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ルナマリアとアスランってやったの? 【SS保管庫】

1名無しさん:2005/06/05(日) 18:39:23
ルナマリアとアスランってやったの? 【隠れ家】
ttp://aa5.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1114440863/

35719-2 3:2005/08/18(木) 11:05:12
506 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:42:53 ID:???

『吹っ飛ばしてやる!』

 スティングが撤退した今、ヘブンズベースを守護するデストロイは1機のみ。
シンはデスティニーの装備をMMI-714アロンダイトからMMI-X340パルマ・フィオキーナ…
つまりは素手による格闘戦主体に変更し、戦いを挑んでいる。
 陽電子リフレクターのわずかな隙を狙い、シャイニングフィンガーを叩きつけるのだ!



“このターンエックスすごいよ! さすがは∀のお兄さんッ!!!”



『wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! な、何だよ…またかよっ!?』

 またシンの魂に誰かの声が響いた。
シャイニングフィンガーを撃とうとした瞬間、おぼろげながら何かが見えた気がする。
アスランのグフを破壊しようとした時同様に、これもシンのニュータイプ感応能力に
デスティニーが反応したからなのだろうか…いや、そうも言っていられない。
 今は戦いに集中しなければ。

『だあぁぁぁああぁぁあぁぁああぁあぁあぁ!!!』
『う、うわぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――――』

 調子近距離からのシャイニングフィンガーにより
さすがのデストロイの強固な装甲も溶解、そのままコクピットごとパイロットは消し飛んだ。
 操者を失った黒い巨人はゆっくりと、地面へとその身を落としてゆく…。

 ズゥゥゥン……。

「…終わったの?」
『気を抜くな、ルナマリア。
 ロゴス達を捕らえない限り戦いは終わらない』
『wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! …ちょっと待て、何か来るぞ!』

 格納庫らしき巨大な扉の向こうから異様な気配がする。
ざらついた様な、落ち着かないような、ニュータイプならではの感覚。
 恐ろしい敵が、向こうに居る!

35819-2 4:2005/08/18(木) 11:05:33
507 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:44:06 ID:???

 ザンッ!!!

『!?』
「な、何なの!?」

 格納庫のシャッターに突如、紅い2本線が走った。
高熱で焼き切れた様に赤熱したその2本の線に魅入る間もなく、
シャッターがまるで最初からそこに存在していなかったかのように綺麗に崩れ堕ちる…。

『待たせたなぁ…このソードカオスで相手してやるぜ!』

 そこに立っていたのはZGMF-X24S・カオス。
ただし、シンらがこれまで戦ってきた機体とは明らかに趣が違っていた。
そもそもカオスはベルリンでの戦いでオーブのムラサメに撃墜されたはずなのだ…では、あれは?

『来いよ、糞共……斬り刻んでやらァ!!!』

 背部のMMI-710・エクスカリバーを引き抜き、2刀の構えでカオスが臨む。
グリーンからホワイトに変更されたカラーリングもさながら、
かのサンドロックカスタムを彷彿とさせる巨大な対ビームコーティング加工のマントが印象的。
 だが何よりも白骨の如き白い機体色が、否応無しにも不気味さを引き立てるのだ。 

「あのカオス…まるで死神みたい…!」
『2年程前にソードカラミティと呼ばれる
 接近戦使用のカラミティの存在が3機、確認されているが…成る程』
『相手が何だろうと、敵は敵だ!』

 かつてビクトリア基地奪還作戦で活躍した連合のMS、
ソードカラミティを思い起こさせる巨大な2刀…どうやらこのソードカオスが
ヘブンズベース最後の守護者であるのは間違いないらしい。

「…あいつは私がやる!」
『ハァ? 何馬鹿なコト言ってんだ、ルナじゃ返り討ちがオチだっての!』
『俺達に任せてルナマリアは退け、接近戦に不慣れなお前では分が悪い』
「……やってみないと、分からないでしょうがっ!」

35919-2 5:2005/08/18(木) 11:06:08
508 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:45:24 ID:???

「ミネルバ、メイリン!
 ソードシルエット射出、急いで!」
『は、はいっ!』

 確かにブラストインパルスではあの2刀流相手ではキツイ。
ビームジャベリンで戦えないこともないのだが、あのエクスカリバーとでは出力が
違いすぎてお話にならない…目には目を、エクスカリバーにはエクスカリバーを、だ。

「換装完了!」

 ブラストシルエットからソードシルエットへ。
ソードカオス同様にエクスカリバーを構え、双刃を雄雄しく振り回すソードインパルス。
今までガナーザクウォーリアやズゴック、ゲルググを乗り継いで来たルナマリアが
果たして接近戦でどこまで肉薄できるのか…赤服の腕の見せ所であった。

『タイマンか、面白ェ』
「いっつも人様のMSばっかり真似しちゃって…こんの泥棒猫!」

 ソードインパルスとソードカオス、合計で4本の対艦刀エクスカリバー。
1撃でも食らってしまえば大ダメージは必至、相手の攻撃を先の先まで読んで
わずかな乱れの隙をついて斬り裂いた方の勝ちとなる…それは単純な様で、とても難しい。

 ヴゥン…ヴゥン!

『死ねェ!』
「たりゃあぁぁぁぁ!!!」

 激突する2体、そして2刀。
カオスの使用しているエクスカリバーは連合仕様なのを強調するためか、
ビーム色が本家ソードインパルスのエクスカリバーと異なり、ブルーで統一されている。
恐らくはビーム発生に仕様している出力調整エネルギーに差異があるのだろう。
 赤と青、4本のビーム刃が火花を散らし、ヘブンズベースを揺るがす。

『そらそらそらぁ!』
「くっ…!」

 スティング・オークレーはナチュラルでありながら空間認識能力に優れている。
彼がカオスのEQFU-5X・機動兵装ポッド(MA-81R ビーム突撃砲)を扱えたのはそのためだ。
 一定の空間内にだけ限定されるが、彼はその空間における事象の全てを支配する!

36019-2 6:2005/08/18(木) 11:06:30
509 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:46:40 ID:???

「コイツ、メチャクチャ強い!」

 さしものルナマリアも恐怖を覚えた。
一旦距離をとり、すかさずRQM60・フラッシュエッジ、ビームブーメランを起動。
 ソードカオス目掛けて2本を投げつけるが…。

『ハッ、効かねぇよ!』

 キュィィィィン!!! カンッ! カンッ!

「な、何て奴なの…」

 どうやらソードカオスの手首は360℃回転させることが可能らしく
手首ごとエクスカリバーを高速回転させ、容易にフラッシュエッジを叩き落してしまう。
つまりあのソードカオスは攻守、どちらも兼ね備えているということだ。
 あの回転する対艦刀が、まるで巨大なビームギロチンにさえ見える…!

「でもお互いに2刀流であることに変わりはないわよ…!」
『はっ、まさか2本だけとか思ってねェよな?』

 ゙シャッ、ガシャッ、ヴゥン、ヴゥン!!!

「嘘…隠し腕っ!? 4刀流!?」

 ソードカオスが対ビームコーティングマントを
脱ぎ捨てたかと思うと、何と背中から更に2本の腕(正確にはマニュピレーター)が生えた。
 まるでジ・Oやアルトロン、ヴァサーゴ…長さは本当の腕の2倍近くあって作業の邪魔をしない。
その2本の腕がカオスの腰に装着されている2本のMA-M941・ヴァジュラビームサーベルを
引き抜き、起動させる…つまりこれで4刀流、4本の腕に4本の刀が宿ったことになる。

『あひゃっ、あひゃひゃっ!!!』
「きゃあぁぁぁっ!!!」

 不規則に蠢く4本の腕。
上段と思えば下段、下段と思えば上段…反応速度に違いがあり過ぎる。
ニュータイプのシンならばきっと相手の先を読んで攻撃を受けつつ反撃するのだろうが、 
ルナマリアはそうもいかない…まさかインパルスでの初陣がこんな強敵相手なんて。
 しかし、絶対にシンとレイに助けを求めたりはしたくなかった。

「(アスラン、アスランならこんな敵相手に…どうしますか…!?)」

36119-2 7:2005/08/18(木) 11:06:50
510 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/14(木) 13:49:04 ID:???
特にムシャクシャはしていなかった
本編で全然出番と見せ場の無かった
オクレ兄さんとカオスに最期の見せ場を与えたかった
グリーバス将軍に似ている気もするが反省はしていない

36220-1 1:2005/08/18(木) 11:07:30
58 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:37:56 ID:???

『ひゃあっ! あひゃっ、あひゃひゃ!!!』
「くぅぅ…!」

 次々と襲い来る斬撃にインパルスは防戦一方。
こちらは2本腕なのに対して相手は4本腕、とてもじゃないが攻撃を仕掛ける暇さえ無い。
運良く攻撃を仕掛けるチャンスが生じても4本腕のうちのどれか2本がそれを遮り、
逆にカウンターを返されるので下手に動くことが出来ない…どうすればいい?


***


『あーもう、何やってんだよ、ルナの奴…』
『シン、お前には奴の動きが見えているのか?』
『ん、大体』
『ならば何故ルナマリアに助け舟を出さない?
 このままでは殺されるのは時間の問題だと思うのだが』
『必要ないね、あいつが自分1人で相手するって言ったんだし。
 勝手にやらせときゃいい、それにまだ敵は回りにウヨウヨいんだぞ』

 こうやって話している間にも連合のウィンダムやジムは襲い掛かってくる。
ヘブンズベース周辺ではザク、グフ、ズゴック、ゴックら量産機が健闘。
ルナマリアを残していったん上空へ離脱したシンとレイも
デスティニーとレジェンドで敵機に応戦、敵軍の一掃を謀ろうとするも、とにかく数が多い。

『それに、死んだら死んだで議長が新しい赤を補充してくれるだろ、多分』
『……冷たいな』

 
***


『オラオラ、どうしたガンダムちゃんよォ!?』 
「(まずっ、もうエネルギー切れが近い…!)」

 デュートリオンビームで補充しようにもこの状況では無理がある。
つまりはフェイズシフトダウンする前にソードカオスを撃破せねばならない。
 しかし、どうすれば勝てる? 4刀流の相手など、前代未聞だ。

36320-1 2:2005/08/18(木) 11:08:03
59 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:38:54 ID:???

「(…腕の1本くらい犠牲にしなきゃ、コイツは!)」

 ルナマリアは勝つことを優先し、思考を切り替える。
防戦一方から反撃に移るための切っ掛けとして、ソードインパルスの腕を犠牲にするしかない。
間違えばかなりのダメージを蒙るだろうし、失敗は絶対に許されない。
 そして確実に相手を仕留める……つまりは、殺すために。



 ゚・ *:.。. * ゚
      +゚
 。 .:゚* +     
     ゚      
    ゚  /ヾー、
       r!: : `、ヽ  
      l:l::..: :.|i: 〉
      ヾ;::::..:lシ′      
         `ー┘  



「うあぁぁあああぁぁぁぁああぁぁぁっ!!!」
『馬鹿が、俺の間合いに入ったが最期だぜ!』

 2本のエクスカリバーを結合、
アンビデクストラスフォームとして左腕で振るうソードインパルス。
 だがソードカオスはフラッシュエッジを退けた時と同じ様に
エクスカリバーを両腕と共に高速回転させ、防御体勢に臨む…突っ込めばミンチだ。
 だが、ルナは退かない……!

 ギュィィィィィィィ!!!!!

『コッ、コイツッ!!! 自分から腕を…!?』

 ソードカオスの懐に飛び込む瞬間にアンビデクストラスフォームを
空中に放り投げ、素手で高速回転する敵のビームにパンチを見舞うソードインパルス。
 当然ミキサーに放り込まれた挽肉の如く分解、爆散する左腕。
だが自殺行為的な敵の行動にペースを乱されたのか、一瞬だけ
ソードカオスの動きに乱れがあったのをルナマリアは見逃さなかった。

36420-1 3:2005/08/18(木) 11:08:25
60 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:39:50 ID:???

「でぇええぇぇぇえぇぇええぇいぃっ!!!」

 ズギュゥ…

『かっ…ぐぉ…っ!?』

 間合いを詰め、予め引き抜いて右手で帯刀していた
フォールディングレイザー・対装甲ナイフをすかさず敵コクピットを目掛けて突き刺す!
フェイズシフト装甲をも貫く巨大ナイフはソードカオスの心臓部とも言える
コクピットを操者のスティングごと深々と貫き、突き刺さったまま紅蓮の火花を撒き散らすのだ。

『げっ、げぇっ、あぉ…っ!』

 ナイフに下半身を削り取られたスティングは堪らない。
声にならない意味不明な声をあげながらバタバタと首と手を上下させ、
モニターで紅白の巨人が迫るのを見る…視界が定まらない、目の前の世界が壊れてゆく。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 よろめくソードカオスへ追撃とばかりに
放り投げたアンビデクストラスフォームを右手で再度キャッチし、
やや不安定ながらも剣に重心を置いてそのまま勢いよく振り下ろす。
1撃目で両腕、2撃目で隠し腕2本、3撃目で両脚を切り落とし、4撃目でコクピット。
 両手足を失い、仰向けとなったソードカオスへの最後の一撃が決まった。
突き刺さった巨大な剣は墓標、連合の生み出した最後のエクステンデッドは此処で息絶えた。

「はぁっ、はぁっ、はっ…くっ…!」


*** 


『終わったか』
『ま、アイツにしちゃ頑張った方なんじゃないの?』
『ヘブンズベース周辺も粗方の征圧が完了したそうだ…いよいよ、ロゴスとご対面だな』
『レイ…ロゴスを倒せば、戦争は終わるんだよな?』
『無論だ。そして議長が理想とされる新世界――――黄金時代が幕を開ける』
『黄金時代…』

36520-1 4:2005/08/18(木) 11:08:50
61 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:40:41 ID:???

***

「気持ち悪…」

 結局あれだけの大立ち回りを演じさせられたにも関わらず、
ロード・ジブリール含むロゴス構成員はヘブンズベースには居なかった。
 いえ、正確にはもう居なかった…というべきかしら。
制圧完了後、ザフトの潜入班が見つけたのは放置された黒いMSとその他量産機のみ。
人っ子一人居なかったんだって…多分、あのどさくさに紛れて何処かに逃げたっていうのが
大方の見解みたいだけど…じゃあ何のために戦ったのよ、私達…。

「頭痛い…あー、すっかり忘れてた」

 戦闘後、ミネルバに帰艦したシン、レイ、そして私は
デュランダル議長の手厚い出迎えを受けた…ロゴスを捕らえることはできなかったけど、
よく頑張ってくれた…って。悪い気はしかなったけど、そのほとんどの言葉はシンに向けてのもの。
 …あの4本腕の奴を倒したのは、私なのに。

「薬、まだあったかな…」

 ここ最近ずっとイライラしていたのは
アスランが脱走してシンに殺されたことや、シンに対しての遣る瀬無い気持ちが
原因だと思っていたけど、それは私の見当違いだった…どうってことはない、ただの生理。
 前に来たのはいつだったかな…とにかく、気分が悪かった。

「お姉ちゃん、ご飯食べに行こ」
「ん…気分悪いからパス…」
「え…どっか悪いの…?」
「せーり、つきのもの、女の子の日。
 ここんとこ忙しかったから、忘れてたのよ…今日は疲れてるし、もう寝るわ」

 メイリンには悪いけど、今日は早めに休みたかった。
一応は戦闘前に自身のチェックはしてたけど、生理のことまで頭回らなかったし…。
 駄目だ、気分最悪。ここ数日の疲れがどっと押し寄せた感じ。

「あ…ごめん…気づかなくて…」
「いいわよ…ほら、行っといで」
「う、うん…」

36620-1 5:2005/08/18(木) 11:09:11
62 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:41:24 ID:???

「(…何でこんなことになっちゃったんだろ)」

 今、私の周りを取り巻く状況は最悪だった。
シンはデュランダル議長を妄信して、彼の言いなりになってしまっている。
ついこの間までは弟みたいに思っていたはずなのに、今では世界で一番憎い相手。
レイは最初から敵も味方も無いと思う。彼にとっては議長が全てだろうし。
 シンといつも一緒に居るのも、多分議長の命令なんだと思う。

「(アスランは…)」

 私が愛した人、アスラン・ザラは死んだ。
シン・アスカに殺されてしまった…こんなことを考えても、今更どうしようもないけど。
最期の瞬間、アスランは何を想ったのだろう…私? それとも、他の誰か? お母さん?
 できれば、私であって欲しいと思うのは傲慢なのかな…。

「(会いたい…アスランに…)」

 でももう彼はいない、この世界の何処にも。
私はガンガン響く頭を抑えながら、本棚のアルバムに手を伸ばす。
ディオキアで初めて彼とデートした時、地元の観光名所で撮ってもらった写真があったはず。
 アスランが妙に恥ずかしがっていたのをよく覚えてる。

「(…あはっ、どうしてこんなに緊張してたのかなぁ)」

 彼の顔には照れがあった。
彼からプレゼントしてもらったワンピースを着た私が
身体を密着させて写っているのが原因なんだけど、何もそこまで照れることはないと思った。
 寧ろ、喜ぶべきじゃないの? 失礼しちゃうなぁ、隊長は…。

「(生きてるうちに…文句、言っておけばよかった…)」

 何を言ってもあの人は帰って来ない。
遠く離れても、私の近くに必ずあの人は居る…そう信じたい。
けれど、きっと無理。私はアスランが思ってる程、強くない。
 寂しい。もう彼に触れることすらできないのが、とても寂しかった。

「隊…長…っ、アスラン…ッ!」

 本当はもう眠りたい。一刻も早く、気分を良くしたかった。
だけどアスランのことを考えると眠ることさえ出来ない…心が彼で埋め尽くされる。
 私は生理中、情緒不安定になることは滅多にない。
でも今日は違う…今まで溜めておいたものを全部吐き出す様にして、私は暗い部屋の中で泣いた。

36720-1 6:2005/08/18(木) 11:09:36
63 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:42:19 ID:???

***


沈んでゆく。
深い処まで。
深淵へと堕ちてゆく。
暗い場所、暗黒の巣食う世界。
俺は何処までも暗い世界を堕ち続ける。

「…ルナ?」

 一瞬だけ光が見えた気がした。
もう一度確かめようと瞬きした時、それはもう消え失せていたけれど。
 だけど、俺は確かに闇の中で光を見た。

「ルナ…ルナマリアッ!」


***


「気がついた?」
「…キラ?」

 目が覚めた時、アスランはアークエンジェルに居た。
いや、本来はこの艦と合流するつもりだったのだから好都合と言えば好都合なのだが
どうにも都合が良過ぎて、まるで誰かに自分の運命を操られている様な錯覚さえ覚える。

「キサカさんがね、海の中でアスランを見つけてここまで…」
「海…で…」
「カガリなんかずっと泣いてて…アスラン?」
「…何日、寝ていた?」
「今日で3日目だよ」

 そんなに寝ていたとは。
海で見つかった、ということは運良くセーフティシャッターが機能したのか。
いや、あの時シンはシャイニングフィンガーで間違いなく自分に止めを刺そうとしたはず。
 それがコクピットに直撃したのに…何故、生きていられる?

36820-1 7:2005/08/18(木) 11:09:58
64 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:43:29 ID:???

「…悪いが」
「うん?」
「1人にしてくれないか…俺はまだ、お前を…許したワケじゃない…」
「…」

 キラ・ヤマトには借りがある。
ハイネ・ヴェステンフルスが死んだのもフリーダムが戦闘に介入したせいだし、
オーブ軍との戦いの最中、セイバーを切り刻まれたことだって忘れちゃうない…それに。

「俺は…忘れていない…からな…」
「え?」
「俺を守ろうとした…赤いザクを…お前が…斬ったことだ…!」
「アスラン…」

 確執は深い。
キラやラクス、カガリが何を考えているかは知らないが
今の彼らのやっていることはただのテロリズムに他ならない。
だが蛇の道は蛇、この世界の情勢を把握しているのも彼ら。
 不本意だがアークエンジェルと合流すると決めた時から
こうなることはある程度、覚悟していたこと…シンがフリーダムを倒した時は
かなり取り乱してしまったが、核爆発だろうが超新星爆発だろうが、そんなことでキラは殺せない。

「何かあったら、そこのボタンを押して」
「…」
「それと」
「…なんだ」
「眠りながらずっと言ってたね、ルナマリアって……誰のこと?」 
「お前には、関係ない…」
「…そう」 

 キラは病室から去り、やっと自分の状態を把握できる。
点滴やら包帯が所々に巻かれているのを見る限り、重症らしい。
いや、MSの爆発に巻き込まれて五体満足でいられること事態、奇跡に近い。
悪運が強い…と言えばそれまでだが、彼女が帰りを待つ限り、死ぬことはできない。

「ルナ…」

 彼女との運命が再び交錯するその日まで、今はまだ眠り続けよう…。

36920-1 8:2005/08/18(木) 11:10:20
65 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/15(金) 23:45:28 ID:???
変更点

・スティング、ナイフ刺し
→コクピット表面ギリギリを破壊、中にバルカン乱れ撃ち

・ルナ、写真見ながらデート回想
→写真見ながら凸思い出しつつザラニー


こんな感じ
スティング、ご苦労さんでした…

37020-2 1:2005/08/18(木) 11:11:30
223 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:13:00 ID:???
アスルナじゃないけどシン暗黒面編を投下
議長とシンのお話ね

37120-2 2:2005/08/18(木) 11:11:51
225 名前:エピソード3 シンの復讐[sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:13:54 ID:???

「う〜、最悪…」

 生理二日目、相変わらず私の気分は最悪。
ミーティングも体調不良を理由に欠席、結果昨夜から今日の夜まですっと寝込む。
 が、さすがに食欲不振でもお腹は減る。
食堂で何か軽いものでも作ってもらおうと、私はいそいそと赤に着替えた…。


***


「お姉ちゃん?」
「あら」

 食堂へ向かう途中、メイリンに会う。
ちょうど食事が終わって部屋に戻ろうとしていたらしい。
寝込んでいる間に食事に誘われた気もするけど、正直覚えてない。

「もう夕ご飯、済んだの?」
「うん。ヴィーノ達と食べたよ」
「? シンとレイは?」
「ん、レイは知らない。
 でもシンなら『議長に食事、誘われてるから』って外出してるけど」
「食事? 議長と?」

 別に有り得ない話じゃない。
最近のシンは議長のお気に入りだし、シンのためにデスティニーまで作らせたくらいだ。
ここのところのシンの活躍はどれをとっても目覚しいものがある。
 ニュータイプに覚醒にてから、彼はまるで別人になってしまったみたい…。

「お姉ちゃん、気分良いの?」
「コンディションレッド…軽めのもの食べたら、すぐ戻るから」
「分かった、それじゃね」

 私は妹と別れ、ミネルバの食堂を目指す。
それにしても…シンは議長に心酔し過ぎな気がする。
狂信的、と言うべきかもしれないけど、議長の言葉をあそこまで妄信してもいいのかしら?
 …何か、嫌な予感がする。

37220-2 3:2005/08/18(木) 11:12:13
226 名前:エピソード3 シンの復讐 [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:15:00 ID:???


***


「こうして2人きりで話をするのは、これで3度目だね」
「は、はい…」
「気を楽にしてくれたまえ。
 この席では上司と部下ではなく、友人として君と接したいと思っているのだから」
「ゆ、友人だなんて…そんな」

 シン・アスカはギルバート・デュランダルと席を共にしていた。
一通りの食事を終え、彼の誘いに乗ってバルコニーに出、共に椅子に座り星を眺める。
 食事中は気にしない様にしていたのだが、やはりどうしてもマンツーマンだと緊張は拭えない。

「見たまえ、シン。宇宙(そら)はこんなにも美しい」
「あ、はい…」
「普段プラントから眺める夜空も良いが
 やはり母なる地球から眺める星空は、また違った趣があるとは思わないかね?」
「はい…」

 確かに、今まで意識していなかったが宇宙は美しい。
星の輝き一つ一つに生命の息吹すら感じられる…そんな気がする。
戦時下、星を見る余裕など全く無かっただけにこういう余裕を持てるのは気分が良い。

「こんな美しい夜空を見ていると…まるで自分が世界の、
 宇宙の支配者になった様な気分になりはしないかな、シン?」
「宇宙の支配者、ですか…いえ、俺は別に…」
「はは、笑ってくれて構わんよ。
 私も年甲斐もなく冗談が過ぎた様だ…この星空を見ているとそんな気になってしまってね」

 ギルバート・デュランダルはなかなかにユーモアのある人物だとシンは知る。
レイの育ての親なのでレイ同様に物静かな人物とばかり思っていたが、
実際はそうではなく優しく、温和で物腰の柔らかい、父の様な人間に思える。

「だが、時に支配者に立ち向かわねばならない時もある。
 今の我々とロゴスの関係がまさにそれだ…人の命を食い物にする者を、
 私は絶対に許すことはできない。人一人の命は、決して金で換算することなどできないのだから」
「…よく分かる話です」

37320-2 4:2005/08/18(木) 11:12:38
227 名前:エピソード3 シンの復讐 [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:15:47 ID:???

「君を食事の席に誘ったのは他でもない。
 私個人から君に頼みたいことがあったからなのだが…聞いてくれるかな?」
「議長が…お…私に?」
「うむ」

 それまで星を眺めていたデュランダルは姿勢をそのままに、顔をシンの方に向ける。
バルコニーの電灯と星明かりのせいか、何故だか彼がとても神聖な存在の様にも思えた。
 一体、彼個人の頼み…とは何なのか。

「シン、君にミネルバにおける私の私的代理人になってほしい」
「えっ…!?」
「ポジションとしてはフェイスの座を用意している。
 レイも君のサポート役として同じく、フェイスに任命するつもりだがね。
 ハイネ、そしてアスランが死んだ今、ミネルバに残されたフェイスはタリアただ1人。
 彼女も歴戦の兵だが、やはりどうにも……できれば、君が彼女を支えてやってほしい」
「で、ですが…俺なんかじゃ…」

 思わず一人称が俺に戻る…が、フェイスは栄誉の証だ。
エースパイロットの称号を得た者なら、誰でも一度はその更に上の
フェイスとして君臨することを願うもの。しかし、これまでのシンはそれを望まなかった。
 ただ守るために戦いたい、とだけ思っていた。
だが今は違う…思いだけでは叶わないこともあると痛感した。
 だから力が欲しかった…デスティニーという力を得、また更なる力が欲しい、と。

「残念なことに、アスランではフェイスの重荷に耐えられなかった様だ。
 新型のセイバーを渡すには渡したが、目立った活躍もなくフリーダムに破壊され、
 彼自身もザフトから離脱しようとして結果、君に討たれた…全く、失望させられたよ」
「…」
「彼には信念が無かったのだ。
 フェイスには『信念』や『信仰』という意味がある様に、
 己の信念を持たぬ者にはフェイスの名など、ただの飾り…愚か者にはそれが分からんのだよ」

 確かに、シンから見てもアスラン・ザラという男は理解しがたい存在だった。
突然フェイスとしてミネルバに就任し、自分達を率いる隊長になったかと思えば
敵であるはずのフリーダムやアークエンジェルを擁護する発言を連発する始末。
 おまけに、これまで3度も殴られた経験がある。
彼は軍人として失格だった…己の部下よりも、敵の心配をする人間なのだから。
 だから憎かった。憎かったから殺した。輝く拳、シャイニングフィンガーで。

37420-2 5:2005/08/18(木) 11:13:04
228 名前:エピソード3 シンの復讐 [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:16:39 ID:???

「俺は…あんな奴とは違います」
「……」
「俺は議長の、デュランダル議長の理想を実現するために戦います!
 中途半端な覚悟で戦ってたアイツとは違う…俺は、俺は最高議長のために…!」
「…ありがとう、シン。その言葉が聞けただけでも満足だ」

 シンの熱意を理解したのか、デュランダルは薄く笑った。
そう、シンとアスランは違う。シンは確固たる意志でこれまで戦いに臨んで来た。
 いつだってそうだった。遊びで戦争をやっているのではないと。

「それにいつも言っていることだが、君程に才能豊かな兵士を私は知らない。。
 民間出身というハンデがありながら、僅か2年でここまで成長したのだからね」
「それは…」
「更にはニュータイプとしての力も備わっている。
 強くなりたいと思う気持ちを忘れなければ…やがては無敵の存在となるだろう。
 かのシャア・アズナブルやカミーユ・ビダンをも凌ぐ、最強のニュータイプにね…」
「最高議長…」

 デュランダルの言う通り、シンのこの2年間の軌跡は目を見張る。
それまで何の軍事訓練も受けていなかった少年が、アカデミーを卒業すると同時に
ザフトレッドとしてミネルバに就任、更には最新機インパルスの搭乗者になったのだ。
 幾多の戦いを得てニュータイプとして覚醒、デスティニーという新たな翼も手に入れた。
そして議長への忠誠の証としてのフェイス就任…まるで夢の様な話ではないだろうか。

「君の覚悟は理解できた。
 明日にもフェイスの証を届けさせよう」
「はっ、はい」
「それともう一つ…」
「えっ?」

 まだ何か話があるらしい。
いや、デュランダルの態度を見ると本題はこれかららしい。
ニュータイプと言えど、シンは他人の心の中までは伺い知ることはできないのだ。
 だが彼の顔つきを見る限り、さっきよりも深刻な話の様だ。

「ヘブンズベースから消えた、ロード・ジブリール氏の居所を掴んだのだよ」
「! ジブリールのっ!? 何処に、奴は何処に居るんですかっ!?」
「…オーブ国内だよ、シン。彼はオーブに匿われている。
 潜入させていたスパイからの情報によると、オーブ政府内には多数の
 ロゴス構成員と繋がりのある者が存在しているとのこと……私としても、とても残念だが」
「オーブと…ロゴスが……アスハの奴、やっぱりアイツらはッ!!!」

37520-2 6:2005/08/18(木) 11:13:26
229 名前:エピソード3 シンの復讐[sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:17:40 ID:???

「オーブとロゴスが蜜月関係にあるのは、ほぼ間違いない。
 考えても見てくれたまえ。
 中立国、平和主義を謳うオーブが、何故にあれ程に強大な力を保持しているのか?
 ロゴスからの資金提供が無ければ、一国家があれ程の勢力を持てるはずがない」

 デュランダルの言う通りだった。
M1アストレイやムラサメ、ストライクルージュなどを作り出した
オーブの技術力は侮りがたく、またその資金が何処から抽出されているのかなど
かつてのオーブ国民であったシンでさえ知らなかったのだから。
 だがオーブもロゴスの一部であった、というなら全て説明ができる。
やはりオーブは、アスハは敵だったのだ。自分の家族を殺し、世界中の人々を苦しめる怨敵。

「会議の結果、
 ミネルバはオーブにジブリール氏の身柄引き渡しを要求するため、赴くことになった。
 無論、私も同行させてもらうつもりだが、彼らの返事次第では戦いは避けられない…」
「…!」
「ロゴスの盟主を匿う、ということはロゴスに味方すること。
 これまでオーブとは良い関係を保ち続けてきたつもりだ、私も心苦しくはある。
 だが、身柄引き渡しを拒否した場合は仕方ない…オーブ殲滅作戦を決行せざるを得ないのだ」
「…殲、滅」

 殲滅、根絶やし、皆殺しのこと。
血が流れることを何よりも嫌う議長がそこまでの決断を迫られる事態。
かつての故郷を、相手の返答次第では血で染めることになるかもしれない。
 だが、かつてあの国は自分達に何をした?
家族を奪い、更にはミネルバまで領海に追いやろうとしたではないか。
 そんな国、滅びて当然…いや、滅びるべき運命に違いないのだ。

「シン、もしそうなってしまった場合は
 君に指揮権を託そうと思う…レイを含むMS大隊を率い、オーブに侵攻してほしい」
「…俺でよろしいのですか?」
「オーブが君の故郷であることは私も知っている。
 だが君の覚悟を私は信じたい……私の理想とする、
 来たるべき黄金時代のためにも君の力が必要なのだ…お願いだ、シン」
「…分かりました。
 オーブがジブリールを渡すのを拒んだ場合、出撃します。
 誰1人逃がしません……議長の理想を認めない奴は……俺が皆殺しにします」

37620-2 7:2005/08/18(木) 11:13:47
230 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/17(日) 15:18:59 ID:???
若きアスカは暗黒面に堕ちた…

37721-1 1:2005/08/18(木) 11:14:18
343 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/20(水) 23:11:45 ID:???
>>329-330

 粘膜の擦れる音がする。静かにその音だけが耳を衝く。
少し指に力を入れただけなのにそれだけで彼女は何とも
言い難い表情を浮かべながら、何事か聞き取れないくらいに小さい声を吐き出す。

「アスラっ…さっきから…そこ、ばっかり…」
「ん、じゃあ他の場所に変えるか…?」

 生憎と部屋は暗い。それに彼女の背後から
この行為に及んでいるので残念ながら彼女の顔を窺い知ることは叶わなかった。
今、どんな顔をしているのだろう…やっと聞き取れた声からするに、少し困っている感じがした。

「ルナは…初めて、なんだよな?」
「きっ、決まってるじゃないですかっ…!」
「あ、あぁ、ごめん…そういうつもりじゃなかったんだが…」

 行為中にこんなことを聞くのはルール違反かもしれない。
だが少しだけ嬉しかったりもする。離れ離れになってしまって
以来、もう自分は忘れられてしまったと思っていただけに。
 彼女がちゃんと自分を待っていてくれたことが、心の底から嬉しく思える。

「ね…」
「うん?」
「ちゃんと最後まで…してくれる、んですよね…?」
「…あぁ」

 お粗末にもあまり良いベッドではなかったけれど。
2人の想いを確かめるにはあまりにも静かで寂し過ぎる場所だけれど。
 今、確かに自分達が此処に在るということを再確認するために…。

「俺は何処にも行かない…ルナと一緒だ、ずっと」
「私も貴方から離れない…アスランと一緒がいい」

 深く愛し合いたい。焦がれる様に、溶け合う様に。

「ルナ…!」

 互いに上気していたと思う。理性よりも肉欲の方が勝ったらしく、もう言葉は不要。
ひたすらに互いを求め、堕ちて行けばいい…もう誰にも止めることなどできないから。

「あっ…ぁっ…!」

 丸みを帯びた軟らかい肌、手にしっとりと馴染む大きな胸も良い。
更に腹や腰に指を這わせてみると、身体を震わせて身悶える彼女の様相が可愛らしかった。

37821-1 2:2005/08/18(木) 11:14:37
344 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/20(水) 23:12:51 ID:???
どぎついかどうかは分からないが
新シャアじゃこれくらいが表現の限界な気がする
一応、反省はしてる

379名無しさん:2005/08/20(土) 16:32:12
>>338の分については転載終了。次からは以下の分を転載します。

22-1 インフィニットジャスティス(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
23-1 インフィニットジャスティス2(161 ◆E2q4Je3dsw殿)
23-2 インフィニットジャスティス3(161 ◆E2q4Je3dsw殿)

38022-1 1:2005/08/20(土) 16:33:22
549 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:26:46 ID:???

『もう止めるんだ!
 これ以上誰かを傷つけちゃいけない!』

『黙れよ、キラ・ヤマトォ!!!』

 宇宙(そら)を舞う2体のガンダム。
青いき翼の天使、フリーダムと赤き翼の堕天使デスティニー。
死闘の末に互いの頭や腕、脚を失いながらも、果てることなく舞い、斬り合う。
 互いに譲れないものがある、両者をつき動かすのはまさにそれのみ。


『ステラを殺したクセにっ!
 アンタが父さんを、母さんをっ、マユを殺したクセに!!!』

『君だってラクスを殺した!
 皆のために必死で頑張っていたラクスを…君が!』

『議長を認めない奴に生きてる価値なんてない!
 お前らなんかに絶対邪魔はさせない……お前らみたいな偽善者がいるから、皆死ぬんだ!!!』


 滾る憎悪をこれでもか、とばかりに収束、吐き出してゆく。 
デスティニーはシンの怒りを受け止め、フリーダムへと叩き込んでいく。
人機一体となったシンとデスティニー、荒らぶる鬼神の如きその姿。
 もはやガンダムではない、その姿はガンダムと形容してよいものではなかった。

『どうしても退かないというのなら……僕は、君を殺さなきゃいけなくなる!』

『やってみろよ! 俺の力を見縊るなぁッ!!!』


***


「はっ! …はぁっ、はぁっ、はっ!」

 悪夢は醒めた。
夢の延長線上に位置する此処は、自分とレイ・ザ・バレルの相部屋。
ガラにもなく冷や汗などをかき、見るとシャツはグッショリと濡れている。
厭な夢だった。知りもしないキラ・ヤマトの声が、魂に響いた気がするから。
思わず口元を押さえ、シンは上気する身体へ動きを止めるように静止を促す…ゆっくりと。

38122-1 2:2005/08/20(土) 16:33:52
550 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:27:48 ID:???

「大丈夫か」
「レイ…」
「魘されていたぞ」
「う、うん…」

 隣のベッドで寝ていたレイもシンの様子を気遣ってか、
やや怪訝な面持ちながらも心配そうに覗き込み、給水ボトルを手渡してくる。
 ややひんやりとした感触が、今のシンにはとても心地良く感じられた。

「オーブ侵攻作戦の前だ…気持ちは分かる」
「いや、そんなんじゃ…」
「だがお前の故郷なのだろう?
 最悪の場合は民間人への攻撃も可能となった今、オーブ軍や
 ロゴスと蜜月関係にあるオーブ政府関係者を討つのが俺達の任務。
 そしてオーブ侵攻作戦の指揮をとるのはお前だ、シン」
「…分かってるさ、それくらい」

 シンはデュランダル最高議長の命令によりフェイスの称号を与えられ、
更にはミネルバ内での議長の私的代理人としての任も担っている。
 つまりはタリア艦長よりも権限は上、ということになるのである。
議長が何を意図してシンをそこまで祀り上げるのか…プラント議会の中には
それを疑問視する者も少なくはない。だが救国の英雄の活躍を認めない訳にもいかない。

「もう少し、俺を頼ってくれてもいいんじゃないのか、シン」
「えっ…」
「友達だろう、俺達は」
「あっ、あぁ…そうだよ、な。
 ごめん、レイ…俺、なんか1人でずっと考え込んじゃってさ。
 議長に呼び出されたり、ここんとこ慌しかったから…疲れてるのかな」
「今は少しでも休め。
 お前は議長の理想のために戦うんだろう?」

 彼の言う通り、今の自分はそのためにある。
議長の掲げる、憎しみも悲しみも争いも無い世界、来るべき黄金時代のために。
地球とプラント、そして宇宙、果ては銀河系の全ての安定のために。
 もう誰も悲しむことのない世界を作るために、自分は今ここにいるのだから。

「……俺、デュランダル議長のこと尊敬してるよ。
 すごい良い人だし、立派だし、あの人のためなら何だってできる…そんな気がする」
「そうだ…それでいい、シン」

38222-1 3:2005/08/20(土) 16:34:11
551 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:28:49 ID:???

***

「レイから話は聞いているよ。
 すまなかったね…結果的に、君に重圧を強いてしまったようだ」
「いえ、自分の体調管理の問題ですので…」

 朝方、シンはデュランダルの召集命令を受け、出頭した。
何事かと思えば、どうやらレイが昨夜のことについて議長に報告したらしい。
何も気遣ってっくれなかったアスランとは違い、シンは心底、議長の心遣いが嬉しかった。

「これでは友人失格だな、私は。
 君と対等の立場に立つ友人などと言っておきながら、君のことを理解できていなかった」
「そんな、議長が心配される程のことでは…その、ただの夢ですから」
「…夢?」

 穏やかな表情だったが、一瞬だけデュランダルの視線が鋭くなった気がした。
ただの夢、そう思いたい。だが、あまりにリアルすぎるのも気味が悪い。
キラ・ヤマトとフリーダムによく似たMSとの死闘の末、自分が……馬鹿馬鹿しい、あれは夢だ。

「良ければ、聞かせてはくれまいか…その夢とやらを」
「ですが…」
「君はニュータイプなのだ、シン。
 例え夢であってもそれは意味のあるものかもしれないからね」

 そしてシンは静かに語り始める。悪夢を。
キラ・ヤマトとの戦いの果て、自分とデスティニーが……。

「それは恐れだよ、シン」
「恐れ…」
「君自身が恐れているんだ。
 戦うことを、キラ・ヤマトを、フリーダムを、オーブを、そして自分自身を」
「俺は、恐れてなんて…いません! アイツは、キラ・ヤマトは倒しました!
 アスランだってこの手で殺したんです! もう誰も俺に敵う奴なんていないんだ!!!」 

 憤るシン。
そう、今や最強は自分のはず。この宇宙でニュータイプなのは、自分だけなのだ。

「だが恐れを抱くことは悪いことではない。
 怒り、憎しみ、そして恐れ…全てが君の力となり、また味方となるだろう。
 もっとニュータイプの力を、叡智を学び、我が物としたまえ、シン。
 無限の可能性を秘めたニュータイプの力ならば…不可能すら可能にするかもしれないのだから」

38322-1 4:2005/08/20(土) 16:34:35
552 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:29:50 ID:???

***

「ルナ」
「ん、何?」

 インパルスのOS整備を行おうとした矢先、
格納庫でルナマリアはヨウランらに呼び止められる。
何でもオーブ侵攻に合わせ、各種武装の互換性を再度チェックしておけ、とのこと。

「ルナはこれまでザクとかズゴックとかばかりだし…」
「インパルスにも早めに慣れておいてもらうと助かるんだよね、俺らとしては」
「…不本意だけど、善処するわ」

 そう、不本意だ。
誰が好き好んでこんなMSに乗ってやるもんですか、と彼女の鼻息は荒い。
殺したのだ、このMSに乗っていた彼が、アスランを。殺したのだ、シンが、彼を。
 アスランは真実を模索していた……だから自分も助けた。 
自分が別れ際に「愛している」と言った時、彼は満足そうに笑って「知ってる」と応えてくれたのに。
 あれが最期の笑顔。最期の彼との会話。最期に彼を感じた瞬間。

「(私…何やってるんだろう)」

 インパルスのコクピットに乗り込み、OS画面を起動。
相変わらず、プログラミング作業は面倒で苦手…しかも今回は
フォースシルエットやソード、ブラストなどの各種武装との互換性も考慮しなくてはいけない。

「(遠い昔ね…あの頃は、楽しかった…)」

 ディオキアの街の散策や夜のデート、深夜のズゴックのOS調整など
アスラン・ザラとの楽しかった思い出ばかりが脳裏に思い浮かび、自然と熱いものが込み上げてくる。
 泣いたって彼が戻ってくるはずないと分かっているはずなのに、それでも泣かずにはいられない。

「(あの時…私も一緒に…)」

 グフに乗り込めば良かった?
だがそうなれば残された妹や両親はどうなる?
 結局は覚悟が自分に足りなかっただけ…総てを捨てて彼と共に行く勇気が無かったから。

「(どうして、会っちゃったんだろ…どうして、好きになっちゃったんだろ…)」

 答えは出ない。インパルスは何も応えてはくれなかった。

38422-1 5:2005/08/20(土) 16:34:57
553 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:31:23 ID:???

***

「アスラン、無茶だ!」
「お前だって、シンに機体を破壊された割に、くっ…ピンピンしてるじゃないか…」
「キラは特別だ! お前はいいから寝てろ、まだ動ける体じゃ…!」

 痛みが軋む身体に鞭打ち、アスランはベッドから起き上がる。
気が気でないキラとカガリが何とか彼をベッドに戻そうとするものの、
今の彼は到底そんなことでは止められそうも無かった…それ程に、強い意志が瞳に宿っていたから。

「ラクスが…エターナルが危ない…んだろ…?」
「それは…」
「カガリ、お前の…ルージュを貸せっ…!
 俺がエターナルのところまで行く…アレが完成しているのなら…直接、受け取ればいい!」
「馬鹿なこと言ってないで、怪我人は大人しく…」
「馬鹿はお前達の方だっ!」

 怒号と共にカガリの手を振り払い、アスランは身を乗り出す。
キラがその気になれば、弱ったアスランを気絶させることくらい容易いだろう。
だが、させなかった。執念とも呼ぶべき炎が瞳に宿った今の彼は、それを許さない。

「キラ…いつか…お前は言って…いたな…。
 “カガリが今泣いているから…戦う”と…。
 俺もそうだ…俺のために泣いている人がいる…その子のためにも…
 こんなところで、じっとしているワケには…いかない……早く、そこを、どけぇっ!!!」


***


「ルージュを!?
 でもアスラン君、そんな身体じゃ…」
「いいから…発進の準備を…お願いします、ラミアス艦長…!」

 強引にノーマルスーツに着替え、ストライクルージュに搭乗、
もう自分が怪我人だということも忘れ、空の彼方、エターナルの元へ。
 これ以上、キラ達に頼るのは癪に障る…だが、思いだけでも力だけでも駄目ならば…。

「(抗ってやるさ…俺は諦めたくない!)」

38522-1 6:2005/08/20(土) 16:35:17
554 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:34:00 ID:???

***

『俺1人じゃかなり無理があるぞ! どうするつもりだ、ラクス!?』
「…最悪の場合、この情報だけでも地球へ届けねばなりません」

 宇宙(そら)のエターナル。
廃棄されたメンデルに潜入してかつてのキラやカガリの産みの親でも
あるヒビキ博士ら…そして研究所時代のデュランダルの研究資料を手に入れたラクスらだが、
運悪くザフトの監視に引っかかり、ナスカ級戦艦らが率いるMS大隊の襲撃を受け、絶対絶命の危機に陥っていた…。

「デュランダル議長の真の目的を明らかにしなければ、世界は…」
『んなことは分かってる!
 だがなラクス、このままじゃ時間の問題だ!』

 バルドフェルドも改装ガイアにて奮戦しているが、何しろ
ザフトに在籍していた頃は専ら地上戦ばかりを担当していたこともあって
宇宙での戦闘の勘が鈍ってしまっていることは否めない。
 かつてキラが宇宙から砂漠へ舞台を移した際にバルドフェルド率いる
バクゥらに苦戦したのとは逆、今度はバルドフェルド自身が宇宙で苦戦することとなったのだ。

『(ちっ、なまったもんだ!)』

 グフのヒートロッドでビームライフルを破壊されたのは痛い。
ドムトルーパーが完成していさえすれば援護に回すことが出来たかもしれないが
それも今では後の祭り。ストライクフリーダム、インフィニットジャスティスは
キラとアスランの専用機…正直、いくら砂漠の虎でも動かせる自信は持ち合わせてはいなかった。

「接近する新たな熱源あり!」
「新手ですか?」
「いえ…待ってください、これは…ストライクルージュ!?」
「! …キラ!?」

 電圧の関係で普段の趣味の悪い薄ピンク色から通常カラーへと
色合いを変えてはいるものの、確かに信号はストライクルージュのもの。
 もともとはオーブが余剰パーツで自作した、限りなくストライクに近いストライク。
本来ならばキラが動かせば良かったのだろうが…今回ばかりは、アスラン・ザラの執念が勝ったらしい。

「見えた…エターナル!」

38622-1 7:2005/08/20(土) 16:35:37
555 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:35:03 ID:???

 永遠の名を冠するかつての最新鋭宇宙戦艦。
艦長がラクスであるため悪趣味なピンクの機体色が
目に痛いものの今はそんなことを言っていられない。
 宇宙にあがるために余計なパーツを着けずに来てしまったため、
今のストライクは無防備に近く、ディアクティブ装甲もザクやグフの猛攻にどこまで耐えられるか。
 いや、それ以前にアスラン自身の身体にも大きな負担がかかっている。
シンに撃墜されてから日も経っていないうちの出撃…今だって、全身が悲鳴をあげている。
 けれど、退かない。

『こちらアスラン・ザラだ…エターナル、応答を!』
「えっ、アスラン…!?」
「ラクス様!」

 てっきりキラだと思っていたが、何と搭乗者はアスランと名乗った。
だがいつもの彼と違ってイマイチ声に覇気が無く、またストライクの動きも散漫で
敵の攻撃を上手く避けきれず、所々被弾して見るも無残な姿へと変わってゆく。

「早く収納してください!」
「は、はっ!」

 何とかハッチまで辿り着き、エターナル内に収納されるストライク。
かつてはザフトに恐れられた最強のMSも、たった2年で随分と性能負けしてしまったものだ。
 いや…やはり、自分の腕が落ちたのかもしれない。

「なら、また強くなればいい……っぅ!」

 痛い。今のアスランを突き動かすのは鋼の精神力。
さっきの戦いでも、コンディションが十分ならばザクやグフ相手にも不足はなかったはず。
シンとの戦いで負ってしまった傷が癒えるまで、完全な力は取り戻せない、か…。

「(今の俺にできることを…やるだけだ)」

 無重力に身を任せ、ルージュから脱出。 
ふわりと着地し、アレがあるであろう場所を目指す。
かつて自分も乗っていた艦だ、場所くらいは大体見当がつく。

「(フリーダムだけならまだしも…アレまで復活させるなんて…)」
  
 アレはジェネシスと共に滅んだ。
だがラクスはそれを蘇らせ、新たな剣としてその力を振るわせようとしている…自分に。

38722-1 8:2005/08/20(土) 16:36:07
556 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:36:09 ID:???

「アスラン…」
「…ラクスか」

 扉の向こうにラクス・クラインが立っていた。
本来ならば艦長としてブリッジで陣頭指揮をとらねばならないはず…
それがわざわざ出迎えとは、随分と彼女は暇を持て余しているらしい。

「出迎えか…?
 艦長の仕事はどうした…暇なんだな」
「手厳しいのですね、貴方は」

 つい先日までミーアとばかり顔を合わせていたせいもあってか、
不思議とラクスとの対面を懐かしいとは思わなかった。
寧ろ、彼女としてはキラに助けに来て欲しかったに違いない。
自分が場違いなのは十分に分かってはいるが、今はそんなことを気にしている場合ではないのだ。

「完成しているんだろう、アレは」
「…その身体で動かすつもりなのですか?」
「何もしないよりはマシだ…君は、ここで死ぬつもりなのか」
「……」
「俺は…戦える!」
「…こちらへ」

 彼の言わんとしていることを悟ったのか、ラクスも決意する。
新たな剣を、無限の正義の名を持つ、紅のガンダムを今一度、目覚めさせるために。
 そのために、今は彼の力が必要なのだと。


***


「やぁ、また…会ったな」

 黒い2体の巨人。 
ヴァリアブルフェイズシフト装甲による、起動前の無骨なダークカラーが目を惹く。
1体はストライクフリーダム、キラのために生み出された機体。
もう1体はインフィニットジャスティス…アスランが操縦することを前提とした紅のMS。
 躊躇している暇は無い……まずはエターナルを脅かすザフトを追い払わねば。

「アスラン・ザラ……インフィニットジャスティス、出る!」

 起動の瞬間、Gの鼓動が魂に響いた…そんな気がした。

38822-1 9:2005/08/20(土) 16:36:25
557 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/07/31(日) 22:38:54 ID:???
2話分くらい書いてちかれた
キラはピンピンしてるのに凸が重症ってありえなーい
早く本編に無限正義が出ないと
どうやって活躍させればいいのかすら…うーん

38923-1 1:2005/08/20(土) 16:37:02
255 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:14:21 ID:???
まだ昨日の分見てないから超適当で短い
しかも先週は進展が全く無かったからインジャスも
どう動かせばいいのかもまだ分からない…マイッタ

39023-1 2:2005/08/20(土) 16:37:24
256 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:15:20 ID:???

『エターナルより、アンノウン(未確認機)現出!』
『モニターに出せ』
『はっ!』

 エターナルを追うザフト軍艦船のモニターに映し出されるMS。
かつてヤキン・ドゥーエの戦いで連合・ザフト双方から畏怖の対象とされた
核エネルギー搭載型MS…ジャスティスの姿が。その姿、雄々しく…また、神々しく。

『あれは…』
『――――ジャスティスだとっ!?』

 ジェネシスと共にこの世界から完全に消えたはずのジャスティス。
だが時代は再び彼(か)の機体を必要とした……必然だったのかどうかは問わない。
けれど戦う力を持つのならば、それを自覚しなければならなくなる。
 本人の意志に関わらず、戦いが彼を呼ぶから。

「俺は―――――」

 久々の宇宙空間での戦い。
地球の重力に慣れ過ぎたせいか、今のアスランにはGがキツイ。
操縦桿を握る手は振るえ、呼吸も荒い…でも、不思議と負ける気はしなかった。

「俺はもう、迷わない!」

 確固たる意志が、滾る闘志が、湧き上がる想いが、力となる。 

『例えジャスティスだろうとっ!』
『この数を相手にできるはずがあるまい!』

 グフ大隊がジャスティスに狙いを定めた。
ヒートロッドがまるで触手の如く、四方から迫り来る。
 だがジャスティスは微動だにしない…まるで、何かを待つ様にして。


「wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! …見える!」  


 今この瞬間、アスランは確かにGの鼓動と共に刻が視えた!

39123-1 3:2005/08/20(土) 16:37:43
257 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:16:53 ID:???

「……そこかっ!」

 主な武装は今の時点でビームライフルとシールドに内臓されたビームソード、
ビームサーベルが2本、背部のファトムー00に搭載されたビーム砲…残念ながら両肩の
ビームブーメランはまだ使えそうもない。だが戦い方はいくらでもある。
単に虹色ビームを一斉射撃すれば全ての敵に当たる…などということは有り得ない。
 直接、叩く他はない!

『なっ、かわし…!?』

「遅い!」

 ドンッ!!!

 まず一機、落ちた。 
ヒートロッドはビームソードによって断ち切られ、
瞬時に迫ったジャスティスの一撃のもとに両断、果てる。
 方位を掻い潜り、ジャスティスは猛るが如く剣を振るうのだ。

『このぉ!』
『テロリストめ、調子に乗りやがって!』

 続いてグフが2機。専用ソードによる接近戦を挑む気らしい。
それはこちらも望むところ…今なら、きっと見えるはずだから。

「負けない!」

 ザンッ!!!

 蒼い双刃が煌き、ザクらを斬り裂く。
両腰のビームサーベルを引き抜き、群がる敵を瞬く間に薙ぎ払ってゆく。

『グハッ…馬鹿な、何故っ、これ程の…力の差がっ!?』

「覚悟の差だ…」

 ズンッ!!!

「大切な誰かを……世界を裏切ってでも守りたいという、覚悟の差だ!」

39223-1 4:2005/08/20(土) 16:38:02
258 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:18:16 ID:???

***

「いよいよだな」
「あ…うん」

 ついにオーブとザフトは全面戦争に突入した。
ユウナ・ロマ・セイランの詭弁など誰も信じることはなく、
ロゴス盟主であるロード・ジブリールを拿捕し、憎しみの連鎖を断ち切ろうと
陸海空の総力をあげ、オーブに対しての掃討作戦がとられたのである。

「どうした、シン」
「何か…嫌な予感がする」 
「…指揮官はお前だ、今頃になって弱音は困る」
「そんなんじゃないけど…何か、こう、変なんだ…よな」

 命令があるまでは待機。
すでに前線では別部隊がMSらを展開、オーブ軍と交戦状態に入ったと言う。
シンは特に選出されたMSパイロット【トルーパーズ】を率いる指揮官である。
フェイスの称号と議長の私的代理人という立場…今のシンに、逆らえる者など最早いない。

「だったら出なきゃいいじゃない」
「…よせ、ルナマリア」
「怖くなったんでしょ?
 自分で『こんな国、滅ぼしてやる』とかカッコつけてたけど、
 今になって怖くなったんでしょう? また自分みたいな子が生まれるのが嫌になって」
「何だと…!?」

 唯一、シンへの嫌悪感を顕にする女性がこのミネルバに居る。
ルナマリア・ホークは、上司のアスラン・ザラを殺したシンを許すことは永久にない。
ニュータイプだからと祀り上げられ、議長の信頼を得てはしゃぐ子供そのものの彼は、
いつの間にか命の重さを忘れてしまっている…アカデミーの頃の彼は、もういない。

「できるさ、俺が最強なんだ! オーブを滅ぼすなんて俺1人いれば十分だっ!!!」
「アンタが人の命をどうこうできる立場にあるの!?
 その自意識過剰な傲慢が、いつか命取りになるわ…覚えておきなさい!」
「ルナマリア、いい加減にしろ!」
「レイ、いいよ……どうせ、ルナも俺の力に嫉妬してるだけなんだ。
 力の無い奴は力を持ってる奴によく吠えるって言うし……だったら俺の力を見せてやる。
 オーブの連中は皆殺しだ! 男も女も、子供も年寄りも、刃向かう奴は全部殺す!
 1人残さず殺して、殺して、殺して! ロゴスを庇う様な奴らは……俺が修正してやる!」

39323-1 5:2005/08/20(土) 16:38:18
259 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/08/07(日) 02:21:18 ID:???
ゲームに集中するんで次週まで篭ろうかと思う
後悔はしていない

39423-2 1:2005/08/20(土) 16:38:44
557 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:41:11 ID:???
久々に書いた
また2〜3日の間に書きたい
ここんとこは書き込み少ないけど
みんな盆休みとかコミケなのか?

39523-2 2:2005/08/20(土) 16:39:11
558 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:42:40 ID:???

「デスティニー…プラン?」

 何とか全ての敵を撃退したものの未だに傷の癒えぬまま
ベッドに臥していたアスランが、徐に消え入りそうな声を漏らした。
 労いのために訪れたバルドフェルドによって齎された情報である。

「ダコスタが廃棄されたメンデルで見つけてきた…。
 生憎と俺は遺伝やら生物学やらには無頓着なもんでサッパリだったがねぇ」
「デュランダル…議長の…?」
「どうもそうらしい。
 過去に遡るとかれこれ20年以上も前から計画していたとか何とか…。
 興味があるなら…ラクスに見せてもらうといい」

 バルドフェルドはそう言い残し、医務室を去る。
残されたアスランは自身に今一度、問う。自分は何がしたかったのかを。
オーブに亡命して2年、偽りの自分を演じながら生きてきた。
だがそれは少しでも争いの無い世界を作ることに貢献できれば…と思ってのこと。
 でも現実は違った。自分はただ、嫌なことから逃げていたに過ぎない。
背負いきることができなくて、自ら落伍者となることを選んで……。

「(俺は……やっぱり馬鹿だ)」



***



「これよりオーブ掃討作戦を開始する…総員、配置につけ!」

 地球ではザフトとオーブの戦いが今まさに始まっていた。
戦艦から放たれる砲撃が海を舞い、多くのMSが出撃、海と大地を紅く染める。
ミネルバも例外ではなく、やや後方にて進撃、更にシン、レイ、ルナマリアら
3人がそれぞれデスティニー、レジェンド、インパルスにて前線に出撃。
 加えて議長によって選出されたMS大隊が加勢に加わる。
今や最強のニュータイプとして君臨するシン・アスカが指揮官(コマンダー)、
レイとルナマリアはその補佐としての出撃…議長の狙い通りなら、これでオーブを落とせるはず。

39623-2 3:2005/08/20(土) 16:39:31
559 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:43:47 ID:???

『コマンダー、指示を!』
「…各機散開して敵MSを迎撃。
 市街地での戦闘は極力避け、戦意の無い者、一般人への攻撃はするな。
 ただし…抵抗する者には容赦はしなくていい…慈悲はいらない、殲滅せよ!」

 デスティニーより発せられるシンの命令を受け、
ザクやグフらがオーブ軍のムラサメ隊との交戦を開始する。
自分達の目的は飽くまでジブリール、このオーブを滅ぼすことではない。 
 しかし、国をあげて敵を匿うと言うのなら、国ごと滅ぼしてしまえばいい。

『なかなか良い指示だったぞ、コマンダー殿』
「レイ…」
『お前の言う通り、慈悲など無用。
 議長に逆らう逆賊に生きている価値は無い…皆殺しにしてやればいい』

 レイもレジェンドでの本格的な戦いはこれが初めてのはず。
前回のアスラン討伐の際に見せた神がかり的なファンネル操演能力に期待したい。
シン自身もデスティニーの操縦に慣れてきた…はずだ。
 未だに、動かしている時に妙な声が聞こえてくるのが唯一の不満だが…。

「(何なんだよ、アレは…)」

 が、敵は待ってくれない。
早速前方に3機の機影を確認、MA形態のムラサメ隊だった。

『手を貸すまでもないな?』
「1人で十分だ!」

 副指揮官のレイに後を任せ、シンは敵陣に一番乗りを果たす。
ムラサメらの動きをすぐさま見切り、1機目をビームカッターで撃墜。
2機目を左肩の高エネルギービーム砲で狙い撃ち、3機目は――――――――。

「シャイニング―――――――」

 総て視えている、これからどう動くのか、どう軌道を描くのか。

「フィンガァ――――――――ッ!!!」

 輝く拳が炸裂、掌から発せられた無限の熱量が、敵を跡形もなく消し飛ばしてゆく…。

39723-2 4:2005/08/20(土) 16:39:51
560 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:45:05 ID:???

『強いぞ!』
『ザフトの新型か!?』
「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 今度はアロンダイトを起動。
超高速で振り下ろされる巨大な対艦刀を防ぐ術は無く、
続けざまに何体ものMSが銅を真っ二つにされて爆発、海中に没する。
 
『これ以上はやらせんぞ!』
『オーブの魂、侮るでないわ!』
「邪魔なんだよ、お前らはァ――――――――――――――!!!」

 光の翼。
光粒子フィールドを形成、メガ粒子にコンバートしてフィールド上に流出、
巨大な扇状のビームサーベルがあたかも翼に見えることから名付けられた究極兵器。
 技術者の間では黒歴史の遺産の流用ではないか…との見方もある。

「消し飛ばしてやるッ!」

 そのまま敵の陣形に切り込もうと、アロンダイトを構えるデスティニー。
ミラージュコロイドの散布も兼ねているため、その機影が残像となってオーブ軍を襲う。
 MSの分身…荒唐無稽な話だが、ナチュラルである彼らにはデスティニーの本体すら見えなかった。

『う、うわあぁぁぁぁっ――――――――』
『や、やられ―――――――』




         “おかしいですよ、カテジナさん!”




「wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─!!! っぅ…またかよ…何なんだよっ!?」

 シンの魂に、また誰かの声が響いた。
忘れようと思っていたのに、デスティニーで戦闘に出ると決まって耳鳴りがする。
聞いた事の無い声、見た事も無い景色、見た事も無い人々、見た事も無いMS。
 ニュータイプとして背負ってしまった運命の意味を、シンはまだ知らない。

39823-2 5:2005/08/20(土) 16:40:10
561 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:47:22 ID:???

『向かい撃て!』
『オーブを守るのだ!』

 目障りだった。
周囲を飛び交うそれはとても不愉快で、とても見苦しくて。
この手で叩き潰したくなる程に、それらは彼にとって醜いモノだった。

「…落ちろ、逆賊」

 背部の有線ドラグーンを展開、
四方八方に飛び散った一つ一つが意志を持つかの如く、蠢く!
やはり無重力下でも、今のレイならば十分にファンネルを操ることは可能らしい。

「行け、ファンネル!」

 メーサーの容量でクロスした光線がムラサメを切断、次々と撃墜していく。
それでも尚、刃向かって来る者にはビームソードによる一刀両断の運命が待つ。
彼はまるで機械、それも邪悪に歪んだ――――――――レイ・ザ・バレルと言う名の機械兵士。

「ギルに逆らったこと……後悔するがいい」

 鋼の輝きを持つレジェンド。
無慈悲に敵を薙ぎ払ってゆくその姿に、味方であるはずのルナマリアは恐怖する。
 狂っている、何か、狂気を感じる。シンとレイ、どちらにも…。

「(…怖い)」

 何もかもが変わってしまった。
世界も自分を取り巻く状況も、そして自分さえも。
最愛の彼を殺した男が操っていたMSを駆る自分が、許せなかった。
でもそうしなければ自分には戦う力が無い…自分の居場所が無くなってしまう。
 そもそも、どうして自分はザフトに入ろうなどと思ったのだろう?
そんなことも、遠い昔に忘れてしまった気がする……この空虚な気持ちと引き換えに。

「でも…それでも…」

 迫る敵機にブラストインパルスのジャベリンが命中、串刺しのまま投げ返す!

「私は、あの人に追いつくまで……追いかけるのを止めない!」

39923-2 6:2005/08/20(土) 16:40:26
562 名前:161 ◆E2q4Je3dsw [sage] 投稿日:2005/08/16(火) 19:49:14 ID:???
久々にVガンとGガンを見たくなった
だが反省はしていない

400名無しさん:2006/03/20(月) 13:36:17
シンはギャザースタイムっぽい
ギャザースタイムとは、(以下略)つまり精神の面での同化ニュータイプを
超えたニュータイプただしこのギャザースタイムになると、他人の命の保障が
まったく無い。かの有名な究極のニュータイプカミーユ・ビダンですら
ゼーター・ガンダム=逆襲のシャア=で一度だけなった可能性がある程度。

404バーバリー セーター:2012/11/05(月) 11:54:02
今日は〜^^またブログ覗かせていただきました。よろしくお願いします。
バーバリー セーター http://burberry.suppa.jp/

405burberry ブラックレーベル:2013/11/30(土) 02:44:24
ルナマリアとアスランってやったの? 【SS保管庫】 - ガンダムSEED DESTINY 『アスランとルナマリアの隠れ家』 burberry ブラックレーベル http://www.burberry123.com/

406ルイヴィトン アウトレット:2014/05/01(木) 13:35:01
?ずるい〜」 私は彼に唇を尖らせる素振りをする。 「更紗の扱いはプロだからな。危険な猛獣は飼いならさないとね」 「私を猛獣扱いするなぁ」 「冗談だよ、冗談。何の誤解よ?」 それに呆れたように、有翔は私に言うんだ。 私が与えた誤解、それこそが私と有翔の距離を遠ざけた本当の理由。普段から男の子っぽい仕草や言動をする彼女。 コンプレックスからの解放を役者という行為でしているのかもしれない。 しかし、千鶴は勘違いしていることがある。相手は私の幼馴染である理沙。 翔太は彼女の娘である琴乃ちゃんと先月から付き合い始めている。 親友の子供同士が付き合う事になったのは良い事で、私としてもふたりの仲がうまくいく事を望んでいる。
ルイヴィトン アウトレット http://www.coldfusion411.com/dbadmin/db.php


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