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海未「9000km隣のグレー」
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海未(電話が鳴ったような気がした)
海未(薄く目を開けると暗い部屋の中、机の上で携帯電話がビートルズを奏でながら震えているのが見えた)
海未「もしもし」
海未(寝ぼけ眼を擦りながら、私はそれに応答する)
海未「ああ、久しぶりですね。今何時だと思っているんですか」
海未「こっちは深夜三時ですよ。もう忘れたんですか」
海未(二、三度言葉を交わして電話を切る。暗い部屋の中、私は布団からそろそろと這い出た)
海未(月明かりばかりの薄暗がりの中、鏡を見る。締まりのないニヤケ面が反射していた)
海未(ことりが、日本に帰ってくる)
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ーー
海未(一週間後、空港で。何時に帰ってくるのか、どこのゲートを通過するのかを聞き忘れていたことに気付いたのは当日の朝のことだった)
海未(朝方から空港をうろつき、疑い近付いてきた警備員に事情を説明しながら待つこと数時間)
ことり「会えて良かったよぉ。時間言ってないことに飛行機の中で気付いてね、会えないかと思った」
海未(久しぶりに出会ったことりは、数年前よりも幾分か美しくなったような気がした)
海未「忘れ物はないですか? 枕を忘れても取りには帰れませんよ?」
ことり「もう。昔とは違うんだよ? 枕が変わっても眠れるもん」
海未「あはは、そうですか。一先ず車に向かいましょう、久しぶりの東京をドライブと洒落込みませんか?」
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海未(駐車場へ向かい、車に乗り込む。ことりは一瞬驚いたような顔をした後、にこりと笑って助手席へと収まった)
ことり「車、運転できるんだね」
海未「ええ。ああ……免許を取ったのはことりがあっちに行った後でしたね。もうベテランですよ」
ことり「この車、かなり良い車だよね? よく知らないけど」
海未「長持ちで耐久力の高い車、とディーラーに伝えたらこれになりまして。操作に癖はありますが、良い車ですよ」
ことり「ふぅん」
海未「私の車のことより、外の景色を見てください。ほら、ここも新しいバイパスが通ったんですよ」
海未(私がそう促しても、ことりは子供のようにはしゃぎ、きょろきょろと車内を眺め回していた。誰かを隣に載せる経験が浅い私にとって、それは何処かくすぐったさを感じさせるものだった)
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海未(日暮れが近付いてきた頃、私はドライブを打ち切り公園の駐車場に車を止めた)
海未(スクールアイドルをしていた頃、この公園にお世話になったことをよく覚えている)
ことり「懐かしいね、ここ。……随分寂れちゃったみたいだけど」
海未「時代も変わるもので、引っ越した人が多いんですよ。この辺りに住んでいる人は多くはないです」
ことり「ふうん」
海未(口に出さずとも、ことりには意味が伝わっているようだった)
海未(人口の減少で商店街は無くなり、穂乃果も県外に行ったこの地域。もう残っているのは私だけだ)
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海未「あの、ことり。聞きたいことがあるんです」
ことり「何?」
海未「何で急に、日本に来ることになったんですか?」
ことり「えっと、ね」
海未(それきり、会話は途切れた)
海未(ことりは何度か口を開けたり閉めたりしていたけれど、ついにはそれもなくなり静寂が訪れる)
海未(まずいことを聞いてしまったかもしれない。車内に漂う気まずい空気の中、私はダッシュボードからフィリップモリスを取り出す)
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海未「一服してきますね」
ことり「海未ちゃん、タバコを吸うの?」
海未「ええ。……ああ」
海未「これも、ことりが向こうに行ってからですね」
海未(ことりの顔が一瞬だけ寂しそうに見えた。それを振り切るように、わざと少し強めに運転席の扉を閉め、喫煙所に向かう)
海未「……ふぅ」
海未(別に普段からタバコを吸っているわけじゃない)
海未(吸うのは多くても月に数本、嫌なことがあった時くらいのものだ)
海未(けど今は、吸わなければいけない気がした。少なくともことりには、準備をする時間が必要だと思ったのだ)
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待ってる
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保守
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海未(わざとじらしながらフィルターまで吸い、長い時間をかけて一服を終わらせる)
海未(車に戻ると、ことりはしかめっ面で鼻を摘んだ)
ことり「海未ちゃん、タバコ臭い」
海未「消臭しておきますよ」
海未(車に備え付けている消臭剤を身体に吹き、ミントガムを噛む。最低限のエチケットだ)
ことり「あのね、海未ちゃん。海未ちゃんは怒るかもしれないし、変に思うかもしれないんだけど」
海未(ミントガムを噛む私の隣で、独り言のようにことりが言う)
ことり「私、デザイナーの仕事を辞めたんだ」
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海未(呆然と開け放した口から、ミントガムが落ちジーンズパンツにへばりつく)
ことり「海未ちゃん、ガム落ちたよ」
海未「デザイナーを辞めたと言ったんですか?」
ことり「うん、辞めちゃった」
海未「何故です? ことりはずっと、服飾に携わりたいと言っていたじゃないですか」
ことり「疲れちゃったのかなぁ。自分でも分かんないや」
海未(そう呟くことりの横顔は、薄紫の夕暮れに照らされいつもよりも寂しげに。遠い世界で一人浮かんでいるように見えた)
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海未「……今日は家に帰るんですか?」
ことり「どうしようかな。お母さんには帰るって言ってないんだ」
海未「私だけにしか言ってないんですか?」
ことり「うん。あっちで仕事いっぱい抱えてるって伝えてたから、急に帰ると心配すると思って」
海未「ホテルを取っていないなら、私の家に来ませんか?」
海未(自分でも驚くほど、スムーズに言葉が出た)
海未(別に泊まりに誘うなんて、昔から何度もやっていたことだ。けれど今日の誘いは、随分と私の心を怯えさせた)
海未(ことりを一人にしてはいけない、そう思ったからかもしれない)
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ーー
ことり「海未ちゃん、一人暮らししてるんだね」
海未「就職と同時に父に追い出されまして。お前も園田の娘なら自立しなければいけない、と」
ことり「厳しいお父さんだよね」
海未「その辺に適当に座ってください。コーヒーとお茶がありますが、どちらが」
海未(最後まで言葉を紡ぐことは出来なかった)
海未(気付いた時にはことりはもう私の目の前にいて)
海未(唇が柔らかな感触で塞がれていると気付くのに、時間はかからなかった)
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ことり「……っは」
海未「ことり?」
海未(私がキッチンの方を向いているほんの一瞬で、ことりは一糸纏わぬ姿となっていた)
海未(同性とはいえそのきめ細やかな肌に恥ずかしさを覚え、目を逸らす)
海未「破廉恥ですよ、ことり」
ことり「ねえ、海未ちゃん。私、海未ちゃんのことが好きなんだ」
海未「……」
ことり「抱いて。ねえ、海未ちゃん」
ことり「私のこと、抱いてよ」
海未(言葉の真意を問う前に、私の身体は動いていた。壊れそうなほどに細いその身体を抱きしめ、此方から口付けを交わす)
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海未「ん……」
海未(舌と舌を絡ませ、お互いの涎を交換する。口の中に入る甘い蜜を嚥下し、その一滴も漏らさぬよう夢中で貪る)
海未(舌が疲れだした頃、ようやく私は唇を離した)
海未「……っ。ことり、けど」
ことり「大丈夫だよ。私はおやつだから」
ことり「海未ちゃんの人生に、出てきたただのおやつ。だから、大丈夫なんだよ」
海未(言葉の意味なんて分かりませんでした。けど、それだけで十分に許しを得たような気がした)
海未(はやる気持ちで、震える指で服のボタンを外していく。そんな一挙一動を、愛おしむようにことりが眺めている)
海未(心臓の鼓動が早くなっていくのを感じた)
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海未「ことり……!」
海未(ようやく服を脱ぎ捨て、ことりを布団に押し倒す)
海未「……あ、シャワー……浴びてません」
ことり「……大丈夫だよ。海未ちゃん、ゆっくり、海未ちゃんのしたいようにして」
海未(言って、軽く頬にキス。もう余計なことを考えるような余裕は無かった)
海未「……はい」
海未(目の前の二つの膨らみを、撫でるように優しく揉む。既に屹立していた先端を前歯で甘噛みし、舌先で舐める)
海未(ことりの口から、僅かに喘ぐような声が漏れた)
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ことり「ん……っぁ……」
海未「下、触っていいですか?」
海未(ことりが頷くと同時に、下腹部の薄い茂みに手を伸ばす)
海未(よく手入れされているのだろう、産毛のような草むらを掻き分けた先にぬめりがあった)
海未「濡れているんですね、指がヌルヌルですよ」
海未(わざと意地悪に言うと、ことりは顔を赤くしてそっぽを向く。その反応が可愛らしく、私は静かに肉ひだの奥へと指を侵入させていった)
ことり「ぅ……あっ、ん……そこ……」
海未「ここ、ですか?」
ことり「うぁっ!」
海未(蜜壺の奥に指を立て、シェイクさせるようにかき混ぜるとことりの身体がびくんと跳ねた。同時に指が締め付けられ、きゅうと間抜けな音を立てる)
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海未「もっと気持ちよくしてあげますからね」
海未(胸の先端から、キスをしながら降下していく。ヘソを超えてさらに進むと、草むらの中に一つの丘があった)
海未(それをくわえ、吸うように口をすぼめると途端にことりの息が荒くなっていくのが分かった)
ことり「クリ……ぁっ……ダメ……そこは……」
海未(弱点なのだろうか、そんなことを思いながら舌先で転がすとその度ことりの身体はびくびくとぜんまい仕掛けのように踊った)
海未(一度口を離し更に下ると、ぬめりを持った割れ目がてらてらと光って私を出迎えた)
海未(割れ目を指で押し開けると汗の混じった、甘酸っぱい匂いがした)
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ことり「ぅみ、ちゃ……」
海未(間を置かず私はその穴にむしゃぶりつく。苦しょっぱい味と、ほのかに香るおしっこの臭いが私の鼻孔を刺激する)
海未(苦手な味だった。けれど、これがことりから出た味なのだと思うと私は興奮を抑えることが出来なかった)
ことり「だめ……来る、やだ、やだ……だめぇ!」
海未(顔にかかる水に、私は思わず口を離す。それがことりのものだと気付くと、何故か一瞬私の心は冷静になった)
海未(ああ、布団を洗濯しなければならないな、と)
海未(けれどその心持ちも部屋に漂う淫臭にたちまち消え失せ、私は自分の女性器を彼女のそこに充てがった)
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海未(ぐったりとしていたことりは、擦りつけられる快感にしばらく身を委ねていたようだった)
海未(しかし私が快感に達すると、お互いもう動く気力もなくなりどちらからともなく眠ってしまった)
海未(それが、ことりとの短い逢瀬だった)
海未「……ん」
海未(窓の隙間から差し込む光に当てられて、私は目を覚ました)
海未「あれ……」
海未(昨日脱いだ筈の服が、パジャマに変わっていた。ことりの粗相で濡れた布団は、水洗いでもしたのか濡れてベランダに干してある)
海未(ことりはもう、部屋にはいなかった)
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海未「……はい、分かりました。此方に連絡がありましたら、ええ」
海未(ことりの携帯電話はもう繋がらなかった。ことりの実家に電話をしても、むしろ今何処にいるのか聞かれるほどで、収穫はなかった)
海未(それっきり、ことりは私の前から姿を消してしまったのだ)
海未「……」
海未(彼女が何故デザイナーを辞めたのか)
海未(何故日本に帰ってきたのか。そして、そして)
海未(何故。好きでもない私に抱かれたのか)
海未(そんなことは分からない。きっと、一生考えても理解出来る事はないのだろう)
海未(けれど、彼女は言っていたんだ。私はおやつだ、と)
海未「おやつは食べたい時に側にあるものです。そうに、決まってるんです」
海未(だから私は待ち続ける。いつか私のところに、おやつが戻ってくることを)
完
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拙作お読みいただきありがとうございました
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乙
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乙
好きでもない私に〜とあるけど
ことりは海未が好きだったんじゃないの?
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>>23
元々海未→ことりで、ことりには海未に対する恋愛感情は一切有りません
あれは海未に抱かれる為の嘘で、海未もそれに気付いています
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乙
ことりちゃんは自分を傷つけることでギリギリ保ってるのかな?
海未ちゃんに甘えて傷つけると解ってても
続編かことりちゃん視点も読んでみたいかな
どちらも無粋になってしまうかもだけど
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https://www.girlsheaven-job.net/18/hitozumaclub/
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http://goolde.seesaa.net/article/458076850.html
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