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从 ゚∀从 昼下がりの白昼夢のようです(ФωФ )
1
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 20:58:59 ID:Bl5.Hi6w0
从#゚∀从 「あ〜もう無理!」
从#;∀从 「なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ〜!」
从#;∀从 「あぁぁぁんまりだあぁぁぁああああああああ!!」
蝉の声が我が身に染み入る大学4年の夏。
俺は不幸の神により苦しめられていた。
1年付き合ってた彼氏の浮気が発覚し、別れを告げられる。
就活は受ける企業を片っ端から落とされ内定0。
大学の教授にセクハラをされぶん殴った結果、逆に俺が留年の危機に。
就活のせいでバイトもできずお財布の中は空っぽに近い。
誰かに頼りたいが両親は5年前に事故で他界。
唯一の友人は大学の研究のため、期間限定で地方に飛ばされてしまっている。
連絡はとれるが、大学院進学がかかった研究のため迷惑をかけることはできなかった。
個人的にわりとヤバい状況に陥ってると思う。
从 ;∀从 「神ってやつはよぉ、救いを求めた人間に手を差し伸べてくれんじゃねぇのかよぉ」
从 ;∀从 「なんで俺はこんなに不幸なんだ……」
从#;∀从 「ほんとに神がいるならとっ捕まえてファラリスの雄牛に入れてモーモー言わせてやる〜ッ!!」
俺の叫びは虚しく天に響いた。
2
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:00:30 ID:Bl5.Hi6w0
从 ゚∀从 「疲れた……」
从 ゚∀从 「履歴書書くのやめて昼飯買に行こう……」
机にペンをほっぽり、外着に着替える。
電気代がもったいないためエアコンをつけてない。
そのせいで着替えるだけで汗をかく。
目の前の事柄すべてがだるい。
だるいが、食わずして生きることはできない。
从 ゚∀从 「いや、もう死んでもいいかな……」
とにかくコンビニに出かけることにした。
从;゚∀从 「アイスが売ってないとかどんだけだよ……」
从;-∀从 「不幸すぎる……」
コンビニに着いてすぐアイスコーナーを見た。
しかし不運なことに、アイスコーナーの冷蔵庫が壊れていて販売を中止していた。
叩いたら直るのではと思い、ガンガン蹴りまくっていたら店長に怒られた。
仕方がないのでカップ麺だけ買って帰ることに。
3
:
名無しさん
:2017/08/23(水) 21:01:51 ID:Fq/vQxyA0
支援
4
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:04:33 ID:Bl5.Hi6w0
从;゚∀从 「それにしても暑い……、暑すぎる……」
从;゚∀从 「これ40℃近くあんじゃないか?」
うだるような暑さまで俺を苦しめる。
俺の真上では、灼熱の太陽が輝いている。
全身の汗腺から滝のように汗が流れだし、服を重たくさせた。
体に張り付いたTシャツがこれまたうっとおしい。
暑さにやられて目がかすみ、足もフラつく。
最近食事も不規則なため、夏バテや熱中症の可能性もある。
从;゚∀从 「今何時だよ」
ポケットからスマホ取り出し画面を見る。
時刻は14時ちょうど、一番暑い時間帯。
コンビニで長居しすぎた。
从;゚∀从 「早く帰らなきゃ……」
从;-∀从 「うぅ……」
頭がぼーっとする。
これは夢なのか、それとも現なのか。
.
5
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:05:52 ID:Bl5.Hi6w0
だんだん、わからなくなる―――
.
6
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:08:32 ID:Bl5.Hi6w0
从;゚∀从 「あれ?」
歩き続けて15分くらいだろうか。
ふと、あることに気付く。
从;゚∀从 「俺の家こんな遠くなくね?」
そう、我が家とコンビニの距離はそう長くない。
時間でいえば10分かからずにつく。
しかし、明らかに15分以上はかかっている。
しかも一向に着く気配がない。
从;゚∀从 「てかここどこ?」
見慣れない道。
見慣れない建物。
いつの間にか見知らぬに居場所に来ていた。
从;-∀从 「あー、ついに頭おかしくなっちまったかぁ」
一向に着く気配がない、さっきそう思った。
“気配”といえば―――
从;゚∀从(人の気配がしない……)
まったくといっていいほど人の気配がしない。
まったくとっていいほど。
从;゚∀从(どうしよ……)
.
7
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:09:47 ID:Bl5.Hi6w0
チリ―――――――――――ン
.
8
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:11:01 ID:Bl5.Hi6w0
从;゚∀从 「ん?」
从;゚∀从 「今の音は……」
从;゚∀从 「風鈴?」
どこからか聞こえる風鈴の音。
こんな時代になんと風流なことか。
辺りはただの住宅地が並んでいる。
しかも洋風の家。
風鈴を飾るような和風の家は見当たらない。
从;゚∀从 「とにかく、音のする方へ……」
音のする方へひたすら歩く。
右へ行き、左へ行きまっすぐ進む。
何も考えずに歩き続ける。
裏道を抜けた先、そこに広がっていた風景は―――
从;゚∀从「まぶしっ」
真っ白な世界だった。
.
9
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:13:05 ID:Bl5.Hi6w0
長方形の白いタイルが地面に敷き詰められている。
どこまでも、どこまでも。
真上に広がる青い空と同じように終わりが見えない。
そのタイルが太陽の光を反射して真っ白い世界を作り出していた。
そしてその世界にはあるものだけが存在した。
そのあるものとは白い屋台だった。
この白さは塗料などの白さじゃない。
木自体が白いのだ。
その白い木でできた屋台が両サイドに2列ずつ、私を挟んで存在している。
それらはただ存在しているだけじゃない。
その計4列が400m以上、縦にひたすら並んでいる。
そしてそのそれぞれに、柄のない透明な風鈴が数多く飾られているのだ。
ここで俺は一つ、奇妙な点に気づく。
从;゚∀从 「音が聞こえない……」
そう、音色が聞こえないのだ。
風鈴の音色が、まったく聞こえないのだ。
風をしっかり肌に感じている。
短冊もしっかり風に揺れている。
なのに、なのにだ。
風鈴の音色がまったく聞こえないのだ。
10
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:15:27 ID:Bl5.Hi6w0
从;゚∀从(俺の聞いた音は?)
ここに来る前、俺を誘った音色は確かに風鈴のものだった。
だが、ここにある風鈴はどれも声を消されている。
何が私を誘ったのだろう。
从;゚∀从 「てか来た道がなくなってる……」
後ろを振り返ると何もない白い空間が広がっていた。
从;゚∀从 「何なんだここ」
从;゚∀从 「どこなんだ……」
とりあえずスマホを取り出し、マップを開く。
しかしマップはどこも示さない。
よく見ると圏外のマーク。
从;゚∀从 「ジーザス……」
神の無慈悲さにまたもや落胆し、膝をついた。
地面に落ちたスマホの音が虚しく響く。
从;゚∀从 「まぁでもつくだけいいのかなぁ」
从;゚∀从 「あれから何分経ってんだろ、流石にヤバいよな……」
スマホを拾い上げ、もう一度電源をつける。
時刻は14時ちょうど、一番暑い時間帯。
从;゚∀从 「ん?」
从;゚∀从 「さっきも14時だったような……」
从;゚∀从 「デジャブ?」
11
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:16:08 ID:Bl5.Hi6w0
チリ―――――――――――ン
.
12
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:17:37 ID:Bl5.Hi6w0
从;゚∀从 「!?」
聞こえた。
この音のない世界でようやく聞こえた。
俺を誘った風鈴の音色。
从;゚∀从 「あっちだ!」
周りの風鈴からは聞こえなかった。
聞こえてきたのは、この屋台の並びのずっと奥。
音色が聞こえて初めて気づく。
よぉーく目を凝らすと、何かあることがわかる。
小さな小さな点があることが。
俺は即座にその点へ向けて走った。
ただ走る、ただただ走る。
しかし、走っても走ってもたどり着くことができない。
近づこうとすると、どんどん遠くへ逃げてしまう。
それはまるで「逃げ水」のよう。
俺はいったい何をしているのだろう。
何が何だかわからなくなる。
暑さが俺の脳みそを溶かす。
夢と現も歪んで溶け合う。
これは、白昼夢?
.
13
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:18:21 ID:Bl5.Hi6w0
チリ―――――――――――ン
.
14
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:19:13 ID:Bl5.Hi6w0
从;゚∀从 「……」
从;゚∀从そ 「は!?」
いつの間にたどり着いていたのだろうか。
目の前には1つの屋台。
おそらくこれが俺の目指していた小さな点。
この屋台は他のとは違う部分がいくつかあった。
1つ目、風鈴は1つしかなく、その風鈴は黒い模様が入っていた。
2つ目、「氷」という旗がついており、台には昔ながらのかき氷機が置いてある。
3つ目、人がいる。
( ФωФ) 「へいらっしゃい!」
从;゚∀从 「……」
白髪交じりのぼさぼさの髪、無精髭を生やしたその面は50代を思わせる。
さらに肌は黒く、黄色いアロハシャツと首から下げた麦わら帽子は海の男そのものだった。
そんな男が屋台の前に立っているのだ。
あまりに異質な光景を目の前にして、身動きが取れなくなってしまった。
( ФωФ) 「ほれ、何を突っ立っておるのだ」
( ФωФ) 「早くこっちに来て坐んなさい」
从;゚∀从 「あ、あぁ……」
カップ麺を台に置き、おっちゃんが用意してくれた椅子に座る。
ご丁寧なことに椅子にクッションが付いていたため、坐り心地がいい。
15
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:20:17 ID:Bl5.Hi6w0
(*ФωФ) 「いやぁ、久しぶりの客だからテンション上がっちゃうなぁ」
( ФωФ) 「そのカップ麺食べていくか?」
从;゚∀从 「え、いいの?」
( ФωФ) 「いいのである、食後にはかき氷も用意しよう」
从;゚∀从 「ありがたいけど、俺金がもうないんだ……」
( ФωФ) 「心配するでない、金はとらんよ」
从*゚∀从 「ほんとに!?」
( ФωФ) 「ほんとほんと」
从*゚∀从 「アンラ・マンユに誓える!?」
(;ФωФ) 「ゾロアスター教の最大悪神なんかに誓いたくないわ」
おっちゃんが沸かしてくれた湯でカップ麺を作る。
後のかき氷が楽しみだったため、速攻たいらげた。
今更だが、なぜこんな暑い日にカップ麺にしてしまったのか。
体内の暑さは最高値に達していた。
16
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:21:09 ID:Bl5.Hi6w0
从#゚∀从 「あっつい!」
( ФωФ) 「今かき氷作ってやるから待っているのだ」
从;゚∀从 「おっちゃん、ブルーハワイがいい!」
( ФωФ) 「まぁ待て、おぬしは嫌いな味はあるか?」
从;゚∀从 「ん? いや、特にないけど?」
( ФωФ) 「なら吾輩特製レインボーかき氷を用意してやるのである」
从*゚∀从 「やった! 気前いいねぇおっちゃん!」
(*ФωФ) 「はっはっは、久しぶりの客だからなぁ」
おっちゃんはどこからかでかい氷を取り出すと、かき氷機にセットする。
ハンドルをグルグルと力強く回すと、暑さで溶け出た水滴が遠心力により顔に飛んできた。
それと同時に、削れた氷は羽のように軽やかに舞い落ちてくる。
左手にもったグラスを、ソフトクリームを作るときのように回転させて受け止める。
グラスの縁のほうから氷がこんもりと盛り上がってきた。
( ФωФ) 「見ておれ」
そこに色とりどりのシロップをかける。
それはまるで雪山に架かった虹のよう。
从*゚∀从 「お〜!」
あっという間に1つの芸術品が完成したのだ。
17
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:22:10 ID:Bl5.Hi6w0
( ФωФ) 「おあがりよ」
从*゚∀从 「いただきます!」
サクリ。
スプーンを雪山に差し込み、小さな山を口の中に運ぶ。
体温により素早く溶けると、まず初めに冷たさが舌を刺激する。
その刺激は舌だけに留まらず、全身まで駆け巡る。
そして、その後に感じる甘い味。
数種類のシロップが単独では味わうことのできないハーモニーを作り出した。
これはうまい、うますぎる。
あまりのおいしさに、口の中に一気にかき込む。
すると、待ってましたと言わんばかりに、頭にキーンと痛みが走った。
これがかき氷の定番、これがないと食った気にならない。
从*゚∀从 「くぅーっ! 染みるぜぇ!」
この猛暑の中にいると、冷たくておいしいかき氷は、正に命を救ってくれる万能薬。
食べた瞬間に暑さを和らげてのどの渇きをいやし、うっとりと幸せな気持ちにしてくれた。
从 ゚∀从 「ごちそうさま!」
( ФωФ) 「いやぁいい食いっぷりであったなぁ」
从*゚∀从 「ほんとにうまかったぜ! こんなうまいの食ったの初めてだ!」
( ФωФ) 「よしよし、腹も膨れたことだし本題に入るか」
从 ゚∀从 「本題?」
( ФωФ) 「そうである」
おっちゃんは腕を組み、こちらをじっと見た。
睨んでいるわけではない。
だが如何せん強面のためビビる。
18
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:23:17 ID:Bl5.Hi6w0
( ФωФ) 「ここはな、普通の人は来れない」
( ФωФ) 「何か心に悩みを抱えてる人、そんな人がこの黒い風鈴に呼ばれるのである」
( ФωФ) 「そして、その悩みの相談を受けるのが吾輩の仕事なのだ」
从 ゚∀从 「……」
普通ならこんなこと真に受けないだろう。
しかし、おっちゃんの言うことは間違っていない。
なんせ実際に俺がここに迷い込んだのだから。
まぁ俺のこんな悩みより、もっとつらい悩みを持った人はいると思うが。
もしかしたら、この町の人は俺が思う以上に強い人が多いのかもしれない。
ここで俺は一番気になっていたことを質問する。
从 ゚∀从 「その風鈴に呼ばれるって言ってるけどさ」
从 ゚∀从 「入り口付近の風鈴は何なの? なんで鳴らんの?」
( ФωФ) 「それはここを出るときにわかるであろう」
从 ゚∀从 「なんだそりゃ」
すごく気にしてたのに、後でのお楽しみにされてしまった。
てかここ出れるの?
( ФωФ) 「とにかく、話を聞かせてはくれないか?」
从 -∀从 「……」
从 ゚∀从 「まぁかき氷ごちそうになったしな」
从 ゚∀从 「話したらスッキリするかもしれないし、話すよ」
俺はなるべく手短に、わかりやすく自分の悩みを話した。
悩みというよりは愚痴に近いものだったけれど。
話してはみたものの、スッキリするどころか再び不安と悲しみが胸をいっぱいにした。
せっかくさっきまでいい気分だったのに……。
19
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:24:34 ID:Bl5.Hi6w0
( ФωФ) 「……」
从 ゚∀从 「おっちゃんはさ、逃げ水って知ってるか?」
( ФωФ) 「蜃気楼の一種の?」
从 ゚∀从 「そう、熱せられた地面が水で濡れたように見える気象光学現象だ」
从 ゚∀从 「ここの屋台がな、逃げ水みたいだったんだよ」
从 ゚∀从 「遠かったせいか、走っても走っても距離が縮まってないような気がしてさ」
从 ゚∀从 「でな、走ってるときに思ったんだ」
从 ゚∀从 「あぁ、俺の幸せも逃げ水みたいだなって」
从 ゚∀从 「幸せを掴もうとするんだけど、追っても追っても遠くへ逃げていく」
从 ゚∀从 「俺はきっと幸せになれないんだなって」
遠くに手を伸ばし、握る。
手を開いても何もない、空気を掴んだだけ。
俺は手のひらの中心をじっと見ることしかできなかった。
从 ゚∀从 「別に今回のことだけじゃないんだ」
从 ゚∀从 「これまでに何回も不幸な目にあってきた」
从 ゚∀从 「確実につらい日々の方が多かった」
从 ∀从 「俺さ、疲れちゃったよ……」
じんわりと目頭が熱くなる。
遠くの景色がぼやけて見えた。
我慢、我慢しなければ。
おっさんを困らせたくなかったので、顔を見せないようにした。
20
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:25:33 ID:Bl5.Hi6w0
( +ω+) 「……」
( ФωФ) 「1つだけ問おう」
( ФωФ) 「おぬし、幸せという名の逃げ水に追いついてしまったらどうなると思う?」
从 ゚∀从 「え? 幸せになれる?」
( ФωФ) 「それはどんな幸せだ」
从 ゚∀从 「1つじゃねぇじゃん、かっこつけやがって……」
(;ФωФ) 「い、いいから答えるのである!」
从 ゚∀从 「んー、結婚とか?」
( ФωФ) 「ではその結婚ができたらおぬしの幸せはそこで終わりか?」
从 ゚∀从 「いや、終わらないな。てか終わりたくない」
( ФωФ) 「そうであろう」
( ФωФ) 「これは吾輩の持論だが、幸せに終わりなどないと思うのだよ」
( ФωФ) 「人それぞれ幸せの価値や数は異なる」
( ФωФ) 「そのため人は幸せを追い続ける、求め続けるのだ」
( ФωФ) 「もし、その幸せに追いついてしまうときが来るとすれば、それは死ぬときであろう」
( ФωФ) 「死ぬ直前になって、自分の人生を振り返る」
( ФωФ) 「そしてようやくどれだけ自分が幸せだったのかわかる」
( ФωФ) 「吾輩はそう思うのである」
21
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:26:52 ID:Bl5.Hi6w0
おっちゃんの言葉が心に響く。
伊達に俺より長生きしていないことがわかる。
いや、もしかしたらこんな考えを持っていたのは俺だけなのかもしれない。
自分がいかに未熟者か思い知らされた。
(´ФωФ) 「おぬしは若いな」
(´ФωФ) 「まだ22歳だし、当然っちゃ当然であるが」
从;゚∀从 「うるせぇ、現在進行で身に染みてるわ」
図星を言われ思わず眉をしかめる。
その顔が面白かったのか、大笑いするおっちゃん。
まったく、失礼な人だ。
俺は眉をしかめるだけでなく頬も膨らませた。
( ФωФ) 「すまんすまん、そうふてくされるでない」
( ФωФ) 「でもな、皆つらいことの多い日々を送っている」
( ФωФ) 「むしろそれが当たり前なのだ」
( ФωФ) 「けれど幸せを感じたときが一切ないと言い切れるか?」
( ФωФ) 「絶対にそう感じた瞬間はあったはずだ」
从 ゚∀从 「……」
その質問に対して、俺は押し黙る。
確かにないと言ったら嘘になる。
( ФωФ) 「人生山あり谷ありというであろう」
( ФωФ) 「まだ一生の3分の1しか生きていないのだ、悲観するのはまだ早い」
( ФωФ) 「大丈夫だ、人生はなんやかんやうまい方向に行く」
ぽんっと俺の肩に手を乗せる。
おっちゃんの手は大きく、優しく、力強かった。
22
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:28:20 ID:Bl5.Hi6w0
( ФωФ) 「幸せの裏には不幸がある」
( ФωФ) 「誰かが幸せを感じたらその裏で不幸を感じる者がいるのだ」
( ФωФ) 「今は周りの者が幸せで、おぬしが不幸を感じている」
( ФωФ) 「しかし、いつか必ずそれが逆転する日が来るであろう」
( ФωФ) 「そのときは、幸せを十分に噛み締め楽しく生きるのだ」
おっちゃんは最後に微笑んだ。
正直、この話に確証はないと思う。
おっちゃんは神様でも何でもない、ただのおっちゃんだ。
そんな人が未来の私の人生を知るわけがないのだ。
それでも自信満々なおっちゃんの笑顔は、なぜか俺の不安を取り払ってくれた。
安心させてくれた。
頑張ってみようかなと思わせてくれた。
ピロリン♪
突如、スマホから音が鳴る。
これはメールを受信したときの音だった。
从 ゚∀从 「さっきまで圏外だったのに……」
いつの間にか圏外マークは消え、元気にアンテナマークが立っていた。
さっきから不思議な体験をしているため、この受信にも疑問を隠せない。
恐る恐る、受信したメールを開いてみる。
23
:
◆WRzI.ny2uk
:2017/08/23(水) 21:32:28 ID:Bl5.Hi6w0
从 ゚∀从 「っ!?」
从*゚∀从 「おっちゃん! 俺帰るわ!」
( ФωФ) 「朗報ってやつであるか?」
从 ゚∀从 「まぁそんなとこ!」
( ФωФ) 「そうか、今なら来た道を帰れば元の場所に着く」
( ФωФ) 「頑張るのであるぞ」
从 ゚∀从 「おう!」
( ФωФ) 「記念だ、持っていけ」
おっちゃんから箱の入った袋を手渡された。
大きさは手のひらくらいで、ほとんど重さを感じなかった。
从 ゚∀从 「何これ?」
( ФωФ) 「帰ってからのお楽しみなのである」
从;゚∀从「さっきもそれだったぁ!」
( ФωФ)「はっはっは、サプライズも重要であるぞ?」
从 ゚∀从 「んーわかったよ! 色々とありがとな、また来るよ!」
( ФωФ) 「是非と言いたいところだが、また来ないことを祈ってるぞ!」
おっちゃんに手を振りながら走り出す。
ここに来たときとは違い、すごく足取りが軽かった。
心もとても爽やかな気持ちだ。
そんな俺の背中を押すように、強い風が吹いた。
24
:
名無しさん
:2017/08/23(水) 21:32:58 ID:Bl5.Hi6w0
チリンチリ―――――――――――ン
.
25
:
名無しさん
:2017/08/23(水) 21:34:39 ID:Bl5.Hi6w0
从 ゚∀从 「風鈴が!」
来た時には一切鳴ることがなかった大量の風鈴。
その風鈴が風により、透き通るような音色を奏でる。
それはまるで、ここを出て行く俺を応援するかのように鳴り響いていた。
从 ゚∀从 (ここを出るときにわかる、か……)
从 -∀从 (そりゃ病んでるやつを歓迎なんてしたくないもんな)
来た時にはなかった出口が見えてきた。
あんなに苦労した行きと違って、帰りの時間はとても短かった。
ここを出れば、またつらい現実が待っている。
でも、もう大丈夫。
おっちゃんのおかげで俺はしばらく頑張れそうだ。
从 ゚∀从 (ありがとな……)
俺は白く光る出口に、力強い一歩を踏み出した。
送り出してくれていた風鈴の音色は、いつの間にか聞こえなくなっていた。
だが、俺の心の中で鳴り響いた。
澄んだ音色が一鳴き、鳴り響いていた。
.
26
:
名無しさん
:2017/08/23(水) 21:35:27 ID:Bl5.Hi6w0
从 ゚∀从 「……戻ってきた?」
気が付けば見知った場所にいた。
後ろを振り帰ってもあるのは壁だけ。
スマホを取り出す。
時刻は14時15分。
コンビニから15分が経っていた。
从 ゚∀从 「夢……ではないんだよな?」
そう、夢ではない。
この袋の中のものがカップ麺でなければ。
そう思って袋の中身を出す。
それは手のひらサイズの軽い箱。
おっちゃんの言葉を思い出し、開けてみる。
27
:
名無しさん
:2017/08/23(水) 21:35:55 ID:Bl5.Hi6w0
チリ―――――――――――ン
.
28
:
名無しさん
:2017/08/23(水) 21:36:45 ID:Bl5.Hi6w0
从 ゚∀从
从*゚∀从
それは夢か現か。
真夏の昼下がり。
14時ちょうど、一番暑い時間帯。
夏が見せた、摩訶不思議な白昼夢。
从*゚∀从「うっしゃあ! やってやるぞぉ〜!」
.
29
:
名無しさん
:2017/08/23(水) 21:37:12 ID:Bl5.Hi6w0
从 ゚∀从 昼下がりの白昼夢のようです(ФωФ )〜終〜
.
30
:
名無しさん
:2017/08/23(水) 21:40:12 ID:Bl5.Hi6w0
終わりです。
ハインに一体どんなメールが来たんでしょうね。
これは皆様のご想像にお任せします。
多少のミスや表現のわかりにくさがあるかもしれません。
それでも温かい目で見てもらえたら幸いです。
読んでいただきありがとうございました。
31
:
名無しさん
:2017/08/24(木) 00:07:36 ID:VYqTx0nA0
チリンチリン
32
:
名無しさん
:2017/08/24(木) 17:03:51 ID:TNNS74BA0
オツですね
33
:
名無しさん
:2017/08/25(金) 02:14:31 ID:mqrRx8tI0
ロマのセリフ心に来るな
乙ー
34
:
名無しさん
:2017/08/25(金) 13:18:34 ID:Gm/QknaI0
乙
35
:
名無しさん
:2017/08/25(金) 15:57:36 ID:iwWLcUpA0
おつ、夏らしい暑く苦しい話からの
風鈴の響きやかき氷の涼しさが心に残る話だった。
ハインが前向きになれて本当良かったよ。
36
:
◆TflJu3mvXc
:2017/08/27(日) 01:05:09 ID:Uw2e2D4.0
【業務連絡】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
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◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
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