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男の人って大変だねえ

1はるか:2006/04/15(土) 07:24:02
友達に勧められて見たんだけど、男の人って女以上にしたたかな生き物なのかなーって思ったよ。

http://sweat.wch.jp/aru/

762優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/06/21(土) 00:57:29
>>760
(気配に気付いたのか、「よ。」と軽く片手を挙げて。
 ここ最近の一連の出来事で、僅かではあるが彼の態度が気安いモノへと変わっていた。)

>>761
「………成績表?」
(一見しただけではその違和感は分からない。
 直ぐに頭に浮かんだ事と言えば、超遠距離――自分が最も得意な距離"だけ"なら、
 結構良い勝負が出来るかなとか、その程度の有りふれた考えだ。)


「………ん? 同じ数値って……。」

763金髪のお嬢様 ◆ACE//nQy3o:2008/06/21(土) 01:04:27
>>761
「こんにちは」

向こうから話しかけてくるのは少し予想外だった。
けれども何ら動揺することなく――この程度で動揺する筈などそもそも無いタイプであるが――軽く会釈をして立ち止まる。
見れば彼女の傍には既に先客。
彼の目もまた、彼女の持つ2枚の紙へと向けられているのが分かった。

>>762
ここ最近、周囲の自分へ向けられる態度が少し変化してきているように感じる。
今、軽く手を挙げてきた男もそうだ。
言うなれば気安さ。
歓迎すべきか定かではないが、不快感ばかりが心を占めているワケではないこと自体は自覚している。
だから、

「――」

目を合わせ、小さく会釈を返すに留めた。
一応は彼も先日の一件の際に、自分に味方した人物であるが故に、路傍の石と見做し続ける選択肢は無くなっていた。

764黒く長い髪の女性 ◆Ranawa0ufU:2008/06/21(土) 01:08:24
>762
(リヒャルトの読みは正しい。
 索敵まで含めた狙撃戦のみに限定すれば、ラナ・ウォングの成績は意外と悪い。
 無論、それが実際の戦場でリヒャルトの一方的な優位を保証するわけでも無いのだが)

気付かれまして?
種を明かしますとこの二枚、養成所に来たばかりの頃とつい先日の物ですのよ。
…………わたくし自身、妙な感じを覚えてはおりましたけど、改めて見比べてみたらこの通りですわ。

>763
――――

(一瞬、ふと何かを思いついた様な表情を見せる。その直後には言葉が続いていた)

カナデさん。
唐突ですが、貴女の意見を伺いたい事が2・3ございますの。
プライベートな内容ではなく、見ての通りにMSパイロットとしての話なのですが、
質問させて頂いてもよろしいでしょうか?

765金髪のお嬢様 ◆ACE//nQy3o:2008/06/21(土) 01:13:03
>>763
「構いません。答えるかどうかは別ですが、それでも良ければ」

ある意味彼女らしい物言い。
こうした辺りはさして昔と変わらないということだろうか。

766優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/06/21(土) 01:19:44
>763
(特に気を悪くした様子も無い、自身への評価を正しく認識しているのだろう。

 まぁそれでも、過去が過去なので必要以上に関わりを持つような事はしない。
 尤もカナデに限らず、相手が望む以上の接触は実の所誰に対しても避けているリヒャルトなのだが。)
>764
「…成る程、それは確かに苦い顔にもなる。
 成長にしろ退化にしろ、変化が無いのは可笑しい。」

「…何か心当たりとか無いんですか?

 ……って、あればあんな顔はいない…かな。」

767黒く長い髪の女性 ◆Ranawa0ufU:2008/06/21(土) 01:20:51
>765
えぇ、勿論ですわ。

…………この養成所で数ヶ月の訓練を受けていて、
技能の向上や低下と言った変動が殆ど見られない場合、どんなケースが在ると思われます?

768黒く長い髪の女性 ◆Ranawa0ufU:2008/06/21(土) 01:23:58
>766
…………念のため、後で情報処理の関係を訪ねて見るつもりですわ。
まだ「データ反映の不備」と言った方面の可能性も残ってますもの。
ただ……このデータに信頼性を見いだすだけの実感があるのも事実でして。

769金髪のお嬢様 ◆ACE//nQy3o:2008/06/21(土) 01:30:51
>>767
「受けた訓練の内容が、必要なモノではなかった。
 或いは、貴能力維持には充分だったが、能力向上には訓練のレベルが足りなかった。
 若しくは、既に伸び代が無くなっている――」

思いつく限りの答えをまずは3つ並べてみた。

770優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/06/21(土) 01:35:02
>768
「――体感による実感が其れを証明している、って所ですか。」


「身に付いていない代わりに何も忘れていない。
 ………身体が勝手に動いている…いや、違う…?

 …俺もとりあえず、彼女と同じ様な答えしか。
 強いて言うならば……ラナさんはそう、少し…"違う"んじゃにかとか、
 その程度しか思いつかないな…。」

771黒く長い髪の女性 ◆Ranawa0ufU:2008/06/21(土) 01:43:36
>769
(カナデの言葉に耳を傾けつつ、何かを考えている)

順当に考えれば、やはりそうなるので……あぁ、わたくしの場合は、
先日までのブランクがどれだけ影響しているか、と言う事も考慮しないといけませんわね。

……少し、座学を減らして実習を増やした方が良さそうですわね。
もう少し経過を見ない事には無駄なのか不足なのかも――

(半ば独り言になっている事に気付く)

あ、ごめんなさい。わたくしったら、質問しておいて自問自答に自己完結だなんてっ。

(少しおろおろしてみせる。休学前に比べると、良く言えば感情が素直に表に出るように、
 悪く言えば少しばかり子供っぽくなった印象だ)

>770
……”違う”とは?

(意外な言葉にきょとん、と音がしそうな顔で聞き返す)

772優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/06/21(土) 01:53:50
>771
「…いえね、昔地球に居た頃にそういう奴と仕事してた事がありまして。
 身体が学習を行って結果が出るまでのプロセスが、少しだけ異なるんだそうです。

 詳しい名前は忘れたけど…何か特定の技能や情報を身につけた時に、
 それまで頭や身体に入れて来た物が一気に自分の力になるとか。
 科学技術で言う所のパラダイム・シフトみたいに、
 瞬間的且つ段階的に能力を変化させていく、って物だそうなんですが……

 ……まぁ、現実的に考えて他の要因の方が強そうですね。
 今までにそんな事が無かったのであれば、まずこれは無いと言って良い。」

「そしてラナさんに問題が無いのであれば…それは外側の問題と言う事になるんでしょうね。」


(と、そこで突然リヒャルトの携帯に着信(因みにナイブ)。
 『…失礼』と断って、リヒャルトは応対を行うべく、食堂の入り口の方へと移動して行った。)

773金髪のお嬢様 ◆ACE//nQy3o:2008/06/21(土) 01:55:37
>>771
はにかみながらの詫びの言葉には敢えて応えない。

「そうですね。
 一度修練を休めば、その分を取り戻すのにはそれ以上の修練を要するといいますから」

時間の経過は様々なものを変化させる。
特に親しかったワケでもなく、関わりがあった相手でもない目の前の女性。
だというのに何処か変わったような気がするのは――或いはカナデ自身が変わり始めたからなのかもしれない。

774黒く長い髪の女性 ◆Ranawa0ufU:2008/06/21(土) 02:04:07
>772
……………………

(何やら考え込む。が、会話相手が離席した事でその結論を話す機会が飛んでしまった)

>773
昔ならば、数週間で顕著に鈍ると言う事も無かったのですけれども。
その、わたくしも、何と申しますか…………人生経験がだいぶ豊かになってしまったものですわね。

(視線が右斜め下に気まずく逸れる。ラナ・ウォング、外観年齢は二十代後半。
 実年齢は不詳だが…………色々な意味で振れられたくない年頃らしい)

お呼び止めしてして申し訳ありませんでした。
わたくしは念のために、電子情報の責任者さんを訪ねてみますわ。
またその内に、講壇なりシミュレーションなりで。

(まだ片付けていなかった食器類を抱えると、一礼して去っていく。
 その笑顔が以前よりも自然で華やかに見えた気がするのは、いったいどちらの変化が故か)

775ヘリオン:2008/06/21(土) 14:07:24
>>647
此処に一人の悩める少女が居る。

「うーん…こっち?
 それとも……こっち?」

茶に近い黒色の長髪を頭の左右でテールに結び、
それをぴょこぴょこと情動的に揺らしながらヘリオーネ・B・ベルネリアは悩んでいた。
目の前には幾つかの、その手には二つの新作水着。
ここ数ヶ月は特に頑張ったので、軍資金はそれなりにある。
それらのアイテムは今、どれもこれもヘリオンの手が届く距離にあるのだ。

「はぅー、やっぱりこっちかなぁ…」

この夏イチオシ!とポップが掛けられたヒラヒラフリフリのワンピースタイプ。
出ている所がそれほど出ているわけではないヘリオンは、どう背伸びしたところ自ずとこの辺りに軟着陸してしまうのだ。
子供っぽいし、なんだかぶりっ子っぽい気がする……と自己嫌悪もするがこの選択は限りなく正解に近い。
だが、時として思い切りの良さも必要であり、またチャレンジ精神というのは何事においても重要な事なのである。
そして今日はチャンスだ。新たなる選択肢への後押しをしてくれる者が居る。
今日は珍しく、一人でファッションしに来たわけではないのだ。

「――り、リヒャルトさん的には、
 ど、どっちが良いと思いますかっ!?」

水着用の丸いハンガーに収まったワンピースタイプの水着とフリルつきのタンキニを両手に持って、
すごい勢いで振り向いて、尋ねてみる。
が、そこに肝心のお相手……リヒャルト・ユルゲンスは居ない。
そう、今のはほんのリハーサルであり、大事なイメージトレーニングだ。普通に声に出ていたが。
本番にはもう少し不自然さをなくし、それとなく、ナチュラルに聞きたい所なのだ。彼に。好みを。

「よ、よぉし…」

ヘリオン的にはワンピースは囮だ。
自分らしいのは間違いなくワンピースであり、ボディラインの誤魔化しが利いたそれはしかし実に可憐だ。
一方で本命の運動的な美しさを誇るタンクトップビキニ。
上半身のタンクトップは良いのだが、思わずうわぁ…と漏らして紅潮してしまうほどに、ボトムがなんとも鋭角的なラインを描き出している。
ワンピースはそれとなく馴染むと思う。しかしタンキニは自分との明確なギャップを持っている。

そこを、利用する。

ギャップに弱いという男性は意外に多いのだと、そういう雑誌で読んだことがある。
そして、イエスばかりが並ぶ選択肢の中でノーが一つあればなんとなくそれを選びたくなってしまう人間の心理を利用した、ヘリオンの最大の作戦。
自分からでは勇気が要り過ぎるし、セパレートでローレグが限界だが、彼が“それ”選んだのなら仕方が無い。
仕方が無いと思えるのは大事だ。自分を、羞恥を、後ろめたさも誤魔化せる。そんな乙女心。
一人意を決したようにして頷くと、ヘリオンはポケットから携帯端末でリヒャルトをコールする。
彼は現在、休憩スペースで一休みしている所だけど……すみません、決心の手伝いをどうか。。。

『も、もしもしヘリオンです。
 今、えっと、まだ水着コーナーなんですけど…その…ちょっと決めあぐねてて。
 良かったら来て頂けませんか?あ、でも…ぁぅ、お荷物大丈夫かなぁ…』

などと電話口でもおどおどしながらもなんとかこの場に来て頂くために、お願いしてみる。
全ては彼好みの水着を選ぶ為に。
全ては彼好みの水着を着る為に。

全ては恋人っぽく「ねぇどっちがいいかな?」「君がこっちの着てるトコ見てみたい」「え!?やぁんもう、ちょっと大胆じゃない?(>ワ<)」をする為に。

776優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/06/21(土) 23:10:43
そして一方、こちらはこちらで悩める男が居る。
といっても彼女とはまた違ったベクトルで、だ。

『え?俺が一緒に選んでも良いのかい?
 …ハハハ…光栄だな。分かった、直ぐ行くよ。 少し待っていてくれ。』

荷物の事には返答せず、そう言って電話を切ったのが三十秒前、
半分以上残る無煙煙草を携帯灰皿へと押し込み、一路水着売り場への進路を取る。
勿論、こういった事態は想定済みではあるのだが。

「…色々と複雑な気分ではあるな。」

彼の心の中という戦場は、楽しさと嬉しさの連合軍がその六割ほどを占領してはいるのだが。
抵抗勢力たる様々な感情の抵抗は極めて激しい物だったのである。

尤も、二分後に水着売り場に到着した際にはそんな様子など微塵も見せない彼である。
そんな醜態を相手、特に目の前の少女に見せる事など絶対にしたくは無かったし、
自身でもその程度の甲斐性は持っていると信じていた為でも、ある。

"このままではいけないな"という思いが頭と心の隅の方に何時までもちらついているし、
そもそも女声の水着を選ぶ事など本当に初めてという事もあり、
実の所この時彼の心臓は割とエイトビートの心拍数だったりしたのだが。

777射撃訓練場にて。:2008/06/27(金) 23:07:36
>>775-776とはやや時を異とするが、彼――優男っぽい彼にはまたもう一つの舞台があった。


ここは火星養成所の白兵戦訓練用のスペースに設けられているシューティングレンジ、射撃場だ。
室内での近距離戦から大遠距離での狙撃まで、
俗に軍隊で必要とされる訓練は一通り行える様な設備が揃っている、少々年式は古いが。

そんな中、双眼鏡を覗き込んで100m先に設置されたマン・ターゲットを注視している青年。
彼の傍らには、ボルトアクションライフルのケースが"二つ"置かれていた。
一つは言うまでも無く彼が背中に下げている物に他ならない。

「目標まで凡そ100、レンジ内は無風。
 実銃は不慣れらしいが…まずは試しに撃って見ろよ、サリクス。
 何事も経験だ、ぜ。

 基本はMSでの狙撃と変わらんさ、むしろこっちが基本……ってな。」

778超前向きな女生徒:2008/06/27(金) 23:20:09
>>777
青年から半歩引いた場所に礼儀正しく直立していた少女の肩が、声をかけられピクリと動く。
緊張で乾いた唇を舐めて潤わせながら、そのケースの前に移動すると一礼をしてからケースを開いた。

「……ス」

ケースの中には、初めて見る狙撃銃。
それをまず手に取り、そのずしりとした重量感に思わず笑みが零れそうになる。
しかし、すぐさま顔を引き締めて真正面を見据える。
目標のマン・ターゲットに向けて眼差しを向け――。


「……構え方がわからんス」

真顔でそんな事を言っちゃうのがバカの印。

779優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/06/27(金) 23:27:45
>>778
「最初に憧れたスナイパーを思い出せ。
 …なんてな、変なクセが付かないから実の所、そう言ってくれた方が助かる。」

(そう言って、自分も背中のライフルを両手に持ち代える。
 予め持ち込んでおいた薄めのクッションを自分とサリクスの真正面の床へと転がし、
 その上に覆いかぶさる様にうつ伏せになり、軽くライフルを構える体勢を取る。)

「まずは俺の真似でも良いと思う。
 右手はグリップを柔らかく握る、引き金に指を振れてはいけない。
 左手は銃身の下を軽く、そっと支えてやるだけで良い。

 そして体勢が整ったら、銃の上についているスコープを覗き込む。
 ちょっと窮屈だと思うが…どうだ、やってみ?」

780超前向きな女生徒:2008/06/27(金) 23:36:19
>>779
「ス、ス……恐縮ス!」

狙撃兵を自称しながら、実の所全く生身での狙撃は知らない事に些か引け目を感じつつ、
少女は青年の説明と行動をしっかりと目に焼きつけ、耳に残してゆく。
この少女、頭はすこぶる悪いが取り組む事柄については常に一生懸命なのが取り得。
ましてやその対象が自分の目指すNo.1スナイパーへの道に重要なものとなるのなら、尚のこと懸命さも増すというもの。

そして一通り説明を聞き終えたあと、青年の横の座布団にうつ伏せとなり、習った通りの順序で動作を行う。

「右手でグリップをやらかく……左手はそえるだけ……。
 んで、スコープを覗く……」

慣れない手つきで言われた通りの体勢を取る。
少々窮屈ではあるものの、文句など言うはずもない。

「……これで、いいスか?」

スコープを覗きながら、そう問いかける。

781優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/06/27(金) 23:52:27
>780
「……………。」

(一瞬、怪訝そうな顔になる。
 が、それも直ぐに消えてしまい。)

「ん……大丈夫だ。
 慣れない内は暫くその体勢で練習をしてだな、
 当たる様になったら自分が撃ち易い体勢に変えて行くと良い。
 まずはそれが、伏射の基本姿勢になる。

 次に装填だ。俺の方を見ろ。
 こうして左手と肩で銃を支えながら、グリップから右手を離して―――…」

(サリクスから良く見える様に、ボルトアクション
 (レバーをガチャリと動かして、銃弾を銃の中に送り込むアレ)の流れを説明する。
 ゆっくりと丁寧に教えているが、その懸命な態度ならば覚える事は難しくないだろう。
 元よりレバーの動かし方が少々口で説明しにくい程度の事だ、見て覚える分には簡単な事。)

「装填が済んだ時には、もう弾が撃てる状態になっている。
 拳銃とかと違って安全装置が無い場合が多いから、そこから先は絶対に敵以外に銃口を向けない様に。

 そして最後、照準を付けて――まずは一発撃ってみろ。
 それとスコープを見る時は少しだけ眼を離す事、密着させてると撃った時の反動で顔が痛いから。」


(そう言って、二人並んで伏せ撃ちの状態。
 リヒャルトはリヒャルトで、自分のライフルのスコープでサリクスの狙う目標を観察している。)

782超前向きな女生徒:2008/06/28(土) 00:12:33
>781
青年の一挙手一投足を見逃さぬよう、一字一句を聞き逃さぬよう食い入るように見つめ、聴く。
そして、聴き終わるとすぐさまその説明通りの手順で銃弾を銃の中に詰める。

「ス――ゥッ――!?」

一瞬、声が裏返ったのは緊張のせいか。
唾を飲み込んで、咳払いを一つ。

「ス、ス……それじゃあ撃ってみるッス……ス」

そう言い、スコープを覗きながら照準を合わせる。
じわりと頬を汗が伝い、動悸が激しくなってゆく。
MSに乗った上での狙撃ならば、既に何万回と繰り返してきた。
しかし、実銃を撃つのはこれが初めて――いかに常に前向きなこの少女でも、緊張してしまうのも当然である。
というよりも、常に前向きでかつ実直なこの少女だからこそ、このような場面において緊張してしまうのは当然なのだ。

「――スッ!」

照準が合った瞬間、その引き金を静かに引き小さく呟く。
そして、その次の瞬間――。

「へべっ!?」

ゴン!と鈍い音と同時に、少女は奇妙な声を上げた。
――彼女の欠点の一つは、そのバカさである事は言うまでもない。
しかし、更にもう一つ重要な欠点がある。
それは、彼女はある一つの事に対して真剣に向き合うと――それ以外の事は全てほっぽり出してしまうという点だ。

今回の場合、少女は『スコープの中にある標的を狙う』事にのみ真剣に向き合ってしまった。
故に――ちゃんと説明を聞いていたはずなのに、『スコープからは少し顔を離すべき』という青年の助言を、無視してしまったのだ。

後は説明するまでもない。
スコープに近づけすぎた顔は、撃った反動で返ってきた銃と衝突し――額に綺麗な痕を残した。
そして、それと同時に。

「ス〜……」

彼女の意識をゆっくりと失わせていったのだった。


教訓:よいこは部屋を明るくしてスコープから離れて撃ってね。

783優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/06/28(土) 00:26:44
>>782
「…い、いやー……予想の斜め上…って奴か?こいつは…。」

(頬に落ちた一筋の汗は、自分を誤魔化す為の何かだったのか。
 見てみれば、スコープを覗き込んでいた瞳の回りにくっきりと丸いアザ、
 発砲した反動が、そのままこの小さなスコープの照準部分から押し付けられたのだ、
 それは痛い、下手を打つと気絶する事もあるし――
 ――実の所、緊張した訓練生はこういった失敗をする事はよくあった。
 かくいう、自分もだ。)

「まぁ、とにかくこれで初体験は済んだ訳だ。
 ……全く、起きてるならもっと驚いてたんだろうけどな……

 コイツはもうお前の銃なんだぜ、サリクス。お前だけの相棒だ。」

(やれやれと笑いつつ、お互いのライフルから弾倉を外して弾を出す。
 銃をライフルケースに収めて一個だけ転がった薬莢を広い、
 濡らして絞った濡れタオルを横にしたサリクスの額へと押し当てた所で。)




「……………!」

(その時初めて、リヒャルトはサリクスが一回だけ狙ったマンターゲットを見たのである。)

784ヘリオン:2008/07/01(火) 21:04:21
>776
水着売り場に到着したリヒャルトを迎えたのは、
ピョコピョコと揺れ動く特徴的なツインテール。
それは見間違う事のない、連れ合いの後姿だった。

「〜♪」

聞こえてくる陽気な鼻歌。
彼が来た事に気付いていないのか、振り向く様子はなく。

「これであの人のハートをキャッチ!……出来ればなぁ……」

などと呟いた。

785優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/07/01(火) 21:33:46
>784
「…………。」

聞こえているんだがなぁ、と。
内心複雑な気持ちになりながら、声には出さずに苦笑する。
そういう対象として見てくれるのは嬉しいのだが、
どうにも自分の中の分裂した部分が、それではいけないと吠え立てる様だ。

しかしそうしていても埒は開かない。
故に無理矢理にでも埒を開けるべく。

「お待たせ、ヘリオン。
 
 ……成程、確かにこれは選ぶのも大変そうだね。迷うのも無理は無いかも。」

と、何食わぬ顔で背後から声を掛けた。

786ヘリオン:2008/07/01(火) 22:09:50
>785
「 !!!?? 」

リヒャルトからの何気ない到着の知らせに、
“ひヒゃぁ!?”という面白い程上擦った悲鳴と、跳ね上がる黒い二房と共に鼻歌は途切れる。

「び、びっくりしましたぁ……」

そう言って頭からゆっくりと振り返る少女の目尻には小さな雫。
軽く涙目になっていて、続く言葉も少し恨めしそうな声音である。

「も、もぉ…私の心の予定より30秒くらい早いですってばぁ……」

と、身長の差から上目遣いでの小さな抗議が始まった。
もちろんヘリオン自身、勝手な言い分だとは重々承知していたが、それでも余程ビックリしたのだろう。
少女の心が納得するのに少しだけ付き合う必要がリヒャルトにはあるらしい。乙女心とは難しいものである。
と、右の人差し指を立て、左手を腰にやって二の句を次ごうとした時である、不意にまたもや驚いた顔でヘリオンは口元を押さえる。

「……も、もしかして……、、、
 その……いつから、どこまで聞いてました……?」

要領を得ない質問。
不安げな瞳。音を立てて朱に染まっていくような頬。

「……わ、私の独り言……」

乙女の独り言とはつまり、トップシークレットなのである。

787優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/07/01(火) 22:22:57
「ハハハ…ごめんごめん、つい張り切ってしまって。
 予定より30秒ほど早く来たのが間違いだったかな。」
(少しだけバツの悪そうな顔。
 少し早足で駆けつけて来たのは事実ながら、そこまでびっくりされるとは思っていなかった。

 そして彼は、彼女の乙女心に付き合う事もさして苦行とは思わない。)

「…? いや、特には何も。
 あぁ、楽しそうな歌なら聴こえて来たけど…?」

(形としてはこの時、リヒャルトは真っ向から嘘を吐いている事になる。
 だがしかし、時として嘘を吐く事が誰にとっても良い結果を齎す時がある事を、
 彼もまた知っている。

 秘密にしておいた方が良い情報という物は、やはり男にもある物なのだ。)

788ヘリオン:2008/07/01(火) 23:02:37
>787
「………、、、」

鼻歌を聞かれるのもなんとも気恥ずかしいものだ。
最悪では無いにせよ、十分に顔を赤くしてくれて困る。

「そ、そうですか。」

少しだけ、胸を撫で下ろす。
思いっきり自分のヤマシイ部分があふれ出たような事を口走っていたハズだから、
それを聞かれていたらと思うと華と散りたくなるというもの。
小さく深呼吸。
よし。

「やっと落ち着きました。
 ごめんなさい、取り乱したりして。」

ペコリと謝罪し、えへへ…と控えめに笑って晒した醜態を取り繕うヘリオーネ。
その両手には、水着用のハンガーが二つ。

「えっと、それじゃあ本題に…。
 お店の人にもオススメされたのですが、散々悩んでどうしても決められなくて。
 ここはやっぱり、リヒャルトさんに選んで貰うのがベストかなって思って……迷惑かもしれませんけど。」

この二つなのですけど、とおずおずと差し出されるハンガーに収まっていたのは、
片や、この夏イチオシ!とポップが掛けられたヒラヒラフリフリのワンピースタイプの可憐な水着。黒と白のツートンは幻想的ですらある。
片や、僅かのフリルに、運動的且つ刺激的にデザインされたタンクトップ・ビキニ。上は黒、下は薄桃というのは狙っているのか。
かけ離れた趣を持つ二つのアイテム。
ワンピースは王道であろう、目の前の少女が来ている姿は想像に難くない。
が、タンキニはどうだ?少しイマジネーションを拡大せねばいけないだろう。

「り、リヒャルトさんとご一緒する水辺ですから……後悔はしたくないです……。」

男種にとっての究極至高の二択。
固唾を呑んで見守る真摯な瞳。

さぁ、どうするリヒャルト・ユルゲンス。

789優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/07/01(火) 23:14:35
良いよ、楽しそうな様子を見ている分にはこちらも楽しいし、と応えて。

続いて具体的に想像する、想像力が幾らあっても不足と言う事は無さそうだ。
彼女が手に持つ二つの水着――可愛らしいワンピースと運動的なタンキニ。
なるほど悪くない、良いセンスをしているなとリヒャルトは思う。
しかし"どちらが似合うか"と聞かれればワンピースの方に軍配が上がる、
何故ならヘリオンが考えたとおり、タンキニは彼女のイメージとのギャップが激しい。

……何も知らなければ。
例えば今日こうして二人で買い物に来る事無く、
いざその時になって彼女が突然その水着を着て現れたら、自分はきっと驚いただろう。
事実、今もほんの少しだけ驚いていた。
尤も、ギャップこそ激しいが決して似合わないという事は無いだろうな、とも思う。

……そして何よりここに至ってよく分かった。
リヒャルトは自分が此処に呼ばれた意味を、この時正しく理解したのだ。

自分が此処に居る意味、二人で此処に居る理由。
即ち、自分が問われているのは"どちらが似合うか"では無い。
この場合、其れは"どちらが好みか"という意味を持つ質問であり、
わざわざその様な問いをする以上、やはり望む答えは彼女にもあるだろう、と。

「そうだな……ワンピースは素敵だと思うけど、
 俺の個人的な好みを言えばもう一方を挙げるかな?

 折角の海だしね、普段と違う装いをするのも良いんじゃないかと思うよ。
 というか、俺が見てみたい……っていうのは、理由としては駄目かな?
 きっと、新鮮で似合うと思うんだ。」

そして自分は、ここで安全牌を選ぶ様な愚か者では無いと思う。
……加えて言えば。
確かに彼の個人的な趣向から言っても、その選択は間違っていないのである。
先ほどの言葉とは裏腹にこの一言は天地神明に誓って偽り無し、
彼の正直な気持ちを素直に言葉として発している。

――しかし、こういう台詞を微妙な照れの入った顔で告げて来る。
その様は傍から見れば、それはそれは恋人っぽく見える事だろう。
ここで、ヘリオンの望みはある意味で叶っているのである。

790ヘリオン:2008/07/01(火) 23:37:06
>789
その時のヘリオーネの顔は、丁度桜の開花にも形容出来た事であろう。
リヒャルトの応え受けて蕾から徐々に時分を咲かせ、やがて満開になるような、そんな笑顔。
最初はよそうだにしない事に呆けたように。
言ったあとの彼の照れ臭そうな顔を見て、やっと現実がなだれこんできて。
漸く、自分の願いと彼の望みが交わったのだと理解し、どうしようもなく嬉しくなる。

「……これですね、了解です。
 私には正直似合わないかもしれませんけど……

 リヒャルトさんには、いつもと違う私を見て欲しい……かな。」

なんて…と、俯き加減で頬を染め、
小さく、弱々しく、けれど溢れ出す嬉しさを堪えられないように、呟く。

「あは、変なこと言っていないですぐにレジに行って来ますね!
 その……

 ――ありがとうございます。」

これからの季節は桜と言うよりはやはり向日葵だろうか。
駆け出そうとして立ち止まり、そのまま感謝の言葉を述べた少女の笑顔は、大輪のそれのようでもあった。

791優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/07/02(水) 00:02:12
「――どういたしまして。」

この様な時、緊張の淵に立っている男の言葉は無個性的な物になる。
もう少し気の利いた事も言えるつもりでは居たのだが、
実際にこの状況を体験してみれば、そんな自身は地平のカナタへと吹き飛んでしまう。
その大輪の向日葵の様な笑顔へと、自らの未だ照れが残る微笑を返して見送るのが精一杯。

…何より、朱に染まった頬を確かに見てしまった事も大きい。

「――何時もと違うヘリオン、か。
 …あぁいかん、これ以上続くと……俺がどうにかなってしまいそうだ。

 全く…幸せな奴だよ、俺は。」

そうして最後に少しだけ自嘲気味な呟きを残して。
この後の予定を練り直すべく、青年は思考の海へと潜って行った。
――そうでもしなければ、多分自分の心が耐えられなかったから。

792優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/07/15(火) 23:41:19
その数時間後の事、予め下調べをしていた店で夕食にする。
結局その後は水着を買っただけで終わりという事は無く、
余った時間を有効に使おうという内に――何時の間にか夜が近くなっていた。
店内は心地よい喧騒に包まれながらも五月蝿いという程ではなく。
二人の会話も上手い具合に周囲に溶け込む、活発な空気が漂っていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――しかし実の所、何たるザマだと言いたくなる。
自分はかつて一人の女性に言ったではないか、自分は恋人など作りたくないと。
そして何より自身でよく理解していた筈だ、自分は誰かにとって、
唯一無二の存在になどなってはいけない、それでは相手を不幸せにするだけだ。

そう、理解しては居るのだが。
今こうしている自分の眼前には、恐らくこの世で"其れ"に最も近い少女が居る。
理性と思考の上ではこの様な関係など捨てるべきだと分かっている筈なのに、
感情の上ではそんな思考は引っ込むばかりか、むしろ正反対の方向を向いている。

如何しようも無い矛盾。自分という存在が、いかに歪んでいるかがよく分かるという物だ。
――ほら実際、彼女が自分に何かを言えば。

「ははは、俺もこちらで食事を取るのは久しぶりだな。
 しかも女の子と一緒というのは初めてだし、実の所色々と不安ではある。」

――そんな内心のモヤモヤとした物など全く感じさせる事は無く。
何時もどおりに軽い調子でそんな言葉を返している。


自分が彼女に惹かれているのは、きっと間違いが無いと思う。
だがしかし、何時かは言わなければならない時が来るのだろうとも思う。
そう、何時の日か―――――

          ――――彼女には、自分の歪みを伝えなければならないと。

793場末の酒場:2008/08/08(金) 22:40:30
 ネオン華やかな歓楽街と歓楽街の狭間の路地。
 わだかまる闇を照らすのは、無機質な街灯が数本だけ。
 傾向スプレーの落書きで汚され尽くした雑居ビルと、住民がいるか
どうかも定かならぬアパートがない交ぜになって立ち並ぶ街路。
 飾り気のないアスファルトを装飾するものは、踏み潰された空き缶と
空のビニール袋、そして死んだ猫。
 商店街とも住宅地ともいいがたい都会の中のエア・ポケット。
 水の代わりに枯れ葉とゴミが詰まった溝(どぶ)を思わせる、
路地の突き当たり、三階建ての雑居ビルの一階に設けられた唯一のドア、
その真上に掲げられたピンクのネオン。
 ただ一行のアルファベット。
 街灯以外に光を放っているモノはそれだけだ。
 
『John Rambo』。
 陳腐どころの話ではない。
 何もかもが終わっている路地にふさわしい、あらゆる意味で終わっている、
陳腐極まりない店名。

 キリノ・カサギが待ち合わせ場所として指定したのは、つまるところそういう
場所だった。

794優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/08/08(金) 22:48:46
咥えたままの無煙煙草、街路とネオン以外の光源が一つ。

店名を見ながら、フンという呟きが漏れる。
ジョン・ランボーとは如何にもな名だ、同じジョンならジョン・ドゥにでもすれば良い。
そんな事を考えながら、ネオンの下の扉を開く。

この様に破滅的な空間は決して嫌いではなかったが、
例え一つだけでもこの様なネオンには不快感を覚える。

つまるところ、それが彼女から呼び出された男――リヒャルト・ユルゲンスの感想である。

「…ホント、良いセンスしてるぜ。」

795場末の酒場:2008/08/08(金) 23:09:06
>>794
 マホガニーを装った、合成樹脂製のドアが開く。
  
 決して広くはない店内。
 ロックウールと排気ダクトがむき出しの天井には、アナクロ極まりない
四枚羽の扇風機。空調と呼べる設備はそれだけだ。
 元はベージュ色であったと思しき壁紙は、タバコとタバコ以外の何かが
発した煙のヤニに汚され尽くしていた。
 挙句に照明が白熱電球なものだから、壁の色はセピアというより血痕
染みた赤に近いものとなってしまっている。
 安物のジュークボックスに飾られているのは、いつ貼られたとも知れ
ない「故障中」の張り紙。
 ひとつだけある黒の丸テーブルの上には、微妙に埃が溜まっている。
 唯一立派といえるのは、オーク材のカウンターとバックバーに並べられた
酒瓶の群れだけだ。・・・もっとも、古今東西の銘酒の大半は品切れに
なっているようだったが。
 
 そんな、店の外見を裏切らない店の中。
 カサギはカウンター席に掛けて、一人オールド・ファッション・グラスを
傾けていた。

796優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/08/08(金) 23:16:20
>>795
そんな店内に現れる、金髪碧眼の青年。
軽く店内を見渡して、直ぐに目的の人物――約束の主を見つけた。

思った通り、その約束の主は先にこの場に来ていたらしい。
―――何となく予想は付いていた事だが、
養成所の様ななまじ小奇麗な環境より、この様な場の方が相応しいとも感じてしまう。


「済まない、待たせてしまったかな。」

797キリノ・カサギ:2008/08/08(金) 23:49:30
>>796
 声で、気づいたのだろう。
「待つのには、慣れてるの」
 リヒャルトには視線を向けぬまま、口元だけに笑みを浮かべて
グラスを置く。
 普段愛用している赤のリボンも緋の紬も、今日は身につけていなかった。
 黒のキャミソールから伸びた白い腕。右腕には包帯。そして左の二の腕
には長くうねる傷痕──白い蛇を思わせる。
 スリム・ジーンズに覆われた足を組んでいた。つま先からはサンダルが
ぶら下がっている。身に着けたアクセサリーは胸元の認識票だけ。
 
「『九割の待機と一割の戦闘。われ等退屈を友として死出の旅路に
赴かん……♪』なんてね。戦争屋なんてそんなものでしょ?」

 ラフすぎるほどにラフな服装。
 フランクきわまる言葉遣いの裏には、安いアルコールがにじんでいる。

798優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/08/09(土) 00:02:55
「『嵐の日も雪の日も、太陽が我らを照らす日も、
  炎熱の真昼の中でも極寒の夜半でも。』とな。
 成程ね、確かにそれは俺みたいな奴にはよく理解(わ)かる。」

古い軍歌の一節だ、それを呟きながら一つの間を置いて席に着く。
安い――そして強い酒を一つ頼むと、咥えていた無煙煙草を指で揉み消す。

一見して軽薄そうな――それで尚相手に不快感を与えない様に細心の注意が払われた服装。
それにこの時、また普段の彼とは異なった雰囲気が宿った気がした。


「それで、それを俺に理解させる為に呼んだ訳では無いんだろう?」

見つめる視線は、穏やかだ。しかし眼光は、鋭い。

799キリノ・カサギ:2008/08/09(土) 00:36:46
>>798
「まぁね。
 相談のつもりで呼んだんだけど、案外酒を肴に愚痴を言いたいだけなのかも
しれない。いずれにせよ、たいしたことじゃないのよ──多分」

 そう呟いて、少女はまたグラスを傾けた。薄紫の液体が、また少し嵩を減らす。
微かに、鼻を突くにおいが漂った。
『フレイミング・ヴァイオレット』。
 レシピはワインと氷、そして紫の顔料と工業用アルコール。
 後は出鱈目に混ぜるだけ。
 値段も酔い心地も最低の代物だ。
 この世でもっとも低劣な酒。故に、この世でもっとも下げずまれる
ものたちが好んで飲む──日雇い人夫と乞食と兵士の三者。
 無論、味もことのほかに低劣で──飲み続ければ眼か肝臓のどちらかが
イカれる。
 糞のような世界の糞のような酒。だが、そうであるが故に、蝿の舌には
美味ともなるだろう。

「たまたま撃って、撃たれて、撃ち返して。それがはじまり。
 12,3のガキがさ、急いで待つことに慣れて、戦うのに慣れて、人使うのに
慣れて──そう、パイロットになってもう四年になるのよね。
 背伸びして転んで、それの繰り返しだった。
 何しろガキで女だもの。誰も認めてくれやしない」

 また一度、腐った酒を傾ける。
 そして、腕の白い傷痕を思う様引き剥がした。
 傷痕の下にあったのは、無傷の真っ白な肌。

「ハッタリ効かすために、こんなメイクまで覚えたわけ。
 前線で死ぬような怪我をしても、ケツをまくったりしないってことを
示すためにね。この顔でこの細腕だもの。こんなハッタリでも、それなりに
効果はあったわ、とくに新兵相手にはね」

800優男っぽいお兄さん ◆SternIiXmU:2008/08/09(土) 00:47:53
>>799
「――珍しい物を見た。
 しかし心中お察しする、と言って欲しい訳では無さそうだな。

 あぁ、しかしそれは難儀な――いや大変な事だ。
 だが何と言われても必要だったんだろう、それは分かる。

 何故なら"命は弱さを許さない"。
 泥を被って這いずり回るのも、それも強さには違いない。」

(そこで言葉を切る。続きを話せ、と。)

801キリノ・カサギ:2008/08/09(土) 01:34:18
>>800
「大変だったわねー。
 高々半年生き延びただけで、もうベテランあつかいされて。
 最初のうちは良かったけど、負けが込み始めてからはもう大変でね──
『本物』もずいぶんできた。……もっとも、肌の質と色の関係であんまり
目立たないんだけど。……ただ、月夜とブラックライトの下だけは別でね。
マスクメロンみたいになって、ずいぶんビビられたっけ。
 どっちにしても、前線で一番モノをいうのはキャリアで、傷痕はその
証拠みたいなものだった。自分が一人前になったような気がしてね──
今みたいにマズい酒をあおりながら、この傷はどこの戦いで拵えた、みたい
な話を、ルウムの頃から軍曹やってるオッサンとしたりもできた。
 まぁ、飾りなのよ──腕が無ければ間抜けの証明にしかならないしね。
もっとも、腕があれば誇りの表れにもなる。
 こんな傷を負っても戦いつづけて生き延びることができる。そう示すことが
できる。

 痛い思いは嫌いだけど、傷痕が嫌いになったことは一度も無い。
 戦って生き延びた証であり、誇りであり──そして、死んでった仲間の思い出
でもある。

 戦士にとって、傷痕ってのは誇りと同義──けれど。
 いったん娑婆に出ると──意味がまったく変わってしまう。

 ある人がね、気にしてたのよ。自分の体に刻まれた傷痕のことをね。
 私より、腕の立つ人だった──尊敬もしてる。

 だからね、いつもの感覚で言ったの。立派な傷痕ですね、どこの戦場で──って。
……ひどく傷つけたわ。
 娑婆の理屈は、私にはよくわからないのよ。
 ああ──理屈はわかるし、理解もしてる。ただ──実感として感じられないだけで。
想像はできるし、対処もできる。けれど、それはあくまでも仮初めのものだわ。
 本音じゃあない──決してね。

 あの傷痕がどういう意味を持つものなのか、私にはわからない──
 不覚傷とか──あるいは恥じ入らなければならないような何か、たとえば
裏切りが理由なのかもしれない。

 ただ、醜いからという理由で恥じ入ったとするのなら──私の方が
立ち行かない。

 平時に在っては醜さが罪になる?ええ、不細工は笑われるわよね。
醜いものはそうされるもの──そういうものだわ。
 けど、それがなんなのよ──不細工なんだから、醜いからおとなしく
してろっての?

 ええ、女の理屈としてわかるわ。自分を醜くみせる事象が気に入らなくて、
呪わしいって言うのは。感情ではなく、理屈でわかる。
 
 けれど、感情は納得していないのね。たんなるエゴの話だけど。
 勝利の傷痕と敗北の傷痕。そのいずれであろうとも、自分が生きてきた人生の
で得たものならば、恥じ入る必要なんてない。 
 下げずむのは勝手よ。けれど、自分で自分を下げずむ必要は無い──殺し、
殺された結末として刻まれたものなら、いかなる傷であろうともそれを誇るべき
なのよ。
 それを醜いと見下す奴のことなど捨て置けばいいと思う。
 まして自分自身で見下すならば論外──自分自身も、その傷の原因となった
戦いで殺されていった連中も。いえ、傷ついた人々すべてが報われない。
 傷が戦いの証なら。
 傷への侮辱は、つまるところ戦いそのものへの侮辱だわ。
 
 そして。
 傷が侮辱されるべきなら。
 体中傷だらけになった私自身も、侮辱されなければならないことになる。
 そればかりは、認められない。

 けれど──今は平時。まして、闘争ではない状況で、意味も無く心を傷つけた。
ただの、犯罪よね。言葉による傷害。私の罪。

 二律相反もいいところよ。
 傷つけた事が悲しい。
 傷ついている事が憎い。
 憎みながらに悲しんでる。
 
 多分、たった一言謝れば済む。
 けれど、矛盾が心にある。
 矛盾があるから、納得できてない。
 そんな気持ちで謝っても、多分ただの嘘にしかならないのよ。
 謝るどころか過つなんて、それこそ冗談じゃない。

 思考ルーチンはループ状態。
 なら、誰かに答えを乞うしかないわ。
 女の視点ではなくて、男の視点ではどうなるのか──
それで、ご足労ねがったってわけ」

802リヒャルト・ユルゲンス ◆SternIiXmU:2008/08/09(土) 02:13:44
「――話は分かった。
 自分に理解できない理由で悲しんでいる、その人の事が腹立たしい。
 そして理解できてやれない自分に腹が立つ、と。

 月並みだけどな、やはりそれは傷跡に込められた意味が違うからだと思う。
 その相手とやらが誰だかは知らないけどな、お前さんがそうである様に……
 身体に傷跡が残っているという事は、傷を負うだけの理由があったという事だ。
 その理由如何によって、それを勲章と感じられるかは当然違って来るだろう。」

「例えば…そうだな。
 兵隊が戦って負った傷ならば、まだ良いだろうと俺は思う。
 戦う事が仕事の人間ならば、戦傷は職人の手に付いたマメの様な物だ。
 後ろ指を差されようと、誰に何を言われようと、自分自身がその傷を肯定できる。
 『これは自分が命を賭けて戦った結果であり、異論は決して認めない。』とな。
 他にもそうだ、何か善行の結果としてついた傷ならばもう何も言う事は無い。
 誰かを助けて負った傷など、むしろ賞賛されて然るべき物だろう。」
 

「……だが全ての傷跡がそうである訳でも無ければ、人間が全てを認められる物でも無い。
 それは道理として理解してはいるんだろう?理解しているつもりでも構わない。

 俺が思うに…多分その人は、傷跡その物を嫌っている訳では無いんだろう。
 嫌っているなら無理矢理にでも傷跡を消してしまえば良い。
 しかしそれをしないのは、その傷を負った時の事を忘れたくないからじゃないか。
 有り体に言えばトラウマや教訓、決して忘れなれない嫌な記憶や思い出、
 一言で言ってしまえば『忘れてはいけない嫌な記憶』という奴だ。
 其れに対する自戒や自傷、或いは贖罪のつもりなのかも知れない。

 仮にその人が傷付いたとすれば、それを改めて突きつけられたからじゃあ無いかと思う。
 "傷がある事"を指摘されて傷付いた訳じゃない、"傷の理由"を付き付けられて傷付いた、とか。
 俺に考えつくのはこれが限界、所詮は他人の傷跡だからな。」
 これは男の視点と言うほど大層な物では無いが、俺自身はそう思う。

 ……こと自分の事に関してだけなら、これでも随分当てはまっているとは思うしな。」

803キリノ・カサギ:2008/08/09(土) 22:33:22
「概ね納得はいくわね。それが一番妥当な見解だと思う。 
 となると頭が痛くなるのよね。
 下手に謝るのは傷口を切開することにしかならない。
 ……一番妥当な方法論は、何事もなかったかのように振舞うこと。
 その上で決して忘れないこと。
 腹の一枚下にある本音、そのサインを見逃さないこと。

 ま、妥当だからこそ気にいらないんだけどね。
 失態を犯し体勢を崩した場合、まずは守勢を取って体勢を整える……
 普通すぎんのよ。だからつまんない」

804リヒャルト・ユルゲンス ◆SternIiXmU:2008/08/09(土) 22:54:45
「仮に俺の言った通りだとすれば、だがな。
 確かにそれはベストでは無いかもしれないが、ベターではある。
 ……しかし、人との付き合いなんてそういう物だろう?
 "互いにそれ以上傷付かない。"それだけでも随分と幸せだと俺は思うがね。

 それが厭なら…そうだな、足掻いてもがいて、泥の中を這いずり回る事だ。
 必死になって相手の求める答えを考えるのも、人と付き合う道ではある。」

そこまで言って、手に持ったグラスを下ろす。
その時、ふと思い出した様な自嘲気味の笑みが、彼の口元に浮かんだ。

「或いは思い切り嫌われてみる、か。
 これはある意味では一番楽なんだろうな。」

805キリノ・カサギ:2008/08/09(土) 23:01:21
「安全地帯を求めるために生きてるわけじゃないわー。
 全力を尽くして、もがいて、足掻いて、叩き潰されるのが大好きなの」

 けらけら、と娘は笑う。

「努力なんて届かない、願いなんてかなわない、理想なんてただの夢想。
 9割がた現実はそんなもんよ。
 届いたと思って大喜びしてみても、何日かたってからぜんぜん別物だったって
気づくこともある。

 世の中なんて九分九厘無価値な石ころでできてるのよ。
 飢えて死ぬのが道理だわ。
 だからこそ楽しい。そうは思わない?」

806リヒャルト・ユルゲンス ◆SternIiXmU:2008/08/09(土) 23:08:56
「そうかも知れない、な。」

フンと毀れる笑み。
自身の事はともかくとして、目の前の娘の場合はそれで良いと。

「そうと決まれば、精々必死に足掻く事だ。
 謝るにしろ何にしろ、足掻いたと言う事実が価値を作る。
 その上で潰れず残れば御の字、無価値な石くれの人生なんて『そんな物』だ。

 だが少なくとも、そちらが"そう"決めたのならばそれ以上を望むべくも無い。
 まぁ……頑張れよ、目標目掛けて狙い済ました鉄砲玉の様に飛んで行け。
 それで駄目なら玉が砕けるが如く、潔く散るのが良いさ。」

807キリノ・カサギ:2008/08/09(土) 23:15:46
「ええ、そうね。

 平和も悪くないと思うわ。
 こうやって甘ったれることができるから。
 ええ、もちろん限度はあるけどね。
 結局自分の足で立たなきゃならないのは戦場も後方もかわらないもの。
 
 おかげで腹も据わったわ。このまま突っ走るだけのことよ。
 それはそれとして。
 あんた自身はどうなわけ?」


 にやり。と。
 娘は、不意に蛇の笑みを浮かべて見せた。

808リヒャルト・ユルゲンス ◆SternIiXmU:2008/08/09(土) 23:27:20
「それは重畳、まぁ無責任ながら成功を祈らせて貰う。
 ……こと、撃つ相手が居ないとロクな支援も出来やしない。」


「俺か?
 俺は必要以上に踏み込まれる事は避けたかった、それだけだ。
 一度踏み込まれると、相手を傷つけるに遠ざけるのは難しいからな。」

と、そこで。
男の視線が酷く醜いモノを見る眼になった。
無論、その対象は娘ではない。

「……まぁ、正直こちらはこちらで苦戦してるがな。
 自分の事だ、何とかするさ―――。」

809キリノ・カサギ:2008/08/09(土) 23:34:06
>>808
「この世は苦界よ、うまくいくことなんて何一つない。
 ただ、守勢のみで勝利しうる戦闘なんてこの世にはないわ。
 いかなる戦闘、いかなる戦争も攻勢を以ってしか、満足しうる決着はない。
 それが武器を用いてのものになるのか、外交と諜報を用いての物になるのか、
あるいはその両方かはシチュエーションしだいだけど。
 私は覚悟が固まったとこ。お蔭様ってやつなのよね。なれない環境ではあるけれど、
所詮自分の流儀でやるしかないってわかったから。

 あんたのほうも、うまくいくことを祈らせてもらうわ。せめてものお礼よ」

810リヒャルト・ユルゲンス ◆SternIiXmU:2008/08/09(土) 23:52:18
>809
「それも場合によりけりさ。
 只単に、今俺が攻めるべき時では無いだけの事かも知れないけど。
 俺は猟兵、撃つべき時に撃って出るのが役割だ。

 …あぁ、とりあえず礼は言っておく。
 俺の方でもまぁ精々上手くやるさ、どんな結果になろうと後悔しない程度にな。」

そこで、席を立つ。
取り出した硬貨一枚、文字通りの安酒一杯の代価を置いて一路出口へ。

「……全く、悪い癖だ。
 余計な事まで云々と喋ってしまう、求められたら断れないのも考え物だ。」


軽い調子で放たれたその言葉は、しかしそれが"壁"である事を暗に主張している。

彼の女が求める応えは須らく与え、与え得る言葉は彼の女へと既に告げた。
ならばその時点でこの身の役割はとうに果たされている。
最早この場で口にするべき何事をも持ち合わせていないのだと。
これ以上の言葉は身から出る膿、曝け出したくない事であると、
合成樹脂のドアを押し開けて去って行く、その痩躯の背中が告げている。

余計な事を自分が言って、彼の女がそれを聞いてしまえば、それは不愉快な事となる。
互いに余計な気遣いなどしよう筈も無いとは言え、その温床の発生すら許さぬと。
今しがた語って聞かせた事実を繰り返さぬよう、彼なりに気遣った結果であった。

811キリノ・カサギ:2008/08/10(日) 00:02:40
>>810
「それじゃ、また」
 ただそれだけの言葉を送る。
 いずれにしても人の恋路だ。正直口出しの必要もない。
 ドアが閉じる。
 自分ひとりしかいない店。店主は奥で非合法スレスレの薬物に勤しんで
いるようだった。
 手持ち無沙汰に任せて、カウンター上の酒瓶を手に取った。
 中身をグラスに注ぎ込んで干す。
 作業のように、ただそれを繰り返した。

「まぁ、道理と世事に通じてはいても……不器用じゃ意味がないのよね」

 自分に言ったか、男に告げたか。
 それは自身でもわからなかった。


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