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多目的六式

1名も無き生徒:2005/11/27(日) 01:26:42
舞台は何時かハネるモノ
されどこの物語は終わらないだろう

ソレはともかく多様なスレッド

1337ドニー・レイド:2006/01/30(月) 22:26:28
>1336
(イグニスが格納庫にやって来ると、どうにも様子が何時もと違う。
 整備員達は何時もの様に、格納庫のMSを整備しているのでも無ければ、
 勿論暇を持て余しているのとも、違う。
 何やら見慣れない、大小のコンテナを取り囲み、怒号と喧騒の中で
 自分達の仕事に奔走している、そんな感じだ。)


「来たなイグニス、何とかお手つきになる前に間に合った様だ。
 早速だが…お前に紹介したいコってのはな、アレだよ。」

(直ぐに声をかけて来たドニーが、そう言いながら親指で指し示すのは、
 格納庫の中ほどに位置する巨大なコンテナ。
 MS用の駐留スペースに置かれているという事は、相応の物なのは分かるだろう。
 ましてやご丁寧に、その表面に施された塗装は他のコンテナとは、違う。)

1338陽気なイグニス:2006/01/30(月) 22:35:54
(スロープを伝って数分後、格納庫に男はやって来た。
 入ってみてまず気付いたのは前に来た時とは違う格納庫の雰囲気。
 何やら忙しそうなメカニックたちの様子を尻目にすすーっと中央まで流れて来たところで自分を呼び出した張本人、ドニー・レイドの姿を認める)

>1337
よう、ドニー。
んで俺好みのカワイコちゃんって――

(彼の親指に促され、視線を移す先、男は感嘆入り混じった声を漏らす)

――ひゅぅー、豪華なショーケースじゃん。
さてどんなドレス着こなしたコかな?

1339ドニー・レイド:2006/01/30(月) 22:39:34
「まぁそうがっつくなよ。
 …もう作業が終わる頃だ。」

(と、イグニスのその言葉に呼応する様に…その白いコンテナは開かれる。
 作業用重機がコンテナの壁面を展開し、現れたのは…巨大な、
 そう、MSとしては非常に巨大な、ライトグレーを基調とした…重MS。)

「…MSN-04=Type:E、通称…ナイチンゲール タイプ【エニグマ】。
 中央技研のとは違うが…AEMA技術陣が開発したNT向けの強襲型MS。
 俺のレイヴンの兄弟機だそうだ。
 しかもご丁寧に名前は【エニグマ】……全く、因果って奴かね。

 という訳だイグニス、お前…これに乗れ。」

(何ともあっさりと。
 まるで学友に課題を写させる学生のごとく、ドニーはさらりと言い放った。)

1340陽気なイグニス:2006/01/30(月) 22:49:51
>1339
(目の前で展開されたコンテナの中に鎮座する、
 その圧倒的な姿を見つめ、男は唾を嚥下した)

ナイチンゲール・エニグマ、ねぇ……
確かに俺好みのなんとも脹よかなグラマラスボディだ。
淡い灰色のドレスが眩しい……確かに因果だね。色々と。

…って、確かに俺ぁ来たときにインビ無くしちゃいるけどさ、
ワートホッグだっけ?あのコ貰えるって話になってたと思うんだが、
このコはどうみてもワンオフの専用機です、本当に良いのかよ?

(と、機体とドニーの顔を交互しながらやや遠慮がちに言う)

1341ドニー・レイド:2006/01/30(月) 22:59:08
>1340
「…元々、このエニグマはこの艦隊への補給品なんだがな。
 機体そのものはAEMAの物だ、パイロットも強化人間の少女が一人。
 だがお前が来る直前の宇宙嵐、アレで乗ってたコロンブスごと沈んじまってな、
 パイロットが居なくなっちまった…という訳だ。

 だからと言ってデブリピープル達では扱える人間は少ないし、
 機体を遊ばせておける程の余裕も無い。
 埋葬の連中は皆が皆、自分の専用機に慣れているからな。

 という訳で、ここに至り俺の職権とマリアの命令権を行使した。
 お前以外に適任者が居ないのなら、お前が乗る以外に無いだろう?

 それにだ、この機体は元々レイヴンとの共同運用が想定されてる、
 単機でも強いが、いざという時…俺達の方がやり易いだろ。」
(と、格納庫のハンガーへと係留され始めるエニグマを横目に見ながら。)

1342陽気なイグニス:2006/01/30(月) 23:07:54
>1341
マリアちゃんはともかく、随分と偉くなったもんだよな、お前。
まぁー別に良いんだけどさ。

そっかぁ、これに乗るはずだった女の子はもう居ないのかぁ。
なんだかそーいう話を聞かされるとやっぱ切なくなるよな、少し。

余裕無さそうなのはなんとなく解かるし、
このコが強いコだってのも勿論だ。宝の持ち腐れは良くない。
それでいてその運用思想だろ、んじゃ俺が乗るしか無さそうってコトじゃねえかよ。

(鼻下をぐしぐしとこすってニヤっと笑う)

“謎”に包まれたカワイコちゃん、
その女の子に代わってこの俺イグニスが、
見事乗りこなして見せましょうじゃないですか!

1343ドニー・レイド:2006/01/30(月) 23:13:51
>1342
「仕方無いだろ…これでも軍監なんだからな。
 それにお前が来るまで正規軍は俺一人。
 …木星帝国総帥と謁見だぞ、俺がAEMA代表として……信じられないっての。

 あぁ、俺達より少し若い娘だった。
 余り会話は出来なかったが……何ともな。
 だが…な。」


「よし、そうと決まれば、だ。」
(と、何処から取り出したか…やや厚めの電子ファイルを取り出して、イグニスに押し付ける。)

「可愛い子とのデートは少し待ってろ、これから彼女は整備に入る。
 少し話したい事もあるからな、俺の部屋まで来い。
 そしてお前はそれ(ファイル)を見て、設計をガッチリ把握で問題無しだ。

 頑張ってくれよ?元中央技研テストパイロット殿。」

1344ケイル・クラウゼン:2006/01/30(月) 23:19:11
>1341-1342
ほほう、これはこれは。
エニグマ、即ち“不可解”か。

外観からざっと伺うに遠隔操作端末と、
あれはシークレットアームシステムの機構だろうか。
対応レンジも広そうだ、それ故に相応のサイコ・リンケージ能力が必要とされる。
うん、元機の理論の発展としてはまずまずの形態美ではある。
良いスレイブだと思うよ。

あれに、君が乗るようだね。

(ふと気付けば二人の近くまでその青年はやって来ていた。
 ハンガーに掛けられた重MSを値踏みするように見つめた後、
 彼はドニーに会釈し、イグニスに話し掛ける)

1345ドニー・レイド:2006/01/30(月) 23:31:10
>1344
「基本的には、ナイチンゲールの純粋な発展型だ。
 更に言えば、遠距離戦能力にやや劣る代わりに…
 それを補って余りある重装甲と高機動力。
 俺のレイヴンは全距離対応だが、こればかりはどう足掻いても勝てん。
 機体特性は…コイツなら問題無くこなせるタイプだろう、な。」

「(…委員長なら、多分乗りこなせない機体特性だ。)」


「椿は行ってしまったが、貴方は行かなくて良かったのかな?
 尤も、捕虜である貴方の艦外行動許可は、俺の一存では許可出来ないが。」

1346陽気なイグニス:2006/01/30(月) 23:31:20
>1343
その子の分も暴れてやるさ、
でもその子は魅入られる前に解放された、そんな気がするぜ。
このエニグマからもやっぱり少しヤバイ匂いがするからな。
俺でなきゃダメだろうぜ。

しかしなんかお前さ……ストレスでちょっと頭、キはじめてないか?
(と茶化した所で電子ファイルを渡され)

…ふぃー、毎回思うんだけどスペックファイルと運用法解説書を読まされる時が一番だるいだよなぁ
技研のテスパやってると見飽きるぜ、こーいうのさ……

んーじゃあ、お前の部屋で勉強会かな。酒持ち込んで良い?

>1344
(と、酒を飲む仕草をしたところで
 声を掛けられビクゥと面白い反応をする男)

うおいつの間に!?

うん、まぁそーいう話になったんだけど…
(下から上に視線を動かし、顔を見た所で微笑まれ、またビクつく)

あんた変わったカッコだよね、
ここの乗組員のじゃないし、AEMAでもないし、木星のでもない。
えーと、それなりの観察眼持ってるあなたはだーれ?

あ、俺?
俺はイグニス、AEMAのイグニス。よろしく!

1347ドニー・レイド:2006/01/30(月) 23:39:54
>1346
「こんな時代だからな、あの娘が幸せだとは判らないが…
 お前の言う事も、判らんでも無い。

 ヤバイ匂いのしない兵器なんて無いっての。
 "見て"みろよ、この格納庫の中を。」
(――見渡せば、そこにあるのは兵器。兵器、兵器。
 何れも何もかもが、悪意の象徴であるとと同時に、ここの人間の生活の一部。

 ヤバイ匂いもするし、微笑ましい気もする。
 そんな中で、AEMAのMS達は…浮いていた。)

「まぁ…キてないっつったら嘘になるかもな。
 一度死に掛けてからこの方……感応波って言うのか?
 あれのおかげで、最初は結構キツかった。今は平気だがな。

 …あぁ、酒なら問題無い。
 というぁ酒保には出入り制限食らっててな、届けだけ出して俺の部屋で飲んでる。

 …あぁ、彼は……椿と同じだよ。」

1348ケイル・クラウゼン:2006/01/30(月) 23:40:03
>1345
確かにあまりスマートな印象は受けないが、
乗り手を選ぼうとする機体は嫌いでは無いよ。
相応の手綱をもってして屈服させる悦びはパイロットの特権だね。

ああ、椿君は好きにしているようだね。
僕も条件付でなら許可は下りているから、もしかしたら君たちと同行させてもらうかもしれない。
その時はよろしくお願いしたいね。

(不敵に笑って男は言う)

>1346
ケイル・クラウゼンだ。よろしくね、イグニス君。
僕は企業兵でね、椿君の、
そうだな、一応上官というポジションなんだよ。
ここの人々は捕虜に対しての扱いがずさんな程に寛容でこうして出歩く事も許されているんだ。
良い所だよ、悪くない。人間模様を観察するだけでも大変に有意義だからね。

1349陽気なイグニス:2006/01/30(月) 23:56:10
>1347
なんで戦うってのは人それぞれだしな、
ただ好き好んで戦って欲しくは無いってコト。女の子には。
しっかし、俺なんかは碌な死に方しないと思うぜ。
好き勝手やってるわけだし、止めようとも思わない。
誰か助けたかったら助けるし、気に入らねーのはぶっ飛ばす。好きな子には告る。
まぁ元々は戦争とは一線置いたポジションだったんだけどな、テスパだし。

俺の場合、ある程度デンパ制御出来るみたいだから
要らない時はシャットダウンしてるよ。
お前より苦労はしてないなぁ。うん、ご苦労さん。

制限受けてるって・・・・どんな愉快な呑み方したんだよ。

>1348
(ドニーと見合わせて)
へぇ、平ちゃんのねぇ…

(再び目の前の青年を見つめる。
 見つめればある程度その人間のイメージを掴むことが出来る、
 それがイグニスの特技であったが、)

【……なんだこれ、】

(その男の印象だけは奇妙、としか表せなかった)

1350虎使い:2006/01/30(月) 23:57:58
>1346
(そのファイルの上にさらに積み重ねる)
ごめん、エラッタが出た。
これがサイコフレーム・インジケータのでこっちがビームライフル。
こいつは出来立てのファンネルポッド・リファレンスと隠し腕アプリの修正OS用FAQ。
おまけでアンチビームコーティングの取説もね。(容赦なく押し付ける
>1347
(黒虎ぐらいになると、存在感と殺気が絶妙な混ざり具合だったり)
>1348
……捕虜って、こんないい加減な扱いしていいんですか?(誰に対する質問だか

1351ドニー・レイド:2006/01/31(火) 00:02:56
>1348
「むしろこれは強襲型というよりも…突撃型、だな。
 あの背部のファンネルポッドは…クロスボーン・ガンダムタイプの
 バックパックとも、通じる物があるとは思わないか?
 スカートの所為で、上手くは伝わらないかも知れないが…。

 尤もこの艦隊には…MSはえらく乗り手を選ぶのと、全く選ばない物の二種だけだ。
 全く以って…贅沢な実戦部隊だよ。」
(格納庫の端に放置されている、クィン・マンサのパーツの一部を見ながら。)

「…そうだな、おとなしくしていてくれるのなら。
 それでいてゼダから許可が下りるのなら、俺は何も拒む理由は無いな。了解した。」

(その不敵な笑みに答えるように、対するこちらは…隙が無い。
 口調や、その内容こそ軽い物だが…
 意識に、心に、隙が無かった。)
>1349
「だろうな、別に性意識なんてものを差別する訳じゃ無いが…
 異性同士が、同じ戦場に立ってもロクな事は無い、俺の経験上な。

 俺はその点、食う為に前線でもパイロットやってたクチだからな…
 時々、この場所でそういう事言えるお前が羨ましくなるぜ?
 それと、俺も今では制御出来るようになって来たさ。
 …流石にタレ流しじゃあ、マリアと一緒に仕事が出来んしな。」


「…ん、あぁ……マリアと椿とな、三人で死に掛けた。
 その辺りの事も、後で話してやるよ。
 ……どうせ、二人とも留守にしてるんだからな。」
「(――それと、多少は俺の事も話しておきたい。)」

1352ケイル・クラウゼン:2006/01/31(火) 00:20:19
>1349
皆、僕の事はよく解からないと言うよ。
でも表面だけを見ていれば上手く成り立つ利害の関係、それで十分だとは思わないかな?

話が逸れたね、改めてよろしく頼もう。

(男は、笑う)

>1350
何をするつもりも無いのだから問題は無いと思うけどね。
それに、変な気を起こしでもしたらマリア嬢が気が付くと思うよ。

ふふ、安心だね。

(その穏やかな微笑みは完璧ともいえる造形で)

>1351
彼のスタイルはなんとなく想像がつくよ。
相応の能力も持ち得ている。君も信頼しているようだし、ね。

…しかし興味深い。
二度と企業には戻れないと割り切って見れば全てが愉しく映るよ。
こうでもならなければ見られない場面だろうしね。
あとはクラックス・ドゥガチと謁見叶えば快挙だろう。
椿君はすでに果たしているようだがね。

(その男はドニーの中に据えたそれさえを見越した上で微笑んでいるように見えた)

さて、君たちは部屋に戻ってやらねばならない事があるのだろう?
すまなかったね、呼び止めるような事をしてしまって。
それではまた逢おう。

それと二人とも、アルコールは優雅に呑むものだと思っているよ。
何事も程ほどにね?

(くすくすと、まるで少年のように男は笑い、手を振って去ってゆく)

1353陽気なイグニス:2006/01/31(火) 00:28:48
>1350
(不意に掛かる精神的重圧)
ぐをー

ミッキー容赦してミッキー

>1351
戦場で生まれるラブロマンスには寛容な男だぜ、俺は。
ドラマって良いよな、燃えるような恋がしたいぜ…

まぁ制御なんてのは要は思い込みよ。
聞こえない聞かせないと思ってれば抑えられたりするもんだぜ。多分。

本当に愉快だったみたいだな、てかへべれけマリアちゃんだと!?
くそ、拝みたかった……!!ドニー、絶対詳細を寄越せよ!?
(心底悔しそうに男は唇をかみ締める)

>1352
(その微笑に寒いものを感じ、男はぎこちなく笑い返す)

……よくあんなの野放しに出来るよな、
ていうか、よく捕虜に出来たっていうか……

まぁ、今は悪いやつじゃ無さそうだけどさ。

(男が去ってから、そうつぶやいた)

1354虎使い:2006/01/31(火) 00:34:58
>1352
マリア様が見ている、ですか……
>1353
これでも分量半分にしたよ。

……人間の怖いところ、全部見てきているって感じだよね、あのケイルって人。

(彼らを見送りつつ)

1355ドニー・レイド:2006/01/31(火) 00:40:33
>1352
「互いに、信頼っていうタチでも無いとは思うがね…
 まぁ、別に否定する程間違っている訳でも無いが。

 それに、そんな愉しみ方の観点で言えば…
 ヒトの人生に、哀しい事も何もかも消えてしまうのだろうな。
 どんな出来事も、その時その時に至るまでの結果の積み重ねなのだから。

 …俺が会えた位だ、もしやという事も…無いとは限らないのかも知れないな。」


「……………(…しかし、聞かれていたか。)」
(そしてアルコールについては触れる事無く、去って行くその背中を見送る。)

「……どうも企業の人間と話すと、調子が狂うな…」
>1533
「全くだ。
 俺もこの仕事始めてから、そんなモンにはお目にかかった事が無い。
 …羨ましい限りだよ、現実にそういう連中は居るんだからな。

 あぁ、俺も面白い位に記憶が鮮明だからな…絵に描ける位だ。
 どうせ今は鬼の居ぬ間に…って奴だ、教えてやるとも。
 それでは…行くとしようぜ、士官室だからな、一緒に来いよ。」
(詳細提供確定済。
 思いっきりニヤリと笑って、ドニーは格納庫の出口へと歩いて行く。)

1356陽気なイグニス:2006/01/31(火) 00:51:39
>1354
む、そうなの?
じゃありがとミッキー大好きだよミッキー。

(と頭下げまくってからふとシリアスな顔になる)

…企業の暗部ってのはやっぱあって、
それは俺らには到底計り知れないのかも知れないね。

>1355
しかしお前は固すぎるぜ、
かわいい子見付けたら告ればいいのよ。
相手は案外待ってたりするかもよ。
そいや訓練所時代でもお前結構影で女の子のウワサになってたなあ。
一緒になって輪に加わって質問攻めにあったからわかる。
この、隅に置けないからこそ憎らしい!

うひょー、超楽しみなんですけど…!
行こう行こう、鬼の居ぬ間にレッツゴー♪

じゃね、ミッキー。
多分機体のシステム周りの事で相談するかもだからその時はよろしくね!

(虎使いに手を振って、陽気に鼻歌を口ずさみながらドニーに続いて格納庫を後にする)

1357回想:2006/02/04(土) 21:29:59
 闇の中奇妙に茫漠とした感覚。
 このセカイが夢でしかないことが、それのみをもってしても知れる。
 だが夢の中にあるものにとって夢は現実と同一のものに他ならない。
 
 夢。
 それは過ぎ去った物語。
 もはや現実に幾ばくかの影響をも与え得ぬ、忘れかけた過去の具現。
 まぶたを開くとともに消え去り行くサダメの、春の淡雪に似て儚い
物語・・・・・・・

 



          過ぎ去りしセカイ、消え去りし想い



コズミックイラ歴0071年2月14日 ヴィクトリア宇宙港近郊

 砂漠は太陽の光に焼け爛れ今日も陽炎が揺らぐ。
 砂を存分に吸い込んだ砂が人を家を機械をすべからくさいなんでゆく。
 科学技術が極限とすら明言できるほどに発達した今日でさえ、砂漠の
酷薄な環境は人間を常にさいなみつづけていた。
 
 その女は、昨日ZAFT軍の手に落ちたばかりの市場を、興味深げに
見まわしているがために浮ついた足取りで街路を歩いている。

「xxx、地上の街というのは、プラントのそれとはまったく違うのですね」

 ため息混じりの言葉さえ、幼い。

1358TIPS「問い」:2006/06/23(金) 22:27:37
 部外者が踏み込むべきではない。
 わかっている。
 だがここは戦場だ。
 彼らの行動こそ私怨に汚れているとすら断じられる。
 
 けれど砲術長は私を止め。
 そしてフリエも歯をきしらせながらヘルトとグレイ・フェイクの
戦いを見つめている。

 見守るしか許されぬというのか、この状況で。
 あの「敵」の戦闘力は異常と言っていい。
 グレイ・ドールの精神強化、そして私の「闘争凱歌」を受け
強化された戦闘能力をもってして互角、あるいは上回るほど。
 埋葬者以上──これが、「ドールス」の「人形」たるものの
本当の戦闘能力なのか。
 
 恐るべき存在であり、妥当すべき存在であり、撃破すべき対象。

 彼は、何を思っているのだ。
 ふと、思う。
 
 このアークエンジェルを守らせしめるほどの判断速度を
与えたのも彼なら、少女に男と戦うだけの力を与えたのも彼。

 ならば、「真作」たる彼は「贋作」を前に戦う「少女」の
ことを、どう見ているのだ──

 少女は、「彼」と繋がっていた。
 なぜなら、彼が成す「奇跡」は、彼女の能力を利用して
なされたものなのだから。
 故に、彼女だけは、男がたとえ意識を失っていようとも、
問える。問うことが出来る。精神的に同調しているが故に。
 夢にも等しい情景の中を踊ることが出来るのだ。
 ゆえに、問える。
 
 そう、しかしそれは言葉としてのやり取りではなく、

 夢と夢が重なり合うような──

              ・

              ・

              ・

 格納庫。
 戦いの前。誰もがそこで語り合い、叫びあいながら、
成すべき戦支度に奔走していた。

 だから少女はそこを舞台に選んだ。
 
 ヘルト・ヘンリーが、走り去っていくイメージを投影。

 男の意識に、それを見せる。

 ヘルト・ヘンリーの言葉は「おとおさん、がんばってね♪」

 そして、私がゆっくりと近づいていく。
 ずっと少女と男の語り合いを見ていたように。
 男は少女と語り合った内容を覚えていない。
 なぜならこの会話は私が作り出した幻想、夢に限りなく
近い何か。
 夢に限りなく近いからこそ……男は、この異常をきっと
怪訝に思わない。
 だから、私は近づいていく。
 さあ、語りかけよう。そして、問いをはじめよう。

「仲がよろしいのですね?グレイ・ヴィクトリア教官」
 初めてであったかのように、私は彼に語りかけた。

1359TIPS「問い――」『真作』たる灰色人形:2006/06/23(金) 22:44:44
「…これは恥ずかしい所を見られてしまったかな。
 あぁ、自慢という訳でも無いが…そう言って貰えると嬉しい仲だ。」

そう、それは言わば現世の夢だ。
心が繋がった中で交わされるそんなやりとり。
しかし男は其れと其れと知覚せず、ただ有りのままに、自然の物として受け入れて。
そう、それ故に男は何も、疑問には思わない。

「――さて、こんな時に俺の元へ来るという事は。

 何か、俺に聞きたい事があるのかな、お嬢さん?」

1360 TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/23(金) 22:56:48
>>1359
「初めまして、エルフ・ムラサメと申します。
 ブルーアース軍上層部からの出向命令により参りました。

 ……あなたのことは、資料を読んで知りました。
 そして、彼女のことも。
 
 グレイ・ヴィクトリア。
 あなたは、あなたの『娘』が戦場に赴くことを、
どう思っているのですか?」

1361TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/23(金) 23:02:19
「あぁ、始めまして。
 ――どうにも初対面の気がしないんだが……まぁ、気の所為か。」


「…参ったね、いきなりそれを聞かれるか。

 正直に言えば、勿論嫌だよ。
 あの娘が出たいと言っていて、そしてあの娘にそれだけに理由があって…
 それを俺は、自分には止められない等と言ってはいるが……

 …だからと言って何処の世界に、自分の娘を戦場に送りたがる親が居る。」

1362 TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/23(金) 23:09:59
「では、何故。
 送り出すのを拒む心がある。
 けれどあなたは、送り出すつもりでいる。
 いえ、同行するのでしたね。
 では、あなたはあの少女に何かがあったとき、
万難を排して少女を守るつもりでいると。 
 だからこそ、彼女が戦場へと向かうことに
同意したと──そういうことなのですか?」

1363TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/23(金) 23:19:33
「うん、勿論そういう面もある。
 だがそれだけかと問われると、違うな。」


「…現実的に考えて、俺は何時もあの娘の傍には居られない。
 今までだって、俺が先に落ちてしまった事は何度もあった。

 ……だから、あの娘には俺が出来る限りの備えはさせている。
 生き残る為の技を授けたし、教官としての訓えも説いた。
 彼女には俺以外にも、共に戦う仲間も居るしな。
 今のあの娘は、自分の身は自分で護れる。」


「……まぁ俺も、あの娘が"誰かに傷付けられる事だけは許せない"。
 そういうクチだからな、俺に出来る事なら、どんな助けでも全力でやる。

 少し屈折しているのは理解しているが、親というのはそういう物だろう?」

1364 TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/23(金) 23:29:51
「そう、あなたはあの子を、確かに育て上げた。
 自衛が叶うほどに。凡百ではけして及ばぬほどの戦士たるほどに、
彼女をあなたは育て上げた。

 けれど、矛盾がある。 
 そう、あなたが父であり、彼女が娘であるからこそに生じる矛盾が。

 "誰かに傷付けられる事だけは許せない"

 だから『俺に出来る事なら、どんな助けでも全力でやる』

 そう、あなたは、彼女が貴方の娘であるが故に、貴方が
成すべき貴方の戦いへ全力を投じえない。
 彼女が戦い続け、彼女が危地へ陥るなら、貴方はきっと彼女のために
動く、たとえその動きが貴方に致命の傷をもたらそうとも、貴方は
きっとそうしてしまう。

 それは貴方が自ら課す呪いにも等しい束縛。 
 そして貴方という最大戦力の一つが、その呪いに束縛されること
こそ避けるべきこと。
 
 そして、彼女は誰もに愛されている。
 彼女のために命を捨てても惜しくないと感じるような戦士は
けして少なくは無い。
 
 そう、それは愛という名の呪いに等しい。
 
 未熟者を護らんとするためにベテランが命を失うなど、敗軍同然の
在り様。いたずらに戦力を失うだけ。
 彼女を戦列に加えることに、私はデメリットしか感じない。
 あまりに彼女は、あなたがたにとって「特別』な存在でありすぎる。
子供というのはそういうものだ。誰にとっても「特別」なもの。
 護るべきもの、愛するもの。剣として戦場に赴かせるべきものでは
断じてない!
 彼女を「護りたい」と思うなら、彼女が何を思おうが彼女を安全な
場所へ送り届けるべきではないのですか!」

1365TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/23(金) 23:48:12
「そう、俺の様な生き方を選んだ者にとって…
 強く想いを寄せる相手が居ると言うことは、言わば呪いだ。

 確かに俺は彼女の為ならば、自分の命も天秤に乗せるだろう。
 或いはそれが叶わなければ、俺は自分自身で全てを壊すかも知れない。
 これはそういう呪いだ。」


「うん、君の言う通りに…彼女を安全な場所まで送り届ければ、
 そんな呪いも、表立っては消えるだろう、何故なら護りたい相手が居ないのだから。

 だがな、それでは彼女の命は護れても…俺達では、彼女の心は埋められない。
 だから俺が居るんだよ、"父親"という存在が彼女を護る。
 俺が彼女を護る限り、誰かが彼女を護って死ぬ事は許されない。

 …知っているだろう、俺達はそんな無理を通して道理を黙らせて来た者達だ。」

1366TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/23(金) 23:53:24
「傲慢だ……それは、傲慢です!」
  
 我知らず、叫びを以って応えていた。

「貴方は、傲慢です!
 彼女を護りたい、けれど、彼女はそれでは納得しない、
だから彼女は戦場に赴かせる。
 けれど彼女が死ぬ危険性は承知している、だから貴方は
彼女を護る……
 何の確約にも、なっていない!
 貴方は、そのためにこそ戦場で落ちるかもしれないというのに──
だからこそ私は問いを発したのに、応えにすらなっていない答えを
貴方は返す、平然と!
 無理だが無理を通して見せる、そんな言葉で納得しろと!?」

 違う。
 私が言いたいのはこのような言葉ではなく。  
 それはきっと。 
 それはもっと。
 
 そう、それは──
 あの、少女の背中に見えた──

1367TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/24(土) 00:28:21
「あぁ、納得しろ。
 傲慢で、矛盾だらけで勝手な理想。
 悪いがそれが、俺にとっての理想だよ。

 …第一、こうして此処に居るのなら、君は俺の事を知っているのだろう?

 そして君にも分かるだろう。
 俺の様に、かつて人間として扱われなかった者にとって家族という存在がどんな物か。
 軍に居る君にとってはさぞかし理不尽だろうが……

 俺のような"人間"は、そんな傲慢な言葉で命が張れる。
 一つの愛する物を守る為に、他の百を殺せるのが、俺という人間だ。」

ムキになっていると、自分でも感じている。
その理由が分からない、自分の知らない自分の感情が、
必死になって"その言葉を貫け"と訴えているかの様だ。

一体何故なのだ、何故俺は、こうも自分自身の心が痛む――――?

1368TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 00:38:30
「傲慢だ、と私は言いました」

 分かっている。人ごとだ。
 けれど、私は知っている。知っているのだ。
 ただ、投影してしまっただけの彼女の姿。
 
 そこに、自分の姿を見てしまったから──

「貴方は、彼女を大切にしている。
 想っているように言葉を重ねているけれど」

 傲慢だろう。こんな言葉を、彼のことも彼女のことも
よく知らぬ私が問うのは。

 けれど、私はこの言葉にこの感情を覚えてしまった。
 感応状態にある以上。
 私は高等な嘘などつけはしない。だから、感じたままに
言葉を走らせる。

「貴方が発した言葉、そのどこをさがしても、あの子が居ないじゃないですか──」

 大切だから、大事にしたい。
 宝物のように、守り抜きたい。
 愛してあげたい。
 護りたい。
 それはとてもすばらしいこと。

 でも、けれど──

 そこに「彼女が何を想っているか」という想いを、見つけることが
できなくて──

1369TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/24(土) 00:49:41
「悲しい事でな。」

今の言葉で、一つ分かった事がある。

「俺に限らず、多くの人間は、人の考えている事が分からない。
 確かに俺達は、互いの事を理解している―――つもりだが、
 互いに何を考えているのか、何を想っているかは分からない。」

其れは正確に言えば、自分だけの都合だろう。

「独り善がり、なんだろうな。
 だがそれでも、俺は彼女の事を命に代えても護りたい。
 恐らくそれは、彼女が何を望んでもきっと消えない想いだろう。」

無論、彼女が止めてくれと望めば、もしや自分は其れすら止めるかも知れぬ。


「だから俺は、彼女にそれを尋く事は止めた。

 悲しい事でな、愛するという事は、そんなエゴを肥大化させる事だ。」

1370 TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 01:08:06
 違う、けれど違わない。
 言葉によって成るものではなく。
 よってこれはきっと問うべきではなかった。
 
 エゴといわれるのならば、私が今問うことこそエゴだ。

 答えを求めていたのは、私だったのだ。

 そう──あの日、私に「生きろ」と告げて死んでいった人たちが、
私にいかなる思いを抱き、いかなる想いを抱いて去ったか──
 
 それを、きっと彼に見ることが出来ると想ったから。

 それが、こんな「押し付けがましい」愛情だなんて、
想いたくは無かったから。
 私は、きっと仲間と認めてほしかった。
 あの船が。レッドスペースとの戦いで沈んでいった
あの「ドミニオン」こそが私のあるべき場所で、私が
『ドミニオン』に不可欠な存在であるからこそ、私は
その一つとして死んでいきたかったのに、私は
『ドミニオン』から切り離され、生かされた。
 私だけを残して、みんな死んでしまった。
 生き延びるというのなら、みな生き延びてくれれば
よかったのに。
 みな、私たちを生かすために死んでしまった。
 生き延びたモノが、生かされたものが、どんなにつらい
思いをするか、どれほど悔しいか、どれほど辛いかを
知りながら、勝手に死んでいったのか、あの人たちは。
 
 けれど──
 そう。少しずつ、見えてきているような気がした。
 そう。
 
「あなたは、答えをまだ返してくれていない。
 あなたが言ったのは、『娘が闘いに赴くのなら、娘を全力で護る』
 ただ、それだけ。
 あなたが答えた『娘が戦場へ赴くことを喜ぶ親が居ない』という
言葉との間には、明らかな欠落がある。


 娘が戦場に赴くのは喜ばない。


 けれど、赴くというのならば全力で護る。


 喜ばないというのに、何故貴方は彼女が戦場に赴くことを認めるのです」

1371TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/24(土) 01:26:57
「……彼女は、な。

 数年前、幼い時分から一緒に暮らしてきた、大事な友達を失った。
 その時の落ち込み様と言ったら凄い物でな。
 それ以後、彼女は自分で、今度こそ大事な友達を守ろうとし始めたんだ。

 彼女は戦場に出て、養成所に居る他の大事な者達を護ろうとした。
 それは何も悪い事ではない、だが君の言う通りに…それは危険な事だろう?
 だからと言って、それを俺が止める事だけは出来なかった。
 それを今、止めさせてしまっては……彼女は只生きているだけの存在になってしまう。
 俺はそう思っていたんだ、人間が何かを護るには、何かを賭ける必要があると思っていたしな。


 だから俺は力を授けた上で、彼女が戦場に出る事を認めた。
 彼女が、俺が戦場に出る事を許している様に、だ。」


「…無論、俺とてこうして戦場に居る以上は…
 あの娘以外の誰かからも、そんな思いを託されているのかも知れない。

 尤も、それは君にだって言える事だが、な。」

1372 TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 16:52:57
>>1372
 得るべき答えの、一つは得た。

 だから、そろそろいいだろう──
 彼もまた真実を、己の力と私の力を通じて察知しているはずなのだから、
問うてしまってもよいのだろう。

「けれど、あの子は──」

 そう、護るべきものとして、彼女が見定めてしまったものは。

「己を殺そうとする敵、それも人にして人にあらざる贋作をすら、
救おうとしてしまっている。

 貴方が力を貸して下さるのなら、私は全力を持ってあの恐るべき
敵を邀撃してみせる。
 けれど……誰もがあの敵を、あなたの贋物に過ぎぬものを
『撃つな』という。
 
 それが、私には分からない。

1373TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/24(土) 17:04:08
「あぁ、今なら君の言うそれがどういう意味かよく分かる。
 それはな、彼女と相対するあれもまた、確かに俺だからだ。

 嬉しい事、と言うと自惚れの様に聞こえてしまうな。
 ……例え其れが本物で無い、作り出された偽者であろうと、
 彼女は父親が殺される事が耐えられない、という事じゃないのかな。
 ここで誰かが、あの"俺"を殺してしまっては、ヘルトの心が死んでしまう。

 ……君には難しいだろうとは、思う。
 けど、あれが死闘である以上…それが私闘であっても、君は直接手は出さない方が良い・
 だから代わりに、今は俺に力を貸していてくれないか。
 俺の力が彼女を護る。

 …余り時間が無いんだ。」

1374 TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 17:49:32
>>1373
「けれどあなたである「彼」を彼女が殺してしまうという結末もありえる。
 彼女が闘い続けるのなら、その可能性のほうが高いといってすらいい。
 自らの手で「父」を殺すという結末。
 あの子はニュータイプ。
 どれほど贋作であろうとも・・・・・・己の手を父の血で染めたという
感触からは生涯逃れられない。

 ・・・・・・あるいは、もっと最悪の、誰も望まない結末も。
 決定的な瞬間に決定的な一撃を繰り出すことができぬまま・・・・・・
本物の致命の一撃を受け、この世から断絶させられてしまうかも。


 心が死ぬか、体が死ぬか。
 どちらも生き残る可能性など、皆無も同然。

 それでも貴方は、進ませると?

 ・・・・・・認めているのか、放任しているだけなのか・・・・・・

 怨まれても殺す、という選択肢は、貴方には無いんですか?

 いえ、昔の貴方なら、殺していたことでしょうね。
 何一つ情け容赦なく、己の偽者であろうとも。あの少女であろうとも。
 
 それが障害であるのならば、情けも容赦も一顧だにせず、唯の一刃、切り下げる・・・・・・

 けれど、今の貴方は・・・・・・そうではない。


 ・・・・・・わかりません。やはり、わからない。不可解です・・・・・・

 あの子のことを思うのなら、私はやはりあの敵を誰かが射抜くべきだと思う。

 彼女は殺したものを怨むでしょう憎むでしょうののしるでしょう。
 
 だからといって彼女がその人物を殺すとは私には思えない。
 それが戦場なのだ・・・・・・と悟る。唯それだけのこと。
 
 そう、それが戦場なのだ、という「幻想」を得る。

 戦場であるのならば、人を殺すのは当然の行為。殺さなければ
殺される──

 それは確かに幻想に過ぎず、けれどそこから逃れられぬものに取り
その幻想は理性保つための最後の藁。

 平和であれば銃を握る必要は無いのだという幻想におぼれられる。
 今自分が「闘って」いるのは、平和のためだという幻想に浸っていられる。

 けれど、あの娘のように・・・・・・「敵すら助ける」戦いは。
 
 ・・・・・・「殺すことでしか生き残れない」兵士たちの「殺人」を哂っている。
お前たちは兵士なのではなく殺人者なのだと、戦いの結果として敵を殺す行為すら
邪悪なのだとどうしようもなく宣告してしまう。
 ええ、それはきっと正しい。けれど残酷な正しさです。
 この場に在る兵士の多くに、闘い殺さねば生き延びられなかった人々の心を
傷つける、あまりにも残酷な善意と言える。

1375 TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 17:51:09
 ならば。

 あの戦いの果てに彼女が死ねば?

 彼女は道化になる。哂われて終わる。
 それが彼女にとって幸せ?

 そう、戦場に定理も正理もなく・・・・・・
 
 殺人すらも正当化される。
 そうであるが故に戦いは終わらせねばならず、
そうであるが故に闘争とは本質的に邪悪。
  
 だからこそ、私たちは血で血を洗う闘争を
こうしておこなっているのではないのですか。

 そう。偽りの父親を殺したものを、
 彼女が憎むというのならそれでいい。

 私はきっと、苦さを知っている。 
 だから、その苦さを誰にも味合わせたくないと望んでいる。

 だから、彼女が「来てしまった」ことをこそ呪っている。
 彼女たちのような幼い者たちに、戦を担わせてしまったことをこそ
呪わずには居られない。
 
 そして、来てしまったのならば……私たちは、あの子達を一人前の。
「人を殺せる」兵士として、扱うべきだと考える。

 そうでなくては、私たちは道化です。 
 
 私たちのように、人と人とで憎みあうわけでもなく殺したいわけでもなく
戦い殺し合い、散ってゆく人間の全てが道化です。

 貴方は、私に突きつけるのですか。
 私たちのように、闘わなければ殺さなければ生き延びられなかった人間に
突きつけるのですか。

「お前たちは人殺しだ」という明確な現実を。
 戦争であるが故に殺人が肯定されるという、無残で暖かな幻想を剥ぎ取るのですか。
 
 敵は必死。こちらも必死。
 ゆえに死者は生まれ出る。

 無論捕虜という選択肢もあるでしょう。
 けれど、捕虜というのは戦い抜いた兵士が、戦い抜き無力と化し、
戦闘あたわぬが故になるもの。最初から捕虜とする為以外の目的を
持たずに遂行される戦闘作戦など古今に例がありません。

 けれど最初から捕虜にすることを望めるほどに、彼と彼女の戦力差は
懸絶していますか。
 
 私の目には・・・・・・互角どころか彼が優位のようにすら見える。


 討たせて、下さい。

 私には、あのような少女が人を殺すことも、
 あのような少女が人に殺されることも、
 殺さざるを得なかった兵士たちをあの少女が結果として哂うのも、
きっと私には許しえない・・・・・・許せない!

 あの娘と私とは、さして友誼と呼ぶべきものは無い。
 他人も同然。
 だから、あの少女はきっと私を憎む。憎めばいい。それでいい。
 戦い殺せば憎まれるは必定、それを定めと受け入れる。
 
 きっともうじき、あの少女にとっての戦いは終わるのでしょう?

 ならば、ならば、だからこそ・・・・・・

 私に、殺させてください。
 私に罪を担わせてください!
 子供が、人を殺すなど。
 子供が、人を憎むなど。
 子供が、誰かに憎まれるなど!」

1376黒灰の疾風@アストレイIWSP:2006/06/24(土) 18:13:58
「駄目だ。」

それは、何よりも速く返された返答。

「殺させない為に、君はアレを殺すと言う。
 それはこの際良い、だあそれをやるのは君では無い、あの娘は俺が"殺させない"。
 そしてあの男を、どうしても殺さなければならないとしても。
 その時は、俺の力で自分を殺す。
 君の言う彼女の残酷さも、無残で幻想も関係無い。
 君とて最初に思った筈だ、あれは戦争ではなく私闘だと。

 更に君は忘れているな。
 俺から見れば、君とてあの娘と代わらない、一人の少女に変わり無い。」



「君には殺させない。

 君には罪を担わせない。

 君の様な子供が、人を殺す事も。

 君の様な子供が、人を憎む事も。

 君の様な子供が、誰かに憎まれる事も。


 俺は決して許さない。

 だから少しだけ、ほんの少しでいい。
 俺に、手を貸してくれ。」

1377 TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 18:34:33
>>1376
「罪を犯し自覚したものに、貴方は罪を犯すなと言う。
 幻想の欺瞞を欺瞞と知ってなお戴く私の心を理解しながらあえて
そう語るのですか。
 
 手ならばすでに貸している、今この瞬間この時間にも私は貴方の
意思をつなぎ流し込み続けている、それが私の力なのだから。
 そしてそれをとめることなど出来はしない。

 そして私はここに一つの幻想を語りましょう。
 あれはただの贋作に過ぎず。
 故にこそ殺し滅していいのだという幻想を。
 
 あれがどれほど人に近しい意思を持っていたとしても。
 あれがどれほど人として生きたいという願いを抱いていたとしても。
 畢竟滅びる贋作ならば、所詮滅びる贋作ならば。

 ……それは所詮兵器に過ぎず。故に殺すのではなく破壊する。

 否それが非人道で非道と見えるというのならば、ゆえにこそ
手をこまねくというのなら、それこそが敵手たるマンサーの狙いに
他ならず。
 彼らの死はかの者たちを作ったマンサーの咎と集約される。

 故に私は彼を殺してもかまわない。これはそういう、幻想です。

 私はすでに殺している。 
 私はすでに手を血で染めている。
 この戦場ではなくもっと南の戦場で。

 魂を支えあった仲間たちと友に戦い敵を倒し倒され、
そして敗北した。

 それが戦いであるから私は適も味方も許すことが出来る。
そう、戦争だったから、それは仕方が無いことであると。

 そう、それが巨大な業であるが故に私はそれを許すことが
できる。

 けれど、敵により倒された仲間が、仲間により倒された敵が・・・・・・
所詮互いが互いに殺しあったに過ぎぬ殺戮劇に過ぎぬと誰かが歌うなら。

 私たちは畢竟唯の殺人者となる。

 そう、そういう存在に成り下がる。

 当の昔に、背負った罪だ。
 罪背負うから戦士ではないのですか。

 戦えぬもの達の代わりに殺しあう剣闘士、戦いを
ブラウン管の向こう側に納め終わらせるもの、それこそが
戦士の戦士たるゆえん、軍人の軍人たるゆえんではないのですか。

 私闘、たしかにそれはそのとおり。

 けれど彼女が乗っている機体は何者が用意したのです。
 彼女の機体の推進剤は弾薬は。
 それは誰が用意したのです。
 
 この戦いを戦いとして遂行するために、企業、そして
養成所が構築した巨大な補給システムによって支えられた
戦略システム。それによって生み出された戦術にのっとり
出撃した艦隊の最先鋒。
 そう、彼女は巨大な戦争の中の戦闘の一形態として「死戦」
を闘っているだけ。
 彼女もまた戦争という巨大なのどに飲み込まれた一人に他ならない。

 すでに手は貸している。
 貸したのならば、借りは返してもらいたい。

 そう、一つ・・・・・・唯の一つ。 
 見えないものが、唯一つ。

 貴方が彼を殺したくない。殺さずに済ませたい。
 そう望む理由は彼女という存在を通してのもの。
 貴方にとっての直接理由とはなりえず。
 あれを貴方は「自分」といった。
 自分で自分を殺すという。
 けれどあれは貴方ではない、自分ではない。 
 グレイでありながらグレイではない貴方とは別個の存在でしょう。
 そのゆえんだけが、私に見えない。

 殺したくないのは、彼女だけではなく。
 
 もしかして・・・・・・あなたもなのでは、ありませんか?」

1378TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/24(土) 18:57:53
>1337
「…あぁ、答えよう。
 そう、その通り。
 確かに俺はあの贋作を、出来るならば殺したくは無いと思っている。
 
 何故かと問われれば簡単な話。
 君が今語りかけている相手は、
 元来、ヒトとして外れた身から、漸くヒトへと戻った物だ。
 誰にも語った事は無いが、其れ故に俺と言う存在の本質は何処まで行っても、
 その形も色も、何もかもが歪んでいる。

 感じられるか、あの男の狂気……いや違うな、歪んだ愛憎か。
 端から見れば、あれは只木偶の作り手たる者に加工され、歪められた心に見えるだろう。

 だが、今ならハッキリと分かるだろう。
 アレは今尚俺が持つ、屈折した意志に過ぎぬ。
 アイツは只それを表す事を強要されているだけで、中身は俺の心と寸分違わぬ。
 それこそアレの行動は、強要されているが故に其れをする、一つの幻想による物だ。
 だから俺はアイツを殺さず、自分のした事を残酷で、冷酷な現実として突き付けたい。
 それが叶わぬと言うのなら、その時は俺自身が俺を殺す。


 あの娘の願いとはまた意味は異なるが、
 俺はあの、幻想に囚われた自分自身をどうしても黙らせたい。」

1379TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 19:06:26
>>1378
「エゴイスト・・・・・・では、ありませんね。

 ・・・・・・素直になれないだけなんですね。

 ・・・・・・あきれた、もう何もいえない。
 
 そこまでおっしゃるのなら、どうぞご勝手に」

 しかし少女は言葉と裏腹に、ひどくすがすがしい
笑みを浮かべていた。

「少しだけ、分かったことがあります」

1380TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/24(土) 19:10:17
>>1379
「済まないな、一つ無理を通させて貰う事になる。
 君にしてみれば、面白く無い事だらけだろうに、な。」


「…分かった事?」

1381TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 19:28:14
>>1380
「ええ、つまりは──幻想、エゴなんですよ。 
 ただの、エゴ。偽善。
 
 そう、そんな程度のもの。人を成らせ成り立たせしめて
いるのは、たったその程度のつまらないもの」

1382TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/24(土) 19:35:48
>>1381
「あぁ…それは俺も、最初は戸惑った事だ。
 だが一度分かってしまえばどうという事は無い。
 人はエゴがある故に、何でも出来る。

 そう、そんな程度のもの。人を成らせ成り立たせしめているのは、
 たったその程度のつまらないものだ。」

1383TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 19:48:20
>>1382
「そう、そんな本当に些細で、つまらないもの。
 そんな小さな部品に、人は支えられ暮らしを営んでいる。
 
 駆逐したい対象が存在するのならば、それを殺してしまえばいい。 
 罪という言葉になど縛られる必要など無い。
 けれど。
 人を殺すことを許してしまえば、己が殺されることを覚悟しなければ
ならない。
 それは戦場でだって同じ。
 人命は数字に置き換えられ、数百数千の命が傷つき費えていくことは
日常の当然となってしまう。
 その中にあって倒すこと、殺すことを当然と確信し信じてしまえば……
人を殺すことをためらわない鬼となる、鬼と変じる。 
 いつかそうして鬼と化せば……たとえ平和に戻っても、人を殺すを
当然と生きる鬼となる。
 それは、きっととても幸せなこと。罪の痛みにさいなまれずに済むのなら、
どれほど気楽なことでしょう。
 それを恐れるから、それを嫌うから。
 人は、戦場において、おそらくは非合理で無価値な偽善をなすことがある。

 その偽善を、あるいは哂うべきなのかもしれない。

 非合理と断じるべきなのかもしれない。
 
 けれど、そんな些細な偽善を哂うなら……きっと、その人は鬼に成る。

 ……だから、人は偽善をなす。偽善をなしてしまう。
 己の死を覚悟しながら縁もゆかりも無い少年を助け、憎んだ男を
救うために手榴弾に身を投じられる。

 人であろうとするためにつかむ、そんな些細な蜘蛛の糸。
 そんな哀れで些細な努力。たとえ生き延びたとしても苦しみ続ける。

 そう、きっと彼女は人でありたい。
 人として生きていきたい。

 きっと、殺し屋になどなりたくなくて。
 闘った自分に納得していたい。

 軍律違反かもしれない。
 あるいは許されないことかもしれない。
 
 けれど、私は……その偽善を笑えない。

 なぜなら私も、そんな些細な偽善に、きっと救われた命なのだから。

 ……だから、力を貸しますよ。

 けれど、約束してください。

 ……偽善を徹すと誓ったのなら、その偽善を傷害貫き続けて
ください。うそになどしないで下さい。

 そう……たとえ偽りとて、その命が最後まで己の信念を
貫き通し、あり続けたというのなら。
 
 それが偽りでしかないのだと、果たして何者に断じられると
いうんでしょう。

 所詮真実も偽りも、人間が作り上げた概念に過ぎず。

 ならば……その偽りを真実と人が呼ぶのなら、きっと
偽りだって真実になる。

 ……だから、貫いてください。必ず」

1384TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/24(土) 19:58:52

「分かった。

 俺は、たった一度与えられたヒトの心に。
 何の意味も持たせずに生きる事だけはしない。」

そう、人を殺す事を当然と覆ってしまえば、自分は只の鬼となる。
今の自分は、決して人を殺す事を、恐れている訳でもない。
しかし其れでも、俺はヒトとして在ろうとした。

「………そろそろ、戻ろう。
 俺は娘と共に、この俺自身を黙らせる。
 偽善でも構わない、俺が其れを貫く為には、まずそれが必要だ。」

1385TIPS「問い」 ──エルフ・ムラサメ:2006/06/24(土) 20:06:25
>>1386
「人を人として生かし続けるのには、やさしい欺瞞だって必要。

 それを無自覚にただ貫くのなら、唯の愚か者。
 けれど貴方はそれに気づいている。それでなお押し通そうとする。
 その姿こそ真実と、信じさせてください。

 ……征きましょう。

 私は、この戦いを闘うために送り込まれてきたもの。
 
 けれど、あくまでも養成所の人間として戦うように、
私は命じられている。

 そして、この戦いこそ『真』と見定めたなら……

 私と貴方の気持ちは、同じ。


 ……夢の時間は、もう終わり。
 たかが一瞬、回路を走り抜けたに過ぎない幻影。
 けれど、この『夢』は、きっと新たな現実を開く。

 ……ええ、至上の勝利へと赴くのみ。
 それ以外は、きっと私達には許されない。

 高みへとある幻想を、この現実へと引き摺り下ろすため……
進撃を再開します。

 覚悟の程はいいですか?グレイ・ヴィクトリア」

1386TIPS「問い」――『真作』たる灰色人形:2006/06/24(土) 20:20:32

「…何、先に落とされてしまった身だ、覚悟はとうに出来ている―――


 あぁ、今再び始めよう。
 俺達が戦うのは、至上の勝利を、収めるべき者へと導く戦いだ。
 それもこれで、終わりにしたい。

 …では、俺の力を頼む、エルフ・ムラサメ。」




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