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('A`)便利屋ドクオの野暮用です
1
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:08:48 ID:BKUgdd360
('A`)「ったくよ……」
楽器や銃、スピーカーに囲まれた狭苦しい部屋。
奥に行けば寝室もあるが、俺は主にこの部屋で過ごしていた。
何故なら、ここは俺の店だからだ。
('A`)「開店日だってのに、客は一人も来やしねぇ……」
仕方なのない事だ。
この街“ソウサク”は、決して平和なわけじゃあない。
だが何か厄介事があっても、俺のような便利屋に仕事を頼むくらいなら、近くのバーで酒を飲んで面倒ごとを忘れようと考える頭の悪い連中ばかりだ。
俺には都合の悪い街だと言える。
友人にも、“よくこんな所で便利屋なんか開くね”、と呆れられるくらいだ。
まあ、暇なのは嫌いじゃないんだがな。
('A`)「しっかし……金がねぇのは辛いとこだ」スッ
机に置かれたピザを一切れ、口に運ぶ。
先程近くの店から買ってきたばかりで、熱を持ったチーズがドロリと溶けて黒い机に強いコントラストを残した。
('A`)「……うめぇな」
ずっとこの調子で客が来なければ、いずれはピザを食う金すら尽きる。
それだけは避けたい。
2
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:09:38 ID:BKUgdd360
('A`)「まあ何日かすりゃ来るだろ……」
箱からタバコを一本取り出し、それを咥える。
煙を深く吸い込んで、それをゆっくりと吐き出した。
タバコの先から立ち昇る紫煙が、ゆらゆらと揺れていた。
茶色い大きな扉が初めて自分以外の手で開かれたのは、その時だった。
( ^ω^)「ドクオ、開店おめでとうだお」
('A`)「……なんだよブーンか」
扉を開けて顔を出したのは、仕事仲間のブーンだった。
友人と言うよりは、腐れ縁に近いだろうか。
( ^ω^)「わざわざ顔を出してやったのにそれはないお」
('A`)「うっせーな、客がこねーんだよ」
( ^ω^)「だから言ったお、こんな所で便利屋なんて……」
('A`)「あーわかってるよ。だが店を借りるにはこの街じゃねーと金が足りなかったんだよ」
半年ほど前の事だ。
大手企業の社長を殺してくれとの依頼を受け、報酬で得た金をブーンと分け合った。
その額は100万レス。借金を返して手元に残ったのは、そのわずか三分の一程度だ。
なんとか店を借りて、数ヶ月やっていける程度の額ではあった。
3
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:10:25 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「ギターやらドラムやら買いすぎなんだお」
('A`)「はあ? 俺が持ってるのは全部安物だぞ」
( ^ω^)「そうなのかお? てっきり拘ってるのかと」
('A`)「んなもん弾けて音が出りゃいいんだよ。コイツと一緒さ」コトッ
引き出しに入れてあった二丁の黒い銃を取り出して、机の上に置く。
アウターバレルがスライドから剥き出しになったこの銃が、お気に入りだった。
( ^ω^)「その銃好きなくせに何言ってんだお」
('A`)「…………確かに」
( ^ω^)「そのうちグリップやスライドも改造しそうだお」
('A`)「お前と一緒にすんなっての」
ブーンの持っている銃には、原型がわからないほどの改造が施されている。
バレルは長いものに交換してあり、グリップにはブーンの大きな手に合うように厚めの木製グリップパネルが取り付けられている。
どうも知り合いに腕の良いガンスミスがいるのだとか。
4
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:11:15 ID:BKUgdd360
('A`)「……で? 用件はねぇのか?」
( ^ω^)「ないお」
('A`)「……だろうな」
( ^ω^)「ちょっとシャワー借りるお」
('A`)「それが目的かよ。奥にあるから勝手にしろ」
( ^ω^)「ごめんだお」
ブーンは部屋の奥、ちょうど自分が座っている椅子の真後ろにある扉に入っていった。
しばらくして、シャワーの音が聞こえてきた。
('A`)「ったく……」
ため息をついてつまみ上げたピザを口に放り込むと、再び入り口の扉が開かれた。
――今度は誰だ。
(-@∀@)「あの……私、創作教団のアサピーという者なのですが……」
('A`)「チッ、宗教勧誘かよ……」
創作教団。どうも新しく出来たらしい宗教団体で、最近やたらと耳にするようになった名前だ。
この辺りに住む人間のうちほとんどは、宗教を信仰していない。
そんな街にどうして、宗教団体を立ち上げたのだろうか。
俺にはわからないが、さして興味も無かった。
5
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:12:14 ID:BKUgdd360
(-@∀@)「本日は特別に新しい教徒様のための礼拝を行っておりまして、ぜひともうちの教会に足を運びいただけ――」
('A`)「――帰れ」
(;-@∀@)「ッ……」
(-@∀@)「あ……もしお越しになるのがご面倒であれば、今こちらで当教団の説明をさせていただきますが」
('A`)「……あのな」
椅子から立ち上がり、フォックスと名乗った彼の元へと近寄る。
――愛銃を、強く握りしめて。
(-@∀@)「あ、こちらパンフレットになります」
('A`)「興味ねぇっつってんだよ」
(-@∀@)「……いや説明を聞いてからご判断いただければ――」
(;-@∀@)そ「――ッ!?」
親指でセーフティを外し、ハンマーを起こした銃の先を男の額に当てて、一つため息をついた。
6
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:13:10 ID:BKUgdd360
('A`)「……そんなに説教がしてぇんなら、コイツでてめぇの額にもう一つ口を作ってやろうか?」
(;-@∀@)「ヒッ……あ……」
('A`)「とっと帰れ」
(;-@∀@)「しし、失礼しました……!」
扉が強く開かれる音だけを残して、男はよろけながら去っていった。
ご丁寧に、パンフレットを一冊落として。
('A`)「…………」
('A`)「客は来ねぇのかよ……」
気づけば、夕日が長い影を作っている。
そろそろ日が暮れる頃だ。
('A`)「もうちょっとだけ待つか……」
再び机に戻り、残りのピザを食べ終えた。
また腹が減ったら、晩飯を買いに行こう。そんな事を思った。
.
7
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:14:28 ID:BKUgdd360
――夜――
( ^ω^)「案外ギターって楽しいもんだお!」
ブーンがアンプに繋いだギターを煩く鳴らしながら、そう言った。
下手なものを聞いてるのは、こんなにも苦痛だったとは。
('A`)「やめろやめろ、近所迷惑だろうが」
( ^ω^)「近所なんて気にする柄かお」
('A`)「俺がうるせーと思ってんだよ」
( ^ω^)「ちぇっ」
そう言われてブーンは、アンプの電源を落とし、ギターを置いてソファーに寝転がる。
言われてすぐに辞めたところを見ると、本当はそれほど楽しさを見出だせなかったのだろう。
('A`)「いい加減帰れよ」
( ^ω^)「ドクオが店仕舞いするまで居座るお」
('A`)「今日はもう閉店だ」
( ^ω^)「あーここは一体何屋さんだったんだおー」
('A`)「客がこねーからって馬鹿にすんじゃねーよ」
近くのバーでテイクアウトしてきたフィッシュアンドチップスを食べながら、俺は漫画を読んでいた。
ブーンもやる事がなくて暇になったのか、俺が読んでいる漫画を一巻から読み始めていた。
.
8
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:15:25 ID:BKUgdd360
それから三十分も経った頃、入り口の扉がノックされる音が、この静かな部屋に響いた。
('A`)「……開いてるぜ」
そう言うと、扉を叩いた人物はゆっくりと姿を表した。
ζ(゚ー゚;ζ
現れたのは意外にも、女性だった。
年齢は二十歳前後、自分と変わらないくらいだろうか。
('A`)「何の用だ? レストランなら50m先にあるが」
ζ(゚ー゚;ζ「……困ってるの……」
('A`)「……ほう」
彼女の表情を見る限り、どうやら仕事の話のようだ。
俺は手に持っていた漫画を放り投げて、彼女の顔をじっと見つめた。
ζ(゚ー゚;ζ「変な男につけられてるの。数日前からなんだけど、今日もついてきてて……」
('A`)「……なるほど。んで偶然本日開店の便利屋の看板を見つけて、扉をノックしたってわけか」
ζ(゚ー゚;ζ「う、うん……」
('A`)「……で?」
ζ(゚ー゚;ζ「……え?」
9
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:16:33 ID:BKUgdd360
('A`)「え? じゃねーよ。看板見たんだろ?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん……」
('A`)「ここは店だ。依頼人は報酬を払わなきゃあならない。まあもちろん、後払いで結構だが」
(;^ω^)「そんな態度じゃ客も来ないお」
口を挟む男を無視し、俺は話を続けた。
('A`)「もっとも、金を払わずにトンズラしちまったら……わかるな?」
ζ(゚ー゚;ζ「……いくらくらい……?」
('A`)「……ほら見ろよブーン。ちゃんと話がわかってるじゃねーか」
( ^ω^)「…………」
('A`)「……払えるだけで構わんさ」
ζ(゚ー゚;ζ「……えっ?」
( ^ω^)「やっぱりだお」
('A`)「なんなんだよ、いちいち口を挟みやがって」
( ^ω^)「おっおっ、そのちょっとした優しさがドクオらしいと思ったんだお。それなら最初から優しくすればいいのに」
('A`)「うっせーな」
10
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:17:36 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚;ζ「……いくら払えるかわかんないけど……報酬は出すから……」
('A`)「じゃ、交渉成立だな。ブーン、銃は持ってるな?」
(;^ω^)「おっ!? なんでブーンに聞くんだお!?」
ブーンはそう言いながらも、腰のホルスターを触り銃があるかどうかを確認していた。
('A`)「暇なんだろ、付き合えよ」
( ^ω^)「……しょうがないお。今日だけだお」
('A`)「ああ。……えっと、名前はなんていうんだったか?」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ、まだ教えてなかったね。私はデレだよ」
('A`)「OK、デレ。俺はドクオ、こいつはブーンだ。あんた運がいいぜ。その辺のチンピラよりゃぁよっぽど腕の立つ二人組だ」
ζ(゚ー゚*ζ「ほんと? じゃあお願いしたいところだけど……大丈夫なの?」
('A`)「……ハッ、そんなもん“朝飯前”だよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……ちょっと頼もしいね……」
11
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:18:10 ID:BKUgdd360
('A`)「だろ? ……さて……どうやるかだが……」
俺はゆっくりと椅子から立ち上がり、机の上に置かれたままのピザの箱を袋に詰め直して、それをデレに手渡した。
('A`)「今日はうちの開店日でな。まだここが何をやっているかはあんま知られてないだろう。って事で、こいつを持って家に帰れ」
ζ(゚ー゚*ζ「……それでいいの?」
('A`)「ああ。あんたをつけてる奴を見つけたら、とっちめてやるからよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん、わかった。信用するからね?」
('A`)「安心しろ」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、よろしくね」
ピザの空箱が入った袋を整えながら、デレは扉を開けて静かに店から出ていった。
.
12
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:19:14 ID:BKUgdd360
俺とブーンは裏口から出て、デレを尾行している人物を探していた。
難しい事じゃない。この時間に街を彷徨く奴はそういない。
街灯の少ない暗闇だが、足音や月明かりを頼りに、すぐに犯人を見つけることができた。
( ´ー`)「…………」
('A`)(なんだ、相手は一人か……)
デレの数十メートル後ろを、ゆっくりと歩く男。
体格こそ普通だが、何故だが妙に気になる服装をしていた。
('A`)(あの服、どっかで見た気がするんだよな……)
しかし、暗闇かつ遠距離からではしっかりと視認する事ができない。
――まあどうせ、すぐにわかる事だ。
俺とブーンは足音を立てないよう、ゆっくりと男に近寄った。
('A`)「ブーン、お前は遠回りしてデレを保護してこい。
タイミングを見計らえよ」
( ^ω^)「わかったお」
そう言うとブーンは、路地に入って駆け足でデレの元へと向かっていった。
('A`)(……今日は涼しいな)
このくらいの気温なら、寝苦しいこともないだろう。
早く仕事を済ませて、ベッドに横になりたいものだ。
.
13
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:20:31 ID:BKUgdd360
('A`)(……そろそろか)
(;´ー`)「…………?」
数メートル手前まで近寄ると、男が不審な気配を感じ取ったのか、表情をこわばらせながらこちらに振り向いた。
('A`)「よう、今日はいい夜だな」
(;´ー`)「はっ……えっ……!?」
('A`)「酒で熱った身体にゃ、涼しい夜風が丁度いいねぇ。あんたどうせ、そこのバーで飲んでたんだろ?」
(;´ー`)「あ、ああ、よくわかったな。あそこのバーテンダーは最高のカクテルを作るからな」
('A`)「ああ。あそこは最高だ」
気づかれないように何気なく遠くを見ると、ブーンがデレに声をかけているのが確認できた。
頃合いだ。
('A`)「しっかし……おかしいな」
(;´ー`)「……何がだ?」
('A`)「今日は、あのバーテンダーは休みだったはずだが……」
(;´ー`)「……ッ!!」
14
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:21:20 ID:BKUgdd360
('A`)「あんたは一体なんの話をしてたんだ?」
(;´ー`)「……てめぇこそ何なんだ……?」
('A`)「俺はあそこで便利屋を営んでいる者だ」
( ー )「…………そうか。そういう事か……」
チャキン、と鋭い音が僅かに聞こえた。
男の右手は、背中へ回されていた。
( ´ー`)「ならとっとと死ねや!!」
男はそう叫ぶのと同時に、短いナイフを俺の腹目掛けて一直線に付き出してきた。
('A`)「甘いな」
火花が散ったように見えた。恐らく気のせいだろうが、そう思ってしまうほどの甲高い音が響いていた。
男のナイフは、俺の拳銃のグリップエンドに当たって動きを止めていた。
正確には、俺がそうしたのだ。
.
15
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:22:26 ID:BKUgdd360
('A`)「叫んだらタイミング取りやすくなっちまうだろ? 最初の一発で仕留めたいんなら、次からはやめておく事だ」
(;´ー`)「――ッ!!」
('∀`)「もっとも……次はねぇけどな……」
男が手元に引いたナイフを、もう一丁の愛銃で撃ち抜く。
小さな刃に亀裂が入り、粉々になっていくのが見えた。
(;´ー`)「なっ……!?」
('A`)「悪いけど、俺の射撃は正確なんだ」
距離、射角、跳弾。あらゆる要素を一瞬で計算し、目標を確実に撃ち抜く。それが俺の特技だった。
もっとも、この距離ではあまり意味を成さないが。
('A`)「さて、お前はなんであの女をつけてたんだ?」
(;´ー`)「……女なんて……しらねーよ……」
('A`)「そうか」
(;´ー`)「――ッ!」
男の顎に、銃口を突き当てる。
そしてゆっくりと、撃鉄を起こした。
.
16
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:23:41 ID:BKUgdd360
('A`)「もう一度聞く。なんであの女をつけてた」
(;´ー`)「…………」
(; ー )「……しらねーよ」
('A`)「……そうか」
引き金に、グッと力を込めた。
('A`)「何も言えねーんなら、この口はいらねーな」
大きな音を立てて、愛銃が火を放つ。
上空に飛び散った血液が月明かりを反射させて、キラキラと煌めいていた。
( ー )
('A`)「……役に立たねぇ男だ……」
銃に付着した血液を振り払って、ホルスターに戻す。
返り血はできるだけ浴びないように心がけているが、銃を突き付けている場合だけはどうしようもなかった。
( ^ω^)「ドクオー」
遠くの方から俺の名前を呼びながら、ブーンとデレが走ってきていた。
銃声を聞いて、終わったとわかったのだろう。
( ^ω^)「終わったかお」
('A`)「ああ。この通りな」
ポケットからタバコを取り出しながら、血溜まりを作る男の死体に銃口を向けてそう言った。
17
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:25:44 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚;ζ「なっ……えっ……!?」
('A`)y‐「どうした?」
ζ(゚ー゚;ζ「こ、殺してなんて言ってないのに……!! そんな……!!」
('A`)「喚くなよ。この街に住んでりゃ、死体ぐらい見たことあるだろうが」
ζ(゚ー゚;ζ「そ、そうだけど……でも……」
('A`)y‐「でも?」
ζ(゚ー゚;ζ「なんで殺しちゃったの!? 捕まえるとか脅すとか、方法はあったでしょ!?」
('A`)「……はぁ……」
タバコの先に溜まった灰を捨て、もう一度咥える。
フィルターに付着していた唾液が冷えていて、少しだけ不快な気分になった。
('A`)「あのな……。捕まえるとか脅すとか……ガキの遊びじゃねーんだよ。それにナイフを出されてんだ。殺す以外ねーだろ」
('A`)「オマケにこいつは何も喋らないときた。だから生かしておく必要がなかった。Do you understand?」
ζ(゚ー゚;ζ「…………そんな……」
18
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:26:56 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「……仕方ないお。ブーン達は、そういう人間だから……」
ζ(-、- ζ「…………そう……」
デレは拳を握りしめて、俯いた。
確かに、彼女には悪いことをしたと思う。しかし俺には、そういうやり方しかできないのだ。
('A`)「……それよりもよ、こいつに見覚えはねーのか?」
ζ(゚ー゚;ζ「……まったく知らない人だよ……」
( ^ω^)「……お? この服どこかで……」
ζ(゚ー゚;ζ「……あっ!」
('A`)「……?」
ζ(゚ー゚;ζ「この服……創作教団の人たちが着てたのと同じだ……」
('A`)「……! ……ほぉ……」
言われてみれば確かに、夕方店にやってきた男の着ていたものと同じだ。
既視感の謎は解けた。
19
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:27:54 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「なんで創作教団なんだお……?」
('A`)「こいつはなーんか臭うぜ……」
( ^ω^)「……だお……」
ζ(゚ー゚;ζ「ね、ねぇ。この人殺しちゃったら、また私創作教団の人に狙われちゃうんじゃ……」
('A`)「かもな」
ζ(゚ー゚;ζ「……ッ」
ζ(゚ー゚;ζ「そんな……今度は殺されちゃうよ……!」
('A`)y‐「……かもなぁ」
二本目のタバコに火をつけて、煙を吸い込む。
タバコの先から揺れ動きながら昇る紫煙を、ただ見つめていた。
( ^ω^)「……ドクオの店に泊まればいいお」
('A`)y,.、ポロッ 「……は?」
ζ(゚ー゚*ζ「……! いいの……!?」
('A`)「いやいや何言ってんだ。俺一人で定員オーバーだ」
( ^ω^)「あの広さなら一人くらい余裕だお」
('A`)「うさぎ小屋かなんかと勘違いしてんのか?」
20
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:28:38 ID:BKUgdd360
ζ(゚、゚;ζ「お願い……! 一人はこわいの……!」
('A`)「…………」
ζ(゚、゚;ζ「報酬なら払うから……!」
(*^ω^)「ヒュ〜♪」
(*'A`)「…………」
ζ(゚、゚ ζ「そういうのは無いけど」
('A`)「…………」
( ^ω^)「こう見えてもドクオ、童貞なんだお」
(A` )「っせーな……うっせーな……」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ、なんか意外……」
(;'A`)「やめろやこんな話!!」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、泊めてくれる?」
21
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:29:15 ID:BKUgdd360
('A`)「……チッ……わーったよ。ただし、寝るのはソファーだ」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん!! ありがとう!!」
( ^ω^)「よかったお」
('A`)「……はぁ……」
ため息をつきながら、落としたタバコを拾い直した。
ただでさえ金がなくて、タバコ一本ですら勿体無いのだ。
金になるのなら、引き受けるしかない。
( ^ω^)「じゃあブーンは、ちょっと創作教団について調べてみるお」
('A`)「そいつは助かるぜ。よろしく頼んだ」
俺よりもブーンの方が、いろいろとコネクションを持っている。そういう意味ではとても頼りになるやつだ。
明日には何かしらの情報を持ってきてくれるだろう。
軽くブーンに手を振って、俺とデレは店へと戻った。
.
22
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:30:16 ID:BKUgdd360
('A`)「……さて、シャワーも浴びたし、寝るとするか」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだね」
('A`)「……ベッド使うか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いやいいよ、悪いし……」
('A`)「これでも俺は紳士なんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……ブーンの前では適当に扱ってたくせにー」
('A`)「それはそれ、これはこれだ」
部屋の電気を消しても、月明かりでソファーの位置はわかった。
俺は靴を脱いでソファーに寝転がり、近くのテーブルに銃を置いた。
ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとね」
('A`)「ああ」
23
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:30:50 ID:BKUgdd360
眠気は無い。ただ目を閉じている。
しばらくしてベッドの軋む音が聞こえた。
時計の秒針が進む音だけが、この暗闇を支配している。
('A`)「……お前さ」
ζ(゚ー゚*ζ「ん?」
('A`)「この街には似合わねーように見えるんだが」
ζ(゚ー゚*ζ「……そうかな」
('A`)「ああ。いかにも、いいとこのお嬢さんって感じだ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
しばらくの間、彼女は何も言わない。
寝返りをうつ布擦れの音が聞こえた時、ようやっと口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「お父さんは、殺されちゃったから」
('A`)「……殺された?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。まあ有名人だったから、いろいろと恨みも買ってたんだと思う」
('A`)「……ふーん」
24
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:31:53 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚*ζ「そこから紆余曲折あって……この街に越して来たの。半ば逃げるようにして」
('A`)「なるほどね。じゃあやっぱりこの街の人間じゃあないわけか」
ζ(゚ー゚*ζ「……そうなるね」
彼女の父親がどういう人物だったのか。また、そこから何があったのかは聞かない。
ただ、彼女がどういう人生を送ってきたのかが少しでもわかればそれで良かった。
信頼に値するかどうかの判断がつく。
そして彼女は嘘を付いているようには思えなかった。
この街でつく嘘にしては、ちょいと臭すぎる。
信頼してもよさそうだ。
('A`)「ところで、お前のバッグからはみ出してた服、あそこのレストランの制服だろ? ウェイトレスでもやってんのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「……よくわかったね。そうよ、あそこで働いてるの」
('A`)「ふーん……。食いに行ったことはねぇが、近いうちにお邪魔するか」
ζ(゚ー゚*ζ「外観はちょっとあれだけど、結構良いお店なんだ。ナポリタンが絶品だからぜひ来るといいよ」
('A`)「そいつはいいな。んじゃ、明日の昼飯はそこにすっか」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん、そうだね!」
.
25
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:32:46 ID:BKUgdd360
とりあえず今日はここまで。
それほど長くないのでお付き合いお願いします。
26
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 00:18:13 ID:z2QwqOVs0
乙
すきな雰囲気だ
27
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 01:06:26 ID:r6FKQVj.0
乙
ロックだな
28
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 01:10:52 ID:BKZZ.E4s0
ベッタベタこそ至高の俺にはたまんない、乙
29
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 21:25:23 ID:f82yguPA0
この雰囲気いいね
しかも続き物と来た
続きに期待!
30
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 05:56:50 ID:xJ4vuolo0
レスありがとうございます!
一作だけじゃ物足りないな…と思ってこっちも書いたんですが、書いて正解でした。
分割で申し訳ないですが、投下します。
31
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 05:57:33 ID:xJ4vuolo0
――翌日・午後――
( ^ω^)「お待たせたお」
入り口の扉が開く音と同時に、ブーンが姿を表した。
ビニール袋を手に提げて。
('A`)「よう」
( ^ω^)「あ、これ差し入れだお」
ブーンが放り投げてきたのは、コーラの缶。
俺が好きな安物銘柄のものだ。
('A`)「おっ、気が利くな」
( ^ω^)「デレもコーラでよかったかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、うん。私は何でも。ありがとね」
( ^ω^)「いいんだお」
栓を開けると小気味のいい音が鳴り、穴から少しだけ泡が立つ。
そして俺は一気に飲み干した。
強烈な炭酸が口、喉、胃を刺激する感覚が、たまらなく好きだった。
32
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 05:58:14 ID:xJ4vuolo0
( ^ω^)「それ一気飲みできるのほんと頭おかしいお」
('A`)「喉が渇いてたんだよ」
(;^ω^)「そういう問題じゃ……」
('A`)「それより、どうだった? なんかいい情報は入ったか?」
( ^ω^)「おっ、そうだったお」
ブーンが机に置いた一枚の紙。それには、創作教団の教会への地図や、活動内容などが大まかに記されていた。
( ^ω^)「創作教団は、三ヶ月前急にこの街に教会を立てた変な奴らだお。やってる事は普通の教会と何ら変わりは無いみたいだお」
( ^ω^)「ただこの街だとあんまり教徒は得られないみたいだお」
('A`)y‐「ま、当然だわな」
( ^ω^)「そこまではいたって普通の話。ここからが面白いんだお」
ブーンはその大きな身体をソファーに預けてから、話を続けた。
( ^ω^)「――女性を、誘拐しているらしいお」
.
33
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 05:59:26 ID:xJ4vuolo0
('A`)「……ッ……」
ζ(゚ー゚;ζ「誘拐……?」
( ^ω^)「ある人が見たらしいんだお。夜中に街を歩いていたら、教団の服を着た男が、女を押さえつけてる所を……」
( ^ω^)「それを見た人はびっくりしちゃって、何もできずに逃げちゃったらしいお。でもこんな話を誰に言ったらいいのか困ってたみたいだったお」
('A`)y‐「……ほー……」
ζ(゚ー゚;ζ「じゃ、じゃあ私も……そのうち誘拐されてたかもしれないのね……」
('A`)「その話が本当なら、そういう事だな。もっとも、誘拐されたあとに何をされるのかはわからんが」
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
('A`)「ところでお前、この話をどこで?」
( ^ω^)「おっおっ、昼間のバーは暇な連中が多いんだお」
('A`)y‐「ふーん……」
34
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:00:23 ID:xJ4vuolo0
仮にも聖職者である教団の人間が女性を誘拐していたなんて話を、誰が信じるだろうか。
教団の事が気に入らない酔っぱらいの世迷い言としか思われないだろう。
だが、昨日の出来事と合わせてみれば、信憑性は高い。
('A`)「……ま、よくわかったぜ」
タバコを灰皿に押し付けて、机の中から二丁の愛銃を取り出した。
('A`)「それだけわかりゃあ、教会に乗り込むだけだ」
片方の銃のマガジンリリースボタンを押して、マガジンを取り出す。
('A`)「……あれ?」
――いや、マガジンが出てこない。
('A`)「出てこねぇぞ?」
(;^ω^)「おっ、昨日からマガジン入れっぱなしかお」
('A`)「いやすぐシャワー浴びたかったし……ってかマジで出てこねぇんだけど……」
( ^ω^)「ちょっと見せてくれお」
ブーンに銃を渡すと、マガジンを取り出すためにいろいろと試行錯誤しながらも、最終的にグリップエンドを見てこう言った。
(;^ω^)「……いいガンスミスを紹介するお」
.
35
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:01:40 ID:xJ4vuolo0
――一時間後――
( ^ω^)「ブーンだおー。ちょっといいかおー」
「あ、ブーン? ちょっと待ってねー」
俺達は、店から車で数分の所にある、小さな店に来ていた。
ブーンがよく話していた、“いいガンスミス”の店だ。
隅っこにある大きな机には、工具や部品が散乱していた。
ξ゚⊿゚)ξ「お待たせー。って、今日は一人じゃないのね」
店の奥から現れたのは、エプロンを纏った金髪の女性だった。
――彼女が、“いいガンスミス”?
( ^ω^)「おっおっ、久しぶりだおツン。今日見てもらいたいのはブーンじゃないんだお」
('A`)「ああ、俺の銃なんだが」
銃を手渡すと、ツンと呼ばれた彼女は直ぐにその状態を確認し始めた。
正直、俺は銃に関する知識を殆ど持っていないため、彼女が何を見ているのかあまりわからなかった。
36
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:02:14 ID:xJ4vuolo0
ξ゚⊿゚)ξ「……ちょっとこれ、あまりにも酷すぎるんじゃない?」
('A`)「……ああ、昨日グリップエンドでナイフを受けちまったから、それのせいかもしれねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「それだけじゃないわよ。バレルは歪んでるし、イジェクターは殆どダメになってるじゃない。よくこれで使えてたわね」
('A`)「イジェクター……?」
ξ゚⊿゚)ξ「排莢するための装置よ」
('A`)「なるほど」
ξ゚⊿゚)ξ「……一体どうやったらこんな状態になるのかしら……。久々よ、こんな酷い銃を持ち込まれたのは」
('A`)「そんなに言わなくてもいいだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「だって事実だもの。しっかしよく見ると古い銃ね……。この銃に思い入れとかないわけ?」
('A`)「……ねーわけじゃねぇけど……」
昔を思い出す。
この銃は俺が子供の頃に、恩人から貰ったものだ。
思い入れがないわけではない。
37
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:02:58 ID:xJ4vuolo0
ξ゚⊿゚)ξ「ならもうちょっと大切に扱いなさいよね。他に銃は?」
('A`)「ああ、もう一丁あるが……」
ξ゚⊿゚)ξ「そっちも治すわよ」
('A`)「よくわからんが頼んだ」
ξ゚⊿゚)ξ「すぐ終わらせるから、待ってて」
カチャカチャと音を立てて、ツンは俺の銃をバラしていく。
今までにも、知り合いにメンテナンスをしてもらった事はある。
見慣れた光景だが、やはり俺の頭で理解するには知識が足りないようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「どっちが右用?」
('A`)「え? ああ、アウターバレルが銀色の方。バレルが黒色の方は左」
ξ゚⊿゚)ξ「了解。ちょっと時間かかるかも」
('A`)「ああ……見てていいか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ別に」
( ^ω^)「ブーンたちは漫画でも読んでるお」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだね」
.
38
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:04:37 ID:xJ4vuolo0
それから数十分。
俺は彼女の作業をじっくりと眺めていた。
どこをどうすれば何が外れるのか。こうやって見てみると、俺はやはり殆ど知らなかった。
彼女の動きには無駄がないように思える。そのためか、工程を覚えるのは簡単だった。
ξ゚⊿゚)ξ「終わりよ」
('A`)「サンキュー。グリップパネルは交換したのか」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、欠けてたしね。片手で別々に持つことを考えて削ってあるから、前よりは持ちやすいはずよ」
('A`)「どれ」
二つの愛銃を握りしめる。
確かに、前よりもずっと握りやすく、手に馴染むように感じた。
ξ゚⊿゚)ξ「あと、左の銃は薬莢も左に出るように変えといたから。薬莢が手に当たって火傷したこととかない?」
(;'A`)「…………恥ずかしいが、ある」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよね。前よりはマシなはずよ。見た目もね」
排莢は実際に撃ってみないとわからないが、右手の銃からは右側へ、左手の銃からは左側へ薬莢が飛び出るのは、想像すると確かに格好がいい。
これなら、もっと早く改造してもらうんだった。
39
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:05:22 ID:xJ4vuolo0
('A`)「助かるぜ。確かにブーンの言うとおり、腕はいいみたいだな。んで、いくらだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「パーツ代だけでいいわよ。初回だし、何よりブーンの知り合いだもの」
('A`)「助かるぜ……金が無いもんでな」
ξ゚⊿゚)ξ「いいのよ。その代わり、定期的にメンテナンスに出してあげること。できればうちをご贔屓にね」
('A`)「ああ、そうさせてもらうぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。……せっかくだから、ブーンのも見せて」
( ^ω^)「おっ、いいのかお」
ブーンが腰のホルスターから取り出した大きな拳銃をツンに手渡すと、ツンはそれを簡単にチェックし始めたら。
ξ゚⊿゚)ξ「……やっぱりさすがブーンね。メンテナンスもしっかりしてるし、無駄な傷もないし」
40
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:06:28 ID:xJ4vuolo0
('A`)「……使ってねーだけじゃねぇの」
( ^ω^)「失礼な。ちゃんと使ってるお」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの言う通りよ。ライフリングも前よりは摩耗しているし…………あ、マガジンキャッチはそろそろ変えたほうがいいかしら……だいぶ弱ってるわね」
(;^ω^)「ごめんだお、それは多分忙しい時にブーンが乱暴にリロードするからだお」
ξ゚⊿゚)ξ「いいのよそれくらい。どうする? リロードが面倒ならいっそダブルカラムに変えてみる?」
( ^ω^)「うーん、とりあえず今日はいいお。今度にすれば、またツンにも会えるし」
ξ*゚⊿゚)ξ「なっ……何言ってんの……! メンテナンスが目的じゃないなら来なくていいし……!」
(*^ω^)「おっおっ」
(#'A`)「…………用が住んだなら早くしろよ」
( ^ω^)「おっ、ごめんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「代金は1万レスでいいわよ」
41
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:07:22 ID:xJ4vuolo0
尻のポケットに入っていた薄っぺらい財布からなけなしの札を取り出し、それを工具だらけの机の上に置いた。
('A`)「はいよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとー」
( ^ω^)「じゃ、ブーンたちは帰るお」
ξ゚⊿゚)ξ「もしかして、今から仕事?」
ツンはチラッとデレに視線を移して、そう言った。
('A`)「ああ。ちょいと野暮用でな」
ξ゚⊿゚)ξ「そ。まあ頑張ってね」
ξ゚⊿゚)ξ「……あっ!」
('A`)「あん?」
ξ゚⊿゚)ξ「これ……」スッ
ツンに渡されたのは、俺の銃から外したグリップパネル。
ところどころひび割れていて、色褪せている。
('A`)「いや別にこれはもらってもな……」
ξ゚⊿゚)ξ「裏見てみなさいよ」
42
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:09:14 ID:xJ4vuolo0
('A`)「裏?」
言われたとおり、グリップパネルを裏返してみる。
するとそこには、やや違和感のある四角い出っ張りがあり、ペンで文字が書かれていた。
( ^ω^)「……“親愛なるペニサスへ”……?」
('A`)「…………」
この字は恐らく、この銃をくれた人が書いたものだ。
しかし分からない。
ペニサスとは、誰のことだろうか。
( ^ω^)「……誰だお?」
('A`)「……わかんねぇ」
( ^ω^)「でも、知り合いからもらったんじゃないかお? 誰にもらったんだお?」
('A`)「……関係ないだろ」
( ^ω^)「…………」
('A`)「ツン、ありがとな。また来るわ」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。気をつけてね」
.
43
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:10:17 ID:xJ4vuolo0
店を出ると、既に日は傾き始めていた。
赤くなった地面を歩いて、俺達は教会へと向かっていた。
('A`)「どうする、お前らは帰るか?」
店の近くまで来た頃に、俺は足を止めてそう言った。
デレを連れて行くのは危険だし、ブーンは俺の仕事には関係がない。そう思ったからだ。
ζ(゚ー゚*ζ「……私は……一人でいるのも怖いよ……」
('A`)「まあそう言うと思ったわ」
( ^ω^)「ブーンは面倒だから帰るお」
('A`)「まあそう言うと思ったわ」
予想通りだ。
仕方ないが、デレは連れて行こう。どうせ大した相手ではないのだ。
仕事柄、誰かを護衛する事には慣れている。
( ^ω^)「それじゃ、二人は頑張ってくれお」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーン、気をつけて帰ってね」
('A`)「人のこと心配できる余裕はあるのな」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンはもともと関係ないし……」
('A`)「まぁな。そんじゃ行くか」
44
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:11:42 ID:xJ4vuolo0
ブーンと別れてから数百メートル歩いた先。
バーや民家だらけのこの辺りには似つかわしくない建物がそびえ立っていた。
('A`)「こんな物が出来てたなんてな……」
ζ(゚ー゚*ζ「ほんとにね……近くで見るのは初めてかも」
いざ踏み出して門に入ろうという時に、その足を制止させるように門の影から二人の男に声をかけられた。
Ω「はじめまして、新しい教徒様のための案内をご希望ですか?」
('A`)「ん? ああ、そんなとこだ。昨日パンフレットをもらったんでな」
Ω「でしたら……その……、お腰につけてらっしゃる物を外していただかないと……」
('A`)「は? これか?」
腰というよりは尻に近い部分にある特注のホルスター。
その中に収まっている二つの鉄の塊のことを指しているのだろう。
Ω「……ええ、お手数ですが……」
45
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:12:42 ID:xJ4vuolo0
('A`)「やだね。この教会は人を選ぶのか? それじゃあ“気軽”に懺悔もできねぇな」
Ω「ですが……危険物ですので……」
('A`)「危険だってわかってんなら、それ以上何も言うんじゃねぇよ」スッ
グッと男に歩み寄り、腰から取り出した拳銃の銃口を男の腹へつきつける。
Ω「ヒッ……!」
('A`)「ここでケツの穴増やされて死ぬか、何も気が付かなかったか、だ。お前はどっちがお好みだ?」
Ω「……どっ……どうぞお通りください……」
('A`)「懸命だな」
ζ(゚ー゚;ζ「ご、強引だね……」
('A`)「構ってられるかっての」スタスタ
.
46
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:13:28 ID:xJ4vuolo0
Ω「……死ぬかと思った……」
Ω「おい、アサピーさんを呼んで来い。俺は彼らを特別集会堂に案内する」ボソッ
Ω「あ、ああ。わかった」ダダッ
Ω「お二人様」タッタッ
('A`)「あ?」
Ω「集会堂にご案内します」
('A`)「…………まあいいや、頼んだ」
.
47
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:14:49 ID:xJ4vuolo0
一人の男に連れられて到着した、一つの建物。
門の正面にあった大きな建物とは少し離れていて、大きさも随分と小さかった。
Ω「こちらになります、中でお待ちください」
('A`)「オーケイ」
男はそう言うとすぐに立ち去ってしまった。
それでも構わない。あんな男に興味はないのだ。
俺は大きな取っ手を掴んで扉を開け、建物の中へと足を踏み入れた。
('A`)「……おいおい、誰もいねーじゃねぇか」
ζ(゚ー゚;ζ「なんか薄暗くて気味が悪いよ……」
あの男の言っていたとおり、確かに集会堂のようだ。
均等に並べられた蝋燭が唯一の灯りで、何故だが窓は一つもなかった。
――ここは、妙な感じがする。
よくわからないが、俺の勘がそう言っている。
.
48
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:15:22 ID:xJ4vuolo0
『すみません、お待たせしました』
しばらくして、奥の方から男の声が響いてきた。
その男はコツコツと足音を鳴らして、俺達の前に姿を表した。
(-@∀@)「本日はどうされました……?」
現れたのは、昨日の夕方俺の店へやってきた男だった。
名前はアサピーといっただろうか。
なぜかワイングラスを左手に持ちながら、こちらをじっと見ていた。
('A`)「……お前、あの時の……」
(-@∀@)「……おおこれはこれは! 当教団に興味を持っていただけましたか……!」
('A`)「ああ。落としてったパンフレットなら全部読んだぜ」
(-@∀@)「落としてしまってましたか……大変失礼いたしました……」
(-@∀@)「そしてそこのお嬢様は…………はぁなるほどなるほど」
('A`)「…………」
49
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:15:56 ID:xJ4vuolo0
何を納得したのかは、検討がつく。
デレを尾行させていた人間が殺されたのだ。
そしてその女が、便利屋である俺を連れて来ている。
どんな馬鹿であっても、この俺がただ礼拝をしに来ただけとは思わないだろう。
(-@∀@)「……ところで、あなたの腰に何やら悪魔が取り付いておられますね」
('A`)「……はぁ?」
(-@∀@)「私は、祓魔師でしてね。今その悪魔を取り祓いましょう」
('A`)「……ハッ。遠慮しておくぜ」
('∀`)「こいつは、俺にとっちゃあ天使みてぇなもんなんだよ」
.
50
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:16:32 ID:xJ4vuolo0
俺はホルスターから二丁の拳銃を取り出して、その銃口をアサピーに向けて構える。
(-@∀@)「……そうですか。でしたら、力づくでも取り祓わせてもらいましょう……ッ!」
('A`)「デレ、下がってろ」
ζ(゚ー゚;ζ「う、うん」
俺がそう言うとデレは後ろの長椅子の影に隠れ、じっと身を潜めた。
アサピーという男は、ワイングラスを持ったまま両手を広げて、壇上の中央に立った。
.
51
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/29(火) 06:17:48 ID:xJ4vuolo0
本日はここまで。
また近いうちに、投下します。
52
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 07:48:56 ID:4EYv62n.0
気になるところで……!
乙!!楽しみだ!!
53
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:35:44 ID:Cj5bthWI0
(-@∀@)「ハァッ!!」
アサピーがそう叫びながら、グラスを持っていない方の手を前方へ振りかざした。
同時に、どこからか飛来してくるいくつかの赤い小さな物体。
それが何なのか、どうやって飛来してくるのかは分からなかったが、速度は銃弾と大差ない。
('∀`)「んなもんあたんねぇよ!!」
身体を捻らせて弾を避ける。
飛んできたのは6発。そのうち5発は後ろのドアへ当たった。
残りの1発は、左手の銃のスライドで弾いたのだった。
('∀`)「……全く一体どんな手品を――――」
――そう言いかけた時、気がついた。
かすかに漂う、その臭いに。
.
54
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:36:54 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……血の臭い……?」
('A`)「おいデレ!! 怪我はねぇか!?」
ζ(゚ー゚;ζ「えっ? 私は大丈夫だよ?」
振り返って確認せずとも、そう返事をしている以上、彼女は無事だ。
('A`)「……だとしたら……」
足元に転がったはずの赤い物体を探す。
だが、それを見つけることはできない。
――ただ一つ存在したのは、小さな血痕だった。
('A`)「…………血、ねぇ……。面白いもんを武器にしてるな、あんた」
赤い物体の正体は、血。
飛来して来た時は固形化していたようだが、今は元の液体になっていた。
(-@∀@)「ふふふ……この力に驚きましたか……」
('∀`)「わりぃが、俺はオカルトは信じねーんだよ。信じてるのはこいつだけさ!」
両手の拳銃の引き金を、交互に引く。
それだけで、あっという間にマガジンは空になってしまう。
55
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:37:37 ID:Cj5bthWI0
(-@∀@)「ハッ!」
アサピーは、俺の動作と同時に右手を振り上げる。
するとワイングラスから飛び出た血が、一枚の盾となって俺の放った銃弾を防いだ。
('∀`)「面白え……面白えぜお前!!
」
ジャケットを勢い良く捲ると、内ポケットからマガジンが飛び出して空中に浮かんだ。
同時に両手の拳銃から空のマガジンを取り出して、空中で弧を描くようにして新しいマガジンを挿入する。
('∀`)「ハッハァ!!」
飛来してくる血を躱しながら、左手の銃を連射する。
盾の中心部、ただ一点をめがけて。
('∀`)「いつまでそいつに隠れてるつもりだよ!!」
(-@∀@)「ふふ……」
なかなか思ったようにはいかない。
想像していたよりも、あの血の盾は頑丈なようだ。
しかし、俺は構わず撃ち続けた。
――そして、血の盾に小さな亀裂が入ったのが見えた。
.
56
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:38:34 ID:Cj5bthWI0
(;-@∀@)「――ッ!!」
更に銃弾を撃ち込む。両手で、何度もリロードをして。
やがて亀裂は端まで広がり、その盾は大きな音を立てて砕け散った。
('∀`)「神からのお届け物だぜ!!」
盾が砕けてから、アサピーが次の盾を展開するまでの一瞬。
俺はその一瞬を逃さなかった。
両手からそれぞれ別の方向に射出された銃弾は、血の入ったワイングラスと、それを持った男の腹に直撃した。
(;-@∀@)「ウ……グ…………ッ!!」ドッ
('A`)「あーあ。もうちょっと楽しませてくれると思ったんだけどな」
アサピーは膝をついて、腹を押さえている。
ワイングラスから零れ出た血と、彼の腹から流れ出る血が混ざり合い、地面に大きな血溜まりを作っていく。
(;-@∀@)「……これでは……血が……」
('A`)「血ならそこに幾らでもあるだろ? かかってこいよ」
57
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:39:40 ID:Cj5bthWI0
(;-@∀@)「……私の血が混ざっては……純粋な血液じゃあない……。それではダメなのです……ッ!!」
('A`)「…………じゃあ本当に終わりってことかよ」
両手の拳銃をクルクルと回しながら、腰のホルスターへしまう。
地面に散らばったマガジンや薬莢を蹴り飛ばしながら、俺はアサピーの元へと歩み寄った。
('A`)「……ったく。準備運動にもならなかったぜ」
(;-@∀@)「…………」
('A`)「何見てんだよ」
(;-@∀@)「……ハァッ!!」
('A`)「――ッ!!」
うずくまっていたアサピーは、俺の隙を見て両手を振りかざした。
――――まずい。油断していた。
そう思った時には、もうすでに遅かった。
純粋な血液なら、俺の後方に大量に転がっているではないか――。
.
58
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:40:27 ID:Cj5bthWI0
(-@∀@)「死ねェッ!!」
いくつもの血の塊が、俺の背中をめがけて飛来してくるのがわかった。
風を切る音が、少しずつ近づいてくる。
俺はただ、何もせずにその場に立ち尽くしていた。
(;'A`)「――ッ……!!」
やがて、俺の背中に突き刺さるいくつもの血の塊。
その無慈悲な攻撃に、俺は抗う事もできなかった。
(-@∀@)「……ハハハハハッ……!! 一度使ったものを再利用するのは当然ですよね……!!」
('A`)「…………ん?」
(-@∀@)「…………えっ?」
.
59
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:41:23 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……わりぃな」
ジャケットを強く捲くる。
その勢いで、突き刺さっていた血の塊はコロコロと音を立てて地面に散らばった。
('∀`)「……このジャケットはな――――」
「背中までマガジンで埋め尽くされてるんだよ」
(;-@∀@)「――ッ!!!」
.
60
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:42:51 ID:Cj5bthWI0
('∀`)「後方には注意しねぇとなぁ。玉突き事故だけは勘弁だぜ、イカレ眼鏡」
(;-@∀@)「ガッ……!!」
ホルスターから取り出した銃で、アサピーの両手の甲を撃ち抜く。
普通ならば、この手で反撃しようとは思わないだろう。
(;-@∀@)「……ぐッ…………」
('A`)「悪くねぇダンスナンバーだったぜ。ただちょっと、テンポが悪かったな」
再度拳銃をホルスターにしまって、アサピーの目の前に立つ。
('A`)「さて、ここのお偉いさんはどこで退屈してるんだ?」
(;-@∀@)「…………」
('A`)「言えよ」
へたり込んだアサピーの膝を撃ち抜く。
速撃ちと言うよりは、さながら居合のような動作で。
(;-@∀@)「アガッ……!!」
('A`)「これ以上五体不満足になりたくなきゃ、そのニヤけた口を取っとと割るべきだな」
61
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:43:27 ID:Cj5bthWI0
靴底で薬莢を転がしながら、アサピーの顔をじっと睨みつける。
ただそれだけで、彼は竦み上がっていた。とても演技には見えない。
(;-@∀@)「くッ…………。……そこの扉を出た先にある建物に……」
('A`)「そうか」
場所がわかれば、この男に用はない。
ちらりと後ろを振り返って、デレにこっちへ来るよう合図した。
(;-@∀@)「ま、待ってください!! あなたは一体……何をしにここへ……!」
('A`)「…………ハッ、余計なことは聞くもんじゃねーよ……」
(;-@∀@)「なっ!!」
素早くホルスターから拳銃を取り出して、アサピーの額を撃ち抜く。
血溜まりの向こうに綺麗な放射状を描いた血痕を残して、その頭はゆっくりと垂れていった。
('A`)「……ちょっとした、野暮用さ」
.
62
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:44:40 ID:Cj5bthWI0
集会堂の奥にあった扉を出て、正面にある建物。
ちょうど集会堂と同じくらいの大きさだ。
俺達はその建物の中に入って、長い廊下を歩いていた。
ζ(゚ー゚*ζ「……そのジャケット、重くないの?」
('A`)「ああ、もう慣れちまったよ」
ζ(゚ー゚;ζ「慣れるんだ……」
愛用のホルスターを作ったデザイナーに、これまた特注で作らせた黒い革製のジャケット。
裏地がびっしり埋まるほどにまで、マガジンを入れておくことが出来る。
二丁の拳銃で大量の弾を消費してしまう俺にとっては、便利な代物だ。
この季節になると随分暑苦しく感じるが、仕事なので仕方がない。
('A`)「……さて……」
ようやくたどり着いた、長い廊下の突き当たりにある一つの扉。
ここに来るまでに幾つかの扉があったが、全てもぬけの殻だったのだ。
耳を澄ますと、中から僅かに物音が聞こえる。
('A`)「デレ、俺の後ろに隠れてろよ」
ζ(゚ー゚;ζ「う、うん」ササッ
63
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:45:37 ID:Cj5bthWI0
ホルスターから取り出した拳銃を両手に構えて、深呼吸をする。
そして勢い良く、扉を蹴破った。
('A`)「…………」
しかし、中に人はいなかった。
どうやらこの部屋は物置のようだ。
しかしただの物置にしては広いこの部屋に、俺は違和感を感じた。
('A`)「音がしたってことは、この部屋のどこかにまだ扉があるってことか?」
中に足を踏み入れて、置かれた棚の後ろや机の下を覗いてみる。
しかし、それらしいものは見当たらない。
おまけに窓の外には塀しかなかった。
('A`)「……デレ、騙されたみてーだ」
大きな棚を元の位置に戻しながら、そう言った。
しかし、返事はない。
('A`)「……デレ?」
振り返るが、そこに彼女の姿はない。
.
64
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:46:25 ID:Cj5bthWI0
(;'A`)「チッ!!」
――まずい。
つい、意識を別の所へ置いてしまっていた。
何かあってからじゃ遅い。
そう思うよりも早く急いで廊下に出たが――――
――――そこにあったのは、体格のいい男の姿だった。
(´・_ゝ・`)「…………何を焦っている」
('A`)「…………」
司祭服を身に纏い、間抜けな帽子を被った男。
その左手には、大きな剣が握られていた。
.
65
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:50:02 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……デレはどこだ」
(´・_ゝ・`)「デレ? ……ああ、君と一緒にいた女のことか」
(´・_ゝ・`)「……彼女は…………さぁどこだろうな」
('A`)「…………」
(´・_ゝ・`)「どうやら、君がうちの人間を殺した犯人で間違いないようだな」
そう言いながら男は、左手に握っていた剣を両手に構えて、姿勢を低くした。
('A`)「ああ。あの間抜け面とイカレ眼鏡なら、俺がこの手で天国に導いてやったよ」
両手の拳銃を握り直して、男の顔に向ける。
男はじりじりと間合いを詰めながら、こちらの様子を窺っているようだ。
(´・_ゝ・`)「俺は神父のデミタスだ。覚えておけ」
('∀`)「“覚えておけ”って事は、つまり俺を殺す自信がねぇって事か?」
(´・_ゝ・`)「ぬかせッ!!」
石の床だというのに、デミタスと名乗った男の足は踏み出しただけで大きな音を鳴らした。
その音の大きさに比例して、迫りくる速さも並大抵のものではなかった。
.
66
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:51:29 ID:Cj5bthWI0
デミタスの最初の一撃は、突き。
接近戦に慣れていない俺にとっては躱すのが最も楽な攻撃だが、銃弾と違って剣は大きい。
横っ腹すれすれのところで回避した。
(´・_ゝ・`)「ふんッ!!」
デミタスは突かれた剣を引きながら、横に薙ぎ払うように剣を振るう。
俺はトリガーガードの付け根で剣を受け、もう一方の銃でデミタスへ連射した。
デミタスは剣を軸に身体を捻らせて、俺の腹の方へと潜り込んでくる。
(´・_ゝ・`)「ハァッ!!」
剣を右手で持ち、離した左手の拳を俺の腹へ突き出してきた。
俺は空いている方の拳銃のグリップエンドでその拳を弾いて、再び連射した。
(´・_ゝ・`)「くッ……!!」
流石にこの距離で躱すのは困難だと察したのか、デミタスは剣を引いて間合いを空けた。
('∀`)「……なかなかやるじゃん。あのイカレ眼鏡よりは楽しませてくれそうだ」
(´・_ゝ・`)「……ふっ……アサピーと一緒にされては困る……」
(´・_ゝ・`)「“帰天”もまともにできない、あの男とはな」
.
67
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:52:32 ID:Cj5bthWI0
帰天。
それが何を意味しているのかはわからないが、デミタスはアサピーとは違う能力を持っているという事だろうか。
(´・_ゝ・`)「……すぐに終わらせてやろう」
デミタスはそう言うと、剣の切っ先を床に向け、じっと構えた。
そして自らの手をその刃の付け根に当てて、血を垂らした。
(´・_ゝ・`)「……“帰天・血滅剣”!」
刃に垂れた血が樋に染み渡った時。
その刃がぼんやりと赤く光りだした時。
デミタスはそう言った。
(´・_ゝ・`)「ハァァッ!!」
再び床を踏み込んで間合いを詰めてくる。
今度は突きではなく、払いのようだ。
('∀`)「ハハハッ、ここはオカルト展示場か!?」
あの剣が、あの儀式のような動作がどういう効果をもたらすのかわからないうちは、簡単に攻撃を受け止める訳にはいかない。
デミタスの腕の動きを見て、一撃目は身を引いて躱した。
.
68
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:53:46 ID:Cj5bthWI0
('∀`)「どうしたどうした!!」
(´・_ゝ・`)「フンッ!!」
二撃目も、左からの払い。
俺は両手の銃からマガジンを取り出して、後ろの物置に飛び込んだ。
空中に浮いたマガジンが、デミタスの剣に触れる。
剣で簡単に切れるようなものじゃあない。
だというのに、そのマガジンはいとも容易く真っ二つになってしまった。
('∀`)「……なるほど、銃で受け止めるわけにゃいかねーってことか」
(´・_ゝ・`)「俺としては、受け止めてくれた方がありがたいがな」
('∀`)「ご期待には添えねぇよ!!」
新しいマガジンを装填して、デミタスに向かって両手の引き金を何度も引く。
放たれた幾つもの銃弾は、デミタスの振るった剣によって弾かれていく。
('∀`)「休んでる余裕はねーぞ!!」
歩きながら何度も続けて銃弾を放つ。
一歩、一歩とデミタスは下がりながら、その銃弾を見事に弾いていく。
69
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:54:54 ID:Cj5bthWI0
やがて再び廊下に出た頃、俺は両手のマガジンリリースボタンを押して、デミタスに向かって弾の入ったマガジンを放り投げた。
(;´・_ゝ・`)「ッ!?」
不意の動作に、デミタスの反応が一瞬だけ遅れる。
俺はその隙を逃さなかった。
('∀`)「ハハハハハッ!!!」
強く床を蹴って、デミタスに急接近する。
同時に先ほど放り投げたマガジンを空中で装填して、残っていた弾をデミタスの腹部へ撃ち込んだ。
(;´・_ゝ・`)「ぐッ……!!」
即座にデミタスを蹴って、間合いを取る。
確実に撃ち抜いた。大量の血が、溢れ出していた。
しかし、左手で腹部を抑えながら、それでもデミタスは剣を握ることをやめなかった。
(;´・_ゝ・`)「……こ……この程度……」
(;´・_ゝ・`)「……帰天を成し遂げた俺には無意味……ッ!!」
そう叫ぶと同時に、デミタスの腹部から溢れ出ていた血の流れが止まった。
.
70
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:56:28 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……なんだ、つまんねぇの」
(;´・_ゝ・`)「……はは……ナメてもらっては困るな……!」
再び、両手で剣を構えるデミタス。
先ほどの出血や痛みのせいか、その切っ先は微かに揺れていた。
('∀`)「そんじゃまぁ、楽にしてやるよ!!」
(´・_ゝ・`)「ハァァァァッ!!」
剣を向け、急接近してくるデミタス。
俺は両手の銃から二発の銃弾を放つだけで、その場から動くことはしなかった。
一発の銃弾はデミタスの剣によって、簡単に弾かれた。
(´・_ゝ・`)「そんなもの当たらんさ!!」
振るった剣を戻し、今度は突きの体制へ。
そのまま勢いを落とすこと無く、突進を続けてきた。
('∀`)「――よく見ろよ」
(;´・_ゝ・`)「――――ッ!!」
.
71
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:57:49 ID:Cj5bthWI0
石の床に向かって放たれていた、もう一発の銃弾。
それは見事に跳弾し、接近してきたデミタスのちょうど膝の部分へ命中したのだった。
(;´・_ゝ・`)「ガハ……ッ!!」
斜めになって、無様に床に倒れこむデミタス。
その右手から剣が離れ、ちょうど俺の足元へと滑ってくる。
それを靴底で受け止めながら、右手の拳銃の銃口をデミタスの額に向けた。
('A`)「なかなかの剣術だったぜ。まあもっとも、剣同士でも俺には勝てなかっただろうけどな」
(;´・_ゝ・`)「……クソ……ッ」
('A`)「デレはどこだ」
(;´・_ゝ・`)「…………」
('A`)「お前がここで一番偉いってわけじゃあないんだろ? そのお偉いさんにはどこに行けば会えるんだ」
(;´・_ゝ・`)「……言わんさ。もっとも、言ったところで、お前は俺を殺すだろう」
('A`)「よくわかってるじゃねぇか」
ハンマーを起こして、デミタスの額に照準を合わせる。
72
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 05:59:42 ID:Cj5bthWI0
('A`)「わからなきゃ、探せばいいだけだ」
引き金を引くと、デミタスの額に大きな穴が空いて、後方に脳と血を撒き散らした。
同時に、その頭から外れた帽子。
――そして顕になった、髪の毛の無い頭頂部。
彡⌒ミ
(´ _ゝ `)
('∀`)「……なるほど。その似合わねぇ帽子は、ハゲ隠しだったって事か」
薬莢だらけの床を、ゆっくりと歩く。
帽子を拾い上げ、それを男の頭に被せ直して、俺はこの建物を後にした。
.
73
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/31(木) 06:01:25 ID:Cj5bthWI0
本日はこの辺りで。
次の投下で終わりますので、またよろしくお願いします。
74
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 06:16:49 ID:liifTOj20
ひとまず乙
まってるよ
75
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 10:48:41 ID:EjhS61/s0
優しいな
76
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 12:13:12 ID:JoTIRpJY0
おう
待ってるぜ
デレの無事を祈る
77
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 12:16:43 ID:ArlBxvAE0
デミ隠しのことハゲ隠しって言うのやめろよ!
乙です
78
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 12:54:16 ID:DWfG6Njg0
おいハゲを暴く必要はなかったろ!!!
おつ!
79
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:48:57 ID:CCACwx0U0
('A`)「…………さてと」
これまでの騒ぎを聞いてか、敷地内にいた多くの人々はすでに消えていた。
この敷地内で一番目立つ建物、礼拝堂。
俺は真っ先にそこへと歩みを進めていた。
('A`)「案内なんか聞かずに、初めからここに来りゃ良かったぜ」
大きな扉をゆっくりと引くと、中から漏れ出す異様な空気を感じる取ることができた。
そして俺が見たものは――。
(;'A`)「デレ!!」
――十字架に磔にされている、デレの姿だった。
.
80
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:49:29 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚;ζ「ど、ドクオ! 助けて……!!」
幸い、意識はある。見たところ怪我も無いようだ。
('A`)「今降ろしてやるからな!」
『――無駄だよ』
('A`)「……!?」
――カツ、カツ、カツ。
一歩一歩、音を堂内に響かせながら、暗闇から姿を現した、一人の男。
爪'ー`)「私の能力で磔にしているからね。簡単には外せないさ」
(;'A`)「――ッ……お前は……フォックス……!!」
半年前、ある大手企業の社長を殺す依頼を成し遂げ、100万レスもの金を手にした。
俺が店を持つ為の元手になった金だ。
この男フォックスは、その依頼主であった。
爪'ー`)「ッ……。おやおや、まさか侵入者が君だったとは……」
爪'ー`)「驚いたよ、“Killer-D”」
.
81
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:50:38 ID:CCACwx0U0
“Killer-D”とは、俺が店を持つ前に呼ばれていた名前だ。
ブーンと合わせて、“Killer-B.D.”なんて呼ばれていた事もあった。
('A`)「……今は便利屋“All Trades”のドクオだ」
爪'ー`)「便利屋、ねぇ……。あの君が、今じゃ水道管工事をしてるのか……笑えるね」
('A`)「ハッ……生憎これが初仕事さ」
爪'ー`)「……半年ほど前か……君に仕事を依頼したのは」
('A`)「お前、あの社長を殺して自分の会社をでかくするんじゃなかったのか?」
爪'ー`)「ああ、その通りさ。カデレス社は邪魔だったからな。君のお陰でうちの売上は大きく上がったよ」
ζ(゚ー゚;ζ「……か……カデレス……?」
デレが青白い顔を引きつらせて、そう言った。
大事なものを何か、失ったかのように。
爪'ー`)「そう、カデレス。彼らは事業を広げすぎたんだ。当然、あの社長を殺したがってたのは私だけじゃなかったはずだ」
82
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:51:26 ID:CCACwx0U0
('A`)「俺が聞きてぇのはそんな話じゃねぇんだよ。そんなお前がなんでこんな宗教団体なんて――――」
ζ(゚ー゚;ζ「――待ってよ!!」
('A`)「ッ……?」
ζ(゚ー゚;ζ「カデレスの……カデレスの社長を……殺したの……?」
('A`)「ああ。こいつの依頼でな」
ζ( ー ;ζ「……そんな……嘘…………」
('A`)「お、おい」
ζ( ー ζ「…………私の……」
「……私のお父さんは……カデレスの社長だったんだよ……」
(;'A`)「――ッ!」
.
83
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:52:03 ID:CCACwx0U0
デレの顔は、まるで日の射さない路地裏のように暗く翳り、表情の判別はできない。
――冗談じゃない。
どうしてそんな偶然が。
どうして、よりによってこんな時に。
爪'ー`)「……おやおや……よもやこんな偶然があるなんてね……! Killer-Dの死を彩る最高のスパイスじゃあないか!」
(;'A`)「……チッ……」
.
84
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:52:37 ID:CCACwx0U0
――何を感情的になっているんだ、俺は。
頭に“元”が付くとはいえ、俺はKiller-Dと呼ばれ怖れられた人間だ。
フォックスの言う通りさ。最高のスパイスじゃないか。
( ∀ )「…………ククッ……ハハハハハハッ!!!」
.
85
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:53:17 ID:CCACwx0U0
ただ、死ぬのは俺じゃない。
('∀`)「殺してやるよフォックス!!」
爪'ー`)「……そう来なくてはね……!!」
ホルスターから取り出した二丁の愛銃。
俺はこの結び目だらけの感情を乗せて、いくつもの銃弾を放った。
.
86
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:53:55 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「ハァッ!!」
真っ直ぐにフォックスへと向かう銃弾を防ぐようにして、どこからとも無く血の盾が現れた。
アサピーが出していた物と同じだ。
それならば、一点に銃弾を打ち込み続けていればいずれは砕ける。
――だが、そう甘くは無かった。
.
87
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:54:46 ID:CCACwx0U0
('A`)「……堅ぇな」
爪'ー`)「……そう簡単に壊せるようなものじゃないさ」
('A`)「あのイカレ眼鏡よりゃマシってことか」
爪'ー`)「……アサピーの事か……」
フォックスは口角を軽く吊り上げながら、フッと鼻で笑った。
爪'ー`)「彼はダメだな。通常の帰天すら中途半端にしか出来なかった男だ」
('A`)「まーた帰天かよ。そろそろそいつの正体を教えてほしいね」
爪'ー`)「君が知る必要はない。ただ見ていればいいさ」
爪'ー`)「私がこれから行う“帰天”をね……!」
そう言いながらフォックスが両手を広げると、まるで天井から引っ張り上げているかのように、その身体が宙に浮かんだ。
(;'∀`)「……空まで飛ぶわけ……?」
爪'ー`)「これは儀式のうちさ……」
爪 ー )「この大地に住みし我らの神よ……生娘の生き血を吸い……我に降臨されたし……!!」
爪'ー`)「“帰天”!!!」
.
88
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:55:52 ID:CCACwx0U0
地鳴りのような轟音が堂内に響き渡り、フォックスの身体は直視できないほどの光を発した。
それも数秒ほどで収まり、俺は再びフォックスに目を向けた。
爪'ー`)
そこにあるのは、先程と何も変わらない一人の男の姿だった。
ただひとつ、この堂内で変化したのは――。
(;'A`)「デレ!!!」
先程まではその虚ろな瞳で遠くを見つめていたはずのデレが、今では目を閉じぐったりと項垂れている。
“生娘の生き血”。それがデレの血の事を指しているのであれば、命が危ない。
爪'ー`)「安心するといい。まだ死んではいないさ」
フォックスの言う通り、確かにまだ死んではいない。
微かながら、呼吸によって肩が揺れているのがわかる。
爪'ー`)「だが、戦いが長引けば長引くほど、彼女の命は危なくなる。私は彼女の血を使って戦わせてもらうからな」
爪'ー`)「彼女の身を案ずるなら、とっとと死ぬべきだ」
('A`)「……てめぇ……」
89
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:56:27 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「しかし全く呆れるよ。あの非常な殺し屋だった君が、小娘一人の命を心配するとはな」
('A`)「…………」
('A`)「……違うな」
爪'ー`)「……?」
一歩、前に踏み出す。
堂内に均等に並べられた長椅子の中の、一番手前にあるものに足を載せて、銃口をフォックスに向ける。
('A`)「あいつは俺の“依頼主”だ。報酬を受け取るためには、あいつには生きててもらわねーとならねぇんだよ」
爪'ー`)「……なるほど。まあそれでもいいでしょう」
爪'ー`)「どっちにしても、君は死ぬのだからね!!」
フォックスが叫ぶのと同時に、彼の背後からいくつもの血の塊が飛来してくる。
速度は拳銃の銃弾と同等か、それ以上だろうか。
すぐに俺は足を載せていた長椅子を蹴って跳躍する。
フォックスが放った血の塊は、俺に直撃すること無く後ろの扉へと突き刺さっていく。
('∀`)「ほらよ!!」
地上数メートルの高さから、銃弾の雨を降らす。
当然ながら、フォックスはそれを盾で受け止めていた。
90
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:57:16 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「飛び道具相手に跳躍するのは頷けないな!! 着地点が丸わかりだ!!」
やがてフォックスは銃弾を受け止めながら、俺が着地するであろう場所に向かって血の塊をいくつも放った。
('∀`)「無駄だぜ狐野郎ッ!!!」
飛来するいくつもの血の塊に向かって、二丁の愛銃から銃弾を放つ。
銃弾は一発の無駄もなく血の塊一つ一つにぶつかって、それを弾いた。
('∀`)「……悪いな、俺にはそんな盾なんて必要ねぇんだ」
爪'ー`)「それは面白い……」
爪'ー`)「ならばこれはどうかな……!!」
フォックスの背後に浮き上がる、複数の血の塊。
それだけじゃない。扉に突き刺さった血や、俺が弾いて散らばった血でさえ、空中に浮き上がっていた。
爪'ー`)「アサピーには、この数は不可能だったはずだ」
彼が振り上げた右手を勢い良く振り下ろすと同時に、浮いていた血の塊は一斉に俺へと向かってきた。
('∀`)「ハッハァ!!!」
91
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:58:37 ID:CCACwx0U0
背後からの攻撃を身を捻るようにして躱しながら、辺りに連射する。
とてもこの程度の連射で防ぎきれる数ではない。ただし、お陰で数は減った。
俺は両手の愛銃からマガジンを放り出して、身を屈めた。
爪'ー`)「…………フッ」
ガシャン、と放り投げたマガジンが落ちる音がする。
いくつもの血の塊や薬莢が、地面に転がる音が耳に届く。
爪'ー`)「流石に躱し切れなかったようだねぇ……」
( ∀ )「……ククク……」
爪;'ー`)「ッ……?」
俺は屈んで身を包んでいたジャケットを外して、ゆっくりと立ち上がった。
爪;'ー`)「なっ…………」
92
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:59:17 ID:CCACwx0U0
('∀`)「このジャケットで防がせてもらったのは二回目だな……。全く……意外とやるな、オカルト集団よォ……」
重たいジャケットを地面に放り投げると、石で出来たこの床ですら微かに揺れた。
たまには鎖から放たれるのも、悪くはない。
爪'ー`)「……まさか無傷とはね……。面白い、面白いよ」
('∀`)「お遊びはここまでだぜ」
石の床を蹴って、フォックスへ急接近する。
重たいジャケットを着ていないだけで、身体が羽根のように軽く感じた。
('∀`)「ほらよッ!!」
愛銃を振りかぶり、グリップエンドをフォックスの頭へと振り下ろす。
爪;'ー`)「く……ッ!!」
どこからか現れた血の盾が、それを防ぐ。
だがその一撃だけで、血の盾には亀裂が走っていた。
('∀`)「ハァッ!!」
爪;'ー`)「――ガハッ……!!」
フォックスを蹴り飛ばすようにして、後ろへ跳躍する。
俺が離れると、フォックスの身体全体を守るように盾が広がった。
93
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:00:40 ID:CCACwx0U0
('∀`)「んなもん無駄だろ!!」
射撃の精密さよりも連射速度を重視して、盾に無数の銃弾を放つ。
それだけでその盾は、容易く砕け散った。
再び床を蹴って、フォックスへと急接近する。
爪;'ー`)「まだだッ!!」
駆けながら放った銃弾がフォックスの額に直撃するよりも速く、赤い何かがそれを防いだ。
爪;'ー`)「……よもやこれを出すことになるとは……君は接近戦にも長けているようだな……」
フォックスが手に持っているのは、赤い長剣。
血を固めて作り出した物のようだ。
('A`)「…………」
奴は血を使いすぎている。
このままでは本当に、デレの命が危ない。
依頼主がなんだ。
そんなものは関係ない。
――俺はただ、俺が殺す以外で目の前で人が死ぬのを見たくないだけなんだ。
94
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:01:54 ID:CCACwx0U0
('∀`)「……終わらせようぜ」
爪'ー`)「……いいだろう」
じりじりと、詰め寄る間合い。
元より俺は近接戦闘向きの武器を持っていない。
だが、この愛銃で戦えないわけではない。
爪'ー`)「……ハァッ!!」
強く床を蹴って、その長剣を振りかざしながら接近してくるフォックス。
俺は後方のジャケットに銃弾を放つ。
ジャケットの中に収まっているマガジンに銃弾が直撃し、弧を描きながらこちらへと向かってくる。
それを空中でリロードし、狙いをフォックスへと戻した。
('∀`)「ハッハァ!!!」
真っ直ぐに振り下ろされた刃をグリップエンドで弾きながら、フォックスの顔に向かって片手で連射する。
フォックスはそれを血の盾で防ぎ、振り下ろした長剣を素早く斜めに振り上げた。
('∀`)「掠りもしねぇぜ!!」
ジャケットを着ていない俺に、避けられないものはない。
どんなに速かろうと、どんなに不意をつかれようと、俺は最小限の動きで躱した。
95
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:02:41 ID:CCACwx0U0
爪;'ー`)「クソッ!!」
フォックスは再び長剣を構え、横へ大きく振るう。
同時に、いくつもの血の塊が俺へ向かって飛来してくるのがわかった。
その血の塊を全て拳銃の側面で弾き、躱した長剣の刃をもう一つの拳銃のグリップエンドで上から叩いた。
キィン、と鋭い音が鳴り響き、弾かれた長剣の切っ先が石の床に突き刺さる。
爪;'ー`)「く……ッ!!」
('∀`)「ゲームオーバーだ」
長剣を抜くことも出きず、隙だらけになったフォックスの額に、銃口を突き付けた。
('A`)「ちょいと話をしようや」
爪;'ー`)「…………」
フォックスは長剣からゆっくりと手を離し、そのまま抵抗の意思は見せなかった。
.
96
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:03:18 ID:CCACwx0U0
('A`)「なんでこんな事をしてるんだ? わけのわからねぇ能力やら帰天やら……ビジネスには見えねぇが」
爪;'ー`)「……初めはビジネスのつもりだったさ。宗教は金になるからね」
('A`)「この街には宗教を信仰してるような連中はいねぇ。だからこそって思ったのかもしれねぇが、俺にはそうは思えねぇな」
爪;'ー`)「……私も、この街でやっていけるか不安だったさ。しかし、調べてみると面白い話が出てきてね……」
爪;'ー`)「この街には神が住んでいるのさ……」
真剣な表情で、フォックスはそう語った。
嘘や狂言を吐いているようには思えない、そんな表情で。
('A`)「……そいつは知らなかったな。こんなネオンとアルコールとタバコの煙しかねぇような街を好む神様じゃあ、祈りを捧げる価値も無さそうだが」
爪;'ー`)「馬鹿にしてはならないよ。事実、私たちは力を手に入れた」
97
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:04:12 ID:CCACwx0U0
('A`)「ハッ。女の血を使ってか? まぁある意味ではこの街の神様らしい、って感じだな。趣味が悪すぎる」
爪;'ー`)「“帰天”のためには仕方ないんだよ……!」
('A`)「ビジネスやってたあんたの方が好みだったぜ」
爪;'ー`)「…………」
('A`)「ミイラ取りがミイラになるってのは、まさにこの事だな。まぁせいぜい神に祈りを捧げて死ぬといいさ」
拳銃のハンマーを起こして、引き金に力を込める。
('A`)「天に帰れよ」
大きな音を立てて、拳銃は火を吹く。
フォックスの後頭部から鮮血が飛び散り、薬莢が地面に転がって小気味よい音を立てた頃、フォックスの身体も地面に崩れ落ちていた。
('A`)「……アーメンハレルヤピーナッツバターだ……」
.
98
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:05:00 ID:CCACwx0U0
二丁の愛銃をホルスターに仕舞っていると、何やら赤い霧状の物が浮かんでいるのが目に入った。
その霧はやがて磔になったデレの元へと集まり、姿を消した。
フォックスに使われた血が、デレの身体へと戻ったのだろうか。
同時に、十字架からデレの身体が真っ直ぐに地面に落下した。
(;'A`)「おっと!」
瞬時に駆け寄って、床にぶつかる前にデレの身体を両手で抱える。
ジャケットを脱いでいて良かった。
着ていたら、間に合わなかったかもしれない。
('A`)「……おい、デレ。起きろ」
ζ(-、-*ζ「……ん…………?」
('A`)「自分で立ってくれ」
ζ(-、-;ζ「……ん……」
ゆっくりとデレを立たせると、ふらふらと揺れながら、閉じていた目を擦って無理やりに開いた。
ζ(゚ー゚;ζ「……あれ……ドクオ……?」
('A`)「終わったんだよ」
99
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:06:30 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
('A`)「……なんだよ……」
デレは一歩下がり、俺を見つめている。
怯えている様子はない。
ただ、見つめている。
ζ(゚ー゚;ζ「……どうして……私のお父さんを……」
('A`)「…………仕事だったからだ」
ζ(゚ー゚;ζ「…………なんで……」
('A`)「……言ってるだろ、仕事だったからだ」
ζ( 、 ;ζ「……違うよ……」
「――――なんで、あなたなの…………」
.
100
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:09:21 ID:CCACwx0U0
('A`)「…………」
ζ(゚、゚;ζ「……こんなの酷いよ……」
('A`)「俺だって知らなかったんだよ。それに、悪かったって思ってるさ……」
ζ(゚ー゚;ζ「……私じゃなかったら思わなかったんでしょ!?」
('A`)「――ッ……」
確かにその通りだ。
今までは、悪いなんて思ったことも無かった。
むしろ店を持つための金になってくれてありがたいとまで思っていた。
ζ( ー ;ζ「……どうしたらいいのか……わかんないよ……」
('A`)「……父親の事、好きだったのか?」
ζ( ー ;ζ「……当たり前でしょ……」
('A`)「会社の金に手を付け、社員の給料をピンハネし、お陰で自殺した社員までいる。そんな父親でも、か? 報道されただろ」
ζ( ー ;ζ「…………」
デレは何も言わず、黙っていた。
呼吸の音だけを鳴らして。
しかし暫くすると口を開いて、ゆっくりと返事をした。
.
101
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:10:36 ID:CCACwx0U0
ζ( ー ;ζ「……それでも……だよ……」
('A`)「…………」
案の定、だ。
彼女は案の定、そう返事した。
父親どころか、生まれつき家族が一人もいなかった俺には理解できない話だ。
('A`)「……報酬はいらねぇよ。とっとと帰れ」
ζ(゚ー゚;ζ「……え?」
('A`)「お前の父親が死んだのも、お前がこんな街の寂れたレストランでウェイトレスやるはめになったのも、俺のせいだ」
('A`)「報酬なんていらねぇよ。消えてくれ」
ジャケットを拾い上げて、長椅子に腰を降ろす。
ポケットに仕舞ってあったタバコを取り出して、オイルライターで火をつけた。
吸い込んだ煙を吐き出す。
たったそれだけの動作を繰り返すだけで、俺の心は深く満たされた気がした。
野暮用を、終えた。
タバコがフィルターの先まで短くなった頃には、堂内にデレの姿はもう無かった。
.
102
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:11:47 ID:CCACwx0U0
('A`)「…………帰るか」
吸い殻を靴底で踏みつけて、立ち上がる。
礼拝堂から出た頃には、夕日が地面を赤く染め上げていた。
('A`)「……腹減ったな……」
ジャケットから財布を取り出して、中身を確認する。
――しまった。ツンの店で1万レスも払ってしまって、残金が少ない。
('A`)「……チッ。一度店に帰っ――」
「ちょっと待って」
('A`)「……?」
.
103
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:12:39 ID:CCACwx0U0
不意に後ろからジャケットを掴まれる。
仕事を終えて気が抜けていて、誰かに接近されていた事に気が付かなかった。
振り返るとそこには――。
ζ(゚ー゚*ζ「……報酬、まだ払ってないから」
先程とはまるで違う表情の、デレがいた。
('A`)「……いらねぇって言ったろ」
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ私の気が済まないもん。お金なら持ってきたから」
('A`)「チッ…………。じゃあ……」
「……晩飯奢ってくれ」
.
104
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:13:28 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚*ζ「……えっ? 晩飯?」
('A`)「晩飯だ」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなのでいいの?」
('A`)「ああ。契約するときに言ったろ? “朝飯前だ”ってな」
ζ(゚ー゚*ζ「……プッ……」
('A`)「……おい、笑う所じゃねぇよ。ここは“かっこいい、惚れちゃう”って所だろうが」
ζ(゚ー゚*ζ「……童貞、拗らせちゃったのね」
(;'A`)「どっ……童貞とかやめろよ……チッ……ほんとやめろよ……やめろ……」
ζ(゚ー゚*ζ「……いいよ、行こ? 私が働いてるお店、ピザも美味しいから」
('A`)「…………ああ。腹一杯奢ってもらうぜ」
夕日はやがて沈み、月明かりが夜道を照らす。
開店したバーのネオンが点滅し、眩しく目に染みる。
彼女と歩くこの吸い殻まみれの小汚い道も、案外悪くないものだと思えた。
.
105
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:14:55 ID:CCACwx0U0
.
106
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:15:28 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「悪くねぇダンスナンバーだったぜ。ただちょっと、テンポが悪かったな」
('A`)
r/|/Rっy=
' j_H,j
し; J
“便利屋ドクオ” a.k.a. “Killer-D”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
107
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:17:35 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……仕方ないお。ブーン達は、そういう人間だから……」
__
_/:::::::|_
( ^ω^)
/ b|≡| |
|_|_:^_| j
(__)_)
“ブーン” a.k.a. “Killer-B”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
108
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:18:51 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……私は……一人でいるのも怖いよ……」
ζ(゚ー゚*ζ
jV,l.j
/mw\
"し^J''
“依頼人 デレ”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
109
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:19:48 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「久々よ、こんな酷い銃を持ち込まれたのは」
ξ゚⊿゚)ξ
jh =l|oi
|z ;z|
し^J
“ガンスミス ツン”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
110
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:22:06 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……女なんて……しらねーよ……」
∧ ∧
( ´ー`)
/,,v__v|っA
|_-,,-,,|
し^ヽJ
“役立たず シラネーヨ”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
111
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:24:08 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「一度使ったものを再利用するのは当然ですよね……!!」
∧_∧
(-@∀@)
y/,, ,,|r
|_-,,-,,|
し;^ヽJ
“祓魔師 アサピー”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
112
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:25:23 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……すぐに終わらせてやろう」
_
/:::::::ヽ /|
(´・_ゝ・`) //
jh: :ljh//
jh :njoJ
し^ヽJ
“司祭 デミタス”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
113
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:26:31 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「この街には神が住んでいるのさ……」
爪'ー`) ;j
n/::::::|d t||r
^/:_:_:| ||
と^tゝ |;
“教皇 フォックス”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
114
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:27:10 ID:CCACwx0U0
.
115
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:28:00 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
Thanks for reading!
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
116
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:28:35 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です
fin.
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
117
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:31:08 ID:CCACwx0U0
以上です。ありがとうございました。
エンドロールを作ってたら思ったよりも時間がかかってしまいました。
本当は三部作くらいにしたかった…間に合わなかった…。
118
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 08:04:54 ID:vgapgkRw0
乙
ドックンかっこよかった
119
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 08:31:51 ID:i/I.1kQ20
おつ!
バトル描写引き込まれたよ
ファンになっちまうぜ!
120
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 13:59:17 ID:xqwNtxzE0
乙
これは好き
121
:
◆mQ0JrMCe2Y
:2016/04/04(月) 01:17:50 ID:J1bwFtJc0
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1456585367/404-405
122
:
名無しさん
:2016/04/06(水) 23:17:10 ID:KC9pHpOU0
乙
ド直球やな
123
:
名無しさん
:2016/04/07(木) 04:35:44 ID:nQ.RLKZk0
異能に対して物理攻撃だけで渡り合ってくのすき
面白かったゆ
124
:
名無しさん
:2016/04/07(木) 18:05:50 ID:fFNm7rFE0
乙
続きが読みたくなるわ
125
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 10:26:37 ID:Z3am7JDY0
続きてか連載してくれたりしない?
126
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/18(月) 17:49:14 ID:Bz3wk9sc0
「こいつをやるよ」
男が俺に差し出したのは、拳銃。
黒いスライドから剥き出しになった銀色のバレルが、月明かりを反射させていた。
「銃は持っておくと便利だ。見せびらかすだけでお前の身を守る盾になり……」
「……相手を殺す武器になる」
「…………」
「構うことはねぇよ。俺はもう一丁持ってるからな」
「…………なんで……」
「?」
「なんで俺みたいな知らない奴に、こんなものを渡すんだ……?」
「……ハッ。何を言い出すかと思ったら、そんなことか」
彼は笑って、空を見上げながら言った。
「昔の俺に、よく似てるからだよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
127
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/18(月) 17:49:48 ID:Bz3wk9sc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です ――少年編――
近日?公開予定
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
という感じでよろしくお願いします!
128
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 18:21:12 ID:ixLjVelA0
* + 巛 ヽ
〒 ! + 。 + 。 * 。
+ 。 | |
* + / / イヤッッホォォォオオォオウ!
∧_∧ / /
(´∀` / / + 。 + 。 * 。
,- f
/ ュヘ | * + 。 + 。 +
〈_} ) |
/ ! + 。 + + *
./ ,ヘ |
ガタン ||| j / | | |||
――――――――――――
129
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 19:52:45 ID:SGjpafTU0
やったー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
130
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 20:06:10 ID:shat8Gxs0
マジかよ!
ダメ元で言ったら続きキタ━!
待ってるからな!
131
:
名無しさん
:2016/04/23(土) 00:57:22 ID:MtbYCK6A0
作者賞6位おめでとう
132
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/23(土) 02:21:02 ID:e2ehi1/w0
投票本当にありがとうございます…!
7割程度書き終わったので、近いうちに…。
途中まで投下するか悩みます。
133
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/05/02(月) 15:42:48 ID:/bf6AHok0
完成しました、ので投下できるとこまでやります。
あと最近おしゃれな酉を入手したので変えます。
134
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:43:23 ID:/bf6AHok0
.
135
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:43:57 ID:/bf6AHok0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です
――少年編――
◆PizzaMan.c presents
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
136
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:44:33 ID:/bf6AHok0
.
137
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:45:06 ID:/bf6AHok0
「ハァ……ハァ……ッ!!」
(;'A)
ノ/-/o
j._/| ダッダッ
;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺はなんて、馬鹿なことを。
「ハァ…………うぐ……ッ!!」
、 ,
;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
138
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:45:49 ID:/bf6AHok0
でもまだ、死ぬわけにはいかないんだ。
『待てやクソガキィ!!』
「……クソッ!!」
(;'A)
/,-|、 スクッ
j._/U
.,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
139
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:46:36 ID:/bf6AHok0
話は、前日に遡る。
J( 'ー`)し「ドクオ……こんな遅くまでどこへ行っていたの??」
皺だらけの顔で鋭く俺を睨みつける女は不機嫌そうにため息をついて、シミの目立つ椅子に深く腰を降ろし、そう言った。
彼女は、俺が暮らしているこの児童保護施設の先生だ。
('A`)「……ちょっと……買い物に行ってました」
J( 'ー`)し「買い物? こんな時間に何が欲しかったの?」
('A`)「……喉が渇いたんで……コーラを」
大嘘だ。
実際に行っていたのは、繁華街。
この施設から逃げ出す金を集めるために、ギャングから預かったドラッグを売り捌いていたのだ。
J( 'ー`)し「あのねぇ…………。それが本当かどうかは置いといて、もしもあなたが警察に補導でもされたら、注意されるのは私なのよ!?」
('A`)「…………」
140
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:47:09 ID:/bf6AHok0
いつもそうだ。
この人は、いつも自分の事しか考えていない。
J( 'ー`)し「お金が必要なんだから、問題は起こさないで欲しいわ。警察に目をつけられでもしたらどうしてくれるのよ」
この児童保護施設は、児童保護施設とは名ばかりに、保護した少女を金で売りさばいていた。
養子縁組という、これまた名ばかりの方法を使って。
手に入れた大金は、この女の意味もない化粧やエステに消費されているのだろう。
つい吐き出しそうになった嫌味を、石を飲み込むように喉奥へと押し込んで、俯いた。
J( 'ー`)し「男は売れもしないから困ったもんだよ。さらに余計な面倒ごとまで引っ張り込んで……全く」
('A`)「…………」
J( 'ー`)し「もういいわ。部屋に戻りなさい」
('A`)「……はい」
ゆっくりと、薄暗い部屋を後にする。
後ろからブツブツと彼女が何かを言っているのが聞こえたが、俺は耳を傾ける事もせずに歩き続けた。
電気のついていない廊下を通って、俺は自分の寝床へと戻った。
141
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:48:06 ID:/bf6AHok0
('A`)「チッ……クソババァが……」ドサッ
空き部屋から持ち出してきた敷布団を重ねているおかげで、このベッドだけは居心地が良かった。
枕元のランプをつけ、ショルダーバッグから取り出したメモ用紙を眺める。
('A`)「…………6万レスか……」
ここ一ヶ月の間で、俺が売り捌いたドラッグの金額が30万レス。その内の2割の6万レスが、俺の手元に入ってくる。
ギャングに今月の売上金を渡すのは、明日。
つまり、今俺の手元には30万レスもの大金があるという事だ。
('A`)「…………」
俺はもう14歳だ。年齢を偽れば、ボロアパートを借りる事も不可能ではない。
30万レスもあれば、ここから逃げ出しても一ヶ月はやっていける。
142
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:48:39 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………、何考えてんだか。見つかって殺されるのがオチだ」
どうせ逃げ出すなら、もうちょっと早く逃げ出した方が良かったんだ。
俺が明日金を持ってこなかったら、ギャング達はすぐに俺を捜し出して、この脳天に大きな穴を空けるだろう。
('A`)「……ま、コツコツ貯めるっきゃねぇな……」
ドラッグの密売は、まだ始めたばかりだ。
数ヶ月も続けていれば、逃げ出すに十分な金額は貯まるだろう。
俺は頭の中で何度も金額の計算をしながら、その日は眠りについた。
.
143
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:49:34 ID:/bf6AHok0
(うA`)「……ふぁぁ……ねむ……」
カーテンの隙間から漏れ出す日差しの眩しさに、俺は目覚し時計を使わずとも目を覚ました。
ホールへやってくると、すでに何人かがテーブルで食事を取っていた。
俺もトレーを抱え、カウンターに置かれている器を次々と並べていく。
器に入っているのは、どれも質素な食品ばかり。
わがままを言えば、俺は朝昼晩全てピザでもいいというのに。
だが、何も食えないよりはマシだ。
自分にそう言い聞かせるしかない。
ミセ*゚ー゚)リ「おはようドクオー!」ドンッ
(;'A`)そ「おっと!」カチャッ
トレーを抱えてぼーっと立っていると、不意に後ろから押された。
トレーの上でゆらゆらと揺れる食器を上手いことなだめて、俺は振り返った。
144
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:50:17 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「……ミセリ……あのな……」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、ごめんごめん! ぼーっとしてたからそんなにいっぱい持ってるとは思わなくて!」
彼女の名前は、ミセリ。
年齢は俺の一歳下で、13歳だ。
彼女もまた、俺と同じくこの施設に保護された一人だ。
どうやら、両親から虐待を受けていたらしく、そのまま厄介払いのようにここに捨てられたとか。
ミセ*゚ー゚)リ「今日はやけに早起きだね。どしたの?」
('A`)「早起きってレベルか?」
ミセ*゚ー゚)リ「いつもより1時間も早いよ。ドクオがそんなに早起きするのは珍しいって」
('A`)「……腹が減ったんだよ」
ミセ*゚ー゚)リ「……なにそれ。笑えるー」カチャカチャ
彼女は笑顔のままトレーの上にいくつもの食器を並べていた。
俺はその間に空いてる席へと腰を下ろした。
ミセ*゚ー゚)リ「せっかくだから一緒に食べよ?」スッ
('A`)「……そうだな」
ミセ*゚ー゚)リ「もー。朝から浮かない顔してどうしたの? こっちにまでうつっちゃうよ」
('A`)「この顔は元からだっての」
145
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:51:18 ID:/bf6AHok0
パサパサのパンを口に放り込み、咀嚼する。それを色の薄いスープで胃の奥に流し込んだ。
お世辞にも美味しいとは言えない。
もしも俺が本当に浮かない顔をしているのだとしたら、それはきっとこの朝食が原因だろう。
ミセ*゚ー゚)リ「ごはん美味しいなぁ」モグモグ
俺の感想とは真逆に、ミセリはそう言う。
彼女と食事を共にする機会はあまり無いが、どんな食事でも美味しそうに食べていたのは印象深い。
ミセ*゚ー゚)リ「今日は土曜日だねぇ」
('A`)「……ああ、そうだな」
ミセ*゚ー゚)リ「何か予定はあるの?」
('A`)「いや、特にねーけど」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあさ、ちょっと街に出かけない? 私見たいお店があるんだ」
('A`)「……店って……。買う金あんのか?」
ミセ*゚ー゚)リ「無いよ?」
('A`)「…………」
146
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:52:00 ID:/bf6AHok0
それもそのはずだ。
当然ながら、ここの子供たちにお小遣いが与えられるような事はない。
むしろ子供たちに裏庭で育てた野菜やら果物やらをを持たせて、それを売りに行かせるくらいだ。
もちろん報酬などない。
('A`)「金ねーのに行ったってしょうがないだろ?」
ミセ*゚ー゚)リ「いいの、見たいだけだから。散々お店を冷やかして冷やかして…………それでね、いつかそれを堂々と買ってやるの!」
(;'A`)「なんだそりゃ」
ミセ*゚ー゚)リ「って事で、行こ? 決定ね!」
(;'A`)「……はぁ。わかったよ」
.
147
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:52:50 ID:/bf6AHok0
_________| |. |.:ll.:.::.:ミ;;;;;;ミ |___________
\.! !i!|l.:.::./:::/─────┐. |// i! .| | | |__
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄从 !.i.ll:.:/.:;/jesty's Shoes | . |/ | |i ! | ||=||=
. ミ.:.:::.ミ |..i!lll:::::/──────┘ .| | l |!. | ||=||=
-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,!ヽ.:.彡|i.:iiii|.:::|___ / ̄ ̄ヽ. ! | l i!. | ||=||=
二二二二二二二二二| | \ヽ.:i!|:::::! \\| |口i口i口| | | | li, | ||=||=
二二二二二二二二二| | l !i.::ii;;l;::! \| ||C|osed|| |ヽ、_,--、_,--、_,--、,! !l_,||=
二二二二二二二二二| | |_,|i.::|||!|::!___| |口i口i口| | ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄l ||=
二二二二二二二二二| | |i.::iii!i;::| |口i口i口| | ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄l ̄ ̄l ||=
二二二二二二二二二|_l_. !i::iii.i.:.:| ___|_i_i_|_| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _.. |i.:iii!i;:::| _ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
.....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i |i.::iii!i;::|_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i||===========||_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
.....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .|| |i.::iii!i;::| ||.....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i|li ___________ ,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ // ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄\\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
// \\|| \ \\ 。
____//. \|| \\ [^ヽヽ__ | _
/ / l ̄二 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l| ̄二 ̄ ̄ ̄ ̄ヽイ  ̄ ̄`ヘ ─  ̄
. ⌒::.:ヽ |] ̄ ̄ ̄ /⌒\ || | γ ⌒ヽ {i!
.:.:.(.:.::(.:.:::=! イ i!O i! il ゝ_____,l!______/ i li O il!l二二ソ \
(.:.:::..(.:.::  ̄ ̄ ´ ゝ___ソ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ´ゝ___,ソ ̄ ̄ \
.
148
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:53:24 ID:/bf6AHok0
数時間後、俺たちは街まで来ていた。
街と言っても、それほど栄えているわけではない。
ただ俺たちが住んでいる辺りよりは、小洒落た店が多く並んでいた。
「おい走るなよ」 「次はあのお店ね!」
( 'A) ミセ*゚ー゚)リ
|":-っ ノ|h-.|o
j_-| /wv| タタタッ
,、しJ ;、, て^ヽJ.;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
街の散策を始めてから、すでに1時間が経過しただろうか。
俺は十分すぎるほど見物したと思ったが、この様子だと彼女はまだ足りないらしい。
まあ、たまにはこういう日も悪くないのだが。
ミセ*゚ー゚)リ「ふわぁ〜〜! 見てこれ!」
('A`)「どれだ?」
ミセ*゚ー゚)リ「これこれ! このペンダント!」
(;'A`)「たっかそうだな……って、1万!?」
(;'A`)「ペンダント一つにそんな大金を払う奴がいるのかよ……」
ミセ*゚ー゚)リ「かわいいなぁ〜。私だったら買うね! 絶対!」
('A`)「……まあ、デザインは悪くねーな」
ミセ*゚ー゚)リ「すみませーん! これ付けてみてもいいですかー!?」
(;'A`)「おいおい」
149
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:54:25 ID:/bf6AHok0
俺たちがどんなにみすぼらしい服装をしていても、どんなに貧乏そうに見えても、店員は頷くしかない。
それを見てミセリは大喜びだ。すぐに自分の首へそのペンダントをかけた。
ミセ*゚ー゚)リ「どう? どう?」
('A`)「……おお、似合ってるな」
ミセリの首につるされた、天使を象った銀色のペンダント。
服装だけがいまいちだが、彼女の髪型や髪色にはとても似合って見えた。
素直に、感心してしまった。
ミセ*゚ー゚)リ「えへへ、ほんと?」
('A`)「ああ。こりゃ買うべきだ」
ミセ*゚ー゚)リ「でもお金がないからお預けー」スッ
(;'A`)「ほんっと冷やかしだな」
150
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:55:08 ID:/bf6AHok0
ミセリはペンダントをゆっくりと外すと、また元の場所へと戻した。
1万レス。
俺が肌身離さず持っている現金の、わずか30分の1の金額だ。
当然ながらそんな事を知るはずもない彼女は、少しだけ残念そうな顔でペンダントを見つめていた。
ミセ*゚ー゚)リ「……ささっ、次行こ!」タタッ
(;'A`)「だから走るなっての……」
カランカラン、とドアのチャイムを鳴らして、彼女はすぐに店内から去っていく。
窓ガラスから見えていた彼女の横顔も、すぐに見えなくなった。
('A`)「…………」
俺は馬鹿だ。
ああ、間違いなく大馬鹿だ。
.
151
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:56:01 ID:/bf6AHok0
|i l::| |VNヾ` ´/ |::; l:}l:::::::::::/ } :::::::::::::;
. ゝ ',! |:::::::| ', r ,:/ j' |::::::::/) } !::::::::::: ,'
. ヽVト、| ヽ / !::: / _/ j:::::::::: ,'
{ l ;::::/Y´ /:::::::::: ,′
. ヽ ', ___,. -ニ=- _ ,'/ __,/:::::::::::::::/ー- _
. ', {ゝ-’:::::::;: ---ゝ ,:7::::::::::::;:>≦ }
‘, )-=¬ /:{ < ,'
’, ,.::=¬ ,. -=ニ二 _,. {
’, / ,. -= l
. ’, / |
’, / _,. --|
’, / ,. =≦≧=- _ j
「…………すいません」
ただ、馬鹿になるのも悪くない気分だ。
.、
| '.
'. '. _ ,.、
:,.;^' ^ ".
r'| ',
'h' j
“';, ,;
| ';
「これ、ください」
.
152
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:56:36 ID:/bf6AHok0
ミセ*゚ー゚)リ「ふぅー、楽しかったね!」
('A`)「ああ」
街から施設への帰り道。
もう少し歩けば、施設に到着するだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「また行きたいな〜」
バッグの中に隠した、銀色のペンダント。
俺はそれをミセリにいつ渡そうか、ひたすら悩んでいた。
(;'A`)「…………」
駄目だ。
いざ渡すと思うと、なぜだか緊張してしまう。
別に俺は、ミセリに特別な感情を抱いているわけでもないのに。
(;'A`)「…………」
153
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:57:23 ID:/bf6AHok0
何故だろうか。
とても恥ずかしい。
やっぱりやめておくべきだったのではないか。
(;'A`)「…………」
ミセ*゚ー゚)リ「どうかした?」
(;'A`)そ「へっ!? い、いやいや!!」
ミセ*゚ー゚)リ「ついたよ?」
(;'A`)「えっ? あ、ああ…………」
気づけば、自分たちは施設の玄関前まで来ていた。
ミセ*゚ー゚)リ「ただいまー」ガチャッ
('A`)「…………」スタスタ
仕方がない。
何も今日でなくとも、渡す機会ならいくらでもある。
勇気が湧いてきた頃に、ちゃんとした形で渡そう。
そう心に誓った。
154
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:58:14 ID:/bf6AHok0
J( 'ー`)し「あら、やっと帰ってきたの?」
玄関の扉を開けてすぐの場所に、先生が立っていた。
彼女は、いつもはあまり見せない笑顔を浮かべて、こちらに歩み寄ってくる。
ミセ*゚ー゚)リ「ただいま、先生」
J( 'ー`)し「ミセリ、今日は大事な話があるの。ちょっと来てくれる?」
ミセ*゚ー゚)リ「へ? うん、わかりました」
('A`)「……?」
大事な話?
出かけていた事と何か関係があるのだろうか。
ミセ*゚ー゚)リ「付き合ってくれてありがとね、ドクオ! またお昼ご飯の時に!」
('A`)「あ、ああ……」
まあ、後で聞けばいい話だ。
俺はペンダントを渡す練習でもしていよう。
そんな事を考えながら、俺は軋む床を歩きながらゆっくりと部屋へ戻った。
.
155
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:58:54 ID:/bf6AHok0
――それから長い時間が過ぎても、その日のうちに、再び彼女と会うことはなかった。
昼食時、俺は食事が終わってもホールで待っていたが、一向に現れず。
夕食時、彼女の分の食事まで用意して待っていても、現れず。
('A`)「…………」
やがて他の子供たち全員が食事を終えてから数時間が経った頃、俺はようやく諦めて、トレーを元の場所へと戻したのだった。
('A`)「あいつが飯も食わないなんてな……」
余程、深刻な話だったのだろうか。
先生の表情からは、そうは思えなかったのだが。
('A`)「……まあいいや」
仕方なしに、扉を開けて廊下へ出る。
相変わらず暗い廊下だ。
金に困っていないのなら、もう少し設備を整えてほしいものだ。そう思った。
156
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:59:34 ID:/bf6AHok0
不意に、横の扉が開く音がする。
この部屋は、先生の寝室だ。
中から出てきたのは、案の定気味の悪い笑顔を浮かべた女だった。
J( 'ー`)し「……あら」
目が合う。
俺は視線を逸らさずに彼女の瞳をまっすぐ見つめて、こう聞いた。
('A`)「……ミセリはどうしたんですか」
ミセリ、という名前を聞いて、彼女は顔をそらして口角を引きつらせていた。
J( 'ー`)し「……ああ、あの子なら引き取られたわよ」
(;'A`)「――ッ!?」
彼女の言葉を聞いて、思わず足がすくみそうになった。
引き取られた。
それはつまり、大金で売り飛ばされたという事だ。
157
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:00:19 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「なっ……」
J( 'ー`)し「今日ね、いい方が来てくれたのよ。ミセリくらいの歳の娘なら、男手一人でも世話ができるって……」
(;'A`)「…………」
世話ができる?
冗談じゃない。
世話をさせられるのはミセリの方だ。
だからあえてその年齢の子供を選んだんだ。
この女もそれをわかっている。
わかっていて、それでも大金に換える。
もう何回――、あと何回この女はそれを繰り返すのだろうか。
(;'A`)「……じゃあ、もう連れてかれたんですか……」
J( 'ー`)し「ええ。今頃あの方のお家で、温かいお風呂にでも浸かってゆっくりしているでしょうね」
(;'A`)「ッ…………」
この女は、救いようがない屑だ。
ただ、俺は腹を立てるよりも、悲しみに心をまるごと押し潰されてしまった。
158
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:01:03 ID:/bf6AHok0
( A )「…………」
J( 'ー`)し「……おやすみなさい、ドクオ」
俺が口を閉ざしていると、彼女はそう言ってホールの方へと歩みを進めた。
やがて扉が閉まる音が、この薄暗い廊下に響き渡った。
('A`)「…………」
どうする事もできない。
何を言ったって、あの女はミセリの居所を教えるはずもない。
手紙だって出させてくれるはずがない。
――もっとも、ミセリが手紙を受け取れるような状況に置かれるかどうかもわからない。
('A`)「…………」
今までも、この施設から引き取られていった子供たちとは、二度と会うことがなかった。
もう、忘れるしかないのか。
悔しさを圧し殺して、ゆっくりと歩きだした。
.
159
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:01:38 ID:/bf6AHok0
暗い廊下を抜けて、自分の部屋へと到着する。
同時に、ある事を思い出した。
今日は、ギャング達に金を渡さなければならないのだった。
('A`)「……行かねーと殺されちまうな」
部屋へ入り、ベルトで挟んでおいた封筒が確かにある事を確認した。
そしてベッドの下に隠しておいたドラッグを取り出して、ショルダーバッグへ詰め込んだ。
部屋の窓をゆっくりと開けて、周囲を確認する。
外には誰もいない。俺はゆっくりと足を地面に下ろした。
('A`)「……行くか……」
枯れ葉を踏み越えながら、ゆっくりと庭を抜け出した。
.
160
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:02:24 ID:/bf6AHok0
しばらく歩くと、人通りの多い場所へ出た。
時計を確認すると、時刻はまだ22時を10分過ぎたばかりだ。この時間帯なら、バーやパブへ出入りする人達が多い。
俺はその人混みに紛れるようにして、決して走らず、ゆっくりと歩みを進めた。
客寄せの声。クラブから漏れ出す音楽。酔っぱらいの叫び声。道端の吸い殻。割れたビール瓶。
全てがこの街を小汚く彩っていた。
シュボッ /ィヘ/
,' / .)/
. _______ (:' /イ)/
./∨========.∧ ', )) ィヾヽ/
マ:::::∨.\/\/\∧ } /( 弋,イ
.マ:::::∨/\/\/ ∧ ,' ノし': :ヽ
..マ::::::∨__/\/\ ∧ ((,イ: : :: :V) /¨⌒`ヽ
マ::::::∨ \/\/\∧ 、ゝ: : : :(ノ} Y′ |
. マ:::::::∨/\/\/ ∧ ヽ: :: : : :: :/ / /
. マ:::::::∨__/.\/\ .∧ ゝ;:; :;从;ノ ./ /
. マ:::::::∨ .\/\/ヽ∧ ┌───────i/ヽ_ ./
.マ:::::::∨./\/====∧.二二ニニニニニニニニニニニ| ー-─ /
. マ:::::::∨==ヽ:::::::::::| |\/\/\/\/|三| /
` ̄ ̄ )::::::::::| |/\/\/\/\|三|. /
ソ´⌒ ̄ ̄ ̄へ──'ニt‐‐ ./\/\/|三| .|
/ 〃 l ̄ヽ ヽ/\/\ ̄リ .|
| ゝ .| | ) /\/\| |
バッグから取り出したタバコに火をつけ、煙を一気に吸い込む。
肺に溜まった酸素とともに吐き出した煙は、まるで俺の気持ちのようにゆらゆらと揺れながら、やがてネオンの光の中に薄く溶けていった。
161
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:03:38 ID:/bf6AHok0
明るい看板が並ぶ通りを逸れて、月明かりのみが照らす薄暗い路地へと入る。
ゴミ袋や空き瓶を避けながら歩みを進めると、やがてポカンと小さく開けた空き地へと出た。
そこに佇む、5人の男たち。
彼らが、この辺りでドラッグを捌くギャングたちだ。
('A`)「……どうも」
軽く頭を下げて、そう挨拶する。
すると一人の男が手に持っていたタバコの火を消して、こちらへゆっくりと歩み寄ってきた。
(,,゚Д゚)「時間通りだな」
('A`)「…………」
このギャングのリーダであるギコという名の男は、左手にした時計を見てそう言った。
確認せずとも、恐らく22時半頃だろう。
俺はいつもこの位の時間に、この場所にやってきていた。
162
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:04:43 ID:/bf6AHok0
(,,゚Д゚)「飯は食ったか?」
('A`)「……ああ、はい。食べました」
(,,゚Д゚)「そうか。そりゃいいな。飯を食うことは大切だ。俺たちはまだ何も食ってないんだ」
('A`)「……なにか買ってきましょうか?」
(,,゚Д゚)「いや、その必要はない。お前は施設で出された飯を食っただけのこと。俺たちは自分で飯を食うための金を稼がなきゃなんねぇ。それだけの違いだ」
('A`)「…………」
嫌味な言い方だ。
ただ別に、それで腹を立てるようなことは無い。この言い方は、彼の性格によるものなのだ。
いちいち彼の発言に腹を立ててストレスを貯めるような事をしても、無意味だとわかっていた。
(,,゚Д゚)「お前から金を受け取らないと、俺たちは今日の晩飯にありつけないんだ」
彼はそう言うが、決してそんなはずはない。あくまでそういう言い回しをしているだけだ。
俺はバッグの中から残りのドラッグと封筒を取り出して、彼に渡した。
(,,゚Д゚)「どれ……」
っロ゛
163
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:05:32 ID:/bf6AHok0
ギコはドラッグの数を数え、次に封筒の中の金を取り出して、舐めるようにその枚数を数えた。
(,,゚Д゚)「……29万しかないぞ」
('A`)「――あっ……」
ミセリがいなくなった事ばかり考えていたせいで、忘れていた。
彼女へのプレゼントを買ったために、1万レス少ないのだ。
('A`)「……すいません、どうしても使わなくてはならなくて……1万だけ借りました」
(,,゚Д゚)「……ほぉ」
('A`)「その分は……俺の分の2割から引いてもらえればいいので……」
(,,゚Д゚)「……あのな」
ギコは一歩踏み出して、俺の肩に手を置いた。
(,,゚Д゚)「お前は、俺たちが貸したドラッグの売上から金を使った。つまり、俺たちの金に手を付けたってことだ。わかるか?」
('A`)「……はい」
(,,゚Д゚)「人の金を盗むのは良くないよな」
('A`)「…………はい」
164
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:06:38 ID:/bf6AHok0
わかっていた。
してはいけない事だと。
ただ、俺の取り分から引けばいいものだと勝手に考えていた。
(,,゚Д゚)「……わかっているならいいんだ。今回は許してやろう」
('A`)「……えっ」
ギコはそう言って、まだ金を数え始めた。
(,,゚Д゚)「……これがお前の取り分だ」
っロ スッ
('A`)「…………」
っロ
ギコから受け取った金をじっと見つめる。
俺の取り分は6万。そこから1万だけ引いた5万が渡されるのだと思っていた。
――だが俺の手元にあるのは、たったの2枚きりだった。
165
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:07:16 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「…………」
(,,゚Д゚)「罰として、今回の取り分は1割だ」
彼はそう言った。
俺は、何も言うことができない。
彼の言う事はもっともだ。罰を与えられて当然で、2万くれるだけでもありがたい事なのだ。
ただ、俺は気になった。
ギコを取り囲む周りの4人が、ニヤけた顔で俺を見つめているのが。
(;'A`)「…………」
もともと彼らは、1割しか渡さないつもりだったのではないか。
(,,゚Д゚)「まあ来月からは2割にしてやる。……さて、続けるか? 売上次第では3割にしてやってもいい」
('A`)「…………」
166
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:08:16 ID:/bf6AHok0
冗談じゃない。
どう頑張ったって、30万レス程度しか売ることができないんだ。
もしそのうちの1割しか貰えなかったら、俺はあと何ヶ月こんな事を続けたらいいのだ。
いつまで経っても、あの施設を出ることができない。
金をためて逃げ出す前に、法的に働ける年齢になってしまう。
俺は一刻も早く、あそこから逃げ出したいのだ。
('A`)「…………」
ギコの持つ、27万。
それがあれば、一ヶ月は一人でもやっていける。
('A`)「続けます」
俺がそう言うと、ギコは喜んでバッグの中を漁り始めた。
周りの男たちもそう聞いて安心したのか、俺から興味をなくしたように下がっていって、タバコを吸い始めた。
167
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:08:54 ID:/bf6AHok0
俺はその隙を見逃さなかった。
(;'A) バシッ
/":-っ゛
j_-/
,し^、ゞ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
すかさずギコの上着のポケットから封筒を掴み取り、そのまま全力で逃げ出したのだ。
(;,゚Д゚)「あっ、おいテメェ!!」
後ろを振り返る暇はない。
ただ、複数の男たちが俺を追いかけて来ていることは、大きな足音と叫び声でわかった。
(;'A`)「ハァッ……ハァッ……!」ダダッ
人混みの中を縫うようにして、走り続ける。
時折ぶつかった人が驚いて声を上げる。
それでも構わず走り続ける。
168
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:09:39 ID:/bf6AHok0
「ハァ……ハァ……ッ!!」
(;'A)
ノ/-/o
j._/| ダッダッ
;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺はなんて、馬鹿なことを。
「ハァ…………うぐ……ッ!!」
、 ,
;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
169
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:10:18 ID:/bf6AHok0
でもまだ、死ぬわけにはいかないんだ。
『待てやクソガキィ!!』
「……クソッ!!」
(;'A)
/,-|、 スクッ
j._/U
.,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
170
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:11:01 ID:/bf6AHok0
男たちの叫び声が聞こえなくなるまで俺は走り続けた。
もう何十分走っただろうか。
脚は棒のようになり、走る速度も先程よりも随分と遅くなってしまった。
それでも、ふらふらとよろけながら走り続けた。
そして暗い路地の角を曲がったその時。
ドンッ
(;'A`)「うわっ!」ドサッ
不意に何かにぶつかって、地面に転んでしまった。
「おっと…………」
.
171
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:11:52 ID:/bf6AHok0
そんな声が聞こえてはじめて、ぶつかったのが人だと理解した。
見上げるとそこにいたのは。
「……大丈夫か坊主」
_
( ゚∀゚)
ri:::|_|::|
/ロ/n|j:| (A`;)
し/^J 、, ∧イ-.人
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
黒いロングコートに見を包み、右手をポケットに突っ込んで佇んでいた、一人の男だった。
太くしっかりとした眉毛が特徴的なその男は、地面に尻をついて倒れ込んだ俺に手を差し伸べていた。
「……手を貸せよ」
_
( ゚∀゚)
ri:::|_|::|っ
/ロ/n|j:| (A`;)
し/^J 、, ∧イ-.人
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
172
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:12:38 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「…………」
ぶつかってしまったのは俺の方だ。
急いでいるとはいえ彼の好意を邪険にする必要もなく、俺はその手を掴んだ。
\
\
\, -. . ,_ ガシッ
\ ノ ';,
'ヽ, . し^ ' .ヾヽ、
'-:'_'、 .'ヽ、) ヽ、
'-ヽ、 ',._',-' \
^' \
'ヽ
_
( ゚∀゚)「よっと」
グイッ、と強い力で引っ張られ、俺の身体は簡単に持ち上がる。
_
( ゚∀゚)「……ガキか?」
俺の顔や背丈、体重からそう思ったのか、彼はそう言った。
俺はまだ、子供に見えてしまうのか。
173
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:13:17 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「前見て歩けよ。……いや、走ってたか」
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「……ひょっとして、逃げてんのか?」
(;'A`)「ッ…………」
_
( ゚∀゚)「やっぱりか」
なんだ、この男は。
俺が子供だと見抜いたり、逃げていると見抜いたり。
まさか――。
_
( ゚∀゚)「警察じゃねぇよ、安心しろ」
(;'A`)「ッ…………」
俺が思った事すら、見抜かれる。
_
( ゚∀゚)「……警察だと都合が悪そうだな。ってことは……何かやらかしたな?」
(;'A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「だんまりかよ」
174
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:13:50 ID:/bf6AHok0
怯えているのでも、不審に思っているのでもない。
驚いているのだ。
驚いて、何も言えない。
_
( ゚∀゚)「安心しろよ、追手は来てねぇみたいだからよ」
(;'A`)「……それならよかった……」
_
( ゚∀゚)「んで、その封筒は?」
(;'A`)そ「ッ!」
そう言われて気がつく。
大事に抱えていたはずの封筒が、手元にない。
男が指差す方向を見ると、封筒は俺が先ほど転んだ辺りに転がっていた。
(;'A`)ササッ
っロ゛
_
( ゚∀゚)「……金か。盗んだな?」
(;'A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「誰から盗んだ」
(;'A`)「…………ギャング……」
_
( ゚∀゚)「ギャング? ってーと……ギコあたりか?」
(;'A`)「……そう……」
_
( ゚∀゚)「…………プッ……」
_
(*゚∀゚)「……ハハハハハッ!!」
_
( ゚∀゚)「おいおい、マジかよ。やるじゃん」
175
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:14:41 ID:/bf6AHok0
男は、笑った。
_
( ゚∀゚)「で、その追手から逃げてるってわけ?」
((;'A`)コクコク
_
( ゚∀゚)「……いやー、面白い奴もいるもんだな。笑えるぜ」
男はそう言いながら、ロングコートを捲くって腰のあたりから何かを取り出した。
_
( ゚∀゚)「こいつをやるよ」
っ=y
男が俺に差し出したのは、拳銃。
黒いスライドから剥き出しになった銀色のバレルが、月明かりを反射させていた。
(;'A`)「えっ?」
_
( ゚∀゚)「銃は持っておくと便利だ。見せびらかすだけでお前の身を守る盾になり……」
「……相手を殺す武器になる」
.
176
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:15:24 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「構うことはねぇよ。俺はもう一丁持ってるからな」
(;'A`)「…………なんで……」
_
( ゚∀゚)「?」
(;'A`)「なんで俺みたいな知らない奴に、こんなものを渡すんだ……?」
_
( ゚∀゚)「……ハッ。何を言い出すかと思ったら、そんなことか」
彼は笑って、空を見上げながら言った。
_
( ゚∀゚)「昔の俺に、よく似てるからだよ」
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「いいから受け取っとけ」
っ=y
('A`)「……じゃあ……」ガシッ
っy=゛
177
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:15:57 ID:/bf6AHok0
彼から拳銃を受け取る。
拳銃を手に持つのは、初めての事だ。
('A`)「ッ……」
っy=
想像していたよりも、重い。
グリップは大きく、自分の手には少し余る。
だが、トリガーやマガジンリリースボタンに届かないほどではない。
_
( ゚∀゚)「使い方はわかるか?」
('A`)「……まあ、本とかで……」
_
( ゚∀゚)「ならいいな。とりあえず撃てればいいんだ。メンテナンスなんかはまた覚えればいい」
セーフティの位置も、見ればわかる。
弾も既に入っているようだ。
('A`)「……こんなもの、本当にもらっていいのか? 高いんじゃ……」
_
( ゚∀゚)「気にすんなよ。俺は結構稼いでるし、仕事柄いくつも持ってるからな」
('A`)「仕事柄……?」
_
( ゚∀゚)「ここらじゃ結構名の知れてる殺し屋さ。もっとも、お前みたいなガキが知ってるわけもねーが」
('A`)「殺し屋……か……」
178
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:17:09 ID:/bf6AHok0
殺し屋がどういったものなのか、想像はできる。
ただ実際に、俺の目の前にいるこの親切な男が殺し屋だなんて――、正直なところ合点がいかない。
こんなものだろうか。
檻に閉じ込められた子犬を解き放つような、そんな優しさが。
殺し屋の心にはあるのだろうか。
――いや、これは優しさと似ているようで、きっとまるで別ものなのだ。
そうでないと、子犬に牙を与える理由にならない。
('A`)「……ひとつ聞いていいか」
_
( ゚∀゚)「……なんだ?」
('A`)「そういう生き方って……大変じゃないのか」
_
( ゚∀゚)「……ハッ。そりゃ大変さ。人を殺し回ってりゃ、警察や法律と戦わなきゃなんねー時もある」
_
( ゚∀゚)「ただよ……」
_
( ゚∀゚)「俺たちみてーな人間が手っ取り早く“自由”を手に入れるためには、“銃”を手にするしかないんだよ」
179
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:17:46 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「とても人にオススメできるようなもんじゃねぇ。けど…………、お前は望んでるんだろ?」
('A`)「…………ああ」
:.| ∨: : :|ハ:! //‐ ´ i: : : : : : : : /::::::::/
:.ゝ-V: :.| ヘ、 |: : : . . : : : : :厶イ/ _
: : :.|..∨ム |: : : : . : : : : : : : /:/ > .
ハ: :.! iヾ:.i {: : : : : : : : : : : イ:/ \ > .
.∧..i.....i \ __ j: : : : : : : : : , i:::/ \ `
.... Ⅵ.....i \ ` 〃: : : : : : : , '....|::′、 \
........ヘ.....i \ ___,........__: : : : : :., '........j/......∧ \
.................i \ ` ー─一 ´: : : /∨...................∧ \
..................i \  ̄:::::: : : :./ i..................... ∧ \
「……こいつがあれば、俺は自由だ」
.
180
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:18:39 ID:/bf6AHok0
_
( ゚∀゚)「……ハッ。そいつはよかったな――――」
『この辺にいるはずだ!!』
(;'A`)「ッ……!」
不意に、後方から声がする。
大勢の足音とともに、その声は段々と近づいてくる。
_
( ゚∀゚)「…………さて、俺はこの辺りでお暇するか」
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「ビビってるのか?」
('A`)「……いや……」
('A`)「…………ウズウズしてるだけさ」
181
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:19:29 ID:/bf6AHok0
「……ハッ。……それじゃあな」
_
. (A` ) n( ゚∀゚)
|-h.| . 'ヽ|:::|_|::|
i_U_j /ロ/n|j:|
し^J ; .、し/^J ザッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
やがて彼は、この路地裏から姿を消した。
まるで初めからいなかったかのように。
夢でも見ていたのではないかと思わせる。
しかし俺の右手には、確かに銃が握られている。
Ω「いたぞ!!」ダッ
やがて路地の影から姿を表した3人の男たち。
ギコはいない。そもそも追いかけて来なかったのだろう。
182
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:20:09 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
| |
| |
| | グッ
-' '- ノ;_
| | . , | | 7
t.'-'-'-'t;_;| J| |
. '==| ,:| _|
. | | |'|
| | |.|
. | |.|_|
| | |,
. '-'-┘
スチャッ
____
_ . -r--'-┴-��
,.-,__.- =≦三三| γ⌒ヽ|
|三三二二三三| |:::::::: | |
|三三三三三三|人 ___ ノ |
_〈≧て⊇____人t .○ yノ
= ≦__/ ̄  ̄, ̄ ヽ | |__又_彡'
'. .. ._ y// ' '
:::::: 〈 : ̄  ̄'. '.' ','
:::::: .' -- = __y
::: '.' '. '. '
ヽ 〉 -= = _/ ,' 'ノ
ヽ '. .' '.
r' . - -= .._/
'-'-t:≦__::::j
'
ノ,
'
.
183
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:21:25 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
| |
| |
| | グッ
-' '- ノ;_
| | . , | | 7
t.'-'-'-'t;_;| J| |
. '==| ,:| _|
. | | |'|
| | |.|
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スチャッ
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|三三三三三三|人 ___ ノ |
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= ≦__/ ̄  ̄, ̄ ヽ | |__又_彡'
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ヽ 〉 -= = _/ ,' 'ノ
ヽ '. .' '.
r' . - -= .._/
'-'-t:≦__::::j
'
ノ,
'
.
184
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:21:59 ID:/bf6AHok0
セーフティを外して、銃口を男たちに向ける。
('A`)「…………」
っy=
Ω「――ッ!!」
それを見て男たちは、眉をひそめてたじろいでいた。
Ω「てめぇ……銃なんてどこで手に入れた……」
('A`)「…………さあな」
Ω「……俺たちに銃を向けたら、取り返しがつかねぇぞ」
('A`)「……取り返したいものなんて、ありゃしねぇんだ」
Ω「…………そうかよ」
Ω「だったらここで死にな!!」スッ
一人の男が、懐から拳銃を取り出した。
今更出したって遅い。俺は引き金を引くだけでこいつの命を取ることができるんだ。
185
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:22:41 ID:/bf6AHok0
('A`)「ッ……」
一瞬だけ、身震いする。
ここで引き金を引いたら、俺は一線を越えることになる。
なんて、簡単なのだろうか。
なんて、か弱いものなのだろうか。
命というものは、こんなにも軽い。
バァン
拳銃は、耳を劈くような大きな音を鳴らして、その銃口から火を吹く。
放たれた銃弾は一人の男の額を貫き、やがて男は地面に崩れ落ちた。
こんなにもあっさりと、人は命を落とすのだ。
.
186
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:23:32 ID:/bf6AHok0
Ω
Ω「ッ……て……てめぇ!!!」スッ
('A`)「おせぇよ」
っy=
バァン
一つ、二つ、三つ。
Ω「――ひッ……ヒィッ……!」ドサッ
次々と、地面に屍が転がる。
('A`)「…………」
Ω「ッ……やっ……やめろ俺は撃つな……!!」
最後に残った男が言う。
殺さないでくれ、殺さないでくれ。
か細い声で、彼は言う。
187
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:24:23 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………終わりなんだよ」
っy=
Ω「ッ…………」
('A`)「……いや。もう、終わってたのかもしれねぇな」
Ω「…………?」
('A`)「バーン」
Ωそ「ひッ……!!」
('∀`)「……ハハハハッ!!」
バァン
地面に転がった四つの死体を踏み越えて、俺は路地を抜け出した。
銃声を聞いて誰かが通報したのか、ネオンの街にはサイレンが鳴り響いていた。
俺はまた、人混みに紛れるように、闇に溶けるように、ゆっくりと歩みを進めた。
.
188
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:25:01 ID:/bf6AHok0
しばらく歩いて、俺は施設の前まで来ていた。
庭を抜け、開けっ放しにしておいた自分の部屋の窓から中へと入る。
施設内は、静かだ。部屋の様子も変わりない。
どうやら外出したことに気づかれてはいないようだ。
必要なものは、何もない。
この部屋に――、この俺に大事な持ち物なんて、大してありはしなかった。
ふと、ベッド脇の机に目を移す。
そこには、ミセリに渡すつもりだったペンダントの入った箱が置いてあった。
('A`)「…………持ってくか……」
ドラッグが無くなったことで再び軽くなっていたショルダーバッグに、ペンダントの箱を入れる。
もっと早く、渡しておけば。
後悔の念に苛まれ、しばらくの間俺はベッドに座り込んでいた。
189
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:25:38 ID:/bf6AHok0
('A`)「……行くか」
冷蔵庫に入れ忘れたままぬるくなった安物銘柄の缶コーラの栓を開けて、その中身を一気に飲み干す。
しばらくして落ち着きを取り戻し、俺はタバコに火をつけた。
('A`)y‐~~「……ふぅ」
この部屋でタバコを吸うのは初めてだ。
もしも先生にバレてしまったら、面倒な事になるからだ。
しかし、そんな生活ももう終わりだ。
ベッドから立ち上がって、部屋の扉を開ける。
軋む廊下を歩いて、ホールの近くの扉の前に立つ。
その扉をゆっくりと開け、足音を立てぬように少しずつ部屋の中へと入り、扉の鍵をかけた。
やがて見えてくる、大きなベッド。
そこに横になる、一人の女。
豪快にいびきを立てている。
.
190
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:26:14 ID:/bf6AHok0
('A`)「起きろよ」
声をかける。
だが、いびきは収まらない。
('A`)「おい、クソババァ」
再び声をかける。
いびきが止まり、寝息が微かに聞こえてくる。
.
191
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:26:56 ID:/bf6AHok0
「目を覚ませよクソババァ!!」
,.ィ´::::::::::
,...,..ィ´:::::::::::::::::::::::
, イ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
, イ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
_/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;:. .'''"´
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_:_;: '''"´
_,ィ、'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,ィ´
,イ'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;: '´
、|,' ,r'´ニ`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,:ィ''´
人、/ ,r'´ ̄ヽヽ, :::::::::::::::::':::::::::::::,:ィ''´
人," /´ ̄`ヽ、ヽ\ :::::::::::::,ゝ__‐'´
,/, / : : : : : :::::ヽ \ ヽイ::::::::/
v/ / ,...___ : : : : : :::::ハ ヽ/
,v ,イ,ィ:: : : : :`:‐-::、:_:,r‐l/ 三 ニ 一 -
. /:::::: : : : : : : : ::::::::::/
/::::_: : : : : : : : : : : :/
{::::::::::`ヽ:、: : : : : :./ 三 ニ 一 -
ヽ::::::::::::::::::::::::. : /
` 、:::::::::::::::::/ 三 ニ 一 -
` 、::/
ドンッ
.
192
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:27:40 ID:/bf6AHok0
「きゃあ!!」
靴底で、女の腰に蹴りをいれる。
流石にまだ寝ているということはない。
彼女は張り付いた瞼をむりやりこじ開けるようにして、事態を理解しようとしていた。
やがて、目が合う。
J(;'ー`)し「……えっ……?」
起き上がって再び俺を見つめるが、どうやら彼女はまだ、現状を理解できていないみたいだ。
蹴り飛ばしたのが俺であることすら――――いや、蹴り飛ばされた事すら、わかっていないようだ。
J(;'ー`)し「……何……なんなの……?」
('A`)「なぁ、先生」
J(;'ー`)し「…………」
('A`)「ミセリはどこに連れてかれたんだ」
J(;'ー`)し「……は? 言えるわけないじゃない……あんたみたいな金食い虫に……」
('A`)「…………」
193
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:28:13 ID:/bf6AHok0
「きゃあ!!」
靴底で、女の腰に蹴りをいれる。
流石にまだ寝ているということはない。
彼女は張り付いた瞼をむりやりこじ開けるようにして、事態を理解しようとしていた。
やがて、目が合う。
J(;'ー`)し「……えっ……?」
起き上がって再び俺を見つめるが、どうやら彼女はまだ、現状を理解できていないみたいだ。
蹴り飛ばしたのが俺であることすら――――いや、蹴り飛ばされた事すら、わかっていないようだ。
J(;'ー`)し「……何……なんなの……?」
('A`)「なぁ、先生」
J(;'ー`)し「…………」
('A`)「ミセリはどこに連れてかれたんだ」
J(;'ー`)し「……は? 言えるわけないじゃない……あんたみたいな金食い虫に……」
('A`)「…………」
194
:
これは失敬
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:28:58 ID:/bf6AHok0
('A`)「言えよ」チャッ
っy=
J(;'ー`)し「――ッ!?」
拳銃を向けると、彼女は竦み上がってその皺だらけの頬に汗を流した。
('A`)「……言わねーなら、殺して書類を漁るだけだ」
J(;'ー`)し「……なっ……まさか殺せるわけ……」
('A`) カチャッ
っy=゛
撃鉄を起こす。
その動作だけで、俺の言葉が嘘ではないと理解するのには十分だったようだ。
J(;'ー`)し「――ッ……わかった……わかったから……」ゴソゴソッ
彼女は恐る恐るその身を起こして、机の引き出しから一枚の紙を取り出した。
J(;'ー`)し「……ここよ……」ペラッ
っロ゛
('A`) パシッ
っロ゛
J(;'ー`)し「…………」
195
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:30:09 ID:/bf6AHok0
彼女から奪い取った紙は、養子縁組の手続きに使われたと思われる書類の控えだった。
大きな枠に囲われた部分に、ミセリを引き取った男の名前と、住所が書いてある。
その下には、ミセリの名前もあった。
どうやら、これで間違いはないようだ。
J(;'ー`)し「……あんた……」
紙を畳んでポケットに入れていると、彼女が俺の顔色を伺いながら口を開いた。
J(;'ー`)し「あんた……なんであの子のためにこんな事を……」
('A`)「…………」
これは決して、ミセリのためではない。
自分ではそう、理解していた。
あくまでこれは、自分のためなのだ。
自分を満足させるために、やっているだけの事なのだ。
196
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:30:43 ID:/bf6AHok0
そしてもう一つ、わかりやすい理由がある。
この女には、それすらもわからないのだろう。
J(;'ー`)し「……こんなことして……どうなるかわかってるの……?」
('A`)「……さあな」
J(;'ー`)し「…………」
('A`)「一つ、ためになる耳寄りな情報を教えてやるよ」
J(;'ー`)し「……何……?」
('A`)「これから俺がやる事は――――」
――――単なる憂さ晴らしに過ぎない。
.
197
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:31:47 ID:/bf6AHok0
そう言って、俺は彼女に向けた拳銃の引き金を引いた。
白いシーツが赤く染まり、その中央に倒れ込んだ死体。
俺はそれにタバコの吸い殻を押し付けて、この部屋を漁り始めた。
('A`)「……金庫の鍵はどれだ……」
机の引き出しや、バッグの中。
様々な場所を探し、最終的にたどり着いたのが、ベッドの下だった。
奥の方にある小さな木箱を引きずり出す。
その中に、金庫のものと思われる鍵と、ダイヤルのメモが入っていた。
全く、不用心な女だ。
そんな事を思いながら、部屋の隅にぽつんと置かれた大きな金庫にその鍵を差し込んだ。
その頃、廊下を走り回るような音がどこかから聞こえてくる。
銃声を聞きつけた子供たちが、何があったのかと不安な気持ちでこの先生の部屋へと向かってきているのだろう。
俺はそんな事は大して気にも止めず、メモの通りにダイヤルを数回だけ回した。
そして、金庫が開かれる。
198
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:32:28 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「ッ…………」
想像以上だった。
金庫の中に入っていたものは、ぱっと見ただけでも数千万レスは越える大金だった。
一体どれだけの人が、どれだけの大金で、この施設の子供たちを買っていったのか。
吐き気にも近い怒りを、ぐっと胸の奥に押さえつけて、俺はその大金を手に取った。
これだけあれば、やり直せる。
新しい人生を、手に入れる事ができる。
('A`)「…………」
彼らに、選ばせよう。
.
199
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:33:02 ID:/bf6AHok0
気づけば、鍵のかかったこの部屋の扉を強くノックする音が響いていた。
扉の向こうからは、不安そうな声で先生を呼ぶ声がいくつも聞こえる。
俺は大金を机の上に置き、ポケットから取り出したタバコに火をつけながら扉へ近づいた。
そしてゆっくり、その鍵を開けた。
(;’e’)そ「うわ〜!! ドクオ兄ちゃん!?」
鍵を開けたと同時に、扉は勢い良く開かれた。
この施設の子供たちの中で、俺を除いて最年長であるセントジョーンズが、その扉のノブをしっかりと握っていた。
(;’e’)「……兄ちゃん…………その……血は……」
('A`)「……ああ……。気にすんなよ」
200
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:34:27 ID:/bf6AHok0
(;’e’)「怪我してるの?」
('A`)「俺は平気さ」
(’e’)「ッ……じゃあ……先生……?」
('A`)「……そうだな……」
子供たちからは、俺の身体が影になって中の様子を見ることができないだろう。
俺は身体を退かすこともせず、言葉を続けた。
('A`)「お前らには、まだわかんねーかもしれねぇけど……。先生はな、ミセリを……ミセリ姉ちゃんを、悪い人にお金で売ったんだ」
(’e’)「…………」
セントジョーンズだけではない。
10歳かそこらの子供たちが、真剣な眼差しで俺の言葉に耳を傾けていた。
他の年端もいかない子供たちは、いまいちよくわかっていない様子であった。
201
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:35:21 ID:/bf6AHok0
('A`)「そこに、その金がある。それを分け合って自分たちで生きるか……、警察に任せて新しい施設へ移るか。お前ら次第だ」
('A`)「好きに選べ。自由に生きてくれ」
セントジョーンズの肩をぽんと叩き、呼び止める子供たちの声を無視して俺は施設の玄関を抜けた。
この施設とは、もうこれでおさらばだ。
:'.;′
:.
: '
. '
,: .'
,. '.:´ ´
.' ´
,. '.゙ ポトッ
' :
;. ; />
゙、( _,..、 //
`~⌒ヽ;...;;.. _/>'
ヽ:,;;:゙ー`'
フィルターのぎりぎりまで吸い尽くしたタバコを地面に放り投げて、薄暗い道をただひたすら歩き続けた。
.
202
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:36:28 ID:/bf6AHok0
疲れたので、続きは近いうちに……
よろしくお願いします。
203
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 17:34:38 ID:tXFgH4KE0
おっ!乙!!
続編待ってたぜ〜
今から読む!
204
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 17:42:57 ID:dGqu3YG60
その酉いっつもピザマンコって読んでます
冗談はさておきかっけえ乙
205
:
名無しさん
:2016/05/03(火) 19:51:39 ID:bvac.9YM0
乙!ハードな感じだな……
( ^ω^)との出会いとかも書くの?
206
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:24:02 ID:GCRBwiXg0
>>205
少年編終わらせてもないのに言うのもなんですが、ブーンとの出会いの話と、無印の続きの話の構想はあるんです
ただそれを実際に書けるかどうかは…モチベーション次第に…
207
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:39:26 ID:GCRBwiXg0
間違えてあげちゃったので、このまま残りを投下します。
208
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:40:12 ID:GCRBwiXg0
2kmほど歩いただろうか。
気づけば俺は見慣れない街にやってきていた。
それもそのはず。施設から近くの繁華街までの道しか行き来しなかった俺にとっては、この国はあまりに広すぎる。
ポケットから取り出した紙に載っている住所を頼りに、俺は歩き続けた。
辺りを歩いている人――この時間になると酔っ払いしかいなかったのだが――に聞いてみると、どうやらここから見える豪邸がその場所で間違いないらしい。
近くで見てみるとすでに、部屋の電気は消されている。
ただ唯一、小さな小窓から、薄らぼんやりと明かりが漏れていた。
塀を登り、あたりを見回す。
流石にこの時間になると、使用人らしき人影もない。
いくらこれほどだだっ広い豪邸を持つ金持ちとはいえ、そんな警備に金を回すのは無駄だと思える。
('A`)「……よっと」
209
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:40:51 ID:GCRBwiXg0
|::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
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ゝ:::::::::::::::::::::::::::::::::::シ 匕::::::::::::::::::::::::::::::::::::シ ( )
丿`  ̄ ゙ ~  ̄ ` ̄ ´i i ` ̄ ゙ ~  ̄ ` ̄ ´\ ) )
r´ } { `ヽ ノ ノノ
ト-‐ '´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄7 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`' ‐イ ∠ノ ゞ゙´、
`────────';.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.'────────´ ザッ
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.
210
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:41:32 ID:GCRBwiXg0
手入れだけでも金がかかるであろう立派な芝を踏みしめて、例の小窓へゆっくりと歩き出す。
やはり近くで見ても、人が通れるほどの窓ではない。
高い位置にあるため、中を確認することも難しそうだった。
仕方ない。
明かりの漏れる小窓から侵入する事を諦め、その隣の大きな窓を覗く。
カーテンのおかげか、はっきりと中は見えない。たが恐らく、目的の部屋とは繋がっていないのだろう。
__r 、
///`Yヽ
/// :/ 〉
/// :/ /'. '、
///_,/ ./ . .
/ーr' / / ' 、
_,/ / / /
//=彳/ ./ '.
//// /o :/⌒i
//// / /`ー/_
〈/// / / /{ Yー、
\ / / '´ ,人_,丿 スッ
ガシャーン
.
211
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:42:19 ID:GCRBwiXg0
取り出した拳銃を振りかぶって、グリップエンドで窓を強く叩いた。
思わず自分でも耳を塞ぎたくなるほどの音が響く。
粉々に砕け散ったガラスは、チリチリと音を立てながら地面に転がっていく。
あまり時間はかけるべきではない。
俺はすぐに屋敷に侵入し、辺りを見回した。
月明かりでうっすらとしか見えなかったが、ちょうど正面にあった扉へと駆けだす。
あまり時間はない。
扉のノブを回して、廊下へと出る。
廊下は、先程の部屋よりもずっと暗い。
壁伝いに手探りで、先ほどの小窓がある部屋を探す。
指先に触れた冷たい物。それがドアノブであることを理解した俺は、すぐにそれを回した。
212
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:43:15 ID:GCRBwiXg0
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/. . : : 、へ : : : : : : : : : ::l' :: : : :.::|:.:
||::,r‐r⌒ヽー─‐-イ . : : /::::::::|\ : : : : : : .: : | : : : :::|:.:.:.:i
ガチャ ||::lヽ^づ 〈: : : :.:: :.:: :.:/ : ::::::::::! \ :. : : : : : |_ :: : : ::|:.:.:.:
||::::ヾ_つっ'ー──一´:::::::::::::::::::| .ヽ,:..: : ::/⌒:: : ::/:.::
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ヾ.::/ .. :.:.::/
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| iて ̄` ヽ::.::/ _
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| し'て_, ノ'ij`´´ ..:.
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
しかし、いくら回しても扉は開かない。
('A`)「チッ…………」
鍵が、中からかけられている。
('A`)「……仕方ねぇ……なぁッ!!」
__________
|
|_
|| ドンッ
||('A`)
. c||f|:-:fヽ= -
||' V_ |、 , 、
|| し^ヽ) , .' ;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
213
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:43:57 ID:GCRBwiXg0
勢い良く、扉に体当たりをする。
だがそうそう簡単に破れるはずもない。
('A`)「クソッ……」
拳銃を構え、銃口を蝶番に向ける。
ダァン .ィ≦,
i .イl ∧
\ .|! .i } l ∧
\ 、 \ .|l .| -= l l ̄l ∧
\`''<_)'" ̄ ̄ ̄\ |.! | ,, '" 7 .l l_l ∧
ヽ \j l、Ⅵ ,,'  ̄}. .l ∧
} | ,, ' -=≦ .l 「 ̄∧
、_ __ | / -≧,l l ∧
__}  ̄ ̄ / , ≧《∧ l l ∧
\ / ≧=- / V∧ l l ∧
-== [〕 ⊆二二 ̄ ,l V∧ l l ∧
} , 〈〉 ( ̄ ̄ ̄ j V∧ l l ∧
-��  ̄\ i rュ \ r'" V∧ l l ∧
) l 「y7 --く ̄ ̄ . イ V∧ l l ∧
_≠---ァ ` 、 \ \ .ノ V∧ l l___∧
/ /`勺\. ,| V∧ l |l |l ∧
 ̄ ̄ ̄〕 イ / 、 }`ヾ l |l 斗'”
 ̄`'つ_,,'" Λ ,ノ斗'"
 ̄ / ‘、 {
/ /ヽ l
/ \ ;
ヽ ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
.
214
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:44:48 ID:GCRBwiXg0
勢い良く、扉に体当たりをする。
だがそうそう簡単に破れるはずもない。
('A`)「クソッ……」
拳銃を構え、銃口を蝶番に向ける。
ダァン .ィ≦,
i .イl ∧
\ .|! .i } l ∧
\ 、 \ .|l .| -= l l ̄l ∧
\`''<_)'" ̄ ̄ ̄\ |.! | ,, '" 7 .l l_l ∧
ヽ \j l、Ⅵ ,,'  ̄}. .l ∧
} | ,, ' -=≦ .l 「 ̄∧
、_ __ | / -≧,l l ∧
__}  ̄ ̄ / , ≧《∧ l l ∧
\ / ≧=- / V∧ l l ∧
-== [〕 ⊆二二 ̄ ,l V∧ l l ∧
} , 〈〉 ( ̄ ̄ ̄ j V∧ l l ∧
---  ̄\ i rュ \ r'" V∧ l l ∧
) l 「y7 --く ̄ ̄ . イ V∧ l l ∧
_≠---ァ ` 、 \ \ .ノ V∧ l l___∧
/ /`勺\. ,| V∧ l |l |l ∧
 ̄ ̄ ̄〕 イ / 、 }`ヾ l |l 斗'”
 ̄`'つ_,,'" Λ ,ノ斗'"
 ̄ / ‘、 {
/ /ヽ l
/ \ ;
ヽ ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
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215
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:45:29 ID:GCRBwiXg0
拳銃から放った一発きりの銃弾で、蝶番は根本からひん曲がり、少し力を入れれば簡単に外れてしまいそうになる。
もう一度、扉に体当たりをした。
__________
|
|
ドカッ
/ ('A`)
f|:-:fヽ= -
、// ' V_ |、 , 、
'ヽ、し^ヽ) , .' ;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
蝶番を弾き飛ばして、木製の扉は勢い良く倒れ込む。
体勢を整えながら、俺はすぐに室内を見た。
そこで見たものは、ナイフを構える一人の男と、後ろで泣きじゃくるミセリの姿だった。
.
216
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:46:02 ID:GCRBwiXg0
ミセ*;ー;)リ「……ど……ドクオ……?」
('A`)「……、ミセリ……」
「ッ……なんだお前……」
(;^Д^) (A` )
/ vロ|っA |-h.|
|U_ : _ | i_U_j
(/^ヽJ . し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
('A`)「…………」
lニゝ!∨ミl、
i".,,∠二-、゙'、
│.|.l.;;;;;;;;;゙l.} ! スチャッ
! `'`-ニ'" .l
| |
.! .○ |
_..-'''゙.! l.'''‐、
/´ .|"ーi��‐i''''} .l
l ゙'!、 l .! ,! '!、.ヽ
!  ̄` ! .l ミヽ..,__丿
,/ ヽ .| .,! .'''''/'i
l゙ .ゝ....-- ..,,,| .し,,,,,,ゾ
ヽ 、 .`'" / .
/ .\ ! ./ ,〃
.
217
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:46:45 ID:GCRBwiXg0
ミセ*;ー;)リ「……ど……ドクオ……?」
('A`)「……、ミセリ……」
「ッ……なんだお前……」
(;^Д^) (A` )
/ vロ|っA |-h.|
|U_ : _ | i_U_j
(/^ヽJ . し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
('A`)「…………」
lニゝ!∨ミl、
i".,,∠二-、゙'、
│.|.l.;;;;;;;;;゙l.} ! スチャッ
! `'`-ニ'" .l
| |
.! .○ |
_..-'''゙.! l.'''‐、
/´ .|"ーi--‐i''''} .l
l ゙'!、 l .! ,! '!、.ヽ
!  ̄` ! .l ミヽ..,__丿
,/ ヽ .| .,! .'''''/'i
l゙ .ゝ....-- ..,,,| .し,,,,,,ゾ
ヽ 、 .`'" / .
/ .\ ! ./ ,〃
.
218
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:53:24 ID:GCRBwiXg0
(;^Д^)「くっ…………」
('A`)「……プギャー、だったか」
(;^Д^)「……だから……どうした……」
('A`)「いや、特に意味もないさ。名前くらい聞いても悪くないと思ってな」
(;^Д^)「……クソガキィ……何しに来やがった……」
(;^Д^)「――――ッ!!」
/^ヽ
(⌒)'
_ , . ; :'''"´"'' 、 ; ;,,
_ , . 、, ___-l二ヽ_______ ; ; _-、──、__/三'>
--=" ;,_ ; : . ()======| ───────┐.| .|,,;;,,, ,,,;;;,,()~-/ ̄l/、 ◎)\
l_,' ̄ ̄ |__┌--┬──┴┴─┴────── ' l l l l l ',__.`-' l. l
´"''''- ''" l,_ヽ__ __|三三三三|_________l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_.l
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`- 、_ O __○二二三l/ ̄ ̄ ̄ ヽ ̄
ダァンッ `v'~ | | |`) |::::::(_,ノ-,/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
l'、_ヽ_)' ノO l:::::::::::::::::::`、
` ̄ ̄ ̄ ̄(  ̄ ̄)::○::::::::ヽ
(`─ー<::::::::::::::::ヽ;;::..
. (ヽ___ ,ノ:::::::::::::::/ ノ___
ヽ__/二二二l_,.-~ ̄
.
219
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:54:11 ID:GCRBwiXg0
銃口が火を吹き、目の前の男が額に大きな穴を開けて、ゆっくりと崩れ落ちる。
硝煙が、まるでタバコの煙のようにゆらゆらと立ち昇り、やがて消えてゆく。
ドサッ
ミセ;゚ー゚)リ「……ッ……」
('A`)「……ミセリ……」
怯えた表情で俺を見つめるミセリに、投げかけられる言葉などなかった。
ミセ;゚ー゚)リ「……そいつは……死んだの……?」
('A`)「ああ。死んださ」
ミセ;゚ー゚)リ「……助けに来てくれたんだね……」
('A`)「…………」
ミセ;゚ー゚)リ「……怖かった……」
.
220
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:59:33 ID:GCRBwiXg0
V: : :ム 、 u /: : : : : : ,:|: : : ,: l
. /;ィ: : : ::. ` _ /イ: :/: : : : /:l: : :/ヽ!
/ l: : : ::ゝ、 '─` / l: : : : /: リ' |: :/
}: : /ノリ:>, 、 , ィ '.i: : ;ィ"}イ' |/'
l: / ' レ'V / = l , ェ= |/ |ヘ、
V,-、 _ ィリ_/^∧ / `ー 、__ _
/ / >'´___, !!-rュ_」__ __/ /´ `ヽ
. / ' / / zム」ー ` ー, ./ ∧
「……怖かったよ………」
彼女はそう言って、涙を落とした。
いくつも、いくつも零れ落ちる涙が、彼女の足元を濡らした。
.
221
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:00:08 ID:GCRBwiXg0
('A`)「お前に、これを渡したかったんだ」
バッグの中から小さな箱を取り出して、それをうずくまる彼女にそっと手渡す。
ミセ*゚ー゚)リ「……これって……」
彼女が包みを解いて蓋を外すと、その中から、小さなペンダントが姿を現した。
ミセ*゚ー゚)リ「ッ…………」
('A`)「…………ごめんな」
ミセ*゚ー゚)リ「……どうして……?」
ミセ*゚ー゚)リ「どうして謝るの……?」
('A`)「…………」
握りしめたままの拳銃をベルトの隙間に挟み、再びバッグの中からひとつの封筒を取り出した。
222
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:01:30 ID:GCRBwiXg0
('A`)「……もう、会えないからだ」
29枚の紙が包まれた封筒を、床に置いた。
ミセ;゚ー゚)リ「……どうして?」
('A`)「……わかってるだろ……?」
ミセ;゚ー゚)リ「…………」
! i
,L. __ /'
Y´ ̄二 /〉
| /!
| ./ 」!
l !l
| |ム
│ | ∧
! |'/∧
| ! /L_
| l / ̄〉
| | /∧
| /`i ′,∧
|L... _ │ /'/∧.
「 ̄ ` / ′/ ∧.
|..__ , /〕、 _」.
/ ̄ `  ̄|  ̄ ,〉
∠.. _ /!-‐=ニ />..
∠ ̄  ̄二ニ、 厶-、 , '/ 〉
r‐=≦ ̄ ` ∨ //`ー'´
iL.. ____r‐=iニニ」二ニ´/' キュッ
`  ̄ ̄ ̄ ̄ ´ ` ̄  ̄ ̄´
「お前は、まっとうに生きてくれよ……」
.
223
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:02:04 ID:GCRBwiXg0
踵を返して、扉へと戻る。
これでいいんだ。
汚れてしまったこの手で、彼女に触れることは許されない。
どんなにねじ曲がった運命でも、どんなにひねくれた生き方でも、俺はそうすることを望まない。
ミセ; ー )リ「……ドクオ……」
('A`)「……じゃあな」
ミセ; ー )リ「……待ってよ…………」
_/,. <: : : :. l u /: : : : : : : : :l: : : : :|
 ̄ ,.>: : : ', ` ,/:.ィ: : : : : : : : ト=、; ;|
/: : : : ::ム. rー--‐‐、 "´ |: : : : : x: : |} `ー==ヽ__ _
/:/´|: : : : 人. ∨、_ノ) ,.|: : : ::/ ヽ|| }::::::}´ ヽ
" |: : :∧: : }7> 、`ー - ' . < 〉: / リ /::::/ 丶、
ヽ::/ /〉ノ:l |>ー < / Y / l::::l ヽ
/ |::::::| { rヽf´ミ / /::::| \
{ {::::::{ ヽ j ′∧ / /::::::| \
「……待ってよドクオ!!!」
.
224
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:02:39 ID:GCRBwiXg0
_________________
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Σ |.:.:(○).:.:.: .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :.:.:.:.:.:.:.:.:.::..:.:.:.|
Σ |.:.:.:.::.:.:.:.__________.:.:.:.::.:.:.:|
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バタン |.:.:.:.:.:.:.:.|l: : : : : : : : : : : : : : : : ||.: :.:.: .:.:|
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|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
 ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
扉越しに聞こえた、“ありがとう”という言葉を。
俺は一生忘れることはないのだろう。
.
225
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:03:45 ID:GCRBwiXg0
しばらく歩いて、俺は繁華街へとやってきた。
再び小汚い路地を歩いて、ギャングたちの溜まり場へと向かう。
空き缶、吸い殻、ゴミ袋、ギャング。まさにゴミ溜めと呼ぶに相応しい。
俺はきっと、こんな街でしか生きられないのだろう。
( 'A)
|":-っ" 、
j._-|
,、し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
咥えていたタバコを放り投げて、歩みを進める。
そんな時だった。
.
226
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:04:22 ID:GCRBwiXg0
Ω ( 'A)
- = j.-) . |":-っ
ダッ j__/ j._-|
、,し^j 、.し^J 、.' ポトッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「オラッ!!」
Ω (;'A)
グイッ j'-|=|":-っ ,
- = j__/ j._-|⊇.
、,し^ j |_) 、'. ,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Ω
j'-| ドサッ
jU| (;'A)彡 . ,
'. (/^j 人_-ヽ∧'、. ,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
不意に後ろから掴みかかられ、俺は地面に尻餅をついた。
突然の事に、状況を理解するのに時間がかかる。
Ω「動くなよ、クソガキ」
っy=゙ チャッ
(;'A`)「――ッ!」
.
227
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:06:54 ID:GCRBwiXg0
一人の男が、俺の脳天に銃を突き付ける。
いや、一人ではない。
前後からぞろぞろと姿を現す、男たち。
俺が来ることを、予見していたのか。
彼らは揃って俺に銃を向け、鋭い目つきで俺を睨み付ける。
ザッザッ
Ω「ほんとに来るとはなァ。ギコの言ったとおりだぜ」
(;'A`)「…………」
俺の正面に立つ6人の男たちを押し退けるようにして、ギコがゆっくりと姿を現した。
(,,゚Д゚)「どこから手に入れたんだから知らねえが、拳銃なんて持ってるんじゃあな。下手に力を手に入れた奴は、調子に乗るもんさ」
彼はその頬に残る傷跡を指でなぞりながら、ため息をこぼす。
(,,゚Д゚)「眠らせろ」
彼のそんな言葉と同時に、俺の後頭部に走る重たい衝撃。
俺はそれに抗うこともできず、意識は暗い闇の底へと落ちていった。
.
228
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:07:37 ID:GCRBwiXg0
俺が目を覚ました時には、あれから数時間が経過していた。
トタンの壁に囲まれた、薄暗い部屋。
元はどこかの工場か、あるいは作業場のようなもの。恐らく、彼らのアジトなのだろう。
その中心に、俺は転がされていた。
(,,゚Д゚)「ようやく目を覚ましたか」
両腕は背中に回され縄で縛られており、簡単には外せそうにない。
かろうじて、立ち上がる事だけは出来そうだった。
だが今はまだ、その時ではない。
ギコは落ちていた角材を拾い上げて、俺の顔を睨みつける。
彼の周りには、男が数人。皆、拳銃や角材を手に持っていた。
(,,゚Д゚)「お前に聞きたいことがあってな」
コツ、コツと音を立てて、ギコは俺に歩み寄る。
(;'A`)「……なんだよ……」
(,,゚Д゚)「わかってるだろう? 金の在り処だ」
(;'A`)「……30万ごときに、そんな必死になってるのか?」
(,,゚Д゚)「……、ゴルァ!!」ブンッ
(;'A`)「――ッ!!」ドゴッ
229
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:08:18 ID:GCRBwiXg0
ギコが振り上げた角材が、俺の肩へ直撃する。
それほど重い角材ではない。だが痛みは確実に、俺の神経を蝕む。
これは、俺を殺す事が目的なのではない。あくまで、痛めつけて情報を吐かせるつもりなのだ。
(,,゚Д゚)「30万なんて金はどうだっていい」
吐き捨てるように、彼は言う。
(,,゚Д゚)「お前の暮らしていた、施設の金だ」
(;'A`)「…………」
(,,゚Д゚)「あの施設が子供を大金で売り捌いてるのは、この界隈じゃ有名な話だ。その金だよ」
(;'A`)「……知るわけ無いだろ……」
(,,゚Д゚)「ゴルァ!!」ブンッ
(;'A`)「――ッ!!」ドゴッ
(,,゚Д゚)「言え!!」
角材を振り回しながら、彼は凄みをきかせる。
それを恐ろしいとは思わない。だが、角材が食い込む痛みは、味わっていて楽しいものではない。
230
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:09:13 ID:GCRBwiXg0
(,,゚Д゚)「……あの施設に、警察が集まっていた。聞いた話じゃ、先生が殺されたそうだな」
(;'A`)「…………」
(,,゚Д゚)「先生を殺す理由なんて、一つしかないだろう。それは、金だ」
確かに、彼の言う事も間違ってはいない。いや、そう考えるのが妥当だろう。
実際に俺がどういう目的をもって彼女を殺したかなど、彼らには関係がない。
そして事実、あの時俺は大金の在り処を探していた。
(,,゚Д゚)「教えてもらおうか」
(;'A`)「……知らないって言ってんだろ……」
今更、彼に教えたところでどうなると言うのだ。
あの金は、子供たちの誰かが持ち去ったかもしれない。もしくは、警察が管理しているかもしれない。
そして、それを教えてしまったら、俺は用済みになってしまう。
彼に教えるか、教えないか。どちらを選んでも意味はない。選択肢など、無いも同然だった。
(,,゚Д゚)「……ならば、見当がつくまで考えてもらうしかないなッ!!」ブンッ
ドゴッ
ブンッ
ドゴッ
231
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:09:47 ID:GCRBwiXg0
肩に、足に、痛みが走る。
何度も何度も振り下ろされる角材は、俺を絶え間なく痛めつける。
時折休憩を挟むようにして、彼は俺に同じ問いかけをする。
俺の返事も、また同じものだった。
止むことのない痛みに、終わりは来るだろうか。
いや、俺がそう望んでいるだけであって、ギコには一切そのつもりはないのだろう。
しかし俺は、その僅かな希望に縋り付く。縋り付こうとする。
.
232
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:12:02 ID:GCRBwiXg0
それから、一時間ほど経過しただろうか。
血が流れ出るほどの怪我を負わされることはなくとも、俺の全身にはいくつものアザが出来上がっていた。
もはや痛みなど通り越して、俺はただ、全身の苦しさだけを味わっていた。
(,,゚Д゚)「吐く気になったか?」
(; A )「…………」
もうこのまま、リタイアしてもいいのではないだろうか。
なぜ俺は、ギコが諦めるなんていうあり得もしない希望に縋り付いているのだ。
真実を話せば、きっと彼は俺を楽にしてくれる。
(,,゚Д゚)「……足りないようだな」スッ
(; A )「ッ……まっ……まて……」
(,,゚Д゚)「…………」
俺にはもう、耐えきれない。
どうせこんな生き方では、命も長くは保たないのだ。
数年もすれば、路上に転がる空き缶のように、俺は無様な死を遂げる。あるいは灰皿に放置された煙草のように、じわじわと息絶えるのだ。
(; A )「…………金は…………」
ゆっくりと、口を開く。
脳内から無抵抗に流れ出す言葉を、遮ることはしない。
全てを諦めた。その時だった。
233
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:12:44 ID:GCRBwiXg0
/: .: .: .: .: . : ./ _,,.-‐''" / / / ̄|| |: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: . _,,.-‐'': : : : : 三 二 ニ -- / || | ̄|| | || | || |: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .//:: : : : : : : : / / 三 二/ || -- | || |_|| |_|| |: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .//: : : : : : : : / / / || | || .| |: .: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .//: : : : ヽヾ`;;:} 三 二 ニ -- /__|| .| || .| |: .: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .//: : : : Z::::Z,,, / / = ̄ .|_|| 三 二 ニ --: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .// : : : : <:::::::ヽ:::>' _ l || ̄|| .: .: .:
/: .: .: 三 二 ニ -- : : <:::::/ ̄, |_|| / // .: .: .
_/: .: .: .: .: .: .//: : : : : Z:::::{ l / // .: .: .
/ : .: .: . : .: .:,'/: : _,,.-‐>::::::ヽ __/ //.: .: .: .: .
: .: .: .: . : .: //_,,.-‐''": Z:::::}ヽ、::::{、 |___// .: .: .: .: .
: .: .: .: . : .://: : : : ノ/ /ー/ヽ | |: .: .: .: .: .
: .: .: .: . : // : : : : : : / / | |: .: .: .: .: .
: .: .: .: .: ,'/ : : : : : : : ./ / | |: .: .: .: .: .
: .: .: . : .:l | : : --二: : ./ / | |: .: .: .: .: .: .
: .: .: . : .{ l: : : : : : : { { | |: .: .: .: .: .: .: .
: .: .: . : .| |: : : : : : : | | | |: .: .: .: .: .: .
: .: .: . :..| |: 三 三 二 ニ -- | | |: .: .: .: .: .: .
: .: . : . :| |: : : : : : : | | | |: .: .: .: .: .: .
: .: .: .: .| |: : : : : : : :| | | |: .: .: .: .: .:
建物の扉が、勢い良く開かれる。
扉はその力によってひしゃげ、あらぬ方向へと飛んで大きな音を立てた。
(;゚Д゚)「な、なんだゴルァ!?」
.
234
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:13:16 ID:GCRBwiXg0
i!: : : : : : : : :i! ヽ Vill ::::..ヽ/////////////////////\
i!: : :`┌┐: i! .} V! ::::..∨/////////////////////
i! : : : ||:i! ./ |il ::::.∨///////////////////
. i!┌��┘└������┐ |ill ::..∨///////////-�� ´
i!:└��┐┌����┐| |ill :..∨/////////
i!.: : : : :|| /,|| _ -��  ̄∨///////\
i!.: : : : :.|| / || }'´ ∨/////: :\ヽ_
/:_: : : : /└┘⌒\└┘ /. ∨///!: : : ̄\ : ヽ
厂: : : : :ト ミ|  ̄ ̄ [] []┌┐ V// ト、: : : : : :>fハ
ノ: : : : : : :||: : ∨ ┌┘| }/// }: : :/=/ /
,r=-. _>、: : : : : ||: : : ∨.  ̄ ̄ ,// ゙テ´三/}`
斥三三三三.\__:||__/ / /三三〃
`<三三三三三三} {三三/
`¨¨´ ゝく二フ′ `¨¨´
「余計な事は言うんじゃねぇ。その間抜けな口を閉じろよ、ガキ」
.
235
:
訂正ほんとごめんなさい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:14:59 ID:GCRBwiXg0
i!: : : : : : : : :i! ヽ Vill ::::..ヽ/////////////////////\
i!: : :`┌┐: i! .} V! ::::..∨/////////////////////
i! : : : ||:i! ./ |il ::::.∨///////////////////
. i!┌--┘└------┐ |ill ::..∨///////////--- ´
i!:└--┐┌----┐| |ill :..∨/////////
i!.: : : : :|| /,|| _ ---  ̄∨///////\
i!.: : : : :.|| / || }'´ ∨/////: :\ヽ_
/:_: : : : /└┘⌒\└┘ /. ∨///!: : : ̄\ : ヽ
厂: : : : :ト ミ|  ̄ ̄ [] []┌┐ V// ト、: : : : : :>fハ
ノ: : : : : : :||: : ∨ ┌┘| }/// }: : :/=/ /
,r=-. _>、: : : : : ||: : : ∨.  ̄ ̄ ,// ゙テ´三/}`
斥三三三三.\__:||__/ / /三三〃
`<三三三三三三} {三三/
`¨¨´ ゝく二フ′ `¨¨´
「余計な事は言うんじゃねぇ。その間抜けな口を閉じろよ、ガキ」
.
236
:
訂正ほんとごめんなさい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:16:03 ID:GCRBwiXg0
「男だったら、痛みにくらい耐えやがれ」
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::: _ ;;;:::'''| ̄ ̄ ̄|::::::::
:::::: (゚∀゚ ) '' | |:::::::
::::::: |::|_|:::h. | |::::::::
:::::::: |:j|n'iロ't | |::::::::
::::::';、し^ヽJ、,'. | |::::::::
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ザッ
現れたのは、ロングコートに見を包んだ男。
この俺に銃を――、自由を渡した男だった。
(;゚Д゚)「ッ……なんだてめぇ……!」
_
( ゚∀゚)「おいおい、俺を知らねーのかよ」
(;゚Д゚)「…………はッ!! てめぇ、殺し屋ジョルジュ!!」
_
( ゚∀゚)「ご名答。以前はご贔屓にどうもな」
ジョルジュ、というのが彼の名前なのだろうか。
どうやら彼とギコは、面識があるようだ。
237
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:17:31 ID:GCRBwiXg0
(;゚Д゚)「チッ……、今更何しに来やがった……」
_
( ゚∀゚)「借りを返しに来たのさ。お前にやられた傷が、疼いて仕方ねぇからな」
(;゚Д゚)「……そうかよ……。だったら……」
(,,゚Д゚)「今度こそ殺してやるよ!!」スッ
っy=゙
_
( ゚∀゚)「…………やってみろ」
(,,゚Д゚)「やれ!!」
っy=
Ω スチャッ
っy=゙
ギコがそう叫ぶと、周りの男たちは一斉に拳銃を構え、その銃口をジョルジュに向けた。
ジョルジュは落ち着いた様子で深呼吸を一つし、大きく動いた。
238
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:18:10 ID:GCRBwiXg0
::::::::::::::::\
:::::::::::::::::::::'ヽ、
::::::::::::::::::::::::::::又.___ノ\ __ .へ
\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| {_. イ:i: \/ ヾ:
:::::::\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| /^{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\ vヘ
.:.:.:.:.:.:.:.\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| /.i:i:i:i:i:i:i:i:i:、:i:i:i:i:i\ V:ヘ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\:::::::::::::::::::::::::::::::::::{/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i\:i:ヽ:∧`∨∧
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\::::::::::::::::::::::::::/{/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i: /^ヾ\ハ^ヾ V:ハ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.≫..,_ _,.≠.:.:.:. .:. : i i:i:i:i:i:i:i/ \:{
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .:. : . i: :i:i:i:i:i:ii/
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .:. . : .:i:i:i /;
'"^\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: . .:. :.i/
` ≪.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. . . '′ . |\
` ≪.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.彡.... | ./
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`7/ `.、 .i|
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/ ./′/>. \、 .|i|
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── ──── ‐ ─‐‐── ─── ──‐‐‐─ ‐... ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒ ^..── ───‐‐
───── ‐‐‐‐─ ‐ ‐‐── ────── ──‐‐‐─ ‐ ‐‐──
.
239
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:18:55 ID:GCRBwiXg0
_
パァン パァン (゚∀゚ )
Ω ィ Ω ィ |::|_|::oヽ -= ∋
j'-|っy=;、 j'-|っy=;、 /:j|n'iロ'\ -= ∋
jU| ' jU| ' ヽ)'^\)ミ
(/^j (/^j ,'、; '.、 タンッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
男たちの放つ銃弾を、ジョルジュは縫うように、時に跳躍して、掻い潜る。
その鮮麗された無駄のない動作。美しい動きだと、思わず見惚れてしまう程だった。
一体どのように鍛えれば、あんな動きができるのだろうか。
_
y= (゚∀゚ )
ΣΩ ΣΩ'、' ⊆/::/_/o|
j'-|っy= j'-|っ⊂/:j/n/ロ/ -= ∋
jU| jU| ''' '^し'ミ
(/^j (/^j パシッ ,'、;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「おらよっ!!」
「うぐッ!!」 _
(゚∀゚ )
ΣΩ Ω, |::/_/::|っ
j'-|っy= Σ|-(⊂|:j/n/ロ/
jU| ヽ'ヽっ 'ヽJ、、
(/^j .、乂)'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
240
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:19:37 ID:GCRBwiXg0
一人、また一人。
ジョルジュの怒涛の蹴りによって、次々となぎ倒されていく男たち。
彼のその姿が、俺にはダンスを踊っているように見えた。
軽快な音楽も、立派な舞台もない。けれど、彼は頬を歪ませて、軽快に踊りを続けている。
_
( ゚∀゚)「銃を使うまでもねぇな!!」ドゴッ
もはや、ここに俺の居場所はない。
彼の攻撃に必死で抗う男たちですら、舞台を彩るちっぽけな小道具にしか見えなかった。
やがて地面に乱雑に散らばる小道具を踏みにじり、彼は一つため息をついた。
(;゚Д゚)「くッ……」ジリッ
_
( ゚∀゚)「どうした、ビビってんのか?」
(;゚Д゚)「…………やるじゃねぇか……」
_
( ゚∀゚)「お褒めの言葉なら結構だ。早いとこ決着をつけようぜ」
(;゚Д゚)「……チッ!!」
っy=゙ スチャッ
_
( ゚∀゚)「バカの一つ覚えかッ!?」ダッ
.
241
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:20:47 ID:GCRBwiXg0
「ガハッ!!」
ドゴッ _
. ∧,,ハ (゚∀゚ )
Σ(;゚Д゚)て/::/_/o|
o|:::V:(⊆|:j/n/'/
|--.-|っ '^ヽJ
,、'\j^、 .'、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ドサッ _
∧,,ハ チャッ (゚∀゚ )
(;゚Д゚) ゙=y⊂|::|_|:::h.
人;;;\ '' |:j|n'iロ't
;'、,し\/"⌒っ.' ';、し^ヽJ ,'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_
( ゚∀゚)「至近距離なら拳でかかってこいよ。コイツの使い方がまるでわかってねぇみたいだな」
(;゚Д゚)「くッ……」
_
( ゚∀゚)「コイツはな……」
っy= グッ
パァン
242
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:21:26 ID:GCRBwiXg0
ジョルジュの握る拳銃が、音を立てて火を吹く。
同時に、ギコの右足から鮮血が撒き散らされた。
(;゚Д゚)そ「あっ……がぁぁあああッ!!」バタバタ
_
( ゚∀゚)「動かねぇ獲物を狙うのにちょうどいいんだよ。……ま、俺くらいになれば別の話だが」
「ひっ、ヒィッ!!」
ハ,∧ _
(Д゚;) (゚∀゚ )
f|V:::|o =y⊂|::|_|:::h.
U.--|ミ |:j|n'iロ't
〈jヽ、).'ザッ ';、し^ヽJ ,'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_
( ゚∀゚)「おいおい、どこに逃げるつもりだよ」
(;゚Д゚)「う、うるせぇ!!」
_
( ゚∀゚)「どこへ行っても、逃げ場はねぇよ。てめぇの行き着く先は――――」
.
243
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:22:03 ID:GCRBwiXg0
,--、
,.;==、、ヾヽ��‐、く‐`i7
!{::::::::} !::ヽヽ---_j_:::ヽ
ド=シ:::::::Y`Y´::::::l:::::}
l:::::::::::::::::::::!_::j,.イ/:,r‐-、 ,
`i::○:::::i´:|::!::iノ::/-、 , } i/
ヽ:__::ノ-r‐'‐l二{__/ノ i |
. { |:::::::{ r‐}::| / /
/``!_::ニア´}::!´ /
ヽ、 __.. -rヾ:::!/
(__ ,.メノ::l
ト、``´_/:丿
デッドエンド
「“行き止まり”だ」
'. ハ,∧ _
'、,'(Д,,) パァン (゚∀゚ )
f|V:::|o ゙=y⊂|::|_|:::h.
U.--| |:j|n'iロ't
〈jヽ、).' し^ヽJ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ドサッ
244
:
もうめんどくさい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:23:10 ID:GCRBwiXg0
,--、
,.;==、、ヾヽ--‐、く‐`i7
!{::::::::} !::ヽヽ---_j_:::ヽ
ド=シ:::::::Y`Y´::::::l:::::}
l:::::::::::::::::::::!_::j,.イ/:,r‐-、 ,
`i::○:::::i´:|::!::iノ::/-、 , } i/
ヽ:__::ノ-r‐'‐l二{__/ノ i |
. { |:::::::{ r‐}::| / /
/``!_::ニア´}::!´ /
ヽ、 __.. -rヾ:::!/
(__ ,.メノ::l
ト、``´_/:丿
デッドエンド
「“行き止まり”だ」
'. ハ,∧ _
'、,'(Д,,) パァン (゚∀゚ )
f|V:::|o ゙=y⊂|::|_|:::h.
U.--| |:j|n'iロ't
〈jヽ、).' し^ヽJ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ドサッ
245
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:24:57 ID:GCRBwiXg0
糸の切れた操り人形のように、ギコの身体は、地面にぱたりと倒れ込む。その姿を見て、滑稽だと、俺は思った。
先ほどまで俺の事を散々痛めつけていた男が、ジョルジュという男の強さに怯え、間抜け面を下げて逃げ出し、後ろから撃ち殺されたのだ。
俺が引き起こした出来事では無いとはいえ、これを滑稽と思わずにはいられない。
「……終わったな」
, 、,.
\ i. ,. ヽ / ./ }
, -,.∧ 、-<_ / ' / ./ ,. 'ヽ
.、 /::::/ ,ヽ ,.ノ `' ��.、ヽ. ./ / /`, ' ' ./
ニ\ /::::::/./. ヽ. / \\ , ´ , ' ,. ′,.' / !
ニニ\ /:::::::::/::.. 、 /ヽ \.>ヽ ゙/ _... ´ / .'´ヽ./
二二ニヽ/::::::::::::::;.:::::::::. ` // / .; ;. ゝ '"__ 丶./ ,./ .'/
ニニニニニヽ:::::::::i:::::::::::: ,.. '"::::/ ; ; .:. ;. / //  ̄\ ./ .' ;
二ニニニニニヽ::::/:::::::::::: /::::::::::::::/ _ , i .:::. i ; // ! ,.' /
ニニニニニニニヽヽ:::::::::/、:::::::::::::;:'ニヽ 「.! ヽ,.= "l ̄ ̄l.! // ,' ′ /
ニニニニニニニi >゙}ヽニニ\::::::/ニニニl ,.-' .}、ヽ.l l l liヽ/ / . '
ニニニニニ! ̄ ̄ ハ: \ニニ\{二ニニl / l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l‐-=.._/ '
二二二ニニl l l:::. \二ニニニl、./ /.l _ l---、 ,. '´
二二二ニニニl l !:: \二二ニニV l.l l ,. --- ´ : \
二二ニニニニl l .l: ./二ニニニ/ .. - '", ,. }
二二ニニニニl } ,! ./ニニニニ,.' ´ ´ _,. _,.. --、 ノ
.
246
:
もう訂正なんてしない
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:25:43 ID:GCRBwiXg0
ジョルジュはため息をついて、コートのポケットから取り出したタバコに火を付けた。
彼が殺したのは、ギコ一人。
他のギャングたちは皆、ジョルジュの蹴りによって気を失っているようだった。
_
( ゚∀゚)「ほどいてやるよ」
ジョルジュが俺の背中に回って、取り出したナイフか何かで、俺の腕を縛り付けていた縄を解いた。
自由になった腕を見てみると、きつく締め付けられていたせいか少し血が滲んでいた。
_
( ゚∀゚)「……一本吸うか?」
っ‐
('A`)「……えっ? あ、ああ……いや、俺は持ってる……」
タバコを取り出そうと上着のポケットを漁るが、そのどこにもタバコは入っていない。
それどころか、背負っていたショルダーバッグや、ジョルジュから貰った拳銃すら、手元から消えていた。
ギコたちが、予め俺の手荷物を別の場所に置いたのだろう。
247
:
絶対にしてやるものか
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:26:33 ID:GCRBwiXg0
_
( ゚∀゚) ガサガサッ
っ゙
_
( ゚∀゚)「……こいつか?」
っロ゙
ヒョイッ
('A`) パシッ
っロ゙
ジョルジュから投げ渡されたのは、ショルダーバッグと一丁の拳銃だった。
案の定、タバコはない。どこかに落としてきてしまったのだろうか。
('A`)「……ねぇや」
_
( ゚∀゚)「そんじゃあやるよ。ラークだけどな」
っ‐゙
('A`)「……ッ、マルボロじゃないのかよ」
っ‐゙
_
( ゚∀゚)「贅沢言うなよ。ほれ」
っd゙ シュボッ
( 'A)y‐ スゥー
('A`)「はぁ……」
っ‐~~
248
:
絶対にしてやるものか
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:27:21 ID:GCRBwiXg0
_
( ゚∀゚)「悪くないだろ?」
('A`)「…………ああ、思ってたよりは美味いよ」
煙を吐き出した後に残る、口の中のタバコ葉の香りと煙の苦味。
マルボロよりも癖がなく、俺にはすっきりとした吸い心地に感じた。
('A`)「……どうして」
_
( ゚∀゚)「あん?」
('A`)「どうして、こんなところに来たんだ?」
俺がそう問いかけると、彼は意外にもばつの悪そうな表情を浮かべて、顔を伏せながらこう言った。
,ィ ヽ __ `ー′/ ヽ }、_
_ _ ,< { \ ',\ '´-- -` ./\_ -‐ '''' }7Tヽ
.....-::::::::::::::::::/:::::::::::::::| \} \ ./ ヽ ヽ .// .|:::::ヽ
:::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::| >._ \ / \ ./ / !:::::::\
:::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::|、 ¨ニ7`┬'<¨ヽ // / !:::::::::::\
::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::| \ /ィ777 } \ ___/ / ./::::::::::::::::::\
:::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::|. \ /{/////} { \ {\ / /::::::::::::::::::::::::::\
:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::| \ / V///,{ヽ\ \ ヽ__/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::| \/ }////} Ⅵ. \ }:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
「……ちょっとした、野暮用だよ」
.
249
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:28:00 ID:GCRBwiXg0
格好つけているのに、どこか頼りなく見える。
そんな彼の姿が、俺には何故だか羨ましく思えた。
_
( ゚∀゚)「さあ、とっとと行けよ。俺はこいつらの後始末をしなきゃなんねぇんだ」
('A`)「…………」
その後始末というのが一体どういう内容なのか、俺のちっぽけな脳味噌でいくつかのパターンを想像はできても、どれも確信には至らない。
しかし、俺はそれを尋ねることもしなかった。いずれにしても、彼がそれを俺に教えることは無いのだという確信だけはあったからだ。
結局のところ、俺たちのような人間は、自ら生き方を模索しなければならない。
彼は俺に手を差し伸べた。その時点で、彼は役目を終えたのだろう。
彼のやり方、生き方を、俺が倣う必要はないのだ。
('A`)「……ありがとな、助けてくれて」
_
( ゚∀゚)「礼はいらねーよ」
('A`)「……そうか」スクッ
痛む足を抑えながら、ゆっくりと立ち上がる。
背負ったバッグがやけに重たく感じたのは、肩や腰にもダメージを受けたからだろう。
250
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:28:35 ID:GCRBwiXg0
('A`)「……またあんたと、どこかで会えるかな」
_
( ゚∀゚)「さぁな」
('A`)「……ま、そうだよな」
踵を返して、歩き出す。
俺は、彼に感謝していた。
無駄になるはずだった命を、救ってくれたのだ。
ギコを殺して追手を失くすという、俺の目的を代わりに成し遂げてくれたのだ。
だが、彼にこれ以上お礼の言葉を投げかけるのは、この状況に相応しくはないのだと、俺は気がついていた。
('A`)「…………」
ジョルジュによって突き破られ、地面に虚しく転がった扉を踏み越えて、この建物を抜けようとした。その時だった。
「おい、ガキ。名前はなんて言うんだ?」
彼は俺にそう問いかけた。
その言葉を聞いて俺は何故だか頬を緩ませそうになったことに気がついて、振り返ろうとした顔を中途半端な位置で止めて、その問いに答えた。
('A`)「……ドクオ」
.
251
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:29:32 ID:GCRBwiXg0
その一言を言い終えて、俺はまた歩きだした。
「……また会おう、ドクオ」
建物を抜けた時に彼が言ったそんな言葉が、俺は嬉しかったのだ。
.
252
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:30:25 ID:GCRBwiXg0
.................... ........:::::::::::............ .........................................:::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::............................... ::::::::::::::::::::::
_,,|,,__,,|,,__,,| ゙'';;;;|; γ ̄| ̄ヽ γ ̄| ̄ヽ ;;'
,,__,,|,,__,,|,,_|; '| l!┼┼┼l! l!┼┼┼l! [「二二二二二
_,,|,,__,,|,,__,,|;; | l!┼┼┼l! '7;, l!┼┼┼l! ';; || | ̄ ̄ ̄|| ̄
,,__,,|,,__,,|,,_|゙;;;, | ;; l!┼┼┼l! l!┼┼┼l! || |┌─┐||┌
_,,|,,__,,|,,__,,|;;;;;; ゙:. | l!┼┼┼l! l!┼┼┼l! || |└┐ ||
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_,,|,,__,,|,,__,,| ;;;;;;;;;;;| `´ ̄ ̄`´ へ `´ ̄ ̄`´ ::|| |└┘ ||
,,__,,|,,__,,|,,_|;; / | メ ;; ;;''; _|| |___||_
_,,|,,__,,|,,__,,|/../| ';, ;; ,,;;''| |ニニニニニニニニニニ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/ .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |ニニニニニニニニニニ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Llニニニニニニニニニニ
________________________________
����������������������������������������������������������������
..... .,,,........
...,,....... ..... ......,,,,... ...,,.
.
253
:
これはひどい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:31:26 ID:GCRBwiXg0
翌日の朝、俺は見知らぬ街を歩いていた。
昨夜から歩き続けてたどり着いた場所だが、俺が昨日まで暮らしていた街に比べると、幾分かマシに思える場所だった。
通勤のためか、忙しそうに行き交う人々を縫うようにして歩きながら、俺は朝食が取れる店を探していた。
この朝早くからでも、カフェあたりなら開店しているところもあるだろうと思っていたのだが、これがなかなか見つからない。
('A`)「……こりゃ昼まで待つしかないか……?」
そう諦めかけた時、すぐ近くからカランという鈴の音が聞こえた。
音の方へ振り向いてみると、ちょうど開店したばかりのカフェの扉を開けている人の姿があった。
これは都合がいい。
俺は前の人を倣うように、迷わずそのカフェの扉を開けて、中に足を踏み入れた。
254
:
これはひどい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:32:26 ID:GCRBwiXg0
カランカラン
いらっしゃい、という声を聞き流しながら、俺はテレビの近くの椅子に腰をおろした。
店員がすぐに注文を聞きに来るので、俺はメニュー表の中から適当なものを選んで、それを伝えた。
伝えた後で思い出した。俺に朝食を取れるだけの持ち金など、あっただろうか。
焦る気持ちを抑えながら、恐る恐るショルダーバッグを開けた。
そこに入っていたのは。
一丁の拳銃と、数十枚の1万札だった。
(;'A`)「えッ……!?」
俺がジョルジュに貰った拳銃は、ジャケットの内ポケットにしまってある。
バッグに入っていたこの拳銃は、彼がギコを殺したときに使っていたものだ。
そしてこの金は、一体。
255
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:32:59 ID:GCRBwiXg0
いや、考えるまでもない。
ジョルジュがこのバッグにひっそりと入れたに違いないのだ。
思い返してみれば、彼がこのバッグに物を入れるタイミングはあった。
俺にバッグを投げ渡す、その直前だ。
( A )「……なんだよこれ……」
冗談じゃない。
どうして、俺のような見も知らぬ子供に、ここまでする必要があるんだ。
( A )「…………」
その理由は、いくら考えたところで、俺にはわかるはずもなかった。
生き方を模索しなければならない、だって?
彼のやり方を、生き方を見て、俺が倣わないわけがないじゃないか。
( A )「…………ありがとよ……」
あの男に、ジョルジュという男に、救われた命だ。
死んでも生きなくてはならない。
俺は心の何処かで、そんな使命感を覚えていた。
256
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:33:32 ID:GCRBwiXg0
朝食がカウンターに置かれ、それを口に運ぶ。
施設の食事に比べれば悪くない味だ、なんて考えながらテレビを眺めていると、朝のニュース番組が始まった。時刻は9時に回っていた。
いち早く取り上げられたニュースは、俺が暮らしていた施設の事だった。
(;'A`)「…………」
しかし、おかしい。
画面下に大きく表示される見出しには、“施設の児童、大量殺人”と書かれていた。
大量殺人? いや俺は、たった二人しか殺していないはずだ。
あの下卑た笑みを浮かべた施設の先生と、ミセリを買い取った外道。
一体どうして、それが大量殺人だと表記されるのか。
その真相は、すぐに明らかになった。
児童2名が行方不明、ほか22人が死亡。
.
257
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:34:05 ID:GCRBwiXg0
あの施設には、俺やミセリ、先生を含めて、全部で25人いたのだ。
養子縁組が済されたミセリを除いて24人。
行方不明である俺ともう1人を除いた22人が、殺された。
(;'A`)「嘘……だろ…………」
子供たちを殺した犯人は、もう一人の行方不明者に違いないのだ。
キャスターが暗い表情で言葉を続け、やがて子供とはいえ大量殺人の容疑者である俺ともう一人の顔写真が、テレビに大きく映し出された。
_________________
| ______________ |
| | News Gero 9:04 | |
| | ___ ___ | |
| | | | | | | |
| | |. ('A`) | | (’e’) | | |
| | |____| |____| . | |
| | ドクオ セントジョーンズ | |
| | (14) (11) | |
| | 施設の児童、大量殺人 | |
| |_____________| |
| :::::::: O oo oo tony --..--. :::::::: |
|________________|
それは、俺とセントジョーンズの写真であった。
(;'A`)「――――ッ!!」
258
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:35:15 ID:GCRBwiXg0
何故だ。
何故、セントジョーンズが。
子供たちを、皆殺しにしたのだ。
“自由に生きてくれ”なんて言ったのが、間違っていたのか。
(;'A`)「クソッ……クソッ……!!」
食事が喉を通らなくなり、俺はフォークをトレイに置いた。
ふと見上げると、店員の一人が俺の顔をじっと見つめている。
まさか、俺が容疑者だと気づいたのか?
.
259
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:35:49 ID:GCRBwiXg0
脳内に、様々な思考が駆け巡る。
あの時、施設に金を置いていかなければ。
しかし、ミセリだけは助かった。
いや、他の子供たちはどうでもいいというのか。
なぜ俺まで、大量殺人の容疑者扱いなのだ。
周りの目を気にしながらどうやって生きていけばいいのだ。
いずれこうなる事はわかっていたはずなのに、心の奥底から込み上げる悲しみに溺れて、判断が定まらない。
(;'A`)「…………ッ」
っロ゙ ヒョイッ
カウンターの上に万札を置いて、俺は逃げるように店を出た。
俺を呼び止める声も聞こえたが、構わず俺は走り出した。
260
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:36:22 ID:GCRBwiXg0
「ハァ……ハァ……ッ!!」
(;'A)
ノ/-/o
j._/| ダッダッ
;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺が、間違っていたんだ。
「ハァ…………うぐ……ッ!!」
、 ,
;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
261
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:37:14 ID:GCRBwiXg0
俺が、子供たちを殺させてしまったのだ。
「……クソッ!!」
(;'A)
/,-|、 スクッ
j._/U
.,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
:.|:. |/:.:.:.:/|:.:.:リ xー- 、 {7:.:.リ
八/:.;|:.:/ .|/ } /::⌒ヽ._ \ 》:./
イ从:|:/ / し /_:::::::::::::::::アヽ7 .//
:/:./ハ 弋 L\::::::::`¨ア /イ
:::/::::::::ヽ ミヽ___:/ /
::: ::::::.:.:\ `ー ' /
: ;.:.:.:.:.:> . ー- /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:> . ./
:.:.:.:.:.:::::;:∠ア ー ´
....::::::::::::/ ヾ\
::::::::: :::/ /\\ー- 、
「くそったれ……!!!」
.
262
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:37:48 ID:GCRBwiXg0
走り続けて痛み始めた脇腹を押さえながら、それでも走り続けた。
どこへ向かえばいいのか――――いや、この足は一体どこへ向かっているのか。
俺には、わからなかった。
.
263
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:39:14 ID:GCRBwiXg0
.
264
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:39:48 ID:GCRBwiXg0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です
――少年編――
The End
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
265
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:43:46 ID:GCRBwiXg0
くぅ〜疲れましたw これにて完結です!
実は、紅白作品投下したら続編の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りの大型AAで挑んでみた所存ですw
以下、ドクオのみんなへのメッセジをどぞ
('A`)「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」
('∀`)「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」
(;'A`)「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」
(*'∀`)「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」
川 'A`)「・・・ありがと」ファサ
では、
('A`)、('∀`)、(;'A`)、(*'∀`)、川 'A`)、俺「皆さんありがとうございました!」
終
('A`)、('∀`)、(;'A`)、(*'∀`)、川 'A`)「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」
本当の本当に終わり
AAすみませんでしたもう二度とやるもんか
266
:
名無しさん
:2016/05/04(水) 09:57:56 ID:0UTfhG6g0
おつー
267
:
名無しさん
:2016/05/04(水) 10:18:42 ID:IQTsYDUc0
かっこいいのに所々のAAで笑っちまう
乙
268
:
名無しさん
:2016/05/04(水) 12:05:46 ID:Ck8.95Ag0
歯車を彷彿とさせるドクオだな
おつ
269
:
名無しさん
:2016/05/04(水) 20:24:22 ID:5dagSCsw0
乙!
ダークで救いないかと思ったけどミセリ生きててホッとした
モチベをあげなさい
現在でも( ^ω^)出会い編でもいいからまた続編を書くのです
期待していますよピザの人
270
:
名無しさん
:2016/05/08(日) 21:32:38 ID:E2e.so.c0
乙
施設の子供たちの件は救ったと思っただけに辛いな
271
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 15:10:37 ID:sJGqovJ60
モチベは上がらなかったのか...
ブーンとの出会いの話読みたい
272
:
名無しさん
:2019/04/01(月) 17:06:54 ID:HPwFtaB20
面白いスレ見つけたら終わっていた悲しみ
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