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漆黒のオデュッセイア〜埋葬異聞〜

1てつ:2006/02/01(水) 00:16:35
 本スレッドは、地球侵攻のため進撃するAEMA・木星帝国・デブリピープル
連合艦隊の奇妙な日常を描いた物語が描かれてゆくスレッドです。
 以前のエピソードについては多目的6を参照してください。

886カミュエル・ローレン@Wゼロカスタム【ラーストチェカ】:2006/07/30(日) 00:56:11
>>885
「む。」

(そう言われて、そういう物かと納得する。
 確かに一定以上の戦果を上げているなら、残りを休息に当てるのは間違いでは無い。
 この場合、目の前の男がいたずらに暴れまわるのも全体としてはマイナスだろう。
 そう結論付け、カミュエルは思考を切り替える。
 自分が先にやられていながら、刺し違えたと言われたのには少々抵抗を感じたが。)

「それは……構わないが……。
 …悪いが、私はイグニスの悦びそうな話題等振れないぞ?
 聞かれる分には幾らか答えられるが…余りおしゃべりは得意では無い。」

(やや気まずそうにそう言って、こちらもヘルメットを外す。
 最近伸ばしたままの長髪を縛り上げたゴムを外してやると、自然とコクピット内に髪が流れた。)

887陽気なイグニスinナイチンゲール・エニグマ:2006/07/30(日) 01:10:42
>886
そこで気付く。
いつの間にか自分の事をちゃんと名前で呼んでくれているカミュエルに。

「お、名前・・・」

なんだか胸の高鳴りが本格化してきたことを感じる。
実に御しがたい本心だとは思う。
不意に流れた、コンソールウィンドウ越しに見える女の髪の艶やかなコト。

「あ・・・いや、…いい…」

男の心を浮つかせ、虚ろな言葉を返させるほどに、
紅燕の化身は絶世の美女であった。

「あ、お、うお、
 ちょ、カミュっち!いきなり誘惑とは!」

頭をぶんぶん振って何を言い出すのかこの男。

「いえすいませんなんでもありません、ついその艶ある髪の毛が綺麗すぎたもので」

888カミュエル・ローレン@Wゼロカスタム【ラーストチェカ】:2006/07/30(日) 01:23:23
>>885
「む?」

(台詞は先程と同じ、だが文末に付くのは句読点ではなく疑問符だ。)

「ん…これか?
 その様な事を言われたのは初めてだが…まぁ、余り見せる物でも無いからな。
 私自身もそう気にしていた訳では無かったが、誘惑……と言われても、よく分からない。

 …ん…何だ、イグニスはこういうのが好きなのか?」

(意外だ、と言わんばかりの表情でモニタを見る。
 周囲のモニタを見渡す限り、もう少しで回収機が到着しそうな気配ではあるが――。)

889陽気なイグニスinナイチンゲール・エニグマ:2006/07/30(日) 01:30:52
>888
「.oO(ご褒美です!!!)
 ・・・・あ、いや・・・うん、嫌いじゃないって言うか、むしろ好き・・・かなぁ
 綺麗じゃない。髪の毛は女の子の命って言うし、大切にするべきだよーとかなんとか・・・」

ドキドキ

「お、落ち着け俺、幾らカミュっちが狙わずして狙ってきたとしても
 そう簡単に堕ちたらかっこわるs
 そ、そうだ!
 約束だけど、どどどどdどうしようね!
 おおおお俺はほら、ね、どっちでもいいっていうか!
 口約束程度だし、強制できないっていうか、ね!」

何が言いたいのだろうかこの男は。
話題を変えようとしてまた坩堝にハマっているということはわかる。

890カミュエル・ローレン@Wゼロカスタム【ラーストチェカ】:2006/07/30(日) 01:34:09
>889
「…ふむ。そういう、物か。」

(名にやら勝手に納得した様だ、取り敢えず無造作に広がる髪を押さえ込み、
 その先端だけをゴムで纏めて一房にして漂わせる。)

「あぁ、先程の約束か。
 互いにした口約束の様な物だ、あの程度で良いのならば、私は一向に構わないが。

 大丈夫か、イグニス?
 呼吸が安定していない様だが。」

891陽気なイグニスinナイチンゲール・エニグマ:2006/07/30(日) 01:41:17
>890
「あ・・・」
一房にまとまったそれに少しの勿体無さを感じ、
けれどこれはこれで素晴らしいなぁとか思いながら画面にへばりつく男。滑稽。

「ま、待つんだカミュっち、
 異性は苦手と言っていたじゃないか、無用心すぎるぞ!」

何故、拳を握って叫ぶ。

「・・・ん
 大丈夫、おちついた


   落ち着けるか!
 ほっぺにちゅーもデートも無しでいいんですよ?!もっと考えてから了承すべきだよ!」

血涙を流す勢いなのは、下心と両親がラグナロクな葛藤を現在進行形でやってる証拠だろう。

892カミュエル・ローレン@Wゼロカスタム【ラーストチェカ】:2006/07/30(日) 01:51:27
>891
「あぁ、確かに苦手だよ。
 只、特別これといって嫌いという訳でも無いからね。

 それに、余りそれの意味する所が気にならないというのが本当だ
 確かに苦手ではあるが……それも、余り興味が無かったからだろうな。」



「まぁ、取り敢えずは戻ってから考える事を推奨する。
 私はどちらでも構わないが……少なくともそちらの方が大変な様だ、
 …理由はよく分からないが。」

(良心と下心の葛藤とか一切合財を無視し尽くして、かなり無情な女の一言である。
 ただ一方で、それは彼女のこれまで立って来た立ち居地がどんな物であったか、
 それを無意識ながらも、暗に示して居る物ではあったのだが。)

893陽気なイグニスinナイチンゲール・エニグマ:2006/07/30(日) 02:02:33
>892
「そっか…」

思うところは、ある。
彼女の立場からすれば容易に察せられてしまうが、深く理解することはまだ出来ないだろう。

「・・・なら少しくらい知っといても損は無いと思うから、

 んー…まぁ、そうだねぇ
 とりあえずやっぱり還ったら考えよう。
 いっしょに飯でも食べながら、さ。
 ほら・・・迎えが来たみたいだ。

 それじゃお疲れ様。
 久しぶりに退屈から解放出来た気がしたよ。
 それがお互いだったら俺は嬉しいな。」

と笑ってシュっと指で軽い敬礼崩れのようなポーズをしてみせる。
機動認証を得たエニグマの各部は息を吹き返し、僅かにのこった推進剤で回収機に縋り付くとネレイドへと帰途に就く。

894カミュエル・ローレン@Wゼロカスタム【ラーストチェカ】:2006/07/30(日) 02:09:45
>893
「了解した。
 では、後程適当な頃合を見つけて、そちらから連絡を入れて欲しい。
 艦内端末の通信コードは、後でこちらから通達しておこう。」

(…まぁ尤も、全く暗い事ばかりでも無い。
 地球への本格侵攻が事実上先送りになっているこの艦隊は、
 組織全体からすれば余りにも平和な上に実質上は治外法権を有する様な物。
 必然的に彼女の様な存在も、戦いに染まらずに済む事さえある。
 それが何処へ至るかは、本人と周囲の人間次第では在るが―――。)

「……そうだ、な。
 退屈で無かったという意味であれば、私もそれは疑い無い。
 ラーストチェカ、帰還する。」

(蘇った翼をはためかせ、煌かせ。
 こちらは回収機を利用する事も無く、帰途に着くエニグマと並走し。
 ラーストチェカも同様に、ネレイドへの帰途に着いた。)

895ゼダ・マンディラ@ネレイド艦橋:2006/08/01(火) 21:25:30
 ブリッジの舷側窓を見れば、常に夜が見返してくる。
 冴え冴えとした青空も、灰色のうごめくベールにも似た
曇天も、あるいは黒衣纏う未亡人の涙にも似た漆黒の驟雨も──
今は、かすむほど遠い記憶と成った。
 それを不幸とは、思わない。
 どれほど危険であろうとも、どれほど人が住まうに値せぬと
いえども──今はこの夜に満ちた大地無き無限の世界こそが、
己の褥とゼダ・マンディラは当の昔に定めている。

 そういう男だからこそ、今日──男は満悦の笑みを浮かべている。
「ドニー・レイドを呼べ」
 命令に錆びた低い声で、ゼダは傍らに控える側近に告げた。

896ドニー・レイド@ネレイド艦橋:2006/08/01(火) 21:30:55
>>895
(ややあって、艦橋には一人の男が現れた。
 まだ青年と言ってもいい様な容貌を、本人は気に入っていない軍装で固めて。)

「ドニー・レイド、只今出頭しました。」

(そんな形式染みた挨拶は生まれ持った性質故だろう。
 尤も、それはある意味での仮面に他ならないと理解しているのだが。)

897ゼダ・マンディラ@ネレイド艦橋:2006/08/01(火) 21:42:17
>>893
「襟を閉めるな、俺まで苦しくなってくる。
 もとより軍規などあってないような艦なのだからな」
 などと冷やかしつつも、しかしドニー・レイドという男が
公務に有って軍服を着崩すことなどあるのだろうか、など
という確信にも似た疑問を覚えもする。
 しかし、何事も無いのであればこうした戯れも精神に必要な
潤滑材だが、今はそういう時ではない。
 
 ゼダ・マンディラは、宇宙の流民の長。
 宇宙の風を読み、宇宙に糧を得る民を総べる。
 だからこそ、誰よりも宇宙の『風』を読むことに
長けていた。
 
 だから、男はただ一言、運命の始まりを告げた。

「待ち焦がれた風が吹いたぞ、ドニー・レイド。
 帆を張る時が来たのだ。風の匂いが、そう告げている」

898ドニー・レイド@ネレイド艦橋:2006/08/01(火) 21:49:25
>>897
「まぁそれは重々承知してるんだがな。
 悪いがこれは性分だ、つまらんだろうが勘弁してくれ。」
(そうして、やはり着崩すまではいかずとも。
 苦笑交じりに、幾分かその態度は柔らかい物へと変わる。
 けじめとでも言うのか、ゼダを相手にした時の最初のやり取りは、何時もこうだ。)



「………そうか、助かる。どうにも落ち着かなかったのはその為か。」
(故に返される言葉もまた、やや控えめな物。
 だが、誰が見ても分かるだろう。
 その瞳は間違い無く、熱っぽい何かによって煌いている事が。)

899ゼダ・マンディラ@ネレイド艦橋:2006/08/01(火) 22:06:07
>>898
 ドニー・レイドの眼差しに、このところ見ることができなかった
熱を見出す。
 どのような場であろうとも生きる楽しみを見出しうる椿などとは
異なり、やはりこの男は生粋の戦士であるのだな、とゼダは得心し
た。
 まして、彼には戦うべき理由があるのだ。男であるならば、その
魂を焦がし焼き尽くして悔いぬほどの理由が。

「どれほど己の姿を隠そうが、匂いばかりは隠し切れんものだ。
 まして、これほどの長期間われわれの周囲を猟犬さながらに
うろついておるのならな。

 ……核エンジンの推進剤、その残留イオンのパターンで、
やつらの動きの定めがついた。
 爆弾を使い拡散パターンをごまかそうとし続けたようだが、
しかしこれほど長くなれば、ある程度読めてくる。
 太陽風によって荷電された古いイオンに、影響をほとんど
受けておらん新鮮なイオン。 
 
 そのパターンを解析した結果、やつらの拠点が判明した。
 
 フォボスだ。例の装置で、基地の存在を隠蔽していたようだな……
道理で、どれほど観測してもフォボスに異変が認められんはずだ。
何しろ新しいクレーターひとつ「増えていない」のだからな。
 われわれが監視していることにたいして、気を使いすぎたのが
運のつきというわけだ……

 ……拠点さえわかれば、攻めることはできる。
 すでに木星帝国軍に対し、増援の派遣を要請した。
 衛星ミサイル50による一斉爆撃の後、基地を叩く。
 おびき出されてくるならばそれもよし。
 そうでなければ……

 補給庫を潰された軍が、ろくに補給線の確立もかなわぬ
遠隔地でどういう運命をたどるか、やつらは実地に学習
することとなるだろう。
 こちらにはマリア・ロッソがいることは、やつらとて
承知している。うかつに補給船を呼び出せば、その会合地点を
叩かれるだけと承知しているだろう。
 暗黒ガスによる潜宙は、我々のもっとも得意とするところ
なのだからな……なまじ己が潜むことの有力さを知っている
からこそ、待ち伏せを受けることを恐れずにはおれまい。

 ……つまり、やつらは出てくるほか無い。
 狐狩りだ、煙でいぶして出てきた狐をただ一発で打ちとめる。

 ……鍵は貴様らの働きだ。何しろ貴様のために一軍を動かして
いるに等しいのだからな、勲章もの程度の活躍では許さんぞ?」

900ドニー・レイド@ネレイド艦橋:2006/08/01(火) 22:30:25
>>899
「成程、な。
 …完璧すぎる隠蔽も考え物だな、そういう事ならば間違い無さそうだ。」

(説明される言葉を、一つ一つ頭の中に刻んで行く。
 自分でもそれらの情報を整理してみるが、特別指摘すべき点も無く、
 少なくともその推測・考えが理にかなった物だという事は理解出来た。

 何より、自分自身の直感的な何かも、それがそうだと告げている。)

「そうだな、そして恐らく…一発で打ち止めなければ次は無い。
 向こうも当然、その一発を防ぎにかかるだろうしな。

 ……分かった、今までが悪過ぎた感も有る。
 次こそは――いや、今度こそ俺はやらなければならない―――。

 ……そう、どう讃えれば良いか分からん位の活躍を待っていろ。
 その上で、俺はアイツを掻っ攫って来る。」

(熱の篭った―――それでいて最大限に自制された眼差しが見て取れる。
 焦っている、という訳では無い。
 其れは戦に対する高揚感とは似て非なる――只一度の機会を前にして、それを得ようと意気込む心の現われだ。)

901マリア・ロッソ:2006/08/01(火) 22:37:21
>>900
 漆黒の僧衣に身を包んだ女はゼダ・マンディラの影のようだった。
 ゼダの巨躯、その背後から身を傾けて上躯を覗かせて見せながら、
少女は小さく微笑んだ。
「けれど、彼女を奪い去ったとして、それで彼女は救われるものですの?」
 水を刺すような言葉を吐いてはいたが。
 それでも少女の笑みに邪気は無い。
「彼女の兵装、操作系統は余りにも感応波操作に重きを置きすぎている。
 こういう存在に対する大敵たるがこの私……

 ……体だけ奪っても、詰まらない。
 女がこういうことの手助けをするのもどうかと思うのですけれど……
 
 ……どうせなら、心まで奪って差し上げないと、女というものは
悦ばぬもの。
 そう、『繫いで』差し上げましてよ誰より深く。
 届かぬほどに鎧った心に、穴をうがって差し上げる。
 そこから先は、あなたの仕事……」

902ドニー・レイド@ネレイド艦橋:2006/08/01(火) 22:55:01
>901
「…そうだな、アイツの心に最初の孔を穿ったのは俺なのだから。
 その位の事はしてやらんと、俺もアイツも俺自身を許せまい。

 そして幸いにして、俺も最近少しは慣れて来た所だから、な…。
 分かった、先の事は俺が如何にかしよう。
 それまで頼むぞマリア、俺もいい加減、アイツを悦ばせてやりたいと思っている。」

903マリア・ロッソ:2006/08/01(火) 23:10:11
>>902
 確かな決意が宿った言葉を、少女は耳ではなく魂で聞く。
 それが、彼女の力だから。
 だから、彼女は告げる事にためらいを覚えはしなかった。
「戦いながら、同時に互いに互いの魂をぶつけ合う。
 それは、互いの間の欠落を埋めること。
 あなたと彼女の過去を否応なしに分かり合うことは、互いの
胸に短剣を突き刺しあうような苦痛に等しい。
 互いに互いを真に認識することは、互いが互いに持っていた
幻想(ユメ)を完全に滅してしまうことなんですのよ。

 彼女が生きた苦痛と絶望のすべてを受け止めてなお進めると
決意すること。
 彼女の醜さも穢れも、そのすべてを。

 ……私が知る限り、それができる人はそうはいない。
 人は互いに互いをだましあいながら生きていくものだから。
 互いに正直になり過ぎれば……往々にして、先に待つのは憎悪だけ。

 人と人とのつながりは、そうして壊れていくものだと……
私は誰より知っている。

 ……私がこのような決意を下しうるようになれたのは、
いわば奇跡のようなもの。
 私の絶望を理解しようとしてくれた人がいて初めて
有り得た二度とない奇跡。
 そして、あなたと彼女の間には……きっと、私とその男の
間に横たわっていた断崖よりなお深い奈落が在る、それが
私にはわかっているんですの。
 私は、きっと求めていた。
 彼女は、求めていない。求めるどころか離れようとしている。
近づいてしまうのが、辛いから」
 
 少女は一旦目を伏せた。
 そして、再びドニー・レイドの瞳を見つめる。

「だから、私は今一度奇跡を望む。
 二度も奇跡が起こるなら、それはきっと奇跡などでは
ないのだから。
 私の異能が私に与えた絶望をぬぐえるのは、きっと
今一度の奇跡なのです。

 だから、私は奇跡を望む。奇跡を得るため力を尽くす。
そう、エゴですわ。私は私が救われたい。
 私があなたに力を貸すのは、きっとそんな理由でしか
無いのですわ」

 最後にそう告げて、少女は小さく苦笑した。

904ドニー・レイド@ネレイド艦橋:2006/08/01(火) 23:29:34
>903
「構わないさ。」

(如何という事は無い、とでも言う様に、男はその瞳を真っ直ぐに見つめ返す。
 どうでも良い約束を簡単に受けてしまうような口調で尚、
 その視線は、其処に至るまでの思考を決して否定させようとはしない物だ。)

「…その程度の事も受け容れられん男が、こんな場所までやって来れる物かよ。
 それにだ、彼女の醜さも穢れも―――その全てを飲み込んで尚、
 俺が彼女を求められるのならば、それは俺が望んだ関係に他ならないよ、マリア。


 そして彼女が俺から離れようとするならば、俺は決して離さない。
 気が狂いそうな感情を全てぶつけて、もう一度俺に惚れ直させれば良いだろう?
 そんな奇跡でも構わないのなら、待っていろ。」


「―――なぁに…負け続けの俺にだって、何度も拾った命はある。
 何回も失敗したんだ、最後に一度位は、奇跡でも何でも掴んでみせるから、な。」

(そう言って、男は気恥ずかしそうに視線を逸らす。
 そんな状況で尚、その言葉に嘘偽りは微塵も無い。
 それは一歩踏み違えれば狂気でしか無い感情だ、だがそれでも。
 最早その気持ちを、誰にも鎮める事は叶わないのでは無いだろうか――?)

905マリア・ロッソ:2006/08/01(火) 23:40:04
>>904
「問うた私が気恥ずかしくなりますわね」
 その瞳が余りにまっすぐすぎて、顔がどうにも赤らんでしまう。
 砕けてかまわぬというほどに真剣な愛をこんな近くで宣言されて
しまえば、人の意思すべて知り得る彼女とて恥じらいを覚える。
 まして、彼女の本質はまだたかだか14の少女にすぎないのだから。
 前髪を軽く掻き揚げて、少女は小さくため息をついた。
 
 少女の眼光が変じる。
 包むような暖かさから、貫くような鋭さに。
「敗残の身を永らえてでもつかむべき勝利。
 なんとも気恥ずかしくはありますが……

 ……この上も無い、合戦号令、確かに聞き届けましたわよ」

906謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 13:50:35

「―――――しかし。」

(ネレイド艦内、第三船倉中央休憩室。
 諸所の事情により、カミュエル・ローレンは暇を持て余している。
 例えば――艦内のクルー達は日々の生活に追われているが、
 自分の今日の仕事は思いの他速く終わってしまった。

 そんな理由が重なって、今は時間を持て余しているのである。)

「目的地が決まっても、やはりそうそう生活が変わる物では無い、か。」

(口に咥えただけの煙草――無煙タイプ、火は付けていない――をブラつかせ、
 所在なさげに休憩室の中を見渡している。)

907イグニス:2006/08/05(土) 14:04:01
>906
「どっこいしょー――」

(不意に視界の片隅のソファーが沈んだ。
 気付けば一人の男が向かい側の入り口から室内に入ってきていた。
 あちら側から来たということは、この男はどうやら船外での作業が宛がわれたらしい事が、表情、着衣その他から窺い知れる。
 と、なんともなしに観察を続けていれば次の瞬間にも視線が上手い具合に重なるのは一つの予定調和だろう)

「へぇ、カミュっちって煙草吸うんだ?」

(男はぐぐーっと伸びをした後ぼりぼりと、半脱ぎ状態のスーツの下の黒いインナーのさらに下、
 うっすら汗が浮かぶしなやかで筋肉質な肌を掻くと、自分の腿に両手を乗せるようなだらりとした格好でカミュエル・ローレンに話しかけてきた)

908謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 14:11:22
>907
「…いや、私は煙草はやらない。
 先程、仕事が終わった際に貰った物なのだが…吸う気にもなれなくてな、咥えていた。
 そして余暇を貰ったのは良いのだが、時間を持て余してしまった。」

(不意に現れた男に驚くことも無く。一旦視線を外して状況を確認する。
 そう言って咥えていた煙草を右手で抜き取り、再びイグニスへと視線を移した。)

「そちらの作業は、どうやら終わった様子だな、
 見た所船外活動だった様だが。

 …あぁそうだ、イグニスは煙草は吸うのか?」

909イグニス:2006/08/05(土) 14:19:44
「!
 .oO(またしょっぱなから性的な仕草してくれちゃってこの娘は…)

 ん。あぁ、そなんだ?
 仕事が終わったってのも俺と同じだね、奇遇奇遇。
 まぁ船外の作業にも慣れたし、
 上手いサボり方とか効率のいい終わらせ方ってのも、実は知ってる連中から聞いたりしててさ、
 今日はこの前の貸しを返してもらって早めに上がらせてもらったんだよ。
 やっぱりつまらんね、どーも。

 へ?煙草?俺?
 あー、一回吸って、咽て。 それっきり。」

(煙草を指に挟む動作から口に吸い込み肺に充満するイメージをジェスチャーして、涙浮かべながら咽る真似をしてみせる男)

「かっこわりぃっしょ?」

(笑。)

910謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 14:27:45
>909
「成程、私は船外活動の方に出た事は無いが…確かに余り愉快な作業では無さそうだな。
 休みたくなるというのも、想像は出来る。
 私は艦内農場の方だが……こちらは中々新鮮に感じているよ。」


「ふむ、イグニスが吸うならやろうかとも思ったんだが…
 それでは仕方ないな、身体に良い物でも無いし、確かに格好のつく姿にはなりそうもない。

 …尤も、私も似た様な物だがな。」

(そう言って、苦笑する。)

911イグニス:2006/08/05(土) 14:35:49
>910
「あのカミュっちが農作業―――
 
 (以下は、首にタオルを下げて良い汗流しながら揺れる髪、ラフなかっこからくる少し際どいワンショット、
  全時代的な農場風景がイグニスの脳内を駆け抜けるイメージ。⇒ NTフラッシュ)


 ちょっと部署移動申し込みしてこようかな!?」

(鼻息を荒くして、
 カミュっちときゅうり育てたい、ナス育てたい、にんじん育てたい
 とぶつぶつ言い出す男。妖しい)

「やや、ちょっち待ち。
 キョーミが少しでもあればやってみるのも良いかも知れないぜ?
 ちょっとその“イグニスが吸うなら”って下りにトキメいた。
 なんなら一緒に吸い始めるってのも夢のある話だと思うけど…どうかなカミュっち。」

(真顔)

912謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 14:44:44
>911
「ん?別に構わんが…少々退屈かも知れんぞ?」

(本気で、頭の中には疑問符が浮かぶ。
 艦内農場といっても、決して土に塗れる様な類の物ではなく。
 艦内の余剰スペースを使って作る、良くても家庭菜園とかそういう感じの物である。
 前時代的と言えば前時代的、しかし結局は艦内の狭い空間での地味な作業。
 それが実際の所である。)

「いや何、イグニスが来る少し前に吸ってはみたんだが、な。
 先程そちらが言った様に、とても格好の付く様な物にはならなかった。

 あぁ、貰ったは良いのだが量が残っているのでな。
 かと言って、他に渡せるような相手も知らないので、イグニスは要らないかな、と。
 艦長は正直私は苦手だし、マリアやシアに吸わせる訳にもいかんだろう?
 お前の友人はどうにも近寄りがたいしな。」

913イグニス:2006/08/05(土) 14:54:12
>912
「いや、なんの問題も無い、素人たる俺にはカミュっちが手解きしてくれるのであろう?

 君となら、がんばれる。」

(すごく頷きながら脳内お花畑を絶賛展開中)

「あそっか、まぁ確かに俺が頂戴しておけばほかの奴らに貴重な煙草を売りつけたり出来るし
 売ったお金は有効利用してやろう。主に俺とカミュっちのデート費用として。
 だから貰っていい?
 
 【イグニスはカミュエルの煙草を(強制的に)手に入れた!】

 出来ればその咥えていたのもくれるとプレミアがつくんだが。
 いや、絶対売らないけど。(家宝にするから的な意味で)」

914謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 14:59:54
>913
「まぁ……別に構わないが。
 ただ、そもそも特別手解きが必要とも思えんな、体力は……十分だろうし。
 問題は、ともかく地味だ。何と言っても、食料と酸素は宇宙船では貴重だからな。

 …ん?
 あぁ…そういう事なら構わない。
 私には売り口上を考えるというのは出来ないからな、持って行くと良い。」

(デート資金の辺りを思いっきり天然でスルーして、上着の胸ポケットから
 煙草のパッケージを取り出す、右手に持った、咥えただけで未使用の煙草もだ。
 それを、イグニスに放る。)

915イグニス:2006/08/05(土) 15:11:42
>914
「地味、されど乗組員にとってそれは必需たる生命線…縁の下の力持ちとはよく言ったもの。
 すべての基盤となるべくものは往々してシンプル。しかしてこれはライフライン・ガーディアン、
 はたまた生命の紡ぎ手とも言える大義大職……そう、無くてはならない要職に俺は就きたいんだ。
 そんな素晴らしい部署に先任している君にこそ手解きを受けたい!

 俺にはわかる、これは俺の天職なんだ……前世からの確約なのだろう、君と農作業。」

(馬鹿)

「よっしゃーってマジでくれたー!?(咥えてたのまで)
 く、大丈夫だよカミュエル、俺は紳士だからイケナイことには絶対使わないからね…(葛藤するような声で)

 しかし、なんでカミュっち見て煙草なんて渡すかね。
 そんなイメージ俺は浮かばんのだが、偏見だろうか。」

(ぽつりと、銘柄を見つめながら漏らす)

916謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 15:19:22
>915
「そこまで持上げられる程の事をしている意識は無いのだがな…
 まぁ間違ってはいないが、それを言ってしまっては、船外活動とて必要な仕事だ。
 幾ら身に入れるモノがあっても、身を護るモノが無ければ生きてはいけない。

 尤も、働く場所を選ぶ権利はイグニスにもあるからな、申請はしてみると良い。」

(そう言って、一度言葉を切る。
 イグニスの対面にあるソファーに腰を下ろして、置いてあったドリンクを口へと運んだ。)

「流石に渡す側の意思までは、な。
 私は感応派の遮断措置は受けているが、直接読み取れる訳じゃあ無い。

 ……あながち、何も考えて無かったのではないかなと、思う。
 今は皆少しづつ緊張して来る頃合だからな、フォボスとてそう遠い訳でも無い。」

917イグニス:2006/08/05(土) 15:37:34
>916
「ちがっ
 ちがーよカミュっち!
 雑用ですから!俺の意思なんて関係無いですから!
 とりあえず新入り、ホラ床汚れてんぞ、拭いとけや。あ、わりぃコークこぼしちまった!ヒャハア!
 …なんですよ!(うるうる」

(と、どうせふんだんに脚色したであろう自分の不遇を迫真の演技で訴え、
 慰めてもらおうとでも考えたか。浅はかな男である)

「フォボス……か。
 しかし地球発って早火星衛星軌道とはなんとも面白い人生進路だなぁ
 これも全部あのドニー・レイドとかいうスーパー振り回されキャラに付き合おうとした俺の自業か。
 
 ま…でも、全体的に見ると退屈はしてないね。
 埋葬船団と衣食住を共にして…ってのはしたことあったか。マリアちゃんとか神父のおっさんとか。
 重力に揺られてたら今頃はすっかり落ち着いちゃってこう、燻らせた気概ってのが飼い馴らされ切っちゃってる頃合かもね。
 やっぱり旅はするもんだ、理想を掲げるのも良いけど、俺にはこっちのが合ってる気がする。
 その点だけは…まぁキッカケか、それを作ってくれたあいつには感謝すべきであり、自得でもあるのかな。
 
 なによりなんていうか、美少女祭りだし。」

(ゆるーんな顔になってにへら〜とカミュエルを眺めてつぶやく男)

「ま、これが最後にならないようにベストを尽くそうと思う。
 あいつはあいつで取り返さなくちゃいけないものあるみたいだし、ちっとはフォローしてやろうとも思う。
 何が出来るかは始まってみないとわかんないけどね。がんばるよー?
 
 あ、そーだカミュっち。当座をこなしたら俺と旅にでも出てみない?
 
 なんてね。」

(微笑)

918謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 15:55:14
>917
「だろう?私も似た様な物だよイグニス。
 私とてこの艦隊では新参者、作物の栽培なんてやった事は無かったからな。

 ……そうか…そちらがこちらに来ると言うのなら、幾らかは私の立場も変わるな。
 私以外の新人がやって来れば、私への対応も変わるやも知れない。」

(と、何やら不穏な表情で何やら考え始める。
 弄くってみようとでも言うのだろうか、少なくとも慰めるベクトルは違う。)

「そうだな、第一今の状況は…我々が最初に予想した物とは大分異なる。
 場合によっては今頃我々は、とうに地球に侵攻していたかも知れないからな。
 其れも此れも、あの椿と言う企業軍の少尉の所為だろう。
 …どうやらマリアもシアも、あの椿という男に大分影響された様に思える。
 彼女達も、恐らく今度の戦いが終われば何か行動を起こすだろう、あのドニーという男もだ。
 今の埋葬船団は離反者が多い、AEMAの力とて、数年前に比べれば相当落ちた―――

 これが最後だと言うのなら、私は其処に居る物の生を価値有る物にしたい。
 そもそも、我々皆が共に戦える機会も最早そうは無いだろう」





「ん、構わんよ。此度のが済めば、最早私が此処に留まる理由は無い。
 私の望みは、人を殺めなくても得られる物だしな。
 誰かが望むのならば、私がそれを断る理由は何一つとして存在しない。」

(真顔。)

919イグニス:2006/08/05(土) 16:06:28
>918
「.oO(やた!掴みは上々!なんだか歓迎モード……れ?)

 カミュエルさん?なんだか物騒な表情を浮かべられているようですが……(汗」

(背筋に寒いものを一抹残しながらも後日、しっかり部署変更申請したイグニスだ)

「.oO(地球侵攻かぁ、実はその前にバッくれようかなぁとか考えてたんだよな、用だけ済ませて。)
 
 平ちゃんね、ホント面白いよ。彼。なんだろね…通らない筈の筋まで通そうとするあたりとか。
 ああいう男らしさも同性としては嫌いじゃないかな。
 まぁ俺だって振られる時は潔いって評判なんだぜ!………・゜・(ノД`)・゜・

 

 っととと、…今、なんとおっしゃいましたか?」

(目を丸くして)

920謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 16:17:11
>919
「そう、平蔵だ。
 私は正直な所を言えば…実は余り話した事が無い。
 別に何か悪い所が思い当たる訳では無いのだが…何故だろうな。
 …私が彼と親しくしていては、マリアの不興を買うからかも知れないが。」


「ん…?だから、私と共に旅に出たいと言ったのだろう?
 私の戦う理由――望みはねイグニス、誰かの生を価値ある物にする事。

 だからイグニスが望むならば、私には特別断る理由が無い。
 …あぁ、無論イグニスに必要無いと言うのなら、撤回してくれても構わないぞ?」

(真顔。
 一寸の酔狂も打算も無く、イグニスの眼前に座したその女は、
 本気で自らの望みに基いて発言している。)

921イグニス:2006/08/05(土) 16:30:01
>920
「生を、価値ある物に……」

(少しほう、とした表情でカミュエルの言葉を反芻して呟き、
 カミュエルの顔を眺めてその意味と真意を探して――)

「…見つからない。
 (呟き、)

 オーケイ…
 だから、カミュっちに付き合って貰おう。
 君と旅をする事で俺の生が、こんな俺のそれが価値ある物になるのなら。
 是が非でも、お願いしたいな。
 それと、俺も頑張るからさ。
 出来ればお互いそうなれるように頑張るからさ、

 …うん、付き合ってほしい。」

(特に改まった様子も無く自然に。
 改めて、紡ぐべき旅路の同行者として。
 イグニスはカミュエル・ローレンに同行を求めた)

922謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 16:36:52
>>921
「了解した。
 船団には悪いが、元より私の望みの為に入ったのだ、これ位はな。」

(答える言葉は、最早即答と呼べるほどに早い。
 そこには本当に色気も無ければ邪気も無かったが。
 少なくとも男のその申し出は、彼女にとっては嫌でも何でも無かった様だ。

 そこに別の感情が関わってくるのは、また違う、もっと先の話になるだろう―――)

923イグニス:2006/08/05(土) 16:46:38
>922
「好く生きよ……誰の言葉だっけ、昔誰かが言ってたのを思い出したな。」

(ノスタルジーに耽るような表情で僅かに笑い、カミュエルを据える)

「やっぱ、君を後悔させないように頑張らないとね。
 ただ道はそう、一つじゃないんだ。たまには誰かに振り回されるのも悪くはないと思うよ。


 さて――じゃあとりあえずはそうだなぁ…ご飯、食べに行こっか?」

(腕の時計を見て、自分たちが丁度食堂が空いてくる時間まで長々話していたことに気付き、じゃあと誘う)

924謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 16:52:25
>923
「問題無い、私は後悔しない為の自助努力を惜しむつもりは無いからな。
 それに、そうだな…ならばイグニスが振り回してくれれば良い、今の様にな。


 あぁ……もうそんな時間になってしまったか…
 随分と変わった余暇の過ごし方になってしまったな。
 それでは、行こう。」

(――そう言って、女は休憩室の入り口を開いた。)

925イグニス:2006/08/05(土) 16:58:58
>924
「あは、ごめんごめん俺話し出すと止まらなくてさぁ
 うんざりしたらお手元のSTOPボタンを押してね!
 …そんなもの無いので唇でふさぐという手段m(ry」

(入り口が開き、躍り出るようにしてカミュエルの前に立つと、
 やけに紳士的な振る舞いでエスコートでもしたいのか、よく動く。
 どうもかっこよさとは程遠いのだが、不思議と少しの笑みが浮かんでくるのははたして男の人徳だろうか)

「俺カミュっち同じのたーのもー♪」

(…考えすぎてもいけないのかもしれない)

926謳う者・カミュエル:2006/08/05(土) 17:05:10
>925
「分かった、五月蝿いと思ったらそうする事にする。」

(と、不用意な事を口走るとこの女は本気でこういう台詞を口にする。
 それも全く邪気の無い分、正に不意打ちだろう。
 尤も、それをこの女に指摘した所で、簡単には理解しては貰えないのかも知れないが。)


―――ネオ・バンガードとの決戦に赴くネレイド艦隊の日常は、こんな一幕を孕んで過ぎていく。

927椿@火星軌道上:2006/08/05(土) 21:22:57
 コロニーとデブリとで汚しつくされた地球の衛星軌道とは違い、
火星の衛星軌道なんてのはきれいなもんだ。
 へたった火星の重力にとらわれたついてない小隕石がときたま
浮かんでいる程度。澄み渡った熱帯の海のようにどこまでも深く、
宇宙の深遠まで見通せるようで──そいつが、やはり気に食わない。
 
 ろくに視界も通らない濃厚なガス雲の中を、痙攣する半死人じみた
具合にデータを小刻みに変動させる計器のデータだけを頼りにはいずり
回る、採掘船でのガス採集作業のほうが万倍ましだ、とも思う。
 こうも隠れる場所がない空間の中で、馬鹿面さらして哨戒任務なんぞを
こなすよりは、よほど。

 どうして、こうも心がひりつきやがるのか──いらつきやがるのか。
 いつものことだってのに、どうして今日に限って──
 
 周囲に敵影はない。熱センサーも重力センサーも太平楽に居眠りでも
決め込んでやがるのか、正常値を示したまま黙りこくってやがる。

 これが地球なら、俺は操縦をオートパイロットに切り替えて昼寝の
ひとつもしてやるところなんだが──
 ありとあらゆるセンサーをくらますステルス能力を備えている敵の
存在は、悠長にサボりを決め込む贅沢を許してくれるはずもない。
 
 くそったれ──つぶやきながら、全周囲モニターを間断なく
にらみすえる。はたからみりゃあ、薄ぼんやりと首を阿呆のように
ゆっくり振ってるだけに見えるんだろうが……熟練したパイロット、
それも宇宙空間での戦闘経験を積んだやつってのは、例外なく
とんでもない視野を持っているもので、俺もその例外じゃない。
 俺の視界は正面140度以上。頭の真横にある看板の文字を、
瞳を読まずに精読できてなおかつ模写だってできるぐらい、と
いえばそのとんでもなさが理解してもらえるだろうか。
 
 しかし、そいつは人にしてはすさまじい視野と言えるのかも
しれねえが、到底機械が備える人工の目玉、光学センサーやら
なにやらかにやらには及びやしない。 
 人の目には見えねえ光を見ることもできれば、重力やら
引力やら電子やらの得体の知れないもんまで見ることができる。
 そして、そのあまりにも偉大な機械の目玉がそろって役に立たない
以上。
 せいぜい正面のほとんどを網羅するのが関の山の、生まれたときから
備わってる低性能で難儀な目玉二つを頼みにして、いつ来るかもわからねえ
敵に対して備えなけりゃならねえわけだ。
 
 ああ、当の昔になれちゃいる。命をどぶにさらすなんぞ、生まれてきてから
100度どころじゃなく経験してきちゃいるんだ。

 だってのに、心がひどくざわつきやがる──

 いらつきのままにスラスターを噴射する。
 けれど馬鹿みたいに透き通った火星の周囲を満たす宇宙(うみ)は
ないだままで、まったく動きを見せようともしない。
 いやな凪だ──むかつきをこらえるように、小さくつぶやいた。

928視線:2006/08/05(土) 21:39:57
>>927
 映像に映し出された紫紺の無骨な機体を、男は唇を歪めて見据えた。
 メッサーラ。グリプス戦役時代に作り出された高速強襲用可変
機動装甲兵器。
 TMAとして最も早くムーバブル・フレームを搭載した、可変機時代の
魁とも言える歴史的モビルスーツであり──すなわち、この世界、この
時代にあっては博物館行きと呼んでもおかしくないほどの骨董品と
言える。

 おそらく、何らかの改造はされているだろうが、しかしそれも、
機体の限界を超える類のものではない。
 ザクほどにシンプルな構造を持った機体であれば、何らかの
新技術をその巨体の中に盛り込んで、現代の戦闘に強引に対応
させることもできようが、あの機体は最小限のサイズの中に最大限の
複雑さを盛り込まれている。可変機というものは、概してそういう
宿命を負っているものなのだ。
 
 ならば、戦力の程度も知れていた。 
 
「かぎまわられるのも詰まらん──
 
 ……シルを呼ぶまでもない。一息にけりをつけてやるか」

 男は部下たちに邀撃の命令を下した。

929椿@火星軌道上:2006/08/05(土) 22:05:30
 代わり映えのない、変化のない世界。  
 たとえ、機器のすべてが正常と訴えようとも。
 
 全てが移り変わり行くこの世界の中、何一つ
変化が観測できねえってことは──

 熱にも似た鋭く尖ったざわつきが首筋の産毛
を逆立たせる。 
 貫かれた、というイメージは同時にこの身を、
紫色した鋼の五体を旋転させている。 
 MA形態からMS形態への変形に0・5秒、しかして
その間にこの身はすでに戦闘動作へと移行している。
  
 サーベルを握り締め振るわれた右腕。
 飛沫のように飛び散る光芒に、一瞬後には己を
打ち抜いていただろうメガ粒子の凶弾が砕け散った
事実を見る。
 
 いまさらのように響き渡るエマージェンシーコール、
四方八方に敵影、その数は5。
 あるいはもっといるかもしれねえな、ミラージュ
コロイドなんて洒落たモノが横行するこのご時世だ。

 援軍は望めねぇ。おそらくは……やつらの光学偽装
迷彩空域に取り込まれただろう。

 俺の存在が消えたことを今この瞬間にドニーたちが
知ったとして、位置をつかむのにはとんでもねえ時間が
かかっちまうだろう。

 へ、上等……!

 目にはせずとも手は読める。
 敵の射撃の角度が、揺らめく宇宙塵の動きがおれに
敵の動きを伝える。
 
 振り向きざまの急降下、かちあげるように叩き込む。
 金属同士の衝突音、構成材がひしゃげ砕ける破砕音。
 見えてすらいなかった敵影を、拳が先に捉えていた。
 漆黒のバスターダガー。疑うまでもねえ、やつら以外に
こんな機体に乗るやつぁいねぇ。
 敵の胸部深くにまでのめり込んだ鉄腕を引き抜くために、
やつの脾腹の辺りに突き蹴りを叩き込む。 
 その反動すら利用して加速。
 次の瞬間俺がいたエリアを貫く無数の光芒に、改めて
自分が包囲されているという現実を思い知る。
 
 引き抜いた左拳を見つめてみれば、暗い緋色に染まっている。
一トン近い鉄の凶器にコクピットごと叩きつぶされたパイロット
の血がぐしゃぐしゃの構成材やらぼろ布と変じただろうノーマル
スーツの隙間からスプレーのように真空作用によって噴出して、
拳を緋色に塗装したのだ。
 
 こうなるとなかなか落ちねえ。け、クリーニング代は誰が
払ってくれるんだ?
 
 背部スラスターで全力推進を駆けながら、次の獲物を求める。
容易に逃がしてくれる敵じゃねえ、どうやって突破口を切り開く!

930視線:2006/08/05(土) 22:22:13
>>929
 惜しいな、と思う。 
 姿を完全に現す瞬間、敵がこちらを捉える前に
狙撃を実行しこれを撃破する。
 今まで失敗したことのない、失敗することなど
ありえようはずのない手を、メッサーラを駆る男は
たやすく打ち破って見せた。
 高速旋転しながらの変形、それと同時に実行される
ビーム防御を目的とした斬撃、そして迫っていた
機体に対してはビーム砲を構える間すら与えられて
いないと悟り、マニピュレーターによる打撃によって
これを仕留める。
 瞬間にこれほどの判断を下し行動を起こせるパイロット
などそうはいない。 
 おそらく、先の戦闘においてジェタン・タイプの最新鋭
機を駆っていた男だろう。
 なればこの強さも道理であり、理解できもする。

 手早くしとめる必要を、男は感じた。
 メッサーラはすでに部下の機体へと接近を開始している。
突破口を開くつもりだろう。

931椿@火星軌道上:2006/08/05(土) 22:38:33
 襲い掛かる無数の猛射。
 機体に備わる可変機構と無数のアポジモーターによる最小限の
機動で振り切りつつ、包囲を敷くバスターダガーの一機を目指して
突っ込んでいく。
 敵がライフルを構えなおすのが見えた。
 動きが早い。MAなみの推進力か。
 しかし再照準までに時間をかけすぎちまってる、それじゃ機体の
速さが帳消しになっちまってるって気づけよ、蛸!
 ビーム砲を照準、最速で照準するためただ機体そのものを狙う。
だが敵もただ浮かんでるわけじゃねえ。 
 こっちの一撃を避けるためにとっさにライフルを離しブーストしてやがる。
タマは奴ではなく奴の手離したライフルをむなしく貫くだけに終わった。
 いい判断だ、だが手の読みが浅すぎる!
 なまじ避けるために右方向に加速しちまうから、俺が懐に入れちまう
じゃねえか。
 ああ、サーベルを上段に構えやがった。
 ここは宇宙だぞ、地べたに敵を抑えておける地上たあ違うってのに、
そんな構えを取ってどうする?なんともまぁ地べたくせぇ、重力の
においが抜けねえ動きをしやがるよ!
 ほれ、こうして一瞬下方向にもぐる動作をするだけで奴の刃は
空を切りやがる。手首から内側に、俺のメッサーラは入りこんじまった
ぞ?振り切ってハラキリするように手首を寝かせりゃお陀仏だが、
そんな時間なんぞくれてやりゃしねえ、肘を折りたたんで奴の脾腹
めがけて肘うちを叩き込む、走った亀裂から盛大に推進剤が噴出した。
盛大に液体が噴出した反動で、敵が間抜けに空中をきりきり舞う。
そうだよなその動きの変わりよう、そこにてめえのプロペラント
タンクがあることはお見通しだ。
 宇宙ってのは機体の重量バランスと慣性に動きが大きく支配
されちまう場所だ、盛大に推進剤を噴射してれば機体が部分的に
軽くなっちまう分変化ってもんがどうしても出ちまうもんだ。
 ベテランクラスならその程度はたやすく見切っちまうことを
こいつはまだわかっちゃいねえ。
 かといって腕が立たねえわけでもねえってことは・・・・・・
宇宙の戦いに慣れてない、アースノイドのパイロットってこった。
ああ見ちゃいられねえ、自動補正プログラムなんぞでどうにかしようと
すんじゃねえ、とっとと推進剤タンクを閉鎖しちまえ、そうでねえと・・・・・・

 ほれ、こうやって下段からサーベルを切り上げるだけで真っ二つだろうが!

 そして、右から来てる奴ッ!
 味方をうたねえ角度から射撃なんぞねらうんじゃねえ、コースが見えちまう
だろ、タコが!
 修正代わりにビームキャノンを一発、それだけでもう奴は火球になって
派手に咲く。ぶった切った奴が爆裂する前に全速後退。 
 派手な閃光でモニタが真っ白に染まるが、てめえの目までくらむわけ
でもねえ、まして敵の配置なんぞ頭に当に叩き込んである、動き方から
癖まで読める。
 もらったようなもんな戦場。 
 
 だからこそ気にかかる、なんでこんな程度の敵に、俺はいやな悪寒を
おぼえちまったのか、と。


 その答えはすぐに訪れた。

932椿@火星軌道上:2006/08/05(土) 22:55:02
 刹那──

 嵐が吹き荒れた。
 敵の弱さに瞬間緩んだ俺の心をあざ笑うように。
 
 光と弾丸によって構成された暴風が、四方八方から。

 オールレンジ攻撃。
 多い、認識していた敵の数より。 
 ファンネルか?違うッ!!

 高速避退を実行しつつも右足が瞬時に焼け焦げ蒸発し飛散する、
艦砲張りどころじゃねえ圧倒的な出力のメガ粒子ビーム。
 奴らは囮で、主力がどこかに隠れていた──違う、敵部隊の
動きは、奴らの数が俺の捕捉した程度でしかないことを物語って
やがった、だとするなら──!!

 MA形態に可変、光芒によって描かれる幾何学的な立体格子
の中を駆け抜ける、そのうちのひとつにでも触れれば、あるいは
それを描く光弾に貫かれたなら至るのは疑いもないデッドエンド。
 踊る心臓が血液を吐き出しすぎやがり、ばかげた頭痛が目まで
もみしだく。
 限界を超えた機動ですら、奴が俺を追い詰めて行くのを俺は確かに
感じている。

 すべるように現れる巨大なモビルアーマーの姿。
 アルパ・アジールに似た無骨な形状。その胴体から
無数の死が殺到するのを予見してMS形態に変形しつつ
右スライド機動。
 片足がねえ分はAMBACで補うが、しかし殺気が右から
きてやがる、さらに後方に飛びのくが、死の気配は
退きやがらない。

 俺の機体を包囲していた「何か」が、MAに向かって
寄り集まっていく。

 頭、腕、両足・・・・・・

 冗談じゃ、ねえ。

 目の前にある機体は、伝説の闇の中に消え去ってしまった
はずのモビルスーツ。 
 一年戦争におけるジオン公国の決戦機、ジオング。

 しかしそのスタイルは、どこか丸みを帯びていて
ユーモラスささえ持っていたあのクラシックなモノ
ではなく、直線を主体として構成されている。

 かつて人類全てを敵に回して勝とうとした狂気の
国家が総力を挙げて開発した最強のニュータイプ用
モビルスーツ、その血を受け継いだ末裔は。

 その単眼に魂すら凍らせるような蒼い輝きを宿して、
俺のメッサーラを静かに見つめていた──

933視線の主@『ZEONA』:2006/08/05(土) 23:14:34
 無明の暗黒を背に滑稽なほどにもがき狂い飛ぶ紫の小鳥。
 しかしてその機動はあまりにも早くあまりにも鋭く、
正しく絶人の域へと達していた。
 感嘆と、哀れみと。
 絶対的な優位を確信するがゆえに、男は己の心にわいた
感情に酔う。 
 まるで思考が読めない。読もうとすれば虚無のような暗黒が
ただそこに横たわるばかり。しかしあの動きは無人機、たとえば
ゼファーファントムのようなそれではなく、明らかにうちにヒトを
宿したMSのそれだ。
 ならば、結論はひとつ。
「己の身肉を戦闘回路と変じ戦線の全てを認識するに至った
稀有、か。ならば読めぬも道理ということだな。
 それほどのパイロットならばこの手に落とすが望ましい。
 しかして──」
 この機体には。 
 企業好戦派が次世代用NT専用機として開発したこのジオナ
にはあまりにも無力。  
 男はアームレイカーを手繰り、愛機にビームライフルを握らせた。
通常火機といえど、巨体たるジオナが用いるそれの全長は軽く20
メートルを超える。

 矛槍を構えた神像のような、静けさに満ちた緩やかな動作で、
足掻くように離脱を図る機影めがけ、その砲門を照準する。

「シルが居る以上、無駄な手間をスタッフにかけさせるわけにも
行くまい。故に貴様の命はこれにて仕舞いだ」

 
 トリガーを、引き絞った。
 
 この世界の全てをなぎ払うような光芒が、宇宙を飲み込むように
して虚空をひた走り──

934椿@火星軌道上:2006/08/05(土) 23:20:56
>>933
 桁が違う。 
 この宇宙にあって己に匹敵するほどの技量を持つ敵が、
己よりはるかに勝る機体に乗り襲い掛かってきていると
いう現実に、心が凍り頬が笑う。
 どう足掻きどう逃れようとも敵の構えたライフルの
砲門が真円を描きやがる、高速機動でこんなにも視界は
かすんで揺れ動いてやがるってのに、砲門だけがそこに
掘られた黒穴のように──
 それが意味するものが確実な死であることなど
椿は当に理解している、だからこそ足掻き、足掻いて、
もがき、もがいて──
 弾丸を見苦しく撃ち放ち、そして全てのビーム砲を
照準して打ち放ち──

 その全てとともに、巨人の構えたライフルが放った
光芒に、男の意思は飲み込まれていった。

935視線の主@『ZEONA』:2006/08/05(土) 23:26:43
>>934
 命中を確認する。 
 煮え崩れたようになったそれはもはやMAともMSとも
呼べず、残骸とすら呼べぬ何かへと成り下がる。 
  
 埋葬者に匹敵するであろう実力を備えた敵であろうとも、
この機体の前にあっては四肢を損なった鼠にも等しく討たれる
のみ。

 既に確信していたことが現実になったところで、別に
男はどうとも思わない。

 ともかくも、奴がフォボス近郊に迫り情報を収集することは
もはや不可能となったわけだ。

 惜しい、とはおもう。買いそびれた玩具が翌日ショーケースから
消えていた程度には。
 
 最も、玩具は足りているのだ──あの美しく哀れな突き錐シル。
手篭めとする鳥は一人でいい、ましてそれが美しい女性であるのなら。

 男は彼女の肉体を思いながら、部下たちに帰還を命じていた。


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