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緊急用本スレファイナル 『ZERO』

1名も無き生徒:2006/05/20(土) 01:01:32



それは終焉を呼ぶ行い
                   それは奇跡を義務付けられた戦い


片方は希望を念じ、奇跡を望み
                  片方は勝利を確信し、絶望を願う


かくして両者はぶつかり合い
             ――――――今ここに、全てを決める戦いが始まる

パイロット養成所最終回



         “Tomorrow never knows”

952海軍マニア@ゲイツ・ブランデッシュ:2006/07/16(日) 13:02:34
「なんというか、トップヘビーっぷりが進化してるよなぁ」
 ミノフスキードライブの推力でリフターのバランスを取ると言う、明らかに何かを間違えたピーキーさである。
 その『光の翼』も取り付け角度ほぼ固定、武装及び防具として使う事を諦めきった設定だ。
 開発陣曰く『中〜遠距離で弾幕を張る』コンセプト、どれほど当てに出来るのか一抹の不安は隠せない。

「……この期に及んで予備のビームライフルも5丁詰めるとか言ってきたし」
 腰の後ろと左右、リフターの上面左右。装備位置が干渉しないのが不思議である。

「ラウディ・クーリマン、ゲイツ・ブランデッシュ、発進します!」

953ぽややんな贋作:2006/07/19(水) 00:56:02
>880
上下左右から縦横無尽に放たれる攻撃は、一見すれば、
否、常人にしてみれば十二分に驚異となる。
だがその視覚的驚異を得るために、唯一犠牲にしたある一点。
「厚み」に劣っているならば、それを着くのがこの男。
「────────!!」
機体を反転させて、退から進へ一瞬で切り換える。
機体を回転させて隙間にウィングスラスターを通し、
胴体に当たる物は右手のサーベルで切り払い──
「……無理か!!」
エイケズの一撃を左肩に受ける。其処は既にメガネが一刀を浴びせた場所。
生半可な一撃は届かず、渾身の一撃でさえ、一瞬の交錯に処されてしまう。
例え『贋作』であろうとも、アズフィード・クラウンと戦うとはそう言う事だった。

>881
「……敢えて、敢えて言おう。オリジナルの僕が燃え尽きかけて居る今、
 この瞬間だけは僕こそが『アズフィード・クラウン』だ。
 アンジェ、エイケズ君、ぐぇねピーにすぐ来るだろうアミテュルー。
 君たちが見続けてきた背中が、いまは君たちを向いている。
 心した方が良い。慢心、畏れ、憐憫、油断。どんな隙も僕ならば射抜く。
 その上で言おう。かかってこい、と。
 僕が君たちに教えた全てを持って、適うならば僕を超えてみせろ!!」

954赤毛@ケルベロス:2006/07/23(日) 01:32:33
>>953
「そーゆーののほうが、よっぽどわかりやすけりゃ気分もいいわね」
 そう告げて、笑む自分を皮肉に思う。 
 
 そう、確かに追いかけていた背中だった……もっとも追いかけていたのは
背中ではなくて、あの日の残像だったような気もする。
 私と言う女が、色恋抜きで彼に惹かれた部分があるとすれば……あの、正確で、
鮮やかで、舞踏にも似た優雅さと、精密機械のような無機質な完全さを備えた
あの日の残像になのだと思う。

 あの日、私は落とされて、記憶ともども……心までもを奪われた。 
 女としての私は、彼という男のすべてに惹かれていたけれど。

 パイロットとしての自分は……あの日私を落としたあの「動き」
にこそ惚れていたんだ、と思う。
 別に戦いが好きってわけじゃない。

 いつやめたってかまやしなかった。

 それでも、こうしてパイロットを続けているのは。 
 戦いのための技術と技能とを学び続けたのは。

 きっとあの日の影の動きに、ほんのわずかでも近づけたら。
 たとえ近づくことができなくとも、及ぶことができたなら──

 
 そんな思いが、いつだって胸の中にあったから、なんだとおもう。

 あれからずいぶん長い月日が過ぎて。
 多くの人と出会って別れて、それだけ私は強くなれたと思う。

 
 きっと一人では勝てない。
 それはわかってる。


 でも、目の前の途方もなく不器用で、とほうもなく無様な
生き様を晒してもがくありようを見てしまったなら……

 その思いに、全力で応じずしてどうすると言うのだろう。

 まして、あたしには……この上もなく頼みになる相棒が、
今この瞬間に存在している。

 エイケズ・コート。
 どうしようもなく頼りにならないはずの、いってみれば
養成所一の劣等生は、師に託された刀を手にして、無敵を
前に一歩も退こうとしていない。

 ……守るべき後輩だった年上の人。
 けれど、彼はこの戦場で、背中を預けるに足るほどの
強さをこうして見せ付けている。

 ……だったら……たとえ彼がどれほどに強いとしても。

 勝てない道理がどこにある!

「行くわよ。見届けて上げるわ、あんたがこの瞬間に燃やす
思いを……アズフィート・クラウン、あたしを一度殺した男!」

 魂は鋼と同化している。
 総身に蓄えられた電力はすでにあふれかえり装甲を紫電と
走るほど。

 届かなかった、あの日の剣。
 今日は果たして、届くだろうか。

>>エイケズ
「中距離支援、かますから!
 冴えたアドリブ、見せてよね!」

 叫ぶ。
 全速力で左旋回。
 エイケズ機と交錯しない射線を導き出し、そして自由名乗る翼へと
狙いを定める。
 
 五体は既に鋼ならば、引き金を引くに指は要らず。
 ただあふれる想いもて、愛すべき男を刺し貫け──

「犬狼牙──『百薊』!」

 ビームスラストキャノンの顎より、放たれし光弾、10──
そのいずれもが最大出力、艦砲級の必殺撃、怒涛と変じて襲い掛かる!

955鋭利な少年@ガンブラスター:2006/07/23(日) 01:42:11
「……アミテュルーさんご指名でーす。ってノリならまだ良かったんだけどなぁ!」

AAのカタパルトから遅れて発つMS。
咄嗟に広い載せた一機は生徒が乗る分には申し訳ないが、
しかしこの戦場に於いては搭乗者の経験と合わせ余りにも心もとない。
だが少年は地に降り立つ。
ある意味では自分こそが、キーマンなのかも知れないと思い始めていたから。

956グェネビア:2006/07/23(日) 01:56:07
>>953 
「・・・・・・」
 醒めてはいる。醒めなければならないと思っている。
 思うからこそ心が狂おしい。

 超えなければならないもの、それは自分の甘さなのだと。

 この身は限りなく万能に近く、しかしけして全能にはなりえない所詮有限たる身。
救世をこそ望めど、しかしそのすべてを満足にはこなしえず。
 今日尽きる命か、明日終わる命か、あるいは誰も彼もが死に絶えてなお
生き続ける定めにある身か。
 
 けれど、今を生き延びなければならなかった。
 それを為すためには、眼前の男を乗り越えなければならなかった。
 
 今一人。傷ついた『本物』のアズフィート・クラウンを、少年は
見つめる。
 限界近づいた身であるにもかかわらず。
 それでもなお戦ってくれた。

 そう。もう、彼は十分に戦った。
 そして、彼は僕らに戦うに足りる力を与えてくれた。
 
 だから、少年は小さくつぶやく。たとえ想いが、届かずとも。
「アズフィート・・・教官。見ていてください。
 あなたが伝えてくれた『力』が、どういう形で実り行くかを!」

957灰色の想いを連れた生徒@ザクファントム:2006/07/23(日) 02:16:18
>953
「チィッ――――――」

(渾身の一撃は倒すには至らず、珍しく舌打ちを鳴らす。
 勢いをそのままに、フリーダムと再び距離を取る。
 続けての連撃はすべきではない。
 一瞬の隙をつくような攻撃でなければ、自分はすぐさま死に追いやられる。
 真正面からの正直な太刀筋で、勝てるほど甘い相手ではない。

 ギリ、と刃を握る右手が鳴る。
 怖くて、恐ろしくて、とてつもなく強い大きな敵。
 今までの自分なら逃げていたろう。
 少なくとも、養成所に来る前の―――怯え続けていた自分ならば。
 だが―――今は退かない。逃げない。
 師と仰いだ彼に対する敬意と、少しばかりの意地と、決して失くしたくない守りたいものがあるから)

>954
(養成所に来て出会えたものは、師だけではない。
 いつでもどこでも蛙を連れている変人に、
 もう中年と言われてもおかしくない年齢だというのになよなよしている、
 そんな男に、養成所に来て出来たものは、多くの友人。
 歳は一回りほど離れていても、両生類を別にするなら―――
 それは、自分の数少ない―――しかし、掛け替えない友人達。
 そんな友人に、今、頼られた―――。
 恐らくは養成所でも下位であろう成績を持つこの自分が。
 心も体も技も、何一つ卓越していない自分が。
 今、ここで頼られている。
 だとするなら―――!)

「任せて下さい―――!」

(ここで、情けない事など出来るはずがない。
 先ほど繰り出した、渾身の一撃以上の、技を繰り出さなければならない)

「ハアアアァァァッ―――!」

(腰を深く落として刃の切っ先をフリーダムへと差し向ける。
 一人では敵わない相手。
 だとしても、右手に師と仰ぐ者が宿っていて、支援をしてくれる友人がいて。
 背に負う、二人の愛しい家族がいるならば―――。
 一人じゃない!)

「トアアアアァァァッ―――!」

(背の翼が光り輝き、黄金色へと進化する。
 その色の変化と呼応するように、翼は大きく膨れ上がる。
 そして、その膨張が終わると同時に―――ザクファントムは駆け出す。
 伸ばした刃の先が、黄金の翼の波動を受けて―――。
 その切っ先を、巨大に進化させてゆく。
 両手で柄を持ち、更に巨大に―――!

 ザクファントムが翔ぶ。
 大きく掲げた黄金の刃をただ真っ直ぐに振り下ろす。
 大きすぎるその刃を振り下ろすのなら、相応の速度になるはずの攻撃。
 だが、その太刀筋は―――彼の敬愛する、一人の師と殆ど同じそれであった)

958ぽややんな贋作:2006/07/23(日) 02:53:40
>954
キャノン級の射撃。例えシールドが健在だとしても受けるのは愚の骨頂。
右手から放たれる怒涛を見据え、光と粒子の僅かな時間差を読み解き
上下左右前後の三次元に時間の一次元を加え確殺満ちる空間で僅かに残る生存権へと滑り込む。
その動きは光弾が怒涛ならばまさにその上で舞う木の葉。
流れるに流されず流れに乗り、横たえて滑り込む動きの連続はまさに演舞。
一片の躊躇も恐れも無いその動きは、誰の目にも「彼」の動きそのものとして映っただろう。

>957
「貴方のその刀――」

赤毛の斉射に機体の動きは大きく制限されていた。
しかしそれは既に三度見た太刀筋。振り上げた右手の先に持つ一刃と黄金の刃を合わせ、
受けることなく競り合いの反動で「自分を」流すようにして凌ぐ。
あと一歩が踏み出せれば届くだろう。だがその一歩がまだ縮まらない。

「ただ借りるだけで届くと思うな!」

空いた僅かな距離に肩の砲塔を下ろし光条を叩き込む。

959鋭利な少年@ガンブラスター:2006/07/23(日) 02:58:49
>958
繰り広げられる光景は自分の手から余りにも遠い。
だが少年は「彼」の言葉を反芻していた。
見つめ見据え目で追うと同時に足りない経験と与えられた教えで行動を解析して
時間と空間の両面から男の動きを射抜ける一点を――

(…………無茶としか思えない。けど俺がやらないと!!)

見出すには、まだ遠い。

960グェネビア:2006/07/23(日) 03:05:37
>>958
 犬狼牙すらしのぎ、必殺と見えた斬撃すらしのいでみせる。
 極みとみせてその上を行くその軌道はまさに骨頂と言うべきか。
 しかし、それに及ばねばならぬのだ、そう少年は知っている。

「届かないのなら・・・・・・」

 放たれるのは嵐だった。
 己の意思にて自在となる嵐。
 この身が未だ意思持つより先に与えられし力、すなわち鋼の「暴風」。

 背より翼がごとくに開いたユニットより吐き出される無数の礫が
雲霞と変じて魚群がごとく揺らめきながら飛翔する。

 思考誘導型対MS誘導兵器『バグ・ビット』50基、そして
『コッペリア』思考誘導ミサイル6基による一斉包囲攻撃!

「近接戦闘状態だろうと、思考誘導ならば味方に当てずに攻められる!
鋼と熱と爆風の牢獄!
  
 あの斬撃でも届かないなら、届かせるのが僕の仕事だ!」

961赤毛@ケルベロス:2006/07/23(日) 03:14:33
>>958
 グェネビアがサイコミュ兵装を放つのが見えた。 
 アズフィート機を封じ込めるように、無数の鋼蟲が
空間を踊り狂う様を見据える。

「いい動き、してるじゃない・・・・・・!」

 容赦は無用、ただ全力。
 鋭く貫くイメージを空間に走らせる。
 
 プロセスはあまりにも体になじみすぎている。
 この一撃でどれほど多くの敵をほふり去ってきたか。
 
 かの『自由』最強の男が駆る最強の機体に通じるなどとは思わず。
狙うはただの一瞬の時間、エイケズ・コートの一撃を届かせるに足る
だけの刻を奪うのみ──

「──貫!」

 咆哮とともに、今ひとつの砲塔が蠢く。

 88ミリ長砲身レールカノンより放たれる超々音速の高速貫通弾!

962灰色の想いを連れた生徒@ザクファントム:2006/07/23(日) 03:27:49
>958
「ッ―――!?」

(大きく振りかぶったが故に、その回避行動後に行われた攻撃行為への対処が一瞬遅れる。
 そして―――その一瞬が、致命的。
 慌てて飛び上がるようにして回避を行うも、
 肩口から溢れ出した光の矢が、無情にもザクファントムの下半身を焼いてゆく)

「こっ………のぉっ………!」

(機体制御、光輝く翼を使い、体制を整える。
 ………大丈夫だ、まだ、たかが下半身がやられただけだ。
 足が無くても敵の所まで辿り着いてみせる。
 その為に、大空を舞う翼がある!)

「負けるかァァァ――――!!」

(叫び、翼を輝かせて一気に接近!
 両手で持った大剣は―――その叫びに応えるかの如く、姿かたちを変えてゆく。

 借りるだけ、といった彼の言葉は間違いではない。
 エィケズは、文字通り刀をただ、借りていただけにしか過ぎない。
 それは自分がただ、師である彼の事を尊敬するが余りに、
 戦い方を師である彼の模倣をしていたからに過ぎない。
 だが、この時―――ザクファントムの下半身が吹き飛ばされてなお、
 抗おうとする今この時の彼は、己の戦い方に師である彼の経験則と技術を合わせていた。
 
 エィケズ=コートは刀を手にした事が無い。
 今まで使った近接武器は、この場で初めて手にした刀とザクファントムの標準装備であるトマホーク。
 そして―――)

「うおぁらァァァァッ!」

(大剣が変化を終えた。
 今、ザクファントムの右手に握られているのは、一本の、黄金色に輝く槍。
 一番長く使い、そして、彼が愛用した唯一無二の必殺の武器。
 師である彼の刀を用いて、使い慣れた己が武器とする。
 突き出したのその右腕が振動し、槍の切っ先を振るわせる。
 その様はまるで、マシンガンを撃ってるかの如く―――。
 ただただ、揺れ動くその槍を彼はフリーダムに向けて、大きく突き出した)

963鋭利な少年@ガンブラスター:2006/07/23(日) 03:34:11
>960
脳裏に発想が閃いたのは奇跡としか言いようが無い。
少年は見出した策を迷わず実行に移す。
「そこだぁーっ!!」
ミサイルの一機を、贋作が対処行動をとる前にその目をもって確かに射抜く。
爆炎がその視界を大きく塞いでいった。

964ぽややんな贋作:2006/07/23(日) 03:54:05
>960
城壁と称された男の鏡像。嵐にも揺るがず、その訪れを待ち構える。
両腰のクスフィアと肩のバラエーナ、そして右手のサーベルでその嵐さえ切り開こうとした刹那――

>963
想外の爆炎が視界を塞いだ。
圧倒的な数の優位は少なからず男の視界を削いでいたのか、アミテュルーの行動は男の「目」を掻い潜っていた。
それは決して男の手落ちだけが招いた結果ではない。
少年もまた、彼に匹敵する「目」を持っていたからこそ、「見えない」瞬間を「見られない」と知りえたのだ。
そして、暗雲晴れやらぬ内に――

>961
その全てを吹き払う速度で。牙は男へと食らいつく。
それは返すこと適わぬ速度を持って――
「――――くっ!!」
しかし致命へと至ることなく、男はその一発へも反応して見せた。
だが受けた部位は機体の右肩。装備の使用を大きく制限されることも勿論何より――

>962
その速度が故に受ける衝撃がフリーダムの姿勢を大きく崩す。
もはや如何なる速度による行動も、物理法則が定めた壁の向こうでしか回避を成し得ない。
真にエイケズの一刀たる一突が確かにフリーダムを捉え、もはや誰も疑いようが無くその胴を貫いた。

965ぽややんな贋作:2006/07/23(日) 03:55:10
胴を串刺しにされ、爆発しなかった事とコクピットを完全に潰され無かったのは
ある意味では奇跡と呼べたかもしれない。
己の意思が果たされたかどうかは分からないが、全ての潮時が迫っている。
次の、一手を。

ゆっくりと、戦意無き動きでザクファントムから離れる。
姿変えた大剣を機体から抜き終えたフリーダムが、否、その中にいる男が言葉を放った。
「これが――」
咳き込む。口に広がる鮮血の味が、無意味に訪れる運命を強調するのは如何なる嫌味か。
せめてカメラからは潰された下半身が映らないのが救いか
「これが、君たちが何時か超えるべき姿だ。……忘れないように、ね」
そして、満身創痍から一歩以上致命に近い機体が飛翔する。
その先にはいまだ苦戦する赤き巨体。傍らまで近寄り、男はきわめて平静を装い言葉を送った。
「やぁ、そっちも苦戦してるんだね。実は僕もだよ。奇遇だなぁ?」

966邪神具現者:2006/07/23(日) 04:11:39
>>965
「ッ・・・・・・アズフィート・クラウンでさえ抜かれる・・・・・・
 ありえないよ、ありえないッ!

 こいつ・・・・・・離せ・・・・・・ッ!!」

 何度となく蹴りを加える。だが離れない。
 砲撃を加えんとすれば、次の瞬間アークエンジェルからの砲撃や狙撃が
飛んでくる。
 強引に回避行動を行うが、それでもなお残骸同然と変じたギャンの
腕だけが絡みついて、なお離れようとしない・・・・・・ 
 
 亡霊に憑かれたようなおぞましさすら感じながら、さらに一撃、
蹴りを叩き込む。 
 だが、離れない、離れない・・・・・・
 
 腸が煮えるようだ。 
 ゆえに、少女は機能を停止させつつある木偶へとただ命じた。

「この死に損ないを何とかしなさい。

 死人同然のあなたでも、その程度のことはできるでしょ!」

967赤毛@ケルベロス:2006/07/23(日) 04:15:33
>>964
 死体と化しかけた男の姿を見つめながら、女は
微笑むことしかできなかった。
 愛している男と同じ姿をしたものが、潰えようと
している有様から、目が離せなかった。

 かけるべき声も、見つからず。

 ただ、女は男の挙動を。
 ずっと、ずっと、見つめていた。


 だから、叫んだのはグェネビアだった。
 
「エイケズさん!」

 自分では、とおい。
 ケルベロスでは、遅すぎる・・・・・・
 
 間に合うのは、エイケズのザクファントムだけ・・・・・・

「ガランさんが・・・・・・ッ!!」

968灰色の想いを連れた生徒@ザクファントム:2006/07/23(日) 04:28:36
>965>966
「はっ………はっ………はっ………!」

(額に滲んだ汗を拭こうともせず、荒い息を立ててただ呆然とその場に佇む。
 立ち去った男を追おうともせず、その瞳は彼の機体を貫いたその槍へと注がれていた)

「勝っ、た………?」

(確かに、槍はフリーダムの胴を貫いた。
 援護と、知略と、意地と、技術とを乗せた。
 全ての想いを連れたこの全力の一撃が。
 弱者が無敵を刺し貫くに至らせた―――)

>967
(静かに、その場でただ呆然としていたが、その言葉を聞いて再び顔を引き締める。
 スロットルを握り締め―――)

「っ―――!?」

(突如、体に走る激痛。そして、それに伴う倦怠感。
 連戦に続く連戦、ハードな戦闘を連続で、人一倍体力に自信が無い自分が戦えた事は、
 奇跡と呼んでもいいくらいだ。
 戦っていた時は感じなかったその痛みが、勝利によって得られた安堵によって蘇る。
 思わず手のひらに汗を浮かべ、スロットルから手が滑った)

「っ………わかった、すぐ行く!」

(それでも、歯を食いしばってどうにか体を動かす。
 もう一度………もう一度だけ、戦えるだけの体力を―――!
 痛みに悲鳴を上げる体を無視してスロットルを引き、エィケズは全速でガランの元へと向かった)

969ぽややんな贋作:2006/07/23(日) 04:47:32
>966
「……あぁ、そうだね」
その真贋を問わず。

「確かに今の僕でも」
その存在が「アズフィード・クラウン」であるならば。

「その程度のことはできる」
その存在意義とは常に唯一つのみ。

シークエンスを可能な限りすっとばして最短で操作を進める。
用意は出来た。後は悟られる前に一気にかますのみ。


両腰のクスフィアが巨人の腕に弾丸を突き刺す。
生まれた隙にガランのMSへと体当たりして、エィケズが訪れるまでの僅かな時間を稼ぎ。

「イロイロと読み違えたね贋作者(フェイカー)。そのツケ全部払って貰うよ?」

容赦なくレバーを引き倒し、フリーダムの核エンジンが自爆シークエンスへと突入した。

>968
「彼を連れて…………離れろぉっ!!」

970灰色の想いを連れた生徒@ザクファントム:2006/07/23(日) 04:57:56
>969
「っ!?」

(巨人とフリーダム、そして、ガランのギャンを見て息を呑む。
 迷っている暇は無い、一秒たりとも立ち止まってる暇などはない。
 そして何がどうして、どうなっているのか、どうしてこんな状況になってるのか何一つ知りようが無い。
 先ほどまで戦っていた敵が、今は巨人を食い止めて―――)

「くそっ!」

(手早くギャンを掴んで空中に飛び上がり………一瞬だけ、フリーダムを見た。
 さっきまで、敵だった………けど。
 今は巨人と戦っている、そして―――)

「くそぉぉっ!!」

(何故か瞳に浮かんできた水滴で視界を濁らせながら、
 震える手で、スロットルを操作し………全速で離脱を図った)

971邪神具現者:2006/08/01(火) 20:55:20
 知りうる限りありとあらゆる存在を複製し、己の腕として、
玩具として、あるいは血塗れた鉄槌として行使する。
 事実上、戦力として最強の能力を有する埋葬者であるマンサー。
 その称号を引き継いだのが、能力的には常人の域をしのいで
いるとはいえ、人格的には未熟な少女でしかないシア複製体
ガーランドに引き継がれたことが、この最強の存在の敗北を
招いたといえよう。

 少女は、己の能力のすさまじさに酔いしれた。
 己から見てすら圧倒的と思えるパイロットたち、兵器群を
自由自在に作り出し戦力として行使する力。
 いかなる損害であろうとも容易に再生させることすら、
その複製能力を持ってすれば可能となるのだ。
 事実、少女は己が神の具現であるとすら信じてしまっていた。

 だからこそ、意味成さぬ咆哮を上げずにはおられなかった。
己が複製した存在が、己の意思を裏切り牙を剥こうとは──

 己の認識の最奥に刻み込まれていた「最強」の具現として
複製した存在が、己に向けて牙を剥いている。
 核エンジン内部の核反応を暴走させ、万物すべてを焼き尽くす
炎をこの地上に具現化させようとしているのだ──!

「狂ったか……人にして人ならざる身、人の心もたぬ完全なる無機
の心与えられしヒトガタの兵器が、人染みた情におぼれるなんて──!」

 忌まわしさ呪わしさに任せてほえ狂おうとも眼前の青はすでに
炸裂へ向け己の内奥をただ燃え上がらせるのみ。
 中断させる──遅い、この『完全』が精神への強制干渉を許す
隙など与えるはずもない、強制操作して自爆解除コマンドを実行
させる前に、フリーダムは巨大な熱球と化して炸裂、私の五体すら
微塵と砕き去る──忌まわしい忌まわしい忌まわしい、最強たる
アズフィート・クラウン、戦力にすらなりえぬはずの惰弱エイケズ・
コート、古豪たる至強といえど所詮老いたる麒麟に過ぎぬガラン・
ジャック……この万能たる身にとって羽虫にすら比肩しえぬ微塵
どもが突き立てた牙は、今や死毒をこの身に通して。
 そして私は死に至る──?

972邪神具現者:2006/08/01(火) 20:56:00

「冗談じゃ……ないっ!!」

 下半身など不要、ただ最小の質量を残して総身を崩し、
思考するは彼女が知りうる最速の翼、ミノフスキードライブ。
 天使のごとくに光の翼が羽ばたいて──

『遅いよ』

 どこからともなく聞こえる声は、空耳のように遠くから。
馴染み深すぎるその声は、自分の声に他ならず、それが
自分の声であり、なおかつ自分の声でないというのなら──

「オリジナル・・・・・・『アーガイル』!
 あ、はは・・・・・・そう、そういえば、あなたも埋葬船団に背を
向けたんだったね!
 なに、今更私の思考にでも介入する?」

 邪神は笑う。この期に及んでオリジナルの感応波により
思考妨害がなされようとも、すでにミノフスキードライブはこの
戦場から逃れるための最大速力による運転を開始している。
 いかに核爆発の威力がすさまじかろうとも、その勢いは返って
この機体の速力を加速させるのみ、この体が無事であるのなら、
再生させてそれで終わり。
 離脱は成る、まだ私の遊びは終わらない、そう、終わらない、
ずっと、ずっと終わらない、何もかもが滅んでしまうその暁までは
決して終わる事はない──!

『それすらする必要がないの。だから遅いの。
 アズフィート・クラウンはそれほどの完全、そして養成所の
人たちはそれにすら比肩しうる究極。
 彼らは完全に役割を果たし終えようとしている。

 頭の上が、お留守だよ?』

 その言葉に──空を、見上げる。
 いかなる星より輝くものが、蒼穹の一点を白く白く凍てつかせて
いるのが、その双眸にくっきりと映し出された。

「サテライト・システム……ガロード・ラン……うそ、思考は
感じられてないよ、だからあいつが仕掛けてくるはずはない、
仕掛けてくるはずはないのに……!」

『作りすぎたね、操りすぎた。だから自分の徒労にすら気づかなかった。
必死になりすぎたんだよ。ガラン・ジャックのあがきにたいして、ああも
おろかな対処をしたことがその証拠。
 見切られていた、あなたはきっと見切られていた。
 ガラン・ジャックに見切られていた、ならばアズフィートたるものが気づかぬ
道理は他にない。
 空から地から、これ以上無い完全挟撃』
「……空から、地から?あははは……空にも地にも逃げられないなら、
心にだって逃げてあげる。
 殺されてすら生き延びる無命の王は、誰にだろうと滅ぼされない!
 
 そう、あの船には複製体『グレイ』が乗り込んでいる、その身に私は
憑依して……」

973邪神具現者:2006/08/01(火) 20:56:22

 だが、意思に響くその声は、彼女のたくらみを瞬時に哂った。

『それすら遅いの。グレイ・フェイク……ん、フェイクっていうのも無粋だね。
彼は、あなたの精神暗示を断ち切った。
 それは決してありえないこと。けれど人の魂は普遍のものじゃない。
 あなたは彼らを人として完全に作りすぎた。彼らに『命』を吹き込んでしまった。
そう、彼らはもはや木偶じゃない。命を吹き込まれ意思を手に入れた存在、
それは『人間』以外の何者でもなく、人間であるならば己の意思により判断し
行動する。
 クレア・フェイクの時のように、生半に作っておけばいいものを、あなたは
己の力に酔いしれて、あまりに彼らを完全に作りすぎた。
 遊びが過ぎたね。『邪神』さん?
 人の意思をもてあそんだ魔王は、最後には『人間』の勇者によって滅ぼされる。
 考えてみれば、必然みたいなものだよね。
 
 あなたの敗因は、人を余りに無力と見て、人を哂ってしまったことだよ。
 だから、人が持つ最大の力。可能性をつかむ為の唯一無二の剣たる「成長」
によって、あなたは倒される。人と成った木偶たちの手で、誰より人であった
彼らの手で。さようなら、シア・E。私はあなたを受け入れない。
 あなたはあなたとして滅びなさい』

「ふざけるな──だれが、私に劣る貴様になど──!!」

 しかし咆哮にもはや言葉は答えない。
 天井の輝きはいよいよ熾烈に。
 そして、大地には己の内に裁きの炎を燃え立たせる傷ついた翼。
 閉じ込められた檻の中、少女はただ、ただ──

974赤毛@ケルベロス:2006/08/01(火) 21:12:29
>>969
「……ッ!!」
 考えたくも無い人生のエピローグ、その終幕の予行演習。
 目の前の中で誰より恋した男に似ている存在は、いまその
出番のすべてを終えようとしている。
 その姿が、何度と無く死線をくぐろうとしてくぐりそこね
かけた愛する男の姿に空恐ろしいほど似ていて。
 そして、彼女は彼女であるがゆえに、彼が誰よりも彼と似た、
彼と同一の存在だと知っていたから。
 当の昔に死んでいたはずの彼女を生かしてくれた彼。
 兵器として生み出され、人としての心を持たぬはずの存在が、
何故か生かしたつまらない命。
 そんなものに過ぎぬはずのものを、彼は何度と無く救って
くれた。
 こうして今生きているのも、あるいは彼のおかげで。
 彼は彼じゃない。
 そんなことはわかっていた。
 わかっていたけれど、それでも彼は彼だった。そう、
いつだって、彼はこんな結末を覚悟してあの戦場もあの
戦場も越えて行ったに違いないのに。
 
 だから、だろう。 
 何もできなかったのは。
 いままさに核爆発が起こらんとしているのに、すべてを焼き払い
虚無と変ずるサテライト・バーストの奔流にさらされんとしているのに。
 明らかに危険だというのにただそこに浮遊していたのは。
 見つめる以外の何をなすことも思いつけなかったのは。
 
 体は動くことを忘れて、心は麻酔されたように何も思えない。
 現実は余りにも遠くて──

 ずるいよ、といいたくていえなかった。
 なんでよ、と叫びたくていえなかった。
 いやだよ、と告げたくていえなかった。

 瞬間のせつなに、動きを止めた心は迷走して、言いたい事も
問いたいことも捧げたい言葉も呪いの言葉も浮かびはしない。

 だから、きっと叫ばせたのは魂だった。
 愛する男の、たった一つのその名前を。

975種馬の長男@クーロンガンダム ◆/cw5MFdBrs:2006/08/03(木) 15:19:16
「超級覇王電影弾!」

 必殺の一撃をしてシュピゲールを捕らえる。

「……シャイン・スパーク!」

 激突の直前にエネルギー光球を抜け出し、敵を邪神のそばに叩き付ける。
 自分は大地に突き立った『轟天』に捕まってブレーキの代わりにする。

 ふと、ボルトガンダムを見るが、ひび割れ朽ち果てつつあるその姿に目を背け、形見のつもりで大太刀を引き抜いた。

976最強に至れぬ者、最強を望む者:2006/08/06(日) 00:59:22
>972
その翼を喰らう光条、二本。
静観を決め込んでいたアズフィード・クラウンと、
固唾を呑んで刮目していたアミテュルー・ゲナフ。
事態の動転に対応出来ぬ新兵でも無ければ、
状況が読めない目を持っている訳でもなかった。

そして──

977泡沫に眩いたモノ:2006/08/06(日) 01:01:01
>971 >972 >973
バッファに残された電力で、スラスターに最後の仕事をさせる。
意外とあっさりと、それは手の届く所まで近づいた。
「分かってないね。無機の心だろうとヒトガタの兵器だろうと、
 ソレがアズフィード・クラウンを基に生まれたモノならば、その能は常にただ一つ」

そう言えば誰かが城壁と呼んだ。
あまつさえ、最強の称号を冠させようともしていた。
可笑しい話だと思う。
                 アンジェ
「すなわち「この身の全ては彼女の為に」。
 そう、『アズフィード・クラウン』であるならばそれは真贋を問わぬ大前提」

故に「それ」を称するならば「城壁」も「最強」も誤用でしかなく。
彼は常に只一人の為の一枚の盾に過ぎず、それを果たせるのならば強く在れずとも良いのだから。

「さぁ終劇の時間だ。これだけ派手に演じたんだ、派手に降りようよ?」


>974
さしせまった最後を前に、朗々と語るには血も時間も残されていなかった。
故に一言。
「泣かないで。それでも『僕』は側に──」


光が全てを遮った。

978受付係員@ギャンB:2006/08/06(日) 01:10:45
>973
(半壊、いや全壊に程近い騎士、そしてその中の戦士は。
 仲間の腕の中でその姿を見ていた。

 殴る蹴るの猛攻にもかかわらずそれでも必死でしがみついていたせいか。
 モニターは半分以上が死に、大男自身も衝撃でシートから外れる形になっている。)

・・・・人間様、なめんなって・・・言ったろ・・・?

(衝撃で頭からは血が滴り、その目も闘志は失ってないまでも・・・
 体が限界であることを訴えていた。)

>977

(そして、その消滅を見届けるとともに男もまた、眠りにつく)

979邪神具現者:2006/08/06(日) 01:33:50
 叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
 もう意味など成さぬ言葉でただ荒れ狂う感情のままに叫び散らす。
 アームレイカーをでたらめに動かし、フットバーを何度も蹴り、
コンソールを片手で叩いて叩いて逃げ出そう逃げ出そうと足掻く。 
 走った二条の光芒に翼は貫かれてもう飛べず、機体はただ大地に
堕ち逝くのみだというのに。
 怒りと狂気に任せてわめき散らす耳に忍び込む、死者と化し行く
男の言葉。

「さぁ終劇の時間だ。これだけ派手に演じたんだ、派手に降りようよ?」

 何が終劇だ何が降りようだ何がたった一つの前提だ!
 お前が、お前が役に立たないからッ!たたないからッ!
 刹那の間にも破壊は迫ろう、輝きはもう視界の全てを焼き尽くさん
ばかりで、怒りばかりがこみ上げて──
 怒っていないと恐怖を思い出してしまいそうだという事実を認識
したとき少女は初めて死を恐怖した。

 死ぬどうしようもなく死ぬ、逃れるすべなどありはしない、
なんでどうして死ななきゃいけないの私は強いのに強いはずなのに
強いはずなんだよどうしてどうして誰か助けて誰か助けて!
 
 こんな力があったから殺された?こんな力に踊らされたから
殺された? 
 冗談じゃない冗談じゃないこんなことになるなら戦うんじゃ
なかった生まれるんじゃなかったッ!
 嫌だ嫌だこんなの嫌だだってだって
 
 私、戦い以外なにも──


 埋葬者でありなおかつシア・E・アーガイルの複製体に
過ぎぬ彼女は戦以外の何も知らない。
 彼女には強烈な劣等感が存在していた。オリジナルに対する、
強烈な羨望と嫉妬。
 自分は贋作に過ぎぬ、消耗されるだけの器具に過ぎぬと知っていた。

 だからこそ、力を手に入れたとき彼女は大いなる喜びを覚えたのだ。
真作たるアーガイルすら及びもつかぬ最強の力を備えた究極の存在。
 真作を超えた贋作などありえるはずもなく、故に己はこの瞬間
万物の支配者たる地位を得ついに己を己と誇れる瞬間を得たのだと歓喜した。

 しかし、それ故に滅びに至るとき思い出せる記憶など戦場と殺戮の
情景以外何一つない、走馬灯の中ですら彼女は戦いに晒され
続ける。
 
 死んでいった木偶たちの、敗れていった木偶たちの心は
手に取るようにつかめていた。
 本物に限りなく近い贋作で有るが故に彼らには記憶もまた
備わっており、彼らのいずれもが人生の何事かをその末期に
あって見出しながら最後を遂げ、そして彼女の最終作品たる
男もまた、彼の愛したただひとりの女性を思いながら滅びを
迎えようとしている。
 
 だのに、彼女には何もない。思い浮かぶのは戦戦戦、喜びも
なければ悲しみもなく、あるのは恐怖と怒りと憎悪、戦いの
快楽程度のものだ。
 そして、時が満ちる。
 天から降り注いだ業火と、地より沸き起こる烈火が彼女の
機体を飲み込んだ。
 何もない虚無へと堕ちていく。輝きの中に沈んでいく。

 贋作たるを超え、ついに己を確立したと歓喜した少女は。
 
 彼女自身が作り出し、見下し、哂い、消費し続けた数多の贋作
たち、偽りとはいえ末期に愛でるべき「記憶」を有した者たち
とは異なり。
 
 最後の瞬間まで、戦いのことしか思い浮かべることができぬ
己に絶望し、嘆き、涙し・・・・・・
 ついには、自分が彼らになしたことの意味を思い知る。
 この憂き目こそが、彼らに私が与えたものなのであると。
 そして、今まさにその報いが己に訪れようとしているのだと。

 彼女は、最後に炸裂せんとする蒼いモビルスーツ、その内に
あるだろう男の姿を見出そうとして。

 しかし強烈な閃光に視界は焼かれそれを果たすことはかなわず。

 そして、何もかもを飲み込む破壊の嵐に完全に飲み込まれ、
消えていった。

 彼女の末期の言葉は、たった、一言の謝罪。

──ごめんなさい。

 けれどその言葉も、急激に膨張する大気の爆音に飲み込まれ──
誰に届くこともなく、消えていった。

980赤毛@ケルベロス:2006/08/06(日) 02:05:15
>>977 
 フィルタ処理してすら目をさいなむほどの強さを持った輝きも今は
消えうせて。

 はじめからそこには何もなかったかのように、焼け爛れ
ガラス化した黒い大地だけが横たわる。

 誰も居ない、まっさらな破壊の痕。
 そこに二つの魂が在っただなんて、信じられないほどに、
何もない。

 ずいぶん長く眺めていただろうか、それともほんの一瞬
だったろうか。

「ばっかじゃ、ないの」

 ようやく出てきた言葉は罵倒だった。
 どんな顔を浮かべていいのかもわからないし考える余裕もない。
だから、浮かんでいるのはきっと半笑いだろう。
 笑うしかない。そう、笑うしかない。

 どんな顔を浮かべていいかなんて見当もつかないから。
こんなに馬鹿な死にざまを遂げた男の魂に向ける顔なんか、
思い浮かぶわけがないから。

 言葉だけが、勝手に漏れていく。

「ほんと、ね。ばっかじゃないの。
 そばに居る?あんた、死んじゃったじゃないの。 
 あんな、わけのわかんないのと心中しちゃってさ。

 アズとあんたとあたしで三角関係なんて刺激的かもしれなかったよ。
 
 そうでなくても・・・・・・ひょっとしたら、友達同士にはなれた
かもしんないし・・・・・・あはは、それは無理か。

 ・・・・・・でも、さぁ。
 そうやって、突っ張る気力があったってんなら・・・・・・」

 うつろだった心が灰色になって、ぐじゃぐじゃにミキサーで
かき回されて、胸が詰まりそうで、熱くて、痛くて。 
 のどまで詰まってくるものだから息が苦しくて。
 
 わけがわからないまま気がつけばただ目が熱くて、頬を冷たい
のに熱い何かが止め処もなくつたいおちて、ヘルメットをつけている
ことも忘れてただ頭をかきむしる。

 あとはもう、ただ泣き叫ぶだけだった。

「できたんなら、最初ッから、抗いなさいよッ!生き延びなさいよッ!
 一方的に好意表明して一方的にさよならなんてさ、残された
ほうはたまったもんじゃないのよ、わかってんの!?
 おしつけ、がましい・・・・・・最低よ、ほんと最低!

 聞こえてる!あたしは、あんたをののしってんの!
 帰って来い、っていってんのよ!アズフィート・クラウン
なんでしょ、あんたも!
 あたしに全てをささげるって言うのなら、此処に帰って
来なさいよ!」
 
 馬鹿なことを言っているという自覚すらなかった。
 帰って来い、なんていったって、彼にはふるさともなければ
帰るべき場所もない。
 ただ戯れに生み出されて、虚無へと還った存在に過ぎない。

 それでも、私は帰って来て、と連呼し続けた。 
 たとえ生まれた理由が何であれ、あなたが生まれたこの世界は、
きっとあなたを生かしてくれたと思ったから。

 あたしが生きるこの世界を、あたしがまだ生きることができているのは、
あなたがきっと命に換えてあの魔物と変じたMSを倒してくれたからだと
わかっているから。

 そして、それはきっと、この世界に明日を齎すための、幾許かの
助けになったのだろうから──

 だったら、この戦いの果て、この世界がもし滅びずに済んだのなら、
それはつかの間世界に生み出され、虫にも劣る時間しか生きることを
許されなかったあなたという存在に拠るものなのだとはっきりあたしは
言い切れるから。

 そうだというのに、あなたは居ない。
 
 その現実を、あたしは泣いた。

981子連れてない生徒@ザクファントム:2006/08/13(日) 01:43:56
(背中の羽はとうに消え、全身に傷を負った白いMSが飛ぶ。
 ふらふらと、ふらつきながらも帰路を辿る。
 ほぼ全ての力を出し切った体に鞭打ち、出来うる限りの速さで。
 その両手に尊敬の念を抱く彼が乗る機体を掴み、
 下半身を失いながも白いMSは進んでゆく。

 帰るべき場所は、既に目の前―――)

982鋭利な少年@ガンブラスター:2006/08/13(日) 01:52:13
満身創痍のMSが飛び交う中、少年の乗る機体は整備こそ十分では無いが五体満足なままだった。
故に周辺警戒を行い他のMSの帰還を支援していた。

時折、視界の隅でケルベロスをみやりながら。

983グェネビア:2006/08/13(日) 01:52:17
>>981
 やや後方を飛ぶMSが一機。
 ファントムの機体状態は良いとは呼べないどころではなく、
いつ墜落してもおかしくない。
 危険な状態だ、とは思うが・・・・・・
 この状況で脱出行動を取らせるほうがよほど危険といえた。

 ゆえに、緊急時にはすぐに取り付きパイロットの回収を
行える距離で待機しつつ、少年の視線は食い入るようにエイケズ
を見つめていた。

984子連れてない生徒@ザクファントム:2006/08/13(日) 02:06:35
(艦が見えたところで、少し意識がまどろんだ。
 機体もボロボロだが、パイロットの方も相当の疲労が溜まっている。
 途切れかける意識をどうにか保つように努め、どうにか………。
 艦の傍まで、たどり着く)

985赤毛:2006/08/13(日) 02:09:51
 整備用チェックリストにさっと記述を済ませて整備員に手渡す。
 不測の事態に備えて待機する、という意思を伝えて、コクピットの
ハッチを閉じる。
 
 ・・・・・・暗くて小さな球状の世界は子宮を思わせる。
 その中で彼女はひざを抱えたままシートに座り込んだ。

 アズはどうなったろう。医務室だろうか。

 ・・・・・・無事なのだろうか。

 心配だった。心配すぎて、かえって会いにいけない自分。
 もしも、意識が戻りえぬほどに彼の体が痛めつけられていたら。

 一日に二度、男を失うようなことになったら。

 それはきっと行っても行かなくても同じ事。
 けれど、恐い。失うという事態に再び直面するのが、こわい。
 
 だから、こうして閉じこもっている。それが逃げだと、知りながら。

986ぽややんな教官:2006/08/13(日) 02:17:04
>985
やっほー赤毛ちゃーん☆
起きてるー?

(重い空気が読めてないとしか言いようのない通信が入る)

987グェネビア:2006/08/13(日) 02:19:05
>>984 
 拙い。
 パイロットであるエイケズの体力が、限界に達したのか。
 意識が途切れ途切れになっていることが、機体の動きからも
わかる。
 
 飛び出す、かーー
 だが、うかつに取り付けば共倒れにもなりかねない。

「着艦用ネット、スタンバイしてください」

 整備班に、着艦用ネットの準備を要請する。
ここまできてt、着艦ミスなどというくだらない
死に方をさせるわけにはいかなかった。

 しかし、グェネビアは知っている。
 着艦作業というのは、言ってみれば空中にうがたれた
小さな穴に針を通すような無理を要求する。
 
 ・・・・・・・
 それだけの作業を、今のエイケズが行える亜か・・・・・・

不安ばかりが胸につのった。

988赤毛:2006/08/13(日) 02:32:52
>986
 
 聞いた。

 聞こえた。

 いない振り。

989子連れてない生徒@ザクファントム:2006/08/13(日) 02:33:44
>987
(霞む目に映る景色、耳に何かが詰まっているのではないかと思えるほど聞こえぬ音。
 ほぼ呆然としたまま、目の前のネットを見つめる。
 靄がかかったまま聞いた話によると、これに飛び込めば、とりあえずは着艦出来るらしい。
 これで最後だとばかりに、全身に言いつけて集中する。
 意を決してそのネットの中に腕の中のMSごと入ろうとする、が―――。
 一瞬、レバーを引くタイミングがズレて軌道がズレる。
 

 ―――瞬間。

 
 ザクファントムの背に、ほんの一瞬だけ、緑色の翼が発生し、小さく羽ばたいた。
 その羽ばたきが軌道を修正し直し、二機のMSを無事にネットの中へと押し込む。
 それと同時に、翼は消えうせた。


 ネットに入り込むと同時に、エィケズは溜息を吐いた。
 そして、通信をする)

「ガランさんが怪我を負ってるみたいなんで、早く治してあげてください。
 なるべく急いで、お願いします」

(乾いた喉でそれだけを告げると、小さく伸びをした。
 そして、無事またここに帰ってこれた事を、胸に光る緑色の石を持つペンダントに感謝した)

990ぽややんな教官:2006/08/13(日) 02:35:22
>988
あれ、アンジェー?
不足の事態に備えてるんじゃー?
おーい?

(なおも空気読めない進行が続く)

991種馬 ◆/cw5MFdBrs:2006/08/13(日) 12:17:29
 クーロンとスタリオン、2機のモビルファイターが着艦する。

 辛うじて動く事は出来るものの機体も中身も満身創痍で、所定のハンガーに押し込まれ最低限のチェックを受けた後は放置状態である。

 そして、本来3機分確保されたMF用ハンガーに空きが一つ。大太刀が一振りあるのみであった。

992アストナージ・メドッソの視点:2006/08/13(日) 13:22:47
──なんだよ、ありゃあ。

 MS収容のため開いたままのハッチの向こう側、四角に切り抜かれた
青空に浮かぶものを見つめた瞬間アストナージは絶句する。 
 胴体を半ばから断ち切られた巨人が、今にも崩壊しかねぬほどに
叩き砕かれ刻まれた巨人を抱えながら、よろめくようにして突っ込んで
くる。
 光翼は絶えず明滅し今にも消えんばかりにおぼろげで、腹部胴部と
いわず漏電によるスパークが走り眉のように包み込んでいる。
 
 落ちる。あれは間違いなく落ちる。
 長年の勘がそう告げていた。

『着艦用ネット、スタンバイしてください!』
 
 今にも死に絶えんとする機体の傍らを飛ぶ騎士に似たMSから、
耳を引き裂かんばかりの緊張に満ちた甲高い進言が入る。
 わかっているその準備は当に済ませている、惑っているのは
別の理由だ。 
 あれが飛び込んできて、もし格納庫内部で爆裂四散しようもの
なら・・・格納庫内部はどうなる。
 弾薬推進剤ことごとく誘爆、発生した爆圧は閉鎖空間といって
いい格納区画を蹂躙、高熱によって溶解した金属のガス・ジェット、
そして破壊されたMSの破片とがさらなる破壊を引き起こす。
 パイロットもMSも整備兵もことごとく死に絶えるんだ、蒸気で
薫蒸される害虫のように、きっと生き残る奴など一人もいない。

 そう、この瞬間における最適解、この現実からもっとも多くの
人を救うすべは・・・・・・
 おそらくは必死決死の覚悟で、くずおれそうなその身を必死に
運ぶあのモビルスーツを、この戦を決した一人の紛れもない英雄を、
エイケズ・コートが操るザクを、今この瞬間撃墜してしまうこと、
ガラン・ジャックを巻き添えにして!
 エイケズの意識はもう限界だろう、はたして目が見えているか、
音が聞こえているかすら怪しい。ただ肉体が本能のままに動いて
いるだけかもしれない、だからこそ危険だ。
 たとえ爆発せずとも時速百キロ以上で飛来する数十トンの鉄塊は、
それだけでこの格納庫を蹂躙するに足りる、無数の砲弾やプロペラント
タンクを巻き添えにして。
 そして起こる結末は、あのMSが爆裂したのと寸分変わらぬ惨劇に
他ならない。
 そうだ、たとえ権限なかろうと命じろアストナージ。
 グェネビア・シモンズに命令するんだ、エイケズ・コートを
撃墜しろと!
 目の前の悲劇を避けるため打ち抜けと命じるんだ、ほかに
すべなどあるはずがない!

993アストナージ・メドッソの視点:2006/08/13(日) 13:50:56

 息を吸う。
 そして、叫ぼうとして。
 
 視界の隅に、はこばれてゆくなにかが映る。
 見えたのは、担架ではこばれてゆくヘルト・ヘンリーの姿。

 馬鹿なまねをしたおろかな少女。
 戦場にあって敵を倒すを求めず、敵を助けんとした大莫迦者。
狂っている。彼女は疑いなく狂っている。
 そう、彼女の果てしなく自己満足に満ちた決断の果てに予想
されたものは。
 ヘルト・ヘンリーが撃墜され、そしてこのアークエンジェルも
落とされるという最悪の結末。
 いま少し敵が正気であったなら、疑いなく訪れたであろう事態は、
しかし訪れはしなかった。
 それは天文学的確率とすらいえる奇跡。
 ただ操られるのみであったはずの木偶が己の魂の求めるところに
目覚め、そして己の存在の根源にあったはずの殺戮衝動を押さえ込み
打ち破ったという、まぎれもない奇跡。
 
 その奇跡はヘルト・ヘンリーなかりせばけして起こらなかった。
 ヘルト・ヘンリーが狂わねば、けして顕現することかなわなかっただろう結末。
 
 わかってる、そう、わかってるんだ。
 ああそうだ、何が「正しい」かなんてわかってる。
 あのエイケズ・コートの姿は、人としてこれ以上ないほどに「正しい」。
 きっと考えなんてない、行為を求めていたのは魂で、それをなさせて
いるのは本能だ。
 だからあんなにもちぐはぐな動きで。ミノフスキードライブももう
動きを止めようとしているのだろう、速度低下があまりに早すぎる。
あのままでは疑いなく失速するだろう、そう、きっと間に合わない。
 だからあの機体を打ち落とすのもきっと正しい。それが理というものだ。

 正しさと正しさがぶつかり合う。
 
 そして、アストナージは叫んだ。

「ネット、展開しろッ!!」

 何を言っているんだ俺は。

「あの役立たずのIフィールドモーター式回収システムも起動しておけ、
引力場であの機体の回収をサポートする!」

 エイケズ・コートの技量なら知っているだろう。
 あの男をついに勝利せしめたのは技量を超えたなにかでしかなく、
それもきっと汲み尽くされて、もうあの機体もパイロットも限界だ。
 落ちるんだ、落ちる。きっと落ちて、四散する。
 それがわかっているというのに。

 ヘルト・ヘンリーの顔が浮かぶ、あの男の娘の顔がうかぶ、
あの男の妻の顔が浮かんでしまう。
 軍人たるなら私情は捨てろ、軍人ならば鬼になれ、鬼でなくして
ことは為せない!
 ああ、だが・・・・・・
 俺は見ている、俺は知っている。
 失ってはならぬ人を失ってしまった人間の心が、魂がどれほどに
切り刻まれるかおれはよく知っているじゃないか、握り砕かれた
ノーマルスーツ、唇から吐き出された血とそれ以外の何か、眼窩から
せり出した・・・・・・畜生畜生畜生!
 
「ノーマルスーツを着けてない奴は下がれ、液体窒素噴射で
急冷却、かけるッ!窒息するぞッ!」

 本来なら艦内火災時にしか用いぬガス式消化システムの起動を
決断する。
 ばかげた言葉のせいでばかげた倍率の馬に賭けてしまったような
もの。だが賭けてしまったのなら、勝利に向けて最大限の努力を
払うほかない。
 
 羽虫程度にしか見えなかった白の巨人が、いつしか四角の空の
大半を覆い尽くすほどになっている。

「Iフィールドモーター、発動ッ!」
 
 全力で叫ぶ。
 Iフィールドモーター。擬似重・斥力展開装置。
 ムーンレイスの技術を導入して開発されたこの装置は
いまだ欠陥おおく、試験運用レベルの域をでていない。
 本質的に試験艦であるアークエンジェルに、試験のために
搭載されたに等しき未熟児。
 斥力場の操作を誤れば天井に激突するか壁面に衝突するか、
あるいは床に墜落して跳ね回るか。
 だが、あの状態の機体を制動するにはネットでは不足。
 ネットにトラップされた衝撃で、限界を迎えつつあるだろう
ガランとエイケズの肉体が再起不能にならないとも限らない。
 もう雑念などない。
 そのような余裕を時間は与えてくれない。3、2、1。

994アストナージ・メドッソの視点:2006/08/13(日) 13:51:09

「今!」
 Iフィールドモーター作動。同時に回収用ネットが床と天井から
同時に跳ね上がる。
 砲弾のように実をかすませながら突っ込んでくる白い機体。
 進路が、わずかに反れているか。このままでは天井に衝突する、
と思われたせつな。
 機体がわずかに減速。
 エイケズが無意識に進路の再調整を行ったか。
 ギャンという巨大な質量体にして空気抵抗の塊をかかえ、機体の
空力特性など完全に失われた状態、すなわち半身が完全に失われた
状態で、きわめて繊細かつ困難な進路調節を、しかもアポジモーター
噴射に頼らず、Mドライブのベクトル調節だけでエイケズ・コートは
成し遂げてみせた。
 
 その速度が見る間に衰え・・・・・・
 ネットに包み込まれる。
 機体の総身に走る漏電は導電性合金であまれた制動ネットに
ことごとく吸収され、誘導回路へとアースされていく。
 ガス放射。白い煙のような何かがまたたくまに機体から
熱を奪い、機体が誘爆する可能性を半秒単位で押し下げていく。

 アストナージ・メドッソは深くため息をついた。
 尻が冷たい。どうやら腰が抜けてしまったようだ、と他人事の
ように思う。
 整備兵たちが口々にエイケズの名を叫びながら駆けていく。
 どの目もどの目も純粋な喜びに満ちていた。
 畜生、どいつもこいつも、エイケズを撃墜して危険を避けるなんて
ことは考えていなかったってことなんだろう。
 
 ああ、畜生。どいつもこいつも狂ってやがる、おかげで俺まで
狂っちまった。
 ああ、だが狂うのも悪くない。
 
 なぜなら、いまここに満ちている狂気は・・・平時における正気
そのもの。人間の尊厳とか慈愛とかいう、戦時にあっては唾棄したく
なるような事柄にほかならないのだから。
 
 畜生め。この戦いが終われば戦争も看板だって、どいつもこいつも
言っていた。もしもそいつが本当なら。

 ・・・・・・次の時代を憂いなしに、きっとあいつらは渡っていけるの
だろうから。

 格納庫内は火気厳禁。タバコをすうなど、もってのほかだ。
 だが、男は胸ポケットから一本の紙巻を取り出すと、加えて
火をつけた。
 深々と吸った息の中に混じる煙が肺にしみこんでゆく感覚に
安堵を覚える。
 一仕事終えた満足感とともに。

995アストナージ・メドッソの視点:2006/08/13(日) 14:10:45
>>989 
 誘爆の危険が去ったわけではない。
 噴射されたガスの冷気はまだ装甲に浸透した
ていどで、その内奥にはいたっていないだろう。
 だからこそ大至急引きずりださなければならなかった。
 いくら指導が仕事とはいえ、こればかりは部下たちに
任せるつもりになどなれなかった。

『ガランさんが怪我を負ってるみたいなんで、早く治してあげてください。
 なるべく急いで、お願いします』

「黙ってろ!ともかく今はお前が先だ!」

 安堵など与えてやらない。限界を超えたGにさいなまれた肉体の
命を支えるのは往々にして緊張のみ。
 魂ほど肉体をだます詐欺師はいない。果たすべき何かを追い求める
間は、たとえ肉体が地名の傷を折ったとしても、死んでいなければ
おかしいようなほどに痛めつけられても、求める何かを手にいれさせる
ために、あるいはまもらねばならぬなにかをまもらせるために、
死人を操る呪術師のように魂は肉体を意思という魔術によって
操り動かしてしまう。
 そして、求めるものをてにいれたなら、なしとげるべきを
なしとげたなら。
 魂はそれで安堵してしまう、肉体を操ることをやめてしまう。
 そして、そのまま眠ってしまう。命を保たせるのが困難なほどに
深く、深く。
 そうして死んでいったパイロットをアストナージは多く知っている。

 だから安心なんてあたえてやらない。肉体が生きるに足るほどの
力を取り戻すまで為したか為せぬかの不安で苛んで、終わる命も
つなげてやる。
 もはや言葉など聞いている暇はない。
 コクピット内部の状況を見極め、同時にパイロットの
状態を確認し、足が露出したケーブルに絡めとられてい
ないか、構造材の破片が危険な場所に突き刺さっていない
かを確かめ、その状況に応じて最適の救出法を考案する。
 こればかりは格納庫に詰めた年数がものを言う作業で、
訓練だけではどうしても身につかないノウハウが必要と
なる。
 そして、男にはその「経験」が十二分に備わっていた。
 コクピット脇の装甲板を開き、その内部に納められた
強制ハッチ開放装置のダイヤルを、力を込めて回す。
 ハッチがバネ仕掛けの箱の蓋さながらの唐突さで
開き、球状のコクピット・ブロックがせり出した。
 露出した内部構造、その中央にしつらえたいすに、
力なく横たわる姿がある。

 一見、あきれるほどに無事な姿。
 
 しかし、無傷のまま果ててしまうパイロットなど、珍しくはない。

「立てるか?」
 慎重に、アストナージは問いかけた。

996子連れてない生徒:2006/08/13(日) 14:17:46
>995
(………誰かが何かを喋った。
 靄がかかった頭をどうにか回転させ、目の前に人物と言葉を何度も何度も噛み砕く。
 少しでも気を抜くと眠ってしまいそうだ)

「………あは」

(誰だかわかった。何を言ったかわかった。
 だが、出た言葉はそれだけだった。
 言うべき言葉と、行うべき行動はわかっているが、どうにも身体の方がついていかないらしい。
 二度、三度、呼吸を繰り返して落ち着く)

「立て、ますよ………っと」

(ゆっくりと立ち上がろうとして、バランスを崩す。
 どうやら、思っていた以上に疲労が酷いらしい)

「っととと………っと」

(バーに捕まり、どうにか姿勢を保った。
 はぁ、とため息を吐き出すと目の前の人に顔を向ける)

「えっと、ただいま帰りました………。
 すみません、ザクファントムあんなに壊しちゃって」

997アストナージ:2006/08/13(日) 14:42:11
>>996
 よろめくさまを見て、まずいと思う前にエイケズの腕を掴み、無針注射機で
回復剤を肘内を流れる静脈に叩き込む。ほとんど反射的な行動だった。
 さまざまな有機酸やビタミン、そして合成ホルモンと
若干の興奮剤、擬似未分化細胞を主体としたこの液体は、
戦いに苛まれた肉体をすみやかに癒す。
 もっとも、エイケズの場合肉体年齢や疲労を考えに
入れれば、その効果は精々真っ赤に焼けた鉄を吐息で
冷まそうとするような程度の効果しか得られないだろう。

「機体の心配なんぞいらないっての、心配するならガランのほうだ。
 さっさと立って手の一つも降ってやれ、ほら、あそこだあそこ!」

 どれがガランかわかりもしないが、適当な担架を指差してやる。
こいつはもうじき気絶するだろうが、そのまえに不安のひとつも
刻んでやらなければならない。
 満足したまま気絶してあの世行きなど許してやるつもりはない。
エイケズ・コートに英雄の冠など、似合おうはずもないではないか。

「しゃんとしないと、せっかくのザクファントムだろうが容赦なく
ザクタンクに仕立てるからな、もちろんグリーンマカクタイプよろしく
クローアームだ、ライフルなんかもてないからな。
 さあ、立て、肩を貸してやるから。
 勝者が無様にへこたれてどうする、男だったら胸を張れ、娘に
父さんは帰って早々気絶しちゃいました、なんて格好悪いこと
言われてさらに軽く見られたいのか?」

998子連れてない生徒:2006/08/13(日) 14:52:14
>997
「あはは………タンクは、やだなぁ」

(力無くそう笑い、担架の一つに向かって本当に手を振る。
 しかし、その力は弱弱しく………。
 
 アストナージに肩を借りて歩き出す。
 足取りは覚束無い。
 いつ倒れても、気絶をしてもおかしくはない状態でも―――)

「そうですね………ケイトは、きっと俺を笑いはしないでしょうけど、
 ………あの子のパパが、コォネ君の夫が、そんなにかっこ悪くちゃ、情けないですよね」

(どうにか、意識を保ちながら)

999アストナージ:2006/08/13(日) 15:12:05
>>998
「当たり前だろ?」
 そんなことないさ。
「いい年した男なら、見栄のひとつも張り通して見せろ。
 整備の連中が見てる、あんたの先輩だって見てる。
 せめて奴らの目が届かない場所まで、二本の足で
歩いて見せろ」
 
 こいつがこうして歩いているのはきっと奇跡みたいな
ものだろう。
 機体のフレームのゆがみが教えてくれる、あのザクファントム
って機体は正真正銘のじゃじゃ馬だ、エイケズには荷が勝ちすぎる。
だがそいつをこいつは操って見せた、結果こいつの肉体より先に
機体のほうが悲鳴を上げるほどに。
 だからこいつはもう休んでいい、本当ならいいから寝ろと言って
やりたい。
 だが、まだだ。
 勝者たるなら見栄を張れ、男であるなら胸を張れ。
 いや、そんなことはもう言うまでもない。
 本当に馬鹿で愚直でどうしようもないやつ。
 言ったことを真に受けて、今にも途切れそうなほど解れて
しまった意識の糸を、こうしてつないでやがるじゃあないか、
俺の戯言を真に受けて。
 
 ああ、誰が認めずにいられるという。
 あれほど愚直に戦い抜き、これほど愚かに歩み続けるこの男を、
いったい誰が笑えるという。
 
 そう、この男には、きっと洗練された格好よさなど似合わない。
 泥にまみれて転んで足掻いて、ありとあらゆる人々に笑われて。
それでもなお歩むことをやめず、彼以外のなにものにもたどり着けぬ
域へと、エイケズ・コートのみに許された境地へといつか必ず
たどり着く。
 
 そうだ、エイケズ・コートという男はきっと誰より愚かしい。
 だがそのどうしようもない愚かしさこそが、きっとこの男の
本質。
 だから、いま少し見栄を張れ。
 エイケズ・コートは限界を超えてなおその向こう側へ行ける
男だと。限界など常としうる一人前の男だと証明してやれ。
 
 ああ、そうだ。それこそがきっと──

 歩を進めるほどにエイケズの体が重くのしかかる。
 しかし、彼はいまだその歩をとめていない。
 
 歯を食いしばるようにして。
 アストナージ・メドッソは、担ぐようにして肩を貸しながら、
医務室へと歩を進めていく──

1000名無し整備兵A&B:2006/08/15(火) 01:40:14
A「所でさ、あの二人が居ないな」
B「あの二人?」
A「ほら、サイド8の凸凹コンビ」
B「ああ、インディ&雪風漫才コンビか」
A「あの二人、いつから漫才コンビになったんだ!?」
B「養成所に着てからだろ。『あとはここの連中に任せれば勝てる。それに俺たちの機体じゃ足手纏いになりかねない』とか言ってどっか行っちまったな」
名も無き士官「あの二人ならNZに戻って行ったよ。『何か嫌な予感がするから戻らせてもらう』そうだ」
A「あの二人、NTじゃあるまいし・・・」
B「お前は見たことが無いだろう。多分、この世界で最もついてない男であり数々の戦闘以外の危機を経験してきたから動物的第六感が発達してるんだろう」
士官「さあ、お喋りしてる暇があったら仕事をしろ。これから今までに無いほど忙しくなるんだ」

1001〜幕間〜:2006/08/15(火) 09:49:10
Himmelという名の墓標、突き立てんと迫る墓掘り人達と。
埋め葬られるを拒み世界の存続を希求し続ける戦士たちとの戦いが佳境に入りだした頃。
南太平洋に浮かぶ名も無き小さな島でもまた、ひとつの戦いが始まろうとしていた――

「陣痛が始まりました!」

「母体の容態は?」

「脈拍、体温、血圧、すべて許容値の範囲内です!」

「よし、湯を沸かせ! あと、清潔な布をありったけ持ってきて!!」

――それは母親となるための戦い。
戦士たちが繋いだ明日に、生きる新たな命を産み出すための。

世界の命運を賭けた決戦の日に、戦場に馳せ参じる事の出来ない自らを責めようとした銀髪の女性がいた。
自分のような出自の者が本当に母親になれるのかとの不安も口にした。
彼女に産婆はこう語る。
『なぁに、銃で撃たれるよりよっぽど苦しい思いをアンタはこれからするんだ、気に病む事は無いさ。
 痛いよお? ざっと半日ぐらいかねぇ。
 ヒヒヒヒッ、むしろアッチでドンパチやってた方が楽だったかもねぇ』
そしてこう続けた。
『ここがアンタの戦場さね。
 そしてあたし達はアンタの戦友。
 いや……今もNZで戦ってる連中、みんながアンタの戦友さ』
だから精一杯元気な子供を産めと。
ダンナさんに命の種を受けてから十月十日、続けてきたアンタの戦いはそれで立派に大勝利だと。
出自がどうだろうとお腹の子にとってアンタは紛れも無くたった一人の母親だと。
日に焼けた真っ黒な肌の産婆は、彼女の目尻に浮かんだ涙をハンカチで拭いながらそう言った。

「破水、来ました!」

* * * * *

魔女と呼ばれた少女が居た。
少女の名前は、エンネア。

もしも世界が繋がれるなら……明日の朝。
その腕にはきっと、愛らしい赤子が無邪気な寝顔を見せているだろう――




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