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リリカルなのはクロスSS木枯らしスレ2

45聖王のおまる(増量版)-26 ◆b0oj18fZ9A:2013/12/30(月) 22:25:15 ID:.nepKEUE
 ―――広域時空犯罪者 ジェイル・スカリエッティ。

 大救出劇の末、見るに堪えない壮絶な表情で固まっていた状態で発見され、
 医療設備の揃ったヘリでの集中治療の末、彼は一命を取り留めた。

 その末………

「あのね……ぼく、おふねにのったの…」

 スカリエッティはウーノの姿を少し見た後、急に語り始めた。
 『ジェイル・スカリエッティ』らしからぬ、鋭さが皆無の発言。表情も、非常に緩い。
 それも、まるで幼い少年のような――

「それでね、くさいの、いっぱいきて…こわかったの。
 でもね…おとなのひとが、たすけてくれたの」

 心が、壊れていた。
 そこに『無限の欲望』は、もういない。

「パパと、ママはね……いないんだ」

 探求することで、求め続けることで、絶えの無かった狂気。
 彼の心を支え続けていたのは、狂気だったのかもしれない。

「いないから…パパとママのおかお、わからないの…」

 その狂気を上回る何かが、彼の記憶を、自我を、壊してしまったのか。

 ――コト。

「ぼく…つみき、おもしろくて、だいすき」

 彼は、ベッドの隣にある小さな机で、積み木を重ねて静かに遊んでいた。
 この病棟に移されてから、暇な時、寂しい時、ずっと。

「でもね…パパもママも、いないから、ずっとひとりでやってるの…」

 
「ジェイル、くん…」

 無意識だった。
 ウーノは無意識に体を寄せて、両の腕で、彼を優しく抱いていた。

「なあに」

「一人で…歩ける、ように…っ…なったら……
 お姉さんと…っ…積み木遊び…しましょう、ね……!」

「…ほんと?ほんとに!?」

「うん…っ…うん……好きなだけ…… 山ほど…っ…積ん、で…あげる…から…!」

 泣いた。
 ウーノは、泣いた。
 もう『自分の知るドクター』ではなくなった、少年の心しかない男性を前に、彼女は泣いた。

 あの時現れた「アゴの長い男」に対する憎悪と復讐心などかなぐり捨てて、
 今はただ、現在のスカリエッティの心を、支えてあげようと想っていた。

 本来の彼が、私たちの生みの親ならば、以前の心を失ってしまっても、私たちの家族なら、
 今度は私が、家族として、支えてあげよう。
 それだけでいい。
 今、私が存在する理由は、それだけでいい―――


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