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【競作】オールスタープリキュア!魔法でつなぐ!冬のSS祭り2017

1 運営 :2016/12/11(日) 16:06:51
こんにちは、運営です。
アカオーニには笑ってもらうとして(笑)来年のお話です。当サイト4回目のSS競作企画を行いたいと思います!

題して『オールスタープリキュア!魔法でつなぐ!冬のSS祭り2017』

どうぞ皆様、奮ってご参加下さい!!

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<企画書>

タイトル:オールスタープリキュア!魔法でつなぐ!冬のSS祭り2017

期間:2017年2月18日(土)〜3月12日(日)の23日間

テーマ:「魔法」または「繋ぐ」 

みらい 「ねぇ、リコ〜。今度のお話祭りのタイトル、もう聞いた?」
モフルン「『魔法』と、『繋ぐ』モフ」
リコ  「ええ! 狙い通りよ!」
みらい 「狙って……たんだ。えーっと、どっちか片方のお話でいいんだよね。『魔法』なら、ホンモノの魔法のお話は勿論大歓迎だし」
モフルン「魔法みたいな不思議な出来事、っていうのも素敵モフ」
みらい 「そうだね。『つなぐ』は、こうやって手を繋ぐ、っていうのもアリだし〜」
リコ  「こ、こら、みらい! 実際に繋いで見せなくたって……」
モフルン「もっといろんなものを繋げてもいいモフ。モフルンは、クッキーをいーっぱい繋げたいモフ!」
みらい 「モフルンは繋げる前に食べちゃうでしょう……。それから、どちらか片方でいいってルールだけど、両方使ってもいいんだよね?」
リコ  「そ、そうだけど……別にわたし、主役になりたいなんて思ってないし」
みらい 「え? どういうこと?」
リコ  「ほら、テーマが『魔法』と『つなぐ』って言えば、何か思い出さない?」
モフルン「……何も思い出さないモフ」
リコ  「え、えーっと……そうね。ヒントは、エクストリーム・レインボーの時の……」
(そこへ息せき切って、ことは登場)
ことは 「ねえねえリコ! 今度のお話祭りのタイトル、聞いた? 『繋がる魔法よ!』っていう、マジカルの台詞そのものだねっ!」
リコ  「あ……(赤面)」 
みらい 「ああ」
モフルン「主役になるって、そういうことだったんだモフ?」

ということで、今年のテーマは「魔法」または「繋ぐ」、どちらかが盛り込まれているお話を大募集します!
テーマの単語そのものが出て来なくても、テーマが感じられるお話なら大丈夫。勿論、「魔法」と「繋ぐ」、両方盛り込んで頂いてもOKですよ。
毎年書かせて頂いていますが、大切なのは、あっつ〜い作品愛!! それさえあれば、大抵のお話はOKです。
短いお話、ふざけた小ネタ、大歓迎! 難しく考えず、いろ〜んなSSを集めて楽しいお祭りにしましょう!

※プリキュア全シリーズは勿論、コラボSS(プリキュア&プリキュア、オールスターズ、プリキュア&その他)もOKです。来年スタートの新シリーズ「キラキラ☆プリキュアアラモード」のSSもどうぞ!

※体裁は、小ネタ、長短編なんでもOK。140文字SSも受け付けます。(140文字SSは、出張所(Twitter)でも受け付けます。)

※ただしお約束として、サイトの特性にあったものでお願いします。(男女間恋愛ネタと、オリジナルキャラのメイン起用・実在する人物(作者含む)を起用した作品はNG。サイトのQ&Aをご参照下さい。)

※お話を書くのは初めてだけど、何か書いてみようかな……という方、書き手じゃないんだけど……という方、大歓迎です!!
お祭り企画を機会に、短いものでも何か書いてみませんか? お待ちしています!
なお、当サイトの運営は、全員がSSの書き手です。何か書いてみたいけどどう書いて良いか分からない、書いてはみたけど、これでいいのかな……等々、何かありましたら「掲示板管理者へ連絡」からいつでもお気軽にご連絡下さい。及ばずながら、お手伝いさせて頂きます。

※SSは書かないけれど、読むのを楽しみにしているよ!と思って下さっているそこのあなた!
読み手の方々なくしてお祭りは成立しません。SSを読んで頂いて、何か一言でも感想やコメントを掲示板にどしどし書き込んで下さい!
コメントは、ものすごーく書き手の励みになります。場合によっては、次の作品にも繋がるかも!?
どうぞ盛り上げ&応援でのご参加、よろしくお願い致します。
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ご参加表明を頂ける方は、①この競作スレッドに参加表明を書き込んで頂く、②運営宛てにメールする、③出張所(Twitter)にDMを送る
のいずれかの方法にてご連絡ください。(勿論、飛び入り参加も大歓迎です!)
皆様のご参加、心よりお待ちしております。よろしくお願い致します!

124 たれまさ :2017/03/11(土) 23:17:57



「素敵な方ですね、きららさんって」
 きららに送ってもらって無事部屋に帰ると、二人きりになった途端、リコちゃんはそう言った。
「そう? あの会話でそう思えるなら大したものだわ。まあ、優しいとこもあるけど」
「美希さん、きららさんみたいになりたいんですか?」
「そう……ね。悔しいけど、今のアタシにはあそこまでの実力はないから」
「美希さんも素敵ですよ! 私は、美希さんにも活躍してもらいたいです」
 活躍、か。
 うつむいてついため息が出たアタシに、リコちゃんはグイッとさらにこちらに迫って来た。
「さっき、言ってくれましたよね? “魔法を何だと思ってるの”って。きららさんに悪気なんて無いのはわかってますけど、私、嬉しかったです」
「そりゃあ、あんなこと言われたらああでも言わなきゃ……」
「魔法は、努力と根性と経験。それを積み重ねて、成長するものだと思いますから」
「え……?」
 思わず顔を上げたら、目の前に大真面目な、少し得意そうなリコちゃんの顔があって。
 ああ、同じなんだ。モデルも、魔法も――そう思ったら、惨めな気持ちが晴れていって、アタシはようやく笑えた。

 そうよ。これからも努力していくしかない。経験を積んでいくしかない。でも、色々な努力はしてきたと思うけど、きららとの差が縮まった気はしないけどね。
 アタシには専属モデルの仕事もなければ、アイドル的な活動も……アイドル?
 その途端、我ながら名案が閃いて、久しぶりに、アタシ完璧! と胸を張って言いたくなった。
「ありがとう。ねえ、リコちゃん!! アタシと一緒に、アイドルやらない?」
「アイドルですか!? 私が?」

 驚いたように目を大きく見開いてから、リコちゃんが何やら考え込んで、ブツブツと言い始める。
「どうしよう……。みらいに会うために来たけど、津成木町にはとても行けなさそうだし、帰る手段も見つからないし。箒も、自分で直すほかないわよね。それなら……今は美希さんとユニットを組むのも、チャンスなのかも」
 心の声がダダ漏れになっているのを、言ってあげるべきかそれとも……と思っていると、彼女が意を決したように顔を上げた。
「私、やってみたいです。どこまでやれるかわからないけど、いつか大事な人に会った時に、誇れる自分になれるように頑張りたいから!」
「うん、いい返事! じゃあユニット名はどうしようか?」



 努力家の二人が新たな挑戦を始めたこの日。広がったパリの夜空には、明るく十六夜の月が輝き始めていた。



『もう! 美希たん、なんでもっと早く教えてくれなかったのよ。せつなに連絡して、アカルンで連れて行ってあげればいいじゃん』
「ダメよ、ラブ。簡単に会わせてしまっちゃ、あの子の努力が報われないわ」
『でも、会いたくて違う世界から帰る当てもないのに飛んできたんでしょ? くぅー! アツアツだねぇ! あたしとせつなみたい』
「なによ、またノロケ? 心配しなくても、あの子が自分の力でみらいちゃんの所まで行ける日が来るでしょうよ。時間はかかるかもしれないけど」
 会いたいって気持ちを持ち続けていれば、国だって世界だって越えられる。
 アタシ達ができたんだから、あの子達にだってできるはず。
 それに何より、あの子はそれだけの根性を持って、誰よりも努力しているんだから。
「さぁ、アタシももっと頑張らなきゃ」
 リンクルンの通話を終えたアタシは、少し煙ったパリの月を見上げて、グッと小さく拳を握った。

125 たれまさ :2017/03/11(土) 23:18:29
以上です。ありがとうございました。

126 コロ助MH :2017/03/12(日) 14:31:01
こんにちは。
前回のお話の続きです 今回で完結になります 「まほプリ」の世界がいつまでも続く事を願って書いてみました それと前二作にコメント頂けた方々、本当にありがとうございました それではよろしくお願いします。
5レス使わせて頂きます。

127 コロ助MH :2017/03/12(日) 14:31:38
「はあ゛〜」
「モフォ」
今日もはーちゃんとモフルンは盛大に突っ伏した。4人で始めた秘密のお茶会も今日でちょうど1ヶ月目になる。毎日飲んでいれば少しは慣れるかと思いきや依然と手強い薬膳茶、最近ではお茶会と言うより何か罰ゲームの様相を呈して来た様な気がする。
「『良薬口に苦し』だよはーちゃん、モフルン」
と懸命に作り笑顔のみらい。
(その言葉、毎日聞いてるわよ、みらい)
と内心思いつつもこちらも。
「このお茶の効果が分かるのはずっと先だけど信じて皆で頑張りましょう!」
といつも通りに高らかに宣言すると。
「お〜」x2
「モフ〜」
どこか力無い返事だけれど、どうやら皆の士気が落ちてない様なのでまだまだこのお茶会は続けられるわねと思っていると。
「モフ〜良い事を思いついたモフ。この薬膳茶を魔法で甘くすれば飲みやすくなるモフ!」
と突然の夢の様な提案に。
「すご〜い、モフルン!」
「頭良いね〜モフルン!」
モフルンと万歳して歓喜するふたりの姿を見て成る程、盲点だったわと。でも。
「確かに良い案だと思うんだけど、でもそうなると薬膳茶の成分も変化して効き目が無くなっちゃうじゃないかしら?」
の言葉に皆が瞬時に凍りついたように固まり、一気に雰囲気が暗くなりかけた時にはーちゃんが。
「大丈夫だよ、こうすれば良いんだよ! キュアップ・ラパパ! 薬膳茶よ中身はそのままで甘くな〜れ!」
「お〜」
「モフ〜」
と再び歓喜が沸き起こる。魔法がかかった薬膳茶はさっきと見た目は変わらないけれども果たしてと思っていると。
「甘いニオイがするモフ〜」
とモフルンがお茶に近づき一口飲むと。
「美味しいモフ〜。紅茶みたいな味だモフ〜」
その言葉にみらいとはーちゃんの目が輝かせて続いて飲む そして。
「本当だ!美味しい〜。これなら毎日飲めるね〜。リコも早く飲んでみなよ」
恐る恐る飲んでみると自然と溜め息がこぼれた。
「美味しい……!」
これがあれだけ苦労した同じ薬膳茶だとは思えなかった。あまりのことに感動に浸ってる私の横でみらいとはーちゃんがモフルンを胴上げして盛り上がっている。
「これで明日からのお茶会が楽しみだね! そうだ、どうせならお父さんとお母さんとおばあちゃん達とも一緒にお茶会しようよ!」
「待ってみらい、それだと行く行くは色々とまずい事になるんじゃないの?」
「え、何で? ちゃんとこの薬膳茶の効き目の事は話すしそれに私、お父さん達とも一緒に居たいもの」
その言葉に確かにと、私もお父様、お母様、お姉ちゃんは勿論の事、みらいのおじ様、おば様、おばあ様の事も大好きだから。
「分かったわみらい、でもおじさま達には薬膳茶の事は十分に説明しなきゃね」
「うん、分かったよ。じゃあ一緒にお願い、はーちゃんもモフルンもね」
と4人で階段を降りていった。そして次の晩から朝日奈家では夕食後に皆でお茶会をするのが習慣となった。



「ETERNAL WORLD」



「いってきます、お母さん」
「いってきます、おばさま」x2
「いってきますモフ〜」
ここは朝日奈邸の玄関前。
「おはようございます」
とリズが隣の家から出てくる。
「おはよう、リズちゃん。今日も皆で一緒の通勤は賑やかね」
と今日子がほがらかに笑う。
「今日は私が運転ね」
とみらいがまほうの絨毯を広げその上に5人が座り出発する。
「いってらっしゃ〜い」
の言葉が終わる前にあっと言う間に彼女達の姿が見えなくなる。さて私も出勤の準備をと家に入ろうとした時に窓に映った自身の姿が目に入り、今日子は周囲を見回して思わず呟く。
「まさかあの時のみらいとリコちゃんの言ってた事が本当だったとはね〜 まあでも私は今もこの通りピッチピッチの美人で元気だし良いっか!」
と上機嫌で家に入って行った――。

128 コロ助MH :2017/03/12(日) 14:34:54
現在、朝日奈邸は魔法界の私の実家の隣に、ナシマホウ界の時と同じ姿で建っている。あのお茶会を始めてからもう20年程経過していた。みらいは大学卒業後、宣言通りにモフルンと一緒に魔法学校に復学した。一方、はーちゃんも全ての世界が安定しつつあると言う事と魔法界とナシマホウ界の距離が以前と変わらない距離までに近づいたとの事で、彼女もまた魔法学校に通う事になった。

みらいは伝説の魔法使いだったと言う事もあったし元より素質もあったのだろう、更には会えなかった4年間の間に見違える程に努力家になっていた彼女は、あっという間に魔法学校を卒業し、教職課程を履修し教員免許を取得してしまった。教育実習の時には私の授業に同行して彼女の実地指導を監査する事もあったのだが、当時の自分の時と比較しても少し……いや正直かなり上手くこなしている姿を見て、いつか追い越される日が来るかもしれないと内心ちょっと冷や汗がものだったが。
「私の方が先に先生になったんだし、いつも頑張っているから大丈夫」
と自分を元気付けるも、数日後のはーちゃんの教育実習に同行した時にはものの見事に打ちのめされてしまった。

彼女もまたみらいと一緒に教育課程を履修し教員免許を取得したのだが、元より右に並ぶ者がいない程の魔法力の持ち主に加え「フェリーチェ」を思わせるその高貴で聡明な佇まいと口調で分かりやすい授業をするので、瞬く間に生徒間の中で人気ナンバーワンの先生になってしまった……。少し前までは私とお姉ちゃんとで「美人姉妹教師どっちが上か?!」なんて騒がれてたのが遠い昔の様に思える……とここまでが、今から15年前の出来事である。

そして現在、私達3人は魔法学校で教鞭を執っているのだが、最近になって魔法界全体で注目を浴びる様になっていた。話題になっているのは私達の容姿の事である。同世代の人達と比較しても圧倒的に若くてまるで時が止まった様に美しいままだと。
「その若さを保つ秘訣は?」
とものすごい問い合わせが来たのだが、別に隠すつもりはないので例の薬膳茶のおかげだと言う事と、飲む時に魔法をかけると美味しく飲める事を皆に伝えると、魔法界では空前の薬膳茶ブームになった。実は私達の身近な人達には薦めてたのだけれども、元々の味が味なだけに、美味しい飲み方を教えても私の家族とみらいの家族しか飲んでくれなかったんだけれど、でもこうして実際に効果が出ている私達を見て、今になって多くの人が躍起なって薬膳茶を求め飲みはじめている。そうして皆が飲む様になって分かった事は、その効能には個人差があり、校長先生の様に若返るまでの人はほとんど見られる事はなく、どちらかと言うとその人の老化の速度を緩和させると言うのが一般に認識されるようになった。先日久々に補習メイツに会った時も。
「本当に全然変わってないわよね〜、モフちゃんも」
「昔の写真と比べても一緒だわ」
「あ〜あ、あの時みらいとリコが薦めてくれた時に飲んでりゃあ、アタイもなあ〜」

しかし、魔法界においては若い姿を維持出来る事は賞賛される事があっても、ナシマホウ界だとそうはいかなかった。家族全員が何年も同じ姿で若いままでいられると言うのは、当人達には嬉しい事であったが、残念ながら周囲から奇異な視線を浴びる事になり、噂になりついにはマスコミまで動き始めた事から、校長先生に事情を話し特別に許可を頂きこうして朝日奈邸ごと魔法界に引っ越してきたのである。ちなみに引っ越し先が私の実家の隣なのは、お父様が私がみらいの家でお世話になっているので是非、にと申し出たからである。良かれと思ってやった事とは言え思わぬ混乱を招いてしまい、結果、住み慣れた街を離れなければならなくなってしまった事態に陥った事をおじ様達に皆で謝ると。

129 コロ助MH :2017/03/12(日) 14:35:40
「良いんだよ、みらい、リコちゃん、ことはちゃん、モフルン、分かってるよ、皆が僕らとずっと一緒にいたいと思うのと同じで僕も今日子もお母さんもずっと一緒にいたいと思っているんだよ君達と。だって家族なんだから。皆一緒だったらこの世界でも絶対うまくいくから大丈夫!」
と満面の笑顔でサムズアップしてくれた。その温かい言葉と笑顔に胸が一杯になり、次の瞬間、みらい達とおじ様達の胸の中に飛び込んでいってしまった。その後、おじ様とおば様は魔法商店街のひとつの店舗をパワーストーンの店と電気屋を半々で営業している。正直、最初はパワーストーンはともかく、魔法界で電気屋とはどうかなと思ってたのだけれども意外に評判が良く、何よりもおじ様の誠実な人柄のせいもあるのだろう、修理やアフターメンテナンスは勿論、お客様の希望に見合った電気製品を用意するのでそこそこ賑わっていた。また商品の仕入れにはドクロムシー様とヤモーさんにお願いすればすぐにナシマホウ界に行けるので、商品の確保については困る事なく繁盛していき、ついには人気店となり今ではフランソワさんやグスタフさんのお店と肩を並べるまでになった。

おばあ様は長年、魔法使いの存在を信じていたせいもあって、観るもの触れるもの全てが新鮮らしくて、毎日魔力が込められた絨毯や道具を使って様々な場所に散策に出かけている。先日はみらいと私の授業を観てみたいと言うので魔法学校で一日体験をしたのだけれども、その際に校長先生が。
「みらいくんのお身内の方がお見えになられてるなら是非、ご挨拶をせねばならぬな」
とお忙しい中をわざわざ会いに来て下さった。この時のおばあ様の様子はいつもと少し違ってたので未だに覚えている。校長先生の顔を見るなり、一瞬だけ驚いた表情を見せつつもすぐいつもの温和な表情に戻り。
「そう、あなたが魔法学校の……」
と誰にも聞こえない程にそっと呟き。
「初めまして、いつもみらいと……」
と傍目は社交辞令の様な挨拶を交わしていたのだが、よく見るとおばあ様の目が微かに潤んでいる様にも見えたので帰り際にそれとなく尋ねると、うふふっと実に可笑しそうに微笑んで。
「やっぱり長生きはするものね。みらい、リコちゃん、はーちゃん本当にありがとう」
とまるで少女を思わせる様な笑顔を向けてくれた。おばあ様はその後も機会があれば魔法学校に来る様になった。

そして今日、私達に突然の転機が訪れた。校長先生が大切な話があるので放課後に校長室まで来る様にと連絡があったので行ってみると。
「わしはこれからの魔法界の発展の為に、新しい活力を与える為にも若い君達を校長に推薦しようと思っているのじゃが、どうかの」
あまりに突然な申し出に、私達は目を丸くして顔を見合わせている事しか出来なかったのだが。
「校長の職務については教頭先生をはじめ、皆に君達をサポートする様に既にお願いしてある。勿論、このわしもじゃ」
とにこやかに校長先生は仰ってくれたのだけれども。
「私達が校長先生になるのでしたら、その前に教頭先生もアイザック先生もお姉ちゃ、いやリズ先生もいらっしゃるのに何故私達なんでしょうか? それに校長先生は校長先生をお辞めになられたらその後はどうなさるおつもりなんですか?」
と気が動転したあまりにまくし立ててしまった。直後、心配したのかみらいとはーちゃんが側に来て手を取ってくれたおかげで、すぐに我に返る事が出来たんだけれども。
「申し訳ありません、取り乱してしまいました」
「いや、良いのじゃ。確かにいきなりじゃったからの。教頭先生達は教師として学園で生徒に魔法を教える事が一番大切なんじゃそうだ。それをこれからも続けて行きたいと言っておったわ。わしはこの後は理事長となって君達のサポートもしつつ、魔法界をもう一度ゆっくりと巡ってこれまでとはまた違う方法で発展させられないか見つけたいと考えておる」
「リコ君、君達を校長に推薦したのは、君達が常々、いつか魔法界とナシマホウ界の人々を繋げたいと言っておったのを聞いてたからじゃ。その為に校長先生になりたいと言う事も。 残念ながらナシマホウ界との交流は未だにこちらからの一方通行のままじゃが、君達だったら……かつてこのふたつの世界の危機を救った君達だったら、いつかはそれが実現出来る日が来るとわしは信じている。どうじゃ引き受けてはくれぬか?」
いつだって魔法界全体の事を、私達の事を考えて下さっている校長先生の真摯な言葉に胸を打たれた私は。
「お引き受け致します」
と伝えようとした瞬間にみらいに遮られた。
「あの、校長先生なんですが、モフルンも一緒ではダメでしょうか? 私達はこれまでもずっと4人で頑張って来たので是非、お願いします!」

130 コロ助MH :2017/03/12(日) 14:36:15
その言葉にはーちゃんも同調し、一緒になってお願いしている。みらいの行く所、必ず一緒のモフルンは彼女の授業の時も一緒で、生徒に混じって講義を聞くこともあれば実技の授業の時などは手伝ったりもして、陰になり日向になりサポートしている。その姿に加え、元より愛くるしい容姿をしているせいもあって生徒達に親しみ込めて「モフルン先生」と呼ばれて慕われてはいるんだけれども、さすがにそれは無理でしょうと思っていると、校長先生は一瞬、考え込む様子を見せ。
「そうじゃな、君達は4人で数々の奇跡を起こして来たんだったな。良かろう。但しモフルン君は表向きは校長先生の補佐と言う事にしておいてくれ。教頭先生達にはわしから上手く伝えておくのでな」
「やった〜4人で校長先生だ〜」x2
「モフルンも校長先生モフ〜」
ハイタッチしあって喜び合うみらい達に、それをにこやかに見守る校長先生の様子を観て。
「いやいや、モフルンもってありえないでしょう、あと4人で校長先生なんて……」
と一瞬呆然としてしまったけれど、よくよく考えたら長年の夢が叶った訳でそれを理解した瞬間、私も皆の中に入って行って喜びを分かちあっていた。

その後、お姉ちゃんと待ち合わせし皆で魔法の絨毯で帰宅途中。
「お姉ちゃん、私達が校長先生になる事知ってたんでしょう? 何で教えてくれなかったの?」
「だって校長先生がご自分でお伝えするからと仰るから言わなかったのよ」
「でもその、お姉ちゃんは良いの、私が校長先生で?」
「大丈夫よ、だってリコ達は『伝説の魔法使いプリキュア』で、あの時ふたつの世界を救ったんでしょう?」
「え、何で知っているの?! それを知っているのは私達と校長先生とみらいのおじ様達とヤモーさん達位しか知らない筈なのに」
「実はね、あなた達以外の先生が集められて会議があって、次期校長にはあなた達をと校長先生が推薦したんだけども皆、難色を示したの。そこで校長先生が水晶に記録されてたあなた達3人のプリキュアとしての活動の映像を観せてくれたら、皆一様に感動して満場一致で決まったのよ。でも安心して、これは先生達の間で絶対秘密にすると言う事で決まったから」
「……」
それを聞いた私達は言葉が出なかった。でもまあでもとりあえずは長年の夢が叶った事だし、結果オーライと言う事で納得する事にした。

朝日奈邸に到着するとおば様達が出迎えてくれた。
「おかえりなさい」x3
「ただいま〜」x2
「ただいま、帰りました」x2
「ただいま、モフ〜」

「お父さん、お母さん、おばあちゃん、今日は私達、重大発表があるの!!」
少し興奮気味にみらいがおじ様達に言い寄る。その妙な迫力にたじろぎながらも。
「そうかそれは楽しみだな〜 夕食の時にでも教えてくれよ。そうだリズちゃんも夕食はご一緒にどう?」
「ありがとうございます、それでは後ほどお邪魔させて頂きます。それじゃリコ、また後でね」
「うん、お姉ちゃん後でね」
と朝日奈邸に皆と一緒に入って行くと、お姉ちゃんの苦笑気味の呟きが聞こえてしまった。
「全くリコったら、自宅がすぐ隣にあるのに当たり前の様にみらいさんの家に帰って行くのね」

その後、ただの夕食は盛大な祝賀パーティーに変更になり、大いに盛り上がった。



新しい校長が決まった夜、校長室にある人物が訪問した。私の占いには昼間のうちに出ていたので、校長にはお知らせしていたのだが。
「校長、お見えになられました」
「ん、来たか」
そこには半透明の状態のクシィ様が立っていた。
「今日はどこを観て回ったのじゃ? クシィ」
校長が椅子から立ち上がり笑顔で迎える。
「ふむ、今日は魔法の森に行ってきたのか。それで動物達は皆健やかに過ごしておったか?」
「……」
「そうか、あのペガサスの子供はそんなに成長して、今度は子供が生まれるのか。時間が経つのは早いものだのう」
「……」

ふたりの会話はいつもこんなカンジで、傍で観てると校長がひとりだけで喋っている様に見える。クシィ様の口元は動いているのできっとお話されているのだろうけれども、その声は校長にしか届いてない様であった。なのでおふたりだけの世界で話している間は、何となく疎外されてる気がしてちょっとだけ寂しい思いもするのだけれども、でも校長が普段は見せない程の笑顔で旧友との語らいを楽しんでいる姿をみると何も言えなくなってしまう。

131 コロ助MH :2017/03/12(日) 14:37:04
校長の話によると、クシィ様は闇の魔法の呪いから解放された後は魂だけの存在として、自由に魔法界とナシマホウ界を行き来し世界を観て回って楽しんでいたそうなのだが、あのデウスマストの眷属との最終決戦でふたつの世界が分断された時にナシマホウ界に居たせいで帰れなくなってしまったそうで、そして再び世界が繋がる事が出来たので、こうして旧友の校長の元に訪れる様になったとの事である。

「おい、どうしたのじゃ?」
ふと物思いにふけっていてボーッとしてしまったらしい。
「いえ、何でもありませんわ。ちょっと考え事をしていました」
「そうか、ところでさっきリコ君達に話した事なんじゃが、実は魔法界を巡ってみたいと言ってたのはこのクシィの影響なんじゃ。理事長になればこれからは時間に余裕が出来る筈なので一緒に巡ってみたいと思う」
実に楽しみだと言わんばかりの笑顔の校長には胸がチクリと痛んだが、私はまた新たなる校長の元で自分の使命を果たすだけと心の中で言い聞かせた時。
「それでな、君にも是非一緒に来て欲しいのだ。本来なら君の役目は魔法界の長たる校長の元で相談役として職務を果たすべきだと分かってはおるのだが、わしがこれまで幾多の困難を乗り越えてこれたのは君と一緒に居たからこそだし、これからも一緒に居たいと思っている。どうじゃろうキャシーよ」
一瞬プロポーズともとれる突然の校長の言葉に有頂天になりかけるも全力で平静を装い、努めていつも口調で。
「分かりました、これからも私はどこまでもお供させて頂きますのでご安心下さい」
私が人間だったらきっと、つま先から頭のてっぺんまで真っ赤になっているんだろうなと思いつつ、ふと周囲を見渡すといつの間にかクシィ様のお姿が見えなくなっていた。気を使って下さったのだろうか。私の占いは自分の未来までは見る事は出来ないけれど、きっとあの子達と同じ様に自分も光輝いているのかもしれないと思えてきた。この方とこれからもご一緒出来るならきっと、と。その後は校長とふたりでいつもの他愛のない話で盛り上がり、明け方までついつい話し込んでしまった。



祝賀パーティーが終了し、恒例のお茶会も終わり部屋に戻り、明日の準備をしてそろそろ寝ようかなと思っているとドアがノックされた。どうぞと答えると、みらいがモフルンを抱いてはーちゃんと入ってきた。ちなみにはーちゃんは本来の姿に戻っている。
「ねえリコ、今晩は皆で一緒に寝ない?」
「あのねみらい、私達もういくつだと思っているの? いつまでも子供じゃないのよ」
とわざとらしく溜め息をつき一応、表面上は大人な対応を取ってみる。
「いつまでも子供じゃない私達、ね〜はーちゃん、モフルン」
「はー!」
「モフ〜」
彼女達にとってはオンとオフのスイッチの切り替えなのか、家で4人だけになるといつもこの調子になる。昔と変わらない心地よいこの雰囲気は、教師の責務と言う張り詰めた1日を過ごした私自身にとっても随分と癒しとなってて感謝しているし、嬉しいお誘いなのだが一応先輩として。
「今度私達は校長先生に任命されるのよ、だからこれからは魔法界全体の代表として公私ともに分別のある行動を取るべきだと思うの」
とわざとらしくキリっとした表情とポーズでみらい達に伝えると。
「だからさ〜リコ、そのお祝いに皆で一緒に寝ようよ!」
「は〜記念、記念!」
「記念モフ〜」
と満面の笑顔で訳の分からない回答と波状攻撃を受けたので仕方ないという風に。
「分かったわ良いわ、でも今晩だけ特別だからね。じゃあ行きましょう」
とすまして先に部屋を出て屋根裏部屋のはーちゃんの部屋に向かってると、後ろから歓声に混じって。
「相変わらずリコってチョロいね〜」
「チョロいよね〜」
「チョロいモフ〜」
と微かに聞こえてきたけど気にしない事にする。

132 コロ助MH :2017/03/12(日) 14:37:35
途中、廊下でおば様とすれ違って。
「あれ、あなた達また今夜も一緒に寝るの?」
と尋ねられる。実は私とはーちゃんが再びこの家に住み始めた時に4人ではーちゃんの屋根裏部屋で寝るのが習慣になってしまい、いつまで経っても続いているのでみらい達が教師免許を取得したのを機に。
「みらいとはーちゃんも先生になったんだし、これからは皆それぞれ自分の部屋で寝ましょう」
と提案すると3人から激しく反対されのだけれども心を鬼にして。
「今度あなた達は教師になるのよ、これからは教師として公私ともに生徒達に恥ずかしくない行動を取るべきだと思うの」
「じゃあ今晩は私とはーちゃんが先生になった祝いに……」
と言った具合に何だかんだと理由をつけて一日を置かずして私を誘いにくる。なので結局は1年の内の大半は4人で一緒に寝ている。

「ええ、今日は皆で校長先生になったお祝いだそうです」
「そうなの、じゃあ皆おやすみなさい」
「おやすみなさい」x3
「おやすみなさいモフ」
私たちが屋根裏部屋の階段を上がって行くのを見送りながら。
「本当、いつまで経っても仲が良いんだから。昨日はピーカンみかんが豊作で、一昨日は薬膳茶の茶柱が立ってた祝いとかだったかしら。全くあの子達にとっては毎日が何かしらの記念日なのね」
と楽しげに微笑みながら、おば様は部屋に戻って行った。

はーちゃんの部屋、4人はいつもの定位置でベッドで寝ている。
「私達、本当に校長先生になるんだね〜。ワクワクもんだ〜」
「ワクワクもんだし〜」
「ワクワクモフ〜」
「そうよ、でも4人で任命されたと言う事は、それだけ校長先生のお仕事が激務と言う事よ。だから心してかからなければいけないと思うの」
「そうだね、頑張らないと。でも大丈夫だよ。4人一緒なら、これまでも色んな困難を乗り越えて来たし、何より私達の夢にもつながっているんだから」
「魔法界とナシマホウ界が繋がったら、まゆみとかなと壮太とゆうとを招待したいね〜」
「モフルンは、いちごメロンパンのお店が魔法界にも出来て欲しいモフ」
とそれぞれが描く未来についていつまでも話は尽きなかったが時計を見るとそろそろ12時に差し掛かろうとしてたので。
「皆、明日も早いしもう寝ましょう。おやすみなさい」
と皆に伝え部屋の電気を落とすと。
「おやすみなさい」x2
「おやすみなさいモフ」
の返事の後の数分後には規則正しい寝息の音が聞こえてきた。どうやら今日は色々と劇的な事があったせいで疲れてたらしい。つられて私も眠りに落ちそうになる時ふとはーちゃんが最初に魔法を使った時の光景が蘇った。
「キュアップ・ラパパ! 大好きなみらいとリコとモフルンとずーっと、ずーっと一緒にいられますように……」
「きっとあの時の魔法が今も効いているんだわ。だから私達は……ありがとうね、はーちゃん」

その晩は、魔法界とナシマホウ界との友好交流の調印式に、私達4人が正装で立ち会っている夢を見た。周囲を見回すと皆、知った顔ばかりで盛大に祝福してくれている。その光景に何となくこれは夢なんだなと感じつつも観衆に大きく手を振って回った、そしていつか絶対に実現しようと思いながら夢の中の私は大いに楽しんだ。翌朝、みらい達に夢の事を話すと、偶然か皆同じ夢を見たそうで朝から朝日奈家の食卓は大いに盛り上がった。そして。
「リコ、今日は皆で同じ夢を見た記念だよ!」
とみらいとはーちゃんとモフルンと鼻息を荒くして迫ってきた。まだ朝なのにと苦笑するしかなかったけれど、でもどうやら今日も良い1日になりそうだ。思えばみらいと巡り逢えた奇跡が今もずっと続いている様な気がする。そしてこれからもずっと。でも、それでも心配性な私は気がつくとついつい呟いてしまう。

「キュアップ・ラパパ!今日も良い日になあれ」
と。

133 コロ助MH :2017/03/12(日) 14:38:15
以上です
結局、6レスになりました。
どうもありがとうございました。

134 名無しさん :2017/03/12(日) 14:39:36
運営さんお疲れさまです
祭り最終日になってようやく読み始めたんで感想入れてこうっと

>>16
夏希さん恒例のオープニング! まほプリの最終話と絡んでてお祭り気分が高まりますね
会えなかった4年分の寂しさを楽しさに変えるなんてワクワクもんだし!

>>18
カタツムリニア廃業w それはさておき、みらリコって再会後絶対離れられなくなってそう
魔法界でもナシマホウ界でも同棲してればいいさ!

>>28
プリキュアのマスコットでこんなに好きになったのはモフルンが始めてなんでモフデレラの話 大好きです。
生意気口調のチクルンがまたいい味出してて楽しく読ませていただきました!

>>35
背伸びアコちゃん可愛い! エレンがお姉さんポジションなのが新鮮でした。案外カッコいいぞ エレン!!

135 名無しさん :2017/03/12(日) 14:53:36
>>42
薫お姉さんは絵のことだけじゃなくいつもみのりちゃんのことで頭がいっぱいなんですよね、そう それでいい。

>>51
あー…どっちの世界も優しさに包まれてていいですね! すごく彼女たちらしい学園生活。
世界観がステキです!

>>70
これはすごい大作! 記憶を無くしたせつなとウエスター、サウラーとの距離感がうまいと思いました。
バラバラだと思っていたラビリンス側にもちゃんと繋がりはあったんだっていう所がすごく好きです。
続きが読みたい!

>>77
視点がクルクル変わって始めは戸惑ったけど詩的な綴り方は読み易かったです。
知らない人は中2と中3の間に何があったんだってなりそうですね

136 名無しさん :2017/03/12(日) 15:54:50
>>82
みらリコ夫婦と娘はーちゃん&マスコットモフルン。これぞ魔法使いプリキュア安定ポジション!
遠くからそっと見ていたいです。薬膳茶、私も欲しい!

>>89
SSなのに香りまで伝わってきそうなせっちゃんのコロッケ! そしていい所で終わってしまう!
思わずオチを想像しちゃいますね、ラブは気付くかな?

>>92
めっちゃ笑いました! なぎさとえりかの組み合わせ、アリですね! 黒いつぼみも可愛いです
ほとんどセリフだけなのに光景が目に浮かびますわw

>>95
これは…w いいのかな? ここに投下してw
あえて言います。私は大好きです!

137 名無しさん :2017/03/12(日) 16:07:55
>>101
多分らんこちゃんの名前が出たのはキラプリスタッフのお遊びだったと思うんですけど そう来たか! って感じで面白かったです! キャラが生き生きしてる…
戦闘描写も凝っててすごく彼女たちらしさが出てますね、楽しくてメッセージ性もあってこんなSSが書けるようになりたい…

>>106
まこぴーがカッコいい…だと…? (失礼)
きちんとした積み重ねが人を立派にしていくって実践する姿は、このメンバーならではの重みがあって胸を打たれました!

>>111
あー… すみません、ノーコメントで。
でももっとじっくりした展開でもいいと思います!

>>118
ベニーギョさんなにやってんすかw
色んな人間模様が見えるこういったシリーズ大好きです! やよい、あゆみ…こいつら早く何とかしないと…

138 名無しさん :2017/03/12(日) 16:15:54
>>125
誰か書くかなーと思っていたアイドルシリーズ! 特にこの二人の組合せは絶妙ですよね。
美希たんの隠そうとして隠しきれない百面相と、リコの強がろうとして強がり切れないみらい好きが炸裂してて面白かったです。
きららも交えて、パリが賑やかになりそうだな〜。

>>133
ついに三部作! まさか舞台が魔法界に移るとは思っていなかったので驚きました。
しかし、薬膳茶まさかの大人気w 思いがけないキャシーさんやあの方のその後も読めて、一粒で二度楽しかったです。

139 名無しさん :2017/03/12(日) 18:28:43
>>125
きららと同じような道を進んでるのにどうしてこうなった… でもmktnは完璧じゃない所がかわいいのよw

>>133
3部作お疲れ様でした、そしてまさかの20年後! いつまでも若いなんて羨ましい!
みらリコはーモフに幸あれ!

140 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 19:52:53
大変遅くなってすみません、猫塚です。
10レスお借りします。
ケダモノは居てもノンケは居ない
オー、ウェルカム トゥ ザ 大貝第一中学ぅ

カップリングは、菱川六花&相田マナ。

あくまで服の上からですが、
六花が胸を触られるシーン等があるので(それがメインなので)
R-15とさせていただきます。ご注意を。

タイトルは、『冷たいアイスの溶かし方』

141 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 19:53:58

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 今年の夏は駆け足で過ぎていった。
 そのせいだろうか。
 まだ9月だというのに、今日の早朝の気温は、秋の半ばめいて涼やかだ。
 ベッドの中のぬくもりに包まれながら、まだ気持ちよさそうにウトウトとしていた相田マナが、ふとまぶたを開いた。そして、横たわったままで、視線をぼんやりと部屋に向ける。
「・・・・・・・・・・・・」
 頬を撫でる部屋の空気の涼やかさ。
 そこに、最近の菱川六花の態度が重なる。
 どこがどうとは上手く言えないのだが、マナに対する態度に素っ気なさが混じっている。
 時には冷たいと感じるほどに。
(けっきょく、何が原因なのかな・・・・・・?)
 しばらく考えていたが、ベッドのぬくもりに誘われるように、いつのまにか再び意識がまどろみに浸ってしまった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「相田センパーイ、お願いできますかーっ」
「すみませーん、あとでこっちも・・・・・・」
「いいよっ、まかせてっ」
 第34回の大貝祭を目前にして、相田マナは、当たり前のように張り切っていた。
 明るく、活力に満ちた顔つき。夏服 ―― ワンピースタイプのセーラー服 ―― の半袖から伸びる、スラリとした細い両腕は、男子顔負けのチカラ仕事を今日何回こなしただろうか。
 3年生になって生徒会長を引退した今も大貝第一中学校の大黒柱として、生徒たちの支えになっている。むろん、彼女の後を継いだ現在の生徒会長も十分に努力しているが、規格外のスペックを誇るマナとでは、まだまだ馬力に差がありすぎる。

(はあ・・・)
 と、菱川六花が心の中で小さく溜め息をついた。
 幼い時からずっとマナの女房役を務めてきた彼女は、受験を控えているため、今は勉強に集中するようにしている。・・・・・・はずなのだが。
「まかせてじゃないでしょ」
 と、後ろからマナの肩を掴んで、駆け出す直前の彼女を止める。
 結局はマナが気になって仕方がなく、今日もまた彼女のサポートをしてしまうのだった。

 マナが太陽のように笑うならば、こちらの少女は月のように微笑む表情が似合う。大人びた知性を湛える切れ長な両目と、美しく伸びた黒髪が印象的。マナとは真逆のクールな落ち着きを感じさせるイメージ。
 夏服の半袖から伸びる腕は、マナと同じぐらい細い。そして、細くてもタフな彼女の腕と違って、あくまで普通の少女並みのチカラしかない。しかし、マナをガッチリ押さえて、動きを封じている。
「両方とも、あとでわたしが誰か手の空いてる人を見つけて頼んでおくから。マナはレジーナを捜して回収したら、今日はもう終わり」
 振り返ったマナが『まだ頑張れるよ』と元気さをアピールする笑顔を浮かべるも、六花の有無を言わさぬ眼光を前に、それは苦笑いへと変わっていった。
「頑張りすぎて、去年みたいに倒れたらどうするのよ? もう」
 と、ぼやく六花。
 とりあえずマナは、今、声をかけてくれた二人の生徒にゴメンナサイという表情(カオ)で謝って、この場は引き取ってもらった。そして、あらためて六花のほうへ向き直る。
「心配かけちゃってごめんね、六花」
「とか言いつつ、どうせ明日もわたしに心配かけるんでしょ」
「そ・・・、そうならないよう気をつけるね」
 やや辛辣な六花の口調に、マナがたじたじになってしまう。しかし、すぐに調子を取り戻して明るい表情になった。
「あ、そうだ。ねえ、六花、レジーナはラケルに捜してもらおう」
「ラケルに?」

 かつてはマナにべったりとくっついていたレジーナも、今では気まぐれに他の人にも興味を示すようになっていた。特に、からかうとムキになる真面目なラケルに対しては、いじり甲斐があるらしく、最近はよくちょっかいを仕掛けてくる。
 それはまるで、猫が新しいオモチャで遊ぶ事を覚えたような感じである。マナが忙しい時は、彼女の代わりにラケルに宿題を手伝わせたりもしている。
 ただ、ラケルのほうもストレスを爆発させるほどではなく、なんだかんだとレジーナを気にかけているあたり、
(あー、・・・うん)
 と、六花が心の中で溜め息にも似たつぶやきを洩らす。二人のじゃれあう(?)姿に、つい、自分ともう一人の姿を重ねてしまった。
(今頃どうしてるのかなぁ・・・)
 軽く昔を思い出していた六花の顔を覗きこんで、マナがたずねてくる。
「どうかしたの、六花?」
「ううん、ちょっと懐かしい気分になってただけ」
「?」
「それよりも、レジーナの事はラケルに頼むとして・・・・・・マナはこれからどうするの?」
「ふふっ、六花、少しだけ付き合ってもらってもいい?」

142 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 19:54:58

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 そそくさとマナが立ち去って、しばらくのち ――― 。
 彼女から引き継いだ依頼について、適切な応援を手配し終えた六花が、マナに指示されていた場所へと向かった。
 体育館のステージ裏。
 蛍光灯の光に照らされたそこは、普段は壁際にパイプ椅子の収納台車が並べられている程度の殺風景なスペースだが、今は大貝祭本番に備えて、演劇部の公演やクラス演劇で使う大道具などが、あちらこちらに置かれていた。
 目の前にあるクラシック調のソファーも、その一つなのだろうか。
 マナが来るまで少し座らせてもらおうと、六花が腰を下ろす。
 座り心地は悪くない。

 体育館のほうから、数人の生徒たちが歓談している声が聞こえてくる。この時間だと、リハーサルが終わった合唱部だろうと、六花は見当をつけた。生徒会から離れても、マナと一緒にいるせいで、学校の大体の事は分かってしまう。
 いつのまにか目を閉じて、ソファーのやわらかさに身を委ねてしまっていた。朝方はめっきり涼しくなったものの、日中はまだまだ夏服で十分なほどの気温だ。このステージ裏は、のんびりとウトウトするには、ちょうど良い空間だった。
 マナ・・・、と六花のくちびるが動く。
(・・・・・・ごめんなさい)
 最近、つい素っ気ない態度を取ってしまう。
 きっかけは、文化祭の準備が始まる数日前の、ある男子の恋の告白。
 
 まさか自分が・・・と思いつつも、相手の真剣さに応えるカタチで、その告白に向かい合った。無論、最初から六花の返事は決まっていたけれど。
 なるべく優しい言葉を選んで断った六花へ、ショックを隠すためにバツが悪そうな笑いを浮かべる彼が投げかけてきた一言。
――― あ、もしかして菱川さん、好きな人いた?
 動揺。
 六花は「ええ、まあ・・・」と曖昧な答えでごまかして、その場をあとにした。
 なぜだか分からないが、好きな人と言われて、一瞬、思い浮かべてしまったのだ。
 マナの顔を。
 その事に、自分でも少し驚いていた。

 マナとは女の子同士なのに。
 どうしてだろう。

 その日から、いつもとは違った感じでマナを意識し始めて、それがバレないよう心のガードを固くして・・・・・・。自分の気持ちとは裏腹に、マナへの接し方が冷たくなっていく。


(冷たいわたしを溶かして、幸せの王子様)
 ソファーにもたれかかって、まどろみの中でつぶやく。
 幸せの王子こと相田マナを待ちわびる。童話の中のお姫様のように、胸の鼓動を微かに高鳴らせながら。
 
「 ――― 大変お待たせいたしました。六花お嬢さま」

 ――― いきなり来たっ。
 飛び起きんばかりの勢いで、六花が目を覚ます。
 完全に油断していた。無防備な寝顔を見られたのでは?と思うと、ちょっと恥ずかしい。
(それにしても、マナ・・・・・・、何なの?)
 黒い燕尾服に白いブラウス、黒い蝶ネクタイ、そして、やはり黒色のスリムなスラックスの組み合わせ。深々と優雅な一礼をしている彼女が右手に持っているのは、黒のシルクハット。
 マジシャン ――― のつもりらしい。
 軽く面食らっている六花の前で体を起こし、「では」と勿体付けて左手をシルクハットの内側へ。
 バッ、と取りだされ、宙に放たれたのは数枚の白いハンカチ。
『バサバサバサバサ・・・ッ』
 と、何羽ものハトが一斉に羽ばたく音がシルクハットの中から聞こえてくる。
 やはり面食らったままの六花が、視線を動かして、放物線を描いて落下していく白いハンカチを追う。
 マナが再びシルクハットの内側に左手を差し入れて、何やら操作すると、ハトの羽ばたく音は消えた。そして、数枚のハンカチが床に落ちる。
「・・・・・・えーと、さすがに学校の中でハトを飛ばすのはマズイかなーって思って・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
 マナが床のハンカチを拾い、シルクハットの中へ戻す。そのシルクハットをソファーの端に置いて、六花の右隣へ腰を下ろす。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「えっ・・・、マナ、手品、あれで終わり?」
「う、・・・うん、急な思い付きだったから。 ――― あはは、なんか、滑っちゃったね」
 バツが悪そうに苦笑するマナ。
 この衣装とシルクハットは、大貝祭でマジックショーをする事になったクラスから借りてきた。
 少しでも六花の雰囲気をなごませたいと考えてのコトだったが・・・・・・。

143 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 19:56:04

「ねえ、六花」
 あえて隣を見ずに、マナが口を開いた。
「何かあったの? ・・・・・・あたしが原因かな?」
 最近の態度の事を問われていると察した六花が、それに対して答えようとした瞬間、今さらながらに気付いてしまう。
 マナのパートナー妖精・シャルルは、家でお店のお手伝い。
 ラケルは、レジーナを捜しに。
 だから、この状況 ――― マナと二人っきり。
「マナには関係ないでしょっ」
 ・・・・・・まただ。マナを意識しすぎた。
 気持ちとは裏腹の、冷たい拒絶。
 言ってから五秒もしないうちに、心が後悔で溢れかえる。
 
「そっか」
 と、マナがうつむいた。
 質問に否定を返されたからではない。
 今、六花が声の調子や態度の中に見せた、むき出しの感情。それが『答え』を教えてくれた。女の子同士だからこそ直感的に分かってしまう、相手の本当の気持ち。
(うーん、でも、万が一、あたしの思い違いだったら困るし、どうしよう)
 ちなみに、思い違いじゃなかったとしても悩む所だ。
(六花と・・・・・・)
 そっと左腕を動かして、六花のひざの上に置かれた彼女の右手の甲へ、手の平を乗せる。
 一瞬、六花はハダカでも見られたみたいに慌てふためいてみせたものの、少し落ち着くと、そのマナの左手の甲の上に、自分の左手を重ねてきた。
 マナのほうは見ない。顔をそらしたまま、静かに次の彼女の言葉を待っている。

 体育館のほうから、女子の笑い声が響いてくる。リハーサルの終わったはずの合唱部だが、まだまだ帰る気配が無い。この時間帯なら、体育館のステージ裏は、六花と二人で静かに話すのに最適だと当たりをつけていたのだが。

 マナは、仕方がないとあきらめて、
「ねえ、六花・・・」
 と、六花の反応を窺いながら続けた。
「もし、あたしが男の子だったら ――― あたしは、どんな女の子を好きになってたと思う?」
 それは、六花の心を波立たせる質問。
 マナが「う〜〜ん・・・」と軽く考え込んで、言葉を付け加える。
「もう少し具体的に言うと、『誰を』・・・・・・かな」
 感情のざわめきを抑えた声で、六花はあっさりと答えた。
「そりゃあ、まこぴーに決まってるでしょ」
「・・・あはは、まこぴーは、まあ、好きだけど。他にいないかな? その・・・・・・」
 六花の肩にぐりぐりと自分の肩をくっつけながら、マナは、ちょっと期待するみたいな表情をしてみせる。だが、六花は冷淡ともいえる態度を崩さなかった。
「じゃあ、ありすは? 結婚すれば総理大臣どころか、世界の頂点に君臨できるわよ」
「別に世界の頂点は狙ってないんだけど・・・・・・、えーっと・・・・・・」
「そういえば、マナって随分とレジーナに甘いわよね?」
「うーん、そうかなぁ・・・。でも、それは恋愛感情的なモノじゃないよ? 本当に」
「亜久里ちゃんはどう? 年下だけど、しっかりしてて頼りになるわよ」
「ウンウン、亜久里ちゃんは、しっかり者で頼れそうだけど・・・・・・、そうじゃなくってぇ」
「あっ」
 何かに大切なコトに気付いたような六花の反応に、今度こそ・・・と、マナの瞳が輝く。
 六花はマナのほうを向いて、にっこりと笑った。
「やっぱりマナのパートナーといえば、シャルルよね」

 がくんっ、と一瞬両肩を落としたマナだが、すぐに含みのある笑みを浮かべて、六花へ顔を近づける。虚を衝かれた六花は逃げられない。
 吐いた息が相手のくちびるに届く距離。
 マナの左手に重ねた自分の手の平が汗ばむのを感じる。
「六花ぁ・・・、誰か一番大事な人の名前を言い忘れてないかなぁ〜?」
 と、ゆっくりした口調でマナが言ってくる。
 くちびるが、彼女の温かい吐息で撫でられた気がした。
 六花がとっさにとぼけて「アイちゃん」と言おうとすると、右手の上に置かれたマナの手の平が、
 ――― グッ、
 と、柔らかな圧力を加えてきた。こころなしか、顔の距離も微かに縮まったような・・・・・・。

144 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 19:57:18

「・・・り〜〜っか?」
 と、ささやくみたいな声が耳たぶをくすぐった。
「マ・・・マナは、それを聞いてどうするのよ?」
「んー、どうしよう・・・。あたしも、それはまだよく分からないんだけど・・・・・・」
 
(ひ、卑怯よっ・・・!)

 マナの曖昧な態度に、心の中で抗議の声を上げる六花。
 もしここで正直に言っても、下手をすれば六花の玉砕で終わってしまう。
 答えられない。
 でも、マナは聞きたがるのをやめてくれない。
「・・・・・・あたしが好きになると思う人の名前を・・・・・・言ってみて、六花」
 敏感な耳の内側。
 マナがしゃべるたび、生温かい息で撫でまわされて、こそばゆい。
 あともう少しで、ゾクッ ――― と来る、その一歩手前の感覚。
 いつのまにか瞑ってしまっていた両目を、うっすらと開いて、
「知らないっ・・・」
 と、弱々しい声で突っぱねる。
 ふふっ、と笑うマナ。さらに顔を近づけて、六花のうなじの匂いをスンスンと子犬みたく嗅ぎ始める。
「六花、いいニオイする・・・」
「やっ、ちょっと・・・」
 身体をよじって逃げようとする。・・・・・・けれど、できなかった。
 スンスンと嗅いでくるマナの鼻先が、時折、ちょんっ・・・ちょんっ・・・と、うなじに当たっている。こんな事が妙に嬉しくてたまらない。
(あっ・・・)
 ――― どうしよう、わたし。マナのこと、すごく・・・。

 くんっ、とマナの顔が小さく上向いて、再び六花の耳もとにくちびるを寄せてきた。
 本当にギリギリの ――― 触れるか触れないかぐらいの距離。
「ところで、いいニオイの六花さん、あたしが好きになりそうな女の子に心当たりは?」
「んっっ!」
 六花の背に、びくん・・・と小さな電流が走った。
 今、柔らかな感触が耳の縁をなぞったような気がする。
 マナの手を、ぎゅっ、と掴む。
「どうしたの、六花? ・・・・・・もしかして、今、かすった?」
「平気よ。女の子同士でしょ? こんなの、ただの・・・・・・スキンシップ、だし」
 自分の顔が熱くなっているのが分かる。
 こうしてマナのそばにいるだけで、心臓が ――― 苦しい。
(苦しいだけなら逃げ出せばいいんだけど・・・・・・) 
 六花にとって初めてだった。
 しあわせが胸に収まりきれないために覚える息苦しさ。
 そして、そんな鼓動の切なさ。
(もっと苦しくなってもいいから・・・・・・)
 ――― マナと、ずっとくっついていたい。

 ・・・・・・マナも六花と同じ気持ちだった。
 くちびるを、今度は意図的に耳の縁へ ――― そっと触れ添わせるように。
 こらえ気味の声を上げて、六花が身体を震わせる。予想以上にくすぐったかったみたいだ。
 綺麗な耳の輪郭をなぞり上げたくちびるを少しだけ離して、マナがいたずらっぽくささやいてみせる。
「これも・・・、ただスキンシップだよね? 六花」
 ――― じゃあ、こんなこともしちゃおう。
「・・・ちゅっ」
 マナのくちびるが、六花の耳たぶで小さな音を鳴らした。
 湿った、甘い響き。
 紛れもなくキスの音。
「あっ・・・」
 と、六花が声をこぼしてしまう。
 夏服に包まれた少女の身体は、緊張のあまり硬直。
 六花が抵抗できないのを分かった上で、マナのくちびるが、また甘ったるい音を鳴らした。
「ちゅっ・・・」
 耳たぶで弾ける、柔らかな感触。決して強い刺激ではないのに、なぜか身体の奥で、ビクッ、と痙攣が走る。たまらなくなった六花が、上擦った声を洩らして小さく身悶える。
「う・・・、あぁ・・・、駄目よ、マナ」
「どうして? ただのスキンシップなんでしょ?」
 そう言ったくちびるが、六花の耳の内側へ優しく触れる。ちゅっ、と甘く吸いつく音。
「あっ・・・あっ、だめ、マナぁ・・・」
 ぞくっ ――― ぞくっ ――― 。
 くすぐったさと同時に突き上げてきたのは、甘美な悦びに体の一部を溶かされる感覚。
 初めての体験に、六花の心が翻弄される。

145 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 19:58:19

「・・・・・・・・・・・・」
 耳からくちびるを離したマナが、六花の両手に挟まれていた左手を静かに抜いた。
(六花、ふふっ、とろけちゃってカワイイなぁ)

 ――― だって、ただのスキンシップなんかじゃないものね、本当は。

 六花はまだ、耳に残る甘やかなこそばゆさに酔っているようだ。
 彼女のくちびる ――― 女の子にとって特別な意味を持つ場所へ、優しく左手の人差し指を添わせた。
 その動作に数秒遅れて、六花が、びくっ、と身体を震わせる。
「六花、今度はこっちでスキンシップしてみる?」
「えっ・・・」
 マナの言葉に、目を丸くする六花。彼女の顔が、瞬く間に恥じらいの色で埋め尽くされる。
「駄目よ、さすがにここは・・・」
「ふーん? あたしは別に嫌じゃないけど。・・・・・・六花には無理なんだ」
「無理とかじゃなくて・・・・・・」
 六花の戸惑いに関係なく、胸では心臓の音が高鳴っている。本当に好きな相手にキスを迫られたら、誰だってそうなってしまう。
 マナは、そんな六花の様子を愉しみながら、彼女のくちびるを指先でなぞっていく。
「・・・・・・っっ!」
 あえぎを押し殺した六花のあごが、クッ、と上がった。こそばゆさを堪える表情や仕草がすごく可愛い。
 幼少の頃から連れ添ってきた親友が、初めて覗かせる一面に、マナの胸がキュウッとなる。
「フフッ、六花はどこまで頑張れるのかな〜?」
 なめらかなくちびるを、こしょこしょ・・・とくすぐって声を上げさせようとしたが、六花は悩ましげな顔のまま押し黙って抵抗。両ひざの上で、ギュッとコブシを握って我慢を続ける。
(六花っ・・・)
 半分冗談のつもりだったのに、本気でキスしたくなってきた。
 今の六花なら・・・・・・あと、もう一押しといったところか。

(よしっ!)
 ソファーから腰を浮かせたマナが、六花の前に立ち、そして覆いかぶさるように、ぐいっ、と上半身を前のめりに。
 ほっそりした六花の両肩の、すぐ外側 ――― ソファーの背もたれの部分をがっしりと両手で掴む。これ以上距離を詰められるコトを恐れた六花が、両ひざをそろえて、固く閉じようとする。しかし、遅い。それを読んで、マナの左脚は、六花の両太ももの間を割って深く入っていた。
「やっっ、・・・こらっ、マナっ!」
 ひどく焦った表情で、六花がマナを見上げてくる。逃げ場をふさがれたという心理的な圧迫感によって、いつもの冷静さを完全に無くしている。
 その痛々しいまでに無防備になった幼なじみの姿を目にして、
(あー、しまった・・・かも)
 と、マナが後悔。
 今、この状況で強引に行動に出たら、六花は泣き出してしまうかもしれない。

(仕方ない、キスは後回しってことで)
 それよりも・・・・・・。
「ねえ六花、あたしの質問に、まだ答える気になれない?」
「心当たりは、その・・・あるかも・・・・・・だけど」
「あるんだったら教えてよ、六花」
「それは・・・・・・」
 マナのまなざしから逃げるように視線を逸らした。
 六花の乙女心が揺れる。
(マナ・・・・・・、冗談なんかじゃなく、本当にわたしのこと・・・・・・)
 黒い燕尾服にスラックスという、マナの正装めいた姿のせいか、・・・・・・なんというか、まるでプロポーズに対する返事を聞かれているような気がしてきた。

 ――― どうしよう。マナにキスされちゃったら。

 答えを口にした途端、くちびるを奪われてしまいそうで少しこわい。
 でも、マナを愛しく想う気持ちが、どんどん自分の胸の中で高まっていく。
 心の準備は、まだ全然だけど・・・・・・。
 恥じらいで赤くなった顔をうつむけていた六花が、チラッと視線を上げた。
「答えてあげてもいいけど・・・・・・、マナは、その子と付き合うの?」
 うーん、と苦笑するマナが歯切れ悪く答えた。
「実はまだちょっと・・・、迷ってるっていうか・・・」
「・・・えっ?」
「ほら、大切な相手だけど、女の子同士なわけだし」
「・・・・・・・・・・・・」

146 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 19:59:13

 六花がグッと声をこらえて下を向いた。
(何よ、それ・・・・・・)
 マナへの感情が心の中でグツグツと滾ってくる。
(マナってばホント煮えっっっっ切らないっっっっ!!! 
迷う必要ある!? もう女の子同士でもいいじゃない! わたしなんて、マナとならファーストキスどころか、その先まで進んじゃってもいいかなって覚悟決めかけてたのに!)

 胸の内に激情を一気に吐き出し終えると、スーッと頭は冷えた。
 しかし、心はまだ熱いままだ。
 こうなったら ――― 絶対にマナをわたしのものに・・・・・・ッッッ!!

 そう思ったら、自然に両手が動いていた。
 ソファーの背もたれを掴んでいたマナの右手を、ぐいっと下へ押し下げ、強引に自分の左胸をさわらせた。
 死ぬほど恥ずかしいのに ――― かつてない高揚感で胸がうずく。
「ね・・・ねえ、マナの好きにしていいよ・・・」
 恥ずかしさを精一杯こらえて、誘うような色香を乗せた微笑を浮かべてみたつもり。
 ・・・・・・残念な事に、マナの目には、ぎこちなく引き攣った笑顔としか見えないが。
 唐突すぎて、マナが困惑の笑みを顔に広げた。
(な・・・なんだか六花、無理してるなぁ・・・・・・)
 でも、まあ、この誘いを蹴ったら、それはそれで六花に恥をかかせてしまいそうなので、せっかくだからというカンジで触らせてもらうことにする。
「じゃあ、六花・・・、ちょっとだけね」

 まだ発育途中。制服に浅いカーブを描いて、ようやく自己主張を始めたばかりの胸のふくらみ。
 その幼げな丸みに沿わせた手の平を、ゆっくりと上下に滑らせる。
 夏服の薄い生地の下 ――― ブラジャーの手触りを通して、やわらかな肉感が伝わってくる。
「ん・・・、ンッ・・・」
 くすぐったさをこらえる六花が、わずかに身じろぎ。
「ごめん、くすぐったかった?」
「平気・・・、気にしないで」
「うん、じゃあ、もう少しだけ・・・・・・」
 思春期の胸のなめらかな曲線を、マナの手の平が優しく撫でさする。
 発育途中の小ぶりなサイズのふくらみは、肉付きに関しては物足りなくとも、瑞々しい張りのあるやわらかさが、マナの手をよろこばせる。

「六花の胸のカタチ、綺麗だね」
 ささやきながら、右手の親指の付け根辺りに、ぐっ、とチカラを込めてみる。一瞬押さえつけられた胸の丸みは、柔らかな弾力を持って、ふよっ・・・とマナの手の平を押し返してきた。
「・・・・・・きもちいいよ、六花の胸」
「そ、そう? マナの好きなだけ、さわってくれてかまわないから」
 マナの右手に添えられた両手は、恥ずかしさのあまり、今にも震えだしそう。
 六花は、優しく胸を撫でる手の動きにひどく敏感になっていた。服越しなのにもかかわらず、白い肌が甘美なこそばゆさで蕩かされてゆく。
(やだっ・・・)
 大好きな相手が目の前にいるのに、少しだけ、いやらしい気分になってしまった。
 こんな気持ちを、マナに見透かされたらと思うと ――― 。
「あっっ・・・」
 胸のふくらみを撫で上げてきた手の動きに、六花の背筋が、びくっ、と小さく跳ねて弓反った。
 その反応にマナの手が止まる。・・・・・・が、すぐに再開。さっきまでよりも大胆な手付きで、初々しい胸のふくらみを愛でてくる。
「うっ・・・、あっ、・・・あぁっ、うっ・・・・・・ン゛ッ・・・」
 六花の押し殺した声が、体育館のステージ裏にこぼれる。
 五本の指を広げた手の平が、夏服に浮かび上がる胸の丸みにかろうじて触れているような状態のまま、さわさわと円を描くようにすべり、時折、そのなだらかなふくらみを手の平で優しく押しつぶして上下にマッサージ。
 マナの手の平へ柔らかに跳ね返る胸の弾力。それを、つっ・・・と、くぼませて遊ぶ細い指先。
 まるで、六花をさらにいやらしい気分にさせるための場所を探して触診しているみたいだ。
(駄目っ、マナのさわり方、きもちよすぎて変になっちゃう・・・・・・)
 夏服越しの感触。少女の淡い胸のふくらみへ、マナが指先や手の平を何度もすべらせて、その瑞々しい肌の張りを味わってくる。逆に、そんな彼女の指使いや撫で方を、六花は自分の小ぶりな胸のふくらみで味わいつつ、ひそかに興奮を覚えていた。
「んっ、ふっ・・・あっ、うぅ・・・・・・」
 喘ぎ声を抑えて悶える六花の上半身は、いつのまにか熱く火照っていた。

147 名無しさん :2017/03/12(日) 19:59:47
>>125
凄いな〜まだ執筆本数少ないのに……。セリフのかけあいが面白いです。上げて落すところといい、読者を笑わせることを意識して書いた作品ですね。らしさもちゃんと出ていて、短編としても楽しいです。来年も期待しています!

148 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 20:00:01

(マナ、大好き)
 胸の丸みを愛撫する手付きが、徐々になめらかさを増してくる。それをもっと深く感じようと、うっとり両目を閉じていた六花の上半身が、突如、ビクッ!と『く』の字に折れた。
 なだらかな胸のふくらみのてっぺん。そこをマナの指が強めに、ツツっ・・・と擦ったのだ。
「やっ、やだっ、マナっ・・・」
 服の生地とブラジャー越しだったが、感度の高い胸の先っぽは、陶然としたうずきに一瞬支配されてしまった。マナの指が離れた今も、ムズムズと余韻を残している気持ちよさがたまらない。
「・・・・・・おやおや六花、そんなに気持ちよかったのかい?」
 と、からかうみたいなマナのささやき。
 そして、右手の指先をこまかく動かして、胸先を集中的にまさぐってきた。
「ひっ! ちょっ・・・コラっ、マナっ、ホントにやめっ・・・きゃっ! やっ・・・、駄目って!」
 ソファーの上で騒ぎながら抵抗する六花。
 マナが自分のくちびるの前に左手の人差し指を立てて『しーっ』と、さらにその視線が意味ありげに体育館のほうへと向いた。
 ・・・・・・理解できた六花は、押し黙るしかなかった。
 まだ体育館のほうから、しゃべり声が聞こえてくる。合唱部の女子たちは、完全に歓談モードへと入ってしまったらしい。
 向こうの声が聞こえるというコトは、当然こちらの声も、下手をすれば ――― 。
「気付かれたら、誰かこっちに来ちゃうかもしれないよ? だから、なるべく静かにね、六花」
 そう言ったマナが、左手も伸ばしてきた。
「だ・・・だめよっ、マナ・・・」と、抑え気味の声で言って、首を横に振る六花。ならば・・・と、マナは笑顔を浮かべて策略を行使。
「六花、本当に愛してる」
「な、なによ、いきなり・・・・・・」
「愛してるよ、六花。だから、さわらせて?」
「だから・・・じゃないでしょっ。さわらせませんっ」
「ふーん、じゃあ、これでも?」
 六花の胸から右手を離したマナが、今思いついた手品を試してみる。
「六花、今から手品するから。見ててね」

 マナが上向けた自分の左手に、そっと右手の平を被せた。
 六花の視線がそこへ向いているのを確認してから、そぉーっと右手を持ち上げた。
 ・・・・・・もちろん、上向けた左手には何も乗っていない。
 怪訝な目でマナを見上げてくる六花に、マナがニコッと笑ってみせた。
「六花になら見えるはずだよ。ねっ? よく見て」
「何も無いじゃない」
「そんなことないよ。ほら、そろそろ見えてきたんじゃない?」
 マナの右手が、左手の上で、六花に向かってパカッと何か開けるような動きをしてみせた。さすがに六花にもピンときた。
「給料3ヶ月分?」
 六花がたずねたのは、マナの左手に乗せられた『見えないリングケース』の中身の値段だ。
 ふふっ、と笑うマナ。
 彼女の勝ちだった。
「・・・・・・分かったわよ。さっ、その指輪、はめさせて」
 ツンとした態度で、六花が左手を ――― ほっそりとした薬指をマナへと差し出した。
 マナが『見えないリングケース』から取り出した『見えない婚約指輪』を持ち、六花の左手を自分の左手でそっと支えながら、少女の薬指へ恭しく指輪を通していく。
(わたしとマナ、二人だけの記憶にしか残らない婚約指輪・・・か)
 最初の白いハンカチをハト代わりに使った手品よりも、断然いい。
 物質的には何も無いのに、薬指の第二関節と第三関節の間に、ジンッ・・・と心地良い熱のようなものが生まれている。六花が、その薬指を見せ付けるように顔の隣まで持ち上げて、
「綺麗な指輪ね。ありがとう、マナっ」
 と、純真な笑顔をマナへと送った。
 そして、すーっと息を吐き、腰の横に下ろした両手で、ソファーのクッションをきゅっと掴む。
 マナの目線が下がる。
 それを追った六花が、侵入を阻止するために両太ももでずっと挟んでいたマナの左脚を解放してやった。
「いい? マナ、先に言っておくけど、先っぽばっかりイジメちゃ駄目よ」
「分かってるってば。六花、愛してる」
「あー、もお、ハイハイ」

149 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 20:00:46

 マナの右手と左手が、それぞれ左右の胸のふくらみへ、やんわりと触れてくる。
 夏服越しに感じるくすぐったさ。
「んっ・・・」
 ぴくっ、と片目をつむりかけた六花が、ソファーのクッションを強めに掴む。
 なだらかな曲線のカタチに沿って、マナがゆっくりと愛撫の手付きをすべらせてきた。
「あっ、うぅ・・・うっ、ん・・・・・・」
「六花の胸って、将来大きくなったら色々できそう」
「色々って・・・、何を想像してるのよ。マナ、いやらしい」
「ふふっ」
「あ、あぁっ、ちょっと、マナっ・・・」
 ふくらみかけの胸を撫でまわしているマナの両手が、左右別々の動きで二つの丸みをまさぐり始めた。どちらの胸のほうが感じやすいか、実験するみたいに。
「あっ、そんな風に・・・さわられたら・・・・・・くすぐったっ、うっ・・・」
 ソファーの背もたれに強く背中を押しつけて、胸のこそばゆさに仰け反ろうとする上半身の動きを抑える。
 ・・・・・・しかし、声と表情にどうしても出てしまう興奮の色までは抑えられない。
「いやらしいのは、あたしじゃなくて、六花のほうなんじゃないかな?」
「 ――― わたしをいやらしくしているのはマナじゃないっ!」
 しっとりと潤んだ切れ長の目で、マナを『キッ』と睨みつけた。
 あはは・・・とバツが悪そうな笑みを洩らしたマナが、そんな彼女の顔に見入る。
(勝気な六花の顔もいいなぁ・・・)
 母親譲りの知的な容貌をクールな表情で整えて、涼やかにしている時も綺麗だけど、今、こうして感情をむき出しにしている時の顔も素敵だった。恥じらいに染まりながらも、気持ちよさに流されまいと必死で抗う表情。正直、マナは好きだ。
(けど、どこまで頑張れるかな、六花)
 左右の手の平で包んだ瑞々しい肉感を愉しみつつ、夏服に隠された胸のなだらかな曲線を指先でなぞり上げる。肌を這うマナの手の平や指に、柔らかく跳ね返ってくる肉の弾力。きもちよくて、何度さわっても飽きがこない。
 両胸を愛撫されている六花が、顔を上気させて喘ぐ。
 くすぐったそうにしている六花を見ると、もっといじめたくなる。

 夏服の薄い生地の上に、フワッ・・・と、かろうじて乗せられた程度の指先を、すーーっ・・・と胸の丸みに沿って走らせる。もちろん、左右の手はそれぞれ別の動きで。
「んっ、マナ、何がしたいのよ、もぉ・・・・・・」
 さっきまでとは違う微妙なくすぐったさに、六花は焦(じ)れたみたいな表情。
 マナは、あえて時間をかけて、そういうまさぐり方を続けた。
(も・・・もおっ、マナったらぁっ)
 早く、気持ちよく ――― なりたい。
「あん・・・、もう、いい加減にしてよぉ・・・・・・」
 切なげな声をこぼして、六花がキュッと左右の太ももをきつく閉じた。
 まだそこに残っていたマナの左脚を再び挟んで ――― 大好きな人の脚を太ももで抱きしめるみたいに。
 気持ちよくしてほしいという、おねだりの仕草。
 それが効いたのか、マナの手が、六花の胸へグッと密着。少し強めのマッサージを思わす愛撫によって、小ぶりな二つのふくらみが、軟らかに何度もカタチを崩した。
「ああっ・・・あああ、マナぁ・・・、それ・・・気持ちいいからぁ・・・」
 白い柔肌が、マナの指先や手の平の感触に悦びを求めてしまう。
 悶えながら熱い息を吐く六花に顔を近づけて、マナが興奮のにじんだ声でたずねる。
「六花ぁ、もっと気持ちのイイこと、してほしいんじゃない? ほらぁ」
 夏服の上から胸の丸みの頂点を、指でカリカリと引っかくように・・・・・・。
 両胸の先っぽを責められる六花が、「ふあっ・・・」と、チカラの抜けた声を洩らした。
 相変わらず、夏服の薄い生地とブラジャーの防御力は役に立たない。マナの指の動きに、感度の高い胸の先端は、ムズムズとたまらなくうずいてしまう。
「あ゛ああぁ・・・、マナ、あまり・・・激しく指・・・動かさないで・・・・・・」
 大きな声 ――― 出ちゃう。

150 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 20:01:28

「そうだねぇ、六花・・・、何をされてもガマンしないと」
 意地悪く微笑むマナの両手が、夏服とブラジャー越しに、ツンとこわばっている胸先を強引につまみ上げようとしてくる。
「ひっ、ああ・・・、マナ、こらっ、やめ・・・あ゛あっ・・・」
 ただでさえくすぐったくて敏感になっているのに、そんなことをされたら ――― 。
「あはっっ・・・、やっ、ダメっ、恥ずかしいよぉ、マナぁ・・・」
 胸先の幼い突起に、恍惚とした痺れが走る。
 自分の指でもそんな風に触ったことがないのに、いきなり他人の指でなんて・・・・・・。まだ中学生の少女に耐えられるはずもなかった。
「駄目・・・、マナ、あああ・・・、ひっ、ああ・・・っ」
 胸の先端をまさぐっていた人差し指と親指が、夏服とブラジャーごと感度の高い先っぽを搾り上げるように、キュウッと、きつめにつまんできた。
( ――― 痛ぁっっ!!)
 一瞬、六花の背中がソファーの背もたれに激しくぶつかって悶えた。服の上から電気を流されたみたいな刺激。六花が眉間に悩ましいシワを刻んで喘ぐ。しかし、痛みがジンジンとした疼きに置き換わってくると、六花は身体を熱くするほどの興奮を覚え始めた。
「はぁっ、あっ・・・はぁ・・・、これ・・・すごい・・・・・・いい」
 倒錯的な官能の体験 ――― 六花の知識に無かった甘美な蜜を、感じやすい胸の先っぽで味わってしまったのだ。
 けれど、服と下着を間に挟んでいるせいか、少し感触がもどかしかった気がする。胸先を酔わせる疼きも、なんだか物足りない。
(でも、もしさっきのが直接、何も無い状態でだったら・・・・・・すごく痛いかも・・・・・・)
 ――― でも・・・。
 ――― ゾクッ。
(マナにそういうコトされるのって、ちょっと、期待・・・しちゃうっていうか・・・・・・)
 六花が「・・・ん゛ッ」と鼻にかかった声を洩らした。
 マナの指でいじめられている両胸の先っぽが、さらにムズムズしてきた。

「六花・・・」
 マナの声に視線を上げる六花。マナが注意を向けているほうへ意識を持っていく。
 体育館に居残っていた合唱部の女子たちの声が全く聞こえてこない。物音もしない。
 ようやく帰ってくれたらしい。
「マナ・・・」
 六花の心臓が、はっきりと興奮の鼓動を奏でる。
 今は、本当に、やっと ――― マナと二人きり。

 がばっ ――― 。

 我慢なんて出来なかった。マナの背中に両腕を回して、思いっきり抱きつく。
 ソファーに倒れこみそうになったマナが、とっさに背もたれに左手を着いた。
「六花!?」
「・・・・・・・・・・・・」
 顔を見られるのが恥ずかしくて伏せてしまうけれど、この昂った感情は、もうごまかせない。
 二人っきりになったと思った途端に、気が付いた。
 自分の大切なところが、マナを欲しがっている。
「・・・・・・マナ、いやらしくて・・・ゴメン。わたし、体の奥がすごく疼いて・・・・・・」
「痛いの?」
「ううん、その・・・マナに、撫でてもらいたくて・・・・・・、ス・・・、スカートの奥 ――― 」
「赤ちゃんを産む所?」
 マナの口から、いきなりそんな言葉が出てきたものだから六花は驚いてしまった。しかしまあ、中学三年生にもなれば知ってても普通かな、と思い直し、キュッと彼女の背中を抱きしめた。
「熱く疼いちゃってるの・・・・・・、お願い」
 あとはもう、マナに全部任せようと思った。
 スカートをまさぐり上げた右手が、その生地の下に潜って、六花の太ももを撫でながら這い登っていき、ショーツのサイドを軽く指先でずらす。
 六花はくすぐったくて、マナに抱きついたまま何度も身震いして喘いだ。
 学校でこんな事するなんて絶対に間違っている。それでも ―――――― 。

 その時、唐突に体育館のほうから聞こえてきた声が、二人の睦み事にストップをかけた。

「こらーっ、レジーナ、待つケルーっ、今日はボクと一緒に帰るケルーっ」
「イーヤッ! 今日はマナと一緒に帰る気分なの!」
 六花とマナが顔を見合わせる。
 ラケルとレジーナだ。非常にマズイ。
「ほら、誰もいないケル。これ以上探しても無駄ケル。もうマナは帰ったケル」
「 ――― ねえ、ラケルぅ、体育館の裏って、なんか部屋なかった?」

151 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 20:02:43

「・・・・・・逃げるよっ、六花っ」
 小声で告げたマナが、六花の手を引いて立ち上がらせようとする。
 しかし、六花は「待って」と制止して、マナの顔を申し訳なさそうに見上げた。
「腰が抜けちゃって、立てないんですけどぉ〜〜」
「・・・えーーっ」

 レジーナとラケルが騒がしくステージ裏へとやってきた。
 大道具等に興味を持てないレジーナは、つまらなさそうに一瞥しただけでマナがいないことを確認して、ラケルのことなどほったらかして帰ろうとする。それが気に入らないのか、ラケルが非難の言葉を並べながらレジーナを追いかけて去っていく。

 ――― 壁際から少し離されて置かれたクラシック調のソファーの後ろ。
 中学生の少女二人なら、横になればかろうじて身を隠せる程度の大きさだったのが幸いだ。
(マナ・・・っ)
 マナに抱きしめられた姿勢で床に転がり、ソファーの陰に隠れて息を殺し、なんとかラケルとレジーナをやり過ごした。それはいいのだが。
(どうして、わたしにキスしてるのよっ、もおっ!)
 しっとりと湿りを帯びた、やわらかなくちびる同士の重なり合い。
 息を潜めるために口をふさぐ必要があったとか、そんな理由だろうか。だからといって、キスは無いと思う。大好きな相手との、ファーストキスなのに。
 しかし、ソファーの後ろに隠れ、床の上に転がった状態でしているマナとのキスが、六花の心臓を甘く蕩かしているのも事実だ。
(まあ、もしかしたらラケルたちが戻ってくるかもしれないし、念のため、もう少しこのままで・・・・・・)
 くちづけのやわらかなぬくもりに、心を溶かす。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 

 帰り道。
 二人は手を繋いで歩いていた。
 ・・・・・・手は繋がっているのに、体同士の距離は遠い。周りに人がいないのをいいコトに、六花がマナから出来るだけ離れようとしているのだ。 
「あの〜〜、六花さん?」
「・・・・・・・・・・・・」
「もしかして、とっさにしちゃったキスの事でしょうかぁ?」
 六花の態度の原因を探ろうとしてくるマナに、チラッとクールな視線を向けて、
「キス?」
 と聞き返した。そして、わざと数秒の間(ま)を置いてから答えた。
「あれ、ただのスキンシップでしょ」
 ・・・・・・気持ちよかったとはいえ、人生で一度きりしかないファーストキスをあんな形でおこなったのは許せない。マナに対する冷淡な距離の取り方は、しばらく止みそうにない。
 隣でマナが困っているのが気配で分かったが、六花は何も言わなかった。ちょっとした罰のつもりだ。
「あー、ところで六花さ〜ん」
 またマナが話しかけてきたけれど無視。手を繋いだまま歩き続ける。
 マナが、たたっ・・・と距離を詰めてきて、内緒話をする時みたいに、片手を口もとの隣に立てて訊ねてきた。
「まだ、熱く疼いちゃってます?」
「・・・っっ!」
 あの時はラケルたちが来たせいでうやむやになってしまったし、そのあとも何かをする雰囲気には戻れなかったため、マナと一緒にこうして帰ることにしたのだが・・・。
「な、なに馬鹿な事言ってるのよっ」
 と、六花が顔を赤らめて怒ってみせる。
 しかし、マナはイタズラを成功させた子供みたいに微笑んで、言葉を続けた。
「今夜、六花の家にお泊まりして慰めてあげてもいいけど・・・、うーん、どうしよっかなぁ?」
「マナの好きにすればいいじゃないっ!」
 六花がマナの手を強引にほどいた。そして、マナを置き去りにして走り出す。
 カーッと紅潮した自分の顔を、こんな所でマナに見られるのが恥ずかしかったのだ。
 表情に浮かんでいるのが、怒りだけならかまわない。
 けど、それ以上に嬉しくて、だらしなくニヤニヤと顔が緩みかけているのが分かっていたから。

(何が幸せの王子よっ! マナったら悪い魔法使いじゃない!!)
 まったく・・・・・・、マナがこの胸にかけた魔法のせいで、
 今夜、彼女が部屋に来てくれるまで、六花の心臓はドキドキしっぱなしだ。

(おわり)

152 猫塚 ◆GKWyxD2gYE :2017/03/12(日) 20:04:08

・・・・・・以上です。
おそまつさまでした。

153 名無しさん :2017/03/12(日) 21:16:10
>>152
猫塚さんのマナりつ!
それも、六花がなんっっっって初々しくてカワイイんでしょう!
体育館の裏で、時々他の生徒の声が聞こえてきて……ってところが、余計にドキドキするシチュエーション。
いやぁ、眼福でした。楽しませて頂きました!

154 名無しさん :2017/03/13(月) 00:24:16
>>133
超愛が詰まってて、超面白かったです。自分もこれだけ書けるスタミナと情熱が欲しいです……。
何より「モフォ」がもう聞けないのかと思うと寂しいです。
年を取らないと聞いて、おジャ魔女どれみドッカ〜ン!の40話を思い出しました。そこに出てくる女性も「みらい」さん。

>>152
丁寧な描写、さすがです。自分もこういう繊細さが欲しいです……。

155 一六 ◆6/pMjwqUTk :2017/03/13(月) 00:33:06
こんばんは。
競作最終日を過ぎましたので、ここで一旦、ゆる〜く締めさせて頂きます。

156 一六 ◆6/pMjwqUTk :2017/03/13(月) 00:33:38
ことは 「あー、面白かった。いろんなお話が沢山あって、楽しかったね〜」
みらい 「そうだね。テーマは“魔法”と“つなぐ”のどちらか片方でいいってことだったけど、どこかしらに両方出て来るお話も多かったような……」
リコ  「そりゃそうよ! 狙い通りだし」
モフルン「……何を狙ってたモフ?」
リコ  「コホン。いい? 魔法は、誰かのために使うことが多いでしょ? 自分のためだけに使う魔法って少ないもの。だから魔法を使うと、それだけで誰かとつながることが出来るのよ!」
みらい 「そっか……そうだよね。凄いよ、リコ!」
リコ  「それほどでもないわよ!(得意げ)」
ことは 「わたしは、自分の箒を出したりしちゃってたけどね……」
モフルン「はーちゃんは、みらいとリコが箒で飛んでるのを見て、羨ましいと思ったモフ。だから、ちゃあんと二人とつながってたモフ」
ことは 「モフルン!」
モフルン「それに、自分のための魔法が全く無いってわけじゃないモフ。リコだって、最初は補習を受けたくなくて……」
リコ  「ああっ、モフルン! そんな昔のことは言わないで〜」
みらい 「あ、でも、“まるで魔法みたい”とか、“魔法じゃないんだから”とか、そういう本当は魔法を使っていないお話の場合は、どうなのかな?」

いちか 「あーっ! キラッとひらめいた!」
ひまり 「こんなところで、スイーツを作るんですか?」
あおい 「今度はどんな動物なんだ? あ、モフルンはクマだけど」
いちか 「そーじゃな・く・てぇ! 魔法が使えないから、いろんなことをしたり、考えたりして、誰かのために気持ちを伝えようとするんですよねっ?」
みらい 「あ、だからやっぱり、誰かとつながってるんだ。いちかちゃんも凄〜い!」
ゆかり 「へぇ。なかなかやるわね」
あきら 「いちかちゃんの場合は、それがスイーツ作りってワケだ」
いちか 「エヘヘへ……」

ことは「気持ちを伝えて、誰かとつながる、か。わたしたちにとっては、それが魔法なんだね」
みらい「うん。他にも、音楽とか、ダンスとか、あと、みんなでおしゃべりするとか、いろ〜んな方法があるよね」
リコ 「ええ。そう考えたら、お話の種っていろんなところに転がっているのかもしれないわ」
いちか 「わ〜、そう考えたら楽しいなぁ! 何だか跳ねたくなってきた。ホイップ、ステップ、ジャーンプ! わっ! あわわわ……」
ひまり 「大変です、いちかちゃんが!」
あおい 「坂道、転がってっちゃう!」
リコ  「待ってて。キュアップ・ラパパ! 箒よ、飛びなさ……わぁっ!」
あきら 「あ、落ちた」
ゆかり 「いちかの上ね……」
いちか 「はわわわ……。と、止めてくれて、ありがとうございまふ」
みらい 「リコ、慌てすぎ!」
リコ  「お、落ちてないし! 計算通りだから!」

 オチが付いたところで(笑)、今年の秘密のお話し会も、そろそろお開きの時間に。
 今度はまた、魔法の時間が訪れたとき。
 その日まで、あなたとつながる大切な人とのお話の種を、大事に育てて下さいね。
 それでは皆様――。

「キュアップ・ラパパ! 明日もいい日になぁれ!」

157 一六 ◆6/pMjwqUTk :2017/03/13(月) 00:36:16
お粗末様でした!
今年も沢山の素敵な作品を投稿して頂き、どうもありがとうございました!
このスレッドは、例年通り、一カ月の間このままにさせて頂きます。
「間に合わなかった!」という方は、どうぞ心置きなく投下して下さいませ。
「新たに書いてみた!」という方も、勿論大歓迎です!
このスレッドに投下されたSSは、全て競作作品として保管させて頂きます。
狙ってないんですが(笑)毎度毎度のことながら、管理人自らもう一本書きたかったSSが間に合いませんでしたので、後日投下させて頂きます。

158 名無しさん :2017/03/13(月) 21:14:11
>>125
美希たんもそれなりに凄いんだけど、きららと比べちゃうとどうしてもねぇ(笑)
でも、大丈夫、まだまだこれからよっ!リコとのコンビは意外と似た者同士で息が合いそう!
>>133
何年経っても変わることなく一緒で、でも様々なことを乗り越えて今があるんですよね。
みんなハッピーな理想的な世界だと思いました。
>>152
最後の最後でチューがとはやられた!良いしめですな。しかし、今夜この二人はどうなることやら…妄想が(笑)

159 名無しさん :2017/03/13(月) 21:21:56
>>157
運営さん、書き手の皆さん、おつかれさまです!
ギャグあり、シリアスあり、ほっくりあり、15(18)禁あり…と、どの作品もハートフルで素晴らしかったです。
楽しませていただき、ありがとうございました!
まだ、投下があるということで、引き続き、ワクワクしながらお待ちしてます!

160 名無しさん :2017/03/16(木) 23:22:06
通りすがりの者なんですけど、誰もいないみたいなので、お話を半分だけ置いていきます。
残り半分は今月中に………。今回は前半〜中盤です。
スマイル、あかなおで、って予告してたんですけど、急遽変更してフレッシュで。
ラブせつ・美希ブキ。
タイトルは

『安楽椅子探偵は魔法を使う』

161 名無しさん :2017/03/16(木) 23:23:15
1―――発端

 客間中央にあるテーブルの周りに置かれた椅子には、性別年齢のみならず、警察署長、小説家、絵描き、女優等々、それぞれ職種もまるで異なる何人かの男女が腰掛けている。
 けれど、そのような社会的位置付けからはその関連性が見出し難い彼等ではあったものの、実は三つの共通点があった。
 一つは、最近新聞を騒がせている三件の連続殺人事件に、各々何らかの形で関わっているという点。
 一つは、皆が皆、その顔に恐怖や怯えを含んだ、硬く強張った表情を浮かべているという点。
 そして最後の一つは………彼らの視線が、壁際にある暖炉の前の椅子に座った、のんびりと編み物をしている品の良い老婦人の姿に集中しているという点だった。
 かく言う私の目もまた、その一挙手一投足までも見逃さないようにと、今や瞬きすら忘れて、彼女に釘付けになっている。
 そんな緊張感に満ちたこの場の空気などどこ吹く風、という様子で、老婦人は手にしたかぎ針を脇に置くと、老眼鏡を直して編み物をまじまじと眺めた。

「あら、また編み目を飛ばしてしまったみたい……駄目ねぇ、やっぱりお話ししながらだと……一つ、二つ……ええと、ここからやり直せばいいのね……」

 そう一人ごちて、老婦人は顔を上げると、部屋の中にいる一同を見回した。そこでようやく自らが注目されていることに気が付いたのか、彼女の頬がほんのりと赤くなる。

「ああ。ごめんなさい。けどねえ、昔私の家にいたメイドに娘が産まれるっていうものだから………産着の一つも作ってあげたくて……」
「ええ?熱心に編んでいると思って見ていたら、まだ産まれてもいないんですか?その色から見たところ女の子用みたいですけど、まだ性別なんて分かりはしないでしょうに……順序が逆ではないですか、伯母さん?それともひょっとして、お年を召されましたか?」

 老婦人の甥が、場の雰囲気を和らげようとでもいうかのように、そう冗談めかして憎まれ口を叩いた。勿論、そんな軽口では重苦しい空気は何一つ変わりはしなかったけれど。
 しかし老嬢はにっこりと微笑むと、彼女の甥に優しい視線を投げかけた。

「ええ、そう思われても仕方ないかもしれないわね。けれどこの年になるとね、時間の過ぎるのが早くて………前もっていろいろ準備しておかなくてはね………。それと性別だけど、あの娘の家は代々女系でね………それにほら、あの娘の顔つき………あれの母親が身籠った時も同じように目元が険しくなったものですよ」
「伯母さん、話の続きを―――」
「そうそう、それと気が付いていないようだけれど、あなたは今とても良い事を言ったわ」

 テーブルの周りに座った人々の顔を見渡しながら、老婦人はゆっくりと、落ち着いた声で話し出した。

「『順序』。そう、なにより大事なのはそこなんですよ、皆さん。それを間違えてしまうと、さっきの編み物のように、間違えた所からやり直さなくてはならなくなる。それにね、産まれてもいない女の子用の産着を作るのに、しっかりした理由があると知らなくては、ああ、もう子供は産まれているのだ、と大多数の人は考えるでしょうね。あるいは甥の言うように、私が少し呆けてしまったのではないか、とね」
「失礼ですがご婦人、あなたが言っていることはまるで―――」
「ええそうですわ、署長さん。私は事件の順序を皆さん勘違いしている、と申しておりますの。いえ、騙されてしまっている、と言ったほうがいいでしょうね。ですから解決には至りません。間違えた所からやり直さない限りは」

162 名無しさん :2017/03/16(木) 23:24:46

 老婦人の台詞に、私は思わず息を飲んだ。そうか、三つの事件が発見された通りの順序で起こったという確証なんて何一つ無い………そう考えて順序を並び替えて話を整理すると………ええと、どこから間違えていたんだろう………私の推理が正しければ―――。
 必死に頭を回転させる私を他所に、老婦人の視線はある人物の前で止まる。

「私の言っている事、あなたならお分かりですよね?事件の順番をまあ見事に入れ替えて見せたようですけど………綺麗すぎるとね、逆に不自然なものなんですよ。上手に嘘をつきたいのなら、もっと真実を織り交ぜないといけません」

 彼女の言葉に、まるで時間でも止まってしまったかのように場が静まり返った。そして皆無言のまま一斉にその人物へと目を走らせる。

「あなたが―――犯人ね」

 老婦人が語り掛けた相手、それは―――!

「はいよ、ご注文のカフェオレとオールドファッションドーナッツ、お待たせ、お嬢ちゃん」

 唐突に掛けられたカオルちゃんの声と、漂う香ばしい芳香によって、私―――東せつなの意識は1900年代のイギリスの片田舎から、一気にドーナツカフェ―――現実へと引き戻された。

「おっと、ゴメンよ。もしかしてオジサン、読書のお邪魔しちゃったかな?」
「いいえ、平気よ、カオルちゃん。ありがとう」
「随分と熱心に読んでたみたいだけど………よかったら何の本か、オジサンにも教えてくれるかい?」
「あ、これ?この本は―――」

 私は手にした文庫本のブックカバーを外してカオルちゃんに見せた。本の表紙には内容を象徴したような一見シュールなイラストと、作者と翻訳者の名前。そして大きく『安楽椅子探偵は魔法を使う』というタイトルの文字が。

「へえ、オジサンもこの作者の名前くらいは知ってるよ。推理小説、だよね?」
「ええそう。古典って言われるくらい昔の作品だけど………それでも今なお知名度も人気も高いのは、色褪せない名作、という証拠かしらね」

 『安楽椅子探偵は魔法を使う』は、イギリスの女流作家による、老婦人の探偵が活躍する人気シリーズの一冊だ。最も活躍するといっても、主人公の老婦人はあちこち手がかりを探して駆け回るなどという事はしない。何故なら題名にもなっている『安楽椅子探偵』とは、大雑把に言えば事務所なり自宅なりの椅子に座り、助手役や関係者達の話を聞くだけで推理していく、というスタイルの探偵の事だからである。
 この作品の主人公に限って言うと、作中の誰よりも事実を把握し、鮮やかに事件を解決していく様は、老婦人という設定も相まって、まさに題名通り、『魔法使い』と呼ぶに相応しい。
 それでいて素晴らしいのは、犯人が分かってからもう一度読み返すと、魔法どころか、本文内に置いてきちんと証拠は提示されているし、きっちりとした伏線も張られている。つまりは「フェア」なのだ。だからこそオチの部分での「やられた!」というカタルシスが際立つのだろう。無論、それは推理小説全般に言える事ではあるが。
 最も、「やられた!」といっても、その感覚は悔しいとか騙されたとかいう嫌な気持ちではなく、どちらかといえばスッキリとした爽快感に近いものだった。
 もともと私は理論立った思考は好きだったし、自分の観察力、洞察力に少しは自信もあったので、挑戦的な気持ちがミステリーを読み始めたきっかけになっていたのだが、今となっては「今回はどう驚かせてくれるのだろうか」という期待のほうがそれを上回っていた。

163 名無しさん :2017/03/16(木) 23:26:05

「これもとっても面白くてね。今精一杯頑張って推理しながら読んでるところ」
「ふうん、推理ねえ………」

 カオルちゃんは何やら難しい顔で顎に手をやると、お客さんのまばらなドーナツカフェのテーブルを見渡した。それから右手の人差し指を立てて、ニカッと白い歯を見せる。

「それじゃあ名探偵のお嬢ちゃんに、オジサンからちょっとしたミステリーを。休日の昼下がりだっていうのに、どうしてこの店にはあんまりお客さんがいないと思う?」
「え?あ、言われてみれば確かにお客さんが少ないけど………」
「正解は、ミステリーだけに、どーもお客さんにミステらリーちゃったみたいなんだよね、グハッ!」
「カオルちゃん………さすがに自虐的過ぎて笑えないわよ、その駄洒落………」

 確かに、いつものドーナツカフェなら、もっと家族連れとか恋人同士とかで賑わっていそうなものだ。日曜日で、しかも小春日和といった暖かな日差しの午後なのに、これはちょっとおかしい。
 カオルちゃんもグハハ、と笑いつつも何やら複雑な表情。

「まあたまたまだと思うんだけどね。近くに競合店が出来たわけでもないし。最もどんなドーナツ屋が出来たって、オジサンのドーナツは負けないけどさ」
「そうね。カオルちゃんのドーナツは天下一品ですもの」
「とは言うもののこう暇だとねえ………なにか知恵は拝借できないかい、名探偵殿?」

 カオルちゃんの問い掛けに、私はうーん、と握った手を口元に当てる。カオルちゃんの力になりたいのは山々だし、名探偵って言われたのもちょっぴり嬉しいから、なんとかアイディアを出してあげたいんだけど………名探偵………推理………あ、そうだわ!

「ねえカオルちゃん、新商品を作るっていうのはどう?」
「新商品?まあ名物になりそうなものなら悪くはないけど………なにか閃いたのかな?」
「ええ………せっかくだから『ミステリードーナツ』、なんていうのはどうかしら?週替わりで、味は内緒のドーナツを出すの」
「んー、『シェフの気まぐれなんとか』、みたいにかい?」
「ええそう。それでいて、普通はあり得ないような味の組み合わせをしてみたりして………ちょっと面白そうじゃない?」
「ふうむ、普通はあり得ないような味の組み合わせねえ………それでいて美味しくなきゃ意味がない………難問ではあるけど………」

 カオルちゃんは少し考え込むように腕組みをして空を見上げた。きっと今、カオルちゃんの灰色の脳細胞もフル回転しているに違いない。
 私は後押しするようにカオルちゃんに微笑みかけた。

「そこは腕の見せ所でしょ、名ドーナツ屋さん殿?」

 カオルちゃんは一瞬私の顔を見て、それから豪快に笑いだした。

「そう言われちゃったら、信頼に応えなくちゃ男がすたるってもんかな―――まあやってみるよ。ありがとう、お嬢ちゃん」

 カオルちゃんは手を振ってバンの中へと姿を消した。きっと頭に浮かんだであろう面白い組み合わせのドーナツをすぐにでも試作してみるに違いない。

164 名無しさん :2017/03/16(木) 23:27:05
 そんなカオルちゃんに心の中でエールを送り、私はちらっとカフェ近くに建てられている時計を見た―――約束の時間にはまだ余裕がある。これならこの本を読み切ってしまえそうだわ。
 もとはといえば、今日のラビリンスでの復興作業がお休みになったのが突然過ぎた。決まった休日、なんて持てるほど余裕はないし、急にお休みになる、なんてことも無くはなかったけれど、今回はなんと、今朝唐突にお休みを言い渡されてしまったのだから。
 そうなるとせっかくの休日なのに予定の組みようがなく―――それでもラブ―――桃園ラブに、ダメもとで連絡してみたら、リンクルン越しの彼女は嬉しそうに弾んだ声で言った。

「じゃあ久しぶりにせつなとデートだね!う〜、幸せゲットだよー!!」

 ラブのはしゃぎ様、そしてデートと言う言葉に、私もまた心が浮き立つのを隠せなかった。アカルンでいつでも会える、とは言うものの、最近はお互い多忙を極めていたからその機会もなかなか取れなかったし。
 とはいうものの、やはり休日という事もあり、ラブにはラブの予定があって………今日中にどうしてもミユキさんと次のダンスイベントの打ち合わせを済ませなければならないというのだ。それでもなんとか午後には終わらせて飛んでいくから!というラブと待ち合わせの時間を決めて、私は一人、ここドーナツカフェで読書にいそしんでいるという次第。
 さて、とカオルちゃんの持ってきてくれたドーナツを一口齧り、カフェオレで軽く喉の奥へと流し込むと、私はしおりの挟んであったページを開いた。
 物語はいよいよクライマックス―――老婦人が指し示した犯人とはいったい誰なのか………私の推理が当たっているならば、その人物はおそらく―――!!

「ぜづな〜〜〜!!あだしの話を聞いてよおぉ〜〜〜!!!」

 ………残念ながら、私は再び読書を再開して1900年代のイギリスへと戻る事は出来なかった。いやそれどころか、文字の一つを読む事すらも。
 何故ならば………開いた文庫本と私の間に、泣き声とともに涙でぐしゃぐしゃになった彼女―――蒼乃美希の顔が割り込んできたから、である。

165 名無しさん :2017/03/16(木) 23:29:06
2―――事件


「………うぐっ………ひっく………」

 テーブルを挟んで私の前に座った美希は、ようやく落ち着いてきた様子で、カップに入ったミルクティーをズズッと啜った。泣きじゃくったせいで目は真っ赤で瞼も腫れてるし、これじゃあモデルだって言ったって誰も信じてくれないわね………。
 完璧を自称していて、いつもなら私達の中でも大人っぽく振舞っている美希だというのに、今はそんな自信も余裕も跡形もなく消し飛んでいて、私の目に映るのは、年相応以下のちっぽけな女の子に過ぎなかった。
 名探偵でなくとも、美希のことをよく知っている人間なら、何故彼女が取り乱して泣きじゃくっていたか、大方の予想はつく。
 だからこそ、逆に聞き出しづらくもあり………。
 私はまず一度大きく深呼吸をした。大袈裟でも何でもなく、気分は今や地雷原に向けて恐る恐る一歩を踏み出そうとする兵士、といったところ。

「―――その………ブッキーと、喧嘩でも………した?」

 出来るだけさりげなく話を切り出したつもりだったけれど、ブッキー―――山吹祈里の名前を聞いた途端、美希の目が再びウルウルと潤みだした。こ、これは………まともに話を聞けるようになるまで、まだしばらく時間がかかるんじゃないかしら………。
 けど、どうやら意外にも地雷はギリギリ不発弾だったらしい。美希は大泣きするのを必死の様子で堪え、嗚咽交じりにたどたどしくも話し出した。聞き取りにくかったりする部分もあったのだが、大まかに彼女の話を整理してみるとこんな感じだ。

 ―――時を遡り、今日の午前中。場所は山吹動物病院、ブッキーの自室。

「ごめんね、美希ちゃん。本当は今日は診察お休みなんだけど……」
「いいってば。気にしないでよ、ブッキー」

 申し訳なさそうにするブッキーに続き、どことなく嬉しそうに美希は彼女の部屋へと足を踏み入れた。
 今日は二人で久しぶりにショッピングや映画を楽しむ筈で――――まあ私とラブと同じく、いわゆるデートの予定だったのだそうだ。あ………そう言われて見たら、確かに今日の美希、服装にしてもお洒落にしても気合入ってるわ………まあ今となってはそれが余計不憫さを際立たせてるんだけどね………ビシッと決めていたであろうメイクなんか涙で流れ落ちてほぼ見る影もないし。
 さて、それなのに何故揃ってブッキーの部屋に来たのかというと。

「本当にごめんなさい………突然ラッキーの調子が悪くなったって電話があったみたいで………」
「もう………別にブッキーに責任があるわけじゃないし………それにしても、大した事ないといいんだけどね、ラッキー」

 ラッキーというのは近所に住むタケシくんという少年が飼っている中型犬の名前である。この山吹動物病院がかかりつけであり、何かあるとここに連れてくるのだ。
 私も彼等とは面識はあり…………というか、それ以外にも過去には色々とあったのだが、ここでは割愛。

「うん、平気とは思うんだけど………ラッキー大きいし、お父さんが診察するにもお母さんと私が手伝わないと………」
「分かってるわよ。診察が終わったら、予定通り楽しみましょう、ね?」

 美希は落ち込み気味のブッキーの鼻の頭を子犬を慰めるように人差し指でつつくと、くるりと彼女に背を向けた。

「それにね、あたしちょっぴり嬉しいのよ。最近外で会う事が多かったから、ブッキーの部屋に来るのも久々だし………ホラ、覚えてる?小学生の頃はまるで持ち回りみたいに、お休みの日はあたし、ブッキー、それにラブの家に毎週代わる代わる集まってよく遊んだわよね」

 見渡す風景が子供の時見たものと変わってないか確かめるように、美希は窓を開けると、外の空気を大きく吸い込む、
 そう昔の事でもないのだから、そこからの景色はそれほど変わっている筈はない。けれど、多少身長が伸びたからか、幼い時より遠くまで眺められるような気がして、美希は心に懐かしさ混じりの寂しさを感じた。
 小学校を出て以来、美希はこの時期になると、三人が離れ離れになる事になった小学校の時の卒業式を思い出して、感傷的になる事があるという。

「きっと、成長して目にする世界が広がった分、逆に見えなくなったり、失くしちゃってるものもある気がするのよ。それが何なのかはうまく言えないんだけど………子供の時にしか分からなかった、何か」

 窓から吹き込む風になびく髪を軽く押さえる美希。その瞳は今や外の風景ではなく、今はもう思い出せなくなりかけている幼き頃の情景を見ていた。
 時間が経つのも忘れて、三人で日が暮れるまで夢中で遊んでいた、あの日々を。

166 名無しさん :2017/03/16(木) 23:30:41

「あ、あははは……ご、ごめんなさい、なんかしんみりしちゃった!!あ、そ、そうだ!ブッキー、何も外でデートしなくても、こうやって部屋にいるだけで、嬉しい事だってあるじゃない!ね………何か、分かるかしら?」

 美希は過去を振り切るかのように、長く美しい髪を優雅にたなびかせ、クルリと華麗な動きで背後へと振り返った。彼女の両腕はというと、まるで舞踏会の相手を待ちわびるように、ブッキーへと大きく広げられている。

「ふふっ、それはね………周りの人の目を気にしないで、あなたと思う存分キ―――………って、え、えぇ!!?」

 しかし、美希の台詞は残念な事に途中から驚きの声へと変わってしまった。何故なら、いつの間にか彼女の想い人は室内からその姿を消していたからである。
 そしてなんと、代わりに彼女の眼前に立っていた人物はといえば―――。

「うーん、難しいなあ………なぞなぞ?ヒントちょーだい。おねーちゃん!」
「たたた、タケシくん!?い、いつからそこに!?って、ていうかブッキーは!?」

 そう、そこにいたのは、昔どころか今でも絶賛小学生中の少年、ラッキーの飼い主であるところのタケシくんだったのだ。
 タケシくんはキョトンとした不思議そうな顔をして、辺りをキョロキョロと見回す美希を見つめていた。

「えっと、祈里お姉ちゃんなら、僕が呼びに来たから今病院の方に行ったよ。さっきお姉ちゃんにもそう言ってったのに………聞こえてなかったの?」
「え?い、いつの間に?………ま、まるで気が付かなかったわ………」

 どうやら追憶の世界に浸りきっていた美希には、生憎と今起こっていた出来事は何一つ届いていなかったらしい。
 あたしとした事が………と、頬を赤く染め、額に手をやり反省モードの美希。そんな彼女の服の裾を、タケシくんはせがむようにツンツンと引っ張る。

「ね〜、それよりさっきのなぞなぞの答え教えてよ〜!」
「い、いや、そ、それはその………ご、ゴホン、そ、それよりタケシくん、女の子の部屋に男の子があんまり長居するものじゃないわ。マナーってものがあるでしょ………それにホラ、君は飼い主なんだから、ラッキーの傍にいなきゃダメ!」

 決まりが悪そうに一つ咳ばらいをして、美希は腰に手をやり、タケシくんにたしなめるようにそう言った。それから、出てった出てった、と彼の背中をグイグイ押して部屋の外へと追いやる。
 バタン!と背中でドアを閉じ、美希はそのまま疲れ切ったようにズルズルとその場にへたり込む。それから大きく、はああぁぁぁぁ、と溜息………それは、さっき折角格好良く言った台詞が、ブッキーの耳に全く届いていなかったから落ち込んで………という訳ではない。
 美希は、自分の抱いた漠然とした不安を、ブッキーに話す事で打ち消したかったのだ。彼女が「見えなくなったり、失くしたりなんかしてないよ」と言ってくれたなら、それだけできっと、心は晴れたはずだから―――例えそれが嘘だと分かっていても。
 ………ひがむ訳ではないが、私から言わせたら、そんな幸せな過去を共有していたというだけで充分に羨ましいとは思うのだけど、ね

167 名無しさん :2017/03/16(木) 23:31:41

「………きっと、タケシくん位の歳ならまだ見えてたのよね………」

 ふと美希の口からそんな言葉が漏れた。
 もう少し大人になったなら、今こうして感じてることも、綺麗に忘れてしまうのかも知れない………その想像に震えた肩を、美希は両手できつく抱いた。

「………欲張りなのかしら、あたし………」

 そう呟いて何とはなしに視線を床へと落とした美希は、ブッキーの机の下、立っていたなら決して気が付かなかったであろう奥の方に、一冊の本が落ちていることに気が付いた。
 ブッキーにしては珍しいミスだ。几帳面とか潔癖症とまではいかないまでも、彼女はだらしなかったり、物を大事にしなかったりするような女の子では決してなかったから。
 美希もまたそれを不思議に思いつつも、手を伸ばしてその本を机の下から引っ張り出す。

「あ!もしかしたらこの本………」

 落ちていたのは少し大きめの動物図鑑。シマウマやライオン、象やキリンのイラストが描かれた表紙を見た美希の口からは、思わず嬉しそうな声が漏れた。ふふ、と笑みをこぼし、ぺージを何気なくパラパラと捲っていく。
 と、美希はあるページに一枚のカードが挟まれているのに気が付いた。

「何?これ………?」

 何の変哲もない、一枚の水色のメッセージカード。しかし、その表面に書かれた文字を見た瞬間、美希の全身に雷の様に衝撃が走った。
 そして―――、一拍遅れて美希の背後で、ガシャン、という陶器が割れる音。

「美希ちゃん………それ………」

 動揺したのは美希一人ではなかった。
 美希の為に持ってきたのであろう、カップに入った紅茶や皿に乗っていたケーキを手にしたトレイごと床に落として、ブッキーは蒼白な顔で呆然と立ち尽くしていた。

「あ、あの、ブッキー、こ、このカードって………そ、その………い、一体、だ、誰から―――?」
「………!!」

 美希の問い掛けに、ブッキーはハッと我に返った。
 途端に、その小さな肩がブルブルと震えだす。俯き気味のブッキーの顔は前髪で隠れているが、固く結ばれたその口と、同じく固く握りしめられたその拳から見るに、彼女がただ悲しんでるという訳ではなく、何かに傷つき、怒りを堪えてもいるのだろう、というのは美希にも察しがついた。

「…………出てって、美希ちゃん………」
「え、出てけって………ブッキー―――」
「出てってーーーーーーッ!!!」

 その理由を問いただそうとした美希だったが、いつもは大人しいブッキーからは想像も出来ない、有無を言わせぬ強い口調に逆らうことは出来なかった。
 美希に出来たのは、ノロノロと立ち上がり、彼女の横を言葉も無くただ通り抜け、そのまま山吹家を後にするという、ただそれだけだったのである。
 そして途方に暮れて町を彷徨っているうちに、たまたま立ち寄ったこのドーナツカフェで私を見つけ、駆け寄った、という。

168 名無しさん :2017/03/16(木) 23:32:38

「ぶええぇええええぇ〜〜〜っ!!」

 美希はここまで話した後、まるで許容量を超えてなお水を堰き止めていた堤防が、一気に決壊するかのようにして号泣し出し、テーブルへと突っ伏した………ここまでよく堪えたわね……え、偉いわ、美希。褒めてあげる。
 さて、と温くなってしまったカフェオレを口に運びつつ、私は考えを巡らせる。
 美希の相談を受けた以上、彼女の力になってあげたいのは山々ではあるけど………仮に私が仲裁に立った所で、事が丸く収まる確証はない。むしろ、下手に余計な首を突っ込んでは、ややこしい事になっていまう可能性の方が大きいかも。
 そうなると、この事件―――って言っていいか分からないけど―――を解決するためには何をするべきなのか。
 まあどう考えても一番重要なのはブッキーの怒りを解く事よね………だとしたら、何がブッキーの逆鱗に触れてしまったのか、それを知らなくてはいけないんだけど………その為に必要な鍵が、どう考えても不足している。

「………せめてそのメッセージカードっていうのが手元にあればね………」

 私の声に反応して、美希はグズつきながらテーブルから上体を起こすと、傍らに置いてあったバッグを漁りだし、一枚のカードを取り出した。

「え!?そ、それ、も、持ってきちゃってたの………?」
「ぐず………づい………がえじぞびれちゃって………」

 ほ、本当に偉いわ、美希!大手柄よ!頭でも撫でてあげたいくらい!
 私は美希の差し出してきた一枚のメッセージカードを指で挟み、そこに書いてある文に目を走らせる。 

「………ふぅん………成程、ね………」

 カードの表面にはシンプルに、たった一行だけ記されていた。

『あなたのことが、好き』

169 名無しさん :2017/03/16(木) 23:39:36
To Be Continued……。

170 名無しさん :2017/03/17(金) 00:29:19
すいません、165の最後の行
三人で日が暮れるまで夢中で遊んでいた、あの日々を。

三人で日が暮れるまで夢中で遊んでいた、懐かしい日々を。

に修正お願いしてよろしいでしょうか…。

171 名無しさん :2017/03/17(金) 01:03:37
>>169
おおっ! 今年はまた新たな切り口ですな。
せつな名探偵は登場するのか?
続き楽しみにお待ちしています!

172 名無しさん :2017/03/18(土) 12:59:46
>>169
貴方、ただの通りすがりじゃありませんねw もしかして昨年や一昨年も…? っと邪推は置いといて…
登場人物みんなに味があって、プロの小説家が書かれているんじゃないかと思うくらい引き込まれます…
愛らしくて謎めいてて続きがめちゃくちゃ気になるじゃないですか! 報われない美希たんに愛の手を!!

173 名無しさん :2017/03/18(土) 23:37:53
2014年の「ばとる☆ひーたー」にはビビったなぁ。明らかに毛並みが違うのが紛れ込んでて。
まあでも、プロの野球選手が草野球に飛び入りしてホームラン打つのもいいと思います。


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