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『プリキュアシリーズ』ファンの集い!2

326一六 ◆6/pMjwqUTk:2017/10/29(日) 23:12:08
 何か言いたげな目で少女を見つめていたラブが、老人の手が再びブルブルと震えているのに気付いて、もう一度彼の手に自分の手を重ね、その瞳を覗き込む。
「あたしね。小さい頃に、大好きだったおじいちゃんが亡くなったの。時間が経って忘れちゃったこともいっぱいあるけど……去年ね、夢の中でおじいちゃんにまた会えたんだ。それで少し、思い出したことがあるの。昔、おじいちゃんに教わったことを」
 サウラーが一瞬だけラブの方に目をやって、口の端を斜めに上げた。「おじいちゃんのお蔭で目が覚めた!」思い出の世界から帰って来て、そう言い放ったキュアピーチの声が、耳元で蘇る。
 ラブは、老人の目を見つめながら、ゆっくりと言葉を繋いだ。
「何か困ったことが起こったら、みんなでいい考えをたくさん集めて、頑張って考えればいいんだって。そうすれば、一番いい方法だって、きっと見つかるって」

「いい考え、か」
 老人がうなだれたまま、絞り出すように声を出す。
「メビウスが居なくなった今のラビリンスでは、確かにみんな、色々なことを考えるようになった。色々な意見を言うようになった。だが、私にそんな考えは……」
「でも、おじいさんが一番、何とかしたいって思ってるよね?」

 そこで初めて、老人が顔を上げてラブを見つめた。さっきまでの苦渋に満ちた顔でなく、驚きに目を見開いて、ラブの目を真っ直ぐに見つめる。
「何とかしたいって想いはね、すっごく大きな力になるんだよ。だからおじいさん、居なくなったりしちゃ、ダメだよ」
 ラブの言葉に、老人の瞳が微かに揺らいだ。
「何とか……なるのか?」
「もちろん!」
 そう言ってにっこりと笑って見せるラブを、老人は半ば呆然として見つめる。

 どうしてこの子は、こんな状況でこんな風に笑えるのだろう。
 どうしてこんな自分を、こんなにも力強く励ましてくれるのだろう。

 老人の手から力が抜けて、刃物をポトリと取り落とす。
 と、その時、目にもとまらぬ速さで放たれた触手が、落ちた刃物を空中高く撥ね飛ばした。
「あっ!」
 せつなが慌てて老人の手から球根を取り上げる。その頭上から降って来たのは、聞く者の背筋が凍り付くような、ノーザの高らかな笑い声だった。

「この私をここまでコケにしてくれるとは……。どうなるか思い知るがいい!」
 さっきまでとは一変、怒りに目を吊り上げたノーザが、これまでで最大の量の触手を一気に放つ。
「はぁっ!!」
 撃ち落とすのは無理と判断したサウラーとウエスターが、バリアを張ってそれを防ぐ。だが、防ぐ以外に攻撃の決め手がない。二人とも、次第にハァハァと荒い息を付き始める。
「あら、どうしたの? 随分苦しそうじゃないの。さぁ、早くその身体を渡して、もう終わりにしなさい!」
「いいや……まだだ!」
「僕たちだって……何とかしたいって思っているからね!」
 ウエスターとサウラーが歯を食いしばって、触手を防ぎ続ける。

「何とかしたいって想いが、大きな力になる……。そうね。ラブの言う通りだわ」
 二人の背中をじっと見つめてから、せつなが球根をギュッと握りしめる。
「だったら私も、古い時代を知る者として……過ちを知る者として、何が何でもここは何とかして見せる!」
 力強くそう言い放ち、せつなが老人に駆け寄る。
「おじいさん。ひとつ教えてください」
 そう言って、老人の耳元で何事かを囁くせつな。老人が頷くのを見ると、その口元が僅かに緩んだ。その目には鋭い光が――戦士の光が宿っている。

「私にも教えてくれ」
 今度は老人が、せつなに呼びかける。
「どうしてそいつを、処分しようとしないんだ? そいつを守る必要があるのか? それさえ無ければ、あいつは……最高幹部は、もう襲ってこないんじゃないのか?」
「そうとも限りません。それに……」
 そう言いかけて、ちらりとラブに視線を走らせたせつなの目が、少し照れ臭そうに揺れる。
「それにラブが言っていた通り、処分されていい存在なんて……要らない存在なんて、居ないんです。私にも、ようやくそれが分かりました」


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