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('、`*川とりあえず、現時点では『敵無し』のようです

1 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:49:54 UvkJzxI20








――能力バトルってあるじゃん?










……あれ?ご存じ無い?
そこから説明しなきゃダメな感じ?


あっ、うん。……なんかゴメンね?うん。


2 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:50:37 UvkJzxI20
ほら!よくアニメとかラノベとかでさ、なんか超能力で戦ったりするやつ、あるじゃん?

うん。だからそういうやつよ。
……ゴメンね。説明あんまし上手くなくて。



まあまあ!気を取り直して!!

んで。その能力バトルってやつなんだけどさ。
物語的には大体2つのパターンがあるんだよね。

1つは、元々その世界に魔法やら超能力があるって設定のパターン。
まあ、なんだろ?某有名RPG的な?
もう手から火だしたり雷だしたりすんのは当たり前。的な?
まあ、そういうのがベースのやつ。

んで、もう1つのやつが、主人公キャラが現実と変わらないような世界の中で、急に能力に目覚めちゃうパターン。
なんか、こう。神様的なやつ?とかに導かれちゃったり?
あとは不思議なアイテムを拾ったから巻き込まれちゃう的な?

うん。なんかそんな感じ。


3 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:51:20 UvkJzxI20
んで、オチから言っちゃえばさ。
結局のところ、私が体験したのは後者の方なんですよ。うん。


そりゃあ、ねえ?最初はビックリしたんだよ?
私地味だも―ん。マジ年齢=恋人いない歴の真性喪女ですよ?

そんなんがいきなり漫画さながらの能力者になっちゃうんですよ?
いや―これでビックリしない方が無理な話だと思うな―。うん。
いや、マジで。



ただ、まあ。ね?ほら、そんな地味な私でも!
趣味と言ったら本を読むか日記やメモを書くかってくらいの地味女の私でも!!
何か未知の能力に目覚めちゃった日にゃあ心が踊りましたよ!?

そりゃあ踊りましたとも!EXILEも真っ青になるくらい踊りましたよ!?
曲知らないけど。


4 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:52:09 UvkJzxI20
ああ!私って特別な人間だったんだ!!
今までの糞みたいな人生はこれからの熱いストーリーの前フリだったんだ!!……ってな具合にね?
盛大に盛り上がりましたとも!




いや、でも、ほら。ねえ?
実際のところさあ、違うじゃん?やっぱり。

だってさ―……まさか能力に目覚めた人間が地球の人口の半分だなんて聴いちゃったら……そりゃあ、ねえ?
特別とかなんでも無いじゃん?
2分の1じゃん?フィフティーフィフティーな訳じゃん!?

もうその情報を耳にした時点で私はかなり萎えた訳よ。
そりゃあ賞味期限が1ヶ月も過ぎたミズナ並みに、しなっしなですよ!!
そりゃあ、しなっしなですよ!?




……な―の―に―さ―。


5 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:52:51 UvkJzxI20
まさかの。まさかの追い打ちですよ。
いや、もうまじ勘弁して欲しいんだよね―本当に。




まあほら、その原因とかはさあ。
ここまで私の話を聴いてくれたんだし、なんとなく察しちゃうでしょ?


要するに、能力ですよ!私の能力!!
こいつがね―……いや、もう本当なんなんだろうね!?
うん!マジで!!
何か私ってば変なテンションになっちゃってるけどさあ!?
いや、これは仕方ないと思いますよ!?実際!!


6 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:53:35 UvkJzxI20
いや、ね?勘違いとかして欲しくないから言うけどさあ!
私の能力がショボ過ぎて役に立たないとか、そういうアレじゃあないのよ!?
っていうかむしろ逆!!180゜リバース!!

いや、ハッキリ言ってめちゃくちゃ強いよ!?
おまけにこの能力が無いとやってけないくらい便利だよ!?
まあ早い話をぶっちゃけチートな訳だよ!!?
凄いんだからね、私の能力!!




でもね―……なんだろうね、うん。
どうしてか私は……う―ん。
やっぱり気持ちが萎えちゃうんだよなあ。
何でなのかね―……?



まあ、アレかな?強いて理由を探すなら。
結局のところ……


7 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:54:34 UvkJzxI20







――とりあえず現時点では『敵無し』だから。なのかね―?






.


8 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:56:00 UvkJzxI20







('、`*川とりあえず、現時点では『敵無し』のようです







.


9 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:56:55 UvkJzxI20
('、`*川「」テクテク

('、`*川「」テクテク

('、`*川「」テクテク












('、`*川「飽きた」


10 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:57:39 UvkJzxI20
代わり映えの無い景色をひたすら歩くこと2時間とちょっと。
正直な話、この私はめちゃくちゃ、参っているわけですよ。

別に歩きっぱなしで足が擦りきれただとか、誰かに追われて体力が無くなっただとか。
そういうアレじゃなくてね?うん。

あてもなくテクテクテクテク。
な―んにも変わりゃしない景色をオカズに歩いてたら、そりゃあ心が参っちゃうって訳ですよ。うん。



('、`*川「1面、荒野なんだもんね。飽きるよ、そりゃあ」



視界に入るのはカッピカピに乾いてひび割れたデコボコ地面。
それから多分、ビルやマンションの成れの果てっぽい黒い塊。
いや、塊っていうか残骸?
ぶっちゃけ形ほとんど残って無いから分かんないわ。
炭だな、ありゃあ。うん。
おまけにお空はどんより灰色、曇り空。


11 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:58:39 UvkJzxI20
('、`*川「ああ、緑が恋しい。もうね、ぶっちゃけた話するとね、辛いんですよ。私(あたし)はね」

('、`*川「歩けど歩けど、目に入るのは赤茶色の海な訳だし―?
アクセントは黒い鉄屑くらいだし―?」

(-、-;川「ああ、しんど……草木を自由に生やす能力者とかいないもんかね―?
もしそんな人がまだ生き残ってんだったら、私はありったけの食糧をお譲りしますとも」

('、`;川「お望みなら土下座だってしますとも。最悪はセックスだってしますとも。
ただしイケメンに限るけど」



そんな感じで文句を垂れ流しながら歩いている訳ですよ。いや、まあ文句っつ―か本音?
だけど。
まあ私の食糧だってそんなに無いからね―実際。
今しっかりと背負ってる、この大きめの黒いリュックに半分くらいかな。
だからそろそろ食糧補充できなきゃ、いくら私でもヤバイんだけどね。


12 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 20:59:27 UvkJzxI20
('、`*川「ぶっちゃけた話、人類の最大の問題は能力者による戦いなんかよりも食糧難だと思う」



あ―あ―、そんなこと考えてたらお腹空いてきちゃったし。
あと小1時間くらい歩いたらご飯でも食べますかね―。
うん、そうしよう。

そんな事を考えながら、私は首にかけたヘッドフォンを耳に当てる。
実はこのヘッドフォン、結構高いんだよね―多分。
拾ったやつだから分からんけど。


13 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:00:07 UvkJzxI20
('、`*川「次の町まで電池、持つかな―?電気が使えないって、ほんっと不便だよなあ」



持ってて良かったCDウォークマン!
残りの電池残量が気になりつつも、退屈で発狂しない為にと、私は音楽を楽しみながらまったりと歩く訳ですよ。



('、`*川「人生は〜長〜いの〜だろ〜う♪」



いや、まあ。ぶっちゃけ音楽とかこれっぽっちも興味無いんだけどね?
うん。


14 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:00:56 UvkJzxI20
…………………………………………………


ある日のこと。ある朝のこと。ある夜のこと。
人々は夢を見た。神を見た。天恵を見た。

気が付くと、人々は異能の力を得た。
目的も、理屈も、意味さえも知ることなく。
人々は圧倒的な力を手に入れた。


そうして、与えられた力は人々を歪ませた。
暴力、支配、復讐。
無法地帯とはまさにこのこと。

欲望の為に暴れ、乱れ、狂い咲き。

音をたて、ゆっくりと、まったりと。


――それでもこうして、地球は死んでいくのだ。

…………………………………………………


15 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:02:17 UvkJzxI20






(# ゚e゚)「何なんだよテメェわ――!?」

('、`*川「あっ、伊藤ペニサスです。19才の乙女です。趣味は読書とメモを書くことで……」

(# ゚e゚)「そういう事を言ってんじゃね―んだよこの化け物があ――!!」

('、`;川「え―……何この人。意思疏通が出来ないってこわいんだけど」



なんかね―嫌だよね―こうやって直ぐに怒鳴る人ってさ。
しかもそれが髭モジャの汚ならしい大男だと余計に嫌だわ。うん。

血管浮き出る程にキレてるっぽいしさあ。
めっちゃツバ飛んでるし。


16 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:03:36 UvkJzxI20
(#’e’)「何なんだよ!!テメェ一体、何しやがったよ――!?」

('、`;川「いや。何って言われても普通に音楽聴きながら歩いてただけなんだけど」

(#’e’)「ふざけんじゃねえ!?じゃあ何が!?テメェの能力っつ―のはよお!!」

(# ゚e゚)「『音楽聴きながらのんびり歩いてると、周りの人間が勝手にポックリ逝っちゃう能力』なのかよ糞女ああああぁぁぁ!!」

('、`;川「え―……なにそれこわい。普通に違うんだけど。っていうか私なにもしてないし」



とりあえず現状を把握しなきゃ。

まず私の目のには小汚い大男。
なんかさっき私に向かって小石を飛ばして来たから多分この人は能力者っぽい。
ここまで生き残ってんだし、なかなか強いんじゃないかな?

それと、その両隣にやっぱり小汚い男が2人。
銃を持ってるから能力者では無いと思う。


17 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:05:00 UvkJzxI20
んで、こっからが問題なんだけど……
ちょうど私の斜め後ろに2人。
きれいに右側と左側に1人づつ。まあ例のごとく武装した小汚い男なんだけど。

うん、まあ。あれだよ。
早い話が死んでるんだよね―。



……いや、マジで。



(# ゚e゚)「じゃあ何だ!?ああん!?」

(# ゚e゚)「テメェは何もしてないのに、勝手に俺様の可愛い手下どもが死んじまったって言いてえのか!?」

('、`*川「え?いや、まあ。そりゃ私を囲うように銃弾バラまいてたら誤射ぐらいするんじゃ無いの?」

(# ゚e゚)「ふざけんじゃねえ!!こちとら何百人この作戦でぶっ殺してると思ってんだ!?ああん!?」

(# ゚e゚)「今の今まで、1度たりとも!!こんな馬鹿な事は1度たりとも起きた事は無かったんだぞ!?ふっざけんじゃねえよこの糞女!!」

('、`;川「いや、んな事を私に言われても」


18 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:11:51 UvkJzxI20
一体全体どうしてこうなったのか。
それは私が聴いていたアルバムがようやく、1周して最初の曲に戻るか戻らないかってくらいの時までさかのぼる……











(’e’)「なあ、嬢ちゃん。俺達とあそんでくれや?」



鼻歌を歌いながらテクテクしていた私の目の前に、どこから現れたんだか大男が飛び出して来た。


(’e’)「いいだろ?いい子にしてりゃあ、殺しはしね―からよ。なあ?」


そんな事を言いながら手にしたナイフを見せびらかして来たわけですよ。
もう……ね。テンプレ。テンプレだよゴロツキの!


19 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:12:39 UvkJzxI20
身体はデカイけど、なんかそれだけって感じの小汚い男だし。
セリフにしたってさあ?アンタってもうちょい自主性とか個性の主張とか出来ないのかね―本当に。
そんなセリフばっかり言ってるから悪人は簡単にヒーローにやられちゃうんだよ!

まあ私が心の中で説教していると同時にね?
多分、ガレキやら鉄屑なんかに隠れていた男達が銃を構えながら私を取り囲んだのよ。
あっちなみに全部で5人ね。

もうね―ここまでショボい悪人のテンプレされちゃうとねえ?
僕たちはカマセです!って自己主張しながら歩いてるのと一緒だと思うんだけどね―。
本人達はカッコいいと思ってやってるのかね―?


20 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:13:37 UvkJzxI20
まあ、ね。とりあえずこういうアホ共に絡まれるのも慣れてたからさあ。



('、`*川「あっ、遠慮しときます」

(’e’)「はっ?」

('、`*川「っていうか遠慮とか、そういうの以前に無理です。
オジサンなんか汚そうだし、こう、何だろ?生理的に無理っていう感じ?ですかね。
不細工だし。不細工だし。あとは……不細工だし」

(’e’)「はっ?」

('、`*川「そもそもファーストコンタクトがゴミじゃないですか、実際。
何で初対面の人間に脅されなきゃアカンのよ?
なんなの?馬鹿なの?死ぬの?っていうぐらいあり得ないと思ったんで―」

('、`*川「だから遠慮しときます」

(’e’)「」



とりあえずキッパリお断り。さあ、さっさと先に進みましょうって思ったんだけどね。


21 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:14:48 UvkJzxI20
最初はポカーンと間抜けな顔した大男の表情がさ、茹で上がったカニみたいにみるみる真っ赤になっちゃってさあ。
多分、私の態度が癪に触っちゃったんだろうね。
ああ―カニ食べたい。



(# ゚e゚)「殺せえええええぇぇぇぇ!!」

('、`;川「え―……なにゆえ―?」



そんな大きな怒鳴り声がスイッチだったみたいで私を取り囲むんだ男達が一斉に発砲してきたのよ。

ちなみに目の前の不細工さんは、地面から掌サイズの小石をふわふわと浮かせたかと思ったら、まるでマシンガンみたいな勢いで次々と私に飛ばしてきた。
手を触れないで物を操ってるって事は、念動力系の能力なんだろうな―。


22 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:16:15 UvkJzxI20
んで、まあなんやかんやで、パカスカ撃たれたものの、結果的に私は無傷。

その代わりに私の後ろの方に居た男達が身体中に小石や鉛玉をめり込ませてお亡くなりになりました。
そんな感じ。

はい、回想おしまい。







('、`;川「あの―。私、もう行って良いですかね?
確かに目的も行先も決まってはいないんですけど、とりあえず歩かない事には事態が進まないんで」

(# ゚e゚)「んなもん許される訳ね―だろうが!!テメェは俺様の手下をぶっ殺してるんだからよおおおおぉぉぉ」


23 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:17:59 UvkJzxI20
('、`;川「いや、んなこと言われても、困りますって。
第一、あなた達は私を殺そうとした訳ですよね?
もうこの際それに関しては文句も言いませんし、こんな世界だからある程度は諦めがつきますよ?」

('、`*川「ただ、まあ逆を言っちゃえば、あなた達が死んだとしても、それはある程度仕方ないって事なんじゃないですかね?
仕掛けられたこっちが文句言うんならともかく、何か勝手に自滅してる訳ですし」

('、`;川「正直な話、他人の命の責任を押し付けられる程、困っちゃうものって無いと思うんですよ。私。」

(# ゚e゚)「ごちゃごちゃ小難しい事わめいてんじゃね―よこのブスがああああぁぁ!!」

('、`#川「何だろう?不細工にブスって言われると7割増でイラッとするよね」

(# ゚e゚)「どっちにしろテメェがどんな高説タレようがテメェの命はこっちが握ってるも同然なんだよおおおぉぉ!!」

(# ゚e゚)「つまりいいいぃぃぃぃ!!」

(# ゚e゚)「貴様の命運はああああぁぁぁ!!」



(# e゚)「地獄逝き1択ううううぅぅぅ!!」



不細工さんがそう叫ぶと同時に、私の足下が震えた。


24 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:19:48 UvkJzxI20
('、`;川(えっ?何コイツ、そんなに強い力持ってるの?)



あれ?もしかしてこの人ってセリフの割には強い感じ?カマセじゃない感じ?

大地の震えは徐々に激しさを増して、やがてひび割れる。
破片になった小さな石ころが、ふわふわと浮き上がって行く。
そんな光景に呆けている私のスキをつくかのように、手下の2人が私の両サイドを挟み込むように駆け出した。

うわあ……この人達ヤる気マンマンじゃん。
引くわぁ……



(#’e’)「糞生意気なブスめ!!この俺様の力を冥土の土産に教えてやるわああああぁあぁ!!」

('、`;川「……いや、あの結構ですけど」


25 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:23:31 UvkJzxI20
(#’e’)「このセントジョーンズ様の力は『超念動力(パワフルサイコキネシス)』!!物体を浮かせて操る力!!」

('、`;川「もしも―し?」

(#’e’)「シンプルにして最強!!その根拠は……」

('、`*川「お腹空いたな―」



ボゴンッ!と何とも言えない鈍い音が響いたかと思うと、男の目の前の大地がついに抉れて、まるで小惑星のような巨大な岩石が宙に浮かび上がった。
念動力っていうのは正直な話ありふれた能力な訳なんだけど、こんな巨大な物を振り回す程のパワーは初めて見た。



(# ゚e゚)「高層ビルの1つや2つを軽々しくぶん投げる程に超絶なパワフルさにあるんだよおおおぉぉぉ――!!」



――その叫びが決戦の合図だった。


26 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:24:41 UvkJzxI20
セントジョーンズがの怒りの叫びと同時に、超巨大岩石が念動力によってペニサスぶん投げられた。
それと同時に両サイドの手下達は銃を構える。



( ノAヽ)「仲間の仇だ!」

( `ー´)「とっとと死ねや売女が!」

('、`;川(うわあ―まじか―)



前に進もうが後ろに進もうが、小惑星級のあの岩石から逃れる事など不可能。
さらに2人の男達の怨みが籠った銃弾の雨は、容赦なくペニサスの逃げ場を奪う。


27 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:25:29 UvkJzxI20
横からは無数の銃弾。上からは回避不能な巨大岩石。
そもそもどちらを避けるにしても、この状況からすれば不可能な話だが、ペニサスの能力が不明な上、なぜ自分の手下があっという間に2人も殺されたかが分かっていない。

不確定要素の多い中、それでも目の前の女を確実に仕留めるための、セントジョーンズ必殺の2重の策だった。



(# ゚e゚)「潰れろおおおおおぉぉぉ!!」



響き渡る銃声ごと押し潰さんとばかりに巨大岩石はペニサスに向かい、地面に突き刺さるかのように一直線に着地した。

その質量たるや、砂煙が巻き起こり、油断しようものなら体ごと持ってかれそうな巨大な衝撃波を産み出す程に圧倒的だった。


28 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:26:16 UvkJzxI20
(*’e’)(ふひっ……仇は討ったぜええぇぇ!?)



セントジョーンズは勝利を確信し、口角をつり上げた。




……だが、しかし

砂煙の中、1人の影が浮かび上がった。



(’e’)「」

(’e’)「」

(’e’)「」








('、`*川「……いや、あの」


29 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:27:06 UvkJzxI20
(’e’)「」

('、`;川「何か、スイマセン」

(’e’)「……な……ぜ……!」









('、`;川「いや、あの。本当、無傷で、スイマセン、はい」

(# ゚e゚)「なあああああぁぁぁぜええぇぇじゃあああああぁぁぁぁ!!?」



ペニサスは生きていた。
無傷で、まるで何事も無かったかのように、そこに立っていた。


30 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:30:18 UvkJzxI20
セントジョーンズの狙いは完璧だった。
確信を持っていたと断言できる。

そもそも、仮に狙いが多少ずれたとしても、あの巨大な質量からしたらわずかな誤差でしかない。
仮に10メートルや20メートル程その狙いが反れたところで、岩石に押し潰される事には変わりないはずだ。

にもかかかわらず、何故か肝心の岩石はペニサスにちょうどギリギリ当たらない程度、後ろに轟音を轟かせながら落下。

両サイドで鉛玉をバラ撒いていた男達は身体を蜂の巣みたいに穴だらけにされ、オマケとばかりに衝撃波に巻き込まれ、遠くにぶっ飛んで無様な死に顔を晒している。



(;’e’)(明らかにおかしい!!最初に囲んでいた時も!!2人に挟み撃ちさせた時も!!)

(;’e’)(そもそも銃で挟み撃ちをする時は、味方同士の誤射を防ぐ為に直線上に並ばないように指示してある!!)


31 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:31:01 UvkJzxI20
(;’e’)(俺の手下だって馬鹿じゃねえ!?テメェの命がかかってる事をそうそう忘れるわけが無いんだよ!!なのに……なのに……!!)

(;’e’)(なぜ俺様の手下達は銃弾で死んでいるんだよ!?おかしいだろ!!今まで何百とこの戦法でやってきて誤射なんか1度も起こした事無いんだぞ!?)

(;’e’)(それに……あのブス!!俺様の『超念動力』の狙いをどうやって反らしたっていうんだよ!?あんな物量の塊を動かせるのは俺くらいなんだぞ!?)



なぜペニサスが無傷なのか。
考えられる理由としてセントジョーンズに浮かんだのは、ペニサスの能力が『反射』の能力である。
または、自分自身と同じく『念動力』の能力かだ。


32 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:35:03 UvkJzxI20
もしペニサスが物体や衝撃を『反射』する能力を持っているなら、手下達の銃弾はそのままの角度で跳ね返る。
つまり、なぜ手下達が銃弾で死んだのかという説明はつく。

だが逆に、セントジョーンズのあの圧倒的な巨大岩石の軌道を反らした事は説明がつかない。



(;’e’)(俺の岩石は確実にアイツに向かって一直線に向かって行った……にもかかわらず!)

(;’e’)(まるで岩石がアイツの事を『避ける』かのようにアイツの後ろに落下した!これは反射じゃ不可能な筈だ!!)


その逆もしかり。
ペニサスが『念動力』使い(そもそも、セントジョーンズより強力な念動力使いなど、そうそう居ないだろうが)だったとした場合、岩石の軌道を反らす事は出来てるかもしれない。

だが、あんな馬鹿みたいに重い物と同時に、時速1000キロ超えの無数の鉛玉の軌道を同時に変える事は まず不可能。



つまり、ペニサスの能力は説明不可能。


33 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:36:07 UvkJzxI20
(;゚e゚)「なぜだあああぁぁぁ!!テメェ一体なにしやがったんだ!?どうして生きてるってんだよおおぉぉぉ!?」



セントジョーンズは顔を真っ赤にして咆哮する。
汗を体中から滝のような汗を吹き出し、目玉が飛び出るのでは無いかと思うほど見開き、恐怖と憤怒を吐き出す。

しかし、当のペニサスはほんの少しだけ困ったような顔で、至って平常なトーンで――






('、`;川「いや、だから私は何もしてないんですって」







――否定。ただ、否定するのみ。


34 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:36:52 UvkJzxI20
この態度にセントジョーンズは頭の何か大事な物が音をたてて切れた。



(# ゚e゚)「ざけんじゃねええええぇぇ!!」

('、`;川「お、横暴だ―……」



念動力が効かないならば直接刺し殺せば良いだけだ。
我を忘れたセントジョーンズが大型のナイフを構えペニサスに駆け出した。





……まさにその時!!


35 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:38:56 UvkJzxI20
(# ゚e゚)そ「ぎゃっ……!?」

Σ('、`;川「あっ」



セントジョーンズはよきせぬアクシデントに見舞われた。

岩石を浮かせた事による副産物。
つまり、念動力を使用した際に産まれた巨大なクレーターに躓いたのだ。


(((;゚e゚)))「ぎゃあああああああ……!!」ゴロゴロゴロゴロ……


ごろごろと転がり落ちるセントジョーンズは、中心まで行くとようやく止まった。

だが、転がった衝撃で構えていたナイフが彼自身の喉元に突き刺さり……


(;゚e゚)「……ばか……な……!?」


36 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:40:04 UvkJzxI20
(; e )「」

(; e )「」

(  e )「」ガクッ






('、`;川「え―……?」



――そのまま絶命したのだ――


37 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:40:53 UvkJzxI20
('、`;川「……え、ちょっ!?え―?」

('、`;川「うっそ―ん」

('、`;川「何だかんだで3年近く能力者にケンカ吹っ掛けれてるけど」

(-、-;川「……こんな下らないオチは初めてだわ、マジで」



うん、本当に何したかったんだろうね、この人。

そりゃあ、私も能力は使ったよ?
使ったけどさあ、それでも1歩も動いて無いのに勝手に自爆ってどうなのよ?



('、`*川「……まあ、とりあえず銃の1丁くらいは貰っておきますか」



衝撃波でぶっ飛んだ時にでも落としたであろう銃を拾っておく。
うわ、久しぶりに持ったけど意外に重いなコレ。
とりあえずリュックに入れよう。うん。


38 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:41:45 UvkJzxI20
それから、もっかいヘッドフォン装着して。



('、`*川「さ―てと。気を取り直して、行きますか」



大きな穴っぽこ1つと、アホな死体5つ。
そんなシュールな光景にさよならするために私はひたすらテクテクすることにした。



('、`*川「あなた〜の事も〜思い〜出すのだろ〜♪」



あんまり興味の無い歌を歌いながら。
今日もひたすら、まったりと。


39 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:42:27 UvkJzxI20
つづく。



ありがとうございました。


40 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 21:43:55 hrhZmb360
おつおつ
ペニサスの能力気になるなあ
期待してます!


41 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 22:14:04 0qQnmXDc0

小説書くの慣れてないのかな?
うん。が多過ぎな気もした


42 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 22:19:59 4jKaf3MY0
期待


43 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 22:35:47 aGOikryY0
おつ


44 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 22:38:28 eENOkC7Q0
こういうの好きだ


45 : 名も無きAAのようです :2014/11/02(日) 22:49:01 tZ4lBl3Y0
おつ
ジョーンズあっけねぇし自爆は恥ずかしいなw


46 : 名も無きAAのようです :2014/11/03(月) 00:24:50 d8Q9Zcjg0
ラッキーマンは....違うか
乙乙


47 : 名も無きAAのようです :2014/11/03(月) 02:10:22 c3U4ot1o0



48 : 名も無きAAのようです :2014/11/03(月) 11:16:23 owWg1Spw0
鬼束か いいね
文章にリズムがあって読みやすい



49 : 名も無きAAのようです :2014/11/03(月) 13:54:22 yh3mEB5I0
感想ありがとうございました。
多分月1更新、中編になります。


50 : 名も無きAAのようです :2014/11/16(日) 19:02:42 6rJ.80ws0
このやる気ない感好き


52 : 名も無きAAのようです :2014/11/26(水) 18:15:05 el5tqy4A0
とりあえず、現時点では『更新無し』のようだな

待ってるよー


53 : 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 10:21:46 458X01pA0
ノリ, ^ー^)li「ヤッホー☆皆さんこんにちは―!!」

ノリ, ^ー^)li「ラブリーセクシーキューティクル☆」

ノリ, ^ー^)li「皆のスーパーアイドル!ジャンヌちゃんの登場だよ!」

ノリ, ^ー^)li「えっ?お前なんか知らない?聞いたことも無いって?」

ノリ, ^ー^)li「も―!ひっど―い!!そういうイジワル言っちゃう悪い子は」





ノリ, ^ー^)li「脳髄引きずり出すして腐乱死体にしちゃうぞ?このウジ虫どもが?キャハ☆」


54 : 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 10:23:29 458X01pA0
ノリ, ^ー^)li「さてさて、ジャンヌちゃんのお名前をしっかり覚えてくれたところで今日も早速やっちゃいましょう!」

ノリ, ^ー^)li「えっ?何をやるのかって?」

ノリ, ^ー^)li「そのくらい察せよ☆だからテメェは能無しなんだよ糞ったれの短小包茎野郎が」

ノリ, ^ー^)li「キャハ☆」

ノリ, ^ー^)li「も―……空気の読めないそんな貴方の為にジャンヌちゃんがこのコーナーの説明をしてあげちゃうぞ?」

ノリ, ^ー^)li「崇め奉りやがれ猿どもが。キャハ☆」

ノリ, ^ー^)li「ここでは作中に登場した能力者達をジャンヌちゃんが詳しく解説しちゃうんだぞ☆」

ノリ, ^ー^)li「分かったかな?分からない奴は死ねよな?」

ノリ, ^ー^)li「キャハ☆」



ノリ, ^ー^)li「……」



ノリ, ^ー^)li「それでは早速、解説しちゃうよ〜ん☆」


55 : 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 10:24:31 458X01pA0


【セントジョーンズ】


   (’e’)


・通り名…無し
・能力名……『超念動力(パワフルサイコキネシス)』
・能力系統……「念動力(サイコキネシス)」
・得意技……「隕石落とし(メテオフォール)」


念動力を利用した単純かつ、暴力的な攻撃方法が主な戦術。
無能力者の子分を引き連れ、賊まがいの行為を繰り返していたがペニサスの謎の能力の前に自滅した。
実は念動力系統の能力者にしては最強レベルの力を持っているのだが、能力の使い方があまりにも力任せな為に真価を発揮できずにいた。



.


56 : 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 10:26:15 458X01pA0
ノリ, ^ー^)li「今回は無様にも自滅したセントジョーンズちゃんの紹介だよ。ぶっちゃけただの噛ませ犬だけどな。キャハ☆」

ノリ, ^ー^)li「セントちゃんの能力は『超念動力』。普通の念動力よりも操る力が強いってだけなんだけどね」

ノリ, ^ー^)li「芸が無い男って死ねばいいのにね☆あっもう死んでたんだった!てへぺろ☆」

ノリ, ^ー^)li「念動力は能力者の中でもメジャーな能力だよ!シンプルだけど戦略によってはいくらでも化ける怖い能力!!」





ノリ, ^ー^)li「まあ、セントジョーンズが登場した時点で雑魚キャラ臭ぷんぷんだったけどな!キャハ☆」


57 : 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 10:28:39 458X01pA0
ノリ, ^ー^)li「得意技の『隕石落とし』はセントちゃんがペニサスちゃんに向けて使った大技だね!」

ノリ, ^ー^)li「力の限りの念動力で大地を大きく抉って隕石みたいに敵にぶつける超パワフルな技だよ!!」

ノリ, ^ー^)li「まあ大技なんか当たらなかったら犬の糞程の価値も無いけどな。キャハ☆」

ノリ, ^ー^)li「こいつマジで無能だよな。死んで清々したわ」



ノリ, ^ー^)li「キャハ☆」




ノリ, ^ー^)li「ちなみにセントちゃんは死んだからもう出番は無いよ☆」


58 : 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 10:31:20 458X01pA0
ノリ, ^ー^)li「さてさて今回はここまでだよ!」

ノリ, ^ー^)li「次回のお話では男の子は必見かも!」

ノリ, ^ー^)li「なんと女の子なら自由に操れちゃうエロ〜い能力が登場しちゃうよ!!」

ノリ, ^ー^)li「男って本当に下半身でしか物事を考えられないよな!死ねばいいのに☆」

ノリ, ^ー^)li「そろそろお別れの時間だぞ☆」

ノリ, ^ー^)li「ラブリーセクシーキューティクル☆」

ノリ, ^ー^)li「皆のアイドル☆ジャンヌちゃんでした〜」




ノリ, ^ー^)li「次回も見てね?てか見ないと眼球に縫い針突っ込むからな?」

ノリ, ^ー^)li「キャハ☆」


59 : 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 11:12:40 OufASWUI0
ジャンヌちゃんカワイー☆
日本語不自由なとこも含めてダイスキ☆


60 : 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 11:19:41 85YsKdpo0
ジャンヌ!おぉジャンヌ!ジャンヌぅぅ!
ジャンヌ可愛いよぉジャンヌぅぅ!


61 : 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 12:37:36 .LHqUF4Q0
タイトル見た瞬間デミそこ思い出したわ


62 : 名も無きAAのようです :2014/11/29(土) 12:14:18 4fxQQWkU0
1です。
結構な文量になりそうなんだけどまとめて投下するのとある程度完成したら分割して投下するのとドッチがいいんかな?


63 : 名も無きAAのようです :2014/11/29(土) 12:16:43 b3UnBvB60
後者だと読者が離れにくいね


64 : 名も無きAAのようです :2014/11/29(土) 13:22:41 9/lAhOZQ0
三日ずつ明けて投下すれば?
一気に読むより焦らされた方がwktkするし


65 : 名も無きAAのようです :2014/11/30(日) 02:19:16 ZEAKtXwI0
>>1がやりたいようにやるのが一番いいよ


66 : 名も無きAAのようです :2014/12/02(火) 10:21:36 CTh7DTnc0
ありがとうございます。
とりあえず基本は月に3〜4つに分けて投下して、1話更新にしようと思います。

と言うわけで次回の投下は今週の金曜日を予定しています。
なお第1話(前回の話はプロローグになります)については3つに分けて投下したいと思います。

地の文が結構ガッツリと入ります。
また、話数が進むにつれて、性描写やグロ描写が増えますのでご了承ください。

1でした。


67 : 名も無きAAのようです :2014/12/02(火) 11:02:30 xykX1VUIO
なるほど。攻略を進める程ボーナスステージが増えると言う訳か。


68 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:14:42 /vHoj3r60
投下するよん。
とりあえず3分の1です。


69 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:21:18 /vHoj3r60


――能力――



それは神が我々人間に与えたもうた天罰であり、贈り物であり、試練である。







誰かが、そう言った。




そして多くがそれに賛同した。


70 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:23:29 /vHoj3r60
あの地獄を思わせる、新世界の幕開けの鐘の音。
何千と受け継いだ我ら人類の営みを全て消し去った輝く風。
そして颯爽と希望を掠めとったあの灼熱。

わざとらしく、詩的に書くならばこんなとこだろうか。


耳を突き破る轟音。
それから網膜を焼き尽くす白い光、
そして灼熱、暴風、唸るような大地の振動。

それら全てが合わさって、かの原爆を彷彿とさせた。
あの爆発は、あっという間に途方も無い数の命を消滅させた。



今この本を手に取っているあなたなら分かる筈だ。
あなたの、そして私の記憶からも、決して消える事の無いあの地獄の始まりを。


71 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:24:09 /vHoj3r60
果たして、そんな光景を目の当たりにしたあたりからなのだろうか。

それまでの堕落したような、ゆるやかな平和を当たり前な顔をして享受していた、無神論者達が急に立ち上がり叫びだす。



「この地獄の爆発こそ、天罰に違い無いのだ」と。



結局、あの終末と幕開けを同時にやってのけた最強最悪の能力者、【原子王】が引き起こした大爆発から早2年。
本書を完成させるにあたり、あっという間に2年の月日が流れてしまった。

この2年という長いようで短い期間に、一体どれほどの人間が神に祈りを捧げたのだろうか。
どれほどの人間が神に赦しを乞うたのだろうか。
どれほどの人間が赦されたのだろうか。

そして、どれほどの人間がこの天罰という名の神からの贈り物によって、尊い命を落としていったのだろうか。


72 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:24:56 /vHoj3r60
果たして現在、この地球上にはどれほどの人が生き延びているのだろうか?

あの、平和だった時代の7割だろうか? それとも5割だろうか?
もしかしたら、きっと3割程度ではないだろうか?

あくまで私の主観的判断だが、確実に人類は。
そしてこの地球さえも、ゆったりと絶滅に向かっていることだろう。


私は頭が痛くなる。
一足先に消えていった我が人類の同胞達は一体どんな気持ちだったのだろうか?それを考える度に。

恐怖?苦痛?憤怒?
そして絶望?

神が与えたと言われる圧倒的な、この能力(暴力)の犠牲者は一体どんな心持ちで死んでいったのだろうか?


弱き者は奪われ、痛め付けられ、辱しめられ、殺される。
それが鉄の掟となった、原始的なこの世界。

これが天罰なのだろうか?贈り物なのだろうか?
果たして、これが神とやらの有り難き天恵なのだろうか?


73 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:25:52 /vHoj3r60
私は、一人の学者として。また、一人の無神論者として。
読者の一人一人に問い掛けたい。

もしこの本を手にした、あなたの心のどこかに神がいるのなら。
毎日、ほんの少しだけでも、未だ見ぬ、神という茫漠とした存在にすがるように祈っているのなら。

私はあなたに問い掛けたい。


何万何億の尊い犠牲を払った、この神の試練とやらを。天罰とやらを。
もし仮に、我々が乗り越えたとしたならば。

その先には、一体どれほど素晴らしい桃源郷が広がっていると言うのだろうか?


思考を停止して、ひたすら夢を見ている、愚かなあなたに。

私は問い掛けたい。




『長岡ジョルジュ著  ボイン伝説』

『第1章 私は神を信じない。信じるものはオッパイだけだ』より抜粋――


.


74 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:27:13 /vHoj3r60







('、`*川とりあえず、現時点では『敵無し』のようです






.


75 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:28:03 /vHoj3r60



錆び付いたランプが陽光を思わせる橙色のボウッとした明かりをとろかせる。

木製の古びた壁に映る男達の影絵は、どこもかしこも賑やかに騒ぎ立て、笑い声にあわせて踊るよう蠢いている。
やたら身なりのキチンとした長身のマスターが、カウンター越しに黙々とグラスを磨きながらも、店内の光景を時おり静かに眺め、ほんの少しだけ満足そうな笑みを浮かべる。
そしてまた思い出したかのように黙々とグラスを磨き始める。

そんな、ごくありふれた酒場の雰囲気に似合わぬ雰囲気で、二人の男女がやたら真剣な顔つきをして、傷だらけの小さな丸テーブルに向かいあっていた。


76 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:29:20 /vHoj3r60
lw´‐ _‐ノv「女?」

ミ,,゚Д゚彡「ああ」



樽製のジョッキに並々と注がれたビールを豪快に流し込んだ男は、静かに頷いた。
その体はガッシリと大柄で、いかにも酒場にたむろする光景が似合っている。
伸ばしきった無精髭に見え隠れする幾つもの古傷や、腰元でホルスターの蓋を押し上げて妖しく黒光りする拳銃を見る限り、今までに何度も修羅場をくぐりぬけて来た強者のようだ。



ミ,,゚Д゚彡「間違いなく女だった」

lw´‐ _‐ノv「そう……」



対して向かい合い、両手でゆっくりとミルクセーキをすする女の方は少し変わっていた。
猫のように身体を丸め、明らかにオーバーサイズであろうグレーのフード付きパーカーにすっぽりと身を隠すような格好で椅子に浅く腰掛けている。


77 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:30:47 /vHoj3r60
フードの隙間から見え隠れする髪の色は、思わず目を引くような、絹糸のように艶やかな白。

糸のように細い目が特徴的で身長は140もあるか無いかというところ。


少なくとも、このような酒場で一杯やるような光景は似合わない少女だった。



ミ,,-Д゚彡「俺は見たんだよ。しっかりとこの目でな」

ミ,,゚Д゚彡「『その女』がよ。10人近くの集団に襲われていたんだ。
たかが女1人に鉛玉やら能力攻撃のオンパレードだ」



男、フサギコが何かを思い出すかのように腕を組み、どこか上の方を見上げて語りだす。


78 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:32:26 /vHoj3r60
ミ,,゚Д゚彡「あいつらは鼻っから殺す気だったんだろうな。食料や金が目当てだったんだろうよ。
文字どおりの袋叩きだったよ」

ミ,,-Д-彡「俺は岩影に隠れながら女にちょっとばかし同情したよ。どう考えても、あの女の最期は悲惨だったろうしな」

lw´‐ _‐ノv「……」



そこまで言ったところでフサギコは思い出したかのようにジョッキに手を伸ばし、喉を鳴らしながらビールを飲み干した。
口元の泡をぐいっと拭ったところでズイッとテーブルの上に身を乗り出し、向かい合う少女の瞳をしっかりと見据えて、「だがな……」と語りだした。



ミ,,゚Д゚彡「俺は我が目を疑ったよ。そして、目を何度も擦った。もう、何度も、何度もな」

ミ,,゚Д゚彡「俺が予想していた、可哀想な女の悲惨な最期なんてもんは、どこにも無かったんだからな」


79 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:33:19 /vHoj3r60
酒場の雑踏の中から、透き通るように氷が溶け、崩れる音が響いた。
フサギコの話に聴き入っていた少女は、ほんの少しの間だけ、まるで時が止まったような気がした。



ミ,,゚Д゚彡「女は生きてた。しかも……」



ミ,,゚Д゚彡「無傷でな」



その言葉にフードの影に隠れた眉がピクリと動き、白い髪が揺れた。

「無傷」という、自分が想定したよりも斜め上の結末に彼女の胸がほんの少しだけ高鳴った。
そして興奮を悟られないようにミルクセーキを2、3口流し込んだところで、ほんの少しだけ丸まった背を伸ばし、少女は口を開いた。


80 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:34:44 /vHoj3r60
lw´‐ _‐ノv「要するにさ、その女の能力っていうのは不死身に近い『肉体再生』ってことかい?」



雑踏にかき消されはしないかと不安になるほどに、小さく呟くような少女の言葉を、フサギコは首を何度か静かに横に振って否定した。



ミ,,゚Д゚彡「ありゃあ、そもそも攻撃が当たってないって感じだった。
俺は遠くから様子を眺めていただけだったから、細部までは見てねえけどよ。
能力でダメージを修復したようには見えなかったしな」

lw´‐ _‐ノv「じゃあ考えられるのは能力の無効化?王国の【英雄】と全く同じような能力って訳かい?」


少女の声に、密かな興奮の熱が混じっていのをフサギコは悟った。
彼女に語りかけるように、出来るだけ丁寧に否定してやることにした。


81 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:36:52 /vHoj3r60
ミ,,゚Д゚彡「俺も、確かに最初はそれを疑ったよ。
賊の方はかなりのやり手だったらしくてな、
炎だしたり雷だしたり……派手にやらかしてたからな」



だがよく考えてみろ。と自らの無精髭を撫でながら身体を椅子の方にゆっくりと戻すフサギコは一呼吸おいて口を開く。



ミ,,゚Д゚彡「仮にその女の能力が、かの有名な【英雄】様よろしく、敵の【能力を無力化する能力】だとしたら」

ミ,,-Д゚彡「能力攻撃とは無関係の、銃弾までをも無力化してやり過ごした理由が説明できないだろ?」

lw´‐ _‐ノv「……確かに」


少女はフサギコの意見に納得したような顔をしてミルクセーキを流し込む。
しかし、甘く冷たいそのジュースが彼女の喉を通り抜ける頃には、頭の中にまた新たな疑問が生まれ、結局は視線を少しだけ落として、深く考えるような顔つきになった。


82 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:37:56 /vHoj3r60
lw´‐ _‐ノv(一体どんな能力だ?)



思考の海に沈みかけた少女を呼び止めるようにフサギコは「それだけじゃねえよ」と前置きして語り続けた。



ミ,,゚Д゚彡「結局よ、銃弾も能力攻撃も通じないって事に焦った賊の一人がよ。
そこらで拾ったような鉄屑か何かで、件の女に殴りかかったんだけどよ」


髭を撫でながら何かを思い出したように、身体を少し震わせてフサギコは笑いだした。
彼の動きに合わせ、年期の入った椅子もキイキイと悲鳴をあげたのが印象的だった。


ミ,,゚Д゚彡「ありゃ、見てて面白かったよ。
どんなに必死こいて男が殴りかかっても、女には全く『当たらなかった』んだからな」


83 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:39:24 /vHoj3r60
ニヤニヤと笑うフサギコの顔をしっかりと見据えた少女の身はテーブルに乗り出しており、先程までの猫のような姿勢からはだいぶ変わっていた。
それほどまでに彼女にとっては目の前の情報屋の話は興味深いものだったのだ。



lw´‐ _‐ノv「どういうこと?賊の方がわざと当てなかったって訳?」

ミ,,゚Д゚彡「命の取り合いやってる時にそんな下らないコントをする訳無いだろうが。
ありゃどう見ても、当てたくても『見えない何か』に動きを強制的に反らされていたって感じだったな」

lw´‐ _‐ノv「つまり、彼女の能力は念動力(サイコキネシス)って訳?」



少女の言葉にフサギコはついに堪えきれなくなったとばかりに身体を震わせ、大笑いした。
そして余韻が落ち着いたあたりで、ニヤけ顔のまま少女の言葉を否定した。


84 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:41:43 /vHoj3r60
ミ*,,-Д゚彡「おいおい、冗談は止めてくれや。
超高速の弾丸だけじゃ飽きたらず、物理攻撃でもない雷や炎までをも操る念動力だって?
そんな化け物みたいな能力かあってたまるかってんだ」



「確かに、考え辛いか」と小さく呟いた少女は身体を椅子に戻し、最初のように丸まるように浅く腰かけた。
そしてミルクセーキを一口流し込んだところで思考の海に沈んでゆく。



lw´‐ _‐ノv(多少は誇張表現があるだろうけど、とりあえずは彼の話を鵜呑みにしたとしよう)

lw´‐ _‐ノv(敵の能力を封じていたり強制的に消滅させている訳じゃない。
これは確実だろうね。なら考えられる能力は何だろう?)



目を閉じ、自分が今までに得た情報と蓄えた記憶を組合せ、かき混ぜる。
知識の海という完璧な孤独に沈む少女の耳には酒場の雑踏はすっかり聞こえなくなっていた。


85 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:48:28 /vHoj3r60
lw´‐ _‐ノv(物理攻撃や弾丸の軌道を変えている事を考えると防御特化の能力?
無意識の絶対防御シールドってところかな?
けど、もしそうなら攻撃を反らすっていうよりも、弾くっていう方がピンと来るよね)

lw´‐ _‐ノv(……もしくは周りの空間ごと操作して自分に敵の攻撃が干渉しないように設定してるとかか?)



【空間干渉】という言葉がある。


万物の構造をひっくり返し、科学の常識を嘲笑う【能力】というものが生まれた時、何人もの人間がそれをカテゴライズし、それぞれを分析しようと考えた。

通称、【能力系統】と呼ばれるそのカテゴライズには、いくつものカテゴリーが蟻の巣のように細かく作られた。
そして、その中で特に有名なカテゴリーが【念動力(サイコキネシス)系統】。


そして、その次に名が知られているのが【空間干渉系統】である。


86 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:49:27 /vHoj3r60
その名の通り空間自体に干渉し、場合によっては強制的に操作をするタイプの能力が分類されているのだが、その数は膨大だ。

有名所ならば、一瞬で別の場所に移動する【瞬間移動(テレポート)】や、離れた物を自分の手元に転移させる【瞬間転移(アポーツ)】など。

だが、この2つのように【位置を移動させる能力】以外にも、空間そのものを破壊したり、一定の空間内の距離感や温度などを自由に操るものもこの【空間干渉】に該当する。


謎の女の能力も、この【空間干渉】系だと仮定すると、少々強引だが彼女が目に見えない速度の鉛玉にも、能力者による炎にも雷にも。
そして単純な打撃からも無傷でいられた説明がつく。


87 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:50:59 /vHoj3r60
無論、それが回りの空間を異次元にリンクさせて、攻撃そのものをパラレルワールドに移したのか。
それとも自分が設定した熱量や速度を持つもの以外を、強制的に排除するような一種の結界のようなものを一部の空間内に張っていたのか。

それは少女には分からない。
能力というのはそれほどまでに常識外れで、馬鹿げた存在だ。
仮定で考えるだけならば、100通り以上の未だ見ぬ能力の可能性が産まれるのだから。


だが結局、少女はこの【空間干渉】に関する推理をあっけなく放棄した。



lw´‐ _‐ノv(……まあ、冷静に考えたら、そんな大掛かりな事をするぐらいならテリトリーに侵入したやつらを空間いじくって片っ端から殺した方が自然だよね)

lw´‐ _‐ノv(わざわざ攻撃を受け流してやる必要も見えないし。
ってことは【空間干渉】の線は消えた訳だ)


88 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:52:45 /vHoj3r60
次々と少女の脳裏には可能性と言う名の仮定が産まれては消えて行く。
知恵熱をおび始めた頭を冷ますためにミルクセーキを口にしたところでフサギコが「そういえば」と口を開いた。



ミ,,゚Д゚彡「あの女、行動がまるで意味不明だったんだよ」

lw;´‐ _‐ノv「どういうこと?……あっ!」



少女はこの時点でようやくフードが殆ど脱げてしまっている事に気付き、しっかりと被り直した。
回りの視線が自分に向いていないかとキョロキョロする少女に聞こえるように、フサギコはわざとらしく咳払いをした。
そして彼女の視線が自分の方に戻った事を確認して再び語りだした。



ミ,,゚Д゚彡「あの女は10分近く敵の攻撃を黙って受け流していたんだ。
まあ、あの女の能力が何だかは俺のお粗末な頭じゃあ分かりゃしないが、普通なら敵が疲弊した隙を見て反撃したりするだろう?」

ミ,,゚Д゚彡「だがアイツは違った」


89 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:53:47 /vHoj3r60
そこで、わざとらしく溜めてからニヤリと笑って見せた。



ミ,,゚Д゚彡「何もしないで離れたんだよ、その場から。
散々自分を殺しに来たやつらに、指1本触れる事無く、まるで何事も無かったかのように歩き出したんだ」

lw´‐ _‐ノv「なにそれ?逃げたってこと?」



新たな情報に少女はまたテーブルに身を乗り出し、かぶりつくように話の続きを促した。
その勢いで今度はフードがすっかり脱げてしまっていたのだが、興味を持ったこと以外には注意が回らない性格のようで、ウサギを思わせる彼女の真っ白な髪は完璧に露出された。
だが彼女はその事に気づいてすらいないようだった。

一瞬、その目立つ髪色に注意を奪われたフサギコだったが、彼女の視線が話の続きを今か今かと心待ちにしていることを察して再び口を開いた。


90 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:55:05 fOqkes7Y0
支援


91 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:55:32 /vHoj3r60
ミ,,-Д-彡「……逃げたって言うよりは無視の方が近いな。
鼻歌を歌いながら、何事も無くテクテク歩いてったよ。賊のやつらもポカンとしてたぜ」

lw´‐ _‐ノv「それってつまり、女の方は攻撃する手段が無かったってこと?」

ミ,,-Д゚彡「さあな、だがこんな世の中だ。
銃の一丁も持ってない方が不自然じゃねえか
?」

lw´‐ _‐ノv「うん、だよね」



少女は再びフードをしっかりと被り直し、乗り出した身体を椅子に戻した。
そして冷静さを取り戻した小さな頭脳で、今日の30分ばかしの有意義な時間をまとめ始めた。

しかし、疑問はつきない。
そして、自らの知的欲求はもっと、もっと。と舌舐めずりしている。


92 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:56:23 /vHoj3r60
見たい。聞きたい。知りたい。


彼女にとって、興味をそそられる情報を大量に手にいれる事が出来た。
自らの欲求を満たすこの感動は、ミルクセーキなんかよりも甘く、濃厚だ。

だが、知れば知るほど考える事は無限に沸き上がり、おかわりが欲しくなる。
そんな事を考えているうちに少女はほんの少し面白くなり、無意識の内に小さく微笑んでいた。

そして、ほとんど残っていないミルクセーキを飲み干し、ハンカチでお行儀よく口を拭うと、小さな革製のポシェットを漁りながらイソイソと帰り支度を始めた。



lw´‐ _‐ノv「今日は貴重な情報をありがとう。流石は情報屋さんのフサギコ君だよ。
報酬はいつも通り、キャッシュでいいかい?」


93 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 01:58:49 /vHoj3r60
ミ,,゚Д゚彡「ああ、その事なんだがな」



フサギコはポシェットから嬉々として札入れを探す少女を制すかのように、断りを入れた。



ミ,,゚Д゚彡「今回の情報に対する報酬は要らね―よ」

lw´‐ _‐ノv「?? 自慢じゃないけど年の割にお金には不自由してないし、私に遠慮なんて要らないよ?」



今までにこの町に来てから3回程フサギコとの取引をしていた少女だったが、報酬を断られたことなど無かった。

不思議そうな顔で首をかしげる少女を尻目にフサギコはゆっくりと立ち上がった



ミ,,゚Д゚彡「ちっぽけな現金よりも、俺にはもっと欲しいものが出来ちまってな」


94 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:00:00 /vHoj3r60
そう言うやいなや、男は腰のホルスターから流れるように拳銃を取りだし、少女の眉間に突き付けた。








ミ#,,゚Д゚彡「あんたの首だよ!『悪徳記者のシュール』さんよお!!」








その言葉を合図に、酒場に溢れていた喧騒は瞬時に冷えきり、全ての客が少女に向けて銃口を向けていた。
信じられないと言った表情で辺りを見回す少女を嘲笑うかのようにフサギコはゆっくりと撃鉄を起こす。

無機質で、それでいて絶望的な。
あの音が静寂の中にカチンと響いた。


95 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:01:38 /vHoj3r60
ミ,,゚Д゚彡「つい先月の話だがな、半年ぶりに更新されたんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「王国の『黒い指名手配書(ブラックリスト)』がな」

lw;´‐ _‐ノv「……へっ……へぇ―……」

ミ,,-Д゚彡「まあ、と言っても大きな変更は殆ど無かったけどな。
上位の『10人』も順位変動無しだ。
だが経犯罪者の項目がかなり変更されていてな……」



フサギコ視線を少女から反らすこと無くベストのポケットからくしゃくしゃになった1枚の黒い紙をテーブルの上に黒い紙を叩き付けた。
そこには、白髪の少女の顔写真と名前や罪状などがハッキリと掲載されていた。



ミ#,,゚Д゚彡「賞金額50万!【悪徳記者シュール】ちゃんの名前が上がってんだよ!!」


96 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:03:06 /vHoj3r60
シュールはフサギコの怒声にしばらく硬直していたが、やがて頭をかかえ静かに項垂れた。
そして小さな声で「やっちまった」と呟いた。


lw;´  _ ノv(あ―も――!!王国の連中の特ダネ掴んじゃったから追われるとは思ってたけど!思ってたけどさ―――!!
よりによって『ブラックリスト』入りとかマジふざけんなよ!?)

lw´;  _ ノv(つ―か悪徳記者って書いてある癖にこの罪状は何だよ!?
国家反逆罪やら国家侮辱罪は分かるけど、窃盗に強姦に痴漢に猥褻物陳列とか殆どやってね―よ!!
つ―か私女の子だよコンチクショウめ!!)



頭をかかえ何やら1人葛藤するように悶絶するシュールに馬鹿にしたような笑みを浮かべ、フサギコは口を開いた。


97 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:04:22 /vHoj3r60
ミ,,゚Д゚彡「まあ、常連客のよしみだよ。
最後に遺言やら怨み言くらいは聞いてやるぜ?」



フサギコの言葉にシュールは諦めたようなため息を吐いて、自らを殺すと宣言した大男の髭面を見上げた。
そして、少しいじけたような雰囲気で「1つ確認したいんだけど」と呟くように口を開いた。



lw´‐ _‐ノv「……さっきあなたが話していた『女』に関するあの情報。あれは事実なの?」


98 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:08:57 3edQsZlIO
ω・)支援


99 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:12:35 /vHoj3r60
ミ,,゚Д゚彡「ああ、事実だ。リアリティーに欠けるとあんたを誘き出せないからな。
あれは、俺が本当に目撃した、確実な情報だよ」



「まあ、俺からの冥土の土産だ」と下品な笑いを浮かべるフサギコの言葉を聞いたシュールの顔は、いささか落ち着きを取り戻しており、少し安堵したようにも見える。
彼女にとっては、この危機的状況よりも、情報の真否が気がかりだったようだ。



ミ,,-Д゚彡「これで満足かよ?まだお喋りしたいっつ―んなら、少しは聞いてやってもいいぜ?」



酒場中の男が1人の少女に銃口を向け、報酬の事を考えてニヤついている。
この人数で分配すれば大した額にはならないだろうが、無力な少女を殺すだけで1週間程度の飢えを凌げると考えれば、かなり楽で美味しい仕事なのだ。


100 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:13:34 /vHoj3r60
シュールがゆっくりと後ろを振り向くと酒場のマスターまで自分にライフルの口を向けているのが見えた。
結局、始めから仕組まれていた訳だ。
本日2回目の深いため息が漏れた。

ゆっくりとフードを外し、再びフサギコを見上げる。
真っ白な美しい白髪を惜しげもなく披露すると同時に、「最後に質問したいんだ」と抑揚の無い呟くような声で訴えた。

相変わらず強者の余裕を思わせる嫌らしい笑みを浮かべたフサギコはジェスチャーで「勝手にどうぞ」答えて見せた。



lw´‐ _‐ノv「ありがとう。それじゃあ聞きたいんだけどさ……」


101 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:14:22 /vHoj3r60
時が止まった。


そして、酒場の中に男達の割れんばかりの大爆笑が響き渡った。
1人は腹をかかえて転げ回り、1人は思わず拳銃をテーブルに置いて、涙を浮かべながら手を叩いている。
そしてシュールの目の前の男達も突き付けた拳銃をしっかりと握ったまま腹をかかえて大笑いしている。

飛んでくる唾にシュールは少し嫌な顔をした。


30秒ほど鳴り止ま無かった笑い声もようやく落ち着いたのか、ヒーヒーと笑いを堪えるように息をもらしながらフサギコは口を開いた。



ミ*,,-Д゚彡「お前最高だよ、記者さんよ!来世にゃあコメディアンに転職するのをオススメするぜ!?
……いいか?よく聞けよ?」


102 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:15:57 /vHoj3r60
>>100>>101の間









lw´‐ _‐ノv「私はここから生きて出られると思う?」







.


103 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:17:40 /vHoj3r60
ミ*,,゚Д゚彡「テメェはやけに落ち着き払ってやがるなあ?
きっと能力者なんだろうよ!もちろん、どんな能力かは俺も!ここにいる奴等にしても誰も分からないさ!!」

ミ,,゚Д゚彡「だが20の銃口がテメェの貧相な身体狙ってるんだ!!
記者さんなら知ってるよな!?この世界での死因の殆どは、能力によるものか、拳銃による殺人だ!!」

ミ#,,゚Д゚彡「どう足掻いても無駄だぜ!なあ記者さんよお、現実を見やがれ!!」

lw´‐ _‐ノv「現実……そう。現実、ね」



フサギコの言葉にシュールの眉がピクリと動き、真っ白な髪が揺れた。
そして小さく息を吐き出し、まるで自分自身に言い聞かせるかのように語り始めた。



lw´‐ _‐ノv「つまり希望的観測は『非現実的』、ね。」

ミ,,-Д゚彡「あん?」


104 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:18:41 bc8PhTZA0
支援


105 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:19:07 /vHoj3r60
lw´‐ _‐ノv「ここで、私が死ぬのが、あなたの言う『現実』な訳ね。
うん、まあ確かにその考えは客観的に見ても『現実的』だよね―」

lw´‐ _‐ノv「でも」





lw´‐ _‐ノv「本当にそうなのかな―?」

ミ,,゚Д゚彡「……何言ってんだテメェ」


うんうん、と頷きながら語り出す少女の言動にフサギコはなんとも言えない奇妙な感覚を覚えた。
最初こそ、この絶望的な状況に気がふれたのかとも思ったが、それにしては落ち着き過ぎている。
そんなフサギコの心情を見過ごすかのように、シュールはフサギコの瞳をしっかりと見詰めて語り続ける。


106 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:20:03 /vHoj3r60
lw´‐ _‐ノv「『現実』は『非現実』との対極にあるべき存在」

lw´‐ _‐ノv「『現実』と『非現実』。正と負。表と裏。決して混ざりあわない0と1」

lw´‐ _‐ノv「両極に位置するそれらが、もし。
もし、混じりあってしまったら?……そして、そこに産まれる物は?」



ニヤリ。と音がなりそうな。
そんな笑みをシュールは浮かべた。



なんと無く、嫌な予感がした。
フサギコは唾を飲んだ。


107 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:22:19 /vHoj3r60
lw´‐ _‐ノv「それは矛盾、パラドックス。
そしてそのパラドックスの中に輝く、『現実を超越した現実』」


lw´‐ _‐ノv「それこそが芸術。それこそが美。そしてそれこそが……」


そこまで言ってシュールはくるりと踊るように回って見せた。
相変わらず男達は少女に銃口を向けていたが、その表情には先程までの勝利を確信した笑みの代わりに、何か奇妙なものに怯えるような、底冷えした、とにかく嫌な予感を張り付けていた。





lw´  _ ノv「『超現実(シュール)』」




.


108 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:25:07 /vHoj3r60
シュールと1番近い距離で向かい合っているフサギコの表情からも余裕は消えていた。
代わりに彼の心を支配しているのは何か、奇妙で、漠然とした――



ミ;,,゚Д゚彡(……!)



――不安。



ミ#,,゚Д゚彡「無駄なお喋りはそこまでだ!!そろそろ遺言でも言ったらどうだ!?」


再びしっかりと拳銃を持ち直し、シュールの頭に狙いを定める。
その距離、約1メートル弱。どう間違っても、外しようがない。
フサギコの手には確実な勝利が握られているのだ。
しかし、何故なのか。不安は消えない。


そんな彼を小馬鹿にしたように、さっきよりも心底愉しそうな表情をしたシュールはピョンと跳び跳ねるようにフサギコに近付いて見せた。
距離、約30センチ。

外しようがない、筈だ。


109 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:26:22 /vHoj3r60
lw´‐ _‐ノv「まあまあ聞きなさいよフサギコ君。
『非現実を超現実』と唄う人もいるけどね、あたしゃ―認めないね。
あっ、ちなみにおたくはどっち派?」

ミ#,,゚Д゚彡「知るかガキが!それ以上余計な口を開くな!!」




フサギコは銃口をシュールの額に押さえつけるように密着させた。
あとは引き金を引くだけで、この少女は死ぬ。
脳髄を撒き散らし、かなり汚い死に様を晒すことになるだろう。
なかなかに整ったその顔も、真っ白で美しいその髪も、赤と黒に染まり、グロテスクなオブジェになることだろう。


110 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:27:30 /vHoj3r60
それは確実だというのに、それでもシュールは不安な様子など一切見せること無く、フサギコをしっかり見上げ――






lw´  ∀ ノv







――笑っていた。


111 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:29:17 /vHoj3r60
lw´‐∀‐ノv「……ん、まあこれ以上言っても理解しちゃくれないよね」

ミ#,,゚Д゚彡「遺言は、無いな。もういいだろう」

lw´‐∀‐ノv「ああ!待って待って!!最後に1つだけ!!」


手早く済まそうと右手に力を込めるフサギコを遮るようにシュールが口を挟んだ。
その顔には相変わらず、あの、なんとも言えない、不安を掻き立てるような不気味な笑顔を張り付けながら。



lw´‐∀‐ノv「最後に、1つ。私が教えてあげるからさ」

ミ#,,゚Д゚彡「教えて……あげるだと……?」



挑発するようなシュールの口調にフサギコは怒りをあらわにした。
しかしシュールは自分の生死が目の前の大男に握られているにも関わらず、挑発の言葉を続けた。


112 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:30:42 /vHoj3r60
lw´‐∀‐ノv「そうそう、お馬鹿さんなフサギコ君に、このシュールちゃんが分かりやすく教えてあげるっていうのさ」

ミ#,,゚Д゚彡「何が言いてえんだよクソガキが!!」


怒りまかせにフサギコが蹴り倒したテーブルは脚の部分をバラバラに分解させながらガシャンと大音を立てて壁にぶつかった。
その音がまるで合図になったかのように後ろで構えていた男達はシュールを取り囲み放射状になるようにして、それぞれの得物を構え直していた。

殺気を感じ、チラリと後ろを確認したシュールだったが、その光景を確認するますます愉しそうな笑みになって再びフサギコを見上げた


lw´‐∀‐ノv「ん―まあさ―。要するにさ―」

lw´‐∀‐ノv「私達みたいな能力者と戦う時は……」


113 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:32:14 /vHoj3r60
瞬間、シュールの顔から張り付いていた笑みが消え、人形のような無機質で冷たい表情に変化した。

糸のように細い瞳の奥からは真っ赤な瞳が鈍い輝きを放ちながらフサギコの心を氷つかすように睨み付け、その美しい白髪は重力に反するようにフワフワと浮かびあがり、陽炎のように不規則に揺らいでいる。
身体中から溢れる、後光のような微弱な白い光、神秘的なその光景をフサギコは知っていた。



ミ;,,゚Д゚彡(……コイツ!?)




その光景は正しく能力者からの――



lw´‐ _‐ノv「『現実』に潜む『非現実』を見極めなきゃ勝てやしないんだよ、バカチンめ」



――宣戦布告。


114 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:33:23 /vHoj3r60
ミ#,,゚Д゚彡「……死ね!!」


瞬間、引き金を引いた。つもりでいた。
彼の脳が運動神経を伝達して肉体に命令を出す、ほぼ0に近いタイムラグの間に




lw´‐ _‐ノv「遅い、能力発動――」



既に勝敗は決していたのだから。


115 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:34:16 /vHoj3r60







lw´  _ ノv「―――『非現実の実現(アン リアリティ リアル)』―――」






.


116 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:35:08 /vHoj3r60

……………

………






小さな町の、古びた酒場。


その酒場に何十発もの銃撃の音と、男達の無様な悲鳴が月明かりの下で響き渡っていた。


117 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 02:37:09 /vHoj3r60
以上です!
これでもまだ3分の1……辛いよママン(´・ω・`)

気分変えて馬鹿話の書きダメでもしてきまふ


118 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 03:01:42 bc8PhTZA0



119 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 03:06:12 MhKUymVo0
おつん
めちゃくちゃシューちゃんかっこいいじゃん
しかしボイン伝説にもってかれた。なんだそれ


120 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 03:49:27 3edQsZlIO
ω・)乙。がんばれママン


121 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 06:54:54 oiPQQeD60
おつ


122 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 07:56:25 IxtwU2j20



123 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 08:03:59 tjZIV0Wc0
乙 ゆっくりやっていいのよ


124 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 15:17:40 VEZwdQVg0

シュールかっけえ


125 : 名も無きAAのようです :2014/12/05(金) 23:50:22 /.jITKAE0

完結したら次回のブーン系百選に選びたいくらい面白くなりそうだな


126 : 名も無きAAのようです :2014/12/06(土) 09:08:10 ppQCBxjw0
おつ
続きが楽しみ


127 : 名も無きAAのようです :2014/12/06(土) 21:57:11 gPbV6Mgg0
乙や感想ありがとうございます。1です。
次回更新(第1話3分の2)は14日の日曜日を予定しています。


128 : 名も無きAAのようです :2014/12/14(日) 20:50:14 7aAb7u/s0
ちょいと投下延期します。
申し訳ない。


129 : 名も無きAAのようです :2014/12/14(日) 22:45:31 GUZ/Evt20
焦らすなあww


130 : 名も無きAAのようです :2014/12/15(月) 00:01:05 r7PhQDE20
おう、書きたいときに書いてくれ


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