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大河×竜児ラブラブ妄想スレ 新避難所

40◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/17(水) 21:11:32 ID:tPFwIwb.0
「だって私、変な子だもん! 変なことばっかりするし、変なことばっかり起きるし。今だって、なにしてんだろ、って……」
 その今、っていうのは……と竜児は一応、確かめずにいられない。今と言ってもいろいろあるのだ、竜児の右手の行き先、とか、そもそもこの、いわゆる「えっちの練習」全体、とか。その今、っていうのは……
「……発声練習、のことか?」
 大河はコクコクとうなずく。
「……竜児、だけだもん。最初から、変なことする私、受け止めてくれたの、竜児だけだもん。ずっと受け止め続けてくれたの、竜児だけだもん」
「大河……」
 まあ、たしかに最初におまえの木刀を真剣白刃取りして受け止めたけどな……なんて、竜児はつい思ってしまったけれど、もちろんそんなことは言いはしない。
 変なこと、という言葉に、大河はたくさんの意味を――たぶん、竜児に見せてくれた大河のすべてを込めて使っていた。だから、受け止める、という言葉もまた、そういう意味で――竜児が大河にしてあげられたすべてという意味で、使っているのだろう。それがわかるから、竜児は黙って大河の続く言葉を待つ。
「別に私のこと、好きじゃないのに。たいした得もないのに。それなのに竜児は私のこと、最初からぜんぶ受け止めてくれた……ずっと……そんなの、そんなの、って……」
 好きになるに決まってるじゃない……大河の最後の言葉は消え入りそうな声。竜児の首筋に額をくっつけたまま、大河はきっと、表情を隠そうとしている。
「大河……」
「竜児、って、ひどいよね」
 ここに来てなんと真逆の評価であった。
「ひ、ひどい?」
「うん、ひどい。竜児はひどいの。ひどい顔してる……」
 ここに来て顔か――――!? さっきなんか褒めてくれてたのに、と竜児は愕然。罵られるのはやっぱりこの目か? 目を狙うのか?!
 しかし大河が責めてきたことは、竜児の思いもよらないことだった。
「ひどい顔して、ひどい女たらし。天然ジゴロ、大橋高校のドンファン、歌舞伎町のホストも真っ青。他に……本命、いるのに、傍にいるってだけで、私を誘惑しまくって。しかもその気もないの。私のために恥かいて、私のために怪我して、嘘ついて、笑ってくれて、闘ってくれて、逃げてくれて……美味しいチャーハンつくってくれて、優しく慰めてくれて、いつも一緒にいてくれて……私、もう、きっと、その時、落ちてた……」
「大河……」
「私、もう落ちてるのに……竜児ったら、ずっと傍にいる、なんて、将来のことまで……追い撃ちかけるんだもん。虎と竜は並び立つものだ、なんて、わけわかんないこと……運命みたいなこと、かっこいいこと、言っちゃって。……名前、呼んでくれたの。大河、って……だから、嫌いだった名前まで、好きになっちゃう……」
 大河は竜児の首筋に、猫みたいに頭をこすりつける。
「でも、それなのに。竜児が好きなひとは私じゃないの」
 私じゃなかったの……苦しげに声をくぐもらせる。大河の肩が震えだす。呻いて、呻いて、竜児の胸元に落ちる大河の涙は、蝋のように熱かった。
 竜児は慌てる。心にも甘い告白だと感じて聴いていた俺はなんて馬鹿なんだと思う。馬鹿で、犬で、ひどくて、ひどい。大河の罵るとおりだった。反省に似た自虐の淵が竜児をさらおうとする。竜児をさらおうとするのは、もう一人の竜児。ではそいつは何から俺を奪い去ろうとしている? 見失う前にその名を叫べ!
「大河」
 そうだ、大河からだ。古い蛇のようなもう一人の俺は、いつもこんな時に大河から俺を奪おうとする。大河のことを思わせるようなふりをして自分のことを思わせる。大河を大事にさせるふりをして自分を大事にさせる。そうしてそんな時こそ俺が――ほかでもない俺が大河を傷つける。


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