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【競作】オールスタープリキュア!レッツ・ラ・競作!冬のSS祭り2018

1 : 運営 :2017/12/31(日) 11:12:11
おはようございます、運営です。
今年はお知らせが遅くなってしまいましたが、SS競作の季節がやってまいりました。
当サイト5回目の企画、またまた2月から3月にかけて行います!
どうぞ皆様、奮ってご参加のほど、よろしくお願いします!!

―――――
<企画書>

タイトル:オールスタープリキュア!レッツ・ラ・競作!冬のSS祭り2018

期間:2018年2月15日(土)〜3月9日(日)の23日間

テーマ:「スイーツ」または「ひらめき」

いちか 「『スイーツ』と『ひらめき』を、レッツ・ラ・まぜまぜ!」
あおい 「ちょっと、いちか! 何の呪文だ? そりゃあ」
シエル 「ウィー! 今度のお話祭りのテーマが決まったのよね? いちか!」
いちか 「うん! みんなでいろ〜んなお話を持ち寄って〜、楽しいパーティーにするのだぁ!」
ひまり 「『スイーツ』は、分かりやすく、しかも奥深いですよね。何と言っても、スイーツは科学ですから!」
あきら 「ハハハ……。豆大福にシュークリーム、ドーナツにカップケーキ、メロンパンにイチゴメロンパン。各シリーズにそれぞれ印象的なスイーツが出てくるから、そこからお話を膨らませられるかもしれないね」
ゆかり 「『ひらめく』にも、いろんな意味があるから面白いわ。何かいい考えが浮かんだ、って意味もあるけど、ただひらひら揺れ動いてるだけ、っていう意味もあるらしいわよ」
ビブリー「へぇ。じゃあ、毎日『ひらめいて』いる人がここにもいるじゃない」
いちか 「それって……」
ペコリン「長老さんペコ〜!」
長老  「ジャバ〜! キラッとひらめいた……って、いつもひらめいてるジャバ〜! お話祭り、楽しみジャバ。ダンディなわしを書いてほしいジャバ〜!」
全員  「はぁ……」

ということで、今年のテーマは「スイーツ」または「ひらめき」、どちらかが盛り込まれているお話を大募集します!
テーマの単語そのものが出て来なくても、テーマが感じられるお話なら大丈夫。勿論、「スイーツ」と「ひらめき」、両方盛り込んで頂いてもOKです!
毎年書かせて頂いていますが、大切なのは、あっつ〜い作品愛!! それさえあれば、大抵のお話はOKです。
短いお話、ふざけた小ネタ、大歓迎! 難しく考えず、いろ〜んなSSを集めて楽しいお祭りにしましょう!

※プリキュア全シリーズは勿論、コラボSS(プリキュア&プリキュア、オールスターズ、プリキュア&その他)もOKです。来年スタートの新シリーズ「HUGっと!プリキュア」のSSもどうぞ!

※体裁は、小ネタ、長短編なんでもOK。140文字SSも受け付けます。(140文字SSは、出張所(Twitter)でも受け付けます。)

※ただしお約束として、サイトの特性にあったものでお願いします。(男女間恋愛ネタと、オリジナルキャラのメイン起用・実在する人物(作者含む)を起用した作品はNG。サイトのQ&Aをご参照下さい。)

※お話を書くのは初めてだけど、何か書いてみたい! でも書けるかな……という方、書き手じゃないんだけど……という方、大歓迎です!!
お祭り企画を機会に、短いものでも何か書いてみませんか? お待ちしています!
なお、当サイトの運営は、全員がSSの書き手です。何か書いてみたいけどどう書いて良いか分からない、書いてはみたけど、これでいいのかな……等々、何かありましたら「掲示板管理者へ連絡」からいつでもお気軽にご連絡下さい。及ばずながら、お手伝いさせて頂きます。

※SSは書かないけれど、読むのを楽しみにしているよ!と思って下さっているそこのあなた!
読み手の方々なくしてお祭りは成立しません。SSを読んで頂いて、何か一言でも感想やコメントを掲示板にどしどし書き込んで下さい!
コメントは、ものすごーく書き手の励みになります。場合によっては、次の作品にも繋がるかも!?
どうぞ盛り上げ&応援でのご参加、よろしくお願い致します。
―――――


ご参加表明を頂ける方は、①この競作スレッドに参加表明を書き込んで頂く、②運営宛てにメールする、③出張所(Twitter)にDMを送る
のいずれかの方法にてご連絡ください。(勿論、飛び入り参加も大歓迎です!)
皆様のご参加、一人でも多くの方のご参加を、心よりお待ちしております。よろしくお願い致します!!


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2 : 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2018/01/01(月) 20:33:10
今年も参加させていただきます。
カップリングは、剣城あきら×琴爪ゆかりでR-15レベルのものを…
やわらかいスイーツ(意味深)を二人で味わうのがメインのお話です。

何とか期間内に書き上げたいです。


3 : 名無しさん :2018/01/01(月) 23:29:06
>>2
今年も猫塚さんキターーーーーー!
しかもあきゆか!期待が膨らみます。
今年もみなさんのいろんなお話が読めるのを楽しみにしています。


4 : 名無しさん :2018/01/03(水) 23:16:03
テーマが「スイーツ」とか、もう今からワクワクもんですな!
楽しみにしてます!


5 : 運営 :2018/01/17(水) 20:53:54
こんばんは。
すみません! 競作期間の日付が間違っておりました。

正しくは、2018年2月17日(土)〜3月11日(日)です。

一体なんで間違えたんだろう……(汗)
大変申し訳ありませんでした。よろしくお願いします!


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6 : 運営 :2018/02/11(日) 07:53:18
おはようございます。運営です。
早いもので、競作のスタートまで一週間を切りました。
これまでに参加表明を頂いている方々のお名前を発表したいと思います。

受付順に、
たれまさ様、猫塚◆GKWyxD2gYE様、ゾンリー様、一路◆51rtpjrRzY様、コロ助MH様、kiral32様、そらまめ様
それから運営の、夏希◆JIBDaXNP.g、一六◆6/pMjwqUTkも参加予定です。
※あくまでも予定です。

以上の9名と、お名前は公表しませんが参加を検討して下さっていると伺っている方が、あと3名ほどいらっしゃいます。
まだまだご参加、受け付けていますので是非是非。
飛び入り参加も、大大大歓迎ですので、どうぞよろしくお願いいたします!


7 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/02/17(土) 03:19:26
皆様、こんばんは……って真夜中通り過ぎて深夜になっちゃいましたが、第5回SS競作企画の開幕を、ここに宣言させて頂きます!
いつも開幕小ネタを書いて下さる副管理人の夏希さんがご多忙につき、今年は開幕小ネタと閉幕小ネタの担当をチェンジして、私が開幕小ネタを書かせて頂きました。
3レス、お借りいたします。


8 : 開幕!『レッツ・ラ・競作!冬のSS祭り2018』 :2018/02/17(土) 03:23:09
「う〜〜〜〜〜ん」
 キラパティことキラキラパティスリーの工房。大量のプリン液を全ての型に流し入れ、ホッと一息ついたひまりは、不意に聞こえて来た声に驚いて顔を上げた。
 調理台の前で、いちかが腕を組み、目と口をギュッと引き結んで唸っている。
「いちかちゃん、どうしたんですか?」
「どうしたペコ?」
 ひまりに続いて、人間の姿でドーナツの生地を作っていたペコリンも、首をかしげて問いかけた。
「うーん……悩んでいるのでござる。ショートケーキのスポンジ、もっとたくさん作るべきか、作らざるべきか……」
「当日になってそんなこと言い出しても、材料無いだろ?」
 冷凍庫をバタンと閉めて、あおいが呆れた声を出す。だが。
「だってぇ、あおちゃん。前回のお話し会の時のみんなの食べっぷり、見たでしょう? あ〜んなに大量のお菓子が、あっという間になくなっちゃったんだよ! だから量も百人分くらいにしたんだけど、何だかあの光景を思い出したら不安になって来ちゃって……」
 いちかの言葉に、あおいとペコリンは、ああ、ペコ、と同時に納得の声を上げ、ひまりもコクコクと小さく頷いて見せた。

「へぇ。プリキュアの先輩たちって、そんなにスイーツ好きが揃ってるの?」
 シエルが目をキラキラさせていちかたちの顔を見つめる。
 今日はプリキュアみんなが集まる、恒例のお話し会。今回の会場は、このキラパティだ。もっとも、このメンバーでのスイーツショップ・キラキラパティスリーとしては、つい先日最後の日を迎えたのだが、プリキュア全員を招いて、スイーツいっぱいの楽しいお話し会を開こうと、みんな張り切っていた。
 中でもシエルは、仲間たちの中で一人だけ、まだお話し会に参加したことがない。他のプリキュアたちに会うのも初めてなので、彼女はこの日をそれはそれは心待ちにしていたのだ。

「だったら、いちか。まずは予定通りの量を仕上げて、後は様子を見て作り足せばいいんじゃない? 材料なら、あとでピカリオとビブリーも来るはずだから、お使いを頼んでおくわ。そうだ! お話のイメージに合わせて、わたし、アシェットデセールで何か作ろうかしら」
「わぁ、それ凄いよ。テーマは『スイーツ』と『ひらめき』だから、アシェットデセールはぴったりだね! パティシエ・シエルのスイーツが食べられるなんて、みんな大喜びだよ〜!」
 いちかがさっきまでの厳めしい顔が嘘のように、パァッと笑顔になる。が、その途端、グーッという鈍い音が響いて、シエルの姿が突然消えた。
「お腹空いちゃったキラ〜」
 すぐに調理台の下から、妖精キラリンがふわふわと力なく浮かび上がった……。

「わぁぁ、どどどどうしよう! すぐに食べられるもの、何かあったっけ。スポンジはまだオーブンの中だし……」
「プリンはこれから蒸すところです」
「アイスもまだ固まってないよ」
「ドーナツは、まだ生地も出来てないペコ!」
 四人が大慌てで騒いでいると、工房のドアがカチャリと開いた。

「みんな、遅くなってごめん」
「あら、どうしたの?」
 スーツケースを持ったゆかりと、大きな買い物袋を提げたあきらが、連れ立って入って来る。キラパティ最後の日のために一時帰国したゆかりは、このお話し会が終われば、再び留学先のコンフェイト公国に旅立つことになっていた。

「ゆかりさぁぁぁん、あきらさぁぁぁん!」
 すっかりテンパっているいちかの顎の下にこちょこちょと指を滑らせてから、ゆかりがふよふよと漂うキラリンを見て小さく微笑む。そしておもむろにスーツケースを持ち上げると、調理台の上でそれを開いた。
 途端に全員が、言葉にならない感嘆の声を漏らす。大きなスーツケースの中は、ビニール袋に入った小さな丸いカラフルな物体でびっしりと埋め尽くされていた。
「え……これって……」
「ぜ〜んぶ、マカロン!?」
 うふっ、と楽しそうに笑ったゆかりは、ビニール袋のひとつを開けてキラリンに差し出した。
「頂きますキラ」
 キラリンがそう言うが早いか、目の前に置かれたマカロンを頬張る。立て続けに五つ平らげたところで、ポン、と小さな音がしてシエルが姿を現した。
「メルシー、ゆかり。とっても美味しかった。また腕を上げたわね」
「せっかく一流のパティシエに教わったんだもの。ちゃんと自分のものにしないとね」
 楽しそうに笑い合う二人を見て、いちかたちもホッとしたように笑顔になる。その時、あきらが慌てた様子で全員の顔を見回した。


9 : 開幕!『レッツ・ラ・競作!冬のSS祭り2018』 :2018/02/17(土) 03:23:46
「そうだ、忘れてた! ここへ来た時、店の前をうろうろしている人たちが居てね。どうやらお話し会のお客さんらしいから、店の中で待っててもらってるんだけど、ここへ連れて来てもいいかな?」
「ウィー! ついにプリキュアの先輩とご対面なのね!」
 鼻息の荒いシエルに、あきらがニコリと笑う。
「いや、先輩っていうか……その中には、シエルちゃんも会ったことがある人も居るんだよ」
「え、私も?」
 シエルが怪訝そうに首を傾げたその時、ゆかりに招き入れられて、二人の少女と一人の赤ちゃんが工房に入って来た。

「失礼します! わぁ、まさかこの素敵なスイーツショップが、プリキュアの先輩のお店だったなんて!」
 嬉しそうに頬を真っ赤に染めて笑う少女の顔を見て、いちか、ひまり、あおい、シエル、そしてペコリンが、あーっ! と大声を上げる。
「あなたは、あの時の!」
「はい! わたし、野乃はな。元気のプリキュア・キュアエールです。そっちはクラスメイトでもある……」
「初めまして、薬師寺さあやと申します。ついこの間、知恵のプリキュア・キュアアンジュになりました」
 はなの隣に居た少女が、こちらは緊張と恥ずかしさからか、はなに負けず劣らず頬を真っ赤に染めて挨拶し、深々と頭を下げる。

「はなちゃん、さあやちゃん。ようこそ、キラパティへ! お話し会のことは、誰に聞いたの?」
「それが……実は昨日、気が付いたらはぐたんがこれを握り締めてたんです」
 はなが鞄の中から取り出したのは、皺を伸ばした痕のある、一通の招待状。その見覚えのある封筒に、いちかの目が僅かに潤んだ。
 この招待状は、いちかたちが書いてプリキュア全員に送ったものだった。先輩プリキュアのみんなと――もう一人。この前、キュアペコリンの危機を救ってくれたプリキュア・キュアエールに向けて。
 だが、彼女の名前も住所も分からなくて困っていた時、クリスタルアニマルたちが、その招待状をどこかに運び去ってしまった。得意げにピョンピョンと飛び跳ねる彼らを見て、ひょっとしたら……と密かに思っていたのだが。

 工房の陰に隠れているアニマルたちにこっそりと笑いかけてから、いちかがはなの腕に抱かれたはぐたんに、にっこりと笑いかける。はぐたんも、はぎゅ〜! と挨拶代わりの満面の笑みを振りまいた。
「はなちゃん、さあやちゃん、はぐたん! 改めて、ようこそ、キラパティへ。そして、プリキュアみんなが集うお話し会へ!」
 いちかの声と共に、全員が笑顔で新しい仲間を迎えた。

「わぁぁ、スイーツを作ってるんですね? え……でも、今日はスイーツの会じゃなくて、お話し会なんじゃ……」
「うん。主役は勿論、いろ〜んなお話だよ。だけど、楽しいお話には美味しいスイーツがあった方が楽しいでしょ?」
「うん! わたしもそう思う。その方が絶対、イケてます!」
 いちかの話に、はなが力強く同意する。が、すぐに調理台の上を見回して、目を白黒させた。
「でもあの……今日はプリキュアオンリーの、貸し切りのお話し会なんですよね?」
「うん、そうだよ」
「それでこの量って……一体何人のお客さんが来るんですか?」
 はなの問いかけに、いちかが待ってましたとばかりに身を乗り出す。
「それはねぇ! ……何人だっけ」
 勢い込んだいちかの見事な肩透かしに、ひまりやあおいだけでなく、はなまでもが思い切りよくコケた。
「えっと、確か五十人は超えてますね」
「ご、五十人!? プリキュアってそんなに居るの!? めちょっく! 最初はわたしだけかと思ってたのにぃ」
「はなちゃん……?」
 何故か大変ショックを受けた様子のはなを、さあやが心配そうに見つめる。だが、はなはすぐに立ち上がると、いちかたちを見回してニッと笑った。

「じゃあ、せっかくキッチンに入れてもらったことだし、わたしたちも手伝います!」
「ホント? 手伝ってくれるの?」
「ええ。こ〜んな素敵なパティスリーでお菓子作りなんて、めっちゃイケてる! 今まであんまり……ほとんどやったことないけど、きっと大丈夫! フレー、フレー、みんな! フレー、フレー、わたし!」
「はなちゃん! ……わ、わたしも、分からないことは調べ……じゃなくて、教えてもらって、頑張ります」
 工房の真ん中で腕をぐるぐる振り回し始めたはなをさりげなく押さえるようにしながら、さあやも笑顔を見せる。

「大丈夫かな」
「大丈夫でしょうか」
「大丈夫大丈夫!」
「うん、そうだね」
「ウィー!」
「うふっ、面白いわ」
「ペコ〜!」
 やがて九人の楽しそうな笑い声と慌ただしそうな足音が、工房に響き始めた。


   ☆


10 : 開幕!『レッツ・ラ・競作!冬のSS祭り2018』 :2018/02/17(土) 03:24:37
 太陽が高く昇り、いちご山の上をホイップクリームのような白い雲がのんびりと行き過ぎる頃。キラパティのカウンターと大きなテーブルの上に、色とりどりの様々なスイーツが並べられた。
「ジャババ〜! キラキラルが溢れてるジャバ〜」
 自称ダンディなオーナー姿になった長老が、パティスリーを見渡して満足そうに頷く。ちょうどその時、キラパティの扉が開いて、たくさんの少女たちが店の中に入って来た。

「うわぁぁぁ! 美味しそう〜!」
「見てるだけでほっぺた落っこちちゃうよぉ!」
「も〜我慢できないっ!」
「「「いっただっきまぁす!!!」」」

「「「こぉらぁぁぁっ!!!」」」

 スイーツに突進しようとする少女たちと、それを必死で引き留める少女たち。中にはゆかりが作った巨大な食品サンプル……もとい、オブジェを見上げて、物欲しそうに指をくわえている少女もいる。

「プリキュアって、ホントにこんなに居るんだ……」
 半ば呆然と呟いたはなの表情が、キラリと輝く。
「うん、凄い! みんなそれぞれ全然違うのに、み〜んな、めっちゃイケてるっ!」
 興奮気味なその声に自然と笑みをこぼしながら、キラパティの制服に身を包んだいちかたちは、少女たちの前に笑顔で並んだ。

「皆様、ようこそ! キラキラパティスリーへ。素敵なお話と美味しいスイーツの、夢の時間を楽しみましょう!!」


11 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/02/17(土) 03:29:00
以上です。
大切なのは、「プリキュアが好き!」って気持ち、ただそれだけです。
数行の短編、会話だけのお話、140文字SS、初心者、デビュー作、自信なし? 全く問題ありません!
あなたの頭の中にある会話、心の中にある姿を、SSという形で表してみませんか?
飛び入り参加、大大大歓迎!! 掲示板への感想の書き込みも、大大大感謝です!!
皆様の様々な作品やコメントを楽しみにしております。
みんなで楽しく盛り上がりましょう〜♪


12 : コロ助MH :2018/02/17(土) 17:58:05
今年も参加させて頂きます よろしくお願い致します。
去年はまほプリロスになったおかげで自分でも信じられない位のパワーが生まれて三部作も書いたりしたので今年は無いかなとも思ったんですけど、でもやっぱりプリアラも素晴らしくて書いてしまいました。それぞれの道の行った彼女達ですがこんなお話もあったら思い書いてみました。よろしくお願いします。


13 : コロ助MH :2018/02/17(土) 17:58:47
ちょうどキラパティの営業も終わって厨房の片付けが終わって一息ついて一人でお茶会をやっている時に表の方から声が聞こえた。
「すいませ〜ん、表の募集チラシを見て来た者なんですけど〜」と。
「え、ウチってそんな募集してないんだけど何だろう」と不思議に思い少し用心しながら入口のドアを開けるとそこには何とゆかりさんが立っていた。
「え〜、ゆかりさん何でここに居るんですか?!」とあまりの突然の出来事につい声を上げてしまっていると。
「いちか、お久しぶりね それと随分と綺麗になったわね」と優雅に微笑み返してくれた。


「いちかとゆかりのキラキラパティスリー」



私は現在ネパール近郊のある小さな町でお店をオープンしていた。持ち運び便利なキラパティはどこでも行けるし、あと宿の心配もいらないので本当に重宝している。移動するのも基本はその国の交通機関を利用しているのだが、でもちょっと懐が厳しい時にはホイップに変身すれば大抵はどんな所でも一飛びで行けるので基本どこの国でキラパティを営業してても困る事はほとんどない。まあ強いて言えば言葉の問題と材料の仕入れ代とかが気になっているんだけど、言葉の方は美味しいスイーツには万国共通と言う事で何とか乗り切っている。仕入れの方は言うと実際これがまたまた難しいもので売り上げと比べるとなかなか利益が出なかったりしてるんだけど、まあそこは私一人なので何とかやって行けていると言うのが現状であった。

「ふ〜ん、ここでいつも一人でお茶を飲んでいるの?」と相変わらず優雅に紅茶を飲みながら尋ねてきた。
「奥にも寝起き用の自分の部屋を作っているんですけどここで1日を振り返って、あと明日のメインのスイーツを何にするか考えなら一服するのが楽しいんですよね」とウインクして返すと微笑み返してくれ、今居る厨房周りを見回すと懐かしそうに。
「本当、あの頃と変わらないわね 何かここで調理してたらまた皆が出て来て手伝ってくれそうよね」
その言葉に内心ドキッとしてふとゆかりさんの方を見ると真っ直ぐに私の顔を見ていた。内心を見透かされた様に感じられたので誤魔化す様に。
「そういえばゆかりさんはどうしてここに来たんですか? 来るなら前もって言ってくれれば良いのに」とわざとらしく拗ねて言うと。
「気まぐれよ ついこちらの足が向いたのよ」
と相変わらず涼しげな表情で答える。
「あとね久しぶりにいちかとスイーツを作ってみたくなったのよ。材料はまだ残っているのかしら?」
と突然の申し出に思わず驚きつつも残っている材料を見せると。
「充分ね、じゃあいちか一緒に作りましょう。どちらが美味しいか勝負よ!」
と言うか早いか持って来た旅行鞄からパテシエ服に着替えて準備万端な姿になった。その姿にテンションも上がったがそれ以上に数年ぶりに一緒にスイーツ作りが出来るとあって嬉しさが込み上げて来て。
「受けて立ちましょう! 私のこれまでの修行の成果をお見せします!レッツラ クッキング!!」
と思わずつい鼻息を荒くして答えてしまった。すると私の方を見てゆかりさんが実に愉快そうに笑い出して目に涙まで浮かべてる様子に戸惑っていると。
「本当、あなたって変わらないのね〜素敵だわ」
の言葉に少々戸惑っていると。
「褒め言葉よ、じゃあ始めましょう」
と何か釈然としなかったけどスイーツ作りに取り掛かった。相手は世界で有名なシェフのもとで修行して回ってスイーツ界でも話題になっている凄腕のパテシエ、勿論勝てる訳はないのは理解してたけどゆかりさんと一緒にスイーツ作りするならこれだと。もう何度も作ったし店の定番なのだけど、今でも作る度に彼女と一緒に作った日の事が思い出されるのでこのスイーツにした。

「やっぱりゆかりさんはすごいです!」
と出来上がったスイーツを前にして伝えると。
「いちかも随分と上達してるわよ。シエルに随分と仕込まれたみたいね」
「え、分かるんですか?」
「私も教えてもらったの、このスイーツはね」
ふたりの目の前のはネコマカロンが山積みに並んでいた。共に別々な人物が作ったと思えない程にその出来上がりはそっくりでそしてキラキラルが溢れんばかりに輝いていた。


14 : コロ助MH :2018/02/17(土) 17:59:41
実は長老からキラパティを授かってすぐ世界に飛び出そうと思ってたんだけどシエルが。
「世界のどこでも通じるパテシエになる様に私がバッチリと修行してあげるわ」
とありがたい申し出を受けたのと本格的に調理の事や免許も取りたかったので中学卒業後は専門学校に通いながら彼女のお店で教わっていた。課題をこなしながらのシエルに加えリオ君の手解きにはかなり厳しいものがあったが何とか乗り越え両方とも無事卒業する事が出来、その後日本を出た後はその土地、土地のスイーツを学びながら今日に至り内心はそれなりに自分の腕には自信を持ってると思ってたんだけどゆかりさんのそのかつての優雅さを遥かに通り越し「神技」言うべきだろうか、その調理する姿には正に神ががっていてこれは師匠のシエルを越えてるなと肌身に感じた。

「では試食してみましょうか」
と互いのネコマカロンを食べてみる。ゆかりさんのスイーツを食べるのはキラパティのお別れ会以来だったけど一口、口に入れただけど見た目以上に濃厚で奥深い世界が感じられてこれまでどれだけ修練を重ねて来たんだろう、と同時に自身がまだまだ未熟だなと感じられて気落ちしそうになるもふと彼女の顔を見ると私のネコマカロンを実に楽しそうに堪能している様子だったのでつい調子に乗って。
「いや〜やっぱりゆかりさんには敵いませんな〜 でも私のネコマコロンもなかなかいけるでしょう?」
とちょっとおちゃらけたの私の言葉に。
「本当、美味しいわ いちかの想いが一杯込められていてこれは私では作れないスイーツだわ」
「え、そんな事はないですよ ゆかりさんの方が絶対、美味しかったんですから!」
「では合格ね私、じゃ明日からではここで雇ってもらえるのね?」
と突然の申し出に思わず久々に出てしまった。
「何ですと〜 いやゆかりさんは私なんかよりスイーツの腕前は遥かに上ですし、風の噂でいつも聞いてましたけど名だたるパテシエの方々の元で修行して回って今では『さすらいの女天才パテシエ』とまで言われてるのに何故ここでスイーツ作りをしたいのですか?」
すると少しだけ微笑んだ後に真剣な眼差しになって私の目を見て。
「知っての通り私は色んな所を回ってスイーツについて学んで沢山の味を知ったわ、それはどれも素晴らしくて言葉には出来ない程の体験だった。でもね最初にあなたと出会った時に作ったスイーツのときめきを越える事は世界中のどこにもなかったの。さっきのあなたの作ったマカロンを食べた時に確信したわ 私のときめきはここにあるんだって… だからお願いします」
と頭を下げた姿に言葉が出なかったんだけど、ではと言う事はこれからはゆかりさんと一緒に… と思った瞬間。
「ありがとうございます! またゆかりさんと一緒にキラパティがやれるんなんて夢みたいです!!ありがとうございます!!ありがとうございます!!」
と嬉しさのあまり万歳して小躍りして喜んでいる私の姿を見てゆかりさんは最初微笑んでたんだけど急に真剣な顔になって突然近づいて来て私を抱きしめた。またもや突然の事で気がついたら彼女の胸の中固まっている私に。
「あなた泣いてるわよ…」
と表情は見えなかったけど沈痛な面持ちの言葉が伝えられた。え、嬉しいのにそんな訳ないと思いつつも自分の視界が霞んでいる事に気がついて初めて自分が涙を流している事を認識した。
「いちか、あなた寂しかったんでしょう。ここは皆の思い出が詰まっている場所なのにずっと一人だったんだものね。でもこれからは私も一緒だから大丈夫よ…」
その言葉に抱きしめらた温もりに気がついたら大泣きしてしまった… そういえばゆかりさんが留学するって聞いた時もひまりんとあおちゃんと一緒に抱きしめて貰ったなあと思い出して懐かしくなって更に涙が止まらなかった。


15 : コロ助MH :2018/02/17(土) 18:00:26
その後、ゆかりさんが私の顔を覗き込み落ち着いたのかを見計らってからそっと離してくれた。
「えへへ、お見苦しい所をお見せしまして申し訳ありません」
と照れ隠しに大袈裟に笑って伝えると。先程までの事がなかった様に。
「それで私がここで働くと言う事はふたりしかいないから私が店長になるのね」
「え、何言ってるですか、店長は私ですよ!」
「だって普通、店で一番偉いと言ったら店長よりオーナーでしょう、だからいちかがオーナーで店長は私って事じゃないの?」
「え〜、私は店長の方が良いですよ〜だっていつもお店でお客様の相手が出来るしその日のメインのスイーツも決められるし」
の言葉に内心ゆかりはほくそ笑んで。
「じゃあいちかが店長で私がオーナーって事でOKね」
「是非、是非それでお願いします!ではゆかりさんはーナーお願いします!よ〜し明日からまた頑張るぞ〜!」
と声を高らかに宣言する私の横でゆかりさんはニコニコしながら微笑んでいた。

その日の内に起こった出来事と「新しいオーナーです!」とゆかりさんとのツーショット写真をひあおちゃん達にLINEで送ったらすぐに皆が一様に「お前ダマされてるぞ!」と返信が来て、更にあきらさんからは「ゆかりと話させて」と来たのだけれども当のゆかりさんは「今は話す気分じゃないから」とずっとスルーしている。正直言うと皆が言ってることが今ひとつ分からないんだけど、でもあれからずっとゆかりさんと一緒にキラパティでスイーツ作りが出来て本当に嬉しい。あとゆかりさんと話し合って近いうちに帰国して皆に会いに行こうと言う事になったので今から楽しみだ。皆がそれぞれの進んだ道でのお互いの成果が見れるのを。


16 : コロ助MH :2018/02/17(土) 18:01:00
以上になります。ありがとうございました。私的にはいちかが世界を回るのも素敵だなと思ってたんですけどやっぱり一人だと寂しいままだと思いまして書いてみました。とりあえずはゆかりが一緒に居てくれれば一安心かなと考えています(笑。


17 : 名無しさん :2018/02/17(土) 18:47:25
>>16
いきなり来ましたね!
いちからしくて、ゆかりらしいお話、GJです!
確かに、夢のためと言っても思い出のキラパティに一人って、きっと寂しかったよね。
ゆかりが来てくれて良かった!
みんなに会える未来も色々想像出来て、嬉しいラストでした。


18 : 名無しさん :2018/02/18(日) 09:35:43
>>16
早くも懐かしく感じながら読んでしまったキラプリ、しみじみです。
ゆかりの「あなた、寂しかったんでしょう。」って言葉にうるっときました。
一気にこらえていたのもが溢れてきて感情をおさえきれないいちかが良かったです。


19 : コロ助MH :2018/02/20(火) 20:11:05
前回のお話の続きを書いてみました。あと去年は出せませんでしたが今年はいつもの「木札ストラップ」を登場させる事が出来て個人的には満足しております(笑。どうぞよろしくお願い致します。


20 : コロ助MH :2018/02/20(火) 20:12:44
「ふん、ふ〜ん〜♪」
「いちかは今日もご機嫌ね」
「それは勿論ですよ〜 だってゆかりさんとこうしてキラパティ出来るんですもの〜」
と思わず溢れでてしまった嬉しさで満面の笑顔で答えるとゆかりさんも素敵な笑顔で返してくれた。
ゆかりさんとまた一緒にキラパティを始めてから1ヶ月経とうとした。

初めての土地で初めての人達とスイーツを通して交流を深めて仲良くなる事って本当に素敵な事なんだと思ってたし、実際に2度目にその土地に訪問した時には熱烈に歓迎してくれるのを見る度に自分が続けて来た事は正しかったんだと実感して、そしていずれはスイーツで世界を皆をつなぐ事が出来る日が必ず来るんだから少し位は寂しくても大丈夫だとこれまでは自分に言い聞かせて来たんだけど、でもゆかりさんが帰って来てくれてあらためてやっぱり同じ道を一緒に歩んでくれる人がいる事って何て幸せな事なんだろうなと、なんて考えてるともう最近は自然と頰が緩んで仕方なかったりする日々が続いている。
夕方、キラパティの営業が終わりふたりでショーケースとレジ周りを片付けていた。
「イエ〜イ!、今日も閉店前に見事に完売しました! これもひとえにゆかりさんのおかげです!!」
と伝家の宝刀イナバウアーを披露すると微笑みながら。
「私だけじゃないわよ いちかのスイーツの目当てのお客様も沢山いらっしゃったわ。だからもっと自信を持ちなさい」
「そうですか、エヘヘ」
と褒められた事が嬉しくて照れ隠しに笑っているとふいに近づいてきてスッと私の喉元に手を伸ばした。これはヤバイと思いつつも気がついたらゆかりさんの愛撫の虜になってしまって身動きが出来なくなっているとそっと耳元で囁いた。
「この私が言ってるのよ。いちスイーツ職人としてもあなたは素晴らしいものを持っているわ、胸を張っても良いのよ」
そのあまりに畏れ多い賛辞に顔が真っ赤になるのを感じながら。
「ありがとうございます」
と返すのが精一杯だった。



「いちかとゆかりのキラキラパティスリー 〜夜空のお散歩〜」



お店の片付けが終わって厨房の清掃と除菌をやっているとゆかりさんが入ってきて。
「いちか、レジの棚の引き出しで見つけたんだけどこれってあの時の物よね」
と小さな小袋を持ってきた。それは透明な袋で中にはスイーツパクトのマークが入った小さな木札に根付け紐が付いたストラップが入っていた。
「そうですよ〜私が日本を経つ時に皆といつまでも友達でいたいと、記念にと思って職人さんに頼んで彫ってもらったものですよ。そういえばその時にゆかりさんにも送ったんですけど気に入ってくれましたか?」
との言葉にすっとポケットからスマホを取り出し私に見せてくれた。
「ほらちゃんと大切に使っているわよ、だってこのマークは私達の絆の証ですものね」
とストラップを愛おしそうに手に取り眺めている。その姿に思わず。
「ありがとうございます! 私もものすごく気に入っててこのストラップがあんまり可愛いので今では行った先々でお世話になった方達や友達になってくれた方に配ってたんですけど、でもそれが最後の一個なので今度日本に帰ったらまた職人さんにまとめて発注しようかなと思ってた所なんですよね」
「それは素敵ね、それなら私も少しは援助するからたくさんお願いしましょうよ」
「え〜、本当ですかありがとうございます! そういえばこのストラップ、シエルとリオ君とビブリーにも贈ったんですけどゆかりさんみたいに使ってくれてたら嬉しいなあ」
「そういえばシエルの所で修行してたと言ってたけどどんな感じだったの?」
「いや〜キュアパルフェを名乗るだけあってものすごくハードでしたよ〜一から基本を、それこそパテシエとしてのの心構えから叩きこまれましたね。でも今になってみるとシエルが教えてくれた事って一人でキラパティをやって行く上で全て私の為に必要な物だったんだって実感出来て、愛の鞭だったんだって本当に感謝しています」
「そうだったのね 確かにいちかの動きの中にどこかシエルの姿と被る時を感じてたんだけどそういう訳だったのね」
「え、そうなんですか〜そう見えてたら嬉しいなあ。あとそういえばリオ君が私がシエルに厳しくレッスンで叱られているのを見るとよく庇ってくれて、でそうなると姉弟ケンカが始まっていつもふたりをビブリーが止めてくれるって言う事がよくあって、当時は専門学校に通いながら教わっていたのでかなりいっぱいいっぱいだったんですけど、でも振り返ってみると賑やかな毎日に楽しかったですね」
と思わず懐かしく語ると。
「そう、いちかもずっと頑張って来たのね。そしてここまで… 大したものよ」
との言葉と優しげな眼差しについ嬉しくなって。


21 : コロ助MH :2018/02/20(火) 20:13:19
「えへへ、照れますな〜 そういえばそのリオ君なんですけど私が出発する時に『やっぱり、いちか1人だと心配だから俺も行く』って言ってくれたんですよね。まあ結局はそれを聞いたシエルが大泣きして大騒ぎになったんで中止になったんですけど、でも一緒に来てくれてたら今頃はゆかりさんと3人で店が出来てたと思うと…」
とそこまで言いかけてゆかりさんの方に振り返ると何か険しい表情になって固まった様な状態になって何かブツブツと呟いていたので思わず。
「ゆかりさん大丈夫ですか!どこか体調が悪いんですか?」
と駆け寄り両手を取り顔を覗き込むと一瞬、目を丸くするもすぐにいつもの笑顔に戻り。
「大丈夫よちょっと考え事してただけだから」
「良かった〜ゆかりさんに何かあったらもう私は生きていけないんですからね!」
と思わず芝居がっかた風に怒った態度を見せる私に実に楽しそうにクスクスと笑いながら。
「ごめんなさいね。そういえばさっきのストラップのマークで思い出したけどいちかって今でもプリキュアに変身する事はあるの?」
とさりげなく同じプリキュアとしてはあまり聞かれたくない質問が飛んで来てギクリとした。その様子にまたまたクスクスしながら。
「あるのね。一体どんな時に変身してるの?」
「いや〜実は今はゆかりさんが出してくれるんで必要ないんですけど、以前は目的地に入国した後は経費節減の為にほとんどの移動がプリキュアの力に頼ってました。ホイップになれば大抵どんな山も一飛びですし、長距離の移動にはクリスタルアニマルに乗せてもらえば何千キロでもあっという間ですから。」
「…まあせっかく便利で使える力があるんなら使わない手はないんだけれど、でも伝説のパテシエがね〜」
と少しだけ冷ややかな笑みで視線を送ってくるので何かないかなとオロオロしていると、ふといつも密かに楽しみにしている時の光景が浮かんできて『きっとコレなら』と。
「ゆかりさん、実はプリキュアの力を使っての私の密かに楽しみにしている事があるんですけど今晩ご一緒にいかがですか?楽しいですよ〜」
「それは本当に楽しいの? どんなものなの?」
と興味を示してくれたのでホッとして胸を撫で下ろし。
「それは夜になってからのお楽しみです!」
と満面の笑顔で答えた。

深夜遅く人々が寝静まった頃、キラパティの前にはふたつの影が立っていた。
「キュアラモード、デコレーション!」
瞬く光に包まれた次の瞬間、そこにはキュホイップとキュアマカロンが立っていた。
ホイップがキラキラルクリーマーを取り出しクリスタルアニマルを召喚し、いつもの人が乗れるサイズにした。それを見てマカロンも続こうとしようとするが。
「今日はマカロンは初めてですから私のに乗って一緒に行きましょう」
の言葉に一緒にうさぎのクリスタルアニマルの背に乗りホイップにつかまると。
「じゃあ出発しますね、しっかりつかまってて下さい。あと私が良いと言うまで今から目を閉じて下さい」
との言葉に目を閉じると同時にゆっくりと浮かび始めていった。グングン上昇してるのを感じながら感覚で自分はこれまで来た事ない世界に向かっている事が感じられた。5分程経っただろうかと言う時に。
「はい到着しました!どうぞ目を開けてみて下さい」
ホイップの楽しげな声にそっと目を開けると雲ひとつない満点な星空の空の下に自分達は宙に浮いていた。その圧倒的な光景には思わず息を飲んだ。眼下に広がる景色もいつもよりずっと近くに見える月と星の大きさには思わず、もうちょっと上に登って行けば本当に手が届くんじゃないかと錯覚する程だった。そんな唖然としている私の姿を見て嬉しそうにホイップが。
「マカロン本当に素敵でしょう!じゃあ動きますね」
とゆっくり前進し始めた。するとホイップが星座を指差しては説明してくれてそれが終わると地上の都市や有名な建築物や山脈について色々と細かくガイドしてくれた。その目を輝かせ生き生きとした嬉しそうな横顔に。
「いちかはいちかの歩幅でちゃんと前に進んでいるのね… 」
とつい思わずホイップの腰に回している手に力を入れてしまった。
「どうしたんですか?マカロン」
「ううん、大丈夫よ。ちょっと滑りそうになっただけだから」
「じゃあ落ちない様にしっかりつかまってて下さいね。行っきま〜す!」
と一気に速度を上げて行き星空の海を滑る様に飛んで行き目紛しく刻々と変化して行く光景にしばらく私は心奪われ続けた。

その後、二時間程ふたりだけの夜の空を満喫しキラパティに戻って来てテラスに並んで座ってくつろぎながらティータイムをしている。側にはさりげなくピラミッド型に積まれた団子が置いてあった。
「えへへ、満月じゃないんですけどせっかくお月見したので用意してみました〜ゆかりさん、夜空のお散歩はいかがでしたか?」
と満面の笑顔で訊ねてくる。


22 : コロ助MH :2018/02/20(火) 20:13:49
「勿論、最高に楽しかったわ。プリキュアの力を使ってあんな光景を見ることが出来るなんて考えた事がなかったから」
と素直な本心を伝えると更にご機嫌になり嬉しそうにしている。
「そういえばこの国についても随分詳しかったけど勉強したのかしら?」
「ええ、回った国のその土地の事、歴史の事は前もって出来るだけ調べておいて、その国の人達と仲良くなる為にピッタリのスイーツは何にしようかと考えてて、それで国を見て回るんだったら空を飛んで回れば早いなあと思って、でやってみたらあんな素敵な経験が出来るのでもう発見した頃には毎晩のように飛んでたんですよね… えへへ、ダメですかね?」
とさっきまでとは変わって少し申し訳なさそうに上目遣いでこちらの様子を伺っている。その仕草が可愛くて思わず笑みがこぼれて。
「ダメじゃないわ、それどころかすごい発見よ!さすがいちかね。今度皆に会った時には是非教えてあげましょう」
と伝えるとまたもやご機嫌になった様子で笑顔になって嬉しそうに。
「じゃあ、明日の晩もご招待しますよ!また行きましょうよ!」
「確かに楽しい事だけど、でもこれを毎晩やってたら寝不足になってお肌に悪いわよ。それに明日もお店もあるんだし」
と答えると少しだけ残念そうにしつつも納得した様子で。
「そうですよね〜でも今はゆかりさんが居てくれるから大丈夫っか」
と少し伏し目がちになりながら意味深な事を言うので『どう言う事?』と聞くと。
「私がこの夜空のお散歩が好きなのは勿論そこから見える光景が素敵だなと言うのも理由のひとつなんですけど、一番はどこまでも続く空の下を飛んでいると世界は同じ空の下にあるんだなって実感出来て、ゆかりさん、ひまりん、あおちゃん、あきらさん、シエル、お父さん、お母さん達ともどんなに遠く離れてても繋がっているんだと言うのが感じられるのが大好きなんですよね。だから…」
言い終わる前にいちかの肩に頭を預ける。
「もう寂しくない?」
突然の私の行動に一瞬、驚いてたけど静かに力強く『はい』と答えた。そしてその後はそのまましばらく会話をせずに静かに月を眺めていた。

気がつくと夜半も過ぎた頃だったのでそろそろ休まなければいけないわねと思っていると。
「月が綺麗ですね…」
といちかがしみじみと突然言い出したので思わず驚いて跳び離れてしまった。『いちか、本当に?』と思いつつも、そんな私の行動に驚きつつも向けてくる彼女の真っ直ぐな視線に目を離せずに動けないでいると。
「あれ?ゆかりさんどうしたんですか?顔が真っ赤になってますよ、大丈夫ですか?」
といつもと変わらない様子に、私を頻りに心配してくれる様子に全てを理解した。そして思い切り吹き出してしまった。
「いちか… あなたってプッ、あはははは!いつまで経っても私を楽しませてくれるわね〜大好きよ!あははは〜」
とおかしくて腹がよじれる程に笑っている姿に不思議そうにしていたけど、いつまでも笑っている姿に不機嫌になり。
「もう何ですかゆかりさん?!何がそんなに可笑しいんですか?」
と頬を膨らませて拗ねてる姿が可愛くてまだまだ止まりそうになかったが必死に堪えて。
「ごめんなさい。ちょっと昔の事を思い出して笑ってしまったのよ」
と曖昧に答えると『本当ですか〜?』と疑い深くしつこく聞いてきたけど。
「それよりそろそろ遅いからもう休みましょう。それとこれから夜空のお散歩はお店が休日の前日にしましょうか。もっとゆっくり回る事が出来るしね」
とウインクして伝えると一瞬で満面の笑顔に変わって嬉しそうに。
「やった〜今度の夜空のお散歩も楽しみだ〜」
と店に入っていった。自分も続いて中に入ろうとした時に振り返りもう一度月を見上げる。
「本当、月が綺麗ね ふふ」
きっと明日もまた素敵な1日が待っている、そう確信しながら扉を閉めた。


23 : コロ助MH :2018/02/20(火) 20:14:20
以上になります。「いちかはそんなに頭が悪くないぞ!」と言われる方がいらっしゃたらごめんなさい(笑。あと猫が愛情表現を示す時に相手に「頭を押し付ける」と言うのがあるので入れてみました。読んで頂きありがとうございました。


24 : 名無しさん :2018/02/20(火) 20:49:22
>>23
早くも2本目! 凄いです。
いちかが大好きなゆかりとリオの間に不穏な気配が……!?
何も気付いていないいちかが、すっごくいちかでしたw


25 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/02/24(土) 11:22:25
こんにちは。私も投下させて頂きます。
まずは小ネタで。ドリームスターズの世界観で書いてみましたが、映画自体はほとんど関係ありません。
気楽に楽しんで頂けたら嬉しいです。
タイトルは、「sweetなプリキュア」2レス使わせて頂きます。


26 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/02/24(土) 11:22:57
「いちかちゃ〜ん! このプリン、すっごく美味しいよぉ!」
「ほぉら、はるはる! 口の周りにカラメルソースが付いてるじゃん」
 満面の笑みでりすプリンを食べるはるかに、ペコリンドーナツをかじるきららが苦笑しながらハンカチを手渡す。
「どれも可愛くて、食べるのが勿体ないわ」
 いぬチョコレートの犬と目を合わせて困った顔をしているせつなの隣で、ラブがらいおんアイスを一口食べて、美味し〜! と歓声を上げる。

 今日はいちかたちに招待されて、プリキュアたちみんながキラパティにやって来た。
 この春、ある事件をきっかけにして、いちかたちは、はるかやみらいたちと出会った。その時、まだまだ沢山のプリキュアがいると聞き、それならば是非会ってみたいと、先輩たちみんなに招待状を送ったのだ。そして今日、ここキラパティで実に賑やかなスイーツパーティーが行われているのだった。

 追加のうさぎショートケーキを持って現れたいちかは、はるかに「ありがとう!」と答えてから、ぐるりと店内を見回した。
 いつもより狭く見えるほど大入り満員の店内では、どのテーブルもチーム入り乱れてワイワイと話に花が咲いている。その話に時々加わりながら、カウンターとスイーツ工房を行ったり来たりして手伝ってくれているのは、咲とゆうこ、それにマナだ。満といおなと六花は、あきらやゆかりと一緒に、スイーツを運んだりお皿を下げたりするのに余念がない。そんな中、アコと亜久里は二人仲良くカウンターを覗き込んで目を輝かせている。
 妖精たちとモフルンは、店の奥で大きな車座になってお茶会を開いていて、くるみとシエルは、時々ミルクとキラリンの姿になって、両方の話の輪に加わっている。
 それら全てを嬉しそうに眺めていたいちかの視線は、すぐ側から聞こえて来た、モゴモゴとくぐもった声の主のところで止まった。

「かにゃで〜、どれもおいひいね! さふが、でんへつの、ぱてぃひゅえだよ〜!」
 響が満面の笑みで、右手のスプーンでペガサスパフェのアイスをすくいながら、左手に持ったスワンシュークリームを、大きな口を開けて一気に頬張る。それを見て、隣の奏が、めっ! と顔をしかめてみせた。
「響! お行儀が悪い。いちかちゃんたちに笑われるわよ?」
「うふふ。元祖スイーツのプリキュアに褒められるなんて、わたしも鼻が高いですぞ」
 いちかがほんのりと頬を上気させて、ニコニコと笑う。それを聞いた響は、ゴクリと口の中のものを飲み込んでから、不思議そうに首を傾げた。

「スイーツのプリキュア? それって、奏のこと?」
「四人全員のことですよぉ。だって響ちゃんたちは、“スイートプリキュア”なんでしょ?」
「ああ、それはね」
 奏がようやく合点がいった、という表情で説明しようとする。ところがその言葉を、明るい声が元気一杯に遮った。

「うんうん! 奏ちゃんはスイートなプリキュアで〜、このケーキによく似た、甘くて美味し〜いカップケーキを作るんだよ。いちかちゃんたちのケーキもすっごく美味しい。これぞ幸せハピネス!」
 響たちと同じテーブルで、ひめと一緒にコトリカップケーキに舌鼓を打っていためぐみが、そう言ってグッと親指を立ててみせる。
「ちょっとめぐみ〜! 響たちの“スイート”は、“スイーツ”とは関係ないんだよ? スイートっていうのはぁ……」
 めぐみの隣で、ひめが少し得意そうに人差し指を立てたものの、その解説は、今度は複数の声に飲み込まれてしまった。

「スイートとスイーツかぁ。うわぁ、どっちも美味しそうだねっ、あゆみちゃん!」
「え、どっちも、って……」
「スイーツはお菓子で、スイートは甘い。だけどワルブッターが『フフフ……甘いなぁ』って言う時の“甘い”は、多分違うよね」
「やよい〜、今ワルブッターは関係ないねん……って、なお! 空のお皿、何枚積み上げとんねーん!」
「う〜ん、美味しい! ワルブッターはすこぶるどうでもいいけど、わたしはこ〜んなにスイーツが食べられて満足だよぉ」
「皆さん、ひめさんがおっしゃっているのは、そういう意味では……」
 みゆき、やよい、あかね、なおの掛け合いに、あゆみは戸惑い、れいかはマイペースにたしなめようとするが、誰も話を聞いていない。

「も〜! みんな、人の話をちゃんと聞いてよぉ。響たちの“スイート”は「組曲」っていう意味! 「甘い」って意味の“スイート”とはスペルも違うのっ!」
 しびれを切らしたひめが、ガタンと勢いよく立ち上がって叫んだ。
 ああ……と間の抜けたような声を上げるみゆきたちと、へぇ……と感心したような声を上げるいちか。これでようやく一件落着かと思いきや、いかにも何か考えているかのように腕を組み、くじらグミをひたすらモグモグと噛みながら、口を開いたのはえりかだった。


27 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/02/24(土) 11:23:35
「でもさぁ……モグモグ……いちかの言うことも……モグモグ……一理あるっていうかぁ……モグモグモグ……ほら、響と奏って……モグモグ……いかにもスイート、って感じじゃん……モグモグ……いっつも喧嘩してるようで……ゴックン……すっごくラブラブだもんね〜」

 一瞬、店内がシーンと水を打ったように静かになる。そして次の瞬間、さっきとはまた違った雰囲気の大騒動になった。

「ま、あんたたちがどんだけラブラブでも、あたしとマナに敵う人なんていないんだから。ねー、マナ」
「レ、レジーナ……」
「あ、あたしたちだって、みんな仲良しだもん! ね〜りんちゃん」
「こぉら、のぞみ! 痛いでしょーがっ!」
 カウンターにすっ飛んで行って、ここぞとばかりマナの腕に取りすがるレジーナに、六花はやれやれと溜息をつき、何故か対抗心を燃やしたのぞみが、りんの腕を力いっぱい締め上げて怒られている。
 咲が急いでお手伝いを切り上げ、ミルクが慌ててくるみの姿に戻って、それぞれ舞とかれんの隣に座り、二人同時に照れ臭そうに笑った。
「はー! みんな仲良し、お菓子もいっぱい、ワクワクもんだぁ!」
 楽しそうにそう叫んで、相変わらず猛然とスイーツを平らげていくことはの隣で、みらいとリコは周りの喧騒などどこ吹く風で、いつもと変わらず和気藹々としている。
 そんな仲間たちの姿を黙って見つめていたほのかは、にっこりと微笑んで、チョコレートケーキに夢中になっているなぎさの腕に無言で腕を絡めた――。

「な、何だか皆さんの雰囲気が……というか、圧力が……。ゆりさん、えりかの発言、何かおかしかったんでしょうか」
 不安そうな顔でフォークを置いたつぼみに、ゆりはフッと小さく微笑んで、ねこマカロンを上品な仕草で口に入れる。

(確かに……スイートがいっぱいね)

 口にも目にもいっぱいに広がった甘さを、もう少し長く味わっていたくて、ゆりはティーカップに伸ばしかけた手を止めて、そっと眼鏡を押し上げた。

〜おわり〜


28 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/02/24(土) 11:24:42
以上です。ありがとうございました!
皆様のお話、楽しみにしております♪


29 : コロ助MH :2018/02/24(土) 20:05:37
更に続きを書いてみました。やっぱり彼女達の未来を思い描くのは楽しかったです!それではよろしくお願い致します。
3、4レス使います。


30 : コロ助MH :2018/02/24(土) 20:06:32
現在私達は帰国してまだ早朝の薄暗い中、苺坂商店街をキラパティがかつて常駐していた場所を目指して歩いていた。
「いや〜本当に何もかもあのままですね〜懐かしいなあもう!」
と数年ぶりの故郷にテンションがマックスな私に。
「そうね、本当に変わらないわねこの街は。ずっとあの時からスイーツ産業で盛り上がっているのね」
と懐かしそうに歩きながら周囲を見回していた。
実は今日帰国して皆で集まってペコリンのお店でパーティーを催す事になっていたのだが、どうせだったらキラパティに集まってもらって私とゆかりさんのスイーツを皆に振る舞って修行の成果を見てもらおうと言う事に決めて約束より随分と早く目指す場所に向かっていた。
目的地に到着すると以前キラパティが建っていた場所にそっくりな建物があった。
「これがペコリンのお店か〜名前は『ペコリンパティスリー』ですって、後で見に行きましょうよ!」
「そうね、でもすぐ側でオープンするとペコリン達にバレちゃうからどこか別な場所にしましょうか」
との言葉にどこが良いかなと2人で思いめぐらせていると。
「キラッと閃いた!いちご山の妖精達のスイーツ工房はどうでしょうか? あそこだったら人気もないし、妖精達に頼めばきっと場所も貸してくれるし待ち合わせまで秘密にしてくれると思いますよ」
「それは良い考えね、あそこだったら周りを気にせずスイーツ作りに専念出来るから都合が良いわね」
と賛成してくれたので早速向かう事になった。
待ち合わせは12時だったがその1時間前には全てのスイーツが用意出来た。出国前にシエルに教えてもらった事、その後1人で色んな国を回って身に付けて来た事、そしてゆかりさんとまたキラパティで一緒になってから教えてもらった事と今の私の集大成が詰まったスイーツ達を前に。
「今の私の全て出し切ったんですけどみんな喜んでくれると嬉しいなあ」
としみじみ眺めて思わず呟くと。
「そうね〜見た目は格段に進化してるけど中身はどうかしらかね〜」
「え〜だって昨日はこれだったら大丈夫って太鼓判押してくれたじゃないですか!」
と思わず抗議すると『うふふ』とあからさまに意地悪そうな笑顔を向けてくるので。
「もう、ゆかりさんの意地悪!大嫌い!!」
とそっぽを向いて声高らかに宣言すると途端に崩れ落ち、よよよと泣き伏してしまった。
「ちょっとした冗談のつもりだったのに… スイーツ職人としての腕はいつも認めてると言ってるのに…もういちかと一緒に居られないのね…」
と予想外の反応に慌てふためいてしまい思わず全力で。
「ごめんなさい、嘘です!私はゆかりさんが大好きです!!もうゆかりさんが居てくれれば他に何もいらないです!!!」
とゆかりさんの両肩を持って伝えると上目使いで少し頬を赤く染めて。
「本当?じゃあ私をお姫様抱っこしてくれる?」
「任せてください!!」
と快諾しつつも正直ちょっと重っ、いや難儀だったが何とかゆかりさんを抱っこして店内を歩いているとどうやら機嫌が良くなってきたのでホッとしてた時にふと視線を感じたのでそちらの方を見るとドアの隙間から覗いていたあおちゃん達とキラ星一家と目が合った。


いちかとゆかりのキラキラパティスリー 〜波乱の帰国編(ゆかり無双編)〜


その後、キラパティをペコリンパティスリーの隣に移動してそれぞれの家族と苺坂商店街の皆を招待してふたりの帰国パーティーが行われた。皆が一様にいちかとゆかりのスイーツに舌鼓を打ち、特にいちかの父の源一郎は娘の成長ぶりに号泣しながらスイーツを食べている姿に、『もうお父さん、皆が見てるからやめてよ〜』と照れながらも目を真っ赤にして寄り添ういちかの様子にはその場にいた皆が目を潤ませ温かく見守っていた。そんな和やかな雰囲気の中、パーティーはつつがなく終了し今はプリキュア関係者だけ集まって二次会をしている。
「それでは皆で再会を祝してカンパーイ!」
とあきらの音頭で皆がグラスを掲げるのも全く盛り上がっていなかった。と言うのも大きい円卓を囲んで皆で座っているのだが何故かゆかりはいちかの隣に座って体をピタリ寄せてその肩に頭を乗せてうっとりしている。そしてそんな彼女達の対面にはリオが座っているのだけれども、その何か耐えてるかの様な不穏な空気が伝わってきて誰も話出せずにいた。そんな中、苦労人のあの彼女が切り出した。
「あの、ゆかりそれは何かな? いちかちゃんも困ってるんじゃないのかな?」
「ああ、ゆかりさんはこうすると疲れが取れるそうなんですよ〜」
と満面の笑顔でいちかが答える。続けて。
「よくふたりで『夜空のお散歩』に行くんですけど帰って来るとこうしてキラパティお月見してるんですよね〜一昨日も行ったんですけど月が綺麗でしたね〜ゆかりさん」
「そうね、とても月が綺麗だったわね。うふふ」
その言葉に一同が固まる『月が綺麗ですねって…意味知っているのか?』と。あおいがひまりに小声で尋ねる。


31 : コロ助MH :2018/02/24(土) 20:07:10
「ねえひまり、いちかの奴って中学の時の国語の成績はどうだった?」
その問いに無言で首を横に振るひまりの姿に、その一連の様子のやりとりを脇で聞いてたメンバー達も何だか気の毒そうな視線をいちかに送る。更に空気が悪くなってきたのであきらが話題を変えて。
「そういえばお店の方はどう?あれだけのスイーツが並んでいるんならお客さんもたくさん来てくれてると思うんだけど」
「そうなんですよ!ゆかりさんが来てからもう本当にすごくていつもどんなに用意しても全部完売しちゃうんですよ〜」
人差し指をを上に指差し目を輝かせながら鼻息を荒くする姿に皆が『相変わらずなんだなあ』とふっと場の空気が和んだのだが。
「この間もイタリアでオープンした時も情熱の国だけあって男性のお客さんがゆかりさん目当てに長蛇の列が出来て大変だったんですよね〜」
「ゆかりだったらきっとそうなるよね〜随分と言い寄って来られて大変だったんじゃないの?」
とあきらの少しおちゃけられた問いにゆかりがどんな返事をするかと思って皆が注目していたのがいちかが。
「そうなんですよね〜でもそういう人達に限って不思議と大抵一週間もしないうちに来なくなっちゃうんですよね。『また明日も来るよハニー達っ』なんて声をかけてくれたのにですよ」
と少し気落ちしている様子のいちかに。
「いちか、人にはそれぞれに事情があるのよ。その人達はきっとそれぞれ旅立って行ったのよ…」
その言葉の中、一瞬目が鋭くなったゆかりの表情を見ていちか以外のその場に居た全員は確信し背筋が凍えた。
「またあのお客さん達にも会えますよね?」
「きっといつかまた会えるわよ」
と優しく答えるゆかりの姿に全員が心の中で感じていた『再会出来るのはきっとあの世でなんだろうな』と。
更に空気が重たくなり暗くなるばかりだったがあきらは頑張って。
「そういえばゆかりとの一緒の生活はどう?楽しい?」
「ええ、とっても!スイーツ作りもそうなんですけどごはんの作り方とかも色々と教えてもらってまして随分と上達したと思います。正直言うとひとりだった時はやっぱり寂しかったので。だからこそこうしてゆかりさんとまた一緒にキラパティが出来るのが本当に嬉しいんですよね」
と伏し目がちに静かに幸せを噛みしめるかの様に語るその姿に、本当にいちかは今が楽しいんだろうなと言う気持ちが伝わって皆がしんみりしてまた良いムードになるも。
「あとゆかりさんってとっても可愛い所があるんですよ〜」
「へ〜どんな所かな?」
「夜は別々な部屋で寝てるんですけどたまに寝ぼけちゃうみたいで気がつくといつの間にか私のベッドに入ってきて一緒に寝てるんですよね…」
今まで一番の衝撃が走り抜け一同が凍りつく。そんな中ゆかりはしれっと。
「私夜は弱いのよね〜本当、参っちゃうわ」
とその言葉に全員心の中で『猫は夜行性だろ!!』と突っ込む。
「へ、へ〜それはよくある事なのかい?」
とダメージに震えながらも健気にあきらが立ち上がる。
「そうですね、週7日のうちに6日間位ですかね〜」
と答えゆかりと目が合い微笑み合う。その様子についにあの男が立ち上がり叫ぶ!。
「ほぼ、毎日じゃないか〜!!!」
と全員の心の言葉を代弁してくれた。そして。
「帰る!」
と怒って出て行ってしまった。すぐにシエルが心配して追いかけて行き、更にビブリーも続いたが去り際に。
「まあ元から勝てる訳ないと思ってたけど、それにしてもリオの奴ダッサ!」
と呟いてキラパティを後にした。
「ゆかりさん、リオ君どうしちゃったんですかね?」
「さあ、男の人の考える事は良く分からないわ」
と一見、冷めた様にしつつもどこか勝ち誇った様に答える。残された者達は衝撃の事実の数々に疲弊しその場でへたり込んでいたが。
「皆どうしたの?そうだ良かったら今日泊まって行きなよ!」
のいちかの言葉に皆がスイッチが入ったかの様に一瞬で立ち上がりそして口を揃えて。
「いや〜この後、用事があるんだよね。じゃあまた来るよ」
と一斉に帰っていってしまいゆかりとふたりだけになってしまった。
「皆、やっぱりそれぞれに忙しいんですかね〜」
と少し寂しそうに残念そうに言うと。
「ねえいちか、今日は洗い物がすごい事になっているけど明日片付ける事にしてこれから『夜空のお散歩』に行かない?」
「良いですね〜久しぶりの日本の空ですものね、行きましょう行きましょう!」
その晩はふたりでクリスタルアニマルに乗って故郷の空を満喫した。


32 : コロ助MH :2018/02/24(土) 20:08:02
当初は苺坂での滞在するのは1ヶ月の予定だったのだが『キラパティが帰って来た』と言うのが非常に話題になって好評を博し、更にはいちかの発案でキラパティ、ペコリンパティスリー、シエル・ドウ・レーヴの3店舗合同のコラボのスイーツの限定販売したり、極め付きはキラパティVS シエル・ドウ・レーヴのスイーツ対決を一般のお客様の投票で勝敗を決めるのイベント等、苺坂全体の活性化につながる催しが立て続けに行われた影響で地元だけでなく県外の多くのスイーツ愛好者が多く集まり大盛況な日々がしばらく続いた為に結局、出発が3ヶ月程遅れてしまった。ちなみその間は時間に都合がつけばあおい達かつてのキラパティのメンバーが入れ替わり手伝いに駆けつけてくれていたので厨房の中はいつもいちかの満開の笑顔で満ち溢れていた。

出発の日空港のロビー、いちかとゆかりの旅立ちににひまり、あおい、あきら、ペコリンと珍しく娘に気遣ってか源一郎がスーツ姿で見送りに来ている。
「いちか〜行かないでペコ〜もっと一緒にスイーツを作りたいペコ〜」
とペコリンがいちかにしがみついて離れないようとしない。その姿に愛おしさに思わず抱きしめてしまう。
「また絶対帰って来るから、そしたらまた一緒に作ろう!それまでには私はもっともっと美味しいスイーツを作れる様になっているから…だからペコリンもきっと上手くなっているんだよ」
との涙ながらも懸命にペコリンを励ますいちかの姿に仲間達は目を潤ませるばかりだった。
「あれ、そう言えばリオ君とシエルとビブリーがいないけどどうしたの?」
「あ〜何かどうしても外せない用事があるって。ふたりによろしくって言ってたよ」
とどこかとぼけた風にあおいが答える。

いよいよ出発ゲートに向かおうとした時に源一郎が『いちか!』と呼び止めるそして。
「元気でな!くれぐれも健康にだけは気を付けるんだぞ!」
と涙を流しながらいちかを抱きしめている。いちかの方はものすごくうんざりした表情をしているのだが『これも親孝行』と思っているのか必死に耐えている様子だった。ゆかりもその光景は少々、面白くなさそうな表情で眺めていたが次の源一郎の一言で一変する。
「ゆかりさんっ!いちかを娘を何卒、くれぐれもよろしくお願いします!!」
その言葉にゆかりは今まで見た事がない程に表情を輝かせ姿勢を正し右手を胸にあて。
「はい、お父様お任せ下さい!いちかさんは私が必ず幸せにします!!」
どうみても結納の時に交わす挨拶にしか見えないゆかりの答えに一同はズッコケ、滑り落ちる。
「ありがとうございます!お願いします!」
と繰り返す源一郎の様子にいちかは『もう恥ずかしいなあ〜お父さん、皆見てるよ〜』と真っ赤になっているのに対しゆかりの方はと言うといつもより数倍凛々しい顔で『お父様』と接していた。
やがて出発の時間になり搭乗ゲートを手をつないで微笑み合いくぐるふたり、それを源一郎が傍目を気にせず万歳三唱で送られる様子はどう見ても新婚旅行に旅立つカップルにしか見えなかった。その様子に皆がツッコミ所満載だったがあえてその幸せそうな雰囲気に水を差す訳にもいかず誰もが黙って見送ったのであった。

見送りから帰路の道中、立神コンツェルン御用達のリムジンに乗っているあおい、ひまりん、あきら。ちなみにペコリンは源一郎を気遣って一緒に食事して送ってから帰るとの事である。
「あの様子だとあのふたりにリオが立ち入る隙はないみたいだけど、って言うか大丈夫なのかな?」
「う〜ン、でも本人の強い意向ですし…」
「まあでもシエルとビブリーがいるから最悪な事態はないかな…と思うよ。それより何よりもゆかりはいちかちゃんの事を大事に想っているからそれだけは信じて良いかな。その証拠にいちかちゃんの様子があの頃と変わらないで無邪気と言うかまっすぐのままだったじゃない。だから私達の危惧はただの思い過ごしかもしれないよ」
とのあきらの言葉に一応納得しつつも親友の行く末を大いに心配するあおいとひまりだった。


33 : コロ助MH :2018/02/24(土) 20:08:34
ちょうどその頃、クローズ状態のキラパティの中には2匹の妖精と人間の姿があった。
「何でビブリーも来てるんだピカ!」
「何言っているの!ビブリーは私達の家族じゃないキラ!」
「…まあ私はスイーツが好きなだけ食べれればどこに行っても良いんだけどね、でも私達ここに置いて貰えるのかしらね。特にアンタは」
と冷ややかな目線を送るビブリー。『いちかが心配だから一緒に俺と来てくれ』の言葉にキラリンは同行し、となればビブリーもついて来ているのだが正直3人ともこの先どうなるのか全く予想がつかなかった。
「さっきのいちかのお父さんとのやり取りを聞いたでしょう、向こうに着いた途端放り出されるんじゃない?」
「…それでも何とかしてここに居て俺はゆかりの魔の手からいちかを守らなければいけないピカ!」
と闘志を燃やす姿を見て『はい、はい』と軽く受け流す。一方キラリンの方は。
「キラリンはピカリオと一緒だったらどこでも行くキラ。それにいちかとゆかりはきっと私達をここで雇ってくれるキラ!」
と2人に笑顔で伝える。どうやらピカリオに『一緒に』にと誘われたのが嬉しかった様である。

果たしてこの先にキラ星一家の待ち受ける運命とは…続く…かも(笑。


34 : コロ助MH :2018/02/24(土) 20:10:18
以上になります。ありがとうございました。続きは余力がありましたら頑張りたいと思います(笑。


35 : 名無しさん :2018/02/25(日) 17:43:50
>>34
早くも第3弾!?
もう完全にゆかりの独壇場ですな。
リオ君の巻き返しに期待したいような、とっても心配なような……。
続きに期待!


36 : ドキドキ猫キュア :2018/03/02(金) 17:37:37
お待たせしました!! スイーツのお話4本立てです♪

1 かき氷

2 甘い印

3 はーちゃんのクッキー

4 アイスと不良と委員長


37 : ドキドキ猫キュア :2018/03/02(金) 17:38:49


ビブリーが風を引いた。いつも頑張ってくれていたし、きっと疲れが出たんだろうとシエルは思った。

普段は憎まれ口を叩く彼女も病気だと流石におとなしい

シエル「ねぇ ビブリー 何か食べたいものない?」

ビブリー「・・・かき氷」

少し考えてからビブリーはそう言った

シエル「かき氷?こんな季節に それにもっと栄養のあるもののほうが」

ビブリー「私はかき氷がいいの!!」

シエル「はいはい 分かったわ(苦笑)」

どうしても かき氷がいいと言うので シエルは かき氷を作る事にしました。

シエル「出来たわ 食べれる?」

ビブリー「・・・シエルが食べさせて」

シエル「え?」

ビブリー「食べさせて!!」

シエル「はいはい・・・どう?おいしい」

ビブリー「ん・・・まあまあね」

シエル「相変わらず素直じゃないんだから(苦笑)」

ビブリー「何か言った?」

シエル「別に 何も言ってないわ」

ビブリー「あーん」

シエル「はいはい・・・」

やれやれと思いながらも シエルはビブリーの口にかき氷をまた運びました。


38 : ドキドキ猫キュア :2018/03/02(金) 17:40:20
2 甘い印

あきら「お待たせ」

ゆかりが一人お茶をしていると 伸ばした赤い髪を結んだあきらが 少し息を切らしてやって来た

ゆかり「待ちくたびれたわ」

あきら「ごめん ごめん」

ゆかり「冗談よ。仕事のほうは順調?」

あきら「覚えなきゃいけない事も沢山で大変だけど みくやみくのように苦しんでる人達を救う為なら頑張れるよ♪」

ゆかり「あなたは相変わらずね(笑)」

あきら「ゆかりもね(微笑)」

高校を卒業して それぞれ 夢に向かって走り出してから 早数年・・・ あきらとゆかりは 時々 会っては近況を話したりしていた。

ゆかり「この前 あおいのライブを見たわ。ワイルドアジュールもすっかり有名になったわよね(微笑)」

あきら「そうだね(微笑)」

ゆかり「ひまりはまさか本を出すなんてねぇ」

あきら「スイーツの科学の新しい本。立花先生も絶賛してるらしいね」

ゆかり「中々面白い本だったわ(笑)」

あきら「私も今度読んでみたいな」

ゆかり「貸してあげましょうか?(微笑)」

あきら「でも 読んでる暇があるかな〜(苦笑)」

ゆかり「本当に 忙しいのね。返すのはいつでも構わないわよ」

あきら「ありがとう。」

ゆかり「シエル達は相変わらずみたいね」

あきら「またスイーツコンテストで優勝したみたいだね。お店も益々人気みたい」

ゆかり「お店と言えばペコリンがお店を出すなんてね」

あきら「あの小さかったペコリンが成長したよね(微笑)」

ゆかり「いちかは今頃何処にいるのかしらね?」

あきら「いちかちゃんならきっと笑顔でスイーツを振る舞っているさ」

ゆかり「そうね(笑)」

あきら「美味しいね また腕を上げた?(微笑)」

ゆかりのマカロンを一口食べてあきらが言います

ゆかり「ふふっ。あきらのチョコも中々のものよ(微笑)」

ゆかりはあきらのチョコを食べてそう言います。

あきら「バレンタインデーとホワイトデーを一辺にやってるのなんて私たちくらいだよね」

ゆかり「いつ会えるか分からないものやれる時にやっておかないと」

あきら「でも 本当に美味しいや 久しぶりのゆかりのマカロン」

ゆかり「モテモテなあなたの事だもの チョコもスイーツも嫌という程貰ってるんじゃないの?(笑)」

あきら「ははは・・・ お返しが毎年大変でね(苦笑)」

ゆかり「ほんと 昔から変わらないわね」

あきら「ゆかり・・・!?」

ゆかり「やっぱり・・・他の誰かに取られないように印を付けておかないとね(微笑)」

そう言ってゆかりはあきらに口付けをした。口の中でチョコとマカロンが混ざったようにあきらは感じた


39 : ドキドキ猫キュア :2018/03/02(金) 17:41:05
3 はーちゃんのクッキー

キッチンから激しい音がする 慌てた声も聞こえてくる。何事かと思って 心配するけれど モフルンに止められて立ち入る事が出来ない。

どうやら はーちゃんがクッキーを作っているようだった。ありがとうの気持ちを込めて作ったそのクッキーは塩と砂糖を間違えていて ちょっとしょっぱかったけれど わたし達にとってとても美味しくて忘れらない味だった。

あれから数年・・・ またキッチンで慌ただしく作業する音が聞こえてくる。

魔法界とナシマホウ界が繋がってしばらく経ったある日 はーちゃんがまたクッキー作りに挑戦していたのだ。

はーちゃんの気持ちを刺激したのは 新しくできた友人の存在だろう。パティシエのプリキュア・・・ キラキラルという力はまるで魔法のようだと思った。

何でも作れるなんてはーちゃんの魔法みたい(苦笑) キラパティの装飾を見てそう感じながらリコはふと周りを見る。

キッチン前を死守し続けてるモフルン。スイーツ作りを手伝いたくて仕方ないいちかとペコリン。それを止めるひまりとあおいとあきら。 そんな様子を面白そうに見ているゆかり。

クッキーのエピソードを聞いて 塩味のクッキーなんてまずいだろうと 言うビブリーとそれに反論するシエルに呆れるリオ。 その様子に苦笑いを浮かべるみらい。

本当に賑やかな子達とリコははーちゃんのクッキーを待ちながら思いました。

はーちゃん「はー 出来たよ♪」

みらい「わ〜すごい♪」

はーちゃんのクッキーには みんなの顔が描いてあって みんなそれぞれのクッキーを手にとって食べた

はーちゃん「どう?」ドキドキ

モフルン「美味しいモフ〜」

みらい「こんなクッキー食べた事ないよ♪」

ペコリン「とっても美味しいペコ〜」

キラリン「美味しいキラ〜☆」

いちか「めちゃんこ美味しいですぞ♪♪」

あおい「うん、すっごく美味しい!!」

ひまり「美味しいです(微笑)」

ビブリー「まあ 美味しいわね」

ピカリオ「相変わらず素直じゃないピカ(呆れ)」

あきら「あはは(苦笑)」

ゆかり「ほんと 美味しいわね・・・」

はーちゃん「リコ?どうしたの 美味しくなかった( ; ゜Д゜)」

リコ「違うのよ!! とっても・・・とっても美味しいの(涙)」

みらい「そうだね・・・とっても美味しいよね(微笑)」

ペコリン「キラキラルがいっぱい溢れてるペコ〜」

いちか「はーちゃんの・・・はーちゃん達の大好きがいっぱい詰まった素敵なクッキーだから キラキラルも沢山溢れてるんだね(微笑)」

そのクッキーはあの頃と同じ 甘くてしょっぱい味がしたけど やっぱり とても美味しいかったわ。


40 : ドキドキ猫キュア :2018/03/02(金) 17:42:09
4 アイスと不良と委員長

それはまだはなが転校してくる前の頃の出来事

最近駅前に出来たアイス屋さんが学生の間では
人気だった。女の子なんかは学校の帰りに連れ添って買い食いなんてしていた程。

優しくて頼りがいがあるさあやは人気者だけど 友達といえる存在がいる訳でもないし、誰かから誘われるという事もなかった。それはさあや自身が辛党であるという噂が広まっているせいもあるかも知れない。

別に アイスや甘いものが嫌いという訳ではないのだけれど・・・

今日も 学級委員の仕事ですっかり帰りが遅くなったさあやは 何となく駅前の所を通ろうとすると 意外な人物がそこにいた。

さあや「輝木ほまれさん?」

元 スポーツクラスでスケート選手だった輝木ほまれ。クールでその雰囲気から不良と噂もされてる人物を目の前にしてさあやは少し戸惑う。

ほまれ「委員長も買い食いとかするんだ」

さあや「えっと・・・」

ほまれ「驚いた?元スケート選手の不良がこんな所にいて(笑)」

さあや「そ、そんな事は・・・」

ほまれ「冗談(微笑)」

さあや「えっと・・・アイス 好きなんですね」

ほまれ「スケートで体動かした後に食べるアイスがまた格別なんだ(微笑)」

さあや「ふふっ(笑)」

ほまれ「何?」

さあや「ほまれさんって クールで近付き難いイメージだったけど 可愛らしい所もあるんですね(微笑)」

満面な笑顔でアイスを頬張るほまれを見て さあやは微笑んだ。

いつも一人でいてもの静かで みんなが言うように恐いイメージがあった輝木ほまれさん。 しかし、話して見ると意外とサッパリした人で 茶目っ気もあって いい人なんじゃないかとさあやは思っていた。

そして月日は流れ・・・

はな「美味しい〜♪」

ほまれ「ね、美味しいでしょ?ここのアイス」

ハリー「ホンマやな〜」

はな「美味しいね さあやちゃん♪」

さあや「ふふふ そうだね(微笑)」

はな達と幸せそうにアイスを頬張るほまれの姿を見て さあやはまた 微笑みました。


41 : ドキドキ猫キュア :2018/03/02(金) 17:43:07
以上です


42 : 名無しさん :2018/03/02(金) 18:41:56
わー、一気に来ましたね!

>>37
やっぱりビブリーの思い出の味は、あのかき氷♪
ツンデレのビブリー、めっちゃ可愛いです。
シエルが悩んでるときは姉みたいにも見えるのに、こういう時はやんちゃで甘えん坊の妹みたいw

>>38
あきゆか! 二人も仲間たちも、それぞれの道を頑張ってるのが感じられますね。
そしてラストは……ごちそうさまです!

>>39
猫キュアさん、台詞ますます冴えてるなぁ、と思った一本。
確かにはーちゃんの魔法とキラキラルポットって、ちょっと似てるw
クッキー・第2弾のしょっぱさは、きっとうれし涙の味、ですね。

>>40
早くもはぐプリSS登場!
なんか次回以降を先取りしたみたいなお話、ニンマリでした。
早くほまれのこういう笑顔が見たいです。


43 : 名無しさん :2018/03/03(土) 09:22:50
おはようございます、運営です。
過去の競作に何度も参加してくださっているれいん様より、出張所に素敵な動画を頂きました!
SS参加ではありませんが、この競作のために作って頂いた作品と言うことで、せっかくなので
こちらにもTwitterページを掲載させていただきます。れいん様、どうもありがとうございました!

ttps://twitter.com/rain882011/status/969399624363470848


44 : 運営 :2018/03/03(土) 09:24:11
>>43
すみません、名前ミスった……(汗)
URLはhを足してくださいね。


45 : 名無しさん :2018/03/03(土) 21:16:55
>>37
熱でてわがまま言って甘えるビブリー可愛い♪この王道さがたまらない。
>>38
やきもち妬いて拗ねるパターンかと思ったら、そうきましたか、甘〜い♪
>>39
う〜ん、いいですね。そっか、はーちゃんのクッキーはやっぱり……だったのねw
変わらないことが嬉しく思えたお話でした。
>>40
意外とほまれにアイスは似合ってるね。アイスほおばる姿も様になってると思うよ♪


46 : コロ助MH :2018/03/03(土) 22:23:12
こんばんは、またまた続きを書いてみました。あとあらかじめお詫びしておきますが、リオいち派の方々には本当に申し訳ありません(笑。それではよろしくお願い致します。


47 : コロ助MH :2018/03/03(土) 22:25:42
「ここは?」
気がつくと俺はスーツ、いやタキシードか、を着て赤い絨毯の上を規則正しく歩いていた。そして右側を観ると俺の腕を組んで一緒に歩んでいる純白のウエディングドレスに身を包んだいちかの姿があった。思わず『えっこれって?、ひょっとして俺と?』と戸惑いつつもその美しい横顔に思わず見惚れているとその視線に気が付いたいちかがこちらを向く。
「えへへ、今日のあたしはどうかな?綺麗かな?」
ウエディングドレスとメイクのせいもあっていつもより数倍眩しい笑顔に直視出来ず俺はただ「ああ、」としか答えられなかったがそれでも。
「ありがとう!リオ君、私、幸せになるね!」
との言葉と同時に腕をスッと外し先に行こうとしたので追いかけようとすると。
「おいおい、いちかのドレス姿に見惚れてたな〜エスコート役はそこまでだよ!」
その声にふと我に返り周りを見回すと知った顔ばかりだった。キラパティのメンバー、苺坂商店街の面々、更によく観るといちご山の妖精達も見つからない様にあちらこちらに隠れて盛り上がっていた。そんな中、ビブリーが近寄って来てそっと耳元で呟く。
「アンタ、エラかったよ!恋敵に送り届ける役なのによく立派に努めたよ!!あたしゃはアンタを見直したよ!」
と褒めてくれるのだが酒が入っているせいなのか今ひとつ何のことか伝わって来なかったがいちかが向かった先で待っている人物を見た時に全てを理解した。そこには全く同じウエディングドレスを着たゆかりが立っていた。
「と言う事は、この結婚式は…」
と確信した瞬間、祭壇に向かおうとするもビブリーがかなり酒が入っているのか「えらい、えらい!」と後ろから頭を撫でながら首に腕を回してるので動けない。更にその様子を見てたシエルが、これまたかなり酒が入っているのか正面から抱きしめて来て。
「ピカリオ、いちかをちゃんと見送る事が出来てあなたは本当に立派だったわ〜寂しいかもしれないけどこれからは私とビブリーが一緒に居てあげるから安心して!ねえビブリー?」
「おうよ、あたしとシエルは…グエヘヘの仲、と言う事はピカリオはあたし達の弟だもんね〜可愛がってあげるわよ〜」
と身動きが取れない中で更に首を絞めてくるので意識が飛びそうになりながらも俺は祭壇のいちかとゆかりの婚礼の儀式を見つめていた。指輪交換が済んで定番の『健やかなる時も病める時も…』と続き『誓いのキスを』の時には力任せにふたりを振り解き祭壇へ向かって駆け出したのだが何故かいつまで経ってもいちかの下には到着しなかった。思わず『いちか〜』と叫ぶとこちらを向いて満面な笑みを見せてくれているのだが隣にいるゆかりは勝ち誇った顔で優雅にこちらを見下ろしていた。その姿に尚一層に力を入れるが一向に前に進まない。
「いちか〜俺は!俺は〜」
と思い切り右手を伸ばそうとした時に『ゴンっ』と言う衝撃が全身に走って、目を開けると自分がベッドから落ちた事に、そして今観た事が全て夢だった事に心から安堵した。
「あ〜あ、本当に縁起でもない。とんでない夢を見たピカ!」
と呟きあらためて辺りを見回すと自分の今の置かれてる状況を見て朝なのに思わず溜め息をついてしまった。今の自分はキラパティのイートインコーナーの片隅に置かれてる高さ150センチ程の見た目はログハウスで、平たく言うとちょっと豪華な犬小屋が寝床になっている。当然そのサイズなので中に入る時は妖精の姿にならなければならないし、正直言うとこの扱いには時に枕を涙で濡らす事もあるのだけれども、でもそれ以上に俺自身の目標の為に、そしてさっきの夢みたいな未来を回避する為にも何が何でもここに居続けなければならないとあらためて心に誓った。


目的地に到着してキラパティをオープンした時いちかとゆかりは心底驚いた様子だった。そんな彼女達に俺たちは『一緒に修行をして世界を回りたい』と伝えると途端にゆかりは険しい表情になって何かを言い出しそうになっていたがその前にいちかが俺達3人に飛びついて来て。
「シエル、ビブリー、リオ君!また一緒にスイーツを作れんだよね!嬉しい!嬉しいよ!!」
と涙ながらに抱きしめて大歓迎な姿に正に苦虫を噛み潰した表情をしていたが一息ついて平静を装って伝える。
「いちか、シエルとビブリーをこのキラパティに迎えるのは賛成するわ。でも女性だけの同じ屋根の下で男性であるリオは置く訳にはいかないわ!万が一、間違いがあってはいけないし。オーナーとしてもこれだけは絶対許可出来ないわ」
「え〜ゆかりさん、リオ君なら大丈夫ですよ!」
と懸命に庇ってくれる嬉しい言葉にチクリと胸が痛んだが『今がチャンス!』とここに置いてもらう為の最後の手段に出た。


48 : コロ助MH :2018/03/03(土) 22:28:52
「ゆかりさんっ、必ずここでお役に立ちますからどうか俺をここに置いて下さい!お願いします!!」
と膝をつき頭を床に擦り付ける姿にキラリンとビブリーは息を飲んだ。その姿にいちかはゆかりにすがりつき。
「ゆかりさん、私からもお願いします!ここにリオ君も置いてあげて下さい!!」
との言葉にとても困惑した表情になったが一瞬、ふと何かひらめいたかの様な表情を見せて。
「分かったわ。私も別に3人と一緒に居たくなくて言ってる訳ではないのよ。でもここには住居スペースの部屋が二つしかないから言ってるのよ、そう言う事だから私はいちかの部屋に行くからシエルとビブリーは私の部屋を使ってちょうだい。いいわよねいちか?」
の言葉に『はい』とホッと安堵するいちかの姿にこちらも安心するも、でもよくよく考えたらふたりはこれから同じ部屋に居る事になる訳でひょっとしたら俺の行動は結果的にはふたりの仲を進展させるキッカケを作ってしまったのかもしれないと内心狼狽していると、それを見透かしたかのタイミングでゆかりがオブジェ中のひとつを指差して。
「…そう言う事でここには他に部屋がないので申し訳ないけどあなたはにはあれを使ってもらうわ。その姿では無理だけど妖精のサイズだったら充分でしょう」
と『うふふ』と勝ち誇った顔で俺に伝える。当然いちかは『そんな可哀想ですよ!』と大反対してくれたのが実際問題、部屋の空きはないしとりあえずいちかの側にいる事を最優先にし受け入れた。そしてこの時『この店に居られればそのうちにきっといちかと…』と内心ガッツポーズを取っていたのだが、それがいかに浅はかな考えだったとこの時の俺は知る由もなかった。


いちかとゆかりのキラキラパティスリー 〜ゆかいな仲間達編(リオ受難編)〜



5人の新体制になったキラパティで初仕事の日、俺たち3人は厨房に集められ朝礼が始まった。そして店長であるいちかから。
「今日から5人体制になった訳ですが、とりあえず3人にはこの店の1日の流れを見て欲しいので今日は見学してもらいますのでよろしくお願いします」
との予想外の言葉に驚く俺たち。それなりに修行を積んで来たので腕に自信があったし実際、コンテストでも何度も優勝してるのに『いきなり見学ってなんだよ』と少し不機嫌になっているとそれを察してかいちかが近づいて来て。
「勿論、リオ君もシエルも何でも出来るし私より腕が上なのも理解してるつもり。だってこの間もお店同士のスイーツ対決も負けちゃったしね。でもこれから一緒にお店をやって行くんだから私がどこまで出来るのか、これまでの修行の成果を3人に見てもらいたいの。ダメかな?」
と真っ直ぐな眼差しでお願いして来られたら断れる訳なく『じゃあ、見せてもらおうか』の言葉に『うん、見ててね』とゆかりの元に戻って行く。すぐにふたりで今日の店に出すスイーツの種類と数量についてディスカッションが始まりどんどんプランが練られ決まっていった。俺たち3人は壁際に移動してその様子を見ていたがふたりのスイーツに対する真摯な姿とその情熱がひしひしと伝わって来て、思わずこちらもすぐにでも一緒にスイーツ作りに参加したくなるほどだった。ふと隣のキラリンを見ると同様に感じたらしく頬が紅潮させながら見入っていた。やがてメニューも決まり『レッツラ、クッキング!』で始まったスイーツ作り、って言うか「未だにそれやってのか」と思わず苦笑してしまったのだがそれはすぐに引っ込んだ。

今のスイーツ界において「『琴爪ゆかり』と言うその名を知らぬものはいない」と言われる程に凄腕だと、世界中の有名店から誘いが引く手数多だと聞いていたけどこれ程とは正直思わなかった。キラパティの厨房は広い方ではない、が逆にそれを逆手にとって無駄のない動きで予め置いてある調味料と材料を数度往復しただけで見る見るうちに生地を焼き仕上げていく様子はまさに神業だった。出来上がったスイーツは全部でおよそ100ほど、7品同時進行だったがデコレーションも含めても全部を作り上げるのに1時間弱しかかからなかった。そして何より驚いたのがいちかの上達ぶりだった。海外に出発する前にウチで修行した日の姿が遠い過去の様に感じる程の立派なスイーツ職人に成長していた。諸外国を回ってるうちに独学で腕を磨いて来たんだろうし、そしてゆかりが帰ってきて随分と手ほどきを受けたのは明白だった。何しろあの動きについて行って更に指示まで出していたのだから。そういえばスイーツ対決の時は自分達の事に夢中で彼女達の作業はほとんど見てなかったし、それに勝敗の決定は来場者の投票だったが僅差の勝利だったのを思い出した。その光景に俺たちは声にならずに固まっていると。


49 : コロ助MH :2018/03/03(土) 22:30:38
「どうだった?リオ君、シエル?今日は上手く出来たんだと思うんだけど試食してみてくれる?」
と出来上がったスイーツを差し出して来た。それはあの頃と同じうさぎショートケーキ達で、聞けばずっとこの店の定番なんだそうだが一口、口に入れてみるとキラリンもビブリーも。
「美味っしい〜!!!」「パルフェッ!!」
とそのあまりの美味しさからか昇天しかねない程の恍惚な表情を浮かべ震えていた。俺も続いて味見してみたが思わず『これはっ!』と声に出してしまった。この優雅な上品さを感じる中に素朴と言うか食した者を元気に、あるいは応援してくれるかの様な優しさが伝わって来た様に感じた。そしてそれを自分が感じた事をそのままいちかに伝えると。
「え、本当に〜?!やった〜ゆかりさん!!」
と嬉しさのあまりに飛びつきゆかりも優しく受け止め微笑みあってる姿にあらためてふたりの仲の良さが、絆の深さが伝わって来て、と同時に普段ゆかりがいちかにベッタリでも別段気にしない様子にはまだLOVEかLIKEかは分からないけど彼女の事が大好きで心底信頼しているからこそなんだと理解した時には、自分が選んだ道が容易ならざるものだったと再認識せざる得なかった。思わず呆然としているとシエル近づいて来てそっと耳打ちして。
「ピカリオ、パテシエの修行としても恋敵としのぎを削るにしてもここは最適な場所だけど、どうする?」
とキラリンが俺の内心を見透かした様にウインクして来たのに我に返り自分の当初の目的を思い出し。
「ああ、そうだな。俺はここでパテシエとしても男としても大成してみせるよ!」
と笑顔で返すと「さっすが、我が弟!」
といつもの様に抱きついて来たのでそれを見てたビブリーが呆れて。
「あんた達、本当にいつまで経っても変わらないわね〜永遠のブラコンにシスコンだわ」
その言葉にいちかとゆかりも可笑しそうに笑いあっていた。こうして俺たち3人はキラパティの一員として働く事になった。

これまではシエルと2人でずっと店を切り盛りしてたので他所を知らなかったせいもあって『キラパティでは果たして?』と思ってたが意外と言うか、あっさり溶け込む事が出来たのはいちかの力が大きかっただなとしみじみ思う。ゆかりの方はと言うと真面目に仕事をしている分、って言うか勿論そのつもりで頑張っているのが伝わった様で特に意地悪や妨害などはなく、むしろ皆で新作のスイーツの開発等で話し合う時には熱い討論を交わす場合があったりして、いちスイーツ職人として見ても常に高みを目指す姿勢は尊敬出来ると感じていた。
キラパティの1日の流れは開店前に皆でスイーツ作りをして準備し備えて、開店後はカウンターにはいちかとゆかりとシエルが交代で立ち、スイーツの売れ行きと追加が必要かのチェックをしている。俺とビブリーは主に店に立ってギャルソンとセルヴーズとして接客し注文取りをしているのだがその大盛況ぶりに常にてんてこまいで、果たしてふたりだった時はどうやって回してたんだろうと疑問に思ったのでいちかに聞いてみたら。
「そうなんだよね〜開店前に目一杯、作り置きしておくんだけど午後イチには完売しちゃうから追加分はもうお昼食べないでずっとふたりで作ってたんだよね〜でもゆかりさんと一緒だったから全然苦じゃなかったよ」
とふとゆかりの方に目線を送ると気づいて一緒に微笑み合う。その様子に『ああ、あの時にいちかが最初に日本を立つ時に一緒に付いて行ってればこのポジションきっと…』と思うと悔やんでも悔やみきれない。

自分の本来の目的はともかくパテシエとしてキラパティの一員としてそれなりに順風満帆な日々を送っていたのでついつい忘れてしまっていたが、やっぱり俺と言う存在はゆかりにとっては『招かれざる者』だったんだなと、それを実感出来たのはキラパティに来て約1ヶ月後だった。最初の給料日に俺たち3人が整列させられてオーナーであるゆかりが。
「シエル、ビブリー、リオ、お疲れ様でした。これが今月分の給料です。ただ知っての通りこのキラパティは店長のいちかの方針でたくさんの人に安くて美味しいスイーツを提供したいので、優先すべきはお客様ですのであまり高い給料は支給出来ません。どうかご了承ください」
と深々と一礼する隣でいちかが申し訳なそうに頭を掻きながら。
「えへへ、皆ごめんね〜でも私、皆と一緒にキラパティが出来て嬉しいんだ〜本当にありがとうございます」
とゆかりに倣って深々と一礼する。その姿に思わずいたたまれなくなったのかシエルとビブリーが駆け寄り。


50 : コロ助MH :2018/03/03(土) 22:31:38
「ボン、私はいちかとゆかりと一緒に修行したいからここに居るのよ!だからそんな事は気にしないで」
「あたしはスイーツが好きなだけ食べられんだったらどこでも良いんだけど、でもこんなにとっても美味しいスイーツがある所を他に知らないからここに居るのよ!」
とそれぞれの自身のキラパティへの想いを伝えるといちかが目を潤ませながらふたりに抱きついていた。続いて俺もと。
「いちか、俺もふたりと一緒だよ。ここでしか学べない事があるからこそ俺たちはここに来たんだ、だからこれからも一緒にスイーツ職人として高みを目指そう!」
との言葉にいちかがこちらにも駆け寄ろうとした瞬間、ゆかりがスッと間に入り。
「いちか、それじゃ皆に渡すわよ。良い?」
の言葉に我に返ってしまったみたいで『はい…』恥かしそうに赤くなりながら下を向いてしまった。シエル、ビブリーに続き給与袋を受け取ったのだが一瞬、ゆかりがほくそ笑んだかの表情をした気がしたので不思議に思っていたら部屋に帰って封筒を開けたら全てを理解した。この1ヶ月間かなり働いてきたつもりなのに随分と少ないなと思ったら計算してみるとこのご時世なのに時給500円だった。更には寮費も差し引かれていて、って俺だけこんな犬小屋なのに!『何故?』と腹ただしく思えたが瞬間、先程のいちかの姿が頭をよぎって落ち着きを取り戻す。『そうかこの待遇は俺だけじゃなくきっとキラリンとビブリーもなんだな」と納得する事にしたのだが後日さりげなくふたりに『給料はどうだった?』尋ねると。
「ああ、あれ。ゆかりはあんな事言ってたけどそれなりに入ってたわよね 謙遜して言ったのかしらね」
と口を揃えて言うのでとぼけて口裏を合わせてそれとなく大体の金額を聞くとどうやらふたりとも自分の3倍以上の金額をもらっていた…。その事実に腹が立ちすぐに抗議しように行こうかと思ったけど、おそらく文句を言えば『気に入らなければ出て行けば?』と返されるだろうし、ゆかりの独断でやった事だから当然いちかは知らない訳で、となると俺が『お金の事で揉めてる』と知れば悲しむ事になる。あの給与明細を見せると言う手もあるがそれだと告げ口したみたいで何だか男らしくないし… と言う事でここは涙を飲んで我慢する事にした。

それから更に数ヶ月が経った頃には人間関係においても色々と変化があった。俺もキラパティに随分と馴染んで来たつもりでいたがそれ以上にキラリンとビブリーは馴染んでいて、と言うのも最初こそはどことなく距離を置いてる感があったゆかりだったが、やはり年頃の女の子同士と言う事もあって今では仲良し4人組状態になっている。そのせいか毎回5人で同じテーブルに座って食事をしているのだが最近は彼女達を遠くに感じる事が度々あった。例えばこの間も。
「ねえ、そう言えばいちかの部屋には新しいベットは入れないの?あれから随分と経つけど」
「うん、キラキラルでもすぐ作れるけどゆかりさんがベット位はちゃんとした物が欲しいからって今探している所なの」
「そうなの。でも中々、良いのが見つからなくて。まあ見つからなくても良いんだけど…」
と少し困った様な表情をしつつもさらりと本音を口にする。
「そういえばビブリーの方はどうなの?シエルと一緒に寝てるんでしょう?」
「あ〜、あたしはノワールの元に居た頃は寝る時にはイルを抱いてたのよ。でその癖がずっと抜けないので今じゃシエルにお願いしてキラリンになってもらって一緒に寝てもらっているの…」
と少し前には考えられほどの可愛らしい表情で頬を赤くして告白する。その様子にキラリンは『ポンッ』と妖精の姿に戻り『こんな感じキラ〜』とビブリーの胸元に納まり得意げな顔をしている。その様子が微笑ましくて笑いが起きたが、そんな中さりげなく爆弾発言が出た。
「ビブリーってとっても良い匂いがするキラ、だからこうしているとよく寝れるキラ!」
と向きを変えて彼女の胸元に顔を埋めようとする。当然「やめてよ〜皆見てるわよ…」と赤くなって抗議しているのだがそれほど嫌がっている様には見えなかった。それよりもそんな光景を見ていちかはどんな反応をするか心配だったがそれは完全に予想外だったので固まってしまった。
「ふんふ〜ん!、私のゆかりさんだって良い匂いするんだから!おかげで毎晩よく眠れんだから〜」
とゆかりの腕に抱きつき何故か対抗心を燃やしていた。一瞬、いちかとキラリンの視線があって火花が散ったがすぐに。
「本当に良い匂いするならキラリンもゆかりとも一緒に寝てみたいキラ〜」
とふわふわとゆかりの元に行こうとするので『ダメっ〜!!』といちかとビブリーが声を荒げて制止する。
「ゆかりさんは私のものなんだから!!」
と彼女の頭を胸元に寄せて抱いて身構える。一方、ビブリーはキラリンを行かせまいと必死に抱きしめている。やがて苦しくなったのか。
「冗談キラ…ビブリーが一番…キラ」
の言葉に解放されるとシエルの姿に変身し。


51 : コロ助MH :2018/03/03(土) 22:32:08
「もうビブリー力入れすぎ!本当にもう、私だって貴方の方が…」
と言いかけた時にビブリーが下を向き涙ぐんでいるのに気がつき駆け寄り抱きしめ耳元でしきりに『ごめんなさい、大好きよ』と囁いている。そんな状況をゆかりは実に楽しそうに「うふふ」と眺め、いちかは『良かったあ』とゆかりの肩に頭を寄せて微笑んでいる。
…そんな様子を一部始終見ていると内心『ここには男の俺がいるんだぞ!』と叫びたくなってくる。いや信頼出来る仲間だからこそありのままの姿を見せてくるのか、それとも…。何れにしても側で聞いてて赤面するばかりだ。更に不可解なのは数分後には彼女達はさっきの事がまるで無かったように普通に会話して楽しんでいるものだから、そんな様子を間近で見続けたせいでいつの間にか躊躇してしまって彼女達の会話の輪の中にに入っていけなくなってしまっていた。ふと、そういえばキラリンとふたりで店をやっていた時には人目を憚る事なくやたらベタベタとスキンシップをとって来た頃が懐かしく感じてきた。

そんな感じな日々が続き仕事の方こそ順調だがそれ以外ではあまりパッとしない日々が続き、それこそ1人で部屋にいると孤独のあまりに再び闇落ちするかもと思う時もあったのだが、でも今はそんな不安を簡単に吹き飛んでしまう位の、何にも増して大切な時間があってそのおかげで『俺は生きていける』なんて言っても本当に過言じゃないんだよな、なんて考えてる時にちょうど『コン、コン』とドアをノックする音が聞こえた。
「こんばんはリオ君、起きてる?」
声の主は勿論いちかで、俺を気遣ってくれて週に何回かはこうして夜食用にスイーツを作って来てくれて一緒に夜の秘密のお茶会を開いている。ふたりでテラスに並んで座って月を眺めながらいちかの淹れてくれたお茶と俺の為に作ってくれたスイーツを食べる、今の自分にとっては何より至上で幸福な時間だった。今晩のスイーツはワッフルだったので内心嬉しくて舞い踊りしそうになりつつも努めて平静を装ってたんだけど一口、口に入れてみるとこれがまた予想以上に美味しくて自然と頬が緩んで来て『やはり腕を上げたなあ』なんて思っている時に、ふと横を見るとそんな俺の表情を見て次に何を言うのか目を輝かせながら期待しているいちかの顔があったのだけれどもここは彼女の成長を促す為にも敢えて。
「まだまだだね!」
と伝えると『そっか〜』とガッカリした様子だったがすぐに顔を上げ『次はもっと美味しいのを作るね!』と鼻息荒く立ち上がる姿に思わず苦笑して。
「はは、それでこそいちかだ!」
の言葉に『何よそれ〜もう次は絶対、美味しいって言わせるんだから〜』とむきになって顔を見合わせるも次の瞬間にはおかしくてお互い笑いあってしまった。その後はふたりで静かに月を眺めていたのだが、そっといちかの方を向くとその月明かりに照らされたその横顔の美しさに『ドキッ』と感じた瞬間にずっと秘め続けた想いが込み上げて来てしまい思わず彼女の両手を取ってしまったそして。
「いちか、実は俺、俺は…」
と言いかけた瞬間に突然背筋に悪寒が走り、辺りを見回すとキラパティのドアの陰から漆黒の闇のキラキラルを纏って立っているキュアマカロンと目が合った…その目は真紅に爛々と輝き、よく見ると指先からはアダマンチウムの爪が伸びている。その姿に恐怖のあまり固まり目を離せないでいると静かに口元が動く。
「イッペン、シンデミル?」
…思わず声にならない悲鳴を上げるのと同時に。
「魔、魔カロン…」
と呟くと突然固まってしまった俺に不思議そうに『マカロン?分かった、次はマカロン焼いてくるね』とのいちかの言葉に我に返り。
「そ、そうなんだよ〜俺今度はマカロンが食べてみたいなあ〜それよりも明日も早いしもう寝た方が良いよ!ゆかりさんも待っているだろうし」
と思わずまくしたてて伝えると。
「何言ってるの、ゆかりさんは寝てるんだよ〜変なリオ君。分かった次はマカロンね!まかせておいて」
と笑顔の返事にふとドアの方を見るとそこには既に彼女の姿はなかった。
「じゃあお休みなさい!」
の笑顔の返事に『ああ、お休み』と返事し妖精の姿に戻って部屋に戻ってベッドに入るも『あの』姿がを思い出す度に身震いしてなかなか眠りにつく事が出来なかった。


52 : コロ助MH :2018/03/03(土) 22:32:42
翌朝、気がつくと俺の部屋、ログハウスのオブジェはキラパティの入口の脇に置かれていた。瞬時に俺はその状況に理解した。『次は無い…と言う事か』と、これは最後通牒なんだと。その様子にいちかが心配して『リオ君、これはどう言う事なの?』と声をかけてくれるのだけれどもゆかりが。
「いちか、このキラパティは女性だけで心配だからとこれからは彼がここで警護して私達を守ってくれるそうよ。ねえリオ君」
と全く目が笑ってない笑顔で俺に言ってきたので。
「ああ、任せておけ!これからは俺がこのキラパティの平和を守るから夜も安心して眠れるぞ〜」
とヤケ気味のテンションで宣言する俺の姿にシエルとビブリーは何かあったんだろうなと察し気の毒そうにこちらを見ている。するといちかのは近くに来て。
「リオ君、色々と気を遣ってくれてありがとうね、今晩はマカロンを持って行くから楽しみにしててね」
とそっと耳打ちしてくれたので一転、幸福が訪れたかと思いきやその様子を目だけは昨晩と同じ輝きを放ってこちらを見ているゆかりの姿が目に入ったので。
「いちか、ありがとう。でも夜更かしは女性のお肌に禁物だって言うし、それに今はまだ寒くて冷えるから暖かくなってからで良いかな」と伝えると。
「え〜そう?私は別に大丈夫なんだけどな〜じゃあまた今度にするね」
と一連のやりとりの様子を観察してたゆかりは満足そうな表情を見せると彼女の後を追って店の中に入って行った。

その日の晩、寒空の下スキマ風が吹く部屋に戻りベッドに入る。とりあえず今回は生き延びる事が出来たけど果たして俺はこの後どうなってしまうのだろうか… 今の置かれた状況はどう考えても崖っぷちとしか言えないけれども、それでも『いつか必ずいちかを俺に振り向かせてみせる!』とあらためて心に誓い闘志を燃やすリオであった。 果たしてこの後リオが見た夢は現実になるのどうか…。


53 : コロ助MH :2018/03/03(土) 22:33:19
以上になります。ありがとうございました。次回、いよいよ感動の最終回… なんてまた余力がありましたら書きたいなと思っています(笑


54 : 名無しさん :2018/03/04(日) 07:10:22
>>53
なんかリオ君、可哀想になってきた……。
感動の最終回に期待大です!


55 : kiral32 :2018/03/04(日) 20:16:28
こんばんは、kiral32です。競作に参加させてもらいます。
登場するのは主にフレッシュのキャラクターですが、地味にオールスター時空です。
タイトルは「美希の新しい趣味?」です。


56 : kiral32 :2018/03/04(日) 20:17:09
蒼乃美希は不機嫌である。いつものようにドーナツカフェでラブ、祈里と
ドーナツを食べ、春の訪れを感じさせる風を受けても美希の仏頂面は変わらなかった。

美希の前には一冊の雑誌が置かれている。中高生向けのファッション誌だが、
表紙を飾っているモデルは美希ではない。つい数か月ほど前に読者モデルとして
デビューし、雑誌に載るようになった……はずなのに、あっという間に表紙にまで
のぼりつめた、最近話題の女子高生モデルだ。

ラビリンスとの戦いを終えて、もうすぐ一年。
プリキュアとして日常的に戦うこともなくなり、美希は学校や芸能活動に
精を出しているのだが……、
「確かに、この子最近よく見る気がするよね」
ラブが美希の持ってきた雑誌を自分の方に向けながらつぶやいた。
うんうん、と祈里も頷いて、

「いつだったか、ワイドショーのコーナーで紹介されてた気もする。
 今、注目の新人みたいなコーナーで」
「そうなのよ〜」
美希は頭を抱えるようなしぐさを見せた。

「そりゃ、読者モデルって高校生から入る人多いよ? 中学生までは
 親に反対されてできなかったって人も多いし……でもまさか、
 いきなりこんな大型新人が来るなんて……」
雑誌の表紙で微笑んでいる彼女は、スタイルも抜群。高校生とは思えない大人びた
容姿と、それとは裏腹なチャーミングな素顔が人気の素だ――とテレビで
解説されていたのを祈里は思い出した。

一方、美希のモデルとしての売りは、中学生とは思えない大人びた容姿と、
何でもこなせる(と読者からは見える)完璧さだ。美希と今話題の彼女は、モデルとしての
立ち位置が似てはいても少し違うように祈里には思える。

「でも、美希ちゃんには美希ちゃんのファンがいるし美希ちゃんの魅力が
 あるでしょう? 今はこの人が人気なのかもしれないけど、
 そんなに気にしなくても」
「そうそう、気にすることないって美希たん」
祈里とラブが口々にそういったが、美希は相変わらずの表情のままで、

「それが、そうもいかないのよ。ほらこれ」
と雑誌を持ち上げると、ばさりと真ん中あたりのページを開いてラブと祈里に見せた。

「何これ?」
二人とも雑誌に顔を近づける。「新連載!」という派手な文字が躍るそのページでは、
件のモデルが笑顔で自分の作ったスイーツを紹介していた。


57 : kiral32 :2018/03/04(日) 20:17:51
「え? 連載?」
祈里が顔を上げて美希を見る。
「そうなのよ!」
よくぞそこに気づいてくれた、と言いたげに美希はぐっと身を乗り出した。
「この人、お菓子作りが趣味みたいでこれから毎号、自分の作った
 オリジナルスイーツの連載があるみたいなの!」
「……そうなんだ」
ラブは美希の勢いに気おされたように声を上げた。

「えーっと、そうなるとどうなるの?」
「確実に毎号誌面に登場するわけでしょ、そうなれば人気もさらに上がるし、
 読モとしての仕事も増えるはず」
ふう、と祈里は息を一つついた。祈里からすると、他人がどうしていようと
美希は美希の道を行けば人気が落ちることはないのでは、と思うのだが
本人はなかなかそうは思えないものらしい。

「ああ、あたしにも何かこういう趣味があれば! 連載できるような!」
美希はばちんと雑誌を閉じた。

「美希ちゃんの趣味って、おしゃれは?」
祈里の言葉に、美希は大きく首を振って椅子の背もたれにもたれかかる。
「おしゃれは読モならみんな好き……必修科目みたいなものだもの。
 ほかの読モとの差別化にはならないわ」
「美希たん、だったらダンスだよダンス!」
いいこと思いついた、というようにラブは大きな声を上げたが、美希はやはり首を振った。

「こういう雑誌だと、スポーツとかアウトドア系のことはあまり取り上げられないのよ。
 インドア系のことでないとなかなか」
「だったら美希たん、スポーツ系の雑誌に売り込んでみたら?」
「そっちの方だと、読モを見たがる人はあまりいないしそういう雑誌だったらミユキさん
 みたいなプロの記事の方が受けるわ。どう考えても」
 
「う〜ん」
ラブは腕組みをした。
「ブッキーは何かこういうファッション誌に載せられそうな趣味ある?」
「私?」
美希に突然話しかけられて祈里は瞬きをした後、
「手芸と……あとは、動物の世話かなあ。ファッション誌に載るかどうか分かんないけど。
 半分お手伝いだけどね」
「あ、でも飼ってるペットの話とかできるのもいい! ……でもあたし、ペット飼ってないからなあ……」
「あ、美希ちゃん」
祈里はにこやかな表情で、しかし決然として美希に告げた。


58 : kiral32 :2018/03/04(日) 20:18:24
「ペット飼うなら、引き取り手を探している動物を紹介できるけど、読モの
 活動に役立つからって理由で飼うのはやめてね。あくまでその子のことが好きだから
 飼うようにしてね」
「分かってます」
釘を刺された美希は真面目な顔で頷く。実際、美希は芸能活動のために
ペットを飼おうというつもりはなかった。

「ラブは? ダンス以外で何かないの?」
「うーん……ダンス以外ってなると……」
ラブはしばらく考えるような顔をした後、
「趣味っていうのかなあ……文通はしてるけど」
えっ、と美希と祈里はそろって声を上げた。まさかそんな古式ゆかしい趣味が
ラブの口から出てくるとは思わなかった。

「文通って、誰とよ!?」
「文通相手募集しまーすとか、そういうの出したの!?」
「違うってば、せつなだよ」
大きく身を乗り出していた美希と祈里は、ラブの一言にああ、と納得したように
身を引いた。

プリキュアとしての戦いが終わったあと、せつなはラビリンスに帰国した。それからというもの、
たまにラビリンスから小さなホホエミーナが三人に手紙を運んでくる。
ホホエミーナにはしばらく待ってもらっていて、返事を書くのが三人の習慣だ。

「確かに、手紙のやり取りだから文通よね。郵便じゃないけど」
うんうん、とラブは頷く。
「たまに一週間に一回くらいのペースでやりとりしちゃうこともあるもんね」
えっ、と美希と祈里はまた声を上げた。
「え? なんで? ホホエミーナそんなに頻繁に来ないじゃない!」
「あんまり何回も往復させちゃ悪いから一回の手紙に沢山書いてるけど!?」

「えー、だって、学校のこととかお父さんとお母さんのこととか、
 せつなに知らせたいなって思うことが次から次に起きることがあるんだもの。
 そういう時、何通もの手紙になるから」
「でも、どうやって届けてるの?」
祈里が尋ねると、
「のぞみちゃんに電話して、シロップに届けてもらってるよ」
シロップ。運び屋である。確かに彼なら、ラビリンスまで手紙を届けることもできるだろう。

「ちょっと待って、ラブ。週に一回ペースでシロップ呼び出してることもあるの?
 いいの、それ?」
「うーん。ぶつぶつ言ってることもあるけど、ホットケーキご馳走すると
 何だかんだで言ってくれるよ。運び屋が本業だってのぞみちゃんも言ってたし……」


59 : kiral32 :2018/03/04(日) 20:18:59
 まあ、無理強いしていないのならいいかと美希は思った。ラブはそんな美希の思いには
気づかずに、

「この前なんかさあ、お父さんとお母さんの写真送ったらせつなすっごく喜んでくれて……、
 お母さんが開発中のウィッグの試着してる写真だったんだけどね」
ラブはただただ幸せだというように満面の笑みを浮かべてそんなことを言う。
美希はそんなラブの笑顔を見ていて一つ息をついた。

「何か、ラブのそんな顔見てたら趣味がどうとかどうでもよくなってきた」
「ほら、美希ちゃんは美希ちゃんの魅力を出していけば大丈夫だってば」

「はいよ〜、これ」
カオルちゃんが突然やってきて、ドーナツを三人に一つずつ渡していく。
「どうして? これ」
美希が尋ねると、カオルちゃんは
「この春から販売予定の新商品。まだ味の保証ができないから今日は無料。ぐはっ」
とおどけてまたワゴンへと戻っていった。美希はピンク色のトッピングの乗った
ドーナツを一口かじってみる。いつにも増して甘い味が口の中に広がった。


-完-


60 : kiral32 :2018/03/04(日) 20:20:02
以上です。ありがとうございました!


61 : 名無しさん :2018/03/04(日) 20:57:33
>>53
リオの扱いがw どう考えてもリオに勝ち目はなくちょっぴりかわいそうなんだけど、
コミカルに描かれてる分、なんか笑える部分の方が多くて楽しかったですw

>>60
うわっ〜フレッシュ、きた!嬉しい(泣き)
美希たんの小物っぽいところが相変わらずで面白いw 3人の会話がとても楽しい!
せつなはいつ出てくるのかと思いながら読んでて、そうか、文通してるのね〜、どんなこと書いてるのか想像力が膨らみます。
そして、最後には元気がでた美希たん。よかった♪


62 : 名無しさん :2018/03/04(日) 21:06:00
>>60
kiral32さんのフレッシュってなんか新鮮!
せつなとの文通にホットケーキひとつで彼を呼び出すラブがツボでした。
その様子に悩みがどうでもよくなる美希たんがホント美希たんw
楽しませて頂きました!


63 : そらまめ :2018/03/05(月) 20:42:14
こんばんは。そらまめです。
短めですが、今年も参加させていただきます。タイトルは フレンド です。


64 : そらまめ :2018/03/05(月) 20:42:55
「…その問題は前のページに書かれていた公式を使うんじゃないか?」

止まった手の動きに気付いてそう告げたのは、横からのぞき込むように教科書を見ていたひとだった。

「…だから先に答えを言うのはやめてって言ってるでしょ」
「ふっ、それは私の方が優秀なのだから仕方ない。溢れる才能を恨むと非凡の証明になるぞ」

得意げに腕組をしてそういう彼女にイラっとしたなにかがふつふつと込み上げるが、ここで争いになれば宿題が終わらなくなりそうなので我慢する。

「はいはい。さすがですね」
「おい貴様、棒にもほどがあるだろう」
「今集中してるのよ。後にして」
「これだから最近の冷めやすい若者は」
「いやあなたも同い年でしょ」
「私はお前とは埋めようのない経験値があるんだ」
「経験値ねぇ…まあ、スライムばっかり倒して得た経験値でも経験した事には変わりないものね」
「…貴様が喧嘩を売っていることはよくわかった。表に出ろ」
「いやよ寒いもの。あなただけ外に出て。明日になったら私も行くわ」
「それ学校に行くだけだろ」

ああ、またやってしまった。言い争いが止まらず気付けばいつもなら寝ている時間なのに宿題はまだ半分ほど残っている。時計を見て愕然とした私の横でにやにやとこちらを見ている顔に今度こそ拳を打ち込んでやりたかった。

いつからいたのか聞かれてもよくわからない。気がついたら自然と彼女が隣に立っていたから。最初こそ驚いたものの、あまりに平然と話しかけてくるから常識という言葉はどこかに消えてしまった。それからずっと、彼女は傍にいた。ラブの家に初めて来た時も彼女は私よりも先に部屋でくつろいでいたし、学校にはさすがに来ないものも、下校途中に雑貨店をうろつく彼女を見かけたことがある。話しかけようとするとすぐ逃げるから何をしていたのか聞けたことはない。そのくせ一人きりで寂しいと感じる時は必ず現れる。
そんな不思議な友人だった。


65 : そらまめ :2018/03/05(月) 20:49:59
放課後、教室の掃除当番のため一人残って床を箒で掃いていた時、風が頬を撫で、ふと窓辺に視線を送った。換気のために開けている窓から入り込む風は冷たく、教室内にいるのに白い息が出る。そんな風に身を縮こませていると、風にあおられカーテンが揺れる。ひらひらと旗のようにたなびくカーテンに、何故だか彼女を重ねた。そうやってぼんやりと手を止めていたら、ゴミ捨てから戻ってきたラブにまたぼーとしてると頬を膨らませて言われた言葉。ラブからそうやって言われたのは今日何度目になるだろう。


「せつな昨日何時まで起きてたの? 今日はぼんやりしてること多かったし、随分遅くまで電気ついてたってお母さん言ってたけど」
「宿題がちょっと終わらなくて…」
「せつなが手こずるなんて結構難しかったの? というかそっちはどの単元まで終わってる?」
「美希たんの学校と同じくらいだと思うよ? ほら」
「あ、ほんとね。この前やったわここ。でもここはそんなに悩まないとこだと思うけど」
「ちょっと集中できなかったの。気が散っちゃって」

溜息をつきながらジュースを一口。なんであんな子供の喧嘩みたいなのに乗せられてしまうのだろうかと自問自答していると、隣からのぞき込むように見てきた祈里に思わずビクリと身体が揺れた。

「せつなちゃん悩み事? 相談乗るよ?」
「ああ、いえ、そういうのじゃないから大丈夫よブッキー」
「ホントにせつな? 嘘ついたらタダじゃおかないわよ」
「美希は心配してるのか脅してるのかどっちなの…」
「もちろん心配してるに決まってるよ!」
「なんでラブが応えるのよ」

三人の視線が集中して思わず視線を逸らす。丸型のテーブルを囲んで座っているからどこを向いても視線に攻め立てられてついには後ろを向いてしまった。そんなリアクションをしたものだから本当に何か悩みがあるんじゃないかと質問責めにされたのはしょうがないのだろうか。いや、全ては彼女の所為だろう。絶対殴る。
帰ってからおやつのクッキーを片手に部屋に入れば、呑気にベットで昼寝していた彼女の姿が眼に飛び込んできて、その頭めがけて手のひらを叩き落とす。仲間に余計な心配をさせてしまったと文句を言えば、彼女は馬鹿にしたように大笑いしながら持ってきたおやつをもしゃもしゃ食べるものだから、もう一度頭を叩いて部屋を出る。
その時彼女がどんな顔をしていたかなんて知らない。


「お前いつの間にコーヒーブラックで飲めるようになったんだ?」

新しく持ってきたクッキーと一緒にコーヒーを入れたマグカップを二つ。ミルクも砂糖も今日は一人分しか手元にはない。

「この間美希に美味しいコーヒー店に連れて行ってもらってからよ。ブラックも悪くないわね。そういうあなたはいつまで砂糖とミルク入れるのかしら?」
「ちっ、これだからちょっと背伸びしたがる子供はすぐ影響される」
「なに、負け惜しみかしら? 子供って言うなら子供味覚のままのあなたの方が子供らしいわよ」
「ぐぬぬぬ…」

悔しがる彼女にふふんと得意げになってコーヒーを飲む。本当は少し苦いけど、それを言うのは止めておこう。
自分だっていつまでも子供のままではないのだ。味覚も背の高さも変わっていく。実際一月で一センチ身長が伸びて、靴のサイズも大きくなった。成長期だからこれくらいあって当然なのだ。そう、当然のはずなのに、目の前で悔しがる彼女はあの時のままだ。背も同じだったはずなのに、今では私の方が高くなった。履けなくなった靴も彼女にはまだぴったりで、そのことが少しだけ不思議だった。


66 : そらまめ :2018/03/05(月) 20:52:11
彼女は何故か写真を見たがる。
それは私が仲間と一緒に写っているものだったり、最近私が撮り始めた風景や街の人だったり、とにかくそれを嬉しそうに見る。でも、私が彼女を撮ろうとすると脱兎のごとく逃げるのだ。「写真は魂を取られるんだぞ。貴様は私にゾンビになれと言うのか!」と、意味不明な捨て台詞と共に視界から消えてしまうので、撮ろうとしたことはその一度きり。


人差し指でカシャリとボタンを押す。
丘から街を切り取ってフィルムに焼き付けても、この美しさはとらえきれない。変わる街並み、風景、日々変わっていくものを忘れたくなくて、すこしでも残したくて手元のシャッターを切る。

「こんなとこ撮って何が楽しいんだ」
「いつから見てたの?」
「お前がカメラ片手に家を出るあたりから」
「最初からっていうか…ホントに最初からね。一緒に来てたなら声掛ければよかったのに」
「どんな場所に行くのかとわくわくしていたのに、まさか目的地がこんな丘なんて、私のわくわくを返せ」
「知らないわよそんなの」

やれやれと首を左右に振ってから草むらに寝っ転がった彼女に倣って座る。目を閉じている彼女の横髪が風に揺れる草花と同じように動いていて、なんとなく指先でそっと触れた。揺れる度くすぐったいような感覚が指に伝わる。
しばらく街を見ていると、風のそよぐ音に混じって寝息のようなスース―という音が聞こえてきたことに気が付いた。隣に視線を移せば気持ちよさそうに眠っている。額にはテントウムシの姿が。思わず吹き出しそうになるのを抑え、持っていたカメラを向け一度だけカシャリとシャッターを切った。



「ねえせつな、最近写真撮りだしたよね」
「え、そうなのせつな?」
「あ、もしかしてその紙袋の中身って写真?」
「現像が終わったからさっき取りにいってたの。私もまだ見てないのよ」
「ほんとに!? じゃあ今見よう!」
「ラブならそういうと思ったから一人で受け取りに行ったのに…」
「公園に寄ったのが運のツキだったわねせつな。さあ見せなさい」
「美希まで…」

自信があるわけではないのでみんなに見せるのはまだ恥ずかしい。映りが悪かったりブレていたらかっこ悪いから、まずは自分だけで見たかったのにと思い、助けを求めてブッキーを見ればにこりと笑われた。あ、これだめなやつだ。

「せつなちゃん、わたしも見てみたいなあ。だめ…?」

3対1では折れるしかなかった。


67 : そらまめ :2018/03/05(月) 20:53:36
「あ、この猫知ってる! 路地にいた子だ!」
「あー、この間工事終わった店じゃないここ。そういえば前はこんなだったわね」
「この雲の形鳥さんみたいで可愛い」

机いっぱいに広げられた写真。今まで現像していなかったものも含まれているため中々の量だ。目の前にあった数枚を手に取ると、映っていたのはブレているタルトとシフォンの写真だった。撮る直前でラブが部屋のドアを開けるから驚いて動いてしまったんだっけ。他にも失敗した写真はあったけど、不思議とそちらの方がどういう状況だったのか思い出せた。
これどこの景色?とかこれいつの?とか、そんな質問が三人から寄せられ、気恥ずかしくなりながら答えた。

「この写真わたし好きだなぁ」
「あ、ホントね。テントウムシがいい味出してる」
「一緒に写ってるここもいいよね」

三人が1枚の写真を見てそういう。手に持って見合っているため自分からは見えないが、テントウムシというワードには憶えがあった。額に乗ったテントウムシを思い出すと今でも笑いそうになる。そういえば彼女を三人に紹介したことはなかったな。なんでか、しなくてもいいかと、いや、しない方がいいかと思って…
なんでしない方がいいと思ったんだろう…
だって、紹介しようと彼女を探すとそういう時に限っていつもいないし、人見知りのようだったし。
だからってしないなんて、[普通はおかしい]ことではないか…?

「ねえみんな、私、そこに映ってる人をみんなに紹介したかったの」
「え? この写真に写ってるの?」
「ぷっ、せつなってば面白いことを言うのね」
「せつなちゃんはこのこを私たちに紹介したいの?」
「え、ええ」

なんでだろう。みんなの視線がいつもと違う気がする。友達を紹介したいなんて言ったらラブなら目を輝かせてどんな人か質問責めにしてくるはずなのに。

「この子のこと?」

指をさしながらブッキーが写真を見せてくる。さしていたのは、テントウムシ、だった。

それしか、映っていなかった。

テントウムシがクローバーにとまっている写真。人なんて、どこにもいなかった。


68 : そらまめ :2018/03/05(月) 20:54:15
喉の奥が詰まったような感覚がする。横髪に触れた指先を見た。ちゃんと覚えているはずなのに、その手は震えていた。
ガタリと椅子をおして立ち上がり、周りを見回した。いつもみんながいる時は姿を隠しているからいないことはわかっている。それでも探した。見つからなければいいと思いながら。
左右を見て、最後に後ろを振り返る。人一人分の距離に、彼女がいた。いつものような小馬鹿にする笑い方で。

「馬鹿だなぁ。お前は」
「…なんで」
「お前が呼んだんだろ?」

一歩一歩近づいて、彼女に触れられる距離に来た。

「どうしたのせつなちゃんっ?」
「せつな…?」
「せつな、なんで泣きそうなの…?」

後ろから口々に心配する声。でも、応えてはいられなかった。目の前の彼女は珍しく困ったように眉を下げて笑う。思わず抱きしめた。温もりも、感触も、感じるのに。

「せつな、本当はわかっていたんだろ?」
「だって、あなたはここに居るじゃないっ!」
「ほかの奴の顔見てみろ。みんなぽかーんて顔で困ってる」

ちらりと後ろを振り返る。みんな、固まっていた。彼女の言ったように困ったような顔をして。

「みんな、ここに居る人、わかる?」
「せつな…」
「ごめんねせつなちゃん…」
「アタシたちには、せつなしか…」

歯を食いしばって泣きそうになるのを我慢した。かわりにきつく抱きしめる。いつもなら文句を言ってくるはずなのに、笑ったまま頭を撫でてくる。それがとても、悲しかった。

「あいつらならきっと大丈夫だ。せつなを一人になんかしない」
「そうかもしれないけど、それでも、私がこうしていられるのは、あなたがいたからよ」
「ツンデレなせつなにしては珍しく正直に言ってくるな」
「私がひとりの時は必ずあなたがいたもの。私がひとりきりにならないようにしてくれていたって気付いてた」
「だったら、私がせつなが一人の時にしか傍にいなかったことも気付いてただろ? 最近はラブ達と一緒にいることが多かったから、私の出る幕がなかった。少しづつ一緒の時間が減っていても、寂しくなかっただろ?」
「でも、あなたがいなくなるのは…」
「なあ、せつな。私の名前、言ってみろ」

息がつまった。人前で彼女のことを名前で呼んだことはない。今になって思えば、無意識に口にするのを避けていたんだろう。だって、呼んでしまったら、ナニカが終わる気がしていたから。

「ほら」
「ぃ…イース…」
「そうだ。イースが私の名前だ。そして、お前の名前だ」

背中にまわしていた手をゆっくりと離され、一歩下がったイースは優しい顔で頭を撫でてくる。手の感触が、薄れていく。
ゆらゆらと揺れる木漏れ日が彼女を照らす度、陽の光にうっすらと紛れていく身体に、きらきらとしたものが眼に入る。眼の前にいるはずなのに、見えずらくなっていく。

「せつな、世界は広いんだ。こんな広い場所にいるのに、お前はいつまで私といるつもりなんだ? もっと、胸を張って歩け。そうしたら、お前の世界は広がり続けるさ」


今までずっとそばに居てくれたイースは、あれから私の前に現れることはなかった。みんなはイースの話を黙って聞いてくれた後、もう大丈夫になったから消えたんだよと優しく言った。
マグカップに入れたコーヒーを一口飲んで、苦いと思う。今度は砂糖とミルクを混ぜてみる。美味しい。ブラックのまま飲むのはイースに言われたように自分にはまだ早い。大人になるって、僅かに口に残るこの苦みのようなものなのだろうか。知りたくはないけど、いつかきっとその答えに辿り着いてしまう。答えがわかったその時は、ブラックでもコーヒーを美味しく感じるのかな。それとも子供のまま、大人になるのかな。
まだ子供の自分には、難しい話だ。


69 : そらまめ :2018/03/05(月) 20:58:39
以上です。
イマジナリーフレンドをテーマにしています

読んでいただきありがとうございました。


70 : 名無しさん :2018/03/05(月) 21:52:00
>>69
ちょっぴりミステリアスで切なくて、ホロリときました。ラストはあれで良かったんだなって納得でした。素敵なお話しありがとうこざいました!


71 : 名無しさん :2018/03/05(月) 22:50:50
>>69
相変わらず発想が凄い! そらまめさんならではですね。
イマジナリーフレンドのイースって、せつなの無意識の中での過去の自分、なのかな。
罪の意識の象徴としてのイースではなくて。
そうだったら嬉しいな、って思います。


72 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/03/09(金) 21:13:08
こんばんは。皆様、素敵なSSありがとうございます!
さて、先週のはぐプリから、ちょっと思い立って、短いお話を書いてみました。

タイトルは、「プリン・ア・ラ・エール」。
2レス使わせて頂きます。


73 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/03/09(金) 21:14:01
 資料がぎっしりと詰まったショルダーバッグが肩に食い込む。頑張れ、あともう少し! と勢いよく揺すり上げた途端、左手に持っていたビニール袋が、ガサリと派手な音を立てた。
 慌てて覗き込んだ袋の中身は、さっきコンビニで買って来た焼きプリン。娘のはなの好物だ。幸い四個のうちのひとつが少し傾いた程度で、中身にダメージは無いみたい。
 ホッと息をついてから、動いたプリンを元に戻して、今度は慎重に歩き出す。角を曲がると、新しい我が家の柔らかな灯りが見えてきた。

 この町に引っ越して来て、まだ十日ほどしか経っていない。二人の娘・はなとことりも、転校生として新しい学校に通い始めたばかりだ。内心、上手くやっていけるかしらと心配しているのだが、今のところ、どうやら二人とも新しい環境に馴染みつつあるらしい。
 特にはなは、大人っぽくてかっこいい――彼女の言葉を借りれば“イケてる”友達が出来たみたいで、とても張り切っていた。

 ところがそんなはなの様子が、ここ二日ばかり、少しおかしい。相変わらず学校の話はするものの、どこか歯切れが悪かったり、夕ご飯の途中で箸を止め、口を引き結んで何かをじっと考えていたり。その上、どうかしたの? と尋ねると、慌てて首を横に振って、猛然とご飯をかき込んでみたりする。
 何というか……わかりやすい。
 でもこういう時に親に出来ることって、ちょっと情けないくらい、なんにも無い。ただ娘の頑張りを信じて応援するだけ。だからそのエールが、ちょっぴり形に――こういう美味しい形になっても、たまにはいいわよね?

「ただいま〜」
「お帰りなさ〜い!」
 玄関のドアを開けると、いつも通り元気な声が迎えてくれる。それに続いてドタバタと駆け寄って来たのは、妹のことりの方だった。
「聞いてよママ! お姉ちゃんたら今日、ドボンって川に落ちたんだって!」
「ええっ!? ドボン、って……」
 勢い込んで言い募ることりの言葉に、心臓がドキンと跳ねる。まさか病院にでも担ぎ込まれたんじゃ……と思ったところで、当の本人が急ぎ足でやって来た。

「大袈裟だなぁ、ことりは。こ〜んな浅い川だったから、ドボン、なんて落ちてないもん。ザッパーン……いやいや、チャポン、くらいのもんだったの!」
「ホントにぃ?」
「ホント! ほら、怪我だってしてないし」
 そう言いながら、くるりとターンしてみせたはなが、勢いが付き過ぎて、あわわわ……と転びそうになる。そこで何とか踏み止まって、エヘヘ、と苦笑いしながら私のバッグを受け取ってくれた。
 ようやくホッとしたところで目に入ったのは、丸めた新聞紙を詰め込まれ、玄関の隅に置かれた中学校の革靴。あーあ、まだ買ったばかりなのに……。そっとため息をついてから、私も娘たちの後ろからリビングに向かった。

「お帰り。夕ご飯、出来てるよ」
 カウンターキッチンの中から、夫が穏やかな笑顔で迎えてくれる。ありがとう、と笑みを返してから、ことりと二人でお皿を並べているはなの方に目を向けた。
「それで、川に落ちたってどういうこと? 一体、何してたのよ」
「いやぁ、ちょっとはしゃぎ過ぎちゃいまして……ごめんなさい」
 少し厳しい声でそう問い詰めると、はなが面目無さそうに頭を掻く。だが、すぐにその目がキラリと輝くと、小さな身体が、ポン、と跳ねるようにこちらに向かってきた。

「それよりママ! ハリーのお店、今日オープンしたんだけど、お客さんがい〜っぱい来て大混雑だったんだよ!」
「ああ、ファッションのお店だって言ってたわね。今日からだったんだ」
 ハリーさん――おそらく本名じゃないと思うけど、彼はこっちに来てすぐに知り合った、関西弁を話す気さくな青年だ。まだ若いのに、かわいい赤ちゃんのお父さんでもある。
 そう言えば、あのお店の傍には小川が流れていて、小さな橋がかかっていた。確かこの前も、友達と話すのに夢中になっていたはなが、足を滑らせそうになって慌ててたっけ……。
 何となく事の成り行きが見えて来たな、と思いながら、ずっと手に持ったままだったビニール袋を冷蔵庫に入れようと、キッチンの方へと向かう。その時、さっきよりさらに弾んだ、実に嬉しそうな声が耳に飛び込んできた。


74 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/03/09(金) 21:14:35
「そう! お店の内装、さあやと一緒に考えたんだけど、イマイチ決まらなくて……。それでね、ほまれが手伝ってくれたら、すっごく可愛いお店になったんだ! キュアスタにも上げてくれて、それでお客さんが大勢来たの! ハリーったら、もうウハウハ言っちゃって……。そうそう、キュアスタにね、さあやとほまれとはぐたんと一緒に撮った写真も載せたんだよ!」

 さあや。ほまれ。ああ……なるほどね。
 思わず緩んだ頬を、急いで引き締めて振り向くと、頬をうっすらと赤く染めて、幸せそうに、そして誇らしげに輝く笑顔がそこにあった。

 一昨日と昨日、はなが時折見せていた、固い表情を思い出す。
 さあやさんと、ほまれさん。はながこの町に来て最初に出来た、“イケてる”友達。でもはなは、昨日までは彼女たちのことを、“ほまれちゃん”“さあやちゃん”と呼んでいたはず。
 三人の間に何があったのかは分からないけど、きっと何かを乗り越えて、昨日よりもっと仲良しで、ずっと“イケてる”仲間になれたんだろう。

 これは応援を形にするのが、少し遅すぎたかな。でも大丈夫ね。
 応援している相手が、大切な一歩を踏み出せたその時は、フレフレ、と振り上げた拳をいったん開いて、祝福の拍手に代えればいい。
 まあ、それならはしゃぎ過ぎたっていうのも頷けるわ、とつい思ってしまうのは、我ながら母親としてどうかと思うけど。

 もう一度頬が緩んでフフッと小さく零れた笑みを、今度は隠さず、はなの傍に歩み寄った。ん? と不思議そうに眉根を寄せたその目の前に、これ見よがしにビニール袋の中身を取り出して見せる。
「じゃあ、お店のお手伝いを頑張ったはなに……じゃーん! 今日は、お土産付き〜。食後のデザートにね」
「うわぁっ! プリンだぁっ!」
 途端に大きく見開かれた瞳が、キラキラと輝いた。

「くっくっく。お姉ちゃんって、ほんっと子供」
 隣に居たことりが、何だか安心したような、いつもより子供っぽい表情で、いつものように姉をからかって笑っている。その顔を見て、ああ、もしかしたらことりも、はなのことを少し心配していたのかもしれない、とまた少し頬が緩んだ。
「何よぉ。だったらことりは食べなきゃいいじゃない」
「え〜! 食べないなんて言ってないじゃん」
 思わぬ反撃に遭って口を尖らせることりと、してやったり、とニヤリと笑うはな。そんな二人を、まとめてギュッとハグしてから、私はようやくプリンを冷蔵庫に入れた。

「いただきま〜す!!」
 夕ご飯のあたたかな湯気を前にして、笑顔で声を揃える二人。その様子を眺めていると、いつもながら、何だか今日の疲れがどこかに飛んでいくような気がする。そう、私もこうやって、家族に毎日応援されているのよね。
 今度の週末には、取材がてら、ハリーさんの新しいお店に行ってみようかな。そんなことを思いながら、私は夫が作ってくれたお味噌汁をひと口すすった。

〜終〜


75 : 一六 ◆6/pMjwqUTk :2018/03/09(金) 21:15:05
以上です。ありがとうございました!


76 : コロ助MH :2018/03/10(土) 09:03:18
こんにちは、おかげさまで何とか最終回まで書き切る事が出来ました。読んでくれた方々、本当にありがとうございました。最後ですので私が今回のシリーズを書く事になった経緯でもと思います。実はPIXIVである作家さんのプリアラの「最終回のその後のその後」を見た時に思わず「これだ!」と思いまして自分なりに膨らませて、いや膨らませ過ぎですか(笑 書いてみました。ここではお名前を明かす事は出来ないんですけどありがとうございました。あなたのおかげです。
それではよろしくお願い致します。6レス程度使わせていただきます。


77 : コロ助MH :2018/03/10(土) 09:04:06
「昔、昔ある所にスイーツが大好きなうさぎが居ました。そのうさぎはその大好きなスイーツで皆を笑顔にしたいと思いお店を始めました。やがてうさぎのその想いに共感したリス、ライオン、猫。犬も集まってくれて一緒にお店をやってくれたおかげで次第に賑やかな繁盛するお店になりました。うさぎは仲間と一緒にスイーツが作れる事に、そしてそのスイーツで訪れるお客様を笑顔にする事が出来て本当に幸せでした。ところがそんなある時、仲間の猫が『もっとスイーツの勉強がしたい』とお店を出て行ってしまいます。そしてそれに呼応するかの様に他の仲間達もそれぞれの『夢』を見つけ旅立って行ってしまいました。一人残されたうさぎは寂しくて仕方ありませんでしたがそれでも最初の「スイーツで皆を笑顔に」の想いを胸に頑張ってお店を続けて行きました。そして数年後、何故か一番最初に出て行った猫がひょっこりとお店に帰ってきました。その突然の出来事にうさぎが尋ねると。
「私はあなたとずっと一緒にこの店が続けたいと思って、色んなスイーツが作れる様になる為に世界を回って勉強して帰って来ました」
その言葉通りにその後、お店にはこれまでにはないたくさんの種類のスイーツが並ぶようになり人気を博し前よりも賑わうようになりました。
更には『夢』を追い求めていった仲間達もそれぞれに道半ばではあったのですが、うさぎの事が心配になって少しずつですがお手伝いに来てくれるようになりそのおかげでうさぎはいつも笑顔でその後もお店は大繁盛していくのでありました…」
「ねえ、そのお話って私達の事?」
「ええ、そうですよゆかり!私達の事です」
と得意げな笑顔でいちかが答える。



いちかとゆかりのキラキラパティスリー <最終回> 〜笑顔の溢れる場所〜




キラ星一家がキラパティで同行してから一年が経とうとした頃にそろそろ自分達の店に戻ろうとの申し出があったので思わず。
「え〜、そんな寂しいよ〜シエルもビブリーもリオ君も、もっと一緒にスイーツを作ろうよ!」
と駆け寄りシエルの腕を取ると。
「ノン、ノン、いちかにはゆかりがいるでしょう?それにちゃんと私達の代わりも用意したから大丈夫よ!」
と笑顔でウインクしながら私の鼻をツンツン突いて腕をそっと外して離れようとしたので。
「でも、また一緒にスイーツを作れるよね」
と伝えると一瞬、固まった後にやれやれと言う表情をして。
「本当、いちかには敵わないわ」
と突然抱きしめられて、そしてそっと耳元で。
「一番大切なものはひとつだけよ、それだけは絶対忘れないで」
と私を離した後にゆかりさんと無言で見つめ合いその後に一礼した後3人はキラパティを後に去って行った。その後ろ姿を見送りながらふと考えてみる。
「私の一番大切なもの…か」


シエルの指定した日、果たしてどんな助っ人が登場するのかと思いきや顔見知りすぎる面々が揃っていて驚いた。呼び鈴が鳴りドアを開けるとそこには何とひまりんとあおちゃんとあきらさんが立っていた。『何故、皆が居るの?』と尋ねると。
「私は高校卒業後には立花先生の研究所に勤めていてずっとスイーツの科学について研究してたんです。そうしたら先日先生に『ひまり君、君には私が伝えられる事は全て伝えた。だから今度はその科学の知識を世界中のたくさんの人達に伝えてみないか?そして今度は君だけのスイーツの科学を作ってみると言うのはどうかな?』と言われて真っ先にここが思い浮かんで、なのでお願いです私をここに置いて下さい」
「あたしは今度ヨーロッパでライブツアーを一年位やるんだけどもし良かったらこのキラパティも一緒について来て欲しいんだ。いちかとゆかりさんのスイーツも食べたいし勿論、私も一緒に作りたいから。どうかな?」
「私はいちかちゃんのお母さんみたいに世界中を回って医療で困っている人達を助けたいと思っているんだ、と言っても実は正式に医師免許を取ってまだ年数は浅いんだけどね。でもそこは頑張って経験を積んで行こうと思っている。みくの事はまだまだ完治とまでは行かないんだけど今は安定してるし、もし何かあってもどこからでもプリキュアの力を使えば会いに行けるしね」
と肩にのっている犬のクリスタルアニマルにウインクすると嬉しそうに『ワン』と答えている。


78 : コロ助MH :2018/03/10(土) 09:05:13
「それに何よりみくが私の夢を応援してくれたのもあるし、あと私もいちかちゃんみたいに小さい患者さん達にもスイーツを振る舞ったりして笑顔に出来たらなんて考えたんだけど、私もここに置いてもらえないかな?」
と思いもよらぬ嬉しい申し出に気が付いたら飛びついて抱きしめていた。
「嬉しい!嘘みたい、またこの5人でキラパティが出来るなんて!!ゆかりさんっ 良いですよね!」
と急にゆかりさんの方を振り向くと何故か一瞬だけ眉をひそめた表情を見せるもすぐにいつもの優雅な顔つきになり。
「良かったわねいちか。皆、大歓迎よ!」
と笑顔で答えてくれるもどこか違和感を感じ一瞬、戸惑っていると。
「どうしたのいちか?今日はあきら達の歓迎会をやりましょう!それともキラパティ初期メンバー復活祭と言うべきかしら?」
との言葉に皆が盛り上がり『買い出しはどうする?』とか話し合っている。そんな中、ふとゆかりさんのを見ると気が付いてくれていつもと同じ笑顔を向けてくれたのでこちらも笑顔で返したのだが何故か胸がチクリと痛んだ。そして今こそ密かに用意してた『アレ』をついに渡す時が来たのだと確信したのだった。


歓迎会は本当に盛り上がった。皆成人しているので当然お酒も入る訳でそうなると普段は見れない様な行動をしている。あおちゃんは何故か下着姿になってテーブルの上に立って泡立て器を片手にずっと熱唱してるし、あきらさんはひまりんを膝に乗せて抱っこして『いや〜可愛いよね〜ひまりちゃん。みくと同じ位、可愛いよ!』と王子スマイルで口説いているものだからひまりんは懸命に正気を保とうとスイーツの知識について真っ赤になって呪文の様に唱え続けていたのだが。
「あれ?ひまりちゃん顔が赤いよ風邪かな?」
とカバンから聴診器を出してきて。
「はい、上着を脱いで上半身を見せて下さ〜い」
の言葉についにショートして倒れる。その姿に焦ったあきらさんは。
「いけない!こうなったら人口呼吸で心肺蘇生だ!」
とひまりに口付けようとした瞬間に『このヤブ医者が〜!』あおちゃんの脳天ダブルチョップが炸裂する
「何をするんだ!一刻を争うんだ!」
「このエロヤブ医者が!」
とひまりんを挟んであおいVSあきらの戦いが始まった。と言ってもふたりとも相当に酔っているのでまともに立ってる事が出来ずにお互い貶し合っているだけなんだけど。その様子に『やれやれ』と思っているとふとゆかりさんの姿がない事に気付き、窓から外を見るとテラスに一人で座って月を見ていた。その姿に覚悟を決め、『アレ』をポケットに忍ばせ彼女の元に向かった。

『は〜』とさっきからため息しか出て来ない。『全くいちかと来たら私と言うものが居るのに…』と思うとやるせなくなってくる。
「でもこれが惚れた弱みって奴なのかしらね。あの笑顔を曇らしたくないと思うと不思議と何でも我慢出来ちゃうのよね…」
と呟いた瞬間に嬉しそうに笑っているいちかの姿が浮かび自然と笑みがこぼれる。と次の瞬間、本物のいちかがキラパティから出て来て心配そうな表情で駆け寄ってくる。
「ゆかりさん、大丈夫ですか?」
と声をかけてくるのでいつも通り平静を装い笑顔で。
「大丈夫よ、ちょっと夜風に当たりたくなっただけだから」
と返すと『良かったあ』と安堵の表情を見せた。そして隣に座りしばらく静かにふたりで月を見ていた。
「月が綺麗ですね…」
いつものその言葉に思わず苦笑した。『全く本当の意味も知らないで…』と思っていると視線を感じたのでいちかの方を向くと小箱を差し出してきて真剣な眼差しでこちらを見ていた。瞬時にその小箱に入っている物は何なのか理解出来たがあまりに突然の出来事で固まってしまった。
「月が綺麗ですねって意味、いくら何でも私だって知ってますよ。あの時はわざと知らないふりをしてただけなんですよね」
とさもいたずらが成功した子供の様にはにかみながら笑ったと思ったら次の瞬間、また真剣な顔に戻り。
「私はゆかりさんへの想いは今もあの時と変わりません!これを受け取ってくれませんか?」
と箱を開けると中には8カラットだろうか、ダイヤモンドの指輪が入っていた。
その夢にまで見た状況に一瞬『現実なの?』とも思ったがそれ以上に自分が実はとうの昔にいちかの術中の中にいた事実の方が衝撃で。
「プッあははっ おかしい!この私がいちかに手玉に取られてたなんてね〜あはは!本当におかしい」
とお腹がよじれる程笑っていたのだがいちかはその間も真剣な眼差しでこちらを見ていた。そして近寄ってきて優しくそっと私を包み込む様に抱いてくれた。


79 : コロ助MH :2018/03/10(土) 09:05:46
「ゆかりさん…泣いてますよ…ごめんなさい。ずっと待たせてしまってもっと早く伝えておけば良かった…」
その沈痛な口調な言葉に初めて自身が涙を流していた事に気づく。
「ゆかりさん、これまで私を支えてくれて守ってくれてありがとうございます。これからは私もゆかりさんを支えたいし守って行けたいと思います。だからこの先もずっと、おばあちゃんになるまで私と一緒にいてくれませんか?」
思わず『本当に?』と答えると。
「はい、ゆかりさん。私、宇佐美いちかは琴爪ゆかりを世界中の誰よりも愛しています!」
ずーっと欲しかった一言が聞けて嬉しすぎて涙が止まらなかった。そしてしばらく経った後に体を離し向き合い目が真っ赤になっているいちかと向き合う。
「これをゆかりさんの指にはめても良いですか?」
「はい」
と答えると左手を差し出すとスッとはめてくれた。その真剣ながらも泣きはらしたいちかの顔に思わず吹いてしまい『いちか、随分とひどい顔になってるわよ』と伝えると。
「ゆかりさんこそ!もっとひどい顔ですよ!!」
とあらためてお互い顔を見合わせたらもう笑い出してしまって止まらなくなってしまった。ひとしきり笑って、笑い過ぎて更にお互いひどい顔になりつつもあらためて向かい合いそして長年秘めていた想いを伝える。
「いちか、私もあなたを愛してるわ。私をここに連れて来てくれたあの日からずっと…」
次の瞬間、月夜に照らされたふたつのシルエットは重なり合った。


そんなふたりの様子をキラパティの窓からあきら、あおい、ひまりの3人は皆、目を潤ませ見守っていた。
「ちっくしょう見せつけてくれやがって!何かあたしもみつよ…いや、水嶌に会いたくなって来た〜!」
「おばあちゃんになるまで一緒、か良いね!私達もこのままずっと一緒にいようか?」
「私もおばあちゃんになってでも良いんですけど、でもいちかちゃんみたいに私も運命の人に巡り会いたいんですよね」
と横目でチラッとあきらを見上げる。
「ええっ、私?」
「私じゃダメですか?あきらさん」
と上目遣い見つめられその姿に思わず『可愛いっ!』とドキッとし、『そうかひまりちゃんか〜それも良いかな』と平静を取り戻し。
「はは、良いね〜じゃあまずは友達から始めようか!」
とひまりの頭をポンポンと撫でてると。
「もう子供扱いしないで下さい!それに既に私達はお友達なんですから今度は恋人として始めたいです!!」
と激しくむくれた表情で抗議してくるもその愛くるしさに思わず吹き出しそうになるのを必死に堪えて。『ならこれでは』と片膝をついて右手を胸に当てひまりの右手の甲にキスをする。
「私とお付き合いして頂けませんか?ひまり」
と成長して高校生の時より更に輝きを増した王子スマイルに耐える事は出来ず『プッシュ〜』の音と共に真っ赤になって倒れる。その様子を一部始終見てたあおいは『何が恋人同士だよ〜』と腹を抱えて笑っていたが。
「ひまりちゃん、ひまりちゃん!いけないこうなったら人工呼吸で心肺蘇生だ!!」
と再び口付けようとした瞬間。
「またか〜このエロヤブ医者が!」
と渾身のドロップキックが炸裂するも酔って受け身を取れなかったせいで着地時にしこたま頭を打ち付け『グエッ』と気絶してしまった。一方、あきらの方もまともに食らってしまったので『う〜ン』とノビてしまっていた。
 
ゆかりさんとキラパティのドアを開けた時にはふたりして固まってしまった。何せうら若き乙女達が床に倒れている姿に、更にめちゃくちゃになった店内の様子には数分前まで幸せの絶頂期で夢心地だった私達にとっては否応なしに現実に引き戻される感覚に陥った。とりあえずはと3人を揺り起こそうとしたのだが完全にノビていて仕方がないので部屋のベッドまで運び寝かせる事にした。ひまりんとあおいちゃんはふたりで何とか運ぶ事が出来たのだがさすがに長身のあきらさんだけはどうしようもなく最後の手段に出る。
「キュアラモード・デコレーション!」
ホイップとマカロンになってあきらさんを担いで部屋に連れて行きベッドに寝かせると。
「…今まで一番くだらない理由の変身だわ」
と非常にご立腹のマカロンの様子。確かにこの後は散らかったお店も片付けなければならないから尚更にご機嫌斜めになるだろうと思ってたらふと『キラッと閃いた!』ので変身を解こうとする彼女を制止すると『どうしてなの?』と尋ねてくるので最高の提案をする。


80 : コロ助MH :2018/03/10(土) 09:06:19
「マカロン、ちょうど変身しましたしこのままふたりで婚前旅行に行きませんか?と言ってもこの後いつもの夜空の散歩を夜明けまでした後にどこか静かな湖畔で1日ふたりだけでゆっくり過ごして夕方には帰って来るってものなんですけど、いかがですか?」
との申し出に、予想通り『婚前旅行』のキーワードに彼女のご機嫌は一瞬で良くなった。
「それはなかなか面白そうなお誘いね…うふっ」
と満面な笑顔で快諾されたので『じゃあお弁当作ってきますから待ってて下さいね』と伝えると。
「私も一緒に作るわ」
とふたりで厨房で作り始め、最初は軽くサンドイッチとおにぎり位で良いかなと思ってたんだけどやっぱり気合が入っちゃったみたいで気がつくと重箱5段の豪華な弁当になってしまっていた。あきらさん達には「明日の夕方までに私達が帰るまでにちゃんと片付けて置く事」と置き手紙をして出かける。いつものうさぎのクリスタルアニマルにお弁当とお茶を積み込んで二人乗りし。
「マカロン、いやゆかりさん、いやゆかり!行きますよ」
と伝えるといつもと違って私の背中に頭を寄せて『ええっ』と答える。その温もりが嬉しくてついつい自然と顔が緩みがちになる自分にふと『これが幸せって奴なのかな』と。無限の星空の中を最愛の人とどこまでも一緒に飛び続けながらしみじみそう感じていた。

次の日の夕方、ふたりの時間を満喫した私達はキラパティに向かっていた。
「ゆかりさん、あきらさん達もきっと反省しているはずだから御手柔らかにお願いしますよ」
「分かってるわ。それよりももう『ゆかり』って呼んでくれないの?」
の言葉に思わず赤面しつつ『ふたりきりの時だけは』と伝えると。
「ふ〜ん、まあ良いわ。今はそれで許してあげるわ」
と上機嫌そうに答えてくれた。
やがて眼下にキラパティが見えて来たのだけれども店には明かりがついてない様子だったので。『アレっ?』と思って変身を解きドア前に立ってみたけどやっぱり中は真っ暗で『ひょっとしたらあきらさん達は怒って帰ってしまったんでしょうか?』とゆかりさんに伝えると少し眉をひそめて『…とりあえず中に入りましょうか』とドアを開けると。
「婚約おめでとう〜!!」x3
と突然、店内に明かりがつきクラッカーが鳴り私達は祝福された。そこにはキラパティのパテシエ服に身を包んだ3人が満面の笑顔で迎え入れてくれた。周りを見てみると昨日の彼女達の歓迎会の時よりも豪華な食事が並んでいて、壁をみると結構本格的な飾り付けが所狭しと施されていて更に正面の壁には『いちか&ゆかり婚約おめでとう!!」と垂れ幕が下がっていた。思わず『これは?』と尋ねると。
「これは私達のお祝いの気持ちだよ!時間が足りなかったんで多少荒い部分もあるとは思うけど。あと昨晩は非常にお見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」
と3人揃って頭を下げている様子に『どうしよう』と思ってゆかりさんの方を向くとウインクして答えてくれて。
「分かりました。色々と言いたい事もあるけどこれに免じて昨晩の事は不問にしましょう」
の言葉に3人は『やった〜』と喜び合ったが、その後にひまりんが近づいて来て『いちかちゃん、ちょっと良いですか?』と突然厨房の方に引っ張られてしまったので焦ってゆかりさんの方を観ると同様にあきらさんに引っ張られてカウンターの奥の方に連れて行かれていた。『何なの?もうっ』と伝えると奥から純白のベールの付いたドレスを取り出して来たのだった。

その後店内に戻った見たものは私と同じウエディングドレスを身に包んだゆかりさんだった。そのあまりの美しさに見惚れていると『はいはい、愛しい人の艶姿に見惚れるのは分かるけど次、次!」とふたり並んで上座に座らされた。そしていつの間にか用意されていた店内の片隅に置かれたピアノにステージ衣装に着替えたあおちゃんが座り『ではこれからふたりの前途を祝して一曲』と弾き語りが始まった。
「愛してるばんざーい、ここで良かった〜私達の今がここにある。愛してるばんざーい、始まったばかり〜明日もよろしくね、まだ〜ゴールじゃな〜い。」
その素朴なメロディーと歌詞には胸に響いてくる。そして『これはゆかりさんと私だけじゃなくて私達5人の為の歌なんだ』と気がついた。ふと横を観るとあきらさんもひまりんも一緒になって歌ってくれている。ラストの「ラララ〜、ラララ〜」のサビの部分ではゆかりさんも私も続いて歌う。感動に胸が震えて自然と涙がこぼれて来て思わず。
「どうしようゆかりさん。私、今とっても幸せです…」
と伝えると目を潤ませたゆかりさんも『ええ、私も幸せよ。とっても』と微笑み返してくれた。


81 : コロ助MH :2018/03/10(土) 09:07:14

「はい、はい、そこのおふたりさん!湿っぽいのはなしだよ!さて次は今日の最大の目玉だ!ひまり、あきらさん!!」
との返事にカウンターの陰から台車と共に高さ1.5メートル程のケーキが運ばれて来た。更なるサプライズで思わずふたりで目を丸くしてるとあきらさんが。
「ごめんね。本当はもっと大きくするつもりだったんだけど時間がなくて。でも本番はこの倍以上にするから楽しみしてて!」
「さあ、おふたりとも立って下さい。人生最初の婦婦の共同作業の予行演習ですよ」
とリボンのついたナイフを渡される。思わぬ展開にゆかりさんと見合わせるも、とりあえずふたりでケーキ入刀が済むとまたあおちゃんが。
「そしてお次はこちらだ!」
とピアノを移動させるとそこには小さな祭壇と神父の衣装に身を包んだあきらさんがにっこりと笑って立っていた。
「…これも予行演習なのかしらね」
と少し前の感動がどこかに飛んで行ってしまったのか少し呆れた様子のゆかりさんに。
「良いじゃないですか嬉しい事は何度あっても。行きましょう、ゆかり!」
と手を差し出すと満面の笑みで手を取ってくれて一緒に向かった。
その後、パーティーは大いに盛り上がり明け方まで続いた。

その数日後の夜、シエル・ドゥ・レーヴの居住スペースの寝室でひとつの布団にピカリオを挟んでビブリーとキラリンが3人で寝ていた。
「おい、これって本当に合っているのかピカ?何かおかしいピカ」
「ノン、これが日本古来から伝統の家族で一緒に寝る『川の字』言うスタイルキラ!」
「本当かなピカ。ビブリーは知らないピカ?」
「あたしも聞いた事はあるけど実際にやった事はないからよく知らないわ。それよりいちかからの結婚式の招待状にアンタに入場のエスコートをやって欲しいと書いてあったけどどうするの?」
「……」
「ピカリオ、やっぱりやめておくキラ?だって好きな人の結婚式に出るだけだってツラいしね…キラ」
と弟の気持ちを案じ心配そうに声をかけるが。
「いや俺は出るピカ!いちかに俺の想いは届かなかったけどやっぱり幸せになって欲しいから祝福するピカ!…それに俺にはこうして家族がいるから寂しくなんかない…ピカ…」
最後の方は涙声になって声が震えてる様子にビブリーとキラリンが思わず同時に抱きしめる。
「えらいキラ!さすが我が弟キラ!誇りに思うキラ!!」
と一緒になって涙を流していた。一方、ビブリーは真剣な表情で。
「…ノワールの元を去った後、行くあてが無いあたしにシエルが声をかけてくれた時は本当に嬉しかったんだ。もうひとりじゃ無いんだって。それから今日まで一緒に暮らして来て色々あったけどアンタ達はあたしにとって本当に家族なんだよ。大好きよふたりとも」
その言葉に『ビブリ〜』と今度はキラリンとピカリオが彼女の胸に飛び込んでいく。ビブリーは優しく受け止めふたりが泣き止むまでしばらく間そのままでいた。そんな中、ピカリオはある事に気がつく。いや気がつかなくても良かったのだがこれも悲しい男の性言うべきものか、全て台無しになる。
「ビブリーって柔らかくて良い匂いがするピカ…そう言えば前にキラリンが良い匂いがするって言ってたけピカ」
とその心地良さに頰を染めてポーッとして離れようとせずいつまでピッタリ張り付いている様子に。
「ピカリオ!いい加減離れるキラ!そこはキラリンのものキラ〜!」
とキラリンの怒りが爆発するも初めての感覚に酔いしれてるのか全く届いていなかった。その様子に更に腹を立てたキラリンは今度は実力行使に出て引き剥がそうとするがビクともしなかった。そして怒りが頂点に達した彼女はシエルの姿になりついに最終手段に出ようとする。『キュアラモード・デコレー…』
「待った!!アンタ何でそんな事で変身するの?ダッサ!それにこの位なら…」
と『ベリッ』とあっさりピカリオを引き剥がすが彼は相変わらず夢見心地の様でポーっとしている。
「だって私のビブリーが取られちゃうんじゃないかなと思って…」
とシエルは少し拗ねたように両手を後ろで組んで下を向いて仕切りに床を蹴っている。その姿を見てクスリと笑ったビブリーは。
「ほらおいで、私達は家族だと言ったでしょう」
と自分は布団の真ん中に入り右側にピカリオを寝かせると空いてる側をポンポンと叩いて招く。その様子にシエルは目を輝かせ。『キラ〜』とキラリンの姿に戻って滑り込む。そしてピカリオの方を見ると案の定、既にビブリーに寄り添って眠りについていた。負けじとキラリンも空いている側に寄り添う。『やっぱりビブリーは優しいキラ!大好きキラ!』と言うと続いてあっと言う間に眠りについてしまった。そんなふたりの様子を愛しげに見つめていると自分も眠りに落ちそうになってきてふと思った。


82 : コロ助MH :2018/03/10(土) 09:07:53
「この様子だと何かあたしはまるでお母さんになっちまったみたいだね〜まあいいか…」
その後、ビブリーの魅力に気がついてしまったリオは今度は彼女一筋になってしまい、当然シエルがそれを阻む為にビブリーをかけての姉弟のスイーツ対決が日々繰り広げられる事になった。そのおかげでふたりのスイーツ職人として腕は更なる進化を遂げ、店は繁盛するし美味しいスイーツは毎日食べ放題だし、とビブリーはいつもご満悦の様子との事である。

短い新婚旅行からふたりが帰ってきた翌日、いよいよ新体制で始まるキラパティ。窓の外には既に行列が出来ておりメンバーも否応無しに気合が入っていた。店に出すスイーツも準備万端で本日の目玉は5人で最初のお客様に出したあの5つのアニマルが乗ったケーキである。開店10分前、店内をチェックするいちか、ふと見回すと『あの頃』と同じく5人で開店準備をしている光景に感慨深くなってきて一瞬、涙を溢れ出しそうになるのを吹き飛ばすように。
「あたし『琴爪いちか』!パティシエ歴10年、キラキラパティスリーで店長をやっています!大切な人と大好きな仲間に囲まれて大っ好きなスイーツで皆を笑顔に出来てとても幸せです!!」
と突然、天井を指差して自己紹介するものだから皆が作業の手を止めていちかの元に集まってくる。
「どうしたんだよ〜突然?」
「あ、分かりました。名字が新しくなって嬉しいから言いたくなったんでしょう?」
「えへへ、正〜解で〜す!」
とわざと照れ隠しに笑うと。
「うん、確かに『琴爪いちか』はなかなか新鮮で良い響きだよね」
「うふふ、良いでしょう」
「あ、でも『剣城』と言う名字も良いですよね…」
とちらりと上目遣いであきらの方を見るひまり。
「あ〜、もうすぐ開店前なんだからそういうのは後、後」
「あとね、私もう一つやりたい事あるんだ〜付き合ってくれる?」
とのお願いに『え〜何?何?』と口々に尋ねてきたので『では行きますぞ〜』と思いっきり腕を広げて飛びかかる。
「は〜ぎゅ〜」
と思い切り4人にハグをすると『イタタ』『何すんだよ!』とクレームの嵐だったが『皆ありがとう!大好き!!』と伝えると静かになった。そして腕を解いて向かい合うと皆満面の笑顔で『私も大好き!』と返してくれた。

開店3分前それぞれが持ち場につき、私は入口の所でスタンバっているといつの間にか後にゆかりさんが立っていてそしてそっと耳元で。
「さっきの『アレ』私にもう一度してちょうだい」
とお願いしてきたので『はい喜んで』とゆかりさんの頭を包み込む様に抱き頰を寄せていると。
「またこの5人でお店出来るなんて本当に夢みたいよね…でもいつかはまた…」
「大丈夫ですよ。そうなっても私はゆかりの隣にいますよ。それにこの間も誓ったばかりじゃないですか『ずっと一緒にいる』って」
と体を離し少しおどけた表情をして左手の薬指の指輪を見せると微笑み返してくれた。
「そうね、私達はずっと一緒だものね」
自身の指輪に視線を愛おしそうに眺めた後に私と見つめ合う。その深紫色の瞳に思わず吸い込まれて行き、後少しで唇が重なり合おうとした瞬間に。
「こら〜ふたりとも!もう開店だよ!!何朝からいちゃついてんだい!!」
「まあ、まあ、新婚さんなんだから仕方ないよ。大目に見てあげようよ」
「いちかちゃんゆかりさん、とっても羨ましいですぅ〜」
気がつくと3人はすぐ側に来てて私達の一部始終は全て見られていたらしい。思わずゆかりさんと目を合わせるとお互いキョトンとした顔をしていたがすぐに込み上げて来て笑い出してしまった。それにつられて皆も笑い始め一気に店内が明るくなる。ふと時計を見ると開店20秒前だった。
「あ〜もうこんな時間!皆、早く早く持ち場について!!」
『は〜い』と皆がそれぞれの持ち場に戻って行く中、ゆかりさんが私の方を見てウインクしてくれたので投げキッスでお返しした。そして扉を開ける。
「さあ、行くよ皆!せ〜の!!」
『いらっしゃいませ〜キラキラパティスリーへようこそ!』

キラキラパティスリー、そこはいちか達5人の夢がいっぱい詰まった場所、そして訪れた人達を素敵な笑顔にしてくれる場所。今日も多くの人達が幸せを求めて集まってくる。


                           〜完〜


83 : コロ助MH :2018/03/10(土) 09:08:24
以上になります。本当にありがとうございました。


84 : 名無しさん :2018/03/10(土) 10:09:21
>>83
完結おめでとうございます!
キラパティ勢、勢揃い!
大人になった彼女たちが新鮮でした。
いざとなると、ぐいぐい行くのはいちか、なんだなぁw
長編楽しませて頂きました。


85 : makiray :2018/03/10(土) 14:42:30
 一カ月ほど前のキラパティでのお話です。
 3スレ、お借りします。


86 : makiray :2018/03/10(土) 14:43:12
ビブリーの小さなチョコレート (1/3)
----------------------------------

「あんたたちはチョコレートやんないの」
 いつものようにキラキラパティスリーのカウンター席で「味見」をしていたビブリーが言った。
「やりますよ。
 あきらさんがバレンタインデーに向けて色々構想中です。試作品があるかどうか聞いてみましょうか」
 ひまりが答えると、ビブリーは、顔をしかめて断った。
「シエルさんのお店ではやらないんですか?」
「無理だって」
「そうですか…シエル・ド・レーヴはアシェットデセールのお店ですから、難しいのかもしれませんね」
「チョコレートを多めにするとかは言ってたけどね」
「ところで、チョコレートがどうかしたんですか?」
 ビブリーは横を向いた。
「…。
 別に」
「やっぱりチョコレートが食べたい、とか」
「いらない」
「ひょっとして、チョコをあげたい人がいるとか」
「そんなダッサいことしないわよ!」
 ビブリーが立ち上がる。店内の客の視線が一斉に集まった。
「ちょっとビブリー、営業妨害よ」
 ゆかりがいつもより険しい顔でやってくる。あきらと いちかは周囲の客に、なんでもありません、と言って回っていた。
「こいつが変なこと言うからよ」
「ごめんなさい」
 ひまりが恐縮するとあおいが頭をなでる。
「で、誰にあげるの?」
「違うって言ってるでしょ」
「照れなくていいのに」
「しつっこいわね。うちでもチョコをちゃんとそろえたらどうか、って思っただけよ」
「だから、バレンタイン向けに少し変えるって言ってるじゃない」
 シエルだった。
「あれ、お店は?」
「今日はお休みよ。でなかったらビブリーがここにいるはずないじゃない」
「さぼってるのかと思った」
「あら、ビブリーはまじめよ」
 あおいの想像は的外れではない、と皆が思ったが、そうでもないらしかった。ビブリーは、よけいなことを言うな、という顔でさらにそっぽを向いた。
「それで…」
 いちかが話を戻すと、ビブリーは横を向いたまま言った。
「バレンタインのチョコレートってプレゼントするものでしょ?」
「うちはアシェットデセールのお店だもの」
 ビブリーは、シエルに一瞬、きびしい視線を投げた。
「どんなのを置きたいんですか?」
 ひまりが言った。
「どんなのって…」
「ザ・本命! 的な豪華版とか」
 ビブリーは首を横に振った。
「安くて数が多い義理チョコとか」
「…近い」
「近い?
 じゃぁ、ファミリー向けですか?」
「…。
 そんなとこね」
「そうですか…」
「だったら今のメニューでもいいんじゃないの? うちは家族連れもいっぱい来てるし」
 ひまりが納得しかけたが、シエルはそうではないようだった。
「だから、そういうんじゃなくて、小さいのがたくさん――」
 ビブリーは、それきり口をつぐんだ。顔が赤くなっているのは、何かにいら立っているのか。


87 : makiray :2018/03/10(土) 14:43:54
ビブリーの小さなチョコレート (2/3)
----------------------------------

「小さいのがたくさん…?」
 ひまりが首をかしげる。
「子どもは喜ぶかもしれないね」
 あきらが言うと、ビブリーの顔はさらに赤くなった。
「…あ」
 ゆかりが何かに気づいたようだった。ビブリーはゆかりに、さっきよりもさらに鋭い視線を投げた。
 ひまりは、ビブリーとゆかりの顔を見比べていたが、遅れてその意味に気づいた。
「ひまり、手伝ってあげたら」
「はい!
 ビブリー、キッチンに行きましょう」
「なんでよ」
「小さくてかわいいチョコレート、たくさん作りましょう」
「もういいわよ――ちょっと!」
 ひまりには珍しく強い力で、ビブリーはぐいぐいと引っ張られて行った。
「ビブリーって子ども好きだっけ…?」
「どういうこと?」
 シエルがゆかりを振り向く。
「自分のことを重ねてたんでしょ。
 ノワールに騙される前の」
「一人ぼっちで町をさまよってた時のことですか…?」
 ゆかりが頷く。
 客から声がかかった。あきらは、気になってしょうがないようだったが走っていった。
「食べるものも満足になかった子供の頃のことを考えてるんだと思うわ」
 シエル・ド・レーヴとキラキラパティスリーとでは、微妙に客層が異なる。
 目の前で皿の上にスイーツを整えていくため、決められた席で大人しく待っている必要があるシエル・ド・レーヴには子どもだけという来客はめったにないが、作ったものを並べてあるキラキラパティスリーでは珍しくない。一皿に複数のスイーツを並べるため、一つからでも買うことができるキラキラパティスリーよりは単価が高い、ということも、子供だけでは来づらい理由になるだろう。
 ビブリーはそこに気づいたのだ。そしてもっと言えば、あの頃の自分はシエル・ド・レーヴのような店には近づくこともできなかった、と思っている。キラキラパティスリーなら、なんとかして小さなケーキの一つくらいは買えたかもしれない。それを埋めようと思ったのだ。
「そんなの――言ってくれればいいのに!」
「ビブリーには言えないよ、そんなこと」
 シエルは抗議したが、これはあおいの方が正しい。性格も性格だが、思い出したくないことである。まして、口にすることなどはもっと難しい。
「私やひまりが気付いたのだってまずかったのかもしれないし」
「じゃ…」
 もう足はキッチンを向いていた いちかが止まった。
「これ以上、手伝わない方がいいかもね」
「でも、そういうことなら、何かしてあげたいよ!」
「…。
 偵察してみましょうか」

「お上手なんですね…」
「当たり前でしょ!」
 ひまりが、ごめんなさい、と肩をすくめる。
 作るものはすぐに決まった。チョコを溶かしてカップ型の容器に入れる。小さいのをたくさん、というビブリーの考えにぴったりだし、トッピングを変えればバリエーションも増える。アイシングという方法もある。試作してみよう、と残っていたチョコレートを湯せんにかけて溶かし始めたのだが、ビブリーの手際はよかった。
「シエルに随分、いじめられたからね」
 キッチンのドアの向こうではシエルが、いじめてない、と抗議しそうになったが、いちかとあおいに抑えられた。
「こんなもんよね」
 ボウルからへらを持ち上げるとチョコレートがゆっくりと落ちていく。
「型は?」
「これでどうでしょう」
 シリコンの、星やハートの型を並べるひまり。
「いいけど、本番はこれじゃダメよね」
 言いながらビブリーはチョコレートを入れ始めた。
「そうですね。数がいるでしょうから、グラシンカップの方が」
「トッピング…王道はナッツとドライフルーツかな。フルーツなら種類はたくさんあるし。あとはビスケットか」
 言いながら、キッチンにあったものを乗せていく。


88 : makiray :2018/03/10(土) 14:45:00
ビブリーの小さなチョコレート (3/3)
----------------------------------

「ラムネ菓子なんかどうでしょう。あとはグミとか。子供達も食べなれてるでしょうし」
「…。
 面白いわね」
 ビブリーが感心したように何度もうなずく。
「あとは…そうだ。
 チョコレートはどうですか?」
「何言ってんの? これがチョコでしょ――」
「この上に、小さなチョコレートを乗せるんです。これくらいの奴があるじゃないですか」
 ひまりは指で 1cm くらいの輪を示した。
「…。
 豆みたいなやつ?」
「はい。色もカラフルだから見た目も楽しいし、あとイチゴ味で三角形の――」
 ビブリーがじっと見ている。何か、気を悪くするようなことを言ってしまったか、とひまりは上目遣いに覗き込んだ。
「あの…」
「あんた、よくそんなこと思いつくわね。チョコにチョコ乗せるとか」
「はぁ…」
「すごいわ」
「…え?」
 ビブリーはそう言うと道具を片付け始めた。
「冷やしといて」
「はい…はい!」
 キッチンのドアの向こうでは、いちかたちがひまりと同じように笑顔になっていた。
「あたしたち、何もすることないじゃん」
「だから言ったでしょ」
「さすが、ひまりん!」
「ゆかり、キラパティでショーケース余ってない?」
 腕を組んでいたシエルが言う。
「ショーケース?」
「うちにはないもの、ビブリーのチョコを置く場所」
「そうね。作ってあげる」
「ごめん、悪いんだけど、店に戻ってくれないかな」
 あきらが走ってきた。いちかが、あ、と声を上げる。
「みんな、戻ろう」
「私も手伝うわ」
 小走りに店に戻るいちかをシエルも追った。ゆかりがキラキラルで棚を作ってもらったら、お土産用として持ち帰れるスイーツを常備してもいいかな、と思う。すると、メインの方もそれとリンクした内容にして…あ、それを先に選んでもらってカウンターで盛り付ける時に追加するとか。名前は「ビブリーセレクション」とか――嫌がるかもしれないけどね。シエルは、ふふ、と笑った。
 道具を洗っているビブリーも笑顔になっていた。見ると隠すだろう、と ひまりは覗き込みはしなかったが、そう思うと笑みが漏れてくる。
「何笑ってるのよ」
「え…あ、おいしそうなスイーツができたから、うれしくて」
「…。
 そうね」
 ひまりは今度も、ビブリーの顔を覗き込むのを我慢した。


89 : makiray :2018/03/10(土) 14:46:40
 以上です。


90 : 名無しさん :2018/03/10(土) 15:00:52
>>89
わー、makirayさん来たー! 今年は来られないのかと思ってました。
ビブリーもキラパティの面々も、凄くらしいなぁ。
ビブリーを手伝うのがひまりんっていうのが、なんか新鮮で、でもなんか良かったです。
素敵なお話、ありがとうございました!


91 : 一路 :2018/03/10(土) 19:50:50
せっかく参加者に名前載せていただいたのに、すいません……締め切りギリギリでその1しか投下できないという体たらく……。
間に合わなかったら旧作スレに投下させていただいてよろしいでしょうか……?
多分全編通してもそんな長いお話じゃないと思うんですけども。
 
ハグプリが川村敏江さんキャラデザ記念、スマイルプリキュアで
『甘さはあなたのお好みで』


92 : 一路 :2018/03/10(土) 19:52:41
 白いクロスの掛けられたテーブルには、紅茶の注がれたティーカップと、ナイフとフォークの添えられた、丸い小洒落たお皿が置かれていた。
 お皿の上には料理――見た目的にはお菓子と言ったほうが良いのだろうか――が温かな湯気を立てている。程よく焼かれた直径15センチくらいの円形の表面には、一面塗られたホイップクリームの上に苺があしらわれていて、チョコレート色のソースが網の目状にかけられていた。
 サクッという手応えと共に生地にナイフを走らせると、甘いバニラエッセンスの香りと共に、トロリとしたクリームが皿の上にこぼれ出る。その中にはカットされた赤い苺だけではなく、刻まれた色とりどりの他の具材も混ぜ込まれているようで、カラフルなその眺めは、視覚的にも食べる人間を楽しませようとしている風にも思える。
 手にしたフォークで切り分けた生地を突き刺すと、その上に器用にナイフでクリームとイチゴを絡め、一旦まじまじと見つめると、唇を開いて一息に口へと放り込む。
 途端に舌の上に広がるのは、味の玉手箱というよりもビックリ箱と言った方が相応しい、甘さと香ばしさと具材の味が混じり合った、得も言われぬ複雑な味わい。それを堪能するかのように天井を仰いで瞼を閉じ、肩を震わせゆっくりと咀嚼を繰り返す。
 それからティーカップを手にして、料理を紅茶でごくりと喉の奥へと流し込む。
 そしてようやく彼女――――――星空みゆきは口を開いた。

「うげぇ……あかねちゃん、全然美味しくないよ……このお好み焼き」


93 : 一路 :2018/03/10(土) 19:53:28
***1***


「なんでやねん!今回の苺ショートケーキ風お好み焼きは、今までで一番の自信作やってんで!?」

 二月も半ばに迫りつつあるある日の放課後、ふしぎ図書館。憮然とした表情で腰に手をやっている日野あかねの前でテーブルを囲んでいるのは、リーダーである星空みゆきだけではなく、黄瀬やよい、緑川なお、青木れいかのおなじみスマイルメンバーの面々だった。各々の前にはみゆき同様、紅茶の入ったカップと、生クリームとイチゴをトッピングされ、バニラエッセンスが練りこまれた料理――お好み焼きが乗せられている。

「じ、自信って言っても……やっぱりお好み焼きでスイーツ作るなんて無理だったんだって……」
「む、無理やあるかい!ほ、ホラ、クレープやって生クリームやフルーツ挟んだりもすれば、ツナ挟んだりソーセージ挟んだりもするやろ!お好み焼きかて一緒やないか!」
「だからといって同時には挟まないはありませんか?……食べてみたところ、このお好み焼きには普通に豚肉やらキャベツやらが入っているようですが……」
「あ、当たり前やん……お好み焼きやねんから……ふっくらサクサクさせる為に生地にはちゃんと長芋も――」

 ムッとしていたあかねも、みゆきだけではなく、れいかからも飛び出した否定的な言葉に押され出した……それも無理はない。あかねとてグルメとまでは言わないまでも、飲食店の娘である。ましてや味がいいと繁盛している名店で、幼い頃からその手伝いをしてきたのだから、舌も腕前も鍛え上げられてきている。
 故に、自信があるなどと強がってはいたものの、実際のところこの場にいる誰よりも分かってはいたのだ――お好み焼きをスイーツに仕立て上げる事など、不可能なのだという事を。
 しかし残念な事に、彼女が家業を手伝っているうちに一番鍛えられたのは舌でも腕でも無かったのだ。
 彼女の内に鋼よりもまだ硬く、最も鍛え上げられた物とは――……。

「あかね、いい加減に負けを認めたら?……『お好み焼きで美味しいスイーツを作れるなんて言ってゴメン』ってさ」

 あかねにそう声を掛けたのは、頬杖をつきつつ、皿の上のお好み焼きを気怠げに手にしたフォークでつついている髪を黄色いリボンでポニーテールにまとめた活発そうな少女――緑川なおだった。
 萎れた花が水を与えられて瞬く間に回復する様に、なおの台詞を聞いて、挫けかけていたあかねの心に一気に闘志が漲る。

「はあ!?誰が負けたんや!今回はたまたまのたまたま、天変地異が起こる位の奇跡的な確率で失敗してもうただけや!」
「……あかねちゃん……それだともう一週間、毎日天変地異が起きてるって事になるけど……奇跡的のハードルが踝位まで下がってるね……」
「それに、天変地異になぞらえるなら、むしろ味の方ではないでしょうか……」

 なおの言葉にヒートアップしたあかねの耳には、最早みゆき達のツッコミも届かなくなっていた。

「うちを誰やと思ってんねん!浪花の天才お好み焼き少女あかねちゃんやで!次こそ絶対に、なおを満足させるお好み焼きスイーツ作ってきたるわ!」

 そう、あかねの内に金剛石の如くに鍛え上げられて来たのは、幼少期より慣れ親しんだ、お好み焼きに対するプライドだったのだ(――まあ最も彼女の場合、生来の負けず嫌いなのが災いして、それがなくとも同じ展開になっていただろう事は想像に難くないのだが)。
 顔を真っ赤にして熱くなっているあかねに対して、なおは静かに微笑むと、涼やかに一言。

「……楽しみにしてるよ」
「うちも楽しみや!なおが『あたしが間違ってました、神様仏様ビリケン様あかね様々』って頭を下げてくんのがな!」


94 : 一路 :2018/03/10(土) 19:54:34
 逆に噛みつかんばかりの勢いで言い放つあかね。温度差のある二人の対比は、まるで童話『北風と太陽』だ。
 他の三人はといえば、二人のやり取りを聞いて蒼ざめた顔で冷や汗を垂らすばかり。

(れいかちゃん、そ、それって、もしかして私達もまだ付き合わなくちゃいけないのかな?)
(考えたくもありませんが……なおとあかねさん、二人だけでは喧嘩になりかねませんから、わたくし達がストッパー代わりに参加する必要はあるでしょうね……)

 それにしても、とれいかは首を傾げた。
 彼女の知るいつものなおならば、もう既にあかねに負けず劣らず熱くなって、喧々囂々侃々諤々、単純明快丁丁発止のぶつかり合いを繰り広げているはずである。
 勝負事に対してこんなにも冷静ななおというのは、幼馴染の彼女ですらも一度も見た事が無い。
 しかし残念な事に、今のれいかにはそれを推測するような精神的余裕は微塵も存在しなかった。
 顔を見合わせ合うと、みゆきとれいかは、はあああ、と大きな溜息をつき、恨めしげな視線を一連のやり取りの最中ずっと無言だったやよいへと向ける。

(ふ、二人ともゴメンなさい!!ででで、でも、私もまさかこんな事になるなんて思わなかったから――!!)
 
 目尻に涙を浮かべ、必死に両手を擦り合わせて二人を拝み倒すやよいの傍らには、今回の騒動の元凶である、一冊の少女漫画雑誌が置かれていた。


95 : 一路 :2018/03/10(土) 20:24:01
うぎゃあああ『、』忘れてた。
皿の上のお好み焼きを気怠げに手にしたフォークでつついている、髪を黄色いリボンでポニーテールにまとめた活発そうな少女――緑川なおだった。
ですね。読みにくくてすいません……後で保管庫で直させてください……。


96 : 名無しさん :2018/03/10(土) 20:44:08
>>94
何だかまたドラマチックな展開が待っていそうな予感!
やよいは一体、どんな漫画を見せたんでしょう?
続き楽しみにお待ちしてます!
多分、例年だとロスタイムがあるから、このスレで大丈夫かと。


97 : 名無しさん :2018/03/10(土) 23:47:42
>>89
シエル・ド・レーヴではマジメに働いてたり、ひまりのことちゃんと認めたり、でも素直になれずに邪険な態度。
うん、一言で言うとmakirayさんのビブリーはめっちゃ可愛い! ますます大好きになりました!!

>>95
開始から美味しそうな描写、かと思ったらお好み焼きだったのね!?
日産コンビも気になるし、(大体きっかけ作ってくれる)やよいちゃんもそれぞれの事情もあるようで続きがワクワクもんですわ!


98 : 金丼亭猫好 :2018/03/11(日) 19:43:24
「すぐ春だからね、タコカフェも新しいメニューとか考えないと、って言ったんだよ。あたしがさ」
 2月もなかば。タコカフェの車の前のパラソル席の横であかね先輩がそう言うのを、あたしはちょっとぼーっとしながら聞いてたんだ。
「ついでだから、なんかイベントっぽいのにもしたいなぁ、とかさ。軽くね、軽ぅ〜く」
 となりで ほのかが上を見ながらため息ついてる。いや、あたしのため息かな、これ?
「‥‥脚立を持ち出したときに、あれっ、と思えばよかったんだろうけどねぇ」
 3人並んで見上げてる脚立の上で、こっちに気がついた ひかりが、ちっちゃく手を振ってきた。
 反対の手で、薄茶色の大きな山に、シュークリームをひとつ、チョコをノリ代わりにして乗せながら。
 シュークリームの山積みケーキ――クロカンブッシュ、だっけ。聞いたことはあるけど、本物はこんなデカいんだ‥‥
「というわけで。なぎさ、あとよろしくね♪」
 ‥‥へ?
 ぽんっ、と肩に乗っかったのを感じて、そぉっと横向いたら、あかね先輩がにっこり笑ってたよ。
「いやさぁ、さすがにこれ車には載せられないから。今日中に片付けないと」
 って、ちょっと!?
「む、無理無理無理っ!ひとりで食べられる量じゃないですって、あれ!!」
 頭がちょっと痛くなるくらい、あたしは横に首振った。
 ふつー冗談だと思うとこだけど、これマジだ。にっこり顔の目が笑ってないんだから‥‥ああ、ひかりのことになると、とたんに姉バカになるんだからっっ!
「ほ、ほのかも何か言ってよぉ!‥‥え?」
 となりに向き直ったら、ほのかが携帯を閉じるとこだった。
「あかねさん。これ、ベローネの生徒会がタコカフェに発注した、っていうことでいいですか?」
「あ?ああ、引き取ってくれる、ってンなら構わないけど」
 こんどはほのかのにっこり顔‥‥の、目が笑ってないヤツ。あかね先輩がちょっと引いてるのはいいけど、なにする気よ。
「バレンタインっていうことで、ベローネの女子高等部から男子高等部にプレゼントすることにしました。あれだけ積めるならシューは固いはずだから、明日くらいまでもつでしょ?」
 ほえ〜、さっすがほのか。一瞬で交渉済ましちゃったよ。いろんなとこ人脈あるからなぁ‥‥ん?なんか、手渡されたけど、ボウル?
「じゃ、なぎさ。しっかりコーティングお願いね。わたしは運ぶひと連れてくるから」
 ボウルの中身は板チョコいっぱい‥‥コーティングって、あの山に!?
「ちゃんと固めないと動かせないんだから、早く、早く☆」
 笑いながらパタパタ駈けてっちゃったよぉ、おぃぃ!
「さぁて、それじゃ営業再開っと。ひかり〜、あとはなぎさにまかせて、こっち手伝って〜」
 あかね先輩はひかり連れて車に引っ込んじゃって。あとにはテーブルの上に携帯コンロとお湯張ったナベか。くっそぉ。
「やりゃぁいいんでしょ、やりゃぁ。もぅ、こっちは自分のチョコだってまだ出来てないってのに‥‥あれ?」
 火をつけようとしたコンロに、なんかはさんであるよ。メモか、なになに‥‥
『藤村くん、チョコシュー好きよ?がんばってね〜♪』
 ちいさな紙の上に、細くてすっとした、ほのかの字が踊ってた。‥‥って、ことは、だ。
「あかね先輩!ひかり!!わかっててやったなっっ!!!」


99 : 金丼亭猫好 :2018/03/11(日) 19:45:18
締切ギリギリになりまして申し訳ありません。
この掲示板に書くのもはじめてのため、ルールから外れてましたらお手数ですが削除お願いいたしますm(_ _)m


100 : 名無しさん :2018/03/11(日) 20:11:28
>>75
お母さん視点っていうのは、優しくて温かくて、やっぱ、いいですね!
心配しながらも、娘を見て逆に元気をもらってるのもいいです。
早速、呼び捨にしてたのにもニンマリでした♪
>>83
大作おつかれさまでした!最後は大団円でみんなハッピーになれてやれやれですw
リオくんの夢が正夢になってるのには笑いました。それに、意外と惚れっぽいのねw
>>89
照れ屋でぶっきらぼうな物言い、このツンデレっぷりが好きですw
ビブリーの心中、周りが察してあげないといけないという不器用さがまた可愛いですね〜。
>>94
美味しそうなケーキを思い浮かべてて、思わずよだれがでそうになったのに、お好み焼きとはw!
一体どうしてこうなった!? いいとこで終わったので、非常に気になります!


101 : 名無しさん :2018/03/11(日) 20:48:50
>>99
短か目のお話ですが会話のやりとりが楽しかったです♪
シューの山は、計算づくなんですね、大胆なやり方が面白いですw
余計なお世話だけど、なぎさ、やる気が出たんじゃないかなw


102 : 運営 :2018/03/11(日) 21:09:57
こんばんは、運営です。
金丼亭猫好様、ガールズSSサイトへようこそ!
素敵なお話での競作ご参加、どうもありがとうございました。
Twitterにて自己紹介を頂きましたので、保管庫に掲載させて頂きます。
また、お話のタイトルは「あま〜いおやまをつくりましょ」で承りました。


103 : 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2018/03/11(日) 23:00:12
すみません、作品書きあがりましたが、
本日、掲示板への投稿は間に合いません。

作品自体は、連絡掲示板のほうへ投稿させていただきました。
後日、余裕があれば、こちらのほうへも投下させていただきたいと思います。
本当にすみません。


104 : 運営 :2018/03/11(日) 23:25:50
>>103
こんばんは、運営です。
連絡掲示板から、猫塚様の作品、確かに受け取りました。競作ご参加、どうもありがとうございました!
保管庫の方へは、このまま保管させて頂きます。
読者の皆様、先に読んじゃって申し訳ないです〜。「運営得」ってことで、許して下さいね(笑)


105 : 夏希 :2018/03/12(月) 00:16:04
ご無沙汰しております。
時間が取れなくて開幕のコネタには間に合わず、今回は閉幕のコネタを務めさせていただきました。
みなさんの作品楽しく読ませていただいてます。
三次創作ではありませんが、今回は特に、初めての長編を書き上げてくださった方の作品を匂わせています。
みなさんへの感謝の気持ちを込めて。


106 : 夏希 :2018/03/12(月) 00:17:17
 終幕!『オールスタープリキュア!レッツ・ラ・競作!冬のSS祭り2018』


「またねっ〜!」

 ぶんぶんと大きく手を振り回して、いちかはクリームエネルギーで作られた階段を下って帰路に着く。みんなも同じように再会の約束を口にして背を向けた。向かう先は空に浮かぶ鍵盤だったり、鏡の中だったり、これまた大きな鳥に乗ったりと、それぞれに違うけれど。
 最後の一段を降りると、一瞬だけ眩い光に包まれる。やわらかな風が吹き抜けて、微かな春の草木の匂いを運んできた。
 いちかは異国の小さな農村の、少しさびれた広場の片隅に立っていた。

「そっか、ここはいちご坂じゃなかったよね」

 豊かで活気のあるコンフェイト公国の、そんな都市近郊から外れた、のどかな田舎と呼ばれるような場所。

「ひまりんも、あおちゃんも、あきらさんも、シエルも、さっきまで一緒にいたはずなのに……」

 そう、確かにさっきまでみんな一緒だった。キラパティのメンバーだけじゃなくて、大勢のプリキュアのみんな達と、中学生だった頃の姿のままで――
 いちかは自分の両手と足元を見つめる。鏡なんて見るまでもなく、立派に伸びきった大人の女性の身体だった。
 その昔、というほど前じゃないけれど、最後のエリシオとの戦いから――もう、片手の指では足りないくらいの年数が経過していた。

「やっぱり夢だったのかな。毎年この時期に、決まって見る夢? これもホームシックの一種なのかなぁ」
「夢かどうかはともかくとして、独り言が多いのは寂しいからって、よく言うわね」

「わわっ! って、ゆかりさん!?」

 突然会話に割り込んできたのは、夢でも見ているかのような、現実離れした美しい女性だった。大人びているってのは、大人には一歩届かない人を表現する言葉だ。目の前の彼女にはまったく相応しくない表現だろう。
 余裕があって優雅で、華やかで気品に溢れていて、それでいて表情はやわらかくて親しみを感じる。あの頃も高校生離れした容姿だった彼女は、今やそんな完璧な女性に成長していた。

「驚いたと思ったら黙り込んで、私の顔に何かついてる?」

「そうじゃなくて、あんまり綺麗だからつい見とれちゃって」
「ありがとう。よく言われるわ」

 自慢する気なんてなくて、謙遜する気も全然なくて、ゆかりは事実をありのまま口にする。でもその瞳には、少しいちかの反応を面白がっている色も見えた。

「あはは……それで、ゆかりさんはどうしてここに?」
「この国は私の留学先だもの。知り合いから噂で聞いたの。いちかこそどうしてこの村に? 都会なら色々なスイーツの勉強もできるのに」
「いずれは向かうつもりですけど、ここから始めたかったんです」

 いちかはそう言うと、通り過ぎる親子に手を振った。その子の嬉しそうな顔を見ただけで、ゆかりはすべてを察したようだった。いちかの夢の原点で、彼女の憧れの人の姿が思い出される。

「ねえ、ゆかりさん。私、さっきまで夢を見ていたみたいなんです。中学生だった頃の夢。みらいちゃんや、他のプリキュアのみんなと一緒に、お話会をしていたんです。いちご坂で、キラパティの中で」
「そんな夢なら、私も見たわ」

 ゆかりの言葉を聞いた途端、いちかは迫るようにゆかりの顔を覗き込む。一歩離れて憧れの眼差しで見ていた、さっきまでの態度が嘘のように大胆に、そして懸命に。

「ホントですか? 実は、今年だけじゃないんです。毎年、このくらいの時期になると必ず見るんです。いつの間にか招待状が届いていて、でも終わったら無くなっていて、夢なのに、不思議と全て覚えているんです。おかしいですよね」
「毎年見るのに、どうして今になって話したの?」

 ゆかりの問いかけに、いちかはちょっと口ごもる。どうして話す気になったのか、どうして話せなかったのか、自分の心に問いかける。

「私、本当は、あれは夢じゃないんだって思いたいのかも。誰かに話して、それが夢だとハッキリしたら、もう招待状が来なくなるんじゃないかって。だけどゆかりさんと会ったら、確かめたい気持ちが抑えきれなくなって……」

 いちかはなんとかそれだけ話すと、ゆかりの顔を真剣な顔で見つめて返答を待つ。その口から出てくる言葉だけじゃなくて、表情からも、何も見逃すまいとするかのように。ゆかりをいっぱいに映すその瞳の中には、期待もあれば、不安もあって。ゆかりはその様子を見て、小さく笑った。そして何かを思いついたのか、目を閉じると、自分の唇をいちかの唇に近づけた。

「わわっ! なんですか? どうしてこうなるんですか? ゆかりさんは好きだけど、私たちは女の子同士で、嫌じゃないけど、心の準備もできてなくて」

 慌てて後ずさるいちかを見て、ゆかりは今度こそ笑いをこらえきれずに噴き出した。


107 : 夏希 :2018/03/12(月) 00:17:48
「先に確認させてもらったわ。どうやらいちかも同じ夢を見ていたようね。同じ日に、同じ夢を、違う人が見るなんてありえない。だとしたら、あれは――現実にあったことよ」
「そんなことって! 私、さっきまで確かに中学生でした。それにお話会は作り話をする場所じゃなくて、お互いの近況を伝えあう場所なんです。まさか、だって、あんなこと……」

「時間を超えたことなら、プリキュアだった頃に私達もあったでしょ? それに体験したことのない実話があるとしたら……パラレルワールドの記憶って可能性もあるわ」
「パラレルワールドって、前にラブちゃんたちが話してた、違う可能性の世界ですよね?」
「ええ、本で読んだ知識だけど、違う世界で生きている自分と記憶を共有することがあるそうよ。既視感ってのも、それが原因だと考えている人もいるわ」

 いちかは近くにあった、丸太の柵に腰をかける。軽く目を閉じて、お話会で聞いたことを思い浮かべる。まるで台本でも読んでるみたいに、一字一句を鮮明に思い出すことができる。

「毎年、違うお話ばかりなんです。中には突拍子の無いようなお話もあって、でもどれも真剣で、嘘だなんて思えなくて。あれも、全部本当に起きたことなんですか?」
「ええ、恐らくは。不思議ね――こうしている間にも、違う世界で私達は違う毎日を過ごしている。まだ中学生かもしれないし、結婚して子供もいるかもしれない。その全てが現実なの。今の私たちがそうであるように」

「確かにそう考えたら、どんなことだってできるような気がしますね。何かに躓いたり、間違って転んだりしても、そうじゃない道を選んだ自分がいるなら、後悔せずに、また立ち上がれる気がします」
「いちかは、今の自分を後悔しているの?」

 今度はゆかりがいちかの顔を覗き込む。ここに足を運んだのも、一人でお店を切り盛りしてると噂に聞いて、心配したからだった。

「まっさか、私、すっごく幸せで毎日が楽しいんですよ」
「ええ――知ってるわ」

 いちかの視線の先にあるものを見て、ゆかりはそう言って微笑んだ。広場には、キラパティのオープンを待つ子供達が、いや、大人や老人達までが大勢集まっていた。

「キラパティ、オープン!」

 いちかがそう口にすると、突然、手にした小さなカバンが立派なスイーツショップになる。

「いらっしゃいませー。ようこそキラキラパティスリーへ!」

 いちかはゆかりに目配せすると、お客さんを案内するように、店内に入っていく。ゆかりも「手伝うわ」と一言だけ口にして後を追った。
 いちかは隣を歩くゆかりに、最後に一つだけ問いかけた。

「招待状って、必ず送り主がいるものですよね? 一体、だれが送ってくれたんだと思いますか?」
「さあ、それはわからないわ」

 ゆかりは全てをわかったような顔でそう答える。一瞬だけ外を、空を、世界を超えた、もっと大きな、もっと大勢の、自分を見守る何かに目を向けて。
 キラキラパティスリーには、今日も笑顔の花が満開に咲いていた。


 〜fin〜


108 : 夏希 :2018/03/12(月) 00:19:23
以上です。ありがとうございました。
このスレッドは、例年通り、一カ月の間このままにさせて頂きます。
「間に合わなかった」という方は、どうぞ心置きなく投下して下さいませ。
「新たに書いてみた!」という方も、勿論大歓迎です!
このスレッドに投下されたSSは、全て競作作品として保管させて頂きます。


109 : 名無しさん :2018/03/12(月) 21:09:39
たくさんの素敵なお話、楽しませていただきました。
開幕はわいわいと盛り上がり、閉幕は少ししんみりと胸に響くものがありました。
一年に一度のお祭り、終わってしまうのは寂しいですが、また来年も会えることを信じて。
作者の皆さん、ありがとうございました!
まだ続きのお話あるようなので、引き続き楽しみにしてます。


110 : 名無しさん :2018/03/12(月) 21:11:38
>>103
読ませて頂きました!
実にゆかりらしくて、あきららしい。冒頭の拗ねたゆかりなんてもう最高!
そしてベッドの中の二人の描写がいつもながら美麗で、しかも可愛らしくて、まさに眼福でした。
どうもありがとうございました!

>>108
素敵な終幕SSですね! なんか、夏希さんのこの競作への想いが伝わって来て、じーんと来ちゃいました。
今年も皆様のお話、楽しませて頂きました。恒例の(笑)ロスタイムも楽しみにしています!


111 : ゾンリー :2018/03/13(火) 20:02:31
こんばんは。遅くなりましたが競作作品を投稿させて頂きます。
タイトルは[スイーツを「さかな」に]でお願いします。


112 : ゾンリー :2018/03/13(火) 20:03:36
曇天が暗い空を覆い、唯一見える月の光は街のネオンに埋もれ霞んでいる。
そんな夜を私__ひまりは歩いていた。
ノワール、そしてエリシオとの戦いから早数年。大学生になった私はひょんなことから、苺坂を遠く離れたここ日本の南に位置する街にある、大学の研究室にお世話になっていた。
(今日もコンビニかな……)
空腹を覚えた私は夕食__もう日を跨ぎそうなので夜食と呼ぶべきなのだろうが__を求めて街を彷徨いだした。
歩く事数分。ちょっとした広場だろうか、白と水色のよく見るコンビニを見つけその中に入ろうとした時だった。
コンビニの背後でボンッっと白い煙が上がり、同時にそこにあった建物が消え、月明かりが私を照らした。
(まさか……いやでも一瞬で建物を消すなんて、やっぱり……)
私はとうに空腹を忘れ、煙の麓へと向かっていった。

「ん〜!今日も大盛況やったばい!なんちって」
その声を近くに聞き、高鳴る鼓動が私を急かす。
二回角を曲がってコンビニの裏に。そこにはパティシエ服の親友の姿があった。
「……いちかちゃん。」
彼女はゆっくりと振り向くとしばらく呆然とこちらを見つめ、そして駆け寄ってくる。
「ひーまーりーん!」
背中に回された手は暖かく、風で膨らんだ髪からはほのかに甘い匂いがした。
「久しぶり!」
いちかちゃんはバッと顔を離し、私の顔をまじまじと見て、もう一度抱きついた。
再び顔を離した時、彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべていた。
「ねえねえひまりん、お腹すいてない?」
「実はお夕食まだなんです」
「じゃあファミレス行こ?私もお腹ペッコペコなんだ〜」
私は快く承諾し、月を真上に見上げながら2人で夜の街に繰り出した。

「いらっしゃいませーお客様何名様でしょうか?」
「二人で!」
「はい、空いてるお席の方へどうぞ」
私たちは窓際の、夜空が見える席についた。
「ひまりん何食べる?」
「そうですね……」
ふむ、とメニューを見渡す。どれも美味しそうで再会によって治まっていた腹の虫がまた鳴り出した。
「じゃあ……これで!」
「おぉっ!ガッツリ行くね〜じゃあ私もこれ!」
ベルを押して注文を終えた私たちは早速ドリンクバーを注ぎに向かった。
「「かんぱーい!」」
「くぅ〜っ、五臓六腑にしみわたりますな〜!」
「ですねぇ〜」
しばらくしないうちに料理が到着した。バチバチと音を立てるのは、香ばしく焼けたハンバーグ。
料理を間近にして、空腹は遂に最高潮を迎えた。それはどうもいちかちゃんも一緒のようで。
「「いっただきまーす!」」
一心不乱にかぶりつく。
互いに、世間話をする事すら忘れて。

「あー美味しかった!」
「ふふ、ろくに話しもせずに食べましたね〜」
「何かデザートでも食べる?」
「そうですね……いちかちゃん、ホテル泊まりですか?」
「んーとね、今からカプセルホテルでも探そうかなーなんて」
私は一瞬躊躇ったけど、結局そのひらめきを提案する事にした。

「よかったら私が借りてるアパートに行きませんか?」
「……いく!いきたい!」
目を輝かせる彼女に私も釣られて笑顔になった。



113 : ゾンリー :2018/03/13(火) 20:04:08
大学の近くにあるアパート。お世辞にも綺麗とは言えない外装だが交通の便もよく、部屋もこじんまりとしていて一人暮らしにはもってこいの部屋だ。
「ただいまー……」
「おっじゃましまーす!」
「何もないですけど、ゆっくりしててください」
私はいちかちゃんがクッションの上に座ったのを確認すると、キッチンでお湯を沸かし始めた。
「ダージリンでいいですか?」
「うん!ありがと、ひまりん」
お湯を沸かす間に茶葉を用意し、冷蔵庫から大ぶりのプリンを取り出した。
「大っきなプリン!作ったの?」
いちかちゃんの座るリビングからは直接キッチンが見える。
「今近くのスイーツショップでアルバイトしてて、そこで売り物にならない材料で作らせてもらったんです。賞味期限切れそうな卵とかを使って」
ガラスの器にプリンを移し替え、あらかじめストックしてあるホイップクリームでデコレーション。チョコペンは無いので少しだけ残っていたアラザンで顔を描く。
「お待たせしました!りすプリン、出来上がり!」
そんな事をしている間にヤカンから吹きこぼれたお湯がコンロの火によって音を立てて蒸発した。
急いで火を止め、茶葉の入ったティーポッドに注ぎ込む。蒸らしてからカップに注がれた紅茶を持って、折りたたみ式のテーブルに向かった。
「それじゃあ再び再会を祝して〜」
「「かんぱーい!」」
そしてようやく、他愛のない話が始まった。
「ひまりんはどうしてこの街に?」
「立花先生の紹介で、研究室のお手伝いをさせてもらってるんです!いちかちゃんは?」
「いやー原点回帰と言いますか、世界を笑顔にする前に日本中を笑顔にしようかな〜って!」
「この街の人達はどうでした?」
「それが苺坂に負けず劣らず親切な人ばっかりでさー!「若いのに頑張ってるね」ってコレもらったんだ!」
いちかちゃんがガサゴソとバックから取り出したのは黄色いパッケージの袋ラーメンだった。
「九州で大人気の袋麺でさ、やっぱり九州はとんこつだよね〜」
そして話題は、私の研究についてになった。
「今やってるのはスイーツのゼリーなんかに多く含まれるコラーゲンをいかに効率よく吸収するかの研究で、既に論文にまとめてるところです」
「論文!大学生っぽいな〜」
「読みます?英語ばっかりですけど」
「う゛……やめときます〜」
いつの間にか二人のプリンは全て胃の中に吸い込まれていた。
「まだまだスイーツ、残ってるんですけど……」
「ひまりーん、夜はまだまだこれからですぞ〜?」
「ですね!」
こうして私たちはこうしてスイーツを肴に、暁の空が登るまで互いの現状を語り明かした。(終)


114 : ゾンリー :2018/03/13(火) 20:04:39
以上です。ありがとうございました。


115 : 名無しさん :2018/03/13(火) 22:49:10
>>114
なんか、ひまりんといちかの弾んだ声が聞こえてくるようなお話でした。
大学生になってもリスプリン作るひまりが良かったです。そりゃあ想い出の味だもんね!


116 : 名無しさん :2018/03/14(水) 23:41:11
>>112>>113
読みやすい


117 : 名無しさん :2018/03/17(土) 23:14:04
>>103
同じ時間を過ごしている様な気持ちになりました


118 : 名無しさん :2018/03/24(土) 18:37:01
>>103
117さん、言い得て妙だな。ホント、目の前で見てるみたいな感じ。
映像が浮かぶっていうより、その場にいるみたい。
しかも、これぞあきゆか!感ありました。
冒頭からゆかりがゆかりらしく、あきらがあきららしい。
ベッドのシーンになってもそれは変わらず美しい。
素敵な時間過ごさせてもらいましたー。


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