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リリカルなのはクロスSS木枯らしスレ2

47聖王のおまる(増量版)-28 ◆b0oj18fZ9A:2013/12/30(月) 22:27:02 ID:.nepKEUE
「……ドゥーエ姉」

「…あまり経ってないのに、久しく思えるわ、セイン」

 耕耘機を止め、セインの方向を向く彼女。
 ドゥーエは、そこに居た。以前とは全く違った立場と姿で。

 短期間で、まるで何年間も使い古したように汚れたツナギ服と、草の日除け帽子。
 彼女の印象とはまったく合わない装いを、彼女は着ている。

「…みじめな姿でしょう?
 誰も想定できなかった“あんな出来事”で、
 あれだけ仕組んできた一切が潰れ、全てを諦めて放り捨てて、この有様……」

 荒れてしまったこの土地を、再び緑化しなければならないという懲役。
 いつ終わるか、わからない。
 しかしこの過酷な義務を選んだのは、ドゥーエ本人。

「…あのさぁ、ドゥーエ姉、その…確かに“こやし”は土地にあるんだろうけど、
 そう苗植えたり種蒔いたりしたって実らないんじゃ――」

「実るわ」

 …スカリエッティの研究所から確保・救出された一部以外、
 ほぼ全ての“名も無き妹達”は研究所ごと、この地の遥か深淵へと沈んでしまった。
 巨大な物体の衝突後、時間経過による地盤の崩壊が原因である。

「ここの土地に…生まれないまま散った、名も無い妹達が眠っている」

 彼女はまた、耕耘機のエンジンを動かし始めた。
 人とは異なる体ながら、人と同じ哀しみを知った彼女。
 赤い夕日に照らされながら土を耕す彼女の横顔は、寂しげだった。

 その姿を見るセインは「どこの世紀末救世主だよ」と言いかけたが、口に出すことはなかった。

 
 人として、新たな道が始まった者。
 心を蝕まれ、闇の中で彷徨っている者。
 寂れた道を選び、過去を清算しようとする者。

 しかし、戦闘機人のうちの1体――クアットロ――のみ、行方は解らない。
 彼女はどこへ逃げたのか。いや、原型も残らないほど大破して死亡したのか。
 どうなったのかは不明である。真相はもはや闇の中へ。悪臭の闇の中へ……―――

 
 ―――と、こんなわけで、機動六課の初めての大事件処理体験は、
  クソミソな結果に終わったのでした…

 
〜 〜 〜 〜 〜

 
「―――坊や、どうしても自分で歩いて行くのかい?
 もう長く歩けるような歳でもないんだろう?」

 広い草原の一箇所に、老いた女性ひとり、
 そして、荷を背負ったみずぼらしい男もひとり。

「あの時…泣いて、泣くだけ泣いて……
 何も要らなくなり……何やら、肩が軽くなりました…」

「そう………。
 それで、行き先はどこへ?」

「とりあえず……東へ」

「そして……行けるだけ、行けたら……
 野垂れ死に、いたします……」

 男の顔は、終始おだやかだった。

 ―――人は何かを捨てて前へ進む。
 この無限大の宇宙、数多の人々の名の中に、レジアス・ゲイズという名があった。
 そして、かつてその名を持っていた人の、

    なか゛い  たひ゛か゛  はし゛まる  ・ ・


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