時計に目を向ける。
まだホームルームまで20分もある。









「やっぱ俺帰るわ、休みって伝えといて」







こんな痛みに絶えながら授業を受ける意味がまったく分からない。まあ、サボりたいなんて少しの本音も含まれるがそれは置いておこう。
自問自答を繰り返して鞄を片手に持って席から立ち上がる。
「了解」と言う友達の声を聞き、「じゃーな」と言って教室を出た。

4transparent:2010/11/01(月) 22:57:29 ID:OQA48WNg



通学鞄を肩に乗せながら校門に向かうと、この中学の制服を着た女生徒が立っていた。
悲しそうな顔をしてずっと校舎を見つめている。



少しだけ気になったが、教師に欠席と伝えてくれと言ったのにいつまでも校門で立ちつくしてるわけには行かない。
しょうがなく足を進め、すれ違ったそのとき、女生徒が小さく呟いた。













「             」















声は小さく掠れていたが、言葉は必死で本気で真っ直ぐだった。















今現在、俺は校門の前にいた女生徒と一緒に歩いている。



どうしてこうなったのかなんて自分でも思い出せない。
でも話しかけたのは俺で、一緒にどこか行こうと誘ったのも俺だ。…まるでナンパだ。しかも同じ中学の多分だけど後輩。
しかもそんな俺に驚いた表情をしながらついてくる女生徒。
なんとも言えない気分である。






「そういえば俺、名前言ってなかったな。
俺は浅倉晃一。見て分かったと思うけど君と同じ中学。ちなみに学年は三年」




怪しいやつではないと思わせるためにせめて自己紹介くらいはしなければと自己紹介をした。
変なことは言ってないから通報されるとかそんな状況悪化はないだろう。


女生徒は俯けていた顔を静かにあげた。短い茶髪が揺れる。







「私は田中亜子。同じ中学の二年です」






亜子、と名乗る女生徒は校門の前にいたときとは違う明るい笑顔を見せた。







「あ、別に敬語じゃなくて平気。
つか敬語とか堅苦しいから嫌いだしさ。名前も呼び捨てで!」







俺がそう言うと彼女は「実は私も敬語嫌いなんだよね」と楽しそうに笑った。







「じゃあ、晃一って呼ぶね。私のことも亜子って呼んで!」












亜子と仲良くなるのに時間はかからなかった。
亜子と一緒に過ごす時間は時が経つにつれて多くなり、それは心の支えにもなっていた。

5transparent:2010/11/01(月) 23:28:16 ID:OQA48WNg




昨日、亜子とトマトの話しで軽い口論になった。
彼女はトマトとかトマトジュースが大好きらしいが俺はトマトもトマトジュースが子供の頃から大嫌いだった。
そんな二人の好みからくだらないトマト口論になった矢先。





今日の弁当のメニューが少ない量だが冷凍食品のナポリタン、プチトマトがサラダと一緒に添えてあった。


ナポリタンといえどトマトケチャップ、もといトマト。
その日の昼食は長い苦痛の旅だった。














「晃一、大丈夫か?」




ペットボトルのお茶を涙目になりながら自分の口に含ませている俺に哀れみの目で見ながら話しかけてくる同級生。





「いや、もうまじで無理。」





できることなら、もう二度とトマトなんか口にしたくない。















下校時間になった。
今日は亜子と一緒に帰る約束をしている。4時に校門前だ。







「晃一」





号令をし終わり教室からぞろぞろと出て行く中、ピアスの友達が話しかけてきた。






「今日さ、いつもの奴らと一緒にゲーセン行くんだけど行かね?」





誘いは嬉しかったが亜子との約束が先なので断った。







「…なんかお前、最近付き合い悪くね?」





少し顔を歪めてそいつは言う。
確かに最近亜子といることが多いし、学校内以外ではあまり絡まないようになってしまった。







「女と付き合い始めたとか?」
「そんなわけねぇよ」





苦笑する。
今はお前らといるよりも亜子といる方が楽しいんだ、そんな言葉を飲み込んで教室から出た。















「晃一、どうしたの?」




口数が少ないから気になったのか亜子が心配そうに聞いてきた。







「どうしたの、って何が?」
「元気なさそうに見えるよ?」










大丈夫だから心配すんな、と申し訳なさそうに小さく笑った。
…そう言う以外に何も浮かばなかったから。

6transparent:2010/11/01(月) 23:39:04 ID:OQA48WNg



亜子は元気で素直で、明るい笑顔が似合う女の子だった。
たまにふざけすぎたりうるさかったりもするけど、俺はその全てが亜子の長所だと思ってる。







「浅倉先輩、好きです」






なんて、告白されているのに亜子のことを考えていたなんて最低だろうか。


俺の目の前に立つ名前も知らない女の子は返事を催促するかのように俺を見る。
だけど俺はこの子の気持ちには答えられない。
この子が俺に抱いている感情を俺はこの子には抱いていないから。




ごめん俺、と言ったところで言葉を遮られる。









「好きな人がいるんですよね」








目の前の子は俺の目を真っ直ぐと見据えながら呟く。








「だって先輩はいつも2年の教室の前を通るとき、」
「…待てよ、それ以上言うな」










嫌な予感がする。

俺の言われたくない言葉を今、この子は言おうとしている気がして。
それでも「何でですか、だって事実でしょう」と言葉を続ける。













「悲しそうに辛そうに誰かを捜していますよね」


















元気がないように見える、と言われた次の日にまた元気のない顔を亜子に見せるのはとても気が引けた。
昨日は無自覚で元気がなかったが今日は違う。
とても笑う気分なんかじゃない。




…それでも亜子に会いたい。








日が暮れた外を夕日の光が射す教室の中から見ていた。
もうずっとこうしている。
亜子はいつもの場所で待っているんだろうか。
そう思うと今すぐにでも駆けつけたいけど、心配をかけさせるのは嫌だと足が止まる。











―「悲しそうに」










どうして。









―「辛そうに」











何で。











―「誰かを捜していますよね」










そんなにも簡単に一番触れてほしくないところに触れてくるんだろう。

7transparent:2011/04/03(日) 11:48:46 ID:.TP2DUYg



「晃一、それからね、」




亜子が楽しそうに笑って話を話すがまったく頭に入ってこなかった。
前にもこんなことがあったから、本当はちゃんと喋りたいけど言葉がでない。
自分が情けなくて嫌になる。






「でさ、なんかまだ「亜子」






「ちょっと寄り道していかねぇ?」と亜子の言葉を遮って言った。











寄り道場所は公園になり、二人ともブランコに座って、亜子は強くブランコをこぎ始めた。





「ねえ、晃一?」
「なに?」





「晃一はさ、」と亜子が言うがブランコをこぐ音と
ブランコからでる風のせいで亜子の声が掠れて聞こえない。







「好きな子いるの?」







一瞬、時間が止まったような感覚になった。
亜子からそう言われるとは思っていなかったから、なんて言ったらいいのかわからない。








「私はね、いるよ」








亜子はブランコをこぐのをやめて、こっちを向いて笑った。

誰?と聞いていいのかわからなかった。
いや、本当はその相手が誰だかなんて分かってたから聞こうとはしなかったのかもしれない。



それでも、








「晃一?なにやってんの?」








友人の声が夕焼けに染まる公園に響いた。

8transparent:2011/04/03(日) 11:52:06 ID:.TP2DUYg


友人がブランコへと徐々に近づいてくる。
呼吸が上手くできない。





「だから晃一、こんなとこに一人で何やってんの?」
「…家に帰んのが嫌でさ」






半分嘘と半分本当を言う。



夕暮れにのびる影は、ふたつだけ。
俺と、友人のものだ。
亜子はもちろん隣にいる。だが、亜子の影はない。







「つか、今日告白されてただろ!しかもお前好きな奴いんだって?
最近付き合い悪いのはそのせいかよ?」





空気が重い。
友人が喋るたびに空気が重くなっていく。






「ああ、そうだよ」





好きな奴に関して嘘は言わない。傷つけたくなんかない。
もうずっと、彼女は泣きそうなのに。




「で、好きな奴って誰?」と友人はまだ続けてくる。
夕暮れが藍色の空に変わろうとしていた。











「、俺の隣にいるやつ」









「…唇の端、大丈夫?」



二人きりになって最初に口を開いたのは亜子だった。


あのあと、俺は友人に「なに言ってんだよ」とか「気持ち悪い」と言われて殴られた。
何も見えていないやつから見たら確かに気持ち悪いんだろう。
他人からしたら、俺の隣には誰もいないように見えるのだから。


だけど抵抗は、しなかった。
嘘だとも、言わなかった。





「別にこんなの暴力教師の拳に比べたら痛くねーよ、」




唇の端が切れているから笑うと痛かったが、それでも笑った。



こんな痛み、きみの痛みに比べたらどうってことないのだから。

9transparent:2011/04/03(日) 11:59:18 ID:.TP2DUYg



「亜子、俺さ最初から知ってたよ」




知ってて、お前に話しかけたんだよ。
それは面白いからとかそういうことじゃなくて、確かに興味があったから話しかけたけどふざけた気持ちじゃなかったんだ。
そう言うと亜子は「…知ってなきゃ話しかけられないもんね」と苦笑した。







「晃一、私ね一週間くらい前に交通事故で死んだの」








それも、知ってたよ。








彼女に出会ったあの日、あの瞬間から、わかっていた。


彼女は死んだ身なのだと。
透けてる体も、影がないことも、そんなことは知ってた。
俺が彼女に話しかけたのは、あのときすれ違いざまに聞こえたきみの掠れた、







―「 まだ、生きていたかった 」






そんな声を聞いたから。





俺の家系は元々霊感が強かった。
中でも俺と母親は幽霊の声が聞けたり会話ができたり、実際に触れることができたりと特に霊感が強かったのだ。
けれど、そんな母親よりも俺の力が強いと知ったのは最近。


俺は幽霊と会話ができたりするだけじゃなくて、
道具なしにこの手で幽霊に触れるだけで成仏をさせることができるらしい。



だから、俺は亜子に触れなかった。
触れるのが怖かった。
自分の手で亜子を消してしまうのが怖くて嫌で仕方なかった。




死因を知っていたのは後輩に交通事故で死んだ子がいると噂で聞いたことがあったし、
二年の教室の前を通るたびに開いた扉から机の上に置かれた花を見るたび、いつだって悲しくなっていた。
だから亜子を捜した。
元気に騒いでる明るい声が、教室にあるんじゃないかと思ったから。



亜子の死を誰よりも受け入れたくなくて、
信じていなかったのは幽霊になった亜子の姿を見ているはずの俺だったんだよ。









すべてを、伝えた。
亜子は涙を流していたが涙が土に落ちても涙の跡は残らなかった。

10transparent:2011/04/03(日) 12:00:06 ID:.TP2DUYg

「そっかじゃあ、晃一、触れてよ」




涙を零しながらも亜子は笑う。
亜子は意味を、理解しているんだろうか。
俺が触れたら消えてしまうのに。
触れたら、もう喋れなくなってしまうのに。




「……それはできない、」
「…だめだよ、晃一。ずっとこの世界に留まり続けるなんて出来ないの、私はも
う死んでるんだよ」



強い、言葉だった。
生きたかったと願ったあの言葉よりもこの言葉は重く俺の心にのしかかった。




「俺は亜子のいない日常なんか考えらんねぇし、考えたくもない。ずっと、ずっ
と一緒にいたい」




晃一は、わがままだね。
そう言って亜子は笑って顔を近づけてくる。
亜子がなにをするかもわかっていたが拒めなかった。
あるいは拒むのが嫌だったのか。



「晃一、私ね幸せだったんだよ。あなたのおかげで、幸せだった。消えちゃうの
は怖いけどしょうがないよね。
私はもう死んでるんだし、来世に期待しなきゃいけないからね。」



優しい笑みで、亜子が笑う。




「来世にまた女の子に生まれ変わったら、晃一とまた出会いたいなって思うよ。
わがままかな?
でも、本当に大好きなの。
晃一が、大好き、」




涙がたくさん溢れた。
俺からも、亜子からも。




「晃一は、生きて。生きて自分のするべきことを捜してね、見つけてね、私ずっ
と応援してるから。
…それでも、どうしても見つからなかったら私を轢いて逃げた犯人を捕まえてほ
しいの。
こんなこと頼むのはずるいかな?」



ずるくなんて、ないよ。
掠れた声だったが俺は俺自身に誓った。
絶対に亜子を殺したやつを捕まえると、決めた。




「幸せだったのは亜子だけじゃない、俺だって幸せだった、こんなに誰かを好き
になるのは初めてだった。
絶対に犯人捕まえるから、だから捕まえたら笑ってくれよな、」




亜子が「わかったよ、」と言いながらそっと俺の手に触れてくる。



消えて、しまう。




「亜子、嫌だ、いくな、」




俺は、亜子を引き寄せて涙の味がするキスをした。
壊れものを扱うように、そっと抱きしめた。


足から、亜子の体が、徐々に消えていく。
きみがこの世界からいなくなる。




「…ずるいよ、ファーストキスだったのに」



彼女は今までで1番幸せそうに、笑っていた。




「……あ、こぉっ…」





大事なものが、世界から、
消える音がした。

11transparent:2011/04/04(月) 19:56:45 ID:.TP2DUYg



雪が降った。
大粒の雪がひとつひとつと道路に落ちては溶け、積もる。





彼女は、もういない。




明るい笑顔を浮かべて俺の名前を呼ぶ彼女を俺がこの手で消してしまった。










「…それにしても寒すぎ、」









曇った空へ白い息をはく。


俺達は、重ね合った限りある時間をまるで永遠みたいに形造って、未来を、夢見ていた。


それが叶わないことだと知りながらいつか本当になるんじゃないかと勘違いをしていただけ。
本当は、積み重なった幾つもの矛盾に押し潰されそうになっていたのに。



それでも俺は亜子が好きだった。

幽霊とか触れられないとかそんなの関係なくてばかみたいにただ好きだった。
ひとを想うことがこんなにも愛しいことだなんて知らなかったんだ。
気づかせてくれて、ありがとう。
俺を好きになってくれて、ありがとう。







亜子、お前はまるで寒い冬の日に咲く、向日葵みたいだったよ。





永遠なんて言葉はありきたりすぎていて陳腐に聞こえるかもしれない。
それでも俺は死ぬまであの太陽みたいな笑顔を、向日葵みたいなきみを、忘れないから。





きみは今、笑えているだろうか?















被害者、田中亜子さん(14)を轢いたひき逃げの犯人が見つかり、逮捕されました。




では、
次のニュースです。

次のニュースです。
次のニュースです。






12あとがき:2011/04/04(月) 20:18:02 ID:.TP2DUYg

透明な 【 transparent 】

題名の意味は「透明な」という意味です。
transparentには「透明」という意味も含まれていますが、この小説に関しては「透明な」と考えています。
ちなみに「透明な」というのは亜子という少女のことです(・ω・)
最後の最後に「透明な」という文を書こうと思ったけどあとがきが早く書きたいが故にミスったよね!自分!\(^O^)/
誤字脱字ミスりはもう毎度のことなので気にしません。凛の小説を読むには図太くなきゃ駄目でs(ry)


そんで長々と小説をUPしていたんですが多分みんなの知らないキャラですよね(^O^)
一応メインキャラなんですがプロフを書いてUPする前に小説をUPしちゃったよみたいn(
すみませんプロフ今度書くんでそのときにまた読み直してやってください。


そしてなんて言うか自分のキャラのCPの中でこのふたりが1番切ないんじゃないかなって思います。
他のキャラも他のキャラで切なくて泣けるんですけど(´;ω;`)

ちなみに文中で晃一はトマトが吐き気を催すくらいに嫌いと言っていますが、この小説のあとに克服します。
でもそれでもトマトは好きじゃないです。
食べれるようにはなったけど、好きではないです。大好きって周りには言うけど。
と言うか大好きと思いこみたいんです晃一が(´・ω・`)
亜子が好きだから好きになりたい、って思うんですけどそれは違うみたいな。うーん難しい。

それと高校1年生になってから中盤ぐらいにアリス学園に来るという設定。
とりあえず過去編だけを書いておこうと思ったので途中で終わってますが(・ω・)

少しネタバレをするとアリス学園に来た当初に青鳥という少年に出会います。
最初は気に食わなくてあまり自分の好きなタイプではなかったけれど、そのうちに変態なくらい好きになります。
晃一の気持ちに関しては小説にて書くから秘密ですが、この晃一の態度にたいして青鳥は「晃一はオレを利用しているだけ」と思ってます。なかなか難しい(=∀=;)
書いてる本人にも分からなくなってきたよ\(^O^)/



ちなみに最終話に出てくる文中の一部は「ジェンガ」という曲の歌詞から引用。
この曲は晃一×亜子のイメージキャラソンなので!

↓歌い手のいちごさんという方は私の中で亜子の声のイメージの方なので歌い手さんverのをはっています。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm9704860

13キャラまとめ:2011/08/14(日) 14:43:50 ID:BrXv7Tlw


キャラの名前を変更するかもしれないこととキャラリセするかもしれないので少しまとめ。
あとキャラの人数を把握するためとみんなに凛のキャラを知ってもらおう!の会(ry



● キャラ全体まとめ ●


藍沢 永遠―キャラリセ予定なし/名字多少の変更予定あり(藍沢→藍澤)

相楽 運命―キャラリセ予定なし

赤秋 色(春夏秋冬四季)―キャラリセ予定なし

大全 誉―キャラリセ予定なし

辻本 祈―キャラリセ予定なし/名前の多少の変更予定あり(いおり→いのり)

東偽 未来―キャラリセ予定あり

東偽 過去―キャラリセ予定あり

高円寺 純粋―キャラリセ予定なし

神楽 命―キャラリセ予定あり

八色 彷徨―キャラリセ未定

真下 澄―キャラリセ予定なし/名字の変更予定中

星月 月姫―キャラリセ予定なし/名前の変更予定中(未定)

一ノ瀬 千蓮―キャラリセ予定

永倉 千歳―キャラリセ予定

狗王 昶―キャラリセ予定

日和 青鳥―キャラリセ予定なし/本キャラ入り予定

浅倉 晃一―キャラリセ予定なし/本キャラ入り予定



● キャラリセ予定まとめ ●


東偽未来、東偽過去、神楽命、一ノ瀬千蓮、永倉千歳、狗王昶、八色彷徨(未定)



○ サブキャラ ○


朝陽、日和、ユイ、亜子
(まだ増える予定)



キャラリセしてほしくないキャラがいたら気軽にコメントしてやってください!

14みわ:2011/08/15(月) 16:54:45 ID:4vgPKdKc
はいっ!!
はいはい!!
命ちゃんと彷徨やだ!←
俺桟全然出してねぇけどwww

15 ◆JWPaeN65Rw:2011/08/16(火) 11:44:00 ID:BrXv7Tlw

みわちゃん>
彷徨は多分キャラリセしないはずだけど、命が分かりません!(おい
1回キャラリセしてまた毒舌キャラを作ろうか悩み中…
歪んでる子の方が何故かモテるよね!なぜ!←

16:2011/08/18(木) 18:28:09 ID:d/7NWIiE
…未来くん…ぇ、千蓮くん
ぶわってなるよ、消したらあたしがぶわってなr((
べ、べつにいいよ…凛ちゃんが消したいなら消してっ←

17その名前で、:2011/11/25(金) 18:03:37 ID:jh65eeck



今まで学園で恐れられることしかなかった俺を、容姿にも性格にも似つかない可愛らしい愛称で呼ぶ唯一の人間がいる。






「ちーちゃん、
ちーちゃんの耳はきらきら光るピアスがたくさんついてるのね」



真ん丸の大きい目を輝かせ、彼女は愛らしい声で昔の童話にでてくるような言葉を喋った。





「…自分の力を制御するためにつけてるもんだからな」



ひとつ溜息をつくと彼女はむう、と頬を膨らませるという分かりやすい拗ね方をした。
多分俺の返答が気に食わなかったのだろう。
もっと別の言い方をしたほうがよかったのだろうか。

しかし彼女は頬を膨らませながらも不満は零さず、また口を開いて愛称を呼んだ。






「ちーちゃん、ちーちゃんの目はとっても綺麗な色をしてるのね」
「………生まれつき」
「それにちーちゃんの手はとっても細くて折れちゃいそう」
「……特に気にしたことなかった」



「……それから!」





彼女が声を張り上げる。




「透明感のある、芯の強い声」
「…苺花の声は可愛いよな」





すると膨れっ面な顔が一気に満面の笑みへと変わった。何が嬉しかったのだろうか。
よく分からずにいると、彼女が「もう一回言って」と無邪気に笑ってみせる。





「…苺花の声は可愛いから、」
「もう一回!」
「苺花の声」
「もっともーっと繰り返して!」
「苺花の、」
「ちーちゃんがやっと私の名前を呼んでくれた!」





――苺花




そんなことかと笑うとそんなことなんかじゃないよと反論された。


名前を呼ばれたことですごく嬉しそうな笑みを浮かべる単純な彼女に感化されたのか、
いつもは呼ばれるのが恥ずかしくて嫌だった愛称も今なら許せる気がした。



「苺花、名前呼べよ」
「ちーちゃん?」




もうずっと、これから先、一生それでいいよ。





「これから先も、ずっとその呼び方で呼べよ」
「当たり前だよ! ちーちゃんは、ずっとちーちゃんなんだから」








そうやって、俺を優しくしてくれるその名前で声で、彼女が変わらず呼び続けてくれたらいい。

18あとがき:2011/11/25(金) 18:11:02 ID:jh65eeck

【純粋+苺花】その名前で、


短編すぎる短編小説募集第一段! 海からのリクエストの純粋+苺花です(-^〇^-)

苺花ちゃんの性格がわからなさすぎて困ったけど、ちーちゃんちーちゃんって純粋に寄ってくる苺花ちゃんまじ可愛い…
とにかくたくさんの愛は込めましたヽ(*´∀`)ノ

それにしても、もうこの二人かわいすぎてどうしようかと思った。ほんとに。
苺花ちゃんが唯一純粋のことを「ちーちゃん」と呼ぶので純粋的にはどうしたらいいのかが分からず、
適当にあしらったり性格的な面(明るいところなど自身と対照的な部分等)でも苦手なところがあったりしたので
今までそっけなくしてきたんですが、関わっていくうちに慣れてきたり今では愛称に愛着を持ち始めたり。
という内容でした! とってもわかりにくいね!
携帯で打つと結構打ってる気がするのに文字数少なすぎて短編とも呼べるのかわからない…(笑)


まあ、とりあえず純粋+苺花が好きだ! 好きすぎて困ってるよどうしたらいい!
海もこの二人かわいいって言ってくれたので嬉しかったです('∀`)

また機会があったら書かせてくださいな!

19えいえんの夏(凜):2014/07/05(土) 19:01:43 ID:3ybb7hJg

釤永遠、母さんは弱いから守ってあげてくれないか釤


昔、いつだったか父さんにそう言われたのを覚えている。


「母さん、俺、昔父さんと母さんを守るって約束したんだ」
「貴史さんがいなきゃ意味がないのよ、あんたに守ってもらっても意味がない…」


母さんは震えた手で、鋭く光るナイフをオレの方へと向ける。


父さん、何でいなくなっちゃったの。
母さんに必要な人は俺じゃなくてあなたなんだよ。母さんを守るべき人は、あなたなのにどうしていなくなっちゃったんだ。
どうして、俺と母さんを置いていくの。
ねえ、唯一俺に愛をくれた父さん。教えてよ。



―――なんで母さんは、俺を愛してくれないの?

父さんの血が流れた俺を、母さんは愛してくれないみたい。どうしてかな。



「愛してくれなくても、よかったんだ」


本当は信じたくなんてなかったけど。それでも。



「あの人と同じ顔で、同じ声で、笑わないでよぉっ…」


愛されている、とはなんなのか。

何をされていれば『愛されている』ということになるのだろうか。例えば誰よりも贔屓されて優しくされているとか、甘やかされているとか、そういうことを言うのだろうか。
他人から『愛している』と言われれば愛されていると言えるのか。
どうすれば愛されることが出来るんだろう。何をすれば、『愛』を与えることが出来るのだろうか。
例えば、この暴力に抵抗しないでいれば愛を貰えるのだろうか。ずっと何も言わないままでいれば、いつか母さんは俺を愛してくれるのだろうか。
父さんを愛して愛して、あいして、あいして愛しておかしくなってしまったように、いつかそんな風に俺のことも愛してくれるのかな。


震えている手から、金属音を立ててナイフがするりと落ちる。しかし母さんは襲ってくるのを止めず、今度は細い指とするどい爪先が首に突き立てられた。半狂乱になった母の姿がうっすらとぼやけた視界にうつる。




――7月22日、オレの13歳の誕生日に、父は死んだ。

オレの誕生日だからと学校に迎えに来てくれて、一緒に帰っている最中だった。
信号が青に変わって、横断歩道を渡ろうとした瞬間――、父は居眠り運転をしていた車にはねられ、出血多量で即死だった。

父が死んだあの日から、母は壊れてしまった。

お前のために迎えにいかなければよかったんだと、オレを責めたてるようになった。
父が生きていた頃は優しくて愛が溢れていた家庭も、父がいなくなった途端に逆転した。


それでも不思議と絶望はしなかった。

母は父が亡くなる前から俺には冷たかった。父が仕事のときや寝ているときには俺に悪態をつき、父がいる前では本当に優しくて温厚な母だった。
父がいるときだけでも愛されていたんだと錯覚したかった。憎しみと、愛は紙一重だと知っていたから、尚更思い込むことが出来たのかもしれない。



「本当は子供なんていらなかったのよ。私は貴史(たかふみ)さんとずっと二人で過ごしていたかった。
二人の時間にあんたなんていらなかった、――あんたさえいなければ」



ねえ、母さん。

あなたは今どんな気持ちで、父さんと同じ顔のオレの首を締めているの。
父さんが死んでからろくに食べ物を口にしなくなったね。そんな白くて細い病人のような腕じゃ、オレの息を止めることなんてできないと知っているはずなのに。
あなたは悔しくて、歯がゆいんだろう。抵抗しようと思えば抵抗できるはずのオレが、苦しいとも嫌だとも何も言わず抵抗をしないことが、歯がゆいんだろ母さん。



「なんで貴史さんが死んで、あんたが生きてるのよ。何でなの、教えてよ……」



首を締めつけて抉る力が徐々に弱まっていくのが分かった。
弱くて、脆い母さん。オレが守ってあげなくちゃいけない。たとえ、何をされても大丈夫。だってオレは母さんに愛されているのだから。



「…母さん、ごめんね」



生きているのが、オレでごめんね。止めることができなくてごめんね。
謝ることしかできなかったけれど。



――だけど、本当は、



「……母さん、…オレのこと、愛して…」

ほんの一瞬だった。素早く拾いあげられた鋭いナイフが、腹へと突き刺された。



いたかった。かなしかった。みてほしかった。わらってほしかった。
愛して、ほしかった。



外で蝉がうるさく鳴いていた。小さく放たれた母さんの声はかき消されたが、口元が「ごめんね」と動いていたのをオレはちゃんと見ていた。


――これがオレの学園に来る最後の記憶だった。

20えいえんの夏(補足):2014/07/05(土) 19:20:41 ID:Nnzkhop.

えいえんの夏


藍澤 永遠(あいざわ とわ)
12歳の誕生日に父(貴史)が死亡。その後1年間、母(夏未)と暮らすが虐待を受け続ける。
当時13歳、母(夏未)によってお腹を刺されて意識不明の重体に。
刺された場所が悪く、脳や身体への後遺症が残ると言われていたが驚異の治癒力を見せ、後にアリス発覚となった。
傷が完治しないまま、14歳で学園に入学。


藍澤 夏未(あいざわ なつみ)
永遠の実母。夫、貴史の亡き後に鬱病にかかるが病院には行かず、入院もしなかった。
病気にかかりながら約1年間永遠と暮らしていたが、永遠に虐待をし続ける。
永遠を刺したあと逃亡し、その後の行方は不明となっている。
実は永遠の名付け親。


藍澤 貴史(あいざわ たかふみ)
永遠の実父。享年38歳。
永遠の誕生日に迎えに行き、一緒に帰った帰りに居眠り運転をした車にはねられ出血多量で即死。


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